説明

路側固定物検出装置

【課題】車両に搭載され、該車両側方の路側固定物を精度良く検出可能なガードレール検出装置を提供する。
【解決手段】距離画像センサにより、車両側方の判定対象物の距離画像を取得するとともに、車両の幅方向の走行位置に応じてテンプレート距離画像を生成し(ステップS5の処理を実行して)、該生成したテンプレート距離画像と該取得した距離画像とのマッチング度を算出し、該算出したマッチング度を基に判定対象物がガードレールか否かを判定する(ステップS11乃至ステップS13の処理を実行する)ようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、該車両の走行道路の側方の路側固定物を検出する路側固定物検出装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の走行道路に沿って設けられるガードレール等の路側固定物を検出する路側固定物検出装置は知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に示す検出装置では、車両に搭載されたカメラにより、車両前方の画像(車両側方画像を一部に含む画像)を所定タイミングで取得するとともに、該取得画像におけるガードレールが存在するであろう領域を第1選択領域として設定し、次いで、該所定タイミングよりも遅いタイミングで取得したカメラ画像に対して該第1選択領域の移動先と推定される第2選択領域を設定し、両選択領域内の画像を比較することでガードレール検出を行うようになっている。より具体的には、この検出装置は、両選択領域内の画像に相関がある場合には、第1選択領域内に写し出された判定対象物が静止物であるガードレールと判定する一方、相関が無い場合には、該判定対象物をトラック等の移動物である(つまりガードレールでない)と判定するようになっている。
【特許文献1】特開2004−13400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1に示す検出装置は、両選択領域内の画像の相関を基に、判定対象物が静止物であるか否かを判定することでガードレール検出を行うものであるため、例えば、車両側方に、縦列停車車両等のガードレール以外の静止物が存在する場合に、これらをガードレールであるとして誤検出してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、撮像したカメラ画像に対して、予め用意した路側固定物の画像をテンプレート画像とするパターンマッチング処理を実行して、そのマッチング度を基に、判定対象物が路側固定物か否かを判定することが考えられる。
【0006】
しかしながら、カメラにより撮像される路側固定物の画像の各画素の輝度値は、車両の走行道路の幅方向(以下、道路幅方向という)の走行位置や路側固定物の設置位置等の撮像条件によって異なるため、該撮像された画像と上記テンプレート距離画像とのマッチング度も撮像条件によってばらつくこととなり、延いては、路側固定物の検出精度が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両側方の路側固定物を精度良く検出可能な路側固定物検出装置を提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、距離画像取得手段により、車両側方の判定対象物の距離画像を取得するとともに、車両の道路幅方向の走行位置に応じてテンプレート距離画像を生成して、該生成したテンプレート距離画像と該取得した距離画像とのマッチング度を算出し、該算出したマッチング度が所定値以上である場合には、該判定対象物が路側固定物であると判定するようにした。
【0009】
具体的には、請求項1の発明では、車両の走行道路の側方に存在する路側固定物を検出する路側固定物検出装置を対象とする。
【0010】
そして、上記車両に搭載され、該車両側方に存在する判定対象物を検出するとともに、それぞれが距離値を有する複数の画素からなる該判定対象物の距離画像を取得する距離画像取得手段と、上記路側固定物が設置される設置基準位置を推定するとともに、該推定した設置基準位置及び上記車両間の離間距離を算出する設置基準位置算出部と、上記設置基準位置算出部により算出された上記設置基準位置及び上記車両間の離間距離を基に、上記路側固定物が該設置基準位置に存在すると仮定した場合に上記距離画像取得手段により取得されるであろう該路側固定物の距離画像を推定して該推定画像をテンプレート距離画像として生成するテンプレート距離画像生成部と、上記距離画像取得手段により取得された上記判定対象物の距離画像と、上記テンプレート距離画像とのパターンマッチング処理を実行してそのマッチング度を算出するマッチング処理部と、上記マッチング処理部にて算出されるマッチング度が所定値以上である場合には、上記判定対象物が上記路側固定物であると判定する一方、該マッチング度が所定値未満である場合には、上記判定対象物が上記路側固定物でないものと判定する路側固定物判定部とを備えているものとする。
