説明

透明複合材

【課題】硬化性シルセスキオキサン樹脂をマトリックスとし、ガラス繊維を配合した透明複合材に関し、詳細には、透明性、機械強度、耐候性にすぐれた透明複合材、及びそれを用いた太陽電池や表示素子を提供する。
【解決手段】エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基及びオキセタニル基からなる群から選択される少なくとも1種の環状エーテル基を有する重量平均分子量1500〜30000のシルセスキオキサンと、重合開始剤又は硬化剤と、前記シルセスキオキサン100重量部に対して平均粒子径1〜100nmの金属酸化物微粒子0.1〜100重量部とから実質的になる硬化性樹脂組成物と、前記硬化性樹脂組成物100重量部に対して10〜300重量部のガラス繊維とからなる透明複合材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性シルセスキオキサン樹脂をマトリックスとし、ガラス繊維を配合した透明複合材に関し、詳細には、透明性、機械強度、耐候性に優れた透明複合材、及びそれを用いた太陽電池や表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、有機EL等の表示デバイス、タッチパネル用の基板、太陽電池基板等は、透明性及び耐熱性が優れていることからガラス板が一般的に用いられている。しかし、液晶表示素子等の表示デバイス等の用途開発が進むにつれて、屈曲性、軽量、及び耐衝撃性のニーズが高まるようになり、ガラスとの代替が可能なプラスチック材料として、アクリル樹脂やエポキシ樹脂の開発が活発に行われてきた。
【0003】
しかし、これらの樹脂単独によるプラスチック基板は、ガラス板に比べ線膨張係数が大きく、例えば、液晶表示素子のTFT形成工程においては、250℃以上の熱履歴を受けるため、反り、応力による膜剥離、アルミ配線の断線等の問題が深刻となり、透明性及び低線膨張係数を満足し得るプラスチック素材が求められた。
【0004】
このような要求に対して、ガラス繊維と熱硬化性樹脂とを用いた複合材料が検討されている。透明複合材に関する技術として、透明樹脂をガラス繊維と複合したもの、例えば、特許文献1には脂環式エポキシ樹脂とガラス繊維との複合材が、特許文献2にはエポキシ樹脂、架橋アクリル樹脂等とガラス繊維との複合材が、特許文献3には反応性モノマー又はオリゴマーと脂環式ポリオレフィン樹脂との混合物とガラス繊維との複合材が、それぞれ開示されていおり、液晶表示素子用基板、タッチパネル用基板、太陽電池基板等の光学シートとして用いることが提案されている。
【0005】
この際、複合材の透明性を確保するために、透明樹脂とガラス繊維との屈折率差を小さくすることが必要であり、そのために、例えば、特許文献3には、樹脂の屈折率をガラス繊維の屈折率に近づけるように、樹脂を選択し又はブレンドする手法や、樹脂の屈折率に近いガラス繊維を用いる方法が開示されている。しかしながら、このような複合体は、ある程度透明性の高い複合体を得ることが出来るが、線膨張係数が大きく、機械強度も十分なものとは言えない。
【0006】
これに対して、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリレート樹脂等と粉末状の無機充填材とガラス繊維からなる複合材が低線膨張係数で透明性に優れ、各種の光学用途に好適に用いられることが特許文献4に開示されている。特許文献4には、粒子径が可視光線の波長より小さい無機微粒子を配合することにより、そのような樹脂組成物の屈折率は加成性が成り立ち、屈折率やアッベ数を制御でき、それゆえ、高屈折率の無機微粒子を低屈折率の樹脂に配合することにより、ガラス繊維との屈折率差を小さくすることが開示されている。
【0007】
一方、複合体の製造にも使用され得る樹脂組成物としては、反応性官能基を有するシルセスキオキサンを重合してなるシルセスキオキサン樹脂が、優れた透明性、耐UV性、耐候性、耐熱性等の特性を持つことから、光学素子のコーティング剤(例えば、特許文献5、特許文献6)や発光素子の封止剤(例えば特許文献7)に適用することが提案されている。
【0008】
また、シルセスキオキサン樹脂を高屈折率化するために、金属酸化物微粒子を配合して、屈折率1.537〜1.599を達成したことが特許文献7に開示され、屈折率1.60以上を達成したことが特許文献5に開示されている。シルセスキオキサン樹脂に金属アルコキシドを導入して屈折率1.60〜1.62を達成したことが特許文献6に開示されている。
【0009】
このように可視光線の波長より粒子径の小さい無機微粒子を用いた場合においては、光の散乱による透過率の低下を抑えることが可能である。しかしながら、特許文献6で指摘されている樹脂と粒子との界面の問題の他、散乱や回折現象が少ないとされる粒子径の小さい無機微粒子を用いた場合も、レイリー散乱として知られる散乱現象が生じることが知られている(例えば、非特許文献1)。特許文献5、特許文献6、特許文献7に開示されている微粒子分散型の樹脂組成物を用いて、数μm程度の薄膜を形成する場合には、膜厚が小さく、散乱の全体量が少ないため、散乱による透明性の損失は問題にならない場合が多いが、厚みが数10μmよりも大きくなる複合材においてはレイリー散乱のような現象は無視できず、高いレベルの透明性を有する複合体を得るには不十分であった。
【0010】
