説明

窒化物半導体素子および窒化物半導体パッケージ

【課題】GaN電子走行層の厚さを広い範囲で選択することができ、デバイス設計の自由度を高めることができる窒化物半導体素子、および耐圧および信頼性に優れる窒化物半導体素子パッケージを提供すること。
【解決手段】基板41上に、AlN層47、第1AlGaN層48(平均Al組成50%)および第2AlGaN層49(平均Al組成20%)からなるバッファ層44を形成する。バッファ層44上には、GaN電子走行層45およびAlGaN電子供給層46からなる素子動作層を形成する。これにより、HEMT素子3を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体を用いた窒化物半導体素子および当該素子の半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物半導体とは、III-V族半導体においてV族元素として窒素を用いた半導体である。窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)が代表例である。一般には、AlInGa1−x−yN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)と表わすことができる。
このようなIII族窒化物半導体は、高温・高出力デバイス、高周波デバイスに適した物性を有している。かかる物性に鑑みて、III族窒化物半導体は、HEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)などのデバイスを構成する半導体として使用されている。
【0003】
たとえば、Si基板と、Si基板上にエピタキシャル成長によって順に積層された、AlN層、AlGaN層(Al組成が0.3以上かつ0.6以下)、GaN層およびAlGaN電子供給層とを備えるHEMTが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−166349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のHEMTでは、AlGaN層とGaN層との格子定数の差が大きいので、大きな厚さを有するGaN層が積層されると、GaNの格子緩和が起こり、GaN層に加わる圧縮応力がキャンセルされ、Si基板とGaNとの線膨張係数の差に起因した引張り応力が発生してしまう。そのため、GaN層にひび割れ(クラック)が発生してしまうという不具合がある。その結果、GaN層の厚さが制限され、デバイス設計の自由度が小さい。
【0006】
そこで、本発明の目的は、GaN電子走行層の厚さを広い範囲で選択することができ、デバイス設計の自由度を高めることができる窒化物半導体素子を提供することである。
また、本発明の他の目的は、耐圧および信頼性に優れる窒化物半導体素子パッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、Si基板と、前記Si基板の主面に形成されたAlN層および当該AlN層上に形成され、複数のAlGaN層を積層して形成されたAlGaN積層構造とからなるバッファ層と、前記AlGaN積層構造上に形成されたGaN電子走行層と、前記GaN電子走行層上に形成されたAlGaN電子供給層とを含み、前記AlGaN積層構造では、或る基準AlGaN層のAl組成が、当該基準AlGaN層よりも前記AlN層に近い側のAlGaN層のAl組成よりも小さい、窒化物半導体素子である。換言すれば、複数のAlGaN層は、第1AlGaN層と、当該第1AlGaN層に対して前記AlN層とは反対側(GaN電子走行層側)に配置され、当該第1AlGaN層よりもAl組成の小さな第2AlGaN層とを含むことが好ましい。
【0008】
この構成によれば、複数のAlGaN層は、GaN電子走行層に近い層ほど、Al組成が小さくなるように、それぞれの組成が定められている。これにより、AlGaN層の格子定数を、AlNの格子定数に近い値から、GaNの格子定数に近い値にまで段階的に大きくすることができる。そのため、GaN電子走行層と、当該GaN電子走行層に接する最上層のAlGaN層との格子定数の差を小さくすることができる。その結果、GaN電子走行層の厚さを自由に設計することができる。よって、GaN電子走行層を厚く設計することにより、素子耐圧を向上させることができる。
【0009】
ところで、GaN結晶が、エピタキシャル成長によってSi基板上に積層される場合、エピタキシャル成長後の冷却中または冷却後に、Si基板とGaN層との熱膨張係数の差(つまり、降温時の収縮率の差)に起因してGaN層に大きな引張り応力が発生することがある。その結果、GaN層のひび割れ(クラック)およびSi基板の反りが発生する場合がある。
【0010】
本発明によれば、Si基板上にAlN層が形成され、当該AlN層とGaN電子走行層との間にAlGaN積層構造が設けられている。また、AlGaN積層構造においては、複数のAlGaN層は、GaN電子走行層に近い層ほど、Al組成が小さくなるように、それぞれの組成が定められている。そのため、AlN層と最下層のAlGaN層との格子定数差に起因して当該AlGaN層に加わる圧縮応力(歪み)を、最上層のAlGaN層にまで伝播させることができる。その結果、GaN電子走行層に引張り応力が生じても、その引張り応力を、AlN層およびAlGaNバッファ層からGaN電子走行層に加えられる圧縮応力によって緩和することができる。よって、GaN電子走行層のクラックおよびSi基板の反りを軽減することができる。
