説明

通信システム

【課題】通信装置が携帯機を不必要に認証してしまうことを好適に防止することが可能な通信システムを提供する。
【解決手段】電子キー3は、電子キー3が電子制御装置4に近づき電子キー3が電子制御装置4から送信される応答要求信号S1を受信した場合に、電子キー3は該応答要求信号S1に対する応答として応答信号S2を送信する。従って、電子キー3を電子制御装置4に近づけるという行為が、電子キー3を使用する意図を明示する意味合いをもつ。電子制御装置4は、電子キー3の移動に伴う受信強度の変化を検出した場合に、電子キー3を認証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機と通信装置との間の無線通信に基づいて携帯機を認証する通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、ユーザが所持する携帯機と車両や住宅等に設けられた照合装置等の通信装置との間の無線通信を通じて携帯機の正当性を判断し、該携帯機の正当性が確認された場合にドアの施錠・解錠を許可する電子キーシステムが採用されている。携帯機には、当該携帯機に固有の識別情報が記憶され同識別情報の送信制御等を行う制御回路と、照合装置との間で無線通信を行うための通信回路とが設けられている。携帯機の制御回路は、通信回路を通じて照合装置から送信される応答要求信号を受信すると、該応答要求信号に対する応答として自身の識別情報を含む応答信号を照合装置に送信する。照合装置は、携帯機から送信された応答信号に含まれる識別情報を読み取り、該識別情報が自身に記憶されている識別情報と一致するか否かを判断し、一致したことを条件としてドアの施錠・解錠を許可する。ドアハンドルには該ドアハンドルの操作を検知するためのタッチセンサが内蔵されており、照合装置により携帯機の正当性が確認されドア錠の施錠・解錠が許可されている状態でタッチセンサがドアハンドルの操作を検知すると、ドアロック装置が駆動されドアが解錠される。即ち、ユーザは携帯機を所持した状態でドアハンドルを操作するだけで、ドア錠を解錠することができるようになっている。
【特許文献1】特開2007−211567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、通常、このような携帯機は、携帯機を所持したユーザが車両等に搭載された通信装置に意図的に近づき、これにより通信装置の通信領域内に配置されることで、通信装置からの応答要求信号に対する応答として応答信号を送信する。従って、携帯機を通信装置に近づけ、その通信領域に進入するという行為が、通信装置に携帯機を認証させる意図、即ち、携帯機を使用する意図を明示する意味合いをもつ。しかしながら、上述したように、携帯機は、通信装置の通信領域内に配置されるだけで、通信装置から送信された応答要求信号に対する応答として応答信号を自動的に送信する。このため、通信装置は、自身の通信領域内に配置されている全ての携帯機の認証を行う。従って、通信装置は、通信装置の通信領域内に配置されているだけの携帯機、即ち使用する意図が明示されていない携帯機も不必要に認証してしまう。
【0004】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、通信装置から送信された応答要求信号に対する応答として携帯機に固有の識別情報を含む応答信号を送信する携帯機を備え、該携帯機が送信する応答信号に基づいて、通信装置が携帯機を認証する通信システムにおいて、通信装置が携帯機を不必要に認証してしまうことを好適に防止することが可能な通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、通信装置から送信された応答要求信号に対する応答として携帯機に固有の識別情報を含む応答信号を送信する携帯機を備え、該携帯機が送信する前記応答信号に基づいて、前記通信装置が前記携帯機を認証する通信システムにおいて、前記携帯機は、該携帯機の移動に伴う前記応答要求信号の受信強度の変化を検出する受信強度検出手段を備えるとともに、前記応答要求信号に対する応答として応答信号を送信する際、前記携帯機の移動の有無を前記受信強度検出手段の検出結果に基づいて判断するとともに、前記携帯機が移動していたと判断した場合に、前記応答信号を送信することをその要旨とする。
【0006】
本発明によれば、携帯機が通信装置の通信領域に進入し携帯機が通信装置から送信される応答要求信号を受信した場合に、携帯機は該応答要求信号に対する応答として応答信号を送信する。従って、携帯機を通信装置の通信領域に進入するという行為が、携帯機を使用する意図を明示する意味合いをもつ。一方、携帯機は、応答要求信号を受信した際、携帯機の移動の有無を受信強度検出手段の検出結果に基づいて判断するとともに、携帯機が移動していたと判断した場合に、応答信号を送信する。従って、携帯機は、該携帯機が移動していた場合にだけ、該応答要求信号に対する応答信号を送信する。このため、携帯機が移動していない状態、即ち携帯機を使用する意図が明示されていない状態において通信装置が携帯機を認証することを防止することができる。よって、通信装置が携帯機を不必要に認証してしまうことを好適に防止することができる。また、携帯機から応答信号が送信されないため、該応答信号に含まれる携帯機を識別するための識別情報等が不正に読み取られたり利用されたりしてしまうことを好適に防止することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、通信装置から送信された応答要求信号に対する応答として携帯機に固有の識別情報を含む応答信号を送信する携帯機を備え、該携帯機が送信する前記応答信号に基づいて、前記通信装置が前記携帯機を認証する通信システムにおいて、前記携帯機は、該携帯機の移動に伴う前記応答要求信号の受信強度の変化を検出する受信強度検出手段を備え、前記応答要求信号に対する応答として、前記受信強度検出手段の検出結果を含む応答信号を送信し、前記通信装置は、前記応答信号を受信した際、前記携帯機の移動の有無を前記応答信号に含まれる前記受信強度検出手段の検出結果に基づいて判断するとともに、前記携帯機が移動していたと判断した場合に、前記応答信号に基づいて前記携帯機を認証することをその要旨とする。
【0008】
