説明

車載表示装置

【課題】ヘッドライトの点灯が必要な走行時に、安全かつ快適に車間距離の確保を運転者に促すことが可能な車載表示装置を提供する。
【解決手段】車載表示装置1では、制御部10が、各センサ及びスイッチ類2〜6からの入力情報に基づいて各種処理を実行し、ピクセルライト7を介して、自車両に対する前方側の路面上に照明光を照射し、画像デバイス8を介して、ピクセルライト7の投射領域に、安全車間距離を表す指標画像を表示する。このため、安全車間距離を表す指標画像が車両前方の道路(実像)上に表示されるため、運転者の視線が車外前方から外れずに済むと共に、運転者の焦点が実像上の指標画像に合いやすくなり、例えば夜間や夕方におけるヘッドライト6の点灯が必要な走行時に、安全かつ快適に車間距離の確保を運転者に促すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行車両に対して必要とされる車間距離の確保を自車両の運転者に促すための各種画像を表示する車載表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、先行車両に対して必要とされる車間距離の確保を自車両の運転者に促すために、自車両に搭載されたレーダ装置などにより先行車両との車間距離を検出し、その車間距離が所定の安全車間距離を下回る場合に、自車内のディスプレイやスピーカを介して運転者に警告する車載制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、この種の車載制御装置では、夜間や夕方における走行時に先行車両との追突事故を未然に防止しようとすると、昼間における走行時と比べてより大きな車間距離を確保する必要があるため、自車両のヘッドライトが点灯されていることを検出した場合に、安全車間距離をより大きな値に設定することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−191361号公報
【特許文献2】特開平11−34692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の車載制御装置では、ディスプレイに警告画像を表示する場合、運転者の視線を車外から車内へ移動させることになり、返って安全運転を妨げてしまう可能性が否定できず、スピーカで警告音を出力する場合、周囲の騒音や車内の音楽に警告音が埋もれてしまう可能性があり、必ずしも適切に報知できるとは限らないという問題があった。
【0006】
このような問題に対して、周知のヘッドアップディスプレイを用いて警告画像(虚像)を車両前方の風景に重畳表示することや、スピーカによる警告音の出力を上げることが考えられるが、前者の場合、運転者の焦点を虚像に合わさせることになり、後者の場合、警告音が煩わしすぎる可能性があるため、運転者に違和感や不快感を与えてしまう可能性があった。特に、後者の場合、夜間や夕方における走行時には、警告音の出力頻度が高くなるため、運転者に不快感をより多く与えてしまいかねないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するために、ヘッドライトの点灯が必要な走行時に、安全かつ快適に車間距離の確保を運転者に促すことが可能な車載表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた発明である請求項1に記載の車載表示装置は、投射手段が、自車両に対する前方側の路面上に照明光を投射し、画像表示手段が、先行車両に対して必要とされる車間距離として予め設定された安全車間距離を表す指標画像を、投射手段を介して路面上の投射領域に表示することを要旨とする。なお、ここでの投射領域とは、投射手段により照明光が路面上に投射される領域をいう。
【0009】
このように構成された車載表示装置では、例えばヘッドライトの光源を利用した照明光が照射されるときに、安全車間距離を表す指標画像が車両前方の道路(実像)上に表示されるため、運転者の視線が車外前方から外れずに済むと共に、運転者の焦点が実像上の指標画像に合いやすくなる。
【0010】
したがって、本発明の車載表示装置によれば、例えば夜間や夕方におけるヘッドライトの点灯が必要な走行時に、安全かつ快適に車間距離の確保を運転者に促すことができる。
また、本発明の車載表示装置は、請求項2に記載のように、距離検出手段が、自車両と先行車両との車間距離を検出し、表示制御手段が、距離検出手段により検出された車間距離に基づいて、画像表示手段による指標画像の表示形態を変更することが望ましい。なお、ここでの表示形態とは、路面上において指標画像が表示される形態をいい、例えば文字や色彩、位置、パターン等を変更することが挙げられる。
【0011】
