説明

薄膜トランジスタ及びこれを用いた表示装置、並びに、薄膜トランジスタの製造方法

【課題】オフ電流を抑制するとともにオン電流を確保することができる薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】基板10と、基板の上方に形成されたゲート電極11及びゲート絶縁膜12と、ゲート絶縁膜を介して配置されたチャネル層13と、チャネル層に接続されたバッファ層14と、バッファ層に接続され、不純物が添加された第1コンタクト層15a(15b)と、第1コンタクト層に接続され、第1コンタクト層よりも不純物濃度が高い第2コンタクト層16a(16b)と、第2コンタクト層に接続されたソース電極17S及びドレイン電極17Dとを備える。ソース電極とドレイン電極との間におけるキャリアの移動経路は、チャネル層、バッファ層、第1コンタクト層及び第2コンタクト層を経由してキャリアが移動する第1経路と、チャネル層及び第2コンタクト層を経由してキャリアが移動する第2経路とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタ及びこれを用いた表示装置、並びに、薄膜トランジスタの製造方法に関し、特に、有機EL素子等の電流駆動型の表示素子における表示素子の駆動用に適した薄膜トランジスタ等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FPD(Flat Panel Display)の開発が盛んに行われており、有機EL(Electro Luminescence)素子又はLCD(Liquid Crystal Display)素子を用いた表示装置が知られている。
【0003】
近年、電流駆動型の有機EL素子を用いた有機EL表示装置が次世代の表示装置として注目されている。中でも、アクティブマトリクス駆動型の有機EL表示装置では、電界効果トランジスタが用いられており、その電界効果トランジスタの1つとして、絶縁表面を有する基板上に設けられた半導体層がチャネル形成領域となる薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が知られている。
【0004】
アクティブマトリクス駆動型の有機EL表示装置に用いられる薄膜トランジスタとしては、少なくとも有機EL素子のオン/オフ等の駆動のタイミングを制御するためのスイッチングトランジスタと、有機EL素子の発光量を制御するための駆動トランジスタとが必要となる。これらの薄膜トランジスタについては、それぞれ優れたトランジスタ特性であることが好ましく、種々の研究がなされている。
【0005】
例えば、スイッチングトランジスタについては、オフ電流をさらに低減し、オン電流とオフ電流との両者のばらつきを低減することが必要とされている。また、駆動トランジスタについては、オン電流をさらに向上するとともに、オン電流のばらつきを低減することが必要とされている。
【0006】
そこで、従来、薄膜トランジスタのチャネル層として微結晶シリコン層を用いる技術が提案されている。このようにチャネル層に微結晶シリコン層を用いることにより、チャネル層におけるキャリア移動度を大きくすることができるので、高いオン電流を確保することができる。
【0007】
また、薄膜トランジスタにおいて、ソース電極又はドレイン電極とチャネル層との間に、コンタクト層として低濃度の不純物が含有されたシリコン層を用いる技術も提案されている。このように、コンタクト層として低濃度不純物層を用いることにより、オフ電流を抑制することができる。
【0008】
このように、トランジスタ特性の改善を試みた従来技術が提案されており、例えば、特許文献1には、チャネル層上に、コンタクト層(ドレイン層又はソース層)として、低濃度の不純物を含む第1シリコン層と高濃度の不純物を含む第2シリコン層との積層を用いた薄膜トランジスタが開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、チャネル層として、多結晶シリコン膜と水素化非晶質シリコン膜との積層構造を用い、さらにコンタクト層として、不純物添加シリコン膜を用いた薄膜トランジスタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−258345号公報
【特許文献2】特開2005−057056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示された薄膜トランジスタでは、オン電流を確保することはできるが、オフ電流の抑制が十分でないという課題がある。
【0012】
また、特許文献2に開示された薄膜トランジスタでは、水素化非晶質シリコン膜によってオフ電流を抑制することができるが、これに伴いオン電流が確保できずオン特性が悪くなるという課題がある。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、オフ電流を抑制するとともにオン電流を確保することができる薄膜トランジスタ及び表示装置並びに薄膜トランジスタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様は、基板と、前記基板の上方に形成されたゲート電極及びゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するように配置されたチャネル層と、前記チャネル層に接続されたバッファ層と、前記バッファ層に接続され、所定の不純物が添加された第1コンタクト層と、前記第1コンタクト層に接続され、前記第1コンタクト層よりも不純物濃度が高い第2コンタクト層と、前記第2コンタクト層に接続されたソース電極及びドレイン電極と、を備え、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間におけるキャリアの移動経路は、前記チャネル層、前記バッファ層、前記第1コンタクト層及び前記第2コンタクト層を経由する第1経路と、前記チャネル層及び前記2コンタクト層を経由する第2経路とを含むものである。
【0015】
これにより、オフ電流又はオン電流は、第1経路又は第2経路に沿って流れることになる。
【0016】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記チャネル層は、結晶質シリコン膜であることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記バッファ層は、非晶質シリコン膜であることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記第1経路において、前記キャリアは、前記チャネル層と、前記バッファ層と、前記第1コンタクト層と、前記第2コンタクト層とを、この順に、または、この逆の順に移動し、前記第2経路において、前記キャリアは、前記チャネル層と前記第2コンタクト層とを、この順に、または、この逆の順に移動することが好ましい。
【0019】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記第1コンタクト層と前記第2コンタクト層との第1界面を有することが好ましい。
【0020】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記第1界面は、前記基板の主面に対して略平行であることが好ましい。
【0021】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記チャネル層と前記第2コンタクト層との第2界面を有することが好ましい。
【0022】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記第2界面は、前記基板の主面に対して略垂直であることが好ましい。
【0023】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記第2界面は、前記基板の主面に対して略平行であることが好ましい。
【0024】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記バッファ層と前記第2コンタクト層との第3界面を有することが好ましい。
【0025】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記バッファ層及び前記第1コンタクト層を貫通するコンタクトホールを有し、前記第2コンタクト層は、前記コンタクトホールを介して前記チャネル層と接続されていることが好ましい。
【0026】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記基板上に、少なくとも前記ゲート電極、前記ゲート絶縁膜、前記チャネル層及び前記バッファ層が、この順で形成されることが好ましい。
【0027】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記チャネル層上又は前記バッファ層上に形成されたチャネル保護層を有することが好ましい。
【0028】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記薄膜トランジスタの前記基板に対して垂直方向に割断したときの割断断面において、互いに離間した前記ソース電極と前記ドレイン電極との離間部の距離をLchとし、ゲート電極の長さをLgmとすると、Lgm>Lchであることが好ましい。
【0029】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記チャネル層の長さをLsiとすると、Lgm<Lsiであることが好ましい。
【0030】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記ソース電極又は前記ドレイン電極と前記第2コンタクト層との第4界面を有することが好ましい。
【0031】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記薄膜トランジスタの前記基板に対して垂直方向に割断したときの割断断面において、互いに離間した前記ソース電極と前記ドレイン電極との離間部の距離をLchとし、ゲート電極の長さをLgmとすると、Lgm<Lchであることが好ましい。
【0032】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記基板上に、少なくとも前記チャネル層、前記ゲート絶縁膜及び前記ゲート電極が、この順で形成されることが好ましい。
【0033】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタの一態様において、前記チャネル層と前記ゲート絶縁膜の間に前記バッファ層が形成されることが好ましい。
【0034】
また、本発明に係る薄膜トランジスタの製造方法の一態様は、基板と、前記基板の上方に形成されたゲート電極及びゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するように配置されたチャネル層と、前記チャネル層に接続されたバッファ層と、前記バッファ層に接続され、所定の不純物が添加された第1コンタクト層と、前記第1コンタクト層に接続され、前記第1コンタクト層よりも不純物濃度が高い第2コンタクト層と、前記第2コンタクト層に接続されたソース電極及びドレイン電極とを備える薄膜トランジスタの製造方法であって、前記バッファ層と前記第1コンタクト層とを連続成膜し、前記バッファ層と前記第1コンタクト層とを同一パターンでエッチングする工程と、前記第2コンタクト層と前記ソース電極及び前記ドレイン電極とを同一パターンでエッチングする工程と、を含むものである。
【0035】
また、本発明に係る表示装置の一態様は、上記の薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタに接続された表示素子と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る薄膜トランジスタ及びその製造方法によれば、オン時の駆動電流を維持しつつ、オフ時のリーク電流を抑制することができ、電流の立ち上がりを良くすることができる。
【0037】
また、本発明に係る表示装置によれば、電気的特性が優れた薄膜トランジスタを備えているので、高性能な表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1A】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図
【図1B】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの平面図(図1Aの平面図)
【図2】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの電流−電圧(Id−Vg)特性を示す図
【図3A】比較例1に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図
【図3B】比較例2に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図
【図4】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタにおける電流−電圧(Id−Vd)特性を示す図
【図5A】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造工程(ゲート金属膜形成工程)を示す断面図
【図5B】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造工程(ゲート電極パターニング工程)を示す断面図
【図5C】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造工程(ゲート絶縁膜形成工程)を示す断面図
