説明

車両用ロール抑制システム

【課題】実用性の高い車両用ロール抑制システムを提供する。
【解決手段】モータ力に依拠してロール抑制力を制御可能に発生させるロール抑制装置が前輪側と後輪側とに対応して1対設けられたシステムにおいて、1対のロール抑制装置に対応して設けられた前輪側バッテリ27Fおよび後輪側バッテリ27Rと、前輪側バッテリから前輪側ロール抑制装置の有する電磁モータ60Fへの電力供給のための前輪側電力供給線98F、および、後輪側バッテリから後輪側ロール抑制装置の有する電磁モータ60Rへの電力供給のための後輪側電力供給線98Rとを備え、供給線接続装置100,102によって2本の電力供給線を電気的に接続可能に構成される。このような構成のシステムによれば、電磁モータに供給すべき電力が不足しても、1対のロール抑制装置の一方が発生させるロール抑制力を大きくし、車両の旋回特性の適切化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁式のロール抑制装置、詳しくは、電磁モータの力によって車両の旋回に起因する車体のロールを抑制するロール抑制装置を備える車両用ロール抑制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁モータの力によって車両の旋回に起因する車体のロールを抑制するロール抑制力を制御可能に発生させる電磁式のロール抑制装置を前輪側と後輪側との各々に配備した車両用ロール抑制システムは、車体のロールを適切に制御できるという理由から、近年、開発が急速に進められ、既に実用化され始めている。そのような車両用ロール抑制システムとしては、例えば、下記特許文献に示すようなシステムが検討されている。
【特許文献1】特開2005−161949号広報
【特許文献2】特開2006−21594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記ロール抑制装置を前輪側と後輪側との各々に対応して設けた車両用ロール抑制システムでは、車体のロールを適切に抑制するという目的からすれば、ロール抑制装置が発生可能なロール抑制力はある程度大きいことが望ましく、ロール抑制装置の備える電磁モータの電力供給源としてのバッテリは比較的大きな電気容量のものが望ましい。その一方で、車両への搭載性等の観点から、1つの電磁モータに対して比較的小容量のバッテリが1つ設けられる構造のシステムが考えられる。ところが、このような構造のシステムにおいては、ロール抑制装置は電力不足のために必要とされる大きさのロール抑制力を発生させることができない場合がある。前後輪のロール剛性配分は、車両の旋回特性を適切なものとすべく、あらかじめ設定されているが、電磁モータへの供給電力が不足すると、実際の前後輪のロール剛性配分が設定されたロール剛性配分とは異なり、適切な車両の旋回特性が得られない場合がある。その場合、適切な車両の旋回特性を担保するための何らかの手段が望まれ、有効な手段を採用することが、車両用ロール抑制システムの実用性の向上に繋がることになる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高い車両用ロール抑制システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の車両用ロール抑制システムは、電磁モータの発生させる力に依拠してロール抑制力を制御可能に発生させるロール抑制装置が前輪側と後輪側とに対応して1対設けられたシステムであって、(a)1対のロール抑制装置に対応して設けられた前輪側バッテリおよび後輪側バッテリと、(b)前輪側バッテリから前輪側ロール抑制装置の有する電磁モータへの電力供給のための前輪側電力供給線、および、後輪側バッテリから後輪側ロール抑制装置の有する電磁モータへの電力供給のための後輪側電力供給線とを備え、設定された条件の下で、前輪側電力供給線と後輪側電力供給線とを電気的に接続可能に構成される。
【発明の効果】
【0005】
本発明の車両用ロール抑制システムでは、2本の電力供給線を電気的に接続することで、前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置とのうちの1つの装置が、前輪側バッテリと後輪側バッテリとの2つのバッテリからの供給電力によってロール抑制力を発生させることが可能である。したがって、本発明の車両用ロール抑制システムによれば、電磁モータへの供給電力不足のために車両の旋回特性の適切化を図ることができないと想定される場合において、例えば、前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置とのうちの1つの装置が、1つのバッテリからの電力供給によって発生させられるロール抑制力より大きなロール抑制力を発生させることが可能となり、車両の旋回特性の適切化を図ることが可能となる。
【発明の態様】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に、(3)項ないし(8)項の各々が請求項2ないし請求項7の各々に、(11)項が請求項8に、(12)項と(13)項とを合わせたものが請求項9に、(14)項ないし(16)項の各々が請求項10ないし請求項12の各々に、それぞれ相当する。
【0008】
(1)それぞれが、電磁モータを有し、それの発生させる力に依拠して車両の旋回に起因する車体のロールを抑制するロール抑制力を発生させる前輪側ロール抑制装置および後輪側ロール抑制装置と、
前記前輪側ロール抑制装置および前記後輪側ロール抑制装置に対応して設けられた前輪側バッテリおよび後輪側バッテリと、
前記前輪側バッテリから前記前輪側ロール抑制装置の有する前記電磁モータへの電力供給のための前輪側電力供給線、および、前記後輪側バッテリから前記後輪側ロール抑制装置の有する前記電磁モータへの電力供給のための後輪側電力供給線と、
自身が作動させられることによって前記前輪側電力供給線と前記後輪側電力供給線とを電気的に接続する供給線接続装置と、
(a)前記前輪側ロール抑制装置および前記後輪側ロール抑制装置の各々が有する前記電磁モータへの供給電力を制御することで、それら前輪側ロール抑制装置および後輪側ロール抑制装置が発生させるロール抑制力を、車体が受けるロールモーメントに応じて制御するロール抑制力制御部と、(b)設定された条件の下、前記供給線接続装置を作動させる供給線接続制御部とを有する制御装置と
を備えた車両用ロール抑制システム。
【0009】
前輪側と後輪側とに対応して1対のロール抑制装置が設けられるシステムには、1対のロール抑制装置に対応して1対の電力供給源としてのバッテリが設けられる構造、つまり、1つのロール抑制装置の電磁モータに対応して1つのバッテリが設けられ、その1つの電磁モータにその1つのバッテリから電力が供給される構造のものが考えられ、このような構造のシステムに比較的小型のバッテリを採用すれば、車両への搭載性を向上させることが可能である。ところが、発生させるべきロール抑制力が大きくなると、小型のバッテリからの供給電力では電磁モータへの供給電力が不足し、必要とされる大きさのロール抑制力を発生させることができない場合がある。また、車両の旋回特性を適切なものとすべく、前後輪のロール剛性配分があらかじめ設定されており、その設定されたロール剛性配分に従って、前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置との各々がロール抑制力を発生させる。このため、電磁モータへの供給電力が不足すると、実際の前後輪のロール剛性配分が設定されたロール剛性配分とは異なり、適切な車両の旋回特性が得られない場合がある。
【0010】
本項に記載の車両用ロール抑制システムでは、供給線接続装置を作動させて2本の電力供給線を電気的に接続することで、前輪側バッテリと後輪側バッテリとの2つのバッテリから前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置とのうちの1つの装置へ電力を供給することが可能であり、その1つのロール抑制装置が、1つのバッテリからの電力供給によって発生させられるロール抑制力より大きなロール抑制力を発生させることが可能となる。したがって、本項に記載の車両用ロール抑制システムによれば、電力不足のために車両の旋回特性の適切化を図ることができないと想定される場合において、前輪側のロール剛性と後輪側のロール剛性との一方を高めることが可能となり、車両の旋回特性の適切化を図ることが可能となる。
【0011】
本項に記載の「ロール抑制装置」の構成は、特に限定されるものではなく、例えば、後に説明するように、スタビライザバーと電磁式のアクチュエータとを備え、アクチュエータの発生させる力をスタビライザバーに作用させるとともに、その力をロール抑制力として発生させるような構成であってもよく、電磁モータの発生させる力に依拠してばね上部とばね下部とを接近・離間させる方向の力を発生させる装置を左右の車輪に対応して備え、車両の旋回時において、旋回内輪に対応する装置がばね上部とばね下部とを接近、かつ、旋回外輪に対応する装置がばね上部とばね下部とを離間させるような構成であってもよい。そのロール抑制装置の動力源である「電磁モータ」は、その型式等は特に限定されず、DCブラシレスモータを始めとして種々の型式のモータを採用可能であり、また、動作に関して言えば、回転モータであっても、リニアモータであってもよい。
【0012】
本項に記載の「供給線接続装置」は、前輪側電力供給線と後輪側電力供給線とを電気的に導通させるものであり、例えば、前輪側バッテリから後輪側ロール抑制装置の有する電磁モータ、若しくは、後輪側バッテリから前輪側ロール抑制装置の有する電磁モータへの電力供給を可能とするものである。
【0013】
(2)前記供給線接続制御部が、車体が受けるロールモーメントが設定閾値を超える条件の下、前記供給線接続装置を作動させるように構成された(1)項に記載の車両用ロール抑制システム。
【0014】
本項に記載の態様は、供給線接続装置を作動させる条件を限定した態様である。車体が受けるロールモーメントが大きくなると、発生させるべきロール抑制力も大きくなり、電磁モータへの供給電力が不足する可能性が高まる。また、車体が受けるロールモーメントが大きいときにこそ、車両の旋回特性の適切化を図ることが望ましい。特に、緊急操舵時等には、車体が受けるロールモーメントは大きくなり、車両の旋回特性の適切化が望まれる。したがって、本項に記載の態様によれば、最適の条件において供給線接続装置を作動させ、車両の旋回特性の適切化を図ることが可能となる。本項に記載の態様において、車体が受けるロールモーメントが設定閾値を超えるか否かは、車体が受けるロールモーメントの大きさを指標するもので判定すればよく、例えば、ロールモーメント自体を始めとして、車両の操舵角,車両の操舵角速度,車両走行速度,車体に発生している横加速度,車両に発生しているヨーレートといった種々のものを用いて判定すればよい。
