配線構造、配線形成方法及び配線形成装置
【課題】銅または銅合金からなる低抵抗の銅配線の表面に、置換めっきによる触媒付与を行うことなく、無電解めっきによる配線保護膜を選択的に形成する。
【解決手段】基板Wに形成した銅または銅合金配線9の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜12で選択的に覆われており、触媒含有膜12の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜10で選択的に覆われている。
【解決手段】基板Wに形成した銅または銅合金配線9の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜12で選択的に覆われており、触媒含有膜12の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜10で選択的に覆われている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線構造、配線形成方法及び配線形成装置、並びに半導体装置に関し、特に半導体ウェーハ等の基板の表面に設けた微細な配線用凹部に銅または銅合金を埋込んで形成した配線(銅配線)の露出表面を配線保護膜で選択的に覆った配線構造、該配線構造を有する配線を形成するのに使用される配線形成方法及び配線形成装置、並びに該配線を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の配線形成プロセスとして、トレンチ及びコンタクトホールに金属(導電体)を埋込むようにしたプロセス(いわゆる、ダマシンプロセス)が使用されている。これは、層間絶縁膜に予め形成したトレンチやコンタクトホールに、アルミニウム、近年では銅、銅合金または銀等の金属を埋め込んだ後、余分な金属を化学機械的研磨(CMP)によって除去し平坦化するプロセス技術である。
【0003】
この種の配線、例えば配線材料として銅または銅合金を使用した配線(銅配線)にあっては、平坦化後、銅または銅合金からなる配線の表面が外部に露出している。したがって、例えばその後の酸化性雰囲気で絶縁膜(酸化膜など)を積層して多層配線構造の半導体装置を作る場合等に、配線(銅または銅合金)の酸化を防止するため、Co合金やNi合金等からなる配線保護膜(蓋材)で配線の露出表面を選択的に覆って、配線の酸化を防止することが検討されている。
【0004】
また、配線の側壁と底面は、バリアメタルと呼ばれる薄い層の存在により、絶縁膜(層間絶縁膜)との密着性が良いが、配線の上面にはバリアメタルが存在しないため、配線上面とこの上に積層される上層の絶縁膜との密着性が他の界面と比べて小さい。このように、配線上面と上層の絶縁膜との密着性があまりよくないと、エレクトロマイグレーションと呼ばれる欠陥が生じる。配線上面と絶縁膜との密着性を向上させるためにも、配線の露出表面(表面)を覆うCo合金やNi合金等からなる配線保護膜(蓋材)は有効である。このCo合金やNi合金等からなる配線保護膜は、例えば無電解めっきによって得られる。
【0005】
また、バリアメタルは、配線(銅または銅合金)の熱拡散を抑制する機能も併せ持っている。したがって、配線の側壁と底面では配線の熱拡散が抑制されるが、配線上面にはバリアメタルが存在しないため、配線が上層の絶縁膜に熱拡散してしまう。このような熱拡散を抑制するためにも、配線の露出表面(表面)を覆うCo合金やNi合金等からなる配線保護膜(蓋材)は有効である。このCo合金やNi合金等からなる配線保護膜は、例えば無電解めっきによって得られる。なお、本発明では、無電解めっきにより配線保護膜を形成することを、無電解蓋めっきと呼ぶ。
【0006】
図1は、半導体基板の表面に銅めっきを施して、銅または銅合金からなる埋込み配線(銅配線)を有する半導体装置を得るのに使用される配線形成方法の基本工程を工程順に示す。即ち、図1(a)に示すように、半導体素子を形成した半導体基材1上の導電層1aの上にSiO2やlow−K材等からなる絶縁膜2を堆積し、この絶縁膜2の内部にリソグラフィ・エッチング技術によりコンタクトホール3とトレンチ4とからなる微細な配線用凹部5を形成し、その上にTaN等からなる拡散抑制用のバリアメタル6を形成する。そして、半導体基板Wに形成したバリアメタル6の表面に、例えばスパッタリングやCVDで給電層となる銅等からなるシード層7を形成する。
【0007】
次に、図1(b)に示すように、半導体基板Wの表面(基板表面11)に銅めっきを施すことによって、半導体基板Wの配線用凹部5内に銅または銅合金めっき膜(銅めっき膜)8を充填するとともに、バリアメタル6上に銅めっき膜8を堆積する。その後、化学機械的研磨(CMP)により、絶縁膜2上の銅めっき膜8、シード層7及びバリアメタル6を除去して、配線用凹部5の内部に充填した銅めっき膜8の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1(c)に示すように、絶縁膜2に内部に、銅めっき膜8とシード層7からなる銅または銅合金配線(銅配線)9を形成する。
