説明

車両搭載用モータ制御装置

【課題】モータあるいはジェネレータの線間放電の発生を抑制することができる車両搭載用モータ制御装置および車両搭載用ジェネレータ制御装置を提供すること。
【解決手段】ハイブリッド車両1−1に搭載されるモータジェネレータ20,30への印加電圧を制御するモータECU53において、気圧を推定する気圧推定部53aを備え、推定された気圧の低下時に、印加電圧の上限値を制限する。従って、線間放電が発生しやすい気圧の低下時に、印加電圧の上限値を制限することで、線間放電が発生しにくい状態にモータジェネレータ20,30を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搭載用モータ制御装置および車両搭載用ジェネレータ制御装置に関し、更に詳しくは、車両に搭載されるモータへの印加電圧を制御する車両搭載用モータ制御装置および車両に搭載されるジェネレータが発生する出力電圧を制御する車両搭載用ジェネレータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、駆動源として、内燃機関のみならずモータジェネレータを用いたハイブリッド車両がある。ハイブリッド車両では、運転状態に応じて、内燃機関が発生した駆動力、モータジェネレータがモータとして機能することで発生した駆動力、あるいは内燃機関およびモータジェネレータにより発生した駆動力のいずれかで走行するものである。ここで、ハイブリッド車両には、例えば特許文献1に示すように、駆動力制御装置が高地走行時など気圧の低下時には、低地走行時、すなわち通常時よりもモータジェネレータの出力割合を大きくし、内燃機関の出力割合を小さくするように、モータジェネレータおよび内燃機関を制御するものがある
【0003】
【特許文献1】特開2006−183523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータジェネレータは、コイルなどで構成されているため気圧が低下した時に、線間放電が発生する虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、気圧が低下した時に、モータあるいはジェネレータの線間放電の発生を抑制することができる車両搭載用モータ制御装置および車両搭載用ジェネレータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明では、車両に搭載されるモータへの印加電圧を制御する車両搭載用モータ制御装置において、気圧を推定する気圧推定手段を備え、前記推定された気圧の低下時に、前記印加電圧を低減あるいは当該印加電圧の上限値を制限することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、線間放電が発生しやすい気圧の低下時に、印加電圧を低減あるいは印加電圧の上限値を制限することで、線間放電が発生しにくい状態にモータを制御する。従って、モータの線間放電の発生を抑制することができる。
【0008】
また、本発明では、上記車両搭載用モータ制御装置において、前記気圧推定手段は、前記車両に搭載されるナビゲーション装置の現在位置情報に基づいて気圧を推定することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、気圧推定手段は、気圧を車両に既に搭載されているナビゲーション装置の現在位置情報、特に現在高度に基づいて推定する。従って、気圧を検出するための新たなセンサを必要としないので、低コスト化を図ることができる。
【0010】
また、本発明では、上記車両搭載用モータ制御装置において、前記気圧推定手段は、気象情報を提供する気象情報提供手段と接続されているネットワークを介して取得した現在位置気象情報に基づいて前記推定された気圧を補正することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、気圧が同一位置においても気象によって変動するが、気象情報を提供する気象情報提供手段と接続されているネットワークを介して取得した現在位置気象情報に基づいて推定された気圧を補正するので、推定される気圧の精度を向上することができる。
【0012】
