説明

液処理方法、その液処理方法を実行させるためのプログラムを記録した記録媒体及び液処理装置

【課題】基板が支持部に支持されることに起因する基板の未処理部分をなくすことができ、処理液のミストの発生も防止することができる液処理方法を提供する。
【解決手段】処理液により基板の下面を処理する液処理方法において、回転可能に設けられた、基板を下方より支持する支持部に支持されている基板を、支持部に対する基板の相対角度位置が変わらないように回転させ、回転する基板の下面に処理液を供給し、供給された処理液により基板の下面を処理する第1の処理工程S11と、第1の処理工程S11の後、支持部を回転させる回転部の回転数を変更することによって、相対角度位置を変更する位置変更工程S14と、位置変更工程S14の後、支持部に支持されている基板を、相対角度位置が変わらないように回転させ、回転する基板の下面に処理液を供給し、供給された処理液により基板の下面を処理する第2の処理工程S15とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液を用いて処理する液処理方法、その液処理方法を実行させるためのプログラムを記録した記録媒体及び液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスやフラットパネルディスプレー(FPD)の製造プロセスにおいては、被処理基板(以下「基板」又は「ウェハ」という。)である半導体ウェハやガラス基板に処理液を供給して液処理を行う液処理プロセスが多用されている。
【0003】
このような液処理プロセスの一つとして、基板の裏面又は周縁部に処理液を供給し、供給した処理液により、基板の裏面又は周縁部に液処理を行う液処理プロセスがある。
【0004】
例えば、半導体デバイス等の製造プロセスにおいては、基板の表面に各種薄膜を形成するために成膜工程が行われることがある。成膜工程では、基板の表面のみならず基板の裏面又は周縁部にも薄膜が成膜されることがある。基板の裏面又は周縁部に形成された薄膜は、その後の製造工程の中で、例えば熱処理等の際に基板に反りを発生させる要因ともなるため、除去することが好ましい。そのため、基板の裏面又は周縁部に処理液を供給し、供給された処理液により、基板の裏面又は周縁部をエッチング処理する液処理プロセスを行うことがある。
【0005】
このような液処理プロセスを行う液処理装置として、基板の下面に処理液を供給することにより、基板の下面に対して液処理を行う液処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に示す例では、液処理装置は、基板保持手段(載置部材)、基板回転手段及び処理液供給部を有している。基板保持手段は、基板を水平姿勢で支持した状態で保持する。基板回転手段は、基板保持手段に保持された基板を鉛直方向の軸芯周りで回転させる。処理液供給部は、処理液供給管を介し、基板保持手段に保持され、基板回転手段により回転される基板の下面に処理液を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−93891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記した、基板の下面に処理液により処理を行う液処理方法においては、次のような問題がある。
【0008】
処理液により基板の下面に処理を行うために、基板は、下面の例えば外周縁端の数箇所が、基板保持手段に設けられた載置部材に載置されることがある。すると、基板の下面であって載置部材に載置されている部分には、処理液が供給されない。そのため、載置部材に載置されている部分は、未処理部分となってしまう。未処理部分をなくすためには、別の受け渡し手段によりいったん載置部材から持ち上げて、載置部材に対する基板の相対角度位置を変更してから再度載置部材に載置する必要がある。従って、載置部材に載置したまま未処理部分をなくすことは困難である。
【0009】
特許文献1に示す例では、載置部材が基板を摺動自在に保持しており、処理液の供給等によって基板を載置部材に対して滑らせることは可能である。しかし、特許文献1に示す例では、基板を処理液により処理する際に具体的にどのような手順で滑らせると効果的に未処理部分をなくすことができるか開示されていない。特に、処理液を供給しながら基板を滑らせた場合、処理液のミストが発生し、発生したミストが、基板の上面側に回り込んだり、パーティクルとして基板に再付着したりするという問題がある。
【0010】
また、基板保持手段が、基板が載置される載置部材である場合のみならず、基板を上下から挟持する等の各種の方法で支持する支持部である場合にも、同様の問題がある。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、基板の下面に処理液を供給し、供給された処理液により基板の下面を処理するときに、基板が支持部に支持されることに起因する基板の未処理部分をなくすことができ、処理液のミストの発生も防止することができる液処理方法及び液処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の一実施例によれば、処理液により基板の下面を処理する液処理方法において、回転可能に設けられた、前記基板を下方より支持する支持部に支持されている前記基板を、前記支持部に対する前記基板の相対角度位置が変わらないように、前記支持部とともに回転させ、回転する前記基板の下面に処理液を供給し、供給された処理液により前記基板の下面を処理する第1の処理工程と、前記第1の処理工程の後、前記支持部を回転させる回転部の回転数を変更することによって、前記相対角度位置を変更する位置変更工程と、前記位置変更工程の後、前記支持部に支持されている前記基板を、前記相対角度位置が変わらないように、前記支持部とともに回転させ、回転する前記基板の下面に処理液を供給し、供給された処理液により前記基板の下面を処理する第2の処理工程とを有する、液処理方法が提供される。
【0014】
また、本発明の一実施例によれば、処理液により基板の下面を処理する液処理装置において、回転可能に設けられ、前記基板を下方より支持する支持部と、前記支持部を回転させる回転部と、前記支持部に支持されている前記基板の下面に処理液を供給する処理液供給部と、前記支持部に支持されている前記基板を、前記回転部により、前記支持部に対する前記基板の相対角度位置が変わらないように、前記支持部とともに回転させ、回転する前記基板の下面に前記処理液供給部により処理液を供給し、供給された処理液により前記基板の下面を処理し、前記下面を処理した後、前記支持部を前記回転部により回転させる回転数を変更することによって、前記相対角度位置を変更し、前記相対角度位置を変更した後、前記支持部に支持されている前記基板を、前記回転部により、前記相対角度位置が変わらないように、前記支持部とともに回転させ、回転する前記基板の下面に前記処理液供給部により処理液を供給し、供給された処理液により前記基板の下面を処理する制御部とを有する、液処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板の下面に処理液を供給し、供給された処理液により基板の下面を処理するときに、基板が支持部に支持されることに起因する基板の未処理部分をなくすことができ、処理液のミストの発生も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係る液処理システムの概略構成を示す平面図である。