【0011】
この構成によれば、距離画像取得手段により車両側方の判定対象物の距離画像が取得され、テンプレート距離画像生成部にて路側固定物に対応するテンプレート距離画像が生成され、マッチング処理部にて、上記距離画像取得手段により取得された距離画像に対してテンプレート距離画像を基にしたパターンマッチング処理が実行されるとともにそのマッチング度が算出され、路側固定物判定部にて、該マッチング度が所定値以上である場合には判定対象物が路側固定物であると判定され、マッチング度が所定値未満である場合には該判定対象物が路側固定物でないものと判定される。
【0012】
ここで、上記テンプレート距離画像生成部は、設置基準位置算出部により算出される設置基準位置と車両との離間距離を基に、路側固定物が該設置基準位置に存在すると仮定した場合に距離画像取得手段により取得されるであろう該路側固定物の距離画像を推定して該推定画像をテンプレート距離画像として生成する。これにより、車両の道路幅方向の走行位置や路側固定物の設置位置等の条件を考慮に入れてテンプレート距離画像を生成することができる。したがって、この条件の違いに起因する上記マッチング度のばらつきを極力抑制することができ、延いては、路側固定物判定部における判定処理精度の向上を図ることが可能となる。
【0013】
また、本発明では、距離画像取得手段により取得された判定対象物の距離画像を基にパターンマッチング処理を行うようになっており、このため、各画素が輝度値を有する濃淡画像を基にパターンマッチング処理を行う場合に比べて、照明条件(太陽の照り具合等)の影響を極力低減することができる。したがって、照明条件の違いに起因するマッチング度のばらつきを抑制して、路側固定物判定部における路側固定物の検出精度をより一層向上させることができる。
【0014】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記路側固定物は、地面から上方に突出し且つ上記車両の走行道路に沿って設けられるものであり、上記マッチング処理部は、上記距離画像取得手段により取得された上記判定対象物の距離画像に対して、上記走行道路の延設方向に対応する所定方向に互いに隣接して並ぶ複数のマッチング処理領域を設定するように構成され、上記テンプレート距離画像生成部は、上記推定画像を上記各マッチング処理領域ごとに求めてテンプレート距離画像として生成するように構成されており、
さらに上記マッチング処理部は、上記各マッチング処理領域ごとにそれぞれに対応するテンプレート距離画像とのパターンマッチング処理を実行してそのマッチング度を算出するように構成されており、上記路側固定物判定部は、上記マッチング度が所定値以上であるマッチング処理領域が、上記所定方向において所定個数以上連続する場合には、上記判定対象物が上記路側固定物であると判定する一方、上記所定個数未満である場合には、上記判定対象物が上記路側固定物でないものと判定するように構成されているものとする。
【0015】
この構成によれば、マッチング処理部は、距離画像取得手段により取得された判定対象物の距離画像に対して、走行道路の延設方向に対応する所定方向に互いに隣接して並ぶ複数のマッチング処理領域を設定するとともに、該各マッチング処理領域内の画像に対して、テンプレート距離画像生成部にて生成されたテンプレート距離画像を基にマッチング処理を実行し、さらに、各マッチング処理領域ごとにマッチング度を算出する。そして、路側固定物判定部にて、マッチング度が所定値以上であるマッチング処理領域が上記所定方向において(つまり走行道路の延設方向において)所定個数以上連続する場合には、判定対象物が路側固定物であると判定され、所定個数未満である場合には、判定対象物は路側固定物でないものと判定される。これにより、走行道路に沿って存在するガードレールや植え込み等の路側固定物を確実に検出することができる。
【0016】
すなわち、距離画像取得手段にて取得した路側固定物の距離画像全体を一つのマッチング処理領域としてマッチング処理を行った場合、例えば、路側固定物の一部が欠損する等していると、この欠損部が原因で、取得画像とテンプレート距離画像とのマッチング度が著しく低下することとなり、この結果、判定対象物が路側固定物であるにも拘わらず路側固定物でないとして誤判定してしまうという問題がある。
【0017】
これに対して、本発明では、この欠損部に対応するマッチング処理領域のマッチング度が所定値未満であっても、その他のマッチング処理領域でマッチング度が所定値以上の領域が所定個数以上連続していれば、判定対象物が路側固定物であると判定されるため、上記のような誤判定を確実に防止し、路側固定物判定部における路側固定物の検出精度をより一層向上させることが可能となる。
【0018】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、上記距離画像取得手段は、TOF方式の距離画像センサ又はレーザスキャナからなる距離画像取得用センサを有するものとされている。