本発明によれば、携帯機は、応答要求信号に対する応答として、受信強度検出手段の検出結果を含む応答信号を送信する。そして、通信装置は、応答信号を受信した際、携帯機の移動の有無を応答信号に含まれる受信強度検出手段の検出結果に基づいて判断するとともに、携帯機が移動していたと判断した場合に、応答信号に基づいて携帯機を認証する。即ち、通信装置は、携帯機が移動していた場合に、携帯機を認証する。このため、携帯機が移動していない状態、即ち携帯機を使用する意図が明示されていない状態において通信装置が携帯機を認証することを防止することができる。よって、通信装置が携帯機を不必要に認証してしまうことを好適に防止することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、通信装置から送信された応答要求信号に対する応答として携帯機に固有の識別情報を含む応答信号を送信する携帯機を備え、該携帯機が送信する前記応答信号に基づいて、前記通信装置が前記携帯機を認証する通信システムにおいて、前記通信装置は、前記携帯機の移動に伴う前記応答信号の受信強度の変化を検出する受信強度検出手段を備え、前記応答信号を受信した際、前記携帯機の移動の有無を前記受信強度検出手段の検出結果に基づいて判断するとともに、前記携帯機が移動していたと判断した場合に、前記応答信号に基づいて前記携帯機を認証することをその要旨とする。
【0010】
本発明によれば、通信装置は、応答信号を受信した際、携帯機の移動の有無を受信強度検出手段の検出結果に基づいて判断するとともに、携帯機が移動していたと判断した場合に、携帯機から送信された応答信号に基づいて携帯機を認証する。即ち、通信装置は、携帯機が移動していた場合に、携帯機を認証する。このため、携帯機が移動していない状態、即ち携帯機を使用する意図が明示されていない状態において通信装置が携帯機を認証することを防止することができる。よって、通信装置が携帯機を不必要に認証してしまうことを好適に防止することができる。また、通信装置に受信強度検出手段が設けられるため、携帯機に受信強度検出手段を設ける場合と比較して携帯機の小型化を図ることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記携帯機は、前記受信強度検出手段の検出結果に基づいて前記携帯機が移動していないと判断した場合、不正な応答要求信号を受信していると判断し、その旨を報知する報知手段を備えることをその要旨とする。
【0012】
本発明によれば、携帯機に設けられた報知手段を通じて、携帯機が不正な応答要求信号を受信していることが報知される。このため、ユーザは報知手段の報知に基づいて携帯機に対する不正な応答要求信号を警戒することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記携帯機は、前記受信強度検出手段の検出結果に基づいて前記携帯機が移動していないと判断した場合、不正な応答要求信号を受信していると判断し、その旨を前記通信装置に設けられた通信装置側報知手段を通じて報知するための報知要求信号を前記通信装置に送信することをその要旨とする。
【0014】
本発明によれば、通信装置に設けられた通信装置側報知手段を通じて、携帯機が不正な応答要求信号を受信していることが報知される。このため、ユーザは通信装置側報知手段の報知に基づいて不正な応答要求信号を警戒することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記通信装置は、前記受信強度検出手段の検出結果に基づいて前記携帯機が移動していないと判断した場合、不正な応答要求信号を受信していると判断し、その旨を報知する通信装置側報知手段を備えることをその要旨とする。
【0016】
本発明によれば、通信装置に設けられた通信装置側報知手段を通じて、携帯機が不正な応答要求信号を受信していることが報知される。このため、ユーザは通信装置側報知手段の報知に基づいて不正な応答要求信号を警戒することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、前記携帯機は、内蔵される電池を動作電源として所定の間欠周期で無線信号の受信動作を行い、通常の受信待機状態において一定時間の間、前記携帯機の移動が検知されなかった場合、前記間欠周期における受信動作の休止時間を前記通常の受信待機状態における受信動作の休止時間よりも長く設定することをその要旨とする。
【0018】
本発明によれば、携帯機の移動が検知されなくなってから一定時間が経過すると間欠周期における受信動作の休止時間が通常の受信待機状態における受信動作の休止時間よりも長く設定されるため、受信待機状態における電池の消耗を好適に抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、通信装置から送信された応答要求信号に対する応答として携帯機に固有の識別情報を含む応答信号を送信する携帯機を備え、該携帯機が送信する応答信号に基づいて、通信装置が携帯機を認証する通信システムにおいて、通信装置が携帯機を不必要に認証してしまうことを好適に防止することが可能な通信システムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を、ユーザにより所持される電子キーと車両との間の無線通信を通じてドアの施解錠を行う電子キーシステムが搭載された車両に適用した一実施の形態を図面に従って説明する。
【0021】
図1に示すように、電子キーシステム1は、車両2の所有者(ユーザ)によって所持される携帯機としての電子キー3と、車両2に搭載されシステム全体を制御する通信装置としての電子制御装置4とを備えてなる。電子制御装置4には、車両2のドア錠を施解錠するドアロック装置5と、エンジンの駆動を制御するエンジン制御装置6とが接続されている。なお、電子キーシステム1が通信システムに相当する。
【0022】
<電子制御装置>
次に、電子制御装置4について詳しく説明する。図2に示すように、車両2に搭載された電子制御装置4は、不揮発性のメモリ4aを備え、そのメモリ4aには、車両2に対応する電子キー3に固有のIDコード(識別情報)が記憶されている。電子制御装置4には、車両2に対応する電子キー3との間で無線通信を行うための車外送信機11及び車内送信機12と、受信機13とが電気的に接続されている。また、電子制御装置4には、ドアロック装置5と、エンジン制御装置6とが電気的に接続されている。
【0023】
