説明

表示装置

【課題】表示装置を駆動させるためのトランジスタとして量子細線を用いた場合に、小型
化および薄型化をより図ることが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】この表示装置100は、ガラス基板6の表面から上方(矢印Z1方向側)に
向かって延びるように形成された凸部71(72)を含むゲート電極7と、ゲート電極7
の凸部71(72)と平面的に見て重なるとともに、ゲート電極7上にゲート絶縁膜8を
介して形成される量子細線9と、量子細線9にそれぞれ接続されるソース電極11および
ドレイン電極12とを含む量子細線トランジスタ5を備える。また、ゲート電極7の凸部
71(72)と量子細線9との間の距離t1は、ゲート電極7の凸部71(72)以外の
部分と量子細線9との間の距離t2よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に、ソース電極とドレイン電極とに接続される量子細線
を含むトランジスタを備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、量子細線をトランジスタのチャネル領域に用いることによって、より高速駆動可
能なトランジスタを得る研究が注目されている(たとえば、特許文献1参照)。量子細線
は、数nmの幅および厚みからなり、キャリアを一次元に閉じ込めることが可能である。
この状態では、キャリアの平均自由工程に不純物が存在しないため、バルク(結晶の内部
)の場合と比較して数桁程度の移動度が大きくなることが知られている。上記特許文献1
に開示されたトランジスタでは、量子細線の延びる方向と交差する方向の両側には、量子
細線から所定の間隔を隔ててゲート電極が形成されており、ゲート電極に印加される電圧
を制御することにより、量子細線の表面にチャネルが形成される。
【特許文献1】特開平6−140636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたようなトランジスタの量子細線を、たとえ
ば、液晶表示装置のボトムゲート型の薄膜トランジスタのチャネルとして用いた場合では
、平坦なゲート電極の上に、平坦なゲート絶縁膜とチャネル領域を構成する量子細線とを
介して、ソース電極およびドレイン電極が形成されることになると考えられる。この場合
に、平坦なゲート電極とチャネル領域を構成する量子細線との間の距離(平坦なゲート絶
縁膜の厚み)が大きいと、ゲート電極からチャネルに電圧がかかりにくくなるので、量子
細線にキャリアが流れにくくなると考えられる。この場合には、量子細線の本数を増加さ
せる必要があるため、小型化および薄型化をより図るのが困難になるという問題点がある
と考えられる。
【0004】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の一つ
の目的は、表示装置を駆動させるためのトランジスタとして量子細線を用いた場合に、小
型化および薄型化をより図ることが可能な表示装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における表示装置は、基板の表面から
上方に向かって延びるように形成された凸部を含むゲート電極と、ゲート電極の凸部と平
面的に見て重なるとともに、ゲート電極上にゲート絶縁膜を介して形成される量子細線と
、量子細線にそれぞれ接続されるソース電極およびドレイン電極とを含むトランジスタを
備え、ゲート電極の凸部と量子細線との間の距離は、ゲート電極の凸部以外の部分と量子
細線との間の距離よりも小さい。
【0006】
この一の局面による表示装置では、上記のように、基板の表面から上方に向かって延び
るように形成された凸部を含むゲート電極を備えるとともに、ゲート電極の凸部と量子細
線との間の距離は、ゲート電極の凸部以外の部分と量子細線との間の距離よりも小さくす
ることによって、ゲート電極の凸部とチャネルとしての量子細線との間の距離をより小さ
くすることができるので、ゲート電極からの電界をチャネルとしての量子細線にかかりや
すくすることができる。これにより、量子細線にキャリアが流れやすくなるので、量子細
線の本数を減少させることができる。その結果、トランジスタの小型化および薄型化をよ
り図ることができる。
【0007】
上記一の局面による表示装置において、好ましくは、ゲート電極の凸部は、上方に向か
って尖った断面形状を有する。このように構成すれば、たとえば、ゲート電極の尖った凸
部上にCVD法によりゲート絶縁膜を形成した場合には、尖った凸部上に形成されたゲー