また、本発明では、上記車両搭載用モータ制御装置において、前記車両を駆動する駆動源が少なくとも内燃機関であり、前記気圧推定手段は、前記車両に搭載される燃料タンク内で発生した蒸発燃料を貯留し、大気を導入することにより貯留された前記蒸発燃料を前記内燃機関に供給し、当該内燃機関で燃焼処理する蒸発燃料処理システムの異常診断に用いられる圧力検出手段により、検出された圧力に基づいて気圧を推定することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、気圧推定手段は、気圧を車両に既に設けられている蒸発燃料処理システムの異常診断に用いられる圧力検出手段に基づいて推定する。従って、気圧を検出するための新たなセンサを必要としないので、低コスト化を図ることができる。
【0014】
なお、上記車両搭載用モータ制御装置において、前記モータは、前記車両を駆動する駆動源であることが好ましい。
【0015】
また、本発明では、車両に搭載されるジェネレータが発生する出力電圧を制御する車両搭載用ジェネレータ制御装置において、気圧を推定する気圧推定手段を備え、前記検出された気圧の低下時に、前記出力電圧を低減あるいは当該出力電圧の上限値を制限することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、線間放電が発生しやすい気圧の低下時に、出力電圧を低減あるいは出力電圧の上限値を制限することで、線間放電が発生しにくい状態にジェネレータを制御する。従って、ジェネレータの線間放電の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる車両搭載用モータ制御装置および車両搭載用ジェネレータ制御装置は、モータおよびジェネレータの線間放電の発生を抑制することができ、バッテリの消費電力を抑制できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、下記の実施の形態では、内燃機関およびモータジェネレータを駆動源として駆動するハイブリッド車両の駆動源であるモータジェネレータを車両搭載用モータおよび車両搭載用ジェネレータとする。また、下記の実施の形態では、動力伝達機構を介して内燃機関および/またはモータジェネレータの駆動力を車輪に伝達するハイブリッド車両について説明するが本発明はこれに限定されるものではなく、前輪に内燃機関の駆動力を伝達し、後輪にモータジェネレータの駆動力を伝達しても良い。
【0019】
〔実施の形態1〕
図1は、実施の形態1にかかるハイブリット車両の概略構成例を示す図である。図1に示すように、ハイブリッド車両1−1は、内燃機関10と、主に発電機として機能するモータジェネレータ20と、主に電動機として機能するモータジェネレータ30と、動力分割手段であるプラネタリギヤ40と、ハイブリッドECU51と、エンジンECU52と、モータECU53と、バッテリECU54と、バッテリ60と、インバータ70と、ナビゲーション装置80とにより構成されている。なお、バッテリ60は、モータジェネレータ20,30を発電機として機能させた場合に発生する電力を蓄電するものである。また、インバータ70は、直流と交流の変換を行うものであり、直流電流で充放電されるバッテリ60と交流電流で電動機あるいは発電機として機能するモータジェネレータ20,30との間における電力のやり取りを行うものである。
【0020】
内燃機関10は、ガソリンエンジンあるいはディーゼルエンジンなどであり、燃料タンク11に貯留されている燃料を燃料供給手段である燃料噴射弁12により噴射し、噴射された燃料と吸気経路13から吸気された空気との混合気が爆発し、図示しないピストンを往復運動させることで、内燃機関10の出力軸であるクランクシャフト14を回転させるものである。つまり、内燃機関10から出力される動力により、クランクシャフト14に車両の前進方向に回転させようとする出力トルクが作用する。内燃機関10は、エンジンECU52により、運転者の意志、ハイブリッド車両1−1の走行状態に応じて運転制御される。なお、クランクシャフト14は、フライホイール15が固定されており、フライホイール15を介してプラネタリギヤ40の主軸41が連結されている。
【0021】
