説明

火災報知設備

【課題】 実際の様々な状況に応じて適切な表示を行うことができる受信機を備える火災報知設備を提供する。
【解決手段】 複数の地区ごとに設けられた感知器41、41、発信機42と、各地区の感知器41等と所定の回線を介して接続され、全地区の火災監視を行う火災受信機20とを備える火災報知設備10において、受信機20には、各地区ごとに、前記所定の回線の断線および短絡を区別して表示する地区窓70が設けられ、地区窓70は点滅周期を変えることで断線および短絡を区別して表示する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、複数の地区ごとに設けられた端末機器と、これら端末機器を介して全地区の火災を監視する火災受信機とを備える火災報知設備に関する。
【0002】
【従来の技術】建築物等に設けられる火災報知設備は、たとえば防災センター等に設置された火災受信機(以下、受信機ともいう)に対して、火災感知器や人の所定の操作により発報する発信機、あるいは地区音響等を、回線を介して接続して構成される。これら火災感知器、発信機、地区音響等はたとえば1つのフロアーである1地区ごとに設置され、受信機は、地区単位で、火災発生を監視すると共に、火災が発生した際に地区音響等を駆動制御するようになっている。
【0003】受信機には、各地区の状況を表示するため、LED(発光ダイオード)等からなる地区窓が設けられ、感知器や発信機などから各種信号が入力すると、それら信号の種類に応じて点灯あるいは点滅するようになっている。たとえば、1地区の感知器から火災信号が入力すると、その地区に対応する地区窓が「点灯」する。また、感知器が接続された回線が水漏れ・結露等の理由により短絡すると短絡信号が受信機に入力し、あるいは断線すれば断線信号が入力し、これら信号に応じて地区窓は「点滅」するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記地区窓では、短絡信号、断線信号のいずれであっても、同様に「点滅」するだけなので、どちらの故障が発生したのか分からなかった。
【0005】また、従来の受信機における地区窓表示は代表信号により全地区が一体となって表示制御されていたことから、現状を正確に表示しない場合が起こり得た。たとえば、第1の地区から短絡信号が受信機に送られると、第1の地区窓が「点滅」する。次に、第2の地区から火災信号が送られると、第2の地区窓が火災に対応して「点灯」状態で表示されるだけでなく、すでに「点滅」表示している第1の地区窓も「点灯」状態に変わってしまっていた。
【0006】一方、上記とは逆の場合には別の問題が生じた。すなわち、第1の地区から火災信号が入力した後、第2の地区から短絡信号が入力した場合には、火災信号は代表信号に優先して維持されるので第1の地区窓表示が変わることはないが、第2の地区の地区窓は短絡表示される。しかし、このときの第2の地区の短絡現象は、第1の地区で発生した火災を原因とする回線の被覆焼損による可能性が高く、短絡表示で済ませることは正確ではあっても火災の拡大を監視するという点からは適切な表示ではなかった。
【0007】このように従来の火災報知設備の地区窓の表示は、実際の様々な状況に応じて適切に表示されるものではなかった。
【0008】また、前記受信機は、火災信号、短絡信号、および断線信号の電圧の違いによりこれら信号を認識するようになっている。一方、発信機は原理的には短絡信号と同程度の電圧信号を送出するものであるが、短絡信号と区別できないため、回線に抵抗やダイオードを接続して電圧を火災信号レベルにまで上げ、その信号に応じて地区窓の表示を火災信号同様に「点灯」表示にしていた。
【0009】ところで、発信機は、感知器が接続されている回線に感知器と並列に接続されているものであるが、さらに発信機と受信機のみを接続する単独の応答線を介しても信号を受信機に出力し、受信機はこの信号に応じて発信機が作動した旨の表示灯を点灯させるようになっている。このように受信機は、応答線により発信機からの信号であることを認識できるにも拘わらず、地区窓については前述のように代表信号で処理してしまう構成となっていたので、前記応答線からの信号の入力とは無関係に信号処理され、したがって短絡信号とは区別しなければならず、わざわざ抵抗やダイオードを接続するといった状況になっていたのである。このため、その分コストの高い配線構造となっていた。
【0010】また、従来の火災報知設備の中でも比較的構成が簡単なP型といわれるタイプでは、感知器と受信機間の回線については上記のように断線・短絡の監視を行っていたが、地区音響、貯水槽の水量監視やスプリンクラー消火設備の起動などに関わる諸警報、および受信機の作動状況の表示等を行う副受信機それぞれと、受信機とを接続する回線の断線や短絡を監視するものはなかったため、実際に火災が発生したときに、断線等により正常に作動せず防災活動に支障をきたす恐れがあった。
【0011】加えて、これまでのP型の受信機では、前記で挙げたような火災、短絡、断線等の信号の入力や、作業者側の操作等に関連する諸事項の履歴を記憶する機能がなかった。したがって、火災発生時や異常発生時の時刻やそのときの操作手順等について、後から呼び出し解析等することができず、過去の事実を生かして防災活動を改善するといったことはできなかった。
【0012】この発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、コスト面を配慮しなるべく簡単な構造の地区回線を有しつつ、実際の様々な状況に応じて適切な表示を行うことができる受信機を備え、また、感知器回線だけでなく地区音響回線、諸警報線、副受信機線についても断線等を監視し十分な防災活動を行うことができ、さらに履歴情報を記憶し過去の事実を生かしてより有効な防災活動を展開することができる、火災報知設備を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は、たとえば図1、図2に示すように、複数の地区(第1地区I、第2地区II、第3地区III)ごとに設けられた端末機器(感知器41、発信機42)と、各地区の前記端末機器と所定の回線(コモン線、L線)を介して接続され、全地区の火災監視を行う火災受信機(20)とを備える火災報知設備(10)において、前記火災受信機には、各地区ごとに、前記所定の回線の断線および短絡を区別して表示する断線短絡表示手段(地区窓70)が設けられていることを特徴とする。
【0014】請求項1に記載の発明によれば、火災受信機の断線短絡表示手段によって、各地区ごとに所定の回線の断線および短絡が区別して表示されることから、どちらの故障が発生したのか容易に判断できる。
【0015】請求項1に記載の火災報知設備において、「区別して表示」とは、請求項2に記載の発明のように、前記断線短絡表示手段が、表示灯(LED71)であり、該表示灯の点滅周期を変えることで断線および短絡を区別して表示するようにしてもよい。具体的には、断線よりも短絡をより短い周期で点滅させるといったことでよい。請求項2に記載の発明によれば、表示灯点滅の周期により断線・短絡が分かり、特に、1つの地区回線が断線で、同時に別の地区回線が短絡である場合には、点滅周期の違いにより、断線・短絡を明確に区別できる。
