説明

無機顔料パターンおよび蛍光体パターン形成用転写フィルム

【課題】高精細な無機パターンを簡便かつ効率的に形成することができる転写フィルムと、該転写フィルムを用いた無機パターンの形成方法とを提供する。
【解決手段】本発明の転写フィルムとしては、支持フィルム上に、レジスト層と、蛍光体層と、無機顔料層とがこの順で積層されたものが好ましい。また、前記転写フィルムの積層膜を、基板上に無機顔料層が当接するように転写して形成し、レジスト層を露光処理した後、現像処理してレジストパターンを顕在化させ、該レジストパターンに対応する無機顔料パターンおよび蛍光体パターンを形成し、焼成処理することにより、無機パターンを簡便かつ効率的に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ部材の製造方法および該製造方法に好適に用いられる転写フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイの大型化およびフラット化への移行に伴い、従来の陰極線管に加えて平板状の蛍光表示体としてプラズマディスプレイパネル(以下「PDP」ともいう。)、フィールドエミッションディスプレイ(以下「FED」ともいう。)などのフラットパネルディスプレイ(以下「FPD」ともいう。)が注目されている。
【0003】
PDPは、透明電極を形成し、近接した2枚のガラス板の間にアルゴンまたはネオンなどの不活性ガスを封入し、プラズマ放電を起こしてガスを光らせることにより、蛍光体を発光させて情報を表示するディスプレイである。一方、FEDは、電子放出方式により様々な呼称があるものの、基本原理としては電界印可によって陰極から真空中に電子を放出させ、その電子を陽極上の蛍光体に照射することにより、蛍光体を発光させて情報を表示するディスプレイである。
【0004】
一方、品質面においてコントラストや色純度を向上させる等の要求が高まっていることに対応し、コントラストを高める構成として、パネルガラスと蛍光体層との間に蛍光体層の色と対応するカラーフィルタ層(無機顔料層)を設ける方法が提案されている(たとえば特許文献3参照。)。このカラーフィルタ層を各色の蛍光体層に対応させてパネルガラスとの間に設けることにより、光の透過率は若干低下するものの、反射率の低下によってコントラスト比を向上できるため、色純度およびコントラストともに格段に向上させることができる。
【0005】
従来、このような無機顔料パターンおよび蛍光体パターンの製造方法としては、無機顔料ペーストをスクリーン印刷して、乾燥し、そしてその上に蛍光体ペーストをスクリーン印刷して、乾燥するという工程を複数回繰り返して形成する方法が一般的に知られている。また、ペーストに感光性を付与して、露光および現像を行いパターン形成する方法も知られている(特許文献4参照)。
【0006】
しかしながら、前記スクリーン印刷法では、工程上のスループットが遅い、パターンの寸法精度が悪い、膜厚管理が難しいなどの問題点がある。また、感光性ペーストを用いる場合には、積層体の膜厚が厚くなると膜の深さ方向への感度が不十分となり、パターン形成性が悪くなるという問題点がある。
【特許文献1】特開昭61−221783号公報
【特許文献2】特開平6−124669号公報
【特許文献3】特開昭64−7457号公報
【特許文献4】特開2004−319095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高精細な無機パターンを簡便かつ効率的に形成することができる転写フィルムと、該転写フィルムを用いた無機パターンの形成方法とに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、支持フィルム上にレジスト層、無機顔料層および蛍光体層が積層された転
写フィルムを用い、該転写フィルムの積層膜を、基板上に無機顔料層が当接するように転写して形成し、レジスト層を露光処理した後、現像処理してレジストパターンを顕在化させ、該レジストパターンに対応する無機顔料層および蛍光体層の積層パターンを形成し、焼成処理することにより、高精細な無機パターンを簡便かつ効率的に形成できることを見出した。
【0009】
本発明の転写フィルムは、無機顔料層、蛍光体層およびレジスト層を有する積層膜が支持フィルム上に形成されていることを特徴とする。
前記転写フィルムは、支持フィルム上に、レジスト層と、蛍光体層と、無機顔料層とがこの順で積層されていることが好ましい。
【0010】
また、前記レジスト層は、(A)アクリル樹脂100重量部と、(B)多官能性モノマー5〜100重量部と、(C)光重合開始剤1〜300重量部とを含量し、かつ、該アクリ
ル樹脂(A)が、カルボキシル基含有エチレン不飽和性単量体由来の構成単位を5〜50
質量%の量で含有することが好ましい。
【0011】
また、本発明の無機パターンの形成方法は、基板上に、該転写フィルムの積層膜を、該積層膜を構成する無機顔料層が基板に当接するように転写して形成する工程と、該積層膜を構成するレジスト層を露光処理してレジストパターンの潜像を形成する工程と、該レジスト層を現像処理してレジストパターンを顕在化させる工程と、該積層膜を構成する蛍光体層および無機顔料層をエッチング処理することにより、レジストパターンに対応する蛍光体層および無機顔料層の積層パターンを形成する工程と、該積層パターンを焼成処理する工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
