説明

磁気抵抗効果素子、磁気ヘッド、磁気記憶装置及び磁気メモリ

【課題】従来の磁気抵抗効果素子とは異なり、ピン層、スペーサ層、フリー層の積層構造を用いない磁気抵抗効果素子、及びそれを用いた磁気ヘッド及び磁気メモリを提供する。
【解決手段】酸化物、窒化物、酸窒化物、金属のいずれか1つからなるスペーサ層を上下方向から挟み込むようにして形成した、磁化方向が実質的に固着された第1の磁性層及び第2の磁性層を含む磁気抵抗効果素子において、前記スペーサ層に隣接して配置された電流バイアス発生部からのバイアス磁界、あるいは前記スペーサ層の主面上において、再生感磁部を除いた両端部に接触するようにして設けた交換結合層からの交換結合によって、前記スペーサ層の磁区制御を行い、磁気ノイズの発生を低減した磁気抵抗効果素子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果膜にセンス電流を流して磁気を検知する磁気抵抗効果素子に関し、さらにはこのような磁気抵抗効果素子を利用した磁気ヘッド、磁気記憶装置及び磁気メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
巨大磁気抵抗効果(Giant Magneto-Resistive Effect:GMR)を用いることで、磁気デバイス、特に磁気ヘッドの性能が飛躍的に向上している。特に、スピンバルブ膜(Spin-Valve:SV膜 )の磁気ヘッドやMRAM(Magnetic Random Access Memory)などへの適用は、磁気デバイス分野に大きな技術的進歩をもたらした。
【0003】
「スピンバルブ膜」は、2つの強磁性層の間に非磁性のスペーサ層を挟んだ構造を有する積層膜であり、抵抗変化を生ずる積層膜構造部位はスピン依存散乱ユニットとも呼ばれる。この2つの強磁性層の1方(「ピン層」や「磁化固着層」などと称される)の磁化が反強磁性層などで固着され、他方(「フリー層」や「磁化自由層」などと称される)の磁化方向が外部磁界に応じて回転可能である。スピンバルブ膜では、ピン層及びフリー層における磁化方向の相対角度が変化することで、巨大な磁気抵抗変化が得られる。
【0004】
ここで、スペーサ層は、ピン層とフリー層との間を磁気的に分断し、これらの磁化方向が独立に動くことを可能とする。
【0005】
スピンバルブ膜を用いた磁気抵抗効果素子には、CIP(Current In Plane)−GMR素子、CPP(Current Perpendicular to Plane)−GMR素子、およびTMR(Tunneling Magneto Resistance)素子がある。CIP−GMR素子ではスピンバルブ膜の面に平行にセンス電流を通電し、CPP−GMR、およびTMR素子ではスピンバルブ膜の面にほぼ垂直方向にセンス電流を通電する。
【0006】
膜面垂直に通電する方式においては、TMR素子ではスペーサ層として絶縁層を用い、通常のCPP−GMRではスペーサ層として金属層を用いる。また、CPP−GMR素子の発展形として、スペーサ層として厚み方向に貫通したナノサイズの金属電流パスを含んだ酸化物層「NOL(nano-oxide layer)」を用いたものも提案されている。このスペーサ層では、NOLの一部に金属伝導を生じさせるための狭窄された電流パス(CCP:Current-confined-path)を有している。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2002−208744号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のいずれの場合でも従来の磁気抵抗効果素子では、ピン層、スペーサ層、フリー層を基本的な構成とし、ピン層、フリー層間での磁化方向の相対角度の変化によって、磁気を検知している。
【0008】
本発明は、従来の磁気抵抗効果素子とは異なり、ピン層、スペーサ層、フリー層の積層構造を用いない磁気抵抗効果素子、及びそれを用いた磁気ヘッド及び磁気メモリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明の一態様は、
磁化方向が実質的に固着された第1の磁性層と、
前記第1の磁性層上に配置され、酸化物、窒化物、酸窒化物、金属のいずれか1つからなるスペーサ層と、
前記スペーサ層上に配置され、磁化方向が実質的に固着された第2の磁性層と、
前記スペーサ層に隣接して配置され、前記スペーサ層に対してバイアス磁界を印加するための電流バイアス発生部と、
を具えることを特徴とする、磁気抵抗効果素子(第1の磁気抵抗効果素子)に関する。
【0010】
また、本発明の一態様は、磁化方向が実質的に固着された第1の磁性層と、
前記第1の磁性層上に配置され、酸化物、窒化物、酸窒化物、金属のいずれか1つからなるスペーサ層と、
前記スペーサ層上に配置され、磁化方向が実質的に固着された第2の磁性層と、
前記スペーサ層の主面上において、再生感磁部を除いた両端部に接触するとともに前記スペーサ層と交換結合を生ぜしめるような交換結合層と、
を具えることを特徴とする、磁気抵抗効果素子(第2の磁気抵抗効果素子)に関する。
【0011】
