説明

車両の赤外線撮影表示装置及び赤外線撮影表示方法

【課題】複雑で処理負担の大きな画像処理等を施すことなく安価に、ドライバが車外物体に気づき易い注意喚起効果の高い赤外線撮影画像の表示が行えるようにし、その際、対向車のドライバが幻惑されたり、パッシングと誤認されたりすることがなく、表示範囲が自車前方に限られることもないようにする。
【解決手段】赤外線投光器2a、2bから車外に赤外光を投光し、撮像装置3で撮影した車外の赤外線撮影画像をHUD6に表示する際に、赤外線撮影画像の車外物体の画像部分を物体検出手段52により検出し、この検出に基き、投光調整手段53により赤外線投光器2a、2bの投光状態を調整して赤外線撮影画像の明るさを変化し、安価にドライバが車外物体に気づき易い注意喚起効果の高い赤外線撮影画像の表示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夜間等のドライバの視覚補助等を目的として車外の赤外線撮影画像を表示する車両の赤外線撮影表示装置及び赤外線撮影表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、夜間等のドライバの視覚補助等を図るため、ナイトビュー等と呼ばれる赤外線撮像表示装置を搭載した車両においては、自車前方に近赤外の赤外光を投光し、その反射光の赤外線撮影画像をヘッドアップディスプレイ(HUD)等の自車の表示手段に表示することが行われている。
【0003】
その際、HUD等の表示手段に表示される車外物体の歩行者や障害物等は動きが遅いか、静止しているため、赤外線撮影画像をそのまま表示すると、表示画面上での変化が少なく、ドライバが気づかなかったり、気づくのに時間がかかったりするおそれがある。また、仮に警報が鳴っても左右どちらに歩行者が居るか判断するのに時間がかかる。
【0004】
そのため、赤外線撮影画像に強調表示、着色表示の画像処理を施し、歩行者、障害物等の車外物体の画像部分の輝度を高くしたり、表示色を変更したりして車外物体を強調表示し、注意喚起効果を高めることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、前記の車外物体に対するドライバの注意を喚起する方法として、従来、測距レーダ等の障害物センサの検出結果(測距結果)と前記の赤外線撮影画像の画像処理結果とにより、自車前方の歩行者を検出し、この検出に基き、自車の前照灯の光軸が歩行者の方向を向くように調整したり、前照灯をロービームからハイビ−ムに切り換えたりして、歩行者及びドライバに注意を喚起することも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開平2001−76298号公報(段落[0001]、[0040]−[0041]、図1、図6)
【特許文献2】特開平2001−91618号公報(段落[0004]、[0018]、[0047]、図1、図6、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1記載の従来提案の場合、赤外線撮影画像をHUD等に表示する際、赤外線撮影画像の歩行者、障害物等の車外物体の画像部分を特定し、その画像部分を強調したり着色したりする複雑で処理負担の大きな画像処理等が必要であり、画像処理能力の高い高価な装置を要し、ドライバが車外物体に気づき易く注意喚起効果の高い表示を安価に行うことができない問題がある。
【0008】
また、赤外線撮影画像をHUD等に表示する際に、前記の複雑で処理負担の大きな画像処理等を行なう代わりに、前記特許文献2記載のように前照灯の光軸を歩行者の方向を向くように調整したり、ハイビ−ムに切り換えたりして自車前方の車外物体を照らす光量を増加し、HUD等の表示手段の車外物体の画像部分あるいは画面全体を明るくして自車のドライバが気づき易くすることが考えられるが、この場合、対向車のドライバが極めて幻惑され易く、いわゆるパッシングと誤認されるおそれもあり、また、前照灯が必要で表示範囲が自車前方に限られ、自車の後方や側方の表示には適用できない問題もある。
【0009】