ト絶縁膜の厚みを尖った凸部の無いゲート絶縁膜上に形成した場合、あるいは凸部の先端
が丸い場合に比べて、より小さくすることができる。これにより、ゲート電極の凸部とチ
ャネルとしての量子細線との間の距離をより小さくすることができるので、ゲート電極か
らの電界をチャネルとしての量子細線に、よりかかりやすくすることができる。
【0008】
この場合、ゲート電極の凸部は、三角形状の断面形状を有している。このように構成す
れば、凸部の根元から先端に近づくにしたがって、徐々に凸部の幅が小さくなるので、根
元から先端まで全て小さい幅で尖った形状に形成する場合に比べて、凸部の機械的強度を
向上させることができる。
【0009】
上記一の局面による表示装置において、好ましくは、ゲート絶縁膜の凸部に対応する領
域の厚みは、ゲート絶縁膜の凸部に対応する領域以外の領域の厚みよりも小さい。このよ
うに構成すれば、ゲート絶縁膜の凸部に対応する領域の厚みとゲート絶縁膜の凸部に対応
する領域以外の領域の厚みとを同じ厚みに形成した場合と比べて、容易に、凸部とチャネ
ルとしての量子細線との間の距離を小さくすることができる。
【0010】
上記一の局面による表示装置において、好ましくは、ゲート絶縁膜の凸部に対応する領
域は、凸部の形状を反映して凸状に形成され、ゲート電極の凸部の内角は、ゲート絶縁膜
の凸部に対応する領域の内角よりも小さい。このように構成すれば、ゲート電極の凸部に
対応する領域の上方に形成されるゲート絶縁膜の厚みを、ゲート電極の凸部に対応する領
域以外に形成されたゲート絶縁膜の厚みよりも小さくすることができるので、ゲート電極
の凸部と、ゲート電極の凸部の上方に形成されたソース電極(ドレイン電極)との間の距
離を容易に小さくすることができる。
【0011】
上記一の局面による表示装置において、好ましくは、ゲート電極の凸部は、平面的に見
て、量子細線が延びる方向と交差する方向に沿って所定の間隔を隔てて延びるように形成
され、ゲート電極の凸部上には、凸部の延びる方向に沿って複数の量子細線が形成されて
いる。このように構成すれば、ゲート電極の凸部上に1つの量子細線が形成されている場
合と比べ、ソース電極とドレイン電極との間に大きな電流を流すことができる。
【0012】
上記一の局面による表示装置において、好ましくは、ゲート電極の凸部は、平面的に見
て、ソース電極またはドレイン電極の少なくとも一方と重なるようにゲート電極の一方端
辺近傍および他方端辺近傍に形成されている。このように構成すれば、容易に、ゲート電
極の凸部上にソース電極またはドレイン電極の少なくとも一方を形成することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、ゲート電極の凸部は、第1凸部および第2凸部を有し、ゲート
電極の第1凸部と第2凸部とは、平面的に見て、それぞれ、ソース電極およびドレイン電
極に重なるようにゲート電極の端辺近傍に形成されている。このように構成すれば、容易
に、ゲート電極の第1凸部上にソース電極を形成することができるとともに、第2凸部上
にドレイン電極を形成することができる。
【0014】
上記一の局面による表示装置において、好ましくは、量子細線の上方に形成される第1
物質層と、第1物質層上に形成される第2物質層とをさらに備え、第1物質層と第2物質
層との界面で量子細線に向かう光を反射させるように構成されている。このように構成す
れば、量子細線に光が入射するのを抑制することができるので、量子細線に光が入射する
ことに起因する光リークを抑制することができる。これにより、表示装置における表示不
良を抑制することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、第1物質層は、空気層を含み、第2物質層は、多孔質材料層を
含み、空気層と多孔質材料層との屈折率の違いにより、空気層と多孔質材料層との界面で
量子細線に向かう光を反射させるように構成されている。このように構成すれば、空気層
と多孔質材料層との屈折率の違いを利用して、量子細線に光が入射するのを抑制すること
ができるので、量子細線に光が入射することに起因する光リークを容易に抑制することが
できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態による表示装置(表示部)の平面図である。図2は、本発
明の一実施形態による表示装置(表示部)の1画素の平面図である。図3は、本発明の一
実施形態による表示装置(表示部)の量子細線トランジスタの平面図である。図4は、本
