磁気メモリ素子及び磁気メモリ装置
【課題】電流で書き込み動作を行うことができる大容量の磁気メモリ及び磁気メモリ装置を提供する。
【解決手段】磁化が固定された第1の磁性層10と、磁化が可変の第2の磁性層30と、第1の磁性層10と第2の磁性層30との間に設けられた第1の中間層20と、第1の磁性層10と第2の磁性層30とを結ぶ第1の方向に直交する第2の方向に延在し、第2の磁性層30に隣接し、スピン波を伝搬する第1の磁性細線40と、第1の磁性細線40の一端に設けられた第1のスピン波入力部と、第1の磁性細線40の他端に設けられた第1のスピン波検出部と、を備える。
【解決手段】磁化が固定された第1の磁性層10と、磁化が可変の第2の磁性層30と、第1の磁性層10と第2の磁性層30との間に設けられた第1の中間層20と、第1の磁性層10と第2の磁性層30とを結ぶ第1の方向に直交する第2の方向に延在し、第2の磁性層30に隣接し、スピン波を伝搬する第1の磁性細線40と、第1の磁性細線40の一端に設けられた第1のスピン波入力部と、第1の磁性細線40の他端に設けられた第1のスピン波検出部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気メモリ素子及び磁気メモリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メモリの一つに磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)が挙げられる。MRAMは、情報を記録する部分に強磁性体を用いて、強磁性体磁化の向きにより長時間情報を保持する。MRAMへの情報の書き込みは、磁界印加又はスピン偏極電流注入によって磁化を反転させることで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−21352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MRAMでは、書き込む情報量に比例して、回路に流す電流の大きさも増加する。また、情報を保持するトンネル磁気抵抗素子が高抵抗であるため、それらを直列に接続し大容量化を図ろうとしても回路全体の抵抗値が大きくなって動作速度を著しく低下させることが問題となっていた。
【0005】
そこで本発明の実施形態は、低電流で書き込み動作を行うことができ、かつ高速動作が可能な大容量の磁気メモリ素子及び磁気メモリ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る磁気メモリ素子は、磁化が固定された第1の磁性層と、磁化が可変の第2の磁性層と、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に設けられた第1の中間層と、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層とを結ぶ第1の方向に直交する第2の方向に延在し、前記第2の磁性層に隣接し、スピン波を伝搬する第1の磁性細線と、前記第1の磁性細線の一端に設けられた第1のスピン波入力部と、前記第1の磁性細線の他端に設けられた第1のスピン波検出部と、を備え、前記第1のスピン波入力部によって前記第1の磁性細線に第1のスピン波を伝搬させ前記第1の磁性層から前記第2の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を反転させて書き込みを行い、又は前記第1の磁性層から前記第2の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を歳差運動させて前記第1の磁性細線に第2のスピン波を生成し伝搬させて前記第1のスピン波検出部で前記第2のスピンを検出することで読み出しを行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気メモリ素子を示す図。
【図2】第1の実施形態を説明するための図。
【図3】第1の実施形態を説明するための図。
【図4】第1の実施形態を説明するための図。
【図5】第1の実施形態を説明するための図。
【図6】第1の実施形態を説明するための図。
【図7】第1の実施形態を説明するための図。
【図8】第1の実施形態を説明するための図。
【図9】第1の実施形態を説明するための図。
【図10】第1の実施形態を説明するための図。
【図11】第1の実施形態を説明するための図。
【図12】第1の実施形態を説明するための図。
【図13】第1の実施形態を説明するための図。
【図14】第1の実施形態の変形例を説明するための図。
【図15】第1の実施形態の変形例を説明するための図。
【図16】本発明の第2の実施形態に係る磁気メモリ装置を示す図。
【図17】第2の実施形態を説明するための図。
【図18】第2の実施形態を説明するための図。
【図19】第2の実施形態を説明するための図。
【図20】第2の実施形態を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照して、本発明の各実施形態を説明する。同じ符号が付されているものは同様のものを示す。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
(第1の実施形態)
【0009】
図1は磁気メモリ素子(磁気メモリセルともいう)100を示す図である。
【0010】
磁気メモリ素子100は、参照層(第1の磁性層)10と、中間層20と、自由層(第2の磁性層)30と、磁性細線40とを備える。
【0011】
図1に示すにようにx軸、y軸、及びz軸はそれぞれ直交している。z軸方向は積層方向を示し、x軸方向及びy軸方向は積層方向に対して垂直な方向を示す。図1の左図は磁気メモリ素子100をx軸方向から眺めた図である。図1の右図は、磁気メモリ素子100をy軸方向から眺めた図である。
【0012】
参照層10、中間層20、自由層30は、z軸方向に積層されている。
【0013】
x軸方向において、自由層30に隣接してx軸方向に延在した磁性細線40が設けられている。
【0014】
参照層10、自由層30は、強磁性体、フェリ磁性体、又は人工格子である。
【0015】
強磁性体として、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、及びクロム(Cr)から選択される少なくとも一つの元素と、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、及びロジウム(Rh)から選択される少なくとも一つの元素との合金を用いることができる。強磁性体として、例えばCoPt、NiFe、CoCrPt等も用いることができる。強磁性体の特性は、組成の変更、熱処理等によって変化させることができる。
【0016】
フェリ磁性体として、TbFeCo及びGdFeCo等の希土類と遷移金属のアモルファス合金を用いることができる。これらの材料は、スパッタ装置で薄膜として条件を選んで堆積すると磁化がz軸方向に向きやすくなる傾向があり、磁化を磁性膜に対して垂直にしたい場合に用いることができる。
【0017】
人工格子として、Co/Pt、Co/Pd、又はCo/Niの積層構造を用いることができる。これらの積層構造を用いることで、磁化をz軸方向に向けることが出来る。これらの積層構造は、最密六方構造の<0001>配向、又は面心立方構造の<111>配向を有しやすい。
【0018】
参照層10は、磁化が一方向に固定されている。参照層10の磁化は、積層方向に向いている。参照層10の膜厚は、10nm以上50nm以下である。電流を流した際に自由層30で発生するスピントルクの反作用によって、参照層10の磁化の向きが変化してしまう可能性がある。このため、参照層10のダンピング係数は、自由層30のダンピング係数よりも大きいことが望ましい。この場合、スピントルクによる参照層10の磁化反転に必要な時間が長くなる。よって、電流を流す時間が短くなるので参照層10の磁化が反転しにくくなる。
【0019】
自由層30は、磁化が参照層10の磁化よりも弱く固定されている。このため、磁化がある程度自由に回転することができる(可変であるともいう)。自由層30の磁化は、積層方向に向いている。自由層30の膜厚は、2nm以上20nm以下である。
【0020】
中間層20は、参照層10と自由層30との間に設けられることで、参照層10の磁化と自由層30の磁化の向きをそれぞれ独立に向けることがきる。中間層20には、導電性材料を用いることができる。導電性材料としては、例えば銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、及びアルミニウム(Al)から選択される少なくとも一つの元素を用いることができる。また、これらの元素を組み合わせて合金として用いてもよい。中間層20の膜厚は、1.5nm以上20nm以下である。
【0021】
磁性細線40は、スピン波を伝搬するスピン波伝搬配線である。磁性細線40は、強磁性体、フェリ磁性体、又は絶縁体酸化物のフェリ磁性体である。
【0022】
強磁性体として、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、及びクロム(Cr)から選択される少なくとも一つの元素と、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、及びロジウム(Rh)から選択される少なくとも一つの元素との合金を用いることができる。強磁性体には、例えばCoPt、NiFe、CoCrPt等などもある。強磁性体の特性は、組成の変更、熱処理等によって変化させることができる。
【0023】
フェリ磁性体として、TbFeCo及びGdFeCo等の希土類と遷移金属のアモルファス合金を用いることができる。
【0024】