本発明は、車外の赤外線撮影画像の車外物体の画像部分を強調したり着色したりする複雑で処理負担の大きな画像処理等を施すことなく安価に、ドライバが車外物体に気づき易い注意喚起効果の高い赤外線撮影画像の表示が行えるようにし、その際、対向車のドライバが幻惑されたり、パッシングと誤認されたりすることがなく、表示範囲が自車前方に限られることもないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明の車両の赤外線撮影表示装置は、車外に赤外光を投光する赤外線光源手段と、前記車外を撮影する撮像手段と、前記撮像手段の赤外線撮影画像を表示する表示手段と、前記赤外線撮影画像の歩行者、障害物等の車外物体の画像部分を検出する物体検出手段と、前記物体検出手段の検出に基いて前記赤外線光源手段の投光状態を調整する投光調整手段とを備えたことを特徴としている(請求項1)。
【0011】
また、本発明の車両の赤外線撮影表示装置は、前記の赤外線光源手段が複数個の赤外線投光器からなり、投光調整手段により、赤外線撮影画像のほぼ外物体の画像部分の赤外光照射量が他の画像部分の赤外光照射量より相対的に増加した状態になるように、前記各赤外線投光器の投光状態が調整されることも特徴としている(請求項2)。
【0012】
さらに、本発明の車両の赤外線撮影表示装置は、前記の物体検出手段が、赤外線撮影画像の水平方向、垂直方向の少なくともいずれか一方の画像輝度のヒストグラムから前記赤外線撮影画像の車外物体の部分を検出することも特徴としている(請求項3)。
【0013】
つぎに、本発明の車両の赤外線撮影表示方法は、赤外光を投光して撮影した車外の赤外線撮影画像を表示手段に表示し、前記赤外線撮影画像の歩行者、障害物等の車外物体の画像部分を検出し、該検出に基いて前記赤外光の投光状態を調整することを特徴としている(請求項4)。
【発明の効果】
【0014】
まず、請求項1、4の構成によれば、車外の赤外線撮影画像の歩行者、障害物等の車外物体の画像部分が検出されると、この検出に基いて赤外線光源手段の赤外光の投光状態を調整することにより、赤外線撮影画像の明るさが変化し、車外物体の画像部分を強調したり着色したりする複雑で処理負担の大きな画像処理等を施すことなく安価に、ドライバが車外物体に気づき易い注意喚起効果の高い赤外線撮影画像の表示を行うことができる。
【0015】
そして、赤外光の投光状態の調整によっては、自車の前照灯の光軸変化やロービームからハイビームへの切り換えが生じないため、対向車のドライバが幻惑されたり、パッシングと誤認されたりすることがなく、しかも、表示範囲が自車前方に限られることもない。
【0016】
また、請求項2の構成によれば、赤外線光源手段が複数個の赤外線投光器によって形成され、投光調整手段の各赤外線投光器の投光状態の調整により、赤外線撮影画像は、ほぼ外物体の画像部分の赤外光照射量が他の画像部分の赤外光照射量より相対的に増加した状態になり、このとき、表示手段の表示がほぼ車外物体の画像部分のみが明るく目立つ表示に変化し、この変化によって、ドライバが車外物体に一層気づき易くすることができ、一層効果的な注意喚起を行うことができる具体的な構成の車両の赤外線撮影表示装置を提供することができる。
【0017】
さらに、請求項3の構成によれば、物体検出手段により、赤外線撮影画像の簡単な画像輝度のヒストグラムの演算で車外物体の画像部分を検出することができ、一層安価で具体的な構成の車両の赤外線撮影表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、その実施形態について、図1〜図4にしたがって詳述する。
【0019】
図1は自車1に搭載された赤外線撮影表示装置のブロック図、図2は図1の動作説明用のフロチャート、図3は画像輝度のヒストグラム演算の説明図、図4は赤外線撮影画像の表示変化の説明図である。
【0020】
そして、この実施形態においては、自車前方の歩行者、障害物等の車外物体の赤外線撮影画像を得るため、自車1の前部(フロント部)の左、右の適当な位置に左側赤外線投光器2a、右側赤外線投光器2bそれぞれが設けられ、両赤外線投光器2a、2bが本発明の赤外線光源手段を形成する。
【0021】
両赤外線投光器2a、2bは、例えば、自車前方の設定距離離れた路面の左寄りの部分、右寄りの部分それぞれを照射するように赤外線投光方向が固定され、投光状態の調整が、後述するそれぞれの投光量の増減調整(点、消灯制御を含む)によって実現される。
