説明

薄膜トランジスタおよびその製造方法、ならびに電子機器

【課題】性能向上を図ることが可能な薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】有機TFTは、ゲート電極2および有機半導体層6と、それらの間に位置すると共に有機半導体層6に隣接するゲート絶縁層3とを備えている。このゲート絶縁層3は、スチレンおよびその誘導体のうちの少なくとも一方である第1単量体(α−メチルスチレンなど)と、炭素間二重結合および架橋性反応基を有する第2単量体(メタクリル酸グリシジルなど)とが共重合および架橋された材料を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャネル層として有機半導体層を備えた薄膜トランジスタおよびその製造方法、ならびに薄膜トランジスタを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、チャネル層として有機半導体層を用いた薄膜トランジスタ(TFT)が注目されており、有機TFTと呼ばれている。有機TFTでは、有機半導体層がゲート絶縁層を介してゲート電極に対向配置されている。
【0003】
有機TFTは、チャネル層として無機半導体層を用いた従来の無機TFTに置き換わるデバイスとして有力視されており、その用途としては、表示装置などの多様な電子機器が挙げられる。有機TFTでは、無機TFTと比較して、いくつかの利点が得られる。第1に、有機半導体層を塗布形成できるため、低コスト化を実現できる。第2に、蒸着法などよりも低い温度で有機半導体層を形成できるため、低耐熱性のプラスチックフィルムなどの基体に有機TFTを実装できる。第3に、有機半導体材料を化学的に修飾(所望の官能基などを導入)することで、有機半導体層の物性を制御できる。
【0004】
特に、プラスチックフィルムなどの可撓性の基体に有機TFTを実装することで、その可撓性を活かして折り曲げ可能な電子機器を実現できる。この場合には、蒸着法などよりも低い温度で有機半導体層を形成できるため、基体が熱的ダメージを受けることを防止できる。そこで、印刷法などを用いて有機半導体層を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2003/016599号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機TFTの性能を向上させるためには、有機半導体層をゲート電極から絶縁しているゲート絶縁層の特性が重要となる。このゲート絶縁層の特性としては、耐溶剤性、熱安定性および緻密性などが要求される。
【0007】
しかしながら、従来の有機TFTでは、ゲート絶縁層の特性が未だ十分であるとは言えない。特に、耐溶剤性が低い有機半導体材料を用いると、フォトリソグラフィ工程などでゲート絶縁層が有機溶剤により溶解されやすくなる。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、性能向上を図ることが可能な薄膜トランジスタおよびその製造方法、ならびに電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の薄膜トランジスタは、ゲート電極および有機半導体層と、それらの間に位置すると共に有機半導体層に隣接するゲート絶縁層とを備えている。このゲート絶縁層は、スチレンおよびその誘導体のうちの少なくとも一方である第1単量体と、炭素間二重結合および架橋性反応基を有する第2単量体とが共重合および架橋された材料を含んでいる。また、本発明の電子機器は、上記した薄膜トランジスタを備えている。
【0010】
本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、以下の工程を含んでいる。ゲート電極を形成する工程および有機半導体層を形成する工程である。また、ゲート電極と有機半導体層との間に、スチレンおよびその誘導体のうちの少なくとも一方である第1単量体と炭素間二重結合および架橋性反応基を有する第2単量体とが共重合および架橋された材料を含むと共に有機半導体層に隣接するようにゲート絶縁層を形成する工程である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の薄膜トランジスタおよびその製造方法、ならびに電子機器によれば、有機半導体層に隣接するゲート絶縁層が上記した材料(架橋型共重合材料)を含んでいる。よって、ゲート絶縁層の耐溶剤性、熱安定性および緻密性が向上するため、性能向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の薄膜トランジスタの構成を表す断面図である。
【図2】薄膜トランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図3】図2に続く工程を説明するための断面図である。
【図4】図3に続く工程を説明するための断面図である。
【図5】図4に続く工程を説明するための断面図である。
【図6】図5に続く工程を説明するための断面図である。
【図7】図6に続く工程を説明するための断面図である。
【図8】薄膜トランジスタの構成に関する第1変形例を説明するための断面図である。
【図9】薄膜トランジスタの構成に関する第2変形例を説明するための断面図である。
【図10】薄膜トランジスタの構成に関する第3変形例を説明するための断面図である。
【図11】薄膜トランジスタの適用例である液晶表示装置の主要部の構成を表す断面図である。
【図12】図11に示した液晶表示装置の回路構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.薄膜トランジスタ
1−1.薄膜トランジスタの構成
1−2.薄膜トランジスタの製造方法
2.薄膜トランジスタの適用例(電子機器)
【0014】
<1.薄膜トランジスタ>
<1−1.薄膜トランジスタの構成>
図1は、本発明の一実施形態の薄膜トランジスタである有機TFTの断面構成を表している。
【0015】
