説明

車両のステアリング装置

【課題】本発明は、インストルメントパネル及びステアリング系の車両への組み付け性の向上及び左右ハンドル車両への共通使用を可能としたことを目的としている。
【解決手段】このため、操舵輪を駆動するアクチュエータと、乗員により回動操作されるステアリングハンドルと、操作量および操作方向を含む操作状態を検知する操作検知手段と、ステアリングハンドルの操作状態に基づきアクチュエータを駆動する制御装置を備える車両のステアリング装置において、ステアリングハンドルを、連接したコラム部を介してインストルメントパネルの構造体に支持して設け、インストルメントパネルの構造体を車両のフロア面から立ち上げ上下方向に延出する形状に設け、側面視でその上部の中間部がその上部および下部よりもシート側に向けて突出する湾曲形状に形成し、その上部の中間部の突出端部近傍にステアリングハンドルのコラム部の基部を支持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両のステアリング装置に係り、特にバイワイヤによりシフト操作を行う車両へのインストルメントパネル及びステアリング系の組み付け性の向上を図る車両のステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両においては、ステアリングハンドルの回動状態を操舵輪に伝達する際に、ステアリングシャフト方式とバイワイヤ方式(単に「バイワイヤ」ともいう。)とが考えられる。
【0003】
バイワイヤ方式の場合には、機械的連結をなくすことによって従来の制約を受けることなく、シフト操作を行うことが可能であり、使い勝手の向上を図ることができるとともに、レイアウトの自由度が高く、理想的なドライビングポジションを得ることが可能であるという利点がある。
【0004】
【特許文献1】特公平4−8258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の車両のステアリング装置において、従来のインストルメントパネルは、各計器や補機部品(スイッチ(「SW」とも記載する。)やエアコン(「A/C」とも記載する。)、オーディオ等)を支えている。
【0006】
車両への組み付け方策としては、
(1)先ず、計器や補機部品をインストルメントパネルを組み付けた後(サブアッシ利用)、車両に組み付ける。
(2)インストルメントパネルを車両に組み付けた後、補機部品を組み付ける。
の2通りがあり、組み付け後に各部品と車両との配線を行う。
【0007】
また、インストルメントパネルを車両に取り付けた後に、ステアリングコラムを車両フレームに固定する。
【0008】
しかし、上述した車両へのインストルメントパネル組み付け方策において、「(1)」の場合には、サブアッシは車両室内の横幅近くまである大きな部品であり、エアコンやオーディオ等を組み付けることで重量が増加するという不都合がある。
【0009】
また、各部品と車両部品との配線作業も車両内で実施する必要があるため、作業効率が悪いという不都合がある。
【0010】
更に、前記ステアリングコラムは車両フレームに組み付けるため、車両内組み付けで大なる作業時間を必要とするという不都合がある。
【0011】
更にまた、インストルメントパネル(「各計器」とも換言できる。)やコラムの左右位置は固定であり、右ハンドル車両や左ハンドル車両に対応して別部品を製作する必要があるという不都合がある。
【0012】
この発明の目的は、車両のフロア面から立ち上げ上下方向に延出する形状にインストルメントパネルの構造体を形成するとともに、側面視でインストルメントパネルの上部の中間部がその上部および下部よりもシート側に向けて突出するような湾曲形状にインストルメントパネルを形成した際に、上部の中間部の突出端部近傍にステアリングハンドルのコラム部の基部を支持し、インストルメントパネル及びステアリング系等の車両への組み付け性の向上及び左右ハンドル車両への共通使用を可能とした車両のステアリング装置を実現するにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、操舵輪を駆動するアクチュエータと、乗員により回動操作されるステアリングハンドルと、その操作量および操作方向を含む操作状態を検知する操作検知手段と、ステアリングハンドルの操作状態に基づきアクチュエータを駆動する制御装置を備える車