【図5D】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造工程(チャネル層用膜形成工程)を示す断面図
【図5E】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造工程(バッファ層用膜形成工程)を示す断面図
【図5F】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造工程(第1コンタクト層用膜形成工程)を示す断面図
【図5G】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造工程(チャネル部島化工程)を示す断面図
【図5H】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造工程(第2コンタクト層用膜形成工程)を示す断面図
【図5I】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造工程(ソースドレイン金属膜形成工程)を示す断面図
【図5J】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造工程(ソース電極及びドレイン電極パターニング工程)を示す断面図
【図5K】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造工程(第2コンタクト層形成工程)を示す断面図
【図5L】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造工程(パッシベーション膜形成工程)を示す断面図
【図6】本発明の第2の実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図
【図7A】本発明の第3の実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図
【図7B】本発明の第3の実施形態に係る薄膜トランジスタの平面図(図7Aの平面図)
【図8】本発明の第4の実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図
【図9】本発明の第5の実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図
【図10】本発明の第6の実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図
【図11】本発明の第6の実施形態の他の例に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図
【図12】本発明の第7の実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図
【図13】本発明の第8の実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図
【図14】本発明の第9の実施形態に係る有機EL表示装置の一部切り欠き斜視図
【図15】本発明の第1〜第8の実施形態のいずれかの薄膜トランジスタを用いた画素の回路構成図
【図16】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタを駆動トランジスタとして用いた場合における有機EL表示装置の一画素の断面図
【図17】図17は、本発明の実施形態に係る表示装置を内蔵したテレビジョンセットの外観図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態に係る薄膜トランジスタ及びその製造方法並びに表示装置について、図面を参照しながら説明する。なお、各図は、説明のための模式図であり、膜厚及び各部の大きさの比などは、必ずしも厳密ではない。
【0040】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタについて、図1A及び図1Bを用いて説明する。図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。また、図1Bは、図1Aに示す本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの平面図である。
【0041】
図1A及び図1Bに示すように、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1は、ボトムゲート型のn型の薄膜トランジスタであって、基板10と、基板10上に形成されたゲート電極11と、ゲート電極11上に形成されたゲート絶縁膜12と、ゲート絶縁膜12を介してゲート電極と対向するように配置されたチャネル層13と、チャネル層13に接続されたバッファ層14と、バッファ層14に接続された一対の第1コンタクト層15a及び15bと、一対の第1コンタクト層15a及び15b上に形成された一対の第2コンタクト層16a及び16bと、一対の第2コンタクト層16a及び16b上に形成されたソース電極17S及びドレイン電極17Dとを備える。
【0042】
基板10は、例えば、石英ガラス等のガラス材料によって構成されるガラス基板からなる絶縁性基板である。なお、図示しないが、基板10の表面には、基板中に含まれるナトリウムやリン等の不純物が半導体膜に侵入することを防止するために、シリコン窒化膜(SiN)等の絶縁膜からなるアンダーコート膜を形成してもよい。
【0043】
ゲート電極11は、例えば、モリブデン(Mo)からなり、帯状にパターン形成された電極である。ゲート電極11としては、モリブデン(Mo)以外の金属であってもよく、例えば、モリブデンタングステン(MoW)等によって構成してもよい。なお、ゲート電極11の材料としては、薄膜トランジスタ1の製造過程に加熱工程を含む場合は、熱で変質しにくい高融点金属材料であることが好ましい。本実施形態では、ゲート電極11として、膜厚が100nm程度のモリブデン(Mo)を用いた。
【0044】
ゲート絶縁膜12は、ゲート電極11上にゲート電極11を覆うようにして形成される。ゲート絶縁膜12の材料としては、例えば、二酸化シリコン(SiO2)を用いることができる。その他、ゲート絶縁膜12の材料としては、シリコン窒化膜(SiN)やシリコン酸窒化膜、またはこれらの積層膜等によって構成することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、ゲート絶縁膜12上に形成するチャネル層として結晶質半導体膜を用いているので、ゲート絶縁膜12としては二酸化シリコンを用いることが好ましい。ゲート絶縁膜12としては二酸化シリコンを用いることにより、チャネル層との界面状態を良好なものにすることができ、TFTにおける良好な閾値電圧特性を維持することができる。本実施形態では、ゲート絶縁膜12として、膜厚が200nm程度の二酸化シリコンを用いた。
【0046】
チャネル層13は、ゲート電極11上方においてゲート絶縁膜12上に島状にパターン形成される。チャネル層13は、結晶質半導体膜によって構成することができ、これにより、TFTのオン電流を高くすることができる。
【0047】
チャネル層13としては、結晶シリコンを含んだ結晶質シリコン膜を用いることができる。結晶質シリコン膜は、微結晶シリコン又は多結晶シリコンによって構成することができる。結晶質シリコンは、非晶質シリコン(アモルファスシリコン)をアニール等の加熱処理で結晶化することにより形成することができる。本実施形態では、チャネル層13として、膜厚が30nm程度の結晶質シリコン膜を用いた。また、本実施形態において、結晶質シリコン膜における結晶粒径は1μm以下である。なお、チャネル層13としては、非晶質構造と結晶質構造との混晶であっても構わない。
【0048】
バッファ層14は、チャネル層13上に積層され、島状にパターン形成される。バッファ層14は、チャネル層13と同時に島状にパターン形成される。バッファ層14は、チャネル層13よりもバンドギャップが大きいことが好ましく、オフ時においてリークパスとして機能する。バッファ層14としては、例えば、非晶質シリコン(アモルファスシリコン)等の非晶質半導体膜を用いることができる。本実施形態では、バッファ層14として、膜厚が70nm程度の水素化非晶質シリコン膜を用いた。
【0049】
なお、バッファ層14は、アンドープ層であり、意図的な不純物の添加は行われていない。但し、製造過程において意図せずに水素化非晶質シリコン膜に不純物が混ざってしまうことが考えられる。そのため、バッファ層14である水素化非晶質シリコン膜中の不純物濃度は、1×1018/cm3以下であることが好ましい。さらに、バッファ層14としては、限りなく不純物の濃度が低いことが好ましいため、バッファ層14の不純物濃度としては、1×1017/cm3以下であることが、より好ましい。なお、バッファ層14である水素化非晶質シリコン膜の不純物濃度が高いと、オフ電流(Ioff)が大きくなってしまうので好ましくない。
【0050】
一対の第1コンタクト層15a及び15bは、不純物を低濃度に含む非晶質シリコン膜(n-Si)によって構成されており、バッファ層14上に離間して形成される。一対の第1コンタクト層15a及び15bは、バッファ層14と接して形成されている。第1コンタクト層15a及び15bは、例えば、膜厚が20nm程度の非晶質シリコンにリン(P)等のn型不純物を低濃度に添加することによって形成することができる。
【0051】
本実施形態において、第1コンタクト層15a及び15bの不純物濃度は、第2コンタクト層16a及び16bよりも一桁以上低い濃度の不純物であればよい。具体的には、第1コンタクト層15a及び15bにおける不純物の濃度は、5×1020/cm3以下であることが好ましく、特に、1×1019/cm3以上1×1020/cm3以下であることが好ましい。このように、第1コンタクト層15a及び15bの不純物濃度を設定することにより、第2コンタクト層16a及び16bとの界面における電界集中を緩和することができる。
【0052】
なお、第1コンタクト層15a及び15bにおけるn型不純物としては、リンに限定されるものではなく、リン以外の他の第V族の元素であっても構わない。また、n型不純物に限定するものではなく、例えば、ホウ素(B)等の第III族の元素を含むp型不純物を用いても構わない。また、本実施形態では、バッファ層14と第1コンタクト層15a及び15bとの間に他の膜を形成する必要はなく、バッファ層14上に第1コンタクト層15a及び15bを連続して成膜することが好ましい。これにより、バッファ層14と第1コンタクト層15a及び15bとの間に自然酸化膜が形成することを防止することができる。
【0053】
一対の第2コンタクト層16a及び16bは、不純物を高濃度に含む非晶質シリコン膜(n+Si)によって構成されており、第1コンタクト層15a及び15bの上に形成される。また、第2コンタクト層16aと第2コンタクト層16bとは離間して形成される。本実施形態において、第2コンタクト層16a及び16bは、例えば、膜厚が20nm程度の非晶質シリコンに、リン(P)等のn型不純物を高濃度に添加することによって形成することができる。
【0054】
さらに、本実施形態における第2コンタクト層16a及び16bは、チャネル層13の側面及びバッファ層14の側面も覆うようにして形成されており、第1コンタクト層15a及び15bの上面からゲート絶縁膜12の上面までの間の領域を覆うようにして形成されている。つまり、一対の第2コンタクト層16a及び16bは、第1コンタクト層15a及び15bに接するとともに、チャネル層13及びバッファ層14にも接している。
【0055】
このように、本実施形態では、第2コンタクト層16a(16b)と第1コンタクト層15a(15b)との界面である第1界面と、第2コンタクト層16a(16b)とチャネル層13との界面である第2界面と、第2コンタクト層16a(16b)とバッファ層14との界面である第3界面と、第2コンタクト層16a(16b)とソース電極17S又はドレイン電極17Dとの界面である第4界面とを有する。また、本実施形態においては、図1Aに示すように、第1界面及び第4界面には、基板10の主面に対して略垂直な垂直面と基板10の主面に対して略水平な水平面とが存在し、第2界面及び第3界面には、基板10の主面に対して略垂直な垂直面のみが存在する。
【0056】
なお、本実施形態において、第2コンタクト層16a及び16bの不純物濃度は、第1コンタクト層15a及び15bよりも一桁以上高い濃度の不純物であればよい。具体的には、第2コンタクト層16a及び16bにおける不純物の濃度は、1×1021/cm3以上から1×1022/cm3以下であることが好ましい。この濃度は、一般的に、シリコン膜に高濃度の不純物を入れる際に容易に実現できる濃度である。
【0057】
また、第2コンタクト層16a及び16bにおけるn型不純物としては、リンに限定されるものではなく、リン以外の他の第V族の元素であっても構わない。また、n型不純物に限定するものではなく、例えば、ホウ素(B)等の第III族の元素を含むp型不純物を用いても構わない。
【0058】
ソース電極17S及びドレイン電極17Dは、それぞれ第2コンタクト層16a及び16b上に形成されており、互いに離間するようにしてパターン形成されている。また、ソース電極17S及びドレイン電極17Dは、第2コンタクト層16a及び16bとオーミック接合されており、また、第2コンタクト層16a及び16bと側面が一致するようにして形成されている。
【0059】
ソース電極17S及びドレイン電極17Dは、それぞれ導電性材料及び合金等の単層構造又は多層構造であり、例えば、チタン(Ti)タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)などの金属からなる単層または2つ以上の材料からなる積層膜が膜厚が50〜1000nm程度となるように形成される。ソース電極17S及びドレイン電極17Dの形成方法としては、例えば、スパッタリング法が用いられる。本実施形態では、ソース電極17S及びドレイン電極17Dとして、Mo/Al/Moからなる3層金属層を50nm/300nm/50nmの膜厚で成膜した。