この有機TFTは、チャネル層である有機半導体層6がゲート絶縁層3を介してゲート電極2に対向配置されると共に、その有機半導体層6にソース電極4およびドレイン電極5が接続されたものである。
【0016】
ここでは、例えば、基体1の上に、ゲート電極2と、ゲート絶縁層3と、ソース電極4およびドレイン電極5と、有機半導体層6とがこの順に積層されている。この有機TFTは、ゲート電極2が有機半導体層6よりも下側(基体1に近い側)に位置すると共にソース電極4およびドレイン電極5が有機半導体層6の下側に重なっているボトムゲート・ボトムコンタクト型である。
【0017】
基体1は、例えば、プラスチック材料、金属材料または無機材料のいずれか1種類または2種類以上により形成されている。
【0018】
プラスチック材料は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)またはポリエチルエーテルケトン(PEEK)などである。金属材料は、例えば、アルミニウム、ニッケルまたはステンレスなどである。無機材料は、例えば、ケイ素(Si)、酸化ケイ素(SiOx )、窒化ケイ素(SiNx )、酸化アルミニウム(AlOx )または他の金属酸化物などであり、その酸化ケイ素には、ガラス、石英またはスピンオングラス(SOG)などの酸化ケイ素系材料も含まれる。
【0019】
この基体1は、ウェハなどの剛性を有する基板でもよいし、可撓性を有するフィルムでもよい。また、基体1の表面には、所定の機能を有する各種の被覆層が設けられていてもよい。この被覆層は、例えば、密着性を確保するためのバッファ層またはガス放出を防止するためのガスバリア層などである。
【0020】
なお、基体1は、単層でも多層でもよい。多層の場合には、上記した各種材料の層が2層以上積層されていてもよい。このように単層でも多層でもよいことは、ゲート電極2、ゲート絶縁層3、ソース電極4、ドレイン電極5および有機半導体層6についても同様である。
【0021】
ゲート電極2は、例えば、金属材料、無機導電性材料、有機導電性材料または炭素材料のいずれか1種類または2種類以上により形成されている。
【0022】
金属材料は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、インジウム(In)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)またはそれらを含む合金などである。無機導電性材料は、例えば、多結晶シリコン、酸化インジウム(In2 3 )、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)または酸化亜鉛(ZnO)などである。有機導電性材料は、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリスチレンスルホン酸(PSS)またはポリアニリンなどである。炭素材料は、例えば、グラファイトなどである。
【0023】
ゲート絶縁層3は、ゲート電極2と有機半導体層6との間に位置しており、その有機半導体層6に隣接している。このゲート絶縁層3は、特定の2種類の単量体(第1および第2単量体)が共重合および架橋された絶縁性の材料(架橋型共重合材料)を含んでいる。
【0024】
ゲート絶縁層3が有機半導体層6に隣接しているのは、そのゲート絶縁層3が有機TFTの動作時において電子の流路(有機半導体層6)に隣接する層であるため、以下で説明する配向制御などの理由により、その層が架橋型共重合材料を含んでいなければならないからである。
【0025】
ゲート絶縁層3が架橋型共重合材料を含んでいるのは、以下の理由による。第1に、優れた絶縁性が得られる。第2に、ゲート絶縁層3の耐溶剤性および熱安定性が向上する。これにより、有機TFTの製造工程においてゲート絶縁層3が有機溶剤により溶解されにくくなると共に熱的ダメージを受けにくくなる。第3に、ゲート絶縁層3の緻密性が向上するため、ゲート電極2と有機半導体層6との間の絶縁耐圧が高くなる。第4に、有機半導体層6の形成時において有機半導体材料の配向が良好に制御されると共に、ゲート絶縁層3が有機半導体材料の配向に悪影響を及ぼしにくくなる。
【0026】
第1単量体は、スチレンおよびその誘導体のうちの少なくとも一方である。すなわち、第1単量体は、スチレンでもよいし、1種類または2種類以上のスチレンの誘導体でもよいし、両者の混合物でもよい。第1単量体がスチレン骨格(ベンゼン環およびそれに結合された炭素間二重結合)を有しているのは、主に、ベンゼン環により優れた絶縁性が得られると共に、炭素間二重結合により第1単量体が第2単量体と安定かつ容易に共重合しやすいからである。
【0027】
スチレンの誘導体は、スチレンに1または2以上の置換基が導入されたものである。この置換基の種類としては、特に限定されないが、中でも、炭化水素基が好ましい。置換基が誘導体の化学的性質に影響を及ぼしにくいからである。この炭化水素基は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびシクロアルキル基のうちの少なくとも1種である。置換基が鎖状(アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基)である場合には、その炭素数は、特に限定されないが、中でも、できるだけ少ないことが好ましく、3以下、さらに2以下であることがより好ましい。立体障害が生じにくいため、第1単量体が第2単量体と安定かつ容易に共重合しやすいからである。
【0028】
特に、置換基としては、アルキル基が好ましい。置換基が誘導体の化学的性質により影響を及ぼしにくいと共に、第1単量体が第2単量体とより安定かつ容易に共重合しやすいからである。このため、スチレンの誘導体としては、1または2以上のアルキル基を有するアルキルスチレンが好ましい。このアルキルスチレンは、例えば、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−ブチルスチレンまたは4−メチルスチレンなどである。中でも、炭素数が2以下であるα−メチルスチレン、α−エチルスチレンまたは4−メチルスチレンがより好ましい。