両のステアリング装置において、このステアリング装置の前記ステアリングハンドルを、ステアリングハンドルに連接したコラム部を介してインストルメントパネルの構造体に支持して設け、インストルメントパネルの構造体を車両のフロア面から立ち上げ上下方向に延出する形状に設け、側面視でその上部の中間部がその上部および下部よりもシート側に向けて突出する湾曲形状に形成し、その上部の中間部の突出端部近傍にステアリングハンドルのコラム部の基部を支持したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上詳細に説明した如くこの本発明によれば、操舵輪を駆動するアクチュエータと、乗員により回動操作されるステアリングハンドルと、その操作量および操作方向を含む操作状態を検知する操作検知手段と、ステアリングハンドルの操作状態に基づきアクチュエータを駆動する制御装置を備える車両のステアリング装置において、このステアリング装置のステアリングハンドルを、ステアリングハンドルに連接したコラム部を介してインストルメントパネルの構造体に支持して設け、インストルメントパネルの構造体を車両のフロア面から立ち上げ上下方向に延出する形状に設け、側面視でその上部の中間部がその上部および下部よりもシート側に向けて突出する湾曲形状に形成し、その上部の中間部の突出端部近傍にステアリングハンドルのコラム部の基部を支持したので、インストルメントパネル及びステアリング系の車両への組み付け性を向上させることができるとともに、左右ハンドル車両に共通使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上述の如く発明したことにより、車両にインストルメントパネルを配設する際には、インストルメントパネルの構造体を車両のフロア面から立ち上げ上下方向に延出するように配設し、側面視でインストルメントパネルの上部の中間部がその上部および下部よりもシート側に向けて突出するように湾曲させ、インストルメントパネルの上部の中間部の突出端部近傍にステアリングハンドルのコラム部の基部を支持している。
【実施例】
【0016】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【0017】
図1〜図9はこの発明の実施例を示すものである。図2において、1は車両、2は車両1のフロントガラス、3は車両1のドア、4は車両1の室内である。
【0018】
この車両1の室内4において、図2に示す如く、車両前側に車体内装5を設け、この車体内装5よりも車両後側にインストルメントパネル6を配設するとともに、このインストルメントパネル6の車両後側には運転席シート7や助手席シート8を配設し、前記インストルメントパネル6の表示パネル9から前記運転席シート8側に突出するステアリングハンドル10を設ける。
【0019】
このとき、ステアリングハンドル10のステアリングシステムであるステアリング装置11は、操舵輪12を駆動する操舵モータからなる第1、第2アクチュエータ13、14と、乗員により回動操作される前記ステアリングハンドル10と、その操作量および操作方向を含む操作状態を検知する操作検知手段15と、ステアリングハンドル10の操作状態に基づき前記第1、第2アクチュエータ13、14を駆動する制御装置16を備える。
【0020】
つまり、前記ステアリング装置11は、図3に示す如く、ステアリングギヤボックス17を介して左右の操舵輪12を配設し、このステアリングギヤボックス17の中央部位にピニオンシャフト18とこのピニオンシャフト18の回転角度を検出する複数個の角度センサ19とを配設するとともに、これらのピニオンシャフト18と角度センサ19とを挟むように前記第1、第2アクチュエータ13、14を配設し、この第1、第2アクチュエータ13、14と角度センサ19とを前記制御装置16に接続する。
【0021】
参考までに記載すると、ステアリング系の支持構造において、従来はサポートメンバを左右のピラーをつなぐようにインストルメントパネルの背面幅方向に沿って配設し、それに支持するのが主流である。
【0022】
しかし、この発明の実施例においては、そのサポートメンバがありません。
【0023】
その代わりに、前記インストルメントパネル6自体がフロア1aから立ち上がるような後述する構造体29を有し、それにステアリング系を支持する構成としている。
【0024】
