説明

表示装置の製造方法

【課題】配線等のパターニングにおける従来の現像工程を省略し、サイドエッチングが無く、低コスト、高スループットを実現可能とした表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁基板SUB上に成膜した金属膜MTを覆って酸現像タイプのネガ型ホトレジストNRGを塗布し、所要の開口パターンを有するネガ型露光マスクNMKを通してホトレジストを露光して露光部のホトレジストを硬膜化し、酸現像液を用いて硬膜化したホトレジストの露光部を残し、露光されなかった非露光部を除去するとともに、当該非露光部のホトレジストの除去で露出した金属膜MTをエッチングして除去した後、ホトレジストNRGを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の製造方法に関し、特にフラット型の表示装置を構成する薄膜トランジスタ基板に電極や配線などの回路パターンを形成する場合に好適なものであるが、他の同様な電子機器の回路パターンあるいは絶縁膜のパターニングにも適用できるものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置、その他のフラット型の表示装置は薄膜トランジスタ基板(TFT基板)あるいはアクティブ・マトリクス基板と称する基板で構成される。この薄膜トランジスタ基板は、ガラスなどの絶縁基板の主面に成膜した金属膜等の導電性薄膜あるいは絶縁膜(以下、金属膜で説明する)をホトレジストを用いたパターニング法(ホトリソグラフィ技法、以下単にホト工程とも称する)により形成された画素回路、画素選択回路、その他の制御回路を有している。
【0003】
一般に、ホトレジストは感光性を付与したスラリ状の樹脂をスピン法などで導電性薄膜などを成膜した基板に塗布し乾燥して均一な膜厚のレジスト層として形成する。そして、成膜されたホトレジスト層に所要の電極あるいは配線パターン等に相当する開口を有するホトマスクを介して露光し、現像することで上記ホトマスクの開口パターンを反映したレジストパターンを形成する。こうして形成したレジストパターンをエッチングマスクとしてエッチング処理し、所要の電極あるいは配線などの回路パターンを形成した薄膜トランジスタ基板を得る。
【0004】
このようなホト工程による金属膜のパターニングでは、アルカリ現像タイプのホトレジストを用いてホトレジストのパターンを形成し、それをマスクにして金属膜の露出部分をウェットエッチングもしくはドライエッチング処理するプロセスが標準的な技術となっている。
【0005】
ドライエッチングは、反応性イオンをぶつけて金属膜の露出部分を削り取る方式で、細かい回路を作るのに適しているが、装置の価格が高く、また処理に時間がかかるという欠点がある。一方のウェットエッチングは、金属膜の露出部分を酸溶液で腐食させる方式で、コストが安くて生産性が高いという利点があるため、大型基板を用いる液晶表示装置などでは、ウェットエッチングが多用される傾向にある。
【0006】
標準的な技術である金属膜をウェットエッチングプロセスで配線等にパターニングしてパターン等を形成するときは、金属膜を形成した基板にポジ型ホトレジストを塗布し、所要の開口パターンを有する露光マスク(ホトマスク)を通して露光し、その後アルカリ現像液で現像し、水洗して露光マスクの開口パターンを反映したレジストパターンを形成する。レジストパターンでマスクされていない部分の金属膜を酸溶液でエッチング(ウェットエッチング)した後、レジストを剥離することで所要の配線パターン等を形成する。
【0007】
ドライエッチングは、反応性イオンをぶつけて金属膜の露出部分を削り取る方式であることから、垂直方向だけに腐食が進む。そのため配線寸法のばらつきが小さく、微細回路が確実に作れる。それに対しウェットエッチングは、酸溶液で腐食させる方式であることから、液が浸透する全方向均等にエッチングが進む。そのため横方向からの液の浸透によって、レジスト下側の金属が削り取られるようにエッチングされる。これをサイドエッチと呼び、サイドエッチ量が大きいと、配線寸法のばらつきを生じたり、微細回路ではサイドエッチで金属とレジストの接触面積が小さくなり、レジストが剥がれ落ちるという問題を生じる。
【0008】
通常サイドエッチングを防止するために、エッチングの前にパターニングしたレジストを熱処理する工程(ポストベーク工程)を設けている。ポストベークによりレジストと金属の密着性を上げることで、サイドエッチ量を低減させている。しかし、レジストパターンが熱変形して配線寸法のばらつきを生じたり、加熱の行過ぎによりレジストが通常の剥離液では剥離できなくなるという問題があった。
【0009】