【0029】
第2単量体は、炭素間二重結合および架橋性反応基を有する材料である。第2単量体が架橋性反応基を有しているのは、共重合材料(第1および第2単量体が共重合された材料)が架橋されるため、ゲート絶縁層3の耐溶剤性、熱安定性および緻密性が向上すると共に、有機半導体層6の形成時において有機半導体材料の配向が良好に制御されるからである。なお、炭素間二重結合は、第2単量体が第1単量体と共重合するために用いられる。
【0030】
架橋性反応基は、架橋ネットワークを形成して共重合材料を架橋させる基である。この架橋性反応基により共重合体が架橋(硬化)されるため、ゲート絶縁層3の耐溶剤性等が向上すると共に、有機半導体材料の配向が良好に制御される。なお、架橋性反応基の硬化タイプは、熱硬化でもエネルギー線硬化でもよいし、それ以外でもよい。もちろん、第2単量体は、硬化タイプが異なる2種類以上の架橋性反応基を有していてもよい。
【0031】
架橋性反応基の種類としては、特に限定されないが、中でも、エポキシ基(−C2 3 O)、グリシジル基(−CH2 −C2 3 O)、水酸基(−OH)、アクリロイル基(−CO−CH=CH2 )、メタクリロイル基(−CO−C(CH3 )=CH2 )およびアリル基(−CH2 −CH=CH2 )のうちの少なくとも1種が好ましい。架橋ネットワークを安定かつ容易に形成しやすいからである。
【0032】
エポキシ基またはグリシジル基を有する場合には、例えば、加熱により架橋反応が生じる。水酸基を有する場合には、例えば、加熱(イソシアネートまたはメラミンなどとの反応)により架橋反応が生じる。アクリロイル基、メタクリロイル基またはアリル基を有する場合には、例えば、過酸化物などを用いた加熱またはラジカル重合開始剤などを用いた紫外線の照射により架橋反応が生じる。
【0033】
第2単量体のうち、架橋性反応基以外の部分(架橋性反応基と結合される結合基)の種類は、上記したように炭素間二重結合を有していれば、特に限定されない。この結合基としては、例えば、メタクリロイル基、アクリロイル基、アリル基またはそれらに他の基(スペーサ)が結合された基などが挙げられる。このスペーサは、例えば、アルキレン基またはポリオキシアルキレン基などである。アルキレン基の炭素数は、特に限定されないが、中でも、1〜30であることが好ましい。ポリオキシアルキレン基は、例えば、ポリオキシエチレン基([−CH2 CH2 O−]n :nは1以上の整数)またはポリオキシプロピレン基([−CH2 CH2 CH2 O−]n )などである。
【0034】
第2単量体の種類は、上記したように炭素間二重結合および架橋性反応基を有していれば、特に限定されない。一例を挙げると、架橋性反応基としてグリシジル基を有する第2単量体は、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジルまたはアリルグリシジルエーテルなどである。
【0035】
架橋型共重合材料の分子量(重量平均分子量Mw)は、特に限定されないが、中でも、5000以上1000000以下であることが好ましい。上記した優れた特性が得られると共に、多くの有機溶剤に対して安定に溶解しやすいからである。この溶解性は、塗布法または印刷法などの溶液法を用いてゲート絶縁層3を形成する場合に利点となる。
【0036】
なお、ゲート絶縁層3は、架橋型共重合材料と一緒に他の絶縁性材料を含んでいてもよい。この他の絶縁性材料は、例えば、無機絶縁性材料または有機絶縁性材料のいずれか1種類または2種類以上である。無機絶縁性材料は、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン(TiO2 )、酸化ハフニウム(HfOx )またはチタン酸バリウム(BaTiO3 )などである。有機絶縁性材料は、例えば、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリイミド、ポリメタクリル酸アクリレート、感光性ポリイミド、感光性ノボラック樹脂またはポリパラキシリレンなどである。
【0037】
また、ゲート絶縁層3は、ゲート電極2に隣接していてもいなくてもよい。ゲート絶縁層3がゲート電極2に隣接していない場合には、例えば、ゲート電極2とゲート絶縁層3との間に1層または2層以上の他のゲート絶縁層が挿入される。この他のゲート絶縁層の形成材料は、例えば、ゲート絶縁層3に架橋型共重合材料と一緒に含まれる他の絶縁性材料と同様である。
【0038】
ソース電極4およびドレイン電極5は、例えば、ゲート電極2と同様の材料により形成されており、有機半導体層6にオーミック接触していることが好ましい。ただし、ソース電極4およびドレイン電極5の形成材料は、ゲート電極2の形成材料と同じでも違ってもよい。
【0039】
有機半導体層6は、例えば、以下の有機半導体材料のいずれか1種類または2種類以上により形成されている。(1)ポリピロール、(2)ポリチオフェン、(3)ポリイソチアナフテンなどのイソチアナフテン、(4)ポリチェニレンビニレンなどのチェニレンビニレン、(5)ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)、(6)ポリアニリン、(7)ポリアセチレン、(8)ポリジアセチレン、(9)ポリアズレン、(10)ポリピレン、(11)ポリカルバゾール、(12)ポリセレノフェン、(13)ポリフラン、(14)ポリ(p−フェニレン)、(15)ポリインドール、(16)ポリピリダジン、(17)ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ピレン、ジベンゾピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレンまたはサーカムアントラセンなどのアセン、(18)アセン類のうちの炭素の一部が窒素(N)、硫黄(S)または酸素(O)などの原子、あるいはカルボニル基などの官能基により置換された誘導体、例えば、トリフェノジオキサジン、トリフェノジチアジンまたはヘキサセン−6,15−キノンなど、(19)ポリビニルカルバゾール、ポリフエニレンスルフィドまたはポリビニレンスルフィドなどの高分子材料および多環縮合体、(20)上記した高分子材料と同じ繰り返し単位を有するオリゴマー、(21)銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン、(22)テトラチアフルバレン、(23)テトラチアペンタレン、(24)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチルベンジル)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミドと共に、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロオクチル)、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロブチル)またはN,N’−ジオクチルナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド誘導体、(25)ナフタレン2,3,6,7テトラカルボン酸ジイミドなどのナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、(26)アントラセン2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのアントラセンテトラカルボン酸ジイミド類に代表される縮合環テトラカルボン酸ジイミド、(27)C60、C70、C76、C78またはC84などのフラーレン、(28)単層ナノチューブ(SWNT)などのカーボンナノチューブ、(29)メロシアニン色素またはヘミシアニン色素などの色素、または(30)2,9−ジナフチル−ペリ−キサンテノキサンテンなどのペリ−キサンテノキサンテン化合物である。なお、有機半導体材料は、上記した一連の材料の誘導体でもよい。
【0040】
<1−2.薄膜トランジスタの製造方法>
図2〜図7は、有機TFTの製造方法を説明するためのものであり、いずれも図1に対応する断面構成を示している。以下では、一連の構成要素の形成材料については既に説明したので、それらの説明を随時省略する。
【0041】
最初に、図2に示したように、基体1の上に、開口部7Kを有するフォトレジストパターン7を形成する。この開口部7Kは、後工程でゲート電極2を形成するためのスペースである。フォトレジストパターン7を形成する場合には、例えば、基体1の表面にフォトレジストを塗布してフォトレジスト膜(図示せず)を形成したのち、そのフォトレジスト膜をパターニングする。このフォトレジスト膜のパターニング方法は、例えば、フォトリソグラフィ法、レーザ描画法、電子線描画法またはX線描画法などである。ただし、レジスト転写法などを用いてフォトレジストパターン7を形成してもよい。
【0042】
続いて、フォトレジストパターン7および開口部7K(基体1の露出面)を覆うように電極層8を形成する。この電極層8の形成方法は、例えば、物理的気相成長(PVD)法、化学的気相成長(CVD)法、リフトオフ法、シャドウマスク法または鍍金法などである。PVD法は、例えば、(1)電子ビーム蒸着法、抵抗加熱法、フラッシュ蒸着法またはルツボ加熱法などの真空蒸着法、(2)プラズマ蒸着法、(3)2極スパッタリング法、直流スパッタリング法、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法またはバイアススパッタリング法などのスパッタリング法、(4)DC法、RF法、多陰極法、活性化反応法、電界蒸着法、高周波イオンプレーティング法または反応性イオンプレーティング法などのイオンプレーティング法である。CVD法は、例えば、有機金属CVD(MOCVD)法などである。鍍金法は、例えば、電解鍍金法または無電解鍍金法などである。
【0043】
なお、電極層8の形成方法として、形成温度が高くなりやすい真空蒸着法などを用いる場合には、基体1の支持体として、温度調整可能な支持ホルダ(図示せず)を用いることが好ましい。基体1の熱変形などを抑制できるからである。
【0044】
また、電極層8を形成する前に、その電極層8と基体1との密着性を高めるための密着層(図示せず)を形成してもよい。この密着層の形成材料は、例えば、タンタルなどの金属材料であり、その形成方法は、例えば、電極層8の形成方法と同じである。
【0045】
続いて、リフトオフ法を用いて、フォトレジストパターン7を電極層8の一部と一緒に除去する。このフォトレジストパターン7の除去方法は、例えば、アッシング法などである。これにより、図3に示したように、基体1の上にゲート電極2がパターン形成される。
【0046】
続いて、図4に示したように、ゲート電極2およびその周辺の基体1を覆うようにゲート絶縁層3を形成する。
【0047】
この場合には、最初に、第1および第2単量体を混合して有機溶剤などに溶解させたのち、その第1および第2単量体を共重合させて共重合材料を得る。第1および第2単量体を混合する場合には、第1単量体の割合(重量)を第2単量体の割合よりも多くすることが好ましい。ゲート絶縁層3の本質的な機能である絶縁性は、主に第1単量体に起因して得られるからである。第1および第2単量体を共重合させる場合には、必要に応じて、重合開始剤または分子量調整剤などの他の材料を一緒に混合してもよい。
【0048】
第1および第2単量体の混合比は、例えば、以下の通りである。第1単量体の割合は、50重量%以上99重量以下であることが好ましく、70重量%以上97重量%以下であることがより好ましい。50重量%未満では、絶縁性が低下すると共に有機半導体層6(有機半導体材料)の配向が十分に制御されない可能性があるからである。第2単量体の割合は、1重量%以上50重量%以下であることが好ましく、3重量%以上30重量%以下であることがより好ましい。1重量%未満では、封止性、耐熱性および架橋性が低下する可能性があり、50重量%以上では、架橋時の激しい熱収縮に起因して加工性が低下すると共に極性成分の増大に起因して吸水性および誘電率が高くなる可能性があるからである。第1および第2単量体の具体的な混合比(重量比)は、1:1以上50:1以下であることが好ましく、10:1以上50:1以下、さらに20:1以上50:1以下であることがより好ましい。