【0015】
(3)前記供給線接続制御部が、車両の操舵の急激さを指標する急操舵指標量が設定閾値を超える条件の下、前記供給線接続装置を作動させるように構成された(1)項または(2)項に記載の車両用ロール抑制システム。
【0016】
車両が急激に操舵される時、つまり、緊急操舵時において、発生させるべきロール抑制力は大きくなり、電磁モータへの供給電力が不足する可能性が高まる。また、緊急操舵時において、適切な車両の旋回特性が得られないと、スピン,ドリフトアウト等を生じる虞がある。したがって、本項に記載の態様によれば、緊急操舵時において、車両の旋回特性を適切なものとすることが可能となる。本項に記載の「急操舵指標量」とは、車両の操舵速度の変化速度を表し得る各種の物理量であり、例えば、ステアリングホイールの操作角の角速度、車体に発生している横加速度の変化速度,車両に発生しているヨーレートの変化速度,車両のスリップ角の角速度といった種々のものが上記指標量に該当する。
【0017】
(4)前記ロール抑制力制御部が、
前記供給線接続装置が作動させられた場合に、作動させられてない場合に比較して、前記前輪側ロール抑制装置と前記後輪側ロール抑制装置との一方の発生させるロール抑制力を低減させる供給線接続時制御を実行するように構成された(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の車両用ロール抑制システム。
【0018】
車両の旋回時においては、前輪側ロール抑制装置が発生させるロール抑制力と後輪側ロール抑制装置が発生させるロール抑制力とは共に大きくなる。このため、2つのバッテリから前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置とのうちの1つの装置へ電力を供給しても、もう1つの装置への供給電力が大きければ、その1つの装置へ充分に電力を供給することができない場合がある。本項に記載の態様においては、前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置との一方の発生させるロール抑制力を低減させて、その一方の有する電磁モータへの供給電力を低減させることが可能である。したがって、本項に記載の態様によれば、前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置との他方の有する電磁モータへの供給電力を増加させることができ、例えば、その他方の装置が発生させるロール抑制力を大きくし、その他方の装置が設けられる車輪側のロール剛性を高めることが可能となる。また、本項に記載の態様では、前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置との一方が発生させるロール抑制力を敢えて犠牲にして、その一方の装置が設けられる車輪側のロール剛性を低めることによって、前輪側のロール剛性と後輪側のロール剛性との差を生じさせ、車両の旋回特性の適切化を図っている。
【0019】
(5)前記ロール抑制力制御部が、
前記供給線接続時制御を、前記前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置との一方が有する前記電磁モータへの電力供給を行わずして実行するように構成された(4)項に記載の車両用ロール抑制システム。
【0020】
本項に記載の態様においては、2つのバッテリから前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置との他方の有する電磁モータだけに電力を供給することが可能となり、その他方の装置が設けられる車輪側のロール剛性をより高めることが可能である。また、前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置との一方が発生させるロール抑制力をできるだけ小さくして、その一方の装置が設けられる車輪側のロール剛性をより低めることが可能である。したがって、本項に記載の態様によれば、車両の旋回特性の適切化をさらに図ることが可能となる。
【0021】
(6)前記前輪側ロール抑制装置および前記後輪側ロール抑制装置の各々が、その各々の有する前記電磁モータへの電力供給が行われていない状態においてその電磁モータが車体の受けるロールモーメントの作用によって発電する構造とされた(5)項に記載の車両用ロール抑制システム。
【0022】
本項に記載の態様によれば、供給線接続時制御において、前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置との一方の有する電磁モータへの電力供給が停止された場合に、前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置との他方の有する電磁モータに、2つのバッテリから電力が供給されるだけでなく、その一方の有する電磁モータの発電電力も供給される。したがって、本項に記載の態様によれば、相当に大きな電力をその他方の有する電磁モータに供給することが可能となる。
【0023】
(7)前記ロール抑制力制御部が、前記供給線接続時制御を、前記後輪側ロール抑制装置の発生させるロール抑制力を低減させて実行するように構成された(4)項ないし(6)項のいずれかに記載の車両用ロール抑制システム。
【0024】
車両の走行安定性等の観点から、車両の旋回特性をアンダステア傾向とすべく、前輪側のロール剛性を後輪側のロール剛性より高く設定し、前輪側ロール抑制装置が発生させるべきロール抑制力は後輪側ロール抑制装置が発生させるべきロール抑制力より大きいことが望ましい。ところが、1つのロール抑制装置の電磁モータに対応して1つの小型のバッテリが設けられる構造のシステムにおいては、前輪側のロール剛性を後輪側のロール剛性より高く設定しても、前輪側ロール抑制装置の有する電磁モータに供給すべき電力が不足し、前輪側ロール抑制装置が発生させるロール抑制力が小さくなり、車両の旋回特性におけるアンダステア傾向が弱まる虞がある。本項に記載の態様によれば、前輪側のロール剛性を後輪側のロール剛性より高めることが可能となり、車両の旋回特性をアンダステア傾向とすることが可能となる。
【0025】
(8)前記前輪側ロール抑制装置と前記後輪側ロール抑制装置との各々が、
スタビライザバーと、前記電磁モータを有してそれの発生させる力に依拠して前記スタビライザバーの捩り反力をロール抑制力として作用させるアクチュエータと
を備える(1)項ないし(7)項のいずれかに記載の車両用ロール抑制システム。
【0026】
(9)前記スタビライザバーが、
左右の車輪に対応して設けられ、それぞれが、車幅方向に延びて配設されるトーションバー部と、そのトーションバー部に連続してそのトーションバー部と交差して延びるとともに先端部において左右の車輪のうちの自身に対応するものを保持する車輪保持部に連結されるアーム部とを有する1対のスタビライザバー部材を含んで構成され、
前記アクチュエータが、前記1対のスタビライザバー部材のトーションバー部を相対回転させるものである(8)項に記載の車両用ロール抑制システム。
【0027】
(10)前記アクチュエータが、前記電磁モータの回転を減速する減速機と、前記電磁モータと前記減速機とを保持するハウジングとを有し、前記1対のスタビライザバー部材の一方のトーションバー部が前記ハウジングに相対回転不能に接続され、他方のトーションバー部が前記減速機の出力部に相対回転不能に接続される構造とされた(9)項に記載の車両用ロール抑制システム。
【0028】
上記3つの項に記載の態様は、ロール抑制装置が、ロール抑制力を任意に変更可能なスタビライザ装置によって構成された態様であり、その装置の具体的な構造に関する態様である。いずれの態様のシステムによっても、車両の旋回に起因する車体のロールを効果的に抑制することが可能となる。
【0029】
(11)前記前輪側ロール抑制装置と前記後輪側ロール抑制装置との各々が、
左右の車輪に対応して設けられ、それぞれが、前記電磁モータを有しそれの発生させる力に依拠してばね上部とばね下部とを接近・離間させる方向の力である接近離間力を発生させる1対の接近離間力発生装置を含んで構成され、
前記ロール抑制力制御部が、前記1対の接近離間力発生装置の各々が有する前記電磁モータへの供給電力を制御することで、前記1対の接近離間力発生装置の旋回内輪に対応するものの接近離間力をばね上部とばね下部とを接近させる方向に、かつ、前記1対の接近離間力発生装置の旋回外輪に対応するものの接近離間力をばね上部とばね下部とを離間させる方向に発生させるとともに、それら接近離間力をロール抑制力として車体が受けるロールモーメントに応じて制御するように構成された(1)項ないし(7)項のいずれかに記載の車両用ロール抑制システム。
【0030】
本項に記載の態様は、ばね上部とばね下部とを接近・離間させる方向の力である接近離間力を発生可能な装置を左右の車輪に対応して一対設け、それら1対の装置が、制御によって連携するように作動させられる態様である。本項に記載の態様では、ロール抑制時に旋回外輪に対応する装置が発生させる接近離間力の大きさと旋回内輪に対応する装置が発生させる接近離間力の大きさとを異ならせることが可能であり、例えば、旋回内輪に対応する装置が、旋回外輪に対応する装置より大きな接近離間力を発生させれば、車両旋回時における車両の重心位置を低くすることが可能となり、車両の安定性を向上させることが可能となる。また、本項の態様では、4つの車輪に対して接近離間力を独立して制御することが可能であり、例えば、車体のピッチを抑制する制御や、車体の振動を減衰する制御をも実行することが可能である。
【0031】
(12)前記前輪側バッテリと前記後輪側バッテリとの各々が、1対のバッテリを含んで構成され、
前記前輪側電力供給線が、前記前輪側バッテリを構成する1対のバッテリの各々から、前記前輪側ロール抑制装置を構成する前記1対の接近離間力発生装置のうちの対応するものが有する前記電磁モータへの電力を供給するための1対の電力供給線を、前記後輪側電力供給線が、前記後輪側バッテリを構成する1対のバッテリの各々から、前記後輪側ロール抑制装置を構成する前記1対の接近離間力発生装置のうちの対応するものが有する前記電磁モータへの電力を供給するための1対の電力供給線を、それぞれ有する(11)項に記載の車両用ロール抑制システム。