このように構成された車載表示装置では、例えば実際の車間距離が所定の安全車間距離を下回る場合に、指標画像の文字や色彩、位置、パターン等を変更することにより、運転者に警告することができる。また、この場合、路面上において自車両と先行車両との間に投射領域を設定することが可能となるため、路面上に指標画像を確実に表示することができる。
【0012】
ここで、本発明の車載表示装置は、請求項3に記載のように、自車速検出手段が、自車両の速度を検出し、相対速算出手段が、距離検出手段により検出された車間距離に基づき、自車両と先行車両との相対速度を算出する。そして、距離設定手段が、自車速検出手段により検出された速度、及び、相対速算出手段により算出した相対速度に基づき、安全車間距離を設定することが望ましい。
【0013】
このように構成された車載表示装置では、自車速および相対速に応じて安全車間距離を可変設定することにより、例えば自車両の高速走行時や先行車両の減速時に、指標画像の表示形態の変更タイミングが早くなり、走行状況に応じてより安全な車間距離の確保を運転者に促すことができる。
【0014】
また、本発明の車載表示装置では、請求項4に記載のように、表示制御手段が、距離検出手段により検出された車間距離が安全車間距離以上である場合、路面上においてその安全車間距離に相当する位置に指標画像を表示することが望ましい。
【0015】
このように構成された車載表示装置によれば、路面上において指標画像の表示位置と先行車両の走行位置とを運転者に比較させることにより、先行車両に対して必要とされる車間距離の確保を自車両の運転者に容易に促すことができる。
【0016】
あるいは、本発明の車載表示装置において、請求項5に記載のように、環境取得手段が自車両の走行環境を取得する場合、表示制御手段は、環境取得手段により取得した走行環境が、雨天、市街地、または山道のいずれかを示すと、指標画像の表示位置を自車両に接近する側に変更することが望ましい。
【0017】
このように構成された車載表示装置では、雨天、市街地、または山道における走行時といった運転者の視界が悪くなるときに、安全車間距離を表す指標画像が路面上において自車両に比較的近い位置に表示されることになり、この指標画像を運転者に視認させる確実性を向上することができる。
【0018】
さらに、本発明の車載表示装置では、請求項6に記載のように、表示制御手段が、距離検出手段により検出された車間距離が安全車間距離を下回る場合、路面上において先行車両側から自車両側に向かって、指標画像を移動表示することが望ましい。
【0019】
このように構成された車載表示装置では、先行車両と自車両との車間距離が短くなると、路面上に表示されている指標画像が自車両に迫ってくるため、運転者に減速操作を直感的に促すことができる。
【0020】
ところで、本発明の車載表示装置は、請求項7に記載のように、第1の切替手段が、距離検出手段により検出された車間距離に基づいて、画像表示手段による指標画像の表示の許可または禁止を行うようにしてもよい。
【0021】
この場合、例えば先行車両が存在しないとき、あるいは先行車両が遠く離れているときに、安全車間距離を表す指標画像を非表示にすることにより、この指標画像が長時間に渡って表示されることで運転者に煩わしさを感じさせることを防止したり、運転者が必要とする場合に限り安全車間距離を報知したりすることができる。
【0022】
なお、第1の切替手段は、請求項8に記載のように、距離検出手段により検出された車間距離が、安全車間距離に対して所定距離だけ予め加算された第1の車間距離を上回ると、安全車間距離に対して所定距離だけ予め減算された第2の車間距離を下回るまでの間、画像表示手段による指標画像の表示を許可するようにしてもよい。
【0023】
このように構成された車載表示装置では、例えば自車両が先行車両に対して概ね安全車間距離となる車間距離を保ちながら走行する場合に、指標画像の表示/非表示の切り替えが頻繁に行われることで運転者に煩わしさを感じさせることを防止することができる。
【0024】
あるいは、第1の切替手段は、請求項9に記載のように、距離検出手段により検出された車間距離が安全車間距離を下回り、且つ、相対速算出手段により算出した相対速度の変化量に基づき、先行車両が自車両に加速を伴って接近していると判定した場合、一定期間経過するまでの間に限り、画像表示手段による指標画像の表示を許可するようにしてもよい。
【0025】
このように構成された車載表示装置では、例えば先行車両が接近しているときに、その接近速度がより大きくなるように変化した場合に限り、安全車間距離を表す指標画像を一定期間表示することにより、自車両を減速操作させる必要性が高いことを強調して運転者に報知することができる。
【0026】
