説明

移動体装置及び移動体駆動方法、露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法

【課題】移動体を精度良く駆動する。
【解決手段】 駆動系により、アーム部材71から移動体WFSのXY平面に平行な一面に配置されたグレーティングRGに対して計測ビームを照射して移動体のXY平面内の位置を計測する第1計測系の計測結果と、レーザ干渉計を用いてアーム部材71の変動を計測する第2計測系の計測結果と、に基づいて移動体が駆動される。この場合、駆動系は、第1計測系の計測結果に含まれるアーム部材の変動に起因する計測誤差を、第2計測系の計測結果を用いて補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体装置及び移動体駆動方法、露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法に係り、更に詳しくは、所定平面に沿って移動可能な移動体を含む移動体装置及び前記移動体を駆動する移動体駆動方法、前記移動体装置を備える露光装置及び前記移動体駆動方法を利用する露光方法、並びに前記露光装置又は前記露光方法を用いるデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子(集積回路等)、液晶表示素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、主として、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置では、一般的に、パターンが転写・形成されるウエハ又はガラスプレート等の基板(以下、ウエハと総称する)を保持して2次元移動する微動ステージの位置が、レーザ干渉計を用いて計測されていた。しかし、近年の半導体素子の高集積化に伴うパターンの微細化により、さらに高精度な微動ステージの位置制御性能が要求されるようになり、その結果、レーザ干渉計のビーム路上の雰囲気の温度変化、及び/又は温度勾配の影響で発生する空気揺らぎに起因する計測値の短期的な変動が、無視できなくなってきた。
【0004】
かかる不都合を改善するものとして、レーザ干渉計と同程度以上の計測分解能を有するエンコーダを、微動ステージの位置計測装置として採用した露光装置に係る発明が、種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかるに、特許文献1などに開示される液浸露光装置では、液体が蒸発する際の気加熱などの影響によりウエハステージ(ウエハステージ上面に設けられていたグレーティング)が変形するおそれがあるなど、未だ改善すべき点があった。
【0005】
かかる不都合を改善するものとして、例えば、特許文献2には、第5の実施形態として、光透過部材で構成されたウエハステージの上面にグレーティングを設け、ウエハステージの下方に配置されたエンコーダ本体から計測ビームをウエハステージに入射させてグレーティングに照射し、グレーティングで発生する回折光を受光することによって、グレーティングの周期方向に関するウエハステージの変位を計測するエンコーダシステムを備えた露光装置が開示されている。この装置では、グレーティングは、カバーガラスで覆われているので、気化熱などの影響は受け難く、高精度なウエハステージの位置計測が可能である。
【0006】
しかしながら、特許文献2の第5の実施形態に係る露光装置では、吊り下げ支持部材を介して投影光学系定盤に吊り下げ支持されたステージ定盤にエンコーダ本体が設けられており、露光装置の露光中における振動が投影光学系定盤や吊り下げ支持部材を介してステージ定盤に伝わることによってエンコーダヘッドの光軸が傾くなどし、これに起因してエンコーダシステムの計測精度が低下するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/097379号
【特許文献2】国際公開第2008/038752号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の事情の下でなされたもので、第1の観点からすると、所定平面内で移動可能で、前記所定平面に実質的に平行な面に沿って計測面が配置された移動体と;少なくとも一方の端部が前記計測面に対向して配置され、前記第1軸に平行な方向を長手方向とするアーム部材を有し、該アーム部材から前記計測面に少なくとも1本の第1計測ビームを照射し、該第1計測ビームの前記計測面からの光を受光して、前記移動体の少なくとも前記所定平面内の位置を計測する第1計測系と;前記アーム部材の変動情報を計測する第2計測系と;前記第1計測系及び前記第2計測系の出力に基づいて前記移動体を駆動する駆動系と;を備える移動体装置である。
【0009】
これによれば、駆動系により、アーム部材から移動体の所定平面に実質的に平行な面に沿って配置された計測面に対して第1計測ビームを照射して移動体の所定平面内の位置を計測する第1計測系の計測結果と、アーム部材の変動情報を計測する第2計測系の計測結果と、に基づいて移動体が駆動される。この場合、駆動系は、第1計測系の計測結果に含まれるアーム部材の変動に起因する計測誤差を、第2計測系の計測結果を用いて補正することができる。従って、移動体を精度良く駆動することが可能になる。
【0010】
本発明は、第2の観点からすると、エネルギビームの照射によって物体にパターンを形成する露光装置であって、前記物体が前記移動体上に載置される、本発明の移動体装置と;前記移動体上に載置された前記物体に前記エネルギビームを照射するパターニング装置と;を備える露光装置である。
【0011】
これによれば、移動体装置を構成する移動体を精度良く駆動することができるので、この移動体に載置された物体を精度良く駆動して、パターニング装置によりその物体にエネルギビームを照射することで、物体上に精度良くパターンを形成することが可能になる。
【0012】
本発明は、第3の観点からすると、本発明の露光装置を用いて物体を露光することと、前記露光された物体を現像することと;を含むデバイス製造方法である。
【0013】
本発明は、第4の観点からすると、移動体を所定平面に沿って駆動する移動体駆動方法であって、前記移動体上の前記所定平面に実質的に平行な面に沿って配置された計測面に対し、少なくとも一方の端部が前記計測面に対向して配置された前記所定平面に実質的に平行な第1軸方向を長手方向とするアーム部材から少なくとも1本の第1計測ビームを照射し、該第1計測ビームの前記計測面からの光を受光して、前記移動体の少なくとも前記所定平面内の位置を計測する第1工程と;前記位置情報の計測結果と、該計測結果に含まれる前記アーム部材の変動に起因する計測誤差の補正情報とに基づいて、前記移動体を駆動する第2工程と;を含む移動体駆動方法である。
【0014】
これによれば、移動体は、アーム部材から移動体の所定平面に実質的に平行な面に沿って配置された計測面に対して第1計測ビームを照射して移動体の所定平面内の位置を計測した計測結果と、該計測結果に含まれる前記アーム部材の変動に起因する計測誤差の補正情報とに基づいて、移動体が駆動される。この場合、移動体の所定平面内の位置の計測結果に含まれるアーム部材の変動に起因する計測誤差を補正することができる。従って、移動体を精度良く駆動することが可能になる。
【0015】
本発明は、第5の観点からすると、エネルギビームの照射によって物体にパターンを形成する露光方法であって、パターンの形成のため、前記物体が載置された移動体を本発明の移動体駆動方法を用いて駆動する工程を含む第1の露光方法である。
【0016】
これによれば、移動体を精度良く駆動することができるので、この移動体に載置された物体を精度良く駆動して、その物体にエネルギビームを照射することで、物体上に精度良くパターンを形成することが可能になる。
【0017】
本発明は、第6の観点からすると、エネルギビームの照射によって物体にパターンを形成する露光方法であって、少なくとも互いに直交する第1軸及び第2軸を含む二次元平面に沿って移動可能な第1移動体によって、少なくとも前記二次元平面に平行な面内で前記第1移動体に対して相対移動可能に保持され、前記二次元平面に実質的に平行な一面に計測面が設けられた第2移動体に、前記物体を載置する第1工程と;前記計測面に対し、少なくとも一方の端部が前記計測面に対向して配置された前記第1軸に平行な方向を長手方向とするアーム部材から少なくとも1本の第1計測ビームを照射し、該第1計測ビームの前記計測面からの光を受光して、前記第2移動体の少なくとも前記所定平面内の位置を計測する第2工程と;前記アーム部材の変動情報を計測する第3工程と;前記前記第2工程及び前記第3工程の計測結果に基づいて、前記第2移動体を前記二次元平面内の走査方向に駆動することで、前記エネルギビームに対して前記物体を走査する第4工程と;を含む第2の露光方法である。
【0018】
これによれば、走査露光時に第2移動体を高精度に駆動することができ、物体の高精度な露光が可能となる。
【0019】
本発明は、第7の観点からすると、本発明の第1、第2露光方法のいずれかを用いて物体を露光することと、前記露光された物体を現像することと;を含むデバイス製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一実施形態の露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2(A)は、図1の露光装置が備えるステージ装置を示す−Y方向から見た側面図、図2(B)は、ステージ装置を示す平面図である。
【図3】図1の露光装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】微動ステージ駆動系を構成する磁石ユニット及びコイルユニットの配置を示す平面図である。
【図5】図5(A)は、微動ステージ駆動系を構成する磁石ユニット及びコイルユニットの配置を示す−Y方向から見た側面図、図5(B)は、微動ステージ駆動系を構成する磁石ユニット及びコイルユニットの配置を示す+X方向から見た側面図である。
【図6】図6(A)は、微動ステージを粗動ステージに対してZ軸回りに回転させる際の動作を説明するための図、図6(B)は、微動ステージを粗動ステージに対してY軸回りに回転させる際の動作を説明するための図、図6(C)は、微動ステージを粗動ステージに対してX軸回りに回転させる際の動作を説明するための図である。
【図7】微動ステージの中央部を+Z方向に撓ませる際の動作を説明するための図である。
【図8】図8(A)は、計測アームの先端部を示す斜視図、図8(B)は、計測アームの先端部の上面を+Z方向から見た平面図である。
【図9】図9(A)は、Xヘッド77xの概略構成を示す図、図9(B)は、Xヘッド77x、Yヘッド77ya、77ybそれぞれの計測アーム内での配置を説明するための図である。
【図10】図10(A)及び図10(B)は、計測アームの先端部がZ軸方向(上下方向)に上下動(縦振動)した場合を示す図である。
【図11】計測アームの先端面の面位置を計測するための計測システムを構成する4つのレーザ干渉計を示す図である。
【図12】計測アームの先端面の変位を計測するための計測システムを構成するエンコーダを示す図である。
【図13】図13(A)は、計測アームの先端面の面位置に対応するエンコーダシステムの補正情報を作成する方法を説明するための図、図13(B)は、作成された補正情報に対応するグラフを示す図である。
【図14】図14(A)は、スキャン露光時のウエハの駆動方法を説明するための図、図14(B)は、ステッピング時のウエハの駆動方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図14(B)に基づいて説明する。
【0022】
図1には、一実施形態の露光装置100の構成が概略的に示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では、投影光学系PLが設けられており、以下においては、この投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0023】
露光装置100は、図1に示されるように、照明系10、レチクルステージRST、投影ユニットPU、局所液浸装置8、微動ステージWFSを有するステージ装置50、及びこれらの制御系等を備えている。図1において、微動ステージWFS上には、ウエハWが載置されている。
【0024】
照明系10は、例えば米国特許出願公開第2003/025890号明細書などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系と、を含む。照明系10は、レチクルブラインド(マスキングシステムとも呼ばれる)で規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとして、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
【0025】
レチクルステージRST上には、そのパターン面(図1における下面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(図1では不図示、図3参照)によって、XY平面内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定の走査速度で駆動可能となっている。
【0026】
レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)13によって、レチクルステージRSTに固定された移動鏡15(実際には、Y軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡(あるいは、レトロリフレクタ)とX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とが設けられている)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計13の計測値は、主制御装置20(図1では不図示、図3参照)に送られる。なお、例えば米国特許出願公開第2007/0288121号などに開示されているように、エンコーダシステムによってレチクルステージRSTの位置情報を計測しても良い。