ネガ型ホトレジストは、露光部の架橋反応による不溶化を利用してパターンを形成する。これに対して、ポジ型のホトレジストは露光部のナフトキノンジアジドの分解(アルカリに可溶な酸を生じる)を利用してパターンを形成する。ポジ型のホトレジストはネガ型に比べて解像度が良好(ナフトキノンジアジドの分解が光に忠実)なこと、異物が付着し難い(架橋剤などの低分子有機物質が添加されていないのでベタつかない)ことなどから、パターン形成用ホトレジストの主流になっている。
【0010】
なお、酸現像タイプ(−NH2+H+→−NH3+)のホトレジストを用いた電子機器用のパターニングに関連して、特許文献1は、ポリイミドのパターニングに酸現像レジストを用いたプロセスを開示する。
【特許文献1】特開平11−207902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記した標準的な技術では、ホト工程(露光、現像、エッチング工程)が多く、製造工程数削減による低コスト化、製造時間の短縮化が難しい。また、特許文献1の記載にネガ型の酸現像レジストを用いたポリイミドのパターニングでは、ポリイミドがアルカリ可溶性であるため、必然的に酸現像タイプのホトレジストが必要になるというものなので、工程数を削減して低コストで高スループット化を実現することは難しい。また、標準的な技術では、エッチングマスクであるレジスト下側でのサイドエッチが発生し、高精度のパターニングが困難である。
【0012】
本発明の目的は、電子機器の配線パターンなどのパターニングにおいて、酸現像タイプのホトレジストを用い、当該配線等のパターニングにおける従来の現像工程を省略して低コスト、高スループット、かつサイドエッチングの無い高精度パターニングを実現可能とした表示装置の製造方法を提供することにある。本発明は、液晶表示装置や有機EL表示装置等のフラットパネル型の表示装置を構成する薄膜トランジスタ基板の配線等のパターニングに好適であるが、その他の同様の電子機器の配線パターン、絶縁膜などのパターニングにも適用できる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、表示装置の配線等のパターニングにおいて、酸現像タイプのホトレジストを用い、ホトレジスト現像工程と金属膜のウェットエッチング工程を併用することで、(1)プロセス短縮による低コストと高スループット化を実現する。また、(2)ウェットエッチングに特有の、所謂サイドエッチが防止され、パターンの高精細化を実現する。並びに、(3)酸現像タイプのホトレジストを使用することで、配線等のパターン形成後のホトレジスト剥離除去を従来の高濃度アルカリ溶液や溶剤、アッシングなどの処理ではなく、低濃度アルカリ溶液での処理を可能とする。
【0014】
本発明の代表的な構成を記述すれば、以下のとおりである。すなわち、本発明の製造方法は、
(1)絶縁基板上に成膜した金属膜を覆って酸現像タイプのネガ型ホトレジストを塗布するレジスト塗布工程と、
所要の開口パターンを有するネガ型露光マスクを通して前記ホトレジストを露光して露光部のホトレジストを硬膜化する露光工程と、
酸溶液を用いて、前記硬膜化した前記ホトレジストの前記露光部を残し、露光されなかった非露光部を除去するホトレジスト現像工程と、当該非露光部の前記ホトレジストの除去で露出した前記金属膜膜を、前記酸溶液でエッチングして除去する金属膜エッチング工程を併用して行う現像/エッチング工程と、
前記現像/エッチング工程後の前記露光部の前記ホトレジストを除去するレジスト除去工程と、を含む。
【0015】
前記酸現像タイプのネガ型ホトレジストは、
(1)アミノ基、アミド基を分子中に有する高分子化合物と、
(2)3−6官能のアクリル系架橋剤と、
(3)光重合開始剤と、
(4)界面活性剤や密着向上剤などの添加剤と、
(5)溶剤と、で構成される。
【0016】
そして、アミノ基、アミド基を分子中に有する高分子化合物は、分子中にアミノ基、アミド基を有する共重合モノマーと、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、スチレン誘導体、エチレン性不飽和結合を有する化合物などのモノマーとを共重合させた化合物である。
【0017】
アミノ基、アミド基は、酸性領域でイオン化し現像溶解性となるものである。分子中にアミノ基、アミド基を有する共重合モノマーとしては、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸アミン類、アクリル酸アミド類、メタクリル酸アミン類、メタクリル酸アミド類の何れかを用いることができる。
【0018】
アクリルアミド類としては、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド等を用いることができる。
【0019】
メタクリルアミド類としては、メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジプロピルメタクリルアミド、N,N−ジブチルメタクリルアミド等を用いることができる。