発明の一実施形態による表示装置(表示部)の量子細線トランジスタの断面図である。図
1〜図4を参照して、本発明の一実施形態による表示装置100の構成について説明する

【0018】
本実施形態による表示装置100では、図1に示すように、表示部1は、マトリクス状
に配置される複数の画素2から構成されている。また、図2に示すように、複数の画素2
は、Y方向に延びるゲート線3とX方向に延びるソース線4とが交差する位置にそれぞれ
設けられている。複数の画素2は、全て同じ矩形状を有する。そして、複数の画素2には
、それぞれ、図2および図3に示すように、ボトムゲート型の量子細線トランジスタ5が
設けられている。なお、量子細線トランジスタ5は、本発明の「トランジスタ」の一例で
ある。
【0019】
量子細線トランジスタ5の断面構造としては、図4に示すように、ガラス基板6上に、
下層から上層の順にAl層およびMo層からなるゲート電極7が形成されている。なお、
ガラス基板6は、本発明の「基板」の一例である。ここで、本実施形態では、ゲート電極
7の端辺近傍(矢印Y1方向側および矢印Y2方向側)には、ガラス基板6の表面から上
方(矢印Z1方向側)に向かって延びるように、2つの凸部71および72が形成されて
いる。なお、凸部71は、本発明の「第1凸部」の一例であり、凸部72は、本発明の「
第2凸部」の一例である。この2つの凸部71および72は、上方に向かって三角形状に
尖った断面形状を有している。また、凸部71と凸部72との間の領域には、平坦面状の
領域73が形成されている。また、凸部71(72)の内角α1の角度は、30度以上9
0度未満である。また、凸部71のガラス基板6の表面からの高さh1と、凸部72のガ
ラス基板6の表面からの高さh2とは等しい。
【0020】
図3に示すように、ゲート電極7は、平面的に見て、ゲート線3から矢印X1方向(ソ
ース線4が延びる方向)側に突出するとともに、矩形状に形成されている。また、本実施
形態では、凸部71と凸部72とは、平面的に見て、平行な状態でX方向に延びるように
形成されている。凸部71は、平面的に見て、後述するソース電極11と重なるように形
成され、凸部72は、平面的に見て、後述するドレイン電極12と重なるように形成され
ている。
【0021】
図4に示すように、ガラス基板6の表面上およびゲート電極7の表面上には、SiN膜
からなるゲート絶縁膜8が形成されている。また、本実施形態では、図3に示すように、
ゲート絶縁膜8は、ゲート電極7の凸部71(72)と平面的に見て重なるように形成さ
れている。また、図4に示すように、ゲート絶縁膜8のゲート電極7の凸部71(72)
に対応する矢印Z1方向側の領域には、ゲート電極7の凸部71(72)の形状を反映し
て、三角形状の断面形状の凸部81(82)が形成されている。また、ゲート絶縁膜8の
凸部81(82)の内角α2は、ゲート電極7の凸部71(72)の内角α1(30℃以
上90度未満)よりも大きく90度以下である。つまり、本実施形態では、ゲート電極7
の凸部71(72)の内角α1は、ゲート絶縁膜8の凸部81(82)の内角α2よりも
小さい。また、ゲート電極7の平坦面状の領域73に対応するゲート絶縁膜8の領域には
、平坦面状の領域83が形成されている。また、本実施形態では、ゲート電極7の凸部7
1(72)の頂部74(75)と、ゲート絶縁膜8の凸部81(82)の頂部84(85
)との間の厚みt1は、ゲート電極7の平坦面状の領域73と、ゲート絶縁膜8の平坦面
状の領域83との間の厚みt2よりも小さい。
【0022】
ゲート絶縁膜8上には、図4に示すように、Siなどの半導体からなる量子細線9が形
成されている。ここで、量子細線とは、数nmの幅および厚みからなる。また、本実施形
態では、量子細線9は、ゲート電極7の凸部71(72)と平面的に見て重なるように形
成されている。この量子細線9は、平面的に見て、ゲート電極7の凸部71(72)の延
びる方向(X方向)と略直交する方向(Y方向)に延びるように形成されている。また、
ゲート電極7の凸部71(72)上には、凸部71(72)の延びる方向(X方向)に沿
って複数の量子細線9が形成されている。また、本実施形態では、ゲート電極7の凸部7
1(72)と量子細線9との間の距離t1は、ゲート電極7の凸部71(72)以外の部
分(平坦面状の領域73)と量子細線9との間の距離t2よりも小さい。
【0023】
また、量子細線9の凸部71(72)に対応する矢印Z1方向側の領域には、図4に示
すように、ゲート電極7の凸部71(72)の形状を反映して、三角形状の断面形状の凸
部91(92)が形成されている。この量子細線9の凸部91(92)の内角α3は、ゲ