【0027】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に保持された投影光学系PLと、を含む。投影光学系PLとしては、例えば、Z軸方向と平行な光軸AXに沿って配列される複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられる。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。このため、照明系10によってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上で前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTと微動ステージWFSとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、レチクルR及び投影光学系PLによってウエハW上にパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。ここで、投影ユニットPUはメインフレームBDに保持され、本実施形態では、メインフレームBDが、それぞれ防振機構を介して設置面(床面など)に配置される複数(例えば3つ又は4つ)の支持部材によってほぼ水平に支持されている。なお、その防振機構は各支持部材とメインフレームBDとの間に配置しても良い。また、例えば国際公開第2006/038952号パンフレットに開示されているように、投影ユニットPUの上方に配置される不図示のメインフレーム部材、あるいはレチクルベースなどに対して投影ユニットPUを吊り下げ支持しても良い。
【0028】
局所液浸装置8は、本実施形態の露光装置100が、液浸方式の露光を行うことに対応して設けられている。局所液浸装置8は、液体供給装置5、液体回収装置6(いずれも図1では不図示、図3参照)、及びノズルユニット32等を含む。ノズルユニット32は、図1に示されるように、投影光学系PLを構成する最も像面側(ウエハW側)の光学素子、ここではレンズ(以下、「先端レンズ」ともいう)191を保持する鏡筒40の下端部周囲を取り囲むように、不図示の支持部材を介して、投影ユニットPU等を支持するメインフレームBDに吊り下げ支持されている。本実施形態では、主制御装置20が液体供給装置5(図3参照)を制御して、ノズルユニット32を介して先端レンズ191とウエハWとの間に液体を供給するとともに、液体回収装置6(図3参照)を制御して、ノズルユニット32を介して先端レンズ191とウエハWとの間から液体を回収する。このとき、主制御装置20は、供給される液体の量と回収される液体の量とが常に等しくなるように、液体供給装置5と液体回収装置6を制御する。従って、先端レンズ191とウエハWとの間には、一定量の液体Lq(図1参照)が常に入れ替わって保持される。本実施形態では、上記の液体として、ArFエキシマレーザ光(波長193nmの光)が透過する純水を用いるものとする。なお、ArFエキシマレーザ光に対する純水の屈折率nは、ほぼ1.44であり、純水の中では、照明光ILの波長は、193nm×1/n=約134nmに短波長化される。
【0029】
ステージ装置50は、図1に示されるように、床面上に防振機構(図示省略)によってほぼ水平に支持されたベース盤12、ウエハWを保持してベース盤12上で移動するウエハステージWST、及び各種計測系(16、70(図3参照)等)等を備えている。
【0030】
ベース盤12は、平板状の外形を有する部材から成り、その上面は平坦度が非常に高く仕上げられ、ウエハステージWSTの移動の際のガイド面とされている。
【0031】
ウエハステージWSTは、図1及び図2(A)等に示されるように、その底面に設けられた複数の非接触軸受(例えばエアベアリング(図示省略))によりベース盤12の上に浮上支持され、粗動ステージ駆動系51(図3参照)により、XY二次元方向に駆動されるウエハ粗動ステージ(以下、粗動ステージと略述する)WCSと、粗動ステージWCSに非接触状態で支持され、粗動ステージWCSに対して相対移動可能なウエハ微動ステージ(以下、微動ステージと略述する)WFSとを有している。微動ステージWFSは、微動ステージ駆動系52(図3参照)によって粗動ステージWCSに対して6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)に駆動される。
【0032】
ウエハステージWSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報も含む)は、ウエハステージ位置計測系16によって計測される。また、微動ステージWFSの6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)の位置情報は微動ステージ位置計測系70(図3参照)によって計測される。ウエハステージ位置計測系16及び微動ステージ位置計測系70の計測結果は、粗動ステージWCS、微動ステージWFSの位置制御のため、主制御装置20(図3参照)に供給される。この他、本実施形態では、微動ステージ位置計測系70の計測誤差を補正するための計測を行う、計測システム30が設けられている。計測システム30(図3参照)も主制御装置20に接続されている。
【0033】
上記各種計測系を含み、ステージ装置50の構成各部の構成等については、後に詳述する。
【0034】
露光装置100では、投影ユニットPUの中心から+Y側に所定距離隔てた位置にウエハアライメント系ALG(図1では不図示、図3参照)が配置されている。ウエハアライメント系ALGとしては、例えば画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系が用いられる。ウエハアライメント系ALGは、主制御装置20により、ウエハアライメント(例えばエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA))の際に、後述する微動ステージWFS上の計測プレートに形成された第2基準マーク、又はウエハW上のアライメントマークの検出に用いられる。ウエハアライメント系ALGの撮像信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置20に供給される。主制御装置20は、ウエハアライメント系ALGの検出結果(撮像結果)と、検出時の微動ステージWFS(ウエハW)の位置情報とに基づいて、対象マークのアライメント時座標系におけるX,Y座標を算出する。
【0035】
この他、本実施形態における露光装置100には、投影ユニットPUの近傍に、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成の斜入射方式の多点焦点位置検出系(以下、多点AF系と略述する)AF(図1では不図示、図3参照)が設けられている。多点AF系AFの検出信号は、不図示のAF信号処理系を介して主制御装置20に供給される(図3参照)。主制御装置20は、多点AF系AFの検出信号に基づいて、多点AF系AFの複数の検出点それぞれにおけるウエハW表面のZ軸方向の位置情報(面位置情報)を検出し、その検出結果に基づいて走査露光中のウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行する。なお、ウエハアライメント検出系ALGの近傍に多点AF系を設けて、ウエハアライメント(EGA)時にウエハW表面の面位置情報(凹凸情報)を事前に取得し、露光時には、その面位置情報と、後述する微動ステージ位置計測系70の一部を構成するレーザ干渉計システム75(図3参照)の計測値とを用いて、ウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行することとしても良い。なお、レーザ干渉計システム75ではなく、微動ステージ位置計測系70を構成する後述のエンコーダシステム73の計測値を、フォーカス・レベリング制御で用いても良い。
【0036】
また、レチクルステージRSTの上方には、例えば米国特許第5,646,413号明細書などに詳細に開示されるように、CCD等の撮像素子を有し、露光波長の光(本実施形態では照明光IL)をアライメント用照明光とする画像処理方式の一対のレチクルアライメント系RA,RA(図1においてはレチクルアライメント系RA2は、レチクルアライメント系RAの紙面奥側に隠れている。)が配置されている。一対のレチクルアライメント系RA,RAは、投影光学系PLの直下に微動ステージWFS上の後述する計測プレートが位置する状態で、主制御装置20により、レチクルRに形成された一対のレチクルアライメントマーク(図示省略)の投影像と対応する計測プレート上の一対の第1基準マークとを投影光学系PLを介して検出することで、投影光学系PLによるレチクルRのパターンの投影領域の中心と計測プレート上の基準位置、すなわち一対の第1基準マークの中心との位置関係を検出するために用いられる。レチクルアライメント系RA,RAの検出信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置20に供給される(図3参照)。なお、レチクルアライメント系RA,RAは設けなくても良い。この場合、例えば米国特許出願公開第2002/0041377号などに開示されるように、微動ステージWFSに光透過部(受光部)が設けられる検出系を搭載して、レチクルアライメントマークの投影像を検出することが好ましい。
【0037】
図3には、露光装置100の制御系の主要な構成が示されている。制御系は、主制御装置20を中心として構成されている。主制御装置20は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、前述の局所液浸装置8、粗動ステージ駆動系51、微動ステージ駆動系52など、露光装置100の構成各部を統括制御する。
【0038】
ここで、ステージ装置50の構成等について詳述する。ベース盤12の内部には、図1に示されるように、XY二次元方向を行方向、列方向としてマトリックス状に配置された複数のコイル14を含む、コイルユニットが収容されている。
【0039】
コイルユニットに対応して、粗動ステージWCSの底面(後述する粗動スライダ部91の底面)には、図2(A)に示されるように、XY二次元方向を行方向、列方向としてマトリックス状に配置された複数の永久磁石91aから成る磁石ユニットが設けられている。磁石ユニットは、ベース盤12のコイルユニットと共に、例えば米国特許第5,196,745号明細書などに開示されるローレンツ電磁力駆動方式の平面モータから成る粗動ステージ駆動系51(図3参照)を構成している。コイルユニットを構成する各コイル14に供給される電流の大きさ及び方向は、主制御装置20によって制御される(図3参照)。粗動ステージWCSは、上記磁石ユニットが設けられた粗動スライダ部91の底面の周囲に固定された前述のエアベアリングによって、ベース盤12の上方に所定のクリアランス、例えば数μm程度のクリアランスを介して浮上支持され、粗動ステージ駆動系51を介して、X軸方向、Y軸方向及びθz方向に駆動される。なお、粗動ステージ駆動系51としては、ローレンツ電磁力駆動方式の平面モータに限らず、例えば可変磁気抵抗駆動方式の平面モータを用いることもできる。この他、粗動ステージ駆動系51を、磁気浮上型の平面モータによって構成しても良い。この場合、粗動スライダ部91の底面にエアベアリングを設けなくても良くなる。
【0040】
粗動ステージWCSは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、平面視(+Z方向から見て)でX軸方向を長手方向とする長方形の板状の粗動スライダ部91と、粗動スライダ部91の長手方向の一端部と他端部の上面にYZ平面に平行な状態でそれぞれ固定され、かつY軸方向を長手方向とする長方形板状の一対の側壁部92a,92bと、側壁部92a,92bそれぞれの上面に固定された一対の固定子部93a、93bと、を備えている。粗動ステージWCSは、全体として、上面のX軸方向中央部及びY軸方向の両側面が開口した高さの低い箱形の形状を有している。すなわち、粗動ステージWCSには、その内部にY軸方向に貫通した空間部が形成されている。一対の固定子部93a、93bそれぞれは、外形が板状の部材から成り、その内部に微動ステージWFSを駆動するための複数のコイルから成るコイルユニットCUa、CUbが収容されている。コイルユニットCUa、CUbを構成する各コイルに供給される電流の大きさ及び方向は、主制御装置20によって制御される。コイルユニットCUa、CUbの構成については、さらに後述する。
【0041】
一対の固定子部93a,93bそれぞれは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、Y軸方向を長手方向とする矩形板状の形状を有する。固定子部93aは、+X側の端部が側壁部92a上面に固定され、固定子部93bは、−X側の端部が側壁部92b上面に固定されている。
【0042】
微動ステージWFSは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、平面視でX軸方向を長手方向とする八角形板状の部材から成る本体部81と、本体部81の長手方向の一端部と他端部にそれぞれ固定された一対の可動子部82a、82bと、を備えている。
【0043】
本体部81は、その内部を後述するエンコーダシステムの計測ビーム(レーザ光)が進行可能とする必要があることから、光が透過可能な透明な素材で形成されている。また、本体部81は、その内部におけるレーザ光に対する空気揺らぎの影響を低減するため、中実に形成されている(内部に空間を有しない)。なお、透明な素材は、低熱膨張率であることが好ましく、本実施形態では一例として合成石英(ガラス)などが用いられる。なお、本体部81は、その全体が透明な素材で構成されていても良いが、エンコーダシステムの計測ビームが透過する部分のみが透明な素材で構成されていても良く、この計測ビームが透過する部分のみが中実に形成されていても良い。
【0044】
微動ステージWFSの本体部81(より正確には、後述するカバーガラス)の上面中央には、ウエハWを真空吸着等によって保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。本実施形態では、例えば環状の凸部(リム部)内に、ウエハWを支持する複数の支持部(ピン部材)が形成される、いわゆるピンチャック方式のウエハホルダが用いられ、一面(表面)がウエハ載置面となるウエハホルダの他面(裏面)側に後述するグレーティングRGなどが設けられる。なお、ウエハホルダは、微動ステージWFSと一体に形成されていても良いし、本体部81に対して、例えば静電チャック機構あるいはクランプ機構等を介して、又は接着等により固定されていても良い。
【0045】