【0022】
つぎに、自車1の例えば車室内に、自車前方の少なくとも両赤外線投光器2a、2bの最大赤外線照射範囲を撮影するように撮像装置3が設置され、この撮像装置3が本発明の撮像手段を形成する。
【0023】
なお、撮像装置3は、赤外線撮影専用の単眼或いはステレオのCCDカメラ装置等であってもよいが、近赤外光領域を含む赤外光領域に受光感度があるカメラ装置であればよいため、例えば、車間距離制御の先行車認識等の可視光撮影に共用される単眼或いはステレオのCCDカメラ装置等であってもよく、この共用のCCDカメラ装置は、例えば、市販の可視光撮影用のCCDカメラから赤外線カットフイルタを除去して簡単に形成することができる。
【0024】
さらに、自車1にはレーザレーダ、超音波レーダ等の測距センサからなる障害物センサ4、マイクロコンピュータ構成の制御装置(ECU)5及び本発明の表示手段を形成するヘッドアップディスプレイ(HUD)6も設けられ、このHUD6は自車1のフロントガラス下部のドライバが見易い位置にホログラム等で形成される。なお、ECU5は周知のECUと同様、CPU、RAM、ROM等からなる。
【0025】
そして、走行環境の周囲照度が低下する夜間等になると、ドライバ操作または前記周囲照度の検出に基く自動制御により、自車1の視界補助モードがオンしてECU5が起動され、ECU5の初期制御により、後述の投光調整手段53を介して両赤外線投光器2a、2bがともに点灯状態に制御され、両赤外線投光器2a、2bがともに自車前方に近赤外の赤外光を投光する。
【0026】
このとき、自車前方の車外物体等によって反射した赤外光が撮像装置3に受光され、自車前方の毎フレームのモノクロ又はカラーの赤外線撮影画像の信号が形成されてこの信号がECU5に取り込まれる。
【0027】
さらに、ECU5が設定された視界補助の表示処理プログラムを実行して表示制御手段51を形成し、ECU5に取り込まれた赤外線撮影画像は、車外物体の画像部分を強調したり着色したりする複雑で処理負担の大きな画像処理等を施すことなく、表示制御手段51のホログラム表示処理にしたがってそのままHUD6に表示される。
【0028】
ところで、前記の視界補助モードのオンにより、障害物センサ4の前方探査結果の信号もECU5に取り込まれるようになる。
【0029】
そして、ECU5は前記の視界補助の設定された投光調整プログラムを実行することにより、つきに説明する本発明の物体検出手段52、投光調整手段53も形成し、両手段52、53によって図2のステップS1、S2、S3の投光調整の処理をくり返す。
【0030】
(a)物体検出手段52
この手段52は、赤外線撮影画像の歩行者、障害物等の車外物体の画像部分を検出する手段であり、この実施形態の場合、前記ステップS1の物体有検出処理により、障害物センサ4の前方探査結果の信号から、自車前方に車外物体が存在するか否かを判別して検出し、自車前方に車外物体が存在すれば、前記ステップS2の物体位置検出処理により、取り込んだ赤外線撮影画像につき、水平方向x、垂直方向yの画像輝度のヒストグラムを演算して求め、図3に示すような水平方向x、垂直方向Hyのヒストグラムの波形Hx、Hyを得、両波形Hx、Hyの実線lx、lyのしきい値以上になる部分の画素位置から、例えば同図の赤外線撮影画像Paの車外物体αの画像部分の垂直方向y、水平方向xの位置を求めて車外物体αの画像部分を検出する。なお、両方向x、yの画像輝度は、例えば、0〜255の256段階の輝度レベル(8ビットレベル)で検出される。
【0031】
この場合、障害物センサ4の前方探査結果からの検出と、撮像装置3の赤外線撮影結果からの検出との組合せにより、路上や路面の検出対象外の物体等を歩行者、障害物等の検出対象の車外物体αとして誤検出することなく、車外物体αの画像部分が、その水平方向x、垂直方向yの位置を求めて正確に検出される利点がある。
【0032】
なお、車外物体αの画像部分の垂直方向y、水平方向xのいずれか一方の位置のみを検出して赤外線投光器2a、2bの投光状態を調整する場合等には、物体検出手段52によって水平方向x、垂直方向yのいずれか一方の画像輝度のヒストグラムを演算し、算出した前記いずれか一方のヒストグラムのしきい値以上になる部分の画素位置から、車外物体αの画像部分の垂直方向y、水平方向xのいずれか一方の位置を求めて車外物体αの画像部分を検出すればよく、この場合は、処理が簡単になる利点がある。