【0008】
そして、必要に応じて、図1(d)に示すように、この銅配線9の表面(露出表面)に、例えば無電解蓋めっきによって得られる、CoWP、CoP、NiWP、NiP、CoMo、CoMoP、CoWPB、CoPB、NiWPB、NiPB、CoWB、CoB、NiWB、NiB合金からなる配線保護膜(蓋材)10を選択的に形成して銅配線9を保護するようにしている。
【0009】
一般的な無電解蓋めっきによって、このようなCoWP合金からなる配線保護膜(蓋材)10を銅配線9の表面に選択的に形成する工程(無電解蓋めっき工程)を説明する。先ず、CMP処理を施した半導体ウェーハ等の基板Wを、例えば液温が25℃で、希釈したH2SO4等の酸溶液中に、例えば1分程度浸漬させて、絶縁膜2の表面に残った銅等のCMP残さ、銅配線9の表面の防食剤や酸化膜等を除去する。そして、基板Wの表面を超純水等の洗浄液で洗浄(リンス)した後、例えば、液温が25℃で、0.05g/LのPdCl2と0.2ml/LのHCl等の混合溶液中に基板Wを、例えば1分間浸漬させ、これにより、銅配線9の表面に触媒としてのPdを付着させて銅配線9の表面(露出表面)を活性化させる。
【0010】
次に、基板Wの表面を超純水で水洗い(リンス)した後、例えば液温が80℃のCoWPめっき液中に基板Wを、例えば120秒程度浸漬させて、活性化させた銅配線9の表面に選択的な無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施し、しかる後、基板Wの表面を超純水等の洗浄液で洗浄(リンス)する。これによって、銅配線9の表面に、CoWP合金からなる配線保護膜10を選択的に形成して銅配線9を保護する。
【0011】
上述のように、無電解めっき(無電解蓋めっき)によってCoWP合金からなる配線保護膜(蓋材)を形成する際には、金属配線の表面(露出表面)に、例えばPd等の触媒を付与している。この触媒付与は、例えば、下記の化学式で示す置換めっきによって行われる。このため、原理的に下地の銅配線が浸食(エッチング)され、これによって、銅配線の内部にボイドが発生して配線特性が劣化したり、また無電解めっきで形成されるめっき膜、即ち配線保護膜の異方成長によって、半導体デバイスの動作に不具合が生じ、歩留りの低下に繋がったりしてしまう。
Cu+PdSO4→CuSO4+Pd
しかも、Pdは、銅に対する拡散元素であるので、銅配線の低抵抗を阻害してしまうばかりでなく、一般に高価であるので、経済性にも問題がある。
【0012】
このような問題を解決するため、Au、Ni、CoまたはPtを銅配線表面に置換めっきして触媒とする方法(特許文献1参照)、Agを銅配線表面に付与して触媒とする方法(特許文献2参照)、金属酸化物超微粒子(TiO2)を銅配線表面に付与して光触媒とする方法(特許文献3参照)、及び銅配線全体に触媒金属を散在させる方法(特許文献4,5参照)等が提案されている。
【0013】
【特許文献1】特開2001−230220号公報
【特許文献2】特開2003−264159号公報
【特許文献3】特開2004−190109号公報
【特許文献4】特開2002−93747号公報
【特許文献5】特開2004−31586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、Pdを使用することなく、銅表面を活性化しているものの、依然置換めっきによる触媒付与を行っており、また特許文献2に記載の発明にあっても、置換めっきによる触媒付与を行っているので、銅配線の侵食による配線特性の劣化を引き起こす可能性がある。
【0015】
特許文献3に記載の発明は、置換めっきを行わないので、銅配線の侵食による配線特性の劣化がない。しかし、置換めっきと異なり、銅配線表面を選択的に活性化するための工夫が必要である。すなわち、特許文献3に開示されているように、(1)絶縁膜表面を疎水処理する、(2)絶縁膜をレジスト膜で覆う、(3)マスクを介して銅配線表面にのみ選択的に光を当る、などの工夫を要する。これらには、工程の増加や装置の複雑化を伴うため、コストアップの要因となる。
【0016】
特許文献4及び5に記載の発明は、触媒金属を微量添加しためっき液で銅配線めっきを行い、銅配線全体に触媒金属を散在させているので、置換めっきによって生じる銅配線の侵食による配線特性の劣化がない。しかし、触媒金属が銅配線全体に散在することにより、配線抵抗が上昇してしまうと考えられる。
