説明

熱処理装置

【課題】処理対象である複数の基板が多段に配置される熱処理装置であって、プロセスガスの温度の差を基板間で低減することにより処理の均一性を改善することができ、基板到達前にプロセスガスが分解するのを抑制することが可能な熱処理装置を提供する。
【解決手段】複数の基板を多段に支持する支持体;前記支持体を内部に収容可能な反応管であって、該反応管の側部に設けられ前記反応管の内部にガスを供給する複数のガス供給管と、該複数のガス供給管の対向位置からずれて設けられ前記ガスを排気する排気部とを有する当該反応管;及び前記反応管の内部に収容された前記基板を加熱する第1の加熱部であって、該第1の加熱部の下端から上端まで延び、前記複数のガス供給管が通り抜けられるスリットを有し、該スリット以外の内面が前記反応管の側部に面する第1の加熱部;を備える熱処理装置が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハなどの基板を処理する熱処理装置、特にバッチタイプの熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、複数の基板を所定の間隔で配置し、一括して処理するバッチタイプの熱処理装置が用いられる。このような熱処理装置は、下部が開口した反応管と、反応管内部に配置可能で、複数枚の基板を所定の間隔で保持するウエハ支持部と、反応管の外側に配置され、反応管内の基板を加熱する外部ヒータとを備える。また、反応管内には下部の開口からウエハ支持部に沿って上へ延びるガス供給ノズルが設けられている。
【0003】
反応管内に、基板が支持されるウエハ支持部を搬入し、外部ヒータにより基板を加熱しつつ、ガス供給ノズルからプロセスガスを流すことにより、プロセスガスに応じた処理が基板に対して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−068214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような熱処理装置において、ウエハ支持部の上端より高い位置にまでガス供給ノズルが延びており、その先端からプロセスガスが供給される場合には、ウエハ支持部の下端側でプロセスガスが涸渇してしまい、上端側の基板と下端側の基板との間で処理の均一性が悪化するおそれがある。そこで、長さの異なる複数のガス供給ノズルや、所定の間隔で複数の開口が形成されたガス供給ノズルを用いることにより、ウエハ支持部の長手方向に沿った複数の位置からプロセスガスを基板に供給し、処理の均一性の改善を図っている(例えば特許文献1)。
【0006】
しかし、この場合であっても、プロセスガスは、ガス供給ノズル内を下から上へ流れながら加熱されるため、ガス供給ノズルの上端側の開口からは、下端側の開口からよりも高温のプロセスガスが供給される。このため、処理の均一性を十分に改善することはできない。
【0007】
また、プロセスガスとして2種類の原料ガスを使用する場合において、一方の原料ガスの分解温度が他方の原料ガスの分解温度よりも著しく低いときには、分解温度の低い原料ガスが、ガス供給ノズルの特に上端側で分解し始めてしまうことがある。そうすると、ガス供給ノズルの内部や反応管の内面に膜が堆積してしまい、基板上への膜の堆積速度が低下してしまう。また、原料ガスの利用効率も悪化する。さらに、反応管の内面に堆積した膜が剥がれるとパーティクルの原因となるため、反応管の洗浄頻度を高くせざるを得ず、スループットの低下を招く。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされ、処理対象である複数の基板が多段に配置される熱処理装置であって、プロセスガスの温度の差を基板間で低減することにより処理の均一性を改善することができ、基板到達前にプロセスガスが活性化や分解するのを抑制することが可能な熱処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、複数の基板を多段に支持する支持体;前記支持体を内部に収容可能な反応管であって、該反応管の側部に配置され前記反応管の内部にガスを供給する複数のガス供給管を有する当該反応管;及び前記反応管の内部に収容された前記基板を加熱する第1の加熱部であって、該第1の加熱部の下端から上端まで延び、前記複数のガス供給管が通り抜けられるスリットを有し、該スリット以外においては内面が前記反応管の側部に面する第1の加熱部;を備える熱処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、処理対象である複数の基板が多段に配置される熱処理装置であって、プロセスガスの温度の差を基板間で低減することにより処理の均一性を改善することができ、基板到達前にプロセスガスが活性化や分解するのを抑制することが可能な熱処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態による熱処理装置を示す概略図である。