車外送信機11は、電子制御装置4から出力された室外照合用の応答要求信号S1を電子キー3側で受信可能な所定周波数の電波に変調し、該応答要求信号S1をドア毎に設けられた複数の車外送信アンテナ11aを通じて車両2の周辺に送信する。車内送信機12は、電子制御装置4から出力された室内照合用の応答要求信号S1を電子キー3側で受信可能な所定周波数の電波に変調し、該応答要求信号S1を車内に設けられた車内送信アンテナ12aを通じて車内に送信する。受信機13は、電子キー3から所定周波数の電波として送信された、電子キー3に固有のIDコードを含む応答信号S2及び施解錠要求信号を、例えば車両2の後部に設けられた受信アンテナ13aを通じて受信する。そして、受信機13は、受信した応答信号S2及び施解錠要求信号をパルス信号に復調して電子制御装置4に出力する。
【0024】
電子制御装置4は、電子キー3に対して該電子キー3のIDコードを含む応答信号S2の出力を要求する旨の室外照合用の応答要求信号S1を、車外送信機11を通じて送信する。また、電子制御装置4は、図示しないドアセンサからのドア開閉信号により電子キー3を所持したユーザが車両2に乗り込んだことを検知すると、電子キー3に対してIDコードを含む応答信号S2の出力を要求する旨の室内照合用の応答要求信号S1を、車内送信機12を通じて送信する。
【0025】
また、電子制御装置4は、室外照合用若しくは室内照合用の応答要求信号S1に応じて電子キー3から返信される応答信号S2を、受信機13を通じて受信する。そして、電子制御装置4は、受信した応答信号S2に含まれる電子キー3に固有のIDコードとメモリ4aに記憶されているIDコードとを照合し、それらが一致した場合に電子キー3との間の相互認証が成立したと判断する。電子制御装置4は、電子キー3との間の相互認証が成立したことを条件として、ドアロック装置5にドア錠の施解錠を許可したり、エンジン制御装置6にエンジンの始動を許可したりする。また、電子制御装置4は、電子キー3から送信される施解錠要求信号を、受信機13を通じて受信し、ドア錠を施解錠する旨の制御信号を出力する。ドアロック装置5は、該制御信号に基づいてドア錠を施解錠する。
【0026】
<電子キー>
次に、電子キー3について詳細に説明する。図2に示すように、電子キー3の内部には、通信手段を構成するマイクロコンピュータ21が設けられている。マイクロコンピュータ21には、電子制御装置4との間で無線通信を行う通信手段を構成する受信回路22と、同じく通信手段を構成する送信回路23とがそれぞれ接続されている。また、電子キー3の表面には施錠スイッチ24と、解錠スイッチ25とが設けられている。これら施錠スイッチ24及び解錠スイッチ25は、マイクロコンピュータ21に電気的に接続されている。
【0027】
受信回路22は、前記電子制御装置4から所定周波数の電波として送信される室外照合用若しくは室内照合用の応答要求信号S1を、受信アンテナ22aを通じて受信する。受信回路22は、受信した室外照合用若しくは室内照合用の応答要求信号S1をパルス信号に復調してマイクロコンピュータ21に出力する。ここで、受信回路22について詳しく説明する。
【0028】
図3に示すように、受信回路22は、フィルタ回路30、増幅回路31、復調回路32、及び受信強度検出手段としての信号強度測定回路33を備えてなる。フィルタ回路30の入力側には、受信アンテナ22aが接続されている。また、フィルタ回路30の出力側には増幅回路31が接続されるとともに、当該増幅回路31には、復調回路32及び信号強度測定回路33がそれぞれ接続されている。これら復調回路32及び信号強度測定回路33は、それぞれ前記マイクロコンピュータ21に接続されている。
【0029】
フィルタ回路30は、受信アンテナ22aを通じて受信した信号に含まれる受信帯域外の成分を除去し、増幅回路31へ出力する。増幅回路31は、フィルタ回路30によりフィルタリングされた信号、すなわち受信アンテナ22aで受信した信号を復調可能なレベルに増幅し、当該増幅信号Sampを復調回路32及び信号強度測定回路33へ出力する。復調回路32は、受信アンテナ22aを通じて受信した信号(正確には、増幅回路31により増幅された増幅信号Samp)を復調し、当該復調信号Sdemをマイクロコンピュータ21へ出力する。信号強度測定回路33は、受信アンテナ22aを通じて受信される信号(正確には、増幅回路31により増幅された増幅信号Samp)の強度を検出して、当該信号の強度に応じた検出信号Spowをマイクロコンピュータ21へ出力する。本実施の形態では、信号強度測定回路33は、図示しないRSSI(Received Signal Strength Indicator)回路を備えてなる。そして、このRSSI回路は、受信した無線信号の信号強度(電界強度)を表すRSSI値を前記検出信号Spowとして出力する。
【0030】
マイクロコンピュータ21は、信号強度測定回路33から出力される検出信号に基づいて電子キー3の移動の有無を判断する。具体的には、電子キー3を所持したユーザが前記電子制御装置4に近づくにつれて、該電子キー3の前記応答要求信号S1の受信強度が増加する。マイクロコンピュータ21は、応答要求信号S1の受信強度が一定時間以上連続して増加した場合、電子キー3が移動していたと判断する。
【0031】
具体的には、マイクロコンピュータ21は、電子キー3の移動履歴が格納される揮発性の揮発性メモリ21bを有している。マイクロコンピュータ21は、前記検出信号に基づいて電子キー3が移動したと判断してから所定期間の間、揮発性メモリ21bに電子キー3が移動した旨の移動履歴を記憶する。また、マイクロコンピュータ21は、応答要求信号S1の受信強度が変化しなくなってから所定期間が過ぎると、揮発性メモリ21bに電子キー3が移動していない旨の移動履歴を記憶する。
【0032】
ここで、例えば、電子キー3を所持したユーザが電子制御装置4の通信領域A内に進入した場合を想定する。この場合、マイクロコンピュータ21の揮発性メモリ21bには、電子キー3が移動した旨の移動履歴が記憶されている。マイクロコンピュータ21は、該移動履歴に基づいて、電子キー3が移動していたと判断し、応答信号S2を送信する。即ち、電子キー3は、応答要求信号S1の受信強度の変化、電子キー3の移動が検知されなくなってから所定期間の間は、受信した応答要求信号S1に対する応答信号を送信する。
【0033】
一方、例えば、電子キー3を所持したユーザが電子制御装置4の通信領域A外にいる場合や、該通信領域A内で停止してから所定期間が過ぎた場合を想定する。この場合、マイクロコンピュータ21の揮発性メモリ21bには、電子キー3が移動していない旨の移動履歴が記憶される。マイクロコンピュータ21は、該移動履歴に基づいて、電子キー3が移動していないと判断し、応答信号S2を送信しない。
