説明

車両の制御装置

【課題】車輪にトルクを付与して車体のロール状態を制御する際に、車両に異常が生じた場合であっても、車両の挙動が不安定になってしまうことを回避できる制御装置を提供する。
【解決手段】前後輪を独立して車体に支持するサスペンション機構と、駆動トルクおよび制動トルクをそれぞれ独立して制御する制駆動トルク制御手段と、前後輪に駆動トルクもしくは制動トルクを付与して車体のロール状態を制御するロール制御手段と、車体に出力軸の軸線方向が車両の前後方向と平行もしくはほぼ平行に設置された駆動源とを備えた車両の制御装置において、駆動源の出力トルクを検出もしくは推定する駆動源トルク検出手段(ステップS1,S2,S4,S5)と、駆動源の出力トルクの変動が検出もしくは推定された場合に、ロール制御手段を制御して車体のロールを抑制するロール抑制手段(ステップS3,S6)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の車輪に付与するトルクを独立して制御することにより車両の挙動を制御する車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の一形態として、車輪にモータを組み込み、車輪をモータで直接駆動する、いわゆるインホイールモータ方式の車両が開発されている。このインホイールモータ方式の電気自動車の利点として、各車輪(駆動輪)に組み込んだモータを個別に回転制御すること、すなわち各モータを個別に力行制御もしくは回生制御することにより、各駆動輪に付与する駆動力もしくは制動力を個別に制御して、車両の駆動力および制動力を走行状態に応じて適宜に制御することができる点、また、従来のエンジンやトランスミッションなどのドライブトレーンを排除することにより、車両の室内やトランクルームなどの空間を広くできる点などが挙げられる。
【0003】
そのうち、各車輪に付与する駆動トルクもしくは制動トルクを個別に制御できる点を利用して、左右それぞれの前輪と後輪との間の駆動トルク(もしくは制動トルク)の大きさに差を設けることにより、車体に上下方向の力を生じさせて、旋回時などに生じる車体のロールを抑制する制御装置が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなインホイールモータ方式の車両における制御装置では、車体にロールが生じた際に、車体が沈み込む側の後輪に作用する駆動トルクから前輪に作用する駆動トルクを差し引いた偏差が大きくなるように、前記前後輪に付与する駆動トルクもしくは制動トルクを制御することにより、ロール時に車体が沈み込む側に、車体を持ち上げようとする力を発生させ、また、ロール時に車体が浮き上がる側の後輪に作用する駆動トルクから前輪に作用する駆動トルクを差し引いた偏差が小さくなるように前記前後輪に付与する駆動トルクもしくは制動トルクを制御することにより、ロール時に車体が浮き上がる側に、車体を押し下げようとする力を発生させて、車体のロールが抑制される。
【0005】
したがって、車両が旋回する際に生じる車体のロールに対して、車体が沈み込む側に、車体を持ち上げようとする力、すなわちロール時の車体の沈み込みを抑えようとする力を発生させ、また、車体が浮き上がる側に、車体を押し下げようとする力、すなわちロール時の車体の浮き上がりを抑えようとする力を発生させるように各車輪に付与する駆動トルクもしくは制動トルクを制御することによって、旋回時の車体のロールを抑制することができる。
【0006】
また、上記のようなインホイールモータ方式の車両(電気自動車)では、インホイールモータへ電力を供給する(インホイールモータ回生時には電力を回収する)バッテリなどの蓄電装置が設けられている。この場合、できるだけ高出力・大容量のバッテリを用いることが望ましいが、バッテリの性能、あるいは車両への搭載性などの面から限界がある。そこで、バッテリを充電するための電力を供給する発電機と、その発電機を駆動するエンジンとを車両に搭載することにより、現状性能のバッテリであっても車両の高出力化や連続走行距離(時間)の延長が可能になる。
【0007】
しかしながら、上記のような発電用のエンジンを縦置きで車両に搭載する場合、すなわち車両の前後方向に対して、出力軸の軸線方向が平行もしくはほぼ平行となるように、エンジンを車両に搭載する場合には、エンジンが始動あるいは停止する際に生じるエンジントルクの変動によって、そのエンジントルクの反力を受ける車体にはエンジントルクの変動に応じたロールモーメントが作用する。例えば、図4に示すように、車両Veに縦置きされたエンジンEgの出力軸(クランク軸)Osが、車両Veの正面から視て右回り(時計回り)方向に回転する場合、そのエンジンEgが固定されている車体Boには、車両Veの正面から視て左回り(反時計回り)方向のモーメント、すなわち車両Veの正面から視て車体Boの左側を沈み込ませ、右側を浮き上がらせる方向のロールモーメントMreが作用することになる。
【0008】
したがって、上記のようにエンジンが縦置きで、すなわちエンジンがその出力トルクが変動する際に車体にロールモーメントを生じさせる方向で搭載されたインホイールモータ車においては、エンジンが始動・停止する度に、あるいはエンジントルクが変動する度に、乗員の意図しないロールが発生することになり、乗員に違和感を与えてしまう可能性があった。