【0016】また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の火災報知設備において、例えば図5に示すように、火災受信機には、断線および短絡について、それぞれ異なるエラーコードで表示する文字表示手段(表示器73)が設けられていてもよい。請求項3に記載の発明によれば、1つの地区回線が短絡あるいは断線した場合、あるいは複数の地区回線について同時に短絡あるいは断線の一方のみが発生しているような場合であっても、表示器にエラーメッセージが表示されるので、断線か短絡か容易に確認できる。ここで、文字表示手段に表示されるエラーコードの構成は、たとえば、数字を含むものであったり、アルファベットや日本語の文字が表示されてもよい。
【0017】さらに、請求項1において、請求項2の表示灯と請求項3の文字表示手段を備えていてもよい。
【0018】請求項4に記載の発明は、たとえば図1、図2および図4に示すように、複数の地区ごとに設けられた端末機器(感知器41、発信機42)と、各地区の前記端末機器と所定の回線(コモン線C、L線)を介して接続され、全地区の火災監視を行う火災受信機(20)とを備える火災報知設備(10)において、前記火災受信機には、各地区ごとに状況を表示する地区表示手段(地区窓70)と、各地区の前記所定の回線から出力される各種信号に基づいて、各地区ごとに前記地区表示手段に表示する内容を制御する表示制御手段(表示制御回路120)が設けられていることを特徴とする。
【0019】請求項4に記載の発明によれば、表示制御手段によって、前記所定の回線から出力される各種信号に基づいて、各地区ごとに地区表示手段に表示される内容が制御されることから、従来の代表信号によって全地区の表示内容を決定していた場合と異なり、地区ごとに表示内容を決定するので正確に表示することできる。具体的には、1地区が短絡表示されているとき、他の地区から火災信号が入力した場合、従来のように元々短絡表示されている地区が火災表示になってしまうようなことはなく、短絡表示の状態を保持させることができる。
【0020】また、請求項4に記載の火災報知設備によれば、単に正確に表示するだけでなく、状況に応じて地区ごとにより適切な表示を行うことも可能であり、たとえば、請求項5に記載の発明のように、表示制御手段は、1つの地区から火災信号が入力した後に、他の地区から短絡信号が入力した場合には、前記他の地区の地区表示手段について火災である旨を表示するように構成してもよい。1つの地区から火災信号が入力した後に、他の地区から短絡信号が入力した場合に、この短絡信号は、火災の延焼による回線の被覆焼損である可能性が高いが、請求項5に記載の発明のように、火災である旨の表示をすることで火災の拡大を警告することができ、実際の状況に即した適切な表示となる。ここで、「火災である旨の表示」とは、たとえば、表示灯を点灯させたり、火災である旨のメッセージを表示するといったことである。
【0021】また、請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の火災報知設備において、端末機器として、前記所定の回線に加えて他の線路(A線)を介して火災受信機に対して接続されている発信機(42)を有し、表示制御手段は、前記所定の回線からの信号に加えて、前記他の線路からの信号に基づいて発信機であることを判断することを特徴とする。
【0022】請求項6に記載の発明によれば、たとえば、発信機からの信号が短絡信号と同程度の出力電位であったとしても、表示制御手段は、発信機独自の「他の線路」からの信号にも基づいて発信機からであることを判断することから、従来のように、短絡信号と区別するためにダイオード等を接続するといったことは必要なくなり、より簡単な構造になり低コストで製造できる回線となる。請求項4〜6において、地区表示手段は、LED等による表示灯でもよいし、文字表示を行う表示器でもよいし、これら表示灯や表示器の両方を含むものであってもよい。
【0023】請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか記載の火災報知設備において、たとえば図1、図8に示すように、各地区ごとに設けられ、火災受信機(20)の制御の下で警報を発する地区音響(地区ベル61)と、火災受信機と地区音響とを接続する地区音響回線の断線および短絡を検出する地区音響回線検出手段(断線短絡検出回路130)とを備えることを特徴とする。
【0024】請求項7に記載の発明によれば、地区音響回線検出手段によって、火災受信機と地区音響を結ぶ回線の断線および短絡を検出できることから、実際に火災が発生したときに、断線や短絡により地区音響が正常に作動しないといった事態を回避でき、火災発生時に確実に鳴動できるようになる。
【0025】請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか記載の火災報知設備において、たとえば図1、図9に示すように、前記火災受信機に対して接続され、火災受信機の動作状況を表示する副受信機(90)と、前記火災受信機と前記副受信機とを接続する副受信機回線の断線を検出する副受信機回線検出手段(副受信機断線検出回路140)とを備えることを特徴とする。
【0026】請求項8に記載の発明によれば、副受信機回線検出手段によって、火災受信機と副受信機を結ぶ回線の断線を検出できることから、実際に火災が発生したときに、断線により副受信機が火災受信機側の状態を表示しないといった事態を回避でき、副受信機側の作業者等も火災発生時に確実に火災受信機の状態を表示できる。
【0027】請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか記載の火災報知設備において、たとえば図1、図10に示すように、前記火災受信機の制御の下で防災に関する諸動作を行う各種機器(防災機器111,112)を備え、前記火災受信機には、前記各種機器の動作を警報として表示する防災機器警報表示手段(警報表示灯32c、32d、32f)が設けられ、火災受信機と各種機器とを接続し前記警報に関する信号を送信する警報回線の断線を検出する警報回線検出手段(警報断線検出回路150)を備えることを特徴とする。
【0028】請求項9に記載の発明によれば、警報回線検出手段によって、火災受信機と防災に関する諸動作を行う各種機器を結ぶ回線の断線を検出できることから、これら各種機器の動作が確実に警報表示され、実際に各種防災機器が動作したときに、断線により警報表示されず適切な防災活動ができないといった事態を回避できる。ここで、「防災に関する諸動作を行う各種機器」とは、たとえば、消火用水の貯水槽の水の量が所定量以下になるとその旨の信号を火災受信機に対して出力する貯水槽の水量検出手段や、作動したときに作動信号を警報回線を介して火災受信機に対して出力するスプリンクラー等の消火装置などである。また、「警報表示」とは、表示灯や文字表示器等により表示すればよい。