前記形成方法において、前記レジスト層の現像処理に使用される現像液と、蛍光体層および無機顔料層のエッチング処理に使用されるエッチング液とが、同一組成のアルカリ性溶液であることが好ましい。
【0013】
また、本発明のフラットパネルディスプレイの製造は、前記形成方法により、無機顔料パターンおよび蛍光体パターンを形成する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような形成方法によれば、高精細なパターンの形成が可能となり、表面の均一性に優れた無機顔料パターンと蛍光体パターンとを効率よく形成することができ、また、膜形成材料層(蛍光体層および無機顔料層)が支持フィルム上に形成されてなる複合フィルム(以下、「転写フィルム」ともいう。)は、これをロール状に巻き取って保存することができる点でも有利である。
【0015】
また、レジスト層を単独にした積層フィルムという構造を採ることにより、感光性ペーストを用いる方法よりも感度が高く、パターン形成が良好になる。
また、従来の技術では水現像系のため樹脂にPVAを使用していたが、本発明はアルカリ現像系のためアクリル樹脂を適用できるので、より接着力が強く、基板等との密着性が良好なパターンが形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、転写フィルムおよび該転写フィルムを用いた無機パターンの形成方法に関する。以下、本発明について詳細に説明する。
<転写フィルム>
本発明の転写フィルムは、支持フィルムと、この支持フィルム上に形成された、感光性成分であるレジスト層、蛍光体層および無機顔料層を含む積層膜とを有してなる。後述す
る本発明の無機パターン形成方法には、支持フィルム上に、レジスト層、蛍光体層および無機顔料層がこの順に積層された転写フィルムが好適に用いられる。なお、前記積層膜の表面には保護フィルム層が設けられていてもよい。以下、本発明の転写フィルムの構成要素について説明する。
【0017】
(1)支持フィルム
転写フィルムを構成する支持フィルムは、耐熱性および耐溶剤性を有すると共に可撓性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルムが可撓性を有することにより、ロールコータによってペースト状組成物を塗布することができ、無機顔料層、蛍光体層およびレジスト層をロール状に巻回した状態で保存し、供給することができる。
【0018】
支持フィルムを形成する樹脂としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフロロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロンおよびセルロースなどを挙げることができる。支持フィルムの厚さは、たとえば20〜100μmである。
【0019】
なお、支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましい。これにより、後述する転写工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。また、保護フィルムを設ける場合、支持フィルムと同一のものを用いるか、または、支持フィルムよりも剥離力の小さい(剥離しやすい)ものを用いることが好ましい。
【0020】
(2)無機顔料層
本発明の転写フィルムを構成する無機顔料層は、通常、無機顔料とアルカリ可溶性樹脂とを含有するものである。ここで、「アルカリ可溶性」とは、後述するアルカリ性のエッチング液によって、目的とするエッチング処理が遂行される程度に溶解性を有する性質をいう。
【0021】
このようなアルカリ可溶性樹脂としては、たとえば、アクリル樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ノボラック樹脂およびポリエステル樹脂などを挙げることができる。これらのうち、アクリル樹脂が特に好ましく用いられる。
【0022】
上記アクリル樹脂としては、下記のアルカリ可溶性官能基を有するモノマーと他の共重合性モノマーとの共重合体を挙げることができる。
アルカリ可溶性官能基を有するモノマーとしては、たとえば、
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ケイ皮酸、コハク酸モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなどのカルボキシル基含有モノマー類;
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどの水酸基含有モノマー類;
o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレンなどの水酸基含有モノマー類などが挙げられる。
【0023】
他の共重合性モノマーとしては、たとえば、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル系モノマー類;
ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン類;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物類;
ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ベンジルなどのポリマー鎖の一方の末端に、(メタ)アクリロイル基などの重合性不飽和基を有するマクロモノマーなどが挙げられる。これらは、単独で若しくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
上記のカルボキシル基含有単量体に由来する構成単位を含有する共重合体は、アルカリ溶解性を有し、特に後述する割合で該単量体を用いることにより得られる共重合体は、アルカリ現像液に対して優れた溶解性を有する。したがって、これを樹脂成分として用いた無機顔料層は、エッチング液に対する不溶物の形成が少なく、エッチング処理の際、パターン形成部以外の箇所における地汚れや膜残りなどが発生しにくい。
【0025】
また、この共重合体を樹脂成分とする場合に得られる無機顔料層のパターンは、エッチング液に過剰に溶解することがなく、蛍光体層に対して優れた密着性を示す。
上記カルボキシル基含有単量体と共重合性単量体とを共重合して得られる樹脂の好ましい具体例としては、メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸シクロヘキシル/メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸シクロヘキシル/メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。
【0026】
また、無機顔料層に用いられる樹脂は、側鎖に不飽和結合を有する重合体であってもよい。該重合体は、上述した水酸基含有モノマー類を共重合成分として得られる共重合体に(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネートを反応させて好適に得ることができる。側鎖に光重合性の不飽和結合を持つ樹脂の好ましい具体例として、メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのベースポリマーに2−メタクリロイルオキシエチルエチルイソシアネートまたは2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートを反応させて得られたものが好ましい。
【0027】
上記無機顔料としては、たとえば、Fe、Pb、CdS、CdSe、PbCrO、PbSO、Fe(NOなどの赤色顔料;
Cr、TiO−CoO−NiO−ZnO、CoO−CrO−TiO−Al、Co(PO、CoO−ZnOなどの緑色顔料;
2(AlNaSi10)・Na、CoO−Al などの青色顔料を
挙げることができる。
【0028】
他にも色補正用の無機顔料としては、たとえば、PbCrO−PbSO、PbCrO、PbCrO −PbO、CdS、TiO−NiO−Sbなどの黄色顔料

Pb(Cr−Mo−S)O などの橙色顔料;
Co(POなどの紫色顔料を挙げることができる。
【0029】
無機顔料層には、上記の成分のほかに、他の無機粉体、可塑剤、現像促進剤、接着助剤、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、分散剤、架橋剤、光重合開始剤、光酸発生剤、熱重合開始剤および/または熱酸発生剤などの各種添加剤が任意成分として含
有されていてもよい。
【0030】
特に、無機顔料層には、本発明の転写フィルムの可撓性や転写性を良好に保持するため
に、可塑剤を用いることが好ましい。無機顔料層に使用される可塑剤としては、種々の化合物を用いることができ、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジブチルセバケート、ジブチルジグリコールアジペート、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノオレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレートなどの化合物や、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールアルカン、テトラメチロールアルカン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類やそれらのジカルボン酸変成物;3価以上の多価アルコールのポリアルキレングリコール付加物のポリ(メタ)アクリレート類などの分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物が用いられる。
【0031】
また、無機顔料層は、感光性を有するものであってもよく、その場合、後述するアルカリ現像型感放射線性レジスト組成物を構成する感放射線性成分を添加してもよい。
無機顔料層は、上述したようなアルカリ可溶性樹脂と任意成分とを必要に応じて溶剤に溶解もしくは分散させた組成物(以下、「無機顔料組成物」という)を、たとえば、支持フィルム(保護フィルム)や後述する蛍光体層上に塗布し、乾燥させて得ることができる。
【0032】
(3)蛍光体層
本発明の転写フィルムを構成する蛍光体層は、たとえば、支持フィルム、無機顔料層または後述するレジスト層上に、蛍光体材料を含む蛍光体組成物を塗布し、乾燥させて得ることができる。
【0033】