【0017】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、銅または銅合金からなる低抵抗の銅配線(銅または銅合金配線)の表面に、置換めっきによる触媒付与を行うことなく、無電解めっきによる配線保護膜を選択的に形成した配線構造、該配線構造を有する配線を形成する配線形成方法及び配線形成装置、並びに該配線を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に記載の発明は、基板に形成した銅または銅合金配線の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜で選択的に覆われており、前記触媒含有膜の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜で選択的に覆われたことを特徴とする配線構造である。
【0019】
本発明の配線構造は、無電解蓋めっきの際の触媒を置換めっきにより付与した部位を含まないので、置換めっきを行うことによって生じる銅または銅合金配線(銅配線)の侵食による配線特性の劣化がない。しかも、銅配線は触媒金属を含まないか、若しくは必要以上に含まないので、触媒付与による配線抵抗の上昇を抑制することができる。更には、触媒含有膜の基板表面側の界面の全てが配線保護膜で選択的に覆われて保護されている。
【0020】
請求項2に記載の発明は、基板に形成した銅または銅合金配線の基板表面側の界面の少なくとも一部の領域が、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜で覆われており、前記銅または銅合金配線の基板表面側の界面と前記触媒含有膜の基板表面側の界面とが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜で選択的に覆われたことを特徴とする配線構造である。
【0021】
本発明の配線構造は、無電解蓋めっきの際の触媒を置換めっきにより付与した部位を含まないので、置換めっきを行うことによって生じる銅または銅合金配線(銅配線)の侵食による配線特性の劣化がない。しかも、銅配線は触媒金属を含まないか、若しくは必要以上に含まないので、触媒付与による配線抵抗の上昇を抑制することができる。更には、銅または銅合金配線の基板表面側の界面と触媒含有膜の基板表面側の界面とが配線保護膜で選択的に覆われて保護されている。特に、触媒含有膜が銅配線断面に占める割合を小さくすることで、配線抵抗の上昇を更に抑制することができる。
【0022】
請求項3に記載の発明は、前記触媒は、金、パラジウム、白金、コバルト、ニッケル、銀、鉄、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、モリブデン、及び酸化チタンのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または2記載の配線構造である。
このように、触媒として、次亜リン酸に対して触媒活性がある物質を使用することで、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで、触媒含有層の表面に配線保護膜を選択的に形成することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、表面に銅または銅合金配線を形成した基板を用意し、前記銅または銅合金配線の表面の少なくとも一部の領域に、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を無電解めっきで形成し、前記触媒含有膜の表面に、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで配線保護膜を選択的に形成することを特徴とする配線形成方法である。
【0024】
通常、無電解めっきで配線保護膜を形成する際には、無電解めっきに先立って、Pd等の触媒を置換めっきによって付与する触媒付与工程が行われ、この置換めっきによる触媒付与によって、前述のように、配線特性の劣化などの不具合が引き起こされる。本発明の配線形成方法では、置換めっきによる触媒付与を行っていないので、配線特性の劣化を抑制しつつ、低抵抗の銅または銅合金配線の露出表面(表面)の少なくとも一部の領域に触媒含有膜を無電解めっきで形成することができる。したがって、その触媒含有膜の露出表面(表面)に配線保護膜を無電解蓋めっきで選択的に形成することができる。なお、上記配線保護膜は、触媒含有膜の表面のみに形成されるとは限らない。触媒含有膜を形成した後に銅または銅合金配線に露出表面(表面)が残っていれば、当該露出表面にも配線保護膜が形成される。
【0025】
請求項5に記載の発明は、表面に配線用凹部を形成した基板を用意し、前記基板の表面に第1のめっきを行って、前記配線用凹部の内部の一部に銅または銅合金を埋込みながら銅または銅合金めっき膜を形成し、前記銅または銅合金めっき膜の表面に第2のめっきを行って、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を形成し、基板の表面を平坦に研磨して、前記配線用凹部内に埋込まれた銅または銅合金めっき膜であって、少なくとも基板表面側の界面の一部を前記触媒含有膜で覆われた銅または銅合金配線を形成し、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきを行って、前記触媒含有膜の表面および前記銅または銅合金配線の表面に配線保護膜を選択的に形成することを特徴とする配線形成方法である。