【0029】請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか記載の火災報知設備において、前記火災受信機の履歴情報を記憶する記憶手段(履歴記憶部25)を備えることを特徴とする。請求項10に記載の発明によれば、火災受信機の履歴情報を記憶する記憶手段を備えていることから、この記憶手段から火災受信機の履歴情報を取り出すことによって、火災発生時などの詳細事項について、後から解析等することかできるので、過去の事実を生かしてより有効な防災活動を展開することができる。
【0030】ここで、「履歴情報」とは、火災受信機の諸活動に関する情報であり、たとえば、火災受信機から各端末機器に対して出力した制御信号についての情報や端末機器から入力された応答信号の情報や、さらには作業者等が操作スイッチ等を介して入力した指示等である。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の火災報知設備の一例である火災報知設備10の構成を示すブロック図であり、該火災報知設備10は、主に火災受信機(受信機)20、端末機器群40、地区ベル群60、および副受信機90とから構成される。火災報知設備10は、たとえば、複数のフロアを有する建築物に設けられて、この建築物の1つのフロアを1つの地区として、建築物全体の火災監視および火災の報知、あるいは消火作業等の防災活動全般を担うものである。
【0032】端末機器群40は、各地区ごとに設置されている端末機器と、これら端末機器を接続する回線(地区回線)からなる。1つの地区は、コモン線CとL1線(またはL2線、あるいはL3線)に、端末機器としての感知器41,41と発信機42が並列に接続されてなる。本明細書中では、便宜的に3つの地区を示し、L1線に接続された地区を第1地区I、L2線に接続された地区を第2地区II、L3線に接続された地区を第3地区IIIとしている。また、L1線、L2線、L3線を区別しないときは、L線と言うこともある。コモン線CとL線が本発明における所定の回線である。コモン線CとL1線(L2線、L3線)は、端末用インターフェース29を介して、火災受信機20に接続されており、火災受信機20は、コモン線CおよびL1線(L2線、L3線)を介して、各端末機器に対して制御信号を出力し、各端末機器からの応答信号を受信するようになっている。
【0033】図1において、感知器41,41は周知の煙型の火災感知器であり、火災を感知すると火災受信機20に対してL1線(L2線、L3線)を介して火災信号を送信する。また、発信機42は押しボタン(図示せず)を備え、居住者等が火災発生に気づいた際にその押しボタンを押すと、火災受信機20に対して火災が発生した旨の信号である発信機信号を送信するものである。各地区の発信機42は、コモン線CとL1線(L2線、L3線)だけでなく、全ての地区を結ぶA線(他の線路)にも接続されており、発信機42が押されると、L1線(L2線、L3線)だけでなく、A線を介して火災受信機20に対して発信機信号を出力するようになっている。符号43は各地区の終端器を示し、後述する図3に示すように抵抗とコンデンサからなり、各地区の断線検出時に信号を送出する部分である。
【0034】なお、平常時、各地区回路のコモン線−L線間には一定の電圧(たとえば、24V)が印加されており、受信機20は、この一定の電圧の変化により、火災信号、水漏れ・結露等による短絡信号、断線信号、発信機信号を区別する。具体的には、感知器41が火災を感知するとコモン線−L線が6Vに近い値にまで電圧が下がり、それが火災信号となる。また、コモン線−L線間が断線すると前記一定の電圧は0Vになり、短絡すると2V程度になる。一方、発信機42の押しボタンが押されたときも、前記一定の電圧が下がり、2V程度の発信機信号を受信機20に送信する。なお、発信機信号と短絡信号は、同程度の電圧の信号であるが、本発明の受信機20は、後述するように、短絡信号または発信機信号が入力すると、さらにA線も監視し、A線の監視結果もふまえて、短絡信号であるか発信機からの信号であるのかを判断するようになっている。
【0035】火災受信機20は、たとえば、建築物の防災センターなどに設置され、火災報知設備10全体を統括・制御するもので、いわゆるP型受信機とよばれるものである。図2には火災受信機20の正面図を示した。火災受信機20は、図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)21と、このCPU21に接続されたROM(Read Only Memory)27、RAM(Random Access Memory)22、表示部28、端末用インターフェース29、ベル用インターフェース30、諸警報用インターフェース31、PC用インターフェース26、履歴記憶部25、音響部24、操作部23とからなる。
【0036】ROM27は、火災受信機20を作動させるための各種制御プログラムや制御データを格納するもので、RAM22は一時的にデータ等を記憶するもので、CPU21は、ROM27内の制御プログラムや制御データにしたがって、RAM22を作業領域としながら、火災受信機20の各動作を制御するようになっている。
【0037】端末用インターフェース29は、端末機器群40の各地区とコモン線CとL線を介して接続され、各地区の端末機器から出力される火災信号、短絡信号、断線信号を図3に示す回路により判別している。図3においては、受信機20のCPU21、端末用インターフェース29と第1地区Iとの接続関係の概略を示した。端末用インターフェース29内のコンパレータOP1、OP2、OP3は、コモン線とL1間の電位差を比較するもので、それらの正相端子には電圧比較のための基準電圧が入力され、負相端子には情報線であるL1線が接続されている。L1線の接点P0には、火災信号、断線信号、あるいは短絡信号のうちのいずれの信号であるかによって異なる電圧が現れる。そして、コンパレータOP1,OP2,OP3により、この接点P0の電圧と前記基準電圧が比較され、その比較結果がCPU21に対して出力される。
【0038】コンパレータOP1,OP2,OP3のうち、コンパレータOP1は回線の断線信号を検出するもの、コンパレータOP2は感知器からの火災信号(発報)を検出するもの、コンパレータOP3は短絡信号を検出するもので、CPU21は、これらコンパレータOP1,OP2,OP3からの出力より、断線・火災・短絡のうちのいずれの信号が入力してきたか判別するようになっている。
【0039】また、図3中のスイッチSW1は、CPU21の制御の下、断線検出のために定期的にパルス電圧を供給するスイッチであり、スイッチSW1が閉じられているときには受信機20からの電源供給により図3の矢印X方向に電流が流れ、開放されたときに断線されていなければ終端器43のコンデンサ43aから放電され逆の矢印Y方向に電流が流れるが断線されていれば電流は流れず、コモン線−L1線間が0Vとなりこの電圧が断線信号となる。なお、図3においては、第1地区Iについてのみ示したが、第2地区II、第3地区IIIについても同様である。
