説明

真空処理装置

【課題】リッジ電極及び基板の熱変形を抑制し、大型の基板にも安定した製膜処理が行える真空処理装置を提供する。
【解決手段】プラズマが生成される排気側リッジ電極21a及び基板側リッジ電極21bを有するリッジ導波管からなる放電室2と、高周波電力を方形導波管の基本伝送モードであるTEモードに変換して放電室2に伝送し、排気側リッジ電極21a及び基板側リッジ電極21bの間にプラズマを発生させる一対の変換器と、基板側リッジ電極21bの外面側に設置されて温度を均等に加熱する均熱温調器40と、排気側リッジ電極21aの外面側に設置されてプラズマ処理が施される基板Sの板厚方向の熱流束を制御する熱吸収温調ユニット50とを有し、基板Sを排気側リッジ電極21a及び基板側リッジ電極21bの間に設置してプラズマ処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置に関し、特にプラズマを用いて基板に処理を行う真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、薄膜太陽電池の生産性を向上させるためには、高品質なシリコン薄膜を、高速に、かつ、大面積で製膜することが重要である。このような高速かつ大面積な製膜を行う方法としては、プラズマCVD(化学気相成長)法による製膜方法が知られている。
【0003】
プラズマCVD法による製膜を行うためには、プラズマを発生させるプラズマ生成装置(真空処理装置)が必要であり、効率良くプラズマを発生させるプラズマ生成装置としては、たとえば特許文献1に開示されているリッジ導波管を利用したプラズマ生成装置が知られている。この種のプラズマ生成装置は、同文献1の図10に示されるように、高周波電源(RF電源)を強い電界に変換させる左右一対の変換器(分配室)と、これらの変換器の間に接続される放電室(有効空間)とを備えて構成されている。
【0004】
放電室の内部には、互いに対向する上下一対の平面状のリッジ電極が設けられており、この間にプラズマが発生する。したがって、ガラス基板等に製膜処理を施す場合には、このようなリッジ電極の間に基板を設置して製膜処理を施すことが考えられる。具体的には、上下のリッジ電極が水平になるように装置全体を設置し、上下の電極の間に基板を搬入して、この基板を下側のリッジ電極の上面に載置する。そして、放電室の内部を真空状態に近づけると同時に、製膜材料ガスを供給し、リッジ電極の間にプラズマを発生させると、基板に膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平4−504640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のリッジ導波管を利用したプラズマ生成装置では、リッジ導波管に対して、横方向からマイクロ波電力を供給する構造になっていた。すなわち、リッジ導波管に沿った長手方向における電界強度分布は分配室と称されるリッジ導波管に併設された部分及び分配室からリッジ導波管にマイクロ波を供給するための結合穴の構成により定まる。そのため、リッジ導波管と分配室は同じ長さが必要であり、かつ、分配室や結合穴における取りうる構成が制限されると、電界強度分布の均一性も制限されることからプラズマの均一化が困難になるという問題があった(特許文献1参照。)。
【0007】
さらに、リッジ導波管を利用したプラズマ生成装置では、基板に製膜処理を施す場合、必要な膜質を得る製膜条件を整えるために、基板が載置される下側のリッジ電極を予熱する必要がある。また、プラズマ発生時には、プラズマのエネルギーによって上下のリッジ電極が加熱される。このため、基板の板厚方向に生じる熱流束により基板の表裏面に温度差が生じ、リッジ電極及び基板がそれぞれ反り等の熱変形を起こしやすくなる。リッジ電極と基板のいずれか一方でも熱変形を起こせばリッジ電極同士の間隔及びリッジ電極と基板との間隔が不均等になり、均一なプラズマ特性が得られなくなって、結果として高品質で均一な製膜処理を行うことができなくなる。
この問題のため、特に面積が1m以上、さらには2m級の大型基板においては、プラズマCVD法による製膜処理を施すのが困難であり、リッジ導波管による製膜処理の実用化に向けて解決が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、リッジ導波管を利用したリッジ電極間でプラズマを発生させて基板に製膜処理を施す真空処理装置において、リッジ電極及び基板の熱変形を抑制し、大型の基板にも安定した製膜処理が行える真空処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
すなわち、本発明に係る真空処理装置は、平板状に形成されて互いに平行に対向配置され、その間にプラズマが生成される一方及び他方のリッジ電極を有するリッジ導波管からなる放電室と、前記放電室の両端に隣接して配置され、互いに平行に対向配置された一対のリッジ部を有するリッジ導波管からなり、高周波電源から供給された高周波電力を方形導波管の基本伝送モードに変換して前記放電室に伝送し、前記一方及び他方のリッジ電極の間にプラズマを発生させる一対の変換器と、前記他方のリッジ電極の外面側に設置され、前記他方のリッジ電極の温度を制御する均熱温調器と、前記一方のリッジ電極の外面側に設置され、前記一方のリッジ電極の温度を制御する熱吸収温調ユニットと、前記放電室及び前記変換器の内部の気体を排出させる排気手段と、前記基板にプラズマ処理を施すのに必要な母ガスを前記一方及び他方のリッジ電極の間に供給する母ガス供給手段と、を有し、前記基板は前記一方及び他方のリッジ電極の間に設置されてプラズマ処理が施されることを特徴とするものである。
【0010】
このような真空処理装置によれば、基板を一方及び他方のリッジ電極の間に設置したことにより、プラズマ処理の迅速化及び安定化を図り、高品質な製膜を施すことができる。また、均熱温調器と熱吸収温調ユニットを設けたことにより、一方及び他方のリッジ電極の温度を制御して、プラズマ処理が施される基板の板厚方向の熱流束が制御されるため、基板の表裏温度差による反りを抑制して、均一なプラズマ特性を確保し、高品質で均一な製膜処理を行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る真空処理装置において、前記均熱温調器と前記熱吸収温調ユニットは、互いに平行に対向する平面部を有し、前記他方のリッジ電極は前記均熱温調器の平面部に密着するように保持され、前記一方のリッジ電極は前記熱吸収温調ユニットの平面部に密着するように保持されていることが好ましく、これにより、一方及び他方のリッジ電極が通過する熱流束により変形(反る)することを防止でき、プラズマ処理の迅速化及び安定化による高品質な製膜が可能になる。
【0012】
また、本発明に係る真空処理装置は、前記一方及び他方のリッジ電極を、厚さ0.5mm以上で3mm以下の金属板とすることが好ましく、これにより、リッジ電極を通過する熱流束によりリッジ電極がプラズマ分布に影響する程度に変形するような表裏温度差が生じないため、リッジ電極の反りを防止してプラズマ処理の迅速化及び安定化による高品質な製膜が可能になる。この場合のリッジ電極は、厚さを1〜2mm程度と薄くすることがさらに望ましい。
【0013】