また、前記ステアリングハンドル10の回動軸20部位には、図3に示す如く、コラム部21と、前記操作検知手段15の一部を構成し、かつ前記ステアリングハンドル10の回転角度を検出する複数個の角度センサ22と、機械式の反力発生機構23とを一体的に設け、コラム部21近傍に操作反力モータ24を設け、この操作反力モータ24と前記角度センサ22とを操作制御装置25に接続する。
【0025】
この操作制御装置25は、前記操作反力モータ24を制御して前記ステアリングハンドル10に反力を付けるものである。
【0026】
このとき、前記角度センサ22と操作制御装置25とを接続する信号線26と、前記角度センサ19と前記制御装置16とを接続する信号線27とを信号線28により接続する。
【0027】
そして、前記制御装置16は、前記角度センサ22により検出される前記ステアリングハンドル10の回転角度により、前記第1、第2アクチュエータ13、14を制御して前記ピニオンシャフト18からラックシャフト、タイロッド、前記操舵輪12の順序で駆動させるものである。
【0028】
更に、前記ステアリング装置11の前記ステアリングハンドル10を、このステアリングハンドル10に連接したコラム部21を介して前記インストルメントパネル6の構造体29に支持して設け、インストルメントパネル6の構造体29を前記車両1のフロア1a面から立ち上げ上下方向に延出する形状に設け、側面視でその上部30の中間部31がその上部30および下部32よりもシート、つまり前記運転席シート7側に向けて突出する湾曲形状に形成し、その上部30の中間部31の突出端部33近傍に前記ステアリングハンドル10のコラム部21の基部34を支持する構成とする。
【0029】
詳述すれば、前記インストルメントパネル6の構造体29は、図1及び図4に示す如く、ステアリングハンドル10の回動軸20を通る鉛直平面に対して、車両幅方向の一側に変位して設けられる。
【0030】
また、図1に示す如く、前記ステアリングハンドル10のコラム部21の基部34を、側面視で前記インストルメントパネル6の構造体29と重なるように設け、車両幅方向に指向する回動軸35により、インストルメントパネル6の構造体29に回動可能に軸支する。
【0031】
更に、前記インストルメントパネル6の構造体29には、図1及び図4に示す如く、回動軸35に沿って略円筒状のクロスメンバ36を配設し、図4に示す如く、クロスメンバ36内部に回動軸35を駆動する駆動力伝達装置37を収納する。
【0032】
更にまた、図4及び図8に示す如く、前記ステアリングハンドル10のコラム部21の基部34を回動させるチルト動作用の電動モータ38を設け、この電動モータ38を支持する構造部材39を設け、図8及び図9に示す如く、この構造部材39に電動モータ38をクロスメンバ36内の駆動力伝達装置37に駆動連結する駆動力伝達装置40を併設し、この構造部材39をクロスメンバ36下方に連なるインストルメントパネル6の構造体29の内部に収容支持する。
【0033】
そして、インストルメントパネル6の構造体29には、クロスメンバ36の上部から上方に向かうに連れステアリングハンドル10から離間し、かつ構造体29に対して車両幅方向に移動可能な前記表示パネル9を支持する。
【0034】
追記すれば、前記インストルメントパネル6を支持し横移動の案内及び移動をする後述するガイドレール49があり、これを車体へ支持しており、インストルメントパネル6自体を移動可能としている。
【0035】
前記ステアリングハンドル10の軸である回動軸20を含む縦断面を仮想したときに、その縦断面に対して、インストルメントパネル6の構造体29のうち、縦方向のフレーム41は、全体的にドア3とは反対側にオフセットしている。
【0036】
これはステアリング系を横方向に片持ちする構造であり、重く長いステアリングシャフトがなくなった為に可能な構造である。
【0037】
横から支持することで、運転者の足下空間を広く確保できる。
【0038】
前記インストルメントパネル6の構造体29の本体はフレーム構造である。
【0039】
図1及び図4に示す如く、前記フレーム41は略S字を描く形状の縦方向に長い板状パネルであり、それを複数、例えば3つ並べて互いにその面を対向させたものと、それらを互いに連結するパイプ状、かつ複数のクロスメンバ42で主に構成される。
【0040】