絶縁体酸化物のフェリ磁性体として、例えばスピネル構造を有するフェライト(M−Fe2O4)、又はガーネット構造を持つ希土類鉄ガーネット(R3−Fe5O12)を用いることができる。ここで、Mはマンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)のいずれか、又はこれらの元素から選択される少なくとも二つの元素の組合せである。また、Rはイットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テリビウム(Tb)、シスプロシウム(Dy)、ホルミニウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)から選択される少なくとも一つの元素である。希土類鉄ガーネットには、アルミニウム(Al)を添加してもよい。
【0025】
磁性細線40の磁化は、基本的には形状異方性により磁性細線40が延在する方向に向いている。しかしながら、組成の変更、熱処理等によって磁化の向きを変化させることができる。
【0026】
次に、磁気メモリ素子100の動作原理について説明する。
【0027】
図2は、参照層10の磁化と自由層30の磁化の挙動を説明するための図である。磁気メモリ素子100に流す電流の強度・通電時間等は同一条件であるとする。
【0028】
図2(A)では、参照層10の磁化と自由層30の磁化はともに紙面上向き(z軸上)である(磁化が膜面に対して垂直方向を向いている)。すなわち、参照層10の磁化と自由層30の磁化は平行である。この状態を『平行磁化配置』と呼ぶことにする。図2(B)では、参照層10の磁化は紙面上向きであり、自由層30の磁化は紙面下向きである。すなわち、参照層10の磁化と自由層30の磁化は反平行である。この状態を『反平行磁化配置』と呼ぶことにする。
【0029】
平行磁化配置の状態にある磁気メモリ素子100に対して、自由層30から参照層10に向けて電流を流しても自由層30の磁化に対するスピントルクは殆ど発生しない。このため、自由層30の磁化方向は殆ど変化しない(図2(A)の右上図)。一方、参照層10から自由層30に向けて電流を流すと参照層10からスピン注入が行われる。このスピン注入により、自由層30の磁化を反転させようとするスピントルクが作用する。十分に大きな電流を流した場合にはスピントルクにより自由層30の磁化が反転する(図2(A)の右下図)。
【0030】
反平行磁化配置の状態にある磁気メモリ素子100では、平行磁化配置の状態にある磁気メモリ素子100の磁化とは反対の挙動を示す。参照層10から自由層30に向けて電流を流しても自由層10の磁化は反転しない。一方、自由層30から参照層10に向けて電流を流すと、参照層10からスピン注入が行われ自由層30の磁化が反転する。
【0031】
図3は、自由層30の磁化反転と時間との関係を説明するための図である。
【0032】
横軸は時間を示す。t0は電流を流し始めた時間である。図3の上図の縦軸は電流Iの大きさを示す。図3の下図の縦軸は、自由層30の磁化のz軸成分mzの大きさを示す。“mz”は磁化の向きは紙面上向きであることを示す。“−mz”は磁化の向きが紙面下向きであること示す。なお、ここでは、磁気メモリ素子100の磁化状態は平行磁化配置である(図2(A)の状態)とする。
【0033】
自由層30に電流が流れていない状態では、自由層30の磁化は熱揺らぎにより磁化の向きが小刻みに変化している。自由層30に電流を流すと、この状態に対してスピントルクが作用する。そして、z軸方向を回転軸として自由層30の磁化は歳差運動を始める。この時間をt1とする。さらに、時間が経過すると自由層30の磁化の振幅が大きくなり自由層30の磁化が反転する(図3(A))。この時間をt2とする。なお、自由層30の磁化が反転するには、反転するのに必要な閾値電流がある。閾値電流を超える電流を流すと自由層30の磁化は反転する。さらに、自由層30に流す電流値が大きくなると、時間t1、t2は短くなる。
【0034】
一方、閾値電流を超える電流を流しても時間t2に到達する前に、電流を切ると自由層30の磁化は反転しない。よって、磁気メモリ素子100の磁化状態は平行磁化配置に戻る(図3(B))。
【0035】
次に、磁気メモリ素子100の書込み動作について説明する。
【0036】
平行磁化配置を”0”信号、反平行磁化配置を”1”信号とする。閾値よりも大きな電流Iを参照層10から自由層30に向かって時間t2よりも長く流す(この電流を+Iとする)と、信号は”0”から”1”になる。一方で、閾値よりも大きな電流Iを自由層30から参照層10に向かって時間t2よりも長く流す(この電流を−Iとする)と、信号は”1”から”0”になる。
【0037】
磁性細線40のある一端に対して、例えば局所的に交番磁界を印加すると磁性細線40内にスピン波を発生させることができる。スピン波は磁化の歳差運動が伝搬する現象である。このために、磁性細線40の表面に磁極が発生する。この磁極の発生により磁力線が閉じるように外部に交番磁界を発生させる。従って、図1に示すように自由層30の近傍に磁性細線40が存在すると、自由層30にスピン波由来の交番磁界が印加される。
【0038】
自由層30に注入されるスピンの向きと自由層30の磁化の向きが完全に平行あるいは反平行である場合(コリニアな状態)には、スピントルクは発生しないので自由層30の磁化は反転しない。しかし、上記したように参照層10の磁化と自由層30の磁化は、熱揺らぎによって磁化の方向が絶えず微小な角度で変化している。このため、磁気メモリ素子100に電流を流すと、偶発的に有限なスピントルクが自由層30の磁化に作用し自由層30の磁化が歳差運動を開始する(時間t1)。その結果、自由層30の磁化が反転する(時間t2)。
【0039】
図4は、磁性細線40にスピン波がない場合とスピン波がある場合の自由層30の磁化反転と時間の関係を説明するための図である。
【0040】
図4(A)に示すように、自由層30の磁化が反転する時間t2よりも前に電流Iを切ると、自由層30の磁化は反転しない。
【0041】
一方、磁気メモリ素子100では、交番磁界を自由層30に印加する磁性細線40を有している。このため、電流を磁気メモリ素子100に流すよりも前から、熱揺らぎによりも大きなエネルギーを自由層30の磁化に寄与させることができる。よって、自由層30の磁化の向きは、熱揺らぎによりも大きく磁化の向きが変化することになる。つまり、電流を磁気メモリ素子100に流すよりも前にスピン波を磁性細線40に伝搬させることで、自由層30の磁化が歳差運動を開始する時間t1及び自由層30の磁化が反転する時間t2を短くすることができる(図4(B)の時間t3)。ここでは、磁気メモリ素子100の磁化状態が平行磁化配置であるとして説明した。しかし、反平行磁化配置の場合は電流の向きを−Iとすれば、スピン波素子100は平行磁化配置の場合と同様の動作を行うことができる。
【0042】
次に、磁気メモリ素子100の読み出し動作について説明する。
【0043】
自由層30の磁化の磁化反転過程は歳差運動を伴う。この歳差運動によって自由層30の周りには交番磁界が発生する。この交番磁界が磁性細線40に印加されると、磁性細線40内でスピン波が発生する。磁気メモリ素子100に電流を流したときに、磁性細線40にスピン波が発生しているか否かを観測することで磁気メモリ素子100の磁化状態を読み出すことができる。すなわち、+Iの電流を磁気メモリ素子100に流すと平行磁化配置の場合にはスピン波が磁性細線40内に発生し、反平行磁化配置の場合にはスピン波は発生しない。
【0044】
電流を磁気メモリ素子100に流す時間はt2よりも短い。これは、自由層30の磁化反転を防ぐためである。電流を流す時間の設計値にマージンを与えるため、読み出しに用いる電流値の絶対値は、書込みに用いる電流値の絶対値よりも小さく、自由層30の磁化が反転する電流閾値よりも大きいことが好ましい。
【0045】
図5は、自由層30の磁化の振る舞いを説明するための図である。縦軸は磁化の振幅の大きさを示す。横軸は時間を示す。mzは、磁化が紙面上向き又は紙面下向き(積層方向)を示す。mxは、磁化が紙面右向き又は紙面左向き(面内方向)を示す。自由層30に電流を流す(電流ON)と、自由層30に電流を流すのをやめるまで(電流OFF)mxは大きく振動する。このとき、mzは、下に触れ磁化が反転しようとする。しかし、電流OFFにすると、mxは減衰振動する。このとき、mzは、下に触れ磁化が反転しようとしていたが反転前の状態に戻る。つまり、磁化が反転するには電流を流してからある程度の時間が経過している必要がある。
【0046】
なお、自由層30の磁化が安定した歳差運動が行なえるように、磁気メモリ素子100に電流を流す前に、磁性細線40にスピン波を伝搬させて自由層30の磁化歳差運動を共鳴励起させてもよい。これは、熱揺らぎによるバラツキを低減するためである。
【0047】
図6は、磁性細線40に接続されている検出部(スピン波検出部ともいう)50、60を示す図である。図6(A)は検出部50を示す。図6(B)は検出部60を示す。検出部50、60は動作原理が同じであるが、構成が異なる。
【0048】
検出部50は、磁性細線40上に設けられた非磁性層51、強磁性層52、反強磁性層53、電極54とを備える。
【0049】
非磁性層51には、例えばTa、Ru、Pt、Pd、Ir、Cu、Au、Ag、Cr、Alをその構成材料として用いることができる。これらの元素を少なくとも2種類含む合金を用いてもよい。また、これらの元素から少なくとも1つを選択し他の元素と組み合わせた合金でも良い。これらの元素を積層構造を用いてもよい。また、MgO、アルミナ(Al2O3)、又はSiO2などの非磁性絶縁体を用いることもできる。
【0050】