なお、本発明の車載表示装置では、請求項10に記載のように、音声認識手段が、運転者による発話音声を認識し、第2の切替手段が、その音声認識手段により認識された発話音声に基づいて、画像表示手段による指標画像の表示の許可または禁止を行うようにしてもよい。
【0027】
この場合、運転者の視線が車外前方から外れることなく、運転者の意思に応じて、指標画像の表示/非表示を切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明が適用された車載表示装置1の構成を示すブロック図。
【図2】制御部10のCPUが実行する表示制御処理の詳細を示すフローチャート。
【図3】表示制御処理において安全車間距離の設定方法を示す説明図。
【図4】表示制御処理において実行される表示設定処理の詳細を示すフローチャート。
【図5】実際の車間距離が安全車間距離を上回る場合における指標画像の表示例を示す模式図。
【図6】実際の車間距離が安全車間距離を下回る場合における指標画像の表示例を示す模式図。
【図7】制御部10のCPUが実行する表示切替処理の詳細を示すフローチャート。
【図8】表示切替処理において指標画像の表示期間を示すグラフ。
【図9】表示制御処理において実行される表示設定処理(第2実施形態)の詳細を示すフローチャート。
【図10】表示設定処理において指標画像の表示位置を示すグラフ。
【図11】走行環境に応じて変更された指標画像の表示形態を示す模式図。
【図12】制御部10のCPUが実行する表示切替処理(第2実施形態)の詳細を示すフローチャート。
【図13】表示切替処理(第2実施形態)において指標画像の表示期間を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の第1実施形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、本発明が適用された車載表示装置1の構成を示すブロック図である。
【0030】
図1に示すように、車載表示装置1は、当該装置1が搭載された車両(以下、自車両という)の走行速度を検出する車速センサ2と、自車両に対する前方側の所定検出範囲内に位置する他車両(以下、先行車両という)を検知するためのレーダ装置3と、自車両に対する前方側の風景を撮像した画像データを生成する車載カメラ4と、自車両の運転者の手動によるスイッチ操作を入力する複数の本体スイッチ5と、自車両のヘッドライト6の光源を利用してその車両前方の路面上に照明光を投射するピクセルライト7と、このピクセルライト7の投射領域に各種画像を表示する画像デバイス8と、車速センサ2,レーダ装置3,車載カメラ4,本体スイッチ5,ヘッドライト6等からの入力情報に基づいて各種処理を実行し、ピクセルライト7,画像デバイス8を制御する制御部10とを備える。
【0031】
また、車載表示装置1は、GPSを用いて取得した現在地情報に基づいて周知の経路案内処理を行うナビゲーション装置11や、自車両の運転者が発話する音声(発話音声)を集音して周知の音声認識処理を行う音声認識装置12に加えて、自車両のワイパ装置13、イグニッション(IG)スイッチ14等が接続され、これら装置11〜13やスイッチ14からも各種情報が制御部10に入力されるように構成されている。
【0032】
なお、レーダ装置3は、例えばFMCW方式のいわゆる「ミリ波レーダ」として構成されたものであり、周波数変調されたミリ波帯のレーダ波を送受信することにより、自車両の前方における先行車両や障害物、歩行者等の対象物(以下、前方障害物と総称する)を検出(認識)し、これらの認識結果に基づき、前方障害物に関するターゲット情報を作成して、このターゲット情報を制御部10に出力する。
【0033】
画像デバイス8は、例えば半導体基板上に敷き詰められた超微小なミラー(マイクロミラー)を駆動させることにより、ピクセルライト7により投射される照明光を画素毎に反射または遮断させ、このうちマイクロミラーによる反射光を1秒に数千回行われ得る回転式のカラーホイールに透過させて、その透過光を映像として路面上の投射領域に表示するように構成されている。
【0034】
ナビゲーション装置11は、例えばハードディスクに記憶されている地図データに基づき、自車両の現在地が市街地または山道を表す領域内に合致する場合に、その旨をそれぞれに表すフラグ情報を制御部10に出力するように構成されている。
【0035】
音声認識装置12は、例えば入力音声の波形をFFT(高速フーリエ変換)することにより周波数スペクトルを求め、その入力音声の特徴を抽出し、予め登録された音声データと比較して最も尤度(類似度)が高い語彙データを選択して、その語彙データに対応する操作指令を制御部10に出力するように構成されている。
【0036】
