説明

車間距離検出装置および車速制御システム

【課題】超音波を用いた車間距離検出装置において、計測の精度を向上させる。
【解決手段】自車200の前部に設置され、先行車300に対して超音波Sを送信するとともに、先行車300で反射して戻った超音波S′を受信する超音波送受信機10と、超音波Sが超音波送受信機10から送信されてから、反射波としての超音波S′が受信されるまでの経過時間ΔTを計時する計時手段30および経過時間ΔTに基づいて先行車300との間の車間距離Lを算出する距離演算部50を有する距離算出装置20と、を備え、距離算出装置20は、反射波として受信した超音波S′のうち、路面(500)から反射して受信したノイズ成分(S2′)を除去するノイズ信号除去手段40を備え、距離演算部50は、ノイズ信号除去手段40によって除去された後の超音波S′についての経過時間ΔTに基づいて、車間距離Lを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車間距離検出装置およびそれを用いた車速制御システムに関し、詳細には、先行車や後続車に対して超音波を送出し、その反射波を受信するまでの経過時間に応じて車間距離を検出する処理の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行中の車両と先行車との間の距離が過度に短くならないように、先行車との間の距離(車間距離)を検出し、この検出された車間距離が所定の距離を下回ったときは、車両に制動をかけるなどして車速を低下させ、車間距離を適度に保つことが行われている。
【0003】
この車間距離の検出は、例えば、自車両から先行車に向けてミリ波やレーザ光(以下、単に、ミリ波等という。)の指向性の良好な電磁波を送出し、先行車に当たって反射したミリ波等を受信し、このミリ波等の送信から反射したミリ波等の受信までに要した経過時間に基づいて求められている。
【0004】
しかし、レーザ光は指向性が極めて強いため、ある程度の広がりを持った領域を検出対象とするときは、そのレーザ光を走査するビームスキャンを行う必要があり、そのための機械的な可動部を有する補機類を備える必要があるが、これらの可動部などは、長期間の使用により、その信頼性に難点がある。
【0005】
また、黒い服を着た歩行者などは検出されない可能性もある。
【0006】
一方、ミリ波を用いたものでは、専用の発信器を用いる必要性から、回路のサイズや送受信アンテナのサイズを小型化するのに限界があり、特に車載用としては、このサイズの問題は好ましいものではない。
【0007】
これに対して、比較的近距離を測定するのに適したものとして、超音波を用いた距離検出装置(ソナー)が知られており、これは、機械的な可動部が無いため耐用年数が長い、という特長がある。
【0008】
また、ソナーは、回路に特殊な部品を用いることなく比較的小規模で実現することができるため、装置全体の小型化を実現することができ、特に短距離の障害物を検知するための装置として、既に広く普及している。
【特許文献1】特開平7−333332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、ソナーは送信パルスのビーム幅が広いため、先行車との距離がある程度大きくなると、送出された超音波のうち一部は路面で反射し、この路面で反射した超音波も、受信機に入力される。
【0010】
この結果、本来は先行車からの反射超音波を受信するまでの経過時間を計時すべきところ、先行車よりも手前の路面で反射した超音波を受信したときまでの経過時間を峻別することができず、精度よく車間距離を検出することが難しいという問題がある。
【0011】
ここで、ソナーは、超音波を送出してからの時間が経過する(検出対象との距離が遠くなる)にしたがって、反射超音波の受信レベルが減衰するため、一般的に、経過時間が長くなるにしたがって、受信レベルを増幅して超音波を受信することで、この減衰を補償している。
【0012】
したがって、単に受信レベルの大小を以て、本来の検出対象である先行車からの反射波か否かを見極めるのも困難である。
【0013】
なお、上述した車間距離の計測時の問題は、自車の前方を走行する先行車との間の車間距離を計測する場合だけでなく、自車の後方を走行する後続車との間の車間距離を計測する場合にも同様に起こり得る。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、超音波を用いた車間距離の計測の精度を向上させることができる車間距離検出装置およびこの車間距離検出装置を用いた車速制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る車間距離検出装置は、超音波を用いた車間距離検出装置において、検出対象となる先行車や後続車からの反射超音波以外の、路面からの反射超音波をノイズ成分として除去することにより、車間距離の計測の精度を向上させるものである。
【0016】
すなわち、本発明に係る車間距離検出装置は、車両の前部または後部に設置され、前記車両の前方を先行する先行車または前記車両の後方に続く後続車に対して超音波を送信するとともに、前記先行車または前記後続車で反射して戻った超音波を受信する超音波送受信機と、前記超音波が前記超音波送受信機から送信されてから、前記超音波が反射波として受信されるまでの経過時間を計時する計時手段および前記経過時間に基づいて前記先行車または前記後続車との間の車間距離を算出する距離演算部を有する距離算出装置と、を備えた車間距離検出装置であって、前記距離算出装置は、前記反射波として受信した超音波のうち、路面から反射して受信したノイズ成分を除去するノイズ信号除去手段を備え、前記距離演算部は、前記ノイズ信号除去手段によって除去された後の超音波についての前記経過時間に基づいて、前記車間距離を算出するものであることを特徴とする。
【0017】
このように構成された本発明に係る車間距離検出装置によれば、距離算出装置のノイズ信号除去手段が、反射波として受信した超音波のうち、路面から反射して受信したノイズ成分を除去し、このノイズ成分が除去された後の超音波についての、超音波送受信機から送信から受信までの経過時間に基づいて、距離演算部が車間距離を算出するため、本来の検出対象である先行車や後続車からの反射超音波だけに基づいて、これら先行車や後続車との車間距離を検出することができ、車間距離の計測精度を向上させることができる。