また、無機微粒子を使用する場合においては、無機微粒子が樹脂組成物中に均一に分散していなければ、複合体中での屈折率分布が不均一になり、この点も複合体の透明性を低下させる原因となる。これに対しては、ガラス繊維や無機微粒子の表面をシランカップリング剤等の公知の表面処理剤で処理したり、分散剤等の添加剤を配合することにより、無機充填材と樹脂との分散性や密着性を向上させることが行われている(例えば、特許文献4)。しかし、粒子径が小さい無機微粒子は、その表面積が大きくなり、表面処理剤や分散剤を大量に使用することになる。このため、層分離による散乱や密着性の低下を招き、高い透明性を得ることが出来ない。さらに、樹脂組成物とガラス繊維との密着性も複合体の透明性に大きな影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−91965号公報
【特許文献2】特開2004−307845号公報
【特許文献3】特開2004−238532号公報
【特許文献4】特開2005−68241号公報
【特許文献5】特開2007−9079号公報
【特許文献6】特開2007−9080号公報
【特許文献7】特開2008−179756号公報
【非特許文献1】光学用透明樹脂の高屈折率化、低複屈折化技術(技術情報協会2009年5月29日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、透明複合材に関するこのような課題を解決し、従来にない高い透明性を有し、機械強度に優れ、耐UV性、耐候性にも優れた透明複合材及びそれを用いた太陽電池や表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は硬化性シルセスキオキサン樹脂が、微粒子充填剤や表面処理剤、分散剤との親和性、相溶性が高いことを見出し、さらに検討の結果、上記課題を解決し得る構成に到達した。すなわち、本発明は、エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基及びオキセタニル基からなる群から選択される少なくとも1種の環状エーテル基を有する重量平均分子量1500〜30000のシルセスキオキサンと、重合開始剤又は硬化剤と、前記シルセスキオキサン100重量部に対して平均粒子径1〜100nmの金属酸化物微粒子0.1〜100重量部とから実質的になる硬化性樹脂組成物と、前記硬化性樹脂組成物100重量部に対して10〜300重量部のガラス繊維とからなる透明複合材である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は:
(1)硬化性シルセスキオキサン樹脂をマトリックスとし、ガラス繊維を配合した複合材であって、厚さ0.05〜1.2mmで全光線透過率が90%以上を有し、かつ、ヘイズ値が8%以下である透明性を有する。すなわち、本発明におけるシルセスキオキサン樹脂は、ガラス繊維との親和性にも極めて優れることから、樹脂、無機微粒子、ガラス繊維を強力に密着させることが可能であり、高いレベルの透明性、機械強度を有する複合体を得ることができる。
(2)さらに、本発明において硬化性シルセスキオキサン樹脂は、そのSi原子上の置換基を適宜変更することで容易に幅広い範囲で屈折率を調整することが出来るため、余分な樹脂等を第3成分として屈折率調整の目的で使用することなく、無機微粒子との屈折率差を小さくする設計が可能となり、レイリー散乱を抑えることが可能である。
(3)本発明の透明複合材は、低線膨張率、高い引張強度、耐UV性、耐候性を有しており、表示素子、カラーフィルター、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池等の構成部品用途に適している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の透明複合材における硬化性樹脂組成物は、環状エーテル基を有するシルセスキオキサンを樹脂成分とし、これに重合開始剤又は硬化剤を用いて硬化性の組成物とする。重合開始剤を含有し、硬化剤を含有しない組成物の場合は、硬化剤成分を含有する組成物よりもシルセスキオキサン樹脂の組成物中の割合を高くすることができ、また硬化剤を含有しないことから、シルセスキオキサン樹脂の特質が発揮しやすいという利点があり、一方、硬化剤を含有し、重合開始剤を含有しない組成物の場合は、硬化剤の種類を選択して組成物の硬化性を調節しやすいという利点がある。
【0016】
前記シルセスキオキサンは、エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基及びオキセタニル基からなる群から選択される少なくとも1種の環状エーテル基を有する重量平均分子量1500〜30000のものである。環状エーテル基の数は少なくとも一つであり上限は特に定めないが、一般には環状エーテル基の数は、1〜6程度である。例えば、本発明におけるシルセスキオキサンは、エポキシ基を一つ、二つ、又は、三つ若しくはそれ以上有するものであってもよく、3,4−エポキシシクロヘキシル基を一つ、二つ、又は、三つ若しくはそれ以上有するものであってもよく、オキセタニル基を一つ、二つ、又は、三つ若しくはそれ以上有するものであってもよい。あるいは、エポキシ基とオキセタニル基とを合計で二つ、又は、三つ若しくはそれ以上有するもの等、これらの環状エーテル基を2種又は3種有するものであってもよい。好ましくは、エポキシ基又は3,4−エポキシシクロヘキシル基を有するものであり、より好ましくはエポキシ基を有するものであり、さらに好ましくはエポキシ基を少なくとも二つ、例えば、2〜8個、2〜10個、3〜6個、又は、2〜4個、有するものである。環状エーテル基の数は、エポキシ当量(JIS K 7236により知ることができる。)と樹脂分子量(GPCで知ることができる。)から、又は、オキセタン当量(H−NMRでオキサゾリン環含有樹脂のメチレン基と内部標準のメチレン基との強度比をとる等の公知の手法で知ることができる。)と樹脂分子量(GPCで知ることができる。)から、知ることができる。一般に、オリゴマーやポリマーは分子量分布を有し、分子量の異なる複数の分子の集合体であることから、オリゴマーやポリマーを構成する各分子の環状エーテル基の数を一意に特定することは困難であるが、樹脂分子量をエポキシ当量あるいはオキセタン当量で除算することにより、平均的な一分子あたりの環状エーテル基の数を算出する事が出来る。
