磁気抵抗効果素子
【課題】書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上を同時に実現する。
【解決手段】本発明の例に関わる磁気抵抗効果素子は、磁化方向が互いに逆向きに固定される第1及び第2強磁性層11A, 11Bと、第1及び第2強磁性層11A, 11Bの間に配置され、磁化方向が変化する第3強磁性層12と、第1強磁性層11A及び第3強磁性層12の間に配置される第1非磁性層13Aと、第2強磁性層11B及び前記第3強磁性層12の間に配置される第2非磁性層13Bとを備える。読み出し電圧Irをバイアスしたときに、第1ユニットU1のMR比は、インバース状態にあり、第2ユニットU2のMR比は、ノーマル状態にある。書き込み電圧Iw”0”, Iw”1”をバイアスしたときに、第1及び第2ユニットU1, U2のMR比は、共に、ノーマル状態にある。
【解決手段】本発明の例に関わる磁気抵抗効果素子は、磁化方向が互いに逆向きに固定される第1及び第2強磁性層11A, 11Bと、第1及び第2強磁性層11A, 11Bの間に配置され、磁化方向が変化する第3強磁性層12と、第1強磁性層11A及び第3強磁性層12の間に配置される第1非磁性層13Aと、第2強磁性層11B及び前記第3強磁性層12の間に配置される第2非磁性層13Bとを備える。読み出し電圧Irをバイアスしたときに、第1ユニットU1のMR比は、インバース状態にあり、第2ユニットU2のMR比は、ノーマル状態にある。書き込み電圧Iw”0”, Iw”1”をバイアスしたときに、第1及び第2ユニットU1, U2のMR比は、共に、ノーマル状態にある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルピン構造の磁気抵抗効果素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新しい原理に基づいてデータを記憶するメモリ素子が多数提案されている。そのなかでも、トンネル磁気抵抗効果(TMR: Tunneling Magneto Resistive)を利用する磁気抵抗効果素子(magneto-resistive element)は、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM: Magnetic Random Access Memory)のメモリセルや、リコンフィギャブル(reconfigurable)なロジック回路を構成するFET(Field Effect Transistor)などへの応用が期待されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。
【0003】
磁気抵抗効果素子の基本構造は、磁化方向が固定されるピンド層(pinned layer)と、磁化方向が変化するフリー層(free layer)と、それらの間のトンネルバリア層(tunneling barrier layer)とから構成される。そして、ピンド層とフリー層の磁化方向の相対関係、即ち、両者の磁化方向が同じ(平行)か、又は、逆(反平行)かによってデータを記憶する。
【0004】
ここで、磁気抵抗効果素子に対するデータの書き込みについては、素子の微細化と書き込み電流(スピン注入電流)の低電流化との両立を図れるスピン角運動量移動(SMT: Spin Momentum Transfer)書き込み方式(以下、スピン注入書き込み方式)が有力である。
【0005】
スピン注入書き込み(spin injection writing)方式では、フリー層の磁化方向を反転させるために必要な書き込み電流Icは、電流密度で規定される。フリー層の磁化方向を反転させるために必要な電流密度は、臨界電流密度Jcと呼ばれ、書き込み時には、これを超える密度の書き込み電流Icが必要とされる。
【0006】
スピン注入書き込み方式の利点は、臨界電流密度Jcを一定とすると、磁気抵抗効果素子のサイズが小さくなるに従い、書き込み電流Icの値も小さくなる、という点にある。このため、原理的には、スケーラビリティ(scalability)に優れ、例えば、256メガビットを超えるような大容量の磁気ランダムアクセスメモリの実現も不可能ではない。
【0007】
しかし、そのために解決しなければならない課題も多い。
【0008】
その一つに臨界電流密度Jcの低減がある。これが低減されない限り、磁気抵抗効果素子のサイズを一定としたときの書き込み電流Icの低減はあり得ないからである。
【0009】
そこで考案された技術がデュアルピン構造である。
【0010】
デュアルピン構造とは、フリー層の両側にそれぞれ非磁性層(例えば、トンネルバリア層)を介してピンド層を設ける構造のことである。この構造によれば、書き込み時に、スピン偏極された電子が2つのピンド層からフリー層に注入されるため、ピンド層が1つの基本構造に比べて、臨界電流密度Jcを1/2又はそれ以下にすることができる。
【0011】
ところが、デュアルピン構造は、磁気抵抗効果素子のMR(magneto-resistive)比の低下、という新たな問題を発生させる。即ち、読み出し時に、”0”-データの抵抗値と”1”-データの抵抗値との間に十分なマージンを確保することができなくなる。
【特許文献1】米国特許第6,256,223号明細書
【非特許文献1】C. Slonczewski, “Current-driven ecitation of magnetic multilayers”, JORNAL OF MAGNETISM AND MAGNETIC MATERIALS, VOLUME 159, 1996, p.L1-L7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の例では、デュアルピン構造の磁気抵抗効果素子において、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を可能にする技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の例に関わる磁気抵抗効果素子は、磁化方向が互いに逆向きに固定される第1及び第2強磁性層と、第1及び第2強磁性層の間に配置され、磁化方向が変化する第3強磁性層と、第1及び第3強磁性層の間に配置される第1非磁性層と、第2及び第3強磁性層の間に配置される第2非磁性層とを備え、第1及び第2強磁性層の間に読み出し電圧をバイアスしたときに、第1強磁性層、第1非磁性層及び第3強磁性層から構成される第1ユニットのMR比は、インバース状態にあり、第2強磁性層、第2非磁性層及び第3強磁性層から構成される第2ユニットのMR比は、ノーマル状態にあり、第1及び第2強磁性層の間に書き込み電圧をバイアスしたときに、第1及び第2ユニットのMR比は、共に、ノーマル状態又はインバース状態にある。
【0014】
本発明の例に関わる磁気抵抗効果素子は、磁化方向が互いに同じ向きに固定される第1及び第2強磁性層と、第1及び第2強磁性層の間に配置され、磁化方向が変化する第3強磁性層と、第1及び第3強磁性層の間に配置される第1非磁性層と、第2及び第3強磁性層の間に配置される第2非磁性層とを備え、第1及び第2強磁性層の間に読み出し電圧をバイアスしたときに、第1強磁性層、第1非磁性層及び第3強磁性層から構成される第1ユニットのMR比、及び、第2強磁性層、第2非磁性層及び第3強磁性層から構成される第2ユニットのMR比は、共に、ノーマル状態又はインバース状態にあり、第1及び第2強磁性層の間に書き込み電圧をバイアスしたときに、第1ユニットのMR比は、インバース状態にあり、第2ユニットのMR比は、ノーマル状態にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の例によれば、デュアルピン構造の磁気抵抗効果素子において、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の例を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0017】
1. 概要
本発明の例では、第1強磁性層(ピンド層)/第1非磁性層/第3強磁性層(フリー層)/第2非磁性層/第2強磁性層(ピンド層)から構成されるデュアルピン構造の磁気抵抗効果素子を対象とする。
【0018】
ここで、/は、その両側に存在する層が互いに接触してスタックされていることを意味するものとする。以下、同じ。
【0019】
また、第1強磁性層/第1非磁性層/第3強磁性層を第1ユニットとし、第3強磁性層/第2非磁性層/第2強磁性層を第2ユニットとする。
【0020】
そして、第1及び第2強磁性層の磁化方向が反平行の関係にある場合、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧をバイアスしたときの、第1及び第2ユニットのMR比の一方をインバース状態とし、他方をノーマル状態とし、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧をバイアスしたときの、第1及び第2ユニットのMR比の両方をノーマル状態又はインバース状態とする。
【0021】
また、第1及び第2強磁性層の磁化方向が平行の関係にある場合、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧をバイアスしたときの、第1及び第2ユニットのMR比の両方をノーマル状態又はインバース状態とし、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧をバイアスしたときの、第1及び第2ユニットのMR比の一方をインバース状態とし、他方をノーマル状態とする。
【0022】
尚、磁化方向が反平行であるとは、第1及び第2強磁性層の磁化方向が逆向き又は実質的に逆向きとみなせる場合の他、両者の磁化方向のなす角度θが90°<θ≦180°の範囲にある場合も含む。
【0023】
また、磁化方向が平行であるとは、第1及び第2強磁性層の磁化方向が同じ向き又は実質的に同じ向きとみなせる場合の他、両者の磁化方向のなす角度θが0°≦θ<180°の範囲にある場合も含む。
【0024】
これにより、デュアルピン構造の磁気抵抗効果素子において、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0025】
2. デュアルピン構造
まず、本発明の例の対象となるデュアルピン構造の磁気抵抗効果素子について説明する。
【0026】
図1及び図2は、デュアルピン構造の磁気抵抗効果素子を示している。
【0027】
基本構造は、ピンド層11A/スペーサ層13A/フリー層12/スペーサ層13B/ピンド層11Bである。矢印は、磁化の向きを示している。
【0028】
ピンド層11A,11Bは、強磁性体から構成され、例えば、ピン層(pin layer)としての反強磁性体により磁化方向が固定される。フリー層12は、強磁性体から構成され、書き込み電流(スピン注入電流)により磁化方向が変化する。
【0029】
スペーサ層13A,13Bは、非磁性材料から構成される。非磁性材料を絶縁体又は半導体とすれば、スペーサ層13A,13Bは、トンネルバリア層となるため、トンネル磁気抵抗効果を発生させることができる。
【0030】
ピンド層11A,11Bの少なくとも1つに関しては、図3に示すように、SAF(Synthetic anti-ferromagnetic)構造などの磁性層/非磁性層/磁性層構造としてもよいし、図4に示すように、反強磁性層14を付加してもよい。
【0031】
フリー層12に関しては、図5に示すように、複数の磁性層の積層構造としてもよいし、図6に示すように、SAF構造などの磁性層/非磁性層/磁性層構造としてもよい。
【0032】
スペーサ層13A,13Bに関しては、そのうちの少なくとも1つがトンネルバリア層として機能すれば、残りについては、非磁性材料を導電体としても構わない。
【0033】
図1の構造と図2の構造の異なる点は、ピンド層11A,11Bの磁化の向きにある。図1の構造では、ピンド層11A,11Bの磁化方向が互いに逆向きに固定されるのに対し、図2の構造では、ピンド層11A,11Bの磁化方向が互いに同じ向きに固定される。
【0034】
ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向(垂直磁化)である。
【0035】
但し、これに限られることはなく、ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)を、これらがスタックされる方向に対して垂直な方向(面内磁化)としてもよい。
【0036】
尚、磁化容易軸方向とは、外部磁界のない状態でマクロな強磁性体の内部エネルギーが最も低くなる自発磁化の方向のことである。また、磁化困難軸方向とは、外部磁界のない状態でマクロな強磁性体の内部エネルギーが最も高くなる自発磁化の方向のことである。
【0037】
デュアルピン構造によれば、臨界電流密度Jcの低減により、磁気抵抗効果素子のサイズを一定としたときの書き込み電流(スピン注入電流)の低減を図ることができる。
【0038】
ここで、ピンド層11A/スペーサ層13A/フリー層12を第1ユニットU1とし、フリー層12/スペーサ層13B/ピンド層11Bを第2ユニットU2とする。
【0039】
図1の構造では、第1ユニットU1のピンド層11Aの磁化は、紙面上向き、第2ユニットU2のピンド層11Bの磁化は、紙面下向きである。この場合、デュアルピン構造による効果、即ち、書き込み電流の低減を実現できる。
【0040】
しかし、フリー層12の磁化が紙面下向き(実線)のとき、第1ユニットU1の磁化状態は、反平行(anti-parallel)であるのに対し、第2ユニットU2の磁化状態は、平行(parallel)である。
【0041】
同様に、フリー層12の磁化が紙面上向き(破線)のとき、第1ユニットU1の磁化状態は、平行であるのに対し、第2ユニットU2の磁化状態は、反平行である。
【0042】
このため、読み出し時に、第1ユニットU1によるMR比と第2ユニットU2によるMR比とが相殺し合う。
【0043】
従って、磁気抵抗効果素子としてMR比を確保するためには、例えば、スペーサ層13A,13Bの材料や厚さなどを異ならせ、第1及び第2ユニットU1,U2のMR比に差を付けなければならない。
【0044】
ところが、第1ユニットU1によるMR比と第2ユニットU2によるMR比とが相殺し合うことに変わりはないため、結果として、十分に大きなMR比を確保することが難しい。
【0045】
図2の構造では、第1及び第2ユニットU1,U2のピンド層11Aの磁化が同じ向き、本例では、共に紙面上向きである。
【0046】
この場合、フリー層12の磁化が紙面下向き(実線)のとき、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、共に反平行である。また、フリー層12の磁化が紙面上向き(破線)のとき、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、共に平行である。
【0047】
従って、読み出し時には、第1ユニットU1によるMR比と第2ユニットU2によるMR比とが相殺されるこがなく、十分に大きなMR比を確保できる。
【0048】
しかし、第1及び第2ユニットU1,U2のピンド層11Aの磁化が同じ向きであるため、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態を平行にするとき、スピン偏極された電子の反射による磁化反転効率の向上という効果が得られない。また、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態を反平行にするのが困難になる。
【0049】
本発明の例では、このような問題の全てをTMR(トンネル磁気抵抗効果)比のバイアス依存性を利用することにより一気に解決する。
【0050】
3. ノーマル状態/インバース状態
磁気抵抗効果素子のMR比には、プラスとマイナスが存在する。
【0051】
MR比がプラスの状態をノーマル(normal)状態とし、そのようなMR比を生じさせるトンネル磁気抵抗効果をノーマルTMR効果と定義する。また、MR比がマイナスの状態をインバース(inverse)状態とし、そのようなMR比を生じさせるトンネル磁気抵抗効果をインバースTMR効果と定義する。
【0052】
具体的に示すと、以下のようになる。
【0053】
MR比がノーマル状態の場合、ピンド層とフリー層の磁化状態が平行のときの抵抗値をRp、反平行のときの抵抗値をRapとすると、
Rap>Rp
となる。この時のMR比は、
MR比=[(Rap−Rp)/Rp]×100 > 0
で表される。
【0054】
MR比がインバース状態の場合、ピンド層とフリー層の磁化状態が平行のときの抵抗値をRp、反平行のときの抵抗値をRapとすると、
Rap<Rp
となる。この時のMR比は、
MR比=[(Rap−Rp)/Rp]×100 < 0
で表される。
【0055】
ところで、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比、即ち、TMR比は、バイアス依存性を有する。
【0056】
例えば、バイアス電圧が零の状態でTMR比がノーマル状態の場合、バイアス電圧が増加するに従い、TMR比は小さくなり、バイアス電圧が所定値になると、TMR比が零になる。そして、さらにバイアス電圧を増加させていくと、TMR比(絶対値)は、インバース状態となって再び大きくなる。
【0057】
また、バイアス電圧が零の状態でTMR比がインバース状態の場合、バイアス電圧が増加するに従い、TMR比(絶対値)は小さくなり、バイアス電圧が所定値になると、TMR比が零になる。そして、さらにバイアス電圧を増加させていくと、TMR比は、ノーマル状態となって再び大きくなる。
【0058】
TMR比のノーマル状態/インバース状態は、書き込み、即ち、フリー層に対するスピン注入トルクの作用にも影響を与える。
【0059】
例えば、TMR比がノーマル状態の場合、フリー層からピンド層に向かって書き込み電流が流れるときは、ピンド層の磁化方向と同じ向きにスピン偏極された電子がピンド層を通過してフリー層にスピン注入トルクを与えるため、フリー層の磁化方向は、ピンド層の磁化方向と同じ(平行)になる。
【0060】
また、ピンド層からフリー層に向かって書き込み電流が流れるときは、ピンド層の磁化方向と逆向きにスピン偏極された電子がピンド層に反射されてフリー層にスピン注入トルクを与えるため、フリー層の磁化方向は、ピンド層の磁化方向と逆(反平行)になる。
【0061】
これに対し、TMR比がインバース状態の場合、フリー層からピンド層に向かって書き込み電流が流れるときは、ピンド層の磁化方向と逆向きにスピン偏極された電子がピンド層を通過してフリー層にスピン注入トルクを与えるため、フリー層の磁化方向は、ピンド層の磁化方向と逆(反平行)になる。
【0062】
また、ピンド層からフリー層に向かって書き込み電流が流れるときは、フリー層からピンド層に流れる電子のうち、ピンド層の磁化方向と同じ向きにスピン偏極された電子がピンド層に反射されてフリー層にスピン注入トルクを与えるため、フリー層の磁化方向は、ピンド層の磁化方向と同じ(平行)になる。
【0063】
このように、TMR比は、バイアス電圧に応じてノーマル状態又はインバース状態になると共に、TMR比がノーマル状態であるか、又は、インバース状態であるかは、読み出し/書き込み動作に重大な影響を与える。
【0064】
従って、TMR比のバイアス依存性を制御すると共に、書き込み電圧及び読み出し電圧を適切な値に設定することにより、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上とを同時に実現できる。
【0065】
尚、本発明の例は、図1及び図2の第1及び第2ユニットU1,U2の少なくとも1つのMR比がバイアス依存性を有していればよいため、スペーサ層13A,13Bの少なくとも1つをトンネルバリア層とする。
【0066】
4. 実施の形態
(1) 2つのピンド層の磁化方向が逆の場合
図7乃至図10は、2つのピンド層の磁化方向が逆向きに固定された磁気抵抗効果素子の書き込み/読み出し時の状態を示している。
【0067】
まず、電子スピンの向きについて以下のように定義する。
電子スピンが紙面上方向を向いている状態をアップスピンと称し、電子スピンが紙面下方向を向いている状態をダウンスピンと称する。
【0068】
ピンド層内及びフリー層内の矢印は、磁化の向きを示している。
【0069】
磁気抵抗効果素子の構造は図1で既に説明したので、ここでは、その説明については省略する。
【0070】
A. 第1例
図7及び図8の例は、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧をバイアスしたときに、第1及び第2ユニットU1,U2のMR比が共にノーマル状態になり、読み出し電圧をバイアスしたときに、第1ユニットU1のMR比がインバース状態、第2ユニットのMR比がノーマル状態になる点に特徴を有する。
【0071】
まず、図7に示すように、フリー層12の磁化が紙面下向きである場合に、これを紙面上向きに磁化反転させるには、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(バイアス電圧)Vw“1”を印加する。書き込み電圧Vw“1”は、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0072】
このようなピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にするバイアスを正のバイアス電圧と定義する。
【0073】
この時、書き込み電流(スピン注入電流)Iw“1”は、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。
【0074】
このため、紙面上向きにスピン偏極された電子(アップスピン)は、ピンド層11Aを通過してフリー層12にスピン注入トルクを与える。また、アップスピンは、ピンド層11Bで反射してフリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0075】
従って、フリー層12の磁化は、紙面下向きから紙面上向きに変化する。
【0076】
この後、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧(バイアス電圧)Vrを印加する。読み出し電圧Vrは、書き込み電圧Vw“1”よりも十分に小さい。読み出し電圧Vrは、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0077】
この時、読み出し電流Irは、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。また、読み出し電圧Vrがバイアスされた状態では、第1ユニットU1がインバース状態、第2ユニットU2がノーマル状態である。
【0078】
従って、第1ユニットU1では、ピンド層11Aとフリー層12との磁化状態が平行であるため、高抵抗状態になり、第2ユニットU2では、ピンド層11Bとフリー層12との磁化状態が反平行であるため、高抵抗状態になる。
【0079】
つまり、いずれも高抵抗状態になるため、第1及び第2ユニットU1,U2とでMR比が相殺されることがなく、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0080】
次に、図8に示すように、フリー層12の磁化が紙面上向きである場合に、これを紙面下向きに磁化反転させるには、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(バイアス電圧)Vw“0”を印加する。書き込み電圧Vw“0”は、ピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にする。
【0081】
このようなピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にするバイアスを負のバイアス電圧と定義する。
【0082】
この時、書き込み電流(スピン注入電流)Iw“0”は、ピンド層11Aからピンド層11Bに向かって流れる。
【0083】
このため、紙面下向きにスピン偏極された電子(ダウンスピン)は、ピンド層11Bを通過してフリー層12にスピン注入トルクを与える。また、ダウンスピンは、ピンド層11Aで反射してフリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0084】
従って、フリー層12の磁化は、紙面上向きから紙面下向きに変化する。
【0085】
この後、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧(バイアス電圧)Vrを印加する。読み出し電圧Vrは、書き込み電圧Vw“0”よりも十分に小さい。読み出し電圧Vrは、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0086】
この時、読み出し電流Irは、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。また、読み出し電圧Vrがバイアスされた状態では、第1ユニットU1がインバース状態、第2ユニットU2がノーマル状態である。
【0087】
従って、第1ユニットU1では、ピンド層11Aとフリー層12との磁化状態が反平行であるため、低抵抗状態になり、第2ユニットU2では、ピンド層11Bとフリー層12との磁化状態が平行であるため、低抵抗状態になる。
【0088】
つまり、いずれも低抵抗状態になるため、第1及び第2ユニットU1,U2とでMR比が相殺されることがなく、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0089】
尚、図7及び図8の読み出し時の状態として、第1ユニットU1をノーマル状態とし、第2ユニットU2をインバース状態としてもよい。
【0090】
この場合、図7に示す状態、即ち、フリー層12の磁化が紙面上向きでは、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、低抵抗状態になり、図8に示す状態、即ち、フリー層12の磁化が紙面下向きでは、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、高抵抗状態になる。
【0091】
また、読み出し電圧Vrについては、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にしたが、これに代えて、ピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にしてもよい。
【0092】
B. 第2例
図9及び図10の例は、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧をバイアスしたときに、第1及び第2ユニットU1,U2のMR比が共にインバース状態になり、読み出し電圧をバイアスしたときに、第1ユニットU1のMR比がインバース状態、第2ユニットのMR比がノーマル状態になる点に特徴を有する。
【0093】
まず、図9に示すように、フリー層12の磁化が紙面下向きである場合に、これを紙面上向きに磁化反転させるには、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を印加する。書き込み電圧Vw“1”は、ピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にする。
【0094】
この時、書き込み電流(スピン注入電流)Iw“1”は、ピンド層11Aからピンド層11Bに向かって流れる。
【0095】
このため、紙面上向きにスピン偏極された電子(アップスピン)は、ピンド層11Bを通過してフリー層12にスピン注入トルクを与える。また、アップスピンは、ピンド層11Aで反射してフリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0096】
従って、フリー層12の磁化は、紙面下向きから紙面上向きに変化する。
【0097】
この後、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧(バイアス電圧)Vrを印加する。読み出し電圧Vrは、書き込み電圧Vw“1”よりも十分に小さい。読み出し電圧Vrは、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0098】
この時、読み出し電流Irは、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。また、読み出し電圧Vrがバイアスされた状態では、第1ユニットU1がインバース状態、第2ユニットU2がノーマル状態である。
【0099】
従って、第1ユニットU1では、ピンド層11Aとフリー層12との磁化状態が平行であるため、高抵抗状態になり、第2ユニットU2では、ピンド層11Bとフリー層12との磁化状態が反平行であるため、高抵抗状態になる。
【0100】
つまり、いずれも高抵抗状態になるため、第1及び第2ユニットU1,U2とでMR比が相殺されることがなく、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0101】
次に、図10に示すように、フリー層12の磁化が紙面上向きである場合に、これを紙面下向きに磁化反転させるには、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を印加する。書き込み電圧Vw“0”は、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0102】
この時、書き込み電流(スピン注入電流)Iw“0”は、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。
【0103】
このため、紙面下向きにスピン偏極された電子(ダウンスピン)は、ピンド層11Aを通過してフリー層12にスピン注入トルクを与える。また、ダウンスピンは、ピンド層11Bで反射してフリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0104】
従って、フリー層12の磁化は、紙面上向きから紙面下向きに変化する。
【0105】
この後、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧(バイアス電圧)Vrを印加する。読み出し電圧Vrは、書き込み電圧Vw“0”よりも十分に小さい。読み出し電圧Vrは、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0106】
この時、読み出し電流Irは、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。また、読み出し電圧Vrがバイアスされた状態では、第1ユニットU1がインバース状態、第2ユニットU2がノーマル状態である。
【0107】
従って、第1ユニットU1では、ピンド層11Aとフリー層12との磁化状態が反平行であるため、低抵抗状態になり、第2ユニットU2では、ピンド層11Bとフリー層12との磁化状態が平行であるため、低抵抗状態になる。
【0108】
つまり、いずれも低抵抗状態になるため、第1及び第2ユニットU1,U2とでMR比が相殺されることがなく、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0109】
尚、図9及び図10の読み出し時の状態として、第1ユニットU1をノーマル状態とし、第2ユニットU2をインバース状態としてもよい。
【0110】
この場合、図9に示す状態、即ち、フリー層12の磁化が紙面上向きでは、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、低抵抗状態になり、図10に示す状態、即ち、フリー層12の磁化が紙面下向きでは、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、高抵抗状態になる。
【0111】
また、読み出し電圧Vrについては、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にしたが、これに代えて、ピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にしてもよい。
【0112】
(2) 2つのピンド層の磁化方向が同じ場合
図11乃至図14は、2つのピンド層の磁化方向が同じ向きに固定された磁気抵抗効果素子の書き込み/読み出し時の状態を示している。
【0113】
まず、電子スピンの向きについては、2つのピンド層の磁化方向が逆の場合と同様に、紙面上方向を向いている状態をアップスピンと称し、紙面下方向を向いている状態をダウンスピンと称する。