【0018】
本発明に係る車間距離検出装置においては、超音波送受信機を、一定周波数の超音波を送信するものとし、前記ノイズ信号除去手段を、前記反射波として受信した受信超音波のうち、前記超音波送受信機から送信された送信超音波の周波数との周波数差が予め設定された所定値以上となる周波数成分を前記ノイズ成分として除去するものとし、前記距離演算部は、前記超音波送受信機が前記送信超音波を送信したときから、前記受信超音波のうち前記ノイズ成分が除去された残りの受信超音波を受信したときまでを前記経過時間として、前記車間距離を求めるものとする、ことが好ましい。
【0019】
同一の向きに走行している先行車や後続車と自車両との間の速度差は比較的少ない。一方、走行している自車両と動かない路面(速度ゼロ)との間の速度差は、自車両の車速と一致するため、上述した先行車や後続車との速度さに比べて極めて大きい。
【0020】
そして、好ましく構成された車間距離検出装置によれば、超音波送受信機は一定周波数の超音波を送信するところ、自車両に対する相対的な速度差の小さい先行車や後続車で反射して、超音波送受信機により受信された反射超音波の周波数は、超音波送受信機から送信されたときの周波数と略同一となるか、またはドップラー効果による周波数偏移があったとしても極わずかであり、送信されたときの周波数から大きく偏移したものとはならない。
【0021】
一方、自車両に対する相対的な速度差の大きい路面で反射して、超音波送受信機により受信された反射超音波の周波数は、ドップラー効果によって、送信されたときの周波数から大きく偏移したものとなる。
【0022】
そして、ノイズ信号除去手段が、反射波として受信した受信超音波のうち超音波送受信機から送信された送信超音波の周波数との周波数差が予め設定された所定値以上となる周波数成分、すなわち路面で反射して受信された超音波を、ノイズ成分として除去することにより、距離演算部は、本来の検出対象である先行車や後続車で反射した成分を受信したときのタイミング(超音波送受信機により送信されてからの経過時間)に基づいて、車間距離を算出するため、車間距離の計測精度を向上させることができる。
【0023】
本発明に係る車間距離検出装置においては、超音波送受信機を、一定周波数の超音波を一定時間間隔でパルス状に送信するものとし、ノイズ信号除去手段を、反射波として受信した受信超音波を予め設定した所定の時間間隔ごとに取り込むとともに、この所定時間間隔ごとに取り込まれた受信超音波を周波数成分に展開する周波数成分展開部と、周波数成分展開部によって展開して得られた周波数成分ごとの受信超音波のうち、超音波送受信機から送信された送信超音波の周波数との周波数差が予め設定された所定値以上となる周波数成分を前記ノイズ成分として除去するフィルタと、受信超音波を取り込むために区切られた複数の時間間隔のうち、前記フィルタにより前記ノイズ成分が除去された後の周波数成分の受信レベルが最大となる受信超音波が含まれた時間間隔までを、前記送信超音波が送信されてからの前記経過時間として出力する経過時間演算部とを備えたものとし、前記距離演算部を、前記経過時間演算部から出力された前記経過時間に基づいて前記車間距離を求めるものとすることが好ましい。
【0024】
先行車や後続車との車間距離が判明していない段階では、超音波が送信されてから反射超音波を受信するまでの経過時間を予め知ることはできない、
そこで、周波数展開部が、受信超音波を、超音波が送信されてから所定時間間隔ごとに取り込んで、各時間間隔ごとに取り込まれた受信周波数をそれぞれ周波数成分ごとに展開することで、各時間間隔内の受信超音波に含まれる周波数成分を知ることができる。
【0025】
すなわち、例えば、ある時間間隔内の受信超音波には、送信超音波と略同一の周波数の成分(先行車または後続車で反射されたと考えられる超音波)は含まれていないが、ノイズ成分は含まれている場合、これをノイズ信号除去手段に入力するとノイズ成分が除去されるため、この時間間隔内では、送信超音波と略同一の周波数の成分(先行車または後続車で反射されたと考えられる超音波)もノイズ成分も含まれない時間間隔となる。
【0026】
一方、上記とは異なる時間間隔内の受信超音波には、送信超音波と略同一の周波数の成分(先行車または後続車で反射されたと考えられる超音波)が含まれているが、ノイズ成分も含まれている場合、これをノイズ信号除去手段に入力するとノイズ成分は除去されるが、送信超音波と略同一の周波数の成分は除去されないため、この時間間隔内では、送信超音波と略同一の周波数の成分が残る。
【0027】
そして、複数の時間間隔のうち、ノイズ成分が除去された後の受信超音波(送信超音波と略同一の周波数の成分)の受信レベルが最大となる受信超音波が含まれた時間間隔が、先行車や後続車から反射された超音波を受信したタイミングということができる。
【0028】
したがって、超音波を送信してから、ノイズ成分が除去された後の受信レベルが最大となる受信超音波が含まれた時間間隔までの経過時間に基づいて、距離演算部が車間距離を算出することで、精度良く車間距離を検出することができる。
【0029】
特に、距離算出装置が、経過時間が長くなるにしたがって受信レベルのゲインを増大させる制御を行うものの場合は、時系列的に後に受信した超音波であっても、減衰を補償するためのゲイン増大制御によって受信レベルが増幅されるため、路面の一部からの反射波であっても、先行車や後続車からの反射波と同様に比較的大きな受信レベルを示し、受信レベルの大きさに基づいて、検出対象の信号であるのか非対象のノイズであるのか、を判定するのは困難であるが、上述した好ましい構成の車間距離検出装置によれば、単に受信レベルの大きさ比較だけでなく、周波数による弁別によってノイズ成分を除去するため、一層精度の良い検出結果を得ることができる。
【0030】
また、本発明に係る車速制御システムは、上述した本発明に係る車間距離検出装置によって得られた精度の良い車間距離に応じて、車速制御装置が車速を制御することにより、精度良く車間距離を調整するものである。