強磁性層52は、面内方向に対して垂直方向(積層方向)に磁化が向いた層である。強磁性層52には、例えばFeVPd、FeCrPd、CoFePt等をその構成材料として用いることができる。すなわち、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)から選択される少なくとも一つの元素と、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)から選択される少なくとも一つの元素との組み合わせによる合金を用いることができる。これらは、構成する磁性材料の組成や熱処理により特性を調整することができる。また、TbFeCo、GdFeCoなどの希土類−遷移金属のアモルファス合金、またはCo/Pt、Co/Pd、Co/Niの積層構造なども望ましい。さらに、非磁性層51との組み合わせで垂直磁化となる結晶配向を制御したCo/Ru、Fe/Au、Ni/Cu等の薄膜も用いることができる。強磁性層52に、イットリウム鉄ガーネットや、マンガンフェライト、又はγ―酸化鉄のようなフェライト系酸化物を用いるとスピン波の損失を少なくすることができる。さらに、磁性半導体を用いることで機能性を向上させることもできる。
【0051】
反強磁性層53は、強磁性層52の磁化方向を固着するために用いられる。反強磁性層53としては、例えばIrMnを用いることができる。
【0052】
電極54には、導電性の非磁性材料を用いる。
【0053】
電極54に用いる非磁性材料としては、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、又はアルミニウム(Al)がある。また、これらの元素を組み合わせた合金でももよい。さらに、非磁性材料として、カーボンナノチューブやカーボンナノワイヤ、グラフェン等の材料を用いることもできる。
【0054】
検出部50の電気抵抗を測定するとスピン波を検出することができる。これは、強磁性層52内の磁化が一方向に固着されていてかつスピン波が磁性細線40内を伝搬してきて磁性細線40内の磁化が歳差運動すると磁気抵抗効果(MR:Magneto-Resistance)によって検出部50の電気抵抗が変化するからである。
【0055】
また、検出部50は、検出部60のような構成にもできる。
【0056】
この場合、検出部60は、磁性細線40上に設けられた非磁性層51、強磁性層52、中間層61、強磁性層62、電極54とを備える。
【0057】
強磁性層52と強磁性層62は中間層61を介して反強磁性結合をしている。このようにすることで、強磁性層52の磁化の向きを強く固着することができる。
【0058】
強磁性層62の材料は強磁性層52の材料と同様である。
【0059】
中間層61には、例えばRuを用いることができる。
【0060】
図7は、磁性細線40に接続されている入力部(スピン波入力部ともいう)70、80を示す図である。図7(A)は入力部70を示す。図7(B)は入力部80を示す。入力部70、80は動作原理が同じであるが、構成が異なる。
【0061】
入力部70は、磁性細線40上に設けられたスペーサー層71、強磁性層52、反強磁性層53、電極54とを備える。また、磁性細線40の入力部70が設けられた側とは反対側には、電極72が設けられている。磁性細線40と電極72との間に非磁性層等を介しても良い。
【0062】
スペーサー層71には、トンネル絶縁膜材料又は非磁性金属材料をその構成材料として用いることができる。
【0063】
トンネル絶縁膜材料としては、例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)から選択される少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物、フッ化物、又は酸窒化物などを用いることができる。また、他にもAlAs、GaN、AlN、ZnSe、ZnO、MgOなどの大きなエネルギーギャップを有する半導体材料を用いることもできる。
【0064】
非磁性金属材料としては、例えば銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、又はアルミニウム(Al)を用いることができる。また、これらの元素を組み合わせた合金でもよい。
【0065】
電極72の材料は、電極54の材料と同様である。
【0066】
入力部70を用いて、磁性細線40にスピン波を発生させる方法について説明する。
【0067】
電極54から電流を電極72に向けて流す。このとき、磁性細線40内の磁化にスピントルクが作用するため磁性細線40内の磁化は歳差運動を始める。この歳差運動が磁性細線40内で次々と伝わることでスピン波が生じる。また、電極54と電極72との間に電圧を印加することで磁性細線40内の磁化歳差運動を励起してもよい。
【0068】
また、入力部70は、入力部80のような構成にもできる。
【0069】
この場合、入力部80は、磁性細線40上に設けられたスペーサー層71、強磁性層52、中間層61、強磁性層62、電極54を備える。
【0070】
強磁性層52と強磁性層62は中間層61を介して反強磁性結合をしている。このようにすることで、強磁性層52の磁化の向きを強く固着することができる。
【0071】
強磁性層62の材料は強磁性層52の材料と同様である。
【0072】
中間層61には、例えばRuを用いることができる。
【0073】
次に、磁気メモリ素子100の作製方法の一例について説明する。
【0074】
図8に示すように、磁気メモリ素子100は、下部リード線とその上に形成された金属多層膜の上に設けられている。下部リード線上には、Ta層、Ru層、Cu層が設けられている。一方で上部リード線と参照層10との間にも金属多層膜が設けられている。参照層10上にはCu層、Ta層が設けられている。
【0075】
まず、基板上に絶縁体を積層し、マスクを用いて絶縁体をエッチングすることで基板表面の一部を露出させる。露出した部分に下部リード線を埋め込む。次に、超高真空スパッタ装置を用いて下部リード線上及び絶縁体上にTa層、Ru層、Cu層、自由層30、中間層、参照層10、Cu層、Ta層の順に積層する(図9)。
【0076】
次に積層した構造上にネガレジストを塗布し、電子線露光装置を用いて下部リード線上に積層した構造のうち磁気メモリセル100となる部分のみを露光・現像することでネガレジストを残す。残ったネガレジストをパターンとしてイオンミリングを行い、レジストパターンの下部にある部分を残す。このとき、イオンミリングの条件によっては下部リード線上に積層された構造がテーパー形状となる。その後、ネガレジストを除去する(図10)。
【0077】
次に、超高真空スパッタ装置を用いてTa層上及び絶縁体上に絶縁体を積層する。そして、化学機械研磨(CMP)を行って平坦化をおこなったのち、ポジレジストを塗布し、電子線露光装置を用いて磁性細線40の部分のみレジストが剥離されるよう露光・現像し、イオンミリングによりレジストのない部分だけTa層を取り除く。そして反応性イオンエッチングを用いてTa層をマスクとして絶縁体の上面が自由層30の下側に位置するように絶縁体をエッチングする(図11)。
【0078】
次に、イオンミリングを用いて下部リード線上に積層された構造の側壁部分の化合物を取り除いた後、不活性ガスで封止しながら原子層堆積装置に試料を搬入し、下部リード線上に積層された構造の側面に絶縁膜を堆積し、残りの部分は電子線レジストともに剥離する(図12)。
【0079】
次に、超高真空スパッタ装置を用いてTa層上、絶縁体上、及び絶縁膜上に磁性細線40となるとなる磁性層を堆積する。そして、Ta層が出てくるまでCMPにて平坦化を行い、その後ポジレジストを塗布して電子線露光装置により磁気メモリ素子100とその周辺部だけ露光し現像、これをマスクとして磁性層の上面が自由層30の上側に位置するように磁性層をイオンミリングにより削り、レジストを除去する。次に、Ta層上、絶縁膜上、及び磁性層上にポジレジストを堆積する。KrF露光装置を用いて磁気メモリ素子とその周辺にまで伸びた磁性細線40に対応したポジレジストのパターンを形成し、イオンミリングを用いてポジレジスト以外の部分を削る(図13)。
【0080】
次に、超高真空スパッタ装置を用いて絶縁体を全体に堆積し、化学機械研磨(CMP)を行って平坦化を行う。最後に電子露光とイオンミリングを用いてTa層の上面を露出させ、上部リード線となる金属層を超高真空スパッタ装置で堆積させ、KrF露光装置とイオンミリングを用いて配線を形成する(図8)
(変形例1)
【0081】
図14は、磁気メモリ素子100の変形例を示す図である。
【0082】
図14(A)に示す磁気メモリ素子200は、磁性細線40の一部が中間層20にも設けられている点が磁気メモリ素子100と異なる。このような構成の磁気メモリ素子200でも、磁性細線40からの交番磁界が自由層30の磁化に作用するために、磁気メモリ素子として動作する。
【0083】
図14(B)に示す磁気メモリ素子300は、磁性細線40が2本設けられている点が磁気メモリ素子100と異なる。磁性細線40が2本あることで、自由層30の磁化に対して交番磁界をより強く作用させることができる。
(変形例2)
【0084】
図15は、磁気メモリ素子100の変形例を示す図である。
【0085】
図15(A)に示す磁気メモリ素子400は、磁性細線40と自由層30との間に絶縁膜45が設けられている点が磁気メモリ素子100と異なる。このような磁気メモリ素子400の構成によって、磁性細線40と自由層30との交換結合を低減させることができる。なお、絶縁層45の部分は空隙としてもよい。
【0086】
絶縁膜45には、MgO、アルミナ(Al2O3)、又はSiO2等を用いることができる。
【0087】
図15(B)に示す磁気メモリ素子500は、磁性細線40が2本設けられ、磁性細線40と自由層30との間に絶縁膜45が設けられている点が磁気メモリ素子100と異なる。磁性細線40が2本あることで、自由層30の磁化に対して交番磁界をより強く作用させることができる。また、絶縁膜45があることで、磁性細線40と自由層30との交換結合を低減させることができる。
(第2の実施形態)
【0088】