【0017】
上記シルセスキオキサンの重量平均分子量は、1500未満であると、柔軟性、耐熱性が不十分であり、30000を超えると、安定性が低下する。下限値は、好ましくは1800であり、より好ましくは2500であり、さらに好ましくは3000であり、上限値は好ましく20000であり、より好ましくは15000であり、さらに好ましくは10000である。重量平均分子量は、測定方法により値が異なる場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した値を用いる。
【0018】
上記シルセスキオキサンの構造は、特に限定されず、例えば、ラダー型、籠型、籠型の部分開裂体、特定の構造を持たないランダム構造体、等の構造体のものであってよい。また、ラダー型とランダム構造体との混じり合ったものや、籠型とその部分開裂体の混じり合ったものであってもよい。
【0019】
上記シルセスキオキサンの製造方法としては、とくに限定はなく、従来公知の方法で製造することができる。例えば、原料としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。触媒としては、有機酸や無機酸が挙げられる。有機酸としては、ギ酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、酪酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸、スルホン酸、酒石酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が例示できる。無機酸としては、塩酸、リン酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、フッ酸等が挙げられる。反応温度としては40〜60℃が好ましい。反応時間としては、1〜12時間が好ましい。ラダー型又はランンダム型シルセスキオキサンの製造方法の反応条件としては、必ずしも特定することはできないが、例えば、特許第3528940号公報、特許第3614481号公報記載の方法が挙げられる。籠型シルセスキオキサンの製造方法の反応条件としては、必ずしも特定することはできないが、例えば、特開2004−143449記載の方法が挙げられる。また、環状エーテル基の導入方法としては、原料モノマーに環状エーテル基を有するものを使用する方法でもよく、シルセスキオキサンの側鎖に導入する方法でもよい。これらの手法はいずれも公知の方法を用いることができる。
【0020】
上記重合開始剤は、環状エーテル基の開環重合の開始剤として作用する化合物であればよく、例えば、カチオン重合開始剤があり、具体的には、四級アンモニウム塩、三級アミン塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。
【0021】
上記四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンサルフェート、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウムp−トルエンスルホネート等が挙げられる。
【0022】
上記三級アミン塩としては、例えば、N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N−ジメチル−N−ベンジルピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウムテトラフルオロボレート、N,N−ジエチル−N−ベンジルトリフルオロメタンスルホネート、N,N−ジメチル−N−(4−メトキシベンジル)ピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N−ジエチル−N−(4−メトキシベンジル)トルイジニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0023】
上記ホスホニウム塩としては、例えば、エチルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0024】
上記スルホニウム塩としては、例えば、旭電化工業(株)製のオプトマーSP150、オプトマーSP170、オプトマーSP172、アデカオプトンCP−66、アデカオプトンCP−77、三新化学(株)製のサンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、ユニオンカーバイド(株)製のCYRACURE
UVI−6974等が挙げられる。
【0025】
上記ジアゾニウム塩としては、例えば、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0026】