そして、前記フレーム41内に生じる大小かつ多数の内部空間43には、電装品やアクチュエータなどの艤装品を収容して、インストルメントパネル6自体が室内4で占有する空間を小さく、特に前後方向に薄くしている。
【0041】
また、前記フレーム41のように略S字を描く形状では、上下に離間して2つの異なる方向への湾曲があり、上部30の湾曲では、図1及び図4、図5に示す如く、湾曲内側には幅方向へ延出する大径の円筒部からなる前記クロスメンバ36を配して連結する。
【0042】
この大径の円筒部からなるクロスメンバ36は、その構造的な強度により、その端面に前記コラム部21の基部34にあたるチルトギヤユニットを支持する。
【0043】
大径の円筒部であるクロスメンバ36は、内部が機械的な前記駆動力伝達装置37の駆動力伝達経路となっており、駆動力伝達装置40を含むギヤトレーン44の一部を内蔵する。
【0044】
このギヤトレーン44は、インストルメントパネル6の構造体29側へと下方に連なり、図4に示す如く、テレスコピック用モータ45を設けている。
【0045】
このテレスコピック用モータ45とギヤトレーン44の一部は、ブラケット46により部組みされている。
【0046】
そして、前記インストルメントパネル6の構造体29の上部は、図1に示す如く、大きな表面積の表示パネル(「表示&操作パネル」ともいう。)9を収容支持するために、外形が略四角形の枠体47で、連結枠48を設けた軽量で簡素な構造とする。
【0047】
特に連結枠48は、インストルメントパネル6の構造体29の本体の上部延長とオフセット部分の境界に当たる中央に位置し、ガイドレール49と繋がるアーム50が設けられている。
【0048】
このとき、アーム50は、図5に示す如く、インストルメントパネル6の枠体47用のスライド機構である上部スライド機構51のガイドレール49上の移動子52に接続され、この移動子52をモータ53によりスライド移動させることによって前記インストルメントパネル6の枠体47が車両幅方向にスライド移動される。
【0049】
そして、この上部スライド機構51は前記車体内装5の内部空間に収容され、前記アーム50のみが露出される状態となる。
【0050】
前記インストルメントパネル6の枠体47に収容される表示パネル9は、図2に示す如く、構造体29に形成される固定ガイド部54の表面部位に配置され、インストルメントパネル6の構造体29の上部30の湾曲形状に沿って移動させることが可能である。
【0051】
緩やかな曲線を描くインストルメントパネル6の表示&操作パネルである表示パネル9は、内部となる前下方にガイドレール49等の占有する作動空間55を形成し、それによるボリューム感が視覚的な安心感を与える。
【0052】
また、前記インストルメントパネル6の構造体29の下部は、図5に示す如く、幅方向に長く伸びる略水平な板状パネルからなる前記フレーム41に複数の剛性アップ用の隔壁56を設けた構造として、インストルメントパネル6をフロア1aに安定的に支持する脚部57としている。
【0053】
そして、図1及び図4、図5に示す如く、この脚部57の下端にペダルアッシ支持部58を固着し、このペダルアッシ支持部58の下部には、図5に示す如く、前記インストルメントパネル6の構造体29用のスライド機構である下部スライド機構59のガイドレール60を配設し、このガイドレール60上においてペダルアッシ支持部58をスライド移動させることによって前記インストルメントパネル6の構造体29が車両幅方向にスライド移動される。
【0054】
そして、この下部スライド機構59は前記フロア1aの下に収容される。
【0055】
この下部スライド機構59によって前記インストルメントパネル6の構造体29の全部を車両幅方向にスライド移動させることが可能となり、標準4座席やドライバセンタ4座席、ドライバセンタ3座席、ドライバセンタ1座席等の多彩なシートレイアウトを実現することが可能である。
【0056】
なお、この脚部57を形成する際には、前記フレーム41のように板金である板状パネルとパイプ状のクロスメンバ42とからなる構成のみでなく、鋳造品とすることも可能である。
【0057】