前記蛍光体材料としては、目的とする形成材料の種類によって異なるが、たとえば、ZnS:Ag、ZnS:Ag+Pigment、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al、Y22S:Eu、Y22S:Eu+Pigment、Gd22S:Tb、Y22
:Tb、Y2SiO5:Ce、ZnS:Cu,Al、Zn2SiO4:Mn、ZnO:Zn、ZnS:Ag+In23、ZnS:[Zn]+In23、ZnS:Cu,Al+In23
(Zn,Cd)S:Ag+In23などが挙げられる。
【0034】
なお、蛍光体組成物を構成する蛍光体材料以外の成分としては、たとえば上記無機顔料組成物に用いられる成分と同一のものが挙げられる。
(4)レジスト層
本発明の転写フィルムに用いられるレジスト層は、通常、(A)樹脂、(B)多官能性モノマーおよび(C)光重合開始剤を含有するレジスト組成物から得られるものである。
【0035】
(A)樹脂
レジスト組成物に用いられる樹脂(A)は、アルカリ現像型の場合にはアルカリ可溶性樹脂である必要があり、たとえば上述した無機顔料層に用いられるアルカリ可溶性樹脂が用いられる。該アルカリ可溶性樹脂としては、アクリル樹脂が好ましい。特に、分子中に少なくとも1個以上のカルボキシル基を有するエチレン不飽和性単量体と、該単量体と共重合可能な共重合性単量体とを共重合して得られるカルボキシル基含有共重合体であることが好ましく、さらに好ましいものとしては、側鎖に不飽和結合を有する重合体が挙げられる。
【0036】
上記のカルボキシル基含有単量体に由来する構成単位を含有する共重合体は、アルカリ溶解性を有し、特に後述する割合で該単量体を用いることにより得られる共重合体は、ア
ルカリ現像液に対して優れた溶解性を有するものとなる。したがって、これを樹脂成分として用いた感光性レジスト組成物は、アルカリ現像液に対する未溶解物の生成が少ないものとなるため、現像処理においてレジストパターン形成部以外の個所における地汚れや膜残りなどが発生しにくい。
【0037】
また、この共重合体を樹脂成分とする場合に得られるレジストパターンは、アルカリ現像液に過剰に溶解することがなく、蛍光体層に対して優れた密着性を有する。
樹脂(A)におけるカルボキシル基含有単量体の共重合割合は、単量体全量に対して5〜50質量%、特に、10〜40質量%であることが好ましい。カルボキシル基含有単量体の共重合割合が5質量%未満の場合には、得られるレジスト組成物は、アルカリ現像液に対する溶解性が低くなる傾向がある。一方、カルボキシル基含有単量体の共重合割合が50質量%を超える場合には、蛍光体層に対する密着性が悪くなり、現像時にレジストパターンが蛍光体層から脱落する傾向がある。
【0038】
このような樹脂(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、単に「GPC」という。)(移動相:テトラヒドロフラン)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「重量平均分子量」という。)が3,000〜300,000、特に、5,000〜200,000であることが好ましい。
【0039】
このような分子量を有する樹脂を用いることによって、現像性の高いレジスト組成物が得られ、これにより、シャープなパターンエッジを有するレジストパターンを形成することができる。
【0040】
(B)多官能性モノマー
多官能性モノマー(B)としては、多官能性(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。好ましい具体例としては、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの2官能以上の多官能アクリレート類、およびこれらのオリゴマー、エチレンオキシド変性物、プロピレンオキシド変性物が挙げられる。
【0041】
これらの中で、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートを用いた場合、レジストパターンの強度が高く、パターン形成部以外での地汚れや膜残りなどが発生しにくい点で特に好ましい。
【0042】
上記多官能性(メタ)アクリレートの分子量としては、100〜2,000であることが好ましい。
多官能性モノマー(B)の使用割合は、樹脂(A)100重量部に対して、通常、5〜100重量部、好ましくは10〜70重量部である。この割合が5重量部未満である場合には、レジストパターン強度が不十分なものとなりやすい傾向がある。一方、この割合が100重量部を超える場合には、アルカリ解像性が低下したり、レジストパターン形成部以外の地汚れや膜残りなどが発生する傾向がある。
【0043】
(C)光重合開始剤
本発明における光重合開始剤の具体例としては、ベンジル、ベンゾイン、カンファーキノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−〔4’−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2