【0020】
アクリル酸アミン類としては、アミノアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノプロピルアクリレート、アミノブチルアクリレート、アミノベンジルアクリレート等を用いることができる。
【0021】
メタクリル酸アミン類としては、アミノメタクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルメタクリレート、アミノブチルメタクリレート、アミノベンジルメタクリレート等を用いることができる。
【0022】
アクリル酸アミド類としては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノブチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノベンジルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジエチルアミノブチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノベンジルアクリレート等を用いることができる。
【0023】
メタクリル酸アミド類としては、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノブチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノベンジルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノブチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノベンジルメタクリレート等を用いることができる。
【0024】
また、前記アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、スチレン誘導体、エチレン性不飽和結合を有する化合物などのモノマーは、現像溶解性を調整する共重合モノマである。エッチングに用いる強酸に耐性を持たせるためには、分子量の大きなアルキル基を持つ疎水性の強いモノマを一定量共重合させる必要がある。
【0025】
アクリル酸誘導体としては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ノルボルニルアクリレート、イソボニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート等を用いることができる。
【0026】
メタクリル酸誘導体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、イソボニルメタクリレート、トリシクロデカニルメタクリレート等を用いることができる。
【0027】
スチレン酸誘導体としては、スチレン、α−メチルスチレン等を用いることができる。
【0028】
また、前記のアミノ基、アミド基を分子中に有する高分子化合物に、一定量の酸基を含ませることで、パターン形成後にアルカリ溶液でレジスト剥離させることができる。更には金属膜との密着性を向上させることができる。
【0029】
アミノ基、アミド基を分子中に有する高分子化合物に、一定量の酸基を含ませるには、酸基を持つモノマーを共重合させる。酸基を持つモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、エチレン性不飽和結合を有し2から4個の酸基を持つ化合物の何れかを用いることができる。
【0030】
エチレン性不飽和結合を有し2から4個の酸基を持つ化合物としては、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸等を用いることができる。
【0031】
また、前記3−6官能のアクリル系架橋剤としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリセリントリアクリレート等を用いることができる。
【0032】
前記光重合開始剤としては、光照射によってラジカルを発生する、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製のイルガキュア369(商品名)、同イルガキュア907(商品名)等の材料を用いることができる。
【0033】
また、前記界面活性剤や密着向上剤などの添加剤としては、住友スリーエム社製のフロラードシリーズ、大日本インキ社製のメガファックシリーズ、セイミケミカル社製のサーフロンシリーズ、ネオス社製のフタージェントシリーズ等の界面活性剤、信越化学社製のKBM603、KBE903等のシランカプリング剤を用いることができる。