更に、チルト(ステアリングハンドル10の角度調整)・テレスコピック(ステアリングハンドル10の軸方向、車両幅方向調整)機構61は、図4に示す如く、ステアリングハンドル10の回動軸20に略直交するように交差するチルト用回動軸線62、つまり前記回動軸35の回動中心軸線と、それに平行な主にテレスコピック用回動軸線63と、前記クロスメンバ36の中心軸線64とを備え、ステアリングハンドル10の上下調整を行い、チルト用回動軸線62周りでは、コラム部21とこのコラム部21の基部34にあたるチルトギヤユニットを互いに相対回動させ、テレスコピック用回動軸線63周りでは、コラム部21の基部34にあたるチルトギヤユニットと前記インストルメントパネル6を互いに相対回動させる。
【0058】
そして、テレスコピック用回動軸線63周りの回動動作は、インストルメントパネル6内部に設けたテレスコピック用モータ45により行われる。
【0059】
ステアリング系のステアリングハンドル10全体が片持ち支持のような構造となっているが、比較的重いチルト動作用の電動モータ38を根元側となるテレスコピック用回動軸線63の略延長線上に搭載するなど、テレスコピック用回動軸線63に対して回動動作するチルト動作用の電動モータ38を車体に近い基側に配置して、モーメントが小さくなるようにしている。
【0060】
このテレスコピック用回動軸線63から遠心方向に離れるに従って、減速用のギヤトレーン44を配設するようにしている。
【0061】
このとき、ギヤトレーン44のギヤ類は、図8及び図9に示す如く、軸受を前記コラム部21の基部34にあたるチルトギヤユニットの構造部材39の板状パネル65部位と兼用して軸支することで、ギヤ類を平面状に並べ、軽量かつコンパクトとしている。
【0062】
そして、前記構造部材39の板状パネル65部位の外方位置には、板状パネル65の外面と意匠用のユニットカバー66(図6及び図7参照)との間の扁平空間67を形成し、各種配線を並べて配索している。
【0063】
前記チルト用回動軸線62周りの回動動作は、テレスコピック用回動軸線63と略同軸に設けられたチルト動作用の電動モータ38により行う。
【0064】
よって、チルト用回動軸線62周りの構成が簡略となってすっきりし、チルト角を大きく採ることが可能になる。
【0065】
なお、前記チルト用回動軸線62周りのスペースを利用し、前記操作反力モータ24を近くに配設することも可能である。
【0066】
前記コラム部21の基部34にあたるチルトギヤユニットには、外表面の略全体を覆う前記ユニットカバー66に沿って外殻をなすように構造部材39を設けており、前記インストルメントパネル6の構造体29の端面に当接させ、テレスコピック用回動軸線63により回動可能に軸支している。
【0067】
そして、前記構造部材39の外殻形状により、内部に生まれる長円筒状の空間にチルト動作用の電動モータ38や減速ギヤである減速用のギヤトレーン44を効率よく収容して、全体をコンパクトにしている。
【0068】
また、前記チルト用回動軸線62に対して同心状態に前記構造部材39内に配設される回動軸35を中空シャフト状として、高い剛性の確保と軽量化を実現している。
【0069】
ここで、前記ステアリングハンドル10近傍の構成を説明する。
【0070】
このステアリングハンドル10は、バイワイヤにより従来の制約を受けず、新しいシフト装置は邪魔にならず、使い勝手が良好であるとともに、車速に応じて操舵角可変(ロックtoロック、1回転以下)とし、高速域での安定性や低速域での操作性を重視し、また、ステアリングハンドル10の上下を切除したハンドル形状として、メータの視認性を向上させるとともに、足下のゆとりを確保するものである。
【0071】
つまり、前記ステアリングハンドル10には、図6及び図7に示す如く、中央部にハンドルベース環状部材68が形成され、このハンドルベース環状部材68の左右に位置するグリップ69が形成され、これらのグリップ69の上端に外周部位にイルミネーションを有する各種操作用プッシュスイッチ70が配設されるとともに、左右のグリップ69に一端が連絡し、かつ他端が前記ハンドルベース環状部材68に連絡するスポーク71内には各種操作用プッシュスイッチ70の配線が配設される。
【0072】
そして、前記ステアリングハンドル10の前面側・中央部位をハンドル前カバー72で覆い、ステアリングハンドル10の後面側は、上面コラムカバー73と下面コラムカバー74と背面コラムカバー75と前記ユニットカバー66とで覆う。
【0073】
このとき、ハンドル前カバー72には、左右の方向指示用ボタン等が配設される。
【0074】
