説明

運搬車

【課題】急発進や急旋回を防止して積み荷の破損や落下を防ぐと共に、燃料消費量や騒音を低減するようにした運搬車を提供する。
【解決手段】操作者によって走行クラッチの切断操作が実行されたことを検出するクラッチ切断操作検出手段と、操作者によって運搬車の旋回操作が実行されたことを検出する旋回操作検出手段とを備えると共に、走行クラッチの切断操作および運搬車の旋回操作のいずれも検出されないとき、目標回転数(NED)を第1の目標回転数(NED1)に設定する(S18)一方、走行クラッチの切断操作および運搬車の旋回操作の少なくともいずれかが検出されるとき、目標回転数(NED)を第1の目標回転数(NED1)よりも低い第2の目標回転数(NED2)に設定する(S20,S26)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、運搬車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷物を積載する荷台を備えると共に、エンジンで駆動輪を駆動することによって走行させるようにした運搬車が広く知られている(例えば特許文献1参照)。この種の運搬車にあっては、一般に、エンジンの出力を駆動輪に伝達するクラッチを設け、それを操作者の操作によって接続(結合)させることで、走行が開始される。また、機械式のガバナなどを用い、エンジン回転数をエンジンが高出力を発生する高回転域に常に保つことにより、運搬車を走行させるのに十分な駆動力を得るようにしている。尚、特許文献1に記載される運搬車は、具体的には歩行型の運搬車であり、操作者は運搬車の操作を行いながら歩行して移動する。
【特許文献1】特開2003−312551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の運搬車にあっては、エンジン回転数が常に高回転域に保たれていたことから、停止中にクラッチを接続すると急発進し、積み荷の破損や落下を招くおそれがあった。また、運搬車は一般に、左右の駆動輪の一方を停止させ、それらの回転差によって旋回を行う。そのため、エンジン回転数が常に高回転域に保たれていると、左右の駆動輪の一方を停止させたときに運搬車が急旋回し、同様に積み荷の破損や落下を招くおそれがあった。
【0004】
さらに、エンジン回転数が常に高回転域に保たれていると、燃料消費量や騒音が増大するという問題があった。
【0005】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、急発進や急旋回を防止して積み荷の破損や落下を防ぐと共に、燃料消費量や騒音を低減するようにした運搬車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を解決するために、請求項1にあっては、荷物を積載する荷台を備えると共に、エンジンで駆動輪を駆動して走行する運搬車において、前記エンジンの出力を前記駆動輪に伝達するクラッチと、操作者によって前記クラッチの切断操作が実行されたことを検出するクラッチ切断操作検出手段と、前記操作者によって前記運搬車の旋回操作が実行されたことを検出する旋回操作検出手段と、前記エンジンの回転数を目標回転数に制御するエンジン回転数制御手段とを備えると共に、前記エンジン回転数制御手段は、前記クラッチの切断操作および前記運搬車の旋回操作のいずれも検出されないとき、前記目標回転数を第1の目標回転数に設定する一方、前記クラッチの切断操作および前記運搬車の旋回操作の少なくともいずれかが検出されるとき、前記目標回転数を前記第1の目標回転数よりも低い第2の目標回転数に設定するように構成した。
【0007】
また、請求項2にあっては、前記エンジン回転数制御手段は、前記クラッチの切断操作および前記運搬車の旋回操作の少なくともいずれかが検出されるとき、前記目標回転数を前記第1の目標回転数から前記第2の目標回転数に向けてただちに低下させる一方、前記クラッチの切断操作および前記運搬車の旋回操作のいずれも検出されないとき、前記目標回転数を前記第2の目標回転数から前記第1の目標回転数に向けて徐々に上昇させるように構成した。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る運搬車においては、エンジンの出力を駆動輪に伝達するクラッチと、操作者によって前記クラッチの切断操作が実行されたことを検出するクラッチ切断操作検出手段と、前記操作者によって運搬車の旋回操作が実行されたことを検出する旋回操作検出手段と、前記エンジンの回転数を目標回転数に制御するエンジン回転数制御手段とを備えると共に、前記エンジン回転数制御手段は、前記クラッチの切断操作および前記運搬車の旋回操作のいずれも検出されないとき、前記目標回転数を第1の目標回転数に設定する一方、前記クラッチの切断操作および前記運搬車の旋回操作の少なくともいずれかが検出されるとき、前記目標回転数を前記第1の目標回転数よりも低い第2の目標回転数に設定するように構成した、換言すれば、運搬車の停止中と旋回走行中はエンジン回転数を低下させるように構成したので、運搬車の急発進や急旋回を防止して積み荷の破損や落下を防ぐことができる。また、エンジン回転数を常に高回転域に保っていた従来技術に比し、燃料消費量や騒音を低減することができる。