【0034】
図2に示すように、送信回路23は、マイクロコンピュータ21から出力される応答信号S2及び施解錠要求信号を、電子制御装置4側で受信可能な所定周波数の電波に変調して、送信アンテナ23aを通じて送信する。
【0035】
マイクロコンピュータ21の不揮発性メモリ21aには、電子キー3に固有のIDコード、ドア錠の施錠を要求する施錠要求コード、及びドア錠の解錠を要求する解錠要求コードが記憶されている。マイクロコンピュータ21は、施錠スイッチ24が操作されると、電子制御装置4に対してドア錠の施錠を要求する施錠要求コード及び電子キー3に固有のIDコードを含む施解錠要求信号を、送信回路23を通じて送信する。また、マイクロコンピュータ21は、解錠スイッチ25が操作されると、電子制御装置4に対してドア錠の解錠を要求する解錠要求コード及び電子キー3に固有のIDコードを含む施解錠要求信号を、送信回路23を通じて送信する。
【0036】
また、マイクロコンピュータ21は、受信回路22を通じて電子制御装置4から送信される室外照合用若しくは室内照合用の応答要求信号S1を受信すると、電子制御装置4に対して電子キー3に固有のIDコードを含む応答信号S2を、送信回路23を通じて送信する。
【0037】
マイクロコンピュータ21は、応答要求信号S1に対する応答として応答信号S2を送信する際、電子キー3の移動の有無を上述した信号強度測定回路33から出力される検出信号Spowに基づいて判断する。そして、マイクロコンピュータ21は、電子キー3が移動していたと判断した場合に、応答信号S2を送信する。
【0038】
また、電子キー3の表面には、報知手段としてのインジケータランプ27が設けられている。インジケータランプ27は、マイクロコンピュータ21に電気的に接続されている。マイクロコンピュータ21は、応答要求信号S1の受信強度が変化していない場合、不正な応答要求信号を受信していると判断し、その旨を報知するべくインジケータランプ27を点滅させる。
【0039】
また、電子キー3には、電池28が内蔵されており、該電池28を動作電源として、予め設定された所定の間欠周期で無線通信の受信動作を行う。マイクロコンピュータ21は、応答要求信号S1が受信されない状態においては、所定の休止時間が経過する毎に所定の動作時間の間だけ、受信回路22及び送信回路23に動作電力を供給する。即ち、応答要求信号S1が受信されない受信待機状態において、マイクロコンピュータ21は、受信回路22及び送信回路23を間欠的に動作させる。また、マイクロコンピュータ21は、通常の受信待機状態において一定時間の間、受信強度の変化、即ち、電子キー3の移動が検知されなかった場合、間欠周期における受信動作の休止時間T2を前記通常の受信待機状態における受信動作の休止時間T1よりも長く設定する。
【0040】
ここで、こうしたマイクロコンピュータ21によって行われる休止時間の設定処理を、図4に示すフローチャートを用いて説明する。このフローチャートの処理は、マイクロコンピュータ21の不揮発性メモリ21aに予め格納されたプログラムにより実行される。マイクロコンピュータ21は、この処理を繰り返し実行する。
【0041】
まず、電子キー3を所持したユーザが車両2に近づき、電子制御装置4の通信領域Aに進入した場合を想定する。この場合、マイクロコンピュータ21は、信号強度測定回路33からの検出信号Spowの入力に基づき、電子キー3が受信する応答要求信号S1の受信強度の変化を検出する。従って、マイクロコンピュータ21は、ステップ101において電子キー3が移動していると判断し、ステップ102に移行する。このステップ102においてマイクロコンピュータ21は、内部に設けられたタイマのカウントをリセットして(N=0)ステップ103に移行し、前記間欠周期における受信動作の休止時間を第1の休止時間T1に設定し、本処理を終了する。従って、電子キー3を所持したユーザが電子制御装置4の通信領域Aに進入した場合、電子キー3は、この第1の休止時間T1が経過する毎に所定の動作時間の間だけ受信動作を行う通常の受信待機状態をとる。
【0042】
一方、例えば、電子キー3を所持したユーザが電子制御装置4の通信領域Aの外にいる場合や、通信領域A内で移動していない場合を想定する。この場合、電子キー3が受信する応答要求信号S1の受信強度は変化しない。従って、マイクロコンピュータ21は、ステップ101において、電子キー3が移動していないと判断し、ステップ104に移行する。このステップ104において、マイクロコンピュータ21は、タイマのカウントアップを行って(N=N+1)ステップ105に移行し、そのカウントが一定値以上であるか否かを判断する。なお、この一定値は、前記一定時間が経過した場合のタイマのカウントと同じ値となっている。即ち、このステップ105において、電子キー3の移動が検知されなくなってから一定時間以上経過したか否かが判断される。
【0043】
ここで、例えば、電子キー3を所持したユーザが電子制御装置4の通信領域Aに進入してから移動していない時間が、一定時間未満であった場合を想定する。この場合、タイマのカウンタは一定値未満となるため、マイクロコンピュータ21は、ステップ101に移行する。即ち、電子キー3を所持したユーザが移動するか、カウンタが一定値以上となるまでの間、タイマのカウントアップが行われる。なお、この間、前記間欠周期における受信動作の休止時間は第1の休止時間T1に設定されている。従って、電子キー3を所持したユーザが電子制御装置4の通信領域A内で移動していない場合でも、その移動していない時間が一定時間よりも短い場合、電子キー3は、ユーザが移動しているときと同様、第1の休止時間T1が経過する毎に所定の動作時間の間だけ受信動作を行う通常の受信待機状態をとる。
【0044】
