説明

車両制御装置

【課題】信号情報を利用して車両を制動制御する車両制御装置において、制動制御時における先行車両と自車両との急接近を防止しドライバに不安感を与えるおそれを低減することが可能な車両制御装置を提供する。
【解決手段】信号情報を利用して自車両Mを停止させる制動制御を行う車両制御装置1である。この車両用制御装置1は、自車両Mの先行車両Nを検出する先行車両検出部12と、先行車両Nが前方の交差点に進入する進入時の車両用信号機Sの表示を推定する信号表示推定部13と、その車両用信号機Sの表示が停止信号を示すと推定される場合に、自車両Mの加速を制限する加速制限部14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号情報を利用して車両を停止させる制動制御を行う車両制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前方交差点における信号情報を利用して、車両の走行を制御する車両制御装置が知られている。例えば特許文献1には、交差点手前の停止線に車両が到達する時点で信号が停止信号となると予測される場合、ドライバに警告を行い、それでも停止操作が為されない場合には、介入制御を実施して停止線前に強制的に停止させる車両制御装置が開示されている。
【特許文献1】特開2006−224754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の車両制御装置では、先行車両との関係は考慮されていなかった。従って、交差点進入時における信号が先行車両及び自車両ともに停止信号(黄信号乃至赤信号)となる場合に、自車両のドライバが交差点を通過しようとして加速が行われると、先行車両との車間距離が短縮されてしまい、この状態で両車両ともに交差点手前で介入制御による緊急停止が行われると、先行車両と自車両とが急接近してしまいドライバに不安感を与えるおそれがあった。
【0004】
本発明は、上記した事情に鑑みて為されたものであり、信号情報を利用して車両を制動制御する車両制御装置において、制動制御時における先行車両と自車両との急接近を防止しドライバに不安感を与えるおそれを低減することが可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両制御装置は、信号情報を利用して車両を停止させる制動制御を行う車両制御装置において、前記車両の先行車両を検出する先行車両検出手段と、前記先行車両が前方の交差点に進入する時の車両用信号の表示を推定する信号表示推定手段と、前記車両用信号の表示が停止信号を示すと推定される場合に、前記車両の加速を制限する加速制限手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この車両制御装置では、前方の交差点に先行車両が進入する時に車両用信号が停止信号(赤乃至黄)を示すと推定される場合、車両の加速を制限することができるため、加速による車間距離の短縮がなく、この状態で両車両ともに交差点手前で制動制御が行われても急接近することがないことから、ドライバに不安感を与えるおそれを低減することが可能となる。
【0007】
車両制御装置は、前記車両が加速される状況にあるか否かを推定する加速推定手段を備え、前記加速制限手段は、さらに前記車両が加速される状況にあると推定される場合に、前記車両の加速を制限することを特徴としてもよい。このようにすれば、車両が加速されると推定される場合に加速が制限され、無駄に加速制限されることがない。
【0008】
前記加速推定手段は、前記車両用信号と連動する歩行者用信号の信号情報に基づいて、前記推定を行うことを特徴としてもよい。このようにすれば、車両が加速される状況にあるか否かを容易に推定することができる。
【0009】
前記車両は、前記先行車両に追従制御されており、前記加速制限手段は、さらに前記先行車両が加速した場合に、前記車両の加速を制限することを特徴としてもよい。このようにすれば、追従制御中で先行車が加速した場合に、加速が制限される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、信号情報を利用して車両を制動制御する車両制御装置において、制動制御時における先行車両と自車両との急接近を防止しドライバに不安感を与えるおそれを低減することが可能な車両制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る車両制御装置の具体的構成について説明する前に、インフラ設備と協調した車両を緊急停止させるための制動制御と、それにより生じ得る問題点について説明する。
【0012】