また、本発明に係る真空処理装置において、前記一方のリッジ電極と、前記他方のリッジ電極の少なくともいずれかには、該リッジ電極を締結部材で電極保持部に締結保持するための締結部材挿通孔が形成され、この締結部材挿通孔は、前記電極保持部に対する前記リッジ電極の熱膨張方向に形状が長穴とされるとともに、前記締結部材の締結力は、前記リッジ電極が熱膨張した際に該リッジ電極の伸びを許容できる強度に設定されていることが好ましく、これにより、一方及び他方のリッジ電極が熱膨張により拘束されて変形(反る)することを防止できて、プラズマ処理の迅速化及び安定化による高品質な製膜を行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る真空処理装置において、前記一方のリッジ電極には複数の通気孔が穿設され、前記熱吸収温調ユニットは該通気孔を介して前記放電室に連通するマニホールド状に形成されるとともに、前記熱吸収温調ユニットの内部に温調媒体が流通する温調媒体流通路を有し、前記排気手段は前記熱吸収温調ユニットのヘッダー部に接続されて、該熱吸収温調ユニットのマニホールド形状を介して前記放電室及び前記変換器の内部の気体を排出させることが好ましく、これにより、熱吸収温調ユニットのマニホールド形状により、前記放電室の一方のリッジ電極面の広い範囲から放電室内部の排気ができるようになる。この結果、放電室内部における母ガスの分布を均一化することができるので、プラズマ処理の迅速化及び安定化による高品質な製膜が可能になる。
【0015】
また、本発明に係る真空処理装置において、前記母ガス供給手段は、前記放電室の非リッジ部導波管の内部に収容され、該非リッジ部導波管の内部の長手方向に沿って配設された母ガス供給管と、この母ガス供給管から前記一方及び他方のリッジ電極の間に母ガスを噴き出させる複数のガス噴出孔とを備えていることが好ましく、これにより、非リッジ部導波管の内部スペースを有効に利用して真空処理装置のコンパクト化を図りつつ、放電室の両端にある非リッジ部導波管から母ガスを均等に放電室内部へと行きわたらせ、プラズマを均一化し、高品質で安定したプラズマ処理を行うことができる。
【0016】
また、本発明に係る真空処理装置において、前記一方のリッジ電極における前記通気孔の単位面積当たりの開口率は、前記排気手段に対して前記母ガス供給手段に近い位置範囲に比べて、前記母ガス供給手段から遠い位置範囲において高くなることが好ましく、これにより、母ガスが放電室内の中央付近までに均等に行き渡り、安定した製膜を行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る真空処理装置において、前記母ガス供給手段は、前記熱吸収温調ユニットの内部に収容され、該母ガス供給手段は、前記熱吸収温調ユニットの内部に張り巡らされた母ガス分配手段と、この母ガス分配手段から前記熱吸収温調ユニットの内部を経て前記一方及び他方のリッジ電極の間に母ガスを噴き出させる複数のガス噴出孔とを備えてなることが好ましく、これにより、前記一方のリッジ電極の平面面積と略同じ平面面積を持つ熱吸収温調ユニットから母ガスを放電室内に供給できるため、母ガスを均一に供給することができ、これによってプラズマを均一化し、高品質なプラズマ処理を行うことができる。
【0018】
また、本発明に係る真空処理装置において、前記一方のリッジ電極には複数の通気孔が穿設され、前記熱吸収温調ユニットは該通気孔を介して前記放電室に連通するマニホールド状に形成されるとともに、その内部に温調媒体が流通する温調媒体流通路を有し、この熱吸収温調ユニットの内部に前記母ガス供給手段が設けられ、該母ガス供給手段は、前記熱吸収温調ユニットの内部に張り巡らされた母ガス分配手段と、この母ガス分配手段から前記熱吸収温調ユニットの内部を経て前記一方及び他方のリッジ電極の間に母ガスを噴き出させる複数のガス噴出孔とを備えてなる一方、前記排気手段は前記放電室の導波管非リッジ部に接続されいることが好ましい。
このような構成とすれば、熱吸収温調ユニットのマニホールド形状により、母ガスの分配手段により母ガスの分布を均一化することができ、さらに放電室の幅方向両端からバランスをとりながら排気ができるため、放電室の内部で母ガスが澱みにくくなり、プラズマ処理の迅速化及び安定化による高品質な製膜が可能になる。
【0019】
また、本発明に係る真空処理装置において、前記非リッジ部導波管の断面形状を変化させることなく、前記一方のリッジ電極と他方のリッジ電極との間を平行に保った状態で、該両リッジ電極間の間隔を調整可能にするリッジ電極支持調整機構をさらに有することが好ましく、これにより、非リッジ部導波管の伝送特性を変化させずに、リッジ電極の間隔を最適値に設定でき、もって高品質なプラズマ処理を行うことができる。
【0020】
また、本発明に係る真空処理装置において、前記一方及び他方のリッジ電極の間に設置された前記基板は、前記一方のリッジ電極の周辺部にあり、所定支持力で前記基板周囲を押え支持する複数の基板押付具を有し、前記基板押付具は、所定支持力を越える場合には、前記基板周辺の押付を解除することが好ましく、これにより、一方のリッジ電極に取り付けた基板押付具により基板の変形を抑制でき、過剰な押圧力が生じたときには基板の破損やリッジ電極の変形を抑制できる。
【0021】
本発明に係る基板処理方法は、請求項1〜請求項11のいずれかに記載の真空処理装置を用いて基板に製膜処理を施すことを特徴とするものである。
【0022】
このような基板処理方法によれば、請求項1〜請求項11のいずれかに記載の真空処理装置を用いて基板に製膜処理を施すので、基板を一方及び他方のリッジ電極の間に設置し、プラズマ処理の迅速化及び安定化を図り、高品質な製膜を施すことができる。また、均熱温調器と熱吸収温調ユニットを設けたことにより、一方及び他方のリッジ電極の温度を制御して、プラズマ処理が施される基板の板厚方向の熱流束が制御されるため、基板の表裏温度差による反りを抑制して、均一なプラズマ特性を確保し、高品質で均一な製膜処理を施すことができる。
【発明の効果】
【0023】
上述したように、本発明に係る真空処理装置によれば、リッジ電極を有するリッジ導波管を利用した放電室内でプラズマを発生させて、リッジ電極間に設置した基板に製膜処理を施す真空処理装置において、リッジ電極間に均一なプラズマを発生させ、リッジ電極及び基板の熱変形を抑制し、大型の基板にも安定した製膜処理が行える真空処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る真空処理装置の第1の実施形態として、ダブルリッジ型の製膜装置に関する概略構成を説明する模式図である。
【図2】図1の放電室及びリッジ電極の構成を示す断面図である。
【図3】図2に示したリッジ電極の支持構成を示す分解斜視図である。
【図4】熱吸収温調ユニットを備えた吸引口の配置例を排気側リッジ電極と重ね合わせて示す平面図である。
【図5】図2に示すリッジ電極移動用のオーバーラップ構造に代えて、開口フランジ構造を採用した変形例を示す要部の断面図である。
【図6】本発明に係る真空処理装置の第2の実施形態として、シングルリッジ型の放電室及びリッジ電極を示す断面図である。
【図7】本発明に係る真空処理装置の第3の実施形態として、ガス供給型リッジ電極の構成例を示す断面図である。
【図8】図7に示したリッジ電極の支持構成を示す分解斜視図である。
【図9】本発明に係る真空処理装置の第4の実施形態として、ガス供給及び排気型リッジ電極の構成例を示す断面図である。
【図10】本発明に係る真空処理装置の第5の実施形態であり、(a)は基板押付具を備えたリッジ電極の構成例を示す断面図、(b)は基板押付具周辺の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る真空処理装置について、第1の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。本実施形態においては、本発明を、一辺が1mを越える大面積な基板に対して、アモルファス太陽電池や微結晶太陽電池等に用いられる非晶質シリコン、微結晶シリコン等の結晶質シリコン、窒化シリコン等からなる膜の製膜処理をプラズマCVD法によって行うことが可能な製膜装置(真空処理装置)1に適用した場合について説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
図1は製膜装置1の概略構成を説明する模式図、図2は図1のA−A断面図である。