【0009】
また、請求項2に係る運搬車にあっては、エンジン回転数制御手段は、クラッチの切断操作および運搬車の旋回操作の少なくともいずれかが検出されるとき、目標回転数を第1の目標回転数から第2の目標回転数に向けてただちに低下させるように構成したので、上記した効果に加え、燃料消費量や騒音をより効果的に低減することができる。さらに、請求項2に係る運搬車にあっては、エンジン回転数制御手段は、クラッチの切断操作および運搬車の旋回操作のいずれも検出されないとき、目標回転数を第2の目標回転数から第1の目標回転数に向けて徐々に上昇させるように構成したので、上記した効果に加え、急な加速を防止して積み荷の破損や落下をより効果的に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面に即してこの発明に係る運搬車を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、この発明の第1実施例に係る運搬車の側面図である。また、図2は、図1に示す運搬車の平面図である。
【0012】
図1および図2において、符号10は運搬車を示す。運搬車10は、荷物(図示せず)を積載する荷台12を備える。荷台12は、運搬車10のフレーム14の上部前方に取り付けられる。また、フレーム14の最後部には、トランスミッション16が取り付けられる。トランスミッション16は、前進2段と後進1段の変速段を有する。また、トランスミッション16の上部には、エンジン18が搭載される。エンジン18はリコイルスタータ20を備え、操作者によって手動で始動される。
【0013】
エンジン18のクランクシャフト(図1および図2で図示せず)は、走行クラッチ(主クラッチ)22を介してトランスミッション16の入力軸(図示せず)に連結される。トランスミッション16の出力軸(図示せず)は、フレーム14に回転自在に支持されたドライブシャフト24を介して左右の駆動輪26L,26Rに連結される。また、ドライブシャフト24の途中には、左右のサイドクラッチ28L,28Rが設けられる。このように、エンジン18の出力は、走行クラッチ22、トランスミッション16、ドライブシャフト24およびサイドクラッチ28L,28Rを介して駆動輪26L,26Rに伝達される。
【0014】
また、フレーム14において駆動輪26L,26Rよりも前方には、左右の遊転輪32L,32Rが取り付けられる。さらに、フレーム14において駆動輪26L,26Rと遊転輪32L,32Rの間には、転輪34L,36L,34R,36Rが左右に2個ずつ取り付けられる。
【0015】
図1に示すように、右側の駆動輪26R、遊転輪32Rおよび転輪34R,36Rには、クローラベルト40Rが捲きかけられる。また、図示は省略するが、左側の駆動輪26L、遊転輪32Lおよび転輪34L,36Lにも同様にクローラベルトが捲きかけられる。即ち、エンジン18の出力によって駆動輪26L,26Rが回転させられることにより、左右のクローラベルトが回転して運搬車10が走行させられる。
【0016】
また、図1および図2に示すように、フレーム14の後部にはさらに操作ハンドル42が取り付けられる。操作ハンドル42は、運搬車10の後ろ斜め上方に延設されると共に、その上端には操作者によって把持されるべき左右のハンドルグリップ44L,44Rが形成される。
【0017】
操作ハンドル42には走行クラッチレバー46が配置される。走行クラッチレバー46は、図示しないケーブルなどを介して前記した走行クラッチ22に接続され、よって走行クラッチレバー46が操作者によって操作されることにより、走行クラッチ22が接続(結合)または切断される。また、操作ハンドル42において走行クラッチレバー46の付近には、クラッチ切断スイッチ48(図1に示す)が配置される。クラッチ切断スイッチ48は、走行クラッチレバー46が走行クラッチ22を切断する方向に操作されていることを検出してオン信号を出力する。即ち、クラッチ切断スイッチ48は、操作者によって走行クラッチ22の切断操作が実行されたことを検出する。
【0018】