【0060】
以上、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1は、チャネル層13の側面及びバッファ層14の側面が高濃度不純物の第2コンタクト層16a及び16bによって覆われており、チャネル層13及びバッファ層14は第2コンタクト層16a及び16bを介してソース電極17S及びドレイン電極17Dと電気的に接続されている。また、バッファ層14の上面には低濃度不純物の第1コンタクト層15a及び15bによって覆われており、バッファ層14の上面は第1コンタクト層15a及び15bを介して第2コンタクト層16a及び16bと電気的に接続されている。
【0061】
なお、本実施形態における薄膜トランジスタ1は、チャネル層13とソース電極17S又はドレイン電極17Dとの間にオーミックコンタクト層が形成されている。本実施形態において、オーミックコンタクト層は、第1コンタクト層15a及び15b、第2コンタクト層16a及び16b、又は、バッファ層14である。
【0062】
この構成により、ソース電極17Sとドレイン電極17Dとの間においてキャリアが流れるキャリア移動経路としては、チャネル層13、バッファ層14、第1コンタクト層15a(15b)及び第2コンタクト層16a(16b)を経由してキャリアが移動する第1経路Ch1と、チャネル層13及び第2コンタクト層16a(16b)を経由してキャリアが移動する第2経路Ch2とが存在することになる。
【0063】
より具体的には、本実施形態に係る薄膜トランジスタ1は、オフ時におけるキャリアの移動は第1経路Ch1が支配的になってオフ電流が第1経路Ch1に沿って流れることになり、オン時におけるキャリアの移動は第2経路Ch2が支配的になってオン電流が第2経路Ch2に沿って流れることになる。すなわち、オフ時におけるキャリアは、ドレイン電極17Dからソース電極17Sまでの間を、第1経路Ch1に沿って、第2コンタクト層16b、第1コンタクト層15b、バッファ層14、チャネル層13、バッファ層14、第1コンタクト層15a及び第2コンタクト層16aの順に移動する。また、オン時におけるキャリアは、ソース電極17Sからドレイン電極17Dまでの間を、第2経路Ch2に沿って、第2コンタクト層16a、チャネル層13及び第2コンタクト層16bの順に移動する。このように、本実施形態に係る薄膜トランジスタは、オフ時とオン時とで、キャリアは異なる経路を移動することになる。
【0064】
これにより、オン時のTFT駆動電流を維持しつつ、オフ時のリーク電流を抑制することができるので、電流の立ち上がりのよい薄膜トランジスタを実現することができる。
【0065】
次に、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1の電気的特性について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの電流−電圧(Id−Vg)特性を示す図である。なお、図2において、「本発明」は、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1の特性を示しており、また、「比較例1」及び「比較例2」は、比較例1及び比較例2に係る薄膜トランジスタ100及び200の特性を示している。また、図2において、横軸は、ゲート電極におけるゲート電圧の電圧値Vg[V]を示し、縦軸は、ドレイン電流の電流値Id[A]を示す。
【0066】
ここで、比較例1及び比較例2に係る薄膜トランジスタ100及び200の構成について、図3A及び図3Bを用いて説明する。図3Aは、比較例1に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図であり、図3Bは、比較例2に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。
【0067】
図3Aに示すように、比較例1に係る薄膜トランジスタ100は、基板110上に、ゲート電極111、ゲート絶縁膜112、結晶質シリコン膜からなるチャネル層113、低濃度不純物の第1コンタクト層115a及び115b、高濃度不純物層の第2コンタクト層116a及び116b、ソース電極117S及びドレイン電極117Dが積層されたものである。
【0068】
また、図3Bに示すように、比較例2に係る薄膜トランジスタ200は、基板210上に、ゲート電極211、ゲート絶縁膜212、結晶質シリコン膜からなるチャネル層213、非晶質シリコンからなるバッファ層214、低濃度不純物の第1コンタクト層215a及び215b、高濃度不純物層である第2コンタクト層216a及び216b、ソース電極217S及びドレイン電極217Dが積層されたものである。但し、本発明の第1の実施形態と異なり、高濃度不純物層の第2コンタクト層216a及び216bは、第1コンタクト層215a及び215bの上面にのみ形成されている。
【0069】
図2に示すように、比較例1に係る薄膜トランジスタ100(「比較例1」)は、オン(ON)時のゲート電圧(Vg)が高くオン電流(Id)も高くなっているが、オフ(OFF)時のゲート電圧(Vg)も高くオン電流(Id)も高くなっていることが分かる。一方、比較例2に係る薄膜トランジスタ200(「比較例2」)は、オフ時のゲート電圧(Vg)は低くオン電流(Id)も低くなっているものの、オン時のゲート電圧(Vg)も低くオン電流(Id)も低くなっていることが分かる。
【0070】
これに対し、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1(「本発明」)は、比較例1に係る薄膜トランジスタ100(「比較例1」)と比較して、オフ時のゲート電圧(Vg)が低くなっており、オフ電流が低いことが分かる。さらに、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1(「本発明」)は、比較例2に係る薄膜トランジスタ200(「比較例2」)と比較して、オン時のゲート電圧(Vg)が高くなっており、オン電流も高いことが分かる。
【0071】
このように、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1(「本発明」)は、オン電流は高く、かつ、オフ電流は低いという、優れた電流電圧特性を有する。
【0072】
次に、本発明の第1実施形態に係る薄膜トランジスタの電流−電圧(Id−Vd)特性について、図4を用いて説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタにおける電流−電圧(Id−Vd)特性を示す図である。なお、図4において、「本発明」、「比較例1」及び「比較例2」は、図2で説明した薄膜トランジスタと同じものである。また、図4において、横軸は、ドレイン電圧の電圧値Vd[V]を示し、縦軸は、ドレイン電流の電流値Id[A]を示している。
【0073】
ここで、Id−Vd特性は、図4に示すグラフのうち、各々の薄膜トランジスタにおける線形領域内の傾きを見ることとする。この場合、線形領域とは、ソース電極−ドレイン電極間の電圧(Vd)が低い領域であり、所定の傾きを有する領域である。一方、飽和領域とは、ソース電極−ドレイン電極間の電圧が高い領域であり、傾きを有さない領域である。
【0074】
そして、線形領域におけるIdの傾きが大きいほどオン時抵抗(Ron抵抗)が低く、線形領域におけるIdの傾きが小さいほどRon抵抗が高いことを示す。さらに、Ron抵抗が低いことは、線形領域内の電流の立ち上がりがよいということを示す。逆に、線形領域内の電流の立ち上がりがよいということは、Ron抵抗が低いことを示す。
【0075】
図4に示すように、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1(「本発明」)は、比較例2に係る薄膜トランジスタ200(「比較例2」)と比較して、線形領域におけるIdの立ち上がりがよいことが分かる。つまり、線形領域における傾きが、本発明の方が比較例2に対して大きいことが分かる。従って、本発明は、比較例2と比べて、Ron抵抗が低いということが分かる。
【0076】
以上、図2及び図4に示す本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1の電気特性の結果に基づいて考察した結果、以下の知見を得ることができた。
【0077】
ソース電極−ドレイン電極間の電圧(Vd)が高い飽和領域においては、すなわち、オフ時の場合、キャリアは、主に、ソース電極17Sとドレイン電極17Dとの間の離間距離が近い経路を移動すると考えられる。従って、本実施形態に係る薄膜トランジスタ1において、オフ時の場合、キャリアは、主として、図1Aの第1経路Ch1を移動することになると考えられる。この場合、第1経路Ch1において、第2コンタクト層16a及び16bと第1コンタクト層15a及び15bとは不純物濃度が一桁以上異なるので、ソース・ドレイン電界の電荷の集中を低減することができ、ゲート電圧がOFF時のオフ電流を抑制することができる。
【0078】
また、このソース・ドレイン電界の電荷の集中を防ぐことにより、薄膜トランジスタの寿命を延ばすこともできる。さらに、本実施形態では、結晶質シリコンのチャネル層13の上に非晶質シリコンのバッファ層14を形成しているので、チャネル層13とバッファ層14との接合界面を良好に形成することができる。これにより、当該接合界面におけるリーク電流も抑制することができる。
【0079】
一方、ソース電極−ドレイン電極間の電圧(Vd)が低い線形領域内においては、すなわち、オン時の場合は、キャリアは、主に、キャリア移動度がより高い経路を流れることになる。従って、本実施形態に係る薄膜トランジスタ1において、オン時の場合、キャリアは、主として、図1Aの第2経路Ch2を移動することになると考えられる。この場合、第2経路Ch2では、ソース電極17Sとドレイン電極17Dとの間に、チャネル層13と高濃度不純物の第2コンタクト層16a及び16bとしかなく、高い抵抗成分となる非晶質シリコンで構成されるバッファ層14が存在しない。この結果、本実施形態における薄膜トランジスタ1は、線形領域内における電流の立ち上がりが良くなる。
【0080】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態1に係る薄膜トランジスタによれば、オン時のTFT駆動電流を維持しつつ、オフ時のリーク電流を抑制することができ、電流の立ち上がりのよい薄膜トランジスタを実現することができる。
【0081】
なお、本実施形態では、図1Aに示すように、ゲート電極11の長さ(Lgm)は、ソース電極17Sとドレイン電極17Dとの離間距離(Lch)よりも長く、さらに、チャネル層13の長さ(Lsi)よりも長くなるように構成することが好ましい。
【0082】
これにより、図4に示すグラフの線形領域内で、第2コンタクト層16a及び16bがチャネル層13に直接接触している領域に、ゲート電極11からの電界が印加されることとなる。その結果、Ron抵抗を効果的に小さくすることができる。また、表示装置におけるスイッチングトランジスタはRon抵抗が小さいことが好ましいので、上記構成とすることにより、スイッチングトランジスタに適した薄膜トランジスタを実現することができる。特に、有機EL表示装置では、スイッチング周期が短くなることが考えられる。従って、Ron抵抗が小さい薄膜トランジスタを用いることにより、優れた表示性能を有する有機EL表示装置を実現することができる。
【0083】
次に、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1の製造方法について、図5A〜5Lを用いて説明する。図5A〜図5Lは、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法における各工程を示す断面図である。
【0084】
まず、図5Aに示すように、絶縁性のガラス基板からなる基板10上に、スパッタリング法によって、モリブデン等からなるゲート金属膜11Mを100nm程度の膜厚で成膜する。なお、ゲート金属膜11Mを形成する前に、基板10上にアンダーコート膜を形成してもよい。
【0085】
次に、ゲート金属膜11Mに対してフォトリソグラフィー及びウエットエッチングを施すことにより、ゲート金属膜11Mをパターニングして、図5Bに示すように、所定形状のゲート電極11を形成する。
【0086】
次に、図5Cに示すように、プラズマCVDによって、ゲート電極11を覆うようにして、基板10上にシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜12を200nm程度の膜厚で成膜する。
【0087】
次に、図5Dに示すように、ゲート絶縁膜12上に結晶質シリコンからなるチャネル層用膜13Fを30nm程度の膜厚で形成する。結晶質シリコンからなるチャネル層用膜13Fは、CVD法によって直接微結晶シリコンを成膜したり、また、プラズマCVDによって非晶質シリコンを成膜した後でレーザ又はランプによる加熱処理を施すことによって結晶化したりすることによって形成することができる。
【0088】
次に、図5Eに示すように、プラズマCVDによって、チャネル層用膜13Fを覆うようにして、水素化非晶質シリコン膜からなるバッファ層用膜14Fを20nm程度の膜厚で成膜する。
【0089】
次に、図5Fに示すように、プラズマCVDによって、バッファ層用膜14Fを覆うようにして、n型不純物としてリンが低濃度に添加された非晶質シリコンからなる第1コンタクト層用膜15Fを成膜する。
【0090】
本実施形態では、第1コンタクト層用膜15Fは、バッファ層用膜14Fと連続して成膜される。この場合、成膜ガスとしては、例えば、モノシラン(SiH4)と水素(H2)を用い、n型の不純物としてリンをドープするためにホスフィン(PH3)を用いることができる。