前記上面コラムカバー73はコラム部21の上面を覆うものであり、図7に示す如く、内部には、ステアリングハンドル10の回動軸20に対して平行に配設されるハンドル前カバー72用の取付柱脚76や、板金状のコラムブラケット77が位置している。
【0075】
そして、図6及び図7に示す如く、上面コラムカバー73からは前記ステアリングハンドル10の左右のグリップ69の背面側に夫々突出する筒状の左側操作部78と右側操作部79が配設され、この左側操作部78はシフト選択スイッチとして機能するとともに、右側操作部79はワイパやライトの操作スイッチとして機能する。
【0076】
前記下面コラムカバー74はコラム部21の下面を覆うものであり、図7に示す如く、内部には前記操作反力モータ24が配設されている。
【0077】
前記背面コラムカバー75はコラム部21の背面を覆うものであり、図7に示す如く、板金状の前記コラムブラケット77の背面部位を覆っている。
【0078】
この背面コラムカバー75の背面部位には、配線カバー部80が位置している。
【0079】
前記ユニットカバー66は、チルト動作用の前記電動モータ38を支持する構造部材39を覆っている。
【0080】
前記ステアリングハンドル10の軸方向は、チルト用回動軸線62から上方にオフセットされていて、チルト角の可動範囲が大きくでき、より最適な傾斜方向を容易に設定できるようになっています。例えば、運転者の襟元に向けられます。(従来、ユニバーサルジョイントを使っても、ステアリングシャフトの取り回しと操作感による制限があり、軸が鉛直に近くなる傾向になっていた。)
【0081】
前記コラム部21は、その基部34にあたるチルトギヤユニットによって、下から上に向けて支持されています。
【0082】
なお、符号82は、前記構造部材39の板状パネル65の車両左側部位を固定する第1板状フレーム、83は構造部材39の板状パネル65の車両右側部位を固定する第2板状フレーム、84は前記第1板状フレーム82の外側、つまり車両左側に形成され、かつ前記インストルメントパネル6に支持させるための取付面、85は前記構造部材39を前記インストルメントパネル6に取付面84を利用して連結させる際に使用する連結ボルトボス部である。
【0083】
次に作用を説明する。
【0084】
先ず、前記インストルメントパネル6の構造体29を前記車両1のフロア1a面から立ち上げ上下方向に延出するように配設する。
【0085】
このとき、側面視でインストルメントパネル6の上部30の中間部31がその上部30および下部32よりも運転席シート8側に向けて突出するように湾曲させ、インストルメントパネル6の上部30の中間部31の突出端部33近傍にステアリングハンドル10のコラム部21の基部34を支持する。
【0086】
そして、標準4座席やドライバセンタ4座席、ドライバセンタ3座席、ドライバセンタ1座席等の多彩なシートレイアウトから任意のシートレイアウトを選択し、シートレイアウトを行う。
【0087】
着座後には、この選択したシートレイアウトに合致するように前記下部スライド機構59を駆動させ、前記インストルメントパネル6の構造体29の全部を車両幅方向にスライド移動させる。
【0088】
また、前記上部スライド機構51のモータ53を駆動させ、ガイドレール49上の移動子52を車両幅方向に移動させ、この移動子52に接続したアーム50によって前記インストルメントパネル6の枠体47を車両幅方向にスライド移動させる。
【0089】
このとき、枠対47は表示パネル9を収容しているため、表示パネル9がインストルメントパネル6の構造体29の上部30に形成される固定ガイド部54の湾曲形状に沿って移動される。
【0090】
更に、前記チルト・テレスコピック機構61のチルト機能によって、チルト用回動軸線62周りでコラム部21とこのコラム部21の基部34にあたるチルトギヤユニットを互いに相対回動させ、前記ステアリングハンドル10の角度調整を行う。
【0091】
更にまた、前記チルト・テレスコピック機構61のテレスコピック機能によって、テレスコピック用回動軸線63周りでコラム部21の基部34にあたるチルトギヤユニットと前記インストルメントパネル6を互いに相対回動させ、前記ステアリングハンドル10の軸方向、車両幅方向調整を行う。
【0092】