製膜装置1は、放電室(プロセス室)2と、この放電室2の両端に隣接して配置された変換器3A,3Bと、これらの変換器3A,3Bに一端が接続される同軸ケーブル4A,4B(電源ライン)と、これらの同軸ケーブル4A,4Bの他端に接続される高周波電源5A,5B(電源手段)と、同軸ケーブル4A,4Bの中間部にサーキュレータSA,SBを介して接続された整合器6A,6Bと、放電室2に接続される排気手段7及び製膜の材料ガスを含む母ガス供給手段となる母ガス供給管8を主な構成要素として備えている。
サーキュレータSA及びサーキュレータSBは、それぞれ高周波電源5A,5Bから供給された高周波電力を放電室(プロセス室)2に導くとともに、高周波電源5A,5Bに対して進行方向が違う高周波電力が入力されることを防止するものである。
【0027】
この場合の高周波電源5A,5Bは、周波数が13.56MHz以上、好ましくは30MHzから400MHz(VHF帯からUHF帯)である。これは、13.56MHzより、周波数が低いとダブルリッジ導波管(後述するリッジ電極21と非リッジ部導波管9)のサイズが基板サイズに対して大型化するために装置設置スペースが増加し、周波数が400MHzより高いと放電室(プロセス室)2が延びる方向(L方向)に生じる定在波の影響が増大するためである。
なお、上述した排気部7及び母ガス供給管8は図2に示されている。
【0028】
図1及び図2において、製膜装置1は図示しない真空容器に収納されるものである。図示しない真空容器は圧力差に耐えうる構造とされている。たとえば、ステンレス鋼(JIS規格におけるSUS材)や、一般構造用圧延材(JIS規格におけるSS材)などから形成され、リブ材などで補強された構成を用いることができる。
図示しない真空容器には排気手段である排気部7が接続されている。そのため、真空容器の内部や、放電室(プロセス室)2、変換器3A及び変換器3Bの内部は、排気部7により真空状態とされる。この排気部7は、本発明において特に限定されることはなく、たとえば公知の真空ポンプ、圧力調整弁と真空排気配管等を用いることができる。
放電室2は、アルミニウム合金材料等により構成され、導電性を有し非磁性または弱磁性を有する材料から形成された容器状の部品であって、所謂ダブルリッジ型の導波管状に形成されたものである。放電室2及び変換器3A,3Bの内部は、排気部7により0.1kPaから10kPa程度の真空状態とされる。このため、放電室2及び変換器3A,3Bは、その内外の圧力差に耐え得る構造となっている。
【0029】
図1〜図3に示すように、放電室2には、上下一対の放電用リッジ電極として、排気側リッジ電極21a(一方のリッジ電極)及び基板側リッジ電極21b(他方のリッジ電極)が設けられている。これらのリッジ電極21a,21bは、ダブルリッジ導波管である放電室2の主要部分となるリッジ形状を構成するものであり、互いに平行に対向配置された平板状の部分である。そして、この放電室2には、プラズマ製膜処理を施す基板Sが設置され、基板Sを載置した下側のリッジ電極が基板側リッジ電極21bとなる。プラズマ分布に優れた排気側リッジ電極21aと基板側リッジ電極21bとの間に挟まれるように基板Sを設置したことにより、プラズマと基板Sとの距離が短くなるので、プラズマ処理の迅速化(製膜速度の向上)及び安定化を図り、高品質な製膜を均一により高速で施すことができる。
【0030】
本実施形態では、放電室2が延びる方向をL方向(図1における左右方向)とし、リッジ電極21a,21bの面に直交してプラズマ放電時に電気力線が延びる方向をE方向(図1における上下方向)とし、一対のリッジ電極21a,21bに沿い、かつE方向と直交する方向をH方向とする。さらに、一方の排気側リッジ電極21aから他方の基板側リッジ電極21bまでの距離をリッジ対向間隔と呼び、このリッジ対向間隔は、高周波電源5A,5Bの周波数、基板Sの大きさやプラズマ製膜処理の種類等に応じて、凡そ3〜30mm程度の範囲に設定される。
また、図中の符号9は、排気側リッジ電極21a及び基板側リッジ電極21bの両側に形成された矩形断面の非リッジ部導波管であり、内部には長手方向に沿って母ガス供給管8が配設されている。この母ガス供給管8には、リッジ電極21a,21bの間に母ガスを略均一に噴き出すためのガス噴出孔8aが噴出し径を適正化して複数設けられており、母ガス供給管8及びガス噴出孔8aにより母ガス供給手段を構成している。たとえば、各ガス噴出孔8aが噴出すガス流速は、音速を超えることによりチョーク現象を発生させることで均一なガス流速になるので好ましい。母ガス流量と圧力条件によるが、このような噴出し径としてφ0.3mm〜φ0.5mmを用いてガス噴出孔8aの数量を設定することが例示される。
【0031】
上述した基板Sとしては、透光性ガラス基板を例示することができる。たとえば、太陽電池パネルに用いられる基板Sとしては、縦横の大きさが1.4m×1.1m、厚さが3.0mmから4.5mmのものを挙げることができる。
【0032】
図1に示すように、変換器3A,3Bは、それぞれ高周波電源5A,5Bから同軸ケーブル4A,4Bを介して供給される高周波電力が導入される部分であって、供給された高周波電力を放電室2側に伝送する役割を担っている。これらの変換器3A,3Bは、放電室2のL方向端部に連結されており、放電室2と電気的に接続されるとともに、非リッジ部導波管9も連通している。なお、変換器3A,3Bを放電室2に対して一体的に設けてもよい。
【0033】
変換器3A,3Bには、それぞれ上下一対の平板状のリッジ部31a,31bが設けられている。これらのリッジ部31a,31bは、ダブルリッジ導波管である変換器3A,3Bのリッジ形状を構成するものであり、互いに平行に対向して配置されている。変換器3A,3Bは、高周波電力の伝送モードを同軸伝送モードであるTEMモードから方形導波管の基本伝送モードであるTEモードに変換し、放電室(プロセス室)2に伝送する。
【0034】
変換器3A,3Bにおける一方の排気側リッジ部31aから他方の基板側リッジ部31bまでの距離をリッジ対向間隔と呼び、このリッジ対向間隔は、高周波電源5A,5Bの周波数、基板Sの大きさやプラズマ製膜処理の種類等に応じて、凡そ50〜200mm程度の範囲に設定される。
【0035】
同軸ケーブル4A,4Bは、外部導体及び内部導体を有しており、外部導体がたとえば上側の排気側リッジ部31aに電気的に接続され、内部導体が排気側リッジ部31aと変換器3の内部空間を貫通して下側の基板側リッジ部31bに電気的に接続されている。同軸ケーブル4A,4Bは、それぞれ、高周波電源5A,5Bから供給された高周波電力を変換器3A,3Bに導くものである。なお、高周波電源5A,5Bとしては、公知のものを用いることができ、本発明において特に限定されるものではない。
さらに、導波管の特性により、この一対のリッジ電極21a,21bの間ではリッジ電極に沿う方向(H方向)の電界強度分布がほぼ均一になる。さらに、リッジ導波管を用いることにより、この一対のリッジ電極21a,21bの間ではプラズマを生成可能な程度の強い電界強度を得ることができる。
さらに、放電室2、変換器3A及び変換器3Bは、図1、図2から図6に示すようにダブルリッジ導波管により構成されていてもよいし、シングルリッジ導波管により構成されていてもよい。
【0036】
その一方で、放電室2には、高周波電源5Aから供給された高周波電力と、高周波電源5Bから供給された高周波電力により、定在波が形成される。このとき、電源5A及び電源5Bから供給される高周波電力の位相が固定されていると、定在波の位置(位相)が固定され、一対のリッジ電極21a,21bにおける放電室2が延びる方向であるL方向の電界強度の分布に偏りが生じる。
そこで、高周波電源5A及び高周波電源5Bの少なくとも一方から供給される高周波電力の位相を調節することにより、放電室2に形成される定在波の位置の調節が行われる。これにより、一対のリッジ電極21a,21bにおけるL方向の電界強度の分布が時間平均的に均一化される。