操作ハンドル42には、さらに左右の旋回レバー50L,50Rが配置される。左側の旋回レバー50Lは、図示しないケーブルなどを介して左側のサイドクラッチ28Lに接続され、よって左側の旋回レバー50Lが操作者によって操作されることにより、左側のサイドクラッチ28Lが切断される。一方、右側の旋回レバー50Rは、図示しないケーブルなどを介して右側のサイドクラッチ28Rに接続され、よって右側の旋回レバー50Rが操作者によって操作されることにより、右側のサイドクラッチ28Rが切断される。
【0019】
左右のサイドクラッチ28L,28Rの一方が切断されると、左右の駆動輪26L,26Rに回転差が生じることから、運搬車10が旋回する。具体的には、左側の旋回レバー50Lを操作して左側のサイドクラッチ28Lを切断させることにより、運搬車10は左旋回する。また、右側の旋回レバー50Rを操作して右側のサイドクラッチ28Rを切断させることにより、運搬車10は右旋回する。
【0020】
旋回レバー50L,50Rの付近には、それぞれ旋回レバースイッチ52L,52Rが配置される。左側の旋回レバースイッチ52Lは、左側の旋回レバー50Lが操作されていることを検出してオン信号を出力する。一方、右側の旋回レバースイッチ52Rは、右側の旋回レバー50Rが操作されていることを検出してオン信号を出力する。即ち、左右の旋回レバースイッチ52L,52Rは、操作者によって運搬車10の旋回操作が実行されたことを検出する。
【0021】
また、トランスミッション16の付近には、走行レバー54が配置される。走行レバー54は、トランスミッション16を操作するシフトレバーに相当し、操作者に操作されることによってトランスミッション16を前進2段、後進1段のいずれかの変速段、あるいは中立位置に動作させる。
【0022】
図3は、エンジン18の説明断面図である。
【0023】
エンジン18は、1個の気筒(シリンダ)60を備え、その内部にピストン62が往復動自在に収容される。エンジン18の燃焼室64を臨む位置には吸気バルブ66と排気バルブ68が配置され、燃焼室64と吸気管70あるいは排気管72の間を開閉する。尚、エンジン18は、具体的には空冷4サイクルの単気筒OHV型の内燃機関であり、118ccの排気量を備える。
【0024】
ピストン62はクランクシャフト74に連結され、クランクシャフト74はギヤを介してカムシャフト76と連結される。また、クランクシャフト74の一端にはフライホイール78が取り付けられると共に、フライホイール78の先端側には前記したリコイルスタータ20が取り付けられる。尚、クランクシャフト74の他端には、図示は省略するが、前記した走行クラッチ22を介してトランスミッション16の入力軸が連結される。
【0025】
フライホイール78の内側には発電コイル(オルタネータ)80が配置され、交流電流を発電する。発電コイル80で発電された交流電流は、図示しない処理回路を介して直流電流に変換された後、ECU(後述)や点火回路(図示せず)などに動作電源として供給される。
【0026】
また、吸気路70の上流にはスロットルボディ82が配置される。スロットルボディ82にはスロットルバルブ84が収容され、スロットルバルブ84はスロットルシャフトと減速ギヤ機構(共に図示せず)を介して電動モータ86(アクチュエータ。具体的には、ステッピングモータ)に接続される。また、スロットルボディ82においてスロットルバルブ84の上流側には、キャブレタ・アシー(図示せず)が設けられる。キャブレタ・アシーは、燃料タンク(図示せず)に接続され、スロットルバルブ84の開度に応じて吸入された空気にガソリン燃料を噴射して混合気を生成する。生成された混合気は、スロットルバルブ84、吸気路70および吸気バルブ66を通って気筒60の燃焼室64に吸入される。
【0027】
電動モータ86の付近にはスロットル開度センサ90が配置され、スロットルバルブ84の開度θTH(以下「スロットル開度」という)に応じた信号を出力する。また、フライホイール78の付近には電磁ピックアップからなるクランク角センサ92が配置され、所定クランク角度ごとにパルス信号を出力する。
【0028】
図4は、運搬車10の動作を概略的に示すブロック図である。
【0029】
図4に示す如く、スロットル開度センサ90およびクランク角センサ92の出力は、ECU(電子制御ユニット)94に入力される。尚、ECU94は、CPU,ROM,RAMおよびカウンタを備えたマイクロコンピュータからなり、運搬車10の適宜位置に配置される。
【0030】
ECU94は、クランク角センサ92の出力パルスをカウントしてエンジン回転数NEを検出(算出)する。また、ECU94は、検出されたエンジン回転数NEおよびスロットル開度θTHに基づき、エンジン回転数NEが目標回転数NEDに一致するように電動モータ86の通電指令値を算出すると共に、算出した通電指令値を電動モータ86に出力してその駆動を制御する。