【0114】
A. 第1例
図11及び図12の例は、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧をバイアスしたときに、第1ユニットU1のMR比がノーマル状態、第2ユニットのMR比がインバース状態になり、読み出し電圧をバイアスしたときに、第1及び第2ユニットU1,U2のMR比が共にノーマル状態になる点に特徴を有する。
【0115】
まず、図11に示すように、フリー層12の磁化が紙面下向きである場合に、これを紙面上向きに磁化反転させるには、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を印加する。書き込み電圧Vw“0”は、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0116】
この時、書き込み電流(スピン注入電流)Iw“0”は、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。
【0117】
このため、紙面上向きにスピン偏極された電子(アップスピン)は、ピンド層11Aを通過してフリー層12にスピン注入トルクを与える。また、アップスピンは、ピンド層11Bで反射してフリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0118】
従って、フリー層12の磁化は、紙面下向きから紙面上向きに変化する。
【0119】
この後、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧(バイアス電圧)Vrを印加する。読み出し電圧Vrは、書き込み電圧Vw“0”よりも十分に小さい。読み出し電圧Vrは、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0120】
この時、読み出し電流Irは、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。また、読み出し電圧Vrがバイアスされた状態では、第1及び第2ユニットU1,U2が共にノーマル状態である。
【0121】
従って、第1ユニットU1では、ピンド層11Aとフリー層12との磁化状態が平行であるため、低抵抗状態になり、第2ユニットU2では、ピンド層11Bとフリー層12との磁化状態が平行であるため、低抵抗状態になる。
【0122】
つまり、いずれも低抵抗状態になるため、第1及び第2ユニットU1,U2とでMR比が相殺されることがなく、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0123】
次に、図12に示すように、フリー層12の磁化が紙面上向きである場合に、これを紙面下向きに磁化反転させるには、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を印加する。書き込み電圧Vw“1”は、ピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にする。
【0124】
この時、書き込み電流(スピン注入電流)Iw“1”は、ピンド層11Aからピンド層11Bに向かって流れる。
【0125】
このため、紙面下向きにスピン偏極された電子(ダウンスピン)は、ピンド層11Bを通過してフリー層12にスピン注入トルクを与える。また、ダウンスピンは、ピンド層11Aで反射してフリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0126】
従って、フリー層12の磁化は、紙面上向きから紙面下向きに変化する。
【0127】
この後、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧(バイアス電圧)Vrを印加する。読み出し電圧Vrは、書き込み電圧Vw“1”よりも十分に小さい。読み出し電圧Vrは、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0128】
この時、読み出し電流Irは、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。また、読み出し電圧Vrがバイアスされた状態では、第1及び第2ユニットU1,U2が共にノーマル状態である。
【0129】
従って、第1ユニットU1では、ピンド層11Aとフリー層12との磁化状態が反平行であるため、高抵抗状態になり、第2ユニットU2では、ピンド層11Bとフリー層12との磁化状態が反平行であるため、高抵抗状態になる。
【0130】
つまり、いずれも高抵抗状態になるため、第1及び第2ユニットU1,U2とでMR比が相殺されることがなく、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0131】
尚、図11及び図12の書き込み時の状態として、第1ユニットU1をインバース状態とし、第2ユニットU2をノーマル状態としてもよい。
【0132】
この場合、書き込み時に図11に示すようなバイアス条件を与えると、フリー層12の磁化方向は、紙面上向きではなく、紙面下向きに変化する。また、書き込み時に図12に示すようなバイアス条件を与えると、フリー層12の磁化方向は、紙面下向きではなく、紙面上向きに変化する。
【0133】
また、読み出し電圧Vrについては、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にしたが、これに代えて、ピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にしてもよい。
【0134】
B. 第2例
図13及び図14の例は、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧をバイアスしたときに、第1ユニットU1のMR比がノーマル状態、第2ユニットのMR比がインバース状態になり、読み出し電圧をバイアスしたときに、第1及び第2ユニットU1,U2のMR比が共にインバース状態になる点に特徴を有する。
【0135】
まず、図13に示すように、フリー層12の磁化が紙面下向きである場合に、これを紙面上向きに磁化反転させるには、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正バイアス電圧)Vw“1”を印加する。書き込み電圧Vw“1”は、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0136】
この時、書き込み電流(スピン注入電流)Iw“1”は、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。
【0137】
このため、紙面上向きにスピン偏極された電子(アップスピン)は、ピンド層11Aを通過してフリー層12にスピン注入トルクを与える。また、アップスピンは、ピンド層11Bで反射してフリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0138】
従って、フリー層12の磁化は、紙面下向きから紙面上向きに変化する。
【0139】
この後、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧(バイアス電圧)Vrを印加する。読み出し電圧Vrは、書き込み電圧Vw“1”よりも十分に小さい。読み出し電圧Vrは、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0140】
この時、読み出し電流Irは、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。また、読み出し電圧Vrがバイアスされた状態では、第1及び第2ユニットU1,U2が共にインバース状態である。
【0141】
従って、第1ユニットU1では、ピンド層11Aとフリー層12との磁化状態が平行であるため、高抵抗状態になり、第2ユニットU2では、ピンド層11Bとフリー層12との磁化状態が平行であるため、高抵抗状態になる。
【0142】
つまり、いずれも高抵抗状態になるため、第1及び第2ユニットU1,U2とでMR比が相殺されることがなく、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0143】
次に、図14に示すように、フリー層12の磁化が紙面上向きである場合に、これを紙面下向きに磁化反転させるには、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を印加する。書き込み電圧Vw“0”は、ピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にする。
【0144】
この時、書き込み電流(スピン注入電流)Iw“0”は、ピンド層11Aからピンド層11Bに向かって流れる。
【0145】
このため、紙面下向きにスピン偏極された電子(ダウンスピン)は、ピンド層11Bを通過してフリー層12にスピン注入トルクを与える。また、ダウンスピンは、ピンド層11Aで反射してフリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0146】
従って、フリー層12の磁化は、紙面上向きから紙面下向きに変化する。
【0147】
この後、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧(バイアス電圧)Vrを印加する。読み出し電圧Vrは、書き込み電圧Vw“0”よりも十分に小さい。読み出し電圧Vrは、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0148】
この時、読み出し電流Irは、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。また、読み出し電圧Vrがバイアスされた状態では、第1及び第2ユニットU1,U2が共にインバース状態である。
【0149】
従って、第1ユニットU1では、ピンド層11Aとフリー層12との磁化状態が反平行であるため、低抵抗状態になり、第2ユニットU2では、ピンド層11Bとフリー層12との磁化状態が反平行であるため、低抵抗状態になる。
【0150】
つまり、いずれも低抵抗状態になるため、第1及び第2ユニットU1,U2とでMR比が相殺されることがなく、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0151】
尚、図13及び図14の書き込み時の状態として、第1ユニットU1をインバース状態とし、第2ユニットU2をノーマル状態としてもよい。
【0152】
この場合、書き込み時に図13に示すようなバイアス条件を与えると、フリー層12の磁化方向は、紙面上向きではなく、紙面下向きに変化する。また、書き込み時に図14に示すようなバイアス条件を与えると、フリー層12の磁化方向は、紙面下向きではなく、紙面上向きに変化する。
【0153】
また、読み出し電圧Vrについては、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にしたが、これに代えて、ピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にしてもよい。
【0154】
(3) MR比のバイアス依存性の制御
本発明の例では、第1及び第2ユニットのMR比の1つはバイアス依存性を有し、第1及び第2ユニットのMR比のうちバイアス依存性を有するものは、読み出し電圧と書き込み電圧との間の領域で、ノーマル状態及びインバース状態のうちの一方から他方に変化する。
【0155】
ここでは、このようなバイアス電圧に対するTMR特性を実現するための方法の例について述べる。
【0156】
磁気フリー層/トンネルバリア層/磁気ピンド層の基本構造を有するトンネル磁気抵抗効果素子については、以下の2種類を実現できる。
【0157】
一つは、低バイアス時にノーマルTMR効果を有し、高バイアス時にインバースTMR効果を有する磁気抵抗効果素子である。
他の一つは、低バイアス時にインバースTMR効果を有し、高バイアス時にノーマルTMR効果を有する磁気抵抗効果素子である。
【0158】
トンネル磁気抵抗効果素子がノーマル状態になるか、又は、インバース状態になるかは、トンネルバリア層を構成する材料の電気伝導特性に支配的に影響される場合と、トンネルバリア層と磁気フリー層との界面及びトンネルバリア層と磁気ピンド層との界面における電子の準位に支配的に影響される場合とがある。
【0159】
前者の場合には、トンネルバリア層を構成する材料の選択により、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比のバイアス依存性を制御できる。
【0160】
また、後者の場合には、磁気ピンド層、トンネルバリア層及び磁気フリー層の材料の組み合せを変えることにより、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比のバイアス依存性を制御できる。
【0161】
低バイアス時において、ノーマルTMR効果が発生するトンネルバリア層の典型例としては、Al2O3, TiO2, MgO, CaO, SrO, TiO などの酸化物がある。
【0162】
このような酸化物から構成されるトンネルバリア層は、例えば、Co1-a-bFeaNib/酸化物/Co1-a-bFeaNib、Co1-a-bFeaNib/Al2O3/La1-xSrxMnO3という形でよく使用される。
【0163】
低バイアス時において、インバースTMR効果が発生する基本ユニットとしては、Co1-a-bFeaNib/SrTiO3/La1-xSrxMo3, Co1-a-bFeaNib/Zr1-xOx/Co1-a-bFeaNibなどがある。これらは、作成方法を工夫することにより、高バイアス時にノーマルTMR効果を発生させることが可能である。
【0164】
また、コスパッタなどの材料を使用して、インバースTMR効果を発生させる材料とノーマルTMR効果を有する材料とを混合してトンネルバリア層を形成することもできる。
【0165】
ところで、このような材料の選択のみでMR比のバイアス依存性を制御する場合には、読み出し電圧及び書き込み電圧が低電圧化されるなか、これら電圧の間でTMR特性をノーマル状態及びインバース状態の一方から他方に安定的に変化させることが難しい現状がある。
【0166】
その対策としては、それぞれ異なるバイアス依存性を有する2つ以上のユニットを組み合わせることが考えられる。この場合、TMR特性(インバース/ノーマル)の切り替えが理想的なポイント(バイアス電圧)で行われるトンネル磁気抵抗効果素子を製造できる。
【0167】
例えば、図15に示すように、小さなバイアス依存性を有し、低バイアス時にノーマルTMR効果を有するユニット(同図(a))と、大きなバイアス依存性を有し、低バイアス時にインバースTMR効果を有するユニット(同図(b))とを組み合わせると、インバース状態からノーマル状態への変化点Vc1を、書き込み電圧Vw“0”(or Vw“1”)と読み出し電圧Vrとの間に容易に設定できる(同図(c))。
【0168】
また、図16に示すように、大きなバイアス依存性を有し、低バイアス時にノーマルTMR効果を有するユニット(同図(a))と、小さなバイアス依存性を有し、低バイアス時にインバースTMR効果を有するユニット(同図(b))とを組み合わせると、ノーマル状態からインバース状態への変化点Vc1を、書き込み電圧Vw“1”(or Vw“0”)1と読み出し電圧Vrとの間に容易に設定できる(同図(c))。
【0169】
ここで、2つの書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”が存在するのは、スピン注入書き込み方式では、書き込みデータ“0”,“1”に応じて、書き込み電流(スピン注入電流)の向きを変えることに起因する。
【0170】
即ち、第1データ“0”を書き込むときは、書き込み電圧(例えば、正のバイアス電圧)Vw“0”を磁気抵抗効果素子に印加し、第2データ“1”を書き込むときは、書き込み電圧(例えば、負のバイアス電圧)Vw“1”を磁気抵抗効果素子に印加する。
【0171】
書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”の値については、MR比のバイアス依存性(変化点Vc1,Vc2)を考慮して、最適な値に設定する。また、読み出し電圧Vrについては、マージンなどを考慮して、正バイアス側及び負バイアス側のいずれか一方に設定する。
【0172】
1つの基本ユニットでノーマルTMR効果とインバースTMR効果をバイアス電圧に応じて発生させるには、トンネルバリア層とフリー層との間又はトンネルバリア層とピンド層との間に非磁性金属層を挿入した場合に現れるTMR比の振動を利用することもできる。
【0173】
例えば、Co1-a-bFeaNib/Al2O3/Cu/Co1-a-bFeaNibという基本ユニットの場合、Cuの厚さを制御することにより、TMR比を正負の間で振動させることが可能である。
【0174】
また、Co1-a-bFeaNib/MgO/非磁性金属/Co1-a-bFeaNibという基本ユニット(但し、非磁性金属は、Au, Ru, Pt, Ir, Cu, Ag, Rh, Os のうちの1つとする。)の場合においても、非磁性金属の厚さを制御することにより、TMR比を正負の間で振動させることが可能である。
【0175】
非磁性金属の代わりに、非磁性酸化物、例えば、CoO, NiO, MnO, CrO, FeO, VO, TiO を用いた場合でも、低バイアス時にノーマルTMR効果、高バイアス時にインバースTMR効果を発生させることができる。
【0176】
例えば、Co1-a-bFeaNib/MgO/非磁性酸化物/Co1-a-bFeaNibという基本ユニットの場合、MgOは、NaCl構造を有し、(100)面優先配向しているため、非磁性酸化物としても、NaCl構造を有し、(100)面優先配向していることが望ましい。
【0177】
上述のCoO, NiO, MnO, CrO, FeO, VO, TiOは、NaCl構造を有する。これらの材料は、XPSやXMCDなどの分析による電子状態解析や磁化配列解析により反強磁性的な磁気特性又は電子状態を取ることが確認されている。
【0178】
尚、NaCl構造を有するトンネルバリア層としては、MgOの他に、CaO, SrO, EuO, TiOなどが知られている。
【0179】
非磁性酸化物は、トンネルバリア層とフリー層との間又はトンネルバリア層とピンド層との間に、非磁性金属、例えば、Co, Ni, Mn, Cr, Fe, V, Tiを形成した後に、これら非磁性金属を酸化することにより形成される。
【0180】
また、非磁性酸化物は、フリー層又はピンド層上に直接堆積させることもできる。
【0181】
ピンド層及びフリー層のうちの少なくとも1つは、磁性層/中間層/磁性層という構造を有していてもよい。この場合、2つの磁性層は、中間層を介して互いに磁気結合を有する。
【0182】
例えば、2つの磁性層が反強磁性結合するSAF(Synthetic anti-ferromagnetic)構造をピンド層及びフリー層のうちの少なくとも1つに採用できる。SAF構造としては、主に、Co1-a-bFeaNib/Ru/Co1-a-bFeaNib, Co1-a-bFeaNib/Os/Co1-a-bFeaNib, Co1-a-bFeaNib/Ir/Co1-a-bFeaNibがよく使用される。
【0183】
ピンド層及びフリー層は、多層構造、例えば、[Co1-a-bFeaNib/Cr]n, [Co1-a-bFeaNib/Ru]n(但し、nは、[]内の構造がn段に積層されていることを意味する。)を有する構造であってもよい。磁性層の厚さを最適化すれば、所望のバイアス依存性を得ることができる。特に、トンネルバリア層と接触する磁性層の厚さとトンネルバリア層に接触しない磁性層の厚さの比が重要になる。
【0184】
5. 実施例
以下、実施例について説明する。
各実施例において、ピンド層内及びフリー層内の矢印は、磁化の向きを示している。
【0185】
(1) 第1実施例
図17は、第1実施例を示している。
【0186】
第1実施例では、2つのピンド層11A,11Bの磁化方向を互いに逆向きに設定する。ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向(垂直磁化)とする。
【0187】
また、スペーサ層(非磁性層)13A,13Bは、トンネルバリア層とし、例えば、MgO, AlOxなどの絶縁体又はGa, Geなどの半導体から構成する。この場合、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、バイアス依存性を有する。
【0188】
第1ユニットU1のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてインバースTMR特性を示し、高バイアス状態においてノーマルTMR特性を示す。
【0189】
特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“1”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“0”よりも低い領域にある。
【0190】
第2ユニットU2のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0191】
第2ユニットU2では、特性が切り替わるポイントは、書き込み電圧Vw“1”,Vw“0”よりも十分に高い領域にある。
【0192】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は平行、第2ユニットU2の磁化状態は反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0193】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は反平行、第2ユニットU2の磁化状態は平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0194】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1ユニットU1は、インバース状態、第2ユニットU2は、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0195】
(2) 第2実施例
図18は、第2実施例を示している。
【0196】
第2実施例では、2つのピンド層11A,11Bの磁化方向を互いに同じ向きに設定する。ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向(垂直磁化)とする。
【0197】
また、スペーサ層(非磁性層)13A,13Bは、トンネルバリア層とし、例えば、MgO, AlOxなどの絶縁体又はGa, Geなどの半導体から構成する。この場合、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、バイアス依存性を有する。
【0198】
第1及び第2ユニットU1,U2のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0199】
但し、第1ユニットU1では、特性が切り替わるポイントは、書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”よりも十分に高い領域にある。
【0200】
これに対し、第2ユニットU2では、特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“0”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“1”よりも低い領域にある。
【0201】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、共に、平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0202】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、共に、反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0203】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0204】
(3) 第3実施例
図19は、第3実施例を示している。
【0205】
第3実施例では、2つのピンド層11A,11Bの磁化方向を互いに逆向きに設定する。ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向(垂直磁化)とする。
【0206】
また、スペーサ層(非磁性層)13Aは、トンネルバリア層とし、例えば、MgO, AlOxなどの絶縁体又はGa, Geなどの半導体から構成する。これに対し、スペーサ層(非磁性層)13Bは、メタルスペーサ層とし、例えば、Cu, Auなどの導電体から構成する。この場合、第1ユニットU1のみがバイアス依存性を有する。
【0207】
第1ユニットU1のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0208】
特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“1”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“0”よりも低い領域にある。
【0209】
第2ユニットU2のMR比は、バイアス電圧によらず、一定であり、常に、インバースTMR特性を示す。
【0210】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は反平行、第2ユニットU2の磁化状態は平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0211】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は平行、第2ユニットU2の磁化状態は反平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0212】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1ユニットU1は、ノーマル状態、第2ユニットU2は、インバース状態になるため、データ“1”は高抵抗状態、データ“0”は低抵抗状態になる。
【0213】
(4) 第4実施例
図20は、第4実施例を示している。
【0214】
第4実施例では、2つのピンド層11A,11Bの磁化方向を互いに同じ向きに設定する。ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向(垂直磁化)とする。
【0215】
また、スペーサ層(非磁性層)13Aは、トンネルバリア層とし、例えば、MgO, AlOxなどの絶縁体又はGa, Geなどの半導体から構成する。これに対し、スペーサ層(非磁性層)13Bは、メタルスペーサ層とし、例えば、Cu, Auなどの導電体から構成する。この場合、第1ユニットU1のみがバイアス依存性を有する。
【0216】
第1ユニットU1のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0217】
特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“1”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“0”よりも低い領域にある。
【0218】
第2ユニットU2のMR比は、バイアス電圧によらず、一定であり、常に、ノーマルTMR特性を示す。
【0219】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、共に、反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0220】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、共に、平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0221】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、ノーマル状態になるため、データ“1”は高抵抗状態、データ“0”は低抵抗状態になる。
【0222】
(5) 第5実施例
図21は、第5実施例を示している。
【0223】
第5実施例では、2つのピンド層11A,11Bの磁化方向を互いに逆向きに設定する。ピンド層11A,11Bの磁化方向は、反強磁性層14により固着する。また、ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向に対して垂直な方向(面内磁化)とする。
【0224】
ピンド層11Aは、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層構造を有し、2つの強磁性層は、非磁性層を介して互いに磁気結合している。本例では、ピンド層11Aは、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF(synthetic anti-ferromagnetic)結合を有する。
【0225】
ピンド層11Bは、強磁性層/非磁性層/強磁性層/非磁性層/強磁性層の5層構造を有し、非磁性層の両側に存在する2つの強磁性層は、互いに磁気結合している。本例では、ピンド層11Bは、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF結合を有する。
【0226】
ピンド層11A,11Bを強磁性層/非磁性層/強磁性層構造にすると、熱的に磁化状態が安定し、外部磁界に対するゆらぎが発生し難くなる。具体的には、強磁性層の端部の磁化が単磁区構造に近くなるため、静磁結合により外部からの見かけ上の飽和磁化を零にすることができる。
【0227】
ピンド層11A内の強磁性層/非磁性層/強磁性層構造の数(本例では1つ)は、ピンド層11B内の強磁性層/非磁性層/強磁性層構造の数(本例では2つ)と異ならせるのが望ましい。
【0228】
第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態については、フリー層12の磁化方向が、スペーサ層(非磁性層)13A,13Bに隣接する強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。
【0229】
つまり、第1ユニットU1の磁化状態は、スペーサ層13Aに隣接する2つの強磁性層の磁化方向により決まり、第2ユニットU2の磁化状態は、スペーサ層13Bに隣接する2つの強磁性層の磁化方向により決まる。
【0230】
フリー層12の強磁性層は、単層構造及び積層構造のいずれでも構わない。また、フリー層12を強磁性層/非磁性層/強磁性層構造とし、2つの強磁性層に磁気相互作用を持たせてもよい。
【0231】
ピンド層11A,11B内の強磁性層は、fcc-Co, hcp-Co, bcc-Fe, fcc-CoFe合金, bcc-CoFe合金, アモルファスCoFeB合金などの強磁性材料から構成する。ピンド層11A,11B内の非磁性層は、Ru, Ir, Osなどの導電体から構成する。反強磁性層は、PtMn, IrMn, NiMn, FeMn, PtCrMn, RhMn, FeRhなどの反強磁性材料から構成する。
【0232】
また、スペーサ層(非磁性層)13A,13Bは、トンネルバリア層とし、例えば、MgO, AlOxなどの絶縁体又はGa, Geなどの半導体から構成する。この場合、第1及び第2ユニット(TMRユニット)U1,U2は、共に、バイアス依存性を有する。
【0233】
第1ユニットU1のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0234】
第1ユニットU1では、特性が切り替わるポイントは、書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”よりも十分に高い領域にある。
【0235】
第2ユニットU2のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてインバースTMR特性を示し、高バイアス状態においてノーマルTMR特性を示す。
【0236】