図1は、前方交差点手前で介入制御により自車両Mを制動制御して停止線Tの手前で緊急停止させ得る状況と、先行車両Nとの関係を説明するための図である。図1に示すように、自車両Mは、車両側通信装置を介して、位置X1で光ビーコンなどの路側通信装置90から、前方交差点における信号機S,Sの信号情報(信号現示とそのタイムサイクル)や停止線Tまでの距離などの道路情報を取得する。そして、この道路情報と車速センサからの車速情報とを利用して、自車両Mが交差点で車両用信号機Sの停止信号(赤乃至黄)に掛かるか否かを判定する。そして、停止信号に掛かると判定される場合は、車速センサからの車速情報と停止線Tまでの距離とを所定時間ごとに監視して、自車両Mが停止線Tの手前で停止することができるか否かを予測する。そして、停止線Tの手前で停まることができないと予測される場合、ドライバに警告を行い、それでも制動操作が為されない場合には、介入制御により自車両Mを制動制御して停止線Tの手前に強制的に停止させる。
【0013】
ここで、自車両Mが交差点に近付くに際し、車両用信号機Sの現示が青であって、同一方向の歩行者用信号機Sの表示が青点灯から青点滅に変化した場合、車両用信号機Sが近いうちに停止信号になることが予想されるため、車両用信号機Sの停止信号に引っ掛からないようにと考えて、アクセルペダルを踏み込むなどして加速し始めるドライバがいる。
【0014】
しかし、上記したようなインフラ協調システム等による強制的な緊急停止制動制御を行う車両においては、もし加速したとしてもいずれ停止信号に引っ掛かる位置関係では、結果的に強制停止させられることになる。その際、同様に停止信号に引っ掛かる先行車両Nが存在する場合、自車両Mが加速し始めて先行車両Nに接近することになり、この状態で先行車両Nと自車両Mとが共に強制停止されると、両車両が急接近してしまいドライバに不安感を与えるおそれがある。すなわち、先行車両Nの強制停止開始条件が自車両Mと異なる場合(減速Gが小さい場合や減速開始地点がより手前の場合など)は、両車両がいずれも強制停止されるにしても、両車両が急接近してしまうのを避けられず、また、もし強制停止開始条件が同じであったとしても、ブレーキ装置の個体差や車両重量、タイヤの擦り減り等の条件で、規定通りの減速Gを得られず、急接近してしまうのを避けられないことが予想される。
【0015】
従って、本実施形態の車両制御装置では、図2に示すように、先行車両Nが停止信号に掛かる(結果として、自車両Mも停止信号に掛かる)ことが予測される場合は、両車両の急接近を防止してドライバに不安感を与えるおそれを低減するために、自車両Mの加速を制限(禁止する場合のみならず所定値以下に制限する場合も含む。)する。一方、図3に示すように、先行車両Nが停止信号に掛からないことが予測される場合(自車両Mが停止信号に掛かる否かを問わない。)は、ドライバの意思を拘束して不快感を生じさせないように、自車両Mの加速を制限しない。
【0016】
図4は、上記した制御を実現するための第1実施形態に係る車両制御装置の概略構成を示すブロック図である。図4に示すように、車両制御装置1は、車両制御ECU(Electronic control Unit)10を備えている。
【0017】
車両制御ECU10には、カメラ20、ミリ波レーダ30、車速センサ40、ブレーキセンサ50、車両側通信装置60、エンジンECU70、及びブレーキECU80が接続されている。
【0018】
カメラ20は、自車両Mの前方を撮像するものであって、例えばフロントウィンドウの上部に取り付けられている。ミリ波レーダ30、ミリ波を送出し物体からの反射波を受信して物体を検出するレーダであり、先行車両Nを検出するために使用される。車速センサ40は、制御対象である自車両Mの車速を検出する。ブレーキセンサ50は、自車両Mのドライバのブレーキ操作を検出する。
【0019】
車両側通信装置60は、光ビーコンなどの路側通信装置90との間で路車間通信を行い、前方交差点における信号機S,Sの信号情報(信号現示とそのタイムサイクル)や停止線Tまでの距離などの道路情報を取得する。
【0020】
エンジンECU70は、エンジンへの燃料供給量やエア量を制御することで、自車両Mの加減速を制御する。ブレーキECU80は、図示しないブレーキ装置を制御することで自車両Mを制動する。
【0021】
車両制御ECU10は、加速推定部(加速推定手段)11、先行車両検出部(先行車両検出手段)12、信号表示推定部(信号表示推定手段)13、加速制限部(加速制限手段)14、及び制動制御部15を有している。
【0022】