【図2】図1の熱処理装置のインナーチューブを示す概略図である。
【図3】図1の熱処理装置の加熱部の内面を示す模式図である。
【図4】図1の熱処理装置の加熱部及びアウターチューブを示す概略斜視図である。
【図5】図1の熱処理装置の外部ヒータのスリットに埋め込まれる断熱材を示す模式図である。
【図6】図1の熱処理装置を示す概略断面図である。
【図7】図1の熱処理装置の冷却空気の循環機構を示す模式図である。
【図8】図1の熱処理装置にガス供給系を接続することにより構成される成膜装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されるべきである。
【0013】
図1を参照すると、本発明の実施形態による熱処理装置1は、下部が開口する有蓋円筒形状を有するアウターチューブ10と、アウターチューブ10の下部開口を通してアウターチューブ10内に出し入れ可能なインナーチューブ11と、複数のウエハWを多段に支持し、インナーチューブ11の下部開口を通してインナーチューブ11に出し入れ可能なウエハ支持体16と、アウターチューブ10を取り囲み、アウターチューブ10及びインナーチューブ11を通してウエハ支持体16に支持されるウエハWを加熱する加熱部20とを備える。
【0014】
インナーチューブ11の外側に配置されるアウターチューブ10は、例えば石英ガラスにより作製されており、その側周面には、アウターチューブ10の長手方向に沿って略一列に配列される複数の(図示の例では4つの)ガイド管10a、10b、10c、10dが設けられている。具体的には、石英ガラス製の有蓋円筒管の側周面に、長手方向に沿って所定の間隔で孔を開け、この孔に対して石英ガラス製のパイプを溶接することにより、アウターチューブ10を作製することができる。また、ガイド管10a〜10d内には、これらに対応するガス供給管17a〜17dが挿入されている。すなわち、ガイド管10a〜10dは、対応するガス供給管17a〜17dを支持している。ガス供給管17a〜17dには、ガス供給系(後述)からの対応する配管が接続され、ガス供給系からのプロセスガスがガス供給管17a〜17dを通してインナーチューブ11の内部に供給される(後述)。
【0015】
また、アウターチューブ10には、ガイド管10dの下方において排気管14が形成されている。排気管14の先端にフランジが形成されており、所定の継ぎ手により排気系(後述)に接続される。これにより、ガス供給管17a〜17dを通してインナーチューブ11内に供給されたプロセスガスは、ウエハWの表面上を通過した後、インナーチューブ11に設けられる一つ又は複数の開口部又はスリット(図示せず)を通して排気管14から排気される。また、アウターチューブ10は、図示しないシール部材を介して支持板12に固定されている。
【0016】
インナーチューブ11は、図2(a)に示すように、概ね、下部に開口を有する有蓋円筒形状を有しており、例えば石英ガラスにより作製される。また、インナーチューブ11の外周面の一部には拡張部11aが取り付けられている。拡張部11aは、図示のとおり、インナーチューブ11の長手方向に延びる、ほぼ箱の形状を有し、インナーチューブ11の外周部との間に空間を形成する。また、拡張部11aの外周部には、インナーチューブ11の長手方向に沿って略一列に配列される複数のガス供給孔H1〜H4が所定の間隔をあけて形成されている。ガス供給孔H1〜H4は、上述のガス供給管17a〜17dに対応して形成されている。言い換えると、ガス供給管17a〜17dは、対応するガス供給孔H1〜H4に開口端が一致するようにガイド管10a〜10dにより支持されている。また、インナーチューブ11の外周部における拡張部11aに覆われる部分には、図2(b)に示すように、複数の孔h1が形成され、これにより拡張部11a内の空間と、インナーチューブ11内の空間とが連通する。したがって、ガス供給系からのプロセスガスは、ガス供給管17a〜17d及びガス供給孔H1〜H4を通して拡張部11a内に流入し、複数の孔h1を通してインナーチューブ11内に供給される。なお、ガス供給孔H1〜H4の内径と、ガス供給管17a〜17dの内径とはほぼ等しいと好ましい。また、ガス供給孔H1〜H4の内径をガス供給管17a〜17dの内径よりも僅かに大きくし、ガス供給管17a〜17dの先端をガス供給孔H1〜H4内に僅かに挿入しても良い。