【0033】
(b)投光調整手段53
この手段53は、物体検出手段52の検出に基いて赤外線光源手段(投光器2a、2b)の投光状態を調整する手段であり、この実施形態の場合、前記したように、赤外線投光器2a、2bそれぞれの投光量を増減調整して両赤外線投光器2a、2bの投光状態を調整し、赤外線撮影画像のほぼ車外物体αの画像部分の赤外光照射量が他の画像部分の赤外光照射量より相対的に増加した状態にしてHUD6の表示に変化を与えるため、図2のステップS3の照射状態調整処理により、つぎに説明する増光調整、減光調整の少なくともいずれか一方を行なう。
【0034】
(i)増光調整
この調整は、物体検出手段52の検出結果と、撮像装置3の撮影の方向、倍率や撮影高さ等の撮影条件とから、車外物体αの路上の位置(実際位置)を認識し、認識した車外物体αの実際位置に近い方の赤外線投光器、換言すれば、車外物体αが存在する位置寄りに赤外光を投光する赤外線投光器の投光量を一定量或いは車外物体αからの距離に逆比例して増加する調整である。
【0035】
(ii)減光調整
この調整は、車外物体αの前記の実際位置の認識に基づき、両投光器2a、2bのうちの認識した車外物体αの実際位置から遠い方の赤外線投光器、換言すれば、車外物体αが存在しない位置寄りに赤外光を投光する赤外線投光器の投光量を一定量或いは車外物体αからの距離に比例して低減する調整である。
【0036】
そして、赤外線投光器2a、2bの投光量の増減は、投光調整手段53により、一般的な光量制御の場合と同様、投光器2a、2bの通電電流の増減、或いは、投光器2a、2bの点灯する素子数の増減によって実現することができ、最も簡単には、赤外線投光器2a、2bそれぞれを単素子構成とし、前記の視界補助モードのオンによる初期制御等で両赤外線投光器2a、2bをともに点灯し、減光調整により車外物体αが存在しない位置寄りに赤外光を投光する赤外線投光器2aまたは赤外線投光器2bを消灯することによって実現することができる。
【0037】
なお、増光調整は、調整によって自車前方の赤外光照射量が増加し、HUD6の画面がその分明るくなる利点があり、減光調整は、調整によって電力消費が少なくなるので、その分、バッテリの消耗が少なくなって防止され、また、赤外線投光器2a、2bの長寿命化も図られる利点がある。
【0038】
つぎに、HUD6に表示される赤外線撮影画像の投光調整手段53の調整に基く変化を、図4を参照して説明する。
【0039】
例えば前記の減光調整を行なう場合、まず、前記の視界補助モードのオンによる初期制御等で両赤外線投光器2a、2bが同時点灯すると、両赤外線投光器2a、2bが自車前方の左寄り、右寄りそれぞれの部分に、道路中央部では重なるように赤外光を照射し、この照射に基づいてHUD6に表示される図4の自車前方の赤外線撮影画像Pbは、両赤外線投光器2a、2bの赤外光照射領域La、Lbを加算合成したHUD6の表示画面の大半を占める範囲L1が赤外光反射で明るくなる画像になる。
【0040】
そして、左の路側に車外物体αが存在していると、投光調整手段53の調整により、車外物体αが存在しない位置寄り(右寄り)に赤外光を投光する赤外線投光器2bが減光または消灯され、このとき、図4の矢印線iに示すように、HUD6の表示画像が赤外線撮影画像Pbから赤外線撮影画像Pcに変化し、この撮影画像Pcは、赤外線投光器2bの車外物体αが存在しない位置寄り(右寄り)の画像部分が暗くなって、ほぼ赤外光照射領域Laで決まる範囲L2が赤外光反射で明るく目立つ画像になる。
【0041】
したがって、例えばECU5によって車外物体αの画像部分を強調したり着色したりする複雑で処理負担の大きな画像処理等を施すことなく、赤外線投光器2a、2bの投光量を調整する安価な方法で、HUD6の表示画像を、車外物体αの画像部分が他の画像部分より明るく目立つ画像に変えて強調することができ、その画像変化から、ドライバが自車前方の車外物体αに極めて容易に気づき、しかも、赤外線撮影画像の明るく強調された部分から検出対象の車外物体αを容易に見つけることができ、自車前方の車外物体αの効果的な注意喚起を行うことができる。
【0042】