加速推定部11は、自車両Mが加速される状況にあるか否かを推定する。この加速推定部11は、信号連動判定部16及び信号点滅判定部17を有している。信号連動判定部16は、車両側通信装置60を介して路側通信装置90から取得した信号情報に基づいて、前方交差点における車両用信号機Sと歩行者用信号機Sとが連動しているか否かを判定する。信号が連動しているか否かは、例えば、車両用信号機Sが黄色に変化する数秒前に歩行者用信号機Sが青点滅を開始し、且つ両信号機S,Sで赤信号の時間帯がほぼ同じであることなどから判定する。或いは、取得する信号情報自体に、連動情報が含まれていてもよい。信号点滅判定部17は、カメラ20からの画像情報を利用して、或いは信号情報に含まれるタイムサイクルを利用して、歩行者用信号機Sの現示が青点滅であるか否かを判定する。
【0023】
このように、加速推定部11は、信号連動判定部16で車両用信号機Sと歩行者用信号機Sとが連動していると判定され、信号点滅判定部17で歩行者用信号機Sの現示が青点滅であると判定された場合に、自車両Mが加速される状況にあると推定する。これは、前述したように、車両用信号機Sの現示が青であって、同一方向の歩行者用信号機Sの表示が青点灯から青点滅に変化した場合、車両用信号機Sが近いうちに停止信号になることが予想されるため、車両用信号機Sの停止信号に引っ掛からないようにと考えて、アクセルペダルを踏み込むなどして加速し始めるドライバがいるため、この状況を自車両Mが加速される状況にあると推定するものである。
【0024】
先行車両検出部12は、カメラ20及び/又はミリ波レーダ30からの情報に基づいて、自車両Mのすぐ前に先行する先行車両Nを検出する。
【0025】
信号表示推定部13は、先行車両Nが前方交差点に進入する進入時の車両用信号機Sの表示を推定する。より詳細には、信号表示推定部13は、信号情報、道路情報、自車両Mと先行車両Nとの位置関係、自車両Mの車速情報などを利用して、先行車両Nが前方交差点に進入する時の車両用信号機Sの表示を推定する。
【0026】
加速制限部14は、先行車両Nが前方交差点に進入する時の車両用信号機Sの表示が停止信号であると推定される場合に、自車両Mも停止信号に掛かるものと推定して、自車両Mが加速できないように、その加速を制限する(禁止する場合のみならず所定値以下に制限する場合も含む。)ための指令を、エンジンECU70に送る。また、所定の終了条件が満たされた場合に、その解除のための指令をエンジンECU70に送る。終了条件については、後述する。
【0027】
制動制御部15は、緊急停止のときの制動やその解除のための指令をブレーキECU80に送ることで、制動制御やその解除を行う。より詳細には、信号情報や道路情報に基づいて、自車両Mが停止信号に掛かると判定される場合は、車速センサ40からの車速情報と停止線Tまでの距離とを所定時間ごとに監視して、自車両Mが停止線Tの手前で停止することができるか否かを予測する。そして、停止線Tの手前で停まることができないと予測される場合、ドライバに警告を行い、それでも制動操作が為されない場合には、介入制御により自車両Mを制動制御して停止線Tの手前に強制的に停止させるための指令をブレーキECU80に送る。そして、所定時間経過した後、その制動制御を解除するための指令をブレーキECU80に送る。
【0028】
次に、上述した車両制御装置1による車両制御について、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0029】
まず、自車両Mが交差点の所定距離手前に到達すると、車両制御ECU10は、車両側通信装置60を介した路側通信装置90との路車間通信により、前方交差点における信号機S,Sの信号情報や停止線Tまでの距離などの道路情報を取得する(ステップS501)。次に、加速推定部11の信号連動判定部16は、取得した信号情報に基づいて、前方交差点における車両用信号機Sと歩行者用信号機Sとが連動しているか否かを判定する(ステップS502)。連動していないと判定された場合は、その後の処理を終了する。一方、連動していると判定された場合は、ステップS503に進む。
【0030】
ステップS503では、加速推定部11の信号点滅判定部17は、カメラ20からの画像情報を利用して、或いは信号情報に含まれるタイムサイクルを利用して、歩行者用信号機Sの現示が青点滅であるか否かを判定する。そして、青点滅中でない場合は、ステップS504に進み、自車両Mが前方交差点に到達したか否かを判定する。そして、到達したと判定した場合は、その後の処理を終了する。一方、未だ到達していないと判定した場合は、ステップS503に戻る。このように、信号点滅判定部17は、自車両Mが前方交差点に到達するまで、歩行者用信号機Sの現示を監視する。
【0031】
一方、ステップS503で歩行者用信号機Sの現示が青点滅であると判定された場合、自車両Mが加速される状況にあると推定する。次に、先行車両検出部12において、カメラ20及び/又はミリ波レーダ30からの情報に基づいて、自車両Mのすぐ前に先行する先行車両Nを検出する(ステップS505)。そして、先行車両Nが検出されない場合は、その後の処理を終了する。
【0032】