【0032】
(13)前記ロール抑制力制御部が、
前記供給線接続装置が作動させられた場合に、作動させられてない場合に比較して、前記前輪側ロール抑制装置と前記後輪側ロール抑制装置との一方の発生させるロール抑制力を低減させる供給線接続時制御を実行するように構成され、
かつ、その供給線接続時制御を、前記前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置との一方を構成する前記1対の接近離間力発生装置の各々の発生させる接近離間力を低減させるとともに、前記前輪側ロール抑制装置と前記後輪側ロール抑制装置との他方を構成する前記1対の接近離間力発生装置の一方の発生させる接近離間力を低減させて実行するように構成された(12)項に記載の車両用ロール抑制システム。
【0033】
(14)前記ロール抑制力制御部が、
前記供給線接続時制御を、前記前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置との一方を構成する前記1対の接近離間力発生装置の各々が有する前記電磁モータへの電力供給を行わず、かつ、前記前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置との他方を構成する前記1対の接近離間力発生装置の一方が有する前記電磁モータへの電力供給を行わずして実行するように構成された(13)項に記載の車両用ロール抑制システム。
【0034】
(15)前記ロール抑制力制御部が、前記供給線接続時制御を、前記後輪側ロール抑制装置を構成する前記1対の接近離間力発生装置の各々の発生させる接近離間力を低減させるとともに、かつ、前記前輪側ロール抑制装置を構成する前記1対の接近離間力発生装置の旋回内輪に対応して設けられたものが発生させる接近離間力を低減させて実行するように構成された(13)項または(14)項に記載の車両用ロール抑制システム。
【0035】
上記4つの項に記載の態様は、1つの接近離間力発生装置に対応して1つのバッテリが設けられた態様であり、上記4つの項のうちの後の3つの項に記載の態様は、供給線接続時制御において、4つの接近離間力発生装置のうちの3つの装置が発生させる接近離間力を低減させ、4つの接近離間力発生装置のうちの残りの1つの装置の有する電磁モータへの供給電力量を増加させる態様である。それら3つの項に記載の態様によれば、例えば、1つの接近離間力発生装置に4つバッテリから電力を供給することが可能となり、その1つの接近離間力発生装置が、他の3つの接近離間力発生装置の各々が発生させる接近離間力より大きな接近離間力を発生させることが可能となり、車両の旋回特性の適切化を図ることが可能となる。
【0036】
また、上記4つの項のうちの最後の項に記載の態様は、前輪側の旋回外輪に対応する接近離間力発生装置が、他の3つの接近離間力発生装置の各々が発生させる接近離間力より大きな接近離間力を発生させる態様である。その最後の項に記載の態様によれば、例えば、4つの接近離間力発生装置のうちで前輪側の旋回外輪に対応する接近離間力発生装置が最も大きなロール抑制力を発生させることが可能となり、車両の旋回特性におけるアンダステア傾向を維持することが可能となる。
【0037】
(16)前記1対の接近離間力発生装置の各々が、
一端部が左右の車輪のうちの自身に対応するものを保持する車輪保持部と車体との一方に連結された弾性体と、
前記車輪保持部と車体との他方と前記弾性体の他端部との間に配設されてその他方と前記弾性体とを連結するとともに、前記電磁モータが発生させる力に依拠して自身が発生させる力を前記弾性体に作用させることで、自身の動作量に応じて前記弾性体の変形量を変化させるとともに、その力を前記弾性体を介して接近離間力として前記車輪保持部と車体とに作用させる電磁式のアクチュエータと
を備える(11)項ないし(15)項のいずれかに記載の車両用ロール抑制システム。
【0038】
(17)前記弾性体が、車体に回転可能に保持されたトーションバー部と、そのトーションバー部に連続してそのトーションバー部と交差して延びるとともに先端部において前記車輪保持部に連結されるアーム部とを有し、
前記アクチュエータが、車体に固定されるとともに、自身が発生させる力によって前記トーションバー部をそれの軸線まわりに回転させるものである(16)項に記載の車両用ロール抑制システム。
【0039】
(18)前記アクチュエータが、前記電磁モータの動作を減速する減速機と、前記電磁モータと前記減速機とを保持するハウジングとを有し、前記ハウジングが車体に固定的に支持され、前記弾性体のトーションバー部が前記減速機の出力部に相対回転不能に接続される構造とされた(17)項に記載の車両用ロール抑制システム。
【0040】
上記3つの項に記載の態様は、接近離間力発生装置の具体的な構造に関する態様である。いずれの態様のシステムによっても、車両の旋回に起因する車体のロールを効果的に抑制することが可能となる。
【実施例】
【0041】
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0042】
(A)第1実施例
<車両用ロール抑制システムの構成>
i)車両用ロール抑制システムの全体構成
図1に、本実施例の車両用ロール抑制システム10を模式的に示す。本システム10は、車両の前輪側、後輪側の各々に配設された1対のスタビライザ装置14を含んで構成されている。スタビライザ装置14はそれぞれ、両端部において左右の車輪16を保持する車輪保持部としてのサスペンションアーム(図2参照)に連結されたスタビライザバー20を備えている。そのスタビライザバー20は、それが分割された1対のスタビライザバー部材22を含む構成のものとされている。それら1対のスタビライザバー部材22は、アクチュエータ26によって相対回転可能に接続されている。また、本システム10においては、1対のスタビライザ装置14の有する2つのアクチュエータ26に対応して、2つのバッテリ27と2つのコンバータ28とが設けられている。なお、スタビライザ装置14,車輪16,スタビライザバー20,スタビライザバー部材22,アクチュエータ26,バッテリ27,コンバータ28等は総称であり、前後輪のいずれに対応するものであるかを明確にする必要のある場合には、図に示すように、車輪位置を示す添え字として、前輪,後輪の各々に対応するものにF,Rを付す場合がある。
【0043】
ii)サスペンション装置の構成
本システム10を搭載する車両には、各車輪16に対応した4つのサスペンション装置が設けられている。転舵輪である前輪16Fのサスペンション装置と非転舵輪である後輪16Rのサスペンション装置とは、車輪を転舵可能とする機構を除き略同様の構成とみなせるため、説明の簡略化に配慮して、後輪のサスペンション装置を代表して説明する。図2,3に示すように、サスペンション装置30は、独立懸架式のものであり、マルチリンク式サスペンション装置とされている。サスペンション装置30は、それぞれがサスペンションアームである第1アッパアーム32,第2アッパアーム34,第1ロアアーム36,第2ロアアーム38,トーコントロールアーム40を備えている。5本のアーム32,34,36,38,40のそれぞれの一端部は、車体に回動可能に連結され、他端部は、車輪16を回転可能に保持するアクスルキャリア42に回動可能に連結されている。それら5本のアーム32,34,36,38,40により、アクスルキャリア42は、車体に対して略一定の軌跡を描くような上下動が可能とされている。また、サスペンション装置30は、コイルスプリング44と液圧式のショックアブソーバ46とを備えており、それらは、それぞれ、ばね上部の一構成部分であるタイヤハウジングに設けられたマウント部48と、ばね下部の一構成部分である第2ロアアーム38との間に、互いに並列的に配設されている。つまり、サスペンション装置30は、車輪16と車体とを弾性的に相互支持するとともに、それらの接近離間に伴う振動に対する減衰力を発生させているのである。
【0044】
iii)スタビライザ装置の構成
スタビライザ装置14の各スタビライザバー部材22はそれぞれ、図2,3に示すように、概して車幅方向に延びるトーションバー部50と、トーションバー部50と一体をなしてそれと交差して概ね車両の前方に延びるアーム部52とに区分することができる。各スタビライザバー部材22のトーションバー部50は、アーム部52に近い箇所において、車体に固定的に設けられた保持具54によって回転可能に保持され、互いに同軸的に配置されている。各トーションバー部50の端部(アーム部52側とは反対側の端部)は、それぞれ、後に詳しく説明するようにアクチュエータ26に接続されている。一方、各アーム部52の端部(トーションバー部50側とは反対側の端部)は、リンクロッド56を介して第2ロアアーム38に連結されている。第2ロアアーム38には、リンクロッド連結部58が設けられ、リンクロッド56の一端部は、そのリンクロッド連結部58に、他端部はスタビライザバー部材22のアーム部52の端部に、それぞれ遥動可能に連結されている。
【0045】
スタビライザ装置14の備えるアクチュエータ26は、図4に示すように、駆動源としての電磁モータ60と、その電磁モータ60の回転を減速して伝達する減速機62とを含んで構成されている。これら電磁モータ60と減速機62とは、アクチュエータ26の外殻部材であるハウジング64内に設けられている。そのハウジング64の一端部には、1対のスタビライザバー部材22の一方のトーションバー部50の端部が固定的に接続されており、一方、1対のスタビライザバー部材22の他方は、ハウジング64の他端部からそれの内部に延び入る状態で配設されるとともに、後に詳しく説明するように、減速機62と接続されている。さらに、1対のスタビライザバー部材22の他方は、それの軸方向の中間部において、ブシュ型軸受70を介してハウジング64に回転可能に保持されている。
【0046】