ート絶縁膜8の凸部81(82)の内角α2以上90度未満である。また、ゲート電極7
の平坦面状の領域73に対応する量子細線9の領域には、平坦面状の領域93が形成され
ている。また、量子細線9のゲート電極7に対応する矢印Z1方向側の領域には、チャネ
ル領域94が形成される。
【0024】
量子細線9の凸部91(92)上には、n型の不純物が注入されたn−Si膜10a
(10b)が形成されている。ゲート電極7の凸部71に対応するn−Si膜10aの
領域には、凸部71の形状を反映して、三角形状の断面形状の凸部101aが形成されて
いる。ゲート電極7の凸部72に対応するn−Si層10bの領域には、凸部72の形
状を反映して、三角形状の断面形状の凸部101bが形成されている。
【0025】
ソース電極11は、図3に示すように、ソース線4と電気的に接続されている。このソ
ース電極11は、図4に示すように、ゲート絶縁膜8の表面上およびn−Si膜10a
の表面上に形成されている。また、ゲート電極7の凸部71に対応するソース電極11の
領域には、凸部71の形状を反映して、三角形状の断面形状の凸部11aが形成されてい
る。
【0026】
ドレイン電極12は、図3に示すように、ソース電極11と所定の間隔を隔てて形成さ
れている。また、ドレイン電極12は、図4に示すように、ゲート絶縁膜8の表面上およ
びn−Si膜10bの表面上に形成されている。また、ゲート電極7の凸部72に対応
するドレイン電極12の領域には、凸部72の形状を反映して、三角形状の断面形状の凸
部12aが形成されている。
【0027】
また、本実施形態では、量子細線9、ソース電極11およびドレイン電極12の表面上
には、約1.00の屈折率を有する空気層13が設けられている。なお、空気層13は、
本発明の「第1物質層」の一例である。この空気層13の表面上および量子細線トランジ
スタ5の表面上には、多孔質膜14が設けられている。なお、多孔質膜14は、本発明の
「第2物質層」および「多孔質材料層」の一例である。この多孔質膜14は、感光性を有
しておらず、屈折率が1.19以上1.26以下のSi系のMSQ(Methylsil
sesquioxane)、または、屈折率が1.5以上1.75以下のポリマー系のポ
リイミド、PAE(Polyacrylic Acid Ester)およびPBO(P
olyphenylene Benzobis Oxazole)などの材料からなる。
この空気層13の屈折率(約1.00)と多孔質膜14の屈折率との違いにより、空気層
13と多孔質膜14との界面において、量子細線9に向かう光を反射させるように構成さ
れている。これにより、多孔質膜14が形成された領域は、遮光領域として機能する。ま
た、光を全反射させるために必要な角度(臨界角θm)は、多孔質膜14をSi系の材料
により形成した場合は60度以上であり、多孔質膜14をポリマー系の材料により形成し
た場合は40度以上である。
【0028】
図5は、本発明の一実施形態による表示装置の量子細線トランジスタの製造プロセスを
説明するためのフロー図である。次に、図4および図5を参照して、本発明の一実施形態
による表示装置100の量子細線トランジスタ5の製造プロセスを説明する。
【0029】
まず、本実施形態による表示装置100の製造プロセスでは、図5に示すように、工程
S1において、ガラス基板6(図4参照)の表面上に、CVD法を用いて、下層から上層
の順にAl層およびMo層を成膜することによりゲート電極7を形成する。その後、フォ
トリソグラフィ技術によりゲート電極7の上面上にレジスト膜を形成した後、そのレジス
ト膜をマスクとしてMo層をエッチング・剥離する。これにより、ゲート電極7の両端部
近傍に三角形状の尖った凸部71(72)を形成することができる。
【0030】
次に、工程S2において、ガラス基板6の表面上および凸部71(72)を有するゲー
ト電極7の表面上に、CVD法により、ゲート絶縁膜8(図4参照)を成膜する。このよ
うに、CVD法によりゲート絶縁膜8を形成した場合には、図4に示すように、ゲート電
極7の凸部71(72)に対応するゲート絶縁膜8の厚みt1が、ゲート電極7の平坦面
状の領域73に対応するゲート絶縁膜8の厚みt2よりも小さくなる。
【0031】
次に、工程S3において、ゲート絶縁膜8上に、CVD法および電界印加により、Si
系の量子細線9(図4参照)を形成する。具体的には、CVDの反応室において、Si系
のプラズマを発生させ、量子細線9を成長させるY方向に向かって同時に電界を印加する
ことにより、量子細線9の成膜と成長とを同時に行う。また、量子細線9の成長方向を決