【0011】
また、前記AlGaN積層構造では、請求項2に記載のように、前記基準AlGaN層のAl組成(%)と、当該基準AlGaN層の前記AlN層側の面に接して配置されたAlGaN層のAl組成(%)との差が10%以上であることが好ましい。
これにより、基準AlGaN層と、当該基準AlGaN層に接するAlGaN層との間に、格子定数差を確実に発生させることができる。
【0012】
たとえば、基準AlGaN層のAl組成(%)と、当該基準AlGaN層のAlN層側の面に接して配置されたAlGaN層のAl組成(%)との差が1%程度であると、基準AlGaN層の格子定数が、それに接するAlGaN層の格子定数に揃ってしまう場合がある。そのため、最上層のAlGaN層とGaN電子走行層との格子定数の差が大きくなり、完全な格子緩和が発生するため、バッファ層からGaN電子走行層に対して圧縮応力(歪み)を伝達することが困難になる。
【0013】
そこで、請求項2に係る発明の構成であれば、そのように格子定数が揃う箇所が生じる場合よりも、GaN電子走行層と最上層のAlGaN層との格子定数の差を小さくできる。よって、バッファ層からGaN電子走行層に対して圧縮応力(歪み)を良好に伝達することができ、結果、GaN電子走行層のクラックおよびSi基板の反りを良好に軽減することができる。
【0014】
たとえば、前記AlGaN積層構造は、請求項3記載のように、前記AlN層から順に、Al組成が50%の第1AlGaN層およびAl組成が20%の第2AlGaN層が積層された構造からなっていてもよい。
また、前記AlGaN積層構造は、請求項4記載のように、前記AlN層から順に、Al組成が80%の第1AlGaN層、Al組成が60%の第2AlGaN層、Al組成が40%の第3AlGaN層およびAl組成が20%の第4AlGaN層が積層された構造からなっていてもよい。
【0015】
また、請求項5記載の発明は、前記バッファ層の主面の面方位がc面であり、前記AlGaN積層構造では、前記基準AlGaN層のa軸平均格子定数が、当該基準AlGaN層の前記AlN層側の面に接して配置されたAlGaN層のa軸面内格子定数よりも大きく、当該基準AlGaN層が本来有するa軸平均格子定数よりも小さい、請求項1〜4のいずれか一項に記載の窒化物半導体素子である。
【0016】
この構成によれば、基準AlGaN層のa軸平均格子定数が、当該基準AlGaN層に接するAlGaN層のa軸面内格子定数よりも大きく、当該基準AlGaN層が本来有するa軸平均格子定数(無歪みの状態でのa軸格子定数)よりも小さい。これにより、基準AlGaN層には、当該基準AlGaN層のAlN層側の面に接して配置されたAlGaN層のa軸格子定数に揃わない程度のa軸圧縮応力が加わっている。そして、このa軸圧縮応力を、最上層のAlGaN層にまで伝播させることができる。そのため、GaN電子走行層にa軸引張り応力が生じても、そのa軸引張り応力を、AlN層およびAlGaNバッファ層からGaN電子走行層に加えられるa軸圧縮応力によって緩和することができる。
【0017】
なお、面内格子定数とは、基準AlGaN層のAlN層側の面に接するAlGaN層における、基準AlGaN層との界面の格子定数のことである。
また、Si基板の主面は、請求項6記載のように、(111)面であってもよい。
また、GaN電子走行層のc軸格子定数の歪み度は、請求項7記載のように、−0.07%以上であることが好ましい。
【0018】
これにより、GaN電子走行層のクラックの発生を確実に防止することができる。
また、前記GaN電子走行層の厚さは、請求項8記載のように、500nm〜2000nmであることが好ましい。
また、前記AlN層の厚さは、請求項9記載のように、50nm〜200nmであることが好ましい。
【0019】
また、前記第1AlGaN層の厚さは、請求項10記載のように、100nm〜500nmであることが好ましい。
また、前記第2AlGaN層の厚さは、請求項11記載のように、100nm〜500nmであることが好ましい。
また、請求項12記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の窒化物半導体素子と、前記窒化物半導体素子を覆うように形成された樹脂パッケージとを含む、窒化物半導体パッケージである。
【0020】
この構成によれば、本発明の窒化物半導体素子が用いられており、GaN電子走行層の厚さの設計自由度が高いので、耐圧に優れるパッケージを提供することができる。また、窒化物半導体素子におけるGaN電子走行層のクラックおよびSi基板の反りが軽減されるので、信頼性の高いパッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るHEMTパッケージの模式的な全体図である。
【図2】図1に示すHEMTパッケージの内部を透視して示す図である。