モータジェネレータ20,30は、モータであるとともにジェネレータであり、同期モータジェネレータである。モータジェネレータ20,30は、それぞれ回転軸21,31と、回転子22,32と、固定子23,33とにより構成されている。回転軸21,31には、永久磁石である回転子22,32が複数個それぞれ固定されている。固定子23,33は、それぞれ回転子22,32と対向する位置に配置され、図示しないハウジングに固定されている。また、固定子23,33は、回転磁界を形成する図示しない三相コイルが巻回されている。モータジェネレータ20,30のそれぞれの図示しない三相コイルは、インバータ70に接続されている。インバータ70は、モータECU53から出力される出力信号により、モータジェネレータ20,30を電動機あるいは発電機として機能するように、駆動制御するものである。具体的には、モータジェネレータ20,30は、インバータ70を介して、バッテリ60に充電された電力(モータジェネレータ20,30を発電機として機能させることで発電された電力)を供給することで、各回転軸21,31を回転させる電動機として機能する。また、モータジェネレータ20,30は、各回転軸21,31が外力(内燃機関10が発生する出力トルクも含む)により回転している場合には、図示しない三相コイルに起電力が発生するため、発電機として機能し、発電された電力をバッテリ60に充電、モータジェネレータ20,30に供給することもできる。
【0022】
プラネタリギヤ40は、動力分割手段であり、内燃機関10と、モータジェネレータ20,30とが機械的に連結されている。プラネタリギヤ40は、主軸41と、サンギヤ42と、ピニオン43と、キャリヤ44と、リングギヤ45とにより構成されている。主軸41は、クランクシャフト14と連結され、他端がキャリヤ44と連結されている。つまり、内燃機関10とキャリヤ44とが連結されている。サンギヤ42は、モータジェネレータ20の回転軸21と連結されており、サンギヤ42にモータジェネレータ20が連結されている。ピニオン43は、サンギヤ42と噛み合い、その周囲に複数個(例えば、3個)配置されている。各ピニオン43は、サンギヤ42の周囲で一体に公転可能に支持するキャリヤ44に保持されている。リングギヤ45は、キャリヤ44に保持された各ピニオン43と噛み合い、駆動軸46に形成されている。駆動軸46の一端には、モータジェネレータ30の回転軸31が連結されており、駆動軸46にモータジェネレータ30が連結されている。また、駆動軸46の他端には、例えばチェーンドライブスプロケット47が固定され、チェーンドライブスプロケット47と減速機100との間にチェーンベルト90が巻かれている。内燃機関10あるいはモータジェネレータ30の少なくとも一方から出力される駆動力は、駆動軸46、チェーンベルト90、減速機100、デファレンシャルギア機構110を介して、車軸121,122に伝達され、さらに車軸121,122のそれぞれに装着された車輪131,132に伝達される。
【0023】
ハイブリッドECU51は、ハイブリッド車両1−1の運転制御を行うものである。ハイブリッドECU51は、エンジンECU52と、モータECU53と、バッテリECU54とに接続され、互いにデータのやりとりを行うことができる。ハイブリッドECU51は、主に、アクセル開度と、車速と、図示しない記憶部に記憶されているアクセル開度および車速のマップとに基づいて、要求駆動トルクTpを算出するものである。そして、算出された要求駆動トルクTpに基づいて、内燃機関10に要求するエンジン要求トルクPe、モータジェネレータ20に要求するモータ要求トルクTg、モータジェネレータ30に要求するモータ要求トルクTmを算出する。そして、エンジンECU52に要求トルクPe、モータECU53にモータ要求トルクTg,Tmを出力する。ここで、アクセル開度は、図示しないアクセルペダルに取り付けられたアクセル開度センサにより検出されるものである。また、車速は、例えば、図示しない車輪に設けられた車輪速センサにより検出された車輪速に基づいたもの、モータECU53を介して入力されたモータジェネレータ20,30の回転軸21,31におけるモータ回転数に基づいたものであっても良い。
【0024】
エンジンECU52は、ハイブリッドECU51により算出され、出力されたエンジン要求トルクPeに基づいて内燃機関10の運転制御を行うものである。具体的には、エンジンECU52は、エンジン要求トルクPeに基づいて、噴射信号、点火信号、開度信号などを内燃機関10に出力し、これらの出力信号によりこの内燃機関10に供給される燃料の燃料供給量や噴射タイミングなどの燃料噴射制御、図示しない点火プラグの点火制御、内燃機関10の吸気経路13に設けられた図示しないスロットルバルブのバルブ開度制御などが行われる。なお、エンジンECU52に入力された内燃機関10の運転状態に基づく情報などは、適宜ハイブリッドECU51に出力される。
【0025】