上記ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルシネート、ビス(4−クロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルシネート、ビス(4−ブロモフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルシネート、フェニル(4―メトキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルシネート等が挙げられる。
【0027】
上記重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記重合開始剤としては、なかでも、スルホニウム塩が好ましい。
【0029】
上記重合開始剤の配合量は、上記シルセスキオキサンの環状エーテル基量にもよるが、通常は、シルセスキオキサン100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.1〜2重量部がより好ましい。
【0030】
上記硬化剤とは、環状エーテル基と反応可能な官能基を含有する化合物を言う。このような化合物としては、エポキシ樹脂硬化剤として公知の各種化合物を使用することができ、例えば、酸無水物(例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、あるいは3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸などが挙げられる)、フェノール化合物(例えば、ビスフェノールAやビスフェノールFのようなビスフェノール化合物、フェノールノボラック、クレゾールノボラックやビスフェノールA型ノボラック樹脂などのノボラック樹脂、2−(4−(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル)―2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのトリスフェノール型化合物)等が挙げられる。
【0031】
硬化剤の配合量は、硬化剤の反応性官能基(例えば、酸無水物であれば、酸無水物基、フェノール化合物であれば、フェノール性水酸基)1モルに対してエポキシ0.5〜2.0モルが好ましく、より好ましくは0.8〜1.3モルである。
【0032】
上記平均粒子径1〜100nmの金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化鉄(Fe、FeO、Fe)、酸化銅(CuO、CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ニオブ(Nb)、酸化モリブデン(MoO)、酸化インジウム(In、InO)、酸化スズ(SnO)、酸化タンタル(Ta)、酸化タングステン(WO、W)、酸化鉛(PbO、PbO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO、Ce)、酸化アンチモン(Sb、Sb)、酸化ゲルマニウム(GeO、GeO)等の金属酸化物微粒子を挙げることができる。
【0033】
上記金属酸化物微粒子は、単独の金属元素の酸化物のみではなく、複数の元素の酸化物からなる複合金属酸化物微粒子であっても良い。ここで複合金属酸化物微粒子とは、複数の金属元素と酸素原子とが共有結合により結合した金属酸化物や、一つの金属元素から成る金属微粒子の表面を別の異なる金属元素からなる金属酸化物で被覆しコアシェル構造を有するような金属酸化物微粒子を言う。前者は、例えば、加水分解性チタニア化合物やジルコニア化合物(例えば、テトラアルコキシチタニウムやハロゲン化チタン、テトラアルコキシジルコニウムなど)と加水分解性シラン(例えば、テトラアルコキシシランやシリルハライドなど)とを公知のビルドアップ方式の無機微粒子合成法(例えば、ゾルゲル法に代表される液相法や噴霧燃焼法やプラズマ蒸化法などに代表される気相法など)で共縮合することで複合酸化物微粒子を製造することが出来る。後者は、例えば、コアとなる金属酸化物微粒子として酸化チタンを使用し、酸化チタン微粒子の分散体中で加水分解性シランを反応させ、ゾルゲル反応により、酸化チタンの表面に酸化ケイ素の層を形成してなるコアシェル構造を有する複合金属酸化物微粒子を得ることが出来る。
【0034】
金属酸化物微粒子としては、これらのうち、好ましくは、酸化チタン微粒子又は酸化ジルコニウム微粒子である。
【0035】
また、別の好ましい態様としては、樹脂との屈折率差を小さく出来ることから、チタン酸化物とシリコン酸化物とからなる複合金属酸化物微粒子またはジルコニアとシリコン酸化物とからなる複合金属酸化物微粒子が好ましい。中でも、微粒子が均質であることから、複数の金属元素と酸素原子とが共有結合により結合した複合金属酸化物が特に好ましい。
【0036】
なお、上記金属酸化物微粒子の平均粒子径は、重量平均粒子径である。測定は光散乱法等の公知の手法による。平均粒子径は1〜50nmが好ましく、1〜20nmがより好ましい。
【0037】
本発明においては、上記金属酸化物微粒子は、表面が表面処理剤で修飾されているものであってもよい。表面修飾の様態としては、微粒子表面にイオン結合的な相互作用によって修飾するものと、化学結合を形成することによって修飾するものが好適に用いられる。
【0038】