【図3】図2の破線Aで囲まれた部分の拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るHEMT素子の模式断面図であって、図3のB−B切断面における断面を示す。
【図5】窒化物半導体層に生じる残留応力のイメージ図である。
【図6】III族窒化物半導体積層構造を構成する各層を成長させるための処理装置の構成を説明するための図解図である。
【図7】図4のAlGaN積層構造の変形例を説明するための図である。
【図8】実施例のHEMT素子の構成を示す模式断面図である。
【図9】実施例のGaN電子走行層のc軸格子定数の歪み度を表すグラフである。
【図10】実施例の第2AlGaN層の格子定数を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るHEMTパッケージの模式的な全体図である。図2は、図1に示すHEMTパッケージの内部を透視して示す図である。図3は、図2の破線Aで囲まれた部分の拡大図である。
本発明の窒化物半導体パッケージの一例としてのHEMTパッケージ1は、端子フレーム2と、HEMT素子3(チップ)と、樹脂パッケージ4とを含んでいる。
【0023】
端子フレーム2は、金属製の板状に形成されている。端子フレーム2は、平面視において四角形状を有し、HEMTパッケージ1を支持するベース部5と、当該ベース部5と一体的に形成されたソース端子6と、当該ベース部5に対して離間して形成されたドレイン端子7およびゲート端子8とを含んでいる。
ソース端子6、ドレイン端子7およびゲート端子8は、それぞれ一端および他端を有する平面視直線状に形成され、ソース端子6、ドレイン端子7およびゲート端子8の順に互いに平行に並べて配置されている。これらの端子6〜8のうち、ベース部5と一体的なソース端子6の一端のみが、ベース部5の一角部に接続されている。残りの端子7〜8のうち、ゲート端子8は、その一端が、ソース端子6が接続された角部と隣り合うベース部5の他の角部に対向するように配置されており、ドレイン端子7は、ゲート端子8とソース端子6との間に配置されている。
【0024】
HEMT素子3は、本発明の窒化物半導体素子の一例であり、ドレインパッド9、ソースパッド10およびゲートパッド11を有している。これらドレインパッド9、ソースパッド10およびゲートパッド11は、金属製の板状に形成されており、互いに離間して配置されている。
ドレインパッド9は、ボンディング部12D、アーム部13Dおよび電極部14Dを一体的に有している。
【0025】
ドレインパッド9のボンディング部12Dは、一端および他端を有し、端子フレーム2の各端子6〜8を横切る方向に延びる平面視直線状に形成されている。ボンディング部12Dは、ボンディングワイヤ15D(図2では、3本のワイヤ)を用いて、ドレイン端子7に電気的に接続されている。
ドレインパッド9のアーム部13Dは、当該ボンディング部12Dの一端および他端から、端子6〜8から離れる方向へ延びる互いに平行な平面視直線状に一対形成されている。ドレインパッド9は、ボンディング部12Dおよび一対のアーム部13Dにより、アーム部13Dの遊端(他端)側が開放された平面視凹状(コ字状)に取り囲まれる素子領域16を区画している。
【0026】
ドレインパッド9の電極部14Dは、素子領域16内に設けられ、各アーム部13Dから他方のアーム部13Dへ向かって延びるストライプ状に多数形成されている。一方のアーム部13Dに接続された電極部14Dの先端と、他方のアーム部13Dに接続された電極部14Dの先端との間には、所定幅を有する隙間17が設けられている。
ソースパッド10は、ボンディング部18S、アーム部19Sおよび電極部20Sを一体的に有している。
【0027】
ソースパッド10のボンディング部18Sは、素子領域16の開放端において、ドレインパッド9のボンディング部12Dに平行に延びる平面視直線状に形成されている。ボンディング部18Sは、ボンディングワイヤ21S(図2では、2本のワイヤ)を用いて、ベース部5に電気的に接続されている。これにより、ソースパッド10のボンディング部18Sは、ベース部5と一体的なソース端子6に電気的に接続される。
【0028】
ソースパッド10のアーム部19Sは、ドレインパッド9の電極部14Dの隙間17を、ドレインパッド9の電極部14Dを横切る方向に延びるように1本形成されている。
ソースパッド10の電極部20Sは、アーム部19Sから、ドレインパッド9の各アーム部13Dへ向かう両方向へ延びるストライプ状に多数形成されている。電極部20Sは、ドレインパッド9の電極部14Dの各間に1本ずつ設けられている。
【0029】
ゲートパッド11は、ボンディング部22G、第1アーム部23G、第2アーム部24Gおよび電極部25Gを一体的に有している。
ゲートパッド11のボンディング部22Gは、平面視四角形状に形成され、ドレインパッド9の一方のアーム部13Dの遊端部近傍に配置されている。ボンディング部22Gは、ボンディングワイヤ26G(図2では、1本のワイヤ)を用いて、ゲート端子8に電気的に接続されている。
【0030】
ゲートパッド11の第1アーム部23Gは、ボンディング部22Gの角部からドレインパッド9の他方のアーム部13Dの遊端部まで、ソースパッド10のボンディング部18Sに対して素子領域16に近い側をドレインパッド9のボンディング部12Dに対して平行に延びる平面視直線状に形成されている。