電磁モータ60は、ハウジング64の周壁の内面に沿って一円周上に固定して配置された複数のコイル72と、ハウジング64に回転可能に保持された中空状のモータ軸74と、コイル72と向きあうようにしてモータ軸74の外周に固定して配設された永久磁石76とを含んで構成されている。電磁モータ60は、コイル72がステータとして機能し、永久磁石76がロータとして機能するモータであり、3相のDCブラシレスモータとされている。なお、ハウジング64内に、モータ軸74の回転角度、すなわち、電磁モータ60の回転角度を検出するためのモータ回転角センサ78が設けられている。モータ回転角センサ78は、エンコーダを主体とするものであり、アクチュエータ26の制御、つまり、スタビライザ装置14の制御に利用される。
【0047】
減速機62は、波動発生器(ウェーブジェネレータ)80,フレキシブルギヤ(フレクスプライン)82およびリングギヤ(サーキュラスプライン)84を備え、ハーモニックギヤ機構(「ハーモニックドライブ(登録商標)機構」,「ストレインウェーブギヤリング機構」等と呼ばれることもある)として構成されている。波動発生器80は、楕円状カムと、それの外周に嵌められたボールベアリングとを含んで構成されるものであり、モータ軸74の一端部に固定されている。フレキシブルギヤ82は、周壁部が弾性変形可能なカップ形状をなすものとされており、周壁部の開口側の外周に複数の歯(本減速機62では、400歯)が形成されている。このフレキシブルギヤ82は、先に説明した1対のスタビライザバー部材22の他方のトーションバー部50の端部に接続され、それによって支持されている。詳しく言えば、そのスタビライザバー部材22のトーションバー部50は、モータ軸74を貫通しており、それから延び出す部分の外周面において、当該減速機62の出力部としてのフレキシブルギヤ82の底部を貫通する状態でその底部とスプライン嵌合によって相対回転不能に接続されているのである。リングギヤ84は、概してリング状をなして内周に複数の歯(本減速機62においては、402歯)が形成されたものであり、ハウジング64に固定されている。フレキシブルギヤ82は、その周壁部が波動発生器80に外嵌して楕円状に弾性変形させられ、楕円の長軸方向に位置する2箇所においてリングギヤ84と噛合し、他の箇所では噛合しない状態とされている。このような構造により、波動発生器80が1回転(360度)すると、つまり、電磁モータ60のモータ軸74が1回転すると、フレキシブルギヤ82とリングギヤ84とが、2歯分だけ相対回転させられる。つまり、減速機62の減速比は、1/200とされている。
【0048】
以上の構成から、車両の旋回等によって、車体に左右の車輪16の一方と車体との距離と、左右の車輪16の他方と車体との距離とを相対変化させる力、すなわちロールモーメントが作用する場合、左右のスタビライザバー部材22を相対回転させる力、つまり、アクチュエータ26に対する外力が作用する。その場合、電磁モータ60が発生させる力であるモータ力(電磁モータ60が回転モータであることから、回転トルクと考えることができるため、回転トルクと呼ぶ場合がある)によって、アクチュエータ26がその外力に対抗する力を発生させているときには、それら2つのスタビライザバー部材22によって構成された1つのスタビライザバー20が捩じられることになる。この捩りにより生じる捩り反力は、ロールモーメントに対抗する力となる。つまり、スタビライザ装置14が、モータ力に依拠してスタビライザバー20の捩り反力をロール抑制力として発生させているのである。さらに、モータ力によってアクチュエータ26の回転位置(動作位置のことである)を変化させることで、左右のスタビライザバー部材22の相対回転位置を変化させれば、上記ロール抑制力が変化し、車体のロールをアクティブに抑制することが可能となる。つまり、スタビライザ装置14がロール抑制装置として機能しているのである。
【0049】
なお、本システム10の制御においては、アクチュエータ26の動作位置は、所定の中立位置を基準とする動作量として扱われる。この中立位置は、例えば、車両が平坦路に停止している状態におけるアクチュエータ66の動作位置として設定される。したがって、アクチュエータ66の動作位置が中立位置から離れるほど、アクチュエータ26の動作量は大きくなり、スタビライザバー20の捩り反力、つまり、ロール抑制力も大きくなるのである。
【0050】
iv)制御装置の構成
本ロール抑制システム10では、図1に示すように、2つのスタビライザ装置14に対応する電子制御ユニット(ECU)90が設けられている。ECU90は、各スタビライザ装置14、詳しくは、各アクチュエータ26の作動を制御する制御装置であり、図5に示すように、各アクチュエータ26が有する電磁モータ60に対応する駆動回路としての2つのインバータ92と、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体とするコントローラ96とを備えている。それらインバータ92の各々は、上記2つのコンバータ28の一方を介して2つのバッテリ27の一方に接続されており、対応するスタビライザ装置14の電磁モータ60に接続されている。詳しく言えば、本システム10において、前輪側スタビライザ装置14Fの電磁モータ60Fとそのスタビライザ装置14Fに対応するバッテリ(以下、「前輪側バッテリ」という場合がある)27Fとを接続する電力供給線(以下、「前輪側電力供給線」という場合がある)98Fと、後輪側スタビライザ装置14Rの電磁モータ60Rとそのスタビライザ装置14Rに対応するバッテリ(以下、「後輪側バッテリ」という場合がある)27Rとを接続する電力供給線(以下、「後輪側電力供給線」という場合がある)98Rとが設けられており、前輪側電力供給線98F上に前輪側のスタビライザ装置14Fに対応するコンバータ28Fおよびインバータ92Fが、後輪側電力供給線98R上に後輪側のスタビライザ装置14Rに対応するコンバータ28Rおよびインバータ92Rが設けられている。つまり、前輪側スタビライザ装置14Fの電磁モータ60Fには、コンバータ28Fおよびインバータ92Fを介して、前輪側バッテリ27Fから電力が供給され、一方、後輪側スタビライザ装置14Rの電磁モータ60Rには、コンバータ28Rおよびインバータ92Rを介して、後輪側バッテリ27Rから電力が供給されるのである。ちなみに、コンバータ28は、双方向に通電可能なコンバータとされており、電圧を昇圧させて電力をバッテリ27から電磁モータ60に供給し、電磁モータ60が回転させられて発電機として機能するような場合には、電圧を降圧させて電力を電磁モータ60からバッテリ27に回生することが可能な構造とされている。なお、電磁モータ60は定電圧駆動され、電磁モータ60への供給電力量は、供給電流量を変更することによって変更される。供給電流量の変更は、インバータ92がPWM(Pulse Width Modulation)によるパルスオン時間とパルスオフ時間との比(デューティ比)を変更することによって行われる。
【0051】
また、本システム10においては、前輪側電力供給線98F上のコンバータ28Fとインバータ92Fとの間と、後輪側電力供給線98R上のコンバータ28Rとインバータ92Rとの間とを電気的に接続可能とする接続線100と、その接続線100上に設けられ、2つの電力供給線98F,Rの電気的な接続と遮断とを切換える切換スイッチ102とが設けられており、本システム10は、接続線100と切換スイッチ102とで構成される供給線接続装置を備えるものとされている。なお、2つの供給電力線98F,R間の導通は、通常、その切換スイッチ102によって遮断されている。
【0052】
コントローラ96には、上記モータ回転角センサ78とともに、操舵量としてのステアリング操作部材の操作量であるステアリングホイールの操作角を検出するためのステアリングセンサ110,車体に実際に発生している横加速度である実横加速度を検出する横加速度センサ112が接続されている(図8参照)。コントローラ96には、さらに、ブレーキシステムの制御装置であるブレーキ電子制御ユニット(以下、「ブレーキECU」という場合がある)114が接続されている。ブレーキECU114には、4つの車輪のそれぞれに対して設けられてそれぞれの回転速度を検出するための車輪速センサ116が接続され、ブレーキECU114は、それら車輪速センサ116の検出値に基づいて、車両の走行速度(以下、「車速」という場合がある)を推定する機能を有している。コントローラ96は、必要に応じ、ブレーキECU114から車速を取得するようにされている。さらに、コントローラ96は、各インバータ92にも接続され、それらを制御することで、各スタビライザ装置14の電磁モータ60を制御する。なお、コントローラ96のコンピュータが備えるROMには、後に説明する各スタビライザ装置14の制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。
【0053】
<車両用ロール抑制システムの制御>
i)基本的な制御
本システム10では、車体のロールを抑制するべく、アクチュエータ26の実際の回転位置である実回転位置が目標となる回転位置である目標回転位置となるようなロール抑制制御が実行される。詳しく言えば、車体が受けるロールモーメントに応じたロール抑制力を発生させるべく、車体が受けるロールモーメントに応じて、アクチュエータ26の目標回転位置が決定され、アクチュエータ26の回転位置がその目標回転位置となるように制御される。なお、アクチュエータ26の回転位置は、電磁モータ60の動作角であるモータ回転角と対応関係にあるため、実際の制御では、モータ回転角をアクチュエータ26の回転位置として扱い、モータ回転角センサ78によって取得されるモータ回転角に基づいて制御が行われる。つまり、本システム10では、電磁モータ60の動作量に応じてロール抑制力を変更することが可能とされている。
【0054】
また、車両の旋回時においては、左右の車輪間に荷重移動が生じることで、コーナリングパワーに変化が生じる。コーナリングパワーCPと車輪にかかる荷重Wとの関係を示した図6を用いて詳しく説明する。左右の車輪間に荷重移動が生じていない場合において、左右の車輪の各々には荷重W0がかかり、左右の車輪の各々に対するコーナリングパワーはCF0となり、左右輪の平均のコーナリングパワーはCF0となる。一方、車両の旋回時において、旋回内輪から旋回外輪に荷重移動が生じ、旋回内輪と旋回外輪との荷重差がΔWとなると、旋回外輪の荷重はW0+1/2ΔW、旋回内輪の荷重はW0−1/2ΔWとなり、旋回外輪のコーナリングパワーはCF1、旋回内輪のコーナリングパワーはCF2となる。旋回内外輪の平均のコーナリングパワーは(CF1+CF2)/2となり、図から解るように、旋回時の平均コーナリングパワー(CF1+CF2)/2は、左右の車輪間に荷重移動が生じていない場合の平均コーナリングパワーCF0より小さくなる。したがって、前後輪のロール剛性配分を変化させることで、車両の旋回特性を変化させることが可能である。具体的に言えば、前輪側のロール剛性を高くすれば、前輪側の左右輪間の荷重移動が大きくなり、前輪側のコーナリングパワーが後輪側のコーナリングパワーより小さくなる。このため、車両の旋回特性はアンダステア傾向となる。一方、後輪側のロール剛性を高くすれば、後輪側の左右輪間の荷重移動が大きくなり、後輪側のコーナリングパワーが前輪側のコーナリングパワーより小さくなる。このため、車両の旋回特性はオーバステア傾向となる。