特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“0”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“1”よりも低い領域にある。
【0237】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は平行、第2ユニットU2の磁化状態は反平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0238】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は反平行、第2ユニットU2の磁化状態は平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0239】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1ユニットU1は、ノーマル状態、第2ユニットU2は、インバース状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0240】
(6) 第6実施例
図22は、第6実施例を示している。
【0241】
第6実施例は、第5実施例の変形例である。
第6実施例が第5実施例と異なる点は、フリー層12がSAF構造を有している点にある。
【0242】
フリー層12は、強磁性層/非磁性層/強磁性層/非磁性層/強磁性層の5層構造を有し、非磁性層の両側に存在する2つの強磁性層は、互いに反強磁性結合している。
【0243】
フリー層12をSAF構造にすると、熱的に磁化状態が安定し、外部磁界に対するゆらぎが発生し難くなる。具体的には、強磁性層の端部の磁化が単磁区構造に近くなるため、静磁結合により外部からの見かけ上の飽和磁化を零にすることができる。
【0244】
第1ユニットU1の磁化状態については、フリー層12の最下層の強磁性層の磁化方向が、ピンド層11Aの最上層の強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。つまり、スペーサ層13Aに隣接する2つの強磁性層の磁化方向により第1ユニットU1の磁化状態が決まる。
【0245】
第2ユニットU2の磁化状態については、フリー層12の最上層の強磁性層の磁化方向が、ピンド層11Bの最下層の強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。つまり、スペーサ層13Bに隣接する2つの強磁性層の磁化方向により第2ユニットU2の磁化状態が決まる。
【0246】
第1ユニットU1のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0247】
第1ユニットU1では、特性が切り替わるポイントは、書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”よりも十分に高い領域にある。
【0248】
第2ユニットU2のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてインバースTMR特性を示し、高バイアス状態においてノーマルTMR特性を示す。
【0249】
特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“0”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“1”よりも低い領域にある。
【0250】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は平行、第2ユニットU2の磁化状態は反平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0251】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は反平行、第2ユニットU2の磁化状態は平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0252】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1ユニットU1は、ノーマル状態、第2ユニットU2は、インバース状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0253】
(7) 第7実施例
図23は、第7実施例を示している。
【0254】
第7実施例では、2つのピンド層11A,11Bの磁化方向を互いに同じ向きに設定する。ピンド層11A,11Bの磁化方向は、反強磁性層14により固着する。また、ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向に対して垂直な方向(面内磁化)とする。
【0255】
ピンド層11A,11Bは、それぞれ、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層構造を有し、2つの強磁性層は、非磁性層を介して互いに磁気結合している。本例では、ピンド層11A,11Bは、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF結合を有する。
【0256】
フリー層12は、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層構造を有し、2つの強磁性層は、非磁性層を介して互いに磁気結合している。本例では、フリー層12は、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF結合を有する。
【0257】
ピンド層11A,11B及びフリー層12を強磁性層/非磁性層/強磁性層構造にすると、熱的に磁化状態が安定し、外部磁界に対するゆらぎが発生し難くなる。
【0258】
第1ユニットU1の磁化状態については、フリー層12の最下層の強磁性層の磁化方向が、ピンド層11Aの最上層の強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。
【0259】
第2ユニットU2の磁化状態については、フリー層12の最上層の強磁性層の磁化方向が、ピンド層11Bの最下層の強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。
【0260】
ピンド層11A,11B内及びフリー層12内の強磁性層は、fcc-Co, hcp-Co, bcc-Fe, fcc-CoFe合金, bcc-CoFe合金, アモルファスCoFeB合金などの強磁性材料から構成する。ピンド層11A,11B内及びフリー層12内の非磁性層は、Ru, Ir, Osなどの導電体から構成する。反強磁性層は、PtMn, IrMn, NiMn, FeMn, PtCrMn, RhMn, FeRhなどの反強磁性材料から構成する。
【0261】
また、スペーサ層(非磁性層)13A,13Bは、トンネルバリア層とし、例えば、MgO, AlOxなどの絶縁体又はGa, Geなどの半導体から構成する。この場合、第1及び第2ユニット(TMRユニット)U1,U2は、共に、バイアス依存性を有する。
【0262】
第1ユニットU1のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0263】
第1ユニットU1では、特性が切り替わるポイントは、書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”よりも十分に高い領域にある。
【0264】
第2ユニットU2のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてインバースTMR特性を示し、高バイアス状態においてノーマルTMR特性を示す。
【0265】
特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“0”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“1”よりも低い領域にある。
【0266】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は平行、第2ユニットU2の磁化状態は反平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0267】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は反平行、第2ユニットU2の磁化状態は平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0268】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1ユニットU1は、ノーマル状態、第2ユニットU2は、インバース状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0269】
(8) 第8実施例
図24は、第8実施例を示している。
【0270】
第8実施例では、2つのピンド層11A,11Bの磁化方向を互いに逆向きに設定する。ピンド層11A,11Bの磁化方向は、反強磁性層14により固着する。また、ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向に対して垂直な方向(面内磁化)とする。
【0271】
ピンド層11Aは、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層構造を有し、2つの強磁性層は、非磁性層を介して互いに磁気結合している。本例では、ピンド層11Aは、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF結合を有する。
【0272】
ピンド層11Bは、強磁性層/非磁性層/強磁性層/非磁性層/強磁性層の5層構造を有し、非磁性層の両側に存在する2つの強磁性層は、互いに磁気結合している。本例では、ピンド層11Bは、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF結合を有する。
【0273】
フリー層12は、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層構造を有し、2つの強磁性層は、非磁性層を介して互いに磁気結合している。本例では、フリー層12は、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF結合を有する。
【0274】
ピンド層11A,11B及びフリー層12を強磁性層/非磁性層/強磁性層構造にすると、熱的に磁化状態が安定し、外部磁界に対するゆらぎが発生し難くなる。
【0275】
第1ユニットU1の磁化状態については、フリー層12の最下層の強磁性層の磁化方向が、ピンド層11Aの最上層の強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。
【0276】
第2ユニットU2の磁化状態については、フリー層12の最上層の強磁性層の磁化方向が、ピンド層11Bの最下層の強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。
【0277】
ピンド層11A,11B内及びフリー層12内の強磁性層は、fcc-Co, hcp-Co, bcc-Fe, fcc-CoFe合金, bcc-CoFe合金, アモルファスCoFeB合金などの強磁性材料から構成する。ピンド層11A,11B内及びフリー層12内の非磁性層は、Ru, Ir, Osなどの導電体から構成する。反強磁性層は、PtMn, IrMn, NiMn, FeMn, PtCrMn, RhMn, FeRhなどの反強磁性材料から構成する。
【0278】
また、スペーサ層(非磁性層)13A,13Bは、トンネルバリア層とし、例えば、MgO, AlOxなどの絶縁体又はGa, Geなどの半導体から構成する。この場合、第1及び第2ユニット(TMRユニット)U1,U2は、共に、バイアス依存性を有する。
【0279】
第1及び第2ユニットU1,U2のMR比のバイアス依存性は、それぞれ、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0280】
但し、第1ユニットU1では、特性が切り替わるポイントは、書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”よりも十分に高い領域にある。
【0281】
これに対し、第2ユニットU2では、特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“0”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“1”よりも低い領域にある。
【0282】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は,共に、平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0283】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、共に、反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0284】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0285】
(9) 第9実施例
図25は、第9実施例を示している。
【0286】
第9実施例では、2つのピンド層11A,11Bの磁化方向を互いに同じ向きに設定する。ピンド層11A,11Bの磁化方向は、反強磁性層14により固着する。また、ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向に対して垂直な方向(面内磁化)とする。
【0287】
ピンド層11A,11Bは、それぞれ、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層構造を有し、2つの強磁性層は、非磁性層を介して互いに磁気結合している。本例では、ピンド層11A,11Bは、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF結合を有する。
【0288】
フリー層12は、強磁性層/非磁性層/強磁性層/非磁性層/強磁性層の5層構造を有し、非磁性層の両側に存在する2つの強磁性層は、互いに磁気結合している。本例では、フリー層12は、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF結合を有する。
【0289】
ピンド層11A,11B及びフリー層12を強磁性層/非磁性層/強磁性層構造にすると、熱的に磁化状態が安定し、外部磁界に対するゆらぎが発生し難くなる。
【0290】
第1ユニットU1の磁化状態については、フリー層12の最下層の強磁性層の磁化方向が、ピンド層11Aの最上層の強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。
【0291】
第2ユニットU2の磁化状態については、フリー層12の最上層の強磁性層の磁化方向が、ピンド層11Bの最下層の強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。
【0292】
ピンド層11A,11B内及びフリー層12内の強磁性層は、fcc-Co, hcp-Co, bcc-Fe, fcc-CoFe合金, bcc-CoFe合金, アモルファスCoFeB合金などの強磁性材料から構成する。ピンド層11A,11B内及びフリー層12内の非磁性層は、Ru, Ir, Osなどの導電体から構成する。反強磁性層は、PtMn, IrMn, NiMn, FeMn, PtCrMn, RhMn, FeRhなどの反強磁性材料から構成する。
【0293】
また、スペーサ層(非磁性層)13A,13Bは、トンネルバリア層とし、例えば、MgO, AlOxなどの絶縁体又はGa, Geなどの半導体から構成する。この場合、第1及び第2ユニット(TMRユニット)U1,U2は、共に、バイアス依存性を有する。
【0294】
第1及び第2ユニットU1,U2のMR比のバイアス依存性は、それぞれ、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0295】
但し、第1ユニットU1では、特性が切り替わるポイントは、書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”よりも十分に高い領域にある。
【0296】
これに対し、第2ユニットU2では、特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“0”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“1”よりも低い領域にある。
【0297】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は,共に、平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0298】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、共に、反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0299】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0300】
(10) 第10実施例
図26は、第10実施例を示している。
【0301】
第10実施例は、第6実施例の変形例である。
第10実施例が第6実施例と異なる点は、第2ユニットU2のスペーサ層13Bが、トンネルバリア層(絶縁体又は半導体)ではなく、メタルスペーサ層(導電体)から構成される点にある。
【0302】
この場合、第2ユニットU2は、GMRユニットとして機能し、そのMR比については、バイアス依存性を有しない。本例では、第2ユニットU2のMR比は、バイアス電圧によらず、一定値を有し、常にノーマル状態にある。
【0303】
これに対し、第1ユニットU1は、TMRユニットとして機能し、低バイアス状態においてインバースTMR特性を示し、高バイアス状態においてノーマルTMR特性を示す。
【0304】
第1ユニットU1では、特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“1”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“0”よりも低い領域にある。
【0305】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は平行、第2ユニットU2の磁化状態は反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0306】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は反平行、第2ユニットU2の磁化状態は平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0307】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1ユニットU1は、インバース状態、第2ユニットU2は、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0308】
(11) 第11実施例
図27は、第11実施例を示している。
【0309】
第11実施例は、第7実施例の変形例である。
第11実施例が第7実施例と異なる点は、第2ユニットU2のスペーサ層13Bが、トンネルバリア層(絶縁体又は半導体)ではなく、メタルスペーサ層(導電体)から構成される点にある。
【0310】
この場合、第2ユニットU2は、GMRユニットとして機能し、そのMR比については、バイアス依存性を有しない。本例では、第2ユニットU2のMR比は、バイアス電圧によらず、一定値を有し、常にノーマル状態にある。
【0311】
これに対し、第1ユニットU1は、TMRユニットとして機能し、低バイアス状態においてインバースTMR特性を示し、高バイアス状態においてノーマルTMR特性を示す。
【0312】
第1ユニットU1では、特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“1”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“0”よりも低い領域にある。
【0313】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は平行、第2ユニットU2の磁化状態は反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0314】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は反平行、第2ユニットU2の磁化状態は平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0315】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1ユニットU1は、インバース状態、第2ユニットU2は、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0316】
(12) 第12実施例
図28は、第12実施例を示している。
【0317】
第12実施例は、第8実施例の変形例である。
第12実施例が第8実施例と異なる点は、第2ユニットU2のスペーサ層13Bが、トンネルバリア層(絶縁体又は半導体)ではなく、メタルスペーサ層(導電体)から構成される点にある。
【0318】
この場合、第2ユニットU2は、GMRユニットとして機能し、そのMR比については、バイアス依存性を有しない。本例では、第2ユニットU2のMR比は、バイアス電圧によらず、一定値を有し、常にノーマル状態にある。
【0319】
これに対し、第1ユニットU1は、TMRユニットとして機能し、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0320】
第1ユニットU1では、特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“1”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“0”よりも低い領域にある。
【0321】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、それぞれ、反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0322】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、それぞれ、平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0323】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0324】
(13) 第13実施例
図29は、第13実施例を示している。
【0325】
第13実施例は、第9実施例の変形例である。
第13実施例が第9実施例と異なる点は、第2ユニットU2のスペーサ層13Bが、トンネルバリア層(絶縁体又は半導体)ではなく、メタルスペーサ層(導電体)から構成される点にある。
【0326】
この場合、第2ユニットU2は、GMRユニットとして機能し、そのMR比については、バイアス依存性を有しない。本例では、第2ユニットU2のMR比は、バイアス電圧によらず、一定値を有し、常にノーマル状態にある。
【0327】
これに対し、第1ユニットU1は、TMRユニットとして機能し、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0328】
第1ユニットU1では、特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“1”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“0”よりも低い領域にある。
【0329】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、それぞれ、反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0330】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、それぞれ、平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0331】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0332】
(14) その他
第1乃至第13実施例において、第1ユニットU1を下側とし、第2ユニットU2を上側とした場合、第1ユニットU1は、導電体から構成される下地層上に形成される。また、第2ユニット上には、導電体から構成されるキャップ層が形成される。
【0333】
読み出し電圧Vrについては、本例では、正のバイアス電圧(第2ユニットU2側が高電位)であるが、これに代えて、負のバイアス電圧(第1ユニットU1側が高電位)にしてもよい。
【0334】
6. 応用例
本発明の例は、デュアルピン構造の磁気抵抗効果素子において書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図るものであるが、この技術を応用すると、シングルピン構造の磁気抵抗効果素子において、書き込み電流(スピン注入電流)の向きを変えることなく、その大きさを変えるだけで、2値データ“0”,“1”の書き込みを行うことができる、という新技術を実現できる。
【0335】
この技術によれば、書き込み電流は、書き込みデータの値に関係なく、一方向のみに流せばよいため、周辺回路としてのドライバ/シンカーが簡略化され、チップサイズの縮小を図ることができる。
【0336】
この応用例では、シングルピン構造の磁気抵抗効果素子を対象とするため、バイアス電圧については、以下のように定義する。
【0337】
フリー層12を高い電位とし、ピンド層11を低い電位とするバイアスを正のバイアス電圧とし、ピンド層11を高い電位とし、フリー層12を低い電位とするバイアスを負のバイアス電圧とする。
【0338】
(1) 第1応用例
図30は、第1応用例を示している。
【0339】
磁気抵抗効果素子Uは、ピンド層11、フリー層12及びこれらの間に配置されるスペーサ層13を有する。スペーサ層13は、絶縁体又は半導体からなるトンネルバリア層である。
【0340】
ピンド層11及びフリー層12は、単層又は複数層の強磁性体から構成される。また、ピンド層11及びフリー層12は、SAF構造に代表される強磁性層/非磁性層/強磁性層構造を有していてもよい。
【0341】
磁気抵抗効果素子UのMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す、というものである。
【0342】
特性が切り替わるポイントVc1は、2つの書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”の間にある。
【0343】
読み出し電圧Vrを含めた電圧の大小関係は、0<Vr<Vw“0”<Vc1<Vw“1”となる。当然のことながら、Vw“1”は、磁気抵抗効果素子Uの破壊電圧Vbよりも小さい値である。
【0344】
このような磁気抵抗効果素子Uにおいて、図31に示すように、書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、磁気抵抗効果素子Uは、ノーマル状態になり、ピンド層11の磁化方向と同じ向きにスピン偏極された電子がピンド層11を通過し、フリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0345】
その結果、磁気抵抗効果素子Uの磁化状態は、平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0346】
また、図32に示すように、書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、磁気抵抗効果素子Uは、インバース状態になり、ピンド層11の磁化方向と逆向きにスピン偏極された電子がピンド層11を通過し、フリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0347】
その結果、磁気抵抗効果素子Uの磁化状態は、反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0348】
さらに、図31及び図32に示すように、読み出し電圧(正のバイアス電圧)Vrをバイアスしたときには、磁気抵抗効果素子Uは、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0349】
尚、読み出し電圧Vrは、負のバイアス電圧としてもよい。
【0350】
(2) 第2応用例
図33は、第2応用例を示している。
【0351】
第2応用例は、第1応用例の変形例である。
第2応用例が第1応用例と異なる点は、読み出し電圧Vr及び書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”を全て負のバイアス電圧とした点にある。
【0352】
特性が切り替わるポイントVc2は、2つの書き込み電圧Vw“1”,Vw“0”の間にある。
【0353】
読み出し電圧Vrを含めた電圧の大小関係は、0<|Vr|<|Vw“1”|<|Vc2|<|Vw“0”|となる。当然のことながら、|Vw“0”|は、磁気抵抗効果素子Uの破壊電圧|Vb|よりも小さい値である。
【0354】
このような磁気抵抗効果素子Uにおいて、図34に示すように、書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、磁気抵抗効果素子Uは、ノーマル状態になり、ピンド層11の磁化方向と逆向きにスピン偏極された電子がピンド層11に反射され、フリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0355】
その結果、磁気抵抗効果素子Uの磁化状態は、反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0356】
また、図35に示すように、書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、磁気抵抗効果素子Uは、インバース状態になり、ピンド層11の磁化方向と同じ向きにスピン偏極された電子がピンド層11に反射され、フリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0357】
その結果、磁気抵抗効果素子Uの磁化状態は、平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0358】
さらに、図34及び図35に示すように、読み出し電圧(負のバイアス電圧)Vrをバイアスしたときには、磁気抵抗効果素子Uは、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0359】
尚、読み出し電圧Vrは、正のバイアス電圧としてもよい。
【0360】
(3) 第3応用例
図36は、第3応用例を示している。
【0361】
磁気抵抗効果素子Uは、ピンド層11、フリー層12及びこれらの間に配置されるスペーサ層13を有する。スペーサ層13は、絶縁体又は半導体からなるトンネルバリア層である。
【0362】
ピンド層11及びフリー層12は、単層又は複数層の強磁性体から構成される。また、ピンド層11及びフリー層12は、SAF構造に代表される強磁性層/非磁性層/強磁性層構造を有していてもよい。
【0363】
磁気抵抗効果素子UのMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてインバースTMR特性を示し、高バイアス状態においてノーマルTMR特性を示す、というものである。
【0364】
特性が切り替わるポイントVc2は、2つの書き込み電圧Vw“1”,Vw“0”の間にある。
【0365】
読み出し電圧Vrを含めた電圧の大小関係は、0<|Vr|<|Vw“1”|<|Vc2|<|Vw“0”|となる。当然のことながら、|Vw“0”|は、磁気抵抗効果素子Uの破壊電圧|Vb|よりも小さい値である。