一方、例えば、電子キー3を所持したユーザが電子制御装置4の通信領域Aの外にいる状態や、通信領域A内で立ち止まっている状態等、電子キー3が通信領域A内で移動していない状態が一定時間以上継続された場合を想定する。この場合、タイマのカウンタは一定値以上となるため、マイクロコンピュータ21は、ステップ106に移行し、前記間欠周期における受信動作の休止時間を前記第1の休止時間T1よりも長い第2の休止時間T2に設定して、本処理を終了する。従って、電子キー3を所持したユーザが電子制御装置4の通信領域Aの外にいる時間や、該通信領域Aに進入してから移動していない時間が、一定時間以上となった場合、電子キー3は、この第2の休止時間T2が経過する毎に所定の動作時間の間だけ受信動作を行う第2の受信待機状態をとる。即ち、電子キー3の移動が検知されなくなってから、換言すれば、電子キー3の使用の意図が明示されない状態が一定時間以上継続した場合、電子キー3の休止時間が長くなる。このため、受信待機状態における電池28の消耗が抑制される。なお、本実施の形態では、通常の受信待機状態をとるか第2の受信待機状態をとるかの判断基準となる前記一定時間は、揮発性メモリ21bに電子キー3が移動した旨の移動履歴が残されている前記所定期間と同じ時間に設定されている。このため、電子キー3が受信した応答要求信号S1に対する応答として応答信号S2を送信する所定期間の間、電子キー3は通常の受信待機状態をとる。
【0045】
次に、電子キーシステム1の動作について説明する。
図1に示すように、電子制御装置4は、電子キー3に対して電子キー3に固有のIDコードを含む応答信号S2の出力を要求する旨の室外照合用の応答要求信号S1を、車外送信機11の車外送信アンテナ11aを通じて車両2の周辺に出力する。これにより、車両2の周辺に電子キー3との間で相互無線通信が可能な通信領域Aが形成される。そして、ユーザが電子キー3を所持して車外送信機11の通信領域Aに進入し、電子キー3が室外照合用の応答要求信号S1を受信すると、電子キー3がそれに応答し、電子キー3に固有のIDコードを含む応答信号S2を返信する。
【0046】
電子制御装置4は、電子キー3から返信された応答信号S2を受信機13を通じて受信し、該受信した応答信号S2に含まれるIDコードとメモリ4aに記憶されているIDコードとを照合し、それらが一致した場合に電子キー3との間の室外照合が成立したと判断する。電子制御装置4は、電子キー3との間の室外照合が成立したことを条件として、ドアロック装置5にドア錠の解錠を許可する。ドアロック装置5は、電子制御装置4からドア錠の解錠が許可された状態において図示しないドアハンドルセンサに対する接触操作が行われると、ドア錠を解錠する。
【0047】
ドア錠の解錠後、電子キー3を所持するユーザが車両2に乗り込んだとき、電子制御装置4は、図示しないドアセンサからのドア開閉信号によりこれを検知する。そして、電子制御装置4は、電子キー3に対して同電子キー3に固有のIDコードを含む応答信号S2の出力を要求する旨の室内照合用の応答要求信号S1を、車内送信機12の車内送信アンテナ12aを通じて車内に出力する。これにより、車内に電子キー3との間で相互無線通信が可能な図示しない通信領域が形成される。そして、車両2に乗り込んだユーザが所持する電子キー3が室内照合用の応答要求信号S1を受信すると、電子キー3がそれに応答して、自身のIDコードを含む応答信号S2を返信する。
【0048】
電子制御装置4は、電子キー3から返信された応答信号S2を、受信機13を通じて受信し、該受信した応答信号S2に含まれるIDコードとメモリ4aに記憶されているIDコードとを照合し、それらが一致した場合に電子キー3との間の室内照合が成立したと判断する。電子制御装置4は、電子キー3との間の室内照合が成立したことを条件として、エンジン制御装置6にエンジンの始動を許可する。エンジン制御装置6は、前記電子制御装置4からエンジンの始動が許可された状態においてエンジン始動操作が行われると、エンジンを始動させる。すなわち、エンジン制御装置6は、電子制御装置4からエンジンの始動を許可する旨の制御信号が入力されていない状態にあっては、たとえエンジン始動操作が行われたとしてもエンジンを始動させない。
【0049】
ところで、通常、このような電子キー3は、電子キー3を所持したユーザが車両2の周辺の通信領域A内に進入し、これにより電子制御装置4の通信領域A内に電子キー3が配置されることで、電子制御装置4からの応答要求信号S1に対する応答として応答信号S2を自動的に送信する。従って、電子キー3を電子制御装置4の通信領域Aに進入するという行為が、電子キー3を使用する意図を明示する意味合いをもつ。
【0050】
上述したように、マイクロコンピュータ21は、応答要求信号S1に対する応答として応答信号S2を送信する際、電子キー3の移動の有無を信号強度測定回路33の検出結果に基づいて判断する。そして、マイクロコンピュータ21は、電子キー3が移動していたと判断した場合に、応答信号S2を送信するようになっている。即ち、電子キー3は、ユーザが電子キー3を使用する意図を明示したか否かを確認して応答信号S2を送信するようになっている。
【0051】
次に、上述した電子キー3の動作を図5に示すフローチャートに基づいて説明する。
同図5に示すように、電子キー3を所持したユーザが車両2の周辺の通信領域A内に進入することにより、ステップ201において電子キー3が応答要求信号S1を受信すると、マイクロコンピュータ21は、ステップ202において、揮発性メモリ21bに記憶されている移動履歴に基づいて電子キー3の移動の有無を判断する。
【0052】
ここで、例えば、電子キー3を所持したユーザが車両2の周辺の通信領域A内に進入することにより電子キー3が応答要求信号S1を受信した場合を想定する。この場合、電子キー3が受信する応答要求信号S1の受信強度は、一定時間以上連続して増加することとなる。従って、この場合、揮発性メモリ21bには電子キー3が移動した旨の移動履歴が記憶されている。マイクロコンピュータ21は、この移動履歴に基づいて、電子キー3が移動していたと判断し、ステップ203に移行する。ステップ203においてマイクロコンピュータ21は、受信した応答要求信号S1に対する応答として固有のIDコードを含む応答信号S2を送信し、本処理を終了する。即ち、電子キー3は、受信した応答要求信号S1の受信強度が徐々に増加した場合に、応答信号S2を送信する。
【0053】