【0017】
再び図1を参照すると、インナーチューブ11は、ウエハ支持体16が通り抜けられる開口が上端に形成されたペデスタル18上に固定されており、ペデスタル18は、ウエハ支持体16が通り抜けられる開口が形成される支持板12に支持されている。
【0018】
ウエハ支持体16は、少なくとも3本の支柱16aを有している。支柱16aには、所定の間隔で複数の切欠部が設けられており、ウエハWは、その周縁部が切欠部に挿入されることにより支持される。本実施形態においては、ウエハ支持体16は117枚のウエハWを支持することができる。具体的には、上から4枚のダミーウエハと、下から4枚のダミーウエハと、これらの間において、3枚のダミーウエハで離間される4群の25枚の処理対象ウエハWとが支持される。また、ウエハ支持体16は、100枚のウエハWのうち上から25枚の処理対象ウエハWに対して、概ね、アウターチューブ10のガイド管10aに挿入されるガス供給管17aからプロセスガスが供給され、その下の25枚の処理対象ウエハWに対して、概ね、ガス供給管17bからプロセスガスが供給され、その下の25枚の処理対象ウエハWに対して、概ね、ガス供給管17cからプロセスガスが供給され、その下の25枚の処理対象ウエハWに対して、概ね、ガス供給管17dからプロセスガスが供給されるように配置されている。
【0019】
また、ウエハ支持体16は支持ロッド19上に固定されており、支持ロッド19は蓋体12aに支持されている。蓋体12aは、図示しない昇降機構により昇降され、これにより、支持ロッド19ひいてはウエハ支持体16がインナーチューブ11内に対して出し入れされ得る。ウエハ支持体16がインナーチューブ11に入れられると、蓋体12aは、図示しないシール部材を介して支持板12の下面に接し、これによりアウターチューブ10内の雰囲気が外部雰囲気から隔離される。
なお、支持ロッド19が貫通可能な開口を蓋体12aに設け、この開口と支持ロッド19との間を磁性流体で密閉するとともに、回転機構により支持ロッド19を回転するようにしても良い。
【0020】
図1に示すように、加熱部20は、アウターチューブ10の側周部を覆う第1の加熱部21と、第1の加熱部21の上端部を覆う第2の加熱部22を有している。
第1の加熱部21は、金属製の筒状体23と、筒状体23の内面に沿って設けられる絶縁体24と、絶縁体24により支持される発熱体25(図3参照)とを有している。また、第1の加熱部21の上端には、加熱部20とアウターチューブ10との間の内部空間に供給される空気(後述)を排気するための上端排気口22Dが形成され、上端排気口22Dに接続される排気管(図示せず)を通して、加熱部20の内部空間からの空気が外部へ排気される。また、第1の加熱部21の筒状体23の側面には、発熱体25に電力を供給する複数の電流導入端子25aが設けられている。
【0021】
図3は、加熱部20の内側の一部を示す斜視図である。図示のとおり、絶縁体24には、多段の溝が形成されており、この溝に発熱体25が収容されている。発熱体25を多段に配置することにより、インナーチューブ11内の複数のウエハWを均一に加熱することが可能となる。また、本実施形態においては、発熱体25は2本の個別の電熱線を有しており、これらのうちの一本が、絶縁体24を縦方向に区画した2つのゾーンの一方に配置され、他の一本が2つのゾーンの他方に配置されている。このようにすれば、ほぼ半円柱形状を有する2つの絶縁体24ごとに発熱体25を配置した後、2つの絶縁体24を筒状体23の内面に配置することにより、第1の加熱部21を容易に作製することができる。
【0022】
なお、発熱体25は、例えば複数の個別の電熱線を有することができ、これらを、上下方向に段状に区画されるゾーンに配置しても良い。このように配置し、各ゾーンにおける電熱線への電力供給を個別に制御することにより、アウターチューブ10内のウエハWの温度均一性を向上することが可能となる。