【0091】
なお、バッファ層用膜14Fと第1コンタクト層用膜15Fの連続成膜を、同一の装置を用いて行う場合であっても、異なる成膜チャンバーを用いてそれぞれ成膜した方が第1コンタクト層用膜15Fの不純物濃度は制御しやすい。但し、この場合、成膜チャンバーを移動する際、バッファ層用膜14Fが酸化されないように真空中で別のチャンバーに搬送することが好ましい。また、同一の成膜チャンバー内で成膜する場合であっても、ガス流量、圧力又は放電パワー等を適宜調整することによって添加する不純物濃度を制御することができる。なお、バッファ層用膜14Fを成膜した後に、成膜チャンバーから他の真空空間に成膜後の基板を一旦退避させておき、その間に成膜チャンバー内の条件調整を行ってから、再び成膜チャンバー内に基板を搬送してから成膜する等の方法でも可能である。
【0092】
次に、図5Gに示すように、フォトリソグラフィー及びウエットエッチングを施すことにより、積層されたチャネル層用膜13Fとバッファ層用膜14Fと第1コンタクト層用膜15Fとを選択的に同時にパターニングして、島状にパターニングされた、チャネル層13及びバッファ層14を形成することができる。なお、第1コンタクト層用膜15Fもチャネル層13及びバッファ層14と同じ形状でパターニングされる。
【0093】
次に、図5Hに示すように、プラズマCVDによって、チャネル層13、バッファ層14及び第1コンタクト層用膜15Fの島状の積層構造を覆うようにして、n型不純物としてリンが高濃度に添加された非晶質シリコンからなる第2コンタクト層用膜16Fを成膜する。
【0094】
なお、本実施形態では、第1コンタクト層用膜15F及び第2コンタクト層用膜16Fである不純物が添加されたシリコン膜は、CVD法によって成膜したが、イオン注入法によって不純物が添加されたシリコン膜を形成することもできる。イオン注入法とは、n型不純物を含まない状態でシリコン膜を成膜した後に、不純物を添加するシリコン膜のみに不純物を導入して濃度勾配を有する不純物領域を形成する方法である。また、イオン注入法は、CVD法と異なり、濃度管理又はCVD装置内での不純物汚染の管理等を行う必要がない。但し、製造装置コストを考慮すると、イオン注入機を必要としないCVD法の方が好ましい。
【0095】
次に、図5Iに示すように、スパッタ法によって、第2コンタクト層用膜16F上に、ソースドレイン金属膜17Mを成膜する。本実施形態では、ソースドレイン金属膜17Mとして、Mo/Al/Moからなる3層金属層を50nm/300nm/50nmの膜厚で成膜した。
【0096】
次に、図5Jに示すように、フォトリソグラフィー及びウエットエッチングを施すことにより、ソースドレイン金属膜17Mをパターニングして、ソース電極17S及びドレイン電極17Dを分離形成する。なお、ソースドレイン金属膜17Mのエッチングは、例えば、リン酸、硝酸及び酢酸からなる混酸によるウエットエッチングによって行うことができる。これにより、第2コンタクト層用膜16Fが露出する。
【0097】
次に、図5Kに示すように、エッチングによって、第2コンタクト層用膜16F及び第1コンタクト層用膜15Fをパターニングして、所定形状の一対の第2コンタクト層16a及び16b、並びに、一対の第1コンタクト層15a及び15bを分離形成する。このとき、一対の第2コンタクト層16a及び16bは、ソース電極17S及びドレイン電極17Dと側面が一致するようにしてパターニングされる。また、第2コンタクト層16a及び16bは、図5Kに示すように、第1コンタクト層15a及び15bの上面、バッファ層14の側面及びチャネル層13の側面を覆うようにして形成される。
【0098】
第2コンタクト層用膜16F及び第1コンタクト層用膜15Fのエッチングは、例えば、フッ素系のCHF3等のガスを用いたドライエッチングによって行うことができる。このとき、バッファ層14及びチャネル層13もシリコンによって構成される膜であるので、バッファ層14とチャネル層13もドライエッチングされる可能性がある。このため、ドライエッチング時における、パワー、圧力、ガス流量又はエッチング時間等は厳密に管理することが好ましい。
【0099】
なお、本実施形態では、図5Kに示すように、チャネル層13上のコンタクト層分離領域にはバッファ層14を残す構造であり、バッファ層14の上面の一部をドライエッチングしている。この構造は、チャネル層13へのエッチングダメージを考慮したものである。但し、図示していないが、チャネル層13上のコンタクト層分離領域におけるバッファ層14を完全に除去し、後の工程において加熱又は水素化処理等を施すことにより、チャネル層13上のエッチングダメージを回復する方法を用いても構わない。エッチングダメージを回復させる方法としては、例えば、水素プラズマ処理、水素雰囲気下での加熱処理、又は、酸素の少ない条件下あるいは真空雰囲気下での加熱処理等が挙げられる。
【0100】
これにより、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1を製造することができる。
【0101】
なお、その後、図5Lに示すように、基板10の全面を覆う状態で、例えば、シリコン窒化膜(SiN2)からなるパッシベーション膜18を400nmの膜厚で成膜してもよい。また、図示しないが、その後続けて、フォトリソグラフィー及びウエットエッチングを施すことにより、パッシベーション膜18に対して、ソース電極17S、ドレイン電極17D及びゲート電極11へのコンタクトホールを同時に形成する工程を経て、ソース電極17S、ドレイン電極17D及びゲート電極11と、装置内の配線電極とを接続する。
【0102】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る薄膜トランジスタ2について、図6を用いて説明する。図6は、本発明の第2の実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。
【0103】
図6に示す本発明の第2の実施形態に係る薄膜トランジスタは、図1Aに示す本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1と基本的な構成は同じである。従って、図6において、図1Aに示す構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付しており、その説明は省略する。
【0104】
図6に示す本発明の第2の実施形態に係る薄膜トランジスタ2が、図1Aに示す本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1と異なる点は、チャネル層の構成である。
【0105】
すなわち、図6に示すように、本発明の第2の実施形態に係る薄膜トランジスタ2では、チャネル層23の長さ(Lsi)とバッファ層14の長さとは異なっており、チャネル層23とバッファ層14とは同時にエッチングされない。本実施形態では、チャネル層23の長さ(Lsi)は、ゲート電極11の長さ(Lgm)よりも長くなるように構成されている。
【0106】
また、チャネル層23の側面は第2コンタクト層16a及び16bの側面と一致するように構成されており、第1の実施形態と比べて、チャネル層23と第2コンタクト層16a及び16bとが接している領域が大きくなっている。さらに、チャネル層23と第2コンタクト層16a及び16bとが接している領域は、チャネル層23と第2コンタクト層16a及び16bの積層方向(基板垂直方向)のみである。
【0107】
本実施形態においても、第2コンタクト層16a(16b)と第1コンタクト層15a(15b)との界面である第1界面と、第2コンタクト層16a(16b)とチャネル層23との界面である第2界面と、第2コンタクト層16a(16b)とバッファ層14との界面である第3界面と、第2コンタクト層16a(16b)とソース電極17S又はドレイン電極17Dとの界面である第4界面とを有する。但し、本実施形態においては、第1の実施形態とは異なり、図6に示すように、第1界面及び第4界面には、基板10の主面に対して略垂直な垂直面と基板10の主面に対して略水平な水平面とが存在し、第2界面には、基板10の主面に対して略水平な水平面のみが存在し、第3界面には、基板10の主面に対して略垂直な垂直面のみが存在する。
【0108】
以上、本発明の第2の実施形態に係る薄膜トランジスタ2も、第1の実施形態と同様に、ソース電極17Sとドレイン電極17Dとの間においてキャリアが流れるキャリア移動経路としては、図1Aに示すような第1経路Ch1と第2経路Ch2とが存在する。そして、オフ時におけるキャリアの移動は第1経路Ch1が支配的になってオフ電流が第1経路Ch1に沿って流れることになり、オン時におけるキャリアの移動は第2経路Ch2が支配的になってオン電流が第2経路Ch2に沿って流れることになる。
【0109】
すなわち、オフ時におけるキャリアは、ドレイン電極17Dからソース電極17Sまでの間を、第1経路Ch1に沿って、第2コンタクト層16b、第1コンタクト層15b、バッファ層14、チャネル層23、バッファ層14、第1コンタクト層15a及び第2コンタクト層16aの順に移動する。また、オン時におけるキャリアは、ソース電極17Sからドレイン電極17Dまでの間を、第2経路Ch2に沿って、第2コンタクト層16a、チャネル層23及び第2コンタクト層16bの順に移動する。
【0110】
これにより、第2の実施形態でも、オン時のTFT駆動電流を維持しつつ、オフ時のリーク電流を抑制することができるので、電流の立ち上がりのよい薄膜トランジスタを実現することができる。
【0111】
また、図1Aに示す第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1では、基板垂直方向におけるゲート電極11とソース電極17S(又はドレイン電極17D)との間には高濃度不純物の第2コンタクト層16a及び16bとゲート絶縁膜12とのみが形成される領域が存在していた。これに対し、図6に示す本実施形態に係る薄膜トランジスタ2では、基板垂直方向におけるゲート電極11とソース電極17S(又はドレイン電極17D)との間には高濃度不純物の第2コンタクト層16a及び16bとゲート絶縁膜12とのみの領域が除去されており、基板垂直方向におけるゲート電極11とソース電極17S(又はドレイン電極17D)との間には、少なくとも高濃度不純物の第2コンタクト層16a及び16b、チャネル層23、並びに、ゲート絶縁膜12が形成されている。
【0112】
すなわち、本実施形態では、チャネル層23と第2コンタクト層16a及び16bとの界面が基板水平方向に沿ってのみ形成されており、第1の実施形態のように、チャネル層13と第2コンタクト層16a及び16bとの界面が基板垂直方向に沿って形成される領域が存在しない。つまり、本実施形態では、チャネル層23の側面部において、当該チャネル層23と第2コンタクト層16a及び16bとの基板垂直方向における界面が存在しない。
【0113】
この構成により、ゲート電極11とソース電極17S(又はドレイン電極17D)との間における寄生容量(CgdあるいはCgs)を低減することができる。従って、本実施形態に係る薄膜トランジスタ2を、表示装置における画素のスイッチングトランジスタとして使用することにより、ゲート電極11がONからOFFになるときに上記寄生容量を介した飛び込み電圧が発生することを防止することができる。
【0114】
さらに、本実施形態に係る薄膜トランジスタ2は、第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1に対して、ゲート電極11とソース電極17S(又はドレイン電極17D)との間の膜厚がチャネル層23の分だけ厚くなっているので、短絡不良も発生しにくくなる。
【0115】
次に、本発明の第2の実施形態に係る薄膜トランジスタ2の製造方法について、図5A〜図5Lを参照しながら図6を用いて説明する。本発明の第2の実施形態に係る薄膜トランジスタ2の製造方法は、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1の製造方法と、多くの工程で共通する。従って、第1の実施形態に係る製造方法と異なる点を中心に説明する。
【0116】
本実施形態に係る製造方法と第1の実施形態に係る製造方法とが異なる点は、第1の実施形態では、チャネル層13とバッファ層14と第1コンタクト層15a及び15bとの3層を同時にエッチングしてパターニングしていたのに対し、第2の実施形態では、チャネル層23と第1コンタクト層15a及び15bとの2層のみを同時にエッチングしてパターニングする点である。
【0117】
なお、それ以外の工程は、第1の実施形態と基本的には同じであるので、第1の実施形態に係る製造方法及び図5A〜図5Lを参照しながら説明する。
【0118】
まず、図5A〜図5Dにおいて説明した方法と同様の方法によって、基板10上にゲート電極11をパターン形成し(図5A、図5B)、その後、ゲート電極11を覆う状態でゲート絶縁膜12を形成し(図5C)、その後、ゲート絶縁膜12上に結晶質シリコンからなるチャネル層用膜を形成する(図5D)。
【0119】
次に、第1の実施形態では引き続いてバッファ層用膜を形成したが、本実施形態では、バッファ層用膜を形成する前に、チャネル層用膜に対してフォトリソグラフィー及びウエットエッチングを施すことにより、図6に示すように所定形状のチャネル層23をパターン形成する。
【0120】
次に、図5E及び図5Fにおいて説明した方法と同様の方法によって、チャネル層23を覆うようにして、水素化非晶質シリコンからなるバッファ層用膜14Fを成膜し(図5E)、その後、n型不純物としてリンが低濃度に添加された非晶質シリコンからなる第1コンタクト層用膜15Fを成膜する(図5F)。
【0121】