これにより、前記ステアリング装置11の前記ステアリングハンドル10を、このステアリングハンドル10に連接したコラム部21を介して支持する前記インストルメントパネル6の構造体29とし、インストルメントパネル6の構造体29を前記車両1のフロア1a面から立ち上げ上下方向に延出する形状に設け、側面視でその上部30の中間部31がその上部30および下部32よりもシート、つまり前記運転席シート7側に向けて突出する湾曲形状に形成し、その上部30の中間部31の突出端部33近傍に前記ステアリングハンドル10のコラム部21の基部34を支持する構成としたことによって、インストルメントパネル6及びステアリング系の車両1への組み付け性を向上させることができるとともに、左右ハンドル車両に共通使用でき、部品点数の低減に寄与し得る。
【0093】
また、前記インストルメントパネル6の構造体29は、ステアリングハンドル10の回動軸20を通る鉛直平面に対して、車両幅方向の一側に変位して設けられることにより、インストルメントパネル6の占有面積を小さくすることができるとともに、運転手の正面スペースを広くすることができ、スペースの効果的な利用を図ることが可能である。
【0094】
更に、前記ステアリングハンドル10のコラム部21の基部34を、側面視で前記インストルメントパネル6の構造体29と重なるように設け、車両幅方向に指向する回動軸35により、インストルメントパネル6の構造体29に回動可能に軸支することにより、ステアリング系の車両1への組み付け性を向上させることができるとともに、コラム部21を小型化できる。
【0095】
更にまた、前記インストルメントパネル6の構造体29には、回動軸35に沿って略円筒状のクロスメンバ36を配設し、クロスメンバ36内部に回動軸35を駆動する駆動力伝達装置37を収納することにより、コラム回転(テレスコピック機能)に関する部分のインストルメントパネル6を小型化することができる。
【0096】
また、前記ステアリングハンドル10のコラム部21の基部34を回動させるチルト動作用の電動モータ38を設け、この電動モータ38を支持する構造部材39を設け、この構造部材39に電動モータ38をクロスメンバ36内の駆動力伝達装置37に駆動連結する駆動力伝達装置40を併設し、この構造部材39をクロスメンバ36下方に連なるインストルメントパネル6の構造体29の内部に収容支持することにより、コラム回転(テレスコピック機能)とフレーム強度の向上とを両立させることができるとともに、コラム回転(テレスコピック機能)に関する部分のインストルメントパネル6を小型化することができる。
【0097】
更に、前記インストルメントパネル6の構造体29には、クロスメンバ36の上部から上方に向かうに連れステアリングハンドル10から離間し、かつ構造体29に対して車両幅方向に移動可能な前記表示パネル9を支持することにより、ステアリングハンドル10のオーバハングが大きくなるとインストルメントパネル6に倒れ方向(前後方向)の荷重がかかるのに対し、静的バランスをとることができ、より大型の表示パネル9が採用でき、よりバランスをとるのに好ましいとともに、視覚情報をより遠くに配置でき、視線移動や焦点距離の変更が少なくなり、見易い表示パネル9を実現することができる。
【0098】
なお、この発明は上述実施例に限定されるものではなく、種々の応用改変が可能である。
【0099】
例えば、前記ステアリングハンドルのコラム部のチルト(ステアリングハンドルの角度調整)・テレスコピック(ステアリングハンドルの軸方向、車両幅方向調整)機構において、回転動作以外の直線動作等を組み込んだ構成とすることも可能である。
【0100】
また、前記インストルメントパネルの構造体には、空調部品を一体的に設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】この発明の実施例を示すステアリング装置のインストルメントパネルの構造体部分を車両左後方側から観た状態の斜視図である。
【図2】車両の室内を車両左後方側から視た状態の概略斜視図である。
【図3】ステアリング装置のシステム図である。
【図4】ステアリング装置のインストルメントパネルの構造体部分を車両右前方側から観た状態の斜視図である。
【図5】ステアリング装置のインストルメントパネル部分の上部及び下部スライド機構を示す車両右前方側から観た状態の斜視図である。
【図6】ステアリングハンドル部分を車両右前方側から観た状態の斜視図である。
【図7】上面コラムカバーを取り外した状態のステアリングハンドル部分を車両左前方側から観た状態の斜視図である。
【図8】構造部材を車両左後方側から観た状態の斜視図である。