一方、先行車両Nが検出された場合は、信号表示推定部13において、信号情報、道路情報、自車両Mと先行車両Nとの位置関係、自車両Mの車速情報などを利用して、先行車両Nが前方交差点に進入する時の車両用信号機Sの表示を推定し、その表示が停止信号であるか否か判定する(ステップS506)。停止信号でないと判定された場合は、その後の処理を終了する。一方、停止信号であると判定された場合は、加速制限部14は、自車両Mも停止信号に掛かるものと推定して、加速制限指令をエンジンECU70に送り、自車両Mの加速を制限する(ステップS507)。
【0033】
次に、加速制限部14は、所定の終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS508)。所定の終了条件としては、ドライバがブレーキ操作をして停止信号に従って停止した場合が挙げられる。この終了条件が満たされない場合は、条件が成立するまで判定を繰り返す。一方、この終了条件が満たされた場合は、加速制限解除のための指令をエンジンECU70に送り、自車両Mの加速制限を解除して(ステップS509)、処理を終了する。
【0034】
なお、先行車両Nが加速して停止信号から脱出できる状態になったとしても、ステップS506でYESの判定が一旦成立すれば、自車両Mの加速制限は継続するのが好ましい。なぜならば、先行車両Nの緊急停止判断がどのような判断条件であるのか、その条件を含めて自車両M側で正確に把握できない以上、先行車両Nが前方交差点を通過するか予測は非常に難しいためである。
【0035】
以上詳述したように、本実施形態に係る車両制御装置1では、前方交差点に先行車両Nが進入する時に車両用信号Sが停止信号を示すと推定される場合、自車両Mの加速を制限することができるため、加速による車間距離の短縮がなく、この状態で両車両ともに交差点手前で制動制御が行われても急接近することがないことから、ドライバに不安感を与えるおそれを低減することが可能となる。
【0036】
また、この車両制御装置1では、先行車両Nが前方交差点に進入する時の車両用信号Sが停止信号でない場合や、自車両Mが単独走行している場合においては、自車両Mが加速制限されることがないため、ドライバの意思を拘束することによる不快感を低減することができる。
【0037】
また、仮に制動制御部15により緊急停止のための制動制御が行われることになっても、加速を制限していることからより低い車速で自車両Mの制動制御を開始することができるため、制動距離を短縮してより安全性を高めることができる。
【0038】
また、自車両Mが加速される状況にあると推定される場合に、自車両Mの加速を制限するため、無駄に加速制限が掛かることがない。特に、車両用信号機Sと連動する歩行者用信号機Sが青点滅であるか否かという信号情報を利用して推定しているため、自車両Mが加速される状況にあるか否かを容易に推定することができる。
(第2実施形態)
【0039】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態で説明した要素と同一の要素には同一の符号を附し、重複する説明を省略する。
【0040】
図6は第2実施形態に係る車両制御装置101の概略構成を示すブロック図である。図6に示すように車両制御装置101は車両制御ECU110を備えている。この車両制御ECU110は、追従制御部18及び加速検出部19を有している点で、第1実施形態の車両制御ECU10と異なっている。
【0041】
追従制御部18は、カメラ20やミリ波レーダ30からの情報に基づいて、エンジンECU70及びブレーキECU80に指令を送り、先行車両Nに追従(ACC:Adaptive Cruise Control)するよう自車両Mを走行制御する。加速検出部19は、カメラ20やミリ波レーダ30からの情報に基づいて、先行車両Nの加速を検出する。
【0042】
このように、本実施形態では、自車両MがACCにより先行車両Nに追従制御される場合を考えている。このようなACC制御では、先行車両Nが加速を開始すると、自車両Mは先行車両Nとの車間距離を維持するように加速してしまう。しかし、第1実施形態でも説明したように、インフラ協調システム等による強制的な緊急停止制動制御を行う車両においては、もし加速したとしてもいずれ停止信号に引っ掛かる位置関係では、結果的に強制停止させられることになる。その際、同様に停止信号に引っ掛かる先行車両Nが存在する場合、この状態で先行車両Nと自車両Mとが共に強制停止されると、両車両が急接近してしまいドライバに不安感を与えるおそれがある。
【0043】
なお、ACCは車間距離制御を行っており、理論的には先行車両Nとの車間距離が更に接近することは考えにくいが、ハンチングが発生して急接近するケースは十分に生じ得る。また、両車両がより加速することで減速Gが更に必要になり、緊急停止に必要な距離も更に長くなることが予想され、単に自車両Mの緊急停止制御のみでさえ不完全な制御になる可能性が高い。