次に、図5Gにおいて説明した方法と同様にして、フォトリソグラフィー及びウエットエッチングを施すことにより、バッファ層用膜14Fと第1コンタクト層用膜15Fとを選択的に同時にパターニングして、島状にパターニングされたバッファ層14及び第1コンタクト層用膜15Fを形成することができる。
【0122】
次に、図5H及び図5Iにおいて説明した方法と同様にして、チャネル層23とバッファ層14と第1コンタクト層用膜15Fを覆うようにして、n型不純物としてリンが高濃度に添加された非晶質シリコンからなる第2コンタクト層用膜16Fを成膜し(図5H)、第2コンタクト層用膜16F上に、ソースドレイン金属膜17Mを成膜する(図5I)。
【0123】
次に、図5J及び図5Kにおいて説明した方法と同様にして、ソースドレイン金属膜17Mをパターニングしてソース電極17S及びドレイン電極17Dを分離形成し(図5J)、その後、第2コンタクト層用膜16F及び第1コンタクト層用膜15Fをパターニングして所定形状の一対の第2コンタクト層16a及び16b並びに一対の第1コンタクト層15a及び15bを分離形成する。
【0124】
これにより、本発明の第2の実施形態に係る薄膜トランジスタ2を製造することができる。
【0125】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る薄膜トランジスタ3について、図7A及び図7Bを用いて説明する。図7Aは、本発明の第3の実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。また、図7Bは、図7Aに示す本発明の第3の実施形態に係る薄膜トランジスタの平面図である。
【0126】
図7A及び図7Bに示す本発明の第3の実施形態に係る薄膜トランジスタ3は、図6に示す本発明の第2の実施形態に係る薄膜トランジスタ2と基本的な構成は同じであり、図7A及び図7Bにおいて、図6に示す構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付している。
【0127】
図7A及び図7Bに示す本発明の第3の実施形態に係る薄膜トランジスタ3が、図6に示す本発明の第2の実施形態に係る薄膜トランジスタ2と異なる点は、チャネル層23より上方に形成される、バッファ層34、一対の第1コンタクト層15a及び15b、並びに、一対の第2コンタクト層36a及び36bの構成である。
【0128】
図7Aに示すように、本発明の第3の実施形態に係る薄膜トランジスタ3は、チャネル層23の上に、バッファ層34、一対の第1コンタクト層15a及び15b、並びに、一対の第2コンタクト層36a及び36bが形成されている。また、一対の第2コンタクト層36a及び36bの上にはソース電極17S及びドレイン電極17Dが形成されている。
【0129】
そして、本実施形態では、第1コンタクト層15bとバッファ層34とを貫通するコンタクトホール38が形成されており、このコンタクトホール38を介して高濃度不純物の第2コンタクト層36a及び36bとチャネル層23とが直接接続されている。なお、本実施形態では、第2の実施形態とは異なり、第2コンタクト層36a及び36bとチャネル層23とはコンタクトホール38を介してのみ直接接続されている。
【0130】
なお、本実施形態において、コンタクトホール38の平面視形状は、図7Bに示すように、矩形状としたが、円形等その他の形状であっても構わない。また、コンタクトホール38は1つのみ形成したが、複数個形成しても構わない。また、コンタクトホール38は、ソース電極17S側のみに形成したが、ドレイン電極17D側のみに形成してもよいし、ソース電極17S側とドレイン電極17D側の両方に形成しても構わない。但し、ドレイン電極17D側の方が電界が集中することから、少なくともドレイン電極17D側に形成することが好ましい。
【0131】
また、本実施形態では、第2コンタクト層36bと第1コンタクト層15bとの界面である第1界面(コンタクトホール38の側面)と、第2コンタクト層36bとチャネル層23との界面である第2界面(コンタクトホール38の最下面)と、第2コンタクト層36bとバッファ層34との界面である第3界面(コンタクトホール38の側面)と、第2コンタクト層36a(36b)とソース電極17S又はドレイン電極17Dとの界面である第4界面とを有する。そして、本実施形態においては、図7Aに示すように、第1界面及び第3界面には、基板10の主面に対して略垂直な垂直面のみが存在し、第2界面には、基板10の主面に対して略平行な平行面のみが存在し、第4界面には、基板10の主面に対して略垂直な垂直面と基板10の主面に対して略平行な平行面とが存在する。
【0132】
以上、本発明の第3の実施形態に係る薄膜トランジスタ3も、第1及び第2の実施形態と同様に、ソース電極17Sとドレイン電極17Dとの間においてキャリアが流れるキャリア移動経路としては、オフ時に支配的となる第1経路とオン時に支配的となる第2経路とが存在する。そして、オフ時におけるキャリアの移動は第1経路が支配的になってオフ電流が第1経路に沿って流れることになり、オン時におけるキャリアの移動は第2経路が支配的になってオン電流が第2経路に沿って流れることになる。
【0133】
これにより、第3の実施形態でも、オン時のTFT駆動電流を維持しつつ、オフ時のリーク電流を抑制することができるので、電流の立ち上がりのよい薄膜トランジスタを実現することができる。
【0134】
さらに、本実施形態では、上記の構成により、第1の実施形態及び第2の実施形態と比較して、チャネル層23と第2コンタクト層36a又は36bとの界面部分が少ない。すなわち、本実施形態では、チャネル層23と第2コンタクト層36bとがコンタクトホール38を介してのみ接触しており、チャネル層23と第2コンタクト層36a又は36bとが接触する面積が小さい。
【0135】
従って、チャネル層23と第2コンタクト層36a又は36bとの界面部分が少ない程、Ron抵抗が大きくなってオフ電流をより低減することができる。従って、本実施形態に係る薄膜トランジスタ3は、第2の実施形態と比べて、オフ電流をさらに小さくすることができる。
【0136】
さらに、本実施形態に係る薄膜トランジスタ3は、第1及び第2の実施形態に係る薄膜トランジスタ1、2に対して、ゲート電極11とソース電極17S(又はドレイン電極17D)との間の膜厚が厚くなっているので、第1及び第2の実施形態と比べて、さらに短絡不良の発生を低減することができる。
【0137】
なお、本実施形態に係る薄膜トランジスタ3の製造方法は、第2の実施形態とマスクパターンが異なるだけであり、本実施形態に係る薄膜トランジスタ3は、第2の実施形態に係る薄膜トランジスタ2の製造方法と同様の方法によって製造することができる。
【0138】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る薄膜トランジスタ4について、図8を用いて説明する。図8は、本発明の第4の実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。
【0139】
図8に示す本発明の第4の実施形態に係る薄膜トランジスタ4は、図1Aに示す本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタと基本的な構成は同じであり、図8において、図1Aに示す構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付している。
【0140】
図8に示す本発明の第4の実施形態に係る薄膜トランジスタ4が、図1Aに示す本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1と異なる点は、本実施形態に係る薄膜トランジスタ4がチャネル保護層を備えている点である。
【0141】
すなわち、本発明の第4の実施形態に係る薄膜トランジスタ4では、チャネル層13の上にチャネル保護層48が形成されており、チャネル保護層48の両端側を覆うようにしてバッファ層44a及び44bが形成されている。なお、本実施形態において、チャネル層13上のバッファ層はTFTのチャネル部分が除去されて、分離されたバッファ層44a及び44bとなっている。従って、バッファ層44a及び44bは、TFTのチャネル層としての機能よりも、コンタクト層としての機能の方がより支配的になると考えられる。
【0142】
チャネル保護層48は、シリコン窒化膜等の窒化膜からなる絶縁膜が用いられる。チャネル保護層48は、当該チャネル保護層48の後に形成されるバッファ層44a(44b)と第1コンタクト層15a(15b)と第2コンタクト層16a(16b)とをエッチング等によりパターン形成する際、チャネル部分のエッチングストッパ層として機能する。このように、チャネル保護層48が形成されることにより、エッチングによってチャネル層13がダメージを受けてしまうことを防止することができる。従って、チャネル保護層48を形成することは、チャネル層13にエッチングのダメージを残さないという利点がある。
【0143】
以上、本発明の第4の実施形態に係る薄膜トランジスタ4も、第1の実施形態と同様に、ソース電極17Sとドレイン電極17Dとの間においてキャリアが流れるキャリア移動経路としては、図1Aに示すように、オフ時に支配的となる第1経路Ch1とオン時に支配的となる第2経路Ch2とが存在する。そして、オフ時にはオフ電流が第1経路Ch1に沿って流れることになり、オン時にはオン電流が第2経路Ch2に沿って流れることになる。
【0144】
これにより、第4の実施形態でも、オン時のTFT駆動電流を維持しつつ、オフ時のリーク電流を抑制することができるので、電流の立ち上がりのよい薄膜トランジスタを実現することができる。
【0145】
このとき、本実施形態に係る薄膜トランジスタ4では、チャネル層13の上層にチャネル保護層48が直接形成されているので、第1の実施形態と比べて、オフ時において第2経路Ch2のバッファ層44a及び44bにキャリアが流れる割合が減少する。
【0146】
また、本実施形態に係る薄膜トランジスタ4は、チャネル保護層48を備えているので、エッチングの際におけるエッチング速度の制御を厳密に行わなくても、チャネル層がエッチングされてしまうことを防止することができる。これにより、製造管理を容易に行うことができる。
【0147】
なお、本実施形態では、チャネル保護層48としてシリコン窒化膜を用いたが、これに限らない。その他、チャネル保護層48としては、シリコン酸化膜やシリコン酸窒化膜、又はシリコン窒化膜やこれらの層との積層膜等が用いられる。あるいは、チャネル保護層48として、不純物が添加されたシリコン膜等のエッチングが困難な難エッチング材、その他絶縁物で構成される絶縁膜を用いることもできる。
【0148】
また、本実施形態では、図8に示すように、チャネル層13に接する形でチャネル保護層48を形成したが、これに限らない。例えば、バッファ層用膜をエッチングせずにバッファ層上にチャネル保護層48を形成し、チャネル保護層48がチャネル層13と接触しないように構成しても構わない。
【0149】
さらに、本実施形態では、バッファ層44a及び44bとして水素化非晶質シリコン膜を用いており、これにより、チャネル保護層48中の不純物が半導体層のチャネル部に混入することを防ぐことができる。この結果、チャネル保護層48そのものを成膜する際におけるチャネル部へのダメージを低減することができる。その他、チャネル保護層48としては、エッチングの際にチャネル層13を保護することができるような構成であれば、どのような構成であっても構わない。
【0150】
なお、本実施形態に係る薄膜トランジスタ4の構成は、第1の実施形態だけでなく、第2の実施形態又は第3の実施形態に適用しても構わない。すなわち、第2及び第3の実施形態に係る薄膜トランジスタ2、3において、チャネル保護層を形成することもできる。
【0151】
次に、本発明の第4の実施形態に係る薄膜トランジスタ4の製造方法について、図5A〜図5Lを参照しながら図8を用いて説明する。本発明の第4の実施形態に係る薄膜トランジスタ4の製造方法は、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1の製造方法と、多くの工程で共通する。従って、第1の実施形態に係る製造方法と異なる点を中心に説明する。
【0152】
本実施形態に係る製造方法と第1の実施形態に係る製造方法とが異なる点は、本実施形態では、チャネル保護層48を形成する工程が追加された点である。
【0153】
なお、それ以外の工程は、第1の実施形態と基本的には同じであるので、第1の実施形態に係る製造方法及び図5A〜図5Lを参照しながら説明する。
【0154】
まず、図5A〜図5Dにおいて説明した方法と同様の方法によって、基板10上にゲート電極11をパターン形成し(図5A、図5B)、その後、ゲート電極11を覆う状態でゲート絶縁膜12を形成し(図5C)、その後、ゲート絶縁膜12上に結晶質シリコンからなるチャネル層用膜13Fを形成する(図5D)。
【0155】
次に、本実施形態では、チャネル層用膜13Fの上に窒化膜等の絶縁膜を形成し、この絶縁膜に対してフォトリソグラフィー及びウエットエッチングを施すことにより、所定形状のチャネル保護層48をパターン形成する。
【0156】
その後、図5E〜図5Jで説明した方法と同様の方法によって、チャネル層13とチャネル保護層48とを覆うようにしてバッファ層用膜を形成し(図5E)、その後、第1コンタクト層用膜の成膜(図5F)、第1コンタクト層用膜、バッファ層及びチャネル層の島化(図5G)、第2コンタクト層用膜の成膜(図5H)、ソースドレイン金属膜の形成(図5I)、及び、ソース電極及びドレイン電極のパターン形成(図5J)を行う。
【0157】
次に、図5Kで説明した方法と同様の方法によって、第2コンタクト層用膜をエッチングで除去し、ソース電極17Sとドレイン電極17Dとの離間部はチャネル保護層48で保護しながら、チャネル保護層48上におけるバッファ層用膜と第1コンタクト層用膜と第2コンタクト層用膜をエッチングによって完全に除去する。
【0158】
これにより、本発明の第4の実施形態に係る薄膜トランジスタ4を製造することができる。