モータECU53は、車両搭載用モータ制御装置であるとともに、車両搭載用ジェネレータ制御装置でもある。モータECU53は、ハイブリッドECU51により算出され、出力されたモータ要求トルクTg,Tmに基づいて、インバータ70を介してモータジェネレータ20,30の力行制御あるいは回生制御を行うものである。つまり、モータECU53は、モータ要求トルクTg,Tmに基づいて、インバータ70を介して、モータジェネレータ20,30を電動機あるいは発電機として機能するように制御する。
【0026】
ここで、モータECU53は、モータジェネレータ20,30をモータ、すなわち電動機として機能させる場合には、モータジェネレータ20,30への印加電圧を例えば予め設定されている上限値を超えない範囲で設定し、インバータ70がモータECU53により設定された印加電圧をモータジェネレータ20,30に印可することで、力行制御を行う。つまり、モータECU53は、ハイブリッド車両1−1に搭載されるモータであるモータジェネレータ20,30への印加電圧を制御するものである。また、モータECU53は、モータジェネレータ20,30をジェネレータ、すなわち発電機として機能させる場合には、モータジェネレータ20,30が発生する起電力に基づいた出力電圧を例えば予め設定されている上限値を超えない範囲で設定し、インバータ70がモータECU53により設定された出力電圧をモータジェネレータ20,30に発生させることで、回生制御を行う。つまり、モータECU53は、ハイブリッド車両1−1に搭載されるジェネレータであるモータジェネレータ20,30の出力電圧を制御するものである。
【0027】
また、モータECU53は、気圧推定部53aとしての機能を有する。気圧推定部53aは、気圧推定手段であり、ハイブリッド車両1−1の現在位置における気圧を推定するものである。実施の形態1では、ハイブリッド車両1−1に搭載されるナビゲーション装置80の現在位置情報に基づいて気圧を推定するものである。具体的には、後述する取得された現在高度に基づいて、気圧を推定する。
【0028】
また、モータECU53は、気圧推定部53aにより推定された気圧の低下時に、印加電圧および出力電圧の上限値を制限する。具体的には、気圧推定部53aにより推定された気圧Pが所定気圧P1以下となった場合に、印加電圧および出力電圧の上限値を気圧推定部53aにより推定された気圧Pが所定気圧P1を超える場合、すなわち通常走行時における印加電圧および出力電圧の上限値よりも低く設定する。ここで、所定気圧P1とは、通常走行時において設定されている上限値の印加電圧がモータジェネレータ20,30へ印加、あるいは上限値の出力電圧をモータジェネレータ20,30が発生することで、モータジェネレータ20,30、例えば図示しない三相コイルなどに線間放電が発生する虞がある気圧である。従って、気圧推定部53aにより推定された気圧の低下時には、インバータ70により、モータジェネレータ20,30への印加電圧およびモータジェネレータ20,30が発生する出力電圧がモータジェネレータ20,30に線間放電が発生する虞がある電圧になることを抑制することができる。
【0029】
バッテリECU54は、バッテリ60の充電状態を監視するものである。バッテリECU54に入力されたバッテリ60の充電状態に基づく情報、例えば充電量SOC(State of Charge)は、ハイブリッドECU51に出力される。ここで、ハイブリッドECU51は、例えばバッテリ60の充電状態に基づいて、エンジンECU52に出力するエンジン要求トルクPeを補正する。上記各ECUは、入力信号や出力信号の入出力を行う入出力ポート(I/O)と、処理部と、各種マップなどが格納されている記憶部などによりそれぞれ構成されている。
【0030】
ナビゲーション装置80は、ハイブリッド車両1−1に搭載されるものであり、ハイブリッド車両1−1の現在位置情報を取得するものである。ここで、ナビゲーション装置80は、少なくともGPS(Global Positioning System)の受信機として機能するものである。従って、ナビゲーション装置80は、ハイブリッド車両1−1の現在位置情報として、現在緯度、現在経度、現在高度を取得することができる。実施の形態1のハイブリッド車両1−1では、取得された現在高度がハイブリッドECU51を介してモータECU53に出力される。
【0031】
次に、ハイブリッド車両1−1の動作について説明する。ここでは、ハイブリッド車両1−1の現在位置における気圧の変化に伴う、モータECU53の動作について説明する。図2は、実施の形態1にかかるモータECUの動作フローを示す図である。
【0032】