図3及び図4に示すように、第1の加熱部21には、第1の加熱部21の下端から上端まで延び、アウターチューブ10のガイド管10a〜10dが通り抜けるのを許容するスリットが設けられている。具体的には、筒状体23の一部に、筒状体23の長手方向に沿って、筒状体23の下端から上端まで延びるスリット23Cが形成されており、これに対応して絶縁体24においても、絶縁体24の下端から上端まで延びるスリット24Cが形成されている。このため、第1の加熱部21は、ほぼC字状の平面形状を有している。また、第1の加熱部21の内面は、スリット(23C、24C)を除いて、アウターチューブ10の外周面に面している。
【0023】
図1、図4、及び図6を参照すると、アウターチューブ10は第1の加熱部21に対し、ガイド管10a〜10d側の外周面が第1の加熱部21の内周面に近接するように偏心している。これにより、第1の加熱部21内部及び内側におけるガイド管10a〜10d及びガス供給管17a〜17dの長さを短くすることができる。第1の加熱部21の内部及び内側は、発熱体25からの輻射熱により高温雰囲気となっているが、ガス供給管17a〜17dは、そのような高温雰囲気を長い距離に亘って通過することがない。このため、ガス供給管17a〜17dプロセスガスは、それほど高温に加熱されずにアウターチューブ10内へ供給され得る。したがって、分解温度が比較的低いガスであっても、分解せずにウエハWに到達することが可能となる。
【0024】
一方、第1の加熱部21にスリット(23C、24C)が設けられているため、場合によっては、アウターチューブ10内のウエハWを加熱するため第1の加熱部21から提供される熱量が不足したり、ウエハWの温度均一性が悪化したりする場合がある。このため、本実施形態においては、図3に示すように、絶縁体24のスリット24Cの両縁に沿って第3の加熱部24sが設けられている。第3の加熱部24sは、図示は省略するが、例えばセラミック製のロッドに電熱線を巻き付け、その周囲を絶縁体で覆うことにより作製することができる。この電熱線に供給する電力を制御することにより、スリットにより不足する熱量を適切に補い、かつ/又はウエハWの均熱性を向上することが可能となる。
【0025】
また、図4及び図5に示すように、第1の加熱部21のスリット(23C、24C)の両縁とガイド管10a〜10dとにより決まる空間に断熱材26を設けても良い。断熱材26は、例えば、熱伝導率のなるべく小さい例えばシリカガラスの繊維(グラスウール)で形成される梱包材としての外皮層と、外皮層内に詰め込まれるシリカガラスの繊維又は粉体とを有することができる。これによれば、断熱材26は柔軟性を有することとなるため、上記の空間に応じて変形し、この空間を隙間なく埋めることが可能となる。断熱材26を用いることにより、この空間を通して、第1の加熱部21内部の熱が外部へ放射されるのを妨げることができ、第1の加熱部21内部の均熱性の悪化を抑制することが可能となる。
【0026】
なお、第1の加熱部21の発熱体25に電力を供給して加熱する際には、発熱体25から発生する熱により第1の加熱部21自体も加熱されて熱膨張し、スリット(23C、24C)の間隔が広がる可能性がある。そこで、図6に示すように、第1の加熱部21の筒状体23を外側から押さえる筐体51が設けられる。筐体51は、第1の加熱部21と同様にアウターチューブ10のガイド管10a〜10dが通り抜けるのを許容するスリットを有しているが、このスリットの両側に連結部材52が取り付けられる取り付け部51aが設けられている。これらの取り付け部51aに連結部材52を取り付けることにより、筐体51によって第1の加熱部21を外側から押さえることができ、よって、第1の加熱部21が外側に広がるのが抑制される。
【0027】
また、図6を参照すると、第1の加熱部21には、絶縁体24を斜めに(絶縁体24の半径方向に対して傾斜して)貫通する複数の導管24aが形成されている。図6においては、10個の導管24aが示されているが、これに限定されることなく、導管24aの数は適宜変更して良い。なお、導管24aは、図7に示すように、絶縁体24の長手方向に沿って、所定の間隔をあけて形成されている。
【0028】