【0044】
従って、本実施形態の車両制御装置では、先行車両Nが停止信号に掛かる(結果として、自車両Mも停止信号に掛かる)ことが予測される場合であって、先行車両Nが加速された場合は、両車両の急接近を防止してドライバに不安感を与えるおそれを低減するために、自車両MのACC加速を制限(禁止する場合のみならず所定値以下に制限する場合も含む。)する。一方、先行車両Nが停止信号に掛からないことが予測される場合(自車両Mが停止信号に掛かる否かを問わない。)や、先行車両Nが加速しない場合は、自車両Mの加速を制限することは行わない。
【0045】
次に、第2実施形態に係る車両制御装置101による車両制御について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0046】
まず、車両制御ECU110は、追従制御部18において、自車両MがACCによる追従制御が行われているか否か判定する(ステップS701)。追従制御が行われていない場合は、図5で説明したフローに従って車両制御を行う。
【0047】
一方、追従制御が行われている場合は、自車両Mが交差点の所定距離手前に到達すると、車両制御ECU110は、車両側通信装置60を介した路側通信装置90との路車間通信により、前方交差点における信号機S,Sの信号情報や停止線Tまでの距離などの道路情報を取得する(ステップS702)。次に、加速推定部11の信号連動判定部16は、取得した信号情報に基づいて、前方交差点における車両用信号機Sと歩行者用信号機Sとが連動しているか否かを判定する(ステップS703)。連動していないと判定された場合は、その後の処理を終了する。一方、連動していると判定された場合は、ステップS704に進む。
【0048】
ステップS704では、加速推定部11の信号点滅判定部17は、カメラ20からの画像情報を利用して、或いは信号情報に含まれるタイムサイクルを利用して、歩行者用信号機Sの現示が青点滅であるか否かを判定する。そして、青点滅中でない場合は、ステップS705に進み、自車両Mが前方交差点に到達したか否かを判定する。そして、到達したと判定した場合は、その後の処理を終了する。一方、未だ到達していないと判定した場合は、ステップS704に戻る。このように、信号点滅判定部17は、自車両Mが前方交差点に到達するまで、歩行者用信号機Sの現示を監視する。
【0049】
一方、ステップS704で歩行者用信号機Sの現示が青点滅であると判定された場合、自車両Mが加速される状況にあると推定する。これは、同時に先行車両Nも加速される状況にあることを推定していることになる。
【0050】
次に、信号表示推定部13において、信号情報、道路情報、自車両Mと先行車両Nとの位置関係、自車両Mの車速情報などを利用して、先行車両Nが前方交差点に進入する進入時の車両用信号機Sの表示を推定し、その表示が停止信号であるか否か判定する(ステップS706)。停止信号でないと判定された場合は、その後の処理を終了する。一方、停止信号であると判定された場合は、加速検出部19において、先行車両Nが加速したか否かを判定する(ステップS707)。そして、先行車両Nが加速していないと判定した場合は、ステップS708に進み、先行車両Nが前方交差点に到達したか否かを判定する(ステップS708)。そして、到達したと判定した場合は、その後の処理を終了する。一方、未だ到達していないと判定した場合は、ステップS707に戻る。このように、加速検出部19は、先行車両Nが前方交差点に到達するまで、先行車両Nの加速を監視する。
【0051】
一方、ステップS707で先行車両Nが加速したと判定した場合は、加速制限部14は、加速制限指令をエンジンECU70に送り、自車両Mの加速を制限する(ステップS709)。これにより、先行車両Nが加速して車間距離が拡大しても何も対処せず、距離維持を諦める一方で、車間距離が縮まる場合にはその回避のための制動制御が行われる。
【0052】
次に、加速制限部14は、所定の終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS710)。所定の終了条件としては、先行車両Nが減速を始めた場合や、自車両Mが停止信号に従って停止した場合が挙げられる。この終了条件が満たされない場合は、条件が成立するまで判定を繰り返す。一方、この終了条件が満たされた場合は、加速制限解除のための指令をエンジンECU70に送り、自車両Mの加速制限を解除して(ステップS711)、処理を終了する。
【0053】
なお、図示はしていないが、自車両Mのドライバがブレーキ操作をした場合は、仕様通りにACC制御自体がキャンセルされ、図7の処理が終了する。
【0054】