ゲートパッド11の第2アーム部24Gは、第1アーム部23Gからドレインパッド9の電極部14Dの隙間17を、ドレインパッド9の電極部14Dを横切る方向に延びるように、ソースパッド10のアーム部19Sの両側に1本ずつ形成されている。
【0031】
ゲートパッド11の電極部25Gは、各第2アーム部24Gから、ドレインパッド9の各アーム部13Dへ向かう両方向へ延びるストライプ状に多数形成されている。電極部25Gは、ドレインパッド9の電極部14Dとソースパッド10の電極部20Sとの各間に1本ずつ設けられている。また、当該電極部25Gと電極部14Dとの間隔GDは、電極部25Gと電極部20Sとの間隔GSよりも広くされている。つまり、電極部25Gは、電極部14Dと電極部20Sとの中間位置に対して電極部20Sに近い側に配置されている。これにより、ドレイン側の電極部14Dに正の電圧が印加され、ゲート側の電極部25Gに0(ゼロ)V以下の電圧が印加されたときに、ドレイン−ゲート間において十分な電圧降下を図ることができる。その結果、電極部25Gに対する電界集中を防止することができる。
【0032】
樹脂パッケージ4は、HEMTパッケージ1の外形をなし、略直方体状に形成されている。樹脂パッケージ4は、たとえば、エポキシ樹脂など公知のモールド樹脂からなり、HEMT素子3とともに端子フレーム2のベース部5およびボンディングワイヤ15D,21S,26Gを覆い、3本の端子(ソース端子6、ドレイン端子7およびゲート端子8)を露出させるように、HEMT素子3を封止している。
【0033】
図4は、本発明の一実施形態に係るHEMT素子の模式断面図であって、図3のB−B切断面における断面を示す。
次いで、図4を参照して、HEMT素子の内部構造を詳細に説明する。
HEMT素子3は、半導体基板としての基板41と、基板41上にエピタキシャル成長(結晶成長)によって形成されたIII族窒化物半導体積層構造42とを備えている。
【0034】
基板41は、この実施形態では、Si単結晶基板(線膨張係数α1が、たとえば、2.5×10−6〜3.5×10−6(293K))で構成されている。この基板41は、(111)面を主面43としたオフ角が0°のジャスト(111)面Si基板である。
基板41のa軸平均格子定数LC1(基板41の主面43に沿う方向の窒化物半導体を構成する原子と結合するSi原子の格子間距離)は、たとえば、0.768nm〜0.769nmである。そして、この主面43上における結晶成長によって、III族窒化物半導体積層構造42が形成されている。III族窒化物半導体積層構造42は、たとえば、c面((0001)面))を結晶成長主面とするIII族窒化物半導体からなる。
【0035】
III族窒化物半導体積層構造42を形成する各層と、下地層との格子不整合は、結晶成長される層の格子の歪みによって吸収され、下地層との界面での格子の連続性が保たれる。たとえば、GaN層のc面((0001)面))からInGaN層およびAlGaN層をそれぞれ成長させる場合、無歪みの状態でのInGaNのa軸方向の平均格子定数(a軸平均格子定数)はGaNのa軸平均格子定数よりも大きいので、InGaN層にはa軸方向への圧縮応力(圧縮歪み)が生じる。これに対して、無歪みの状態でのAlGaNのa軸平均格子定数はGaNのa軸平均格子定数よりも小さいので、AlGaN層にはa軸方向への引張り応力(引張り歪み)が生じる。
【0036】
III族窒化物半導体積層構造42は、基板41側から順に、バッファ層44と、GaN電子走行層45と、AlGaN電子供給層46とを積層して構成されている。
バッファ層44は、AlN層47と、第1AlGaN層48と、第2AlGaN層49とを積層して構成されている。この実施形態では、第1AlGaN層48と第2AlGaN層49との積層構造が、本発明のAlGaN積層構造の一例である。また、第2AlGaN層49が、本発明の基準AlGaN層の一例であり、第1AlGaN層48が、基準AlGaN層のAlN層側の面に接して配置されたAlGaN層の一例である。
【0037】
AlN層47の厚さは、50nm〜200nm、たとえば、120nmである。また、AlN層47のa軸平均格子定数LC2は、たとえば、0.311nm〜0.312nmであり、線膨張係数α2は、たとえば、4.1×10−6〜4.2×10−6(293K)である。
第1AlGaN層48は、この実施形態では、不純物が意図的に添加されていないアンドープAlGaN層として構成されている。ただし、第1AlGaN層48には、意図しない微量の不純物が含まれている場合がある。第1AlGaN層48の厚さは、100nm〜500nm、たとえば、140nmである。また、第1AlGaN層48の平均Al組成は、40〜60%(たとえば、50%)である。また、第1AlGaN層48のa軸平均格子定数LC3は、たとえば、0.314nm〜0.316nmであり、線膨張係数α3は、たとえば、4.6×10−6〜5.0×10−6(293K)である。
【0038】
また、第1AlGaN層48の上面(第2AlGaN層49との界面)のa軸面内格子定数LC3´は、たとえば、0.312nm〜0.314nmである。