具体的には、定在波の位置が、時間の経過に伴いL方向に、Sin波状や、三角波状や、階段(ステップ)状に移動するように高周波電源5A及び高周波電源5Bから供給される高周波電力の位相が調節される。
定在波が移動する範囲や、定在波を移動させる方式(Sin波状、三角波状、階段状等)や位相調整の周期の適正化は、電力の分布や、プラズマからの発光の分布や、プラズマ密度の分布や、製膜された膜に係る特性の分布等に基づいて行われる。膜に係る特性としては、膜厚や、膜質や、太陽電池等の半導体としての特性などを挙げることができる。
リッジ部を形成したリッジ導波管の特性と、高周波電源5A,Bから供給された高周波電力の位相変調により、基板Sに対してH方向とL方向のいずれの方向にも均一なプラズマを広い範囲に生成することができ、大面積基板へ製膜するにあたり、高品質な膜を均一に製膜することができる。
【0037】
一方、母ガス供給管8は、放電室2等から離れた位置に配置され、基板Sの表面にプラズマ製膜処理を施すために必要な材料ガス(たとえば、SiHガス等)を含む母ガスを、放電室2の内部において排気側リッジ電極21a及び基板側リッジ電極21bの間に供給するものである。
【0038】
上述した放電室2は、変換器3A,3Bにおける排気側リッジ部31a及び基板側リッジ電極31b間のリッジ対向間隔(凡そ50〜200mm)よりも、放電室2における排気側リッジ電極21a及び基板側リッジ電極21b間のリッジ対向間隔(凡そ3〜30mm)の方が狭く設定されているため、両リッジ部31a,31bと両リッジ電極21a,21bとの境界部には、数十〜百数十ミリのリッジ段差D(図1参照)が存在している。
高周波電源5A,5Bから供給された高周波電力は、同軸線路及び変換部3A,3Bを介して放電室2のリッジ電極21a,21bに伝送され、リッジ電極21a,21bの間隔を狭く設けることで強い電界を発生し、リッジ電極21a,21bの間に母ガスを導入することでプラズマを生成し、母ガスの材料ガスが分解や活性化する。 生成されたプラズマは電位差により基板Sに向かって移動するため、基板Sに製膜処理が施される。
【0039】
上述したように、本実施形態の製膜装置1は、平板状に形成されて互いに平行に対向配置され、その間にプラズマが生成される排気側リッジ電極21a及び基板側リッジ電極21bを有するリッジ導波管からなる放電室2と、放電室2の両端に隣接して配置され、互いに平行に対向配置された一対の排気側リッジ部31a及び基板側リッジ部31bを有するリッジ導波管からなり、高周波電源5A,5Bを同軸伝送モードであるTEMモードから方形導波管の基本伝送モードであるTEモードに変換して放電室2に伝送し、一対のリッジ電極21a,21bの間にプラズマを発生させる一対の変換器3A,3Bと、基板側リッジ電極21bの外面側に設置され、基板側リッジ電極21bに設置した基板Sの温度を均一に加熱する均熱温調器40と、排気側リッジ電極21aの外面側に設置され、排気側リッジ電極21aの温度を制御する熱吸収温調ユニット50とを有している。
均熱温調器40と熱吸収温調ユニット50とにより、プラズマ処理が施される基板Sの板厚方向の熱流束を制御することができ、基板Sの反り変形が抑制できる。そして、この場合の基板Sは、上述した一対のリッジ電極21a,21bの間に設置されてプラズマ処理が施される。
【0040】
本実施形態の排気側リッジ゛電極21aは、たとえば図3に示すように、複数の通気孔22を設けた板厚の薄い導電性の板で形成する。
排気側リッジ電極21aの通気孔22は、均一な排気ができることを考慮する。
排気側リッジ電極21aに貫通孔として穿設した通気孔22は、平面の中央部が密でかつ周囲部が粗いピッチとする。このようにすれば、材料ガスの供給が排気側リッジ電極21aの周辺方向から、すなわち、非リッジ部導波管9内の母ガス供給管8から基板Sの面中央部に向うように行われるため、基板Sの面中央部にも材料ガスが行き届くようにするための工夫である。従って、排気側リッジ電極21aから排気部7により母ガスが真空排気されるにあたり、排気側リッジ電極21aにおける通気孔22の単位面積当たりの開口率は、母ガス供給管8に近い位置に比べて、母ガス供給管8から遠い位置において高くなるので、排気側リッジ電極21a面内に排気コンダクタンスに分布を設けることで、母ガスが放電室2内に均等に行き渡り、安定した製膜を行うことができる。
【0041】
さらに、排気側リッジ電極21aの通気孔22は、均一な排気ができることに加えて、排気抵抗が大きくならないことを考慮する。
このため、通気孔22の口径をφ2mm〜φ5mm程度とし、各辺の30%〜50%程度の長さとなる中央領域では、通気孔22の配置は30〜50mm程度のピッチとし、周囲領域では、通気孔22の配置は50〜150mm程度のピッチとする。
排気側リッジ電極21a面内に排気コンダクタンスが小さくなりすぎないよう有効な孔サイズとピッチに分布を設けることで、排気抵抗が大きくならずに、母ガスが放電室2内に均等に行き渡り、安定した製膜を行うことができる。
【0042】
そして、排気側リッジ゛電極21aの外面(上面)側には、ヒートバランス用の熱吸収温調ユニット50が密着して設けられている。この熱吸収温調ユニット50は、熱媒循環ラインと吸引口などを設けてあり、たとえば機械加工による剛体として製造され、均熱温調器40と平行に対向する平面部を有している。排気側リッジ電極21aは、熱吸収温調ユニット50の平面部に密着して一体となり、排気側リッジ電極21aが変形しないよう固定される。
もしくは、排気側リッジ電極21aと熱吸収温調ユニット50の熱膨張率が大きく異なる場合には、排気側リッジ電極21aは熱膨張方向に設けた長穴と締結材により、熱膨張の伸びを許容しながら、熱的には密着しているように保持してもよい。
【0043】
具体的には、排気側リッジ電極21aは、基板Sの一端辺側中央に設けた位置決め穴23と、熱膨張差を吸収するように角部や周辺位置に設けた複数箇所(図示の例では5箇所)のスライド長穴24とにより、高剛性の熱吸収温調ユニット50に接触保持して変形を抑制する。すなわち、スライド長穴24の方向を適切に設けることにより、熱膨張した排気側リッジ電極21aは、水平方向にスムーズに変形して凹凸を生じることはない。
同様の位置決め穴23及びスライド長穴24は、非リッジ部導波管9の上フランジにも設けられており、排気側リッジ電極21aは熱吸収温調ユニット50と導波管9の上部フランジとの間に挟持され、保持されている。
【0044】
排気側リッジ電極21aの中央付近に熱吸収温調ユニット50と密着させるよう、±H方向のスライド長穴24が設けられているとさらに好ましいが、締結材の頭が電極面より内側(プラズマ生成側)へ突出しないよう、締結材の頭が薄く曲面をもつなどの工夫がされていると好ましい。
さらに、スライド長穴24は、位置決め穴23から離れた位置にある長穴ほど、熱膨張方向に長穴形状が長くなるよう拡大されると、不要な長穴設置による電極強度低下を防止できるのでさらに好ましい。
【0045】
熱吸収温調ユニット50は、放電室2内のヒートバランスを考慮して所定の温度に制御した熱媒を所定の流量で循環することなどによる熱吸収や加熱を行うことで、排気側リッジ電極21aの温調が可能となっている。
従って、熱吸収温調ユニット50は、高周波電源5A,5Bから供給されプラズマで発生するエネルギーを適切に吸収するとともに、リッジ電極21a,21bのプラズマから基板Sを設置する均熱温調器40への通過熱量や、均熱温調器40から基板Sを通過して熱吸収温調ユニット50へ通過する熱量に伴って基板Sの表裏に生じる温度差の発生を低減するので、基板Sが凹や凸に熱変形することの抑制に有効である。
【0046】