【0040】受信機20の表示部28は、火災報知設備10の現在の状況を表示するためのもので、図2に示すように、火災受信機20の正面に設けられており、第1表示部28a、第2表示部28b、第3表示部28cとからなる。図5には、第2表示部28b、第3表示部28cの詳細を示した。第1表示部28aは、各地区ごとに地区窓(地区表示手段、断線短絡表示手段)70,70…が設けられ、各地区窓70にはそれぞれ表示灯としてのLED71が1個設けられ、各地区の端末機器から火災受信機20に対して信号が入力した際に、LED71が点灯あるいは点滅し、その地区におけるイベントの発生を火災受信機20近傍の作業員等に知らせるようになっている。図2では、便宜的に20個の地区窓70,70…を示している。また、符号70aは、たとえば「1階フロア」等の地区名が記されたフロアプレートである。
【0041】受信機20において、各地区窓70の表示は、図4に示す、表示制御回路(表示制御手段)120によって、地区ごとに制御されるようになっている。表示制御回路120は、CPU21とこれに接続されるバッファーとラッチ回路からなり、バッファI、バッファII、バッファIIIは、それぞれ、第1地区I、第2地区II、第3地区IIIに対応するように設けられており、各地区の現在の状況はこれらバッファーに一時的に保持される。また、ラッチ回路I、ラッチ回路II、ラッチ回路IIIは、それぞれ、第1地区I、第2地区II、第3地区IIIの地区窓表示のためのデータ保持回路であって、新しいデータがCPU21から送られない限り現在のデータを保持するものである。
【0042】CPU21は、1地区、たとえば第1地区Iから図3に示したようにコンパレータOP1,OP2,OP3を介して信号が入力すると、その信号がたとえば短絡信号であると判別する。CPU21は、その結果を一時的にバッファIに保持させ、他地区の状況等も合わせて第1地区Iの表示内容を決定し、そのデータをラッチ回路Iに保持させる。そして、ラッチ回路Iのデータに基づいて第1地区Iの地区窓70のLED71が所定の表示を行うようになっている。表示内容の決定にあたって、CPU21は、原則として、地区ごとに信号を認識し、火災、短絡、断線それぞれを区別して地区窓70上の表示を制御するようになっている。短絡信号の場合には、既に述べたように、A線の監視結果と合わせて、表示形態を決定するようになっている。
【0043】具体的には、本実施の形態では、各地区窓70は、火災信号および発信機信号のときには点灯し、短絡信号のときには0.5秒間に1回の割合で点滅し、断線のときには1秒間に1回の割合で点滅するようになっている。したがって、第1地区Iの地区窓が短絡の「点滅」表示であるときに、第2地区IIから火災信号が入力した場合、従来の代表信号で表示制御を行っていた場合とは異なり、第2地区IIについては火災表示である「点灯」表示となるが、第1地区Iについては点滅状態が維持される。また、第1地区Iの地区窓が断線の「点滅」表示であるときに、第2地区IIから火災信号が入力した場合、第2地区IIについては火災表示である「点灯」表示となるが、第1地区Iについては点滅を中止するようになっている。すなわち、断線発生時にはその地区の火災監視が事実上不可能なため、実火災発生時にはより重要な情報である火災表示のみを行うことにより、火災が発生したことを明確にすることができる。
【0044】以上のように、受信機20は、従来の代表信号による表示制御と異なり、各地区ごとの状況に応じて正確に地区窓表示を行わせるようになっている一方、例外的に、1つの地区からの火災信号の後に別地区から短絡信号が入力した場合には、後から短絡信号が入力した地区の地区窓を火災表示、つまり点灯表示させるようになっている。これは、火災発生の後の短絡は、火災発生によって回線の被覆焼損等によることが考えられ、火災表示とする方が現実的であるとの配慮に基づく。
【0045】第2表示部28bには、火災報知設備10に付属する各種機能が動作中であるか否かを表示するLED群32が設けられている。たとえば、発信機信号が入力すると、地区窓70の点灯に加えて発信機表示灯32bが点灯するようになっており、また、断線・短絡といった異常が起きれば異常表示灯32aが点灯するようになっている。さらに、感知器41(図1)により火災が発生したことが検出されると、火報火災代表灯32eが点灯するようになっている。
【0046】第2表示部28bには、警報音を発する警報ブザー部72aや、電話ジャック73に接続された電話機用の電話スピーカー部72bが設けられている。火災受信機20では、いずれかの地区の地区ベル61(図1R>1)が鳴動すると、警報ブザー部72aからも警報音が発せられるようになっている。
【0047】第3表示部28cには、3桁7セグメントの表示器(文字表示手段)73が設けられており、この表示器73にエラーコード等が表示されるようになっている。エラーコードとしては、たとえば1地区の地区窓70のLEDが断線表示になった場合には「E01」と表示し、短絡表示になった場合には「E02」とする。また、断線、短絡時には、地区窓の点滅表示、表示器73におけるエラーコード表示に加えて、前記警報ブザー部72aから注意音が発せられるようになっている。
【0048】図1の操作部23は火災報知設備10における各種作業や端末機器の復旧等を作業者が指示するための各種スイッチからなるものである。操作部23は、外観上は操作部23単独で設けられているものではなく、図5に示すように、表示部28の第2表示部28bおよび第3表示部28c内に設けられている。すなわち、操作部23は、第2表示部28bに設けられている音響停止スイッチ77、地区音響停止スイッチ78、および第3表示部28cに設けられているスイッチ群33とからなる。
【0049】音響停止スイッチ77は、火災受信機20の警報ブザー部72aの鳴動を停止するもので、地区音響停止スイッチ78は、各地区の地区ベル61(図1)の鳴動を停止するものである。スイッチ群33は、火災報知設備10において行われる各種機能をON/OFFするもので、たとえば、全館(建築物全体)の地区ベルを鳴動させる場合に操作する全館鳴動スイッチ33a等を有する。また、必要に応じて、各スイッチの上には動作中であるか否かを表示するために、表示灯(たとえば表示灯33aa)が設けられている。
【0050】音響部24は、地区ベル61、61…(図1R>1参照)の鳴動を制御するもので、地区ベル群60と音響部24は、ベル用インターフェース30を介して接続されている。
【0051】履歴記憶部25は、本発明の記憶手段であり、火災受信機20に対して各地区回路の端末機器から入力したイベント情報や、操作部23における各種スイッチ操作等、火災受信機20に発生する全ての動作に関する情報(以下、履歴情報とする)をその時刻とともに記録するものである。書き込み可能なデータ項目は約1万点であり、容量を超えると古い順に消去され、常に最新のデータが記憶されるようになっている。履歴記憶部25は、具体的には、火災受信機20内に取り付けられた履歴収集基板80(図6)からなり、図7に示すように、機能的には火災受信機20の火災報知活動とは独立した記憶媒体であると言えるもので、外部のPC(パーソナルコンピュータ)100を接続することによって、履歴収集基板80から火災受信機20の履歴情報をデータとして読み出すことができるようになっている。