図16は、磁気メモリ装置600を示す図である。
【0089】
磁気メモリ装置600は、複数の磁気メモリ素子が金属配線(電極ともいう)を介して直列に接続されている。ここで、磁気メモリ素子とは、磁気メモリ素子100、200、300、400、500、600を示す。紙面上方の磁気メモリ素子から第1番目、第i番目、第N番目とする。iとNは自然数で1<i<Nである。Nは最後尾の磁気メモリ素子である。第1番目の磁気メモリ素子の参照層10は、トランジスタTr_PとTr_Mのソース端子又はドレイン端子と金属配線で接続されている。それぞれの磁気メモリ素子の磁性細線40の一端にはスピン波を発生させる入力部が接続されている。また、磁性細線40の他端にはスピン波を検出する検出部が接続されている。第N番目の磁気メモリ素子の自由層30は、金属配線によって外部回路(図示せず)の共通端子と接続されている。
【0090】
なお、図17に示すように、磁気メモリ装置600は、x軸方向に沿って磁気メモリ素子が複数並べられ、それぞれの磁気メモリ素子が磁性細線40を共用していてもよい。このようにすると、磁性細線40の一端・他端にだけ入力部、検出部、外部回路を設ければよいので、磁気メモリ装置600を高い空間密度で並べることができる。
【0091】
次に、磁気メモリ装置600の書き込み動作について図18及び図19を用いて説明する。
【0092】
説明のために、磁気メモリ素子の個数を10個とする。第1番目の磁気メモリ素子の参照層10は、正の電流(+Iw)のOn/Offを行うトランジスタTr_Pと負の電流(−Iw)のOn/Offを行うTr_Mと接続されている。それぞれの磁気メモリ素子の磁性細線40には入力部と検出部が接続さている(図示せず)。例えば、スピン波の発生検出には、各磁性細線40に近接したコプレナー線路を用いることができる。第10番目の磁気メモリ素子の自由層30には外部回路の共通端子が接続されている。自由層30の磁化の向きが紙面上向きである場合のデータを”1”とし、紙面下向きである場合のデータを”0”とする。なお、参照層10の磁化の向きは紙面上向きとする。それぞれの磁気メモリ素子の参照層10と自由層30の磁化の向きは、図18(A)、図19(A)に示すとおりである。
【0093】
図18は、第i番目の磁気メモリ素子の磁性細線40にスピン波を印加した状態で、Tr_PをOnにして正の電流+Iw(Iw>0)を流し、第i番目の磁気メモリ素子のデータを”0”から”1”に書き換えている。図18(A)は、磁気メモリ装置の概略図を示す。図18(B)は、スピン波を印加するタイミングを示している。
【0094】
図19は、第10番目の磁気メモリ素子の磁性細線40にスピン波を印加した状態で、Tr_MをOnにして負の電流−Iwを流し、第10番目の磁気メモリ素子のデータを”1”から”0”に書き換えている。図19(A)は、磁気メモリ装置の概略図を示す。図19(B)は、スピン波を印加するタイミングを示している。
【0095】
それぞれの磁気メモリ素子への書き込みは電流とスピン波の印加によって行われる。スピン波が印加された磁気メモリ素子は、スピン波が印加されていない場合に比べて速く磁化反転が起こる。よって、電流を流す時間を適切に設定すると、スピン波によるセル選択が可能になる。自由層30の磁化反転の向きは電流の方向によって決定される。
【0096】
トランジスタTr_PをOnにして正の電流を第1番目から第10番目の磁気メモリ素子に流す。このとき、スピン波が印加され、かつデータが”0”の磁気メモリ素子の自由層30の磁化が反転し、データが”1”に書き換えられる(図18(A)のi番目のセル)。一方で、負の電流を流した場合には、スピン波が印加され、かつデータが”1”の磁気メモリ素子の自由層30の磁化が反転しデータが”0”に書き換えられる(図19(A)の10番目のセル)。
【0097】
つまり、流す電流の向きとスピン波の有無によって磁化反転させる磁気メモリセルを選択する。
【0098】
次に、磁気メモリ装置600の読み出し動作について図20を用いて説明する。
【0099】
図20(A)は読み出し動作の概要を図示しており、図20(B)は1番目と10番目の磁気メモリ素子のデータが”0”で、i番目の磁気メモリ素子のデータが”1”であるような場合の、各々の検出部が検出するスピン波の振幅を図示している。
【0100】
読み出しは、読み出し電流IR(IR>0)を印加したときに発生する自由層30の磁化の歳差運動の有無を判定することで行う。例えば、磁気メモリ素子が平行磁化配置を取っていて”0”のデータが記憶されている場合に、正の電流IRを印加すると自由層30の磁化は歳差運動を始める。さらにその歳差運動による交番磁界が磁性細線40に対してスピン波を誘起する。その結果、そのスピン波を磁性細線40に設けられた検出部で検出することで情報の読み出しを行うことができる。一方、磁気メモリ素子の磁化状態が反平行磁化配置をとっていて”1”のデータが記憶されている場合には自由層30の磁化は歳差運動を行わない。よって、歳差運動が生じないことをもって”1”のデータが記憶されていることがわかる。データの破壊を防ぐため電流を磁気メモリ素子に流す時間は自由層30の磁化が反転する時間より短くする。また、電流を流し始めた直後に、スピン波を入力部より与え歳差運動がすぐに起こるようにする。このようにすることで、スピン波がきっかけ(トリガー)となって自由層30の磁化の熱揺らぎによる効果を小さくすることができる。よって、時間軸方向の揺らぎが抑制され、データの読み出しがより容易になる。
【0101】
負の読み出し電流-IR(<0)でも読み出し動作を行うことができる。その場合、反平行磁化配置になっていてデータ“1”を記憶している磁気メモリ素子からスピン波が誘起され、平行磁化配置になっていてデータ“0”を記憶している磁気メモリ素子からはスピン波が誘起されない。つまり負の読み出し電流を用いると磁気メモリ素子から出力されるスピン波の有無と記憶されているデータとの関係が入れ替わる。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
10…参照層(第1の磁性層)、20…中間層、30…自由層(第2の磁性層)、40…磁性細線、50、60…検出部、70、80…入力部、100…磁気メモリ素子
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気メモリ素子及び磁気メモリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メモリの一つに磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)が挙げられる。MRAMは、情報を記録する部分に強磁性体を用いて、強磁性体磁化の向きにより長時間情報を保持する。MRAMへの情報の書き込みは、磁界印加又はスピン偏極電流注入によって磁化を反転させることで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−21352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MRAMでは、書き込む情報量に比例して、回路に流す電流の大きさも増加する。また、情報を保持するトンネル磁気抵抗素子が高抵抗であるため、それらを直列に接続し大容量化を図ろうとしても回路全体の抵抗値が大きくなって動作速度を著しく低下させることが問題となっていた。
【0005】
そこで本発明の実施形態は、低電流で書き込み動作を行うことができ、かつ高速動作が可能な大容量の磁気メモリ素子及び磁気メモリ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る磁気メモリ素子は、磁化が固定された第1の磁性層と、磁化が可変の第2の磁性層と、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に設けられた第1の中間層と、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層とを結ぶ第1の方向に直交する第2の方向に延在し、前記第2の磁性層に隣接し、スピン波を伝搬する第1の磁性細線と、前記第1の磁性細線の一端に設けられた第1のスピン波入力部と、前記第1の磁性細線の他端に設けられた第1のスピン波検出部と、を備え、前記第1のスピン波入力部によって前記第1の磁性細線に第1のスピン波を伝搬させ前記第1の磁性層から前記第2の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を反転させて書き込みを行い、又は前記第1の磁性層から前記第2の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を歳差運動させて前記第1の磁性細線に第2のスピン波を生成し伝搬させて前記第1のスピン波検出部で前記第2のスピンを検出することで読み出しを行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気メモリ素子を示す図。
【図2】第1の実施形態を説明するための図。
【図3】第1の実施形態を説明するための図。
【図4】第1の実施形態を説明するための図。
【図5】第1の実施形態を説明するための図。
【図6】第1の実施形態を説明するための図。
【図7】第1の実施形態を説明するための図。
【図8】第1の実施形態を説明するための図。
【図9】第1の実施形態を説明するための図。
【図10】第1の実施形態を説明するための図。
【図11】第1の実施形態を説明するための図。
【図12】第1の実施形態を説明するための図。
【図13】第1の実施形態を説明するための図。
【図14】第1の実施形態の変形例を説明するための図。
【図15】第1の実施形態の変形例を説明するための図。
【図16】本発明の第2の実施形態に係る磁気メモリ装置を示す図。
【図17】第2の実施形態を説明するための図。