一方、基板側リッジ電極21bも排気側リッジ電極21aと同様に、基板Sの一端辺側中央に設けた位置決め穴23と、熱膨張差を吸収するように角部や周辺位置に設けた複数箇所(図示の例では5箇所)のスライド長穴24とにより、高剛性の均熱温調器40に接触保持して変形を抑制する。すなわち、スライド長穴24の方向を適切に設けることにより、熱膨張した基板側リッジ電極21bは、水平方向にスムーズに変形して凹凸を生じることはない。
同様の位置決め穴23及びスライド長穴24は、非リッジ部導波管9の下フランジにも設けられており、基板側リッジ電極21bは均熱温調器40と非リッジ部導波管9の下部フランジとの間に挟持され、保持されている。
【0047】
基板側リッジ電極21bの中央付近に均熱温調器40と密着させるよう、±H方向のスライド長穴24が設けられているとさらに好ましいが、締結材の頭が電極面より突出しないよう、締結材の頭が薄く曲面をもつなどの工夫がされている。
さらに、スライド長穴24熱膨張方向に長穴形状が長くなるよう拡大されると、不要な長穴設置による電極強度低下を防止できるのでさらに好ましい。
【0048】
さらに、熱吸収温調ユニット50は、セルフクリーニング時の反応(Si(膜や粉)+4F→SiF4(ガス)+1439kcal/mol)による発熱を吸収するので、構造物の温度が高温化して構成材料がセルフクリーニング時にF系ラジカルで腐食が加速されないためにも有効である。
ここで、排気側リッジ電極21a及び基板側リッジ電極21bには、電極板の表裏温度差によるソリ量が小さくなるように、線膨張率αが小さくて熱伝達率λの大きい特性を有し、板厚tが薄い金属の板材が望ましい。
【0049】
実際には、線膨張率αが大きいにもかかわらず熱伝達率λは格段に大きいアルミニウムやアルミニウム合金、もしくは、線膨張率αが小さめで耐食性を有する弱磁性材料のSUS304などが利用可能である。
板厚tは、0.5mm以上で3mm以下が好ましい。0.5mm以下の板厚tでは、素材の表面残留応力のために、排気側リッジ電極21a及び基板側リッジ電極21bの平面度を維持することが難しくなる、また、通過する熱流束と板厚tとの積で表裏温度差が生じるので、熱伝達率λが大きいアルミニウムやアルミニウム合金においても、一辺が1mを越える大型の電極サイズでは、板厚tが3mm以上になると、略1mm以上の凸変形に至る表裏温度差が生じ易くなる。
さらに、より好ましい板厚tは、薄いながらも構造的な取扱強度を確保するため、1mm以上で2mm以下となる。
【0050】
均熱温調器40は、基板Sと密着する基板側リッジ電極21bの温度を均等に加熱するためのヒータであり、熱吸収温調ユニット50と平行に対向する平面部を備えた剛体とされる。この均熱温調器40は、平面部に密着するように保持された基板側リッジ゛電極21bとともに、電極下面(裏面)側を防着板41によって囲まれている。このような防着板41を設けることにより、拡散してきた製膜ラジカルや粉類が蓄積する場所を限定し、基板Sの搬送に支障を生じないようにすることができる。
但し、拡散してきた製膜ラジカルや粉類が少ない製膜条件などにおいては、防着板41を、省略することも可能である。
【0051】
防着板41は、均熱温調器40の下面から延びる支持柱43に支持されるとともに、均熱温調器40の背面側に設けたバネ押付機構42を備えている。このバネ押付機構42は、コイルバネ等の弾性部材により防着板41を上向きに付勢するものであり、支持柱43に対して軸方向(±E方向)に摺動可能に設けられるとともに、支持柱43の中間部に形成された鍔状のストッパ45a,45b間に介装された防着板押圧部材44との間に弾装されたバネ押付機構42によって基板側リッジ電極21b側に付勢されている。
このように、防着板41を基板側リッジ゛電極21bへ向けて押圧することで、製膜に影響される領域、拡散してきた製膜ラジカルや粉類が付着する領域を限定して、製膜装置1の不要な製膜を抑制することができる。
【0052】
また、防着板41は、バネ押付機構42に利用される所定ギャップ内において、図中に矢印A1で示す方向に移動可能である。このため、基板搬送時など必要に応じて均熱温調器40との位置関係を変更できるので、基板Sの搬入・搬出時には、防着板41を邪魔にならない位置まで下方(−E方向へ)スライド゛させることが可能である。
なお、上述した均熱温調器40は、所定温度と所定流量の熱媒の循環により温度を制御された均熱板と基板テーブルとにより構成される従来構造を採用してもよい。また、均熱温調器40を一定の温度に加熱維持し、吸熱が不要な製膜条件で運用する製膜装置には、熱媒循環ではなく電気ヒータを保有した均熱板であってもよく、コスト削減と制御の簡易化が可能となる。
【0053】
熱吸収温調ユニット50は、排気側リッジ電極21aの外面側に設置され、排気側リッジ電極21aの温度を制御するものである。均熱温調器40と熱吸収温調ユニット50により、プラズマ処理が施される基板Sの板厚方向の熱流束を制御するころができ、基板Sの反り変形が抑制できる。すなわち、熱吸収温調ユニット50は、真空排気の均一化が可能な排気マニホールド51と熱吸収が可能な温調装置とを一体化させた構造とされる。また、この熱吸収温調ユニット50と排気側リッジ゛電極21aとは、熱膨張差を吸収しながら強く熱的に接触していることが好ましい。
ここで、真空排気は、排気側リッジ電極21aの通気孔22から排気マニホールド51に設けられた複数の吸引口52、排気共通空間53、排気部7の真空排気配管及び図示しない圧力調整弁や真空ポンプを経由して流れる。
【0054】
このように、排気側リッジ電極21aには複数の通気孔22が穿設され、熱吸収温調ユニット50は、通気孔22を介して放電室2に連通するマニホールド状に真空排気路が形成される。そして、排気部7は、熱吸収温調ユニット50のヘッダー部となる排気マニホールド51に接続され、熱吸収温調ユニット50のマニホールド形状を介して放電室2及び変換器3A,3Bの内部の気体を排出させる。放電室2では、排気側リッジ電極21aの通気孔22から排気マニホールド51に設けられた複数の吸引口52、へと排気側リッジ電極21a面の全面となる広い範囲から略均一に真空排気が可能なように工夫されている。
【0055】
また、熱吸収温調ユニット50の内部に熱媒(温調媒体)が流通する熱媒流路(温調媒体流路)55を有する。熱吸収温調ユニット50の温調には、たとえば純水やフッ化系オイル等の熱媒が使用される。
図4は、排気側リッジ電極21aの上に熱吸収温調ユニット50を重ねた状態を示す平面図であり、この場合の熱媒は、一端部の中央付近に設けた入口55aより排気マニホールド51内の熱媒流路(温調媒体流通路)55に導入され、排気マニホールド51の外周側から内側へと通過させて出口55bから流出させることにより、周囲構造との伝熱影響を受け易い外周側から所定温度に制御された熱媒導入し、これを内側へと導くことで全面にわたって排気マニホールド51の温度を均一化している。この場合、熱媒流路55は全体をより均一な温度にするために、2系統に分割され、各熱媒流路55は吸引口52を避けて設けられているが、これに限定されることはない。
なお、熱媒流路55に供給される熱媒は、図示しない加熱装置及び冷却装置を製膜装置1と離れた図示しない熱媒循環流路中に用いることにより、所定の温度に昇温または降温したものである。
【0056】
このような製膜装置1によれば、プラズマ分布に優れた排気側リッジ電極21aと基板側リッジ電極21bとの間に挟まれるように基板Sを設置したことにより、プラズマ処理の迅速化及び安定化を図り、高品質な製膜を施すことができる。また、熱吸収温調ユニット50を設けたことにより、プラズマ処理が施される基板Sの板厚方向の熱流束が制御されるため、基板Sの表裏温度差や熱膨張による拘束による反りを抑制して、均一なプラズマ特性を確保し、高品質で面内分布に優れた製膜処理を行うことができる。
【0057】