【0031】
このように、エンジン18は、電動モータ86、ECU94および各種センサなどからなる電子制御式のスロットル装置(電子ガバナ)によってスロットルバルブ84が開閉され、回転数NEが目標回転数NEDに制御される。
【0032】
さらに、ECU94には、クラッチ切断スイッチ48が出力した信号(具体的には、操作者によって走行クラッチ22の切断操作が実行されているときに出力されるオン信号)が入力されると共に、左右の旋回レバースイッチ52L,52Rが出力した信号(具体的には、操作者によって運搬車10の旋回操作が実行されているときに出力されるオン信号)が入力される。そして、ECU94は、入力された各信号に基づいて上記した目標回転数NEDの設定を行う。
【0033】
次いで、図5以降を参照してこの実施例に係る運搬車の動作、具体的には、目標回転数NEDの設定処理について説明する。図5は、その動作を示すフローチャートである。図示のプログラムは、ECU94において所定の周期(例えば20msec)ごとに実行される。
【0034】
以下説明すると、先ずS10において、左右の旋回レバースイッチ52L,52Rの少なくともいずれかがオン信号を出力しているか否か、即ち、操作者によって運搬車10の旋回操作が実行されているか否か判断する。S10で否定されるときはS12に進み、クラッチ切断スイッチ48がオン信号を出力しているか否か、即ち、操作者によって走行クラッチ22の切断操作が実行されているか(換言すれば、運搬車10が停止中か)否か判断する。
【0035】
S12で否定されるとき、即ち、運搬車10が走行しており、かつそれが直進である(S10で否定されている)ときは、次いでS14に進み、所定インターバルか否か判断する。所定インターバルとは、目標回転数NEDが変更されてからの時間間隔であり、この実施例では、100[msec]に設定される。S14で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、S14で肯定されるときはS16に進み、目標回転数NEDが第1の目標回転数NED1未満か否か判断する。ここで、第1の目標回転数NED1は、図示しない速度指示入力手段を介し、操作者によってアイドル回転数を上回る任意の値に設定される。第1の目標回転数NED1は、通常、エンジン18が高出力を発生する高回転域(例えば3500[rpm]程度)に設定される。
【0036】
S16で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、S16で肯定されるときはS18に進み、現在の目標回転数NEDに第1の所定値(回転数)αを加算して新たな目標回転数NEDとして設定する。第1の所定値αは、この実施例では100[rpm]に設定される。尚、S18で設定した新たな目標回転数NEDが第1の目標回転数NED1を上回るときは、目標回転数NEDを第1の目標回転数NED1に設定する。即ち、目標回転数NEDの上限値は、第1の目標回転数NED1とされる。
【0037】
このように、操作者によって運搬車10の旋回操作も走行クラッチ22の切断操作も実行されていないときは、目標回転数NEDが第1の目標回転数NED1に向けて100[msec]ごとに100[rpm]ずつ上昇させられる。
【0038】
一方、前記したS12で肯定されるとき、即ち、運搬車10が停止中であると判断されるときは、S20に進んで目標回転数NEDを第2の目標回転数NED2に設定する。ここで、第2の目標回転数NED2は、第1の目標回転数NED1よりも低い値、具体的には、アイドル回転数であり、この実施例にあっては2000rpmに設定される。このように、操作者によって走行クラッチ22の切断操作が実行されたときは、目標回転数NEDが第1の目標回転数NED1よりも低い第2の目標回転数NED2に向けてただちに(瞬時に)低下させられる。
【0039】
また、S10で肯定されるときはS22に進み、所定インターバルか否か、即ち、目標回転数NEDが変更されてから100[msec]経過したか否か判断する。S22で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、S22で肯定されるときはS24に進み、目標回転数NEDが第2の目標回転数NED2を上回っているか否か判断する。
【0040】
S24で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、S24で肯定されるときはS26に進み、現在の目標回転数NEDから第2の所定値(回転数)βを減算して新たな目標回転数NEDとして設定する。第2の所定値βは、第1の所定値αよりも大きい値、この実施例では、500[rpm]に設定される。尚、S26で設定した新たな目標回転数NEDが第2の目標回転数NED2を下回るときは、目標回転数NEDを第2の目標回転数NED2に設定する。即ち、目標回転数NEDの下限値は、第2の目標回転数NED2とされる。