【0159】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態に係る薄膜トランジスタ5について、図9を用いて説明する。図9は、本発明の第5の実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。なお、図9において、図1A及び図8に示す構成要素と同じ材料で構成される構成要素については、同じ符号を付しており、その材料や寸法等の詳しい説明は省略する。
【0160】
図9に示すように、本発明の第5の実施形態に係る薄膜トランジスタ5は、トップゲート型の薄膜トランジスタであって、基板10と、ソース電極17S及びドレイン電極と、一対の第2コンタクト層16a及び16bと、一対の第1コンタクト層15a及び15bと、一対のバッファ層44a及び44bと、チャネル層13と、ゲート絶縁膜12と、ゲート電極11と、を備える。
【0161】
ソース電極17S及びドレイン電極17Dは、それぞれ導電性材料及び合金等の単層構造又は多層構造であり、基板10上に分離形成されている。
【0162】
一対の第2コンタクト層16a及び16bは、不純物を高濃度に含む非晶質シリコン膜(n+Si)であり、ソース電極17S及びドレイン電極17Dを覆うように形成されている。一対の第2コンタクト層16a及び16bは、第1コンタクト層15a及び15bに接するとともに、チャネル層13にも接している。なお、一対の第2コンタクト層16a及び16bの不純物濃度は、一対の第1コンタクト層15a及び15bの不純物濃度よりも一桁以上高い濃度である。
【0163】
一対の第1コンタクト層15a及び15bは、第2コンタクト層16a及び16bよりも不純物濃度が低い非晶質シリコン膜(n-Si)によって構成されており、一対の第2コンタクト層16a及び16bの上に形成されている。
【0164】
一対のバッファ層44a及び44bは、それぞれ、非晶質シリコン(アモルファスシリコン)等の非晶質半導体膜によって構成されており、一対の第1コンタクト層15a及び15bの上に形成されている。
【0165】
チャネル層13は、結晶質シリコン膜によって構成されており、一対のバッファ層44a及び44bを覆うようにして基板10上にも形成されている。
【0166】
ゲート絶縁膜12は、二酸化シリコン等の絶縁材料で構成されており、チャネル層13上に形成されている。
【0167】
ゲート電極11は、モリブデン等の金属からなり、ゲート絶縁膜12上に形成されている。
【0168】
本実施形態では、第2コンタクト層16a(16b)と第1コンタクト層15a(15b)との界面である第1界面と、第2コンタクト層16a(16b)とチャネル層13との界面である第2界面と、第2コンタクト層16a(16b)とソース電極17S又はドレイン電極17Dとの界面である第4界面とを有する。なお、第2コンタクト層16a(16b)とバッファ層44a(44b)との界面は存在しない。また、本実施形態においては、図9に示すように、第1界面及び第4界面には、基板10の主面に対して略水平な水平面が存在し、第2界面には、基板10の主面に対して略垂直な垂直面のみが存在する。
【0169】
以上、本発明の第5の実施形態に係る薄膜トランジスタ5も、第1の実施形態と同様に、ソース電極17Sとドレイン電極17Dとの間においてキャリアが流れるキャリア移動経路としては、チャネル層13、バッファ層44a(44b)、第1コンタクト層15a(15b)及び第2コンタクト層16a(16b)を経由してキャリアが移動する第1経路と、チャネル層13及び第2コンタクト層16a(16b)を経由してキャリアが移動する第2経路とが存在することになる。
【0170】
より具体的には、本実施形態に係る薄膜トランジスタ5でも、オフ時におけるキャリアの移動は第1経路が支配的になってオフ電流が第1経路に沿って流れることになり、オン時におけるキャリアの移動は第2経路が支配的になってオン電流が第2経路に沿って流れることになる。
【0171】
これにより、第5の実施形態に係る薄膜トランジスタ5であっても、第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1と同様に、Ronの抵抗を小さくすることができるので、オン時のTFT駆動電流を維持しつつ、オフ時のリーク電流を抑制することができ、電流の立ち上がりのよい薄膜トランジスタを実現することができる。
【0172】
さらに、本実施形態に係る薄膜トランジスタ5は、チャネル層13上にゲート絶縁膜12が形成されており、さらに、チャネル層13が薄膜トランジスタの製造工程の最後の方の工程で形成される。このため、製造工程中のエッチング工程においてチャネル層13がエッチングされてしまうことを防止することができ、かつ、チャネル層13に不純物が混入して汚染されてしまうことを防止することができる。
【0173】
次に、本発明の第5の実施形態に係る薄膜トランジスタ5の製造方法について図9を参照して説明する。なお、本実施形態に係る各構成要素の製造工程は、第1の実施形態に係る各構成要素の製造方法と同様にして行うことができる。すなわち、本実施形態に係る製造方法と第1の実施形態に係る製造方法とは、基本的には、工程の順序やマスクパターン等が異なるだけで、第1の実施形態と同じ材料の構成要素については、第1の実施形態と同様の成膜方法や同様のエッチング方法を用いることができる。
【0174】
まず、基板10上にソースドレイン金属膜を成膜し、フォトリソグラフィー及びウエットエッチングにより、ソース電極17S及びドレイン電極17Dをパターン形成する。
【0175】
次に、ソース電極17S及びドレイン電極17Dを覆うようにして、リンが高濃度に添加された非晶質シリコンからなる第2コンタクト層用膜、リンが低濃度に添加された非晶質シリコンからなる第1コンタクト層用膜、及び、水素化非晶質シリコン膜からなるバッファ層用膜を順次成膜する。その後、フォトリソグラフィー及びエッチングを施すことにより、これらの膜を所定形状に同時にパターニングし、一対の第2コンタクト層16a及び16b、一対の第1コンタクト層15a及び15b、並びに、一対のバッファ層44a及び44bを同時にパターン形成する。
【0176】
次に、バッファ層44a及び44bを覆うようにして、結晶質シリコンからなるチャネル層用膜を形成し、チャネル層13をパターン形成する。その後、チャネル層13上に、シリコン酸化膜等からなるゲート絶縁膜とモリブデン等からなるゲート金属膜とを成膜する。その後、フォトリソグラフィー及びエッチングを施すことにより、所定形状のゲート絶縁膜12とゲート電極11とをパターン形成する。
【0177】
これにより、本発明の第5の実施形態に係る薄膜トランジスタ5を製造することができる。
【0178】
なお、本実施形態では、チャネル層13を形成するときに、既にチャネル層13の下層に、高濃度不純物の第2コンタクト層16a(16b)、ソース電極17S又はドレイン電極17Dが形成されているため、高温プロセスを使用することは好ましくない。従って、結晶質シリコン膜からなるチャネル層13を形成する際は、非晶質シリコン膜をアニールして結晶化するのではなく、CVD法等で直接微結晶シリコン等の結晶質シリコン膜を成膜する方法が適している。
【0179】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態及び第6の実施形態の他の例に係る薄膜トランジスタ6、6Aについて、それぞれ図10及び図11を用いて説明する。図10は、本発明の第6の実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。また、図11は、本発明の第6の実施形態の他の例に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。なお、図10及び図11において、図1A及び図9に示す構成要素と同じ材料で構成される構成要素については、同じ符号を付しており、その材料や寸法等の詳しい説明は省略する。
【0180】
まず、図10に示すように、本発明の第6の実施形態に係る薄膜トランジスタ6は、トップゲート型の薄膜トランジスタであって、基板10と、チャネル層13と、バッファ層14と、一対の第1コンタクト層15a及び15bと、一対の第2コンタクト層16a及び16bと、ソース電極17S及びドレイン電極17Dと、ゲート絶縁膜12と、ゲート電極11と、層間絶縁膜68と、を備える。
【0181】
チャネル層13は、結晶質シリコン膜によって構成されており、基板10上に形成されている。
【0182】
バッファ層14は、非晶質シリコン(アモルファスシリコン)等の非晶質半導体膜によって構成されており、チャネル層13上に形成される。
【0183】
一対の第1コンタクト層15a及び15bは、不純物を低濃度に含む非晶質シリコン膜(n-Si)によって構成されており、チャネル層13上において離間して形成されている。一対の第1コンタクト層15a及び15bの不純物濃度は、一対の第2コンタクト層16a及び15bの不純物濃度よりも一桁以上低い濃度である。
【0184】
一対の第2コンタクト層16a及び16bは、不純物を高濃度に含む非晶質シリコン膜(n+Si)であり、第1コンタクト層15a及び15bの上面、チャネル層13の側面及びバッファ層14の側面を覆うようにして離間して形成されている。一対の第2コンタクト層16a及び16bは、第1コンタクト層15a及び15bに接するとともに、チャネル層13及びバッファ層14にも接している。
【0185】
ソース電極17S及びドレイン電極17Dは、それぞれ導電性材料及び合金等の単層構造又は多層構造であり、第2コンタクト層16a及び16b上に分離形成されている。
【0186】
ゲート絶縁膜12は、二酸化シリコン等の絶縁材料で構成されており、第1コンタクト層15aと第1コンタクト層15bの間であってバッファ層14上に島状に形成されている。
【0187】
ゲート電極11は、モリブデン等の金属からなり、ゲート絶縁膜12上に島状に形成されている。ゲート電極11は、ゲート絶縁膜12と同時にパターン形成されており、ゲート絶縁膜12と側面が一致している。
【0188】
層間絶縁膜68は、島状のゲート絶縁膜12及びゲート電極11を覆うようにして、第2コンタクト層16aと第2コンタクト層16bとの間に形成されている。
【0189】
本実施形態に係る薄膜トランジスタ6が第5の実施形態に係る薄膜トランジスタ5と異なる点の一つは、チャネル層13の下にソース電極17S及びドレイン電極17Dが存在しないという点である。
【0190】
また、本実施形態では、第2コンタクト層16a(16b)と第1コンタクト層15a(15b)との界面である第1界面と、第2コンタクト層16a(16b)とチャネル層13との界面である第2界面と、第2コンタクト層16a(16b)とバッファ層14との界面である第3界面と、第2コンタクト層16a(16b)とソース電極17S又はドレイン電極17Dとの界面である第4界面とを有する。そして、本実施形態においては、図10に示すように、第1界面には、基板10の主面に対して略垂直な垂直面と基板10の主面に対して略水平な水平面とが存在し、第2界面及び第3界面には、基板10の主面に対して略垂直な垂直面のみが存在し、第4界面には、基板10の主面に対して略水平な水平面のみが存在する。
【0191】
以上、本発明の第6の実施形態に係る薄膜トランジスタ6も、第5の実施形態と同様に、ソース電極17Sとドレイン電極17Dとの間においてキャリアが流れるキャリア移動経路としては、チャネル層13、バッファ層14、第1コンタクト層15a(15b)及び第2コンタクト層16a(16b)を経由してキャリアが移動する第1経路と、チャネル層13及び第2コンタクト層16a(16b)を経由してキャリアが移動する第2経路とが存在することになる。
【0192】
そして、本実施形態に係る薄膜トランジスタ6でも、オフ時におけるキャリアの移動は第1経路が支配的になってオフ電流が第1経路に沿って流れることになり、オン時におけるキャリアの移動は第2経路が支配的になってオン電流が第2経路に沿って流れることになる。
【0193】
これにより、第6の実施形態に係る薄膜トランジスタ6であっても、第5の実施形態に係る薄膜トランジスタ6と同様に、Ronの抵抗を小さくすることができるので、オン時のTFT駆動電流を維持しつつ、オフ時のリーク電流を抑制することができ、電流の立ち上がりのよい薄膜トランジスタを実現することができる。
【0194】
また、本実施形態では、チャネル層13の下にソース電極17S及びドレイン電極17Dが存在しないので、結晶質シリコンからなるチャネル層13を形成する際に、非晶質シリコンをアニールすることによって結晶化する方法を用いることができる。この場合、この結晶化する加熱プロセスを考慮して、ソース電極17S及びドレイン電極17Dに高融点金属を用いる必要がない。
【0195】
また、図10に示す本実施形態に係る薄膜トランジスタ6の構造によれば、チャネル層13がエッチングされることを防止することができる。
【0196】
次に、本発明の第6の実施形態の他の例に係る薄膜トランジスタ6Aについて、図11を用いて説明する。
【0197】
図11に示すように、本発明の第6の実施形態の他の例に係る薄膜トランジスタ6Aもトップゲート型の薄膜トランジスタであって、基本的な構成は、図10に示す第6の実施形態に係る薄膜トランジスタ6と同じである。従って、図11において、図10に示す構成要素と同じ構成要素については、同じ符号を付しており、その詳しい説明は省略する。
【0198】
図11に示す本発明の第6の実施形態の他の例に係る薄膜トランジスタ6Aが、図10に示す本発明の第6の実施形態に係る薄膜トランジスタ6と異なる点は、バッファ層の構成である。
【0199】
すなわち、図11に示す本実施形態に係る薄膜トランジスタ6Aは、島状のゲート絶縁膜12及びゲート電極11の下のバッファ層部分が完全に除去されており、ゲート絶縁膜12がチャネル層13上に形成されている。つまり、ゲート電極11の下には、基板10上において、ゲート絶縁膜12とチャネル層13のみが形成されている。