【0019】
これにより、曇りの日等、車両の周囲が比較的暗い状況にあっても、この距離画像取得用センサから路側固定物に対して積極的に光が照射されるので、判定対象物の距離画像を確実に取得することができる。
【0020】
請求項4の発明では、請求項3の発明において、上記路側固定物は、地面から突出して上下方向に延びており、上記テンプレート距離画像は、上記上下方向に対応する方向において、上記距離画像取得用センサの搭載高さに対応する位置から離れるほど、各画素の距離値が大きくなる画像であるものとする。
【0021】
こうすることで、路側固定物の検出精度を可及的に向上させることができる。すなわち、上方に突設されたガードレール等の路側固定物の距離画像を距離取得画像手段により取得した場合、路側固定物のうちセンサ搭載高さと同じ高さ部分では、該固定物と距離画像取得用センサとの距離が最短となるため、この部分に対応する画素の距離値は最も小さくなる一方、このセンサ高さから上下方向に離れるにしたがって、各画素の距離値も大きくなる。したがって、路側固定物の距離画像のうち各画素の距離値の変化が大きい高さ方向、換言すると距離値の変化が特徴的である高さ方向の画像をテンプレート距離画像として用いることで、判定対象物が対象とする路側固定物である場合とそうでない場合とで、マッチング処理部にて算出されるマッチング度を大きく異ならせることができる。したがって、マッチング閾値(上記所定値)を十分なマージンをもって設定することができて、路側固定物判定部における判定精度の向上を図ることが可能となる。
【0022】
請求項5の発明では、請求項1乃至4のいずれか一つの発明において、上記設置基準位置は、上記車両が走行する走行道路の側端縁の位置であるものとする。
【0023】
この構成によれば、走行道路の側端縁に沿って通常設置されるガードレールや植え込み等の路側固定物を確実に検出することができる。
【0024】
請求項6の発明では、請求項5の発明において、上記車両に搭載され、該車両が走行する走行道路の走行レーンの幅方向両側に沿って延びる車両走行線を撮像する走行線撮像手段をさらに備え、上記設置基準位置算出部は、上記走行線撮像手段により撮像された画像を基に、上記車両走行線の位置を推定し、さらに該推定した車両走行線の位置を基に上記走行道路の側端縁の位置を推定するように構成されている
この構成によれば、設置基準位置算出部おいて、走行線撮像手段により撮像された走行線の画像を基に、車両走行線の位置が推定されるとともに該推定された車両走行線の位置を基に走行道路の側端縁の位置が推定される。これにより、設置基準位置算出部における走行道路側端縁の推定精度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明の路側固定物検出装置によると、距離画像取得手段により、車両側方の判定対象物の距離画像を取得するとともに、車両の道路幅方向の走行位置に応じてテンプレート距離画像を生成して、該生成したテンプレートと該取得した距離画像とのマッチング度を基に、判定対象物が路側固定物か否かを判定するようにしたことで、車両側方の路側固定物の検出精度を格段に向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る路側固定物検出装置としてのガードレール検出装置を含む車両用歩行者警報システム1を示し、この車両用歩行者警報システム1は、車両100(図2参照)周辺に歩行者が存在する場合には、その旨を運転者に報知する警報を行うものあって、本実施形態では、車両側方に歩行者が存在しても、ガードレール101が設置されているために歩行者の安全を十分に確保することができる場合には警報を行わないようになっている。
【0028】
より具体的には、この車両用歩行者警報システム1は、車室内のルームミラー付近に配設され且つ車両前方から側方に亘る所定視野角θ(例えば、40°〜60°)内の範囲を撮像する前方監視カメラ2と、車両前方から側方に亘る所定視野角θ(例えば、40°〜60°)内の距離画像を取得する距離画像センサ3(距離画像取得手段の距離画像取得用センサに相当)と、車両100の車速を検出する車速センサ4と、前方監視カメラ2及びセンサ3,4から出力される画像データや車速情報を基に各種演算を実行するECU6と、ECU6からの指令を受けて乗員に警報を行う(例えば、「ピー」という警報音を発することで警報を行う)警報装置7とを備えている。
【0029】
前方監視カメラ2は、例えば、CCDカメラやCMOSカメラ等からなるものであって、車両100の走行道路上の車両走行線(走行レーンの幅方向両側に沿って延びる白線又は黄色線)を撮像可能にその画隔サイズや設置高さが設定されている。前方監視カメラ2により撮像された画像は、それぞれが輝度値を有する複数の画素からなり、前方監視カメラ2は、この画像データをECU6へと出力する。
【0030】