【0055】
本システム10において、車両の安定性等の観点から、車両の旋回特性はアンダステア傾向になるように、前輪側のロール剛性が後輪側のロール剛性より高くなるようにされている。つまり、前輪側スタビライザ装置14Fの発生させるロール抑制力が後輪側スタビライザ装置14Rの発生させるロール抑制力より大きくなるように、前輪側スタビライザ装置14Fと後輪側スタビライザ装置14Rとの各々が有する電磁モータ60F,Rが制御される。
【0056】
具体的な制御について言えば、前輪側スタビライザ装置14Fと後輪側スタビライザ装置14Rとの各々がロールモーメントに応じた適正なロール抑制力を発生させるべく、車体が受けるロールモーメントを指標する横加速度に基づいて、それぞれの装置の備える電磁モータ60F,Rの目標モータ回転角θ*が決定される。詳しく言えば、ステアリングホイールの操作角δと車両走行速度vに基づいて推定された推定横加速度Gycと、実測された実横加速度Gyrとに基づいて、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、次式に従って決定され、
Gy*=KA・Gyc+KB・Gyr(KA,KBはゲイン)
そのように決定された制御横加速度Gy*に基づいて、各電磁モータ60F,Rの目標モータ回転角θ*が決定される。コントローラ96内には、制御横加速度Gy*をパラメータとする目標モータ回転角θ*のマップデータがスタビライザ装置14毎に格納されており、各マップデータを参照して、各電磁モータ60F,Rの目標モータ回転角θ*が決定される。なお、本システム10においては、前に説明したように、前輪側のロール剛性が後輪側のロール剛性より高くなるようにされていることから、前輪側スタビライザ装置14Fが発生させるロール抑制力が後輪側スタビライザ装置14Rが発生させるロール抑制力より大きくなるように各電磁モータ60F,Rの目標モータ回転角θ*が決定される。
【0057】
そして、実モータ回転角θが上記目標モータ回転角θ*になるように、電磁モータ60が制御される。電磁モータ60の制御において、電磁モータ60に供給される電力は、実モータ回転角θの目標モータ回転角θ*に対する偏差であるモータ回転角偏差Δθ(=θ*−θ)に基づいて決定される。詳しく言えば、モータ回転角偏差Δθに基づくフィードバック制御の手法に従って決定される。具体的には、まず、電磁モータ60が備えるモータ回転角センサ78の検出値に基づいて、上記モータ回転角偏差Δθが認定され、次いで、それをパラメータとして、次式に従って、目標供給電流i*が決定される。
*=KP・Δθ+KI・Int(Δθ)
この式は、PI制御則に従う式であり、第1項,第2項は、それぞれ、比例項、積分項を、KP,KIは、それぞれ、比例ゲイン,積分ゲインを意味する。また、Int(Δθ)は、モータ回転角偏差Δθの積分値に相当する。
【0058】
ちなみに、上記目標供給電流i*は、それの符号により電磁モータ60のモータ力の発生方向を表すものとなっており、電磁モータ60の駆動制御にあたっては、目標供給電流i*に基づいて、電磁モータ60を駆動するためのデューティ比およびモータ力発生方向が決定される。そして、それらデューティ比およびモータ力発生方向についての指令がインバータ92に発令され、インバータ92によって、その指令に基づいた電磁モータ60の駆動制御がなされる。
【0059】
なお、本実施例においては、PI制御則に従い目標供給電流i*が決定されたが、PDI制御則に従い目標供給電流i*を決定することも可能である。この場合、例えば、次式
*=KP・Δθ+KI・Int(Δθ)+KD・Δθ’
によって、目標供給電流i*を決定すればよい。ここで、KDは微分ゲインであり、第3項は、微分項成分を意味する。
【0060】
ii)緊急操舵時における制御
本システム10において、電磁モータ60は定電圧駆動されることから、電磁モータ60の回転量は、電磁モータ60を流れる電流に概ね比例すると考えることができ、さらに、電磁モータ60の回転量はロール抑制力の大きさと対応関係にある。したがって、比較的大きなロール抑制力を発生させる場合には、比較的大きな電流を電磁モータ60に供給する必要がある。また、本システム10に搭載される上記2つのバッテリ27の各々は、各電磁モータ60に対応するものであり、車両への搭載性等の観点から、比較的小型のものとされており、車体が受けるロールモーメントが比較的大きくなる場合には、発生させるべきロール抑制力が大きくなり、各電磁モータ60に必要とされる電流を供給することができない場合がある。
【0061】
本システム10においては、上述に記載したように前輪側のロール剛性が後輪側のロール剛性より高くされており、前輪側スタビライザ装置14Fが発生させるべきロール抑制力が後輪側スタビライザ装置14Rが発生させるべきロール抑制力より大きくされている。このため、車体が受けるロールモーメントが比較的大きくなる場合には、特に、前輪側スタビライザ装置14Fにおいて、電磁モータ60Fへの電力不足が生じ易くなり、必要とされるロール抑制力が発生させられ難くなる。つまり、車体が受けるロールモーメントが比較的大きくなり、前輪側スタビライザ装置14Fの電磁モータ60Fにおける電力不足が生じると、前輪側のロール剛性が低くなり、車両の旋回特性におけるアンダステア傾向が弱まることになる。特に、緊急回避時等において車両が急激に操舵され、車体が受けるロールモーメントが大きくなる場合に車両の旋回特性におけるアンダステア傾向が弱まると、車両がスピンする虞がある。
【0062】
以上のことに鑑みて、本システム10において、緊急操舵時と想定される場合には、後輪側スタビライザ装置14Rの電磁モータ60Rへの電力供給が停止されるとともに、前輪側スタビライザ装置14Fの電磁モータ60Fに、前輪側バッテリ27Fからだけでなく、上記接続線100を介して、後輪側バッテリ27Rからも電力が供給される。具体的に言えば、車両の操舵の急激さを指標する急操舵指標量としてのステアリングホイールの操作速度と車両走行速度vとがそれぞれに設定された設定閾値を超えることを条件として、後輪側スタビライザ装置14Rの電磁モータ60Rに対して決定された目標供給電流i*が0とされるとともに、2つの電力供給線98F,Rを電気的に接続するように切換スイッチ102が作動させられる。つまり、2つの電力供給線98F,Rが接続されたときに後輪側スタビライザ装置14Rの電磁モータ60Rへの電力供給を停止する供給線接続時制御が実行されるのである。したがって、本システム10では、緊急操舵時において、後輪側スタビライザ装置14Rが発生させるロール抑制力を小さくし、前輪側スタビライザ装置14Fが発生させるロール抑制力を大きくすることで、前輪側のロール剛性を後輪側のロール剛性より大きくし、車両の旋回特性におけるアンダステア傾向を強めているのである。なお、本システム10では、急操舵指標量としてのステアリングホイールの操作速度を用いて緊急操舵時を想定し、供給線接続時制御を実行しているが、緊急操舵時には車体が受けるロールモーメントが大きくなる場合が多い。このため、車体が受けるロールモーメントを指標する上記制御横加速度Gy*が設定閾値を超えることを条件として、供給線接続時制御を実行してもよい。
【0063】
また、本システム10は、電磁モータ60がロールモーメント等によって回転させられて発電機として機能するような場合には、電磁モータ60による発電電力がバッテリ27に回生することが可能な構造とされている。このため、後輪側のスタビライザ装置14Rの電磁モータ60Rの目標供給電流i*が0とされ、2つの電力供給線98F,Rが電気的に接続されると、ロールモーメント等によって後輪側の電磁モータ60Rが回転させられ、その電磁モータ60Rの回転に伴う発電電力もが、接続線100を介して、前輪側スタビライザ装置14Fの電磁モータ60Fに供給される。したがって、本システム10では、車体が受けるロールモーメントが比較的大きくなる場合においても、前輪側スタビライザ装置14Fの電磁モータ60Fの電力不足を回避することで、車両の旋回特性におけるアンダステア傾向を維持することができるのである。なお、後輪側の電磁モータ60Rに後輪側バッテリ27Rから電力が供給されなくとも、後輪側の電磁モータ60Rは自身が発電した電力によってモータ力を発生させることから、後輪側スタビラザ装置14Rはある程度のロール抑制力を発生させる。
【0064】
図5に、2つの電力供給線98F,Rが電気的に遮断された状態、つまり、ロール抑制制御における電流の流れ(実線)と、2つの電力供給線98F,Rが電気的に接続された状態、つまり、供給線接続時制御における電流の流れ(一点鎖線)とを示す。図から解るように、ロール抑制制御においては、前輪側スタビライザ装置14Fの電磁モータ60Fには前輪側バッテリ27Fから電力が供給され、後輪側スタビライザ装置14Rの電磁モータ60Rには後輪側バッテリ27Rから電力が供給される(実線)。一方、供給線接続時制御においては、前輪側スタビライザ装置14Fの電磁モータ60Fには、前輪側バッテリ27Fから電力が供給されるとともに、後輪側バッテリ27Rからの電力、および、電磁モータ60Rによる発電電力もが供給される(一点鎖線)。
【0065】
<制御プログラム>
本システム10において、緊急操舵時における車両の旋回特性を考慮したロール抑制制御は、図7にフローチャートを示すロール抑制制御プログラムが、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec)をおいてコントローラ96により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、その制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。なお、このプログラムは、前輪側スタビライザ装置14Fと後輪側スタビライザ装置14Rとの両方に対して実行される。