−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどのカルボニル化合物;アゾイソブチロニトリル、4−アジドベンズアルデヒドなどのアゾ化合物もしくはアジド化合物;メルカプタンジスルフィドなどの有機硫黄化合物;ベンゾイルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、p−メンタンハイドロパーオキシドなどの有機パーオキシド;1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−(2−フラニル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−(5−メチルフラニル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(3
,4ジメトキシフェニル)]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリア
ジン、2−メトキシフェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、または2−(2−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどのトリハロメタン類などを挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
この感放射線性成分のアルカリ現像型感放射線性レジスト組成物における含有割合としては、アルカリ可溶性樹脂100質量部当たり、通常1〜300重量部であり、好ましくは10〜200質量部である。
【0045】
(D)溶剤
本発明で用いられるレジスト組成物には、適当な流動性および可塑性、または良好な膜形成性を付与するために、通常、溶剤が含有される。
【0046】
レジスト組成物に含有される溶剤としては、特に制限されるものではなく、たとえば、エーテル類、エステル類、エーテルエステル類、ケトン類、ケトンエステル類、アミド類、アミドエステル類、ラクタム類、ラクトン類、スルホキシド類、スルホン類、炭化水素類またはハロゲン化炭化水素類などを挙げることができる。
【0047】
このような溶剤の具体例としては、テトラヒドロフラン、アニソール、ジオキサン、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、酢酸エステル類、ヒドロキシ酢酸エステル類、アルコキシ酢酸エステル類、プロピオン酸エステル類、ヒドロキシプロピオン酸エステル類、アルコキシプロピオン酸エステル類、乳酸エステル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、アルコキシ酢酸エステル類、環式ケトン類、非環式ケトン類、アセト酢酸エステル類、ピルビン酸エステル類、N,N−ジアルキルホルムアミド類、N,N−ジアルキルアセトアミド類、N−アルキルピロリドン類、γ−ラクトン類、ジアルキルスルホキシド類、ジアルキルスルホン類、ターピネオールまたはN−メチル−2−ピロリドンなどを挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
該レジスト組成物における溶剤の含有割合としては、適当な流動性および可塑性、または良好な膜形成性が得られる範囲内において適宜選択することができる。
本発明で用いられるレジスト組成物には、任意成分として、増感剤、現像促進剤、接着助剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、フィラー、蛍光体、顔料および/または染料などの各種添加剤が含有されていてもよい。
【0049】
(5)転写フィルムの製造方法
本発明の転写フィルムの製造方法の好ましい製造方法としては、まず、支持フィルム上にレジスト組成物を塗布してレジスト層を形成し、次いで該レジスト層の上に蛍光体組成
物を塗布により形成し、該蛍光体層の上に無機顔料層組成物を塗布して無機顔料層を形成した後に、三層積層膜を形成する方法が挙げられる。無機顔料層の上には保護フィルムを重ね合わせてもよい。
【0050】
また、保護フィルム上に無機顔料層組成物を塗布して無機顔料層を形成し、次いで当該無機顔料層の上に蛍光体組成物を塗布して蛍光体層を形成した後、当該蛍光体層の上にレジスト組成物を塗布してレジスト層を形成し、該レジスト層の上に支持フィルムを重ね合わせて転写フィルムを製造してもよい。
【0051】
また、保護フィルム上に無機顔料層および蛍光体層を形成し、支持フィルム上にレジスト層を形成し、蛍光体層表面とレジスト層表面とを重ね合わせて圧着する方法によっても、好適に形成することができる。あるいは、蛍光体層をレジスト層の上に蒸着し、無機顔料層表面と蛍光体層表面とを圧着させても、好適に形成することができる。
【0052】
レジスト組成物、無機顔料層組成物および蛍光体層組成物を塗布する方法としては、膜厚の均一性に優れた塗膜が効率よく形成されることを必要とする。具体的な塗布方法としては、ロールコータによる塗布方法、ドクターブレードによる塗布方法、カーテンコーターによる塗布方法、ワイヤーコーターによる塗布方法あるいはグラビアコーターによる塗布方法などを好ましいものとして挙げることができる。
【0053】
塗膜の乾燥条件としては、たとえば、50〜150℃で0.5〜30分間程度であり、乾燥後における溶剤の残存割合(無機粉体含有樹脂層中の含有率)は、通常2質量%以内である。
【0054】
<無機パターンの形成方法>
本発明の無機パターン(無機顔料パターンおよび蛍光体パターン)の形成方法は、〔1〕積層膜の転写工程、〔2〕レジスト層の露光工程、〔3〕レジスト層の現像工程、〔4〕蛍光体層および無機顔料層のエッチング工程および〔5〕焼成工程を含む。