まず、モータECU53の気圧推定部53aは、現在高度を取得する(ステップST11)。ここでは、モータECU53は、ナビゲーション装置80がハイブリッドECU51を介して出力した現在高度を取得する。
【0033】
次に、気圧推定部53aは、取得された現在高度に基づいて気圧Pを推定する(ステップST12)。ここでは、気圧推定部53aは、ハイブリッド車両1−1の現在位置における気圧を例えば、取得された現在高度と、予め記憶されている現在高度と気圧Pとの対応関係からなる図示しない高度気圧マップとに基づいて気圧Pを推定する。
【0034】
次に、モータECU53は、推定された気圧Pが所定気圧P1以下であるか否かを判定する(ステップST13)。
【0035】
次に、モータECU53は、推定された気圧Pが所定気圧P1以下であると判定する(ステップST13肯定)と、印加電圧の上限値、および出力電圧の上限値を制限する(ステップST14)。ここでは、モータECU53は、気圧推定部53aにより推定された気圧の低下時に、印加電圧の上限値、および出力電圧の上限値を気圧推定部53aにより推定された気圧Pが所定気圧P1を超える場合、すなわち通常走行時における印加電圧および出力電圧の上限値よりも低く設定することで、上限値を制限する。なお、モータECU53は、推定された気圧Pが所定気圧P1を超えると判定する(ステップST13否定)と、現在の制御周期を終了し、次に制御周期に移行する。
【0036】
以上のように、実施の形態1にかかるハイブリッド車両1−1では、気圧推定部53aにより推定された気圧の低下時に、すなわち線間放電が発生しやすい気圧時に、印加電圧を低減あるいは印加電圧の上限値を制限することで、モータECU53は、インバータ70により、モータジェネレータ20,30への印加電圧およびモータジェネレータ20,30が発生する出力電圧がモータジェネレータ20,30に線間放電が発生する虞がある電圧になることを抑制することができる。つまり、モータECU53は、線間放電が発生しにくい状態にモータジェネレータ20,30を制御する。従って、モータジェネレータ20,30の線間放電の発生を抑制することができる。
【0037】
また、気圧推定部53aは、気圧をハイブリッド車両1−1に既に搭載されているナビゲーション装置80の現在位置情報、特に現在高度に基づいて推定する。従って、気圧を検出するための新たなセンサを必要としないので、低コスト化を図ることができる。
【0038】
なお、上記実施の形態1では、気圧推定部53aは、現在高度のみに基づいて気圧を推定するが本発明はこれに限定されるものではない。図3は、実施の形態1にかかるモータECUの他の動作フローを示す図である。同図に示すように、ハイブリッド車両1−1の現在位置における気象情報を取得して、気圧推定部53aにより推定された気圧Pを補正しても良い。例えば、ナビゲーション装置80は、気象情報を提供する図示しない気象情報提供手段とネットワークを介して接続されている。ナビゲーション装置80は、現在位置情報として取得した現在緯度、現在経度に対応した気象情報を現在気象情報として取得するものとする。
【0039】
モータECU53の気圧推定部53aは、同図に示すように、現在高度を取得し(ステップST11)、取得された現在高度に基づいて気圧Pを推定する(ステップST12)と、現在位置気象情報を取得する(ステップST15)。ここでは、気圧推定部53aは、ハイブリッド車両1−1の現在位置における気象情報を取得する。
【0040】
次に、気圧推定部53aは、推定された気圧Pを取得された現在位置気象情報に基づいて補正する(ステップST16)。ここでは、気圧推定部53aは、推定された気圧Pを例えば、取得された現在位置気象情報と、予め記憶されている現在位置気象情報と気圧P´との対応関係からなる図示しない気象気圧マップとに基づいて気圧Pを気圧P´に補正する。なお、気象気圧マップは、例えば現在位置気象情報が晴れよりも曇りの場合に、補正された気圧P´が低くなるように設定されている。
【0041】
次に、モータECU53は、補正された気圧P´が所定気圧P1以下であるか否かを判定し(ステップST13)、補正された気圧P´が所定気圧P1以下であると判定する(ステップST13肯定)と、印加電圧の上限値、および出力電圧の上限値を制限する(ステップST14)。
【0042】
以上のように、取得した現在位置気象情報に基づいて推定された気圧Pを補正するので、推定された気圧が実際の気圧が気象により変動に追従することができるので、推定される気圧の精度を向上することができる。