【図18】第2の実施形態を説明するための図。
【図19】第2の実施形態を説明するための図。
【図20】第2の実施形態を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照して、本発明の各実施形態を説明する。同じ符号が付されているものは同様のものを示す。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
(第1の実施形態)
【0009】
図1は磁気メモリ素子(磁気メモリセルともいう)100を示す図である。
【0010】
磁気メモリ素子100は、参照層(第1の磁性層)10と、中間層20と、自由層(第2の磁性層)30と、磁性細線40とを備える。
【0011】
図1に示すにようにx軸、y軸、及びz軸はそれぞれ直交している。z軸方向は積層方向を示し、x軸方向及びy軸方向は積層方向に対して垂直な方向を示す。図1の左図は磁気メモリ素子100をx軸方向から眺めた図である。図1の右図は、磁気メモリ素子100をy軸方向から眺めた図である。
【0012】
参照層10、中間層20、自由層30は、z軸方向に積層されている。
【0013】
x軸方向において、自由層30に隣接してx軸方向に延在した磁性細線40が設けられている。
【0014】
参照層10、自由層30は、強磁性体、フェリ磁性体、又は人工格子である。
【0015】
強磁性体として、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、及びクロム(Cr)から選択される少なくとも一つの元素と、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、及びロジウム(Rh)から選択される少なくとも一つの元素との合金を用いることができる。強磁性体として、例えばCoPt、NiFe、CoCrPt等も用いることができる。強磁性体の特性は、組成の変更、熱処理等によって変化させることができる。
【0016】
フェリ磁性体として、TbFeCo及びGdFeCo等の希土類と遷移金属のアモルファス合金を用いることができる。これらの材料は、スパッタ装置で薄膜として条件を選んで堆積すると磁化がz軸方向に向きやすくなる傾向があり、磁化を磁性膜に対して垂直にしたい場合に用いることができる。
【0017】
人工格子として、Co/Pt、Co/Pd、又はCo/Niの積層構造を用いることができる。これらの積層構造を用いることで、磁化をz軸方向に向けることが出来る。これらの積層構造は、最密六方構造の<0001>配向、又は面心立方構造の<111>配向を有しやすい。
【0018】
参照層10は、磁化が一方向に固定されている。参照層10の磁化は、積層方向に向いている。参照層10の膜厚は、10nm以上50nm以下である。電流を流した際に自由層30で発生するスピントルクの反作用によって、参照層10の磁化の向きが変化してしまう可能性がある。このため、参照層10のダンピング係数は、自由層30のダンピング係数よりも大きいことが望ましい。この場合、スピントルクによる参照層10の磁化反転に必要な時間が長くなる。よって、電流を流す時間が短くなるので参照層10の磁化が反転しにくくなる。
【0019】
自由層30は、磁化が参照層10の磁化よりも弱く固定されている。このため、磁化がある程度自由に回転することができる(可変であるともいう)。自由層30の磁化は、積層方向に向いている。自由層30の膜厚は、2nm以上20nm以下である。
【0020】
中間層20は、参照層10と自由層30との間に設けられることで、参照層10の磁化と自由層30の磁化の向きをそれぞれ独立に向けることがきる。中間層20には、導電性材料を用いることができる。導電性材料としては、例えば銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、及びアルミニウム(Al)から選択される少なくとも一つの元素を用いることができる。また、これらの元素を組み合わせて合金として用いてもよい。中間層20の膜厚は、1.5nm以上20nm以下である。
【0021】
磁性細線40は、スピン波を伝搬するスピン波伝搬配線である。磁性細線40は、強磁性体、フェリ磁性体、又は絶縁体酸化物のフェリ磁性体である。
【0022】
強磁性体として、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、及びクロム(Cr)から選択される少なくとも一つの元素と、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、及びロジウム(Rh)から選択される少なくとも一つの元素との合金を用いることができる。強磁性体には、例えばCoPt、NiFe、CoCrPt等などもある。強磁性体の特性は、組成の変更、熱処理等によって変化させることができる。
【0023】
フェリ磁性体として、TbFeCo及びGdFeCo等の希土類と遷移金属のアモルファス合金を用いることができる。
【0024】
絶縁体酸化物のフェリ磁性体として、例えばスピネル構造を有するフェライト(M−Fe2O4)、又はガーネット構造を持つ希土類鉄ガーネット(R3−Fe5O12)を用いることができる。ここで、Mはマンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)のいずれか、又はこれらの元素から選択される少なくとも二つの元素の組合せである。また、Rはイットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テリビウム(Tb)、シスプロシウム(Dy)、ホルミニウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)から選択される少なくとも一つの元素である。希土類鉄ガーネットには、アルミニウム(Al)を添加してもよい。
【0025】
磁性細線40の磁化は、基本的には形状異方性により磁性細線40が延在する方向に向いている。しかしながら、組成の変更、熱処理等によって磁化の向きを変化させることができる。
【0026】
次に、磁気メモリ素子100の動作原理について説明する。
【0027】
図2は、参照層10の磁化と自由層30の磁化の挙動を説明するための図である。磁気メモリ素子100に流す電流の強度・通電時間等は同一条件であるとする。
【0028】
図2(A)では、参照層10の磁化と自由層30の磁化はともに紙面上向き(z軸上)である(磁化が膜面に対して垂直方向を向いている)。すなわち、参照層10の磁化と自由層30の磁化は平行である。この状態を『平行磁化配置』と呼ぶことにする。図2(B)では、参照層10の磁化は紙面上向きであり、自由層30の磁化は紙面下向きである。すなわち、参照層10の磁化と自由層30の磁化は反平行である。この状態を『反平行磁化配置』と呼ぶことにする。
【0029】
平行磁化配置の状態にある磁気メモリ素子100に対して、自由層30から参照層10に向けて電流を流しても自由層30の磁化に対するスピントルクは殆ど発生しない。このため、自由層30の磁化方向は殆ど変化しない(図2(A)の右上図)。一方、参照層10から自由層30に向けて電流を流すと参照層10からスピン注入が行われる。このスピン注入により、自由層30の磁化を反転させようとするスピントルクが作用する。十分に大きな電流を流した場合にはスピントルクにより自由層30の磁化が反転する(図2(A)の右下図)。
【0030】
反平行磁化配置の状態にある磁気メモリ素子100では、平行磁化配置の状態にある磁気メモリ素子100の磁化とは反対の挙動を示す。参照層10から自由層30に向けて電流を流しても自由層10の磁化は反転しない。一方、自由層30から参照層10に向けて電流を流すと、参照層10からスピン注入が行われ自由層30の磁化が反転する。
【0031】
図3は、自由層30の磁化反転と時間との関係を説明するための図である。
【0032】
横軸は時間を示す。t0は電流を流し始めた時間である。図3の上図の縦軸は電流Iの大きさを示す。図3の下図の縦軸は、自由層30の磁化のz軸成分mzの大きさを示す。“mz”は磁化の向きは紙面上向きであることを示す。“−mz”は磁化の向きが紙面下向きであること示す。なお、ここでは、磁気メモリ素子100の磁化状態は平行磁化配置である(図2(A)の状態)とする。
【0033】
自由層30に電流が流れていない状態では、自由層30の磁化は熱揺らぎにより磁化の向きが小刻みに変化している。自由層30に電流を流すと、この状態に対してスピントルクが作用する。そして、z軸方向を回転軸として自由層30の磁化は歳差運動を始める。この時間をt1とする。さらに、時間が経過すると自由層30の磁化の振幅が大きくなり自由層30の磁化が反転する(図3(A))。この時間をt2とする。なお、自由層30の磁化が反転するには、反転するのに必要な閾値電流がある。閾値電流を超える電流を流すと自由層30の磁化は反転する。さらに、自由層30に流す電流値が大きくなると、時間t1、t2は短くなる。
【0034】
一方、閾値電流を超える電流を流しても時間t2に到達する前に、電流を切ると自由層30の磁化は反転しない。よって、磁気メモリ素子100の磁化状態は平行磁化配置に戻る(図3(B))。
【0035】
次に、磁気メモリ素子100の書込み動作について説明する。
【0036】
平行磁化配置を”0”信号、反平行磁化配置を”1”信号とする。閾値よりも大きな電流Iを参照層10から自由層30に向かって時間t2よりも長く流す(この電流を+Iとする)と、信号は”0”から”1”になる。一方で、閾値よりも大きな電流Iを自由層30から参照層10に向かって時間t2よりも長く流す(この電流を−Iとする)と、信号は”1”から”0”になる。
【0037】