定するための電界は、プラズマを発生させるための電界とは別の回路により発生させる。
【0032】
次に、工程S4において、量子細線9上に、CVD法により、n−Si膜10(図4
参照)を形成する。
【0033】
次に、工程S5において、ゲート絶縁膜8の表面上およびn−Si膜10の表面上に
、スパッタ法を用いて、下層から上層の順にMo層、Al層およびMo層を成膜する。そ
の後、フォトリソグラフィ技術によりMo層、Al層およびMo層の上面上にレジスト膜
を形成した後、そのレジスト膜をマスクとしてエッチングすることにより、図4に示すよ
うに、ソース電極11(ドレイン電極12)を形成する。そして、レジスト膜を剥離する

【0034】
次に、工程S6において、ソース電極11とドレイン電極12との間に位置するn
Si膜10をドライエッチングにより除去する。
【0035】
次に、工程S7において、量子細線9、ソース電極11およびドレイン電極12の表面
上に、約300度程度の熱によって気化する熱分解性樹脂(図示せず)を塗布する。その
後、フォトリソグラフィ技術により熱分解性樹脂の上面上にレジスト膜を形成した後、そ
のレジスト膜をマスクとしてエッチングする。これにより、各量子細線トランジスタ5毎
に熱分解性樹脂を形成する。そして、レジスト膜を剥離する。この熱分解性樹脂は、加熱
することにより気化する材料であればよく、たとえば、メタクリル酸エステル系ポリマー
、または、アクリル酸エステル系ポリマーなどを用いればよい。
【0036】
次に、工程S8において、熱分解性樹脂を体積減少しない程度の温度により焼成すると
ともに焼き固める。
【0037】
次に、工程S9において、多孔質膜14(図4参照)を熱分解性樹脂上に塗布する。そ
の後、フォトリソグラフィ技術により多孔質膜14の上面上にレジスト膜を形成した後、
そのレジスト膜をマスクとして多硬質膜14をエッチングすることにより、熱分解性樹脂
上に多孔質膜14を形成する。そして、レジスト膜を剥離する。
【0038】
次に、工程S10において、多孔質膜14を焼成するとともに焼き固める。
【0039】
次に、工程S11において、基板全体を約300度程度で加熱する。これにより、熱分
解性樹脂のみが気化し、多孔質膜14と量子細線9との間に空気層13(図4参照)が形
成される。このようにして、本実施形態による量子細線トランジスタ5(図4参照)が完
成される。
【0040】
本実施形態では、上記のように、ガラス基板6の表面から上方(矢印Z1方向側)に向
かって延びるように形成された凸部71(72)を含むゲート電極7を備えるとともに、
ゲート電極7の凸部71(72)と量子細線9との間の距離t1は、ゲート電極7の平坦
面状の領域73と量子細線9との間の距離t2よりも小さくすることによって、ゲート電
極7の凸部71(72)とチャネルとしての量子細線9との間の距離t1をより小さくす
ることができるので、ゲート電極7からの電界をチャネルとしての量子細線9にかかりや
すくすることができる。これにより、量子細線9にキャリアが流れやすくなるので、量子
細線9の本数を減少させることができる。その結果、量子細線トランジスタ5の小型化お
よび薄型化をより図ることができる。
【0041】
また、本実施形態では、上記のように、ゲート電極7の凸部71(72)を、上方(矢
印Z1方向側)に向かって三角形状に尖った断面形状にすることによって、たとえば、ゲ
ート電極7の尖った凸部71(72)上にCVD法によりゲート絶縁膜8を形成した場合
には、三角形状に尖った凸部71(72)上に形成されたゲート絶縁膜8の厚みt1を、
尖った凸部の無いゲート絶縁膜8上に形成した場合、あるいは凸部71(72)の先端が
丸い場合に比べて、より小さくすることができる。これにより、ゲート電極7の凸部71
(72)とチャネルとしての量子細線9との間の距離を小さくすることができるので、ゲ
ート電極7からの電界をチャネルとしての量子細線9に、よりかかりやすくすることがで
きる。
【0042】
また、本実施形態では、上記のように、ゲート電極7の凸部71(72)を、三角形状
の断面形状にすることによって、凸部71(72)の根元から先端に近づくにしたがって
、徐々に凸部71(72)の幅が小さくなるので、根元から先端まで全て小さい幅で尖っ
た形状に形成する場合に比べて、凸部71(72)の機械的強度を向上させることができ
る。
【0043】
また、本実施形態では、上記のように、ゲート電極7の凸部71(72)の頂部74(
75)と、ゲート絶縁膜8の凸部81(82)の頂部84(85)との厚みt1を、ゲー