ところで、例えば電子キー3が放置されている場合等、電子キー3を使用する意図が明示されていない場合において、電子キー3が応答要求信号を受信した場合を想定する。この場合、電子キー3は所定期間以上移動していない状態で応答要求信号を受信するため、電子キー3が受信する応答要求信号S1の受信強度は変化しない。従って、この場合、揮発性メモリ21bには電子キー3が移動していない旨の移動履歴が記憶されている。マイクロコンピュータ21は、この移動履歴に基づいて、電子キー3が移動していないと判断し、ステップ204に移行してインジケータランプ27を点滅させる。そして、マイクロコンピュータ21は、応答信号S2を送信することなく本処理を終了する。このため、電子キー3は、電子キー3を電子制御装置4の通信領域Aに進入するという行為により、電子キー3を使用する意図が明示された場合にだけ、応答信号S2を送信する。よって、電子キー3を使用する意図が明示されていない場合において不正な応答要求信号を電子キー3が受信した場合、電子キー3は該応答要求信号に対する応答信号を送信しないため、応答信号S2に含まれる電子キー3を識別するための識別情報等が不正に読み取られたり利用されたりしてしまうことを好適に防止することができる。
【0054】
電子制御装置4は、応答要求信号S1に対する応答として送信された応答信号S2に基づいて電子キー3を認証する。このため、電子制御装置4は、電子キー3が移動していた場合に、該電子キー3を認証する。従って、このように電子キー3が移動していない状態、即ち電子キー3を使用する意図が明示されていない状態において電子制御装置4が電子キー3を認証することを防止することができる。また、この場合、電子キー3から応答信号S2が送信されないため、電子キー3の電池28の消耗を好適に抑制することができる。
【0055】
また、マイクロコンピュータ21は、電子キー3が移動していない状態で応答要求信号S1を受信した場合、不正な応答要求信号を受信していると判断し、その旨を、インジケータランプ27を点滅させることを通じて報知する。このため、ユーザは該インジケータランプ27の点滅に基づいて電子キー3が不正な応答要求信号を受信していることを認識することが可能となり、該不正な応答要求信号によってIDコードが読み取られることによる車両2の不正利用を警戒することができる。
【0056】
また、例えば、ドア錠の解錠後、電子キー3を所持するユーザが車両2に乗り込むと、電子制御装置4は、前記ドアセンサからのドア開閉信号によりこれを検知する。そして、電子制御装置4は、電子キー3に対して同電子キー3に固有のIDコードを含む応答信号S2の出力を要求する旨の室内照合用の応答要求信号S1を、車内に出力する。ステップ201において、室内照合用の応答要求信号S1を受信すると、マイクロコンピュータ21は、ステップ202において電子キー3の移動の有無を判断する。
【0057】
このとき、電子キー3のマイクロコンピュータ21は、ユーザが車両2に乗り込む際に、応答要求信号S1の受信強度の変化を検出しており、前記揮発性メモリ21bには、電子キー3が移動した旨の移動履歴が記憶されている。従って、このように応答要求信号S1を受信する直前に電子キー3が移動していない場合でも、マイクロコンピュータ21は、ステップ202において、電子キー3の移動を検知したと判断し、ステップ203に移行する。ステップ203においてマイクロコンピュータ21は、受信した応答要求信号S1に対する応答として固有のIDコードを含む応答信号S2を送信し、本処理を終了する。即ち、ユーザが車両2に乗り込む際に電子キー3が移動したことに基づいて、マイクロコンピュータ21は、応答要求信号S1に対する応答信号S2を送信する。このため、室内照合を行うために電子キー3を特別に移動させる必要がない。
【0058】
次に、上記実施の形態の作用効果を以下に記載する。
(1)電子キー3は、電子キー3が電子制御装置4の通信領域Aに進入し電子キー3が電子制御装置4から送信される応答要求信号S1を受信した場合に、電子キー3は該応答要求信号S1に対する応答として応答信号S2を送信する。従って、電子キー3を電子制御装置4の通信領域Aに進入するという行為が、電子キー3を使用する意図を明示する意味合いをもつ。一方、電子キー3は、電子キー3が移動していたと判断した場合に、応答要求信号S1に対する応答信号S2を送信する。従って、電子キー3は、該電子キー3が移動されてから応答要求信号S1を受信した場合にだけ、該応答要求信号S1に対する応答信号S2を送信する。このため、電子キー3が移動していない状態、即ち電子キー3を使用する意図が明示されていない状態において電子制御装置4が電子キー3を不必要に認証してしまうことを好適に防止することができる。
【0059】
(2)また、電子キー3から応答信号S2が送信されないため、該応答信号S2に含まれる電子キー3を識別するためのIDコード等が不正に読み取られたり利用されたりしてしまうことを好適に防止することができる。
【0060】
(3)また、電子キー3は、応答要求信号S1の受信強度の変化、電子キー3の移動が検知されなくなってから所定期間の間は、受信した応答要求信号S1に対する応答信号を送信する。このため、例えば電子制御装置4と電子キー3との間で室内照合を行う場合、電子キー3は、ユーザが車両2に乗り込む際の電子キー3の移動により電子キー3が移動していたと判断し、応答要求信号S1に対する応答信号S2を送信する。このため、室内照合を行うために電子キー3を特別に移動させる必要がない。よって、電子キー3を認証させるために該電子キー3を特別に操作する手間を省くことができる。
【0061】
(4)電子キー3のマイクロコンピュータ21は、電子キー3の移動が検知されなくなってから一定時間が経過すると間欠周期における受信動作の休止時間を通常の受信待機状態における受信動作の休止時間T1よりも長く設定する。このため、受信待機状態における電池28の消耗を好適に抑制することができる。
【0062】
(5)電子キー3に設けられたインジケータランプ27の点滅を通じて、電子キー3が不正な応答要求信号S1を受信していることが報知される。このため、ユーザはインジケータランプ27の報知に基づいて電子キー3に対する不正な応答要求信号S1を警戒することができる。
【0063】
尚、本実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、揮発性メモリ21bに電子キー3が移動した旨の移動履歴が残されている前記所定期間と、休止時間を第1の休止時間T1から第2の休止時間T2に切り替える際の判断基準となる時間とを一致させたが、これらが一致していなくてもよい。
【0064】
・上記実施の形態では、電子キー3に設けられたインジケータランプ27の点滅により、電子キー3が不正な応答要求信号を受信していることをユーザの視覚を通じて報知するようにしたがこのような態様に限定されない。例えば、電子キー3にスピーカーを設け、該スピーカーから警告音を発することにより、電子キー3が不正な応答要求信号を受信していることをユーザの聴覚を通じて報知するようにしてもよい。また、例えば、電子キー3に振動装置を設け、該振動装置を通じて電子キー3を振動させることにより、電子キー3が不正な応答要求信号を受信していることを報知するようにしてもよい。