すなわち、基板側リッジ電極21bは均熱温調器40に密着して保持しているので、均熱温調器40の剛性により平面を維持し、排気側リッジ電極21aは、熱吸収温調ユニット50に密着して保持しているので、熱吸収温調ユニット50の剛性により平面を維持することができる。そして、排気側リッジ電極21aを密着させた熱吸収温調ユニット50が、高周波電源5A,5Bから供給されプラズマで発生するエネルギーを適切に吸収し、プラズマから基板Sを設置する基板側リッジ電極21bを密着させた均熱温調器40への通過する熱量や、均熱温調器40から基板Sを通過して熱吸収温調ユニット50へ通過する熱量に伴う基板表裏の温度差を少なくするので、基板Sに生じる凹や凸の変形を抑制できる。
また、上述した本実施形態では、基板Sが排気側リッジ電極21a及び基板側リッジ電極21b間に設置されているので、均熱温調機構40の裏側へ拡散してきた製膜ラジカルや粉類が蓄積される量は格段に少なく、防着板41を省略することも可能である。
【0058】
また、基板搬送時には、基板側リッジ電極21bを降下させて排気側リッジ電極21aと基板側リッジ電極21bとの間隔を広げ、リッジ電極21a,21bに干渉することなく基板Sの搬入・搬出を容易に実施できる。このとき、両端部分の矩形状の非リッジ部導波管9は、たとえば図2のオーバーラップ構造や図5の開口フランジ構造を採用することにより、固定側の上部非リッジ部導波管9a,9a′に対して下部導波管9b,9b′が下方向(−E方向)へ分離・移動するので、基板Sの搬送に支障が生じることはない。
なお、非リッジ部導波管9の上下分離部分には、電位均一性のため、金属ウールや薄板によるシールド材を設けてプラズマ発生時には上部非リッジ部導波管9a,9a′に対して下部導波管9b,9b′の電気的接触特性を維持してもよい。
【0059】
この製膜装置1では、放電室2における一対のリッジ電極21a,21bの間を平行に保った状態で、これら両方のリッジ電極21a,21b間の間隔(リッジ対向間隔d1)を調整可能である。
リッジ電極対向間隔調整機構49は、電極固定部9c及びスライド調整部47及び締結部材48で構成されている。リッジ電極対向間隔調整機構49は、非リッジ部導波管22a,22bのL方向断面形状を変化させることなく導波管特性を維持をすることで、伝送特性を変化しないよう保持しながら、排気側リッジ電極21aに対して基板側リッジ電極21bを平行に保った状態で移動させ、両方のリッジ電極21a,21b間の対向間隔を調整可能にしている。
【0060】
一方、基板側リッジ電極21bのH方向の両辺部は、非リッジ部導波管22a,22bの電極固定部9cに締結固定されるが、基板側リッジ電極21bを上下移動可能にするため、図2に示すように、電極固定部9cの位置を非リッジ部導波管22a,22bに対して上下(±E方向)にスライドさせるスライド調整部47が設けられている。
このスライド調整部47は、電極固定部9cを非リッジ部導波管22a,22bとは別体として非リッジ部導波管22a,22bに重ね合わせてE方向にスライド可能にし、締結部材48で締結してその高さを固定するようにしたものである。このため、電極固定部9cの位置をスライドさせても、非リッジ部導波管22a,22bのL方向断面形状を変化させることがなく、導波管特性を維持するので伝送特性は変化しない。締結部材48は頭が非リッジ部導波管22a,22bの内面側へ突出しないよう、締結部材48の頭が薄く曲面をもつものが好ましい。
【0061】
以上のように構成された製膜装置1において、基板側リッジ電極21bの高さを調整してリッジ電極対向間隔を調整する場合には、締結部材48を緩めてリッジ電極21bと電極固定部22cの高さを移動できるようにした後、図示しない上下スライド機構により吊持枠材44を上下に移動させて、リッジ電極21bの高さを変化させ、所定の高さに基板側リッジ電極21bが到達したら締結部材48で締結して固定する。これによりリッジ電極対向間隔が所定の間隔:d1となる。
【0062】
以上のように構成された製膜装置1においては、放電室2の内部に設置された基板Sに対し、以下の手順によりプラズマ製膜処理が施される。
図1及び図2に示すように、製膜装置1は図示しない真空容器に収納されている。図示しない基板搬送装置により、基板Sが放電室2における基板側リッジ電極21bの上に配置される。その後、図2に示す排気部7により放電室2、変換器3A,3Bの内部から、空気等の気体が排出される。
【0063】
さらに、高周波電源5A,5Bから、周波数が13.56MHz以上、好ましくは30MHzから400MHzの高周波電力が変換器3A,3Bを経て放電室2のリッジ電極21a,21bに供給されるとともに、母ガス供給管8からリッジ電極21a,21bの間に、たとえばSiHガス等の材料ガスが供給される。この時、図示しない真空容器内を排気する排気部7の排気量が制御されて、放電室2等の内部、すなわちリッジ電極21a,21bの間の気圧が0.1kPaから10kPa程度の真空状態に保たれる。
【0064】
高周波電源5A,5Bから供給された高周波電力は、同軸ケーブル4A,4Bと整合器6A,6Bを介して変換器3A,3Bに伝送される。整合器6A,6Bでは高周波電力を伝送する系統におけるインピーダンス等の値が調節される。そして、変換器3A,3Bにおいて高周波電力の伝送モードが同軸伝送モードであるTEMモードから方形導波管の基本伝送モードであるTEモードに変換され、変換部3A,3Bから放電室2のリッジ電極21a,21bに伝送され、リッジ電極21a,21bの間隔を狭く設けることで強い電界を発生し、リッジ電極21a,21bの間に母ガスを導入することで母ガスが電離されてプラズマを生成する。
【0065】
このような状態において、リッジ電極21a,21bの間で材料ガスが分解や活性化する。材料ガスにSiHとHを主成分に用い、このプラズマを基板Sの面内において均一に形成することにより、基板Sの上に均一な膜、たとえばアモルファスシリコン膜や結晶質シリコン膜が形成される。
【0066】
放電室2は、リッジ部(リッジ電極21a,21b)を形成したリッジ導波管であるため、その特性により、リッジ電極21a,21bの間ではH方向の電界強度分布がほぼ均一になる。さらに、高周波電源5A及び高周波電源5Bの少なくとも一方から供給される高周波電力の位相を時間的に変調することにより、放電室2に形成される定在波の位置を変化させ、一対のリッジ電極21a,21bにおけるL方向の電界強度の分布が時間平均的に均一化される。リッジ導波管を用いることにより、伝送損出が小さい効果も加わり、H方向とL方向ともに電界強度分布がほぼ均一化された領域を容易に大面積化できる。
【0067】
またこのとき、排気側リッジ電極21aを密着させた熱吸収温調ユニット50と基板Sを設置する基板側リッジ電極21bを密着させた均熱温調器40が、プラズマで発生するエネルギーを適切に吸収し、基板Sを通過する熱量に伴う基板表裏の温度差を少なくするので、基板Sに生じる凹や凸の変形を抑制できるようになり、基板Sへの製膜にあたり膜厚分布と膜質分応を向上することができる。
【0068】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る真空処理装置について、第2の実施形態を図6に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態はシングルリッジ型に関するものであり、均熱温調器40Aの両端が非リッジ部導波管9Bの部分まで拡大されている。
【0069】
この場合、均熱温調器40Aが±E方向へ上下動するように構成されており、基板Sの搬入・搬出時においては、均熱温調器40Aが降下して非リッジ部導波管9Bから分離する。このような均熱温調器40Aの上下動に伴い、均熱温調器40の両端が非リッジ部導波管9Bから分離する部分は、均熱温調器40Aの表面(上面)になるので、上述した上部非リッジ部導波管9aと下部導波管9bのオーバーラップ構造や開口フランジ構造と比較すれば簡易な構造となる。
【0070】