第2AlGaN層49は、この実施形態では、不純物が意図的に添加されていないアンドープAlGaN層として構成されている。ただし、第2AlGaN層49には、意図しない微量の不純物が含まれている場合がある。第2AlGaN層49の厚さは、100nm〜500nm、たとえば、140nmである。また、第2AlGaN層49の平均Al組成は、第1AlGaN層48よりも10%以上小さく、具体的には、10〜30%(たとえば、20%)である。また、第2AlGaN層49のa軸平均格子定数LC4は、第1AlGaN層48の上面(第2AlGaN層49との界面)のa軸面内格子定数LC3´よりも大きく、AlGaNが本来有するa軸平均格子定数(0.316nm〜0.318nm)よりも小さく、たとえば、0.314nm〜0.316nmである。また、第2AlGaN層49の線膨張係数α4は、たとえば、5.0×10−6〜5.4×10−6(293K)である。
【0039】
GaN電子走行層45は、この実施形態では、不純物が意図的に添加されていないアンドープGaN層として構成されている。ただし、GaN電子走行層45には、意図しない微量の不純物が含まれている場合がある。GaN電子走行層45のa軸平均格子定数LC5は、たとえば、0.318nm〜0.319nmであり、線膨張係数α5は、たとえば、5.5×10−6〜5.6×10−6(293K)である。
【0040】
また、GaN電子走行層45のc軸格子定数の歪み度は、たとえば、−0.07%以上0(ゼロ)以下である。このc軸格子定数の歪み度は、たとえば、X線回折測定によってGaN電子走行層45のc軸格子定数を測定し、GaNが本来有するc軸格子定数と比較することにより得ることができる。GaN電子走行層45のc軸格子定数の歪み度が上記した範囲であれば、加わるc軸圧縮応力が抑制されており、クラックの発生を防ぐことができる。
【0041】
c軸およびa軸は、互いに直交する関係にある。そのため、これらの各方向に沿う圧縮応力および引張り応力は、図5に示すように、一方の方向(たとえばc軸方向)に圧縮応力が加わっているとき、他方の方向(たとえばa軸方向)に引張り応力が加わるというように、相反する関係にある。
したがって、上記のように、GaN電子走行層45のc軸格子定数の歪み度が−0.07%以上0(ゼロ)以下であるということは、GaN電子走行層45に加わるc軸圧縮応力が抑制されており、クラックの発生を防ぐことができるということである。
【0042】
AlGaN電子供給層46は、この実施形態では、不純物が意図的に添加されていないアンドープAlGaN層として構成されている。ただし、AlGaN電子供給層46には、意図しない微量の不純物が含まれている場合がある。AlGaN電子供給層46のa軸平均格子定数LC6は、たとえば、0.318nm〜0.319nmである。また、AlGaN電子供給層46の平均Al組成は、20〜30%(たとえば、25%)である。また、AlGaN電子供給層46の線膨張係数α6は、たとえば、5.0×10−6〜5.2×10−6(293K)である。
【0043】
このように、互いに組成の異なるGaN電子走行層45とAlGaN電子供給層46との接合がヘテロ接合となることから、GaN電子走行層45には、AlGaN電子供給層46との接合界面近傍において、2次元電子ガス(2DEG)が生じている。2次元電子ガスは、GaN電子走行層45におけるAlGaN電子供給層46との接合界面近傍のほぼ全域に存在しており、その濃度は、たとえば、8×1012cm−2〜2×1013cm−2である。HEMT素子3では、この2次元電子ガスを利用してソース−ドレイン間に電流を流すことによって素子動作が実行される。
【0044】
AlGaN電子供給層46上には、このAlGaN電子供給層46に接するように、前述したゲートパッド11の電極部25G、ソースパッド10の電極部20Sおよびドレインパッド9の電極部14Dが互いに間隔を空けて設けられている。
ゲートパッド11の電極部25G(以下、ゲート電極25G)は、AlGaN電子供給層46との間でショットキー接合を形成できる電極材料、たとえば、Ni/Au(ニッケル/金の合金)などで構成することができる。
【0045】
ソースパッド10の電極部20S(以下、ソース電極20S)およびドレインパッド9の電極部14D(以下、ドレイン電極14D)はいずれも、AlGaN電子供給層46に対してオーミック接触することができる電極材料、たとえば、Ti/Al(チタン/アルミニウムの合金)、Ti/Al/Ni/Au(チタン/アルミニウム/ニッケル/金の合金)、Ti/Al/Nb/Au(チタン/アルミニウム/ニオブ/金の合金)、Ti/Al/Mo/Au(チタン/アルミニウム/モリブデン/金の合金)などで構成することができる。
【0046】
また、基板41の裏面には、裏面電極51が形成されている。この裏面電極51は、端子フレーム2のベース部5に接続されることにより、基板41の電位を接地(グランド)電位にする。なお、基板41の電位をソース電極20Sと同一の電位にすることにより、ソース電極20Sを接地電位にしてもよい。
図6は、III族窒化物半導体積層構造を構成する各層を成長させるための処理装置の構成を説明するための図解図である。
【0047】
次いで、図6を参照して、III族窒化物半導体積層構造の作製方法を詳細に説明する。