【0200】
このように構成される図11に示す本発明の第6の実施形態の他の例に係る薄膜トランジスタ6Aも、図10に示す薄膜トランジスタ6と同様の効果を奏する。さらに、本実施形態では、ゲート電極11の下には、ゲート絶縁膜12及びチャネル層13しか形成されていないので、Id−Vg特性の立ち上がり特性が良くなる。つまり、Ron抵抗をさらに小さくすることができる。
【0201】
次に、本発明の第6の実施形態に係る薄膜トランジスタ6及び第6の実施形態の他の例に係る薄膜トランジスタ6Aの製造方法について、図10及び図11を参照しながら説明する。なお、本実施形態でも、第1の実施形態と同じ材料の構成要素については、第1の実施形態と同様の成膜方法や同様のエッチング方法を用いることができる。
【0202】
まず、基板10上に、結晶質シリコン膜からなるチャネル層用膜を成膜し、その後、通常のフォトリソグラフィーとエッチングを行うことにより、チャネル層13をパターン形成する。
【0203】
次に、チャネル層13を覆うようにして、水素化非晶質シリコン膜からなるバッファ層14を成膜し、不純物を低濃度に含有する第1コンタクト層用膜を成膜する。
【0204】
その後、フォトリソグラフィーとエッチングを行うことにより、第1コンタクト層用膜をエッチングすることにより、一対の第1コンタクト層15a及び15bをパターン形成する。なお、このとき、第1コンタクト層15aと第1コンタクト層15bとの間の分離領域(エッチング除去領域)にあわせてバッファ層もエッチング除去することにより、図11に示す構造とすることができる。
【0205】
次に、第1コンタクト層15a及び15bの分離領域に、ゲート絶縁膜12及びゲート電極11を同時に島状にパターン形成する。その後、全面を覆うように絶縁膜を成膜して、フォトリソグラフィーとエッチングを行うことにより、ゲート電極11とゲート絶縁膜12と第1コンタクト層15a及び15bの一部を覆うように、層間絶縁膜68をパターン形成する。
【0206】
次に、不純物を高濃度に含有する第2コンタクト層用膜とソースドレイン金属膜とを順次成膜し、フォトリソグラフィーとエッチングを行うことにより、ソース電極17S及びドレイン電極17Dをパターン形成する。その後、第2コンタクト層用膜に対してエッチングを施すことにより、第1コンタクト層15a及び15bの上面、チャネル層13の側面、及び、バッファ層14(44a、44b)の側面を覆うようにして、第2コンタクト層16a及び16bをパターン形成する。
【0207】
これにより、本発明の第6の実施形態及び第6の実施形態の他の例に係る薄膜トランジスタ6、6Aを製造することができる。
【0208】
なお、図10に示す本発明の第6の実施形態に係る薄膜トランジスタ6においては、チャネル層13のパターニングの後に、バッファ層14のパターニングを行ったが、これに限らない。例えば、チャネル層用膜とバッファ層用膜とを連続成膜し、その後、チャネル層13とバッファ層14とを同時にパターニングしても構わない。
【0209】
また、第1コンタクト層15a及び15bのパターニングは、バッファ層14のパターニングの後に行ったが、これに限らない。例えば、チャネル層用膜とバッファ層用膜と第1コンタクト層用膜とを連続成膜した後に、これらを同時にパターニングし、さらにその後、第1コンタクト層15a及び15bのパターニングを行っても構わない。
【0210】
また、図11に示す本発明の第6の実施形態の他の例に係る薄膜トランジスタ6Aにおいては、チャネル層13をパターニングした後に、バッファ層44a及び44bと第1コンタクト層15a及び15bとを同時にパターニングしたが、これに限らない。例えば、チャネル層用膜とバッファ層用膜と第1コンタクト層用膜とを連続成膜した後に、これらを同時にパターニングし、さらにその後、バッファ層44a及び44bと第1コンタクト層15a及び15bとのパターニングを行っても構わない。
【0211】
(第7の実施形態)
次に、本発明の第7の実施形態に係る薄膜トランジスタについて、図12を用いて説明する。図12は、本発明の第7の実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。
【0212】
なお、図12に示す本発明の第7の実施形態に係る薄膜トランジスタ7は、図1Aに示す本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタと基本的な構成は同じである。従って、図12において、図1Aに示す構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付しており、その説明は省略する。
【0213】
図12に示す本発明の第7の実施形態に係る薄膜トランジスタ7が、図1Aに示す本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1と異なる点は、ゲート電極の長さ(Lgm)である。それ以外の構成は、第1の実施形態と同じである。
【0214】
図12に示すように、本発明の第7の実施形態に係る薄膜トランジスタ7は、ゲート電極71の長さ(Lgm)が、ソース電極17Sとドレイン電極17Dとの間における離間部の長さ(Lch)よりも長く、チャネル層13の長さ(Lsi)よりも短い。
【0215】
つまり、本実施形態に係る薄膜トランジスタ7は、第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1と異なり、基板垂直方向におけるゲート電極71とソース電極17S(又はドレイン電極17D)との間には、ゲート絶縁膜12のみが存在する領域がない。
【0216】
この構成により、ゲート電極71とソース電極17S(又はドレイン電極17D)との間における寄生容量(CgdあるいはCgs)を低減することができる。従って、本実施形態に係る薄膜トランジスタ7を、表示装置における画素のスイッチングトランジスタとして使用することにより、ゲート電極71がONからOFFになるときに上記寄生容量を介した飛び込み電圧が発生することを防止することができる。
【0217】
さらに、本実施形態に係る薄膜トランジスタ7は、第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1のように、ゲート電極11とソース電極17S(又はドレイン電極17D)との間に絶縁膜だけが存在するものと比較して、ゲート電極71とソース電極17S(又はドレイン電極17D)との間の膜厚がチャネル層13及びバッファ層14の分だけ厚くなっているので、短絡不良も発生しにくくなる。
【0218】
なお、キャリアの移動経路に関しては、本発明の第7の実施形態に係る薄膜トランジスタ7は、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1と同様の効果を奏する。
【0219】
以上、本発明の第7の実施形態に係る薄膜トランジスタ7の構成は、第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1に限らず、他の実施形態に係る薄膜トランジスタにも適用することができる。
【0220】
(第8の実施形態)
次に、本発明の第8の実施形態に係る薄膜トランジスタ8について、図13を用いて説明する。図13は、本発明の第8の実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を示す断面図である。
【0221】
なお、図13に示す本発明の第8の実施形態に係る薄膜トランジスタ8は、図1Aに示す本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタと基本的な構成は同じである。従って、図13において、図1Aに示す構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付しており、その説明は省略する。
【0222】
図13に示す本発明の第8の実施形態に係る薄膜トランジスタ8が、図1Aに示す本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1と異なる点は、第7の実施形態と同様に、ゲート電極の長さ(Lgm)である。それ以外の構成は、第1の実施形態と同じである。
【0223】
図13に示すように、本発明の第8の実施形態に係る薄膜トランジスタ8は、ゲート電極81の長さ(Lgm)が、チャネル層13の長さ(Lsi)よりも短く、さらに、ソース電極17Sとドレイン電極17Dとの間における離間部の長さ(Lsi)よりも短い。
【0224】
従って、本実施形態に係る薄膜トランジスタ8は、基板垂直方向において、ゲート電極81とソース電極17S(又はドレイン電極17D)とは交差せず、ゲート電極81とソース電極17S(又はドレイン電極17D)とが重なる領域は存在しない。
【0225】
これにより、ゲート電極81とソース電極17S(又はドレイン電極17D)との間における短絡不良は、ほとんど発生しない。
【0226】
なお、キャリアの移動経路に関しては、本発明の第8の実施形態に係る薄膜トランジスタ8は、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1と同様の効果を奏する。但し、本実施形態に係る薄膜トランジスタ8は、第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1と比べると、オン電流を低減することにはなるものの、オフ電流は最も抑制することができる。従って、本実施形態に係る薄膜トランジスタ8は、スイッチングトランジスタとして有効である。但し、チャネル層13としては、移動度の高い結晶質シリコン膜を用いることが好ましい。
【0227】
以上、本発明の第8の実施形態に係る薄膜トランジスタ8の構成は、第1の実施形態に係る薄膜トランジスタ1に限らず、他の実施形態に係る薄膜トランジスタにも適用することができる。
【0228】
(第9の実施形態)
次に、上記の第1〜第8の実施形態に係る薄膜トランジスタを表示装置に適用した場合である本発明の第9の実施形態に係る表示装置について、図14を用いて説明する。なお、本実施形態では、有機EL表示装置に適用した例について説明する。図14は、本発明の第9の実施形態に係る有機EL表示装置の一部切り欠き斜視図である。上述した各実施形態に係る薄膜トランジスタは、有機EL表示装置のアクティブマトリクス基板の駆動トランジスタ又はスイッチングトランジスタとして用いることができる。
【0229】
図14に示すように、有機EL表示装置300は、アクティブマトリクス基板310と、アクティブマトリクス基板310上にマトリクス状に複数配置された画素320と、画素320に接続され、アクティブマトリクス基板310上にアレイ状に複数配置された画素回路330と、画素320と画素回路330の上に順次積層された下部電極340(陽極)、有機EL層350及び上部電極360(陰極)と、各画素回路330と制御回路(不図示)とを接続する複数本のソース線370及びゲート線380と、を備えている。有機EL層350は、電子輸送層、発光層、正孔輸送層等の各層が積層されて構成されている。
【0230】
次に、上記有機EL表示装置300における画素320の回路構成について、図15を用いて説明する。図15は、本発明の第1〜第8の実施形態のいずれかの薄膜トランジスタを用いた画素の回路構成図である。
【0231】
図15に示すように、画素320は、有機EL素子321と、有機EL素子321の発光量を制御するための駆動トランジスタ322と、有機EL素子321のオン/オフ等の駆動のタイミングを制御するためのスイッチングトランジスタ323と、コンデンサ324とを備える。なお、駆動トランジスタ322又はスイッチングトランジスタ323として、本発明の第1〜第8の実施形態のいずれかの薄膜トランジスタが用いられる。
【0232】
スイッチングトランジスタ323のソース電極323Sは、ソース線370に接続され、ゲート電極323Gは、ゲート線380に接続され、ドレイン電極323Dは、コンデンサ324及び駆動トランジスタ322のゲート電極322Gに接続されている。
【0233】
また、駆動トランジスタ322のドレイン電極322Dは、電源線390に接続され、ソース電極322Sは有機EL素子321のアノードに接続されている。
【0234】
この構成において、ゲート線380にゲート信号が入力され、スイッチングトランジスタ323をオン状態にすると、ソース線370を介して供給された信号電圧がコンデンサ324に書き込まれる。そして、コンデンサ324に書き込まれた保持電圧は、1フレーム期間を通じて保持される。この保持電圧により、駆動トランジスタ322のコンダクタンスがアナログ的に変化し、発光階調に対応した駆動電流が、有機EL素子321のアノードからカソードへと流れる。これにより、有機EL素子321が発光し、画像として表示される。
【0235】
次に、上記の第1〜第8の実施形態に係る薄膜トランジスタを、有機EL表示装置の画素における駆動トランジスタ又はスイッチングトランジスタとして用いた場合について、図16を用いてさらに詳細に説明する。図16は、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタを駆動トランジスタとして用いた場合における有機EL表示装置の一画素の断面図である。
【0236】
図16に示すように、本実施形態に係る有機EL表示装置400は、駆動トランジスタ1Aとスイッチングトランジスタ(不図示)とが形成されたTFTアレイ基板である基板10上に、第1層間絶縁膜410と、第2層間絶縁膜420と、第1コンタクト部430と、第2コンタクト部440と、バンク450とを備え、さらに、図14で説明したような、下部電極340と、有機EL層350と、上部電極360とを備える。
【0237】