【0026】
本方法によっても置換めっきによる触媒付与を行っていないので、配線抵抗の上昇を抑制しつつ配線保護膜が形成された銅または銅合金配線を形成することができる。またこれにより、例えば、基板の表面に銅または銅合金めっき膜(銅めっき膜)を形成し、基板の表面を洗浄した後、基板の表面を乾燥させることなく、銅めっき膜の表面に触媒含有膜を形成することで、銅めっき膜の表面が有機物等により汚染されたり、酸化したりすることを極力防止することができる。
【0027】
請求項6に記載の発明は、前記触媒は、金、パラジウム、白金、コバルト、ニッケル、銀、鉄、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、モリブデン、及び酸化チタンのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項4または5記載の配線形成方法である。
【0028】
請求項7に記載の発明は、前記第1のめっき及び前記第2のめっきは、共に同一の組成のめっき液を用いた電気めっきであり、前記第1のめっきでは前記銅または銅合金が優先的に析出するように、前記第2のめっきでは前記銅または銅合金及び触媒が共に析出するように、浴電圧、浴電流または浴電流密度を制御することを特徴とする請求項5記載の配線形成方法である。
【0029】
銅の平衡電位よりも低い(卑な)平衡電位を持つ触媒と銅をめっき液中に含有させることにより、同一の組成のめっき液を使用し、第1のめっきでは銅または銅合金が優先的に析出するように、第2のめっきでは銅または銅合金及び触媒が共に析出するようにすることができる。
ここで、“同一の組成のめっき液”は、組成が実質的に同一であるめっき液を意味し、組成が完全に同一である場合に限ることなく、同等な作用・効果が得られることを当業者であれば常識として理解できる程度の相違、例えば、めっきによって組成が変化する程度の相違や、消耗成分の補給によって組成が変化する程度の相違は含まれる。
【0030】
請求項8に記載の発明は、前記触媒は、コバルト、ニッケル、モリブデン、及び鉄のうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項7記載の配線形成方法である。
銅の平衡電位よりも低い(卑な)平衡電位を持つ触媒金属としては、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)及び鉄(Fe)が挙げられる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、基板に形成した銅または銅合金配線の表面の少なくとも一部の領域に、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を形成する第1無電解めっき装置と、
前記触媒含有膜の表面に、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで配線保護膜を選択的に形成する第2無電解めっき装置を有することを特徴とする配線形成装置である。
【0032】
触媒含有膜を形成する無電解めっきと配線保護膜を形成する無電解蓋めっきは、それぞれ異なる組成のめっき液を使用して行う。したがって、同一の無電解めっき装置で両方の無電解めっきを行うと、それぞれの無電解めっきの間にめっき装置のめっき槽を洗浄したとしても、微量ではあるがめっき槽に残留物が残ってしまう。このめっき槽の残留物は、触媒含有膜と配線保護膜を互いに汚染する。このため、触媒含有膜を形成する無電解めっきと配線保護膜を形成する無電解蓋めっきをそれぞれ異なる無電解めっき装置を使用して個別に行うことが好ましい。
【0033】
請求項10に記載の発明は、表面に形成した配線用凹部の内部の一部に銅または銅合金を埋込みながら銅または銅合金めっき膜を形成する第1めっき装置と、前記銅または銅合金めっき膜の表面に、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を形成する第2めっき装置を有することを特徴とする配線形成装置である。
【0034】
銅または銅合金めっき膜(銅めっき膜)を形成する第1のめっきと触媒含有膜を形成する第2のめっきを、同一のめっき装置で、異なる組成のめっき液を使用して行うと、第1のめっきと第2のめっきとの間でめっき装置のめっき槽を洗浄したとしても、微量ではあるがめっき槽に残留物が残ってしまう。このめっき槽の残留物は、銅または銅合金めっき膜(銅めっき膜)と触媒含有膜を互いに汚染する。このため、このような場合には、銅めっき膜を形成する第1のめっきと触媒含有膜を形成する第2のめっきをそれぞれ異なるめっき装置を使用して個別に行うことが好ましい。
【0035】