処理室60内に、ヒータ61を内蔵したサセプタ62が配置されている。サセプタ62は、回転軸63に結合されており、この回転軸63は、処理室60外に配置された回転駆動機構64によって回転されるようになっている。これにより、サセプタ62に処理対象のウエハ65を保持させることにより、処理室60内でウエハ65を所定温度に昇温することができ、かつ、回転させることができる。ウエハ65は、前述のSi単結晶基板41を構成するSi単結晶ウエハである。
【0048】
処理室60には、排気配管66が接続されている。排気配管66はロータリポンプ等の排気設備に接続されている。これにより、処理室60内の圧力は、1/10気圧〜常圧とされ、処理室60内の雰囲気は常時排気されている。
一方、処理室60には、サセプタ62に保持されたウエハ65の表面に向けて原料ガスを供給するための原料ガス供給路70が導入されている。この原料ガス供給路70には、窒素原料ガスとしてのアンモニアを供給する窒素原料配管71と、ガリウム原料ガスとしてのトリメチルガリウム(TMG)を供給するガリウム原料配管72と、アルミニウム原料ガスとしてのトリメチルアルミニウム(TMAl)を供給するアルミニウム原料配管73と、ホウ素原料ガスとしてのトリエチルホウ素(TEB)を供給するホウ素原料配管74と、マグネシウム原料ガスとしてのエチルシクロペンタジエニルマグネシウム(EtCpMg)を供給するマグネシウム原料配管75と、シリコンの原料ガスとしてのシラン(SiH)を供給するシリコン原料配管76と、キャリヤガスを供給するキャリヤガス配管77とが接続されている。これらの原料配管71〜77には、それぞれバルブ81〜87が介装されている。各原料ガスは、いずれも水素もしくは窒素またはこれらの両方からなるキャリヤガスとともに供給されるようになっている。
【0049】
たとえば、(111)面を主面とするSi単結晶ウエハをウエハ65としてサセプタ62に保持させる。この状態で、バルブ81〜86は閉じておき、キャリヤガスバルブ87を開いて、処理室60内に、キャリヤガスが供給される。さらに、ヒータ61への通電が行われ、ウエハ温度が1000℃〜1100℃(たとえば、1050℃)まで昇温される。これにより、表面の荒れを生じさせることなくIII族窒化物半導体を成長させることができるようになる。
【0050】
ウエハ温度が1000℃〜1100℃に達するまで待機した後、窒素原料バルブ81およびアルミニウム原料バルブ83が開かれる。これにより、原料ガス供給路70から、キャリヤガスとともに、アンモニアおよびトリメチルアルミニウムが供給される。その結果、ウエハ65の表面に、AlN層47がエピタキシャル成長させられる。
次いで、第1AlGaN層48が形成される。すなわち、窒素原料バルブ81、ガリウム原料バルブ82およびアルミニウム原料バルブ83が開かれ、他のバルブ84〜86が閉じられる。これにより、ウエハ65に向けて、アンモニア、トリメチルガリウムおよびトリメチルアルミニウムが供給され、AlGaNからなる第1AlGaN層48が形成されることになる。この第1AlGaN層48の形成時には、ウエハ65の温度は、1000℃〜1100℃(たとえば1050℃)とされることが好ましい。
【0051】
次いで、第2AlGaN層49が形成される。すなわち、窒素原料バルブ81、ガリウム原料バルブ82およびアルミニウム原料バルブ83が開かれ、他のバルブ84〜86が閉じられる。これにより、ウエハ65に向けて、アンモニア、トリメチルガリウムおよびトリメチルアルミニウムが供給され、AlGaNからなる第2AlGaN層49が形成されることになる。この第2AlGaN層49の形成時には、ウエハ65の温度は、1000℃〜1100℃(たとえば1050℃)とされることが好ましい。
【0052】
次いで、GaN電子走行層45が形成される。GaN電子走行層45の形成に際しては、窒素原料バルブ81およびガリウム原料バルブ82を開いてアンモニアおよびトリメチルガリウムをウエハ65へと供給することによりGaN層を成長させる。GaN電子走行層45の形成時には、ウエハ65の温度は、たとえば、1000℃〜1100℃(たとえば1050℃)とされることが好ましい。
【0053】
次いで、AlGaN電子供給層46が形成される。すなわち、窒素原料バルブ81、ガリウム原料バルブ82およびアルミニウム原料バルブ83が開かれ、他のバルブ84,85が閉じられる。これにより、ウエハ65に向けて、アンモニア、トリメチルガリウムおよびトリメチルアルミニウムが供給され、AlGaN電子供給層46が形成されることになる。このAlGaN電子供給層46の形成時には、ウエハ65の温度は、1000℃〜1100℃(たとえば1050℃)とされることが好ましい。
【0054】
その後、ウエハ65が、常温で20分〜60分間放置され、冷却される。こうしてIII族窒化物半導体積層構造42が形成される。
以上のように、この実施形態によれば、Si単結晶基板41上に、AlN層47、第1AlGaN層48(Al平均組成50%)および第2AlGaN層49(Al平均組成20%)をこの順で積層してなるバッファ層44が設けられており、GaN電子走行層45は、第2AlGaN層49の主面(c面)に接して形成されている。
【0055】