【0049】
続いて、共重合材料と、必要に応じて硬化剤および触媒などの他の材料とを混合して有機溶剤などに溶解させたのち、その共重合材料を架橋させて架橋型共重合材料を得る。この共重合材料を架橋させるためには、例えば、第2単量体の架橋性反応基の種類に応じて、加熱したり、エネルギー線を照射する。硬化剤および触媒の添加量は、架橋性反応基に対して当量であればよい。具体的には、例えば、架橋性反応基がエポキシ基である場合には、硬化剤および触媒の添加量は、共重合材料100重量部に対して0.01重量部以上50重量部以下であることが好ましく、0.1重量部以上20重量部以下であることがより好ましい。特に、熱硬化型のエポキシ基では、共重合材料100重量部に対して0.01重量以上5重量部であることが好ましく、エネルギー線硬化型のエポキシ基では、共重合材料100重量部に対して1重量部以上50重量部であることが好ましい。なお、共重合反応および架橋反応を別個に行う代わりに、同時に行ってもよい。
【0050】
硬化剤は、例えば、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸または4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸などである。
【0051】
熱硬化用の触媒は、例えば、以下の材料である。(1)ポリメチレンジアミン、ジプロピレンジアミンまたはトリメチルヘキサメチレンジアミンなどの鎖状脂肪族第一ジアミン、(2)イミノビスプロピルアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサンまたはテトラエチレンペンタミンなどの鎖状脂肪族第一ポリアミン、(3)N−アミノエチルピペラジンまたはビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ポリアミン、(4)メタキシリレンジアミンなどの芳香族含有脂肪族第一アミン、(5)メタフエニレンジアミン、2,4−ジアミノジフエニルアミンまたはジアミノジフエニルスルホンなどの芳香族第一アミン、(6)ジメチルアミン、ジエチルアミンなどの第二アミン、(7)ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジンまたはα−ピコリンなどの第三アミン、(8)フタル酸無水物、ピロメリツト酸無水物またはグリレロ―ルトリス(アンヒドロトリメリテ―ト)などの芳香族系酸無水物、(9)マレイン酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物またはメチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物などの環状脂肪族酸無水物、(10)ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物またはポリセバシン酸無水物などの脂肪族酸無水物、(11)ダイマ―酸とポリアミンの縮合反応により得られるポリアミド樹脂、(12)2−メチルイミダゾ―ル、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾ―ルまたは1−シアノエチル−2−フエニルイミダゾリニウム・トリメリテ―トなどのイミダゾ―ル類、(13)三フツ化ホウ素−アミン錯体、有機酸ヒドラジツドまたはポリアミンの塩などの潜在性硬化剤、(14)液状ポリメルカプタン、ポリスルフイドなどのポリメルカプタン、(15)ノボラック型フエノ―ル樹脂またはポリビニルフエノ―ルなどの合成樹脂初期縮合物である。
【0052】
エネルギー線硬化用の触媒は、例えば、以下の材料である。(1)フエニルジアゾニウムテトラフルオロボレ―トまたは4−メトキシフエニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフエ―トなどのアリ―ルジアゾニウム塩、(2)ジフエニルヨウドニウムテトラフルオロボレ―トまたはジ(4−ブチルフエニル)ヨウドニウムヘキサフルオロホスフエ―トなどのジアリ―ルヨウドニウム塩、(3)トリフエニルスルホニウムヘキサフルオロホスフエ―ト、トリフエニルスルホニウムテトラフルオロボレ―トまたはトリス(4−メトキシフエニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフエ―トなどのトリアリ―ルスルホニウム塩、(4)ジメチルフエナシルスルホニウムヘキサフルオロホスフエ―トまたはフエナシルテトラメチレンスルホニウムテトラフルオロボレ―トなどのジアルキルフエナシルスルホニウム塩、(5)3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフエニルスルホニウムテトラフルオロボレ―トまたは3,5−ジブチル−4−ヒドロキシフエニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネ―トなどのジアルキル−4−ヒドロキシフエニルスルホニウム塩、(6)α−ヒドロキシメチルベンゾインスルホン酸エステルまたはN−ヒドロキシイミドスルホネ―ト、α−スルホニロキシケトンなどのスルホン酸エステル、(7)2−(4−メトキシフエニル)−4,6−ジ(トリクロロメチル)トリアジンなどのトリアジン化合物、(8)オルソジアゾナフトキノン−4−スルホン酸エステルまたはオルソジアゾナフトキノン−5−スルホン酸エステルなどのジアゾナフトキノン化合物である。
【0053】
なお、共重合材料と混合する他の材料は、硬化剤および触媒以外の材料でもよい。このような材料としては、例えば、硬化促進剤、離型剤、可撓化剤、カップリング剤または充填剤などが挙げられる。
【0054】