【0034】
そして、前記溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等を用いることができる。
【0035】
レジスト現像と金属エッチングを併用する酸溶液には、硝酸、硝酸セリウム、硝酸第二セリウムアンモニウム、硫酸、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、塩化水素酸、塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、燐酸、酢酸、炭酸、蓚酸などの酸の単液もしくは混合液を用いることができる。酸溶液の組成は、エッチングする金属の腐食性に合わせて選択、調整する。
【0036】
また酸の強度によって、ホトレジストの分子構造(モノマ組成、ポリマ分子量)、ホトレジストの組成(架橋剤や密着向上剤の配合量など)や、現像/エッチング工程に要する時間を調整する。
【0037】
また、現像/エッチング工程を、連続した2つ以上のポジションに分けることで、酸溶液の繰返し使用頻度を上げることができる。その場合、ホトレジスト現像ポジションの酸溶液を、金属エッチングポジションの酸溶液と異なる仕様にすることによって、より品質の高い金属の加工パターンを得ることができる。
【0038】
現像/エッチング工程を、連続した2つ以上のポジションに分ける場合の、ホトレジスト現像ポジションの酸溶液は、金属の腐食性の弱い酸を選択し、金属エッチングポジションの酸溶液よりも低濃度で用いることが好ましい。金属の腐食性の弱い酸を選ぶことによって、金属を腐食することなく、レジスト部分だけを選択的に現像することができる。また、金属エッチングポジションの酸溶液よりも低濃度で用いることによって、レジスト層の現像の進み過ぎが抑えられ、サイドエッチ防止効果を存分に引き出すことができる。
【0039】
ホトレジスト現像と、金属エッチングを連続した2つ以上のポジションに分けた場合でも、水洗や乾燥など多数の工程が省略できるため、工程数を削減して低コストで高スループット化を実現するという効果は充分に得ることができる。
【0040】
なお、本発明の現像/エッチング工程において、2流体ノズルを使用し、最初はエアー/酸溶液の比を大としてレジストを湿潤させ、次いでエアー/酸溶液の比を小として噴出圧を高くしてレジストの現像速度と金属のエッチング速度を早めることによって、露光パターンを忠実に再現することができる。また、これをサイクル的に数回乃至20回程度繰り返すことで、一層のサイドエッチ防止効果が得られる。
【0041】
また、金属膜のウェットエッチング速度を向上するために、上記2流体ノズルのエアーに換えて換えてオゾンを使用して紫外線を照射しながら現像することによって、エッチング溶液や金属膜表面に滞留する有機物を分解できるので、エッチング速度と精度の向上を図ることができる。
【0042】
さらに、露光前もしくは後にポストベークを施してレジストの硬さを調整することで、エッチング速度を精度よく制御することができる。
【0043】
そして、前記溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ―ブチロラクトンの何れかを用いることができる。
【発明の効果】
【0044】
酸現像タイプのネガ型ホトレジストを用い、ウエットエッチング工程でホトレジストの現像と金属膜のエッチングを同時に行うことで、ホトレジストのみの現像工程が省略でき、工程数の削減を行うことができる。また、ネガ型ホトレジストを用い、その溶解速度の差を利用して、金属膜のサイドエッチングを防止し、高精細なパターニングを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
先ず、本発明の表示装置の製造方法の全体プロセスを現行の標準プロセスとの対比で説明する。図1A乃至図1Gは、本発明のプロセスと標準プロセスの各工程における被加工対象の断面を順に対比させて示す工程図であり、各図の左側の(a)は標準プロセスを、右側の(b)は本発明のプロセスを示す。なお、ここでは、フラットパネル型表示装置の薄膜トランジスタ基板の製造を想定し、絶縁基板としてガラス基板を用い、その表面に金属配線を形成する場合について説明する。
【0046】
図1Aは、レジスト塗布工程の説明図である。図1Aの(a)の標準プロセスでは、金属膜MTとしてアルミニウム膜(以下、MTと記す)を成膜したガラス基板SUBにアルカリ現像タイプのポジ型レジストPRGを塗布する。一方、図1A(b)の本発明のプロセスでは、酸現像タイプのネガ型レジストNRGを塗布する。
【0047】
図1Bは、レジスト露光工程の説明図である。図1B(a)の標準プロセスではポジの開口パターンを有するポジ用露光マスクPMKを用いて露光光EXLで露光する。図1B(b)の本発明のプロセスではネガの開口パターンを有するネガ用露光マスクNMKを用いて露光光EXLで露光する