距離画像センサ3は、ガードレール101に対して光を照射するとともにその反射光を検出して、該光を照射してから該反射光を検出するまでの検出時間を基にガードレール101の距離画像を取得する所謂TOF(Time of Flight)方式の距離画像センサからなる。ここで、距離画像とは、各画素が距離値を有する複数の画素からなる画像であって、本実施形態では、センサ4からの距離が遠いものほど距離値が大きいものとして、距離値が大きい画素ほど画素濃度を暗く表したものをいう。
【0031】
図3に示すように、地面から上方に突出するガードレール101の場合、センサ設置高さから上下方向に遠ざかるにしたがって、距離画像センサ3からの距離も遠くなるので、該センサ4により取得される距離画像も、センサ設置対応高さに対応する画素の距離値が最も小さくなり、該センサ設置対応高さから上下方向に離れるにしたがって各画素の距離値が大きくなる。このため、距離画像センサ3により得られる距離画像は、図5に示すように、センサ設置対応高さの画素濃度が最も明るくなり、該センサ設置対応高さから上下方向に遠ざかるにしたがって画素濃度は暗くなる。また、図4に模式的に示すように、距離画像は、車両100から車両前方に遠い側の画像ほど、距離画像センサ3から光照射部位までの距離が長いために画素濃度も暗くなる(つまり距離値が大きくなる)。
【0032】
距離画像センサ3及び車速センサ4はそれぞれ、取得した距離画像及び車速情報をECU6へと出力する。
【0033】
ECU6は、CPUやメモリ等のハードウェアとこれと協働して各種の演算処理を実行するコンピュータプログラムとで構成されていて、歩行者検出部8と、走行線検出部9と、道路側端縁位置算出部10と、マッチング用基準距離画像を記憶したマッチング用基準距離画像記憶部11と、テンプレート距離画像生成部12と、距離画像センサ制御部13と、マッチング処理部14と、ガードレール有無判定部15と、歩行者警報出力判定部16とを有している。
【0034】
歩行者検出部8は、前方監視カメラ2からの画像情報を基に、車両周辺(車両前方から側方に亘る所定視野角θ内)に存在する歩行者を検出する。具体的には、歩行者のテンプレート画像を予め記憶しておいて、前方監視カメラ2により撮像した画像に対してこの歩行者テンプレート画像によるパターンマッチング処理を行うことで、歩行者が存在するか否かを判定して、存在する判定した場合には歩行者が存在する方向や車両100からの距離を算出する。歩行者検出部8は、歩行者の検出の有無や検出した歩行者に関する情報を歩行者警報出力判定部16へと出力する。
【0035】
走行線検出部9は、前方監視カメラ2からの画像情報を基に、車両走行線を識別して、車両走行線と車両100との道路幅方向に沿った距離(車両100に対する走行線の道路幅方向の位置)を算出する。走行線検出部9における、車両走行線の識別は、車両走行線に対応する高輝度値の画素領域が、画像の上下方向において所定画素数以上連続しているか否かを判定することで行えばよい。
【0036】
道路側端縁位置算出部10は、走行線検出部9からの検出情報を基に、車両走行線から道路幅方向の外側に所定距離離れた位置を道路側端縁位置と推定するとともに、推定した道路側端縁位置と車両100との道路幅方向に沿った距離(以下、道路端離間距離という)を算出する。
【0037】
距離画像センサ制御部13は、距離画像センサ3による距離画像取得タイミングを制御するとともに、距離画像センサ3から出力される距離画像データをマッチング処理部14へと出力する。より具体的には、距離画像センサ3は、車速センサ4からの車速情報を基に、車両100が所定距離進む度に、距離画像センサ3による距離画像取得を実行する。
【0038】
マッチング処理部14は、距離画像センサ制御部13から出力された距離画像のうちガードレール101が存在するであろう推定ガードレール領域20(図4参照)を抽出する。より具体的には、マッチング処理部14は、道路側端縁位置算出部10からの道路側端縁情報を基に、距離画像センサ制御部13から出力された距離画像における道路側端縁に対応する道路端対応ライン21を推定し、この道路端対応ライン21を底辺とする所定高さの矩形状領域20を推定ガードレール領域20として抽出する。尚、図4中、2点鎖線で示すラインは車両走行線の想像線であって、実際の距離画像にこの車両走行線が表されることはない。
【0039】
そしてさらに、マッチング処理部14は、図4に示すように、抽出した推定ガードレール領域20に対して、走行道路の延設方向に対応する所定方向(道路端対応ライン21の延設方向に一致する方向であって、図4のZ方向)に互いに隣接して並ぶ複数(本実施形態では11個)のマッチング処理領域22を設定する。そして、この各マッチング処理領域22に対して、テンプレート距離画像生成部12にて生成されたテンプレート距離画像に基づくパターンマッチング処理を実行する。
【0040】
テンプレート距離画像生成部12は、マッチング用基準距離画像記憶部11に記憶された基準距離画像を基に、各マッチング処理領域22のそれぞれに対してテンプレート距離画像を生成する。