【0009】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、出力するトルクが変動する際に車体にロールモーメントを生じさせる方向に駆動源が搭載された車両において、駆動源のトルク変動の際に生じる車体のロールを抑制することができる車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、少なくとも前後輪を独立して車体に支持するサスペンション機構と、前記前後輪の駆動トルクおよび制動トルクをそれぞれ独立して制御する制駆動トルク制御手段と、前記制駆動トルク制御手段により前記前後輪に駆動トルクもしくは制動トルクを付与して前記車体のロール状態を制御するロール制御手段と、前記車体に出力軸の軸線方向が車両の前後方向と平行もしくはほぼ平行に設置された駆動源とを備えた車両の制御装置において、前記駆動源の出力トルクを検出もしくは推定する駆動源トルク検出手段と、前記駆動源トルク検出手段により前記出力トルクの変動が検出もしくは推定された場合に、前記ロール制御手段を制御して前記車体のロールを抑制するロール抑制手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ロール抑制手段が、前記出力トルクの変動量が大きいほど前記ロールの抑制量を増大させる手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0012】
さらに、請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記駆動源トルク検出手段が、前記駆動源の始動および停止を検出する手段を含み、前記ロール抑制手段が、前記駆動源トルク検出手段により前記駆動源の始動もしくは停止が検出された際の前記出力トルクの変動量に基づいて、前記ロール制御手段を制御して前記ロールを抑制する手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0013】
またさらに、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記サスペンション機構が、前記車両の側面視の瞬間回転中心が前記前輪と後輪との間に位置するように構成されていて、前記ロール制御手段が、前記制駆動トルク制御手段により付与する前記前輪と後輪との駆動トルクもしくは制動トルクに差を設けることによって前記ロール状態を制御する手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0014】
そして、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記制駆動トルク制御手段が、前記前後輪にトルクをそれぞれ独立して付与する電動機の回転を制御することにより前記駆動トルクおよび制動トルクを制御する手段を含み、前記車両は、前記電動機に供給するための電力を発電する発電機を備え、前記駆動源は、前記発電機を駆動するエンジンであることを特徴とする制御装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、前後輪に付与される駆動トルクもしくは制動トルクをそれぞれ独立して制御し、サスペンション機構を介して車体に上下方向の力を作用させることによって、車体のロール状態が制御される。そして、出力軸が車両の前後方向と平行もしくはほぼ平行に配置されて車体に固定されたいわゆる縦置きの駆動源の出力トルクの変動が検出もしくは推定されると、各前後輪に付与される駆動トルクおよび制動トルクが制御されて、出力トルクの変動により車体に生じるロールモーメントを打ち消す方向のロールモーメント(アンチロールモーメント)が車体に作用させられる。そのため、縦置きの駆動源が搭載された車両において、駆動源の出力トルク変動が生じた場合であっても、その出力トルク変動により生じる車体のロールを抑制することができる。
【0016】
また、請求項2の発明によれば、駆動源の出力トルクの変動が検出もしくは推定されると、駆動源の出力トルクの変動量が大きいほど、その出力トルクの変動により生じるロールの抑制量が増大される。すなわち、駆動源の出力トルクの変動量が大きいほど、大きなアンチロールモーメントが車体に作用させられる。そのため、縦置きの駆動源の出力トルク変動が生じた場合であっても、その出力トルク変動により生じる車体のロールを適切に抑制することができる。
【0017】
さらに、請求項3の発明によれば、駆動源の始動もしくは停止が検出され、その際に生じる駆動源の出力トルクの変動が検出もしくは推定されると、その場合の出力トルクの変動量に基づいて、各前後輪に付与される駆動トルクおよび制動トルクが制御され、出力トルクの変動により車体に作用するロールモーメントを打ち消すアンチロールモーメントが車体に作用させられる。そのため、縦置きの駆動源が始動もしくは停止する際の出力トルク変動により生じる車体のロールを抑制することができる。
【0018】
またさらに、請求項4の発明によれば、前後輪をそれぞれ車体に支持するサスペンション機構が、その車両側面視の瞬間回転中心が常に車両の前後方向における前輪と後輪との間に位置するように構成され、前輪と後輪とに付与される駆動トルクもしくは制動トルクに差を設けること、すなわち、前輪と後輪とに付与されるトルクの大きさあるいは方向に差を設けること、言い換えると、前輪と後輪とに付与されるトルク(駆動トルクもしくは制動トルク)を互いに相違させることによって、車体に上下方向の力が作用させられる。そのため、前輪に付与する駆動トルクもしくは制動トルクと、後輪に付与する駆動トルクもしくは制動トルクとを、それらの間に少なくとも差を設けて、言い換えるとそれらを互いに相違させて任意の大きさに制御することによって、車体に作用させる上下方向の力を任意に設定することができ、ロール制御を容易に実行することができる。
【0019】