【0065】
・上記実施の形態では、電子キー3が不正な応答要求信号を受信していることを報知するための報知手段であるインジケータランプ27を電子キー3に設けたが、該インジケータランプ27を省略してもよい。
【0066】
・上記実施の形態では、電子キー3が不正な応答要求信号を受信していることを報知する報知手段として、電子キー3側にインジケータランプ27を設けたが、このような態様に限定されない。例えば図2において二点鎖線にて示すように、通信装置側報知手段として、車室内にインジケータランプ35を設ける。そして、受信している応答要求信号S1の受信強度が変化していない状態、即ち、電子キー3が移動していない状態で応答要求信号S1を受信している間、電子キー3から、不正な応答要求信号を受信している旨を含む報知要求信号S3(図2において括弧内に示す)を電子制御装置4へ送信させる。そして、この報知要求信号S3を受信した電子制御装置4が、車室内に設けたインジケータランプ35を点滅させることにより、電子キー3が不正な応答要求信号を受信していることを報知するようにしてもよい。このような構成によれば、インジケータランプ35によって電子キー3が不正な応答要求信号を受信していることが報知される。このため、ユーザは電子キー3を所持していなくても車両2に設けられたインジケータランプ35を通じて電子キー3が不正な応答要求信号を受信していることを認識することができる。よって、より確実に電子キー3に対する不正な応答要求信号を警戒することができる。なお、この場合、例えば車室内に設けたスピーカー等、インジケータランプ35以外の装置を用いて電子キー3が不正な応答要求信号を受信していることを報知するようにしてもよい。また、この場合、電子キー3のインジケータランプ27を省略してもよい。
【0067】
・上記実施の形態では、電子キー3が移動していたことを条件として電子キー3が応答信号S2を送信する構成とすることにより、電子キー3を使用する意図が明示されていない状態において電子制御装置4が電子キー3を認証することを防止するようにしたが、このような態様に限定されない。例えば、電子キー3は応答要求信号S1に対する応答として、信号強度測定回路33の検出結果を含む応答信号S2を送信し、車両2に設けられた電子制御装置4が、電子キー3の移動の有無を応答信号S2に含まれる信号強度測定回路33の検出結果に基づいて判断する。そして、該電子制御装置4が、電子キー3が移動していたと判断した場合に、応答信号に基づいて電子キー3を認証するようにしてもよい。このような構成によっても、電子キー3が移動されていない状態、即ち電子キー3を使用する意図が明示されていない状態において、電子制御装置4が電子キー3を認証することを防止することができる。
【0068】
・上記実施の形態では、電子キー3が受信する応答要求信号S1の受信強度の変化に基づいて電子キー3の移動の有無を判断したが、このような態様に限定されない。例えば、電子制御装置4の受信機13に上述した信号強度測定回路を設け、電子制御装置4が受信する応答信号S2の受信強度の変化に基づいて電子キー3の移動の有無を判断してもよい。このような構成によれば、電子制御装置4に信号強度測定回路が設けられるため、例えば上記実施の形態のように電子キー3に信号強度測定回路33を設ける場合と比較して、電子キー3の小型化を図ることができる。なお、この場合、受信している応答信号S2の受信強度が変化していない状態、即ち電子キー3が移動していない状態で応答信号S2を受信している間、車室内に設けたインジケータランプ35を点滅させることにより、電子キー3が不正な応答要求信号を受信していることを報知するようにしてもよい。また、電子制御装置4から、不正な応答要求信号を受信している旨を含む報知要求信号を電子キー3へ送信し、この報知要求信号を受信した電子キー3が、自身に設けられたインジケータランプ27を点滅させることにより、電子キー3が不正な応答要求信号を受信していることを報知するようにしてもよい。
【0069】
・上記実施の形態では、電池28を動作電力として動作する電子キー3を用いたが、このような態様に限定されない。例えば電子制御装置4から送信される駆動電波から動作電力を生成するトランスポンダを有する電子キーを用いてもよく、また、トランスポンダと電池28とを有する電子キーを用いてもよい。
【0070】
・上記実施の形態では、本発明を、ユーザにより所持される電子キー3と車両との間の無線通信を通じてドアの施解錠を行う電子キーシステムに適用したが、例えば住宅用の電子キーシステムに具体化してもよい。また、携帯機を通信装置にかざすことにより、通信装置が携帯機を認証する通信システムに具体化してもよい。
【0071】
また、図6に示すように、例えば空港などにおいて荷物を管理する管理システム1aに具体化してもよい。この場合、例えばフォークリフト40等によって搬送される荷物41a,41bが通過するゲート等に設けられる読み取り装置42が、通信装置に相当し、荷物41a,41bに取り付けられるRFIDタグ43が携帯機に相当する。このような構成によれば、ゲートを通過する荷物41aに取り付けられているRFIDタグ43が受信する応答要求信号S1の受信強度は、該荷物41aが読み取り装置42の通信領域A内を移動している間変化する。このため、ゲートを通過する荷物41aに取り付けられているRFIDタグ43は、読み取り装置42に認証される。一方、ゲートの近くに放置され読み取り装置42の通信領域Aに配置された荷物41bに取り付けられているRFIDタグ43が受信する応答要求信号S1の受信強度は、変化しない。このため、ゲートの近くに放置された荷物41bに取り付けられているRFIDタグ43は、読み取り装置42に認証されない。よって、ゲートを通過する荷物41a、即ち認証対象となっている荷物41aのみを的確に認証することができる。
【0072】
次に、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記携帯機は、前記携帯機の移動が検知されなくなってから所定期間の間は、前記応答要求信号に対する前記応答信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。本発明によれば、携帯機が移動しなくなってから所定期間の間、該携帯機から応答信号が送信されるため、携帯機を認証させるために該携帯機を特別に移動させる必要がない。よって、携帯機を認証させるために該携帯機を特別に操作する手間を省くことができる。