微粒子表面にイオン結合的な相互作用によって修飾する表面処理剤としては、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィン、トリオクチルホスフィンオキサイド、トリブチルホスフィン、トリブチルホスフィンオキサイド、トリオクチルアミン、トリブチルアミン、トリエチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オクチルアニリン、デシルアニリン、ウンデシルアニリン、ドデシルアニリン、トリデシルアニリン、テトラデシルアニリン、ペンタデシルアニリン、ヘキサデシルアニリン、ヘプタデシルアニリン、オクタデシルアニリン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンである。
【0039】
微粒子表面との化学結合により、表面修飾するものとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリ−i−ブトキシシラン、メチルトリ−s−ブトキシシラン、メチルトリ−t−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、s−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランなどが挙げられる。
【0040】
上記金属酸化物微粒子の配合量は、前記シルセスキオキサン100重量部に対して0.1〜100重量部である。0.1重量部未満であると耐熱性が不十分であり、線膨張係数も高くなる傾向にある。100重量部を超えると柔軟性が低下する。1〜50重量部が好ましく、5〜20重量部がより好ましい。
【0041】
上記金属酸化物微粒子を配合する際、予め、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等の有機溶剤中に分散したものを使用することができる。これらのうち好ましくは、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンである。この際の有機溶剤と金属酸化物微粒子との配合割合は、有機溶剤:金属酸化物微粒子の重量比=1〜30:99〜70が好ましい。また、分散剤を使用してもよく、例えば、ポリアクリル酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、リン酸系分散剤の何れかを使用してもよい。その使用量としては、金属酸化物微粒子に対して1〜20重量%が好ましい。有機溶剤中に分散する際にも、必要に応じて、分散剤を使用してもよい。
【0042】
本発明における硬化性樹脂組成物は、上記シルセスキオキサンと上記重合開始剤と上記金属酸化物微粒子とから実質的になる。すなわち、本発明における硬化性樹脂組成物は、本発明の効果に悪影響を及ぼさない種類の物質又は本発明の効果に悪影響を及ぼさない量の他の物質の存在を排除しない。
【0043】
本発明の効果に悪影響を及ぼさない種類の物質としては、例えば、硬化性組成物から得られる硬化物の架橋密度を調整したり、硬化性組成物中のエポキシ基などの反応性官能基の含有量を調整する目的を達成するためのエポキシ樹脂、環状エーテル基と硬化剤との硬化反応を促進するための硬化触媒などが挙げられる。
【0044】
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂などが例示される。その配合量としては、一般には組成物100重量部あたり、5〜50重量部である。
【0045】
上記硬化触媒としては、例えば、イミダゾール化合物、3級アミン類、有機ホスフィン化合物類またはこれらの塩類等が挙げられる。具体的には例えば、イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。また、有機リン化合物を使用することができ、その具体例としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(p−トルイル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(p−エトキシフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等のトリオルガノホスフィン化合物やテトラフェニルホスホニウムブロマイド(TPP−PB)、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等の4級ホスホニウム塩などのオルガノホスフィン類及びその誘導体が挙げられる。3級アミン類としては、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルベンジルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノ)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン等を挙げることができる。これらの化合物は、その1種のみを単独で使用できるほか、2種以上を併用して使用することもできる。硬化触媒の添加量としては、例えば、本硬化性樹脂組成物中の環状エーテル基を含有する化合物100重量部に対して、0.1から20重量部が好ましく、0.5から10重量部がさらに好ましい。
【0046】
上記硬化性樹脂組成物の硬化物は、波長633nmにおける屈折率が1.50〜1.60が好ましい。また、アッベ数は25〜50が好ましい。屈折率やアッベ数は、具体的には、JIS K 7105に基づいて測定することが出来る。
【0047】