そして、請求項5の発明によれば、各車輪に組み込まれた電動機の回転をそれぞれ独立して制御することによって、前後輪にそれぞれ付与されるトルクが制御される。また、それらの電動機に供給するための電力を発電する発電機が、出力軸の軸線方向が車両の前後方向と平行もしくはほぼ平行に設置されたいわゆる縦置きエンジンにより駆動される。そのため、各電動機の回転を独立して制御することによりロール制御を容易に実行することができるとともに、発電機を駆動する縦置きエンジンの出力トルク変動により生じる車体のロールを容易に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
つぎに、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。先ず、この発明を適用した車両の構成および制御系統を図2に示す。この発明を実施するための代表的な形態としては、少なくとも前輪1,2と後輪3,4とを独立して車体Boに支持するサスペンション5と、各車輪1,2,3,4へ付与する駆動トルクおよび制動トルクをそれぞれ独立して出力するモータ6、およびモータ6に電力を供給するためのインバータ7およびバッテリ8、およびそれらを制御する電子制御装置9を主として構成される制駆動トルク制御手段と、モータ6の回転を制御して各車輪1,2,3,4に駆動トルクもしくは制動トルクを付与して車体Boのロール状態を制御するロール制御手段と、車体Boに出力軸10aの軸線方向が車両Veの前後方向と平行もしくはほぼ平行に設置された駆動源10とを備えている。そして、駆動源10の出力トルクを検出もしくは推定する駆動源トルク検出手段と、その駆動源トルク検出手段により出力トルクの変動が検出もしくは推定された場合に、モータ6の回転を制御して駆動源10の出力トルク変動により車体Boに生じるロールを抑制するロール抑制手段とを備えていることを特徴としている。
【0021】
具体的には、この図2に示す車両Veは、左右の前輪1,2および左右の後輪3,4を有していて、各車輪1,2,3,4は、サスペンション5を介して車両Veの車体Boに支持されている。そして、各車輪1,2,3,4のホイール内部には、それぞれモータ6が組み込まれていている。すなわち、それらの車輪1,2,3,4の各モータ6は、いわゆるインホイールモータであり、各モータ6の回転をそれぞれ独立して制御することにより、各車輪1,2,3,4に付与される駆動トルクおよび制動トルクをそれぞれ独立して制御することができる。これらの各モータ6は、例えば交流同期電動機であり、インバータ7を介してバッテリ8に接続されている。そしてインバータ7は、各モータ6の回転を制御する電子制御装置(ECU)9に接続されている。
【0022】
各モータ6の駆動時には、バッテリ8の直流電力がインバータ7によって交流電力に変換され、その交流電力が各モータ6に供給されることにより各モータ6が力行されて、車輪に駆動トルクが付与される。また、各モータ6は車輪の回転エネルギを利用して回生制御することも可能である。すなわち、各モータ6の回生・発電時には、車輪の回転(運動)エネルギが各モータ6によって電気エネルギに変換され、その際に生じる電力がインバータ7を介してバッテリ8に充電される。このとき、車輪には回生・発電に基づく制動トルクが付与されることになる。
【0023】
このように、各車輪1,2,3,4のモータ6、インバータ7、バッテリ8、ECU9等によって、各車輪1,2,3,4の駆動トルクおよび制動トルクをそれぞれ独立して制御することができる。したがって、これらの各モータ6、インバータ7、バッテリ8、ECU9等が、この発明における制駆動トルク制御手段として機能している。
【0024】
また、車両Veには、上記の各モータ6へ供給するため、もしくは各モータ6へ供給する電力をバッテリ8で充電するための電力を発生させるため、駆動源10とその駆動源10が出力する駆動力により駆動されるジェネレータ11とが備えられている。
【0025】
駆動源10としては、内燃機関や電動機を用いることができ、ここでは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいは天然ガスエンジンなどのエンジン10が用いられた場合について説明する。エンジン10は、クランク軸(図示せず)と一体の出力軸10aの軸線方向が、車両Veの前後方向と平行もしくはほぼ平行な向きで車体Boに設置されていて、出力軸10aがジェネレータ11の駆動軸(図示せず)に連結されている。
【0026】
「出力軸10aの軸線方向が車両Veの前後方向と平行もしくはほぼ平行な向き」とは、「出力軸10aの軸線方向が車両Veの前後方向に対して所定の角度を持っている向き」のことであり、言い換えると「エンジン10が駆動されて出力軸10aからトルクが出力された際に、そのエンジン10の出力トルクの反力モーメントが車体Boに作用する向き」のことである。そのような「向き」でエンジン10が車体Boに設置された場合、エンジン10が駆動されて出力軸10aからトルクが出力された際に、そのエンジン10の出力トルクの反力モーメントの車両Veのロール軸(すなわち車両Veのロールセンタを通り前後方向に平行な軸線)回りの成分が車体Boに作用し、その反力モーメントのロール軸回りの成分によって車体Boにロールが発生するのである。
【0027】
ジェネレータ11は、例えば交流発電機であって、エンジン10の駆動力により駆動されて交流電力を発電することができる。そしてその発電電力が、インバータ7を介してバッテリ8に蓄電することができるように、もしくは各モータ6に供給することができるようにインバータ7に接続されている。
【0028】