【図9】回動軸を取り外した構造部材を車両右前方側から観た状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0102】
1 車両
1a フロア
2 フロントガラス
3 ドア
4 室内
5 車体内装
6 インストルメントパネル
7 運転席シート
8 助手席シート
9 表示パネル
10 ステアリングハンドル
11 ステアリング装置
12 操舵輪
13 第1アクチュエータ
14 第2アクチュエータ
15 操作検知手段
16 制御装置
17 ステアリングギヤボックス
18 ピニオンシャフト
19 角度センサ
20 回動軸
21 コラム部
22 角度センサ
23 反力発生機構
24 操作反力モータ
25 操作制御装置
29 構造体
35 回動軸
37 駆動力伝達装置
38 チルト動作用の電動モータ
39 構造部材
40 駆動力伝達装置
44 ギヤトレーン
45 テレスコピック用モータ
47 枠体
51 上部スライド機構
57 脚部
59 下部スライド機構
61 チルト・テレスコピック機構
62 チルト用回動軸線
63 テレスコピック用回動軸線
64 クロスメンバ36の中心軸線
65 板状パネル
66 ユニットカバー
68 ハンドルベース環状部材
69 グリップ
70 各種操作用プッシュスイッチ
71 スポーク
72 ハンドル前カバー
73 上面コラムカバー
74 下面コラムカバー
75 背面コラムカバー
77 コラムブラケット
78 左側操作部
79 右側操作部
80 配線カバー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵輪を駆動するアクチュエータと、乗員により回動操作されるステアリングハンドルと、その操作量および操作方向を含む操作状態を検知する操作検知手段と、ステアリングハンドルの操作状態に基づきアクチュエータを駆動する制御装置を備える車両のステアリング装置において、このステアリング装置の前記ステアリングハンドルを、ステアリングハンドルに連接したコラム部を介してインストルメントパネルの構造体に支持して設け、インストルメントパネルの構造体を車両のフロア面から立ち上げ上下方向に延出する形状に設け、側面視でその上部の中間部がその上部および下部よりもシート側に向けて突出する湾曲形状に形成し、その上部の中間部の突出端部近傍にステアリングハンドルのコラム部の基部を支持したことを特徴とする車両のステアリング装置。
【請求項2】
前記インストルメントパネルの構造体は、ステアリングハンドルの回動軸を通る鉛直平面に対して、車両幅方向の一側に変位して設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両のステアリング装置。
【請求項3】
前記ステアリングハンドルのコラム部の基部を、側面視でインストルメントパネルの構造体と重なるように設け、車幅方向に指向する回動軸により、インストルメントパネルの構造体に回動可能に軸支したことを特徴とする請求項1に記載の車両のステアリング装置。
【請求項4】
前記インストルメントパネルの構造体には、回動軸に沿って略円筒状のクロスメンバを配設し、クロスメンバ内部に回動軸を駆動する駆動力伝達装置を収納することを特徴とする請求項3に記載の車両のステアリング装置。
【請求項5】
ステアリングハンドルのコラム部の基部を回動させる電動モータを設け、この電動モータを支持する構造部材を設け、この構造部材に電動モータをクロスメンバ内の駆動力伝達装置に駆動連結する駆動力伝達装置を併設し、この構造部材をクロスメンバ下方に連なるインストルメントパネルの構造体の内部に収容支持したことを特徴とする請求項4に記載の車両のステアリング装置。
【請求項6】
インストルメントパネルの構造体には、クロスメンバの上部から上方に向かうに連れステアリングハンドルから離間する表示パネルを支持することを特徴とする請求項5に記載の車両のステアリング装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−83806(P2007−83806A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273362(P2005−273362)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】