また、均熱温調器40Aは剛性が高く変形が少ないので、両端の非リッジ部導波管9Bを閉動作した状態では、非リッジ部導波管9Bの上側両端部分との電気的接触安定性が向上し、非リッジ部導波管9B内の電位分布低減に有効となる。このような電位分布の低減は、プラズマの均一化にとって好ましいことである。なお、基板側リッジ電極21bは、均熱温調器40Aと一体の構造としてもよい。
また、非リッジ部導波管9Bの上側両端部分には、電位均一性のため、金属ウールや薄板によるシールド材を設けてプラズマ発生時には均熱温調器40Aとの電気的接触特性を維持してもよい。
【0071】
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る真空処理装置について、第3の実施形態を図7及び図8に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態では、母ガス分配手段が熱吸収温調ユニット50Aの内部に収容されている。この母ガス分配手段80は、熱吸収温調ユニット50Aの内部に張り巡らされた母ガス供給管83と、この母ガス供給管83から熱吸収温調ユニット50Aの内部を経て排気側リッジ電極21a及び基板側リッジ電極21bの間に母ガスを噴出させる複数のガス噴出孔8aとを備えており、真空排気を行う排気部7Aは、非リッジ部導波管9Cに設けられている。
【0072】
図示の母ガス分配手段80は、母ガス供給源の主配管に接続された母ガス導入管81と、母ガス導入管81に接続されたヘッダー部82と、ヘッダー部82から分岐している母ガス供給管83とにより構成される。
この場合、各々が母ガス導入管81に接続されて対向する一対のヘッダー82を備え、両ヘッダー部82の間を複数の母ガス供給管83により連結する構造となっている。
【0073】
また、両ヘッダー部82は、それぞれ母ガス導入管81から分岐されて均一に母ガスが供給される。そして、各母ガス供給管83に母ガス噴出孔8aを設け略均等に母ガスを噴出すことから、母ガス噴出孔8aは放電室2の内部の排気側リッジ電極21aの背面に略均等に配置することで、放電室2の内部に母ガスを均等に行きわたらせることができる。ヘッダー部82と、これから分岐している各母ガス供給管83の間にはオリフィスを設置するなど適切な分配処理がなされ、各母ガス供給管83へ均等に母ガスが分配されることが好ましい。
【0074】
また、複数の母ガス噴出孔8aは、上述した第1の実施形態と同様に、噴出するガス流速は、音速を超えることによりチョーク現象を発生させることで均一なガス流速になるので好ましい。母ガス流量と圧力条件にもよるが、このような噴出し径としてφ0.3mm〜φ0.5mmを用いて母ガス噴出孔8aの数量を設定することが例示される。
母ガス分配手段80は、ヘッダー部82、複数の母ガス供給管83に限定されるものでなく、同様の機能を有する構造であればよい。
【0075】
また、排気部7Aを設けた両端の非リッジ部導波管9Cは、均一な真空排気を行うためには広い空間があることが望ましい。
一方、非リッジ部導波管9Cは、その供給する高周波周波数と伝送モードから適切なサイズが決定されるので、非リッジ部導波管9Cの内部に導波管区画用のメッシュ10を設ける。導波管区画用のメッシュ10は導電性のある金属製であり、ガスの排気を妨げることなく、電位場を区画することが可能である。メッシュ10より下部方向(−E方向)にある下部分は、適切な伝送用サイズを確保したものである。また、メッシュ10より上部方向(+E方向)にある上部分は均一な真空排気に必要な空間としてサイズや形状を自由に選定することができる。メッシュ10の開口部の大きさは、3〜20mm程度が望ましい。
【0076】
(第4の実施形態)
次に、本発明に係る真空処理装置について、第4の実施形態を図9に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態では、上述した母ガス分配手段が、排気部7とともに熱吸収温調ユニット50Aの内部に収容されている。
【0077】
すなわち、この実施形態では、排気側リッジ電極21aと密着する熱吸収温調ユニット50Bの内部に張り巡らされた母ガス分配手段80があり、この母ガス分配手段80から前記熱吸収温調ユニットの内部を経てリッジ電極21a,21bの間に母ガスを噴き出させる複数のガス噴出孔を備えている。
たとえば、熱吸収温調ユニット50Bは母ガス供給管80を内蔵し、両ヘッダー82、複数の母ガス供給管83、複数のガス噴出孔8aを設け、主配管に接続した母ガス導入管81から供給された母ガスを各ガス噴出孔8aから略均等に噴出し、排気側リッジ電極21aに設けた孔から母ガスを基板Sに向けて吹出す。
また、熱吸収温調ユニット50Bでは、排気共通空間53の空間を利用し、排気部7による真空排気を同時に行うものである。
【0078】
このように構成すれば、プラズマ空間へ吹出した母ガスで生成されたSiナノクラスタ等の高次シランガス成分を、流れ方向をそのままUターンさせて、すなわち真空排気の流れによって素早く製膜雰囲気から排出できるので、SiHラジカル拡散を主体とした高性能かつ高品質の製膜を得ることができる。
ここで、排気側リッジ電極21aでは、母ガスを各ガス噴出孔8aから略均等に噴出す孔部分と、排気部7による真空排気を行なう吸引口52とは、必ずしも同一である必要はない。各孔は、基板Sに対して均一な製膜が行なえるよう、各孔のピッチをずらして設けてもよい。この場合、各ガス噴出孔8aから噴出した母ガスは、一端に排気側リッジ電極21aより確実に排出された後に、吸引口52より排気部7による真空排気が行なえるので、基板Sの全面にわたり製膜条件を維持し管理できるので、さらに好ましい。
【0079】
(第5の実施形態)
次に、本発明に係る真空処理装置について、第5の実施形態を図10に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態では、上述した第1の実施形態に対し、基板押付具60を追加して設けた点が異なっている。この基板押付具60は、基板Sの周囲(特に角部)と対応する箇所に複数個配置して、排気側リッジ電極21aの下面に取り付けたものである。
複数個の基板押付具60は、たとえば基板Sの周囲の少なくとも各角部に対応するよう4箇所設け、さらに周囲各辺の中央部分付近に4箇所設けることが好ましい。
【0080】
この複数の基板押付具60は、基板Sを押付ける絶縁材料(アルミナセラミックスやジルコニアセラミックス等)により構成され、プラズマ中における異常放電を抑制する。基板Sを強く押さえすぎて基板Sを破損しないように、さらに、基板押付具60が基板Sの外周方向へ逃げる構造を備えている。
具体的には、基板押付具60の基板接触面を曲面とし、過剰な押圧力が作用した場合には、外側に開くようにして逃げる。この結果、基板押付具60で基板Sの周囲基板Sの凹変形を抑制でき、さらに、過剰な押圧力による基板Sの破損や排気側リッジ電極21a側の変形を抑制できる。
【0081】
すなわち、上述した実施形態は、均熱温調器40と熱吸収温調ユニット50とにより、リッジ電極21a,21bのプラズマから基板Sを設置する均熱温調器40への通過熱量や、均熱温調器40から基板Sを通過して熱吸収温調ユニット50へ通過する熱量に伴う基板表裏の温度差を低減し、基板Sの変形により凹凸が生じることを抑制しているが、たとえば基板Sを設置した直後やプラズマ点灯直後等のように、急速な熱発生の変化がある場合には、熱バランスの崩れにより基板Sが変形する可能性もある。このような場合に基板押付具60が機能し、基板Sの変形を抑制するとともに、過剰な押圧力による基板Sの破損や排気側リッジ電極21aの変形を抑制できる。
【0082】
このように、上述した各実施形態の製膜装置によれば、リッジ電極21a,21bを有するリッジ導波管を利用した放電室2内でプラズマを発生させて、リッジ電極21bに設置した基板Sに製膜処理を施す装置において、リッジ電極21a,21b及び基板Sの熱変形を抑制できるので、大型の基板Sにも安定した製膜処理を行うことができる。