【図2】実施の形態に係る液処理ユニットの構成を示す概略断面図である。
【図3】実施の形態に係る液処理ユニットの回転カップの斜視図である。
【図4】囲い部材の支持ピンの周辺を拡大して示す一部断面を含む斜視図である。
【図5】実施の形態に係る液処理方法の各工程における囲い部材の回転数を示すグラフである。
【図6】実施の形態の第1の変形例に係る液処理方法の各工程における囲い部材の回転数を示すグラフである。
【図7】実施の形態の第2の変形例に係る液処理方法の各工程における囲い部材の回転数を示すグラフである。
【図8】実施の形態の第3の変形例に係る液処理方法の各工程における囲い部材70の回転数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。ここでは、本発明を半導体ウェハ(以下、単に「ウェハ」と記す。)の裏面洗浄を行う液処理装置に適用した場合について示す。
(実施の形態)
始めに、図1を参照し、実施の形態に係る液処理ユニットを搭載する液処理システムの概略構成について説明する。
【0018】
なお、液処理ユニットは、本発明における液処理装置に相当する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態に係る液処理システム10の概略構成を示す平面図である。
【0020】
この液処理システム10は、複数のウェハWを収容するウェハキャリアCが載置され、ウェハWの搬入・搬出を行う搬入出ステーション(基板搬入出部)1と、ウェハWに洗浄処理を施すための処理ステーション(液処理部)2とを備えている。搬入出ステーション(基板搬入出部)1及び処理ステーション(液処理部)2は、隣接して設けられている。
【0021】
搬入出ステーション1は、キャリア載置部11、搬送部12、受け渡し部13及び筐体14を有している。キャリア載置部11は、複数のウェハWを水平状態で収容するウェハキャリアCを載置する。搬送部12は、ウェハWの搬送を行う。受け渡し部13は、ウェハWの受け渡しを行う。筐体14は、搬送部12および受け渡し部13を収容する。
【0022】
キャリア載置部11は4個のウェハキャリアCが載置可能である。載置されたウェハキャリアCは筐体14に密着された状態とされ、大気に触れることなくその中のウェハWが搬送部12に搬入可能となっている。
【0023】
筐体14は、搬送部12と受け渡し部13とを垂直に仕切る仕切り部材14aを有している。搬送部12は、搬送機構15を有している。搬送機構15は、ウェハWを保持するウェハ保持アーム15a、及びウェハ保持アーム15aを前後に移動させる機構を有している。また搬送機構15は、ウェハキャリアCの配列方向であるX方向に延在する水平ガイド17に沿って移動させる機構、垂直方向に沿って移動させる機構、水平面内で回転させる機構を有している。この搬送機構15により、ウェハキャリアCと受け渡し部13との間でウェハWが搬送される。
【0024】
受け渡し部13は、受け渡しステージ19と、その上に設けられたウェハWを載置可能な載置部を複数備えた受け渡し棚20とを有している。受け渡し部13は、この受け渡し棚20を介して処理ステーション2との間でウェハWの受け渡しが行われるようになっている。
【0025】
処理ステーション2は、直方体状をなす筐体21を有している。処理ステーション2は、筐体21内には、その中央上部にウェハキャリアCの配列方向であるX方向に直交するY方向に沿って延びる搬送路を構成する搬送室21aと、搬送室21aの両側に設けられた2つのユニット室21b、21cとを有している。ユニット室21b、21cにはそれぞれ搬送室21aに沿って6個ずつ合計12個の液処理ユニット22が水平に配列されている。
【0026】
搬送室21aの内部には搬送機構24が設けられている。搬送機構24は、ウェハWを保持するウェハ保持アーム24a、及びウェハ保持アーム24aを前後に移動させる機構を有している。また、搬送機構24は、搬送室21aに設けられた水平ガイド25に沿ってY方向に移動させる機構、垂直方向に沿って移動させる機構、水平面内で回転させる機構を有している。この搬送機構24により、各液処理ユニット22に対するウェハWの搬入出を行うようになっている。
【0027】
次に、図2から図4を参照し、本実施の形態に係る液処理システム10に搭載された液処理ユニット22である液処理装置について説明する。図2は、本実施の形態に係る液処理ユニット22の構成を示す概略断面図である。図3は、本実施の形態に係る液処理ユニット22の回転カップ71の斜視図である。図4は、囲い部材70の支持ピン72の周辺を拡大して示す一部断面を含む斜視図である。
【0028】
液処理ユニット22は、図2に示すように、回転プレート60、囲い部材70、回転カップ71、回転駆動部80、基板昇降部材90、処理液供給機構93、排気・排液部(カップ)100、トッププレート110、昇降機構120及び不活性ガス供給機構123を有する。
【0029】
なお、回転駆動部80は、本発明における回転部に相当する。また、処理液供給機構93は、本発明における処理液供給部に相当する。
【0030】
回転プレート60は、図2及び図3に示すように、ベースプレート61及び回転軸62を有する。ベースプレート61は、水平に設けられ、中央に円形の孔61aを有する。回転軸62は、ベースプレート61から下方に向かって延在するように設けられており、中心に孔62aが設けられた円筒状の形状を有する。
【0031】
囲い部材70は、図2から図4に示すように、ウェハWの周縁外方にウェハWの周縁部を全周に亘り囲繞するように設けられている。また、囲い部材70は、回転可能に設けられており、ウェハWを下方から支持するものである。囲い部材70は、図2に示すように、ウェハWを処理した処理液を排液カップ101へと導く。また、囲い部材70は、支持ピン72を有する。支持ピン72は、囲い部材70の下端から周縁内方に突出して設けられている。支持ピン72は、ウェハWの周縁部が載置されるものである。そして、支持ピン72は、支持ピン72にウェハWの周縁部が載置されることによって、ウェハWの周縁部を下方より支持するものである。また、図3に示すように、支持ピン72は、ウェハWの周方向に沿って、略等間隔に複数設けられている。
【0032】
なお、囲い部材70及び支持ピン72は、本発明における支持部に相当する。
【0033】
回転カップ71は、ウェハWの下面側に供給され、回転するウェハWから外周側へ飛散する処理液が、跳ね返されて再びウェハWに戻ることを防止するためのものである。また、回転するウェハWから外周側へ飛散する処理液が、ウェハWの上面側に回り込まないようにするためのものでもある。
【0034】
図4に示すように、ベースプレート61、囲い部材70及び回転カップ71は、それぞれを貫通するように形成された孔73に締結部材74を嵌め込むことにより、締結されている。これにより、ベースプレート61、囲い部材70及び回転カップ71は、一体として回転可能に設けられている。