磁性細線40のある一端に対して、例えば局所的に交番磁界を印加すると磁性細線40内にスピン波を発生させることができる。スピン波は磁化の歳差運動が伝搬する現象である。このために、磁性細線40の表面に磁極が発生する。この磁極の発生により磁力線が閉じるように外部に交番磁界を発生させる。従って、図1に示すように自由層30の近傍に磁性細線40が存在すると、自由層30にスピン波由来の交番磁界が印加される。
【0038】
自由層30に注入されるスピンの向きと自由層30の磁化の向きが完全に平行あるいは反平行である場合(コリニアな状態)には、スピントルクは発生しないので自由層30の磁化は反転しない。しかし、上記したように参照層10の磁化と自由層30の磁化は、熱揺らぎによって磁化の方向が絶えず微小な角度で変化している。このため、磁気メモリ素子100に電流を流すと、偶発的に有限なスピントルクが自由層30の磁化に作用し自由層30の磁化が歳差運動を開始する(時間t1)。その結果、自由層30の磁化が反転する(時間t2)。
【0039】
図4は、磁性細線40にスピン波がない場合とスピン波がある場合の自由層30の磁化反転と時間の関係を説明するための図である。
【0040】
図4(A)に示すように、自由層30の磁化が反転する時間t2よりも前に電流Iを切ると、自由層30の磁化は反転しない。
【0041】
一方、磁気メモリ素子100では、交番磁界を自由層30に印加する磁性細線40を有している。このため、電流を磁気メモリ素子100に流すよりも前から、熱揺らぎによりも大きなエネルギーを自由層30の磁化に寄与させることができる。よって、自由層30の磁化の向きは、熱揺らぎによりも大きく磁化の向きが変化することになる。つまり、電流を磁気メモリ素子100に流すよりも前にスピン波を磁性細線40に伝搬させることで、自由層30の磁化が歳差運動を開始する時間t1及び自由層30の磁化が反転する時間t2を短くすることができる(図4(B)の時間t3)。ここでは、磁気メモリ素子100の磁化状態が平行磁化配置であるとして説明した。しかし、反平行磁化配置の場合は電流の向きを−Iとすれば、スピン波素子100は平行磁化配置の場合と同様の動作を行うことができる。
【0042】
次に、磁気メモリ素子100の読み出し動作について説明する。
【0043】
自由層30の磁化の磁化反転過程は歳差運動を伴う。この歳差運動によって自由層30の周りには交番磁界が発生する。この交番磁界が磁性細線40に印加されると、磁性細線40内でスピン波が発生する。磁気メモリ素子100に電流を流したときに、磁性細線40にスピン波が発生しているか否かを観測することで磁気メモリ素子100の磁化状態を読み出すことができる。すなわち、+Iの電流を磁気メモリ素子100に流すと平行磁化配置の場合にはスピン波が磁性細線40内に発生し、反平行磁化配置の場合にはスピン波は発生しない。
【0044】
電流を磁気メモリ素子100に流す時間はt2よりも短い。これは、自由層30の磁化反転を防ぐためである。電流を流す時間の設計値にマージンを与えるため、読み出しに用いる電流値の絶対値は、書込みに用いる電流値の絶対値よりも小さく、自由層30の磁化が反転する電流閾値よりも大きいことが好ましい。
【0045】
図5は、自由層30の磁化の振る舞いを説明するための図である。縦軸は磁化の振幅の大きさを示す。横軸は時間を示す。mzは、磁化が紙面上向き又は紙面下向き(積層方向)を示す。mxは、磁化が紙面右向き又は紙面左向き(面内方向)を示す。自由層30に電流を流す(電流ON)と、自由層30に電流を流すのをやめるまで(電流OFF)mxは大きく振動する。このとき、mzは、下に触れ磁化が反転しようとする。しかし、電流OFFにすると、mxは減衰振動する。このとき、mzは、下に触れ磁化が反転しようとしていたが反転前の状態に戻る。つまり、磁化が反転するには電流を流してからある程度の時間が経過している必要がある。
【0046】
なお、自由層30の磁化が安定した歳差運動が行なえるように、磁気メモリ素子100に電流を流す前に、磁性細線40にスピン波を伝搬させて自由層30の磁化歳差運動を共鳴励起させてもよい。これは、熱揺らぎによるバラツキを低減するためである。
【0047】
図6は、磁性細線40に接続されている検出部(スピン波検出部ともいう)50、60を示す図である。図6(A)は検出部50を示す。図6(B)は検出部60を示す。検出部50、60は動作原理が同じであるが、構成が異なる。
【0048】
検出部50は、磁性細線40上に設けられた非磁性層51、強磁性層52、反強磁性層53、電極54とを備える。
【0049】
非磁性層51には、例えばTa、Ru、Pt、Pd、Ir、Cu、Au、Ag、Cr、Alをその構成材料として用いることができる。これらの元素を少なくとも2種類含む合金を用いてもよい。また、これらの元素から少なくとも1つを選択し他の元素と組み合わせた合金でも良い。これらの元素を積層構造を用いてもよい。また、MgO、アルミナ(Al2O3)、又はSiO2などの非磁性絶縁体を用いることもできる。
【0050】
強磁性層52は、面内方向に対して垂直方向(積層方向)に磁化が向いた層である。強磁性層52には、例えばFeVPd、FeCrPd、CoFePt等をその構成材料として用いることができる。すなわち、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)から選択される少なくとも一つの元素と、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)から選択される少なくとも一つの元素との組み合わせによる合金を用いることができる。これらは、構成する磁性材料の組成や熱処理により特性を調整することができる。また、TbFeCo、GdFeCoなどの希土類−遷移金属のアモルファス合金、またはCo/Pt、Co/Pd、Co/Niの積層構造なども望ましい。さらに、非磁性層51との組み合わせで垂直磁化となる結晶配向を制御したCo/Ru、Fe/Au、Ni/Cu等の薄膜も用いることができる。強磁性層52に、イットリウム鉄ガーネットや、マンガンフェライト、又はγ―酸化鉄のようなフェライト系酸化物を用いるとスピン波の損失を少なくすることができる。さらに、磁性半導体を用いることで機能性を向上させることもできる。
【0051】
反強磁性層53は、強磁性層52の磁化方向を固着するために用いられる。反強磁性層53としては、例えばIrMnを用いることができる。
【0052】
電極54には、導電性の非磁性材料を用いる。
【0053】
電極54に用いる非磁性材料としては、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、又はアルミニウム(Al)がある。また、これらの元素を組み合わせた合金でももよい。さらに、非磁性材料として、カーボンナノチューブやカーボンナノワイヤ、グラフェン等の材料を用いることもできる。
【0054】
検出部50の電気抵抗を測定するとスピン波を検出することができる。これは、強磁性層52内の磁化が一方向に固着されていてかつスピン波が磁性細線40内を伝搬してきて磁性細線40内の磁化が歳差運動すると磁気抵抗効果(MR:Magneto-Resistance)によって検出部50の電気抵抗が変化するからである。
【0055】
また、検出部50は、検出部60のような構成にもできる。
【0056】
この場合、検出部60は、磁性細線40上に設けられた非磁性層51、強磁性層52、中間層61、強磁性層62、電極54とを備える。
【0057】
強磁性層52と強磁性層62は中間層61を介して反強磁性結合をしている。このようにすることで、強磁性層52の磁化の向きを強く固着することができる。
【0058】
強磁性層62の材料は強磁性層52の材料と同様である。
【0059】
中間層61には、例えばRuを用いることができる。
【0060】
図7は、磁性細線40に接続されている入力部(スピン波入力部ともいう)70、80を示す図である。図7(A)は入力部70を示す。図7(B)は入力部80を示す。入力部70、80は動作原理が同じであるが、構成が異なる。
【0061】
入力部70は、磁性細線40上に設けられたスペーサー層71、強磁性層52、反強磁性層53、電極54とを備える。また、磁性細線40の入力部70が設けられた側とは反対側には、電極72が設けられている。磁性細線40と電極72との間に非磁性層等を介しても良い。
【0062】
スペーサー層71には、トンネル絶縁膜材料又は非磁性金属材料をその構成材料として用いることができる。
【0063】
トンネル絶縁膜材料としては、例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)から選択される少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物、フッ化物、又は酸窒化物などを用いることができる。また、他にもAlAs、GaN、AlN、ZnSe、ZnO、MgOなどの大きなエネルギーギャップを有する半導体材料を用いることもできる。
【0064】
非磁性金属材料としては、例えば銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、又はアルミニウム(Al)を用いることができる。また、これらの元素を組み合わせた合金でもよい。
【0065】
電極72の材料は、電極54の材料と同様である。
【0066】
入力部70を用いて、磁性細線40にスピン波を発生させる方法について説明する。
【0067】
電極54から電流を電極72に向けて流す。このとき、磁性細線40内の磁化にスピントルクが作用するため磁性細線40内の磁化は歳差運動を始める。この歳差運動が磁性細線40内で次々と伝わることでスピン波が生じる。また、電極54と電極72との間に電圧を印加することで磁性細線40内の磁化歳差運動を励起してもよい。
【0068】
また、入力部70は、入力部80のような構成にもできる。
【0069】
この場合、入力部80は、磁性細線40上に設けられたスペーサー層71、強磁性層52、中間層61、強磁性層62、電極54を備える。