【0366】
このような磁気抵抗効果素子Uにおいて、図37に示すように、書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、磁気抵抗効果素子Uは、インバース状態になり、ピンド層11の磁化方向と同じ向きにスピン偏極された電子がピンド層11に反射され、フリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0367】
その結果、磁気抵抗効果素子Uの磁化状態は、平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0368】
また、図38に示すように、書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、磁気抵抗効果素子Uは、ノーマル状態になり、ピンド層11の磁化方向と逆向きにスピン偏極された電子がピンド層11に反射され、フリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0369】
その結果、磁気抵抗効果素子Uの磁化状態は、反平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0370】
さらに、図37及び図38に示すように、読み出し電圧(負のバイアス電圧)Vrをバイアスしたときには、磁気抵抗効果素子Uは、インバース状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0371】
尚、読み出し電圧Vrは、正のバイアス電圧としてもよい。
【0372】
(4) 第4応用例
図39は、第4応用例を示している。
【0373】
第4応用例は、第3応用例の変形例である。
第4応用例が第3応用例と異なる点は、読み出し電圧Vr及び書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”を全て正のバイアス電圧とした点にある。
【0374】
特性が切り替わるポイントVc1は、2つの書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”の間にある。
【0375】
読み出し電圧Vrを含めた電圧の大小関係は、0<Vr<Vw“0”<Vc1<Vw“1”となる。当然のことながら、Vw“1”は、磁気抵抗効果素子Uの破壊電圧Vbよりも小さい値である。
【0376】
このような磁気抵抗効果素子Uにおいて、図40に示すように、書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、磁気抵抗効果素子Uは、インバース状態になり、ピンド層11の磁化方向と逆向きにスピン偏極された電子がピンド層11を通過し、フリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0377】
その結果、磁気抵抗効果素子Uの磁化状態は、反平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0378】
また、図41に示すように、書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、磁気抵抗効果素子Uは、ノーマル状態になり、ピンド層11の磁化方向と同じ向きにスピン偏極された電子がピンド層11を通過し、フリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0379】
その結果、磁気抵抗効果素子Uの磁化状態は、平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0380】
さらに、図40及び図41に示すように、読み出し電圧(正のバイアス電圧)Vrをバイアスしたときには、磁気抵抗効果素子Uは、インバース状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0381】
尚、読み出し電圧Vrは、負のバイアス電圧としてもよい。
【0382】
(5) まとめ
このように、応用例としてのシングルピン構造の磁気抵抗効果素子によれば、書き込み電流の向きを変えることなく、磁気抵抗効果素子に2値データを書き込むことが可能になる。
【0383】
7. 適用例
本発明の例に関わるデュアルピン型磁気抵抗効果素子によれば、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上とを同時に実現できる。また、本発明の例を応用したシングルピン型磁気抵抗効果素子によれば、書き込み電流の向きを変えることなく、2値データの書き込みを実現できる。
【0384】
従って、これらの磁気抵抗効果素子を、磁気ランダムアクセスメモリや、スピンFETなどの新規デバイスに適用することにより、その新規デバイスの実用化に貢献することができる。
【0385】
(1) 1Tr-1MTJ型磁気ランダムアクセスメモリ
A. 第1例
図42は、1Tr-1MTJ型磁気ランダムアクセスメモリの第1例を示している。
【0386】
メモリセルアレイ21は、複数のメモリセルから構成される。各々のメモリセルは、互いに直列接続される磁気抵抗効果素子MTJと選択トランジスタ(MISFET)STとから構成される。
【0387】
磁気抵抗効果素子MTJは、本発明の例に関わるデュアルピン型磁気抵抗効果素子が用いられる。
【0388】
ワード線WL1,WL2,・・・は、ロウ方向に延び、その一端は、ロウデコーダ・ワード線ドライバ22に接続される。また、ワード線WL1,WL2,・・・は、選択トランジスタSTのゲート電極に接続される。
【0389】
下部ビット線BLd1,BLd2,BLd3,・・・及び上部ビット線BLu1,BLu2,BLu3,・・・は、ロウ方向に交差するカラム方向に延びる。
【0390】
下部ビット線BLd1,BLd2,BLd3,・・・の一端は、カラムデコーダ・ビット線ドライバ/シンカー23Aに接続される。また、下部ビット線BLd1,BLd2,BLd3,・・・は、選択トランジスタSTの2つのソース/ドレイン拡散層の一方に接続される。
【0391】
上部ビット線BLu1,BLu2,BLu3,・・・の一端は、カラムデコーダ・ビット線ドライバ/シンカー・センスアンプ24Aに接続される。また、上部ビット線BLu1,BLu2,BLu3,・・・は、磁気抵抗効果素子MTJの一端に接続される。磁気抵抗効果素子MTJの他端は、選択トランジスタSTの2つのソース/ドレイン拡散層の他方に接続される。
【0392】
このような磁気ランダムアクセスメモリにおいて、メモリセルMC1にデータを書き込む場合、ロウデコーダ・ワード線ドライバ22によりワード線WL1を活性化、例えば、“H”にし、メモリセルMC1内の選択トランジスタSTをオンにする。
【0393】
また、カラムデコーダ23Aにより下部ビット線BLd1を選択し、かつ、カラムデコーダ24Aにより上部ビット線BLu1を選択する。
【0394】
そして、第1データ(例えば“0”)を書き込むときは、ビット線ドライバ/シンカー23Aからビット線ドライバ/シンカー24Aに向かって書き込み電流Iwを流す。
【0395】
また、第2データ(例えば“1”)を書き込むときは、ビット線ドライバ/シンカー24Aからビット線ドライバ/シンカー23Aに向かって書き込み電流Iwを流す。
【0396】
メモリセルMC1からデータを読み出す場合には、ロウデコーダ・ワード線ドライバ22によりワード線WL1を活性化、例えば、“H”にし、メモリセルMC1内の選択トランジスタSTをオンにする。
【0397】
また、カラムデコーダ23Aにより下部ビット線BLd1を選択し、かつ、カラムデコーダ24Aにより上部ビット線BLu1を選択する。
【0398】
そして、センスアンプ24Aからビット線ドライバ/シンカー23Aに向かって読み出し電流Irを流す。
【0399】
尚、読み出し電流Irは、書き込み電流Iwよりも小さくする。
【0400】
ここで、磁気抵抗効果素子MTJには、本発明の例に関わるデュアルピン型磁気抵抗効果素子が用いられるため、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上とを同時に実現できる。
【0401】
B. 第2例
図43は、1Tr-1MTJ型磁気ランダムアクセスメモリの第2例を示している。
【0402】
第2例が第1例と異なる点は、磁気抵抗効果素子MTJとして、本発明の応用例に関わるシングルピン型磁気抵抗効果素子を用いたことにある。
【0403】
その結果、書き込み電流Iwの向きを変えることなく、2値データの書き込みが行えるようになるため、下部ビット線BLd1,BLd2,BLd3,・・・の一端には、カラムデコーダ・ビット線シンカー23Bが接続され、上部ビット線BLu1,BLu2,BLu3,・・・の一端には、カラムデコーダ・ビット線ドライバ・センスアンプ24Bが接続される。
【0404】
このような磁気ランダムアクセスメモリにおいて、メモリセルMC1にデータを書き込む場合、ロウデコーダ・ワード線ドライバ22によりワード線WL1を活性化、例えば、“H”にし、メモリセルMC1内の選択トランジスタSTをオンにする。
【0405】
また、カラムデコーダ23Bにより下部ビット線BLd1を選択し、かつ、カラムデコーダ24Bにより上部ビット線BLu1を選択する。
【0406】
そして、第1データ(例えば“0”)を書き込むときは、ビット線ドライバ24Bからビット線シンカー23Bに向かって第1値を有する書き込み電流Iwを流す。
【0407】
また、第2データ(例えば“1”)を書き込むときは、ビット線ドライバ24Bからビット線シンカー23Bに向かって、第1値とは異なる第2値を有する書き込み電流Iwを流す。
【0408】
メモリセルMC1からデータを読み出す場合には、ロウデコーダ・ワード線ドライバ22によりワード線WL1を活性化、例えば、“H”にし、メモリセルMC1内の選択トランジスタSTをオンにする。
【0409】
また、カラムデコーダ23Bにより下部ビット線BLd1を選択し、かつ、カラムデコーダ24Bにより上部ビット線BLu1を選択する。
【0410】
そして、センスアンプ24Bからビット線シンカー23Bに向かって読み出し電流Irを流す。
【0411】
尚、読み出し電流Irは、書き込み電流(第1値及び第2値)Iwよりも小さくする。
【0412】
C. デバイス構造
図44は、図42及び図43のメモリセルMC1のデバイス構造の例を示している。
【0413】
シリコンなどの半導体基板31内には、STI(shallow trench isolation)構造の素子分離絶縁層32が形成される。素子分離絶縁層32に取り囲まれた素子領域内には、ソース/ドレイン拡散層33、ゲート絶縁層34及びゲート電極(ワード線WL1)35からなる選択トランジスタSTが形成される。
【0414】
ソース/ドレイン拡散層33の一つは、コンタクトプラグ36を介して下部ビット線BLd1に接続される。また、ソース/ドレイン拡散層33の他の一つは、コンタクトプラグ37、中間導電層38及びビアプラグ39を介して、下部電極40に接続される。
【0415】
下部電極40上には、磁気抵抗効果素子MTJが形成される。磁気抵抗効果素子MTJ上には、導電体からなるキャップ層(ハードマスク)41が形成される。キャップ層41上には、上部ビット線BLu1が形成される。
【0416】
下部ビット線BLd1、上部ビット線BLu1、コンタクトプラグ36,37、中間導電層38、ビアプラグ39、下部電極40及びキャップ層41は、W, Al, Cu, AlCu などの導電体から構成される。
【0417】
これらの材料としてCuを使用する場合には、ダマシンプロセス又はデュアルダマシンプロセスを採用するのが望ましい。
【0418】
図45は、図42及び図43のメモリセルMC1のデバイス構造の他の例を示している。
【0419】
この例の特徴は、磁気抵抗効果素子MTJがビアプラグ39上に直接配置されることにある。即ち、図44のデバイス構造における下部電極40を取り除くと、図45のデバイス構造になる。
【0420】
この構造の場合、磁気抵抗効果素子MTJのサイズは、ビアプラグ39のサイズよりも小さいことが望ましい。具体的には、半導体基板31の上部から見た場合に(平面的にみて)、磁気抵抗効果素子MTJがビアプラグ39内に収まるレイアウトとする。
【0421】
但し、これに限られることはなく、平面的にみて、磁気抵抗効果素子MTJがビアプラグ39から多少はみ出していてもよい。また、磁気抵抗効果素子MTJのサイズがビアプラグ39のサイズよりも大きくてもよい。
【0422】
ここで、リソグラフィやエッチング技術などによって決まる最小加工寸法をF(Minimum Feature Size)と定義すると、図44の構造を用いた場合の最小セルサイズは、8F2になる。これに対し、図45の構造を用いた場合の最小セルサイズは、4F2になる。
【0423】
フリー層の磁化反転を磁界により行う書き込み方式では、セルサイズの縮小に伴い、書き込み電流Iwの値が大きくなるため、磁気抵抗効果素子MTJのサイズは、できるだけ大きくすることが望ましい。従って、デイバス構造は、必然的に、図44に示すようになる。
【0424】
一方、スピン注入書き込み方式を採用する場合、セルサイズの縮小に伴い、書き込み電流Iwの値は小さくなるため、磁気抵抗効果素子MTJのサイズは、できるだけ小さくすることが望ましい。従って、デバイス構造としては、図45の構造を採用し易くなる。
【0425】
D. まとめ
本発明の例に関わる磁気抵抗効果素子が適用された1Tr-1MTJ型磁気ランダムアクセスメモリによれば、磁化反転効率の向上に伴い、書き込み速度の向上という付随的効果を得ることができる。具体的には、書き込み速度は、数ナノ秒から数マイクロ秒までの範囲内の値を実現できる。
【0426】
尚、読み出し時に磁気抵抗効果素子MTJに供給する読み出し電流Irは、書き込み時に磁気抵抗効果素子MTJに供給する書き込み電流Iwよりもパルス幅(供給時間)が短いことが望ましい。
【0427】
この場合、読み出し時におけるディスターブ(誤書き込み)を防止できる。これは、書き込み電流Iwのパルス幅を短くすると、書き込み電流の値の絶対値が大きくなり過ぎることに起因する。
【0428】
つまり、書き込み電流Iwの値を小さくして低消費電流化を図ると共に、読み出し時のディスターブを防止するために、読み出し電流Irのパルス幅を書き込み電流Iwのパルス幅よりも短くする。
【0429】
(2) クロスポイント型磁気ランダムアクセスメモリ
A. 第1例
図46は、クロスポイント型磁気ランダムアクセスメモリの第1例を示している。
【0430】
メモリセルアレイ51は、複数のメモリセルから構成される。各々のメモリセルは、磁気抵抗効果素子MTJから構成される。磁気抵抗効果素子MTJは、本発明の例に関わるデュアルピン型磁気抵抗効果素子が用いられる。
【0431】
ワード線WL1,WL2,WL3,・・・は、ロウ方向に延び、その一端は、ロウデコーダ・ワード線ドライバ/シンカー52Aに接続される。また、ワード線WL1,WL2,WL3,・・・は、磁気抵抗効果素子MTJの一端に接続される。
【0432】
ビット線BL1,BL2,・・・は、ロウ方向に交差するカラム方向に延びる。ビット線BL1,BL2,・・・の一端は、カラムデコーダ・ビット線ドライバ/シンカー53Aに接続される。また、ビット線BL1,BL2,・・・は、磁気抵抗効果素子MTJの他端に接続される。
【0433】
ビット線BL1,BL2,・・・の他端は、カラム選択スイッチ(MISFET)CSWを介してセンスアンプ(S/A)54に接続される。カラム選択スイッチCSWのゲート電極は、カラムデコーダ55に接続される。
【0434】
このような磁気ランダムアクセスメモリにおいて、メモリセルMC1にデータを書き込む場合、ロウデコーダ52Aによりワード線WL1を選択する。また、カラムデコーダ53Aによりビット線BL1を選択する。
【0435】
そして、第1データ(例えば“0”)を書き込むときは、ワード線ドライバ/シンカー52Aからビット線ドライバ/シンカー53Aに向かって書き込み電流Iwを流す。
【0436】
また、第2データ(例えば“1”)を書き込むときは、ビット線ドライバ/シンカー53Aからワード線ドライバ/シンカー52Aに向かって書き込み電流Iwを流す。
【0437】
メモリセルMC1からデータを読み出す場合には、ロウデコーダ52Aによりワード線WL1を選択し、カラムデコーダ55によりビット線BL1を選択する。そして、センスアンプ54からワード線ドライバ/シンカー52Aに向かって読み出し電流Irを流す。
【0438】
尚、読み出し電流Irは、書き込み電流Iwよりも小さくする。
【0439】
ここで、磁気抵抗効果素子MTJには、本発明の例に関わるデュアルピン型磁気抵抗効果素子が用いられるため、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上とを同時に実現できる。
【0440】
B. 第2例
図47は、クロスポイント型磁気ランダムアクセスメモリの第2例を示している。
【0441】
第2例が第1例と異なる点は、磁気抵抗効果素子MTJとして、本発明の応用例に関わるシングルピン型磁気抵抗効果素子を用いたことにある。
【0442】
その結果、書き込み電流Iwの向きを変えることなく、2値データの書き込みが行えるようになるため、ワード線WL1,WL2,WL3,・・・の一端には、ロウデコーダ・ワード線シンカー52Bが接続され、ビット線BL1,BL2,・・・の一端には、カラムデコーダ・ビット線ドライバ53Bが接続される。
【0443】
また、“0”/“1”書き込みの書き込み電流Iwの向きが同じであるため、整流ダイオードDを用いた完全クロスポイント型スピン注入磁気ランダムアクセスメモリを実現できる。
【0444】
ここで「完全」と称したのは、従来は、スピン注入書き込み方式とクロスポイント型とを組み合わせることが不可能であったことに由来する。
【0445】
その理由は、クロスポイント型の場合には、読み出し時における回り込み電流(sneak current)を防止するために、磁気抵抗効果素子MTJに整流ダイオードを付加する手段が採用されるが、これを採用すると、書き込みデータに応じて書き込み電流Iwの向きを変えることが不可能になるためである。
【0446】
本発明の応用例によれば、書き込みデータにかかわらず、書き込み電流Iwの向きが一定となるため、スピン注入書き込み方式とクロスポイント型との組み合わせが可能になる。
【0447】
また、クロスポイント型の場合、個々の磁気抵抗効果素子MTJに対して選択トランジスタを接続する必要がないため、書き込み電流Iwの大きさが選択トランジスタのサイズに制限される、という問題が発生しない。
【0448】
その結果、場合によっては、1mA以上の書き込み電流を磁気抵抗効果素子MTJに供給することもできる。
【0449】
また、セルサイズについては、選択トランジスタが存在しないために、ワード線及びビット線の幅をそれぞれFとした場合の最小サイズである4F2を容易に実現できる。
【0450】
このような磁気ランダムアクセスメモリにおいて、メモリセルMC1にデータを書き込む場合、ロウデコーダ52Bによりワード線WL1を選択する。また、カラムデコーダ53Bによりビット線BL1を選択する。
【0451】
そして、第1データ(例えば“0”)を書き込むときは、ビット線ドライバ53Bからワード線シンカー52Bに向かって、第1値を有する書き込み電流Iwを流す。
【0452】
また、第2データ(例えば“1”)を書き込むときは、ビット線ドライバ53Bからワード線シンカー52Bに向かって、第1値とは異なる第2値を有する書き込み電流Iwを流す。
【0453】
メモリセルMC1からデータを読み出す場合には、ロウデコーダ52Bによりワード線WL1を選択し、カラムデコーダ55によりビット線BL1を選択する。そして、センスアンプ54からワード線シンカー52Bに向かって読み出し電流Irを流す。
【0454】
尚、読み出し電流Irは、書き込み電流(第1値及び第2値)Iwよりも小さくする。
【0455】
C. デバイス構造
図48は、図46のメモリセルMC1のデバイス構造の例を示している。
【0456】
シリコンなどの半導体基板61の上部には、ワード線WL1が形成される。ワード線WL1上には、磁気抵抗効果素子MTJが形成される。磁気抵抗効果素子MTJ上には、導電体からなるキャップ層(ハードマスク)62が形成される。キャップ層62上には、ビット線BL1が形成される。
【0457】
ワード線WL1、ビット線BL1及びキャップ層62は、W, Al, Cu, AlCu などの導電体から構成される。
【0458】
これらの材料としてCuを使用する場合には、ダマシンプロセス又はデュアルダマシンプロセスを採用するのが望ましい。
【0459】
図49は、図47のメモリセルMC1のデバイス構造の例を示している。
【0460】
この例の特徴は、ワード線WL1と磁気抵抗効果素子MTJとの間に整流ダイオードDが形成されていることにある。即ち、図48のデバイス構造に整流ダイオードDを追加すると、図49のデバイス構造になる。
【0461】
尚、整流ダイオードDは、磁気抵抗効果素子MTJとキャップ層62との間に形成してもよい。
【0462】
D. まとめ
本発明の例に関わる磁気抵抗効果素子が適用されたクロスポイント型磁気ランダムアクセスメモリによれば、磁化反転効率の向上に伴い、書き込み速度の向上という付随的効果を得ることができる。具体的には、書き込み速度は、数ナノ秒から数マイクロ秒までの範囲内の値を実現できる。
【0463】
尚、読み出し時に磁気抵抗効果素子MTJに供給する読み出し電流Irは、書き込み時に磁気抵抗効果素子MTJに供給する書き込み電流Iwよりもパルス幅(供給時間)が短いことが望ましい。
【0464】
この場合、読み出し時におけるディスターブ(誤書き込み)を防止できる。これは、書き込み電流Iwのパルス幅を短くすると、書き込み電流の値の絶対値が大きくなり過ぎることに起因する。
【0465】
つまり、書き込み電流Iwの値を小さくして低消費電流化を図ると共に、読み出し時のディスターブを防止するために、読み出し電流Irのパルス幅を書き込み電流Iwのパルス幅よりも短くする。
【0466】
8. むすび
本発明の例によれば、デュアルピン構造の磁気抵抗効果素子において、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0467】
本発明の例は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を構成できる。例えば、上述の実施の形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施の形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0468】
【図1】デュアルピン構造の例を示す断面図。
【図2】デュアルピン構造の例を示す断面図。
【図3】ピンド層の例を示す断面図。
【図4】ピンド層の例を示す断面図。
【図5】フリー層の例を示す断面図。
【図6】フリー層の例を示す断面図。
【図7】2つのピンド層の磁化方向が逆である磁気抵抗効果素子の第1例を示す図。
【図8】2つのピンド層の磁化方向が逆である磁気抵抗効果素子の第1例を示す図。
【図9】2つのピンド層の磁化方向が逆である磁気抵抗効果素子の第2例を示す図。
【図10】2つのピンド層の磁化方向が逆である磁気抵抗効果素子の第2例を示す図。
【図11】2つのピンド層の磁化方向が同じである磁気抵抗効果素子の第1例を示す図。
【図12】2つのピンド層の磁化方向が同じである磁気抵抗効果素子の第1例を示す図。
【図13】2つのピンド層の磁化方向が同じである磁気抵抗効果素子の第2例を示す図。
【図14】2つのピンド層の磁化方向が同じである磁気抵抗効果素子の第2例を示す図。
【図15】MR比のバイアス依存性の制御方法の例を示す図。
【図16】MR比のバイアス依存性の制御方法の例を示す図。
【図17】第1実施例を示す図。
【図18】第2実施例を示す図。
【図19】第3実施例を示す図。
【図20】第4実施例を示す図。
【図21】第5実施例を示す図。
【図22】第6実施例を示す図。
【図23】第7実施例を示す図。
【図24】第8実施例を示す図。
【図25】第9実施例を示す図。
【図26】第10実施例を示す図。
【図27】第11実施例を示す図。
【図28】第12実施例を示す図。
【図29】第13実施例を示す図。
【図30】第1応用例を示す図。
【図31】第1応用例を示す図。
【図32】第1応用例を示す図。
【図33】第2応用例を示す図。
【図34】第2応用例を示す図。
【図35】第2応用例を示す図。
【図36】第3応用例を示す図。
【図37】第3応用例を示す図。
【図38】第3応用例を示す図。
【図39】第4応用例を示す図。
【図40】第4応用例を示す図。
【図41】第4応用例を示す図。
【図42】1Tr-1MTJ型磁気ランダムアクセスメモリの第1例を示す図。
【図43】1Tr-1MTJ型磁気ランダムアクセスメモリの第2例を示す図。
【図44】メモリセルの構造例を示す断面図。
【図45】メモリセルの構造例を示す断面図。
【図46】クロスポイント型磁気ランダムアクセスメモリの第1例を示す図。
【図47】クロスポイント型磁気ランダムアクセスメモリの第2例を示す図。
【図48】メモリセルの構造例を示す断面図。
【図49】メモリセルの構造例を示す断面図。
【符号の説明】
【0469】
11A,11B: ピンド層(強磁性層)、 12: フリー層(強磁性層)、 13A,13B: スペーサ層(非磁性層)、 14: 反強磁性層、 21,51: メモリセルアレイ、 22: ロウデコーダ・ワード線ドライバ、 23A: カラムデコーダ・ビット線ドライバ/シンカー、 23B: カラムデコーダ・ビット線シンカー、 24A: カラムデコーダ・ビット線ドライバ/シンカー・センスアンプ、 24B: カラムデコーダ・ビット線ドライバ・センスアンプ、 31,61: 半導体基板、 32: 素子分離絶縁層、 33: ソース/ドレイン拡散層、 34: ゲート絶縁層、 35: ゲート電極、 36,37: コンタクトプラグ、 38: 中間導電層、 39: ビアプラグ、 40: 下部電極、 41,62: キャップ層、 52A: ロウデコーダ・ワード線ドライバ/シンカー、 52B: ロウデコーダ・ワード線シンカー、 53A: カラムデコーダ・ビット線ドライバ/シンカー、 53B: カラムデコーダ・ビット線ドライバ、 54: センスアンプ、 55: カラムデコーダ、 MTJ: 磁気抵抗効果素子、 ST: 選択トランジスタ、 D: 整流ダイオード。
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルピン構造の磁気抵抗効果素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新しい原理に基づいてデータを記憶するメモリ素子が多数提案されている。そのなかでも、トンネル磁気抵抗効果(TMR: Tunneling Magneto Resistive)を利用する磁気抵抗効果素子(magneto-resistive element)は、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM: Magnetic Random Access Memory)のメモリセルや、リコンフィギャブル(reconfigurable)なロジック回路を構成するFET(Field Effect Transistor)などへの応用が期待されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。
【0003】
磁気抵抗効果素子の基本構造は、磁化方向が固定されるピンド層(pinned layer)と、磁化方向が変化するフリー層(free layer)と、それらの間のトンネルバリア層(tunneling barrier layer)とから構成される。そして、ピンド層とフリー層の磁化方向の相対関係、即ち、両者の磁化方向が同じ(平行)か、又は、逆(反平行)かによってデータを記憶する。
【0004】
ここで、磁気抵抗効果素子に対するデータの書き込みについては、素子の微細化と書き込み電流(スピン注入電流)の低電流化との両立を図れるスピン角運動量移動(SMT: Spin Momentum Transfer)書き込み方式(以下、スピン注入書き込み方式)が有力である。
【0005】
スピン注入書き込み(spin injection writing)方式では、フリー層の磁化方向を反転させるために必要な書き込み電流Icは、電流密度で規定される。フリー層の磁化方向を反転させるために必要な電流密度は、臨界電流密度Jcと呼ばれ、書き込み時には、これを超える密度の書き込み電流Icが必要とされる。
【0006】
スピン注入書き込み方式の利点は、臨界電流密度Jcを一定とすると、磁気抵抗効果素子のサイズが小さくなるに従い、書き込み電流Icの値も小さくなる、という点にある。このため、原理的には、スケーラビリティ(scalability)に優れ、例えば、256メガビットを超えるような大容量の磁気ランダムアクセスメモリの実現も不可能ではない。
【0007】
しかし、そのために解決しなければならない課題も多い。
【0008】
その一つに臨界電流密度Jcの低減がある。これが低減されない限り、磁気抵抗効果素子のサイズを一定としたときの書き込み電流Icの低減はあり得ないからである。
【0009】
そこで考案された技術がデュアルピン構造である。
【0010】
デュアルピン構造とは、フリー層の両側にそれぞれ非磁性層(例えば、トンネルバリア層)を介してピンド層を設ける構造のことである。この構造によれば、書き込み時に、スピン偏極された電子が2つのピンド層からフリー層に注入されるため、ピンド層が1つの基本構造に比べて、臨界電流密度Jcを1/2又はそれ以下にすることができる。
【0011】
ところが、デュアルピン構造は、磁気抵抗効果素子のMR(magneto-resistive)比の低下、という新たな問題を発生させる。即ち、読み出し時に、”0”-データの抵抗値と”1”-データの抵抗値との間に十分なマージンを確保することができなくなる。
【特許文献1】米国特許第6,256,223号明細書
【非特許文献1】C. Slonczewski, “Current-driven ecitation of magnetic multilayers”, JORNAL OF MAGNETISM AND MAGNETIC MATERIALS, VOLUME 159, 1996, p.L1-L7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の例では、デュアルピン構造の磁気抵抗効果素子において、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を可能にする技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の例に関わる磁気抵抗効果素子は、磁化方向が互いに逆向きに固定される第1及び第2強磁性層と、第1及び第2強磁性層の間に配置され、磁化方向が変化する第3強磁性層と、第1及び第3強磁性層の間に配置される第1非磁性層と、第2及び第3強磁性層の間に配置される第2非磁性層とを備え、第1及び第2強磁性層の間に読み出し電圧をバイアスしたときに、第1強磁性層、第1非磁性層及び第3強磁性層から構成される第1ユニットのMR比は、インバース状態にあり、第2強磁性層、第2非磁性層及び第3強磁性層から構成される第2ユニットのMR比は、ノーマル状態にあり、第1及び第2強磁性層の間に書き込み電圧をバイアスしたときに、第1及び第2ユニットのMR比は、共に、ノーマル状態又はインバース状態にある。
【0014】
本発明の例に関わる磁気抵抗効果素子は、磁化方向が互いに同じ向きに固定される第1及び第2強磁性層と、第1及び第2強磁性層の間に配置され、磁化方向が変化する第3強磁性層と、第1及び第3強磁性層の間に配置される第1非磁性層と、第2及び第3強磁性層の間に配置される第2非磁性層とを備え、第1及び第2強磁性層の間に読み出し電圧をバイアスしたときに、第1強磁性層、第1非磁性層及び第3強磁性層から構成される第1ユニットのMR比、及び、第2強磁性層、第2非磁性層及び第3強磁性層から構成される第2ユニットのMR比は、共に、ノーマル状態又はインバース状態にあり、第1及び第2強磁性層の間に書き込み電圧をバイアスしたときに、第1ユニットのMR比は、インバース状態にあり、第2ユニットのMR比は、ノーマル状態にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の例によれば、デュアルピン構造の磁気抵抗効果素子において、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の例を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0017】