従来のスピンバルブ膜などの巨大磁気抵抗効果素子においては、非磁性のスペーサ層を挟んでその上下方向においてピン層及びフリー層を形成してスピン依存散乱ユニットを構成し、前記フリー層の磁化回転による素子の抵抗変化によって磁気抵抗効果を発現させている。しかしながら、前記フリー層の磁化は比較的大きく、前記フリー層の磁区制御を行って単磁区化するには比較的大きなバイアス磁場が必要となる。そのため、前記フリー層を十分に単磁区化することは困難であり、バルクハウゼンノイズなどの磁気的ノイズが発生してしまう場合があった。
【0012】
これに対して、本発明の上記態様では、ピン層として機能する第1の磁性層及び第2の磁性層によって所定の外部磁界に感応してその磁化を回転させるように構成されたスペーサ層を挟み込むようにしてスピン依存散乱ユニットを構成し、スピンバルブ膜の場合とは異なり、前記スペーサ層の磁化の回転による素子の抵抗変化によって磁気抵抗効果を発現するようにしている。
【0013】
前記スペーサ層は、上述のように酸化物や窒化物などから構成されているため、その磁化は比較的小さい。したがって、従来のスピンバルブ膜などのフリー層の場合と異なり、比較的小さい外部磁界によって前記スペーサ層の磁区制御を行うことができ、好ましくは単磁区化することができる。したがって、上述したスピンバルブ膜などと異なり、バルクハウゼンノイズなどの磁気的ノイズを効果的に抑制することができる。
【0014】
なお、本発明の上記態様においては、上述したように、スペーサ層の磁化の回転に起因した抵抗変化より磁気抵抗効果を発現せしめるが、その原因については以下のように考えることができる。すなわち、従来のスピンバルブにおいては、スピン依存散乱ユニットが、非磁性のスペーサ層と、この層を挟み込むようにして構成したピン層及びフリー層から構成されている。したがって、これらピン層及びフリー層から流れてくる伝導電子のスピン情報がスピン反転現象などのために前記スペーサ層中で失われてしまうことになる。
【0015】
一方、本発明の上記態様の磁気抵抗効果素子においては、上下に設けられたピン層からの伝導電子のスピン情報はある程度の磁性を有する外部磁化感応層に取り込まれるようになるため、上述したスピン反転現象が生じることはない。したがって、前記スピン情報の消失というような問題が生じることがない。
【0016】
一般に、磁気抵抗効果素子の抵抗変化、すなわち磁気抵抗効果を増大させるためには、上述した磁性層からのスピン情報を保持することが要求される。したがって、本発明の上記態様における磁気抵抗効果素子においては、上述のようにスペーサ層において、スピン情報を保持することができるので、従来のスピンバルブ膜のフリー層のように大きな磁化を有しない場合においても、比較的磁気抵抗効果を呈するようになる。
【0017】
なお、上述した説明で明らかなように、第1の磁気抵抗効果素子において、前記電流バイアス発生部は、前記バイアス磁界によって前記スペーサ層の磁区制御を行うものであって、好ましくは前記スペーサ層を単磁区化するように機能させる。これによって、上述したバルクハウゼンノイズなどの磁気ノイズを効果的に抑制することができる。
【0018】
また、第2の磁気抵抗効果素子において、前記交換結合層は、前記交換結合によって前記スペーサ層の磁区制御を行うものであって、好ましくは前記スペーサ層を単磁区化するように機能させる。
【0019】
なお、本発明の磁気ヘッド及び磁気メモリは、上述した磁気抵抗効果素子を具えることによって特徴付けられる。
【発明の効果】
【0020】
以上、本発明の上記態様によれば、従来の磁気抵抗効果素子とは異なり、ピン層、スペーサ層、フリー層の積層構造を用いない磁気抵抗効果素子、及びそれを用いた磁気ヘッド及び磁気メモリを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明のその他の特徴及び利点などについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態において、合金の組成は原子%(atomic%)で表すことができる。また、以下の総ての図面において、本発明の特徴を明確化すべく、各構成要素の寸法などについては、実際のものと異なるようにして記載している。
【0022】
(磁気抵抗効果素子の基本構成)
図1は、本発明の磁気抵抗効果素子を表す斜視図であり、図2は、図1に示すスピン依存散乱ユニットを構成する層構成部分を拡大して示す図である。また、図3は、参考例として従来のスピンバルブ膜のスピン依存散乱ユニットを構成する層構成部分を拡大して示す図である。
【0023】
図1に示すように本実施形態に係る磁気抵抗効果素子は、磁気抵抗効果膜10、およびこれを上下から挟むようにして下電極11および上電極20を有し、図示しない基板上に構成される。
【0024】
図2に示すように、磁気抵抗効果膜10は、下地層12、ピニング層13、ピン層14,スペーサ層15、ピン層16、ピニング層17、及びキャップ層18が順に積層されて構成される。この内、ピン層14、スペーサ層15、及びピン層16が磁気抵抗効果を発現する基本膜構成、即ち、スピン依存散乱ユニットに相当する。また、本例では、ピン層14は、ピン層141/磁気結合層142/ピン層143の3層構造となっている。さらに、ピン層16は、ピン層161/磁気結合層162/ピン層163の3層構造となっている。但し、各ピン層は単層から構成するようにすることができる。一方、図3に示すスピンバルブ膜90では、ピニング層93、ピン層94、スペーサ層95、及びフリー層96が積層される。
【0025】