【0052】履歴収集基板80には、CPU81、メモリ82、時計部83、コンデンサ84、ディップスイッチ85等が設けられている。CPU81は、火災受信機20から履歴情報を受け取るための通信ポート81aと、外部のPC100に履歴情報のデータを出力するための通信ポート81bとを有し、履歴情報の出入力を制御するものである。火災受信機20から入力する情報は、受信機用インターフェース87,88を介して入力する。なお、通信ポート81aを介しての火災受信機20との通信はクロック同期通信であり、通信ポート81bを介しての外部のPC100との通信は調歩同期通信を採用している。
【0053】メモリ82は、火災受信機20の履歴情報が記憶される領域で、SRAM(static RAM)からなり、火災受信機20の電源が入っている限りデータは保持される。電源が停電等により供給されなくなった場合にも、バックアップ用コンデンサ84により、72時間以上バックアップされるようになっている。時計部83は4桁の7セグメント表示器であり、時刻を計時するもので、±キー86で調整可能になっている。ディップスイッチ85は通信状態を設定するものである。履歴収集基板80には、PC用インターフェース26(図1)が取り付けられ、このPC用インターフェース26に外部PC100を接続することによって、メモリ82に記憶されている履歴情報を、PC100に取り出すことができるようになっている。なお、PC用インターフェース26としては、たとえば、RS232やRS485I/Fが用いられている。
【0054】地区ベル群60は、地区音響回線と該地区音響回線に接続された各地区に設置されている警報用の地区音響である地区ベル61とからなる。地区音響回線は、全ての地区に共通であるベルコモン線BCと1地区ごとのベル回線B1(あるいはB2、B3)とから構成される。これらベルコモン線BCとベル回線B1(B2、B3)は、ベル用インターフェース30を介して、火災受信機20に接続されており、火災受信機20は、ベルコモン線BCとベル回線B1(B2、B3)とを介して、制御信号を出力し地区ベル61を鳴動させるようになっている。
【0055】火災受信機20は、ROM27中に各地区回路とベル回線の1つを連動させるためのデータ(連動データ)を有しており、たとえば、第1地区Iとベル回線B1、第2地区IIとベル回線B2、第3地区IIIとベル回線B3が対応し、第1地区Iが火災を検出すればベル回線B1に接続された地区ベル61、61…が鳴動するようになっている。
【0056】図8に地区音響回線の鳴動および断線・短絡検出のための断線短絡検出手段(地区音響回線検出手段)130の構成を示した。断線短絡検出回路130は、主にコンパレータOP4,OP5、CPU21、終端器62等からなる。図8では、図1に示したベル回線のうち便宜的にベル回線B1のみ示した。他のベル回線B2、B3についても同様である。図1では図示しなかったが、ベルコモン線とベル回線B1からなる回線には、終端器62が設けられている。この終端器62は、前述の終端器43とは異なり、ダイオード62aと抵抗62bとからなる。また、各地区ベル61にはダイオード63が接続されており、このダイオード63により地区ベル61に入る電流の向きが一定方向に定められている。
【0057】図8(a)は、通常の地区ベル61鳴動時の状態である。ベル用インターフェース30内には、リレースイッチr1、r2とこれらスイッチに接続可能な切替部30aが設けられている。これらリレースイッチr1,r2の動作は、CPU21により制御されている。また、ベル用インターフェース30内には、コンパレータOP4,OP5が設けられている。コンパレータOP4,OP5は、ベルコモン線BCとベル回線B1間の電位差を比較するもので、その比較結果をCPU21に出力するようになっている。コンパレータOP4,OP5のうち、コンパレータOP4は断線信号を検出するもので、コンパレータOP5は短絡信号を検出するものである。地区音響回線においても、正常時、ベルコモン線BCとベル回線B1間には24Vの電圧がかかっており、断線時は0Vであり、短絡時は2V程度である。
【0058】ベル鳴動時、切替部30aとリレースイッチr1が接続した状態になっている。また、ベルコモン線BCは基準電圧の電位をとるようになっている。ベル鳴動時、CPU21の制御の下、ベル回線B1に24Vの電圧が供給され、地区ベル61,61が鳴動する。このとき終端器62には、ダイオード62aにより電流が流れない。ベル鳴動状態においては、コンパレータOP4,OP5につながる接点P1は接続されず、コンパレータOP4,OP5による比較出力はない。
【0059】断線・短絡監視時には、図8(b)に示すように、リレースイッチr2と切替部30aが接続する状態に切り替えられる。また、このときリレースイッチr1と接点P1が接続し、コンパレータOP4,OP5とベル回線B1が接続され、ベル回線B1の電位がコンパレータOP4,OP5の負相端子に入力するようになっている。図8(a)とは逆の極性となり、ベルコモン線BCには24Vの電圧がかけられ、ベル回線B1側、すなわちコンパレータOP4,OP5の正相端子には基準電圧が入力するようになっている。ベルコモン線BCに対して24Vの電圧をかけると、地区ベル61には電流が流れ込まないが、終端器62に電流が流れる。断線・短絡といった異常がなければ、コンパレータOP4,OP5の正相端子と負相端子間には電位差が生じないが、断線あるいは短絡が生じれば電位差が生じ、その結果がCPU21に出力され、CPU21は地区音響回線に断線または短絡が発生したことを判別するようになっている。
【0060】副受信機90は、たとえば管理人室に設置され、受信機としての機能はないが、受信機20の動作状態を表示するものである。図9には受信機20と副受信機90間に形成される副受信機回線を示した。副受信機90には、受信機20同様に各地区の状況等や警報を表示するため地区窓等に表示灯が設けられ、これら表示灯を表示させるためにLED発光部91が設けられている。LED発光部91には、n個のダイオードが並列で設けられ、それぞれのダイオードd1…dnに対して、線路I+を介して24Vの電源が供給されている。
【0061】一方、受信機20には、副受信機90の断線検出のために副受信機断線検出回路(副受信機回線検出手段)140が設けられ、該副受信機断線検出回路140は、断線検出部92、検出用電源93、検出用パルス発生部94からなる。前記LED発光部91の各ダイオードとこれら断線検出部92、検出用電源93、検出用パルス発生部94は、線路I1〜Inを介して接続されている。図9には、LED発光部91を構成するダイオードを2個のみ示し、線路I1〜Inについても2本のみ示している。検出用電源93と検出用パルス発生部94からは常時24Vの電位が出力されており、このうち検出用パルス発生部94からの出力はパルス電圧であり、定期的にかつ瞬間的に0Vになる。