さらに、本体部81の上面には、ウエハホルダ(ウエハWの載置領域)の外側に、図2(A)及び図2(B)に示されるように、ウエハW(ウエハホルダ)よりも一回り大きな円形の開口が中央に形成され、かつ本体部81に対応する八角形状の外形(輪郭)を有するプレート(撥液板)83が取り付けられている。プレート83の表面は、液体Lqに対して撥液化処理されている(撥液面が形成されている)。プレート83は、その表面の全部(あるいは一部)がウエハWの表面と同一面となるように本体部81の上面に固定されている。また、プレート83には、図2(B)に示されるように、+X端部かつ−Y側端部近傍に円形の切り欠きが形成され、この切り欠きの内部に、その表面がプレート83の表面と、すなわちウエハWの表面とほぼ同一面となる状態で計測プレート86が埋め込まれている。計測プレート86の表面には、前述した一対のレチクルアライメント検出系RA,RAそれぞれにより検出される一対の第1基準マークと、ウエハアライメント系ALGにより検出される第2基準マークとが少なくとも形成されている(第1及び第2基準マークはいずれも図示省略)。なお、プレート83を本体部81に取り付ける代わりに、例えばウエハホルダを微動ステージWFSと一体に形成し、微動ステージWFSの、ウエハホルダを囲む周囲領域(プレート83と同一の領域(計測プレート86の表面を含んでも良い)の上面に撥液化処理を施して、撥液面を形成しても良い。
【0046】
図2(A)に示されるように、本体部81の上面には、2次元グレーティング(以下、単にグレーティングと呼ぶ)RGが水平(ウエハW表面と平行)に配置されている。グレーティングRGは、透明な素材から成る本体部81の上面に、固定(あるいは形成)されている。グレーティングRGは、X軸方向を周期方向とする反射型の回折格子(X回折格子)と、Y軸方向を周期方向とする反射型回折格子(Y回折格子)と、を含む。本実施形態では、本体部81上で2次元グレーティングが固定あるいは形成される領域(以下、形成領域)は、一例として、ウエハWよりも一回り大きな円形となっている。
【0047】
グレーティングRGは、保護部材、例えばカバーガラス84によって覆われて、保護されている。本実施形態では、カバーガラス84の上面に、ウエハホルダを吸着保持する前述の静電チャック機構が設けられている。なお、本実施形態では、カバーガラス84は、本体部81の上面のほぼ全面を覆うように設けられているが、グレーティングRGを含む本体部81の上面の一部のみを覆うように設けても良い。また、保護部材(カバーガラス84)は、本体部81と同一の素材によって形成しても良いが、これに限らず、保護部材を、例えば金属、セラミックスで形成しても良い。また、グレーティングRGを保護するのに十分な厚みを要するため板状の保護部材が望ましいが、素材に応じて薄膜状の保護部材を用いても良い。
【0048】
なお、グレーティングRGの形成領域のうち、ウエハホルダの周囲にはみ出す領域に対応するカバーガラス84の一面には、グレーティングRGに照射されるエンコーダシステムの計測ビームがカバーガラス84を透過しないように、すなわち、ウエハホルダ裏面の領域の内外で計測ビームの強度が大きく変動しないように、例えばその形成領域を覆う反射部材(例えば薄膜など)を設けることが望ましい。
【0049】
この他、一面にグレーティングRGが固定又は形成される透明板の他面をウエハホルダの裏面に接触又は近接して配置し、かつその透明板の一面側に保護部材(カバーガラス84)を設ける、あるいは、保護部材(カバーガラス84)を設けずに、グレーティングRGが固定又は形成される透明板の一面をウエハホルダの裏面に接触又は近接して配置しても良い。特に前者では、透明板の代わりにセラミックスなどの不透明な部材にグレーティングRGを固定又は形成しても良いし、あるいは、ウエハホルダの裏面にグレーティングRGを固定又は形成しても良い。あるいは、従来の微動ステージにウエハホルダとグレーティングRGを保持するだけでも良い。また、ウエハホルダを、中実のガラス部材によって形成し、該ガラス部材の上面(ウエハ載置面)にグレーティングRGを配置しても良い。
【0050】
本体部81は、図2(A)からもわかるように、長手方向の一端部と他端部との下端部に外側に突出した張り出し部が形成された全体として八角形板状部材から成り、その底面の、グレーティングRGに対向する部分に凹部が形成されている。本体部81は、グレーティングRGが配置された中央の領域は、その厚さが実質的に均一な板状に形成されている。
【0051】
本体部81の+X側、−X側の張り出し部それぞれの上面には、断面凸形状のスペーサ85a、85bが、それぞれの凸部89a、89bを、外側に向けてY軸方向に延設されている。
【0052】
可動子部82aは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、Y軸方向寸法(長さ)及びX軸方向寸法(幅)が、共に固定子部93aよりも短い(半分程度の)2枚の平面視矩形状の板状部材82a、82aを含む。これら2枚の板状部材82a、82aは、本体部81の長手方向の+X側の端部に対し、前述したスペーサ85aの凸部89aを介して、Z軸方向(上下)に所定の距離だけ離間した状態でともにXY平面に平行に固定されている。この場合、板状部材82aは、スペーサ85aと本体部81の+X側の張り出し部とによって、その−X側端部が挟持されている。2枚の板状部材82a、82aの間には、粗動ステージWCSの固定子部93aの−X側の端部が非接触で挿入されている。板状部材82a、82aの内部には、後述する磁石ユニットMUa、MUaが、設けられている。
【0053】
可動子部82bは、スペーサ85bにZ軸方向(上下)に所定の間隔が維持された2枚の板状部材82b、82bを含み、可動子部82aと左右対称ではあるが同様に構成されている。2枚の板状部材82b、82bの間には、粗動ステージWCSの固定子部93bの+X側の端部が非接触で挿入されている。板状部材82b、82bの内部には、磁石ユニットMUa、MUaと同様に構成された磁石ユニットMUb、MUbが、設けられている。
【0054】
ここで、前述したように、粗動ステージWCSは、Y軸方向の両側面が開口しているので、微動ステージWFSを粗動ステージWCSに装着する際には、2枚の板状部材82a、82a、及び82b、82b間に固定子部93a、93bがそれぞれ位置するように、微動ステージのWFSのZ軸方向の位置決めを行い、この後に微動ステージWFSをY軸方向に移動(スライド)させれば良い。
【0055】
次に、微動ステージWFSを粗動ステージWCSに対して駆動するための微動ステージ駆動系52の構成について説明する。微動ステージ駆動系52は、前述した可動子部82aが有する一対の磁石ユニットMUa、MUaと、固定子部93aが有するコイルユニットCUaと、可動子部82bが有する一対の磁石ユニットMUb、MUbと、固定子部93bが有するコイルユニットCUbと、を含む。
【0056】
これをさらに詳述する。図4及び図5(A)並びに図5(B)からわかるように、固定子部93aの内部における−X側の端部には、複数(ここでは、12個)の平面視長方形状のYZコイル(以下、適宜「コイル」と略述する)55、57が、Y軸方向に等間隔でそれぞれ配置された2列のコイル列が、X軸方向に所定間隔を隔てて配置されている。YZコイル55は、上下方向(Z軸方向)に重ねて配置された平面視長方形状の上部巻線55aと、下部巻線55bと、を有する。また、固定子部93aの内部であって、上述した2列のコイル列の間には、Y軸方向を長手方向とする細長い平面視長方形状の一つのXコイル(以下、適宜「コイル」と略述する)56が、配置されている。この場合、2列のコイル列と、Xコイル56とは、X軸方向に関して等間隔で配置されている。2列のコイル列と、Xコイル56とを含んで、コイルユニットCUaが構成されている。
【0057】
なお、以下では、図4及び図5(A)並びに図5(B)を用いて、一対の固定子部93a、93bのうち、一方の固定子部93a、及びこの固定子部93aに支持される可動子部82aについて説明するが、他方(−X側)の固定子部93b及び可動子部82bは、これらと同様に構成され、同様に機能する。従って、コイルユニットCUb、磁石ユニットMUb,MUbは、コイルユニットCUa、磁石ユニットMUa,MUaと同様に構成されている。
【0058】
微動ステージWFSの可動子部82aの一部を構成する+Z側の板状部材82aの内部には、図4及び図5(A)並びに図5(B)を参照するとわかるように、X軸方向を長手方向とする平面視長方形の複数(ここでは10個)の永久磁石65a、67aが、Y軸方向に等間隔で配置された2列の磁石列が、X軸方向に所定間隔を隔てて配置されている。2列の磁石列それぞれは、コイル55、57に対向して配置されている。
【0059】
複数の永久磁石65aは、図5(B)に示されるように、上面側(+Z側)がN極で下面側(−Z側)がS極である永久磁石と、上面側(+Z側)がS極で下面側(−Z側)がN極である永久磁石とが、Y軸方向に交互に配列されている。複数の永久磁石67aから成る磁石列は、複数の永久磁石65aから成る磁石列と同様に構成されている。
【0060】
また、板状部材82aの内部であって、上述の2列の磁石列の間には、X軸方向に離間して配置されたY軸方向を長手方向とする一対(2つ)の永久磁石66a、66aが、コイル56に対向して配置されている。図5(A)に示されるように、永久磁石66aは、上面側(+Z側)がN極で下面側(−Z側)がS極となっており、永久磁石66aは、上面側(+Z側)がS極で下面側(−Z側)がN極となっている。
【0061】
上述した複数の永久磁石65a、67a及び66a、66aによって、磁石ユニットMUaが構成されている。
【0062】
−Z側の板状部材82aの内部にも、図5(A)に示されるように、上述した+Z側の板状部材82aと同様の配置で、永久磁石65b、66b、66b、67bが配置されている。これらの永久磁石65b、66b、66b、67bによって、磁石ユニットMUaが構成されている。なお、−Z側の板状部材82a内の永久磁石65b、66b、66b、67bは、図4では、永久磁石65a、66a、66a、67aに対して、紙面奥側に重なって配置されている。
【0063】
ここで、微動ステージ駆動系52では、図5(B)に示されるように、Y軸方向に隣接して配置された複数の永久磁石(図5(B)において、Y軸方向に沿って順に永久磁石65a〜65aとする)は、隣接する2つの永久磁石65a及び65aそれぞれが、YZコイル55の巻線部に対向したとき、これらに隣接する永久磁石65aが、上述のYZコイル55に隣接するYZコイル55の巻線部に対向しないように(コイル中央の中空部、又はコイルが巻き付けられたコア、例えば鉄芯に対向するように)、複数の永久磁石65及び複数のYZコイル55のY軸方向に関する位置関係(それぞれの間隔)が設定されている。なお、図5(B)に示されるように、永久磁石65a及び65aそれぞれは、YZコイル55に隣接するYZコイル55の巻線部に対向する。永久磁石65b、67a、67bのY軸方向に関する間隔も、同様になっている(図5(B)参照)。
【0064】
従って、微動ステージ駆動系52では、一例として図5(B)に示される状態で、コイル55,55の上部巻線及び下部巻線それぞれに、+Z方向から見て右回りの電流が供給されると、コイル55,55には−Y方向の力(ローレンツ力)が作用し、その反作用として、永久磁石65a、65bそれぞれには、+Y方向の力が作用する。これらの力の作用により、微動ステージWFSは、粗動ステージWCSに対して+Y方向に移動する。上記の場合とは逆に、コイル55,55に、それぞれ+Z方向から見て左回りの電流が供給されると、微動ステージWFSは、粗動ステージWCSに対して−Y方向に移動する。
【0065】
コイル57に電流を供給することにより、永久磁石67(67a,67b)との間で電磁相互作用が行われ、微動ステージWFSをY軸方向に駆動することができる。主制御装置20は、各コイルに供給する電流を制御することによって、微動ステージWFSのY軸方向の位置を制御する。
【0066】
また、微動ステージ駆動系52では、一例として図5(B)に示される状態で、コイル55の上部巻線に+Z方向から見て左回りの電流、下部巻線に+Z方向から見て右回りの電流がそれぞれ供給されると、コイル55と永久磁石65aとの間に吸引力、コイル55と永久磁石65Bとの間に反発力(斥力)がそれぞれ発生し、微動ステージWFSは、これらの吸引力及び反発力によって粗動ステージWCSに対して上方(+Z方向)、すなわち浮上する方向に移動する。主制御装置20は、各コイルに供給する電流を制御することによって、浮上状態の微動ステージWFSのZ方向の位置を制御する。
【0067】
また、図5(A)に示される状態で、コイル56に+Z方向から見て右回りの電流が供給されると、コイル56に+X方向の力(ローレンツ力)が作用し、その反作用として永久磁石66a、66a、及び66b、66bそれぞれには、−X方向の力が作用し、微動ステージWFSは、粗動ステージWCSに対して−X方向に移動する。また、上記の場合とは逆に、コイル56に+Z方向から見て左回りの電流が供給されると、永久磁石66a、66a、及び66b、66bには、+X方向の力が作用し、微動ステージWFSは、粗動ステージWCSに対して+X方向に移動する。主制御装置20は、各コイルに供給する電流を制御することによって、微動ステージWFSのX軸方向の位置を制御する。
【0068】
上述の説明から明らかなように、本実施形態では、主制御装置20は、Y軸方向に配列された複数のYZコイル55、57に対して、一つおきに電流を供給することによって、微動ステージWFSをY軸方向に駆動する。また、これと併せて、主制御装置20は、YZコイル55、57のうち、微動ステージWFSのY軸方向への駆動に使用していないコイルに電流を供給することによって、Y軸方向への駆動力とは別に、Z軸方向への駆動力を発生させ、微動ステージWFSを粗動ステージWCSから浮上させる。そして、主制御装置20は、微動ステージWFSのY軸方向の位置に応じて、電流供給対象のコイルを順次切り替えることによって、微動ステージWFSの粗動ステージWCSに対する浮上状態、すなわち非接触状態を維持しつつ、微動ステージWFSをY軸方向に駆動する。また、主制御装置20は、微動ステージWFSを粗動ステージWCSから浮上させた状態で、Y軸方向と併せて独立にX軸方向にも駆動可能である。
【0069】
また、主制御装置20は、例えば図6(A)に示されるように、微動ステージWFSの+X側の可動子部82aと−X側の可動子部82bとに、互いに異なる大きさのY軸方向の駆動力(推力)を作用させることによって(図6(A)の黒塗り矢印参照)、微動ステージWFSをZ軸回りに回転(θz回転)させることができる(図6(A)の白抜き矢印参照)。
【0070】
また、主制御装置20は、図6(B)に示されるように、微動ステージWFSの+X側の可動子部82aと−X側の可動子部82bとに、互いに異なる浮上力(図6(B)の黒塗り矢印参照)を作用させることによって、微動ステージWFSをY軸回りに回転(θy駆動)させること(図6(B)の白抜き矢印参照)ができる。
【0071】
さらに、主制御装置20は、例えば図6(C)に示されるように、微動ステージWFSの可動子部82a、82bそれぞれにおいて、Y軸方向の+側と−側とに、互いに異なる浮上力(図6(C)の黒塗り矢印参照)を作用させることによって、微動ステージWFSをX軸回りに回転(θx駆動)させること(図6(C)の白塗抜き矢印参照)ができる。