【0066】
本プログラムに従う処理では、まず、ステップ1(以下、単に「S1」と略す。他のステップについても同様とする)において、、車速vがブレーキECU114の演算値に基づいて取得され、S2において、ステアリングホイールの操作角δが、ステアリングセンサ110の検出値に基づいて取得される。次に、S3において、上記制御横加速度Gy*が決定され、S4において、その決定された制御横加速度Gy*に基づき、前輪側スタビライザ装置14Fと後輪側スタビライザ装置14Rとの各々の電磁モータ60F,Rの目標モータ回転角θ*が決定される。次に、S5において、各電磁モータ60F,Rのモータ回転角センサ78に基づいて、各電磁モータ60F,Rの実モータ回転角θが取得され、S6において、各電磁モータ60F,Rのモータ回転角偏差Δθが決定される。そして、S7において、各目標モータ回転角θ*に基づき、前述のPI制御則に従う式に従って、各電磁モータ60F,Rの目標供給電流i*が決定される。
【0067】
続いて、S8において、ステアリングホイールの操作角δに基づいて、ステアリングホイールの操作角速度ωが演算され、S9において、緊急操舵時であるか否かが判定される。詳しく言えば、車速vが閾速度を越え、かつ、操作角速度ωが閾角速度を越えるか否かが判定される。上記条件が満たされた場合には、緊急操舵時と判定され、S10において、後輪側スタビライザ装置14Rの電磁モータ60Rに対して決定された目標供給電流i*が0とされ、S11において、切換スイッチ102が2つの電力供給線98F,Rを電気的に接続するように作動させられる。また、S9の条件が満たされない場合には、S12において、切換スイッチ102が2つの電力供給線98F,Rを電気的に遮断するように作動させられる。そして、S13において、各電磁モータ60F,Rの目標供給電流i*に基づく制御信号が、各インバータ92F,Rに送信された後、本プログラムの1回の実行が終了する。
【0068】
<コントローラの機能構成>
上記プログラムを実行するコントローラ96は、それの実行処理に鑑みれば、図8に示すような機能構成を有するものと考えることができる。図から解るように、コントローラ96は、S1〜S7,S13の処理を実行する機能部、つまり、各電磁モータ60F,Rへの供給電力を制御することで、ロール抑制力を制御する機能部として、ロール抑制力制御部120を、S8,S9の処理を実行する機能部、つまり、緊急操舵時を判定する機能部として、緊急操舵時判定部122を、S11の処理を実行する機能部、つまり、2つの電力供給線98F,Rを電気的に接続するように切換スイッチ102の作動を制御する機能部として、供給線接続制御部124を、それぞれ備えている。なお、ロール抑制力制御部120は、S10の処理を実行する機能部、つまり、後輪側スタビライザ装置14Rの電磁モータ60Rへの電力供給を停止する機能部として、後輪側電磁モータ電力供給停止部126を有している。
【0069】
(B)第2実施例
<車両用ロール抑制システムの構成>
図9に、第2実施例の車両用ロール抑制システム130を模式的に示す。先の実施例のロール抑制システム10が、ロール抑制装置としてスタビライザ装置14を1対備えているのに対し、本システム130は、ロール抑制装置として車体と車輪との距離(以下、「車体車輪間距離」という場合がある)を調整可能な車体車輪間距離調整装置(以下、「調整装置」という場合がある)132を各車輪に対応して備えている。本システム130は、先の実施例のシステム10と共通する構成要素を多く備えているため、本システム130の説明において、先のシステム10と共通する構成要素については、同じ符号を用い、それらの説明は省略あるいは簡略に行うものとする。
【0070】
調整装置132はそれぞれ、概してL字形状をなすL字形バー134と、そのバー134を回転させるアクチュエータ136とを備えており、本システム130においては、4つの調整装置132の備える4つのアクチュエータ136に対応して、4つのバッテリ138と4つのコンバータ140とが設けられている。なお、調整装置132,車輪16,L字形バー134,アクチュエータ136,バッテリ138,コンバータ140等は総称であり、4つの車輪のいずれに対応するものであるかを明確にする必要のある場合には、図に示すように、車輪位置を示す添え字として、右前輪,左前輪,右後輪,左後輪の各々に対応するものにFR,FL,RR,RLを付す場合がある。
【0071】
調整装置132のL字形バー134は、図10,11に示すように、概ね車幅方向に延びるトーションバー部150と、トーションバー部150と連続するとともにそれと交差して概ね車両後方に延びるアーム部152とに区分することができる。L字形バー134のトーションバー部150は、それの軸方向の中間部において、車体に固定された保持具154によって車体の下部に回転可能に保持されている。アクチュエータ136は、それの一端部に設けられた取付部材156によって車体下部の車幅方向における中央付近に固定されており、トーションバー部150の端部(車幅方向における中央側の端部)がそのアクチュエータ136に接続されている。一方、アーム部152の端部(トーションバー部150とは反対側の端部)は、リンクロッド158を介して、第2ロアアーム38に連結されている。詳しく言えば、第2ロアアーム38には、リンクロッド連結部160が設けられ、リンクロッド158の一端部は、そのリンクロッド連結部160に、他端部はL字形バー134のアーム部152の端部に、それぞれ遥動可能に連結されている。
【0072】
調整装置132の備えるアクチュエータ136は、図12に示すように、外殻部材としての略円筒状のハウジング170を備えており、その内部に、先の実施例のスタビライザ装置14の備える電磁モータ60および減速機62と同じ構成の電磁モータ172および減速機174を備えている。ハウジング170は、それの一端部に固定された上述の取付部材156によって、車体に固定的に取り付けられている。L字形バー134は、それのトーションバー部150がハウジング170の他端部からそれの内部に延び入るように、配設されるとともに、ハウジング170に対して回転可能かつ軸方向に移動不能に支持されている。詳しくいえば、ハウジング170内に延び入るトーションバー部150は、電磁モータ172の備えるモータ軸176を貫通した状態で、そのトーションバー部150のハウジング170内に存在する端部において、減速機174の出力部としてのフレキシブルギヤ178とセレーション嵌合によって、相対回転不能かつ、軸方向に相対移動不能に接続されており、そのトーションバー部150の軸方向の中央部において、ブッシュ型軸受180を介してハウジング170に相対回転可能に保持されている。
【0073】
以上の構成から、電磁モータ172が駆動させられると、そのモータ172が発生させるモータ力によって、L字形バー134が回転させられて、そのL字形バー134のトーションバー部150が捩じられることになる。この捩りにより生じる捩り反力が、アーム部152,リンクロッド158等を介し、第2ロアアーム38に伝達され、第2ロアアーム38を車体に対して押し下げたり、引き上げたりする力、言い換えれば、ばね上部とばね下部とを上下に接近・離間させる方向の力である接近離間力として作用する。つまり、アクチュエータ136が発生させる力であるアクチュエータ力が、弾性体として機能するL字形バー134を介して、接近離間力として作用することになる。このことから、調整装置132は、接近離間力を発生する接近離間力発生装置としての機能を有していると考えることができ、その接近離間力を調整することで、車体と車輪との距離を調整することが可能となっている。
【0074】
調整装置132は、ばね上部とばね下部とを接近・離間させる方向の力である接近離間力を発生させ、その接近離間力の大きさを変更可能とされている。詳しく言えば、アクチュエータ136が、モータ力に依拠するアクチュエータ力によって、弾性体としてのL字形バー134を変形させつつ、つまり、L字形バー134のトーションバー部150を捩りつつ、そのアクチュエータ力を、L字形バー134を介して、ばね上部とばね下部とに接近離間力として作用させているのである。L字形バー134の変形量、つまり、トーションバー部150の捩り変形量は、アクチュエータ136の動作量に対応したものとなっており、また、アクチュエータ力に対応するものとなっている。接近離間力は、L字形バー134の変形による弾性力に相当するものであることから、アクチュエータ136の動作量に対応し、アクチュエータ力に対応するものとなる。したがって、アクチュエータ136の動作量とアクチュエータ力とのいずれか一方を変化させることで、接近離間力を変化させることが可能とされているのである。本システム130では、アクチュエータ136の動作量を直接の制御対象とした制御を実行することで、接近離間力が制御される。
【0075】
本システム130では、前輪側、若しくは、後輪側の左右輪に対応して設けられる1対の調整装置132をそれぞれ制御することで、左右輪の車輪車体間距離を逆相的に増減させることも可能である。すなわち、前輪側、若しくは、後輪側の左右輪に対応して設けられる1対の調整装置132は、先の実施例のシステム10のスタビライザ装置14と同様に、ロール抑制装置としての機能を有するものとされている。
【0076】
本システム130は、図9に示すように、各調整装置132,詳しく言えば、各アクチュエータ136の作動を制御する制御装置である電子制御ユニット(ECU)190を備えている。ECU190は、図13に示すように、各アクチュエータ136の作動を制御し、各アクチュエータ136が有する電磁モータ172に対応する駆動回路としての4つのインバータ192と、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体とするコントローラ194とを備えている。それらインバータ192の各々は、対応する電磁モータ172に接続されており、上記4つのコンバータ140のうちのその電磁モータ172に対応するものを介して4つのバッテリ138のうちのその電磁モータ172に対応するものに接続されている。言い換えれば、1つの電磁モータ172とその1つの電磁モータ172に対応するバッテリ138とを接続する電力供給線196が4本設けられており、1本の電力供給線196上に、1つのインバータ192と1つのコンバータ140とが設けられている。つまり、1つの電磁モータ172には1つのバッテリ138から電力が供給されるのである。また、コンバータ140は、先の実施例のシステム10のコンバータ28と同様に、双方向に通電可能なコンバータとされており、電磁モータ172が回転させられて発電機として機能するような場合には、その回転に伴う発電電力を電磁モータ172からバッテリ138に回生することが可能な構造とされている。なお、電磁モータ172,インバータ192,電力供給線196は総称であり、4つの車輪16のいずれに対応するものであるかを明確にする必要のある場合には、図に示すように、車輪位置を示す添え字として、右前輪,左前輪,右後輪,左後輪の各々に対応するものにFR,FL,RR,RLを付す場合がある。