【0043】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2にかかるハイブリット車両の概略構成例を示す図である。図4は、実施の形態2にかかるハイブリット車両の概略構成例を示す図である。図4に示す実施の形態2にかかるハイブリッド車両1−2が図1に示す実施の形態1にかかるハイブリッド車両1−1と異なる点は、気圧推定部53aがナビゲーション装置ではなく、蒸発燃料システムの異常診断に用いられる圧力センサ168により検出された圧力に基づいて気圧Pを推定する点である。なお、実施の形態2にかかるハイブリッド車両1−2の基本的構成は、実施の形態1にかかるハイブリッド車両1−1の基本的構成とほぼ同一である。従って、同一符号箇所については、その説明を省略あるいは簡略化する。実施の形態2にかかるハイブリッド車両1−2は、内燃機関10が蒸発燃料処理システム16を備える。
【0044】
蒸発燃料処理システム16は、燃料タンク11内で発生した蒸発燃料を内燃機関10で燃焼処理するものである。蒸発燃料処理システム16は、封鎖用電磁弁161と、パージ用電磁弁162と、キャニスタ163と、切替弁164と、切替弁駆動装置165と、ポンプ166と、逆止弁167と、圧力センサ168とにより構成されている。
【0045】
封鎖用電磁弁161は、燃料タンク11とキャニスタ163とを接続する蒸発燃料通路169aの途中に設けられている。封鎖用電磁弁161は、燃料タンク11とキャニスタ163との連通、連通の遮断をするものである。
【0046】
パージ用電磁弁162は、キャニスタ163と吸気経路13とを接続する蒸発燃料通路169bの途中に設けられている。パージ用電磁弁162は、キャニスタ163と吸気経路13との連通、連通の遮断をするものである。
【0047】
キャニスタ163は、燃料タンク11内で発生した蒸発燃料を貯留するものであり、図示しない吸着材(例えば、活性炭)が設けられている。
【0048】
切替弁164は、連通状態を切り替えることで、キャニスタ163を外部、すなわち大気に開放するものである。切替弁164は、第1連通部164aと、第2連通部164bとにより構成されている。ここで、第1連通部164aがキャニスタ163と連通する場合は、一方の端部が大気に開放されている蒸発燃料通路169cに連通する。つまり、切替弁164は、第1連通部164aによりキャニスタ163を大気に開放する。従って、キャニスタ163内に大気が導入され、図示しない吸着材に吸着されることで貯留されていた蒸発燃料が吸気経路13に発生する負圧により吸気経路13を介して内燃機関10に供給される。内燃機関10に供給された蒸発燃料は、内燃機関により燃焼処理される。また、第2連通部164bがキャニスタ163と連通する場合は、一方の端部が蒸発燃料通路169cと連通する蒸発燃料通路169dに連通する。ここで、蒸発燃料通路169dは、蒸発燃料通路169cから蒸発燃料通路169dへの気体の通過のみを許容する逆止弁167およびポンプ166が途中に設けられている。従って、切替弁164は、第2連通部164bによりキャニスタ163を大気に開放せず密閉することができる。
【0049】
切替弁駆動装置165は、切替弁164を駆動するものである。つまり、切替弁駆動装置165は、キャニスタ163と、第1連通部164aあるいは第2連通部164bとの切換を行うものである。切替弁駆動装置165は、エンジンECU52と接続されており、エンジンECU52により駆動制御が行われる。
【0050】
ポンプ166は、第2連通部164bによりキャニスタ163を大気に開放せず密閉された状態で、キャニスタ163に負圧を発生させるものである。具体的には、ポンプ166は、第2連通部164bによりキャニスタ163が密閉された状態で駆動することで、逆止弁167を介して、キャニスタ163内の気体を大気に排気し、キャニスタ163に負圧を発生させる。
【0051】