また、図6及び図7に示すように、筒状体23の外周部の一部が切り欠かれ、切り欠かれた部分に、筒状体23の長手方向に延びるチャンバー23aが取り付けられている。チャンバー23aには、図7に示すようにブロワー55の送風口55aからの配管56aが接続されている。一方、ブロワー55の流入口55bは、第1の加熱部21の上端排気口22Dと配管56bにより接続されている。このような構成により、ブロワー55から配管56aを通して、筒状体23及び絶縁体24の間の空間に空気が供給される。この空間に供給された空気は、上述の導管24aを通してアウターチューブ10に吹き付けられる。したがって、例えばウエハWに対する処理が終了し、ウエハWの温度を下げる場合に、上述のように空気をアウターチューブ10に吹き付けることにより、アウターチューブ10ひいてはウエハWの温度を効率よく低下させることが可能となる。また、上述のとおり、導管24aが絶縁体24に対して斜めに形成されているため、導管24aを流れた空気は、アウターチューブ10の外周面に対して斜めに吹き付けられる(図6参照)。このため、アウターチューブ10の外周面が局部的に冷却されずに一様に冷却される。また、導管24aは、アウターチューブ10と絶縁体24との間隔が狭くなる方向に傾いているため、間隔の狭い方向(すなわち空気が流れにくい方向)へ積極的に空気を供給することができ、これによっても、アウターチューブ10の外周面は一様に冷却され得る。
【0029】
また、アウターチューブ10に吹き付けられた空気は、上記排気口22Dを通してブロワー55に戻り、ブロワー55から送風される。このように循環することにより、装置からの排気を低減することができるため、工場設備の負担を軽減することが可能となる。
【0030】
なお、第2の加熱部23は、図3に示すように、第1の加熱部21と同様に絶縁体24と発熱体25とを有している。第2の加熱部22の発熱体25にも電流導入端子(図示せず)を介して電力が供給され、発熱体25の温度が制御される。
【0031】
次に、本実施形態による熱処理装置1において実施され得る処理の一例として、サファイア基板上への窒化ガリウム(GaN)膜の堆積について、図8を参照しながら、説明する。
【0032】
図8に示すとおり、ガス供給管17a〜17dには、配管La〜Ldを介して、対応するガリウム原料槽31a〜31dが接続されている。ガリウム原料槽31a〜31dは、いわゆるバブラーであり、本実施形態では、内部にトリメチルガリウム(TMGa)が充填されている。また、ガリウム原料槽31a〜31dには、対応する流量調整器(例えばマスフローコントローラ)3Fa〜3Fdが設けられた配管Ia〜Idを介して、所定のキャリアガス供給源と接続されている。キャリアガスとしては、例えば高純度窒素ガスを用いることができる。配管La〜Ld及び配管Ia〜Idには、ガリウム原料槽31a〜31dの近くにおいて、連動して開閉する一組の開閉バルブ33a〜33dが設けられている。また、配管La〜Ld及び配管Ia〜Idを繋ぐバイパス管が設けられ、バイパス管には、対応するバイパス弁Ba〜Bdが設けられている。バイパス弁Ba〜Bdを開き、開閉バルブ33a〜33dを閉じると、キャリアガスはバイパス管を通って、対応するガス供給管17a〜17dに至り、アウターチューブ10内へ供給される。逆に、バイパス弁Ba〜Bdを閉じ、開閉バルブ33a〜33dを開くと、キャリアガスはガリウム原料槽31a〜31dへ供給され、内部に充填されるTMGa液中に吐出されることにより、TMGaの蒸気(又はガス)を含んで流出口から流出する。流出したTMGa蒸気(ガス)を含むキャリアガスは、対応するガス供給管17a〜17dに至り、アウターチューブ10内へ供給される。
また、ガリウム原料槽31a〜31dには恒温槽32が設けられ、図示しない温度制御器によってガリウム原料槽31a〜31dひいては内部のTMGaの温度が所定の温度に維持され、TMGaの蒸気圧が温度に応じた値で一定に維持される。恒温槽32によりTMGa蒸気圧の一定に維持されるとともに、配管La〜Ldに設けられた圧力調整器PCa〜PCdにより配管La〜Ld内の圧力が一定に維持されることとにより、配管La〜Ldを流れるキャリアガス中のTMGa濃度を一定に維持することができる。
【0033】
また、配管La〜Ldには、例えばアンモニア(NH)供給源からの対応する配管50a〜50dが合流している。配管50a〜50dには、対応する流量調整器(例えばマスフローコントローラ)4Fa〜4Fd及び開閉バルブVa〜Vdが設けられている。開閉バルブVa〜Vdを開くと、NH供給源からのNHガスが、流量調整器4Fa〜4Fdによって流量制御され、配管50a〜50dを通って、対応する配管La〜Ldに流れ込む。これにより、TMGaの蒸気(ガス)、NH、及びキャリアガスの混合ガスがガス供給管17a〜17dを通してアウターチューブ10内へ供給される。