制御部10は、CPU,ROM,RAM,I/O及びこれらを接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、このうち、CPUが、ROMに記憶されているプログラムに基づき、RAMを作業エリアとして、以下の表示制御処理および表示切替処理を実行するように構成されている。
【0037】
<表示制御処理>
次に、図2は、制御部10のCPUが実行する表示制御処理の詳細を示すフローチャートである。なお、本処理は、IGスイッチ14又は本体スイッチ5を介して、車載表示装置1本体の電源がオンにされると起動し、その電源がオフにされるまで所定の周期で繰り返し実行される。
【0038】
まず、本処理が開始されると、S110では、車載カメラ4から入力される画像データに基づいて、先行車両が存在することを確認すると、レーダ装置3から入力されるターゲット情報に基づいて、その先行車両と自車両との車間距離を取得する。なお、車載カメラ4またはレーダ装置3のいずれかからの入力情報に基づいて、車間距離を算出するようにしてもよい。
【0039】
続くS120では、S110で取得した車間距離の前回値と今回値との差分(変化量)に基づいて、自車両と先行車両との相対速度を算出する。なお、ここでの相対速度は、自車両の走行速度を基準(ゼロ)とした場合の先行車両の速度として表され、先行車両が自車両から遠ざかるほど大きい値を示す。
【0040】
続くS130では、S120で算出した相対速度、及び車速センサ2から入力される自車両の走行速度(以下、自車速度という)に基づいて、先行車両に対して必要とされる車間距離(以下、安全車間距離という)を設定する。なお、安全車間距離は、図3に示すように、自車速度が大きいほど、又は、相対速度が小さいほど長くなるように設定される。また、ナビゲーション装置11からフラグ情報が入力された場合や、自車両のワイパが作動していることを示す作動信号がワイパ装置13から入力された場合には、市街地、山道、又は雨天の走行にそれぞれ対応する距離として、さらに長くなるように設定される。
【0041】
続くS140では、S110で取得した車間距離、及びS130で設定した安全車間距離に基づいて、このうち安全車間距離を表す指標画像(図形,文字,記号,色彩など)、及びこの指標画像の表示形態(表示位置,表示パターン等)を設定する表示設定処理を行って本処理を終了する。
【0042】
《表示設定処理》
ここで、図4は、前述の表示制御処理のS140で実行される表示設定処理の詳細を示すフローチャートである。
【0043】
まず、本処理が開始されると、S210では、表示制御処理のS110で取得した車間距離が、同じく表示制御処理のS130で設定した安全車間距離以上であるか否か判断し、ここで肯定判断した場合にはS220に移行し、否定判断した場合にはS230に移行する。
【0044】
S220では、表示制御処理のS130で設定した安全車間距離に相当する路面上の位置を表示位置(又は表示領域)に設定すると共に、本体スイッチ5を介して自車両の運転者により予め初期設定された指標画像および表示パターンを読み出して、本処理を終了する。なお、これら表示形態は、図5に示すように、例えば、表示位置として安全車間距離を示すライン画像や文字画像、表示領域として安全車間距離から自車両までの領域を示す領域画像などがある。さらに、これら表示形態は、実際の車間距離が安全車間距離を上回っていること、即ち、実際の車間距離が適正であることを、文字や色彩、コントラスト、移動表示などにより区分される。本実施形態では、実際の車間距離が適正である場合、路面上において自車両側から先行車両側に向かって、ライン画像が移動表示するように設定され得る。
【0045】
一方、S230では、表示制御処理のS110で取得した車間距離に比べて自車両側の路面上の位置を表示位置(又は表示領域)に設定すると共に、本体スイッチ5を介して自車両の運転者により予め初期設定された指標画像および表示パターンを読み出して、本処理を終了する。なお、これら表示形態は、図6に示すように、実際の車間距離が安全車間距離を下回っていること、即ち、安全車間距離を確保する必要があることを、文字や色彩、コントラスト、矢印表示、移動表示などにより強調される。本実施形態では、実際の車間距離が適正である場合、路面上において先行車両側から自車両側に向かって、ライン画像が移動表示するように設定され得る。
【0046】
<表示切替処理>
次に、図7は、制御部10のCPUが実行する表示切替処理の詳細を示すフローチャートである。なお、本処理は、前述の表示設定処理で設定された指標画像を、同じく表示設定処理で設定された表示形態によって表示するか否かを判定する処理、即ち、表示または非表示の切り替えを行う処理である。また、本処理は、前述の表示制御処理が開始されると起動され、IGスイッチ14又は本体スイッチ5を介して、車載表示装置1本体の電源がオフにされるまで所定の周期で繰り返し実行される。
【0047】