最後に、架橋型共重合材料を有機溶剤などに溶解させて溶液を調製したのち、その溶液を塗布して乾燥させる。この溶液を調製するために用いる有機溶剤は、例えば、芳香族炭化水素、ケトンまたは非芳香族炭化水素などの1種類または2種類以上である。芳香族炭化水素は、例えば、トルエン、キシレン、メシチレンまたはテトラリンなどである。ケトンは、例えば、シクロペンタノンまたはシクロヘキサノンなどである。非芳香族炭化水素は、例えば、デカリンなどである。なお、有機溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などでもよい。溶液の塗布方法は、例えば、塗布法、印刷法、浸漬法、キャスティング法またはゾルゲル法などである。塗布法は、例えば、スピンコート法、スリットコート法、バーコート法またはスプレーコート法などである。印刷法は、例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法またはグラビアオフセット印刷法などである。これにより、ゲート絶縁層3が形成される。
【0055】
続いて、フォトレジストパターン7を形成した場合(図2)と同様の手順により、ゲート絶縁層3の上に、開口部9Kを有するフォトレジストパターン9を形成する。この開口部9Kは、後工程でソース電極4およびドレイン電極5を形成するためのスペースである。
【0056】
続いて、電極層8を形成した場合(図2)と同様の手順により、フォトレジストパターン9および開口部9K(ゲート絶縁層3の露出面)を覆うように電極層10を形成する。
【0057】
続いて、リフトオフ法を用いて、フォトレジストパターン9を電極層10の一部と一緒に除去する。このフォトレジストパターン9の除去方法は、例えば、フォトレジストパターン7を除去した場合と同様である。これにより、図5に示したように、ゲート絶縁層3の上にソース電極4およびドレイン電極5がパターン形成される。
【0058】
続いて、図6に示したように、ソース電極4、ドレイン電極5およびその周辺のゲート絶縁層3を覆うように有機半導体層11を形成する。この有機半導体層11を形成する場合には、例えば、有機半導体材料を有機溶剤などに溶解させて溶液を調製したのち、塗布法などを用いて溶液を塗布して乾燥させる。この溶液を調製するために用いる有機溶剤は、例えば、ゲート絶縁層3を形成するために用いた有機溶剤と同様であり、中でも、高沸点の芳香族炭化水素(メシチレン、テトラリンまたはデカリンなど)が好ましい。有機半導体層11の形成材料は、有機半導体層6の形成材料と同様である。
【0059】
最後に、有機半導体層11をエッチングして、図1に示したように、有機半導体層6をパターン形成する。この有機半導体層11のエッチング方法としては、特に限定されないが、中でも、エッチング時においてソース電極4、ドレイン電極5およびゲート絶縁層3に影響を及ぼしにくいウェットエッチング法が好ましい。これにより、有機TFTが完成する。
【0060】
なお、必要に応じて、図7に示したように、ゲート絶縁層3、ソース電極4、ドレイン電極5および有機半導体層6を覆うように絶縁層12を形成してもよい。この場合には、絶縁層12に設けられた開口部12Kに、ソース電極4およびドレイン電極5とそれぞれ接続されるように配線13,14を形成してもよい。絶縁層12の形成材料および形成方法は、例えば、それぞれ酸化ケイ素および真空蒸着法などである。配線13,14の形成材料および形成方法は、例えば、ソース電極4およびドレイン電極5と同様である。
【0061】
[薄膜トランジスタおよびその製造方法に関する作用および効果]
上記した有機TFTおよびその製造方法によれば、有機半導体層6に隣接するゲート絶縁層3が架橋型共重合材料を含んでいる。これにより、ゲート絶縁層3の耐溶剤性および熱安定性が向上するため、有機TFTの製造工程でゲート絶縁層3が有機溶剤により溶解されにくくなると共に熱的ダメージを受けにくくなる。また、ゲート絶縁層3の緻密性が向上するため、絶縁耐圧が高くなる。よって、移動度およびオンオフ比などが向上するため、性能向上を図ることができる。
【0062】
特に、第1単量体が1または2以上のアルキル基を有するアルキルスチレンであると共に、第2単量体の架橋性反応基がエポキシ基、グリシジル基、水酸基、アクリロイル基、メタクリロイル基およびアリル基のうちの少なくとも1種であれば、優れた特性を有する架橋型共重合材料が安定かつ容易に形成されやすいため、より高い効果を得ることができる。
【0063】
なお、有機TFTは、図1に示したボトムゲート・ボトムコンタクト型に限らず、図1に対応する図8〜図10に示したように、ボトムゲート・トップコンタクト型、トップゲート・ボトムコンタクト型またはトップゲート・トップコンタクト型でもよい。
【0064】
ボトムゲート・トップコンタクト型では、図8に示したように、基体1の上に、ゲート電極2と、ゲート絶縁層3と、有機半導体層6と、ソース電極4およびドレイン電極5とがこの順に積層される。トップゲート・ボトムコンタクト型では、図9に示したように、基体1の上に、ソース電極4およびドレイン電極5と、有機半導体層6と、ゲート絶縁層3と、ゲート電極2とがこの順に積層される。トップゲート・トップコンタクト型では、図10に示したように、基体1の上に、有機半導体層6と、ソース電極4およびドレイン電極5と、ゲート絶縁層3と、ゲート電極2とがこの順に積層される。
【0065】
これらの有機TFTは、一連の構成要素の形成順序を変更することを除き、ボトムゲート・ボトムコンタクト型の有機TFTと同様の手順により製造される。この場合でも、ゲート絶縁層3が有機半導体層6に隣接するため、性能向上を図ることができる。もちろん、図8〜図10に示した場合でも、図7に示した場合と同様に、絶縁層12および配線13,14を形成してもよい。
【0066】
<2.薄膜トランジスタの適用例(電子機器)>
次に、上記した薄膜トランジスタ(有機TFT)の適用例について説明する。この有機TFTは、さまざまな電子機器に適用可能である。
【0067】
有機TFTは、例えば、電子機器として液晶表示装置に適用される。図11および図12は、それぞれ液晶表示装置の主要部の断面構成および回路構成を表している。なお、以下で説明する装置構成(図11)および回路構成(図12)はあくまで一例であり、それらの構成は適宜変更可能である。