そして、例えば、新たな画像が得られる毎、あるいは、ECU5の処理能力等から許容される時間間隔毎に、赤外線投光器2a、2bの投光状態を初期状態に戻して図2のステップS1〜S3の処理がくり返されることにより、最新の車外物体αの画像部分の検出位置に応じて明るい画像部分が変化する極めて注意喚起効果の高い自車前方の赤外線撮影画像をHUD6に表示することができる。
【0043】
ところで、車外物体αの画像部分が自車前方中央部になるときは、例外的処理により、例えば、赤外線投光器2a、2bの投光量を、赤外線撮影画像Pbの投光量からともに減光調整して低減し、図4の矢印線iiに示すように、HUD6の表示画像を、赤外線撮影画像Pbのような範囲L1が明るく目立つ画像赤外線撮影画像から赤外線撮影画像Pdに変化させることが好ましい。
【0044】
この場合、前記の設定量ずつの減光調整により、両赤外線投光器2a、2bの照射が重なる中央部分(範囲L31)が、両赤外線投光器2a、2bの残りの照射範囲32より明るくなることから、赤外線撮影画像Pdは、中央部分(範囲L31)が相対的に他の部分より明るく目立ち、強調されて注意喚起効果が高くなる。
【0045】
そして、減光調整に代えて増光調整をしたときにも、赤外線撮影画Pc、Pdのような、車外物体αの画像部分が他の部分より相対的に明るくなった赤外線撮影画像を、HUD6に表示することができ、前記と同様の注意喚起効果の高い表示が行える。
【0046】
以上説明したように、この実施形態の場合は、自車1の左右の赤外線投光器2a、2bの赤外光投光量を調整することにより、撮像装置3の赤外線撮影画像に車外物体αの画像部分を強調したり着色したりする複雑で処理負担の大きな画像処理等を施すことなく、安価かつ簡単に、注意喚起効果が高く、自車前方の車外物体αにドライバが気づき易い赤外線画像をHUD6に表示することができる。
【0047】
また、自車1の前照灯の光軸を変えたり、ロービームからハイビームに切り換えたりしないため、自車1の前照灯によって対向車のドライバが幻惑されたり、対向車のドライバ等にパッシングと誤認されたりすることがない。
【0048】
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0049】
例えば、ECU5の物体検出手段52により、図2のステップS1の物体有検出処理を省いてステップS2の物体有検出処理のみを行ない、画像輝度のヒストグラムの演算から得られたヒストグラムの波形Hx、波形Hyにしきい値以上になる部分があれは、車外物体αが写っていると判断し、その部分の画素位置から、車外物体αの画像部分の垂直方向y、水平方向xの位置を検出してもよく、この場合は、赤外線撮影画像のヒストグラムのみから車外物体αの画像部分の検出が行え、処理の簡素化等が図られて一層簡単かつ安価になる利点がある。
【0050】
また、ECU5の物体検出手段52により、障害物センサ4の探査結果のみを用いて車外物体αを検出してその画像部分の水平方向xの位置を検出するようにしてもよく、この場合は、障害物センサ4の探査結果は必要であるが、赤外線撮影画像の画像輝度のヒストグラムの演算が不要になる利点がある。
【0051】
さらに、本発明の物体検出手段は、種々の手法で赤外線撮影画像の車外物体αの画像部分を検出するものであってよく、例えば、前記の画像輝度のヒストグラムの演算に代えて、撮像装置3の赤外線撮影画像の前後フレーム間の画像輝度の差分を演算し、この演算結果から、差分が発生した画像部分を、動きのある車外物体αの画像部分として検出してもよい。
【0052】
つぎに、本発明の表示手段は、HUD6に限られるものでなく、自車1のダッシュボード等に設けられた液晶ディスプレイ等の種々の画面表示器等であってよいのは勿論である。
【0053】
また、自車1に表示手段とともに、車外物体αの存在をドライバに報知する手段として、スピーカ、LED、振動装置等を設けてもよい。
【0054】
つぎに、本発明の投光調整手段による投光状態の調整は、赤外線光源手段の投光量の調整に限られるものでなく、その投光方向の調整、あるいは、投光量と投光方向の両方の調整等であってもよく、投光方向を調整する場合は、例えば赤外線光源手段としての赤外線投光器が、投光方向を上下左右に可変できるように、電動雲台等の3次元可動機構に取り付けて設ければよい。