【0072】
以上の説明からわかるように、本実施形態では、微動ステージ駆動系52により、微動ステージWFSを、粗動ステージWCSに対して非接触状態で浮上支持するとともに、粗動ステージWCSに対して、非接触で6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)へ駆動することができるようになっている。
【0073】
また、本実施形態では、主制御装置20は、微動ステージWFSに浮上力を作用させる際、固定子部93a内に配置された2列のコイル55、57(図4参照)に互いに反対方向の電流を供給することによって、例えば図7に示されるように、可動子部82aに対して、浮上力(図7の黒塗り矢印参照)と同時にY軸回りの回転力(図7の白抜き矢印参照)を作用させることができる。また、主制御装置20は、一対の可動子部82a、82bそれぞれに、互いに反対の方向のY軸回りの回転力を作用させることによって、微動ステージWFSの中央部を+Z方向又は−Z方向に撓ませることができる(図7のハッチング付き矢印参照)。従って、図7に示されるように、微動ステージWFSの中央部を+Z方向に撓ませることによって、ウエハW及び本体部81の自重に起因する微動ステージWFS(本体部81)のX軸方向の中間部分の撓みを打ち消して、ウエハW表面のXY平面(水平面)に対する平行度を確保できる。これにより、ウエハWが大径化して微動ステージWFSが大型化した時などに、特に効果を発揮する。
【0074】
また、ウエハWが自重等により変形すると、照明光ILの照射領域(露光領域IA)内において、微動ステージWFS上に載置されたウエハWの表面が、投影光学系PLの焦点深度の範囲内に入らなくなるおそれもある。そこで、主制御装置20が、上述した微動ステージWFSのX軸方向に関する中央部を+Z方向に撓ませる場合と同様に、一対の可動子部82a、82bそれぞれに、互いに反対の方向のY軸回りの回転力を作用させることによって、ウエハWがほぼ平坦になるように変形され、露光領域IA内でウエハWの表面が投影光学系PLの焦点深度の範囲内に入るようにすることもできる。
【0075】
なお、自重撓み補正及び/又はフォーカス・レベリング制御のためだけでなく、ウエハのショット領域内の所定点が露光領域IAを横切る間に、焦点深度の範囲内でその所定点のZ軸方向の位置を変化させて実質的に焦点深度を増大させる超解像技術を採用する場合にも、微動ステージWFS(及びこれに保持されたウエハW)をY軸に垂直な面(XZ面)内で凹形状又は凸形状に変形させる手法を適用することができる。
【0076】
本実施形態の露光装置100では、ウエハWに対するステップ・アンド・スキャン方式の露光動作時には、微動ステージWFSのXY平面内の位置情報(θz方向の位置情報を含む)は、主制御装置20により、後述する微動ステージ位置計測系70のエンコーダシステム73(図3参照)を用いて計測される。微動ステージWFSの位置情報は、主制御装置20に送られ、主制御装置20は、この位置情報に基づいて微動ステージWFSの位置を制御する。
【0077】
これに対し、ウエハステージWSTが微動ステージ位置計測系70の計測領域外に位置する際には、ウエハステージWSTの位置情報は、主制御装置20により、ウエハステージ位置計測系16(図3参照)を用いて計測される。ウエハステージ位置計測系16は、図1に示されるように、粗動ステージWCS側面に鏡面加工により形成された反射面に測長ビームを照射してウエハステージWSTのXY平面内の位置情報を計測するレーザ干渉計を含んでいる。なお、図1では図示が省略されているが、実際には、粗動ステージWCSには、Y軸に垂直なY反射面とX軸に垂直なX反射面とが形成され、これに対応して、レーザ干渉計もX反射面、Y反射面にそれぞれ測長ビームを照射するX干渉計、Y干渉計とが設けられている。なお、ウエハステージ位置計測系16では、例えばY干渉計は複数の測長軸を有し、各測長軸の出力に基づいて、ウエハステージWSTのθz方向の位置情報(回転情報)をも計測できる。なお、ウエハステージWSTのXY平面内での位置情報は、上述のウエハステージ位置計測系16に代えて、その他の計測装置、例えばエンコーダシステムによって計測しても良い。この場合、例えばベース盤12の上面に2次元スケールを配置し、粗動ステージWCSの底面にエンコーダヘッドを設けることができる。
【0078】
次に、微動ステージWFSのXY平面内の位置情報の計測に用いられるエンコーダシステム73と、微動ステージWFSのZ、θx、及びθy方向の位置情報の計測に用いられるレーザ干渉計システム75とを含む、微動ステージ位置計測系70(図3参照)の構成について説明する。微動ステージ位置計測系70は、図1に示されるように、ウエハステージWSTが投影光学系PLの下方に配置された状態で、粗動ステージの内部に設けられた空間部内に挿入される計測部材(計測アーム)71を備えている。計測アーム71は、露光装置100のメインフレームBDに支持部72を介して片持ち支持(一端部近傍が支持)されている)。なお、計測部材は、ウエハステージの移動の妨げにならない構成を採用する場合には、片持ち支持に限らず、その長手方向の両端部で支持されても良い。
【0079】
計測アーム71は、Y軸方向を長手方向とする、幅方向(X軸方向)よりも高さ方向(Z軸方向)の寸法が大きい縦長の長方形断面を有する四角柱状(すなわち直方体状)の部材であり、光を透過する同一の素材、例えばガラス部材が複数貼り合わされて形成されている。計測アーム71は、図11に示されるように、−Y側端部に位置する直角プリズム形状の第1部材と、該第1部材とともに、全体として四角柱状(すなわち直方体状)の部材を構成する第2部材とを備えている。計測アーム71は、後述するエンコーダヘッド(光学系)が収容される部分を除き、中実に形成されている。第1部材と第2部材との境界面(すなわち、第1部材の斜面)には、図11に示されるように、その外周部近傍を除き、反射膜が成膜され、反射面RP1が形成されるとともに、反射面RP1の外周部のうち、少なくとも上端部及び下端部にはブリュースター分離膜(以下、分離膜と略述する)BMFが形成されている。すなわち、第1部材は、一部に反射面を有する偏向ビームスプリッタを構成する。以下では、第1部材を、第1部材PBSと呼ぶ。第1部材PBSの−Z側の面には、全面にわたって反射膜が成膜され、反射面RP2が形成されている。
【0080】
また、計測アームの+Y側の端面には、全面にわたって反射膜が成膜され、反射面RP3が形成されている。反射面RP3の使用方法については、後述する。
【0081】
計測アーム71は、前述したようにウエハステージWSTが投影光学系PLの下方に配置された状態では、先端部が粗動ステージWCSの空間部内に挿入され、図1に示されるように、その上面が微動ステージWFSの下面(より正確には、本体部81(図1では不図示、図2(A)等参照)の下面)に対向している。計測アーム71の上面は、微動ステージWFSの下面との間に所定のクリアランス、例えば数mm程度のクリアランスが形成された状態で、微動ステージWFSの下面とほぼ平行に配置される。なお、計測アーム71の上面と微動ステージWFSの下面との間のクリアランスは、数mm以上でも以下でも良い。
【0082】
微動ステージ位置計測系70は、図3に示されるように、微動ステージWFSのX軸方向、Y軸方向、及びθz方向の位置を計測するエンコーダシステム73と、微動ステージWFSのZ軸方向、θx方向及びθy方向の位置を計測するレーザ干渉計システム75とを備えている。エンコーダシステム73は、微動ステージWFSのX軸方向の位置を計測するXリニアエンコーダ73x、微動ステージWFSのY軸方向の位置を計測する一対のYリニアエンコーダ73ya、73yb(以下、適宜これらを併せてYリニアエンコーダ73yとも呼ぶ)を含む。エンコーダシステム73では、例えば米国特許第7,238,931号明細書、及び国際公開第2007/083758号(対応する米国特許出願公開第2007/288121号明細書)などに開示されるエンコーダヘッド(以下、適宜ヘッドと略述する)と同様の構成の回折干渉型のヘッドが用いられている。ただし、本実施形態では、ヘッドは、後述するように光源及び受光系(光検出器を含む)が、計測アーム71の外部に配置され、光学系のみが計測アーム71の内部に、すなわちグレーティングRGに対向して配置されている。以下、特に必要な場合を除いて、計測アーム71の内部に配置された光学系をヘッドと呼ぶ。
【0083】
図8(A)には、計測アーム71の先端部が斜視図にて示されており、図8(B)には、計測アーム71の先端部の上面を+Z方向から見た平面図が示されている。エンコーダシステム73は、微動ステージWFSのX軸方向の位置を1つのXヘッド77x(図9(A)及び図9(B)参照)で計測し、Y軸方向の位置を一対のYヘッド77ya、77yb(図9(B)参照)で計測する。すなわち、グレーティングRGのX回折格子を用いて微動ステージWFSのX軸方向の位置を計測するXヘッド77xによって、前述のXリニアエンコーダ73xが構成され、グレーティングRGのY回折格子を用いて微動ステージWFSのY軸方向の位置を計測する一対のYヘッド77ya、77ybによって、一対のYリニアエンコーダ73ya、73ybが構成されている。
【0084】
図8(A)及び図8(B)に示されるように、Xヘッド77xは、計測アーム71のセンターラインCLから等距離にある、X軸に平行な直線LX上の2点(図8(B)の白丸参照)から、グレーティングRG上に計測ビームLBx、LBx(図8(A)中に実線で示されている)を照射する。計測ビームLBx、LBxは、グレーティングRG上の同一の照射点に照射される(図9(A)参照)。計測ビームLBx、LBxの照射点、すなわちXヘッド77xの検出点(図8(B)中の符号DP参照)は、ウエハWに照射される照明光ILの照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致している(図1参照)。なお、計測ビームLBx、LBxは、実際には、本体部81と空気層との境界面などで屈折するが、図9(A)等では、簡略化して図示されている。
【0085】
図9(B)に示されるように、一対のYヘッド77ya、77ybそれぞれは、計測アーム71のセンターラインCLの+X側、−X側に配置されている。Yヘッド77yaは、図8(A)及び図8(B)に示されるように、Y軸に平行な直線LYa上に配置され、直線LXからの距離が等しい2点(図8(B)の白丸参照)から、グレーティングRG上の共通の照射点に図8(A)においてそれぞれ破線で示される計測ビームLBya,LByaを照射する。計測ビームLBya,LByaの照射点、すなわちYヘッド77yaの検出点が、図8(B)に符号DPyaで示されている。
【0086】
Yヘッド77ybは、Yヘッド77yaと同様に、計測アーム71のセンターラインCLから直線LYaと同一距離離れたY軸に平行な直線LYb上に配置され、直線LXからの距離が等しい2点(図8(B)の白丸参照)から、計測ビームLByb,LBybを、グレーティングRG上の共通の照射点DPybに照射する。図8(B)に示されるように、計測ビームLBya,LBya及び計測ビームLByb,LBybそれぞれの検出点DPya、DPybは、X軸に平行な直線LX上に配置される。ここで、主制御装置20では、微動ステージWFSのY軸方向の位置は、2つのYヘッド77ya、77ybの計測値の平均に基づいて決定する。従って、本実施形態では、微動ステージWFSのY軸方向の位置は、検出点DPya、DPybの中点を実質的な計測点として計測される。そして、Yヘッド77ya、77ybによる検出点DPya、DPybの中点は、計測ビームLBx,LBXのグレーティングRG上の照射点DPと一致する。すなわち、本実施形態では、微動ステージWFSのX軸方向及びY軸方向の位置情報の計測に関して、共通の検出点を有し、この検出点は、ウエハWに照射される照明光ILの照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致する。従って、本実施形態では、主制御装置20は、エンコーダシステム73を用いることで、微動ステージWFS上に載置されたウエハWの所定のショット領域にレチクルRのパターンを転写する際、微動ステージWFSのXY平面内の位置情報の計測を、常に露光位置の直下(裏側)で行うことができる。また、主制御装置20は、微動ステージWFSのY軸方向の位置をそれぞれ計測する、X軸方向に離間して配置された一対のYヘッド77ya、77ybの計測値の差に基づいて、微動ステージWFSのθz方向の回転量を計測する。
【0087】
ここで、エンコーダシステム73を構成する3つのヘッド77x、77ya、77ybの構成について説明する。図9(A)には、3つのヘッド77x、77ya、77ybを代表して、Xヘッド77xの概略構成が示されている。また、図9(B)には、Xヘッド77x、Yヘッド77ya、77ybそれぞれの計測アーム71内での配置が示されている。
【0088】
図9(A)に示されるように、Xヘッド77xは、その分離面がYZ平面と平行である偏光ビームスプリッタPBS、一対の反射ミラーR1a,R1b、レンズL2a,L2b、四分の一波長板(以下、λ/4板と表記する)WP1a,WP1b、反射ミラーR2a,R2b、及び反射ミラーR3a,R3b等を有し、これらの光学素子が所定の位置関係で配置されている。Yヘッド77ya、77ybも同様の構成の光学系を有している。Xヘッド77x、Yヘッド77ya、77ybそれぞれは、図9(A)及び図9(B)に示されるように、ユニット化されて計測アーム71の内部に固定されている。
【0089】
図9(B)に示されるように、Xヘッド77x(Xリニアエンコーダ73x)では、計測アーム71の−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられた光源LDxから−Z方向にレーザビームLBxが射出され、XY平面に対して45°の角度で斜設された前述の反射面RP1を介してY軸方向に平行にその光路が折り曲げられる。このレーザビームLBxは、計測アーム71の内部の中実な部分を、計測アーム71の長手方向(Y軸方向)に平行に進行し、図9(A)に示される反射ミラーR3aに達する。そして、レーザビームLBxは、反射ミラーR3aによりその光路が折り曲げられて、偏光ビームスプリッタPBSに入射する。レーザビームLBxは、偏光ビームスプリッタPBSで偏光分離されて2つの計測ビームLBx1,LBx2となる。偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLBx1は反射ミラーR1aを介して微動ステージWFSに形成されたグレーティングRGに到達し、偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLBx2は反射ミラーR1bを介してグレーティングRGに到達する。なお、ここで「偏光分離」とは、入射ビームをP偏光成分とS偏光成分に分離することを意味する。