【0041】
このように、操作者によって運搬車10の旋回操作が実行されているときは、目標回転数NEDが第2の目標回転数NED2に向けて100[msec]ごとに500[rpm]ずつ低下させられる。
【0042】
以上の処理について、図6および図7を参照して再度説明する。図6および図7は、クラッチ切断スイッチ48と左右の旋回レバースイッチ52L,52Rの出力に対する目標回転数NEDの変化を表すタイムチャートである。尚、図6および図7において、左右の旋回レバースイッチ52L,52Rの出力に関しては、それらの両方がオフ信号を出力しているときを「オフ」で表し、少なくともいずれか一方がオン信号を出力しているときを「オン」で表す。
【0043】
図6に示すように、クラッチ切断スイッチ48と旋回レバースイッチ52L,52Rの全てがオフ信号を出力しているとき、換言すれば、運搬車10が直進走行中であるとき(図5フローチャートのS12で否定されるとき)は、図示の如く、目標回転数NEDが第1の目標回転数NED1に向けて100[msec]ごとに100[rpm]ずつ徐々に上昇させられ、最終的には第1の目標回転数NED1に設定される。
【0044】
一方、クラッチ切断スイッチ48がオン信号を出力しているとき、換言すれば、運搬車10が停止中であるとき(図5フローチャートのS12で肯定されるとき)は、目標回転数NEDが第2の目標回転数NED2に向けてただちに(瞬時に)低下させられ、第2の目標回転数NED2に設定される。
【0045】
また、図7に示すように、旋回レバースイッチがオン信号を出力しているとき、換言すれば、運搬車10が旋回走行中であるとき(図5フローチャートのS10で肯定されるとき)は、目標回転数NEDが第2の目標回転数NED2に向けて100[msec]ごとに500[rpm]ずつ(即ち、目標回転数NEDを上昇させるときよりも早い変化速度で)ただちに低下させられ、第2の目標回転数NED2に設定される。ここで、運搬車10の旋回走行中は目標回転数NEDを段階的に(運搬車10の停止時よりも穏やかに)低下させるようにしたのは、目標回転数NEDを第1の目標回転数NED1から第2の目標回転数NED2まで一度に低下させると、運搬車10が急減速して操作者に違和感を与えるためである。
【0046】
尚、運搬車10の旋回走行が終了して直進走行に移行すれば、図7に示す如く、目標回転数NEDは第2の目標回転数NED2から第1の目標回転数NED1に向けて徐々に上昇させられる。
【0047】
このように、この発明の第1実施例に係る運搬車10にあっては、操作者によって走行クラッチ22の切断操作が実行されたことを検出するクラッチ切断スイッチ48と、操作者によって運搬車10の旋回操作が実行されたことを検出する旋回レバースイッチ52L,52Rとを備えると共に、走行クラッチ22の切断操作および運搬車10の旋回操作のいずれも検出されないとき、目標回転数NEDを第1の目標回転数NED1に設定する一方、走行クラッチ22の切断操作および運搬車10の旋回操作の少なくともいずれかが検出されるとき、目標回転数NEDを第1の目標回転数NED1よりも低い第2の目標回転数NED2に設定するようにした、換言すれば、運搬車10の停止中と旋回走行中はエンジン回転数NEを低下させるようにしたので、運搬車10の急発進や急旋回を防止して積み荷の破損や落下を防ぐことができる。また、エンジン回転数NEを常に高回転域に保っていた従来技術に比し、燃料消費量や騒音を低減することができる。
【0048】
また、走行クラッチ22の切断操作および運搬車10の旋回操作の少なくともいずれかが検出されるとき、目標回転数NEDを第1の目標回転数NED1から第2の目標回転数NED2に向けてただちに低下させるようにしたので、燃料消費量や騒音をより効果的に低減することができる。さらに、走行クラッチ22の切断操作および運搬車10の旋回操作のいずれも検出されないとき、目標回転数NEDを第2の目標回転数NED2から第1の目標回転数NED1に向けて徐々に上昇させるようにしたので、急な加速を防止して積み荷の破損や落下をより効果的に防ぐことができる。
【0049】