【0055】
〔1〕積層膜の転写工程
必要に応じて使用される転写フィルムの保護フィルム層を剥離した後、基板の表面に、無機顔料層の表面が当接されるように転写フィルムを重ね合わせ、この転写フィルムを加熱ローラなどにより熱圧着した後、支持フィルムを剥離除去する。これにより、基板の表面上に無機顔料層、蛍光体層およびレジスト層がこの順に密着して積層された状態となる。転写条件としては、たとえば、加熱ローラの表面温度が80〜140℃、加熱ローラによるロール線圧が1〜5kg/cm 、加熱ローラの移動速度が0.1〜10.0m/分
である。基板は予熱されていてもよく、たとえば40〜100℃で予熱されていてもよい。基板としては、たとえば、ガラス、セラミック、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族アミド、ポリアミドイミドまたはポリイミドなどからなる板状部材が挙げられる。また、該基板は平滑であっても曲面であってもよく、たとえば、無機粉体を上記板状部材表面に焼結させて得られた部材などであってもよい。
【0056】
〔2〕レジスト層の露光工程
レジスト層の表面に、露光用マスクを介して、紫外線などの放射線を選択的照射(露光)して、レジストパターンの潜像を形成する。使用される放射線照射装置は、前記フォトリソグラフィー法で使用されている紫外線照射装置、半導体または液晶表示装置を製造する際に使用されている露光装置など、特に限定されない。
【0057】
〔3〕レジスト層の現像工程
露光されたレジスト層を現像処理することにより、レジストパターン(潜像)を顕在化
させる。現像処理条件としては、レジスト層の種類などに応じて、現像液の種類、組成、濃度、現像時間、現像温度、現像方法(たとえば、浸漬法、揺動法、シャワー法、スプレー法またはパドル法)または現像装置を適宜選択して設定することができる。
【0058】
この現像工程により、レジスト層残留部とレジスト層除去部とから構成されるレジストパターンが形成される。
このレジストパターンは、次工程(エッチング工程)でエッチングマスクとして作用するものであり、レジスト残留部の構成材料(光硬化されたレジスト)は、蛍光体層および無機顔料層の構成材料よりもエッチング液に対する溶解速度が小さいことが必要である。
【0059】
現像工程には、一般にアルカリ現像液が使用される。アルカリ現像液の有効成分としては、たとえば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、アンモニアなどの無機アルカリ性化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミンまたはエタノールアミンなどの有機アルカリ性化合物などを挙げられる。これらのアルカリ現像液は、前記アルカリ性化合物の1種または2種以上を水などに溶解させることにより調整することができる。アルカリ性現像液におけるアルカリ性化合物の濃度は、通常0.001〜10質量%であり、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0060】
なお、アルカリ現像液による現像処理がなされた後は、通常、水洗処理が施される。
〔4〕蛍光体層および無機顔料層のエッチング工程
蛍光体層と無機顔料層とをエッチング処理し、レジストパターンに対応する蛍光体層および無機顔料層の積層パターンを形成する。
【0061】
すなわち、蛍光体層および無機顔料層のうち、レジストパターンのレジスト除去部に対応する部分がエッチング液に溶解されて選択的に除去される。さらにエッチング処理を継続すると、蛍光体層および無機顔料層におけるレジスト除去部に対応する部分に基板表面が露出する。これにより、残留部と除去部とから構成される蛍光体層と無機顔料層との積層パターンが形成される。
【0062】
本工程においては、レジスト除去部に対応する部分の無機顔料層のみがエッチング液に溶解され、蛍光体層の該当部分が剥離除去されてパターンが形成されるものであってもよい。
【0063】
また、エッチング処理条件としては、蛍光体層および無機顔料層の種類などに応じて、エッチング液の種類、組成、濃度、処理時間、処理温度、処理方法(たとえば、浸漬法、揺動法、シャワー法、スプレー法またはパドル法など)および処理装置などを適宜選択して設定することができる。
【0064】
エッチング液は、アルカリ性溶液であることが好ましい。これにより、無機顔料層および蛍光体層に含有されるアルカリ可溶性樹脂を容易に溶解除去することができる。エッチング液に現像工程で使用した現像液と同一の溶液を使用することができるようにレジスト層、蛍光体層および無機顔料層の種類などを選択すれば、現像工程とエッチング工程とを連続的に実施することが可能となり、簡便かつ効率的にパターンを形成することができる。
【0065】
なお、アルカリ性溶液によるエッチング処理がなされた後は、通常、水洗処理が施される。
また、エッチング液として、無機顔料層、蛍光体層およびレジスト層のバインダーを溶解することのできる有機溶剤を使用することもできる。このような有機溶剤としては、レジスト層を構成するものとして例示した溶剤を挙げることができる。
【0066】
有機溶剤によるエッチング処理がなされた後は、必要に応じて貧溶媒によるリンス処理が施される。