また、バッテリ8の充電量(SOC)を検出することができるようにバッテリ8とECU9とが接続されていて、バッテリ8のSOCの残量に応じてエンジン10の駆動すなわち始動・停止が制御されるように構成されている。例えば、バッテリ8のSOCが所定値以下になった場合に、エンジン10が始動されてジェネレータ11で発電した電力によりバッテリ8が充電される。そしてバッテリ8のSOCが各モータ6を制御するのに充分な所定値以上になると、エンジン10の駆動が停止されてジェネレータ11によるバッテリ8の充電が終了される。なお、上記のバッテリ8のSOC以外に、例えば各モータ6の消費電力などから推定される車両Veの走行負荷状況に基づいて、エンジン10の始動・停止を制御することもできる。このように、エンジン10とジェネレータ11とが備えられていることによって、バッテリ8の容量、性能等を向上させることなく、車両Veの高出力化を図り、連続走行距離(時間)を延長することができる。
【0029】
モータ6が組み込まれた各車輪1,2,3,4をそれぞれ車体Boに支持するサスペンション5は、例えば、ショックアブソーバを内蔵したストラットおよびコイルスプリングおよびサスペンションアームなどから構成されるストラット形サスペンションや、コイルスプリングおよびショックアブソーバおよび上下のサスペンションアームなどから構成されるウィッシュボーン形サスペンションなどの公知のサスペンション機構であって、それら各種サスペンション機構を適宜に選択して採用することができる。
【0030】
また、各車輪1,2,3,4のサスペンション5は、いずれも、車両Veの側面視の各瞬間回転中心が、車両Veの前後方向における前輪1,2と後輪3,4との間に位置するように構成されている。具体的には、図3に示すように、各車輪1,2,3,4を車体Boに支持する各サスペンション5の車両Veの側面視における各瞬間回転中心C1,C2,C3,C4が、常に車両Veの前後方向における前輪1,2と後輪3,4との間に位置するように構成されている。
【0031】
このように構成された車両Veにおいては、図3の(a)に示すように、車両Veの進行方向に対して、車両Veを減速もしくは制動する方向の力F2tを前輪2の接地点2aに作用させることのできるトルク(この場合は制動トルク)が前輪2に付与されると、前輪2のサスペンション5の瞬間回転中心C2には、鉛直方向上向き(図3での上方向)の分力F2svを有する力F2sが作用する。言い換えると、車体Boには、車輪2のサスペンション5を介して車体Boを持ち上げる方向、すなわちロール時の車体Boの沈み込みを抑える方向(図3での上方向)の力F2svが作用する。同様に、車両Veの進行方向に対して、車両Veを加速する方向の力F4tを後輪4の接地点4aに作用させることのできるトルク(この場合は駆動トルク)が後輪4に付与されると、後輪4のサスペンション5の瞬間回転中心C4には、鉛直方向上向きの分力F4svを有する力F4sが作用する。言い換えると、車体Boには、車輪4のサスペンション5を介して車体Boを持ち上げる方向、すなわちロール時の車体Boの沈み込みを抑える方向の力F4svが作用する。
【0032】
一方、図3の(b)に示すように、車両Veの進行方向に対して、車両Veを加速する方向の力F1tを前輪1の接地点1aに作用させることのできるトルク(この場合は駆動トルク)が前輪1に付与されると、前輪1のサスペンション5の瞬間回転中心C1には、鉛直方向下向き(図3での下方向)の分力F1svを有する力F1sが作用する。言い換えると、車体Boには、車輪1のサスペンション5を介して車体Boを押し下げる方向、すなわちロール時の車体Boの浮き上がりを抑える方向(図3での下方向)の力F1svが作用する。同様に、車両Veの進行方向に対して、車両Veを減速もしくは制動する方向の力F3tを後輪3の接地点3aに作用させることのできるトルク(この場合は制動トルク)が後輪3に付与されると、後輪3のサスペンション5の瞬間回転中心C3には、鉛直方向下向きの分力F3svを有する力F3sが作用する。言い換えると、車体Boには、車輪3のサスペンション5を介して車体Boを押し下げる方向、すなわちロール時の車体Boの浮き上がりを抑える方向の力F3svが作用する。
【0033】
したがって、上記のように構成された車両Veの車体Boにロールが生じた際に、車体Boが沈み込む側の前後輪に、上記の図3の(a)に示す状態の駆動トルクもしくは制動トルクを作用させることによって、すなわち、図3の(a)に示す側がロール時に車体Boが沈み込む側である場合に、前輪2のサスペンション5の瞬間回転中心C2に力F2sが作用するように前輪2のインホイールモータを制御すること、もしくは後輪4のサスペンション5の瞬間回転中心C4に力F4sが作用するように後輪4のインホイールモータを制御すること、もしくは前輪2のサスペンション5の瞬間回転中心C2に力F2sが作用し、後輪4のサスペンション5の瞬間回転中心C4に力F4sが作用するように前後輪2,4のインホイールモータをそれぞれ制御すること、言い換えると、後輪4に付与されるトルクから前輪2に付与されるトルクを差し引いた偏差が大きくなるように前後輪2,4のインホイールモータをそれぞれ制御することによって、車体Boに車体Boを持ち上げる方向、すなわちロール時の車体Boの沈み込みを抑える方向の力Fu(力F2svもしくは力F4sv、あるいは力F2svと力F4svとの合力)を生じさせることができる。
【0034】