【0041】
ここで、基準距離画像は、例えば、道路側端縁位置(ガードレール101)と車両100との道路幅方向に沿った距離が設定基準距離であるとした場合に、距離画像センサ3により取得されると推定されるガードレール101の距離画像を基に作成される。具体的には、この推定画像に対して、上述のマッチング処理領域22の設定時と同様に、走行道路の延設方向に対応する所定方向(Z方向)に並ぶ複数の領域を設定して、それらの領域のうち例えば最も車両100に近い側の領域を抽出して基準距離画像とすればよい。
【0042】
テンプレート距離画像生成部12は、道路側端縁位置算出部10により算出された道路端離間距離を基に、ガードレール101が道路側端縁位置算出部10にて推定された道路側端縁位置に存在すると仮定した場合に距離画像センサ3より取得されるであろうガードレール101の推定距離画像を、各マッチング処理領域22ごとに推定してテンプレート距離画像として生成する。
【0043】
具体的には、テンプレート距離画像生成部12は、道路側端縁位置算出部10により算出された道路側端縁と車両100との道路端離間距離と上記設定基準距離との大小関係に基づいて、基準距離画像の各画素の距離値を補正し、さらに、該補正後の基準距離画像を、各マッチング処理領域22の所定方向(Z方向)の位置に応じて補正することで、該各マッチング処理領域22ごとに上記推定距離画像を生成してテンプレート距離画像とする。
【0044】
そうして、生成されるテンプレート距離画像は、図6に示すように、センサ搭載高さに対応する位置の画素濃度が最も明るく(距離値が小さく)、該センサ設置対応高さから上下方向に離れるにしたがって画素濃度が暗く(距離値が大きく)なっている。
【0045】
また、生成されるテンプレート距離画像は、図6(a)及び(b)を比較してもわかるように、車両100に近い側のマッチング処理領域22ほど各画素の濃度が明るくなっている(距離値が小さくなっている)。
【0046】
ガードレール有無判定部15は、マッチング処理部14におけるパターンマッチング処理結果を基に、車両側方の距離画像として写し出された判定対象物がガードレール101か否かを判定する。
【0047】
歩行者警報出力判定部16は、歩行者検出部8及びガードレール有無判定部15からの情報を基に、運転者に対して警報を行うべきか否かを判定して、警報を行うべきと判定した場合には、警報装置7に対して作動指令を出力する。
【0048】
次に、ECU6におけるガードレール検出処理を含む歩行者警報制御処理について、図7のフローチャートを基に説明する。
【0049】
先ず、最初のステップS1では、前方監視カメラ2、距離画像センサ3、及び車速センサ4からの各情報を読み込む。
【0050】
ステップS2では、歩行者検出部8において、前方監視カメラ2からの画像情報を基に、車両周辺に歩行者が存在するか否かを判定し、この判定がNOであるときにはステップS12に進む一方、YESであるときにはステップS3に進む。
【0051】
ステップS3では、道路側端縁位置算出部10において、道路側端縁位置を推定するととも、該道路側端縁位置と車両との道路幅方向に沿った距離である道路側端距離を算出する。
【0052】
ステップS4では、テンプレート距離画像生成部12において、マッチング用基準距離画像記憶部11に記憶された基準距離画像を読み込む。
【0053】
ステップS5では、テンプレート距離画像生成部12において、道路側端距離と上記設定基準距離との大小関係に基づいて、基準距離画像の各画素の距離値を補正する。具体的には、道路端離間距離が設定基準距離よりも大きいときには、基準距離画像の各画素の距離値を全体として低下する方向に補正し、道路端離間距離が設定基準距離よりも小さいときには、全体として距離値を低下させる方向に補正する。この補正量は、予め実験等により求めてマップデータとして記憶されている。
【0054】
ステップS6では、距離画像センサ制御部13から距離画像センサ3に対して必要な制御信号を出力することで、距離画像センサ3を所定タイミングで(車両100が所定距離進む度に)作動させて、車両前方から側方に至る距離画像データを取得する。
【0055】
ステップS7では、マッチング処理部14において、ステップS6で取得した距離画像に対して推定ガードレール領域20を設定するとともに、該領域20内の画像を抽出する。
【0056】
ステップS8では、推定ガードレール領域20内の距離画像に対して、Z方向(図4参照)に並ぶ複数のマッチング処理領域22を設定する。
【0057】
ステップS9では、テンプレート距離画像生成部12において、各マッチング処理領域22ごとに、上記補正後の基準距離画像の各画素の距離値を補正して、テンプレート距離画像を生成する。具体的には、車両100から遠い側のマッチング処理領域22ほど、基準距離画像の各画素の距離値を大きくする方向に補正する。
【0058】