【0035】
回転駆動部80は、プーリ81、駆動ベルト82及びモータ83を有する。プーリ81は、回転軸62の下方側における周縁外方に配置されている。駆動ベルト82は、プーリ81に巻きかけられている。モータ83は、駆動ベルト82に連結されており、駆動ベルト82に回転駆動力を伝達することによって、プーリ81を介して回転軸62を回転させる。すなわち、回転駆動部80は、回転軸62を回転させることによって、ベースプレート61、囲い部材70及び回転カップ71を回転させる。なお、回転軸62の周縁外方にはベアリング63が配置されている。
【0036】
基板昇降部材90は、ベースプレート61の孔61a及び回転軸62の孔62a内に昇降可能に設けられており、リフトピンプレート91及びリフト軸92を有する。リフトピンプレート91は、周縁に複数例えば3本のリフトピン91aを有している。リフト軸92は、リフトピンプレート91から下方に延在している。リフトピンプレート91及びリフト軸92は、中心に処理液供給管94が設けられている。また、リフト軸92の下端にはシリンダ機構92aが接続されており、このシリンダ機構92aによって基板昇降部材90を昇降させることにより、ウェハWを昇降させてウェハWのローディングおよびアンローディングが行われる。
【0037】
処理液供給機構93は、処理液供給管94を有する。前述したように、処理液供給管94は、リフトピンプレート91およびリフト軸92の内部(中空空間内)に、上下方向に延在するように、設けられている。処理液供給管94は、処理液配管群97の各配管から供給された処理液をウェハWの下面側まで導く。すなわち、処理液供給機構93は、ウェハWの下面に処理液を供給する。処理液供給管94は、リフトピンプレート91の上面に形成された処理液供給口94aと連通している。
【0038】
排気・排液部(カップ)100は、排液カップ101、排液管102、排気カップ103及び排気管104を有する。また、排気・排液部(カップ)100は、上面に開口105が設けられている。排気・排液部(カップ)100は、主に回転プレート60と回転カップ71に囲繞された空間から排出される気体および液体を回収するためのものである。
【0039】
排液カップ101は、回転カップ71によって導かれた処理液を受ける。排液管102は、排液カップ101の底部の最外側部分に接続されており、排液カップ101によって受けられた処理液を図示しない排液配管群のいずれかの配管を通して排出する。排気カップ103は、排液カップ101の外方又は下方において、排液カップ101と連通するように設けられている。図2では、排気カップ103が排液カップ101の周縁内方及び下方において、排液カップ101と連通するように設けられている例を示す。排気管104は、排気カップ103の底部の最外側部分に接続されており、排気カップ103内の窒素ガスなどの気体を図示しない排気配管群のいずれかの配管を通して排気する。
【0040】
トッププレート110は、昇降可能であって、下降した状態で排気・排液部(カップ)100の上面に設けられた開口105を塞ぐように設けられている。また、トッププレート110は、排気・排液部(カップ)100の上面に設けられた開口105を塞ぐときに、支持ピン72に支持されているウェハWを上方から覆うように設けられている。
【0041】
トッププレート110は、囲い部材70の支持ピン72に支持されているウェハWの周縁部と対向する領域111に、トッププレート110の下面112から下方に突出して設けられた隙間形成部材113を有する。隙間形成部材113は、ウェハWの周縁部との間に隙間D1を形成する。
【0042】
トッププレート110に隙間形成部材113が形成されていると、囲い部材70の支持ピン72に支持されているウェハWの周縁部とトッププレート110との隙間D1は、ウェハWの中心部とトッププレート110との距離D0よりも小さくなる。
【0043】
昇降機構120は、アーム121、昇降駆動部122を有する。昇降駆動部122は、排気・排液部(カップ)100の外方に設けられており、上下に移動できるようになっている。アーム121は、トッププレート110と昇降駆動部122とを接続するように設けられている。すなわち、昇降機構120は、アーム121を介して昇降駆動部122によりトッププレート110を昇降させる。
【0044】
不活性ガス供給機構123は、不活性ガス供給管124及び不活性ガス供給源125を有する。不活性ガス供給機構123は、ウェハWの上面側に窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを供給するためのものである。不活性ガス供給管124は、トッププレート110及びアーム121の内部に延在するように設けられている。不活性ガス供給管124の一端は、不活性ガスを供給する不活性ガス供給源125に連結されている。不活性ガス供給管124は、トッププレート110の下面112の中心部に不活性ガス供給口124aを構成している。
【0045】
図2に示すように、アーム121はトッププレート110の上面の略中心で接続していてもよい。これにより、不活性ガス供給口124aがトッププレート110の下面112の中心部に形成されることになるため、不活性ガスをトッププレート110の中心から下方に供給することができ、ウェハWに供給される不活性ガスの流量を周方向に沿って均一にすることができる。
【0046】
また、液処理システム10は、図2に示すように、制御部200を有する。制御部200は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるプロセスコントローラ201を有しており、液処理システム10の各構成部がこのプロセスコントローラ201に接続されて制御される構成となっている。また、プロセスコントローラ201には、工程管理者が液処理システム10の各構成部を管理するためにコマンドの入力操作などを行うキーボードや、液処理システム10の各構成部の可動状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース202が接続されている。さらに、プロセスコントローラ201には、液処理システム10で実行される各種処理をプロセスコントローラ201の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて液処理システム10の各構成部に所定の処理を実行させるための制御プログラムすなわちレシピが格納された記憶部203が接続されている。レシピは記憶部203の中の記憶媒体(記録媒体)に記憶されている。記憶媒体(記録媒体)は、ハードディスクや半導体メモリであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0047】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース202からの指示等にて任意のレシピを記憶部203から呼び出してプロセスコントローラ201に実行させることで、プロセスコントローラ201の制御下で、液処理システム10での所望の処理が行われる。