【0062】検出用電源93から延びる線路上においては、抵抗R1、R2間の接点P2にトランジスタQ1のベースが接続され、抵抗R2の他端は検出用パルス発生部94から延びる線路に接続されている。トランジスタQ1のエミッタ端子にはダイオードD1が接続され、ダイオードD1の出力端子側には接点P3が設けられている。この接点P3は、抵抗R3を介して線路I1に接続され、抵抗R4を介して検出用パルス発生部94から延びる線路に接続されている。トランジスタQ1〜Qnのベースに電流が流れる、つまりトランジスタQ1〜QnがON状態になる条件は、抵抗R1,R2,R3,R4によって決定される接点P2,P3の電位差により決まるようになっている。断線検出部92は、断線を検出するもので、トランジスタQ1〜QnがON状態になると、それにより断線を検出するようになっている。
【0063】図9の回路においては次のような方法により断線を検出するようになっている。受信機−副受信機間に断線がなく正常な場合、検出用電源93と検出用パルス発生部94の両方から24Vの電源が供給され、線路I+側からも24Vの電源が供給されている状態のとき、受信機−副受信機間に電流は流れないようになっている。ここで、検出用パルス発生部94から0Vのパルスを発生させると、前記接点P2,P3間の電位差により、線路I1〜Inに、視覚的に認識できないくらいLED群91が短く発光する程度に瞬間的に電流が流れ、かつ、トランジスタQ1はON状態にならない。
【0064】一方、線路I+、I1〜Inのどこかに断線がある場合、接点P2、P3間に電位差が生じず、トランジスタQ1のベースに電流が流れ込みON状態になり、断線検出部92により断線が検出される。
【0065】防災機器110は、防災に関する諸動作を行う各種機器であり、たとえば、消火用水の貯水槽の水の量を検知する検知器や、スプリンクラー等の消火装置などであり、前記検知器により水が所定量以下になったことが検出されると、その旨の信号を火災受信機20に出力したり、スプリンクラーが作動したときに作動信号を火災受信機20に出力したりするものである。ここでは、防災機器110から受信機20に対して出力される信号を警報信号という。
【0066】図10には、防災機器110の一例として第1防災機器111、第2防災機器112を例示している。これら第1防災機器111、第2防災機器112は、基準電圧線である警報コモン線KCと情報線である警報線Kからなる警報回線を介して、受信機20の諸警報用インターフェース31に接続されている。警報線Kはさらに複数の線路K1線とK2線に分岐している。一方、受信機20の諸警報用インターフェース31内には、警報コモン線KCと警報線K間に、所定の電圧を印加する電源回路113が設けられている。第1防災機器111あるいは第2防災機器112から警報信号が出力されると、受信機20は、図5に示す警報1表示灯32c、警報2表示灯32d、あるいは警報3表示灯32fを点灯させるようになっている。
【0067】図10には、警報回線とともに、警報回線の断線を検出するための警報断線検出回路(警報回線検出手段)150を示した。警報断線検出回路150は、警報用インターフェース31内のパルス発振回路114、コンパレータOP10,OP11、これらコンパレータOP10,OP11の出力端に設けられたトランジスタQ10,Q11、およびK1線の終端に設けられた終端器115、K2線の終端に設けられた終端器116などからなる。終端器115,116は、それぞれ、コンデンサC11と抵抗R11、コンデンサC12と抵抗R12とからなる。トランジスタQ10,Q11のコレクタ端子は、受信機20のCPU21へ接続されるようになっている。
【0068】コンパレータOP10,OP11は、抵抗R13,R14により生成される断線検出用の基準電圧線である基準線KC’と、K1線およびK2線間の電位を比較するもので、正相端子の入力が負相端子より高いとき正常であり、逆のときは防災機器の作動状態か断線である。
【0069】パルス発振回路114からはパルス電圧が定期的に出力されており、このパルス電圧が抵抗R10を介して、K1線およびK2線に出力される。断線していないときは、終端器115(または116)内のコンデンサC11(またはC12)の影響で、K1線(またはK2線)の電圧は平滑される。K1線(またはK2線)に断線が発生すると、終端器115(または116)がなくなるため、K1線(またはK2線)の電圧はパルス発振回路114からのパルス電圧と同様となり、トランジスタQ10(Q11)がON/OFFを繰り返し、ON信号が受信機20のCPU21に対して出力され、断線が検出される。
【0070】なお、地区音響回線の短絡断線、副受信機回線の断線、あるいは警報回線の断線が検出されると、受信機20は所定の表示を行うようになっており、たとえば地区窓70を点滅させるとともに、表示器73に地区音響回線、副受信機回線、警報回線それぞれの短絡や断線を区別して、「E03」、「E04」、「E05」というようにエラーコードを表示するように構成してもよい。
【0071】図11には、上記構成を有する火災報知設備10における受信機20による、第1地区I〜IIIのいずれかから火災信号等が入力した場合の表示処理のフローチャートを示した。この処理は、たとえば、受信機10の監視動作の始まりとともに開始し、まず、ステップS1において、地区回線からの火災信号が入力したか否か判定する処理が行われる。火災信号が入力していなければステップS2に移行し、入力していればステップS4に移行する。ステップS2においては、短絡信号が入力したか否か判定する処理が行われ、短絡信号が入力していなければステップS3に移行し、入力していればステップS5に移行する。ステップS3においては、断線信号が入力したか否か判定する処理が行われ、断線信号が入力していなければ、ステップS1に戻るようになっている。また、断線信号が入力していれば、ステップS6に移行する。
【0072】ステップS4では、A線を介して発信機信号が入力したか否か判定され、入力していればステップS8に移行する。また、A線からの発信機信号が入力していなければステップS9に移行する。また、ステップS5においてもA線を介して発信機信号が入力したか否か判定され、入力していればステップS8に移行する。入力していなければステップS7に移行する。
【0073】ステップ6では、断線状態であることを示す断線処理が行われ、断線信号を送信してきた地区の地区窓70のLED71を1秒間に1回点滅させるとともに、表示器73にエラーコード「E01」を表示する。ステップS7では、短絡状態であることを示す短絡処理が行われ、短絡信号を送信してきた地区の地区窓70のLED71を0.5秒間に1回点滅させるとともに、表示器73にエラーコード「E02」を表示する。
【0074】ステップS8では、発信機からの発報を示すため発信機処理が行われ、図12にこの発信機処理のサブルーチンのフローチャートを示した。この発信機処理が始まると、まず、発信機信号を送信してきた地区について、既にステップS7の短絡処理が行われ短絡していることを示す表示が行われているか否か判定され、短絡処理されていれば、このサブルーチンを終えてステップS1に戻る。また、短絡処理されていなければ、ステップS11に移行し発信機からの発報があったことを表示する処理が行われ、該当する地区窓70のLED71を点灯させるとともに、発信機表示灯32bを点灯させる。ステップS11の後はステップS1に戻る。