【0077】
また、本システム130においては、左前輪に対応する電力供給線196FLと左後輪に対応する電力供給線196RLと右後輪に対応する電力供給線196RRとの3本の電力供給線の各々と、右前輪に対応する電力供給線196FRとを接続する3本の接続線200,202,204が設けられており、3本の電力供給線196FL,RL,RRの各々と右前輪に対応する電力供給線196FRとの電気的な接続と遮断とを切換える切換スイッチ206が設けられている。つまり、本システム130は、3本の接続線200,202,204と切換スイッチ206とで構成される供給線接続装置を備えるものとされている。なお、それら3本の電力供給線196FL,RL,RRの各々と右前輪に対応する電力供給線196FRとの間の導通は、通常、その切換スイッチ206によって遮断されている。
【0078】
<車両用ロール抑制システムの制御>
本システム130では、各調整装置132が発生させる接近離間力を独立して制御することによって、先のシステム10におけるロール抑制制御と略同様のロール抑制制御が実行される。つまり、車体が受けるロールモーメントに基づいて、目標となるモータ回転角である目標モータ回転角が決定され、実際のモータ回転角がその目標モータ回転角となるように4つの電磁モータ172の各々が制御される。車体のロールを抑制する際の各電磁モータ172の制御は、先のシステム10での各電磁モータ60の制御と同様であることから、通常のロール抑制時の各電磁モータ172の制御についての説明は省略する。
【0079】
また、本システム130に搭載される上記4つのバッテリ138の各々は、各電磁モータ172に対応するものであり、車両への搭載性等の観点から、比較的小型のものとされている。本システム10の電磁モータ172も、先のシステム10の電磁モータ60と同様に、定電圧駆動されることから、電磁モータ172の回転量はそれに流れる電流に概ね比例すると考えることができ、比較的大きな接近離間力を発生させる場合には、比較的大きな電流を電磁モータ172に供給する必要がある。本システム130におけるロール抑制制御においても、前輪側のロール剛性が後輪側のロール剛性より高くなるようにされることから、前輪側に対応する電磁モータ172FR,FLには、後輪側に対応する電磁モータ172RR,RLより多くの電流を供給する必要がある。このため、先のシステム10と同様に、本システム130においても、車体が受けるロールモーメントが比較的大きくなる場合、具体的に言えば、緊急回避時等において車両が急激に操舵される場合には、前輪側に対応する電磁モータ60FR,FLにおける電力不足が生じ、前輪側のロール剛性が低くなり、車両の旋回特性におけるアンダステア傾向が弱まることになる。
【0080】
したがって、本システム130においても、先のシステム10と同様に、緊急操舵時と想定される場合に、前輪側に対応する2つの電磁モータ172FR,FLに、前輪側に対応するバッテリ138FR,FLだけでなく、後輪側に対応するバッテリ138RR,RLからも電力を供給し、前輪側に対応する1対の調整装置132FR,FLの各々が適切な大きさのロール抑制力を発生させ、車両の旋回特性におけるアンダステア傾向を強めることが望ましい。ただし、本システム130に搭載されるバッテリ138は、先のシステム10に搭載されるバッテリ27よりも小型であり、前輪側に対応する2つの電磁モータ172FR,FLに、前輪側に対応するバッテリ138FR,FLだけでなく、後輪側に対応するバッテリ138RR,RLからも電力を供給しても、前輪側に対応する1対の調整装置132FR,FLの各々が適切な大きさのロール抑制力を発生させることができない虞がある。
【0081】
以上のことに鑑みて、本システム130において、車体が受けるロールモーメントが比較的大きくなると想定される場合には、左前輪に対応する電磁モータ172FLと左後輪に対応する電磁モータ172RLと右後輪に対応する電磁モータ172RRとの3つの電磁モータ172FL,RL,RRへの電力供給が停止されるとともに、右前輪に対応する電磁モータ172FRに、その電磁モータ172FRに対応するバッテリ138FRからだけでなく、上記3本の接続線200,202,204の各々を介して、他の3つのバッテリ138FL,RL,RRからも電力が供給される。具体的に言えば、ステアリングホイールの操作速度と車両走行速度とがそれぞれの閾値を超えることを条件として、3つの電磁モータ172FL,RL,RRの目標供給電流i*が0とされるとともに、3本の電力供給線196FL,RL,RRの各々と右前輪に対応する電力供給線196FRとを電気的に接続するように切換スイッチ206が作動させられる。つまり、本システム130において、車両が急激に操舵される場合に、3本の電力供給線196FL,RL,RRの各々と右前輪に対応する電力供給線196FRとが接続されたときに3つの電磁モータ172FL,RL,RRへの電力供給を停止する供給線接続時制御が実行される。
【0082】
また、本システム130は、電磁モータ172がロールモーメント等によって回転させられて発電機として機能するような場合には、電磁モータ172による発電電力がバッテリ138に回生することが可能な構造とされている。このため、上記3つの電磁モータ172FL,RL,RRの目標供給電流i*が0とされ、3本の電力供給線196FL,RL,RRの各々と右前輪に対応する電力供給線196FRとが電気的に接続されると、ロールモーメント等によってそれら3つの電磁モータ172FL,RL,RRの各々が回転させられ、それら3つの電磁モータ172FL,RL,RRの各々の回転に伴う発電電力もが、各接続線200,202,204を介して、右前輪に対応する電磁モータ172FRに供給される。したがって、本システム130では、緊急操舵時において、右前輪に対応する電磁モータ60FRの電力不足を回避し、右前輪に対応する調整装置132FRが適切な大きさのロール抑制力を発生させて、車両の旋回特性におけるアンダステア傾向を維持するのである。
【0083】
図5に、3本の電力供給線196FL,RL,RRの各々と右前輪に対応する電力供給線196FRとが電気的に遮断された状態、つまり、ロール抑制制御における電流の流れ(実線)と、電気的に接続された状態、つまり、供給線接続時制御における電流の流れ(一点鎖線)とを示す。図から解るように、ロール抑制制御においては、各調整装置132の電磁モータ172には自身に対応するバッテリ138から電力が供給される(実線)。一方、供給線接続時制御においては、右前輪の調整装置132FRの電磁モータ172FRには、自身に対応するバッテリ138FRから電力が供給されるとともに、他の3つのバッテリ138FL,RL,RRからの電力、および、他の3つの電磁モータ172FL,RL,RRによる発電電力もが供給される(一点鎖線)。
【0084】
<制御プログラム>
本システム130において、緊急操舵時における車両の旋回特性を考慮したロール抑制制御は、図14にフローチャートを示すロール抑制制御プログラムが、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec)をおいてコントローラ194により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、その制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明するが、本プログラムに従う処理は、先のシステム10におけるプログラムに従う処理と略同様であるため、省略あるいは簡略して説明するものとする。なお、このプログラムは、4つの調整装置132の全てに対して実行される。
【0085】
本プログラムに従う処理では、先のプログラムに従う処理と同様に、S21〜S27において、各電磁モータ172に対して目標供給電流i*が決定され、S28,S29において、緊急操舵時であるか否かが判定される。S29において、緊急操舵時と判定された場合に、S30において、上記3つの電磁モータ172FL,RL,RRに対して決定された目標供給電流i*の各々が0とされ、S31において、切換スイッチ206が3本の電力供給線196FL,RL,RRの各々と右前輪に対応する電力供給線196FRとを電気的に接続するように作動させられる。また、S29において、緊急操舵時ではないと判定された場合には、S32において、切換スイッチ206が3本の電力供給線196FL,RL,RRの各々と右前輪に対応する電力供給線196FRとを電気的に遮断するように作動させられる。そして、S33において、各電磁モータ172FR,FL,RR,RLに対する目標供給電流i*に基づく制御信号が、各インバータ192FR,FL,RR,RLに送信された後、本プログラムの1回の実行が終了する。
【0086】
<調整装置の制御の変形例>
本システム130では、各調整装置132が発生させる接近離間力を独立して制御することが可能であることから、ロール抑制制御に加えて、各サスペンション装置30ごとのばね上振動を減衰する制御である振動減衰制御と、車体のピッチを抑制する制御であるピッチ抑制制御とを実行することが可能である。詳しく言えば、ロール抑制制御,振動減衰制御,ピッチ抑制制御の各制御ごとに、目標モータ回転角成分を決定し、それらを合計することによって目標モータ回転角θ*を決定し、実際のモータ回転角θがその目標モータ回転角θ*となるように4つの電磁モータ172の各々を制御するのである。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】請求可能発明の第1実施例である車両用ロール抑制システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】図1の車両用ロール抑制システムの備えるスタビライザ装置を車両上方からの視点において示す模式図である。