ト電極7の平坦面状の領域73と、ゲート絶縁膜8の平坦面状の領域83との厚みt2よ
りも小さくすることによって、厚みt1と厚みt2とを同じ厚みに形成した場合と比べて
、容易に、凸部71(72)の頂部74(75)とチャネルとしての量子細線9との間の
距離を小さくすることができる。
【0044】
また、本実施形態では、上記のように、ゲート電極7の凸部71(72)の内角α1を
、ゲート絶縁膜8の凸部81(82)に対応する領域の内角α2よりも小さくすることに
よって、ゲート電極7の凸部71(72)に対応する領域の上方(矢印Z1方向側)に形
成されるゲート絶縁膜8の厚みt1を、ゲート電極7の凸部71(72)に対応する領域
以外に形成されたゲート絶縁膜8の厚みt2よりも小さくすることができるので、ゲート
電極7の凸部71(72)の頂部74(75)と、ゲート電極7の凸部71(72)の上
方(矢印Z1方向側)に形成されたソース電極11(ドレイン電極12)との間の距離を
容易に小さくすることができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記のように、ゲート電極7の凸部71(72)上に、凸部7
1(72)の延びるX方向に沿って所定の間隔を隔てて複数の量子細線9を形成すること
によって、ゲート電極7の凸部71(72)上に1つの量子細線9が形成されている場合
と比べ、ソース電極11とドレイン電極12との間に大きな電流を流すことができる。
【0046】
また、本実施形態では、上記のように、ゲート電極7の凸部71(72)を、平面的に
見て、それぞれ、ソース電極11(ドレイン電極12)に重なるようにゲート電極7の端
辺近傍に形成することによって、容易に、ゲート電極7の凸部71(72)上に、ソース
電極11(ドレイン電極12)を形成することができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように、空気層13と多孔質膜14との屈折率の違いに
より、空気層13と多孔質膜14との界面で量子細線9に向かう光を反射させるように構
成することによって、空気層13と多孔質膜14との屈折率の違いを利用して、量子細線
9に光が入射するのを抑制することができるので、量子細線9に光が入射することに起因
する光リークを抑制することができる。これにより、表示装置100における表示不良を
抑制することができる。
【0048】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと
考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範
囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が
含まれる。
【0049】
たとえば、上記実施形態では、ゲート電極7に2つの凸部71および72を形成する例
を示したが、本発明はこれに限らず、ゲート電極7に1つの凸部のみを形成してもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、ゲート電極7の2つの凸部71および72が上方に向かって
三角形状の尖った断面形状を有する例を示したが、本発明はこれに限らず、ゲート電極7
の2つの凸部71(72)が三角形状の尖った断面形状以外でもよい。たとえば、ゲート
電極7の2つの凸部71および72が上方に向かって突出する長方または上面の幅の小さ
い台形形状の断面形状を有していてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、ゲート電極7の2つの凸部71および72をゲート電極7の
端辺近傍に形成する例を示したが、本発明はこれに限らず、平面的に見て、ゲート電極7
の2つの凸部71および72が、それぞれ、ソース電極11およびドレイン電極12と重
なるように配置されれば、2つの凸部71および72をゲート電極7の端辺近傍以外のソ
ース電極11およびドレイン電極12間の量子細線部分に対応する部分に形成してもよい

【0052】
また、上記実施形態では、量子細線をSi系の半導体から形成する例を示したが、本発
明はこれに限らず、量子細線をSi系の半導体以外の半導体により形成してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、ゲート電極上に複数の量子細線を形成する例を示したが、本
発明はこれに限らず、ゲート電極上に少なくとも1つの量子細線を形成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態による表示装置(表示部)の平面図である。