【0083】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
たとえば、上記の実施形態においては、基板Sを水平に設置する横型の製膜装置1に適用した構成例を説明したが、基板Sを鉛直上下方向に傾斜させて設置する縦型の製膜装置にも適用することができる。傾斜させて設置する場合は、基板Sは鉛直方向からθ=7°〜12°傾斜させることで、基板自重のsin(θ)成分により基板を安定して支持させるとともに、基板搬送時のゲート弁通過幅や製膜装置の設置床面積を少なくできるので、好ましい。
【0084】
また、上記の実施形態においては、本発明をプラズマCVD法による製膜装置1に適用して説明したが、この発明は製膜装置に限られることなく、プラズマエッチング等のプラズマ処理を行う装置等、その他各種の装置にも広範囲に適用可能なものである。
【符号の説明】
【0085】
1 製膜装置(真空処理装置)
2 放電室(プロセス室)
3A,3B 変換器
4A,4B 同軸ケーブル(電源ライン)
5A,5B 高周波電源(電源手段)
6A,6B 整合器
7,7A 排気部(排気手段)
8,83 母ガス供給管(母ガス供給手段)
8a ガス噴出孔
9,9B,9C 非リッジ部導波管
21a 排気側リッジ電極(リッジ電極)
21b 基板側リッジ電極(リッジ電極)
22 通気孔(貫通孔)
23 位置決め穴
24 スライド長穴
31a 排気側リッジ部(リッジ部)
31b 基板側リッジ部(リッジ部)
40 均熱温調器
41 防着板
42 バネ押付機構
43 支持柱
44 防着板押圧部材
50,50A 熱吸収温調ユニット
51 排気マニホールド
52 吸引口
53 排気共通空間
55 熱媒流路(温調媒体流通路)
55a 入口
55b 出口
60 基板押付具
80 母ガス分配手段
81 母ガス導入管
82 ヘッダー部
83 母ガス供給管
S 基板
D リッジ段差
SA,SB サーキュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状に形成されて互いに平行に対向配置され、その間にプラズマが生成される一方及び他方のリッジ電極を有するリッジ導波管からなる放電室と、
前記放電室の両端に隣接して配置され、互いに平行に対向配置された一対のリッジ部を有するリッジ導波管からなり、高周波電源から供給された高周波電力を方形導波管の基本伝送モードに変換して前記放電室に伝送し、前記一方及び他方のリッジ電極の間にプラズマを発生させる一対の変換器と、
前記他方のリッジ電極の外面側に設置され、前記他方のリッジ電極の温度を制御する均熱温調器と、
前記一方のリッジ電極の外面側に設置され、前記一方のリッジ電極の温度を制御する熱吸収温調ユニットと、
前記放電室及び前記変換器の内部の気体を排出させる排気手段と、
前記基板にプラズマ処理を施すのに必要な母ガスを前記一方及び他方のリッジ電極の間に供給する母ガス供給手段と、
を有し、
前記基板は前記一方及び他方のリッジ電極の間に設置されてプラズマ処理が施されることを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
前記均熱温調器と前記熱吸収温調ユニットは、互いに平行に対向する平面部を有し、前記他方のリッジ電極は前記均熱温調器の平面部に密着するように保持され、前記一方のリッジ電極は前記熱吸収温調ユニットの平面部に密着するように保持されていることを特徴とする請求項1に記載の真空処理装置。
【請求項3】
前記一方及び他方のリッジ電極を、厚さ0.5mm以上で3mm以下の金属板としたことを特徴とする請求項1または2に記載の真空処理装置。
【請求項4】
前記一方のリッジ電極と、前記他方のリッジ電極の少なくともいずれかには、該リッジ電極を締結部材で電極保持部に締結保持するための締結部材挿通孔が形成され、この締結部材挿通孔は、前記電極保持部に対する前記リッジ電極の熱膨張方向に形状が長穴とされるとともに、前記締結部材の締結力は、前記リッジ電極が熱膨張した際に該リッジ電極の伸びを許容できる強度に設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の真空処理装置。
【請求項5】
前記一方のリッジ電極には複数の通気孔が穿設され、前記熱吸収温調ユニットは該通気孔を介して前記放電室に連通するマニホールド状に形成されるとともに、前記熱吸収温調ユニットの内部に温調媒体が流通する温調媒体流通路を有し、前記排気手段は前記熱吸収温調ユニットのヘッダー部に接続されて、該熱吸収温調ユニットのマニホールド形状を介して前記放電室及び前記変換器の内部の気体を排出させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の真空処理装置。
【請求項6】
前記母ガス供給手段は、前記放電室の非リッジ部導波管の内部に収容され、該非リッジ部導波管の内部の長手方向に沿って配設された母ガス供給管と、この母ガス供給管から前記一方及び他方のリッジ電極の間に母ガスを噴き出させる複数のガス噴出孔とを備えてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の真空処理装置。
【請求項7】
前記一方のリッジ電極における前記通気孔の単位面積当たりの開口率は、前記排気手段に対して前記母ガス供給手段に近い位置範囲に比べて、前記母ガス供給手段から遠い位置範囲において高くなることを特徴とする請求項6に記載の真空処理装置。
【請求項8】
前記母ガス供給手段は、前記熱吸収温調ユニットの内部に収容され、該母ガス供給手段は、前記熱吸収温調ユニットの内部に張り巡らされた母ガス分配手段と、この母ガス分配手段から前記熱吸収温調ユニットの内部を経て前記一方及び他方のリッジ電極の間に母ガスを噴き出させる複数のガス噴出孔とを備えてなることを特徴とする請求項5に記載の真空処理装置。
【請求項9】
前記一方のリッジ電極には複数の通気孔が穿設され、前記熱吸収温調ユニットは該通気孔を介して前記放電室に連通するマニホールド状に形成されるとともに、その内部に温調媒体が流通する温調媒体流通路を有し、この熱吸収温調ユニットの内部に前記母ガス供給手段が設けられ、該母ガス供給手段は、前記熱吸収温調ユニットの内部に張り巡らされた母ガス分配手段と、この母ガス分配手段から前記熱吸収温調ユニットの内部を経て前記一方及び他方のリッジ電極の間に母ガスを噴き出させる複数のガス噴出孔とを備えてなる一方、前記排気手段は前記放電室の導波管非リッジ部に接続されたことを特徴とする請求項4に記載の真空処理装置。
【請求項10】
前記非リッジ部導波管の断面形状を変化させることなく、前記一方のリッジ電極と他方のリッジ電極との間を平行に保った状態で、該両リッジ電極間の間隔を調整可能にするリッジ電極支持調整機構をさらに有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の真空処理装置。
【請求項11】
前記一方及び他方のリッジ電極の間に設置された前記基板は、前記一方のリッジ電極の周辺部にあり、所定支持力で前記基板周囲を押え支持する複数の基板押付具を有し、
前記基板押付具は、所定支持力を越える場合には、前記基板周辺の押付を解除することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の真空処理装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の真空処理装置を用いて基板に製膜処理を施すことを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−38596(P2012−38596A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178108(P2010−178108)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】