以上の如く、この発明の第1実施例にあっては、荷物を積載する荷台(12)を備えると共に、エンジン(18)で駆動輪(26L,26R)を駆動して走行する運搬車(10)において、前記エンジン(18)の出力を前記駆動輪(26L,26R)に伝達するクラッチ(走行クラッチ22)と、操作者によって前記クラッチ(22)の切断操作が実行されたことを検出するクラッチ切断操作検出手段(クラッチ切断スイッチ48)と、前記操作者によって前記運搬車(10)の旋回操作が実行されたことを検出する旋回操作検出手段(旋回レバー52L,52R)と、前記エンジン(18)の回転数(NE)を目標回転数(NED)に制御するエンジン回転数制御手段(ECU94)とを備えると共に、前記エンジン回転数制御手段(94)は、前記クラッチ(22)の切断操作および前記運搬車(10)の旋回操作のいずれも検出されないとき、前記目標回転数(NED)を第1の目標回転数(NED1)に設定する(図5フローチャートのS18)一方、前記クラッチ(22)の切断操作および前記運搬車(10)の旋回操作の少なくともいずれかが検出されるとき、前記目標回転数(NED)を前記第1の目標回転数(NED1)よりも低い第2の目標回転数(NED2)に設定する(図5フローチャートのS20,S26)ように構成した。
【0050】
また、前記エンジン回転数制御手段(94)は、前記クラッチ(22)の切断操作および前記運搬車(10)の旋回操作の少なくともいずれかが検出されるとき、前記目標回転数(NED)を前記第1の目標回転数(NED1)から前記第2の目標回転数(NED2)に向けてただちに低下させる一方、前記クラッチ(22)の切断操作および前記運搬車(10)の旋回操作のいずれも検出されないとき、前記目標回転数(NED)を前記第2の目標回転数(NED2)から前記第1の目標回転数(NED1)に向けて徐々に上昇させるように構成した。
【0051】
尚、上記において、第1の目標回転数NED1、第2の目標回転数NED2、所定インターバル、第1の所定値αおよび第2の所定値βの値を具体的に示したが、それらはその値に限定されないのは言うまでもない。
【0052】
また、スロットルバルブ70を開閉するアクチュエータとしてステッピングモータを使用したが、DCモータやロータリーソレノイドなど、他のアクチュエータを使用するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の第1実施例に係る運搬車の側面図である。
【図2】図1に示す運搬車の平面図である。
【図3】図1に示すエンジンの説明断面図である。
【図4】図1に示す運搬車の動作を概略的に表すブロック図である。
【図5】図1に示す運搬車の動作を表すフローチャートである。
【図6】図1に示すクラッチ切断スイッチと旋回レバースイッチの出力に対する目標回転数の変化を表すタイムチャートである。
【図7】同様に、図1に示すクラッチ切断スイッチと旋回レバースイッチの出力に対する目標回転数の変化を表すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0054】
10 運搬車
18 エンジン
22 走行クラッチ(クラッチ)
48 クラッチ切断スイッチ(クラッチ切断操作検出手段)
52R,52L 旋回レバースイッチ(旋回操作検出手段)
94 ECU(エンジン回転数制御手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を積載する荷台を備えると共に、エンジンで駆動輪を駆動して走行する運搬車において、前記エンジンの出力を前記駆動輪に伝達するクラッチと、操作者によって前記クラッチの切断操作が実行されたことを検出するクラッチ切断操作検出手段と、前記操作者によって前記運搬車の旋回操作が実行されたことを検出する旋回操作検出手段と、前記エンジンの回転数を目標回転数に制御するエンジン回転数制御手段とを備えると共に、前記エンジン回転数制御手段は、前記クラッチの切断操作および前記運搬車の旋回操作のいずれも検出されないとき、前記目標回転数を第1の目標回転数に設定する一方、前記クラッチの切断操作および前記運搬車の旋回操作の少なくともいずれかが検出されるとき、前記目標回転数を前記第1の目標回転数よりも低い第2の目標回転数に設定することを特徴とする運搬車。
【請求項2】
前記エンジン回転数制御手段は、前記クラッチの切断操作および前記運搬車の旋回操作の少なくともいずれかが検出されるとき、前記目標回転数を前記第1の目標回転数から前記第2の目標回転数に向けてただちに低下させる一方、前記クラッチの切断操作および前記運搬車の旋回操作のいずれも検出されないとき、前記目標回転数を前記第2の目標回転数から前記第1の目標回転数に向けて徐々に上昇させるように構成したことを特徴とする請求項1記載の運搬車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−97586(P2006−97586A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285070(P2004−285070)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】