これにより、AlN層47からGaN電子走行層45までのa軸平均格子定数を、LC2(0.311nm)、LC3(0.314nm)およびLC4(0.316nm)とGaN電子走行層のa軸平均格子定数LC5(0.318nm)に近い値にまで段階的に大きくすることができる。そのため、GaN電子走行層45と、当該GaN電子走行層45に接する第2AlGaN層49とのa軸平均格子定数の差(LC5−LC4)を小さくすることができる。その結果、GaN電子走行層45の厚さを自由に設計することができる。よって、GaN電子走行層45を厚く設計することにより、HEMT素子3の耐圧を向上させることができる。
【0056】
また、AlN層47と第1AlGaN層48とのa軸平均格子定数差(LC3−LC2)に起因して第1AlGaN層48に加わる圧縮応力を、第2AlGaN層49にまで伝播させることができる。これにより、第2AlGaN層49のa軸平均格子定数LC4が、第2AlGaN層49に接する第1AlGaN層48のa軸面内格子定数LC3´よりも大きく、第2AlGaN層49が本来有するa軸平均格子定数よりも小さくなっている。つまり、第2AlGaN層49には、第1AlGaN層48のa軸面内格子定数LC3´に揃わない程度のa軸圧縮応力が加わっている。そして、このa軸圧縮応力を、GaN電子走行層45に加えることができる。
【0057】
そのため、III族窒化物半導体積層構造42の形成後の冷却中また冷却後に、基板41とGaN電子走行層45との線膨張係数の差(α5−α1)に起因する引張り応力がGaN電子走行層45に生じても、その引張り応力を、第2AlGaN層49からGaN電子走行層45に加えられる圧縮応力によって緩和することができる。
その結果、上記のように、GaN電子走行層45のc軸格子定数の歪み度を−0.07%以上0(ゼロ)以下にすることができ、すなわち、GaN電子走行層45を、クラックが発生しない程度のa軸引張り応力が加わった状態に保持することができる。よって、GaN電子走行層45のクラックおよび基板41の反りを軽減することができる。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、バッファ層44のAlGaN積層構造は、互いにAl組成の異なる2つのAlGaN層48,49で構成されている必要はなく、たとえば、図7に示すように、AlN層47側から順に、第1AlGaN層52(平均Al組成が、たとえば80%)、第2AlGaN層53(平均Al組成が、たとえば60%)、第3AlGaN層54(平均Al組成が、たとえば40%)および第4AlGaN層55(平均Al組成が、たとえば20%)を積層して構成されていてもよい。また、互いにAl組成が異なる3つのAlGaN層、5つのAlGaN層、およびそれ以上の数のAlGaN層を積層して構成されていてもよい。
【0059】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【実施例】
【0060】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、この発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
<実施例>
実施例は、GaN電子走行層のc軸格子定数の歪み度および第2AlGaN層の格子定数が、第2AlGaN層のAl組成の変化に伴ってどのように変化するかを確認するために行ったものである。
【0061】
まず、(111)面を主面とするSi単結晶基板の表面に、AlN層(120nm厚)をエピタキシャル成長させた。次いで、第1AlGaN層(平均Al組成50% 140nm厚)および第2AlGaN層(平均Al組成10% 140nm厚)を順にエピタキシャル成長させた。これにより、バッファ層を形成した。
次いで、第2AlGaN層上に、GaN電子走行層(1000nm厚)およびAlGaN電子供給層を順に形成することにより、図9に示すIII族窒化物半導体積層構造を作製した。その後、AlGaN電子供給層上にソース電極およびドレイン電極を形成した。
【0062】
また、平均Al組成10%の第2AlGaN層に代えて、平均Al組成17%および25%の第2AlGaN層が設けられたIII族窒化物半導体積層構造を、同様に作製した。
<評価>
(1)GaN電子走行層のc軸歪み度の測定
実施例で得られたIII族窒化物半導体積層構造のGaN電子走行層に対して、X線回折測定を行い、GaN電子走行層のc軸格子定数を測定した。これにより、GaN電子走行層に加わっている残留応力の方向およびその大きさを評価した。結果を、図9に示す。
【0063】
図9により、第2AlGaN層の平均Al組成によらず、GaN電子走行層の残留応力は、c軸に対して圧縮(a軸に対して引張り)であることがわかった。これは、Si単結晶基板とGaN電子走行層との線膨張係数差に起因するものと考えられる。
つまり、GaN電子走行層にはa軸引っ張り応力がかかっているが、c軸歪み度の大きさが−0.07以上であり、言い換えると、当該a軸引張り応力は、GaN電子走行層にクラックが発生しない程度の適度な大きさであることが確認された。
【0064】
また、第2AlGaN層の平均Al組成が17%のときに、GaN電子走行層の残留応力の大きさが最小になっており、3つの実施例の中では最適値であることがわかった。
(2)第2AlGaN層の格子定数の測定