スピンバルブ膜90において、磁気抵抗効果を発現するスピン依存散乱ユニットは、ピン層94、スペーサ層95、及びフリー層96の3層構成である。ピン層94の磁化方向は固着され、フリー層96の磁化方向は外部磁界によって変化する。スペーサ層95によって、ピン層94とフリー層96との間での磁気的な結合を分断し、これらの層間での磁化方向の独立性を確保している。外部磁界によって、ピン層94とフリー層96の磁化方向の相対的な角度が変化することで、磁気抵抗による磁気の検出が可能となる。
【0026】
これに対して、磁気抵抗効果膜10において、磁気抵抗効果を発現するスピン依存散乱ユニットは、ピン層14、スペーサ層15、及びピン層16の3層構成である。即ち、磁気抵抗効果膜10は、スペーサ層95のような磁気的な結合を積極的に分断する機構を有さず、ピン層16とスペーサ層15とが直接近接している。
【0027】
従来のスピンバルブ膜90において、スペーサ層95は非磁性層である。しかしスペーサ層95中を伝導する電子は、磁性層(ピン層94,フリー層96)から流れてくるため、スピン情報を有する。より大きな抵抗変化量を実現するためには、スペーサ層95において、伝導電子のスピン情報が失われないようにすることが重要である。しかしながら、実際に作成したスペーサ層95は非磁性層であり、また完全理想状態は実現困難であることから、結晶欠陥、不純物元素などの影響によってスピン反転現象が生じ、上述したスピン電子のスピン情報が失われてしまい、抵抗変化量の低下、しいては磁気抵抗効果の低下の原因となる。
【0028】
それに対し、図2に示す本実施形態においては、磁気抵抗効果膜10はスペーサ層を有さず、ピン層14及び16からの伝導電子はその間に位置するスペーサ層15に流れ込む。この際、スペーサ層15は、ある程度の磁性を有するので、その内部に結晶欠陥などが存在してもスピン反転現象が生じる可能性は減少し、前記スピン情報の消失という現象は、図3に関連したスピンバルブ膜に比較して少なくなる。その結果、図2に示すスピン依存散乱ユニット(層構成)によれば、図3に示すスピンバルブ膜に比較して、大きな抵抗変化、すなわち磁気抵抗効果を呈するようになる。
【0029】
磁気抵抗効果膜10のスピン依存散乱ユニットの層数は、スピンバルブ膜90と同じである。しかしながら、磁気抵抗効果膜10は、スペーサ層(磁気的な結合を積極的に分断する機構)を有しないので、ピン層14及び16により、実質上デュアルスピンバルブ膜として機能し得る。
【0030】
通常のデュアルスピンバルブ膜は、ピン層/スペーサ層/フリー層/スペーサ層/ピン層の5層で構成される。磁気抵抗効果膜10では、3層でデュアルスピンバルブ膜として機能
し得ることから(膜厚が相対的に薄い)、磁気抵抗変化率の上昇が容易である。
【0031】
スペーサ層を有しない磁気抵抗効果膜10が磁気抵抗効果を発現するためには、スペーサ層15の材料選定が必要となる。スペーサ層15には、極薄の酸化物層、窒化物層、酸窒化物層,または金属層を用いる。酸化物層、窒化物層、酸窒化物層には、Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Zr,Pd,Nb,W,Mo,Taなどを母材として用いる。金属層にはTi,V,Cr,Mnなどの元素を含有する金属材料を用いる。
【0032】
このとき、酸化物、窒化物、酸窒化物層などでは、0.5〜3nm程度の極薄の層(薄膜層)を用いる。これによって、抵抗の上昇を招くことなく、大きな磁気抵抗変化率を実現できる。金属材料を用いた場合には、3nmよりも厚い膜を用いても、抵抗を低い値に抑えられる。そのため、金属材料を用いる場合には、0.5〜3nmの膜厚だけでなく、5nm程度の膜厚まで利用できる。
【0033】
スペーサ層15の望ましい実施例の一例として、TiOxを基本材料とし、Fe,Co元素を含有するTiOx−Co,Fe層を挙げることができる。この構成の磁気抵抗効果膜10は、正方向の磁界を印加したときに低抵抗状態となり、100[Oe]程度の負方向の磁界を印加したときに高抵抗状態となる。
【0034】
スペーサ層15に磁化が発現している場合には、外部磁界に対して磁化方向が変化するフリー層として、スペーサ層15が機能する。この上下のピン層14,16の磁化方向と、スペーサ層15の磁化方向とが平行のときには低抵抗、反平行のときには高抵抗になっていると考えられる。例えば、磁界の無印加時にスペーサ層15の磁化方向がピン層14,16の磁化方向と略直交する。
【0035】
ただし、現在のVSM(vibrating sample magnetometer)測定による磁化測定精度では、TiOx層の磁化は観測されていない。この可能性があるとしても、TiOx層の磁化は非常に小さいと考えられる。
【0036】
また、スペーサ層15に添加元素として,Fe,Co,Ni,Ti,Hf,Mg,Zr,V,Mo,Si,Cr,Nb,Ta,W,B,C,Vなどが含まれても構わない。これらの添加元素の添加量は0%〜50%程度の範囲で適宜に変更できる。
【0037】
上記のような酸化物、窒化物、酸窒化物からなるスペーサ層15に代えて、Ti,V,Cr,Mn,Pdを主成分とする金属材料、またこれらの元素にFe,Co,Niなどの元素を含有する材料を用いても構わない。これらの材料は弱い磁性が発現しやすい。特に、本実施形態のように、極薄膜厚の上下が強磁性材料で挟まれた構成では、磁性が発現しやすくなる。このような金属材料の場合には、酸化物、窒化物、酸窒化物でなく、金属材料そのままでも良い。