本発明において、ガラス繊維としては、ガラスの種類においてとくに限定はなく、例えば、Eガラス、NEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Tガラス、Dガラス、等であってよい。好ましくは、Eガラス、NEガラスである。ガラス繊維の太さは、市場で入手可能な製品において一般的な太さであれば好ましく使用できる。また、その形態としては、織物、編物、組物等であってよく、一般的に布状のガラス繊維が用いられる。あるいはまた、長繊維(ロービング等を複合材のサイズに切断したもの等。)を用いることもできる。
【0048】
上記ガラス繊維は、表面処理したものであってもよい。表面処理剤としては、例えば、アミノシランやエポキシシラン等のシランカップリング剤や、アルミキレート化合物等の金属キレート化合物が挙げられる。
【0049】
上記ガラス繊維の配合量は、上記硬化性樹脂組成物100重量部に対して10重量部未満であると機械強度が不十分となり、300重量部を超えると柔軟性が低下する。好ましくは20〜200重量部であり、30〜100重量部がより好ましい。
【0050】
本発明の透明複合材においては、好ましくは、上記金属酸化物微粒子は、表面が表面処理剤で修飾されているものであり、該金属酸化物微粒子を予め上記有機溶剤中に分散した分散液を用いて、上記シルセスキオキサンと上記重合開始剤又は硬化剤とともに均一に混合して上記硬化性樹脂組成物を調製し、かくして調製された硬化性樹脂組成物をガラス繊維、好ましくはシランカップリング剤又は金属キレート化合物で表面処理されたガラス繊維、に含浸し、硬化させることにより製造することができる。
【0051】
硬化性樹脂組成物の粘度としては、25℃において1000〜5000cPが好ましい。また、硬化条件としては、120〜180℃、1〜5時間が好ましい。
【0052】
本発明の透明複合材は、好ましくは、厚みが0.05〜1.2mmのシート状である。また、本発明の透明複合材は、好ましくは、厚みが0.05〜1.2mmのシートのヘイズ値が8%以下であり、より好ましくは5%以下である。また、本発明の透明複合材は、好ましくは、厚みが0.05〜1.2mmのシートの全可視光透過率が90%以上であり、より好ましくは95%以上である。ヘイズ値は全透過光に占める散乱光成分の割合である。これらの値は、測定方法により値が異なる場合は、JIS K 7105により積分球式光線透過率測定装置により求めた値である。
【0053】
本発明の透明複合材の用途としては、各種透明樹脂基板、透明樹脂シートとして、例えば、表示素子の透明基板、カラーフィルター基板、タッチパネルや電子ペーパーの透明樹脂シート、太陽電池モジュールの板材や太陽電池素子封入樹脂シートを挙げることができる。従って、本発明はまた、これらを用いた液晶表示素子、有機EL表示素子、カラーフィルター、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池でもある。
【0054】
以下に合成例、実施例等によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
合成例1:シルセスキオキサン誘導体(SQ−1)の合成
撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、メチルイソブチルケトン(MIBK)200g、水酸化テトラメチルアンモニウムの20%水溶液13.8g(水酸化テトラメチルアンモニウム0.03mol)、蒸留水25.6g(2.0mol)を仕込んだ後、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン108.3g(0.46mol)、フェニルトリメトキシシラン91.7g(0.46mol)を50〜55℃で徐々に加え、3時間撹拌放置した。反応終了後、系内にMIBK200gを加え、さらに100gの蒸留水で水層のpHが中性になるまで水洗した。次いで、MIBK層を100gの蒸留水で2回水洗後、減圧下でMIBKを留去して、141gのシルセスキオキサン誘導体(SQ−1)を得た。
【0056】
SQ−1は、ラダー型またはランダム型構造を主体とするシルセスキオキサン誘導体であり、Mw=2762、分散度Mw/Mn=1.3、IR測定で3500cm−1付近に残存シラノールのピークを有していた。
【0057】
合成例2:シルセスキオキサン誘導体(SQ−2)の合成
撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、MIBK200g、水酸化テトラメチルアンモニウムの20%水溶液14.3g(水酸化テトラメチルアンモニウム0.03mol)、蒸留水26.6g(2.1mol)を仕込んだ後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン56.9g(0.24mol)、フェニルトリメトキシシラン143.1g(0.72mol)を50〜55℃で徐々に加え、3時間撹拌放置した。反応終了後、系内にMIBK200gを加え、さらに100gの蒸留水で水層のpHが中性になるまで水洗した。次いで、MIBK層を100gの蒸留水で2回水洗後、減圧下でMIBKを留去して、140gのシルセスキオキサン誘導体(SQ−2)を得た。
【0058】
SQ−2は、ラダー型またはランダム型構造を主体とするシルセスキオキサン誘導体であり、Mw=3127、分散度Mw/Mn=1.4、IR測定で3500cm−1付近に残存シラノールのピークを有していた。
【0059】
合成例3:シルセスキオキサン誘導体(SQ−3)の合成
撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、MIBK200g、水酸化テトラメチルアンモニウムの20%水溶液12.7g(水酸化テトラメチルアンモニウム0.03mol)、蒸留水35.8g(2.6mol)を仕込んだ後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン100.4g(0.43mol)、イソオクチルトリメトキシシラン99.6g(0.43mol)を50〜55℃で徐々に加え、3時間撹拌放置した。反応終了後、系内にMIBK200gを加え、さらに100gの蒸留水で水層のpHが中性になるまで水洗した。次いで、MIBK層を100gの蒸留水で2回水洗後、減圧下でMIBKを留去して、139gのシルセスキオキサン誘導体(SQ−3)を得た。
【0060】
SQ−3は、ラダー型またはランダム型構造を主体とするシルセスキオキサン誘導体であり、Mw=1983、分散度Mw/Mn=1.3、IR測定で3500cm−1付近に残存シラノールのピークを有していた。
【0061】
合成例4:シルセスキオキサン誘導体(SQ−4)の合成
撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、MIBK200g、水酸化テトラメチルアンモニウムの20%水溶液12.8g(水酸化テトラメチルアンモニウム0.03mol)、蒸留水36.1g(2.6mol)を仕込んだ後、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン182.9g(0.77mol)、フェニルトリメトキシシラン17.1g(0.09mol)を50〜55℃で徐々に加え、3時間撹拌放置した。反応終了後、系内にMIBK200gを加え、さらに100gの蒸留水で水層のpHが中性になるまで水洗した。次いで、MIBK層を100gの蒸留水で2回水洗後、減圧下でMIBKを留去して、178gのシルセスキオキサン誘導体(SQ−4)を得た。
【0062】
SQ−4は、ラダー型またはランダム型構造を主体とするシルセスキオキサン誘導体であり、Mw=1816、分散度Mw/Mn=1.3、IR測定で3500cm−1付近に残存シラノールのピークを有していた。
【0063】
合成例5:チタン酸化物−シリコン酸化物の複合金属酸化物微粒子の合成
テトラエトキシシラン5.0g、テトライソプロポキシチタン15.0gをイソプロパノール100g中に溶解した後、3.5gの水を撹拌しながら滴下した。室温で3時間撹拌後、塩酸0.3gを加え、60℃で12時間加熱して反応させ、10重量%の酸化チタン及び酸化シリコンから成る複合金属酸化物微粒子の分散液を調製した。動的散乱法により粒径を測定したところ、平均粒径9.8nmであった。
【0064】
合成例6:表面処理チタン酸化物−シリコン酸化物の複合金属酸化物微粒子の合成
テトラエトキシシラン3g、テトライソプロポキシチタン10.0g、メチルエチルケトン150g中に溶解した後、1.5gの水を撹拌しながら滴下した。室温で3時間撹拌後、塩酸0.3gを加え、60℃で12時間加熱して反応させた。さらに、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.0gを60℃で滴下した。続いて10%アンモニア水1.0gを加え、60℃3時間攪拌させ、15重量%の表面処理酸化チタン及び酸化シリコンから成る複合金属酸化物微粒子の分散液を調製した。動的散乱法により粒径を測定したところ、平均粒径9.3nmであった。
【0065】
実施例
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明する。なお、表中の略号は次のとおりである。
SQエポキシ1:合成例1で得られたシルセスキオキサン誘導体(SQ−1)
SQエポキシ2:合成例2で得られたシルセスキオキサン誘導体(SQ−2)
SQエポキシ3:合成例3で得られたシルセスキオキサン誘導体(SQ−3)
SQエポキシ4:合成例4で得られたシルセスキオキサン誘導体(SQ−4)
AER−260:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成株式会社製)
YX−8000:水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製)
MH−700:脂環式酸無物(新日本理化株式会社製)
TPP−PB:テトラフェニルホスホニウムブロミド(北興化学工業株式会社)
TrisP−PA:トリスフェノールメタン型樹脂(本州化学工業株式会社)
SI−100L:芳香族スルホニウム塩(三新化学工業株式会社製)
CP−66:芳香族スルホニウム塩(株式会社ADEKA製)
KBM−503:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)
TiO:日揮触媒化成株式会社製 OPTLAKE、平均粒径15nm
ZrO:住友大阪セメント株式会社製 NZR−8E61、平均粒径9.3nm
TiO−SiO:合成例5で得られたチタン酸化物−シリコン酸化物の複合金属酸化物微粒子
表面処理TiO−SiO:合成例6で得られた表面処理チタン酸化物−シリコン酸化物の複合金属酸化物微粒子
ガラス繊維:日東紡績株式社製、Eガラス、織物、厚み100μm、
【0066】
実施例1〜4、比較例1〜2
表1の配合によりそれぞれ各成分を混合し、樹脂組成物を得た。これをガラス繊維に、温度25℃にて、ガラス繊維10重量部に樹脂組成物10重量部の割合で含浸させ、150℃、3時間硬化させ、厚さ0.1mmの透明複合材を得た。