【0075】ステップS9では、火災が発生したことを表示する火災報処理が行われ、火災信号を送信してきた地区窓70のLED71を点灯させるとともに、火報火災代表灯32eを点灯させる。ステップS6、S7、S8、S9の後、ステップS1に戻る。
【0076】以上の火災報知設備10においては、感知器41等が接続された地区回線について、断線を検出したときは地区窓70のLED71を1秒間に1回点滅させるとともに、表示器73にエラーコード「E01」を表示させる。また、短絡を検出したときは地区窓70のLED71を0.5秒間に1回点滅させるとともに、表示器73にエラーコード「E02」を表示させる。
【0077】したがって、1つの地区回線が短絡あるいは断線した場合、あるいは複数の地区回線のいずれについても短絡あるいは断線の一方のみが発生した場合には、地区窓70のLED71を見ただけではどちらの故障が発生したのか判断しにくいが、表示器73においてエラーメッセージが表示されるので、断線か短絡か容易に確認できる。また、1つの地区回線が断線で、別の地区回線が短絡である場合には、地区窓70のLED71の点滅周期の違いにより、点滅周期の遅い地区窓の地区は断線、速い周期の地区窓の地区は短絡が発生したことが容易に分かる。このように各地区ごとに短絡・断線の判断が容易になった。
【0078】また、バッファーやラッチ回路を有する表示制御回路120によって、地区回線からの信号に基づいて、各地区ごとに表示内容が決定されるので、地区ごとに正確に表示することができる。したがって、第1地区Iの地区窓が短絡表示であるときに、第2地区IIから火災信号が入力した場合、従来の代表信号で表示制御を行っていた場合とは異なり、第1地区Iについては短絡表示が維持され、地区ごとに正確に表示することができる。一方、例外的に、1つの地区からの火災信号の後に別地区から短絡信号が入力した場合には、後から短絡信号が入力した地区の地区窓を火災である点灯表示させるようになっているので、実際の状況に即した適切な表示となる。
【0079】加えて、図11でも示したように、表示制御回路120は、短絡信号の場合は、A線の監視結果と合わせて、短絡信号か発信機信号かを判断することから、従来のように短絡信号と発信機信号を区別するためにダイオード等を接続するといったことは必要なくなり、より簡単な構造で低コストで製造できる回線となる。
【0080】以上のように火災報知設備10は、コスト面を配慮しなるべく簡単な構造の地区回線を有しつつも、実際の様々な状況に応じて適切な表示を行うことができる火災受信機20を備える。
【0081】また、火災報知設備10は、断線短絡検出回路130によって、地区ベルの回線の断線・短絡を検出できることから、実際に火災が発生したときに、断線や短絡により地区ベル61…が鳴動しないといった事態を回避でき、火災発生時に確実に火災報知することができる。
【0082】さらに、火災報知設備10は、副受信機断線検出回路140によって、受信機20と副受信機90とを結ぶ回線の断線を検出できることから、実際に火災が発生したときに、断線により副受信機が受信機側の状態を正常に表示しないといった事態を回避でき、確実に受信機の状態を表示できる。
【0083】また、火災報知設備10は、警報断線検出回路150によって、受信機20と防災機器110とを結ぶ回線の断線を検出できることから、実際に防災機器が動作したときに、断線により警報表示されず適切な防災活動ができないといった事態を回避できる。
【0084】さらに、火災受信機20は履歴記憶部25を備え、火災受信機20に対して各地区から入力したイベント情報や、操作部23における各種スイッチ操作等の火災受信機20に発生する動作の全てに関する履歴情報が、その時刻とともに記録されるので、この履歴記憶部25からデータを取り出すことによって、火災発生時や保守点検時の詳細な時刻やそのときの操作手順等について、後から解析等できるので、以後の処理や操作等を改善することができ、このように、過去の事実から諸事項において改善できるようになる。
【0085】なお、本発明の火災報知設備は、上記実施の形態に限定されず、具体的な構成等において適宜変更可能であることは勿論である。たとえば、地区窓の短絡・断線の点滅の間隔は、それぞれ0.5秒間に1回、1秒間に1回でなくてもよく、両者異なった間隔であればよい。また、本発明の火災報知設備には、防火扉等の防排煙機器(図示せず)が接続されており、これら防排煙機器と火災受信機間とを接続する回線についても、図8あるいは図10に示すような断線、短絡検出手段が構成されていてもよい。
【0086】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、実際の様々な状況に応じて適切な表示を行うことができる受信機を備え、コスト面にも配慮した火災報知設備となり、また、感知器回線だけでなく地区音響回線、諸警報回線、副受信機回線についても断線等を監視し十分な防災活動を行うことができ、さらに履歴情報を記憶し過去の事実を生かして有効な防災活動を展開できる火災報知設備となる。具体的には、請求項1に記載の発明によれば、火災受信機の断線短絡表示手段によって、各地区ごとに所定の回線の断線および短絡が区別して表示されることから、どちらの故障が発生したのか容易に判断できる。
【0087】また、請求項2に記載の発明によれば、表示灯点滅の周期により断線・短絡が分かり、特に、1つの地区回線が断線で、同時に別の地区回線が短絡である場合には、点滅周期の違いにより、断線・短絡を明確に区別できる。
【0088】請求項3に記載の発明によれば、1つの地区回線が短絡あるいは断線した場合、あるいは複数の地区回線について同時に短絡あるいは断線の一方のみが発生しているような場合であっても、表示器にエラーメッセージが表示されるので、断線か短絡か容易に確認できる。
【0089】請求項4に記載の発明によれば、表示制御手段によって、前記所定の回線から出力される各種信号に基づいて、各地区ごとに地区表示手段に表示される内容が制御されることから、従来の代表信号によって全地区の表示内容を決定していた場合と異なり、地区ごとに表示内容を決定するので正確に表示することできる。具体的には、1地区が短絡表示されているとき、他の地区から火災信号が入力した場合、従来のように元々短絡表示されている地区が火災表示になってしまうようなことはなく、短絡表示の状態を保持させることができる。
【0090】請求項5に記載の発明のように、1つの地区から火災信号が入力した後に、他の地区から短絡信号が入力した場合に、火災である旨の表示をすることで火災の拡大を警告することができ、実際の状況に即した適切な表示となる。
【0091】請求項6に記載の発明によれば、たとえば、発信機からの信号が短絡信号と同程度の出力電位であったとしても、表示制御手段は、発信機独自の「他の線路」からの信号にも基づいて発信機からであることを判断することから、従来のように、短絡信号と区別するためにダイオード等を接続するといったことは必要なくなり、より簡単な構造になり低コストで製造できる回線となる。