【0090】
計測ビームLBx1,LBx2の照射によってグレーティングRGから発生する所定次数の回折ビーム、例えば1次回折ビームそれぞれは、レンズL2a,L2bを介して、λ/4板WP1a,WP1bにより円偏光に変換された後、反射ミラーR2a,R2bにより反射されて再度λ/4板WP1a,WP1bを通り、往路と同じ光路を逆方向に辿って偏光ビームスプリッタPBSに達する。
【0091】
偏光ビームスプリッタPBSに達した2つの1次回折ビームは、各々その偏光方向が元の方向に対して90度回転している。このため、先に偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLBx1の1次回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSで反射される。先に偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLBx2の1次回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSを透過する。それにより、計測ビームLBx1,LBx2それぞれの1次回折ビームは同軸上に合成ビームLBx12として合成される。合成ビームLBx12は、反射ミラーR3bでその光路が、Y軸に平行に折り曲げられて、計測アーム71の内部をY軸に平行に進行し、前述の反射面RP1を介して、図9(B)に示される、計測アーム71の外部に配置されたX受光系74xに送光される。
【0092】
X受光系74xでは、合成ビームLBx12として合成された計測ビームLBx1,LBx2の1次回折ビームが不図示の偏光子(検光子)によって偏光方向が揃えられ、相互に干渉して干渉光となり、この干渉光が不図示の光検出器によって検出され、干渉光の強度に応じた電気信号に変換される。ここで、微動ステージWFSが計測方向(この場合、X軸方向)に移動すると、2つのビーム間の位相差が変化して干渉光の強度が変化する。この干渉光の強度の変化は、微動ステージWFSのX軸方向に関する位置情報として主制御装置20(図3参照)に供給される。
【0093】
図9(B)に示されるように、Yヘッド77ya、77ybには、それぞれの光源LDya、LDybから射出され、前述の反射面RP1で光路が90°折り曲げられたY軸に平行なレーザビームLBya、LBybが入射し、前述と同様にして、Yヘッド77ya、77ybから、偏向ビームスプリッタで偏向分離された計測ビームそれぞれのグレーティングRG(のY回折格子)による1次回折ビームの合成ビームLBya12、LByb12が、それぞれ出力され、Y受光系74ya、74ybに戻される。ここで、光源LDyaと受光系74ya、光源LDybと受光系74ybとは、図9(B)に示されるようにY軸方向に並んでそれぞれ配置されている。従って、光源LDya、LDybから射出されるレーザビームLBya、LBybとY受光系74ya、74ybに戻される合成ビームLBya12、LByb12とは、図9(B)における紙面垂直方向に重なる光路をそれぞれ通る。また、上述のように、光源から射出されるレーザビームLBya、LBybとY受光系74ya、74ybに戻される合成ビームLBya12、LByb12とが、Z軸方向に離れた平行な光路を通るように、Yヘッド77ya、77ybでは、それぞれの内部で光路が適宜折り曲げられている(図示省略)。
【0094】
レーザ干渉計システム75は、図8(A)に示されるように、3本の測長ビームLBz、LBz、LBzを計測アーム71の先端部から、微動ステージWFSの下面に入射させる。レーザ干渉計システム75は、これら3本の測長ビームLBz、LBz、LBzそれぞれを照射する3つのレーザ干渉計75a〜75c(図3参照)を備えている。
【0095】
レーザ干渉計システム75では、3本の測長ビームLBz、LBz、LBzは、図8(A)及び図8(B)に示されるように、計測アーム71の上面上の同一直線上に無い3点それぞれから、Z軸に平行に射出される。ここで、3本の測長ビームLBz、LBz、LBzは、図8(B)に示されるように、その重心が、照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致する、二等辺三角形(又は正三角形)の各頂点の位置から、それぞれ照射される。この場合、測長ビームLBzの射出点(照射点)はセンターラインCL上に位置し、残りの測長ビームLBz、LBzの射出点(照射点)は、センターラインCLから等距離にある。本実施形態では、主制御装置20は、レーザ干渉計システム75を用いて、微動ステージWFSのZ軸方向の位置、θz方向及びθy方向の回転量の情報を計測する。なお、レーザ干渉計75a〜75cは、計測アーム71の−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられている。レーザ干渉計75a〜75cから−Z方向に射出された測長ビームLBz、LBz、LBzは、前述の反射面RP1を介して計測アーム71内をY軸方向に沿って進行し、その光路がそれぞれ折り曲げられて、上述の3点から射出される。
【0096】
本実施形態では、微動ステージWFSの下面に、エンコーダシステム73からの各計測ビームを透過させ、レーザ干渉計システム75からの各測長ビームの透過を阻止する、波長選択フィルタ(図示省略)が設けられている。この場合、波長選択フィルタは、レーザ干渉計システム75からの各測長ビームの反射面をも兼ねる。波長選択フィルタは、波長選択性を有する薄膜などが用いられ、本実施形態では、例えば透明板(本体部81)の一面に設けられ、グレーティングRGはその一面に対してウエハホルダ側に配置される。
【0097】
以上の説明からわかるように、主制御装置20は、微動ステージ位置計測系70のエンコーダシステム73及びレーザ干渉計システム75を用いることで、微動ステージWFSの6自由度方向の位置を計測することができる。この場合、エンコーダシステム73では、計測ビームの空気中での光路長が極短くかつほぼ等しいため、空気揺らぎの影響が殆ど無視できる。従って、エンコーダシステム73により、微動ステージWFSのXY平面内の位置情報(θz方向も含む)を高精度に計測できる。また、エンコーダシステム73によるX軸方向、及びY軸方向の実質的なグレーティング上の検出点、及びレーザ干渉計システム75によるZ軸方向の微動ステージWFS下面上の検出点は、それぞれ露光領域IAの中心(露光位置)に一致するので、いわゆるアッベ誤差の発生が実質的に無視できる程度に抑制される。従って、主制御装置20は、微動ステージ位置計測系70を用いることで、アッベ誤差なく、微動ステージWFSのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置を高精度に計測できる。
【0098】
ところで、本実施形態の露光装置100では、メインフレームBDやベース盤12は、不図示の防振機構を介して設置されているが、例えばメインフレームBDに固定された各種の可動装置から発生する振動が露光時に支持部72を介して計測アーム71に伝わる可能性がある。この場合、計測アーム71は、片持ち支持構造のカンチレバーとなっているため、上記の振動によって撓みなどの変形を生じ、エンコーダシステム73を構成するヘッド77x、77ya、77ybの光軸がZ軸に対して傾き、例えば国際公開第2008/026732号(対応米国特許出願公開第2008/0106722号明細書)などにそのメカニズムが開示されているように、微動ステージWFSの計測に計測誤差が生じる可能性がある。
【0099】
図10(A)及び図10(B)には、振動に起因して撓んだ計測アーム71の最も簡単な一例である、計測アーム71の先端部がZ軸方向(上下方向)に上下動(縦振動)した場合が示されている。上記の振動により、計測アーム71には、図10(A)に示される撓みと図10(B)に示される撓みとが周期的に繰り返し生じるが、これにより、エンコーダシステム73の各ヘッド77x、77ya、77ybの光軸が傾き、Xヘッド77xの検出点DP、Yヘッド77ya、77ybの実質的な検出点が、露光位置に対して+Y方向及び−Y方向に周期的に移動する。また、各ヘッド77x、77ya、77ybとグレーティングRGとのZ軸方向の距離も周期的に変化する。
【0100】
ここで、上述した国際公開第2008/026732号などに開示されているように、各ヘッド77x、77ya、77ybの光軸のグレーティングRGに対する傾きは、エンコーダシステム73の計測誤差となり、さらに光軸の傾きが同じであっても、各ヘッド77x、77ya、77ybとグレーティングRGとの距離が異なれば、この距離に応じて計測誤差も変化する。
【0101】
かかる不都合を回避するために、本実施形態の露光装置100では、主制御装置20が、計測アーム71の形状変化、具体的には、計測アーム71の先端面(自由端側の端面)の面位置の変化、すなわちエンコーダシステム73の各ヘッド77x、77ya、77ybの光軸のグレーティングRGに対する傾きを常時計測し、上述した国際公開第2008/026732号などに開示されているのと同様の手法で予め作成したエンコーダシステム73の補正情報を用いて、エンコーダシステム73の計測誤差を補正する。ここで、以下に説明するエンコーダシステム73の計測誤差の補正では、計測アーム71のθy方向の振動に起因する計測誤差は、考慮しないものとし、上述した縦振動発生時の計測誤差(θx方向の振動に起因する計測誤差)、及び計測アーム71先端がθz方向に振動(横振動)した場合の計測誤差、並びに上記縦振動と横振動とが複合的に発生した場合の計測誤差のみ、補正を行うものとする。なお、これに限らず、計測アーム71のθy方向の変位量を計測し、θx方向、θz方向の変位に起因する計測誤差と併せて、θy方向の変位に起因する計測誤差を補正しても良い。
【0102】
本実施形態の露光装置100では、主制御装置20は、計測アーム71の変動情報、例えば形状変化を、計測アーム71の先端面の位置(面位置)を計測することによって求める。図11には、計測アームの先端面の面位置を計測するための計測システム30(図3参照)が取り出して示されている。ここでは、計測システム30が、計測アーム71の形状変化を計測する場合について説明するが、これに限らず、計測システム30は、エンコーダの計測誤差の要因となる計測アーム71の変動情報、例えば形状変化の他、変位、傾斜なども含む計測アームの変動を計測するものであれば、如何なる構成のものでも良い。
【0103】
計測システム30は、4つのレーザ干渉計30a〜30dを有しているが、このうちレーザ干渉計30b、30dは、レーザ干渉計30a,30cの紙面奥側に隠れている。
【0104】
レーザ干渉計30a〜30dそれぞれは、図11に示されるように、支持部72の−Y側の面の下端部近傍にそれぞれ固定された一対の支持部材31に2つずつ支持されている。すなわち、図11における紙面手前側の支持部材31には、レーザ干渉計30a、30cが、Y軸方向に所定間隔を隔てて支持され、図11における紙面奥側の支持部材31には、レーザ干渉計30b、30dが、Y軸方向に所定間隔を隔てて支持されている。レーザ干渉計30a〜30dは、それぞれ−Z方向にレーザ光を射出する。
【0105】
例えば、レーザ干渉計30aから射出されたレーザ光Laは、第1部材PBSの上端部に位置する分離膜BMFで、参照ビームIRaと測長ビームIBaとに偏向分離される。参照ビームIRaは、反射面RP2で反射されて分離膜BMFを介してレーザ干渉計30aに戻る。一方、測長ビームIBaは、Y軸に平行な光路に沿って、計測アーム71の+X側端部かつ+Z側端部近傍の中実な部分を透過し、計測アーム71の+Y側端面に形成された反射面RP3に至る。そして、測長ビームIBaは、反射面RP3で反射され、元の光路を逆向きに辿って、参照ビームIRaと同軸に合成されてレーザ干渉計30aに戻る。レーザ干渉計30aの内部では、偏向子により参照ビームIRaと測長ビームIBaとの偏向方向が揃えられ、相互に干渉して干渉光となり、この干渉光が不図示の光検出器によって検出され、干渉光の強度に応じた電気信号に変換される。
【0106】
レーザ干渉計30cから射出されたレーザ光Lcは、第1部材PBSの下端部に位置する分離膜BMFで、参照ビームIRcと測長ビームIBcとに偏向分離される。参照ビームIRaは、反射面RP2で反射されて分離膜BMFを介してレーザ干渉計30cに戻る。一方、測長ビームIBcは、Y軸に平行な光路に沿って、計測アーム71の+X側端部かつ−Z側端部近傍の中実な部分を透過し、反射面RP3に至る。そして、測長ビームIBcは、反射面RP3で反射され、元の光路を逆向きに辿って、参照ビームIRcと同軸に合成されてレーザ干渉計30cに戻る。レーザ干渉計30cの内部では、偏向子により参照ビームIRcと測長ビームIBcとの偏向方向が揃えられ、相互に干渉して干渉光となり、この干渉光が不図示の光検出器によって検出され、干渉光の強度に応じた電気信号に変換される。
【0107】
残りのレーザ干渉計30b,30dでは、レーザ干渉計30a、30cと同様の光路をそれぞれの測長ビームと参照ビームとが辿り、干渉光の強度に応じた電気信号がそれぞれの光検出器から出力される。この場合、レーザ干渉計30b,30dの測長ビームIBb,IBdの光路は、アーム部材のXZ断面の中心を通るYZ平面に関して、測長ビームIBa,IBcの光路と左右対称である。すなわち、レーザ干渉計30a〜30dそれぞれの測長ビームIBa〜IBdは、計測アーム71の中実な部分を透過し、計測アーム71の先端面の4隅部に対応する部分で反射され、同じ光路を辿ってレーザ干渉計30a〜30dに戻る。
【0108】
レーザ干渉計30a〜30dは、それぞれ測長ビームIBa〜IBdの反射光と参照ビームの反射光との干渉光の強度に応じた情報を主制御装置20に送る。主制御装置20は、この情報に基づいて、反射面RP2を基準とする計測アーム71の先端面(反射面RP3)上の4隅部それぞれにおける、測長ビームIBa〜IBdの照射点の位置(すなわち、測長ビームIBa〜IBdの光路長に対応)を求める。なお、レーザ干渉計30a〜30dとして、例えば参照鏡を内蔵するタイプを用いても良い。あるいは1つ又は2つの光源から出力されるレーザビームを、分岐して、測長ビームIBa〜IBdを生成し、各測長ビームと参照ビームとの干渉光の強度に応じた干渉計システムを、レーザ干渉計30a〜30dの代わりに用いても良い。この場合、同一のレーザビームを複数回分岐して測長ビームと参照ビームとをそれぞれ生成し、同一のレーザビームから生成された参照ビームを基準として、複数の測超ビームの光路長を計測することとしても良い。