【0073】
(ロ)通信装置から送信された応答要求信号に対する応答として携帯機に固有の識別情報を含む応答信号を送信する携帯機において、該携帯機の移動に伴う前記応答要求信号の受信強度の変化を検出する受信強度検出手段を備えるとともに、前記応答要求信号に対する応答として応答信号を送信する際、前記携帯機の移動の有無を前記受信強度検出手段の検出結果に基づいて判断するとともに、前記携帯機が移動していたと判断した場合に、前記応答信号を送信することを特徴とする携帯機。本発明によれば、携帯機が移動していない状態、即ち携帯機を使用する意図が明示されていない状態において通信装置が携帯機を認証することを防止することができる。よって、通信装置が携帯機を不必要に認証してしまうことを好適に防止することができる。また、携帯機から応答信号が送信されないため、該応答信号に含まれる携帯機を識別するための識別情報等が不正に読み取られたり利用されたりしてしまうことを好適に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明を適用した電子キーシステムの概略構成図。
【図2】電子キーシステムの概略構成を示すブロック図。
【図3】電子キーの受信回路の電気的構成を示すブロック図。
【図4】電子キーのマイクロコンピュータで行われる休止時間の設定処理を示すフローチャート。
【図5】応答要求信号を受信した際の電子キーの動作を示すフローチャート。
【図6】本発明を荷物の管理システムに適用した別例の概略構成図。
【符号の説明】
【0075】
1…通信システムとしての電子キーシステム、1a…通信システムとしての管理システム、3…携帯機としての電子キー、4…通信装置としての電子制御装置、21…通信手段を構成するマイクロコンピュータ、22…通信手段を構成する受信回路、23…通信手段を構成する送信回路、27…報知手段としてのインジケータランプ、28…電池、33…受信強度検出手段としての信号強度測定回路、35…通信装置側報知手段としてのインジケータランプ、42…通信装置としての読み取り装置、43…携帯機としてのRFIDタグ、T1,T2…休止時間、S1…応答要求信号、S2…応答信号、S3…報知要求信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置から送信された応答要求信号に対する応答として携帯機に固有の識別情報を含む応答信号を送信する携帯機を備え、該携帯機が送信する前記応答信号に基づいて、前記通信装置が前記携帯機を認証する通信システムにおいて、
前記携帯機は、該携帯機の移動に伴う前記応答要求信号の受信強度の変化を検出する受信強度検出手段を備えるとともに、前記応答要求信号に対する応答として応答信号を送信する際、前記携帯機の移動の有無を前記受信強度検出手段の検出結果に基づいて判断するとともに、前記携帯機が移動していたと判断した場合に、前記応答信号を送信することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
通信装置から送信された応答要求信号に対する応答として携帯機に固有の識別情報を含む応答信号を送信する携帯機を備え、該携帯機が送信する前記応答信号に基づいて、前記通信装置が前記携帯機を認証する通信システムにおいて、
前記携帯機は、該携帯機の移動に伴う前記応答要求信号の受信強度の変化を検出する受信強度検出手段を備え、前記応答要求信号に対する応答として、前記受信強度検出手段の検出結果を含む応答信号を送信し、
前記通信装置は、前記応答信号を受信した際、前記携帯機の移動の有無を前記応答信号に含まれる前記受信強度検出手段の検出結果に基づいて判断するとともに、前記携帯機が移動していたと判断した場合に、前記応答信号に基づいて前記携帯機を認証することを特徴とする通信システム。
【請求項3】
通信装置から送信された応答要求信号に対する応答として携帯機に固有の識別情報を含む応答信号を送信する携帯機を備え、該携帯機が送信する前記応答信号に基づいて、前記通信装置が前記携帯機を認証する通信システムにおいて、
前記通信装置は、前記携帯機の移動に伴う前記応答信号の受信強度の変化を検出する受信強度検出手段を備え、前記応答信号を受信した際、前記携帯機の移動の有無を前記受信強度検出手段の検出結果に基づいて判断するとともに、前記携帯機が移動していたと判断した場合に、前記応答信号に基づいて前記携帯機を認証することを特徴とする通信システム。
【請求項4】
前記携帯機は、前記受信強度検出手段の検出結果に基づいて前記携帯機が移動していないと判断した場合、不正な応答要求信号を受信していると判断し、その旨を報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信システム。
【請求項5】
前記携帯機は、前記受信強度検出手段の検出結果に基づいて前記携帯機が移動していないと判断した場合、不正な応答要求信号を受信していると判断し、その旨を前記通信装置に設けられた通信装置側報知手段を通じて報知するための報知要求信号を前記通信装置に送信することを特徴とする請求項1、2及び4の何れか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記通信装置は、前記受信強度検出手段の検出結果に基づいて前記携帯機が移動していないと判断した場合、不正な応答要求信号を受信していると判断し、その旨を報知する通信装置側報知手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の通信システム。
【請求項7】
前記携帯機は、内蔵される電池を動作電源として所定の間欠周期で無線信号の受信動作を行い、通常の受信待機状態において一定時間の間、前記携帯機の移動が検知されなかった場合、前記間欠周期における受信動作の休止時間を前記通常の受信待機状態における受信動作の休止時間よりも長く設定することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−28550(P2010−28550A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188815(P2008−188815)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】