図16に示すように、駆動トランジスタ1Aを覆うようにして、第1層間絶縁膜410が形成されている。第1層間絶縁膜410上にはソース線370及び電源線390が形成されており、電源線390と駆動トランジスタ1Aのドレイン電極17Dとは、第1層間絶縁膜410を貫通する第1コンタクト部430を介して電気的に接続されている。また、ソース線370と電源線390とを覆うようにして、第2層間絶縁膜420が形成されている。
【0238】
第2層間絶縁膜420上には、隣接する画素との境界部分にバンク450が形成されている。従って、バンク450は基板10上に複数個形成されており、隣接するバンク450によって開口部が形成される。バンク450の開口部には、下部電極340と有機EL層350と上部電極360とで構成される有機EL素子321が形成されている。
【0239】
下部電極340は、画素単位で配置された陽極(アノード)であり、第2層間絶縁膜420上に形成されている。下部電極340と駆動トランジスタ1Aのソース電極17Sとは、第1層間絶縁膜410と第2層間絶縁膜420とを貫通する第2コンタクト部440を介して電気的に接続されている。
【0240】
有機EL層(有機発光層)350は、色(サブ画素列)単位又はサブ画素単位で形成されており、上述のとおり、所定の有機発光材料で構成されている。
【0241】
上部電極360は、有機EL層350の上方に配置され、複数の画素を跨ぐように形成された陰極(カソード)であり、ITO等の透明電極によって構成される。
【0242】
以上、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタを備える有機EL表示装置400は、本実施形態に係る当該薄膜トランジスタが優れたトランジスタ特性を有するので、表示性能に優れた表示装置を実現することができる。
【0243】
なお、本実施形態では、本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタを駆動トランジスタとして用いた場合について説明したが、本発明の他の実施形態に係る薄膜トランジスタを駆動トランジスタとして用いても構わない。
【0244】
また、本実施形態では、駆動トランジスタに適用した場合について説明したが、スイッチングトランジスタに適用しても構わない。この場合、特に、スイッチングトランジスタは、限られた時間内にコンデンサを充電する必要があるので、オン電流を大きくし、かつ、Ron抵抗を低く保持するためにオフ電流を低くする必要がある。従って、Ron抵抗が小さい本発明の各実施形態に係る薄膜トランジスタは、スイッチングトランジスタとして、特に有用である。
【0245】
以上、本発明に係る薄膜トランジスタ及びその製造方法、並びに表示装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0246】
例えば、本発明に係る表示装置の一実施形態として、有機EL表示装置を用いて説明したが、これに限定されない。例えば、本発明の第1〜第8の実施形態に係る薄膜トランジスタは、無機EL表示素子又は液晶表示素子等の他の表示素子を備えた表示装置にも適用することができる。
【0247】
また、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタを備えた表示装置については、フラットパネルディスプレイとして利用することができ、図17に示すようなテレビジョンセット500、パーソナルコンピュータ、携帯電話などのあらゆるディスプレイに適用することができる。
【0248】
また、個々の薄膜トランジスタの性能ばらつきを低減し、表示装置としての性能や寿命を確保するために、表示装置の一画素において、スイッチングトランジスタを2つ以上設ける場合もある。この場合、本発明の第1〜3、第5、第7、第8の実施形態に係る薄膜トランジスタであれば、いずれも製造方法に大きな変更がなく、マスクパターンを変更するだけで、同一基板上に異なるトランジスタを容易に形成することができる。従って、一画素内又は表示装置内において、本発明における複数の実施形態に係る薄膜トランジスタの組み合わせ、又は、本発明に係る薄膜トランジスタと従来の薄膜トランジスタとの組み合わせによって、容易な設計により有機EL表示装置を得ることもできる。
【0249】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、複数の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0250】
本発明に係る薄膜トランジスタ及び表示装置は、例えば、液晶表示装置やエレクトロルミネッセンス表示装置などの表示装置、あるいは、これらの表示装置を備えたテレビジョンセット、パーソナルコンピュータ又は携帯電話などの表示装置を備えた電気機器において、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0251】
1、2、3、4、5、6、6A、7、8、100、200 薄膜トランジスタ
1A、322 駆動トランジスタ
10、110、210 基板
11、71、81、111、211 ゲート電極
11M ゲート金属膜
12、112、212 ゲート絶縁膜
13、23、213 チャネル層
13F チャネル層用膜
14、34、44a、44b、214 バッファ層
14F バッファ層用膜
15a、15b、115a、115b、215a、215b 第1コンタクト層
15F 第1コンタクト層用膜
16a、16b、36a、36b、116a、116b、216a、216b 第2コンタクト層
16F 第2コンタクト層用膜
17S、117S、217S ソース電極
17D、117D、217D ドレイン電極
17M ソースドレイン金属膜
18 パッシベーション膜
38 コンタクトホール
48 チャネル保護層
68 層間絶縁膜
113 チャネル層
300、400 有機EL表示装置
310 アクティブマトリクス基板
320 画素
321 有機EL素子
322G ゲート電極
322S ソース電極
322D ドレイン電極
323 スイッチングトランジスタ
323G ゲート電極
323S ソース電極
323D ドレイン電極
324 コンデンサ
330 画素回路
340 下部電極
350 有機EL層
360 上部電極
370 ソース線
380 ゲート線
390 電源線
410 層間絶縁膜
420 層間絶縁膜
430 コンタクト部
440 コンタクト部
450 バンク
500 テレビジョンセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に形成された、ゲート電極及びゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するように配置されたチャネル層と、
前記チャネル層に接続されたバッファ層と、
前記バッファ層に接続され、所定の不純物が添加された第1コンタクト層と、
前記第1コンタクト層に接続され、前記第1コンタクト層よりも不純物濃度が高い第2コンタクト層と、
前記第2コンタクト層に接続された、ソース電極及びドレイン電極と、を備え、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間におけるキャリアの移動経路は、
前記チャネル層、前記バッファ層、前記第1コンタクト層及び前記第2コンタクト層を経由する第1経路と、
前記チャネル層及び前記2コンタクト層を経由する第2経路と、を含む
薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記チャネル層は、結晶質シリコン膜である
請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記バッファ層は、非晶質シリコン膜である
請求項1又は請求項2に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記第1経路において、前記キャリアは、
前記チャネル層と、前記バッファ層と、前記第1コンタクト層と、前記第2コンタクト層とを、この順に、または、この逆の順に移動し、
前記第2経路において、前記キャリアは、
前記チャネル層と前記第2コンタクト層とを、この順に、または、この逆の順に移動する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記第1コンタクト層と前記第2コンタクト層との第1界面を有する
請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記第1界面は、前記基板の主面に対して略平行である
請求項5に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記チャネル層と前記第2コンタクト層との第2界面を有する
請求項1〜6のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項8】
前記第2界面は、前記基板の主面に対して略垂直である
請求項7に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項9】
前記第2界面は、前記基板の主面に対して略平行である
請求項7に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項10】
前記バッファ層と前記第2コンタクト層との第3界面を有する
請求項5〜9のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項11】
さらに、前記バッファ層及び前記第1コンタクト層を貫通するコンタクトホールを有し、
前記第2コンタクト層は、前記コンタクトホールを介して前記チャネル層と接続されている
請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項12】
前記基板上に、少なくとも前記ゲート電極、前記ゲート絶縁膜、前記チャネル層及び前記バッファ層が、この順で形成される
請求項1〜11のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項13】
さらに、前記チャネル層上又は前記バッファ層上に形成されたチャネル保護層を有する
請求項12に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項14】
前記薄膜トランジスタの前記基板に対して垂直方向に割断したときの割断断面において、
互いに離間した前記ソース電極と前記ドレイン電極との離間部の距離をLchとし、ゲート電極の長さをLgmとすると、
Lgm>Lchである
請求項12に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項15】
さらに、前記チャネル層の長さをLsiとすると、
Lgm<Lsiである
請求項14に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項16】
前記ソース電極又は前記ドレイン電極と前記第2コンタクト層との第4界面を有する
請求項14に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項17】
前記薄膜トランジスタの前記基板に対して垂直方向に割断したときの割断断面において、
互いに離間した前記ソース電極と前記ドレイン電極との離間部の距離をLchとし、ゲート電極の長さをLgmとすると、
Lgm<Lchである
請求項12に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項18】
前記基板上に、少なくとも前記チャネル層、前記ゲート絶縁膜及び前記ゲート電極が、この順で形成される
請求項1〜11のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項19】
前記チャネル層と前記ゲート絶縁膜の間に前記バッファ層が形成される
請求項18に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項20】
基板と、前記基板の上方に形成されたゲート電極及びゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向するように配置されたチャネル層と、前記チャネル層に接続されたバッファ層と、前記バッファ層に接続され、所定の不純物が添加された第1コンタクト層と、前記第1コンタクト層に接続され、前記第1コンタクト層よりも不純物濃度が高い第2コンタクト層と、前記第2コンタクト層に接続されたソース電極及びドレイン電極とを備える薄膜トランジスタの製造方法であって、
前記バッファ層と前記第1コンタクト層とを連続成膜し、前記バッファ層と前記第1コンタクト層とを同一パターンでエッチングする工程と、
前記第2コンタクト層と前記ソース電極及び前記ドレイン電極とを同一パターンでエッチングする工程と、を含む
薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項21】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタに接続された表示素子と、を備える
表示装置。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate

【図5E】
image rotate

【図5F】
image rotate

【図5G】
image rotate

【図5H】
image rotate

【図5I】
image rotate

【図5J】
image rotate

【図5K】
image rotate

【図5L】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−23320(P2012−23320A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162310(P2010−162310)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】