一方、車体Boが浮き上がる側の前後輪に、上記の図3の(b)に示す状態の駆動トルクもしくは制動トルクを作用させることによって、すなわち、図3の(b)に示す側がロール時に車体Boが沈み込む側である場合に、前輪1のサスペンション5の瞬間回転中心C1に力F1sが作用するように前輪1のインホイールモータを制御すること、もしくは後輪3のサスペンション5の瞬間回転中心C3に力F3sが作用するように後輪3のインホイールモータを制御すること、もしくは前輪1のサスペンション5の瞬間回転中心C1に力F1sが作用し、後輪3のサスペンション5の瞬間回転中心C3に力F3sが作用するように前後輪1,3のインホイールモータをそれぞれ制御すること、言い換えると、後輪3に付与されるトルクから前輪1に付与されるトルクを差し引いた偏差が小さくなるように前後輪1,3のインホイールモータをそれぞれ制御することによって、車体Boに車体Boを押し下げる方向、すなわちロール時の車体Boの浮き上がりを抑える方向の力Fd(力F1svもしくは力F3sv、あるいは力F1svと力F3svとの合力)を生じさせることができる。
【0035】
このように、各車輪1,2,3,4に、図3に示す状態の駆動トルクもしくは制動トルクが付与されるように各モータ6の回転を制御することによって、車体Boに車両Veの上下方向(図3での上下方向)の力、すなわち車体Boを持ち上げる方向、すなわち車体Boがロールした際の車体Boの沈み込みを抑える方向(図3での上方向)の力Fu、もしくは、車体Boを押し下げる方向、すなわち車体Boがロールした際の車体Boの浮き上がりを抑える方向(図3での下方向)の力Fdを作用させることができる。
【0036】
図2に戻り、車体Boの各車輪1,2,3,4に対応する所定の位置に、各サスペンション5のストローク量を検出するストロークセンサ12がそれぞれ設けられている。また、車体Boに生じる横方向の加速度を検出する横加速度センサ13が車体Boの所定の位置に設けられている。それらの各ストロークセンサ12および横加速度センサ13は、ECU9に接続されていて、そしてそれらの検出結果を基に、ロール量あるいはロール角などの車体Boのロール状態を検出することができるように構成されている。なお、上記のストロークセンサ12に代えて、例えば、車高センサ(図示せず)を車体Boの各車輪1,2,3,4に対応する所定の位置に、あるいは上下加速度センサ(図示せず)を車体Boの各車輪1,2,3,4に対応する所定の位置に設けて、各サスペンション5のストローク量を検出もしくは算出することによって、車体Boのロール状態を検出することも可能である。
【0037】
上記のように、ストロークセンサ12および横加速度センサ13およびECU9等によって検出される車体Boのロールに対して、前述の各サスペンション5が、その車両Veの側面視の各瞬間回転中心C1,C2,C3,C4が、それぞれ前輪1,2と後輪3,4との間に位置するように構成されていて、各モータ6、インバータ7、バッテリ8、ECU9等により構成される制駆動トルク制御手段を制御して、車体Boの沈み込みを抑える方向の力Fu、もしくは、車体Boの浮き上がりを抑える方向の力Fdを作用させることによって、車体Boのロール状態を、例えば抑制するように、適宜に制御することができる。したがって、これら各サスペンション5、各モータ6、インバータ7、バッテリ8、ECU9等は、この発明におけるロール制御手段として機能している。
【0038】
また、車体Boの各車輪1,2,3,4に対応する所定の位置に、各車輪1,2,3,4の回転速度を検出する車輪速センサ14がそれぞれ設けられている。それら各車輪速センサ14は、ECU9に接続されていて、各車輪1,2,3,4の回転速度を検出するとともに、それらの検出結果を基に、車体Boの前後方向における速度(車速)、および車体Boの前後方向における加速度(前後加速度)、あるいは各車輪1,2,3,4のスリップ状態やロック状態などの車両Veの走行状態を検出もしくは算出することができるように構成されている。なお、上記の車輪速センサ14に代えて、例えば、各モータ6の回転を制御する制御信号、あるいは各モータ6に供給される電力の電流値などを検出することによって、車速および車体Boの前後加速度等を検出することも可能である。さらに、車体Boの前後加速度は、前後加速度センサ(図示せず)を設けることによって検出することも可能である。
【0039】
そして、ブレーキペダル(図示せず)の踏み込み量(踏み込み角度)あるいは踏み込み圧力を検出するブレーキペダルセンサ15、また、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量(踏み込み角度)あるいは踏み込み圧力を検出するアクセルペダルセンサ16、また、ステアリングホイールの操舵方向および操舵角量を検出する舵角センサ17がそれぞれ設けられている。これらのブレーキペダルセンサ15およびアクセルペダルセンサ16および舵角センサ17は、それぞれECU9に接続されていて、それらの検出結果を基に、車両Veの走行状態を検出もしくは算出するとともに、それらの検出結果に基づいて、各モータ6、あるいはパワーステアリング用の油圧ポンプ(図示せず)もしくは電動モータ(図示せず)などが適宜に制御されるように構成されている。
【0040】
前述したように、この発明は、例えばジェネレータ11を駆動するエンジン10などの駆動源10が、その出力軸の軸線方向が車両Veの前後方向すなわちロール軸方向と平行もしくはほぼ平行となるように車体Boに設置された場合に、駆動源10がトルクを出力する際、特に駆動源10が出力するトルクが変動する際に、そのトルクの反力を受ける車体Boに生じるロールを抑制することを目的としていて、そのために、この発明の制御装置は以下の制御を実行するように構成されている。
【0041】