ステップS10では、マッチング処理部14において、各マッチング処理領域22ごとにそれぞれ、マッチング度を算出する。
【0059】
このマッチング度(=R)は、例えば、マッチング処理領域内の画像の各画素の距離値をI(m,n)(画像サイズM×N)とし、テンプレート距離画像の各画素の距離値をT(m,n)(画像サイズM×N)としたときに、両距離値I(m,n),T(m,n)の残差(次式)により表すことができる。
【0060】
R=ΣΣI(m,n)−T(m,n)
ステップS11では、歩行者警報出力判定部16において、マッチング度が所定値以上のマッチング処理領域22がZ方向(走行道路の延設方向に対応する方向)において所定個数以上、連続する部分が存在するか否かを判定し、この判定がNOであるときには、上記判定対象物がガードレール101でないものとしてステップS13に進む一方、YESであるときには該判定対象物がガードレール101であるものとしてステップS12に進む。
【0061】
ステップS12では、歩行者警報出力判定部16から警報装置7に対して作動禁止指令を出力して、警報装置7による運手者への警報を非実行として、リターンする。
【0062】
ステップS11の判定がNOであるときに進むステップS13では、歩行者警報出力判定部16から警報装置7に対して作動指令を出力して、警報装置7による運手者への警報を実行して、リターンする。
【0063】
以上のように構成された、ガードレール検出装置を含む車両用歩行者警報システム1を搭載した車両100では、車両側方の歩道等に歩行者が存在することにより歩行者検出部8にて歩行者が検出された場合(ステップS2の判定がYESである場合)には、ガードレール有無判定部15にて該車両側方の判定対象物がガードレール101であるか否かの判定処理が実行され、ガードレール101であると判定された場合(つまりステップS11の判定がYESである場合)には、警報装置7の作動は禁止されて(ステップS12の処理が実行されて)運転者に対する警報が非実行とされる一方、該判定対象物がガードレール101でないと判定された場合(つまりステップS11の判定がNOである場合)には、警報装置7が作動して(ステップS13の処理が実行されて)運転者に対する警報が実行される。
【0064】
これにより、車両側方に歩行者が存在する場合であってもガードレール101が存在する等して、歩行者の安全性が十分に確保できる場合には、警報装置7が作動しないようになっているので、警報装置7の不必要な作動を防止して警報頻度を低下させることができ、警報による乗員の不快感を低減することができる。
【0065】
ここで、上記実施形態では、マッチング処理部14は、距離画像センサ3により取得した車両側方の距離画像に対して、走行道路の延設方向に対応する所定方向(Z方向)に互いに隣接して並ぶ複数のマッチング処理領域22を設定するととも(ステップS8の処理を実行するとともに)、各マッチング処理領域22内の画像と、該各処理領域22に対応するテンプレート距離画像とのマッチング度を算出し(ステップS10の処理を実行し)、ガードレール有無判定部15は、マッチング度が所定値以上であるマッチング処理領域22が、上記取得した距離画像の上記所定方向(Z方向)において所定個数以上連続する場合には(ステップS11の判定がYESである場合には)、車両側方にガードレール101が存在すると判定する一方、所定個数未満である場合には(ステップS11の判定がNOである場合には)、ガードレール101が存在しないと判定するように構成されている。
【0066】
この構成によれば、例えばガードレール101の一部が欠損する等して該欠損部に対応するマッチング処理領域22のマッチング度が著しく低下しても、該その他のマッチング処理領域22でマッチング度が所定値以上の領域が所定個数以上連続していれば、車両側方にガードレール101が存在すると判定されるため、ガードレール101の検出精度をより一層向上させることができる。
【0067】
また、上記実施形態では、テンプレート距離画像生成部12は、道路側端縁位置算出部10により算出される道路側端縁位置(設置基準位置)と車両100との離間距離である道路端離間距離を基に、ガードレール101が道路側端縁に存在すると仮定した場合に距離画像センサ3により取得されるであろうガードレール101の距離画像を各マッチング処理領域22ごとに推定してテンプレート距離画像とする(ステップS4乃至S9の処理を実行する)ようになっている。
【0068】
これにより、車両の道路幅方向の走行位置に応じて最適なテンプレート距離画像を生成することができる。したがって、この走行位置の変化に起因してマッチング処理部14にて算出されるマッチング度がばらつくのを極力抑制することができ、延いては、ガードレール有無判定部15における判定精度の向上を図ることが可能となる。
【0069】