露光、現像およびエッチングの工程は、使用する顔料や蛍光体の各色に応じて工程が必要となる。すなわち、たとえば、赤・青・緑の三色のパターンを形成する際は、転写フィルムも三種類必要となり、それぞれについて転写、露光およびエッチングを行う必要がある。
【0067】
なお、エッチング処理後にレジスト残留部の一部または全部が残留していても、該レジスト残留部は、次の焼成工程で除去される。
〔5〕焼成工程
蛍光体層および無機顔料層のパターンを焼成処理して無機顔料パターンおよび蛍光体パターンを形成する。これにより、レジスト層、蛍光体層および無機顔料層の有機物質が焼失して、基板の表面に無機顔料パターンおよび蛍光体パターンが形成される。
【0068】
ここに、焼成処理の温度としては、有機物質が焼失される温度であることが必要であり、通常、450℃〜550℃付近である。また、焼成時間は、通常10〜90分間である。
【0069】
〔実施例〕
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」は「質量部」を示す。また、重量平均分子量(Mw)は、GPC「商品名HLC−802A」(東ソー株式会社製)により測定したポリスチレン換算の平均分子量である。
【実施例1】
【0070】
(1)レジスト組成物の調製:
アルカリ可溶性樹脂としてメタクリル酸ベンジル/メタクリル酸=75/25(重量%)共重合体(Mw=30,000)60部、多官能性モノマーとしてトリプロピレングリコールジアクリレート40部、光重合開始剤(感放射線性成分)として2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン5部および溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部を混練りした後、カートリッジフィルター(2μm径)でフィルタリングすることにより、レジスト組成物を調製した。
【0071】
(2)蛍光体層組成物の調製:
青色蛍光体粉末としてZnS:Ag粉末100部、アルカリ可溶性樹脂としてメタクリル酸
2−エチルヘキシル/メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル/メタクリル酸/コハク酸モノ(2−メタクリロイロキシエチル)=40/20/20/20(質量%)共重合体(Mw=50,000)60部、その他任意成分としてオレイン酸1部およびジ−2−エチルヘキシルアゼレート40部、ならびに溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル100部を混練りした後、カートリッジフィルター(2μm径)でフィルタリングすることにより、蛍光体層組成物を調製した。
【0072】
(3)無機顔料層組成物の調製:
青色無機顔料粉末としてCoO−Al100部、アルカリ可溶性樹脂としてメタクリル酸2−エチルヘキシル/メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル/メタクリル酸/コハク酸モノ(2−メタクリロイロキシエチル)=40/10/25/25(質量%)共重合体(Mw=30,000)60部、その他任意成分としてオレイン酸1部およびジ−2−エチルヘキシルアゼレート40部、ならびに溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル100部を混練りした後、カートリッジフィルター(2μm径)でフィルタリングすることにより、無機顔料層組成物を調製した。
【0073】
(4)転写フィルムの作製:
下記(イ)〜(ニ)の操作により、無機顔料層、蛍光体層およびレジスト層を積層してなる積層膜が支持フィルム上に形成されてなる本発明の転写フィルムを作製した。
(イ)(3)で調製した無機顔料層組成物を膜厚38μmのPETフィルムよりなる保護フィルム上にブレードコーターを用いて塗布し、塗膜を100℃で3分間乾燥して溶剤を除去し、無機顔料層を保護フィルム上に形成した。
(ロ)(イ)で形成した無機顔料層上に蛍光体組成物をブレードコーターを用いて塗布し、塗膜を100℃で3分間乾燥して溶剤を除去し、蛍光体層を無機顔料層上に形成した。(ハ)(1)で調製したレジスト組成物を膜厚38μmのPETフィルムよりなる支持フィルム上にブレードコーターを用いて塗布し、塗膜を100℃で3分間乾燥して溶剤を除去し、厚さ10μmのレジスト層を支持フィルム上に形成した。
(ニ)(ロ)で作製した蛍光体層と、レジスト層との表面が当接されるよう両フィルムを重ね合わせ、加熱ローラで熱圧着した。圧着条件としては、加熱ローラの表面温度を90℃、ロール圧を2.5kg/cm、加熱ローラの移動速度を0.5m/分とした。これにより、三層からなる積層膜が支持フィルムと保護フィルムの間に形成されてなる転写フィルムを作製した。
【0074】
(5)積層膜の転写工程:
(4)で得られた転写フィルムの保護フィルムを剥離して、ガラス基板の表面に転写フィルムの無機顔料層の表面が当接されるよう転写フィルムを重ね合わせ、加熱ローラに熱圧着した。圧着条件は、加熱ローラの表面温度を90℃、ロール圧を2.5kg/cm、加熱ローラの移動速度を0.5m/分とした。これにより、転写フィルムはガラス基板の表面に転写されて密着した状態とした。
【0075】
(6)レジスト層の露光工程および現像工程:
上記(5)においてガラス基板上に形成された積層膜中のレジスト層に対して、支持フィルム上より露光用マスク(100μm角のドットパターン)を介して、超高圧水銀灯により、i線(波長365nmの紫外線)を400mJ/cm2照射した。レジスト層上の