実施例で得られたIII族窒化物半導体積層構造の第2AlGaNに対して、X線回折測定を行い、第2AlGaN層のa軸格子定数を測定した。結果を、図10に示す。また、GaN電子走行層とのa軸格子定数の差を下記表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
図10において、直線は、AlGaN層が本来有するc軸格子定数とa軸格子定数との関係を表したものである。この直線に対して左側にプロットがあれば、当該プロットで示されるAlGaN層がa軸圧縮応力を受けていることを示しており、右側にプロットがあれば、当該プロットで示されるAlGaN層がa軸引張り応力を受けていることを示している。また、直線とプロットとの距離が、当該応力の大きさを表している。つまり、直線とプロットとの距離が大きいほど、当該プロットで示されるAlGaN層がより大きな応力を受けていることを表している。
【0067】
図10により、第2AlGaN層の平均Al組成によらず、第2AlGaN層には適度なa軸圧縮応力が加わっていることがわかった。これにより、そのa軸圧縮応力がGaN電子走行層に作用し、Si単結晶基板とGaN電子走行層との線膨張係数差に起因する引張り応力を緩和していることが確認された。
【符号の説明】
【0068】
1 HEMTパッケージ
3 HEMT素子
4 樹脂パッケージ
41 基板
43 (基板の)主面
44 バッファ層
45 GaN電子走行層
46 AlGaN電子供給層
47 AlN層
48 第1AlGaN層
49 第2AlGaN層
52 第1AlGaN層
53 第2AlGaN層
54 第3AlGaN層
55 第4AlGaN層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si基板と、
前記Si基板の主面に形成されたAlN層および当該AlN層上に形成され、複数のAlGaN層を積層して形成されたAlGaN積層構造とからなるバッファ層と、
前記AlGaN積層構造上に形成されたGaN電子走行層と、
前記GaN電子走行層上に形成されたAlGaN電子供給層とを含み、
前記AlGaN積層構造では、或る基準AlGaN層のAl組成が、当該基準AlGaN層よりも前記AlN層に近い側のAlGaN層のAl組成よりも小さい、窒化物半導体素子。
【請求項2】
前記AlGaN積層構造では、前記基準AlGaN層のAl組成(%)と、当該基準AlGaN層の前記AlN層側の面に接して配置されたAlGaN層のAl組成(%)との差が10%以上である、請求項1に記載の窒化物半導体素子。
【請求項3】
前記AlGaN積層構造が、前記AlN層から順に、Al組成が50%の第1AlGaN層およびAl組成が20%の第2AlGaN層が積層された構造からなる、請求項1または2に記載の窒化物半導体素子。
【請求項4】
前記AlGaN積層構造が、前記AlN層から順に、Al組成が80%の第1AlGaN層、Al組成が60%の第2AlGaN層、Al組成が40%の第3AlGaN層およびAl組成が20%の第4AlGaN層が積層された構造からなる、請求項1または2に記載の窒化物半導体素子。
【請求項5】
前記バッファ層の主面の面方位がc面であり、
前記AlGaN積層構造では、前記基準AlGaN層のa軸平均格子定数が、当該基準AlGaN層の前記AlN層側の面に接して配置されたAlGaN層のa軸面内格子定数よりも大きく、当該基準AlGaN層が本来有するa軸平均格子定数よりも小さい、請求項1〜4のいずれか一項に記載の窒化物半導体素子。
【請求項6】
前記Si基板の前記主面が(111)面である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の窒化物半導体素子。
【請求項7】
前記GaN電子走行層のc軸格子定数の歪み度が、−0.07%以上である、請求項6に記載の窒化物半導体素子。
【請求項8】
前記GaN電子供給層の厚さが、500nm〜2000nmである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の窒化物半導体素子。
【請求項9】
前記AlN層の厚さが、50nm〜200nmである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の窒化物半導体素子。
【請求項10】
前記第1AlGaN層の厚さが、100nm〜500nmである、請求項3および請求項3に係る請求項6〜9のいずれか一項に記載の窒化物半導体素子。
【請求項11】
前記第2AlGaN層の厚さが、100nm〜500nmである、請求項3および10、ならびに請求項3に係る請求項6〜9のいずれか一項に記載の窒化物半導体素子。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の窒化物半導体素子と、
前記窒化物半導体素子を覆うように形成された樹脂パッケージとを含む、窒化物半導体パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−109345(P2012−109345A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255912(P2010−255912)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】