【0038】
(磁気抵抗効果素子の具体的構成)
次いで、上述した磁気抵抗効果素子を基本とした本発明の磁気抵抗効果素子の具体的構成の一例を以下に説明する。
【0039】
(第1の実施形態:第1の磁気抵抗効果素子)
図4、5、6は、本発明の一実施形態である、上述した磁気抵抗効果素子の基本構成に対して、電流バイアス発生部21を設けた磁気抵抗効果素子の具体的構成の例を示す図である。なお、これらの図では、図面の記載を簡略化する観点から、下電極11および上電極20の記載は省略し、磁気抵抗効果膜10のみを簡略化して示している。また、電流バイアス発生部21は、磁気抵抗効果膜10のスペーサ層15に対してバイアス磁界を印加するものであるので、かかるスペーサ層15のみは図中において明示するようにしている。
【0040】
図4〜6に示すように、本実施形態では、電流バイアス発生部21は板状の部材から構成されている。そして、図4では、電流バイアス発生部21(部材21)を磁気抵抗効果素子の側部に隣接させて配置し、部材21の厚さ方向(上から下方向)へ電流を流すことによって、その周囲に、紙面に垂直な面内で右回りのバイアス磁界Hを生じさせるようにしており、このバイアス磁界Hを磁気抵抗効果膜10のスペーサ層15に対して印加するようにしている。
【0041】
図5では、部材21を磁気抵抗効果素子の上部に設け、部材21の長さ方向(紙面手前から奥)へ向かって電流を流すことによって、紙面と略平行な面内でその周囲に右回りのバイアス磁界Hを生じさせるようにしており、このバイアス磁界Hを磁気抵抗効果膜10のスペーサ層15に対して印加するようにしている。また、図6では、部材21を磁気抵抗効果素子の下部に設け、部材21の長さ方向(紙面手前から奥)へ向かって電流を流すことによって、紙面と略平行な面内でその周囲に右回りのバイアス磁界Hを生じさせるようにしており、このバイアス磁界Hを磁気抵抗効果膜10のスペーサ層15に対して印加するようにしている。
【0042】
スペーサ層15は、上述のように酸化物や窒化物などから構成されており、さらには0.5〜3nm程度の極薄の層として構成されているので、その飽和磁化は小さい。したがって、図3に示すスピンバルブ膜などのフリー層の場合と異なり、図4〜6に示すような電流バイアス発生部21で生成される比較的弱い磁場が印加されるのみで、その磁区制御を行うことができ、好ましくは単磁区化することができるようになる。したがって、図3に示すスピンバルブ膜などと異なり、バルクハウゼンノイズなどの磁気的ノイズを効果的に抑制することができる。
【0043】
なお、バイアス磁界の大きさは例えば5Oe〜50Oeとすることができる。このような範囲において、磁気抵抗効果膜10のスペーサ層15の磁気制御を良好な状態で行うことができる。
【0044】
また、電流バイアス発生部21は、上述したように電流を流すことによってその周囲に磁場を発生させるような電気的良導体であることが要求される。したがって、Ti,V,Cr,Mn,Cu,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,Hf,Ta,W,Re,Pt,Auから選択される少なくとも1つの元素を含有する金属などから構成することができる。
【0045】
図7〜9は、上述のような電流バイアス発生部21を磁気抵抗効果素子中に組み込んだ状態を示す一例である。また、図10〜12は、図7〜9に示す磁気抵抗効果素子のA−A’線、B−B’線及びC−C’線に沿って切った場合の断面図に相当している。図7及び図10は図4に示す電流バイアス発生部21を組み込んだ場合に相当し、図8及び図11は、図5に示す電流バイアス発生部21を組み込んだ場合に相当し、図9及び図12は、図6に示す電流バイアス発生部21を組み込んだ場合に相当する。
【0046】
図7及び図10に示す構成において、電流バイアス発生部21は、下電極11及び上電極20の間において、例えば磁気抵抗効果膜10の後方(MRハイト方向においてABSと反対側)に配置することができる。この場合、下電極11及び上電極20の間において一対の電極層22及び23が、電流バイアス発生部21の下面及び上面に接触するようにして設けられ、これら電極層22及び23を介して電流バイアス発生部21にバイアス電流が図中の点線で示す矢印方向に供給され、その周囲において矢印で示す向き(右回り)にバイアス磁界Hを生成するように構成されている。この場合、電流バイアス発生部21の前方に位置する磁気抵抗効果膜10に対して、バイアス磁界Hは、図4で示すように、外部磁界検地層15に対して横方向(右から左)に印加されるようになる。
【0047】
この結果、磁気抵抗効果膜10のうち、外部磁界を検知する外部磁界検知層15の磁区を単磁区に制御でき、その結果バルクハウゼンノイズ等の磁気的ノイズを抑制することができる。また、磁気抵抗効果膜10に対して、センス電流は例えば図7の磁気抵抗効果膜10中の矢印で示す方向に流すことができる。
【0048】
図8及び図11に示す構成においては、上電極20が電流バイアス発生部21として機能する。また、上電極20と電極層22とは、ABS側に位置する端部が導電層22Aによって電気的に接続され、その他の部分は図示しない絶縁層などによって電気的に絶縁されている。この場合、バイアス電流は、電極層22をABS側に流れ、導電層22A中を下向きに流れるとともに上電極20をABS面側からハイト奥側方向に流れるようになる(図中点線)。この結果、前記バイアス電流に起因したバイアス磁界Hが、導電層22Aの周りに図中矢印で示す向き(右回り)に生成されるようになる。この場合、電流バイアス発生部21の前方に位置する磁気抵抗効果膜10に対して、バイアス磁界Hは、図5で示すように、外部磁界検地層15に対して横方向(右から左)に印加されるようになる。