【0109】
主制御装置20は、レーザ干渉計30a〜30dの出力の変化、すなわち測長ビームIBa〜IBdそれぞれの光路長の変化に基づいて、計測アーム71の先端面の面位置情報(傾き角)を求める。具体的に説明すると、例えば図10(A)に示される変形が計測アーム71に生じた場合には、計測アーム71の固定端側の4隅部のうち、+Z側に配置された2つのレーザ干渉計30a、30bの測長ビームIBa、IBbの光路長が長くなり、−Z側に配置されたレーザ干渉計30c、30dの測長ビームIBc、IBdの光路長が短くなる。また、図10(B)に示される変形が計測アーム71に生じた場合には、反対に測長ビームIBa、IBbの光路長が短くなり、測長ビームIBc、IBdの光路長が長くなる。主制御装置20は、このような計測アーム71の先端面の面位置情報に基づいて、ヘッド77x、77ya、77ybの光軸のZ軸に対する傾き角、及びグレーティングRGとの距離を求め、これら傾き角と距離と以下に説明する補正情報とに基づいて、エンコーダシステム73の各ヘッド77x、77ya、77ybの計測誤差を求め、その計測値を補正する。
【0110】
なお、計測アーム71の先端面の変位(先端面に平行な方向に関する変位)を計測することによって、計測アーム71の形状変化を計測することも可能である。図12には、上述の計測システム30に対する変形例として、計測アームの先端面の変位を計測するための計測システム30’が示されている。
【0111】
計測システム30’は、2つのエンコーダ30z、30xを含む。エンコーダ30zは光源30zと受光素子30zとを有する。エンコーダ30xは、光源30xと受光素子30xとを有する。図12に示されるように、光源30zと受光素子30zとは、支持部72の−Y側の面の下端部近傍に固定された不図示の支持部材に、それぞれの長手方向がYZ平面に平行で、かつXY平面及びXZ平面に対してそれぞれ45°を成す状態で、支持されている。また、光源30xと受光素子30xとは、不図示の支持部材に、それぞれの長手方向がXY平面に平行で、かつYZ平面及びXZ平面に対してそれぞれ45°を成す状態で、支持されている。ただし、受光素子30xは、光源30xに対して−X側(図12における紙面奥側)に位置するので、光源30xの奥側に隠れている。
【0112】
計測アーム71の−Y端部の+Z側には、光学部材PSが固定されている。光学部材PSは、図12に示されるような台形状のYZ断面(X軸に垂直な断面)を有し、X軸方向に所定長さを有する六面体状の部材である。光学部材PSは、その斜面が、光源30zと受光素子30zとに対向している。
【0113】
エンコーダ30zは、光源30zからレーザ光Lzを、光学部材PSの斜面に対して垂直に射出する。レーザ光Lzは、斜面から光学部材PS内に入り、その内部を通り、計測アーム71と光学部材PSとの間に設けられた分離面BMFに入射する。分離面BMFに入射することにより、レーザ光Lzは、参照ビームIRzと計測ビームIBzとに偏光分離される。
【0114】
参照ビームIRzは、光学部材PS内において、光学部材PSの−Z側面(反射面RP1)、−Y側面(反射面PR2)、及び分離面BMFにて、順次反射されて受光素子30zに戻る。
【0115】
一方、計測ビームIBzは、計測アーム71内に入り、その±Z側面にて反射しつつ中実な部分を透過して、計測アーム71の+Y端に向かう。ここで、計測アーム71の+Y端面の+Z側には、四分の一波長板(λ/4板)WPとさらにその+Y側にZ軸方向を周期方向とする反射型の回折格子GRzが設けられている。計測ビームIBzは、λ/4板WPを+Y向きに透過し、回折格子GRzに入射する。それにより、YZ平面内において複数の異なる方向に向かう回折光が発生する(換言すると、回折格子GRzにて、計測ビームIBzが複数の方向に回折する)。複数の回折光のうちの例えば−1次の回折光(−1次の方向に回折した計測ビームIBz)が、λ/4板WPを−Y向きに透過し、計測アーム71の±Z側面にて反射しつつ中実な部分を透過して計測アーム71の−Y端に向かう。ここで、計測ビームIBzの偏光方向は、λ/4板WPを2回透過することにより、90度回転している。そのため、計測ビームIBzは、分離面BMFにて反射される。
【0116】
反射された計測ビームIBzは、先と同様に、計測アーム71の±Z側面にて反射しつつ中実な部分を透過して、計測アーム71の+Y端に向かう。計測ビームIBzは、λ/4板WPを+Y向きに透過し、回折格子GRzに入射する。それにより、再度、複数の回折光が発生する(計測ビームIBzが複数の方向に回折する)。これらの複数の回折光のうちの例えば−1次の回折光(−1次の方向に回折した計測ビームIBz)が、λ/4板WPを−Y向きに透過し、計測アーム71の±Z側面にて反射しつつ中実な部分を透過して計測アーム71の−Y端に向かう。ここで、計測ビームIBzの偏光方向は、λ/4板WPを2回透過することにより、さらに90度回転している。そのため、計測ビームIBzは、分離面BMFを透過する。
【0117】
透過した計測ビームIBzは、参照ビームIRzと同軸上に合成されて、参照ビームIRzとともに受光素子30zに戻る。受光素子30zの内部では、参照ビームIRzと計測ビームIBzが、それらの偏向方向が偏向子により揃えられて、干渉光となる。この干渉光が不図示の光検出器によって検出され、干渉光の強度に応じた電気信号に変換される。
【0118】
ここで、計測アーム71が撓み、その+Y端面(先端面)がZ軸方向に変位すると、その変位に応じて計測ビームIBzの位相が参照ビームIRzの位相に対してシフトする。それにより、干渉光の強度が変化する。この干渉光の強度の変化は、計測アーム71の先端面のZ軸方向に関する変位情報として主制御装置20に供給される。なお、計測アーム71が撓むことにより、計測ビームIBzの光路長が変化し、それに伴って計測ビームIBzの位相がシフトし得るが、その程度は計測アーム71の先端面のZ変位に伴う位相シフトの程度より十分小さくよう計測システム30’が設計されている。
【0119】
計測アーム71の−Y端部の−Z側(光学部材PSの−Z側)には、光学部材PSが固定されている。光学部材PSは、光学部材PSを、その斜面が手前側に来るように、Y軸に平行な軸回りに90°回転させた形状を有する六面体状の部材である。すなわち、光学部材PSは、台形状のXY断面(Z軸に平行な断面)を有し、Z軸方向に所定長さを有する六面体状の部材である。光学部材PSは、その斜面が、光源30x及び受光素子30xと対向している。
【0120】
また、計測アーム71の+Y端面の−Z側には、四分の一波長板(λ/4板)WPとさらにその+Y側にX軸方向を周期方向とする反射型の回折格子GRxが設けられている。
【0121】
エンコーダ30xは、光源30xからレーザ光Lxを、光学部材PSの斜面に対して垂直に射出する。レーザ光Lxは、斜面から光学部材PS内に入り、その内部を通り、分離面BMFに入射する。分離面BMFに入射することにより、レーザ光Lxは、参照ビームIRxと計測ビームIBxとに偏光分離される。
【0122】
そして、参照ビームIRxは、前述の参照ビームIRzと同様に、光学部材PS内において、光学部材PSの−X側の反射面、−Y側の反射面、及び分離面BMFにて、順次反射されて受光素子30xに戻る。
【0123】
一方、計測ビームIBxは、計測アーム71内に入り、前述の計測ビームIBzと同様の光路(XY平面内の光路)を経て、参照ビームIRxと同軸上に合成されて、参照ビームIRxとともに受光素子30xに戻る。受光素子30xの内部では、参照ビームIRxと計測ビームIBxが、それらの偏向方向が偏向子により揃えられて、干渉光となる。この干渉光が不図示の光検出器によって検出され、干渉光の強度に応じた電気信号に変換される。
【0124】
ここで、計測アーム71が撓み、その+Y端面(先端面)がX軸方向に変位すると、その変位に応じて計測ビームIBxの位相が参照ビームIRxの位相に対してシフトする。それにより、干渉光の強度が変化する。この干渉光の強度の変化は、計測アーム71の先端面のX軸方向に関する変位情報として主制御装置20に供給される。なお、計測アーム71が撓むことにより、計測ビームIBxの光路長が変化し、それに伴って計測ビームIBxの位相がシフトし得るが、その程度は計測アーム71の先端面のX変位に伴う位相シフトの程度より十分小さくよう計測システム30’が設計されている。
【0125】
主制御装置20は、エンコーダ30z、30xから供給される計測アーム71の先端面のZ軸及びX軸方向に関する変位情報に基づいて、計測アーム71の先端近傍に設けられたヘッド77x、77ya、77ybの光軸のZ軸に対する傾き角、及びグレーティングRGとの距離を求め、これら傾き角と距離と後述する補正情報とに基づいて、エンコーダシステム73の各ヘッド77x、77ya、77ybの計測誤差を求め、その計測値を補正する。
【0126】
主制御装置20は、上述した国際公開第2008/026732号などに開示されているのと同様の手法で計測アーム71の先端面の面位置に対応するエンコーダシステム73の補正情報を予め作成する。すなわち、主制御装置20は、図13(A)に簡略化して示されるように、計測アーム71をグレーティングRGに対向させた状態で微動ステージWFSを駆動して、そのピッチング量θxを、例えば200μradに固定する(ヨーイング量θz及びローリング量θyは共にゼロとする)。次いで、主制御装置20は、微動ステージWFSをZ軸方向に所定の範囲内、例えば−100μm〜+100μmで駆動し、その駆動中に所定のサンプリング間隔でYヘッド77ya(Yリニアエンコーダ73ya)及びYヘッド77yb(Yリニアエンコーダ73yb)それぞれの計測値をメモリ装置42(図3参照)に記憶する。そして、主制御装置20は、微動ステージWFSを駆動してピッチング量θxを所定量、例えば40μrad減らしながら、各位置それぞれで微動ステージWFSをZ軸方向に所定の範囲内で駆動し、それぞれの駆動中に所定のサンプリング間隔でYヘッド77ya及び77ybそれぞれの計測値を順次取り込み、メモリ装置42に記憶する。主制御装置20は、上記処理によってメモリ装置42内の各データを、横軸をZ位置、縦軸を各ヘッドの計測値とする2次元座標系上にプロットし、ピッチング量θxが同じときのプロット点を順次結び、ピッチング量θxがゼロのライン(中央の横のライン)が、原点を通るように、縦軸方向に関して横軸をシフトすることで、図13(B)に示されるようなグラフを、Yヘッド77ya及び77ybそれぞれについて作成する。図13(B)のグラフ上の縦軸の値は、各ピッチング量θxの各Z位置におけるYヘッド77ya(又は77yb)の計測誤差を示している。主制御装置20は、この図13(B)のグラフに対応する関数、すなわち微動ステージWFSのピッチング量θx、微動ステージWFSのZ位置、及びYヘッド77ya(又は77yb)の計測誤差それぞれの関係を、各Yヘッド77ya、77ybに関する補正情報としてメモリ装置42内に格納する。あるいは、主制御装置20は、図13(B)のグラフ上の各点を、テーブルデータ化し、各Yヘッド77ya、77ybに関する補正情報としてメモリ装置42内に格納しても良い。
【0127】
次に、主制御装置20は、上述のピッチング量θxを変化させた場合と同様の手順で、微動ステージWFSのピッチング量θx及びローリング量θyをともにゼロに維持したまま、微動ステージWFSのヨーイング量θzを−200μrad<θz<+200μradの範囲について順次変化させ、各位置で、微動ステージWFSを所定範囲内、例えば−100μm〜+100μmの範囲内でZ軸方向に駆動し、その駆動中に所定のサンプリング間隔で、Yヘッド77ya及び77ybそれぞれの計測値を、順次取り込んでテーブルデータ化してメモリ装置42に記憶する。なお、Yヘッド77ya、77ybに関して、ピッチング量θxとヨーイング量θzとがともにゼロでないときの計測誤差は、ピッチング量θxに応じた計測誤差とヨーイング量θzに応じた計測誤差との和とする。
【0128】
主制御装置20は、上述した手順と同様の手順で、Xヘッド77x(Xリニアエンコーダ73x)に関する補正情報を作成し、メモリ装置42に記憶する。ただし、ヘッド77xに関する補正情報を求める際は、微動ステージWFSのピッチング量θx及びローリング量θyは常にゼロとし、微動ステージWFSのヨーイング量θzを−200μrad<θz<+200μradの範囲について順次変化させ、各位置で、微動ステージWFSを所定範囲内、例えば−100μm〜+100μmの範囲内でZ軸方向に駆動する。
【0129】
なお、上記の補正情報の作成手順では、微動ステージWFSを駆動することによって計測アーム71が変形した状態を擬似的に再現し(計測アーム71が変形した状態と等価な状態を、微動ステージWFSを駆動することによって再現し)、その再現された状態で計測誤差の測定を行ったが、例えば実際に計測アーム71を曲げて(形状変化させて)その形状変化後の状態で計測誤差を測定することによって補正情報の作成を行っても良く、要は、エンコーダシステム73の各ヘッドの光軸がグレーティングRGに対して傾いた状態を再現できれば良い。
【0130】
上記で説明したYリニアエンコーダ73yの計測誤差Δy、Xリニアエンコーダ73xの計測誤差Δxは、次式(1)、(2)で示されるような関数で表され、主制御装置20は、式(1)及び式(2)に基づいて、エンコーダシステム73の計測誤差を演算する。
【0131】
Δy=f(z,θx,θz)=θx(z−a)+θz(z−b) ……(1)
Δx=g(z,θz)=θz(z−c) ……(2)
なお、上式(1)において、aは、図13(B)のグラフの、各直線が交わる点のZ座標であり、bは、Yエンコーダの補正情報の取得のためにヨーイング量を変化させた場合の図13(B)と同様のグラフの、各直線が交わる点のZ座標である。また、上式(2)において、cは、Xエンコーダの補正情報の取得のためにヨーイング量を変化させた場合の図13(B)と同様のグラフの、各直線が交わる点のZ座標である。
【0132】
上述のようにして構成された本実施形態の露光装置100では、デバイスの製造に際し、まず、主制御装置20により、ウエハアライメント系ALGを用いて、微動ステージWFSの計測プレート86上の第2基準マークが検出される。次いで、主制御装置20により、ウエハアライメント系ALGを用いてウエハアライメント(例えば米国特許第4,780,617号明細書などに開示されるエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)など)などが行われる。なお、本実施形態の露光装置100では、ウエハアライメント系ALGは、投影ユニットPUからY軸方向に離間して配置されているので、ウエハアライメント行う際、微動ステージ位置計測系70のエンコーダシステム(計測アーム)による微動ステージWFSの位置計測ができない。そこで、露光装置100では、上述した微動ステージ位置計測系70の計測アーム71と同様の構成の計測アームを含む第2の微動ステージ位置計測系(図示省略)をウエハアライメント系ALGの近傍に設け、これを用いてウエハアライメント時における微動ステージのXY平面内の位置計測を行うものとする。ただし、これに限らず、前述したウエハステージ位置計測系16を介してウエハWの位置を計測しながらウエハアライメントを行っても良い。また、ウエハアライメント系ALGと投影ユニットPUとが離間しているので、主制御装置20は、ウエハアライメントの結果得られたウエハW上の各ショット領域の配列座標を、第2基準マークを基準とする配列座標に変換する。