圧力センサ168は、圧力検出手段であり、蒸発燃料通路169eの途中に設けられている。蒸発燃料通路169eは、一方の端部がキャニスタ163と接続されており、他方の端部が蒸発燃料通路169dと接続されている。つまり、圧力センサ168は、キャニスタ163が第1連通部164aと連通している状態で、蒸発燃料通路169eと蒸発燃料通路169cとが第1連通部164aを介して連通するので、キャニスタ163が大気に開放された状態のキャニスタ163内の圧力を検出することができる。つまり、圧力センサ168は、内燃機関10の運転状態に拘わらず、キャニスタ163が大気に開放された状態のキャニスタ163内の圧力、すなわちハイブリッド車両1−2の現在位置における気圧を検出することができる。また、キャニスタ163が第2連通部164bと連通している状態で、蒸発燃料通路169eと蒸発燃料通路169dとが第2連通部164bを介して連通するので、キャニスタ163が密閉された状態のキャニスタ163内の圧力を検出することができる。ここで、圧力センサ168は、エンジンECU52と接続されており、検出された圧力がエンジンECU52に出力される。
【0052】
蒸発燃料処理システム16の異常診断では、封鎖用電磁弁161およびパージ用電磁弁162を閉弁し、第2連通部164bによりキャニスタ163を密閉状態にし、ポンプ166を駆動することで、キャニスタ163に負圧を発生させる。そして、キャニスタ163に負圧が発生した状態で、圧力センサ168により検出された圧力変動に基づいて、異常を検出する。
【0053】
次に、ハイブリッド車両1−2の動作について説明する。ここでは、ハイブリッド車両1−2の現在位置における気圧の変化に伴う、モータECU53の動作について説明する。図5は、実施の形態2にかかるモータECUの動作フローを示す図である。
【0054】
まず、圧力センサ168は、圧力pを検出する(ステップST21)。ここでは、圧力センサ168は、キャニスタ163が第1連通部164aと連通し、キャニスタ163が大気に開放された状態における圧力pを検出する。
【0055】
次に、モータECU53の気圧推定部53aは、検出された圧力pに基づいて気圧Pを推定する(ステップST22)。ここでは、気圧推定部53aは、ハイブリッドECU51を介して、圧力センサ168によりエンジンECU52に出力された検出された圧力pを取得し、取得した圧力pをハイブリッド車両1−1の現在位置における気圧に置き換えることで、気圧Pを推定する(P=p)。ここで、内燃機関10が運転状態で圧力センサ168により検出される圧力は、キャニスタ163を介して吸気経路13に発生する負圧により大気が導入されるため、ハイブリッド車両1−1の現在位置における気圧に近似したものとなる。この場合は、取得された圧力pと、予め記憶されている取得された圧力pと気圧Pとの対応関係からなる図示しない圧力気圧マップとに基づいて気圧Pを推定することが精度向上のために好ましい。
【0056】
次に、モータECU53は、推定された気圧Pが所定気圧P1以下であるか否かを判定する(ステップST23)。
【0057】
次に、モータECU53は、推定された気圧Pが所定気圧P1以下であると判定する(ステップST23肯定)と、印加電圧の上限値、および出力電圧の上限値を制限する(ステップST24)。ここでは、モータECU53は、気圧推定部53aにより推定された気圧の低下時に、印加電圧の上限値、および出力電圧の上限値を気圧推定部53aにより推定された気圧Pが所定気圧P1を超える場合、すなわち通常走行時における印加電圧および出力電圧の上限値よりも低く設定することで、上限値を制限する。なお、モータECU53は、推定された気圧Pが所定気圧P1を超えると判定する(ステップST24否定)と、現在の制御周期を終了し、次に制御周期に移行する。
【0058】
以上のように、実施の形態2にかかるハイブリッド車両1−2では、気圧推定部53aにより推定された気圧の低下時に、すなわち線間放電が発生しやすい気圧時に、印加電圧を低減あるいは印加電圧の上限値を制限することで、モータECU53は、インバータ70により、モータジェネレータ20,30への印加電圧およびモータジェネレータ20,30が発生する出力電圧がモータジェネレータ20,30に線間放電が発生する虞がある電圧になることを抑制することができる。つまり、モータECU53は、線間放電が発生しにくい状態にモータジェネレータ20,30を制御する。従って、モータジェネレータ20,30の線間放電の発生を抑制することができる。
【0059】
また、気圧推定部53aは、気圧をハイブリッド車両1−2に既に搭載されている内燃機関10の蒸発燃料処理システム16の圧力センサ168により検出された圧力に基づいて推定する。従って、気圧を検出するための新たなセンサを必要としないので、低コスト化を図ることができる。
【0060】
なお、上記実施の形態1,2では、推定された気圧Pが所定気圧P1以下である場合に、印加電圧の上限値、および出力電圧の上限値を制限するが本発明は、これに限定されるものではない。例えば、推定された気圧Pの低下に伴い、印加電圧の上限値、および出力電圧の上限値を減少させても良い。