1. 概要
本発明の例では、第1強磁性層(ピンド層)/第1非磁性層/第3強磁性層(フリー層)/第2非磁性層/第2強磁性層(ピンド層)から構成されるデュアルピン構造の磁気抵抗効果素子を対象とする。
【0018】
ここで、/は、その両側に存在する層が互いに接触してスタックされていることを意味するものとする。以下、同じ。
【0019】
また、第1強磁性層/第1非磁性層/第3強磁性層を第1ユニットとし、第3強磁性層/第2非磁性層/第2強磁性層を第2ユニットとする。
【0020】
そして、第1及び第2強磁性層の磁化方向が反平行の関係にある場合、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧をバイアスしたときの、第1及び第2ユニットのMR比の一方をインバース状態とし、他方をノーマル状態とし、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧をバイアスしたときの、第1及び第2ユニットのMR比の両方をノーマル状態又はインバース状態とする。
【0021】
また、第1及び第2強磁性層の磁化方向が平行の関係にある場合、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧をバイアスしたときの、第1及び第2ユニットのMR比の両方をノーマル状態又はインバース状態とし、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧をバイアスしたときの、第1及び第2ユニットのMR比の一方をインバース状態とし、他方をノーマル状態とする。
【0022】
尚、磁化方向が反平行であるとは、第1及び第2強磁性層の磁化方向が逆向き又は実質的に逆向きとみなせる場合の他、両者の磁化方向のなす角度θが90°<θ≦180°の範囲にある場合も含む。
【0023】
また、磁化方向が平行であるとは、第1及び第2強磁性層の磁化方向が同じ向き又は実質的に同じ向きとみなせる場合の他、両者の磁化方向のなす角度θが0°≦θ<180°の範囲にある場合も含む。
【0024】
これにより、デュアルピン構造の磁気抵抗効果素子において、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0025】
2. デュアルピン構造
まず、本発明の例の対象となるデュアルピン構造の磁気抵抗効果素子について説明する。
【0026】
図1及び図2は、デュアルピン構造の磁気抵抗効果素子を示している。
【0027】
基本構造は、ピンド層11A/スペーサ層13A/フリー層12/スペーサ層13B/ピンド層11Bである。矢印は、磁化の向きを示している。
【0028】
ピンド層11A,11Bは、強磁性体から構成され、例えば、ピン層(pin layer)としての反強磁性体により磁化方向が固定される。フリー層12は、強磁性体から構成され、書き込み電流(スピン注入電流)により磁化方向が変化する。
【0029】
スペーサ層13A,13Bは、非磁性材料から構成される。非磁性材料を絶縁体又は半導体とすれば、スペーサ層13A,13Bは、トンネルバリア層となるため、トンネル磁気抵抗効果を発生させることができる。
【0030】
ピンド層11A,11Bの少なくとも1つに関しては、図3に示すように、SAF(Synthetic anti-ferromagnetic)構造などの磁性層/非磁性層/磁性層構造としてもよいし、図4に示すように、反強磁性層14を付加してもよい。
【0031】
フリー層12に関しては、図5に示すように、複数の磁性層の積層構造としてもよいし、図6に示すように、SAF構造などの磁性層/非磁性層/磁性層構造としてもよい。
【0032】
スペーサ層13A,13Bに関しては、そのうちの少なくとも1つがトンネルバリア層として機能すれば、残りについては、非磁性材料を導電体としても構わない。
【0033】
図1の構造と図2の構造の異なる点は、ピンド層11A,11Bの磁化の向きにある。図1の構造では、ピンド層11A,11Bの磁化方向が互いに逆向きに固定されるのに対し、図2の構造では、ピンド層11A,11Bの磁化方向が互いに同じ向きに固定される。
【0034】
ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向(垂直磁化)である。
【0035】
但し、これに限られることはなく、ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)を、これらがスタックされる方向に対して垂直な方向(面内磁化)としてもよい。
【0036】
尚、磁化容易軸方向とは、外部磁界のない状態でマクロな強磁性体の内部エネルギーが最も低くなる自発磁化の方向のことである。また、磁化困難軸方向とは、外部磁界のない状態でマクロな強磁性体の内部エネルギーが最も高くなる自発磁化の方向のことである。
【0037】
デュアルピン構造によれば、臨界電流密度Jcの低減により、磁気抵抗効果素子のサイズを一定としたときの書き込み電流(スピン注入電流)の低減を図ることができる。
【0038】
ここで、ピンド層11A/スペーサ層13A/フリー層12を第1ユニットU1とし、フリー層12/スペーサ層13B/ピンド層11Bを第2ユニットU2とする。
【0039】
図1の構造では、第1ユニットU1のピンド層11Aの磁化は、紙面上向き、第2ユニットU2のピンド層11Bの磁化は、紙面下向きである。この場合、デュアルピン構造による効果、即ち、書き込み電流の低減を実現できる。
【0040】
しかし、フリー層12の磁化が紙面下向き(実線)のとき、第1ユニットU1の磁化状態は、反平行(anti-parallel)であるのに対し、第2ユニットU2の磁化状態は、平行(parallel)である。
【0041】
同様に、フリー層12の磁化が紙面上向き(破線)のとき、第1ユニットU1の磁化状態は、平行であるのに対し、第2ユニットU2の磁化状態は、反平行である。
【0042】
このため、読み出し時に、第1ユニットU1によるMR比と第2ユニットU2によるMR比とが相殺し合う。
【0043】
従って、磁気抵抗効果素子としてMR比を確保するためには、例えば、スペーサ層13A,13Bの材料や厚さなどを異ならせ、第1及び第2ユニットU1,U2のMR比に差を付けなければならない。
【0044】
ところが、第1ユニットU1によるMR比と第2ユニットU2によるMR比とが相殺し合うことに変わりはないため、結果として、十分に大きなMR比を確保することが難しい。
【0045】
図2の構造では、第1及び第2ユニットU1,U2のピンド層11Aの磁化が同じ向き、本例では、共に紙面上向きである。
【0046】
この場合、フリー層12の磁化が紙面下向き(実線)のとき、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、共に反平行である。また、フリー層12の磁化が紙面上向き(破線)のとき、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、共に平行である。
【0047】
従って、読み出し時には、第1ユニットU1によるMR比と第2ユニットU2によるMR比とが相殺されるこがなく、十分に大きなMR比を確保できる。
【0048】
しかし、第1及び第2ユニットU1,U2のピンド層11Aの磁化が同じ向きであるため、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態を平行にするとき、スピン偏極された電子の反射による磁化反転効率の向上という効果が得られない。また、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態を反平行にするのが困難になる。
【0049】
本発明の例では、このような問題の全てをTMR(トンネル磁気抵抗効果)比のバイアス依存性を利用することにより一気に解決する。
【0050】
3. ノーマル状態/インバース状態
磁気抵抗効果素子のMR比には、プラスとマイナスが存在する。
【0051】
MR比がプラスの状態をノーマル(normal)状態とし、そのようなMR比を生じさせるトンネル磁気抵抗効果をノーマルTMR効果と定義する。また、MR比がマイナスの状態をインバース(inverse)状態とし、そのようなMR比を生じさせるトンネル磁気抵抗効果をインバースTMR効果と定義する。
【0052】
具体的に示すと、以下のようになる。
【0053】
MR比がノーマル状態の場合、ピンド層とフリー層の磁化状態が平行のときの抵抗値をRp、反平行のときの抵抗値をRapとすると、
Rap>Rp
となる。この時のMR比は、
MR比=[(Rap−Rp)/Rp]×100 > 0
で表される。
【0054】
MR比がインバース状態の場合、ピンド層とフリー層の磁化状態が平行のときの抵抗値をRp、反平行のときの抵抗値をRapとすると、
Rap<Rp
となる。この時のMR比は、
MR比=[(Rap−Rp)/Rp]×100 < 0
で表される。
【0055】
ところで、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比、即ち、TMR比は、バイアス依存性を有する。
【0056】
例えば、バイアス電圧が零の状態でTMR比がノーマル状態の場合、バイアス電圧が増加するに従い、TMR比は小さくなり、バイアス電圧が所定値になると、TMR比が零になる。そして、さらにバイアス電圧を増加させていくと、TMR比(絶対値)は、インバース状態となって再び大きくなる。
【0057】
また、バイアス電圧が零の状態でTMR比がインバース状態の場合、バイアス電圧が増加するに従い、TMR比(絶対値)は小さくなり、バイアス電圧が所定値になると、TMR比が零になる。そして、さらにバイアス電圧を増加させていくと、TMR比は、ノーマル状態となって再び大きくなる。
【0058】
TMR比のノーマル状態/インバース状態は、書き込み、即ち、フリー層に対するスピン注入トルクの作用にも影響を与える。
【0059】
例えば、TMR比がノーマル状態の場合、フリー層からピンド層に向かって書き込み電流が流れるときは、ピンド層の磁化方向と同じ向きにスピン偏極された電子がピンド層を通過してフリー層にスピン注入トルクを与えるため、フリー層の磁化方向は、ピンド層の磁化方向と同じ(平行)になる。
【0060】
また、ピンド層からフリー層に向かって書き込み電流が流れるときは、ピンド層の磁化方向と逆向きにスピン偏極された電子がピンド層に反射されてフリー層にスピン注入トルクを与えるため、フリー層の磁化方向は、ピンド層の磁化方向と逆(反平行)になる。
【0061】
これに対し、TMR比がインバース状態の場合、フリー層からピンド層に向かって書き込み電流が流れるときは、ピンド層の磁化方向と逆向きにスピン偏極された電子がピンド層を通過してフリー層にスピン注入トルクを与えるため、フリー層の磁化方向は、ピンド層の磁化方向と逆(反平行)になる。
【0062】
また、ピンド層からフリー層に向かって書き込み電流が流れるときは、フリー層からピンド層に流れる電子のうち、ピンド層の磁化方向と同じ向きにスピン偏極された電子がピンド層に反射されてフリー層にスピン注入トルクを与えるため、フリー層の磁化方向は、ピンド層の磁化方向と同じ(平行)になる。
【0063】
このように、TMR比は、バイアス電圧に応じてノーマル状態又はインバース状態になると共に、TMR比がノーマル状態であるか、又は、インバース状態であるかは、読み出し/書き込み動作に重大な影響を与える。
【0064】
従って、TMR比のバイアス依存性を制御すると共に、書き込み電圧及び読み出し電圧を適切な値に設定することにより、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上とを同時に実現できる。
【0065】
尚、本発明の例は、図1及び図2の第1及び第2ユニットU1,U2の少なくとも1つのMR比がバイアス依存性を有していればよいため、スペーサ層13A,13Bの少なくとも1つをトンネルバリア層とする。
【0066】
4. 実施の形態
(1) 2つのピンド層の磁化方向が逆の場合
図7乃至図10は、2つのピンド層の磁化方向が逆向きに固定された磁気抵抗効果素子の書き込み/読み出し時の状態を示している。
【0067】
まず、電子スピンの向きについて以下のように定義する。
電子スピンが紙面上方向を向いている状態をアップスピンと称し、電子スピンが紙面下方向を向いている状態をダウンスピンと称する。
【0068】
ピンド層内及びフリー層内の矢印は、磁化の向きを示している。
【0069】
磁気抵抗効果素子の構造は図1で既に説明したので、ここでは、その説明については省略する。
【0070】
A. 第1例
図7及び図8の例は、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧をバイアスしたときに、第1及び第2ユニットU1,U2のMR比が共にノーマル状態になり、読み出し電圧をバイアスしたときに、第1ユニットU1のMR比がインバース状態、第2ユニットのMR比がノーマル状態になる点に特徴を有する。
【0071】
まず、図7に示すように、フリー層12の磁化が紙面下向きである場合に、これを紙面上向きに磁化反転させるには、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(バイアス電圧)Vw“1”を印加する。書き込み電圧Vw“1”は、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0072】
このようなピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にするバイアスを正のバイアス電圧と定義する。
【0073】
この時、書き込み電流(スピン注入電流)Iw“1”は、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。
【0074】
このため、紙面上向きにスピン偏極された電子(アップスピン)は、ピンド層11Aを通過してフリー層12にスピン注入トルクを与える。また、アップスピンは、ピンド層11Bで反射してフリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0075】
従って、フリー層12の磁化は、紙面下向きから紙面上向きに変化する。
【0076】
この後、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧(バイアス電圧)Vrを印加する。読み出し電圧Vrは、書き込み電圧Vw“1”よりも十分に小さい。読み出し電圧Vrは、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0077】
この時、読み出し電流Irは、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。また、読み出し電圧Vrがバイアスされた状態では、第1ユニットU1がインバース状態、第2ユニットU2がノーマル状態である。
【0078】
従って、第1ユニットU1では、ピンド層11Aとフリー層12との磁化状態が平行であるため、高抵抗状態になり、第2ユニットU2では、ピンド層11Bとフリー層12との磁化状態が反平行であるため、高抵抗状態になる。
【0079】
つまり、いずれも高抵抗状態になるため、第1及び第2ユニットU1,U2とでMR比が相殺されることがなく、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0080】
次に、図8に示すように、フリー層12の磁化が紙面上向きである場合に、これを紙面下向きに磁化反転させるには、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(バイアス電圧)Vw“0”を印加する。書き込み電圧Vw“0”は、ピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にする。
【0081】
このようなピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にするバイアスを負のバイアス電圧と定義する。
【0082】
この時、書き込み電流(スピン注入電流)Iw“0”は、ピンド層11Aからピンド層11Bに向かって流れる。
【0083】
このため、紙面下向きにスピン偏極された電子(ダウンスピン)は、ピンド層11Bを通過してフリー層12にスピン注入トルクを与える。また、ダウンスピンは、ピンド層11Aで反射してフリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0084】
従って、フリー層12の磁化は、紙面上向きから紙面下向きに変化する。
【0085】
この後、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧(バイアス電圧)Vrを印加する。読み出し電圧Vrは、書き込み電圧Vw“0”よりも十分に小さい。読み出し電圧Vrは、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0086】
この時、読み出し電流Irは、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。また、読み出し電圧Vrがバイアスされた状態では、第1ユニットU1がインバース状態、第2ユニットU2がノーマル状態である。
【0087】
従って、第1ユニットU1では、ピンド層11Aとフリー層12との磁化状態が反平行であるため、低抵抗状態になり、第2ユニットU2では、ピンド層11Bとフリー層12との磁化状態が平行であるため、低抵抗状態になる。
【0088】
つまり、いずれも低抵抗状態になるため、第1及び第2ユニットU1,U2とでMR比が相殺されることがなく、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0089】
尚、図7及び図8の読み出し時の状態として、第1ユニットU1をノーマル状態とし、第2ユニットU2をインバース状態としてもよい。
【0090】
この場合、図7に示す状態、即ち、フリー層12の磁化が紙面上向きでは、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、低抵抗状態になり、図8に示す状態、即ち、フリー層12の磁化が紙面下向きでは、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、高抵抗状態になる。
【0091】
また、読み出し電圧Vrについては、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にしたが、これに代えて、ピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にしてもよい。
【0092】
B. 第2例
図9及び図10の例は、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧をバイアスしたときに、第1及び第2ユニットU1,U2のMR比が共にインバース状態になり、読み出し電圧をバイアスしたときに、第1ユニットU1のMR比がインバース状態、第2ユニットのMR比がノーマル状態になる点に特徴を有する。
【0093】
まず、図9に示すように、フリー層12の磁化が紙面下向きである場合に、これを紙面上向きに磁化反転させるには、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を印加する。書き込み電圧Vw“1”は、ピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にする。
【0094】
この時、書き込み電流(スピン注入電流)Iw“1”は、ピンド層11Aからピンド層11Bに向かって流れる。
【0095】
このため、紙面上向きにスピン偏極された電子(アップスピン)は、ピンド層11Bを通過してフリー層12にスピン注入トルクを与える。また、アップスピンは、ピンド層11Aで反射してフリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0096】
従って、フリー層12の磁化は、紙面下向きから紙面上向きに変化する。
【0097】
この後、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧(バイアス電圧)Vrを印加する。読み出し電圧Vrは、書き込み電圧Vw“1”よりも十分に小さい。読み出し電圧Vrは、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0098】
この時、読み出し電流Irは、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。また、読み出し電圧Vrがバイアスされた状態では、第1ユニットU1がインバース状態、第2ユニットU2がノーマル状態である。
【0099】
従って、第1ユニットU1では、ピンド層11Aとフリー層12との磁化状態が平行であるため、高抵抗状態になり、第2ユニットU2では、ピンド層11Bとフリー層12との磁化状態が反平行であるため、高抵抗状態になる。
【0100】
つまり、いずれも高抵抗状態になるため、第1及び第2ユニットU1,U2とでMR比が相殺されることがなく、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0101】
次に、図10に示すように、フリー層12の磁化が紙面上向きである場合に、これを紙面下向きに磁化反転させるには、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を印加する。書き込み電圧Vw“0”は、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0102】
この時、書き込み電流(スピン注入電流)Iw“0”は、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。
【0103】
このため、紙面下向きにスピン偏極された電子(ダウンスピン)は、ピンド層11Aを通過してフリー層12にスピン注入トルクを与える。また、ダウンスピンは、ピンド層11Bで反射してフリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0104】
従って、フリー層12の磁化は、紙面上向きから紙面下向きに変化する。
【0105】
この後、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧(バイアス電圧)Vrを印加する。読み出し電圧Vrは、書き込み電圧Vw“0”よりも十分に小さい。読み出し電圧Vrは、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0106】
この時、読み出し電流Irは、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。また、読み出し電圧Vrがバイアスされた状態では、第1ユニットU1がインバース状態、第2ユニットU2がノーマル状態である。
【0107】
従って、第1ユニットU1では、ピンド層11Aとフリー層12との磁化状態が反平行であるため、低抵抗状態になり、第2ユニットU2では、ピンド層11Bとフリー層12との磁化状態が平行であるため、低抵抗状態になる。
【0108】
つまり、いずれも低抵抗状態になるため、第1及び第2ユニットU1,U2とでMR比が相殺されることがなく、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0109】
尚、図9及び図10の読み出し時の状態として、第1ユニットU1をノーマル状態とし、第2ユニットU2をインバース状態としてもよい。
【0110】
この場合、図9に示す状態、即ち、フリー層12の磁化が紙面上向きでは、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、低抵抗状態になり、図10に示す状態、即ち、フリー層12の磁化が紙面下向きでは、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、高抵抗状態になる。
【0111】
また、読み出し電圧Vrについては、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にしたが、これに代えて、ピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にしてもよい。
【0112】
(2) 2つのピンド層の磁化方向が同じ場合
図11乃至図14は、2つのピンド層の磁化方向が同じ向きに固定された磁気抵抗効果素子の書き込み/読み出し時の状態を示している。
【0113】
まず、電子スピンの向きについては、2つのピンド層の磁化方向が逆の場合と同様に、紙面上方向を向いている状態をアップスピンと称し、紙面下方向を向いている状態をダウンスピンと称する。
【0114】
A. 第1例
図11及び図12の例は、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧をバイアスしたときに、第1ユニットU1のMR比がノーマル状態、第2ユニットのMR比がインバース状態になり、読み出し電圧をバイアスしたときに、第1及び第2ユニットU1,U2のMR比が共にノーマル状態になる点に特徴を有する。
【0115】
まず、図11に示すように、フリー層12の磁化が紙面下向きである場合に、これを紙面上向きに磁化反転させるには、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を印加する。書き込み電圧Vw“0”は、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0116】
この時、書き込み電流(スピン注入電流)Iw“0”は、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。
【0117】
このため、紙面上向きにスピン偏極された電子(アップスピン)は、ピンド層11Aを通過してフリー層12にスピン注入トルクを与える。また、アップスピンは、ピンド層11Bで反射してフリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0118】
従って、フリー層12の磁化は、紙面下向きから紙面上向きに変化する。
【0119】
この後、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧(バイアス電圧)Vrを印加する。読み出し電圧Vrは、書き込み電圧Vw“0”よりも十分に小さい。読み出し電圧Vrは、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0120】
この時、読み出し電流Irは、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。また、読み出し電圧Vrがバイアスされた状態では、第1及び第2ユニットU1,U2が共にノーマル状態である。
【0121】
従って、第1ユニットU1では、ピンド層11Aとフリー層12との磁化状態が平行であるため、低抵抗状態になり、第2ユニットU2では、ピンド層11Bとフリー層12との磁化状態が平行であるため、低抵抗状態になる。
【0122】
つまり、いずれも低抵抗状態になるため、第1及び第2ユニットU1,U2とでMR比が相殺されることがなく、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0123】
次に、図12に示すように、フリー層12の磁化が紙面上向きである場合に、これを紙面下向きに磁化反転させるには、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を印加する。書き込み電圧Vw“1”は、ピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にする。
【0124】
この時、書き込み電流(スピン注入電流)Iw“1”は、ピンド層11Aからピンド層11Bに向かって流れる。
【0125】
このため、紙面下向きにスピン偏極された電子(ダウンスピン)は、ピンド層11Bを通過してフリー層12にスピン注入トルクを与える。また、ダウンスピンは、ピンド層11Aで反射してフリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0126】
従って、フリー層12の磁化は、紙面上向きから紙面下向きに変化する。
【0127】
この後、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧(バイアス電圧)Vrを印加する。読み出し電圧Vrは、書き込み電圧Vw“1”よりも十分に小さい。読み出し電圧Vrは、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0128】
この時、読み出し電流Irは、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。また、読み出し電圧Vrがバイアスされた状態では、第1及び第2ユニットU1,U2が共にノーマル状態である。
【0129】
従って、第1ユニットU1では、ピンド層11Aとフリー層12との磁化状態が反平行であるため、高抵抗状態になり、第2ユニットU2では、ピンド層11Bとフリー層12との磁化状態が反平行であるため、高抵抗状態になる。
【0130】
つまり、いずれも高抵抗状態になるため、第1及び第2ユニットU1,U2とでMR比が相殺されることがなく、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0131】
尚、図11及び図12の書き込み時の状態として、第1ユニットU1をインバース状態とし、第2ユニットU2をノーマル状態としてもよい。
【0132】
この場合、書き込み時に図11に示すようなバイアス条件を与えると、フリー層12の磁化方向は、紙面上向きではなく、紙面下向きに変化する。また、書き込み時に図12に示すようなバイアス条件を与えると、フリー層12の磁化方向は、紙面下向きではなく、紙面上向きに変化する。
【0133】
また、読み出し電圧Vrについては、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にしたが、これに代えて、ピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にしてもよい。
【0134】
B. 第2例
図13及び図14の例は、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧をバイアスしたときに、第1ユニットU1のMR比がノーマル状態、第2ユニットのMR比がインバース状態になり、読み出し電圧をバイアスしたときに、第1及び第2ユニットU1,U2のMR比が共にインバース状態になる点に特徴を有する。
【0135】
まず、図13に示すように、フリー層12の磁化が紙面下向きである場合に、これを紙面上向きに磁化反転させるには、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正バイアス電圧)Vw“1”を印加する。書き込み電圧Vw“1”は、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0136】
この時、書き込み電流(スピン注入電流)Iw“1”は、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。
【0137】
このため、紙面上向きにスピン偏極された電子(アップスピン)は、ピンド層11Aを通過してフリー層12にスピン注入トルクを与える。また、アップスピンは、ピンド層11Bで反射してフリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0138】
従って、フリー層12の磁化は、紙面下向きから紙面上向きに変化する。
【0139】
この後、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧(バイアス電圧)Vrを印加する。読み出し電圧Vrは、書き込み電圧Vw“1”よりも十分に小さい。読み出し電圧Vrは、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0140】
この時、読み出し電流Irは、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。また、読み出し電圧Vrがバイアスされた状態では、第1及び第2ユニットU1,U2が共にインバース状態である。
【0141】