まず、本処理が開始されると、S310では、指標画像を表示するための操作指令を、本体スイッチ5又は音声認識装置12から入力したか否かを判断し、ここで肯定判断した場合にはS350に移行し、否定判断した場合にはS320に移行する。
【0048】
S320では、指標画像を非表示にするための操作指令を、本体スイッチ5又は音声認識装置12から入力したか否かを判断し、ここで肯定判断した場合にはS360に移行し、否定判断した場合にはS330に移行する。
【0049】
S330では、前述の表示制御処理のS110で取得した車間距離が、同じく表示制御処理のS130で設定した安全車間距離に対して所定距離だけ予め加算された第1車間距離を上回るか否か判断し、ここで肯定判断した場合にはS350に移行し、否定判断した場合にはS340に移行する。
【0050】
S340では、前述の表示制御処理のS110で取得した車間距離が、同じく表示制御処理のS130で設定した安全車間距離に対して所定距離だけ予め減算された第2車間距離を下回るか否か判断し、ここで肯定判断した場合にはS360に移行し、否定判断した場合にはS350に移行する。
【0051】
S350では、画像デバイス8及びピクセルライト7を介して、表示設定処理で設定された指標画像を、同じく表示設定処理で設定された表示形態によって表示し、本処理を終了する。
【0052】
S360では、指標画像を非表示にするための制御指令を、画像デバイス8及びピクセルライト7に出力し、本処理を終了する。
つまり、本処理では、図8に示すように、自車両と先行車両との車間距離(実際の車間距離)が第1車間距離を一旦上回ると、実際の車間距離が第2車間距離を下回るまで、指標画像が路面上に表示されることになる。
【0053】
なお、上記実施形態において、ピクセルライト7が投射手段、画像デバイス8が画像表示手段、レーダ装置3又は車載カメラ4が距離検出手段、車速センサ2が自車速検出手段、表示制御処理のうち、S120が相対速算出手段、S130が距離設定手段、S140(表示設定処理)が表示制御手段、表示切替処理のうち、S330及びS340が第1の切替手段、S310及びS320が第2の切替手段に相当する。
【0054】
<効果>
以上説明したように、本実施形態の車載表示装置1では、制御部10が、各センサ及びスイッチ類2〜6からの入力情報に基づいて各種処理を実行し、ピクセルライト7を介して、自車両に対する前方側の路面上に照明光を照射し、画像デバイス8を介して、ピクセルライト7の投射領域に、安全車間距離を表す指標画像を表示する。
【0055】
したがって、本実施形態の車載表示装置1によれば、安全車間距離を表す指標画像が車両前方の道路(実像)上に表示されるため、運転者の視線が車外前方から外れずに済むと共に、運転者の焦点が実像上の指標画像に合いやすくなり、例えば夜間や夕方におけるヘッドライト6の点灯が必要な走行時に、安全かつ快適に車間距離の確保を運転者に促すことができる。
【0056】
また、車載表示装置1の制御部10が実行する表示切替処理では、実際の車間距離が安全車間距離付近を前後する場合であっても、指標画像の表示期間にヒステリシスをもたせることにより、指標画像の表示/非表示の切り替えが頻繁に行われることで運転者に煩わしさを感じさせることを防止することができる。
【0057】
さらに、車載表示装置1の制御部10が実行する表示切替処理では、指標画像を表示するための操作指令を、本体スイッチ5又は音声認識装置12から入力されると、指標画像が非表示状態であっても直ちに表示状態に切り替わるため、運転者が所望のタイミングで安全車間距離を確認することができる。
【0058】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図面と共に説明する。
なお、本実施形態の車載表示装置1は、第1実施形態と比較して、制御部10のCPUが実行する表示設定処理および表示切替処理が異なる点を除いて同様であるため、これら相違点を中心に説明し、第1実施形態と共通する点については、その説明を省略する。
【0059】
《表示設定処理》
ここで、図9は、前述の表示制御処理のS140で実行される表示設定処理(第2実施形態)の詳細を示すフローチャートである。
【0060】
まず、本処理が開始されると、S410では、ナビゲーション装置11からのフラグ情報、又はワイパ装置13からの作動信号のいずれかが入力されたか否かを判断し、ここで肯定判断した場合にはS430に移行し、否定判断した場合にはS420に移行する。なお、本ステップが環境取得手段に相当する。
【0061】
S420では、図10(a)に示すように、前述の表示制御処理のS110で取得した車間距離に基づいて、路面上においてその車間距離に比例した照射距離に相当する位置に表示位置または表示領域を設定し、本処理を終了する。但し、ここでの車間距離が所定の距離Aを上回る場合には一定の照射距離に設定される。