【0133】
なお、第2の微動ステージ位置計測系が、一例として、片持ちの計測アームを含んで上述した微動ステージ位置計測系70と同様に構成される場合に、その計測アームの変動(形状変化のみならず変位をも含む)による計測誤差を、上記と同様に補正しても良い。
【0134】
そして、主制御装置20は、露光開始に先立って、前述の一対のレチクルアライメント系RA,RA、及び微動ステージWFSの計測プレート86上の一対の第1基準マークなどを用いて、通常のスキャニング・ステッパと同様の手順(例えば、米国特許第5,646,413号明細書などに開示される手順)で、レチクルアライメントを行う。そして、主制御装置20は、レチクルアライメントの結果と、ウエハアライメントの結果(ウエハW上の各ショット領域の第2基準マークを基準とする配列座標)とに基づいて、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作を行い、ウエハW上の複数のショット領域にレチクルRのパターンをそれぞれ転写する。この露光動作は、前述したレチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期移動を行う走査露光動作と、ウエハステージWSTをショット領域の露光のための加速開始位置に移動するショット間移動(ステッピング)動作とを交互に繰り返すことで行われる。この場合、液浸露光による走査露光が行われる。本実施形態の露光装置100では、上述の一連の露光動作中、主制御装置20により、微動ステージ位置計測系70を用いて、微動ステージWFS(ウエハW)の位置が計測され、この計測結果に基づいてウエハWの位置が制御される。この際、主制御装置20は、前述の式(1)及び式(2)、すなわちメモリ装置42に記憶した補正情報を用いて、エンコーダシステム73の各エンコーダの計測値を補正しながら、ウエハWのXY平面内の位置(θz回転を含む)を制御する。
【0135】
なお、上述の走査露光動作時は、ウエハWをY軸方向に高加速度で走査する必要があるが、本実施形態の露光装置100では、主制御装置20は、走査露光動作時には、図14(A)に示されように、原則的に粗動ステージWCSを駆動せず、微動ステージWFSのみをY軸方向に(必要に応じて他の5自由度方向にも併せて)駆動する(図14(A)の黒塗り矢印参照)ことで、ウエハWをY軸方向に走査する。これは、粗動ステージWCSを駆動する場合に比べ、微動ステージWFSのみを動かす方が駆動対象の重量が軽い分、高加速度でウエハWを駆動できて有利だからである。また、前述のように、微動ステージ位置計測系70は、その位置計測精度がウエハステージ位置計測系16よりも高いので、走査露光時には微動ステージWFSを駆動した方が有利である。なお、この走査露光時には、微動ステージWFSの駆動による反力(図14(A)の白抜き矢印参照)の作用により、粗動ステージWCSが微動ステージWFSと反対側に駆動される。すなわち、粗動ステージWCSがカウンタマスとして機能し、ウエハステージWSTの全体から成る系の運動量が保存され、重心移動が生じないので、微動ステージWFSの走査駆動によってベース盤12に偏加重が作用するなどの不都合が生じることがない。
【0136】
一方、X軸方向にショット間移動(ステッピング)動作を行う際には、微動ステージWFSのX軸方向への移動可能量が少ないことから、主制御装置20は、図14(B)に示されるように、粗動ステージWCSをX軸方向に駆動することによって、ウエハWをX軸方向に移動させる。
【0137】
以上説明したように、本実施形態の露光装置100によると、微動ステージWFSのXY平面内の位置情報は、主制御装置20により、微動ステージWFSに配置されたグレーティングRGに対向して配置された計測アーム71を有する微動ステージ位置計測系70のエンコーダシステム73を用いて計測される。この場合、計測アーム71から射出される、微動ステージ位置計測系70を構成するエンコーダシステム73、レーザ干渉計システム75の各ヘッドの計測ビームのグレーティングRG上の照射点は、ウエハWに照射される照明光ILの照射領域(露光領域)IAの中心(露光位置)に一致している。従って、主制御装置20は、いわゆるアッベ誤差の影響を受けることなく、微動ステージWFSの位置情報を高精度に計測することができる。また、計測アーム71をグレーティングRGの直下に配置することによって、エンコーダシステム73の各ヘッドの計測ビームの大気中の光路長を極短くできるので、空気揺らぎの影響が低減され、この点においても、微動ステージWFSの位置情報を高精度に計測することができる。
【0138】
さらに、本実施形態の露光装置100では、主制御装置20により、微動ステージ位置計測系70の計測結果と、レーザ干渉計30a〜30dを用いて計測アーム71の形状変化(変動情報)を計測する計測システム30の計測結果と、に基づいて微動ステージWFSが微動ステージ駆動系52を介して駆動される。この場合、露光装置100に発生する各種振動が計測アーム71に伝わり、計測アーム71自体が振動して、エンコーダシステム73の各ヘッドの計測ビームのグレーティングRG上の照射点が不安定になったとしても、主制御装置20が計測システム30の計測結果に対応する補正情報により補正されたエンコーダシステム73の各ヘッドの計測値に基づいて、微動ステージWFSを駆動することができる。従って、微動ステージWFSの位置情報を一層高精度に計測することができる。また、計測システム30では、ガラスによって形成された計測アーム71内に測長ビームを進行させるレーザ干渉計を用いて計測アーム71の形状変化を計測するので、空気揺らぎの影響を殆ど受けることなく、高精度に計測アーム71の形状変化を計測できる。
【0139】
また、本実施形態の露光装置100によると、微動ステージWFSを精度良く駆動することができるので、この微動ステージWFSに載置されたウエハWをレチクルステージRST(レチクルR)に同期して精度良く駆動し、走査露光により、レチクルRのパターンをウエハW上に精度良く転写することが可能になる。
【0140】
なお、上記実施形態では、微動ステージ位置計測系70を構成するアーム部材として、全体がガラスによって形成され、内部を光が進行可能な計測アーム71を備える場合を説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、アーム部材は、少なくとも前述の各測長ビーム、各レーザビームが進行する部分が、光を透過可能な中実な部材によって形成されていれば良く、その他の部分は、例えば光を透過させない部材であっても良いし、中空構造であっても良い。また、例えばアーム部材としては、グレーティングに対向する部分から計測ビームを照射できれば、例えばアーム部材の先端部に光源や光検出器等を内蔵していても良い。この場合、アーム部材の内部にエンコーダの計測ビームを進行させる必要が無く、アーム部材は、少なくとも計測システム30を構成するレーザ干渉計の測長ビームが進行する部分のみ光が透過可能な部材によって形成されていれば良い。さらにアーム部材は、角柱状で無くても良く、例えば、断面円形の円柱状であっても良い。また、断面は一様断面でなくても良い。
【0141】
また、計測アームは、各レーザビームが進行する部分(ビーム光路部分)が中空などでも良い。あるいは、エンコーダシステムとして、格子干渉型のエンコーダシステムを採用する場合には、回折格子が形成される光学部材を、セラミックス又はインバーなどの低熱膨張性のアームに設けるだけでも良い。これは、特にエンコーダシステムでは、空気揺らぎの影響を極力受けないように、ビームが分離している空間が極めて狭く(短く)なっているからである。さらに、この場合、温度制御した気体を、微動ステージ(ウエハホルダ)とアームとの間(及びビーム光路)に供給して温度安定化を図っても良い。さらに、ウエハステージが配置されるメインフレームBD下方の空間は密閉性が高いので、ウエハステージの移動により計測アームが変動する。
【0142】
また、上記実施形態では、計測アーム71の形状変化を計測するための測長ビームは、計測アーム71の先端面の4隅部に対応する位置に照射されたが、これに限らず、計測アーム71の先端面の同一直線上に無い3点に照射しても良い。この場合であっても、計測アーム71の先端面の面位置の変化に基づいて、計測アーム71の形状変化を計測できる。
【0143】
計測アームの形状変化(エンコーダの計測誤差の要因となる、変位、傾斜なども含む変動情報)を計測する計測系は干渉計に限らず、他の光学装置(エンコーダなど)でも良いし、干渉計などの光学装置の代わりに、あるいはそれと組み合わせて少なくとも1つの他のセンサ(例えば、加速度センサ、振動センサ、歪みゲージなど)を用いても良い。
【0144】
なお、計測アームの変動情報を求めるため、実際の露光(本露光)のときと全く同様にウエハステージWSTを移動しながらウエハWに試し焼き(テスト露光)を行い、そのテスト露光でウエハ上に焼き付けたマークの像を計測、例えばそのマーク像の位置情報を計測し、その計測結果に基づいて、計測アームの変動に起因する計測誤差の補正情報を作成しても良い。この場合、上記と同様にテーブルデータ化しても良いし、あるいは、露光時に、エンコーダの計測値、ウエハの目標位置、及びレチクルの目標位置の少なくとも1つについてその補正を行っても良い。
【0145】
また、上記実施形態では、エンコーダシステム73が、Xヘッドと一対のYヘッドを備える場合について例示したが、これに限らず、例えばX軸方向及びY軸方向の2方向を計測方向とする2次元ヘッド(2Dヘッド)を、1つ又は2つ設けても良い。2Dヘッドを2つ設ける場合には、それらの検出点がグレーティング上で露光位置を中心として、X軸方向に同一距離離れた2点になるようにしても良い。
【0146】
なお、微動ステージ位置計測系70は、レーザ干渉計システム75を備えることなく、エンコーダシステム73のみで微動ステージの6自由度方向に関する位置情報を計測できるようにしても良い。この場合、例えばX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方とZ軸方向に関する位置情報を計測可能なエンコーダを用いることができる。例えば、2次元のグレーティングRG上の同一直線上に無い3つの計測点に、X軸方向とZ軸方向に関する位置情報を計測可能なエンコーダと、Y軸方向とZ軸方向に関する位置情報を計測可能なエンコーダとを含む合計3つのエンコーダから計測ビームを照射し、グレーティングRGからのそれぞれの戻り光を受光することで、グレーティングRGが設けられた移動体の6自由度方向の位置情報を計測することとすることができる。また、エンコーダシステム73の構成は上記実施形態に限られないで任意で構わない。
【0147】
なお、上記実施形態では、微動ステージの上面、すなわちウエハに対向する面にグレーティングが配置されているものとしたが、これに限らず、グレーティングは、ウエハを保持するウエハホルダに形成されていても良い。この場合、露光中にウエハホルダが膨張したり、微動ステージに対する装着位置がずれたりした場合であっても、これに追従してウエハホルダ(ウエハ)計測することができる。また、グレーティングは、微動ステージの下面に配置されていても良く、この場合、エンコーダヘッドから照射される計測ビームが微動ステージの内部を進行しないので、微動ステージを光が透過可能な中実部材とする必要がなく、微動ステージを中空構造にして内部に配管、配線等を配置することができ、微動ステージを軽量化できる。
【0148】
なお、上記実施形態では、ウエハステージは、粗動ステージと微動ステージとを組み合わせた粗微動ステージである場合を例示したが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0149】
また、微動ステージを粗動ステージに対して駆動する駆動機構は、上記実施形態で説明したものに限られない。例えば実施形態では、微動ステージをY軸方向に駆動するコイルが微動ステージをZ軸方向に駆動するコイルとしても機能したが、これに限らず微動ステージをY軸方向に駆動するアクチュエータ(リニアモータ)と、微動ステージをZ軸方向に駆動する、すなわち微動ステージを浮上させるアクチュエータとを、それぞれ独立して設けても良い。この場合、微動ステージに常に一定の浮上力を作用させることができるので、微動ステージのZ軸方向の位置が安定する。
【0150】
なお、上記実施形態では、微動ステージWFSは、ローレンツ力(電磁力)の作用により粗動ステージWCSに非接触支持されたが、これに限らず、例えば微動ステージWFSに真空予圧空気静圧軸受等を設けて、粗動ステージWCSに対して浮上支持しても良い。また、上記実施形態では、微動ステージWFSは、全6自由度方向に駆動可能であったが、これに限らず少なくともXY平面に平行な二次元平面内を移動できれば良い。また、微動ステージ駆動系52は、上述したムービングマグネット型のものに限らず、ムービングコイル型のものであっても良い。さらに微動ステージWFSは、粗動ステージWCSに接触支持されていても良い。従って、微動ステージWFSを粗動ステージWCSに対して駆動する微動ステージ駆動系52としては、例えばロータリモータとボールねじ(又は送りねじ)とを組み合わせたものであっても良い。
【0151】
なお、ウエハステージWSTの移動範囲全域でその位置計測が可能となるように微動ステージ位置計測系を構成しても良い。この場合にはウエハステージ位置計測系16が不要になる。また、上記実施形態において、ベース盤12をウエハステージの駆動力の反力の作用により移動可能なカウンタマスとしても良い。この場合、粗動ステージをカウンタマスとして使用してもしなくても良いし、粗動ステージを上記実施形態と同様にカウンタマスとして使用するときでも粗動ステージを軽量化することができる。
【0152】
なお、上記実施形態では、露光装置が液浸型の露光装置である場合について説明したが、これに限られるものではなく、液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置にも本発明は好適に適用することができる。
【0153】