【0048】
図1Cは、現像工程の説明図である。図1C(a)の標準プロセスではアルカリ現像して露光部分のレジストPRGを溶解除去し、未露光部分のレジストPRG−Nをガラス基板SUBに残す。図1C(b)の本発明のプロセスでは現像は施さない。露光部分のレジストNRG−Xは硬膜となっている。
【0049】
図1Dは、ポストべーク工程の説明図である。図1D(a)の標準プロセスではアルミニウム膜MTへの未露光部分のレジストPRG−Nの密着性を強化するため、ホットプレート等でポストべークを行う。本発明のプロセスでは、露光部分のレジストNRG−Xは硬膜となってアルミニウム膜MTに密着しているので、ポストべークは行わないで次の工程に渡される。
【0050】
図1Eは、未露光部分のレジストNRG−Nの剥離とこの剥離で露出したアルミニウム膜のウエットエッチング工程の説明図である。図1E(a)の標準プロセスでは酸現像液を用いてアルミニウム膜MTのレジストPRG−Nで覆われていない部分のウエットエッチングを行い、レジストPRG−Nで覆われているアルミニウム膜をパターン化したアルミニウム配線MT−Pとして残す。図1E(b)の本発明のプロセスでも酸現像液を用いたウエットエッチングを行うが、このウエットエッチングでは、未露光部分のレジストNRG−Nを溶解して露光部分のレジストNRG−Xを基板に残すレジスト現像と、残されたレジストNRG−Xで覆われないアルミニウム膜MTのエッチングを行って、パターン化したアルミニウム配線MT−Pを得る。
【0051】
図1Fは、レジスト剥離工程の説明図である。図1F(a)の標準プロセスおよび図1F(b)の本発明のプロセスでは、剥離液(例えば、モノエタノールアミン)を用いてレジストを剥離除去し、アルミニウム膜のパターニングを完了する。
【0052】
図2A乃至図2Dは、図1Eに示した本発明のプロセスと標準プロセスのウエットエッチング工程における被加工対象の断面を順に対比させて示す工程図であり、各図の左側の(a)は標準プロセスを、右側の(b)は本発明のプロセスを示す。
【0053】
図2Aは、アルミニウム膜にウエットエッチングを施す前の状態の説明図で、図2A(a)の標準プロセスでは、ポストべークによりアルミニウム膜MTへの未露光部分のレジストPRG−Nの密着性を強化している。図2A(b)の本発明のプロセスでは現像は施さず、露光により硬膜となった露光部分のレジストNRG−Xと、が未露光部分のレジストNRG−Nがアルミニウム膜MT上を覆っている。
【0054】
図2Bは、アルミニウム膜に施すウエットエッチングの初期のエッチング状態の説明図である。図2B(a)の標準プロセスでは、レジストPRG−Nで覆われないアルミニウム膜MTが徐々にエッチングされている。図2B(b)の本発明のプロセスでは、先ず未露光部分のレジストNRG−Nが溶解する。
【0055】
図2Cは、アルミニウム膜に施すウエットエッチングの中期のエッチング状態の説明図である。図2C(a)の標準プロセスでは、レジストPRG−Nで覆われないアルミニウム膜MTのエッチングが進行し、かつレジストPRG−Nで覆われた部分のアルミニウム膜MTもエッチング(サイドエッチング)され始める。図2C(b)の本発明のプロセスでは、未露光部分のレジストNRG−Nの溶解がほぼ完了し、露出したアルミニウム膜MTのエッチングが始まる。未露光部分のレジストNRG−Nは露光部分のレジストNRG−Xの両サイドが最後に溶解し、この段階ではアルミニウム膜MTのエッチングが始まっている。
【0056】
図2Dは、アルミニウム膜に施すウエットエッチングの完了状態の説明図である。図2D(a)に示したように、標準プロセスでのウエットエッチング加工では、アルミニウム膜MTはサイドエッチングされ露光マスクの開口パターンを反映したPRG−Nよりも幅狭なものとなってしまう。これに対し、図2D(b)の本発明のプロセスによるウエットエッチングでは、サイドエッチングはなされない。
【0057】
次に、上記した本発明の製造プロセスの実施例について説明する。まず、本発明で用いられる酸現像型ホトレジスト用ポリマの合成と、その調合例について説明し、その後に本発明の製造方法の実施例を説明する。
【0058】
(1)酸現像型ホトレジスト用ポリマの合成:
(1−1)ポリマ成分
N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート・・・・・30重量部
メチルメタクリレート・・・・・・・・・・・・・・・・25重量部
トリシクロデカニルメタクリレート・・・・・・・・30重量部
メタクリル酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・15重量部
(1−2)重合開始剤
2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロにトリル・・10重量部