【0062】
一方、S430では、S410で入力されたフラグ情報または作動信号に基づいて、市街地、山道、又は雨天の走行にそれぞれ対応する位置または領域として、表示位置または表示領域を路面上において自車両に接近する側に設定し、本処理を終了する。例えば、ここでの表示位置(照射距離)は、図10(b)に示すように、実際の車間距離が距離Aと比較して短い距離Bを上回ると一定の距離に設定されることにより、実際の車間距離が距離Aから距離Bまでの区間では、路面上において自車両に接近する側に変更される。なお、ここでの指標画像は、図11に示すように、ラインや文字、図形などを組み合わせることにより、通常時からの表示位置の変更が強調表示され得る。
【0063】
つまり、本処理では、雨天、市街地、または山道における走行時といった運転者の視界が悪くなるときに、安全車間距離を表す指標画像が路面上において自車両に比較的近い位置に表示されることになり、この指標画像を運転者に視認させる確実性を向上することができる。
【0064】
<表示切替処理>
次に、図12は、制御部10のCPUが実行する表示切替処理(第2実施形態)の詳細を示すフローチャートである。なお、本処理では、指標画像の表示期間が一定となるように分周値をカウントする分周カウンタが用いられる。また、分周カウンタは、本処理が起動されると分周値がゼロに初期化される。
【0065】
まず、本処理が開始されると、S510では、前述の表示制御処理のS110で取得した車間距離が、同じく表示制御処理のS130で設定した安全車間距離を下回るか否かを判断し、ここで肯定判断した場合にはS520に移行し、否定判断した場合にはS560に移行する。
【0066】
S520では、表示制御処理のS120で算出した相対速度の前回値と今回値との差分(変化量)に基づいて、その変化量がゼロを上回るか否かを判断し、ここで肯定判断した場合には、先行車両が自車両に加速を伴って接近しているとみなして、S530に移行し、否定判断した場合にはS560に移行する。
【0067】
S530では、分周カウンタの分周値をインクリメントして、S540に移行する。
S540では、分周カウンタの分周値が予め設定された基準値N以下であるか否か判断し、ここで肯定判断した場合にはS550に移行し、否定判断した場合にはS560に移行する。
【0068】
S550では、画像デバイス8及びピクセルライト7を介して、表示設定処理で設定された指標画像を、同じく表示設定処理で設定された表示形態によって表示し、本処理を終了する。
【0069】
S560では、指標画像を非表示にするための制御指令を、画像デバイス8及びピクセルライト7に出力し、S570に移行する。
S570では、分周カウンタの分周値をゼロに初期化して、本処理を終了する。
【0070】
つまり、本処理では、図13に示すように、例えば処理の繰り返し周期を400ms、分周カウンタの基準値Nを5とした場合、実際の車間距離が安全車間距離を下回り、且つ、先行車両が自車両に加速を伴って接近していると判定すると、その判定時から2秒間(400ms×5)だけ指標画像が表示されることになる。
【0071】
このため、例えば先行車両が接近しているときに、その接近速度がより大きくなるように変化した場合に限り、安全車間距離を表す指標画像を一定期間表示することにより、自車両を減速操作させる必要性が高いことを強調して運転者に報知することができる。
【0072】
なお、本処理が第1の切替手段に相当する。
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0073】
例えば、上記実施形態の車載表示装置1は、制御部10が表示切替処理を実行するように構成されているが、この処理は必ずしも必要なものではなく、表示設定処理により設定された指標画像を常時表示するように構成されてもよい。
【0074】
また、上記実施形態の表示設定処理では、実際の車間距離が安全車間距離を下回る場合にも指標画像を表示するようにしているが、これに限定されるものではなく、実際の車間距離が安全車間距離以上である場合に限り指標画像を表示するようにしてもよい。
【0075】
さらに、上記実施形態の表示設定処理では、ワイパ装置13からの作動信号が入力された場合に、自車両が雨天を走行しているとみなしているが、これに限らず、例えば周知のレインセンサや湿度センサからの検出結果に基づいて、自車両の走行環境(天候)を特定するようにしてもよい。
【0076】