【0048】
次に、図5を参照し、上記した制御部200により液処理ユニット22を用いて行われる液処理方法及びその作用について説明する。図5は、本実施の形態に係る液処理方法の各工程における囲い部材70の回転数を示すグラフである。
【0049】
本実施の形態に係る液処理方法は、図5に示すように、第1の処理工程(ステップS11)、除去工程(ステップS12)、減速工程(ステップS13)、位置変更工程(ステップS14)、第2の処理工程(ステップS15)、回転停止工程(ステップS16)を有する。
【0050】
第1の処理工程(ステップS11)を行う前に、まず、搬入出ステーション1のキャリア載置部11に載置されたウェハキャリアCから搬送機構15のウェハ保持アーム15aにより1枚のウェハWを取り出し、受け渡しステージ19上の受け渡し棚20の載置部に載置する。この動作を連続的に行う。受け渡し棚20の載置部に載置されたウェハWは、処理ステーション2の搬送機構24のウェハ保持アーム24aにより順次搬送され、いずれかの液処理ユニット22に搬入される。
【0051】
ウェハWが液処理ユニット22に搬入されるとき、トッププレート110は、昇降機構120により、上昇させられている。そして、液処理ユニット22に搬入されたウェハWは、シリンダ機構92aにより受け渡し位置(上方位置)に位置づけられたリフトピンプレート91のリフトピン91a上に載置される。
【0052】
次に、シリンダ機構92aによって、リフトピンプレート91が下方に移動させられてウェハ処理位置に位置づけられる。リフトピンプレート91が下方に移動させられている間に、囲い部材70に設けられた支持ピン72によって、ウェハWの下面が支持される。すなわち、リフトピン91aから支持ピン72に、ウェハWが受け渡される。支持ピン72は、ウェハWを下方より支持する。
【0053】
その後、昇降機構120によって、トッププレート110を、排気・排液部(カップ)100の上面に設けられた開口105を塞ぐように、下降させる。
【0054】
次に、第1の処理工程(ステップS11)を行う。第1の処理工程(ステップS11)では、囲い部材70を回転させる回転数を、第1の回転加速度A1で第1の回転数V1まで加速させる。そして、ウェハWを、囲い部材70の支持ピン72に対するウェハWの相対角度位置が変わらないように、囲い部材70とともに第1の回転数V1で回転させ、回転するウェハWの下面に処理液を供給する。そして、供給された処理液によりウェハWの下面を処理する。
【0055】
回転駆動部80により回転軸62が回転駆動されることによって、ベースプレート61、囲い部材70及び回転カップ71が回転する。具体的には、回転軸62が、モータ83から駆動ベルト82を介してプーリ81に駆動力が付与されることによって、回転駆動される。この結果、囲い部材70に設けられた支持ピン72に支持されているウェハWが回転する。
【0056】
ウェハWが、囲い部材70の支持ピン72に対して周方向に滑る、すなわち相対回転し始めるときの回転加速度を、回転加速度A0とする。第1の処理工程(ステップS11)では、ウェハWを、囲い部材70の支持ピン72に対して周方向に滑らせないように、すなわち囲い部材70の支持ピン72に対する相対角度位置が変わらないように、囲い部材70とともに回転させながら工程を行う。そのため、第1の回転加速度A1は、回転加速度A0よりも小さい。
【0057】
囲い部材70の支持ピン72の材質や形状等を調整することによって、回転加速度A0の値を自在に調整することができるが、回転加速度A0を例えば400rpm/sとすることができる。そして、第1の回転加速度A1を例えば300rpm/sとすることができる。また、第1の回転数V1を例えば1000rpmとすることができる。
【0058】
なお、本実施の形態及び以下の変形例では、回転加速度とは、符号の正負を無視し、絶対値を意味する。すなわち、例えば第1の回転加速度A1が回転加速度A0以上であるとは、第1の回転加速度A1の絶対値が、回転加速度A0の絶対値以上であることを意味する。
【0059】
このとき、ウェハWの下面には、処理液供給機構93の処理液供給管94を介して処理液が供給される。そして、ウェハWの下面に供給された処理液は、図2に示すように、ウェハWが回転することによって発生する遠心力によって周縁外方に向かって移動される。このときの処理液としては、例えば、アンモニア過水SC1、希フッ酸(DHF)のいずれかまたは両方を用いる。
【0060】
ウェハWの上面には、図2に示すように、トッププレート110の下面112の中心部に設けられた不活性ガス供給口124aから窒素ガス等の不活性ガスが供給される。供給された不活性ガスは、ウェハWの上面を経た後、ウェハWとトッププレート110の隙間形成部材113との間の隙間D1を通って、囲い部材70の上方から周縁外方、更に下方へと回り込み、排気・排液部(カップ)100の排気カップ103から排気管104へと流れる。この不活性ガスの気流によって、ウェハWの周縁部に達した処理液が、ウェハWと囲い部材70との間又は囲い部材70と回転カップ71との間から、ウェハWの上面側に回り込むことを防止することができる。
【0061】
また、本実施の形態では、隙間形成部材113が、隙間形成部材113とウェハWの周縁部との間の隙間D1がウェハWの周方向に沿って一定となるように設けられている。従って、ウェハWの上面側を流れる不活性ガスの流れをウェハWの周方向に沿って均一にすることができる。そのため、ウェハWの周縁部の下面に達した処理液が、ウェハWと囲い部材70との間又は囲い部材70と回転カップ71との間から、ウェハWの上面側に回り込むことをより確実に防止することができる。
【0062】
次に、除去工程(ステップS12)を行う。除去工程(ステップS12)では、処理液の供給を停止した状態で、囲い部材70の支持ピン72に対するウェハWの相対角度位置が変わらないように、囲い部材70とともにウェハWを回転させ、処理液を振り切り乾燥することによって、ウェハWの下面から処理液を除去する。
【0063】
なお、本実施の形態では、除去工程を、第1の処理工程の後、位置変更工程の前に行う例について説明する。しかし、除去工程は、実施の形態の第2の変形例で後述するように、第1の処理工程の後であり、かつ、位置変更工程の後であって、第2の処理工程の前に行うものであってもよい。したがって、除去工程は、第1の処理工程と第2の処理工程との間で行うものであってもよい。
【0064】
処理液供給機構93の処理液供給管94を介して供給されていた処理液の供給を停止する。また、引き続き回転駆動部80により回転軸62が回転駆動されることによって、ベースプレート61、囲い部材70及び回転カップ71が回転される。そして、ウェハWの下面に残っている処理液は、ウェハWが回転することによって発生する遠心力によって周縁外方に向かって移動されるため、振り切り乾燥される。
【0065】
また、除去工程(ステップS12)における回転数は、処理液を振り切り乾燥するのに必要な回転数であればよく、限定されないが、例えば第1の処理工程(ステップS11)と同じ第1の回転数V1とすることができる。
【0066】