【図2】本発明の一実施形態による表示装置(表示部)の一画素の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態による表示装置(表示部)の量子細線トランジスタの平面図である。
【図4】本発明の一実施形態による表示装置(表示部)の量子細線トランジスタの断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による表示装置の量子細線トランジスタの製造プロセスを説明するためのフロー図である。
【符号の説明】
【0055】
5 量子細線トランジスタ(トランジスタ) 6 ガラス基板(基板) 7 ゲ
ート電極 8 ゲート絶縁膜 9 量子細線 11 ソース電極 12
ドレイン電極 13 空気層(第1物質層) 14 多孔質膜(第2物質層、
多孔質材料層) 71 凸部(第1凸部) 72 凸部(第2凸部) 10
0 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面から上方に向かって延びるように形成された凸部を含むゲート電極と、
前記ゲート電極の前記凸部と平面的に見て重なるとともに、前記ゲート電極上にゲート
絶縁膜を介して形成される量子細線と、
前記量子細線にそれぞれ接続されるソース電極およびドレイン電極とを含むトランジス
タを備え、
前記ゲート電極の前記凸部と前記量子細線との間の距離は、前記ゲート電極の前記凸部
以外の部分と前記量子細線との間の距離よりも小さい、表示装置。
【請求項2】
前記ゲート電極の前記凸部は、上方に向かって尖った断面形状を有する、請求項1に記
載の表示装置。
【請求項3】
前記ゲート電極の前記凸部は、三角形状の断面形状を有する、請求項2に記載の表示装
置。
【請求項4】
前記ゲート絶縁膜の前記凸部に対応する領域の厚みは、前記ゲート絶縁膜の前記凸部に
対応する領域以外の領域の厚みよりも小さい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示
装置。
【請求項5】
前記ゲート絶縁膜の前記凸部に対応する領域は、前記凸部の形状を反映して凸状に形成
され、
前記ゲート電極の前記凸部の内角は、前記ゲート絶縁膜の前記凸部に対応する領域の内
角よりも小さい、請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記ゲート電極の前記凸部は、平面的に見て、前記量子細線が延びる方向と交差する方
向に沿って延びるように形成され、
前記ゲート電極の前記凸部上には、前記凸部の延びる方向に沿って所定の間隔を隔てて
複数の前記量子細線が形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記ゲート電極の前記凸部は、平面的に見て、前記ソース電極または前記ドレイン電極
の少なくとも一方と重なるように前記ゲート電極の端辺近傍に形成されている、請求項1
〜6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記ゲート電極の前記凸部は、第1凸部および第2凸部を有し、
前記ゲート電極の前記第1凸部と前記第2凸部とは、平面的に見て、それぞれ、前記ソ
ース電極および前記ドレイン電極に重なるように前記ゲート電極の一方端辺近傍および他
方端辺近傍に形成されている、請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記量子細線の上方に形成される第1物質層と、
前記第1物質層上に形成される第2物質層とをさらに備え、
前記第1物質層と前記第2物質層との界面で前記量子細線に向かう光を反射させるよう
に構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1物質層は、空気層を含み、
前記第2物質層は、多孔質材料層を含み、
前記空気層と前記多孔質材料層との屈折率の違いにより、前記空気層と前記多孔質材料
層との界面で前記量子細線に向かう光を反射させるように構成されている、請求項9に記
載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−87098(P2010−87098A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252597(P2008−252597)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】