なお、上記実施形態の表示制御処理は、IGスイッチ14又は本体スイッチ5を介して、車載表示装置1本体の電源がオンにされると起動するが、これに限らず、例えばヘッドライト6の点灯を検出すると起動するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…車載表示装置、2…車速センサ、3…レーダ装置、4…車載カメラ、5…本体スイッチ、6…ヘッドライト、7…ピクセルライト、8…画像デバイス、10…制御部、11…ナビゲーション装置、12…音声認識装置、13…ワイパ装置、14…IGスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に対する前方側の路面上に照明光を投射する投射手段と、
先行車両に対して必要とされる車間距離として予め設定された安全車間距離を表す指標画像を、前記投射手段を介して前記路面上の投射領域内に表示する画像表示手段と、
を備えることを特徴とする車載表示装置。
【請求項2】
前記自車両と前記先行車両との車間距離を検出する距離検出手段と、
前記距離検出手段により検出された車間距離に基づいて、前記画像表示手段による前記指標画像の表示形態を変更する表示制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の車載表示装置。
【請求項3】
前記自車両の速度を検出する自車速検出手段と、
前記距離検出手段により検出された車間距離に基づき、前記自車両と前記先行車両との相対速度を算出する相対速算出手段と、
前記自車速検出手段により検出された速度、及び、前記相対速算出手段により算出した相対速度に基づき、前記安全車間距離を設定する距離設定手段と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の車載表示装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記距離検出手段により検出された車間距離が前記安全車間距離以上である場合、前記路面上において該安全車間距離に相当する位置に前記指標画像を表示することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の車載表示装置。
【請求項5】
前記自車両の走行環境を取得する環境取得手段を備え、
前記表示制御手段は、前記環境取得手段により取得した走行環境が、雨天、市街地、または山道のいずれかを示す場合、前記指標画像の表示位置を前記自車両に接近する側に変更することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の車載表示装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記距離検出手段により検出された車間距離が前記安全車間距離を下回る場合、前記路面上において前記先行車両側から前記自車両側に向かって、前記指標画像を移動表示することを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の車載表示装置。
【請求項7】
前記距離検出手段により検出された車間距離に基づいて、前記画像表示手段による前記指標画像の表示の許可または禁止を行う第1の切替手段を備えることを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれかに記載の車載表示装置。
【請求項8】
前記第1の切替手段は、前記距離検出手段により検出された車間距離が、前記安全車間距離に対して所定距離だけ予め加算された第1の車間距離を上回ると、前記安全車間距離に対して所定距離だけ予め減算された第2の車間距離を下回るまでの間、前記画像表示手段による前記指標画像の表示を許可することを特徴とする請求項7に記載の車載表示装置。
【請求項9】
前記第1の切替手段は、前記距離検出手段により検出された車間距離が、前記安全車間距離を下回り、且つ、前記相対速算出手段により算出した相対速度の変化量に基づき、前記先行車両が前記自車両に加速を伴って接近していると判定した場合、一定期間経過するまでの間に限り、前記画像表示手段による前記指標画像の表示を許可することを特徴とする請求項7に記載の車載表示装置。
【請求項10】
前記運転者による発話音声を認識する音声認識手段を備え、
該音声認識手段により認識された発話音声に基づいて、前記画像表示手段による前記指標画像の表示の許可または禁止を行う第2の切替手段を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の車載表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−211404(P2010−211404A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55534(P2009−55534)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】