図1は、この発明の制御装置による制御例を説明するためのフローチャートであって、このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図1において、この制御の開始時点においてエンジン10が停止状態であった場合、先ず、エンジン10が始動されるか否かが判断される(ステップS1)。前述したように、エンジン10はジェネレータ11を駆動するための駆動源であり、例えばバッテリ8のSOCが所定の値以下に低下した場合、あるいは車両Veの走行負荷が所定の値以上に増大した場合に、バッテリ8を充電するための電力、あるいは各モータ6に供給するための電力をジェネレータ11で発電するために、エンジン10がECU9により自動制御されて始動される。したがって、例えばECU9の制御信号を検出することによって、エンジン10の始動の判断を行うことができる。
【0042】
エンジン10が未だ始動されないことによって、このステップS1で否定的に判断された場合は、再度ステップS1の制御が実行される。すなわち、エンジン10の始動が検出されるまで、ステップS1の制御が繰り返し実行される。そして、エンジン10の始動が検出されたことによって、ステップS1で肯定的に判断された場合には、ステップS2へ進み、エンジン10が始動される際の出力トルクの変動量が検出もしくは推定される。
【0043】
この場合におけるエンジン10の出力トルクの変動量の検出もしくは推定は、例えば図示しないトルクセンサなどにより出力軸10aのトルクを検出したり、あるいはジェネレータ11の出力電流を検出することによって出力トルクの変動量を推定することができる。また、エンジン10が始動される際の出力トルクの変動量を予め経験的・実験的に求めておき、プリセット値として設定しておくこともできる。
【0044】
続いて、上記のステップS2で求められたエンジン10が始動される際の出力トルクの変動量に基づいて、その出力トルクの変動により車体Boに発生するロールを抑制するためのアンチロールモーメントを車体Boに作用させるために、各車輪1,2,3,4に付与されるモータトルクTが算出される(ステップS3)。
【0045】
この場合のモータトルクTの算出方法について説明する。各車輪1,2,3,4のタイヤ半径をr、左右輪のトレッドをt、前述の図4に示すように前輪1,2の各サスペンション5の瞬間回転中心C1,C2と前輪1,2の接地点1a,2aとを結ぶ直線の方向と水平方向との成す角度をθf、後輪3,4の各サスペンション5の瞬間回転中心C3,C4と後輪3,4の接地点3a,4aとを結ぶ直線の方向と水平方向との成す角度をθrとすると、各モータ6の回転、すなわち各モータの出力するモータトルクTを制御して車体Boに作用させることのできるロールモーメントMrmは、
Mrm=(T/r)×{tan(θf)+tan(θr)}×t ・・・・・(1)として表すことができ、この(1)式より、モータトルクTは、
T=(r/t)×[1/{tan(θf)+tan(θr)}]×Mrm
≒(r/t)×{1/(θf+θr)}×Mrm ・・・・・(2)として求められる。
【0046】
したがって、前述のステップS2で求められたエンジン10が始動される際の出力トルクに基づいて決まるエンジン10の出力トルクの変動によって車体Boに生じるロールモーメントMreを相殺するようにロールモーメントMrmが設定され、すなわちロールモーメントMrmがロールモーメントMreと大きさが等しく向きが反対のモーメント、すなわちアンチロールモーメントとして設定される。言い換えると、エンジン10が始動される際の出力トルクの変動量に応じてロールモーメントMrmが設定される。具体的には、エンジン10が始動される際の出力トルクの変動量が大きいほどロールモーメントMrmが大きくなるように設定される。さらに言い換えると、エンジン10が始動される際の出力トルクの変動量が大きいほど、アンチロールモーメントすなわちロールの抑制量が増大されるように設定されるロールモーメントMrmが設定される。
【0047】
そして、そのロールモーメントMrmに基づいてモータトルクTが算出され、モータトルクTを出力するように各モータ6が制御されて、そのモータトルクTが各車輪1,2,3,4に付与される。その結果、エンジン10の出力トルクの変動により生じる車体Boのロールを打ち消す、もしくは抑制するアンチロールモーメント(すなわちモーメントMrm)が車体Boに作用し、車体Boのロールが解消もしくは抑制される。
【0048】
なお、この場合に各車輪1,2,3,4に付与されるモータトルクT、すなわち各モータ6で出力されるモータトルクTは、ロールモーメントMmeにより生じるロールの向きに応じて、前述の図3で説明したように駆動トルクと制動トルクとが適宜に振り分けられて、すなわち前輪1と後輪3との間、および前輪2と後輪4との間の駆動トルクもしくは制動トルクに差が設けられて、その方向が設定される。
【0049】
モータトルクTによって、エンジン10が始動される際の出力トルクの変動により生じる車体Boのロールが解消もしくは抑制されると、エンジン10が停止されるか否かが判断される(ステップS4)。前述したように、エンジン10は、エンジン10が駆動されてジェネレータ11で発電が行われることによって、例えばバッテリ8のSOCが所定の値以上に増大した場合、あるいは車両Veの走行負荷が所定の値以下に低下した場合に、バッテリ8を充電するための電力、あるいは各モータ6に供給するための電力をジェネレータ11で発電する必要がなくなり、エンジン10がECU9により自動制御されて停止される。したがって、エンジン10の始動の検出の場合と同様に、ECU9の制御信号を検出することによって、エンジン10の始動の判断を行うことができる。
【0050】