【0068】
[電子機器の構成]
ここで説明する液晶表示装置は、例えば、有機TFTを用いたアクティブマトリクス型駆動方式の透過型液晶ディスプレイであり、その有機TFTは、スイッチング(画素選択)用の素子として用いられる。この液晶表示装置は、図11に示したように、駆動基板20と対向基板30との間に液晶層41が封入されたものである。
【0069】
駆動基板20は、例えば、支持基板21の一面に有機TFT22、平坦化絶縁層23および画素電極24がこの順に積層されると共に、複数の有機TFT22および画素電極24がマトリクス状に配置されたものである。
【0070】
支持基板21は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などの透過性材料により形成されており、有機TFT22は、上記した薄膜トランジスタと同様の構成を有している。プラスチック材料の種類は、例えば、薄膜トランジスタについて説明した場合と同様である。平坦化絶縁層23は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料により形成されており、画素電極24は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)などの透過性導電性材料により形成されている。なお、画素電極24は、例えば、平坦化絶縁層23に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機TFT22に接続されている。
【0071】
対向基板30は、例えば、支持基板31の一面に対向電極32が全面形成されたものである。支持基板31は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などの透過性材料により形成されており、対向電極32は、例えば、ITOなどの導電性材料により形成されている。プラスチック材料の種類は、例えば、薄膜トランジスタについて説明した場合と同様である。
【0072】
駆動基板20および対向基板30は、液晶層41を挟んで画素電極24と対向電極32とが対向するように、シール材40により貼り合わされている。液晶層41に含まれる液晶分子(液晶材料)の種類は、任意に選択可能である。
【0073】
この他、液晶表示装置は、例えば、位相差板、偏光板、配向膜およびバックライトユニットなどの他の構成要素(いずれも図示せず)を備えていてもよい。
【0074】
液晶表示装置を駆動させるための回路は、例えば、図12に示したように、有機TFT22および液晶表示素子44(画素電極24、対向電極32および液晶層41)と共に、キャパシタ45を含んでいる。この回路では、行方向に複数の信号線42が配列されていると共に列方向に複数の走査線43が配列されており、それらが交差する位置に有機TFT22、液晶表示素子44およびキャパシタ45が配置されている。信号線42および走査線43は、それぞれ図示しない信号線駆動回路(データドライバ)および走査線駆動回路(走査ドライバ)に接続されている。ただし、有機TFT22におけるソース電極、ゲート電極およびドレイン電極の接続先は、図12に示した場合に限られない。
【0075】
[電子機器の動作]
この液晶表示装置では、有機TFT22により画素電極24が選択され、その画素電極24と対向電極32との間に電界が印加されると、その電界強度に応じて液晶層41(液晶分子)の配向状態が変化する。これにより、液晶分子の配向状態に応じて光の透過量(透過率)が制御されるため、階調画像が表示される。
【0076】
[電子機器に関する作用および効果]
この液晶表示装置によれば、有機TFT22が上記した薄膜トランジスタと同様の構成を有しているため、その有機TFT22の移動度およびオンオフ比が向上する。よって、表示性能を向上させることができる。
【0077】
特に、有機TFT22の基体(薄膜トランジスタの基体1)として、プラスチック材料などの可撓性の基体を用いれば、折り曲げ可能な液晶表示装置を実現できる。
【0078】
なお、液晶表示装置は、透過型に限らずに反射型でもよい。
【実施例】
【0079】
次に、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0080】
(実験例1〜3)
以下の手順により、ボトムゲート・ボトムコンタクト型の有機TFTを作製した。
【0081】
最初に、基体(PES基板)の上に、真空蒸着法およびリフトオフ法を用いて密着層(チタン薄膜)およびゲート電極(金薄膜)をこの順に形成した。リフトオフ法の手順は、上記した薄膜トランジスタの製造方法で説明した場合と同様である。
【0082】
続いて、反応器中で、第1単量体であるα−メチルスチレンと第2単量体であるメタクリル酸グリシジルとをけん濁重合させた。この場合には、第1および第2単量体の混合比(重量比)を50:1、20:1または10:1とした。続いて、反応器の内部を窒素(N2 )で置換すると共に、40℃〜120℃の反応(共重合)温度まで昇温させたのち、重合開始剤と分子量調整剤と有機溶剤との混合液を滴下した。こののち、反応液を熟成して、共重合反応を完了させた。続いて、真空乾燥機を用いて反応液から水を除去して固体状物を得たのち、粉砕して共重合材料を得た。
【0083】
続いて、共重合材料と、硬化剤である3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸と、アミン系硬化触媒であるN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンとをPGMEAに溶解させて溶液を調製した。この場合には、共重合材料と硬化剤と触媒との混合比(重量比)を100:4:3(実験例1)、100:10:3(実験例2)または100:20:3(実験例3)とした。
【0084】
続いて、スピンコート法を用いて溶液を塗布したのち、大気雰囲気中で150℃×2時間加熱した。これにより、共重合材料が架橋(硬化)されたため、ゲート絶縁層が形成された。