次に、減速工程(ステップS13)を行う。減速工程(ステップS13)では、囲い部材70を回転させる回転数を、第1の回転加速度A1で減速させる。
【0067】
減速工程(ステップS13)は、その後位置変更工程(ステップS14)及び第2の処理工程(ステップS15)を行うために、いったん囲い部材70を回転させる回転数を減速させる。減速工程(ステップS13)でも、ウェハWを、囲い部材70の支持ピン72に対して周方向に滑らせないように、すなわち囲い部材70の支持ピン72に対する相対角度位置が変わらないように、囲い部材70とともに回転させながら工程を行う。そのため、減速工程(ステップS13)において減速するときの回転加速度は、回転加速度A0よりも小さい例えば第1の回転加速度A1とすることができる。また、減速工程(ステップS13)において減速させるときの回転加速度は、回転加速度A0よりも小さければよく、第1の回転加速度A1と異なる値であってもよい。更に、囲い部材70の回転数は、0rpmまで減速させて回転を停止してもよく、回転を停止させず有限の低い回転数まで減速させるだけでもよい。
【0068】
次に、位置変更工程(ステップS14)を行う。位置変更工程(ステップS14)では、囲い部材70を回転させる回転数を変更することによって、ウェハWを囲い部材70に対して周方向に滑らせる、すなわち相対回転させるのに必要な第2の回転加速度A2で加速させることによって、相対角度位置を変更する。
【0069】
なお、第2の回転加速度A2は、本発明における所定の回転加速度に相当する。また、囲い部材70を回転させる回転数を変更することは、囲い部材70を回転させる回転駆動部80の回転数を変更することを意味する。
【0070】
位置変更工程(ステップS14)では、前述した回転加速度A0以上の第2の回転加速度A2で、囲い部材70の回転数を、次の第2の処理工程(ステップS15)を行う回転数である第2の回転数V2まで加速する。第2の回転加速度A2が回転加速度A0以上であるため、ウェハWが囲い部材70の支持ピン72に対して滑り始める、すなわち相対回転し始める。具体的には、ウェハWの囲い部材70に対する相対角度位置が、回転方向と逆方向にずれるように、滑り始める。すると、支持ピン72に対するウェハWの相対角度位置が、第1の処理工程(ステップS11)において支持ピン72と当接していたために処理液と接触していなかった未処理部分が、支持ピン72と当接しなくなる相対角度位置までずらされる。
【0071】
位置変更工程(ステップS14)においてウェハWが支持ピン72上を滑る、すなわち相対回転するとき、ウェハWに処理液が残留していると、残留している処理液が支持ピン72とウェハWとの間で摺動することによってミストが発生しやすい。また、ウェハWが支持ピン72上を滑る、すなわち相対回転することによって、ウェハWの下面側で発生したミストは、ウェハWの上面側に回り込みやすい。
【0072】
しかしながら、本実施の形態では、除去工程(ステップS12)を行うことによってウェハWの下面から処理液を除去した後、位置変更工程(ステップS14)を行う。従って、ウェハWが支持ピン72上を摺動するときに、処理液のミストの発生を防止することができる。
【0073】
前述したように、回転加速度A0を例えば400rpm/sとすると、第2の回転加速度A2を例えば400rpm/sとすることができる。第2の回転加速度A2を400rpm/sとするときは、相対角度位置のずれを例えば5°とすることができる。1つの支持ピン72の周方向の角度幅は、例えば1°とすることができる。従って、相対角度位置のずれを5°とするときは、位置変更工程(ステップS14)により、第1の処理工程(ステップS11)におけるウェハWの未処理部分が支持ピン72と当接しない相対角度位置までウェハWを滑らせる、すなわち相対回転させることができる。また、第2の回転数V2を例えば第1の回転数V1と同じ1000rpmとすることができる。
【0074】
次に、第2の処理工程(ステップS15)を行う。第2の処理工程(ステップS15)では、囲い部材70の支持ピン72に対するウェハWの相対角度位置が変わらないように、囲い部材70とともに第2の回転数V2で回転するウェハWの下面に処理液を供給する。
【0075】
第1の処理工程(ステップS11)と同様に、回転駆動部80により回転軸62が回転駆動されることによって、ウェハWを下方より支持する囲い部材70が回転され、囲い部材70に設けられた支持ピン72に支持されているウェハWが、支持ピン72に対するウェハWの相対角度位置が変わらないように、回転する。また、第1の処理工程(ステップS11)と同様に、ウェハWの下面には、処理液供給管94を介して処理液が供給される。また、第1の処理工程(ステップS11)と同様に、ウェハWの上面には、トッププレート110の下面112の中心部に設けられた不活性ガス供給口124aから窒素ガス等の不活性ガスが供給される。また、第1の処理工程(ステップS11)と同様に、隙間形成部材113により、ウェハWの周縁部の下面に達した処理液が、ウェハWと囲い部材70との間又は囲い部材70と回転カップ71との間から、ウェハWの上面側に回り込むことをより確実に防止することができる。
【0076】
一方、第2の処理工程(ステップS15)では、第1の処理工程(ステップS11)において支持ピン72と当接していたために処理液と接触していなかった未処理部分が支持ピン72と当接しなくなる相対角度位置までずらされている。そして、その未処理部分は、第2の処理工程(ステップS15)において処理液と接触するため、処理液により処理される。そのため、支持ピン72に起因するウェハWの未処理部分をなくすことができる。
【0077】
次に、回転停止工程(ステップS16)を行う。回転停止工程(ステップS16)では、囲い部材70の回転を停止する。
【0078】
回転駆動部80による回転軸62の回転駆動を停止することによって、囲い部材70の回転を停止し、ウェハWの回転を停止する。また、処理液供給機構93の処理液供給管94を介してのウェハWへの処理液の供給も停止する。
【0079】
なお、第1の処理工程(ステップS11)と同様に、第2の処理工程(ステップS15)の後、回転停止工程(ステップS16)の前に、除去工程(ステップS12)のように、囲い部材70とともにウェハWを回転し、処理液を振り切り乾燥することによって、ウェハWの下面から処理液を除去する工程を行ってもよい。
【0080】
そして、次に、図示しない純水配管から処理液供給機構93の処理液供給管94を介してウェハWに純水を供給して純水リンスを行う。
【0081】
なお、回転停止工程(ステップS16)を行わず、ウェハWを回転させたまま、純水リンスを連続して行ってもよい。
【0082】
次に、回転駆動部80によって回転軸62が高速回転される。この結果、支持ピン72上のウェハWが高速回転され、処理液が振り切り乾燥される。その後、回転駆動部80のモータ83が停止され、支持ピン72上のウェハWの回転も停止される。
【0083】
次に、昇降機構120によって、トッププレート110がウェハWの受け渡し位置よりも上方位置に位置づけられる。その後、シリンダ機構92aによって、リフトピンプレート91が上方位置に移動させられて、ウェハWが受け渡し位置(上方位置)に上昇する。