【0034】
また、図示しないパージガス供給源と接続されるパージガス配管PLが設けられている。本実施形態においては、パージガスとして、キャリアガスと同様に高純度窒素ガスが用いられる。パージガス配管PLは、流量調整器4Faと開閉バルブVaとの間の位置において、配管50aに対し、開閉バルブPaを介して接続されている。また、パージガス配管PLは、開閉バルブPaの手前(パージガス供給源側)において分岐し、流量調整器4Fbと開閉バルブVbとの間の位置において、配管50bに対し、開閉バルブPbを介して接続され、流量調整器4Fcと開閉バルブVcとの間の位置において、配管50cに対し、開閉バルブPcを介して接続され、流量調整器4Fdと開閉バルブVdとの間の位置において、配管50dに対し、開閉バルブPdを介して接続されている。
【0035】
また、アウターチューブ10の排気管14には、主弁2A及び圧力調整器2Bを介してポンプ(例えばメカニカルブースタポンプ)4とポンプ(例えばドライポンプ)6とが接続されている。これらにより、アウターチューブ10内が所定の圧力に維持されつつ、アウターチューブ10内のガスが排気される。また、排気されたガスは、ポンプ6から所定の除害設備に導かれ、ここで除害されて大気放出される。
【0036】
以上の構成においては、以下の手順により、GaN膜がサファイア基板上に堆積される。まず、図示しない昇降機構によりウエハ支持体16がアウターチューブ10内から下方に取り出され、図示しないウエハローダにより、例えば直径4インチを有する複数のサファイア基板がウエハ支持体16に搭載される。次に、昇降機構によりウエハ支持体16がアウターチューブ10内にロードされ、支持板12がアウターチューブ10の下端にシール部材(図示せず)を介して密着することにより、アウターチューブ10が気密に密閉される。
【0037】
続いて、ポンプ4及び6によりアウターチューブ10内を所定の成膜圧力に減圧する。これに併せて、バイパス弁Ba〜Bdを開き、開閉バルブ33a〜33dを閉じ、キャリアガス供給源からの窒素ガスを流すと、流量調整器3Fa〜3Fdによって流量制御された窒素ガスが、配管Ia〜Id及びバイパス弁Ba〜Bdを通して配管La〜Ldへ流れ、ガス供給管17a〜17dからアウターチューブ10内へ流れる。また、開閉バルブVa〜Vdを開くことにより、流量調整器4Fa〜4Fdによって流量制御された窒素ガスが、配管50a〜50dを通して、対応する配管La〜Ldに流れ込み、ガス供給管17a〜17dからアウターチューブ10へ流れる。
【0038】
上述のようにしてアウターチューブ10内へ窒素ガスを流すことにより、アウターチューブ10内をパージしつつ、加熱部20(第1の加熱部21及び第2の加熱部22)への電力を制御することにより、ウエハ支持体16に支持されるサファイア基板Wを所定の温度(例えば850℃〜1050℃)に加熱する。サファイア基板Wの温度は、アウターチューブ10内にウエハ支持体16の長手方向に沿うように配置される一又は複数の熱電対(図示せず)により測定され、測定温度に基づいて制御され、一定に維持される。
【0039】
アウターチューブ10内のパージが完了し、サファイア基板Wの温度が所定の温度で安定した後、GaN膜の成膜を開始する。具体的には、まず、開閉バルブVa〜Vdを開くとともに、開閉バルブPa〜Pdを閉じることにより、流量調整器4Fa〜4Fdによって流量制御されたNHガスがアウターチューブ10内へ供給される。これにより、アウターチューブ10内の雰囲気が、窒素雰囲気からNH雰囲気に変化していく。また、供給されたNHガスは、サファイア基板Wの熱により分解する。このとき、サファイア基板Wの表面は、NHが分解することにより生成されるN原子により窒化される。所定の時間が経過して、アウターチューブ10内のNH濃度が一定に(NHガス供給源における濃度とほぼ等しく)なった後、開閉バルブ33a〜33dを開くとともにバイパス弁Ba〜Bdを閉じることにより、流量調整器3Fa〜3Fdによって流量制御された窒素ガスがガリウム原料槽31a〜31dへ供給され、TMGa蒸気(ガス)を含んだ窒素ガスが配管La〜Ld及びガス供給管17a〜17dを通してアウターチューブ10内へ供給される。アウターチューブ10内に供給されたTMGaはサファイア基板Sの熱により分解し、分解により生成されたGa原子と、NHの分解により生成されたN原子とがサファイア基板W上で化合してGaN膜が堆積される。