【0031】
すなわち、本発明に係る車速制御システムは、上述した本発明に係る車間距離検出装置と、前記車間距離検出装置によって検出された車間距離が予め設定された距離よりも短いときは、前記車間距離を拡げるように前記車両の車速を制御する車速制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0032】
このように構成された本発明に係る車速制御システムによれば、本発明に係る車間距離検出装置によって精度の良い車間距離を得ることができ、この車間距離検出装置によって検出された車間距離が予め設定された距離よりも短いときは、車速制御装置が、車間距離を拡げるように車両の車速を制御することにより、精度良く車間距離を調整することができる。
【0033】
なお、車間距離に応じた車速の制御の具体的な内容は、先行車との関係における制御と後続車との関係における制御とで反対となる。すなわち、先行車との関係における制御では、車間距離が短くなったときは、車間距離を拡げるために、車速を減速する制御(例えば、エンジン回転を低下させたり、変速機の選択段数を低い段に落としたり、制動を行うなどの制御)を行う。
【0034】
一方、後続車との関係における制御では、車間距離が短くなったときは、車間距離を拡げるために、車速を増速する制御(例えば、エンジン回転を高めたり、変速機の選択段数を挙げたり、制動を解除するなどの制御)を行う。
【0035】
本発明に係る車速制御システムにおいては、前記車速制御装置を、前記車間距離検出装置によって検出された車間距離が予め設定された第1の距離よりも短いときは、前記車間距離を急激に拡げるように前記車両の車速を制御し、前記車間距離検出装置によって検出された車間距離が、前記第1の距離よりも長く、かつ第1の距離よりも長く設定された第2の距離よりも短いときは、車間距離を緩く拡げるように前記車両の車速を制御するものとするのが好ましい。
【0036】
このように好ましく構成された車速制御システムによれば、車間距離検出装置によって検出された車間距離が予め設定された第1の距離よりも短いときは、車速制御装置が車間距離を急激に拡げるように車両の車速を制御し、車間距離検出装置によって検出された車間距離が第1の距離よりも長く、かつ予め設定された第2の距離(第1の車間距離よりも長い距離)よりも短いときは、車速制御装置が車間距離を緩く拡げるように車両の車速を制御するため、車間距離の長短に応じた車速の制御を、緩・急の2段階で調整することができ、きめ細かく車間距離を調整することができる。
【0037】
なお、車間距離が第1の距離よりも長く、かつ第2の距離よりも短いときに、車速制御装置が車間距離を拡げるスピードとしての「緩く」とは、車間距離が第1の距離よりも短いときに、車速制御装置が車間距離を拡げるスピードとしての「急激に」との関係において、この「急激」よりもゆっくりであればよい。
【0038】
このように車間距離が第1の距離よりも長く、かつ第2の距離よりも短いときに、車速制御装置が車間距離を拡げるスピードを、車間距離が第1の距離よりも短いときに、車速制御装置が車間距離を拡げるスピードよりも緩くするのは、車間距離が第1の距離よりも長いため、先行車や後続車に近接乃至衝突するまでの距離的および時間的な余裕が、車間距離が第1の距離よりも短い場合よりも大きいからである。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る車間距離検出装置によれば、超音波を用いた車間距離の計測の精度を向上させることができる。
【0040】
また、本発明に係る車間距離検出装置によれば、車間距離検出装置によって精度の良い車間距離を検出することができるため、この精度の良い車間距離に基づいて、精度良く車速を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明に係る車間距離検出装置および車速制御システムの実施形態について、図面を用いて説明する。
【0042】
図1は、本発明の実施形態に係る車速制御システム100を示すブロック図、図2は、図1に示した車速制御システム100が搭載された自車両200(以下、自車200という。)とこの自車200の走行方向前方を走る先行車両300(以下、先行車300という。)とを示す模式図である。
【0043】
図示の車速制御システム100は、この車速制御システム100が搭載された自車200と先行車300との間の車間距離L(図2参照)を検出する車間距離検出装置60と、この車間距離検出装置60によって検出された車間距離Lに応じて自車200の車速を制御する車速制御装置70とを備えた構成である。
【0044】
車間距離検出装置60は、図3に示すように、自車200に設置されて前方に向かって超音波(送信超音波)Sを送信(発信)するとともに、前方の先行車300などから反射して戻った超音波(反射超音波)S′を受信する超音波送受信機10と、この反射超音波S′の受信に基づいて、超音波Sが反射した対象物までの距離を求める距離算出装置20とからなる。
【0045】
距離算出装置20は、超音波Sが超音波送受信機10によって送信された時点(時刻t1)から、反射超音波S′として超音波送受信機10に受信された時点(時刻t2)までの経過時間ΔT(=t2−t1)を計時する計時手段30と、経過時間ΔTに基づいて先行車300との間の車間距離Lを算出する距離演算部50と、反射超音波S′のうち、路面500で反射して受信したノイズ成分S2′を除去するノイズ信号除去手段40とを備えている。
【0046】
距離演算部50には、経過時間をΔT[sec]、送信超音波Sの伝搬速度をv[m/sec]として、次式(1)にしたがって車間距離L[m]を算出する処理手順が記憶されている。
L=(1/2)・ΔT・v (1)
ここで、自車200の前部に設けられた超音波送受信機10は、一定周波数f0[kHz]の超音波Sを一定間隔でパルス状の信号として送信する一方、その超音波Sを送信していない期間中に反射超音波S′を受信するように構成されているが、超音波送受信機10から送信される送信超音波Sは、レーザ光ほどの指向性を有するものではないため、ある程度の広がりを有している。