【0070】
強磁性層52と強磁性層62は中間層61を介して反強磁性結合をしている。このようにすることで、強磁性層52の磁化の向きを強く固着することができる。
【0071】
強磁性層62の材料は強磁性層52の材料と同様である。
【0072】
中間層61には、例えばRuを用いることができる。
【0073】
次に、磁気メモリ素子100の作製方法の一例について説明する。
【0074】
図8に示すように、磁気メモリ素子100は、下部リード線とその上に形成された金属多層膜の上に設けられている。下部リード線上には、Ta層、Ru層、Cu層が設けられている。一方で上部リード線と参照層10との間にも金属多層膜が設けられている。参照層10上にはCu層、Ta層が設けられている。
【0075】
まず、基板上に絶縁体を積層し、マスクを用いて絶縁体をエッチングすることで基板表面の一部を露出させる。露出した部分に下部リード線を埋め込む。次に、超高真空スパッタ装置を用いて下部リード線上及び絶縁体上にTa層、Ru層、Cu層、自由層30、中間層、参照層10、Cu層、Ta層の順に積層する(図9)。
【0076】
次に積層した構造上にネガレジストを塗布し、電子線露光装置を用いて下部リード線上に積層した構造のうち磁気メモリセル100となる部分のみを露光・現像することでネガレジストを残す。残ったネガレジストをパターンとしてイオンミリングを行い、レジストパターンの下部にある部分を残す。このとき、イオンミリングの条件によっては下部リード線上に積層された構造がテーパー形状となる。その後、ネガレジストを除去する(図10)。
【0077】
次に、超高真空スパッタ装置を用いてTa層上及び絶縁体上に絶縁体を積層する。そして、化学機械研磨(CMP)を行って平坦化をおこなったのち、ポジレジストを塗布し、電子線露光装置を用いて磁性細線40の部分のみレジストが剥離されるよう露光・現像し、イオンミリングによりレジストのない部分だけTa層を取り除く。そして反応性イオンエッチングを用いてTa層をマスクとして絶縁体の上面が自由層30の下側に位置するように絶縁体をエッチングする(図11)。
【0078】
次に、イオンミリングを用いて下部リード線上に積層された構造の側壁部分の化合物を取り除いた後、不活性ガスで封止しながら原子層堆積装置に試料を搬入し、下部リード線上に積層された構造の側面に絶縁膜を堆積し、残りの部分は電子線レジストともに剥離する(図12)。
【0079】
次に、超高真空スパッタ装置を用いてTa層上、絶縁体上、及び絶縁膜上に磁性細線40となるとなる磁性層を堆積する。そして、Ta層が出てくるまでCMPにて平坦化を行い、その後ポジレジストを塗布して電子線露光装置により磁気メモリ素子100とその周辺部だけ露光し現像、これをマスクとして磁性層の上面が自由層30の上側に位置するように磁性層をイオンミリングにより削り、レジストを除去する。次に、Ta層上、絶縁膜上、及び磁性層上にポジレジストを堆積する。KrF露光装置を用いて磁気メモリ素子とその周辺にまで伸びた磁性細線40に対応したポジレジストのパターンを形成し、イオンミリングを用いてポジレジスト以外の部分を削る(図13)。
【0080】
次に、超高真空スパッタ装置を用いて絶縁体を全体に堆積し、化学機械研磨(CMP)を行って平坦化を行う。最後に電子露光とイオンミリングを用いてTa層の上面を露出させ、上部リード線となる金属層を超高真空スパッタ装置で堆積させ、KrF露光装置とイオンミリングを用いて配線を形成する(図8)
(変形例1)
【0081】
図14は、磁気メモリ素子100の変形例を示す図である。
【0082】
図14(A)に示す磁気メモリ素子200は、磁性細線40の一部が中間層20にも設けられている点が磁気メモリ素子100と異なる。このような構成の磁気メモリ素子200でも、磁性細線40からの交番磁界が自由層30の磁化に作用するために、磁気メモリ素子として動作する。
【0083】
図14(B)に示す磁気メモリ素子300は、磁性細線40が2本設けられている点が磁気メモリ素子100と異なる。磁性細線40が2本あることで、自由層30の磁化に対して交番磁界をより強く作用させることができる。
(変形例2)
【0084】
図15は、磁気メモリ素子100の変形例を示す図である。
【0085】
図15(A)に示す磁気メモリ素子400は、磁性細線40と自由層30との間に絶縁膜45が設けられている点が磁気メモリ素子100と異なる。このような磁気メモリ素子400の構成によって、磁性細線40と自由層30との交換結合を低減させることができる。なお、絶縁層45の部分は空隙としてもよい。
【0086】
絶縁膜45には、MgO、アルミナ(Al2O3)、又はSiO2等を用いることができる。
【0087】
図15(B)に示す磁気メモリ素子500は、磁性細線40が2本設けられ、磁性細線40と自由層30との間に絶縁膜45が設けられている点が磁気メモリ素子100と異なる。磁性細線40が2本あることで、自由層30の磁化に対して交番磁界をより強く作用させることができる。また、絶縁膜45があることで、磁性細線40と自由層30との交換結合を低減させることができる。
(第2の実施形態)
【0088】
図16は、磁気メモリ装置600を示す図である。
【0089】
磁気メモリ装置600は、複数の磁気メモリ素子が金属配線(電極ともいう)を介して直列に接続されている。ここで、磁気メモリ素子とは、磁気メモリ素子100、200、300、400、500、600を示す。紙面上方の磁気メモリ素子から第1番目、第i番目、第N番目とする。iとNは自然数で1<i<Nである。Nは最後尾の磁気メモリ素子である。第1番目の磁気メモリ素子の参照層10は、トランジスタTr_PとTr_Mのソース端子又はドレイン端子と金属配線で接続されている。それぞれの磁気メモリ素子の磁性細線40の一端にはスピン波を発生させる入力部が接続されている。また、磁性細線40の他端にはスピン波を検出する検出部が接続されている。第N番目の磁気メモリ素子の自由層30は、金属配線によって外部回路(図示せず)の共通端子と接続されている。
【0090】
なお、図17に示すように、磁気メモリ装置600は、x軸方向に沿って磁気メモリ素子が複数並べられ、それぞれの磁気メモリ素子が磁性細線40を共用していてもよい。このようにすると、磁性細線40の一端・他端にだけ入力部、検出部、外部回路を設ければよいので、磁気メモリ装置600を高い空間密度で並べることができる。
【0091】
次に、磁気メモリ装置600の書き込み動作について図18及び図19を用いて説明する。
【0092】
説明のために、磁気メモリ素子の個数を10個とする。第1番目の磁気メモリ素子の参照層10は、正の電流(+Iw)のOn/Offを行うトランジスタTr_Pと負の電流(−Iw)のOn/Offを行うTr_Mと接続されている。それぞれの磁気メモリ素子の磁性細線40には入力部と検出部が接続さている(図示せず)。例えば、スピン波の発生検出には、各磁性細線40に近接したコプレナー線路を用いることができる。第10番目の磁気メモリ素子の自由層30には外部回路の共通端子が接続されている。自由層30の磁化の向きが紙面上向きである場合のデータを”1”とし、紙面下向きである場合のデータを”0”とする。なお、参照層10の磁化の向きは紙面上向きとする。それぞれの磁気メモリ素子の参照層10と自由層30の磁化の向きは、図18(A)、図19(A)に示すとおりである。
【0093】
図18は、第i番目の磁気メモリ素子の磁性細線40にスピン波を印加した状態で、Tr_PをOnにして正の電流+Iw(Iw>0)を流し、第i番目の磁気メモリ素子のデータを”0”から”1”に書き換えている。図18(A)は、磁気メモリ装置の概略図を示す。図18(B)は、スピン波を印加するタイミングを示している。
【0094】
図19は、第10番目の磁気メモリ素子の磁性細線40にスピン波を印加した状態で、Tr_MをOnにして負の電流−Iwを流し、第10番目の磁気メモリ素子のデータを”1”から”0”に書き換えている。図19(A)は、磁気メモリ装置の概略図を示す。図19(B)は、スピン波を印加するタイミングを示している。
【0095】
それぞれの磁気メモリ素子への書き込みは電流とスピン波の印加によって行われる。スピン波が印加された磁気メモリ素子は、スピン波が印加されていない場合に比べて速く磁化反転が起こる。よって、電流を流す時間を適切に設定すると、スピン波によるセル選択が可能になる。自由層30の磁化反転の向きは電流の方向によって決定される。
【0096】
トランジスタTr_PをOnにして正の電流を第1番目から第10番目の磁気メモリ素子に流す。このとき、スピン波が印加され、かつデータが”0”の磁気メモリ素子の自由層30の磁化が反転し、データが”1”に書き換えられる(図18(A)のi番目のセル)。一方で、負の電流を流した場合には、スピン波が印加され、かつデータが”1”の磁気メモリ素子の自由層30の磁化が反転しデータが”0”に書き換えられる(図19(A)の10番目のセル)。
【0097】
つまり、流す電流の向きとスピン波の有無によって磁化反転させる磁気メモリセルを選択する。
【0098】
次に、磁気メモリ装置600の読み出し動作について図20を用いて説明する。
【0099】
図20(A)は読み出し動作の概要を図示しており、図20(B)は1番目と10番目の磁気メモリ素子のデータが”0”で、i番目の磁気メモリ素子のデータが”1”であるような場合の、各々の検出部が検出するスピン波の振幅を図示している。
【0100】