以上、本実施形態に係る車両制御装置101においても、第1実施形態の車両制御装置1と同様の作用効果を奏し得る。特に、本実施形態に係る車両制御装置101では、自車両MがACCによる追従制御されている状況で、先行車両Nが加速した場合に、自車両Mの加速を制限することができるため、追従制御時において、両車両ともに交差点手前で制動制御が行われても急接近することがないことから、ドライバに不安感を与えるおそれを低減することが可能となる。
【0055】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、上記した第1実施形態では、自車両Mが加速される状況にあると推定される場合であって、先行車両Nが停止信号に掛かると推定される場合に、自車両Mの加速を制限していたが、単に先行車両Nが停止信号に掛かると推定される場合に、自車両Mの加速を制限するようにしてもよい。このようにすれば、制御が簡素化される。
【0056】
また、上記した第2実施形態では、自車両M(裏返せば先行車両N)が加速される状況にあると推定される場合であって、先行車両Nが停止信号に掛かると推定される場合であり、且つ、先行車両Nが加速された場合に、自車両Mの加速を制限していたが、単に先行車両Nが停止信号に掛かると推定される場合に、自車両Mの加速を制限するようにしてもよい。或いは、先行車両Nが停止信号に掛かると推定される場合であって、先行車両Nが加速された場合に、自車両Mの加速を制限するようにしてもよい。このようにすれば、制御が簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】前方交差点手前で介入制御により自車両を制動制御して停止線の手前で緊急停止させ得る状況と、先行車両との関係を説明するための図である。
【図2】先行車両と自車両の双方が停止信号に掛かる状況の一例を示す図である。
【図3】先行車両が停止信号に掛からず自車両が停止信号に掛かる状況の一例を示す図である。
【図4】本発明に係る車両制御装置の第1実施形態を示す概略構成図である。
【図5】図4に示す車両制御装置により実行される車両制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る車両制御装置の第2実施形態を示す概略構成図である。
【図7】図6に示す車両制御装置により実行される車両制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1,101…車両制御装置、10,110…車両制御ECU、11…加速推定部(加速推定手段)、12…先行車両検出部(先行車両検出手段)、13…信号表示推定部(信号表示推定手段)、14…加速制限部(加速制限手段)、15…制動制御部、16…信号連動判定部、17…信号点滅判定部、18…追従制御部、19…加速検出部、20…カメラ、30…ミリ波レーダ、40…車速センサ、50…ブレーキセンサ、60…車両側通信装置、70…エンジンECU、80…ブレーキECU、90…路側通信装置、M…自車両、N…先行車両、S…車両用信号機、S…歩行者用信号機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号情報を利用して車両を停止させる制動制御を行う車両制御装置において、
前記車両の先行車両を検出する先行車両検出手段と、
前記先行車両が前方の交差点に進入する時の車両用信号の表示を推定する信号表示推定手段と、
前記車両用信号の表示が停止信号を示すと推定される場合に、前記車両の加速を制限する加速制限手段と、
を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記車両が加速される状況にあるか否かを推定する加速推定手段を備え、
前記加速制限手段は、さらに前記車両が加速される状況にあると推定される場合に、前記車両の加速を制限することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記加速推定手段は、前記車両用信号と連動する歩行者用信号の信号情報に基づいて、前記推定を行うことを特徴とする請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記車両は、前記先行車両に追従制御されており、
前記加速制限手段は、さらに前記先行車両が加速した場合に、前記車両の加速を制限することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−308025(P2008−308025A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157660(P2007−157660)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】