【0047】
このため、例えば図4に示すように、前方の先行車を狙って水平に送信されるように設置されていても、水平方向からある程度の角度幅に広がり、水平方向に対して下方への角度θの路面500で反射された超音波S′も、超音波送受信機10に受信されることになる。
【0048】
このとき、図4のように先行車300の後部の下方の路面500で反射された反射超音波S2′は、先行車300の後部で反射された反射超音波S1′よりも伝搬距離が長くなる。
【0049】
すなわち、超音波送受信機10から水平に伝搬し、先行車300の後部で反射されて水平に戻る超音波S,S1′の経路に沿った伝搬距離は2Lであるが、水平方向に対して角度θの下方に向かって伝搬し、その路面500で反射して戻る超音波S,S2′の経路に沿った伝搬距離は2L/cosθとなる。
【0050】
この結果、路面500で反射した超音波を検出するのに要する経過時間ΔTは、本来の検出対象である先行車300で反射した超音波を検出するのに要する経過時間ΔTよりも長くなる。
【0051】
これを、横軸に時刻t、縦軸に超音波の受信レベルRを表すと、図5(a)に示すようになり、時刻t1において超音波送受信機10から超音波Sが送信され、時刻t2,t3等において、超音波送受信機10が反射超音波S′をそれぞれ受信することになるが、いずれの受信信号が先行車300からの反射超音波S1′であるかが、このままでは分からない。
【0052】
そこで、本実施形態の車間距離検出装置60における距離算出装置20には、反射波として受信した超音波S′のうち、路面500から反射して受信したノイズ成分S2′を除去するノイズ信号除去手段40を備え、距離演算部50は、このノイズ信号除去手段40によってノイズ成分S2′が除去された後の超音波S′、すなわち先行車300で反射された本来の検出対象である反射超音波S1′についての経過時間ΔTに基づいて、車間距離Lを算出するものとして構成されている。
【0053】
このノイズ信号除去手段40は、反射波として受信した受信超音波(反射超音波)S′のうち、超音波送受信機10から送信された送信超音波Sの周波数f0[kHz]との周波数差Δfが、予め設定された所定値以上となる周波数成分をノイズ成分として除去するものとし、距離演算部50は、超音波送受信機10が送信超音波Sを送信したとき(時刻t1)から、受信超音波S′のうちノイズ成分S2′が除去された残りの受信超音波S1′を受信したとき(時刻t2)までを経過時間ΔTとして、車間距離Lを求めるように構成されている。
【0054】
ここで、同一の向きに走行している先行車300と自車200との間の走行速度差は比較的少ない一方、走行している自車200と動かない路面500(速度ゼロ)との間の速度差は、上述した先行車300と自車200との速度差に比べて極めて大きい。
【0055】
すなわち、超音波送受信機10は一定周波数f0[kHz]の超音波Sを送信するところ、自車200に対する相対的な速度差の小さい先行車300で反射して、超音波送受信機10により受信された反射超音波S1′の周波数f1[kHz]は、超音波送受信機10から送信されたときの周波数f0[kHz]と略同一となるか、またはドップラー効果による周波数偏移があったとしても極わずかであり、送信されたときの周波数から大きく偏移したものとはならない。つまり、f1≒f0である。
【0056】
一方、自車200に対する相対的な速度差の大きい路面500で反射して、超音波送受信機10により受信された反射超音波S2′の周波数f2[kHz]は、ドップラー効果によって、送信されたときの周波数f0[kHz]から大きく偏移したものとなる。つまり、f2≠f0(|f2−f0|>>|f1−f0|)である。
【0057】
そして、ノイズ信号除去手段40が、反射波として受信した受信超音波S′のうち超音波送受信機10から送信された送信超音波Sの周波数f0との周波数差が予め設定された所定値以上となる周波数成分、すなわち路面500で反射して受信された超音波S2′を、ノイズ成分として除去することにより、距離演算部50は、本来の検出対象である先行車300で反射した成分S1′を受信したときの時刻t2までの経過時間(超音波送受信機10により送信されてからの経過時間ΔT(=t2−t1))に基づいて、車間距離Lを算出するため、車間距離Lの計測精度を向上させることができる。
【0058】
そこで、本実施形態のノイズ信号除去手段40は、反射波として受信した受信超音波S′を予め設定した所定の時間間隔Δtごと(例えば図5(a)に示すΔtごと)に取り込むとともに、この所定時間間隔Δtごとに取り込まれた受信超音波S′を周波数成分に展開する周波数成分展開部41を備えている。
【0059】
この周波数成分展開部41は、例えば高速フーリエ変換(FFT)の処理手順を適用すればよい。
【0060】
周波数成分展開部41が、受信超音波S′を周波数成分f1,f2,…ごとに弁別して、周波数成分ごとの受信レベルRを検出することで、受信超音波S′から、本来の検出対象の周波数f1と周波数差が所定値以上となっているノイズ成分f2を除去するのが容易になる。
【0061】
この不要なノイズ成分を除去するための構成として、ノイズ信号除去手段40には、周波数成分展開部41によって展開して得られた周波数成分ごとの受信超音波S1′,S2′,…のうち、超音波送受信機10から送信された送信超音波Sの周波数f0との周波数差(=|f−f0|)が予め設定された所定値以上となる周波数成分をノイズ成分として除去するフィルタを適用することができるが、このフィルターは、ソフトウェアによるものであってもよいし、ハードウェアによるものであってもよい。
【0062】
ところで、超音波送受信機10は所定の時間間隔Δtごとに反射超音波S′を受信するが、単に時間に対する反射超音波S′の受信レベルRを検出しただけでは、本来の受信対象である先行車300からの反射超音波S1′だけを、受信レベルRにのみ基づいて検出するのは困難である。
【0063】