【0055】
また、車外物体αの検出によって例えばHUD6の明るさの変化(輝度変化)を発生させるとドライバの注意を喚起できるため、前記の投光量、投光方向の調整に代えて、点消灯あるいは増光減光をくり返すように調整し、HUD6の明るさが周期変化するようにしてもよい。
【0056】
また、赤外線投光手段としての赤外線投光器の個数等はどうでもよく、例えば自車1の左右方向の中央等に1個だけ設け、物体検出手段の検出にしたがって投光方向を車外物体の検出方向に追従するように調整してもよく、左右方向に複数個を配設し、物体検出手段の検出にしたがって投光量、投光方向の少なくともいずれか一方を調整するようにしてもよい。
【0057】
さらに、異なる高さから赤外光を投光する複数個の赤外線投光器も設け、例えば、自車前方の赤外光の投光量等を、左右方向からだけでなく高さ方向からも調整できるようにしてもよい。
【0058】
そして、本発明の赤外線光源手段の赤外光投光方向及び撮像手段の撮影方向は、自車前方に限られるものでなく、自車1の周囲の種々の方向であってよく、例えば、後方の監視等を行なう場合は、自車後方であってよく、場合によっては、自車1の周囲の全方向であってもよい。したがって、本発明は、表示範囲が自車前方に限られることもない。
【0059】
そして、本発明は種々の車両の赤外線撮影表示に適用できるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
ところで、自車1の装備部品数を少なくするため、例えば図1の撮像装置3、障害物センサ4等を他の制御のセンサに兼用する場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の一実施形態のブロック図である。
【図2】図1の動作説明用のフローチャートである。
【図3】図1の画像輝度のヒストグラム演算の説明図である。
【図4】図1の赤外線撮影画像の表示変化の説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1 自車
2a、2b 赤外線投光器
3 撮像装置
4 障害物センサ
5 ECU
52 物体検出手段
53 投光調整手段
6 HUD
α 車外物体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外に赤外光を投光する赤外線光源手段と、
前記車外を撮影する撮像手段と、
前記撮像手段の赤外線撮影画像を表示する表示手段と、
前記赤外線撮影画像の歩行者、障害物等の車外物体の画像部分を検出する物体検出手段と、
前記物体検出手段の検出に基いて前記赤外線光源手段の投光状態を調整する投光調整手段とを備えたことを特徴とする車両の赤外線撮影表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の赤外線撮影表示装置において、
赤外線光源手段が複数個の赤外線投光器からなり、
投光調整手段により、赤外線撮影画像のほぼ外物体の画像部分の赤外光照射量が他の画像部分の赤外光照射量より相対的に増加した状態になるように、前記各赤外線投光器の投光状態が調整されることを特徴とする車両の赤外線撮影表示装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両の赤外線撮影表示装置において、
物体検出手段が、赤外線撮影画像の水平方向、垂直方向の少なくともいずれか一方の画像輝度のヒストグラムから前記赤外線撮影画像の車外物体の部分を検出することを特徴とする車両の赤外線撮影表示装置。
【請求項4】
赤外光を投光して撮影した車外の赤外線撮影画像を表示手段に表示し、
前記赤外線撮影画像の歩行者、障害物等の車外物体の画像部分を検出し、
該検出に基いて前記赤外光の投光状態を調整することを特徴とする車両の赤外線撮影表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−226682(P2006−226682A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37157(P2005−37157)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】