【0040】
以上説明した実施形態によれば、アウターチューブ10の側周面にガス供給管17a〜17dが設けられ、これらからアウターチューブ10内へプロセスガス(例えばTMGa蒸気(ガス)を含むキャリアガスとNHガスの混合ガス)が供給される。例えば、アウターチューブ10内において、その長手方向(高さ方向)に下から上へ延び、複数の孔を有するガス供給ノズル内をプロセスガスが流れる場合には、ガス供給ノズルの上端へ向かうほどプロセスガスが加熱されるため、温度が異なるプロセスガスが各ウエハWへ供給されることとなり、プロセスガスによるウエハ処理の均一性が損なわれるおそれがある。しかし、本実施形態によれば、上述のとおり、プロセスガスは、アウターチューブ10の長手方向に沿ってアウターチューブ10内を流れることがなく、アウターチューブ10の側周面に設けられたガス供給管17a〜17dからウエハWへ供給されるため、プロセスガスは、ほぼ等しい温度で各ウエハWに供給され得る。このため、ウエハ処理の均一性を向上することができる。
【0041】
また、アウターチューブ10内を下から上へプロセスガスが流れる場合と異なり、プロセスガスは、ほとんど熱分解(又は熱反応)することなくウエハWへ供給され、ウエハWの熱により熱分解(又は熱反応)することができるため、プロセスガスの利用効率を図ることができる。
【0042】
特に、TMGaとNHを用いたGaN膜の堆積の場合、アウターチューブ10内を下から上へ延びるガス供給ノズルを用いてTMGaとNHを供給すると、分解温度が低いTMGaは、ガス供給ノズル内や反応管の気相中で分解してしまい、ガス供給ノズル内や反応管の内面にGaが析出してしまう。そうすると、サファイア基板W上へ堆積するGaN膜の堆積速度が低下したり、析出したGaが剥離してパーティクルとなったりするという問題が生じる。しかし、本実施形態による熱処理装置(成膜装置)によれば、TMGaとNHがアウターチューブ10内を長い時間流れることはなく、ガス供給管17a〜17dからサファイア基板Wの表面へ直ちに到達できるため、TMGaの分解を抑制して、成膜速度の低下やGaの析出を抑制することが可能となる。
【0043】
また、図1、図3、及び図4に示すように、アウターチューブ10が第1の加熱部21に対して偏心して配置され、第1の加熱部21の内側にあるガス供給管17a〜17dの長さが極力短くなっているため、ガス供給管17a〜17dの加熱が抑制される。したがって、ガス供給管17a〜17dが加熱されることによるTMGaの分解もまた抑制することが可能である。
【0044】
以上、幾つかの実施形態及び実施例を参照しながら本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態及び実施例に限定されることなく、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変形又は変更が可能である。
【0045】
例えば、熱処理装置1を用いたGaN膜の成膜を説明したが、これに限らず、例えばジシクロロシラン(SiHCl)ガスとNHを原料ガスとして用いてシリコンウエハ上に窒化シリコン膜を堆積するために熱処理装置1を用いても良く、シラン(SiH)ガスを原料ガスとして用いてシリコンウエハ上にポリシリコン膜を堆積するために熱処理装置1を用いても良い。さらに、薄膜の堆積だけでなく、例えばシリコンウエハの熱酸化に熱処理装置1を用いても良い。
【0046】
また、GaN膜の堆積に用いるガリウム原料としては、TMGaではなく、トリエチルガリウム(TEGa)などの他の有機ガリウム原料や、塩化ガリウム(GaCl)を使用して良い。また、トリアルキルガリウムだけでなく、例えばトリメチルインジウム(TMIn)などのトリアルキルインジウムが充填された原料槽をガリウム原料槽31a〜31dの各々と並列に設け、トリアルキルガリウムの蒸気(ガス)を含むキャリアガスと、トリアルキルインジウムの蒸気(ガス)を含むキャリアガスを混合して、アウターチューブ10内へ供給しても良い。これにより、窒化インジウムガリウム(InGaN)を堆積することが可能となる。
【0047】