すなわち、所定時間間隔Δtごとに検出される反射超音波S′は、前述したように本来の検出対象である先行車300からの反射超音波S1′の他に、路面500で反射したノイズ成分となる反射超音波S2′も重畳して包絡線化された信号(図5(a)参照)として検出されだけであり、しかも路面500のうち自車200に近い領域で反射されたノイズ成分を含む反射超音波や遠い領域で反射されたノイズ成分を含む反射超音波が次々に受信されるため、図5(a)に示した時系列の受信レベルRの包絡線のプロファイルにおける山部分(受信レベルRの高い部分)のうち、いずれの山の部分が、本来の受信対象である先行車300からの反射超音波S1′が含まれているのかを、その受信レベルRのみに基づいて判定することはできない。
【0064】
しかし、本実施形態における周波数成分展開部41は、超音波送受信機10が反射波として受信した受信超音波S′を、予め設定した所定時間間隔Δtごとに取り込むとともに、この所定時間間隔Δtごとに取り込まれた受信超音波S′をそれぞれ、周波数成分に展開するため、時系列の受信レベルRの包絡線のプロファイルにおける山部分(受信レベルRの高い部分)にそれぞれ含まれる周波数成分を、それぞれの時間間隔Δtごとに抽出することができる。
【0065】
したがって、図5(a)に示す時刻t2から時間間隔Δtの期間中に検出された受信超音波S′を、周波数成分展開部41が周波数成分ごとに展開することで、例えば図5(b)に示すように、周波数f1の成分(S1′)、周波数f2の成分(S2′)等ごとに、受信レベルRが求められる。
【0066】
同様に、図5(a)に示す時刻t3から時間間隔Δtの期間中に検出された受信超音波S′を、周波数成分展開部41が周波数成分ごとに展開することで、例えば図5(c)に示すように、周波数f1の成分(S1′)、周波数f2の成分(S2′)等ごとに、受信レベルRが求められる。
【0067】
そして、フィルタ42が、各時間間隔Δt単位で周波数成分展開部41によって展開して得られた周波数成分ごとの受信超音波S′のうち、送信超音波Sの周波数f0との周波数差が予め設定された所定値以上となる周波数成分をノイズ成分として除去する。
【0068】
この予め設定された周波数差の所定値は、実験などを通じて予め求めておくことができる。
【0069】
例えば、送信超音波Sの周波数f0=30[kHz](空中伝搬損失:0.84[dB/m])、周波数成分展開部41による受信超音波S′の取り込み時間間隔Δt(サンプリング周波数fs=75[kHz]、サンプリングデータ数N=64[sample])、超音波の伝搬速度v=340[m/sec]とすると、このシステム100によって検出することができる車間距離の分解能ΔLは次式(2)により0.29[m]となり、検出することができる周波数の分解能Δfは次式(3)により1.17[kHz]となる。
ΔL=N・(1/fs)・v (2)
Δf=fs/N (3)
ここで、超音波送受信機10から送信される超音波S′の、水平方向に対する下方への広がり角度θを30[度]とし、自車200の車速V1[km/h]および他車300の車速度V2[km/h]をそれぞれ時速60[km/h]とすると、先行車300の後部の真下の路面(自車200における超音波送受信機10の設置位置から視て下向き30[度]の路面500)から反射して受信された所謂ノイズ成分S2′の周波数f2は、ドップラー効果による式(4)に基づいて、32.6[kHz]に偏移する。
f2=f0・(v+V1・cosθ)/(v−V1・cosθ) (4)
したがって、送信超音波Sの周波数f0との差である2.6[kHz](=|32.6−30|[kHz])を弁別できればよいところ、上述した本システム100の周波数分解能Δfは1.17[kHz]であるから、周波数f1(≒f0)と所定の周波数差2.6[kHz]を有する路面500からの反射超音波S2′を弁別することができる。
【0070】
なお、上述した車間距離検出装置60の条件によれば、周波数分解能Δfより、最低車両速度Vmin[km/h]は、次式(5)より、27.07[km/h]となり、概ね時速30[km/h]程度までは、上述した弁別能を維持してノイズ成分を除去することができる。
Vmin=v・Δf/{(2・f0+Δf)・cosθ} (5)
一方、この車間距離検出装置60の条件で除去可能な最大下向き放射角度θm(ノイズ成分として超音波送受信機10に入力してくる反射超音波S′の、水平方向に対する角度)は、次式(6)より、67.04[度]であり、超音波送受信機10としては上下両側の放射角度2・θmとして、概ね130[度](≒2×67.04)程度のものまで使用することができる。
θm=cos−1[v・Δf/{(2・f0+Δf)・V1}] (6)
そして、フィルタ42が、この弁別された周波数f2の路面500からの反射超音波S2′を除去すると、図5(b),(c)に示された周波数f1の反射超音波S1′以外はそれぞれ同図(d),(e)において破線で示すように消去され、実線で示した周波数f1の反射超音波S1′だけが残る。
【0071】
さらに、ノイズ信号除去手段40は、経過時間演算部43を備えているが、この経過時間演算部43は、反射超音波S′を取り込むために区切られた複数の時間間隔Δt(時刻t2からの時間間隔Δt、時刻t3からの時間間隔Δt、…)のうち、フィルタ42によりノイズ成分S2′が除去された後の周波数成分S1′(周波数f1)の受信レベルRが最大となる受信超音波S′が含まれた時間間隔Δt(時刻t2からの時間間隔Δt)までを、送信超音波Sが送信されてからの経過時間ΔTとして出力する。
【0072】
つまり、先行車300からの反射超音波S1′が最も強く検出された時間帯(図5(d)に示した時刻t2からの時間間隔Δt)までの経過時間ΔTが、本来の検出対象である反射超音波を検出した時点までの経過時間として精度良く検出することができる。
【0073】
経過時間演算部43による上述した作用は、より具体的には、周波数成分ごとに展開され、ノイズ成分が除去された後の反射超音波S′(図5(d)および同図(e))を逆フーリエ変換により、時間領域に展開し直し、図5(f)に示すように時間tと受信レベルRとの関係に戻す。
【0074】
そして、この時間tと受信レベルRとの対応関係において、受信レベルRを所定の閾値R1で二値化し(図5(g))、二値化後の受信レベルRの立ち上がり間の時間を経過時間ΔTとして求める。
【0075】