エンジン10が未だ停止されないことによって、このステップS4で否定的に判断された場合は、再度ステップS4の制御が実行される。すなわち、エンジン10の停止が検出されるまで、ステップS4の制御が繰り返し実行される。なお、前述のステップS1において、既にエンジン10が始動されて駆動状態であった場合には、ステップS1ないしS3の制御を飛ばして、このステップS4の制御が同様に実行される。
【0051】
そして、エンジン10の停止が検出されたことによって、ステップS4で肯定的に判断された場合には、ステップS5へ進み、エンジン10が停止される際の出力トルクの変動量が検出もしくは推定される。この場合のエンジン10の出力トルクの変動量の検出もしくは推定は、前述のステップS1,S2におけるエンジン10の始動が検出された場合と同様に、例えば図示しないトルクセンサなどにより出力軸10aのトルクを検出したり、あるいはジェネレータ11の出力電流を検出することによって出力トルクの変動量を推定すること、あるいはエンジン10が始動される際の出力トルクの変動量を予め経験的・実験的に求めてプリセット値として設定しておくことができる。
【0052】
続いて、上記のステップS5で求められたエンジン10が停止される際の出力トルクの変動量に基づいて、その出力トルクの変動により車体Boに発生するロールを抑制するためのアンチロールモーメントを車体Boに作用させるために、各車輪1,2,3,4に付与されるモータトルクTが算出される(ステップS6)。
【0053】
この場合のモータトルクTの算出も、前述のステップS3におけるエンジン10の始動が検出された場合と同様に行うことができる。すなわち(1),(2)式により、モータトルクTが求められる。そして、そのモータトルクTを出力するように各モータ6が制御され、モータトルクTが各車輪1,2,3,4に付与されることによって、エンジン10が停止される際の出力トルクの変動により生じる車体Boのロールを打ち消す、もしくは抑制するアンチロールモーメント(すなわちモーメントMrm)が車体Boに作用し、車体Boのロールが解消もしくは抑制される。
【0054】
この場合に各車輪1,2,3,4に付与されるモータトルクT、すなわち各モータ6で出力されるモータトルクTも、前述のエンジン10の始動が検出された場合と同様に、ロールモーメントMmeにより生じるロールの向きに応じて、駆動トルクと制動トルクとが適宜に振り分けられて、すなわち前輪1と後輪3との間、および前輪2と後輪4との間の駆動トルクもしくは制動トルクに差が設けられて、その方向が設定される。
【0055】
そして、モータトルクTによって、エンジン10が停止される際の出力トルクの変動により生じる車体Boのロールが解消もしくは抑制されると、その後、このルーチンを一旦終了する。
【0056】
なお、この発明の制御装置による他の制御例として、上記の図1に示したフローチャートにおけるステップS1およびステップS4ないしS6を省いたルーチン、すなわちステップS2,S3によって、エンジン10の出力トルクが変動した際の、ロールの抑制制御を実行することができる。すなわち、エンジン10が始動もしくは停止される場合以外の要因によって、エンジン10の出力トルクに変動が生じ、そのトルク変動によって車体Boのロールが発生した場合においても、ステップS2において、その場合の出力トルクの変動量が求められ、ステップS3において、その出力トルクの変動量に基づいて、例えば出力トルクの変動量が大きいほど大きなアンチロールモーメントが車体Boに作用するように、モータトルクTが算出され、そのモータトルクTを出力するように各モータ6が制御されて、モータトルクTが各車輪1,2,3,4に付与される。その結果、エンジン10の出力トルクの変動量の大きさに応じて、適切な大きさのアンチロールモーメント(すなわちモーメントMrm)を車体Boに作用させることができ、車体Boのロールを適切に解消もしくは抑制することができる。
【0057】
以上のように、この発明に係る制御装置によれば、前後輪1,2,3,4に付与される駆動トルクもしくは制動トルクをそれぞれ独立して制御し、サスペンション5を介して車体Boに上下方向の力を作用させることによって、車体Boのロール状態が制御される。そして、出力軸10aが車両Veの前後方向と平行もしくはほぼ平行に配置され車体Boに固定されたいわゆる縦置きエンジン10の出力トルクの変動が検出もしくは推定されると、各前後輪1,2,3,4に付与される駆動トルクおよび制動トルクが制御されて、出力トルクの変動により車体Boに生じるロールモーメントを打ち消す方向のロールモーメント(アンチロールモーメント)が車体Boに作用させられる。そのため、縦置きエンジン10が搭載された車両Veにおいて、エンジン10の出力トルク変動が生じた場合であっても、その出力トルク変動により生じる車体Boのロールを抑制することができる。
【0058】
また、エンジン10の始動もしくは停止が検出され、その際に生じるエンジン10の出力トルクの変動が検出もしくは推定されると、その場合の出力トルクの変動量に基づいて、例えば出力トルクの変動量が大きいほど大きなアンチロールモーメントが作用するように、各車輪1,2,3,4に付与される駆動トルクおよび制動トルクが制御される。そのため、縦置きエンジン10が始動もしくは停止する際の出力トルク変動により生じる車体Boのロールを適切に抑制することができる。
【0059】
ここで、上述した具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、上述したステップS1,S2,S4,S5の機能的手段が、この発明の駆動源トルク検出手段に相当する。そして、ステップS3,S6の機能的手段が、この発明のロール抑制手段に相当する。
【0060】