なお、上記実施形態では、スキャニング・ステッパに本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に本発明を適用しても良い。ステッパなどであっても、露光対象の物体が搭載されたステージの位置をエンコーダで計測することにより、干渉計を用いてこのステージの位置を計測する場合と異なり、空気揺らぎに起因する位置計測誤差の発生を殆ど零にすることができ、エンコーダの計測値に基づいて、ステージを高精度に位置決めすることが可能になり、結果的に高精度なレチクルパターンの物体上への転写が可能になる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも本発明は適用することができる。
【0154】
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、この投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
【0155】
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0156】
また、上記実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を用いるEUV露光装置に本発明を適用することができる。その他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、本発明は適用できる。
【0157】
また、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。かかる可変成形マスクを用いる場合には、ウエハ又はガラスプレート等が搭載されるステージが、可変成形マスクに対して走査されるので、このステージの位置をエンコーダシステム及びレーザ干渉計システムを用いて計測することで、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0158】
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0159】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
【0160】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0161】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0162】
なお、本発明の移動体装置は、露光装置に限らず、その他の基板の処理装置(例えば、レーザリペア装置、基板検査装置その他)、あるいはその他の精密機械における試料の位置決め装置、ワイヤーボンディング装置等の移動ステージを備えた装置にも広く適用できる。
【0163】
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置(パターン形成装置)及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0164】
以上説明したように、本発明の移動体装置及び移動体駆動方法は、所定平面内で移動体を駆動するのに適している。また、本発明の露光装置及び露光方法は、エネルギビームを物体上に照射して物体上にパターンを形成するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、電子デバイスを製造するのに適している。
【符号の説明】
【0165】
10…照明系、20…主制御装置、30…計測システム、70…微動ステージ位置計測系、71…計測アーム、IL…照明光、R…レチクル、RST…レチクルステージ、WST…ウエハステージ、WCS…粗動ステージ、WFS…微動ステージ、PL…投影光学系、W…ウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する第1軸及び第2軸を含む所定平面内で移動可能で、前記所定平面に実質的に平行な面に沿って計測面が配置された移動体と;
少なくとも一方の端部が前記計測面に対向して配置され、前記第1軸に平行な方向を長手方向とするアーム部材を有し、該アーム部材から前記計測面に少なくとも1本の第1計測ビームを照射し、該第1計測ビームの前記計測面からの光を受光して、前記移動体の少なくとも前記所定平面内の位置を計測する第1計測系と;
前記アーム部材の変動情報を計測する第2計測系と;
前記第1計測系及び前記第2計測系の出力に基づいて前記移動体を駆動する駆動系と;を備える移動体装置。
【請求項2】
前記第2計測系は、光学的な手法により前記アーム部材の変動情報を計測する請求項1に記載の移動体装置。
【請求項3】
前記アーム部材は、少なくとも一部がその内部を光が進行可能な中実部から成り、
前記第1計測系は、前記アーム部材の他方の端部から前記中実部を介して前記アーム部材の前記一方の端面に設けられた検出面に少なくとも1本の第2計測ビームを照射し、該第2計測ビームの前記検出面からの光を受光する光波干渉式計測システムを有し、該光波干渉式計測システムの計測結果に基づいて、前記アーム部材の変動情報を計測する請求項2に記載の移動体装置。
【請求項4】
前記検出面は反射面であり、
前記光波干渉式計測システムは、前記第1軸に平行に複数の前記第2計測ビームを前記検出面に照射し、該検出面からの反射光を受光して前記複数の第2計測ビームのそれぞれの光路長を計測する請求項3に記載の移動体装置。
【請求項5】
前記アーム部材は、前記第1軸に直交する断面が矩形状であり、
前記光波干渉式計測システムは、前記検出面の少なくとも4隅部に対応する位置から前記複数の第2計測ビームを前記中実部の内部にそれぞれ入射させる請求項4に記載の移動体装置。
【請求項6】
前記光波干渉式計測システムは、共通の参照ビームを用いて、前記複数の第2計測ビームの光路長を計測する請求項4又は5に記載の移動体装置。
【請求項7】
前記検出面にはグレーティングが設けられ、
前記光波干渉式計測システムは、前記検出面からの回折光を受光して、前記グレーティングの周期方向に関する前記検出面の変位を計測する請求項3に記載の移動体装置。
【請求項8】
前記検出面は、該検出面内で互いに直交する2つの方向をそれぞれ周期方向とする2つの回折格子を含み、
前記光波干渉式計測システムは、前記第2計測ビームとして前記2つの回折格子に対応する2つの計測ビームをそれぞれ照射し、該2つの計測ビームのそれぞれの前記検出面からの回折光を受光して、前記検出面の前記2つの方向に関する変位を計測する請求項7に記載の移動体装置。
【請求項9】
前記第1計測ビームは、前記アーム部材の内部を前記第1軸に平行な方向に進行し、
前記アーム部材は、前記アーム部材の内部を進行する前記第1計測ビームを、前記一方の端部近傍で前記計測面に向ける光学系を有する請求項3〜8のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項10】
前記計測面には、グレーティングが形成され、
前記第1計測系は、前記第1計測ビームの前記計測面からの回折光を受光する請求項9に記載の移動体装置。
【請求項11】
前記光学系は、前記計測面からの回折光、又は前記計測面からの複数の回折光の合成光を、前記アーム部材の内部を前記第1軸に平行な方向に進行させる請求項10に記載の移動体装置。
【請求項12】
前記計測面は、前記第1軸及び第2軸にそれぞれ平行な方向を周期方向とする第1及び第2回折格子を含み、
前記第1計測系は、前記アーム部材から前記計測面に、前記第1計測ビームとして前記第1及び第2回折格子にそれぞれ対応する第1軸方向計測用ビーム及び第2軸方向計測用ビームを照射し、前記第1軸方向計測用ビーム及び第2軸方向計測用ビームのそれぞれの前記計測面からの回折光を受光して、前記移動体の前記第1軸及び第2軸にそれぞれ平行な方向に関する位置を計測する請求項10又は11に記載の移動体装置。
【請求項13】
前記第1計測系は、前記第1軸方向計測用ビームとして、前記第1回折格子上の照射点が前記第2軸に平行な方向に関して互いに異なる少なくとも2本の計測用ビームを、前記第1回折格子に照射する請求項12に記載の移動体装置。
【請求項14】
前記少なくとも2本の計測用ビームと前記第2軸方向計測用ビームとは、前記計測面上の前記第2軸に平行な直線上の照射点にそれぞれ照射される請求項13に記載の移動体装置。
【請求項15】
前記アーム部材の前記計測面に対する前記第1計測ビームの射出端部は、前記移動体の移動範囲において、前記計測面に対向する請求項1〜14のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項16】
前記移動体に複数の第3計測ビームを照射し、その反射光を受光して前記移動体の前記所定平面に対する傾きを計測する光波干渉式測長器を含む第3計測系をさらに備え、
前記駆動系は、前記第1計測系、第2計測系及び第3計測系の出力に基づいて、前記移動体を駆動する請求項1〜15のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項17】
エネルギビームの照射によって物体にパターンを形成する露光装置であって、
前記物体が前記移動体上に載置される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の移動体装置と;
前記移動体上に載置された前記物体に前記エネルギビームを照射するパターニング装置と;を備える露光装置。
【請求項18】
前記第1計測系から前記計測面に対して照射される前記第1計測ビームの照射点の中心である計測中心は、前記物体に照射される前記エネルギビームの照射領域の中心である露光位置に一致する請求項17に記載の露光装置。
【請求項19】
前記移動体は、その内部を前記第1計測ビームが進行可能な中実な部材から成り、
前記計測面は、前記移動体の前記所定平面に実質的に平行な面の内、前記物体と対向する第1面に形成され、
前記アーム部材は、前記第1面とは反対の第2面に対向する請求項17又は18に記載の露光装置。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれか一項に記載の露光装置を用いて物体を露光することと、
前記露光された物体を現像することと;を含むデバイス製造方法。
【請求項21】
移動体を所定平面に沿って駆動する移動体駆動方法であって、
前記移動体上の前記所定平面に実質的に平行な面に沿って配置された計測面に対し、少なくとも一方の端部が前記計測面に対向して配置された前記所定平面に実質的に平行な方向を長手方向とするアーム部材から少なくとも1本の第1計測ビームを照射し、該第1計測ビームの前記計測面からの光を受光して、前記移動体の少なくとも前記所定平面内の位置を計測する第1工程と;
前記位置情報の計測結果と、該計測結果に含まれる前記アーム部材の変動に起因する計測誤差の補正情報とに基づいて、前記移動体を駆動する第2工程と;を含む移動体駆動方法。
【請求項22】
前記第2工程では、予め取得した前記アーム部材の変動に対応する前記移動体の前記所定平面内の位置の計測誤差の補正情報を用いて、前記移動体を駆動する請求項21に記載の移動体駆動方法。
【請求項23】
前記補正情報は、前記移動体を駆動することによって、前記アーム部材の変動状態を擬似的に再現し、その再現された状態で前記計測誤差を測定することによって取得される請求項22に記載の移動体駆動方法。
【請求項24】
前記補正情報は、前記アーム部材を変動後の状態で前記計測誤差を測定することによって取得される請求項22に記載の移動体駆動方法。
【請求項25】
前記第2工程では、前記アーム部材の変動を計測し、その計測結果に基づいて、前記アーム部材の変動に起因する計測誤差の補正情報を求め、該補正情報と前記位置情報の計測結果とに基づいて、前記移動体を駆動する請求項21に記載の移動体駆動方法。
【請求項26】
前記アーム部材は、少なくとも一部がその内部を光が進行可能な中実部から成り、
前記アーム部材の他方の端部から前記中実部を介して前記アーム部材の前記一方の端面に設けられた検出面に少なくとも1本の第2計測ビームを照射し、該第2計測ビームの前記検出面からの光を受光して、前記アーム部材の変動を計測する請求項25に記載の移動体駆動方法。
【請求項27】
前記計測面には、グレーティングが形成され、
前記第1工程では、前記第1計測ビームの前記グレーティングからの回折光を受光する請求項21〜26のいずれか一項に記載の移動体駆動方法。
【請求項28】
エネルギビームの照射によって物体にパターンを形成する露光方法であって、
パターンの形成のため、前記物体が載置された移動体を請求項21〜27のいずれか一項に記載の移動体駆動方法を用いて駆動する工程を含む露光方法。
【請求項29】
エネルギビームの照射によって物体にパターンを形成する露光方法であって、
少なくとも互いに直交する第1軸及び第2軸を含む二次元平面に沿って移動可能な第1移動体によって、少なくとも前記二次元平面に平行な面内で前記第1移動体に対して相対移動可能に保持され、前記二次元平面に実質的に平行な一面に計測面が設けられた第2移動体に、前記物体を載置する第1工程と;
前記計測面に対し、少なくとも一方の端部が前記計測面に対向して配置された前記第1軸に平行な方向を長手方向とするアーム部材から少なくとも1本の第1計測ビームを照射し、該第1計測ビームの前記計測面からの光を受光して、前記第2移動体の少なくとも前記所定平面内の位置を計測する第2工程と;
前記アーム部材の変動情報を計測する第3工程と;
前記第2工程及び前記第3工程の計測結果に基づいて、前記第2移動体を前記二次元平面内の走査方向に駆動することで、前記エネルギビームに対して前記物体を走査する第4工程と;を含む露光方法。
【請求項30】
前記第1移動体は、内部に空間部を有し、
前記第2移動体の位置を計測する際には、前記アーム部材は、前記第1移動体の空間部内に前記計測面に対向して配置される請求項29に記載の露光方法。
【請求項31】
前記アーム部材は、少なくとも一部がその内部を光が進行可能な中実部から成り、
前記アーム部材の他方の端部から前記中実部を介して前記アーム部材の前記一方の端面に設けられた検出面に少なくとも1本の第2計測ビームを照射し、該第2計測ビームの前記検出面からの光を受光して、前記アーム部材の変動情報を計測する請求項29に記載の露光方法。
【請求項32】
請求項28〜31のいずれか一項に記載の露光方法を用いて物体を露光することと、
前記露光された物体を現像することと;を含むデバイス製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−3868(P2011−3868A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217129(P2009−217129)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】