そして、距離演算部50が、この経過時間演算部43によって求められた経過時間ΔTに基づいて先行車300との間の車間距離Lを求める。
【0076】
このように、本実施形態の車速制御システム100を構成している車間距離検出装置60によれば、検出される車間距離の精度を従来よりも向上させることができる。
【0077】
なお、この車間距離検出装置60は、本発明に係る車間距離検出装置の一実施形態でもある。
【0078】
図6は、図3に示した距離算出装置20を、より具体的な構成に適用したブロック図であり、トリガ発生部21は、図3における計時手段30に対応し、データ取り込み部22および時間・周波数変換部23は、図3における周波数成分展開部41に対応し、計時手段30および経過時間演算部43に対応し、周波数選択部24は、図3におけるフィルタ42に相当し、周波数・時間変換部25、二値化部26およびカウンタ部27は、図3における経過時間演算部43に相当し、演算部28は、図3における距離演算部50に相当する。
【0079】
トリガ発生部21は、超音波送受信機10から超音波Sの発信を行わせるためのトリガとなる信号を発生し、この信号を超音波送受信機10に入力し、このトリガ信号の発生時刻が超音波Sの送信時刻t1として、カウンタ部27による経過時間ΔTのカウントアップの開始信号となっている。
【0080】
なお、時間・周波数変換部23による時間・周波数変換は、時間t−受信レベルRの対応関係を、フーリエ変換により、周波数f−受信レベルRの対応関係に変換する処理であり、周波数・時間変換部25による周波数・時間変換は、周波数f−受信レベルRの対応関係を、逆フーリエ変換により、時間t−受信レベルRの対応関係に変換する処理である。
【0081】
以上のようにして、車間距離検出装置60によって検出された車間距離Lは、車速制御装置70に入力される。
【0082】
ここで、車速制御装置70は、車間距離検出装置60によって検出された車間距離Lが予め設定された距離L1よりも短いときは、検出される車間距離Lを急激に拡げるように自車200の車速を急激に変化させ、車間距離検出装置60によって検出された車間距離Lが予め設定された距離L2(>L1)よりも短く、かつL1より長いときは、検出される車間距離Lを緩やかに拡げるように自車200の車速を緩やかに変化させるものである。
【0083】
自車200の車速を低下させる方法としては、本実施形態においては、制動装置を作動させて車速を低下させるものであるが、この形態に限らず、エンジン回転数を低下させたり、動力伝達装置(トランスミッション)の段数を、減速比の大きい段に切り替えるなどを適用することもできる。
【0084】
車速制御装置70の具体的な構成は、急制動によって車間距離を急激に拡げるように車速を制御するのに必要な第1距離L1が記憶された第1距離設定部73と、第1距離よりも長く、かつ緩制動によって車間距離を緩やかに拡げるように車速を制御するのに必要な第2距離L2が記憶された第2距離設定部74と、第1距離設定部73に記憶された第1距離L1と車間距離検出装置60によって検出された車間距離Lとを大小比較し、その比較結果を出力する第1距離比較部71と、第2距離設定部74に記憶された第2距離L2と車間距離検出装置60によって検出された車間距離Lとを大小比較し、その比較結果を出力する第2距離比較部72と、第1距離比較部71による比較結果において、車間距離検出装置60によって検出された車間距離Lが第1距離L1よりも短いとき(L<L1)は、車両の制動装置に対して強制動(急制動)を行わせる操作が出力される強制動操作部75と、第1距離比較部71による比較結果において、車間距離検出装置60によって検出された車間距離Lが第1距離L1よりも長く(L1<L)、かつ第2距離比較部72による比較結果において、車間距離検出装置60によって検出された車間距離Lが第2距離L2よりも短いとき(L<L2)は、車両の制動装置に対して弱制動(緩制動)を行わせる操作が出力される弱制動操作部76と、を備えた構成である。
【0085】
次に、このように構成された車速制御システム100の作用について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0086】
まず、前述した車間距離検出装置60の超音波送受信機10から先行車300に向かって、パルス状の超音波Sが時刻t1において送信される(図8においてステップ(S1))。その後、車間距離検出装置60は、この送信超音波Sの反射波としての反射超音波S′を受信し(S2)、既述した作用により、ノイズ成分が除去された反射超音波S1′に基づいて、自車200と先行車300との間の車間距離L精度良く検出する(S3)。
【0087】
車間距離検出装置60によって検出された車間距離Lは車速制御装置70に入力され、第1距離比較部71が、入力された車間距離Lと第1距離設定部73に予め記憶された第1距離L1とを大小比較し(S4)、検出された車間距離Lが第1距離L1より小さいときは、強制動操作部75に対して、超音波をパルス状に送信する送信時間間隔Δtに対応した時間Δtだけ強制動操作を行わせ(S7)、これによって、自車200は強制動される。
【0088】
この強制動操作(S7)が行われている間、車速制御装置70は、この強制動によって車間距離Lが適正な距離(L2<)に達したか否かを、超音波の送信時間間隔Δtに対応した時間Δtごとに判定を繰り返す(S6→S1→S2→…→S6)。
【0089】
なお、ステップ6(S6)における、制御動作を終了する(S6→制御終了)か否か(S6→S1)の判定の基準は、例えば、この車速制御システム100への通電の有無にしたがうものであり、具体的には、車両200のキースイッチがオフにされたときはシステム100への通電が遮断されるため、制御動作は終了する(S6→制御終了)。
【0090】
一方、この車速制御システム100への通電が行われている間は、制御動作を終了することはなく、常に時間Δtの間隔で処理のループ(S6→S1→…→S6)を繰り返す。
【0091】
時間Δtの間隔ごとに制御の処理ループが繰り返されている間は、ステップ1(S1)の処理に戻り、検出された車間距離Lが未だ第1距離L1以下のとき(S4→S7)は、さらに強制動の操作時間を時間Δtだけ延長する(S7)。