【0084】
次に、搬送機構24のウェハ保持アーム24aによって、リフトピンプレート91上からウェハWが搬出される。このようにして、一枚のウェハWの処理が終了する。
【0085】
このようにして搬出されたウェハWは、搬送機構24のウェハ保持アーム24aにより液処理ユニット22から搬出され、受け渡しステージ19の受け渡し棚20に載置され、受け渡し棚20から搬送機構15のウェハ保持アーム15aによりウェハキャリアCに戻される。
【0086】
本実施の形態では、除去工程(ステップS12)において、処理液を振り切り乾燥する例について説明した。しかしながら、これに限ることなく、例えば、ウェハWを回転させず、ウェハWの下面側から乾燥ガスを供給して、ウェハWの下面に供給された処理液を除去してもよい。
【0087】
また、本実施の形態では、囲い部材70に設けられている支持ピン72にウェハWの周縁部が載置されることによって、ウェハWが支持される例について説明した。しかしながら、これに限ることなく、例えば、囲い部材70の下端から周縁内方に突出して設けられた支持ピン72にウェハWの周縁部よりも中心側の任意の部分の下面が載置されることによって、ウェハWが支持されてもよい。
(実施の形態の第1の変形例)
次に、図6を参照し、本発明の実施の形態の第1の変形例に係る液処理方法について説明する。図6は、本変形例に係る液処理方法の各工程における囲い部材70の回転数を示すグラフである。
【0088】
本変形例に係る液処理方法は、第1の処理工程の後、減速する際にウェハWの囲い部材70に対するウェハWの相対角度位置を変更する点で、実施の形態に係る液処理方法と相違する。
【0089】
本変形例でも、図1を用いて説明した実施の形態に係る液処理システム10を用いることができる。また、本変形例でも、図2から図4を用いて説明した実施の形態に係る液処理ユニット22を用いることができる。
【0090】
また、本変形例に係る液処理方法は、図6に示すように、第1の処理工程(ステップS21)、除去工程(ステップS22)、位置変更工程(ステップS23)、第2の処理工程(ステップS24)、回転停止工程(ステップS25)を有する。
【0091】
第1の処理工程(ステップS21)及び除去工程(ステップS22)は、それぞれ実施の形態における第1の処理工程(ステップS11)及び除去工程(ステップS12)と同様である。
【0092】
一方、本変形例では、除去工程(ステップS22)の後、位置変更工程(ステップS23)を行う。位置変更工程(ステップS23)では、ウェハWを囲い部材70の支持ピン72に対して周方向に滑らせる、すなわち相対回転させるのに必要な第2の回転加速度A2で、囲い部材70を回転させる回転数を減速させる。すると、ウェハWが囲い部材70の支持ピン72に対して滑り始める。具体的には、ウェハWの囲い部材70に対する相対角度位置が、回転方向と同じ方向にずれるように、滑り始める、すなわち相対回転する。すると、支持ピン72に対するウェハWの相対角度位置が、第1の処理工程(ステップS21)において支持ピン72と当接していたために処理液と接触していなかった未処理部分が、支持ピン72と当接しなくなる相対角度位置までずらされる。
【0093】
なお、第2の回転加速度A2は、本発明における所定の回転加速度に相当する。
【0094】
位置変更工程(ステップS23)においてウェハWが支持ピン72上を滑るとき、すなわち相対回転するとき、ウェハWに処理液が残留していると、残留している処理液が支持ピン72とウェハWとの間で摺動することによってミストが発生しやすい。また、ウェハWが支持ピン72上を滑る、すなわち相対回転することによって、ウェハWの下面側で発生したミストは、ウェハWの上面側に回り込みやすい。しかし、本変形例では、除去工程(ステップS22)を行うことによってウェハWの下面から処理液を除去した後、位置変更工程(ステップS23)を行う。従って、ウェハWが支持ピン72上を滑る、すなわち相対回転するときに、処理液のミストの発生を防止することができる。
【0095】
また、本変形例でも、実施の形態と同様に、第2の回転加速度A2を例えば400rpm/sとすることができ、相対角度位置のずれを例えば5°とすることができる。囲い部材70の回転数は、0rpmまで減速させて回転を停止させてもよく、回転を停止させず有限の低い回転数まで減速させるだけでもよい。
【0096】
次に、第2の処理工程(ステップS24)を行う。第2の処理工程(ステップS24)では、囲い部材70を回転させる回転数を、第1の回転加速度A1で第2の回転数V2まで加速させる。そして、ウェハWを、囲い部材70の支持ピン72に対するウェハWの相対角度位置が変わらないように、囲い部材70とともに第2の回転数V2で回転させ、回転するウェハWの下面に処理液を供給する。
【0097】
第2の処理工程(ステップS24)でウェハWを加速するときは、ウェハWを囲い部材70の支持ピン72に対して周方向に滑らせない、すなわち相対回転させないようにして工程を行う。そのため、第2の処理工程(ステップS24)において加速させるときの回転加速度は、ウェハWを囲い部材70の支持ピン72に対して周方向に滑らせる、すなわち相対回転させるのに必要な回転加速度であり、実施の形態で説明した回転加速度A0よりも小さい例えば第1の回転加速度A1とすることができる。また、第2の処理工程(ステップS24)において加速させるときの回転加速度は、回転加速度A0よりも小さければよく、第1の回転加速度A1と異なる値であってもよい。
【0098】
また、第2の処理工程(ステップS24)で囲い部材70とともに第2の回転数V2で回転するウェハWの下面に処理液を供給するときは、実施の形態における第2の処理工程(ステップS15)と同様にすることができる。
【0099】
次に、回転停止工程(ステップS25)を行う。回転停止工程(ステップS25)は、実施の形態における回転停止工程(ステップS16)と同様である。
【0100】
本変形例でも、第2の処理工程(ステップS24)では、第1の処理工程(ステップS21)において支持ピン72と当接していたために処理液と接触していなかった未処理部分が支持ピン72と当接しなくなる相対角度位置までずらされている。そのため、支持ピン72に起因するウェハWの未処理部分をなくすことができる。
【0101】
本変形例でも、囲い部材70の下端から周縁内方に突出して設けられた支持ピン72にウェハWの周縁部よりも中心側の任意の部分の下面が載置されることによって、ウェハWが支持されてもよい。
(実施の形態の第2の変形例)
次に、図7を参照し、本発明の実施の形態の第2の変形例に係る液処理方法について説明する。図7は、本変形例に係る液処理方法の各工程における囲い部材70の回転数を示すグラフである。
【0102】
本変形例に係る液処理方法は、除去工程の終了する前に位置変更工程を行う点で、実施の形態に係る液処理方法と相違する。
【0103】
本変形例でも、図1を用いて説明した実施の形態に係る液処理システム10を用いることができる。また、本変形例でも、図2から図4を用いて説明した実施の形態に係る液処理ユニット22を用いることができる。
【0104】