【図3】図1の車両用ロール抑制システムの備えるスタビライザ装置を車両前方からの視点において示す模式図である。
【図4】スタビライザ装置の備えるアクチュエータを示す概略断面図である。
【図5】ロール抑制制御および供給線接続時制御における電磁モータへの電力供給路を概念的に示す図である。
【図6】コーナリングパワーと車輪にかかる荷重との関係を模式的に示したグラフである。
【図7】ロール抑制制御プログラムを示すフローチャートである。
【図8】ロール抑制システムの制御を司る制御装置の機能を示すブロック図である。
【図9】請求可能発明の第2実施例である車両用ロール抑制システムの全体構成を示す模式図である。
【図10】図9の車両用ロール抑制システムの備える調整装置を車両上方からの視点において示す模式図である。
【図11】図9の車両用ロール抑制システムの備える調整装置を車両後方からの視点において示す模式図である。
【図12】調整装置の備えるアクチュエータを示す概略断面図である。
【図13】ロール抑制制御および供給線接続時制御における電磁モータへの電力供給路を概念的に示す図である。
【図14】ロール抑制制御プログラムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0088】
10:車両用ロール抑制システム 14:スタビライザ装置(前輪側ロール抑制装置)(後輪側ロール抑制装置) 20:スタビライザバー 22:スタビライザバー部材 26:アクチュエータ 27:バッテリ(前輪側バッテリ)(後輪側バッテリ) 38:第1ロアアーム(ばね下部)(車輪保持部) 48:マウント部(ばね上部) 50:トーションバー部 52:アーム部 60:電磁モータ 62:減速機 64:ハウジング 82:フレキシブルギヤ(出力部) 90:電子制御ユニット(ECU)(制御装置) 98:電力供給線(前輪側電力供給線)(後輪側電力供給線) 100:接続線(供給線接続装置) 102:切換スイッチ(供給線接続装置) 120:ロール抑制力制御部 124:供給線接続制御部 130:車両用ロール抑制システム 132:車体車輪間距離調整装置(前輪側ロール抑制装置)(後輪側ロール抑制装置)(接近離間力発生装置) 134:L字形バー(弾性体) 136:アクチュエータ 138:バッテリ(前輪側バッテリ)(後輪側バッテリ)(1対のバッテリ) 150:トーションバー部 152:アーム部 170:ハウジング 172:電磁モータ 174:減速機 178:フレキシブルギヤ(出力部) 190:電子制御ユニット(制御装置) 196:電力供給線(前輪側電力供給線)(後輪側電力供給線)(1対の電力供給線) 200,202,204:接続線(供給線接続装置) 206:切換スイッチ(供給線接続装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが、電磁モータを有し、それの発生させる力に依拠して車両の旋回に起因する車体のロールを抑制するロール抑制力を発生させる前輪側ロール抑制装置および後輪側ロール抑制装置と、
前記前輪側ロール抑制装置および前記後輪側ロール抑制装置に対応して設けられた前輪側バッテリおよび後輪側バッテリと、
前記前輪側バッテリから前記前輪側ロール抑制装置の有する前記電磁モータへの電力供給のための前輪側電力供給線、および、前記後輪側バッテリから前記後輪側ロール抑制装置の有する前記電磁モータへの電力供給のための後輪側電力供給線と、
自身が作動させられることによって前記前輪側電力供給線と前記後輪側電力供給線とを電気的に接続する供給線接続装置と、
(a)前記前輪側ロール抑制装置および前記後輪側ロール抑制装置の各々が有する前記電磁モータへの供給電力を制御することで、それら前輪側ロール抑制装置および後輪側ロール抑制装置が発生させるロール抑制力を、車体が受けるロールモーメントに応じて制御するロール抑制力制御部と、(b)設定された条件の下、前記供給線接続装置を作動させる供給線接続制御部とを有する制御装置と
を備えた車両用ロール抑制システム。
【請求項2】
前記供給線接続制御部が、車両の操舵の急激さを指標する急操舵指標量が設定閾値を超える条件の下、前記供給線接続装置を作動させるように構成された請求項1に記載の車両用ロール抑制システム。
【請求項3】
前記ロール抑制力制御部が、
前記供給線接続装置が作動させられた場合に、作動させられてない場合に比較して、前記前輪側ロール抑制装置と前記後輪側ロール抑制装置との一方の発生させるロール抑制力を低減させる供給線接続時制御を実行するように構成された請求項1または請求項2に記載の車両用ロール抑制システム。
【請求項4】
前記ロール抑制力制御部が、
前記供給線接続時制御を、前記前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置との一方が有する前記電磁モータへの電力供給を行わずして実行するように構成された請求項3に記載の車両用ロール抑制システム。
【請求項5】
前記前輪側ロール抑制装置および前記後輪側ロール抑制装置の各々が、その各々の有する前記電磁モータへの電力供給が行われていない状態においてその電磁モータが車体の受けるロールモーメントの作用によって発電する構造とされた請求項4に記載の車両用ロール抑制システム。
【請求項6】
前記ロール抑制力制御部が、前記供給線接続時制御を、前記後輪側ロール抑制装置の発生させるロール抑制力を低減させて実行するように構成された請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の車両用ロール抑制システム。
【請求項7】
前記前輪側ロール抑制装置と前記後輪側ロール抑制装置との各々が、
スタビライザバーと、前記電磁モータを有してそれの発生させる力に依拠して前記スタビライザバーの捩り反力をロール抑制力として作用させるアクチュエータと
を備える請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の車両用ロール抑制システム。
【請求項8】
前記前輪側ロール抑制装置と前記後輪側ロール抑制装置との各々が、
左右の車輪に対応して設けられ、それぞれが、前記電磁モータを有しそれの発生させる力に依拠してばね上部とばね下部とを接近・離間させる方向の力である接近離間力を発生させる1対の接近離間力発生装置を含んで構成され、
前記ロール抑制力制御部が、前記1対の接近離間力発生装置の各々が有する前記電磁モータへの供給電力を制御することで、前記1対の接近離間力発生装置の旋回内輪に対応するものの接近離間力をばね上部とばね下部とを接近させる方向に、かつ、前記1対の接近離間力発生装置の旋回外輪に対応するものの接近離間力をばね上部とばね下部とを離間させる方向に発生させるとともに、それら接近離間力をロール抑制力として車体が受けるロールモーメントに応じて制御するように構成された請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の車両用ロール抑制システム。
【請求項9】
前記前輪側バッテリと前記後輪側バッテリとの各々が、1対のバッテリを含んで構成され、
前記前輪側電力供給線が、前記前輪側バッテリを構成する1対のバッテリの各々から、前記前輪側ロール抑制装置を構成する前記1対の接近離間力発生装置のうちの対応するものが有する前記電磁モータへの電力を供給するための1対の電力供給線を、前記後輪側電力供給線が、前記後輪側バッテリを構成する1対のバッテリの各々から、前記後輪側ロール抑制装置を構成する前記1対の接近離間力発生装置のうちの対応するものが有する前記電磁モータへの電力を供給するための1対の電力供給線を、それぞれ有し、
前記ロール抑制力制御部が、
前記供給線接続装置が作動させられた場合に、作動させられてない場合に比較して、前記前輪側ロール抑制装置と前記後輪側ロール抑制装置との一方の発生させるロール抑制力を低減させる供給線接続時制御を実行するように構成され、
かつ、その供給線接続時制御を、前記前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置との一方を構成する前記1対の接近離間力発生装置の各々の発生させる接近離間力を低減させるとともに、前記前輪側ロール抑制装置と前記後輪側ロール抑制装置との他方を構成する前記1対の接近離間力発生装置の一方の発生させる接近離間力を低減させて実行するように構成された請求項8に記載の車両用ロール抑制システム。
【請求項10】
前記ロール抑制力制御部が、
前記供給線接続時制御を、前記前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置との一方を構成する前記1対の接近離間力発生装置の各々が有する前記電磁モータへの電力供給を行わず、かつ、前記前輪側ロール抑制装置と後輪側ロール抑制装置との他方を構成する前記1対の接近離間力発生装置の一方が有する前記電磁モータへの電力供給を行わずして実行するように構成された請求項9に記載の車両用ロール抑制システム。
【請求項11】
前記ロール抑制力制御部が、前記供給線接続時制御を、前記後輪側ロール抑制装置を構成する前記1対の接近離間力発生装置の各々の発生させる接近離間力を低減させるとともに、かつ、前記前輪側ロール抑制装置を構成する前記1対の接近離間力発生装置の旋回内輪に対応して設けられたものが発生させる接近離間力を低減させて実行するように構成された請求項9または請求項10に記載の車両用ロール抑制システム。
【請求項12】
前記1対の接近離間力発生装置の各々が、
一端部が左右の車輪のうちの自身に対応するものを保持する車輪保持部と車体との一方に連結された弾性体と、
前記車輪保持部と車体との他方と前記弾性体の他端部との間に配設されてその他方と前記弾性体とを連結するとともに、前記電磁モータが発生させる力に依拠して自身が発生させる力を前記弾性体に作用させることで、自身の動作量に応じて前記弾性体の変形量を変化させるとともに、その力を前記弾性体を介して接近離間力として前記車輪保持部と車体とに作用させる電磁式のアクチュエータと
を備える請求項8ないし請求項11のいずれかに記載の車両用ロール抑制システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−29257(P2009−29257A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195028(P2007−195028)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】