従って、第1ユニットU1では、ピンド層11Aとフリー層12との磁化状態が平行であるため、高抵抗状態になり、第2ユニットU2では、ピンド層11Bとフリー層12との磁化状態が平行であるため、高抵抗状態になる。
【0142】
つまり、いずれも高抵抗状態になるため、第1及び第2ユニットU1,U2とでMR比が相殺されることがなく、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0143】
次に、図14に示すように、フリー層12の磁化が紙面上向きである場合に、これを紙面下向きに磁化反転させるには、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を印加する。書き込み電圧Vw“0”は、ピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にする。
【0144】
この時、書き込み電流(スピン注入電流)Iw“0”は、ピンド層11Aからピンド層11Bに向かって流れる。
【0145】
このため、紙面下向きにスピン偏極された電子(ダウンスピン)は、ピンド層11Bを通過してフリー層12にスピン注入トルクを与える。また、ダウンスピンは、ピンド層11Aで反射してフリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0146】
従って、フリー層12の磁化は、紙面上向きから紙面下向きに変化する。
【0147】
この後、磁気抵抗効果素子に読み出し電圧(バイアス電圧)Vrを印加する。読み出し電圧Vrは、書き込み電圧Vw“0”よりも十分に小さい。読み出し電圧Vrは、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にする。
【0148】
この時、読み出し電流Irは、ピンド層11Bからピンド層11Aに向かって流れる。また、読み出し電圧Vrがバイアスされた状態では、第1及び第2ユニットU1,U2が共にインバース状態である。
【0149】
従って、第1ユニットU1では、ピンド層11Aとフリー層12との磁化状態が反平行であるため、低抵抗状態になり、第2ユニットU2では、ピンド層11Bとフリー層12との磁化状態が反平行であるため、低抵抗状態になる。
【0150】
つまり、いずれも低抵抗状態になるため、第1及び第2ユニットU1,U2とでMR比が相殺されることがなく、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0151】
尚、図13及び図14の書き込み時の状態として、第1ユニットU1をインバース状態とし、第2ユニットU2をノーマル状態としてもよい。
【0152】
この場合、書き込み時に図13に示すようなバイアス条件を与えると、フリー層12の磁化方向は、紙面上向きではなく、紙面下向きに変化する。また、書き込み時に図14に示すようなバイアス条件を与えると、フリー層12の磁化方向は、紙面下向きではなく、紙面上向きに変化する。
【0153】
また、読み出し電圧Vrについては、ピンド層11Aを低い電位にし、ピンド層11Bを高い電位にしたが、これに代えて、ピンド層11Aを高い電位にし、ピンド層11Bを低い電位にしてもよい。
【0154】
(3) MR比のバイアス依存性の制御
本発明の例では、第1及び第2ユニットのMR比の1つはバイアス依存性を有し、第1及び第2ユニットのMR比のうちバイアス依存性を有するものは、読み出し電圧と書き込み電圧との間の領域で、ノーマル状態及びインバース状態のうちの一方から他方に変化する。
【0155】
ここでは、このようなバイアス電圧に対するTMR特性を実現するための方法の例について述べる。
【0156】
磁気フリー層/トンネルバリア層/磁気ピンド層の基本構造を有するトンネル磁気抵抗効果素子については、以下の2種類を実現できる。
【0157】
一つは、低バイアス時にノーマルTMR効果を有し、高バイアス時にインバースTMR効果を有する磁気抵抗効果素子である。
他の一つは、低バイアス時にインバースTMR効果を有し、高バイアス時にノーマルTMR効果を有する磁気抵抗効果素子である。
【0158】
トンネル磁気抵抗効果素子がノーマル状態になるか、又は、インバース状態になるかは、トンネルバリア層を構成する材料の電気伝導特性に支配的に影響される場合と、トンネルバリア層と磁気フリー層との界面及びトンネルバリア層と磁気ピンド層との界面における電子の準位に支配的に影響される場合とがある。
【0159】
前者の場合には、トンネルバリア層を構成する材料の選択により、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比のバイアス依存性を制御できる。
【0160】
また、後者の場合には、磁気ピンド層、トンネルバリア層及び磁気フリー層の材料の組み合せを変えることにより、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比のバイアス依存性を制御できる。
【0161】
低バイアス時において、ノーマルTMR効果が発生するトンネルバリア層の典型例としては、Al2O3, TiO2, MgO, CaO, SrO, TiO などの酸化物がある。
【0162】
このような酸化物から構成されるトンネルバリア層は、例えば、Co1-a-bFeaNib/酸化物/Co1-a-bFeaNib、Co1-a-bFeaNib/Al2O3/La1-xSrxMnO3という形でよく使用される。
【0163】
低バイアス時において、インバースTMR効果が発生する基本ユニットとしては、Co1-a-bFeaNib/SrTiO3/La1-xSrxMo3, Co1-a-bFeaNib/Zr1-xOx/Co1-a-bFeaNibなどがある。これらは、作成方法を工夫することにより、高バイアス時にノーマルTMR効果を発生させることが可能である。
【0164】
また、コスパッタなどの材料を使用して、インバースTMR効果を発生させる材料とノーマルTMR効果を有する材料とを混合してトンネルバリア層を形成することもできる。
【0165】
ところで、このような材料の選択のみでMR比のバイアス依存性を制御する場合には、読み出し電圧及び書き込み電圧が低電圧化されるなか、これら電圧の間でTMR特性をノーマル状態及びインバース状態の一方から他方に安定的に変化させることが難しい現状がある。
【0166】
その対策としては、それぞれ異なるバイアス依存性を有する2つ以上のユニットを組み合わせることが考えられる。この場合、TMR特性(インバース/ノーマル)の切り替えが理想的なポイント(バイアス電圧)で行われるトンネル磁気抵抗効果素子を製造できる。
【0167】
例えば、図15に示すように、小さなバイアス依存性を有し、低バイアス時にノーマルTMR効果を有するユニット(同図(a))と、大きなバイアス依存性を有し、低バイアス時にインバースTMR効果を有するユニット(同図(b))とを組み合わせると、インバース状態からノーマル状態への変化点Vc1を、書き込み電圧Vw“0”(or Vw“1”)と読み出し電圧Vrとの間に容易に設定できる(同図(c))。
【0168】
また、図16に示すように、大きなバイアス依存性を有し、低バイアス時にノーマルTMR効果を有するユニット(同図(a))と、小さなバイアス依存性を有し、低バイアス時にインバースTMR効果を有するユニット(同図(b))とを組み合わせると、ノーマル状態からインバース状態への変化点Vc1を、書き込み電圧Vw“1”(or Vw“0”)1と読み出し電圧Vrとの間に容易に設定できる(同図(c))。
【0169】
ここで、2つの書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”が存在するのは、スピン注入書き込み方式では、書き込みデータ“0”,“1”に応じて、書き込み電流(スピン注入電流)の向きを変えることに起因する。
【0170】
即ち、第1データ“0”を書き込むときは、書き込み電圧(例えば、正のバイアス電圧)Vw“0”を磁気抵抗効果素子に印加し、第2データ“1”を書き込むときは、書き込み電圧(例えば、負のバイアス電圧)Vw“1”を磁気抵抗効果素子に印加する。
【0171】
書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”の値については、MR比のバイアス依存性(変化点Vc1,Vc2)を考慮して、最適な値に設定する。また、読み出し電圧Vrについては、マージンなどを考慮して、正バイアス側及び負バイアス側のいずれか一方に設定する。
【0172】
1つの基本ユニットでノーマルTMR効果とインバースTMR効果をバイアス電圧に応じて発生させるには、トンネルバリア層とフリー層との間又はトンネルバリア層とピンド層との間に非磁性金属層を挿入した場合に現れるTMR比の振動を利用することもできる。
【0173】
例えば、Co1-a-bFeaNib/Al2O3/Cu/Co1-a-bFeaNibという基本ユニットの場合、Cuの厚さを制御することにより、TMR比を正負の間で振動させることが可能である。
【0174】
また、Co1-a-bFeaNib/MgO/非磁性金属/Co1-a-bFeaNibという基本ユニット(但し、非磁性金属は、Au, Ru, Pt, Ir, Cu, Ag, Rh, Os のうちの1つとする。)の場合においても、非磁性金属の厚さを制御することにより、TMR比を正負の間で振動させることが可能である。
【0175】
非磁性金属の代わりに、非磁性酸化物、例えば、CoO, NiO, MnO, CrO, FeO, VO, TiO を用いた場合でも、低バイアス時にノーマルTMR効果、高バイアス時にインバースTMR効果を発生させることができる。
【0176】
例えば、Co1-a-bFeaNib/MgO/非磁性酸化物/Co1-a-bFeaNibという基本ユニットの場合、MgOは、NaCl構造を有し、(100)面優先配向しているため、非磁性酸化物としても、NaCl構造を有し、(100)面優先配向していることが望ましい。
【0177】
上述のCoO, NiO, MnO, CrO, FeO, VO, TiOは、NaCl構造を有する。これらの材料は、XPSやXMCDなどの分析による電子状態解析や磁化配列解析により反強磁性的な磁気特性又は電子状態を取ることが確認されている。
【0178】
尚、NaCl構造を有するトンネルバリア層としては、MgOの他に、CaO, SrO, EuO, TiOなどが知られている。
【0179】
非磁性酸化物は、トンネルバリア層とフリー層との間又はトンネルバリア層とピンド層との間に、非磁性金属、例えば、Co, Ni, Mn, Cr, Fe, V, Tiを形成した後に、これら非磁性金属を酸化することにより形成される。
【0180】
また、非磁性酸化物は、フリー層又はピンド層上に直接堆積させることもできる。
【0181】
ピンド層及びフリー層のうちの少なくとも1つは、磁性層/中間層/磁性層という構造を有していてもよい。この場合、2つの磁性層は、中間層を介して互いに磁気結合を有する。
【0182】
例えば、2つの磁性層が反強磁性結合するSAF(Synthetic anti-ferromagnetic)構造をピンド層及びフリー層のうちの少なくとも1つに採用できる。SAF構造としては、主に、Co1-a-bFeaNib/Ru/Co1-a-bFeaNib, Co1-a-bFeaNib/Os/Co1-a-bFeaNib, Co1-a-bFeaNib/Ir/Co1-a-bFeaNibがよく使用される。
【0183】
ピンド層及びフリー層は、多層構造、例えば、[Co1-a-bFeaNib/Cr]n, [Co1-a-bFeaNib/Ru]n(但し、nは、[]内の構造がn段に積層されていることを意味する。)を有する構造であってもよい。磁性層の厚さを最適化すれば、所望のバイアス依存性を得ることができる。特に、トンネルバリア層と接触する磁性層の厚さとトンネルバリア層に接触しない磁性層の厚さの比が重要になる。
【0184】
5. 実施例
以下、実施例について説明する。
各実施例において、ピンド層内及びフリー層内の矢印は、磁化の向きを示している。
【0185】
(1) 第1実施例
図17は、第1実施例を示している。
【0186】
第1実施例では、2つのピンド層11A,11Bの磁化方向を互いに逆向きに設定する。ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向(垂直磁化)とする。
【0187】
また、スペーサ層(非磁性層)13A,13Bは、トンネルバリア層とし、例えば、MgO, AlOxなどの絶縁体又はGa, Geなどの半導体から構成する。この場合、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、バイアス依存性を有する。
【0188】
第1ユニットU1のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてインバースTMR特性を示し、高バイアス状態においてノーマルTMR特性を示す。
【0189】
特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“1”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“0”よりも低い領域にある。
【0190】
第2ユニットU2のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0191】
第2ユニットU2では、特性が切り替わるポイントは、書き込み電圧Vw“1”,Vw“0”よりも十分に高い領域にある。
【0192】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は平行、第2ユニットU2の磁化状態は反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0193】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は反平行、第2ユニットU2の磁化状態は平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0194】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1ユニットU1は、インバース状態、第2ユニットU2は、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0195】
(2) 第2実施例
図18は、第2実施例を示している。
【0196】
第2実施例では、2つのピンド層11A,11Bの磁化方向を互いに同じ向きに設定する。ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向(垂直磁化)とする。
【0197】
また、スペーサ層(非磁性層)13A,13Bは、トンネルバリア層とし、例えば、MgO, AlOxなどの絶縁体又はGa, Geなどの半導体から構成する。この場合、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、バイアス依存性を有する。
【0198】
第1及び第2ユニットU1,U2のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0199】
但し、第1ユニットU1では、特性が切り替わるポイントは、書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”よりも十分に高い領域にある。
【0200】
これに対し、第2ユニットU2では、特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“0”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“1”よりも低い領域にある。
【0201】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、共に、平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0202】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、共に、反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0203】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0204】
(3) 第3実施例
図19は、第3実施例を示している。
【0205】
第3実施例では、2つのピンド層11A,11Bの磁化方向を互いに逆向きに設定する。ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向(垂直磁化)とする。
【0206】
また、スペーサ層(非磁性層)13Aは、トンネルバリア層とし、例えば、MgO, AlOxなどの絶縁体又はGa, Geなどの半導体から構成する。これに対し、スペーサ層(非磁性層)13Bは、メタルスペーサ層とし、例えば、Cu, Auなどの導電体から構成する。この場合、第1ユニットU1のみがバイアス依存性を有する。
【0207】
第1ユニットU1のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0208】
特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“1”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“0”よりも低い領域にある。
【0209】
第2ユニットU2のMR比は、バイアス電圧によらず、一定であり、常に、インバースTMR特性を示す。
【0210】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は反平行、第2ユニットU2の磁化状態は平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0211】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は平行、第2ユニットU2の磁化状態は反平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0212】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1ユニットU1は、ノーマル状態、第2ユニットU2は、インバース状態になるため、データ“1”は高抵抗状態、データ“0”は低抵抗状態になる。
【0213】
(4) 第4実施例
図20は、第4実施例を示している。
【0214】
第4実施例では、2つのピンド層11A,11Bの磁化方向を互いに同じ向きに設定する。ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向(垂直磁化)とする。
【0215】
また、スペーサ層(非磁性層)13Aは、トンネルバリア層とし、例えば、MgO, AlOxなどの絶縁体又はGa, Geなどの半導体から構成する。これに対し、スペーサ層(非磁性層)13Bは、メタルスペーサ層とし、例えば、Cu, Auなどの導電体から構成する。この場合、第1ユニットU1のみがバイアス依存性を有する。
【0216】
第1ユニットU1のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0217】
特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“1”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“0”よりも低い領域にある。
【0218】
第2ユニットU2のMR比は、バイアス電圧によらず、一定であり、常に、ノーマルTMR特性を示す。
【0219】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、共に、反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0220】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、共に、平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0221】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、ノーマル状態になるため、データ“1”は高抵抗状態、データ“0”は低抵抗状態になる。
【0222】
(5) 第5実施例
図21は、第5実施例を示している。
【0223】
第5実施例では、2つのピンド層11A,11Bの磁化方向を互いに逆向きに設定する。ピンド層11A,11Bの磁化方向は、反強磁性層14により固着する。また、ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向に対して垂直な方向(面内磁化)とする。
【0224】
ピンド層11Aは、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層構造を有し、2つの強磁性層は、非磁性層を介して互いに磁気結合している。本例では、ピンド層11Aは、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF(synthetic anti-ferromagnetic)結合を有する。
【0225】
ピンド層11Bは、強磁性層/非磁性層/強磁性層/非磁性層/強磁性層の5層構造を有し、非磁性層の両側に存在する2つの強磁性層は、互いに磁気結合している。本例では、ピンド層11Bは、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF結合を有する。
【0226】
ピンド層11A,11Bを強磁性層/非磁性層/強磁性層構造にすると、熱的に磁化状態が安定し、外部磁界に対するゆらぎが発生し難くなる。具体的には、強磁性層の端部の磁化が単磁区構造に近くなるため、静磁結合により外部からの見かけ上の飽和磁化を零にすることができる。
【0227】
ピンド層11A内の強磁性層/非磁性層/強磁性層構造の数(本例では1つ)は、ピンド層11B内の強磁性層/非磁性層/強磁性層構造の数(本例では2つ)と異ならせるのが望ましい。
【0228】
第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態については、フリー層12の磁化方向が、スペーサ層(非磁性層)13A,13Bに隣接する強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。
【0229】
つまり、第1ユニットU1の磁化状態は、スペーサ層13Aに隣接する2つの強磁性層の磁化方向により決まり、第2ユニットU2の磁化状態は、スペーサ層13Bに隣接する2つの強磁性層の磁化方向により決まる。
【0230】
フリー層12の強磁性層は、単層構造及び積層構造のいずれでも構わない。また、フリー層12を強磁性層/非磁性層/強磁性層構造とし、2つの強磁性層に磁気相互作用を持たせてもよい。
【0231】
ピンド層11A,11B内の強磁性層は、fcc-Co, hcp-Co, bcc-Fe, fcc-CoFe合金, bcc-CoFe合金, アモルファスCoFeB合金などの強磁性材料から構成する。ピンド層11A,11B内の非磁性層は、Ru, Ir, Osなどの導電体から構成する。反強磁性層は、PtMn, IrMn, NiMn, FeMn, PtCrMn, RhMn, FeRhなどの反強磁性材料から構成する。
【0232】
また、スペーサ層(非磁性層)13A,13Bは、トンネルバリア層とし、例えば、MgO, AlOxなどの絶縁体又はGa, Geなどの半導体から構成する。この場合、第1及び第2ユニット(TMRユニット)U1,U2は、共に、バイアス依存性を有する。
【0233】
第1ユニットU1のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0234】
第1ユニットU1では、特性が切り替わるポイントは、書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”よりも十分に高い領域にある。
【0235】
第2ユニットU2のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてインバースTMR特性を示し、高バイアス状態においてノーマルTMR特性を示す。
【0236】
特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“0”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“1”よりも低い領域にある。
【0237】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は平行、第2ユニットU2の磁化状態は反平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0238】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は反平行、第2ユニットU2の磁化状態は平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0239】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1ユニットU1は、ノーマル状態、第2ユニットU2は、インバース状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0240】
(6) 第6実施例
図22は、第6実施例を示している。
【0241】
第6実施例は、第5実施例の変形例である。
第6実施例が第5実施例と異なる点は、フリー層12がSAF構造を有している点にある。
【0242】
フリー層12は、強磁性層/非磁性層/強磁性層/非磁性層/強磁性層の5層構造を有し、非磁性層の両側に存在する2つの強磁性層は、互いに反強磁性結合している。
【0243】
フリー層12をSAF構造にすると、熱的に磁化状態が安定し、外部磁界に対するゆらぎが発生し難くなる。具体的には、強磁性層の端部の磁化が単磁区構造に近くなるため、静磁結合により外部からの見かけ上の飽和磁化を零にすることができる。
【0244】
第1ユニットU1の磁化状態については、フリー層12の最下層の強磁性層の磁化方向が、ピンド層11Aの最上層の強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。つまり、スペーサ層13Aに隣接する2つの強磁性層の磁化方向により第1ユニットU1の磁化状態が決まる。
【0245】
第2ユニットU2の磁化状態については、フリー層12の最上層の強磁性層の磁化方向が、ピンド層11Bの最下層の強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。つまり、スペーサ層13Bに隣接する2つの強磁性層の磁化方向により第2ユニットU2の磁化状態が決まる。
【0246】
第1ユニットU1のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0247】
第1ユニットU1では、特性が切り替わるポイントは、書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”よりも十分に高い領域にある。
【0248】
第2ユニットU2のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてインバースTMR特性を示し、高バイアス状態においてノーマルTMR特性を示す。
【0249】
特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“0”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“1”よりも低い領域にある。
【0250】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は平行、第2ユニットU2の磁化状態は反平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0251】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は反平行、第2ユニットU2の磁化状態は平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0252】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1ユニットU1は、ノーマル状態、第2ユニットU2は、インバース状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0253】
(7) 第7実施例
図23は、第7実施例を示している。
【0254】
第7実施例では、2つのピンド層11A,11Bの磁化方向を互いに同じ向きに設定する。ピンド層11A,11Bの磁化方向は、反強磁性層14により固着する。また、ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向に対して垂直な方向(面内磁化)とする。
【0255】
ピンド層11A,11Bは、それぞれ、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層構造を有し、2つの強磁性層は、非磁性層を介して互いに磁気結合している。本例では、ピンド層11A,11Bは、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF結合を有する。
【0256】
フリー層12は、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層構造を有し、2つの強磁性層は、非磁性層を介して互いに磁気結合している。本例では、フリー層12は、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF結合を有する。
【0257】
ピンド層11A,11B及びフリー層12を強磁性層/非磁性層/強磁性層構造にすると、熱的に磁化状態が安定し、外部磁界に対するゆらぎが発生し難くなる。
【0258】
第1ユニットU1の磁化状態については、フリー層12の最下層の強磁性層の磁化方向が、ピンド層11Aの最上層の強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。
【0259】
第2ユニットU2の磁化状態については、フリー層12の最上層の強磁性層の磁化方向が、ピンド層11Bの最下層の強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。
【0260】
ピンド層11A,11B内及びフリー層12内の強磁性層は、fcc-Co, hcp-Co, bcc-Fe, fcc-CoFe合金, bcc-CoFe合金, アモルファスCoFeB合金などの強磁性材料から構成する。ピンド層11A,11B内及びフリー層12内の非磁性層は、Ru, Ir, Osなどの導電体から構成する。反強磁性層は、PtMn, IrMn, NiMn, FeMn, PtCrMn, RhMn, FeRhなどの反強磁性材料から構成する。
【0261】
また、スペーサ層(非磁性層)13A,13Bは、トンネルバリア層とし、例えば、MgO, AlOxなどの絶縁体又はGa, Geなどの半導体から構成する。この場合、第1及び第2ユニット(TMRユニット)U1,U2は、共に、バイアス依存性を有する。
【0262】
第1ユニットU1のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0263】
第1ユニットU1では、特性が切り替わるポイントは、書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”よりも十分に高い領域にある。
【0264】
第2ユニットU2のMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてインバースTMR特性を示し、高バイアス状態においてノーマルTMR特性を示す。
【0265】
特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“0”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“1”よりも低い領域にある。