【0049】
この結果、磁気抵抗効果膜10のうち、外部磁界を検知する外部磁界検知層15の磁区を単磁区に制御でき、その結果バルクハウゼンノイズ等の磁気的ノイズを抑制することができる。また、磁気抵抗効果膜10に対して、センス電流は例えば図8の磁気抵抗効果膜10中の矢印で示す方向に流すことができる。
【0050】
図9及び図12に示す構成においては、下電極11が電流バイアス発生部21として機能する。また、下電極11と電極層22とは、ABS側に位置する端部が導電層22Aによって電気的に接続され、その他の部分は図示しない絶縁層などによって電気的に絶縁されている。この場合、バイアス電流は、電極層22をABS側に流れ、導電層22Aを上向きに流れるとともに下電極11をABS面側からハイト奥側方向に流れるようになる(図中点線)。この結果、前記バイアス電流に起因したバイアス磁界Hが導電層22Aの周りに図中矢印で示す向き(左回り)に生成されるようになる。この場合、電流バイアス発生部21の前方に位置する磁気抵抗効果膜10に対して、バイアス磁界Hは、図6で示すように、外部磁界検知層15に対して横方向(左から右)に印加されるようになる。
【0051】
この結果、磁気抵抗効果膜10のうち、外部磁界を検知する外部磁界検知層15の磁区を単磁区に制御でき、その結果バルクハウゼンノイズ等の磁気的ノイズを抑制することができる。また、磁気抵抗効果膜10に対して、センス電流は例えば図9の磁気抵抗効果膜10中の矢印で示す方向に流すことができる。
【0052】
(第2の実施形態:第2の磁気抵抗効果素子)
図13は、本発明の一実施形態である、上述した磁気抵抗効果素子の基本構成に対して、交換結合層25を設けた磁気抵抗効果素子の具体的構成の例を示す断面図である。なお、これらの図では、図面の記載を簡略化する観点から、磁気抵抗効果膜10のみを簡略化して、また、交換結合層25は、磁気抵抗効果膜10のスペーサ層15に対して交換結合を介して磁気的なバイアスを印加するものであるので、かかるスペーサ層15のみは図中において明示するようにしている。
【0053】
図13に示すように、本実施形態では、交換結合層25はスペーサ層15の主面上において、再生感磁部10Aを除いた両端部に接触するとともにスペーサ層15と交換結合を生ぜしめるようにして形成されている。このような交換結合層25を設けることによって、スペーサ層15の磁区制御を簡易に行うことができるようになり、好ましくは単磁区化することができる。したがって、図3に示すスピンバルブ膜などと異なり、バルクハウゼンノイズなどの磁気的ノイズを効果的に抑制することができる。
【0054】
なお、交換結合層25を、再生感磁部10Aを除くようにして形成するのは、再生感磁部10Aをも被覆するようにして交換結合層25を形成した場合、交換結合層25との磁気的な交換結合によってスペーサ層15の磁化が固定されてしまい、スペーサ層15に対して外部磁界が印加された場合において、その磁化が容易に回転しなくなってしまうためである。この結果、磁気抵抗効果素子全体としての磁気抵抗効果が減少してしまう結果となるためである。
【0055】
上記交換結合層25は、例えばIrMn,PtMn,PdPtMn,NiMn,RuMn,RhMn,RuRhMnから選択される少なくとも1つの反強磁性材料を含むことが好ましい。また、α−Fe,NiO、α−Fe−NiO,CoO−NiOから選択される少なくとも1つの反強磁性材料を含むことが好ましい。このような場合、上述した交換結合による磁区制御をより効果的に行うことができるようになる。
【0056】
なお、特に限定されるものではないが、交換結合層25の厚さは、例えば5nm〜20nmとすることができる。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
以下、本発明の実施例につき説明する。本実施例については、図4(図7)に示すような磁気抵抗効果素子を作製した。以下に、本実施例に係る磁気抵抗効果素子の層構成を示す。
【0058】
・下電極11: NiFe[1.5μm]
・下地層12(バッファ層12a/シード層12b): Ta[5nm]/Ru[2nm]
・ピニング層13: PtMn[15nm]
・ピン層14(ピン層141/磁気結合層142/ピン層143): CoFe[3nm]/Ru[0.9nm]/CoFe[3nm]
・スペーサ層15: TiOx[2nm]
・ピン層16(ピン層161/磁気結合層162/ピン層163): CoFe[3nm]/Ru[0.9nm]/CoFe[3nm]
・ピニング層17: PtMn[15nm]
・キャップ層18: Ta[5nm]
・上電極20:NiFe[1.2μm]
・電流バイアス発生部21:Ti[50nm]
【0059】
上電極を除く積層体の作製後、10kOeの磁場中において290℃、4時間の熱処理を行い、結晶性の向上、およびPtMnの規則化を行った。その後リソグラフィープロセスによってスピンバルブ膜の素子サイズを規定し、上電極20を作製した。
【0060】
次いで、電流バイアス発生部21に1から10mAの電流を流すことによってバイアス磁界を発生させ、スペーサ層15に印加し、磁区制御を実施した。