また、本変形例に係る液処理方法は、図7に示すように、第1の処理工程(ステップS31)、位置変更工程(ステップS32)、除去工程(ステップS33)、第2の処理工程(ステップS34)、回転停止工程(ステップS35)を有する。
【0105】
第1の処理工程(ステップS31)は、実施の形態における第1の処理工程(ステップS11)と同様である。
【0106】
一方、本変形例では、第1の処理工程(ステップS31)の後、処理液の供給を停止した状態で、位置変更工程(ステップS32)を行う。位置変更工程(ステップS32)では、ウェハWを囲い部材70の支持ピン72に対して周方向に滑らせる、すなわち相対回転させるのに必要な第2の回転加速度A2で、囲い部材70を回転させる回転数を所定の振り切り回転数VRまで加速させる。すると、ウェハWが囲い部材70の支持ピン72に対して滑り始める、すなわち相対回転し始める。具体的には、ウェハWの囲い部材70に対する相対角度位置が、回転方向と逆方向にずれるように、滑り始める。すると、支持ピン72に対するウェハWの相対角度位置が、第1の処理工程(ステップS31)において支持ピン72と当接していたために処理液と接触していなかった未処理部分が、支持ピン72と当接しなくなる相対角度位置までずらされる。
【0107】
なお、第2の回転加速度A2は、本発明における所定の回転加速度に相当する。
【0108】
引続いて、除去工程(ステップS33)を行う。除去工程(ステップS33)では、囲い部材70の支持ピン72に対するウェハWの相対角度位置が変わらないように、囲い部材70とともにウェハWを所定の振り切り回転数VRで回転させ、処理液を振り切り乾燥することによって、ウェハWの下面から処理液を除去する。
【0109】
また、本変形例では、処理液の供給を停止した状態で、ウェハWを回転させながら、位置変更工程(ステップS32)及び除去工程(ステップS33)を連続して行う。そして、位置変更工程(ステップS32)が開始されると同時に、ウェハWからの処理液の振り切り乾燥も開始される。従って、第1の処理工程(ステップS31)の後、除去工程(ステップS33)が開始され、除去工程(ステップS33)が開始される際に、除去工程(ステップS33)とともに位置変更工程(ステップS32)が行われる、とみなすこともできる。
【0110】
位置変更工程(ステップS32)においてウェハWが支持ピン72上を滑るとき、すなわち相対回転するとき、ウェハWに処理液が残留していると、残留している処理液が支持ピン72とウェハWとの間で摺動することによってミストが発生しやすい。また、ウェハWが支持ピン72上を滑る、すなわち相対回転することによって、ウェハWの下面側で発生したミストは、ウェハWの上面側に回り込みやすい。しかし、本変形例では、除去工程(ステップS33)を開始することによってウェハWの下面からの処理液の除去を開始し、処理液の除去を開始する際に位置変更工程(ステップS32)を行う。従って、従来の液処理方法と比較して、ウェハWが支持ピン72上を滑る、すなわち相対回転するときに、処理液のミストの発生を防止することができる。
【0111】
次に、第2の処理工程(ステップS34)を行う。第2の処理工程(ステップS34)では、囲い部材70を回転させる回転数を、第1の回転加速度A1で第2の回転数V2まで減速させる。そして、ウェハWを、囲い部材70の支持ピン72に対するウェハWの相対角度位置が変わらないように、囲い部材70とともに第2の回転数V2で回転させ、回転するウェハWの下面に処理液を供給する。
【0112】
第2の処理工程(ステップS34)でウェハWを減速させるときは、ウェハWを囲い部材70の支持ピン72に対して周方向に滑らせない、すなわち相対回転させないようにして工程を行う。そのため、第2の処理工程(ステップS34)において減速させるときの回転加速度は、ウェハWを囲い部材70の支持ピン72に対して周方向に滑らせる、すなわち相対回転させるのに必要な回転加速度であり、実施の形態で説明した回転加速度A0よりも小さい例えば第1の回転加速度A1とすることができる。また、第2の処理工程(ステップS34)において減速させるときの回転加速度は、回転加速度A0よりも小さければよく、第1の回転加速度A1と異なる値であってもよい。
【0113】
また、第2の処理工程(ステップS34)で囲い部材70とともに第2の回転数V2で回転するウェハWの下面に処理液を供給するときは、実施の形態における第2の処理工程(ステップS15)と同様にすることができる。
【0114】
なお、本変形例では、振り切り回転数VRが第1の回転数V1よりも大きい例について説明した。しかし、しかしながら、これに限ることなく、例えば、振り切り回転数VRが第1の回転数V1よりも小さくてもよい。このときは、位置変更工程(ステップS32)では、回転加速度A0以上の第2の回転加速度A2で、囲い部材70を回転させる回転数を所定の振り切り回転数VRまで減速させる。そして、第2の処理工程(ステップS34)では、囲い部材70を回転させる回転数を、第1の回転加速度A1で第2の回転数V2まで加速させる。そして、ウェハWを、囲い部材70の支持ピン72に対するウェハWの相対角度位置が変わらないように、囲い部材70とともに第2の回転数V2で回転させ、回転するウェハWの下面に処理液を供給する。
【0115】
次に、回転停止工程(ステップS35)を行う。回転停止工程(ステップS35)は、実施の形態における回転停止工程(ステップS16)と同様である。
【0116】
本変形例でも、第2の処理工程(ステップS34)では、第1の処理工程(ステップS31)において支持ピン72と当接していたために処理液と接触していなかった未処理部分が支持ピン72と当接しなくなる相対角度位置までずらされている。そのため、支持ピン72に起因するウェハWの未処理部分をなくすことができる。
【0117】
本変形例でも、囲い部材70の下端から周縁内方に突出して設けられた支持ピン72にウェハWの周縁部よりも中心側の任意の部分の下面が載置されることによって、ウェハWが支持されてもよい。
(実施の形態の第3の変形例)
次に、図8を参照し、本発明の実施の形態の第3の変形例に係る液処理方法について説明する。図8は、本変形例に係る液処理方法の各工程における囲い部材70の回転数を示すグラフである。
【0118】
本変形例に係る液処理方法は、除去工程を行わない点で、実施の形態に係る液処理方法と相違する。
【0119】
本変形例でも、図1を用いて説明した実施の形態に係る液処理システム10を用いることができる。また、本変形例でも、図2から図4を用いて説明した実施の形態に係る液処理ユニット22を用いることができる。
【0120】
また、本変形例に係る液処理方法は、図8に示すように、第1の処理工程(ステップS41)、減速工程(ステップS42)、位置変更工程(ステップS43)、第2の処理工程(ステップS44)、回転停止工程(ステップS45)を有する。
【0121】
第1の処理工程(ステップS41)は、実施の形態における第1の処理工程(ステップS11)と同様である。
【0122】