(1−3)溶剤
ジエチレングリコールジメチルエーテル・・・・・・200重量部
上記のポリマ成分、重合開始剤、溶剤を密封容器に入れ、窒素置換した後、中身を攪拌しながら70℃の温度で4時間過熱して重量分子量6000(スチレン換算)を得た。
【0059】
(2)酸現像型ホトレジストの調合:
(1)で合成したポリマ・・・・・・・・・・・・・・・・・・100 重量部
ぺンタエリスリトールヘキサアクリレート(架橋剤)・・・・・・・15重量部
イルガキュア369(商品名)(光重合開始剤)・・・・・・・3重量部
フロラードFC4430(商品名)(界面活性剤)・・・0.05重量部
KBM603(商品名)(密着性向上剤)・・・・・・・・・10重量部
ジエチレングリコールジメチルエーテル(溶剤)・・・・・・30重量部
上記の各材料を混合し、良く攪拌して酸現像型ホトレジストを調合した。
【実施例1】
【0060】
アルミニウムを蒸着したガラス基板に上記(2)で調合した酸現像型ホトレジストを1.5μmの膜厚に塗布し、90℃のホットプレートで3分間乾燥後、5μmラインの開口パターンを有する露光マスクを通して150mJ/cm2の露光を行った。
【0061】
レジストを現像することなく全面残したまま、リン酸60%+硝酸15%+酢酸3%の混合溶液で120秒間ウエットエッチングを施した。ガラス基板上のパターンを走査電子顕微鏡(SEM)で観察したが、サイドエッチングはなかった。
【0062】
ガラス基板を10%NaOH水溶液に60秒間浸漬してレジストを剥離した。こうして得られた配線寸法は露光マスクの寸法通りの5μmであった。
【実施例2】
【0063】
クロムを蒸着したガラス基板に上記(2)で調合した酸現像型ホトレジストを1.5μmの膜厚に塗布し、90℃のホットプレートで3分間乾燥後、5μmラインの開口パターンを有する露光マスクを通して150mJ/cm2の露光を行った。
【0064】
レジストを現像することなく全面残したまま、硝酸第2セリウムアンモニウム10%+硝酸5%の混合溶液で100秒間ウエットエッチングを施した。ガラス基板上のパターンを走査電子顕微鏡(SEM)で観察したが、サイドエッチングはなかった。
【0065】
ガラス基板を10%NaOH水溶液に60秒間浸漬してレジストを剥離した。こうして得られた配線寸法は露光マスクの寸法通りの5μmであった。
【実施例3】
【0066】
SiNを蒸着したガラス基板に上記(2)で調合した酸現像型ホトレジストを1.5μmの膜厚に塗布し、90℃のホットプレートで3分間乾燥後、5μmラインの開口パターンを有する露光マスクを通して150mJ/cm2の露光を行った。
【0067】
レジストを現像することなく全面残したまま、フッ酸10%+フッ化アンモン20%の混合溶液で120秒間ウエットエッチングを施した。ガラス基板上のパターンを走査電子顕微鏡(SEM)で観察したが、サイドエッチングはなかった。
【0068】
ガラス基板を10%NaOH水溶液に60秒間浸漬してレジストを剥離した。こうして得られた配線寸法は露光マスクの寸法通りの5μmであった。
【比較例】
【0069】
本発明の実施例の効果を確認するために、次のような比較例を示す。
【0070】
アルミニウムを蒸着したガラス基板にフェノールノボラック型ポジレジストを1.5μmの膜厚に塗布し、100℃のホットプレートで2分間乾燥後、5μmラインの開口パターンを有する露光マスクを通して50mJ/cm2の露光を行った。
【0071】
レジストを2.38%テトラメチルアンモニウムハイドライド溶液で現像し、5μmのレジストパターンを得た。これを、リン酸60%+硝酸15%+酢酸3%の混合溶液で80秒間ウエットエッチングを施した。ガラス基板上のパターンを走査電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、サイドエッチングが見られた。、
【0072】
ガラス基板をモノエタノールアミンに60秒間浸漬してレジストを剥離除去した。こうして得られた配線寸法は露光マスクの寸法よりも小さい4μmであった。
【0073】
以上説明した本発明の各実施例と比較例をまとめて表1に示す。
【表1】

【0074】
ウエットエッチングは等方性エッチングなので、サイドエッチングが必然的に起こる。これまではポストベークを取り入れてレジストの密着性を上げることで、サイドエッチング量を低減させているが、サイドエッチング量をゼロにすることは不可能であった。本発明で用いたネガレジストは、露光部が硬化反応して現像液に対して不溶化されることでパターンを形成するものであるが、散乱光による反応や、反応の拡散によって生じた弱硬化部分(本来なら解像度を低下させる部分)がエッチングを遅延させる働きをするため、サイドエッチングが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1A】レジスト塗布工程の説明図である。