【0061】
なお、本実施例の磁気抵抗効果素子では、正方向の磁界(ピン層161,143の磁化方向と平行の磁化方向)を印加したときに低抵抗状態となり、100[Oe]程度の負方向の磁界(ピン層161,143の磁化方向と反平行の磁化方向)を印加したときに高抵抗状態となった。本実施例の磁気抵抗効果素子では、磁気抵抗変化率MRが16%であった。また、バルクハウゼンノイズは皆無であった。
【0062】
(実施例2)
本実施例については、図13に示すような磁気抵抗効果素子を作製した。以下に、本実施例に係る磁気抵抗効果素子の層構成を示す。
【0063】
・下電極11:NiFe[1.5μm]
・下地層12(バッファ層12a/シード層12b): Ta[5nm]/Ru[2nm]
・ピニング層13: PtMn[15nm]
・ピン層14(ピン層141/磁気結合層142/ピン層143): CoFe[3nm]/Ru[0.9nm]/CoFe[3nm]
・スペーサ層15: TiOx[2nm]
・ピン層16(ピン層161/磁気結合層162/ピン層163): CoFe[3nm]/Ru[0.9nm]/CoFe[3nm]
・ピニング層17: PtMn[15nm]
・キャップ層18: Ta[5nm]
・上電極20:NiFe[1.2μm]
・交換結合層25:IrMn[7nm]、再生感磁部幅100nm
【0064】
上電極を除く積層体の作製後、10kOeの磁場中において290℃、4時間の熱処理を行い、結晶性の向上、およびPtMnの規則化を行った。その後リソグラフィープロセスによってスピンバルブ膜の素子サイズを規定し、上電極20を作製した。
【0065】
なお、本実施例の磁気抵抗効果素子では、正方向の磁界(ピン層161,143の磁化方向と平行の磁化方向)を印加したときに低抵抗状態となり、100[Oe]程度の負方向の磁界(ピン層161,143の磁化方向と反平行の磁化方向)を印加したときに高抵抗状態となった。本実施例の磁気抵抗効果素子では、磁気抵抗変化率MRが16%であった。また、バルクハウゼンノイズは皆無であった。
【0066】
(比較例)
上記実施例1において、電流バイアス発生部21を設けない以外は実施例1と同様にして磁気抵抗効果素子を作製した。この際、磁気抵抗変化率MRは最大で16%であった。また、バルクハウゼンノイズは70〜80%の確率で発生したであった。
【0067】
(磁気ヘッド、及び磁気記録再生装置)
上述した磁気抵抗効果素子は、記録再生一体型の磁気ヘッドアセンブリに組み込んで、磁気記録再生装置に搭載することができる。
【0068】
図14は、このような磁気記録再生装置の概略構成を例示する要部斜視図である。図14に示す磁気記録再生装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。同図において、磁気ディスク200は、スピンドル152に装着され、図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。なお、図に示す磁気記録再生装置150では、単独の磁気ディスク200のみを用いているが、複数の磁気ディスク200を具えることができる。
【0069】
磁気ディスク200に格納する情報の記録再生を行うヘッドスライダ153は、薄膜状のサスペンション154の先端に取り付けられている。ヘッドスライダ153は、上述したいずれかの実施形態に係る磁気抵抗効果素子を含む磁気ヘッドをその先端付近に搭載している。
【0070】
磁気ディスク200が回転すると、ヘッドスライダ153の媒体対向面(ABS)は磁気ディスク200の表面から所定の浮上量をもって保持される。但し、このような浮上型に代えて、スライダが磁気ディスク200と接触するいわゆる「接触走行型」であってもよい。サスペンション154は、図示しない駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、アクチュエータアーム155のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石および対向ヨークからなる磁気回路とから構成される。
【0071】
アクチュエータアーム155は、スピンドル157の上下2箇所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ156により回転摺動が自在にできるようになっている。
【0072】
図15は、アクチュエータアーム155から先の磁気ヘッドアセンブリをディスク側から眺めた拡大斜視図である。磁気ヘッドアッセンブリ160は、例えば駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155を有し、アクチュエータアーム155の一端にはサスペンション154が接続されている。
【0073】
サスペンション154の先端には、上述したいずれかの実施形態に係る磁気抵抗効果素子を含む磁気ヘッドを具備するヘッドスライダ153が取り付けられている。サスペンション154は信号の書き込みおよび読み取り用のリード線164を有し、このリード線164とヘッドスライダ153に組み込まれた磁気ヘッドの各電極とが電気的に接続されている。図中165は磁気ヘッドアッセンブリ160の電極パッドである。
【0074】