また、上記実施形態では、距離画像センサ3は、TOF方式の距離画像センサからなるものとされている。これにより、曇りの日等、車両の周囲が比較的暗い状況にあっても、該距離画像センサ3からガードレール101に対して積極的に光が照射されるので、車両側方の距離画像を該センサ4により確実に取得することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、テンプレート距離画像生成部12により生成されるテンプレート距離画像は、高さ方向に対応する方向において、センサ設置対応高さから離れるほど、各画素の距離値が大きくなる画像とされている。
【0071】
このように、ガードレール101の距離画像のうち各画素の距離値の変化が大きい高さ方向、換言すると距離値の変化が特徴的である高さ方向の画像をテンプレート距離画像として用いることで、判定対象物がガードレール101である場合とそうでない場合とで、マッチング処理部14にて算出されるマッチング度を大きく異ならせることができる。したがって、マッチング閾値(上記所定値)を十分なマージンをもって設定することができて、ガードレール有無判定部15における判定精度の向上を図ることが可能となる。
【0072】
(他の実施形態)
本発明の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、距離画像センサ3は、TOF方式の距離画像センサからなるものとされているが、例えば、レーザスキャナからなるものであってもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、距離画像センサ3により取得したガードレール101の距離画像を、複数のマッチング処理領域22を設定して各マッチング処理領域22に対してマッチング処理を実行するようにしているが、必ずしも複数の処理領域22を設定する必要はなく、例えば、これら複数のマッチング処理領域22全体を一の処理領域22として、該処理領域22に対してパターンマッチング処理を実行するようにしてもよい。この場合には、マッチング処理部14にて算出したマッチング度が所定値以上であればガードレール有無判定部15にて判定対象物をガードレール101であるものと判定し、マッチング度が所定値未満であれば判定対象物がガードレール101でないものと判定すればよい。
【0074】
また、上記実施形態では、ガードレール検出装置を車両用歩行者警報システム1に適用した例を示すが、必ずしも車両用歩行者警報システム1に適用する必要はない。
【0075】
また、上記実施形態では、路側固定物検出装置(ガードレール検出装置)によりガードレール検出を行うようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、走行道路に沿って設けられた植え込み(路側固定物)を検出するようにしてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、道路側端縁位置算出部10にて、前方監視カメラ2により車両走行線を撮像して該撮像画像を基に道路側端縁位置を推定するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、前方監視カメラ2により、道路側縁の縁石、溝、植え込み等を撮像して、該撮像画像を基に道路側端縁位置を推定するようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、道路側端縁位置算出部10は、推定した道路側端縁位置と車両100との道路幅方向に沿った距離を算出するものとされているが、必ずしも道路幅方向に沿った距離を算出する必要はなく、道路幅方向に交差する方向に沿った距離を算出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、車両に搭載され、車両の走行道路の側方の路側固定物を検出する路側固定物検出装置に有用であり、特に、車両周辺の歩行者を検出したときに運転者に警報を行う歩行者警報システムを搭載した車両に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態に係るガードレール検出装置を含む車両用歩行者警報システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】歩行者警報システムを搭載した車両を示す上側から見た模式図である。
【図3】距離画像センサによるガードレール検出に関する説明図である。
【図4】距離画像センサにより取得した距離画像を示す模式図である。
【図5】距離画像センサにより取得したガードレールの距離画像を示す拡大図である。
【図6】マッチング処理部におけるパターンマッチング処理に用いるテンプレート距離画像を示す模式図であって、(a)は、車両に最も近い側のマッチング処理領域用のテンプレート距離画像を示し、(b)は、車両から最も遠い側のマッチング処理領域用のテンプレート距離画像を示す。
【図7】ガードレール検出装置によるガードレール検出処理を含む歩行者警報制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
2 前方監視カメラ(走行線撮像手段)