【0092】
この処理のループ(S6→S1→S2→…→S6)は時間Δtごとに繰り返され、しかも強制動操作(S7)も時間Δtだけ毎回延長されるため、車間距離Lが第1距離L1を超えるまでは(S4→S5)、連続的に強制動操作(S7)が持続されていることになる。
【0093】
ここで、強制動操作によって自車200が強制動されると、自車200と先行車300との間の車間距離Lは急激に開き始める。
【0094】
強制動操作(S7)が持続している間(時間Δt)に検出された車間距離Lが第1距離L1を超えて第2距離L2(>L1)以下となったとき(S4→S5→S8)は、車速制御装置70は、強制動操作から、時間Δtの弱制動操作(S8)に切り替える。
【0095】
制動操作が強制動操作(S7)から弱制動操作(S8)に切り替えられた後も、車速制御装置70は、弱制動操作によって車間距離Lが適正な距離(L2<)に達したか否かを、超音波の送信時間間隔Δtに対応した時間Δtごとに判定を繰り返す(S6→S1→S2→…→S6)。
【0096】
キースイッチがオフにされない限り、車速制御装置70は時間Δtごとに、ステップ1(S1)の処理に戻り、検出された車間距離Lが未だ第2距離L2以下のとき(S4→S5→S8)は、さらに弱制動操作を時間Δtだけ延長する(S8)。
【0097】
この処理のループ(S6→S1→S2→…→S6)は時間Δtごとに繰り返され、しかも弱制動操作(S8)も時間Δtだけ毎回延長されるため、車間距離Lが第2距離L2を超えるまでは(S5→S6)、連続的に弱制動操作(S8)がなされていることになる。
【0098】
ここで、弱制動操作によって自車200が弱制動されると、自車200と先行車300との間の車間距離Lは第1距離L1から緩やかに開いて行く。
【0099】
弱制動操作(S7)が行われている間(時間Δt)に検出された車間距離Lが第2距離L2を超えたとき(S5→S6)は、時間Δtだけ弱制動操作を延長すること(S8)が行われないため、弱制動操作は自動的に終了する(S5→S6)。
【0100】
なお、強制動操作(S7)も弱制動操作(S8)も行われていない場合(S4→S5→S6)であっても、キースイッチがオフにされない限り、車速制御装置70は時間Δtごとに、ステップ1(S1)の処理に戻り、車間距離検出装置60によって検出された車間距離Lを、車速制御装置70が、第1距離L1および第2距離L2と比較し続け、キースイッチがオンの期間中は常に車間距離Lの監視と、制動制御の準備が行われた状態となっている。
【0101】
以上のように、本実施形態に係る車速制御システム100によれば、上述した本発明の実施形態に係る車間距離検出装置60によって精度の良い車間距離Lを得ることができ、この車間距離検出装置60によって検出された車間距離Lが予め設定された距離L1,L2よりも短いか否かに応じて、車速制御装置が車間距離を拡げるように車両の車速を制御することで、精度良く車間距離Lを調整することができる。
【0102】
また、本実施形態に係る車速制御システム100によれば、車間距離検出装置60によって検出された車間距離Lが予め設定された第1距離L1よりも短いときは、車速制御装置70が車間距離Lを急激に拡げるように自車200の車速を制御し、車間距離検出装置60によって検出された車間距離Lが第1距離L1よりも長く、かつ予め設定された第2距離L2(第1距離L1よりも長い距離:L1<L2)よりも短いときは、車速制御装置70が車間距離Lを緩く拡げるように自車200の車速を制御するため、車間距離Lの長短に応じた車速の制御を、緩・急の2段階で調整することができ、きめ細かく車間距離を調整することができる。
【0103】
本実施形態に係る車速制御システム100および車間距離検出装置60は、自車200と、自車の前方を走行する先行車300との関係における車間距離Lについて説明したが、本発明に係る車速制御システムおよび車間距離検出装置はこの形態に限定されるものではなく、自車と自車の後方を走行する後続車との関係における車間距離についても適用可能である。
【0104】
この場合、超音波送受信機10は、自車200の後部に設置され、車両後方に向けて発信されるものとすればよい。
【0105】
そして、超音波送受信機10から、走行向き(前方向き)とは反対向き(後方向き)に送信された超音波Sの、自車200の後方路面で反射した反射超音波S′は、ドップラー効果により、自車200の前方路面で反射した反射超音波S′とは反対に、発信されたときの周波数f0よりも低い周波数となる。
【0106】
この場合も、後続車で反射した反射超音波は、送信された超音波Sの周波数と略同一であるため、本発明の車間距離検出装置は、自車200の後方路面で反射した超音波をノイズ成分として容易に除去することができる。
【0107】
また、上記実施形態の車速制御システム100における車速制御装置70は、後続車との車間距離との関係では、後続車が自車に近くなるほど車間距離を拡げることが求められるため、強制動操作部75に代えて強加速操作部を設け、弱制動操作部76に代えて弱加速操作部を設け、これら強加速操作部および弱加速操作部は、自車の加速装置に対して操作を行うものとすればよい。
【0108】
このような自車の加速装置としては、エンジン回転数を高める燃料噴射装置の開度を開くものなどを適用することができる。
【0109】
そして、後続車との車間距離Lが、第1距離設定部73に予め記憶された第1距離L1より小さいときは、強加速操作部に対して、強加速操作を行わせ、これによって、自車200は急加速され、後続車との車間距離を急激に拡げることができる。
【0110】
一方、検出された車間距離Lが第1距離L1より大きいときは、第2距離比較部72が、入力された車間距離Lと第2距離設定部74に予め記憶された第2距離L2とを大小比較し、検出された車間距離Lが第2距離L2より小さいときは、第2距離比較部72は、弱加速操作部に対して、弱加速操作を行わせ、これによって、自車200は緩やかに加速され、後続車との車間距離を緩やかに拡げることができる。
【0111】
なお、検出された車間距離Lが第2距離L2よりも大きいときは、強加速操作も弱加速操作も行われない。
【0112】