【図1B】レジスト露光工程の説明図である。
【図1C】現像工程の説明図である。
【図1D】ポストべーク工程の説明図である。
【図1E】未露光部分のレジストNRG−Nの剥離とこの剥離で露出したアルミニウム膜のウエットエッチング工程の説明図である。
【図1F】レジスト剥離工程の説明図である。
【図2A】アルミニウム膜にウエットエッチングを施す前の状態の説明図である。
【図2B】アルミニウム膜に施すウエットエッチングの初期のエッチング状態の説明図である。
【図2C】アルミニウム膜に施すウエットエッチングの中期のエッチング状態の説明図である。
【図2D】アルミニウム膜に施すウエットエッチングの完了状態の説明図である。
【符号の説明】
【0076】
SUB・・・・ガラス基板、MT・・・・金属膜、PRG・・・・ポジ型レジスト、NRG・・・・ネガ型レジスト、PMK・・・・ポジ用露光マスク、EXL・・・・露光光、NMK・・・・ネガ用露光マスク、PRG−N・・・・未露光部分のレジスト、NRG−X・・・・露光部分のレジスト、MT−P・・・・パターン化した金属配線。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上に成膜した金属膜を覆って酸現像タイプのネガ型ホトレジストを塗布するレジスト塗布工程と、
所要の開口パターンを有するネガ型露光マスクを通して前記ホトレジストを露光して露光部のホトレジストを硬膜化する露光工程と、
酸溶液を用いて、前記硬膜化した前記ホトレジストの前記露光部を残し、露光されなかった非露光部を除去するホトレジスト現像工程と、当該非露光部の前記ホトレジストの除去で露出した前記金属膜膜を、前記酸溶液でエッチングして除去する金属膜エッチング工程を併用する現像/エッチング工程と、
前記現像/エッチング工程後の前記露光部の前記ホトレジストを除去するレジスト除去工程と、
を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記酸現像タイプのネガ型ホトレジストは、
(1)アミノ基、アミド基を分子中に有する高分子化合物と、
(2)3−6官能のアクリル系架橋剤と、
(3)光重合開始剤と、
(4)界面活性剤や密着向上剤などの添加剤と、
(5)溶剤と、
で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記アミノ基、アミド基を分子中に有する高分子化合物は、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸アミン類、アクリル酸アミド類、メタクリル酸アミン類、メタクリル酸アミド類の何れかのモノマーと、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、スチレン誘導体、エチレン性不飽和結合を有する化合物などのモノマーとを共重合させた化合物であることを特徴とする請求項2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記アミノ基、アミド基を分子中に有する高分子化合物は、一定量の酸基を分子中に含むことを特徴とする請求項3に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記一定量の酸基を分子中に含む高分子化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、エチレン性不飽和結合を有し2から4個の酸基を持つモノマーを、前記アミノ基、アミド基を分子中に有する高分子化合物に共重合物させた化合物であることを特徴とする請求項4に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記酸溶液は、硝酸、硝酸セリウム、硝酸第二セリウムアンモニウム、硫酸、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、塩化水素酸、塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、燐酸、酢酸、炭酸、蓚酸などの酸の単液もしくは混合液であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。


【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【公開番号】特開2006−17843(P2006−17843A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193350(P2004−193350)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】