【0092】請求項7に記載の発明によれば、地区音響回線検出手段によって、火災受信機と地区音響を結ぶ回線の断線および短絡を検出できることから、実際に火災が発生したときに、断線や短絡により地区音響が正常に作動しないといった事態を回避でき、火災発生時に確実に鳴動できるようになる。
【0093】請求項8に記載の発明によれば、副受信機回線検出手段によって、火災受信機と副受信機を結ぶ回線の断線を検出できることから、実際に火災が発生したときに、断線により副受信機が火災受信機側の状態を表示しないといった事態を回避でき、副受信機側の作業者等も火災発生時に確実に火災受信機の状態を表示できる。
【0094】請求項9に記載の発明によれば、警報回線検出手段によって、火災受信機と防災に関する諸動作を行う各種機器を結ぶ回線の断線を検出できることから、これら各種機器の動作が確実に警報表示され、実際に各種防災機器が動作したときに、断線により警報表示されず適切な防災活動ができないといった事態を回避できる。
【0095】請求項10に記載の発明によれば、火災受信機の履歴情報を記憶する記憶手段を備えていることから、この記憶手段から火災受信機の履歴情報を取り出すことによって、火災発生時などの詳細事項について、後から解析等することかできるので、過去の事実を生かしてより有効な防災活動を展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の火災報知設備の一例を示すブロック図である。
【図2】図1の火災報知設備に備えられる火災受信機の正面図である。
【図3】図2の火災受信機と第1地区Iとの接続状態の概略を示す図である。
【図4】地区窓に関する表示制御回路のブロック図である。
【図5】図2の火災受信機の表示部の一部を示す拡大図である。
【図6】図2の火災受信機内の履歴収集基板の平面図である。
【図7】図6の履歴収集基板と火災受信機の関係を示す模式図である。
【図8】地区音響回線の断線短絡検出回路を示す図であり、(a)はベル動作時であり、(b)は断線・短絡監視時である。
【図9】副受信機断線検出回路を示す回路図である。
【図10】警報断線検出回路を示す回路図である。
【図11】図1の火災受信機によって行われる、火災信号等が入力した場合の表示処理を示すフローチャートである。
【図12】図11の発信機処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 火災報知設備
20 火災受信機
21 CPU
22 RAM
23 操作部
24 音響部
25 履歴記憶部(記憶手段)
26 PC用インターフェース
27 ROM
28 表示部
29 端末用インターフェース
30 ベル用インターフェース
31 諸警報用インターフェース
40 端末機器群
41 感知器(端末機器)
42 発信機(端末機器)
60 地区ベル群
61 地区ベル(地区音響)
70 地区窓
71 LED
73 表示器
90 副受信機
110 防災機器
120 表示制御回路(表示制御手段)
130 断線短絡検出回路(地区音響回線検出手段)
140 副受信機断線検出回路(副受信機回線検出手段)
150 警報断線検出回路(警報回線検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】複数の地区ごとに設けられた端末機器と、各地区の前記端末機器と所定の回線を介して接続され、全地区の火災監視を行う火災受信機とを備える火災報知設備において、前記火災受信機には、各地区ごとに、前記所定の回線の断線および短絡を区別して表示する断線短絡表示手段が設けられていることを特徴とする火災報知設備。
【請求項2】断線短絡表示手段は表示灯であり、該表示灯の点滅周期を変えることで断線および短絡を区別して表示することを特徴とする請求項1に記載の火災報知設備。
【請求項3】火災受信機には、断線および短絡について、それぞれ異なるエラーコードで表示する文字表示手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の火災報知設備。
【請求項4】複数の地区ごとに設けられた端末機器と、各地区の前記端末機器と所定の回線を介して接続され、全地区の火災監視を行う火災受信機とを備える火災報知設備において、前記火災受信機には、各地区ごとに状況を表示する地区表示手段と、各地区の前記所定の回線から出力される各種信号に基づいて、各地区ごとに前記地区表示手段に表示する内容を制御する表示制御手段が設けられていることを特徴とする火災報知設備。
【請求項5】表示制御手段は、1つの地区から火災信号が入力した後に、他の地区から短絡信号が入力した場合には、前記他の地区の地区表示手段について火災である旨を表示することを特徴とする請求項4に記載の火災報知設備。
【請求項6】端末機器として、前記所定の回線に加えて他の線路を介して火災受信機に対して接続されている発信機を有し、表示制御手段は、前記所定の回線からの信号に加えて、前記他の線路からの信号に基づいて発信機であることを判断することを特徴とする請求項4に記載の火災報知設備。
【請求項7】各地区ごとに設けられ、火災受信機の制御の下で警報を発する地区音響と、火災受信機と地区音響とを接続する地区音響回線の断線および短絡を検出する地区音響回線検出手段とを備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の火災報知設備。
【請求項8】火災受信機に対して接続され、火災受信機の動作状況を表示する副受信機と、火災受信機と副受信機とを接続する副受信機回線の断線を検出する副受信機回線検出手段とを備えることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の火災報知設備。
【請求項9】火災受信機の制御の下で防災に関する諸動作を行う各種機器を備え、火災受信機には、前記各種機器の動作を警報として表示する防災機器警報表示手段が設けられ、火災受信機と各種機器とを接続し前記警報に関する信号を送信する警報回線の断線を検出する警報回線検出手段を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の火災報知設備。
【請求項10】火災受信機の履歴情報を記憶する記憶手段を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の火災報知設備。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図7】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図12】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【図11】
image rotate


【公開番号】特開2001−143179(P2001−143179A)
【公開日】平成13年5月25日(2001.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−320011
【出願日】平成11年11月10日(1999.11.10)
【出願人】(000111074)ニッタン株式会社 (93)
【Fターム(参考)】