なお、この発明は、上記の具体例に限定されないのであって、具体例では、各車輪の駆動トルクおよび制動トルクを独立して制御する手段として、各車輪の内部に配置されたモータ、すなわち各車輪のホイール内部に組み込まれたいわゆるインホイールモータの回転を制御することにより前記駆動トルクおよび制動トルクを出力する例を示しているが、この具体例以外に、例えば、各車輪に対応させて車体に設置されたモータの出力をドライブシャフト等を介して各車輪にそれぞれ伝達し、各車輪の駆動トルクを独立して制御する機構であってもよい。また、例えば、モータや内燃機関などの動力源が出力する動力を各車輪毎に可変分配できるような機構(例えばトルクスプリット機構など)を採用することもできる。そして、各車輪の制動トルクを独立して制御する手段として、各車輪毎に設けられた制動装置を乗員による制動操作とは別に自動制御できる機構を採用することも可能である。
【0061】
また、上記の具体例では、「車体に出力軸の軸線方向が平行もしくはほぼ平行に設置された駆動源」として、ジェネレータを駆動するエンジンの例を示しているが、そのような発電用のエンジン以外に、例えばワイパー等の補機類を駆動するモータなどで、「車体に出力軸の軸線方向が平行もしくはほぼ平行に設置された駆動源」、すなわち「出力軸の軸線方向が車両の前後方向に対して所定の角度を持っている向きに設置された駆動源」、言い換えると「出力軸からトルクが出力された際に、その出力トルクの反力モーメントが車体に作用する向きに設置された駆動源」、さらに言い換えると「出力軸からトルクが出力された際に、その出力トルクの反力モーメントの車両のロール軸回りの成分が車体に作用し、その反力モーメントのロール軸回りの成分によって車体にロールが発生する向きに設置された駆動源」をこの発明の対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の制御装置による制御例を説明するためのフローチャートである。
【図2】この発明の制御装置を適用可能な車両の構成および制御系統を模式的に示す概念図である。
【図3】この発明の制御装置を適用可能な構成の車両におけるサスペンション機構の車両側面視の各瞬間回転中心、およびロール制御の実行時に車両各部に作用する力および挙動を説明するための模式図である。
【図4】縦置きの駆動源がトルクを出力する際に、その出力トルクの反力によって生じるロールモーメントと車体ロール状態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1,2…前輪、 3,4…後輪、 5…サスペンション、 6…モータ(インホイールモータ)、 7…インバータ、 8…バッテリ、 9…電子制御装置(ECU)、 10…駆動源(エンジン)、 11…発電機(ジェネレータ)、 12…ストロークセンサ、 13…横加速度センサ、 14…車輪速センサ、 15…ブレーキペダルセンサ、 16…アクセルペダルセンサ、 17…舵角センサ、 Ve…車両、 Bo…車体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前後輪を独立して車体に支持するサスペンション機構と、前記前後輪の駆動トルクおよび制動トルクをそれぞれ独立して制御する制駆動トルク制御手段と、前記制駆動トルク制御手段により前記前後輪に駆動トルクもしくは制動トルクを付与して前記車体のロール状態を制御するロール制御手段と、前記車体に出力軸の軸線方向が車両の前後方向と平行もしくはほぼ平行に設置された駆動源とを備えた車両の制御装置において、
前記駆動源の出力トルクを検出もしくは推定する駆動源トルク検出手段と、
前記駆動源トルク検出手段により前記出力トルクの変動が検出もしくは推定された場合に、前記ロール制御手段を制御して前記車体のロールを抑制するロール抑制手段と
を備えていることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記ロール抑制手段は、前記駆動源トルク検出手段により検出もしくは推定された前記出力トルクの変動量が大きいほど前記ロールの抑制量を増大させる手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記駆動源トルク検出手段は、前記駆動源の始動および停止を検出する手段を含み、
前記ロール抑制手段は、前記駆動源トルク検出手段により前記駆動源の始動もしくは停止が検出された際の前記出力トルクの変動量に基づいて、前記ロール制御手段を制御して前記ロールを抑制する手段を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記サスペンション機構は、前記車両の側面視の瞬間回転中心が前記前輪と後輪との間に位置するように構成されていて、
前記ロール制御手段は、前記制駆動トルク制御手段により付与する前記前輪と後輪との駆動トルクもしくは制動トルクに差を設けることによって前記ロール状態を制御する手段を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記制駆動トルク制御手段は、前記前後輪にトルクをそれぞれ独立して付与する電動機の回転を制御することにより前記駆動トルクおよび制動トルクを制御する手段を含み、
前記車両は、前記電動機に供給するための電力を発電する発電機を備え、
前記駆動源は、前記発電機を駆動するエンジンであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−153127(P2007−153127A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351083(P2005−351083)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】