3 距離画像センサ(距離画像取得手段、距離画像取得用センサ)
10 道路側端縁位置算出部(設置基準位置算出部)
11 ガードレール(路側固定物)
12 テンプレート距離画像生成部
13 距離画像センサ制御部(距離画像取得手段)
14 マッチング処理部
16 ガードレール有無判定部(路側固定物判定部)
22 マッチング処理領域
100 車両
101 ガードレール(路側固定物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行道路の側方に存在する路側固定物を検出する路側固定物検出装置であって、
上記車両に搭載され、該車両の側方に存在する判定対象物を検出するとともに、それぞれが距離値を有する複数の画素からなる該判定対象物の距離画像を取得する距離画像取得手段と、
上記路側固定物が設置される設置基準位置を推定するとともに、該推定した設置基準位置及び上記車両間の離間距離を算出する設置基準位置算出部と、
上記設置基準位置算出部により算出された上記設置基準位置及び上記車両間の離間距離を基に、上記路側固定物が該設置基準位置に存在すると仮定した場合に上記距離画像取得手段により取得されるであろう該路側固定物の距離画像を推定して該推定画像をテンプレート距離画像として生成するテンプレート距離画像生成部と、
上記距離画像取得手段により取得された上記判定対象物の距離画像と、上記テンプレート距離画像とのパターンマッチング処理を実行してそのマッチング度を算出するマッチング処理部と、
上記マッチング処理部にて算出されるマッチング度が所定値以上である場合には、上記判定対象物が上記路側固定物であると判定する一方、該マッチング度が所定値未満である場合には、上記判定対象物が上記路側固定物でないものと判定する路側固定物判定部とを備えていることを特徴とする路側固定物検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の路側固定物検出装置において、
上記路側固定物は、上記車両の走行道路に沿って設けられたものであり、
上記マッチング処理部は、上記距離画像取得手段により取得された上記判定対象物の距離画像に対して、上記走行道路の延設方向に対応する所定方向に互いに隣接して並ぶ複数のマッチング処理領域を設定するように構成され、
上記テンプレート距離画像生成部は、上記推定画像を上記各マッチング処理領域ごとに求めてテンプレート距離画像として生成するように構成されており、
さらに上記マッチング処理部は、上記各マッチング処理領域ごとにそれぞれに対応するテンプレート距離画像とのパターンマッチング処理を実行してそのマッチング度を算出するように構成されており、
上記路側固定物判定部は、上記マッチング度が所定値以上であるマッチング処理領域が、上記所定方向において所定個数以上連続する場合には、上記判定対象物が上記路側固定物であると判定する一方、上記所定個数未満である場合には、上記判定対象物が上記路側固定物でないものと判定するように構成されていることを特徴とする路側固定物検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の路側固定物検出装置において、
上記距離画像取得手段は、TOF方式の距離画像センサ又はレーザスキャナセンサからなる距離画像取得用センサを有すること特徴とする路側固定物検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の路側固定物検出装置において、
上記路側固定物は、地面から突出して上下方向に延びており、
上記テンプレート距離画像は、上記上下方向に対応する方向において、上記距離画像取得用センサの搭載高さに対応する位置から離れるほど、各画素の距離値が大きくなる画像であることを特徴とする路側固定物検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の路側固定物検出装置において、
上記設置基準位置は、上記車両が走行する走行道路の側端縁の位置であることを特徴とする路側固定物検出装置。
【請求項6】
請求項5記載の路側固定物検出装置において、
上記車両に搭載され、該車両が走行する走行道路の走行レーンの幅方向両側に沿って延びる車両走行線を撮像する走行線撮像手段をさらに備え、
上記設置基準位置算出部は、上記走行線撮像手段により撮像された画像を基に、上記車両走行線の位置を推定し、さらに該推定した車両走行線の位置を基に上記走行道路の側端縁の位置を推定するように構成されていることを特徴とする路側固定物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−20710(P2010−20710A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182996(P2008−182996)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】