図16及び17に示す磁気記録再生装置においては、上述した本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子を含む磁気ヘッドを具えることにより、従来よりも高い記録密度で磁気ディスク200に磁気的に記録された情報を確実に読み取ることが可能となる。
【0075】
(磁気メモリ)
上述した磁気抵抗効果素子は、例えばメモリセルがマトリクス状に配置されたランダムアクセス磁気メモリ(magnetic random access memory、MRAM)などの磁気メモリを構成することができる。
【0076】
図16は、磁気メモリのマトリクス構成の一例を示す図である。この図は、メモリセルをアレイ状に配置した場合の回路構成を示す。アレイ中の1ビットを選択するために、列デコーダ350、行デコーダ351が備えられており、ビット線334とワード線332によりスイッチングトランジスタ330がオンになって一意に選択され、センスアンプ352で検出することにより磁気抵抗効果素子10中の磁気記録層(フリー層)に記録されたビット情報を読み出すことができる。ビット情報を書き込むときは、特定の書き込みワード線323とビット線322に書き込み電流を流して発生する磁場を印加する。
【0077】
図17は、上記磁気メモリのマトリクス構成の他の例を示す図である。この場合、マトリクス状に配線されたビット線322とワード線334とが、それぞれデコーダ360、361により選択されて、アレイ中の特定のメモリセルが選択される。それぞれのメモリセルは、磁気抵抗効果素子10とダイオードDとが直列に接続された構造を有する。ここで、ダイオードDは、選択された磁気抵抗効果素子10以外のメモリセルにおいてセンス電流が迂回することを防止する役割を有する。書き込みは、特定のビット線322と書き込みワード線323とにそれぞれに書き込み電流を流して発生する磁場により行われる。
【0078】
図18は、本発明の実施形態に係る磁気メモリの要部を示す断面図である。図19は、図18のA−A’線に沿う断面図である。これらの図に示した構造は、図16または図17に示した磁気メモリに含まれる1ビット分のメモリセルに対応する。このメモリセルは、記憶素子部分311とアドレス選択用トランジスタ部分312とを有する。
【0079】
記憶素子部分311は、磁気抵抗効果素子10と、これに接続された一対の配線322、324とを有する。磁気抵抗効果素子10は、上述した実施形態に係る磁気抵抗効果素子である。
【0080】
一方、選択用トランジスタ部分312には、ビア326および埋め込み配線328を介して接続されたトランジスタ330が設けられている。このトランジスタ330は、ゲート332に印加される電圧に応じてスイッチング動作をし、磁気抵抗効果素子10と配線334との電流経路の開閉を制御する。
【0081】
また、磁気抵抗効果素子10の下方には、書き込み配線323が、配線322とほぼ直交する方向に設けられている。これら書き込み配線322、323は、例えばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、タンタル(Ta)あるいはこれらいずれかを含む合金により形成することができる。
【0082】
このような構成のメモリセルにおいて、ビット情報を磁気抵抗効果素子10に書き込むときは、配線322、323に書き込みパルス電流を流し、それら電流により誘起される合成磁場を印加することにより磁気抵抗効果素子の記録層の磁化を適宜反転させる。
【0083】
また、ビット情報を読み出すときは、配線322と、磁気記録層を含む磁気抵抗効果素子10と、下電極324とを通してセンス電流を流し、磁気抵抗効果素子10の抵抗値または抵抗値の変化を測定する。
【0084】
上記磁気メモリは、上述した磁気抵抗効果素子を用いることにより、セルサイズを微細化しても、記録層の磁区を確実に制御して確実な書き込みを確保でき、且つ、読み出しも確実に行うことができる。
【0085】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【0086】
例えば、磁気抵抗効果素子を再生用磁気ヘッドに適用する際に、素子の上下に磁気シールドを付与することにより、磁気ヘッドの検出分解能を規定することができる。
【0087】
さらに、上記磁気抵抗効果素子は、長手磁気記録方式のみならず垂直磁気記録方式の磁気ヘッドあるいは磁気記録再生装置についても同様に適用して同様の効果を得ることができる。
【0088】
また、本発明の磁気記録再生装置は、特定の記録媒体を定常的に備えたいわゆる固定式のものでも良く、一方、記録媒体が差し替え可能ないわゆる「リムーバブル」方式のものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の磁気抵抗効果素子の基本構成の一例を表す斜視図である。
【図2】図1に示すスピン依存散乱ユニットを構成する層構成部分を拡大して示す図である。
【図3】従来のスピンバルブ膜のスピン依存散乱ユニットを構成する層構成部分を拡大して示す図である。
【図4】本発明の一実施形態である、上述した磁気抵抗効果素子の基本構成に対して、電流バイアス発生部を設けた磁気抵抗効果素子の具体的構成の例を示す図である。
【図5】同じく、上述した磁気抵抗効果素子の基本構成に対して、電流バイアス発生部を設けた磁気抵抗効果素子の具体的構成の他の例を示す図である。
【図6】同じく、上述した磁気抵抗効果素子の基本構成に対して、電流バイアス発生部を設けた磁気抵抗効果素子の具体的構成のその他の例を示す図である。