一方、本変形例では、第1の処理工程(ステップS41)の後、除去工程を行わず、減速工程(ステップS42)から回転停止工程(ステップS45)を行う。減速工程(ステップS42)から回転停止工程(ステップS45)のそれぞれは、実施の形態における減速工程(ステップS13)から回転停止工程(ステップS16)と同様である。また、減速工程(ステップS42)は、処理液の供給を停止した状態で行われる。
【0123】
本変形例では、減速工程(ステップS42)及び位置変更工程(ステップS43)においてウェハWが回転する時間があり、その間にウェハWからの処理液の振り切り乾燥も行われる。
【0124】
位置変更工程(ステップS43)においてウェハWが支持ピン72上を滑る、すなわち相対回転するとき、ウェハWに処理液が残留していると、残留している処理液が支持ピン72とウェハWとの間で摺動することによってミストが発生しやすい。また、ウェハWが支持ピン72上を滑る、すなわち相対回転することによって、ウェハWの下面側で発生したミストは、ウェハWの上面側に回り込みやすい。しかし、本変形例では、減速工程(ステップS42)及び位置変更工程(ステップS43)とともに処理液の振り切り乾燥が行われる。従って、位置変更工程(ステップS43)を開始する際に、従来の液処理方法と比較して、ウェハWが支持ピン72上を滑る、すなわち相対回転するときに、処理液のミストの発生を防止することができる。
【0125】
本変形例でも、第2の処理工程(ステップS44)では、第1の処理工程(ステップS41)において支持ピン72と当接していたために処理液と接触していなかった未処理部分が支持ピン72と当接しなくなる相対角度位置までずらされている。そのため、支持ピン72に起因するウェハWの未処理部分をなくすことができる。
【0126】
本変形例でも、囲い部材70の下端から周縁内方に突出して設けられた支持ピン72にウェハWの周縁部よりも中心側の任意の部分の下面が載置されることによって、ウェハWが支持されてもよい。
【0127】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0128】
10 液処理システム
22 液処理ユニット
70 囲い部材
72 支持ピン
80 回転駆動部
93 処理液供給機構
200 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液により基板の下面を処理する液処理方法において、
回転可能に設けられた、前記基板を下方より支持する支持部に支持されている前記基板を、前記支持部に対する前記基板の相対角度位置が変わらないように、前記支持部とともに回転させ、回転する前記基板の下面に処理液を供給し、供給された処理液により前記基板の下面を処理する第1の処理工程と、
前記第1の処理工程の後、前記支持部を回転させる回転部の回転数を変更することによって、前記相対角度位置を変更する位置変更工程と、
前記位置変更工程の後、前記支持部に支持されている前記基板を、前記相対角度位置が変わらないように、前記支持部とともに回転させ、回転する前記基板の下面に処理液を供給し、供給された処理液により前記基板の下面を処理する第2の処理工程と
を有する、液処理方法。
【請求項2】
前記位置変更工程は、前記回転数を、前記基板を前記支持部に対して周方向に相対回転させるのに必要な所定の回転加速度で加速させることによって、前記相対角度位置を変更するものである、請求項1に記載の液処理方法。
【請求項3】
前記位置変更工程は、前記回転数を、前記基板を前記支持部に対して周方向に相対回転させるのに必要な所定の回転加速度で減速させることによって、前記相対角度位置を変更するものである、請求項1に記載の液処理方法。
【請求項4】
前記第1の処理工程と前記第2の処理工程との間で、処理液の供給を停止した状態で、前記下面から処理液を除去する除去工程を有する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の液処理方法。
【請求項5】
前記除去工程は、前記位置変更工程の前に、前記基板を、前記相対角度位置が変わらないように、前記支持部とともに回転させることによって、前記下面に供給された処理液を振り切り乾燥させるものである、請求項4に記載の液処理方法。
【請求項6】
コンピュータに請求項1から請求項5のいずれかに記載の液処理方法を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項7】
処理液により基板の下面を処理する液処理装置において、
回転可能に設けられ、前記基板を下方より支持する支持部と、
前記支持部を回転させる回転部と、
前記支持部に支持されている前記基板の下面に処理液を供給する処理液供給部と、
前記支持部に支持されている前記基板を、前記回転部により、前記支持部に対する前記基板の相対角度位置が変わらないように、前記支持部とともに回転させ、回転する前記基板の下面に前記処理液供給部により処理液を供給し、供給された処理液により前記基板の下面を処理し、前記下面を処理した後、前記支持部を前記回転部により回転させる回転数を変更することによって、前記相対角度位置を変更し、前記相対角度位置を変更した後、前記支持部に支持されている前記基板を、前記回転部により、前記相対角度位置が変わらないように、前記支持部とともに回転させ、回転する前記基板の下面に前記処理液供給部により処理液を供給し、供給された処理液により前記基板の下面を処理する制御部と
を有する、液処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記回転数を、前記基板を前記支持部に対して周方向に相対回転させるのに必要な所定の回転加速度で加速させることによって、前記相対角度位置を変更するものである、請求項7に記載の液処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記回転数を、前記基板を前記支持部に対して周方向に相対回転させるのに必要な所定の回転加速度で減速させることによって、前記相対角度位置を変更するものである、請求項7に記載の液処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記相対角度位置を変更する前の前記基板の下面を処理した後、前記相対角度位置を変更した後の前記基板の下面を処理する前に、前記処理液供給部による処理液の供給を停止した状態で、前記下面から処理液を除去するものである、請求項7から請求項9のいずれかに記載の液処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記相対角度位置を変更する前に、前記下面から処理液を除去するものであり、処理液を除去する際に、前記基板を、前記回転部により、前記相対角度位置が変わらないように、前記支持部とともに回転させることによって、前記下面に供給された処理液を振り切り乾燥させるものである、請求項10に記載の液処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−243627(P2011−243627A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112041(P2010−112041)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】