【0085】
続いて、真空蒸着法およびリフトオフ法を用いて、密着層(チタン薄膜)と、ソース電極(金薄膜)およびドレイン電極とをこの順に形成した。
【0086】
続いて、有機半導体材料をキシレンに溶解させて溶液を調製したのち、スピンコート法を用いて溶液を塗布してから乾燥させて有機半導体層を形成した。この有機半導体材料としては、式(1)で表されるジオキサンアンタントレン系化合物(peri-xanthenoxanthene の誘導体)を用いた。
【0087】
【化1】

【0088】
最後に、ウェットエッチング法を用いて有機半導体層をエッチングした。これにより、有機TFTが完成した。
【0089】
(実験例4,5)
第2単量体であるメタクリル酸グリシジルだけを用いて架橋型重合材料(ポリメタクリル酸グリシジル)を形成し、または、第1単量体であるα−メチルスチレンだけを用いて非架橋型重合材料(ポリ−α−メチルスチレン)を形成した。前者の場合には、重合材料と硬化剤と触媒との混合比(重量比)を100:10:1とし、後者の場合には、硬化剤および触媒を用いなかった。これ以外の手順は、実験例1〜3と同様である。
【0090】
常温環境中(23℃)で有機TFTの性能(移動度、オンオフ比およびヒステリシス)を調べたところ、表1に示した結果が得られた。なお、ヒステリシスについては、ソース電極およびドレイン電極に流れる電流を測定しながらゲート電極に印加する電圧を増減させた際に、ヒステリシスが生じるか否かを確認した。
【0091】
【表1】

【0092】
第1および第2単量体を用いて架橋型共重合材料を形成した場合(実験例1〜3)には、その架橋型共型共重合材料を形成しなかった場合(実験例4,5)と比較して、移動度およびオンオフ比が著しく高くなると共に、ヒステリシスが生じなかった。なお、第1単量体だけを用いた場合(実験例5)には、有機TFTの製造工程においてゲート絶縁層が有機溶剤により溶解されたため、移動度などを測定できなかった。
【0093】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施形態で説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明の薄膜トランジスタが適用される電子機器は、液晶表示装置以外の他の表示装置でもよい。このような他の表示装置としては、例えば、有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置または電子ペーパー表示装置などが挙げられ、それらの場合においても、表示性能を向上させることができる。また、本発明の薄膜トランジスタは、表示装置以外の他の電子機器に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1…基体、2…ゲート電極、3…ゲート絶縁層、4…ソース電極、5…ドレイン電極、6…有機半導体層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極および有機半導体層と、それらの間に位置すると共に前記有機半導体層に隣接するゲート絶縁層とを備え、
前記ゲート絶縁層は、スチレンおよびその誘導体のうちの少なくとも一方である第1単量体と、炭素間二重結合および架橋性反応基を有する第2単量体とが共重合および架橋された材料を含む、
薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記架橋性反応基は、エポキシ基(−C2 3 O)、グリシジル基(−CH2 −C2 3 O)、水酸基(−OH)、アクリロイル基(−CO−CH=CH2 )、メタクリロイル基(−CO−C(CH3 )=CH2 )およびアリル基(−CH2 −CH=CH2 )のうちの少なくとも1種である、請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記スチレンの誘導体は、1または2以上のアルキル基を有するアルキルスチレンである、請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記第1単量体は、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−メチル−スチレンおよびそれらの誘導体のうちの少なくとも1種である、請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記第2単量体は、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルおよびそれらの誘導体のうちの少なくとも1種である、請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
ゲート電極を形成する工程と、
有機半導体層を形成する工程と、
前記ゲート電極と前記有機半導体層との間に、スチレンおよびその誘導体のうちの少なくとも一方である第1単量体と、炭素間二重結合および架橋性反応基を有する第2単量体とが共重合および架橋された材料を含むと共に、前記有機半導体層に隣接するように、ゲート絶縁層を形成する工程と、
を含む、薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項7】
ゲート電極および有機半導体層と、それらの間に位置すると共に前記有機半導体層に隣接するゲート絶縁層とを含む薄膜トランジスタを備え、
前記ゲート絶縁層は、スチレンおよびその誘導体のうちの少なくとも一方である第1単量体と、炭素間二重結合および架橋性反応基を有する第2単量体とが共重合および架橋された材料を含む、
電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−253990(P2011−253990A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127896(P2010−127896)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】