支持フィルムを剥離して、露光処理されたレジスト層に対し、0.3質量%の炭酸ナトリウム水溶液(30℃)を現像液として、シャワー法によるレジスト膜の現像処理を30秒間行った。
【0076】
これにより、紫外線が照射されていない未硬化のレジストが除去され、レジストパターンが形成された。レジストパターンは、パターン形状が均一で、パターンエッジの直線性に優れた形状が良好なものであった。
【0077】
(7)蛍光体層および無機顔料層のエッチング工程:
上記(5)の工程の後連続して、0.3質量%の炭酸ナトリウム水溶液(30℃)をエッチング液として、シャワー法によるエッチング処理を60秒間行った。次いで、超純水による水洗処理および乾燥処理を行った。これにより、無機顔料パターンおよび蛍光体パターンが形成された。同様の方法で赤色および緑色の転写フィルムを作成し、各色のパタ
ーンを形成した。
【0078】
(8)焼成工程:
無機顔料パターンおよび蛍光体パターンが形成したガラス基板を焼成炉内に入れ、大気雰囲気下、500℃で10分間にわたり焼成処理を行った。これにより、ガラス基板の表面の無機顔料層および蛍光体層にドットパターンが形成された。
【0079】
(9)パターンの評価:
形成したドットパターンは、亀裂や欠けがなく、膜厚均一性および寸法精度に優れたものであった。
【0080】
〔比較例1〕
(1)無機顔料層の形成
実施例で使用したものと同じガラス基板の表面に、スクリーン印刷をして乾燥させた後、無機顔料パターンを印刷することにより無機顔料層を形成した。スクリーン印刷のため、寸法精度が悪く、一部パターンが形成されていないところもあった。
【0081】
(2)蛍光体層の形成
無機顔料層上にスクリーン印刷をして乾燥させた後、蛍光体パターンを印刷することにより形成した。スクリーン印刷のため寸法精度が悪く、一部パターンが形成されていないところもあった。
【0082】
(3)パターンの焼成工程:
パターンが形成されたガラス基板を実施例と同じ焼成炉内に入れ、大気雰囲気下、500℃で10分間にわたり焼成処理を行った。これにより、ガラス基板の表面に無機顔料層と蛍光体層のドットパターンが形成された。
【0083】
(4)パターンの評価:
形成したドットパターンは、亀裂や欠けが多いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】一般的なPDPを示す模式的断面図である。
【図2】一般的なFEDを示す説明用断面図である。
【符号の説明】
【0085】
1 ガラス基板
2 ガラス基板
3 隔壁
4 透明電極
5 バス電極
6 アドレス電極
7 蛍光体
8 誘電体層
9 誘電体層
10 保護膜
11 隔壁
201 ガラス基板
202 ガラス基板
203 絶縁層
204 透明電極
205 エミッタ
206 カソード電極
207 蛍光体
208 ゲート
209 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機顔料層、蛍光体層およびレジスト層を有する積層膜が支持フィルム上に形成されていることを特徴とする、転写フィルム。
【請求項2】
前記支持フィルム上に、レジスト層と、蛍光体層と、無機顔料層とがこの順で積層されていることを特徴とする、請求項1記載の転写フィルム。
【請求項3】
前記無機顔料層、蛍光体層およびレジスト層の各層がアクリル樹脂を含有することを特徴とする、請求項1記載の転写フィルム。
【請求項4】
前記レジスト層が、(A)アクリル樹脂100重量部と、(B)多官能性モノマー5〜100重量部と、(C)光重合開始剤1〜300重量部とを含量し、かつ、
該アクリル樹脂(A)が、カルボキシル基含有エチレン不飽和性単量体由来の構成単位
を5〜50質量%の量で含有することを特徴とする、請求項1記載の転写フィルム。
【請求項5】
基板上に、請求項2に記載の転写フィルムの積層膜を、該積層膜を構成する無機顔料層が基板に当接するように転写して形成する工程と、
該積層膜を構成するレジスト層を露光処理してレジストパターンの潜像を形成する工程と、
該レジスト層を現像処理してレジストパターンを顕在化させる工程と、
該積層膜を構成する蛍光体層および無機顔料層をエッチング処理することにより、レジストパターンに対応する蛍光体層および無機顔料層の積層パターンを形成する工程と、
該積層パターンを焼成処理する工程と
を含むことを特徴とする無機パターンの形成方法。
【請求項6】
前記レジスト層の現像処理に使用される現像液と、蛍光体層および無機顔料層のエッチング処理に使用されるエッチング液とが、同一組成のアルカリ性溶液であることを特徴とする、請求項5に記載の無機パターンの形成方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の無機パターンの形成方法により、無機顔料パターンおよび蛍光体パターンを形成する工程を含むことを特徴とする、フラットパネルディスプレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−74014(P2008−74014A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257705(P2006−257705)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】