【0061】
また、上記実施の形態1,2では、気圧推定部53aにより推定された気圧の低下時に、印加電圧の上限値、および出力電圧の上限値を制限するが本発明は、これに限定されるものではない。例えば、モータECU53は、モータジェネレータ20,30へ印加される印加電圧およびモータジェネレータ20,30が発生する出力電圧を低減するように、インバータ70を介してモータジェネレータ20,30を制御しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、車両搭載用モータ制御装置および車両搭載用ジェネレータ制御装置は、車両に搭載されるモータへの印加電圧を制御する車両搭載用モータ制御装置および車両に搭載されるジェネレータが発生する出力電圧を制御する車両搭載用ジェネレータ制御装置に有用であり、特に、モータあるいはジェネレータの線間放電の発生を抑制するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施の形態1にかかるハイブリット車両の概略構成例を示す図である。
【図2】実施の形態1にかかるモータECUの動作フローを示す図である。
【図3】実施の形態1にかかるモータECUの他の動作フローを示す図である。
【図4】実施の形態2にかかるハイブリット車両の概略構成例を示す図である。
【図5】実施の形態2にかかるモータECUの動作フローを示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 ハイブリット車両
10 内燃機関
11 燃料タンク
12 燃料噴射弁
13 吸気経路
14 クランクシャフト
15 フライホイール
16 蒸発燃料処理システム
20,30 モータジェネレータ
21,31 回転軸
22,32 回転子
23,33 固定子
40 プラネタリギヤ
41 主軸
42 サンギヤ
43 ピニオン
44 キャリヤ
45 リングギヤ
46 駆動軸
51 ハイブリットECU
52 エンジンECU
53 モータECU(車両搭載用モータ制御装置、車両搭載用ジェネレータ制御装置)
54 バッテリECU
60 バッテリ
70 インバータ
80 ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるモータへの印加電圧を制御する車両搭載用モータ制御装置において、
気圧を推定する気圧推定手段を備え、
前記推定された気圧の低下時に、前記印加電圧を低減あるいは当該印加電圧の上限値を制限することを特徴とする車両搭載用モータ制御装置。
【請求項2】
前記気圧推定手段は、前記車両に搭載されるナビゲーション装置の現在位置情報に基づいて気圧を推定することを特徴とする請求項1に記載の車両搭載用モータ制御装置。
【請求項3】
前記気圧推定手段は、気象情報を提供する気象情報提供手段と接続されているネットワークを介して取得した現在位置気象情報に基づいて前記推定された気圧を補正することを特徴とする請求項2に記載の車両搭載用モータ制御装置。
【請求項4】
前記車両を駆動する駆動源が少なくとも内燃機関であり、
前記気圧推定手段は、前記車両に搭載される燃料タンク内で発生した蒸発燃料を貯留し、大気を導入することにより貯留された前記蒸発燃料を前記内燃機関に供給し、当該内燃機関で燃焼処理する蒸発燃料処理システムの異常診断に用いられる圧力検出手段により、検出された圧力に基づいて気圧を推定することを特徴とする請求項1に記載の車両搭載用モータ制御装置。
【請求項5】
前記モータは、前記車両を駆動する駆動源であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両搭載用モータ制御装置。
【請求項6】
車両に搭載されるジェネレータが発生する出力電圧を制御する車両搭載用ジェネレータ制御装置において、
気圧を推定する気圧推定手段を備え、
前記検出された気圧の低下時に、前記出力電圧を低減あるいは当該出力電圧の上限値を制限することを特徴とする車両搭載用ジェネレータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−22098(P2009−22098A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182341(P2007−182341)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】