読み出しは、読み出し電流IR(IR>0)を印加したときに発生する自由層30の磁化の歳差運動の有無を判定することで行う。例えば、磁気メモリ素子が平行磁化配置を取っていて”0”のデータが記憶されている場合に、正の電流IRを印加すると自由層30の磁化は歳差運動を始める。さらにその歳差運動による交番磁界が磁性細線40に対してスピン波を誘起する。その結果、そのスピン波を磁性細線40に設けられた検出部で検出することで情報の読み出しを行うことができる。一方、磁気メモリ素子の磁化状態が反平行磁化配置をとっていて”1”のデータが記憶されている場合には自由層30の磁化は歳差運動を行わない。よって、歳差運動が生じないことをもって”1”のデータが記憶されていることがわかる。データの破壊を防ぐため電流を磁気メモリ素子に流す時間は自由層30の磁化が反転する時間より短くする。また、電流を流し始めた直後に、スピン波を入力部より与え歳差運動がすぐに起こるようにする。このようにすることで、スピン波がきっかけ(トリガー)となって自由層30の磁化の熱揺らぎによる効果を小さくすることができる。よって、時間軸方向の揺らぎが抑制され、データの読み出しがより容易になる。
【0101】
負の読み出し電流-IR(<0)でも読み出し動作を行うことができる。その場合、反平行磁化配置になっていてデータ“1”を記憶している磁気メモリ素子からスピン波が誘起され、平行磁化配置になっていてデータ“0”を記憶している磁気メモリ素子からはスピン波が誘起されない。つまり負の読み出し電流を用いると磁気メモリ素子から出力されるスピン波の有無と記憶されているデータとの関係が入れ替わる。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
10…参照層(第1の磁性層)、20…中間層、30…自由層(第2の磁性層)、40…磁性細線、50、60…検出部、70、80…入力部、100…磁気メモリ素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化が固定された第1の磁性層と、
磁化が可変の第2の磁性層と、
前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に設けられた第1の中間層と、
前記第1の磁性層と前記第2の磁性層とを結ぶ第1の方向に直交する第2の方向に延在し、前記第2の磁性層に隣接し、スピン波を伝搬する第1の磁性細線と、
前記第1の磁性細線の一端に設けられた第1のスピン波入力部と、
前記第1の磁性細線の他端に設けられた第1のスピン波検出部と、
を備え、
前記第1のスピン波入力部によって前記第1の磁性細線に第1のスピン波を伝搬させ前記第1の磁性層から前記第2の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を反転させて書き込みを行い、又は前記第1の磁性層から前記第2の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を歳差運動させて前記第1の磁性細線に第2のスピン波を生成し伝搬させて前記第1のスピン波検出部で前記第2のスピンを検出することで読み出しを行う磁気メモリ素子。
【請求項2】
前記第2の磁性層と前記第1の磁性細線との間に更に第1の絶縁層を備える請求項1に記載の磁気メモリ素子。
【請求項3】
前記第2の磁性層の前記第1の磁性細線が設けられた側とは反対側に設けられ、前記第2の方向に延在しスピン波を伝搬する第2の磁性細線と、
前記第2の磁性細線の一端に設けられた第2のスピン波入力部と、
前記第2の磁性細線の他端に設けられた第2のスピン波検出部と、
を備え、
前記第2のスピン波入力部によって前記第2の磁性細線に第3のスピン波を伝搬させ前記第1の磁性層から前記第2の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を反転させて書き込みを行い、又は前記第1の磁性層から前記第2の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を歳差運動させて前記第2の磁性細線に第4のスピン波を生成し伝搬させて前記第2のスピン波検出部で前記第4のスピンを検出することで読み出しを行う請求項2に記載の磁気メモリ素子。
【請求項4】
前記第2の磁性層と前記第2の磁性細線との間に更に第2の絶縁層を備える請求項3に記載の磁気メモリ素子。
【請求項5】
前記第1の方向において、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の磁気メモリ素子が金属配線を介して複数接続されている磁気メモリ装置。
【請求項6】
前記第1のスピン波入力部によって前記第1の磁性細線に第1のスピン波を伝搬させ前記第2の磁性層から前記第1の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を反転させて書き込みを行い、又は前記第2の磁性層から前記第1の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を歳差運動させて前記第1の磁性細線に第2のスピン波を生成し伝搬させて前記第1のスピン波検出部で前記第2のスピンを検出することで読み出しを行う請求項1に記載の磁気メモリ素子。
【請求項7】
前記第2のスピン波入力部によって前記第2の磁性細線に第3のスピン波を伝搬させ前記第2の磁性層から前記第1の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を反転させて書き込みを行い、又は前記第2の磁性層から前記第1の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を歳差運動させて前記第2の磁性細線に第4のスピン波を生成し伝搬させて前記第2のスピン波検出部で前記第4のスピンを検出することで読み出しを行う請求項3に記載の磁気メモリ素子。
【請求項1】
磁化が固定された第1の磁性層と、
磁化が可変の第2の磁性層と、
前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に設けられた第1の中間層と、
前記第1の磁性層と前記第2の磁性層とを結ぶ第1の方向に直交する第2の方向に延在し、前記第2の磁性層に隣接し、スピン波を伝搬する第1の磁性細線と、
前記第1の磁性細線の一端に設けられた第1のスピン波入力部と、
前記第1の磁性細線の他端に設けられた第1のスピン波検出部と、
を備え、
前記第1のスピン波入力部によって前記第1の磁性細線に第1のスピン波を伝搬させ前記第1の磁性層から前記第2の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を反転させて書き込みを行い、又は前記第1の磁性層から前記第2の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を歳差運動させて前記第1の磁性細線に第2のスピン波を生成し伝搬させて前記第1のスピン波検出部で前記第2のスピンを検出することで読み出しを行う磁気メモリ素子。
【請求項2】
前記第2の磁性層と前記第1の磁性細線との間に更に第1の絶縁層を備える請求項1に記載の磁気メモリ素子。
【請求項3】
前記第2の磁性層の前記第1の磁性細線が設けられた側とは反対側に設けられ、前記第2の方向に延在しスピン波を伝搬する第2の磁性細線と、
前記第2の磁性細線の一端に設けられた第2のスピン波入力部と、
前記第2の磁性細線の他端に設けられた第2のスピン波検出部と、
を備え、
前記第2のスピン波入力部によって前記第2の磁性細線に第3のスピン波を伝搬させ前記第1の磁性層から前記第2の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を反転させて書き込みを行い、又は前記第1の磁性層から前記第2の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を歳差運動させて前記第2の磁性細線に第4のスピン波を生成し伝搬させて前記第2のスピン波検出部で前記第4のスピンを検出することで読み出しを行う請求項2に記載の磁気メモリ素子。
【請求項4】
前記第2の磁性層と前記第2の磁性細線との間に更に第2の絶縁層を備える請求項3に記載の磁気メモリ素子。
【請求項5】
前記第1の方向において、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の磁気メモリ素子が金属配線を介して複数接続されている磁気メモリ装置。
【請求項6】
前記第1のスピン波入力部によって前記第1の磁性細線に第1のスピン波を伝搬させ前記第2の磁性層から前記第1の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を反転させて書き込みを行い、又は前記第2の磁性層から前記第1の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を歳差運動させて前記第1の磁性細線に第2のスピン波を生成し伝搬させて前記第1のスピン波検出部で前記第2のスピンを検出することで読み出しを行う請求項1に記載の磁気メモリ素子。
【請求項7】
前記第2のスピン波入力部によって前記第2の磁性細線に第3のスピン波を伝搬させ前記第2の磁性層から前記第1の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を反転させて書き込みを行い、又は前記第2の磁性層から前記第1の磁性層に向かって電流を流すことで前記第2の磁性層の磁化を歳差運動させて前記第2の磁性細線に第4のスピン波を生成し伝搬させて前記第2のスピン波検出部で前記第4のスピンを検出することで読み出しを行う請求項3に記載の磁気メモリ素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−73979(P2013−73979A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209987(P2011−209987)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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