【図7】電流バイアス発生部を設けた磁気抵抗効果素子の具体的構成を示す斜視図である。
【図8】同じく、電流バイアス発生部を設けた磁気抵抗効果素子の具体的構成を示す斜視図である。
【図9】同じく、電流バイアス発生部を設けた磁気抵抗効果素子の具体的構成を示す斜視図である。
【図10】図7のA−A’断面図である。
【図11】図8のB−B’断面図である。
【図12】図9のC−C’断面図である。
【図13】本発明の一実施形態である、上述した磁気抵抗効果素子の基本構成に対して、交換結合層を設けた磁気抵抗効果素子の具体的構成の例を示す図である。
【図14】本発明の磁気抵抗効果素子を含む磁気記録再生装置の一例を示す斜視図である。
【図15】本発明の磁気ヘッドアセンブリの一例を示す図である。
【図16】本発明の磁気抵抗効果素子を含む磁気メモリマトリクスの一例を示す図である。
【図17】本発明の磁気抵抗効果素子を含む磁気メモリマトリクスの他の例を示す図である。
【図18】本発明の実施形態に係る磁気メモリの要部を示す断面図である。
【図19】図18のA−A’線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0090】
10 磁気抵抗効果膜
11 下電極
12 下地層
13,17 ピニング層
14,16 ピン層
15 スペーサ層
18 キャップ層
20 上電極
21 電流バイアス発生部
25 交換結合層
150 磁気記録再生装置
152 スピンドル
153 ヘッドスライダ
154 サスペンション
155 アクチュエータアーム
156 ボイスコイルモータ
157 スピンドル
160 磁気ヘッドアッセンブリ
164 リード線
200 磁気記録磁気ディスク
311 記憶素子部分
312 アドレス選択用トランジスタ部分
312 選択用トランジスタ部分
321 磁気抵抗効果素子
322 ビット線
322 配線
323 ワード線
323 配線
324 下部電極
326 ビア
328 配線
330 スイッチングトランジスタ
332 ゲート
332 ワード線
334 ビット線
334 ワード線
350 列デコーダ
351 行デコーダ
352 センスアンプ
360 デコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化方向が実質的に固着された第1の磁性層と、
磁化方向が実質的に固着された第2の磁性層と、
前記第1の磁性層および前記第2の磁性層の間に配置され、酸化物、窒化物、酸窒化物、金属のいずれか1つからなるスペーサ層と、
前記スペーサ層に隣接して配置され、前記スペーサ層に対してバイアス磁界を印加するための電流バイアス発生部と、
を具えることを特徴とする、磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
前記電流バイアス発生部は、前記バイアス磁界によって前記スペーサ層の磁区制御を行うことを特徴とする、請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
前記電流バイアス発生部に対して電流を通電するための手段を具えることを特徴とする、請求項1、2のいずれか一に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
磁化方向が実質的に固着された第1の磁性層と、
前記第1の磁性層上に配置され、酸化物、窒化物、酸窒化物、金属のいずれか1つからなるスペーサ層と、
前記スペーサ層上に配置され、磁化方向が実質的に固着された再生感磁部と、
前記スペーサ層の主面上において、再生感磁部を除いた両端部に接触するとともに前記スペーサ層と交換結合を生ぜしめるような交換結合層と、
を具えることを特徴とする、磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
前記交換結合層は、前記交換結合によって前記スペーサ層の磁区制御を行うことを特徴とする、請求項4に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
外部磁界の無印加時において、前記第1、第2の磁性層の磁化方向と、前記スペーサ層の磁化方向とが、略直交することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項7】
前記スペーサ層の膜厚が、0.5nm以上3nm以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一に記載の磁気抵抗効果素子を具えることを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項9】
請求項8に記載の磁気ヘッドを具えることを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一に記載の磁気抵抗効果素子を具えることを特徴とする磁気メモリ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2008−244112(P2008−244112A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82013(P2007−82013)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】