【0067】
各透明複合材について、全光線透過率、ヘイズ値、線膨張係数、引張強度、耐屈曲性を下記の方法で測定した。また、微粒子含有樹脂硬化物の屈折率とアッベ数も、それぞれ、別途測定した。結果を表1に示した。
【0068】
評価方法
全光線透過率:JIS K 7105、測定方法Aに準拠して測定した。
ヘイズ値:JIS K 7105に準拠して積分球式光線透過率測定装置を用いて測定した。
線膨張係数:SS120C型熱応力歪測定装置(セイコー電子株式会社製)を用いて、1分間に5℃の割合で温度を30℃から400℃まで上昇させて20分間保持し、30〜150℃の時の値を測定して求めた。
引張強度:インストロン(インストロンジャパンカンパニイリミテッド製)のチャック間20mmに調整し、引張り速度5mm/minで試験を行い、引張強度の測定を行った。
屈折率:JIS K 7105に基づいてアッベ屈折計で測定した。
アッベ数:JIS K 7105に基づいてアッベ屈折計で測定した。
耐屈曲性:試験片(幅10mm×長さ70mm)の両端を手で持ち、試験片を曲げて元の状態に戻す操作を30回繰り返した。試験片に折れ目または裂け目が生じるか否かを検証した。下記の基準で評価した。
○:30回の繰り返し操作で、外観に全く変化が認められなかった場合
×:30回の繰り返し操作の途中で、裂け目が生じた場合
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
上記表の結果から、本発明の透明複合材は、優れた透明性、機械強度、低線膨張係数を併せ持つことが明確であった。そして、ヘイズ値が比較例と比べて有意に低い結果から、レイリー散乱を抑えることができた。
一方、比較例の透明複合材は、透明性が不十分であった。すなわち、樹脂硬化物の屈折率をガラス繊維の屈折率に近づけたにもかかわらず、ヘイズ値は低くならなかった。また、複合材の機械的特性も不十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基及びオキセタニル基からなる群から選択される少なくとも1種の環状エーテル基を有する重量平均分子量1500〜30000のシルセスキオキサンと、重合開始剤又は硬化剤と、前記シルセスキオキサン100重量部に対して平均粒子径1〜100nmの金属酸化物微粒子0.1〜100重量部とから実質的になる硬化性樹脂組成物と、前記硬化性樹脂組成物100重量部に対して10〜300重量部のガラス繊維とからなる透明複合材。
【請求項2】
環状エーテル基は、エポキシ基又は3,4−エポキシシクロヘキシル基である請求項1記載の透明複合材。
【請求項3】
ガラス繊維は、Eガラス又はNEガラスの繊維である請求項1又は2記載の透明複合材。
【請求項4】
ガラス繊維は、シランカップリング剤又は金属キレート化合物で表面処理した、ガラス織物、ガラス編物又はガラス不織布の形態である請求項3記載の透明複合材。
【請求項5】
金属酸化物微粒子は、酸化チタン微粒子又は酸化ジルコニウム微粒子である請求項1〜4のいずれか記載の透明複合材。
【請求項6】
金属酸化物微粒子は、チタン酸化物とシリコン酸化物とからなる複合金属酸化物微粒子又はジルコニアとシリコン酸化物とからなる複合金属酸化物微粒子である請求項1〜4のいずれか記載の透明複合材。
【請求項7】
金属酸化物微粒子は、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランのうちの少なくとも1種の表面処理剤で表面修飾されたものである請求項5又は6記載の透明複合材。
【請求項8】
硬化性樹脂組成物は、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランのうちの少なくとも1種の表面処理剤で表面修飾された金属酸化物微粒子(c)を予めアルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素及びアミド類のうちの少なくとも1種の有機溶剤中に分散した分散液をシルセスキオキサン及び重合開始剤又は硬化剤と混合したものである、請求項7記載の透明複合材。
【請求項9】
有機溶剤は、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトンである請求項8記載の透明複合材。
【請求項10】
重合開始剤を含有し、硬化剤を含有しない請求項1〜9のいずれか記載の透明複合材。
【請求項11】
硬化剤を含有し、重合開始剤を含有しない請求項1〜9のいずれか記載の透明複合材。
【請求項12】
厚みが0.05〜1.2mmのシート状であり、JIS K 7105に基づくヘイズ値が8%以下であり、全可視光透過率が90%以上である請求項1〜11のいずれか記載の透明複合材。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか記載の透明複合材を用いた太陽電池モジュール又は太陽電池パネル。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか記載の透明複合材を用いた表示素子透明基板。

【公開番号】特開2011−79927(P2011−79927A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232317(P2009−232317)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】