【0266】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は平行、第2ユニットU2の磁化状態は反平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0267】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は反平行、第2ユニットU2の磁化状態は平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0268】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1ユニットU1は、ノーマル状態、第2ユニットU2は、インバース状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0269】
(8) 第8実施例
図24は、第8実施例を示している。
【0270】
第8実施例では、2つのピンド層11A,11Bの磁化方向を互いに逆向きに設定する。ピンド層11A,11Bの磁化方向は、反強磁性層14により固着する。また、ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向に対して垂直な方向(面内磁化)とする。
【0271】
ピンド層11Aは、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層構造を有し、2つの強磁性層は、非磁性層を介して互いに磁気結合している。本例では、ピンド層11Aは、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF結合を有する。
【0272】
ピンド層11Bは、強磁性層/非磁性層/強磁性層/非磁性層/強磁性層の5層構造を有し、非磁性層の両側に存在する2つの強磁性層は、互いに磁気結合している。本例では、ピンド層11Bは、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF結合を有する。
【0273】
フリー層12は、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層構造を有し、2つの強磁性層は、非磁性層を介して互いに磁気結合している。本例では、フリー層12は、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF結合を有する。
【0274】
ピンド層11A,11B及びフリー層12を強磁性層/非磁性層/強磁性層構造にすると、熱的に磁化状態が安定し、外部磁界に対するゆらぎが発生し難くなる。
【0275】
第1ユニットU1の磁化状態については、フリー層12の最下層の強磁性層の磁化方向が、ピンド層11Aの最上層の強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。
【0276】
第2ユニットU2の磁化状態については、フリー層12の最上層の強磁性層の磁化方向が、ピンド層11Bの最下層の強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。
【0277】
ピンド層11A,11B内及びフリー層12内の強磁性層は、fcc-Co, hcp-Co, bcc-Fe, fcc-CoFe合金, bcc-CoFe合金, アモルファスCoFeB合金などの強磁性材料から構成する。ピンド層11A,11B内及びフリー層12内の非磁性層は、Ru, Ir, Osなどの導電体から構成する。反強磁性層は、PtMn, IrMn, NiMn, FeMn, PtCrMn, RhMn, FeRhなどの反強磁性材料から構成する。
【0278】
また、スペーサ層(非磁性層)13A,13Bは、トンネルバリア層とし、例えば、MgO, AlOxなどの絶縁体又はGa, Geなどの半導体から構成する。この場合、第1及び第2ユニット(TMRユニット)U1,U2は、共に、バイアス依存性を有する。
【0279】
第1及び第2ユニットU1,U2のMR比のバイアス依存性は、それぞれ、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0280】
但し、第1ユニットU1では、特性が切り替わるポイントは、書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”よりも十分に高い領域にある。
【0281】
これに対し、第2ユニットU2では、特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“0”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“1”よりも低い領域にある。
【0282】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は,共に、平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0283】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、共に、反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0284】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0285】
(9) 第9実施例
図25は、第9実施例を示している。
【0286】
第9実施例では、2つのピンド層11A,11Bの磁化方向を互いに同じ向きに設定する。ピンド層11A,11Bの磁化方向は、反強磁性層14により固着する。また、ピンド層11A,11B及びフリー層12の残留磁化の磁化方向(磁化容易軸方向)は、これらがスタックされる方向に対して垂直な方向(面内磁化)とする。
【0287】
ピンド層11A,11Bは、それぞれ、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層構造を有し、2つの強磁性層は、非磁性層を介して互いに磁気結合している。本例では、ピンド層11A,11Bは、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF結合を有する。
【0288】
フリー層12は、強磁性層/非磁性層/強磁性層/非磁性層/強磁性層の5層構造を有し、非磁性層の両側に存在する2つの強磁性層は、互いに磁気結合している。本例では、フリー層12は、2つの強磁性層の磁化方向が互いに逆向きになるSAF結合を有する。
【0289】
ピンド層11A,11B及びフリー層12を強磁性層/非磁性層/強磁性層構造にすると、熱的に磁化状態が安定し、外部磁界に対するゆらぎが発生し難くなる。
【0290】
第1ユニットU1の磁化状態については、フリー層12の最下層の強磁性層の磁化方向が、ピンド層11Aの最上層の強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。
【0291】
第2ユニットU2の磁化状態については、フリー層12の最上層の強磁性層の磁化方向が、ピンド層11Bの最下層の強磁性層の磁化方向に対してどのようになっているか、により決定される。
【0292】
ピンド層11A,11B内及びフリー層12内の強磁性層は、fcc-Co, hcp-Co, bcc-Fe, fcc-CoFe合金, bcc-CoFe合金, アモルファスCoFeB合金などの強磁性材料から構成する。ピンド層11A,11B内及びフリー層12内の非磁性層は、Ru, Ir, Osなどの導電体から構成する。反強磁性層は、PtMn, IrMn, NiMn, FeMn, PtCrMn, RhMn, FeRhなどの反強磁性材料から構成する。
【0293】
また、スペーサ層(非磁性層)13A,13Bは、トンネルバリア層とし、例えば、MgO, AlOxなどの絶縁体又はGa, Geなどの半導体から構成する。この場合、第1及び第2ユニット(TMRユニット)U1,U2は、共に、バイアス依存性を有する。
【0294】
第1及び第2ユニットU1,U2のMR比のバイアス依存性は、それぞれ、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0295】
但し、第1ユニットU1では、特性が切り替わるポイントは、書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”よりも十分に高い領域にある。
【0296】
これに対し、第2ユニットU2では、特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“0”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“1”よりも低い領域にある。
【0297】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は,共に、平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0298】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、共に、反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0299】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0300】
(10) 第10実施例
図26は、第10実施例を示している。
【0301】
第10実施例は、第6実施例の変形例である。
第10実施例が第6実施例と異なる点は、第2ユニットU2のスペーサ層13Bが、トンネルバリア層(絶縁体又は半導体)ではなく、メタルスペーサ層(導電体)から構成される点にある。
【0302】
この場合、第2ユニットU2は、GMRユニットとして機能し、そのMR比については、バイアス依存性を有しない。本例では、第2ユニットU2のMR比は、バイアス電圧によらず、一定値を有し、常にノーマル状態にある。
【0303】
これに対し、第1ユニットU1は、TMRユニットとして機能し、低バイアス状態においてインバースTMR特性を示し、高バイアス状態においてノーマルTMR特性を示す。
【0304】
第1ユニットU1では、特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“1”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“0”よりも低い領域にある。
【0305】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は平行、第2ユニットU2の磁化状態は反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0306】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は反平行、第2ユニットU2の磁化状態は平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0307】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1ユニットU1は、インバース状態、第2ユニットU2は、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0308】
(11) 第11実施例
図27は、第11実施例を示している。
【0309】
第11実施例は、第7実施例の変形例である。
第11実施例が第7実施例と異なる点は、第2ユニットU2のスペーサ層13Bが、トンネルバリア層(絶縁体又は半導体)ではなく、メタルスペーサ層(導電体)から構成される点にある。
【0310】
この場合、第2ユニットU2は、GMRユニットとして機能し、そのMR比については、バイアス依存性を有しない。本例では、第2ユニットU2のMR比は、バイアス電圧によらず、一定値を有し、常にノーマル状態にある。
【0311】
これに対し、第1ユニットU1は、TMRユニットとして機能し、低バイアス状態においてインバースTMR特性を示し、高バイアス状態においてノーマルTMR特性を示す。
【0312】
第1ユニットU1では、特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“1”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“0”よりも低い領域にある。
【0313】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は平行、第2ユニットU2の磁化状態は反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0314】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1ユニットU1の磁化状態は反平行、第2ユニットU2の磁化状態は平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0315】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1ユニットU1は、インバース状態、第2ユニットU2は、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0316】
(12) 第12実施例
図28は、第12実施例を示している。
【0317】
第12実施例は、第8実施例の変形例である。
第12実施例が第8実施例と異なる点は、第2ユニットU2のスペーサ層13Bが、トンネルバリア層(絶縁体又は半導体)ではなく、メタルスペーサ層(導電体)から構成される点にある。
【0318】
この場合、第2ユニットU2は、GMRユニットとして機能し、そのMR比については、バイアス依存性を有しない。本例では、第2ユニットU2のMR比は、バイアス電圧によらず、一定値を有し、常にノーマル状態にある。
【0319】
これに対し、第1ユニットU1は、TMRユニットとして機能し、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0320】
第1ユニットU1では、特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“1”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“0”よりも低い領域にある。
【0321】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、それぞれ、反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0322】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、それぞれ、平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0323】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0324】
(13) 第13実施例
図29は、第13実施例を示している。
【0325】
第13実施例は、第9実施例の変形例である。
第13実施例が第9実施例と異なる点は、第2ユニットU2のスペーサ層13Bが、トンネルバリア層(絶縁体又は半導体)ではなく、メタルスペーサ層(導電体)から構成される点にある。
【0326】
この場合、第2ユニットU2は、GMRユニットとして機能し、そのMR比については、バイアス依存性を有しない。本例では、第2ユニットU2のMR比は、バイアス電圧によらず、一定値を有し、常にノーマル状態にある。
【0327】
これに対し、第1ユニットU1は、TMRユニットとして機能し、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す。
【0328】
第1ユニットU1では、特性が切り替わる正バイアス側のポイントVc1は、書き込み電圧Vw“1”と読み出し電圧Vrとの間にある。また、特性が切り替わる負バイアス側のポイントVc2は、書き込み電圧Vw“0”よりも低い領域にある。
【0329】
このような磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、それぞれ、反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0330】
また、磁気抵抗効果素子に書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、第1及び第2ユニットU1,U2の磁化状態は、それぞれ、平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0331】
読み出し電圧Vrをバイアスしたときには、第1及び第2ユニットU1,U2は、共に、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0332】
(14) その他
第1乃至第13実施例において、第1ユニットU1を下側とし、第2ユニットU2を上側とした場合、第1ユニットU1は、導電体から構成される下地層上に形成される。また、第2ユニット上には、導電体から構成されるキャップ層が形成される。
【0333】
読み出し電圧Vrについては、本例では、正のバイアス電圧(第2ユニットU2側が高電位)であるが、これに代えて、負のバイアス電圧(第1ユニットU1側が高電位)にしてもよい。
【0334】
6. 応用例
本発明の例は、デュアルピン構造の磁気抵抗効果素子において書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図るものであるが、この技術を応用すると、シングルピン構造の磁気抵抗効果素子において、書き込み電流(スピン注入電流)の向きを変えることなく、その大きさを変えるだけで、2値データ“0”,“1”の書き込みを行うことができる、という新技術を実現できる。
【0335】
この技術によれば、書き込み電流は、書き込みデータの値に関係なく、一方向のみに流せばよいため、周辺回路としてのドライバ/シンカーが簡略化され、チップサイズの縮小を図ることができる。
【0336】
この応用例では、シングルピン構造の磁気抵抗効果素子を対象とするため、バイアス電圧については、以下のように定義する。
【0337】
フリー層12を高い電位とし、ピンド層11を低い電位とするバイアスを正のバイアス電圧とし、ピンド層11を高い電位とし、フリー層12を低い電位とするバイアスを負のバイアス電圧とする。
【0338】
(1) 第1応用例
図30は、第1応用例を示している。
【0339】
磁気抵抗効果素子Uは、ピンド層11、フリー層12及びこれらの間に配置されるスペーサ層13を有する。スペーサ層13は、絶縁体又は半導体からなるトンネルバリア層である。
【0340】
ピンド層11及びフリー層12は、単層又は複数層の強磁性体から構成される。また、ピンド層11及びフリー層12は、SAF構造に代表される強磁性層/非磁性層/強磁性層構造を有していてもよい。
【0341】
磁気抵抗効果素子UのMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてノーマルTMR特性を示し、高バイアス状態においてインバースTMR特性を示す、というものである。
【0342】
特性が切り替わるポイントVc1は、2つの書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”の間にある。
【0343】
読み出し電圧Vrを含めた電圧の大小関係は、0<Vr<Vw“0”<Vc1<Vw“1”となる。当然のことながら、Vw“1”は、磁気抵抗効果素子Uの破壊電圧Vbよりも小さい値である。
【0344】
このような磁気抵抗効果素子Uにおいて、図31に示すように、書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、磁気抵抗効果素子Uは、ノーマル状態になり、ピンド層11の磁化方向と同じ向きにスピン偏極された電子がピンド層11を通過し、フリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0345】
その結果、磁気抵抗効果素子Uの磁化状態は、平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0346】
また、図32に示すように、書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、磁気抵抗効果素子Uは、インバース状態になり、ピンド層11の磁化方向と逆向きにスピン偏極された電子がピンド層11を通過し、フリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0347】
その結果、磁気抵抗効果素子Uの磁化状態は、反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0348】
さらに、図31及び図32に示すように、読み出し電圧(正のバイアス電圧)Vrをバイアスしたときには、磁気抵抗効果素子Uは、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0349】
尚、読み出し電圧Vrは、負のバイアス電圧としてもよい。
【0350】
(2) 第2応用例
図33は、第2応用例を示している。
【0351】
第2応用例は、第1応用例の変形例である。
第2応用例が第1応用例と異なる点は、読み出し電圧Vr及び書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”を全て負のバイアス電圧とした点にある。
【0352】
特性が切り替わるポイントVc2は、2つの書き込み電圧Vw“1”,Vw“0”の間にある。
【0353】
読み出し電圧Vrを含めた電圧の大小関係は、0<|Vr|<|Vw“1”|<|Vc2|<|Vw“0”|となる。当然のことながら、|Vw“0”|は、磁気抵抗効果素子Uの破壊電圧|Vb|よりも小さい値である。
【0354】
このような磁気抵抗効果素子Uにおいて、図34に示すように、書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、磁気抵抗効果素子Uは、ノーマル状態になり、ピンド層11の磁化方向と逆向きにスピン偏極された電子がピンド層11に反射され、フリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0355】
その結果、磁気抵抗効果素子Uの磁化状態は、反平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0356】
また、図35に示すように、書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、磁気抵抗効果素子Uは、インバース状態になり、ピンド層11の磁化方向と同じ向きにスピン偏極された電子がピンド層11に反射され、フリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0357】
その結果、磁気抵抗効果素子Uの磁化状態は、平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0358】
さらに、図34及び図35に示すように、読み出し電圧(負のバイアス電圧)Vrをバイアスしたときには、磁気抵抗効果素子Uは、ノーマル状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0359】
尚、読み出し電圧Vrは、正のバイアス電圧としてもよい。
【0360】
(3) 第3応用例
図36は、第3応用例を示している。
【0361】
磁気抵抗効果素子Uは、ピンド層11、フリー層12及びこれらの間に配置されるスペーサ層13を有する。スペーサ層13は、絶縁体又は半導体からなるトンネルバリア層である。
【0362】
ピンド層11及びフリー層12は、単層又は複数層の強磁性体から構成される。また、ピンド層11及びフリー層12は、SAF構造に代表される強磁性層/非磁性層/強磁性層構造を有していてもよい。
【0363】
磁気抵抗効果素子UのMR比のバイアス依存性は、低バイアス状態においてインバースTMR特性を示し、高バイアス状態においてノーマルTMR特性を示す、というものである。
【0364】
特性が切り替わるポイントVc2は、2つの書き込み電圧Vw“1”,Vw“0”の間にある。
【0365】
読み出し電圧Vrを含めた電圧の大小関係は、0<|Vr|<|Vw“1”|<|Vc2|<|Vw“0”|となる。当然のことながら、|Vw“0”|は、磁気抵抗効果素子Uの破壊電圧|Vb|よりも小さい値である。
【0366】
このような磁気抵抗効果素子Uにおいて、図37に示すように、書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、磁気抵抗効果素子Uは、インバース状態になり、ピンド層11の磁化方向と同じ向きにスピン偏極された電子がピンド層11に反射され、フリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0367】
その結果、磁気抵抗効果素子Uの磁化状態は、平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0368】
また、図38に示すように、書き込み電圧(負のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、磁気抵抗効果素子Uは、ノーマル状態になり、ピンド層11の磁化方向と逆向きにスピン偏極された電子がピンド層11に反射され、フリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0369】
その結果、磁気抵抗効果素子Uの磁化状態は、反平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0370】
さらに、図37及び図38に示すように、読み出し電圧(負のバイアス電圧)Vrをバイアスしたときには、磁気抵抗効果素子Uは、インバース状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0371】
尚、読み出し電圧Vrは、正のバイアス電圧としてもよい。
【0372】
(4) 第4応用例
図39は、第4応用例を示している。
【0373】
第4応用例は、第3応用例の変形例である。
第4応用例が第3応用例と異なる点は、読み出し電圧Vr及び書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”を全て正のバイアス電圧とした点にある。
【0374】
特性が切り替わるポイントVc1は、2つの書き込み電圧Vw“0”,Vw“1”の間にある。
【0375】
読み出し電圧Vrを含めた電圧の大小関係は、0<Vr<Vw“0”<Vc1<Vw“1”となる。当然のことながら、Vw“1”は、磁気抵抗効果素子Uの破壊電圧Vbよりも小さい値である。
【0376】
このような磁気抵抗効果素子Uにおいて、図40に示すように、書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“0”を与えると、磁気抵抗効果素子Uは、インバース状態になり、ピンド層11の磁化方向と逆向きにスピン偏極された電子がピンド層11を通過し、フリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0377】
その結果、磁気抵抗効果素子Uの磁化状態は、反平行になり、データ“0”が書き込まれる。
【0378】
また、図41に示すように、書き込み電圧(正のバイアス電圧)Vw“1”を与えると、磁気抵抗効果素子Uは、ノーマル状態になり、ピンド層11の磁化方向と同じ向きにスピン偏極された電子がピンド層11を通過し、フリー層12にスピン注入トルクを与える。
【0379】
その結果、磁気抵抗効果素子Uの磁化状態は、平行になり、データ“1”が書き込まれる。
【0380】
さらに、図40及び図41に示すように、読み出し電圧(正のバイアス電圧)Vrをバイアスしたときには、磁気抵抗効果素子Uは、インバース状態になるため、データ“0”は低抵抗状態、データ“1”は高抵抗状態になる。
【0381】
尚、読み出し電圧Vrは、負のバイアス電圧としてもよい。
【0382】
(5) まとめ
このように、応用例としてのシングルピン構造の磁気抵抗効果素子によれば、書き込み電流の向きを変えることなく、磁気抵抗効果素子に2値データを書き込むことが可能になる。
【0383】
7. 適用例
本発明の例に関わるデュアルピン型磁気抵抗効果素子によれば、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上とを同時に実現できる。また、本発明の例を応用したシングルピン型磁気抵抗効果素子によれば、書き込み電流の向きを変えることなく、2値データの書き込みを実現できる。
【0384】
従って、これらの磁気抵抗効果素子を、磁気ランダムアクセスメモリや、スピンFETなどの新規デバイスに適用することにより、その新規デバイスの実用化に貢献することができる。
【0385】
(1) 1Tr-1MTJ型磁気ランダムアクセスメモリ
A. 第1例
図42は、1Tr-1MTJ型磁気ランダムアクセスメモリの第1例を示している。
【0386】
メモリセルアレイ21は、複数のメモリセルから構成される。各々のメモリセルは、互いに直列接続される磁気抵抗効果素子MTJと選択トランジスタ(MISFET)STとから構成される。
【0387】
磁気抵抗効果素子MTJは、本発明の例に関わるデュアルピン型磁気抵抗効果素子が用いられる。
【0388】
ワード線WL1,WL2,・・・は、ロウ方向に延び、その一端は、ロウデコーダ・ワード線ドライバ22に接続される。また、ワード線WL1,WL2,・・・は、選択トランジスタSTのゲート電極に接続される。
【0389】
下部ビット線BLd1,BLd2,BLd3,・・・及び上部ビット線BLu1,BLu2,BLu3,・・・は、ロウ方向に交差するカラム方向に延びる。
【0390】
下部ビット線BLd1,BLd2,BLd3,・・・の一端は、カラムデコーダ・ビット線ドライバ/シンカー23Aに接続される。また、下部ビット線BLd1,BLd2,BLd3,・・・は、選択トランジスタSTの2つのソース/ドレイン拡散層の一方に接続される。
【0391】
上部ビット線BLu1,BLu2,BLu3,・・・の一端は、カラムデコーダ・ビット線ドライバ/シンカー・センスアンプ24Aに接続される。また、上部ビット線BLu1,BLu2,BLu3,・・・は、磁気抵抗効果素子MTJの一端に接続される。磁気抵抗効果素子MTJの他端は、選択トランジスタSTの2つのソース/ドレイン拡散層の他方に接続される。
【0392】
このような磁気ランダムアクセスメモリにおいて、メモリセルMC1にデータを書き込む場合、ロウデコーダ・ワード線ドライバ22によりワード線WL1を活性化、例えば、“H”にし、メモリセルMC1内の選択トランジスタSTをオンにする。
【0393】
また、カラムデコーダ23Aにより下部ビット線BLd1を選択し、かつ、カラムデコーダ24Aにより上部ビット線BLu1を選択する。
【0394】
そして、第1データ(例えば“0”)を書き込むときは、ビット線ドライバ/シンカー23Aからビット線ドライバ/シンカー24Aに向かって書き込み電流Iwを流す。
【0395】
また、第2データ(例えば“1”)を書き込むときは、ビット線ドライバ/シンカー24Aからビット線ドライバ/シンカー23Aに向かって書き込み電流Iwを流す。
【0396】
メモリセルMC1からデータを読み出す場合には、ロウデコーダ・ワード線ドライバ22によりワード線WL1を活性化、例えば、“H”にし、メモリセルMC1内の選択トランジスタSTをオンにする。
【0397】
また、カラムデコーダ23Aにより下部ビット線BLd1を選択し、かつ、カラムデコーダ24Aにより上部ビット線BLu1を選択する。
【0398】
そして、センスアンプ24Aからビット線ドライバ/シンカー23Aに向かって読み出し電流Irを流す。
【0399】
尚、読み出し電流Irは、書き込み電流Iwよりも小さくする。
【0400】
ここで、磁気抵抗効果素子MTJには、本発明の例に関わるデュアルピン型磁気抵抗効果素子が用いられるため、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上とを同時に実現できる。
【0401】
B. 第2例
図43は、1Tr-1MTJ型磁気ランダムアクセスメモリの第2例を示している。
【0402】
第2例が第1例と異なる点は、磁気抵抗効果素子MTJとして、本発明の応用例に関わるシングルピン型磁気抵抗効果素子を用いたことにある。