また、トリアルキルガリウム(かつ/又はトリアルキルインジウム)がガス供給管17a〜17dにおいて分解するのを更に抑制するため、ほぼ同心円状に2つの石英管から構成される二重管でガイド管10a〜10dを形成し(言い換えると、ガイド管10a〜10dにジャケットを設け)、内管の内側からアウターチューブ10内へキャリアガスを流すとともに、内管と外管の間に例えば冷却媒体を流すことにより、アウターチューブ10を冷却することが好ましい。
【0048】
また、アウターチューブ10に設けられる排気管14は、本実施形態においてはガイド管10dの下方に形成されているが、アウターチューブ10におけるガイド管10a〜10dの反対側に相当する位置(対向位置)を避けた位置に形成して良い。例えば、対向位置の側方、下方、又は上方に排気管を形成しても良い。また、対向位置の側方に排気管14を設ける場合、対向位置の両側に一つずつの排気管を設けても良い。さらに、対向位置の側方に、ガイド管10a〜10dに対応して複数の排気管を設けても良い。
【0049】
また、第1の加熱部21は、スリット(23C、24C)を有するほぼ円柱状の形状を有しているが、例えば多角形柱形状を有しても良い。この場合、スリット(23C、24C)は、多角形柱の辺に沿って設けられると好ましい。
【0050】
また、インナーチューブ11内において、下方から上方へ向かって延びるガス導入管を設け、ガス供給管17a〜17dと併用しても良い。この場合、分解温度の低いガスをガス供給管17a〜17dから供給し、分解温度の高いガスをガス導入管から供給することが好ましい。このようにすれば、分解温度の低いガスがウエハWに到達する前に分解するのを抑制することができ、分解温度の高いガスを十分に加熱してからウエハWに到達させることができる。すなわち、ガスの分解温度に応じて、ガスを適切に加熱することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1・・・熱処理装置、4,6・・・ポンプ、10・・・アウターチューブ、10a〜10d・・・ガイド管、11・・・インナーチューブ、12・・・支持板、16・・・ウエハ支持体、17a〜17d・・・ガス供給管、18・・・ペデスタル、20・・・加熱部、21・・・第1の加熱部、22D・・・上端排気口、21C・・・スリット、22・・・第2の加熱部、23・・・筒状体、23C・・・スリット、24・・・絶縁体、25・・・電熱線、26・・・断熱体、27・・・ガスノズル、55・・・ブロワー、W・・・ウエハ(又はサファイア基板)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を多段に支持する支持体;
前記支持体を内部に収容可能な反応管であって、該反応管の側部に配置され前記反応管の内部にガスを供給する複数のガス供給管を有する当該反応管;及び
前記反応管の内部に収容された前記基板を加熱する第1の加熱部であって、該第1の加熱部の下端から上端まで延び、前記複数のガス供給管が通り抜けられるスリットを有し、該スリット以外においては内面が前記反応管の側部に面する第1の加熱部;
を備える熱処理装置。
【請求項2】
前記第1の加熱部の前記スリットの縁に沿って設けられる第2の加熱部を更に備える、請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記反応管が、下部に開口を有する有蓋円筒形状を有し、
前記加熱部が円筒形状を有し、
前記第1の加熱部は、前記スリットが前記反応管の側部に近接するように、前記反応管に対して偏心するように配置される、請求項1又は2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記スリットを通り抜ける前記複数のガス供給管と、前記スリットの縁との間の空間を埋める断熱材を更に備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記複数のガス供給管が前記反応管の長手方向に沿って配列される、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記第1の加熱部の上端に配置される第3の加熱部を更に備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−186367(P2012−186367A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49194(P2011−49194)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】