そして、このように構成された実施形態の車速制御システムによっても、上述した先行車300との関係における車間距離を対象とした実施形態の車速制御システム100と同様に、後続車との車間距離を精度良く調整することができるとともに、車間距離Lの長短に応じた車速の制御を、緩・急の2段階で調整することができ、きめ細かく車間距離を調整することができる。
【0113】
本実施形態の車速制御システム100は、例えば車両の定速走行システムであるクルーズコントロールシステムに用いることで、車間距離に応じて車速を適応的に制御することが可能となり、いわゆる適応的定速走行システム(ACC:Adaptive Cruise Control system)における制御の精度を効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の一実施形態に係る車速制御システムを示すブロック図である。
【図2】図1に示した車速制御システムが搭載された自車と自車の前方を走る先行車300とを示す模式図である。
【図3】図1に示した車速制御システムのうち車間距離検出装置の詳細を示すブロック図である。
【図4】先行車からの反射波と路面からの反射波とを説明する模式図である。
【図5】送信超音波および反射超音波の入力レベルを示す図であり、(a)は時間−受信レベルの対応関係、(b),(c),(d),(e)は周波数−受信レベルの対応関係、(f)は反射超音波から、周波数領域でノイズ成分を除去した後の時間−受信レベルの対応関係、(g)は(f)を所定閾値で二値化したもの、をそれぞれ示す。
【図6】図3に示した車間距離検出装置を、より具体的に示したブロック図である。
【図7】図1に示した車速制御システムのうち車速制御装置の詳細構成を示すブロック図である。
【図8】図1に示した車速制御システムの作用を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0115】
10 超音波送受信機
20 距離算出装置
30 計時手段
40 ノイズ信号除去部
50 距離演算部
60 車間距離検出装置
200 自車両
300 先行車
500 路面
ΔT 経過時間
L 車間距離
S 送信超音波
S′ 反射(受信)超音波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部または後部に設置され、前記車両の前方を先行する先行車または前記車両の後方に続く後続車に対して超音波を送信するとともに、前記先行車または前記後続車で反射して戻った超音波を受信する超音波送受信機と、前記超音波が前記超音波送受信機から送信されてから、前記超音波が反射波として受信されるまでの経過時間を計時する計時手段および前記経過時間に基づいて前記先行車または前記後続車との間の車間距離を算出する距離演算部を有する距離算出装置と、を備えた車間距離検出装置であって、
前記距離算出装置は、前記反射波として受信した超音波のうち、路面から反射して受信したノイズ成分を除去するノイズ信号除去手段を備え、前記距離演算部は、前記ノイズ信号除去手段によって除去された後の超音波についての前記経過時間に基づいて、前記車間距離を算出するものであることを特徴とする車間距離検出装置。
【請求項2】
前記超音波送受信機は、一定周波数の超音波を送信するものであり、
前記ノイズ信号除去手段は、前記反射波として受信した受信超音波のうち、前記超音波送受信機から送信された送信超音波の周波数との周波数差が予め設定された所定値以上となる周波数成分を前記ノイズ成分として除去するものであり、
前記距離演算部は、前記超音波送受信機が前記送信超音波を送信したときから、前記受信超音波のうち前記ノイズ成分が除去された残りの受信超音波を受信したときまでを前記経過時間として、前記車間距離を求めるものであることを特徴とする請求項1に記載の車間距離検出装置。
【請求項3】
前記超音波送受信機は、一定周波数の超音波を一定時間間隔でパルス状に送信するものであり、
前記ノイズ信号除去手段は、前記反射波として受信した受信超音波を予め設定した所定の時間間隔ごとに取り込むとともに、この所定時間間隔ごとに取り込まれた受信超音波を周波数成分に展開する周波数成分展開部と、前記周波数成分展開部によって展開して得られた周波数成分ごとの受信超音波のうち、前記超音波送受信機から送信された送信超音波の周波数との周波数差が予め設定された所定値以上となる周波数成分を前記ノイズ成分として除去するフィルタと、前記受信超音波を取り込むために区切られた複数の時間間隔のうち、前記フィルタにより前記ノイズ成分が除去された後の周波数成分の受信レベルが最大となる受信超音波が含まれた時間間隔までを、前記送信超音波が送信されてからの前記経過時間として出力する経過時間演算部とを備え、
前記距離演算部は、前記経過時間演算部から出力された前記経過時間に基づいて前記車間距離を求めるものであることを特徴とする請求項2に記載の車間距離検出装置。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の車間距離検出装置と、前記車間距離検出装置によって検出された車間距離が予め設定された距離よりも短いときは、前記車間距離を拡げるように前記車両の車速を制御する車速制御装置と、を備えたことを特徴とする車速制御システム。
【請求項5】
前記車速制御装置は、前記車間距離検出装置によって検出された車間距離が予め設定された第1の距離よりも短いときは、前記車間距離を急激に拡げるように前記車両の車速を制御し、前記車間距離検出装置によって検出された車間距離が、前記第1の距離よりも長く、かつ第1の距離よりも長く設定された第2の距離よりも短いときは、車間距離を緩く拡げるように前記車両の車速を制御するものであることを特徴とする請求項4に記載の車速制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−139330(P2010−139330A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314909(P2008−314909)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】