【0403】
その結果、書き込み電流Iwの向きを変えることなく、2値データの書き込みが行えるようになるため、下部ビット線BLd1,BLd2,BLd3,・・・の一端には、カラムデコーダ・ビット線シンカー23Bが接続され、上部ビット線BLu1,BLu2,BLu3,・・・の一端には、カラムデコーダ・ビット線ドライバ・センスアンプ24Bが接続される。
【0404】
このような磁気ランダムアクセスメモリにおいて、メモリセルMC1にデータを書き込む場合、ロウデコーダ・ワード線ドライバ22によりワード線WL1を活性化、例えば、“H”にし、メモリセルMC1内の選択トランジスタSTをオンにする。
【0405】
また、カラムデコーダ23Bにより下部ビット線BLd1を選択し、かつ、カラムデコーダ24Bにより上部ビット線BLu1を選択する。
【0406】
そして、第1データ(例えば“0”)を書き込むときは、ビット線ドライバ24Bからビット線シンカー23Bに向かって第1値を有する書き込み電流Iwを流す。
【0407】
また、第2データ(例えば“1”)を書き込むときは、ビット線ドライバ24Bからビット線シンカー23Bに向かって、第1値とは異なる第2値を有する書き込み電流Iwを流す。
【0408】
メモリセルMC1からデータを読み出す場合には、ロウデコーダ・ワード線ドライバ22によりワード線WL1を活性化、例えば、“H”にし、メモリセルMC1内の選択トランジスタSTをオンにする。
【0409】
また、カラムデコーダ23Bにより下部ビット線BLd1を選択し、かつ、カラムデコーダ24Bにより上部ビット線BLu1を選択する。
【0410】
そして、センスアンプ24Bからビット線シンカー23Bに向かって読み出し電流Irを流す。
【0411】
尚、読み出し電流Irは、書き込み電流(第1値及び第2値)Iwよりも小さくする。
【0412】
C. デバイス構造
図44は、図42及び図43のメモリセルMC1のデバイス構造の例を示している。
【0413】
シリコンなどの半導体基板31内には、STI(shallow trench isolation)構造の素子分離絶縁層32が形成される。素子分離絶縁層32に取り囲まれた素子領域内には、ソース/ドレイン拡散層33、ゲート絶縁層34及びゲート電極(ワード線WL1)35からなる選択トランジスタSTが形成される。
【0414】
ソース/ドレイン拡散層33の一つは、コンタクトプラグ36を介して下部ビット線BLd1に接続される。また、ソース/ドレイン拡散層33の他の一つは、コンタクトプラグ37、中間導電層38及びビアプラグ39を介して、下部電極40に接続される。
【0415】
下部電極40上には、磁気抵抗効果素子MTJが形成される。磁気抵抗効果素子MTJ上には、導電体からなるキャップ層(ハードマスク)41が形成される。キャップ層41上には、上部ビット線BLu1が形成される。
【0416】
下部ビット線BLd1、上部ビット線BLu1、コンタクトプラグ36,37、中間導電層38、ビアプラグ39、下部電極40及びキャップ層41は、W, Al, Cu, AlCu などの導電体から構成される。
【0417】
これらの材料としてCuを使用する場合には、ダマシンプロセス又はデュアルダマシンプロセスを採用するのが望ましい。
【0418】
図45は、図42及び図43のメモリセルMC1のデバイス構造の他の例を示している。
【0419】
この例の特徴は、磁気抵抗効果素子MTJがビアプラグ39上に直接配置されることにある。即ち、図44のデバイス構造における下部電極40を取り除くと、図45のデバイス構造になる。
【0420】
この構造の場合、磁気抵抗効果素子MTJのサイズは、ビアプラグ39のサイズよりも小さいことが望ましい。具体的には、半導体基板31の上部から見た場合に(平面的にみて)、磁気抵抗効果素子MTJがビアプラグ39内に収まるレイアウトとする。
【0421】
但し、これに限られることはなく、平面的にみて、磁気抵抗効果素子MTJがビアプラグ39から多少はみ出していてもよい。また、磁気抵抗効果素子MTJのサイズがビアプラグ39のサイズよりも大きくてもよい。
【0422】
ここで、リソグラフィやエッチング技術などによって決まる最小加工寸法をF(Minimum Feature Size)と定義すると、図44の構造を用いた場合の最小セルサイズは、8F2になる。これに対し、図45の構造を用いた場合の最小セルサイズは、4F2になる。
【0423】
フリー層の磁化反転を磁界により行う書き込み方式では、セルサイズの縮小に伴い、書き込み電流Iwの値が大きくなるため、磁気抵抗効果素子MTJのサイズは、できるだけ大きくすることが望ましい。従って、デイバス構造は、必然的に、図44に示すようになる。
【0424】
一方、スピン注入書き込み方式を採用する場合、セルサイズの縮小に伴い、書き込み電流Iwの値は小さくなるため、磁気抵抗効果素子MTJのサイズは、できるだけ小さくすることが望ましい。従って、デバイス構造としては、図45の構造を採用し易くなる。
【0425】
D. まとめ
本発明の例に関わる磁気抵抗効果素子が適用された1Tr-1MTJ型磁気ランダムアクセスメモリによれば、磁化反転効率の向上に伴い、書き込み速度の向上という付随的効果を得ることができる。具体的には、書き込み速度は、数ナノ秒から数マイクロ秒までの範囲内の値を実現できる。
【0426】
尚、読み出し時に磁気抵抗効果素子MTJに供給する読み出し電流Irは、書き込み時に磁気抵抗効果素子MTJに供給する書き込み電流Iwよりもパルス幅(供給時間)が短いことが望ましい。
【0427】
この場合、読み出し時におけるディスターブ(誤書き込み)を防止できる。これは、書き込み電流Iwのパルス幅を短くすると、書き込み電流の値の絶対値が大きくなり過ぎることに起因する。
【0428】
つまり、書き込み電流Iwの値を小さくして低消費電流化を図ると共に、読み出し時のディスターブを防止するために、読み出し電流Irのパルス幅を書き込み電流Iwのパルス幅よりも短くする。
【0429】
(2) クロスポイント型磁気ランダムアクセスメモリ
A. 第1例
図46は、クロスポイント型磁気ランダムアクセスメモリの第1例を示している。
【0430】
メモリセルアレイ51は、複数のメモリセルから構成される。各々のメモリセルは、磁気抵抗効果素子MTJから構成される。磁気抵抗効果素子MTJは、本発明の例に関わるデュアルピン型磁気抵抗効果素子が用いられる。
【0431】
ワード線WL1,WL2,WL3,・・・は、ロウ方向に延び、その一端は、ロウデコーダ・ワード線ドライバ/シンカー52Aに接続される。また、ワード線WL1,WL2,WL3,・・・は、磁気抵抗効果素子MTJの一端に接続される。
【0432】
ビット線BL1,BL2,・・・は、ロウ方向に交差するカラム方向に延びる。ビット線BL1,BL2,・・・の一端は、カラムデコーダ・ビット線ドライバ/シンカー53Aに接続される。また、ビット線BL1,BL2,・・・は、磁気抵抗効果素子MTJの他端に接続される。
【0433】
ビット線BL1,BL2,・・・の他端は、カラム選択スイッチ(MISFET)CSWを介してセンスアンプ(S/A)54に接続される。カラム選択スイッチCSWのゲート電極は、カラムデコーダ55に接続される。
【0434】
このような磁気ランダムアクセスメモリにおいて、メモリセルMC1にデータを書き込む場合、ロウデコーダ52Aによりワード線WL1を選択する。また、カラムデコーダ53Aによりビット線BL1を選択する。
【0435】
そして、第1データ(例えば“0”)を書き込むときは、ワード線ドライバ/シンカー52Aからビット線ドライバ/シンカー53Aに向かって書き込み電流Iwを流す。
【0436】
また、第2データ(例えば“1”)を書き込むときは、ビット線ドライバ/シンカー53Aからワード線ドライバ/シンカー52Aに向かって書き込み電流Iwを流す。
【0437】
メモリセルMC1からデータを読み出す場合には、ロウデコーダ52Aによりワード線WL1を選択し、カラムデコーダ55によりビット線BL1を選択する。そして、センスアンプ54からワード線ドライバ/シンカー52Aに向かって読み出し電流Irを流す。
【0438】
尚、読み出し電流Irは、書き込み電流Iwよりも小さくする。
【0439】
ここで、磁気抵抗効果素子MTJには、本発明の例に関わるデュアルピン型磁気抵抗効果素子が用いられるため、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上とを同時に実現できる。
【0440】
B. 第2例
図47は、クロスポイント型磁気ランダムアクセスメモリの第2例を示している。
【0441】
第2例が第1例と異なる点は、磁気抵抗効果素子MTJとして、本発明の応用例に関わるシングルピン型磁気抵抗効果素子を用いたことにある。
【0442】
その結果、書き込み電流Iwの向きを変えることなく、2値データの書き込みが行えるようになるため、ワード線WL1,WL2,WL3,・・・の一端には、ロウデコーダ・ワード線シンカー52Bが接続され、ビット線BL1,BL2,・・・の一端には、カラムデコーダ・ビット線ドライバ53Bが接続される。
【0443】
また、“0”/“1”書き込みの書き込み電流Iwの向きが同じであるため、整流ダイオードDを用いた完全クロスポイント型スピン注入磁気ランダムアクセスメモリを実現できる。
【0444】
ここで「完全」と称したのは、従来は、スピン注入書き込み方式とクロスポイント型とを組み合わせることが不可能であったことに由来する。
【0445】
その理由は、クロスポイント型の場合には、読み出し時における回り込み電流(sneak current)を防止するために、磁気抵抗効果素子MTJに整流ダイオードを付加する手段が採用されるが、これを採用すると、書き込みデータに応じて書き込み電流Iwの向きを変えることが不可能になるためである。
【0446】
本発明の応用例によれば、書き込みデータにかかわらず、書き込み電流Iwの向きが一定となるため、スピン注入書き込み方式とクロスポイント型との組み合わせが可能になる。
【0447】
また、クロスポイント型の場合、個々の磁気抵抗効果素子MTJに対して選択トランジスタを接続する必要がないため、書き込み電流Iwの大きさが選択トランジスタのサイズに制限される、という問題が発生しない。
【0448】
その結果、場合によっては、1mA以上の書き込み電流を磁気抵抗効果素子MTJに供給することもできる。
【0449】
また、セルサイズについては、選択トランジスタが存在しないために、ワード線及びビット線の幅をそれぞれFとした場合の最小サイズである4F2を容易に実現できる。
【0450】
このような磁気ランダムアクセスメモリにおいて、メモリセルMC1にデータを書き込む場合、ロウデコーダ52Bによりワード線WL1を選択する。また、カラムデコーダ53Bによりビット線BL1を選択する。
【0451】
そして、第1データ(例えば“0”)を書き込むときは、ビット線ドライバ53Bからワード線シンカー52Bに向かって、第1値を有する書き込み電流Iwを流す。
【0452】
また、第2データ(例えば“1”)を書き込むときは、ビット線ドライバ53Bからワード線シンカー52Bに向かって、第1値とは異なる第2値を有する書き込み電流Iwを流す。
【0453】
メモリセルMC1からデータを読み出す場合には、ロウデコーダ52Bによりワード線WL1を選択し、カラムデコーダ55によりビット線BL1を選択する。そして、センスアンプ54からワード線シンカー52Bに向かって読み出し電流Irを流す。
【0454】
尚、読み出し電流Irは、書き込み電流(第1値及び第2値)Iwよりも小さくする。
【0455】
C. デバイス構造
図48は、図46のメモリセルMC1のデバイス構造の例を示している。
【0456】
シリコンなどの半導体基板61の上部には、ワード線WL1が形成される。ワード線WL1上には、磁気抵抗効果素子MTJが形成される。磁気抵抗効果素子MTJ上には、導電体からなるキャップ層(ハードマスク)62が形成される。キャップ層62上には、ビット線BL1が形成される。
【0457】
ワード線WL1、ビット線BL1及びキャップ層62は、W, Al, Cu, AlCu などの導電体から構成される。
【0458】
これらの材料としてCuを使用する場合には、ダマシンプロセス又はデュアルダマシンプロセスを採用するのが望ましい。
【0459】
図49は、図47のメモリセルMC1のデバイス構造の例を示している。
【0460】
この例の特徴は、ワード線WL1と磁気抵抗効果素子MTJとの間に整流ダイオードDが形成されていることにある。即ち、図48のデバイス構造に整流ダイオードDを追加すると、図49のデバイス構造になる。
【0461】
尚、整流ダイオードDは、磁気抵抗効果素子MTJとキャップ層62との間に形成してもよい。
【0462】
D. まとめ
本発明の例に関わる磁気抵抗効果素子が適用されたクロスポイント型磁気ランダムアクセスメモリによれば、磁化反転効率の向上に伴い、書き込み速度の向上という付随的効果を得ることができる。具体的には、書き込み速度は、数ナノ秒から数マイクロ秒までの範囲内の値を実現できる。
【0463】
尚、読み出し時に磁気抵抗効果素子MTJに供給する読み出し電流Irは、書き込み時に磁気抵抗効果素子MTJに供給する書き込み電流Iwよりもパルス幅(供給時間)が短いことが望ましい。
【0464】
この場合、読み出し時におけるディスターブ(誤書き込み)を防止できる。これは、書き込み電流Iwのパルス幅を短くすると、書き込み電流の値の絶対値が大きくなり過ぎることに起因する。
【0465】
つまり、書き込み電流Iwの値を小さくして低消費電流化を図ると共に、読み出し時のディスターブを防止するために、読み出し電流Irのパルス幅を書き込み電流Iwのパルス幅よりも短くする。
【0466】
8. むすび
本発明の例によれば、デュアルピン構造の磁気抵抗効果素子において、書き込み電流の低減と読み出し時のMR比の向上との両立を図ることができる。
【0467】
本発明の例は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を構成できる。例えば、上述の実施の形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施の形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0468】
【図1】デュアルピン構造の例を示す断面図。
【図2】デュアルピン構造の例を示す断面図。
【図3】ピンド層の例を示す断面図。
【図4】ピンド層の例を示す断面図。
【図5】フリー層の例を示す断面図。
【図6】フリー層の例を示す断面図。
【図7】2つのピンド層の磁化方向が逆である磁気抵抗効果素子の第1例を示す図。
【図8】2つのピンド層の磁化方向が逆である磁気抵抗効果素子の第1例を示す図。
【図9】2つのピンド層の磁化方向が逆である磁気抵抗効果素子の第2例を示す図。
【図10】2つのピンド層の磁化方向が逆である磁気抵抗効果素子の第2例を示す図。
【図11】2つのピンド層の磁化方向が同じである磁気抵抗効果素子の第1例を示す図。
【図12】2つのピンド層の磁化方向が同じである磁気抵抗効果素子の第1例を示す図。
【図13】2つのピンド層の磁化方向が同じである磁気抵抗効果素子の第2例を示す図。
【図14】2つのピンド層の磁化方向が同じである磁気抵抗効果素子の第2例を示す図。
【図15】MR比のバイアス依存性の制御方法の例を示す図。
【図16】MR比のバイアス依存性の制御方法の例を示す図。
【図17】第1実施例を示す図。
【図18】第2実施例を示す図。
【図19】第3実施例を示す図。
【図20】第4実施例を示す図。
【図21】第5実施例を示す図。
【図22】第6実施例を示す図。
【図23】第7実施例を示す図。
【図24】第8実施例を示す図。
【図25】第9実施例を示す図。
【図26】第10実施例を示す図。
【図27】第11実施例を示す図。
【図28】第12実施例を示す図。
【図29】第13実施例を示す図。
【図30】第1応用例を示す図。
【図31】第1応用例を示す図。
【図32】第1応用例を示す図。
【図33】第2応用例を示す図。
【図34】第2応用例を示す図。
【図35】第2応用例を示す図。
【図36】第3応用例を示す図。
【図37】第3応用例を示す図。
【図38】第3応用例を示す図。
【図39】第4応用例を示す図。
【図40】第4応用例を示す図。
【図41】第4応用例を示す図。
【図42】1Tr-1MTJ型磁気ランダムアクセスメモリの第1例を示す図。
【図43】1Tr-1MTJ型磁気ランダムアクセスメモリの第2例を示す図。
【図44】メモリセルの構造例を示す断面図。
【図45】メモリセルの構造例を示す断面図。
【図46】クロスポイント型磁気ランダムアクセスメモリの第1例を示す図。
【図47】クロスポイント型磁気ランダムアクセスメモリの第2例を示す図。
【図48】メモリセルの構造例を示す断面図。
【図49】メモリセルの構造例を示す断面図。
【符号の説明】
【0469】
11A,11B: ピンド層(強磁性層)、 12: フリー層(強磁性層)、 13A,13B: スペーサ層(非磁性層)、 14: 反強磁性層、 21,51: メモリセルアレイ、 22: ロウデコーダ・ワード線ドライバ、 23A: カラムデコーダ・ビット線ドライバ/シンカー、 23B: カラムデコーダ・ビット線シンカー、 24A: カラムデコーダ・ビット線ドライバ/シンカー・センスアンプ、 24B: カラムデコーダ・ビット線ドライバ・センスアンプ、 31,61: 半導体基板、 32: 素子分離絶縁層、 33: ソース/ドレイン拡散層、 34: ゲート絶縁層、 35: ゲート電極、 36,37: コンタクトプラグ、 38: 中間導電層、 39: ビアプラグ、 40: 下部電極、 41,62: キャップ層、 52A: ロウデコーダ・ワード線ドライバ/シンカー、 52B: ロウデコーダ・ワード線シンカー、 53A: カラムデコーダ・ビット線ドライバ/シンカー、 53B: カラムデコーダ・ビット線ドライバ、 54: センスアンプ、 55: カラムデコーダ、 MTJ: 磁気抵抗効果素子、 ST: 選択トランジスタ、 D: 整流ダイオード。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化方向が互いに逆向きに固定される第1及び第2強磁性層と、前記第1及び第2強磁性層の間に配置され、磁化方向が変化する第3強磁性層と、前記第1及び第3強磁性層の間に配置される第1非磁性層と、前記第2及び第3強磁性層の間に配置される第2非磁性層とを具備し、
前記第1及び第2強磁性層の間に読み出し電圧をバイアスしたときに、前記第1強磁性層、前記第1非磁性層及び前記第3強磁性層から構成される第1ユニットのMR比は、インバース状態にあり、前記第2強磁性層、前記第2非磁性層及び前記第3強磁性層から構成される第2ユニットのMR比は、ノーマル状態にあり、
前記第1及び第2強磁性層の間に書き込み電圧をバイアスしたときに、前記第1及び第2ユニットのMR比は、共に、前記ノーマル状態又は前記インバース状態にある
ことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
磁化方向が互いに同じ向きに固定される第1及び第2強磁性層と、前記第1及び第2強磁性層の間に配置され、磁化方向が変化する第3強磁性層と、前記第1及び第3強磁性層の間に配置される第1非磁性層と、前記第2及び第3強磁性層の間に配置される第2非磁性層とを具備し、
前記第1及び第2強磁性層の間に読み出し電圧をバイアスしたときに、前記第1強磁性層、前記第1非磁性層及び前記第3強磁性層から構成される第1ユニットのMR比、及び、前記第2強磁性層、前記第2非磁性層及び前記第3強磁性層から構成される第2ユニットのMR比は、共に、ノーマル状態又はインバース状態にあり、
前記第1及び第2強磁性層の間に書き込み電圧をバイアスしたときに、前記第1ユニットのMR比は、前記インバース状態にあり、前記第2ユニットのMR比は、前記ノーマル状態にある
ことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
前記第1及び第2ユニットのMR比は、バイアス依存性を有し、前記第1及び第2ユニットのMR比のうちの1つは、前記読み出し電圧と前記書き込み電圧との間の領域で、前記ノーマル状態及び前記インバース状態のうちの一方から他方に変化することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
前記第1及び第2非磁性層は、絶縁体又は半導体から構成され、トンネル磁気抵抗効果を発生させることを特徴とする請求項3に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
前記第1及び第2ユニットのMR比の1つは、バイアス依存性を有し、前記第1及び第2ユニットのMR比のうち前記バイアス依存性を有するものは、前記読み出し電圧と前記書き込み電圧との間の領域で、前記ノーマル状態及び前記インバース状態のうちの一方から他方に変化することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
前記第1ユニットが前記バイアス依存性を有する場合、前記第1非磁性層は、絶縁体又は半導体から構成され、トンネル磁気抵抗効果を発生させることを特徴とする請求項5に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項7】
前記第2ユニットが前記バイアス依存性を有する場合、前記第2非磁性層は、絶縁体又は半導体から構成され、トンネル磁気抵抗効果を発生させることを特徴とする請求項5に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項8】
前記第1、第2及び第3強磁性層の磁化方向は、これらがスタックされる方向であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項9】
前記第1、第2及び第3強磁性層の磁化方向は、これらがスタックされる方向に対して垂直な方向であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項10】
前記書き込み電圧の向きは、書き込みデータの値に応じて変化することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子をメモリセルとして備えることを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリ。
【請求項12】
磁化方向が固定される第1強磁性層と、磁化方向が変化する第2強磁性層と、前記第1及び第2強磁性層の間に配置される非磁性層とを具備し、
第1データを書き込むために前記第1及び第2強磁性層の間に第1書き込み電圧をバイアスしたときのMR比がノーマル状態にあり、
第2データを書き込むために前記第1及び第2強磁性層の間に第2書き込み電圧をバイアスしたときのMR比がインバース状態にある
ことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項13】
前記第1及び第2書き込み電圧の向きは同じであることを特徴とする請求項12に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項14】
前記第1及び第2書き込み電圧の大きさは異なることを特徴とする請求項12又は13に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項15】
前記第1及び第2強磁性層の間に読み出し電圧をバイアスしたときのMR比は、前記ノーマル状態又は前記インバース状態にあることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項16】
前記MR比は、バイアス依存性を有し、前記第1及び第2書き込み電圧の間の領域で、前記ノーマル状態及び前記インバース状態のうちの一方から他方に変化することを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項17】
前記非磁性層は、絶縁体又は半導体から構成され、トンネル磁気抵抗効果を発生させることを特徴とする請求項16に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項18】
前記第1及び第2強磁性層の磁化方向は、これらがスタックされる方向であることを特徴とする請求項12乃至17のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項19】
前記第1及び第2強磁性層の磁化方向は、これらがスタックされる方向に対して垂直な方向であることを特徴とする請求項12乃至17のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項20】
請求項12乃至19のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子をメモリセルとして備えることを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリ。
【請求項1】
磁化方向が互いに逆向きに固定される第1及び第2強磁性層と、前記第1及び第2強磁性層の間に配置され、磁化方向が変化する第3強磁性層と、前記第1及び第3強磁性層の間に配置される第1非磁性層と、前記第2及び第3強磁性層の間に配置される第2非磁性層とを具備し、
前記第1及び第2強磁性層の間に読み出し電圧をバイアスしたときに、前記第1強磁性層、前記第1非磁性層及び前記第3強磁性層から構成される第1ユニットのMR比は、インバース状態にあり、前記第2強磁性層、前記第2非磁性層及び前記第3強磁性層から構成される第2ユニットのMR比は、ノーマル状態にあり、
前記第1及び第2強磁性層の間に書き込み電圧をバイアスしたときに、前記第1及び第2ユニットのMR比は、共に、前記ノーマル状態又は前記インバース状態にある
ことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
磁化方向が互いに同じ向きに固定される第1及び第2強磁性層と、前記第1及び第2強磁性層の間に配置され、磁化方向が変化する第3強磁性層と、前記第1及び第3強磁性層の間に配置される第1非磁性層と、前記第2及び第3強磁性層の間に配置される第2非磁性層とを具備し、
前記第1及び第2強磁性層の間に読み出し電圧をバイアスしたときに、前記第1強磁性層、前記第1非磁性層及び前記第3強磁性層から構成される第1ユニットのMR比、及び、前記第2強磁性層、前記第2非磁性層及び前記第3強磁性層から構成される第2ユニットのMR比は、共に、ノーマル状態又はインバース状態にあり、
前記第1及び第2強磁性層の間に書き込み電圧をバイアスしたときに、前記第1ユニットのMR比は、前記インバース状態にあり、前記第2ユニットのMR比は、前記ノーマル状態にある
ことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
前記第1及び第2ユニットのMR比は、バイアス依存性を有し、前記第1及び第2ユニットのMR比のうちの1つは、前記読み出し電圧と前記書き込み電圧との間の領域で、前記ノーマル状態及び前記インバース状態のうちの一方から他方に変化することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
前記第1及び第2非磁性層は、絶縁体又は半導体から構成され、トンネル磁気抵抗効果を発生させることを特徴とする請求項3に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
前記第1及び第2ユニットのMR比の1つは、バイアス依存性を有し、前記第1及び第2ユニットのMR比のうち前記バイアス依存性を有するものは、前記読み出し電圧と前記書き込み電圧との間の領域で、前記ノーマル状態及び前記インバース状態のうちの一方から他方に変化することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
前記第1ユニットが前記バイアス依存性を有する場合、前記第1非磁性層は、絶縁体又は半導体から構成され、トンネル磁気抵抗効果を発生させることを特徴とする請求項5に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項7】
前記第2ユニットが前記バイアス依存性を有する場合、前記第2非磁性層は、絶縁体又は半導体から構成され、トンネル磁気抵抗効果を発生させることを特徴とする請求項5に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項8】
前記第1、第2及び第3強磁性層の磁化方向は、これらがスタックされる方向であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項9】
前記第1、第2及び第3強磁性層の磁化方向は、これらがスタックされる方向に対して垂直な方向であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項10】
前記書き込み電圧の向きは、書き込みデータの値に応じて変化することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子をメモリセルとして備えることを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリ。
【請求項12】
磁化方向が固定される第1強磁性層と、磁化方向が変化する第2強磁性層と、前記第1及び第2強磁性層の間に配置される非磁性層とを具備し、
第1データを書き込むために前記第1及び第2強磁性層の間に第1書き込み電圧をバイアスしたときのMR比がノーマル状態にあり、
第2データを書き込むために前記第1及び第2強磁性層の間に第2書き込み電圧をバイアスしたときのMR比がインバース状態にある
ことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項13】
前記第1及び第2書き込み電圧の向きは同じであることを特徴とする請求項12に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項14】
前記第1及び第2書き込み電圧の大きさは異なることを特徴とする請求項12又は13に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項15】
前記第1及び第2強磁性層の間に読み出し電圧をバイアスしたときのMR比は、前記ノーマル状態又は前記インバース状態にあることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項16】
前記MR比は、バイアス依存性を有し、前記第1及び第2書き込み電圧の間の領域で、前記ノーマル状態及び前記インバース状態のうちの一方から他方に変化することを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項17】
前記非磁性層は、絶縁体又は半導体から構成され、トンネル磁気抵抗効果を発生させることを特徴とする請求項16に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項18】
前記第1及び第2強磁性層の磁化方向は、これらがスタックされる方向であることを特徴とする請求項12乃至17のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項19】
前記第1及び第2強磁性層の磁化方向は、これらがスタックされる方向に対して垂直な方向であることを特徴とする請求項12乃至17のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項20】
請求項12乃至19のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子をメモリセルとして備えることを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【公開番号】特開2008−187048(P2008−187048A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19973(P2007−19973)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「スピントロニクス不揮発性機能技術プロジェクト」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「スピントロニクス不揮発性機能技術プロジェクト」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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