請求項11に記載の発明は、前記第1めっき装置及び前記第2めっき装置は、同一の組成のめっき液を用いる一つの電気めっき装置として構成されており、この電気めっき装置は、銅または銅合金が優先的に析出する第1のめっきと、銅または銅合金及び触媒が共に析出する第2のめっきを行うよう、浴電圧、浴電流または浴電流密度を制御する制御部を有することを特徴とする請求項10記載の配線形成装置である。
【0036】
同一の組成のめっき液で一つの電気めっき装置を用いて、制御部により浴電圧、浴電流または浴電流密度を制御することで、銅または銅合金めっき膜を形成する第1のめっきと触媒含有膜を形成する第2のめっきを連続して行うことができる。したがって、銅または銅合金めっき膜及び触媒含有膜の汚染の問題がなく、しかも、スループット(単位時間内の基板の処理量)を向上させることができる。また、第1めっき装置及び第2めっき装置が一つの電気めっき装置で構成されるため、装置を小型化することができる。
【0037】
請求項12に記載の発明は、銅または銅合金配線の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜で選択的に覆われており、前記触媒含有膜の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜で選択的に覆われた配線を有することを特徴とする半導体装置である。
【0038】
請求項13に記載の発明は、銅または銅合金配線の基板表面側の界面の少なくとも一部の領域が、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜で覆われており、前記銅または銅合金配線の基板表面側の界面と前記触媒含有膜の基板表面側の界面とが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜で選択的に覆われた配線を有することを特徴とする半導体装置である。
【0039】
請求項14に記載の発明は、前記触媒は、金、パラジウム、白金、コバルト、ニッケル、銀、鉄、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、モリブデン、及び酸化チタンのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項12または13記載の半導体装置である。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、銅または銅合金からなる低抵抗の銅配線の表面に、置換めっきによる触媒付与を行うことなく、無電解蓋めっきによる配線保護膜を選択的に形成した配線構造、該配線構造を有する配線を形成する配線形成方法及び配線形成装置、並びに該配線を有する半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の各例において、図1に示す部材と同一または相当する部材には、同一符号を付して重複した説明を省略する。
図2は、図1(c)及び図3(a)に示すような、絶縁膜2の内部に、表面を平坦化した銅または銅合金配線(銅配線)9を形成した半導体ウェーハ等の基板Wを用意し、この銅配線9の露出表面に触媒含有膜12を無電解めっきで形成し、更に配線保護膜10を無電解めっき(無電解蓋めっき)によって選択的に形成して銅配線9を保護するようにした、本発明の実施の形態の配線形成装置の平面配置図を示す。
【0042】
図2に示すように、この配線形成装置は、複数の基板を収納する2基のロード・アンロード部20、銅または銅合金配線(銅配線)の露出表面に次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を選択的に形成する第1無電解めっき装置22、触媒含有膜の表面に次亜リン酸を還元剤とした無電解めっき(無電解蓋めっき)で配線保護膜を選択的に形成する2基の第2無電解めっき装置(無電解蓋めっき装置)24、第1無電解めっき装置22による無電解めっきに先立って基板の前洗浄処理を行う前処理装置26、及び基板の洗浄及び乾燥を行う2基の洗浄・乾燥装置28を有している。更に、配線形成装置には、上記ロード・アンロード部20及び上記各装置22,24,26,28との間で基板の受渡し行う走行自在な搬送ロボット30が配置され、更に、これらを制御する制御部32が備えられている。なお、第1無電解めっき装置22は、触媒含有膜を形成した後に洗浄を行う洗浄機構を有する無電解めっき装置である。また、第2無電解めっき装置24も、無電解めっきの終了直後に洗浄を行うために、洗浄機構を有するようにしても良い。
【0043】
次に、図2に示す配線形成装置による一連の処理について、図3及び図4を更に参照して説明する。先ず、図3(a)に示すような、絶縁膜2の内部に、銅または銅合金からなり、表面を平坦化した銅配線9を形成した基板Wを用意して、ロード・アンロード部20に収納しておく。このような銅配線9を有する基板Wは、例えば図4に示す(a)銅めっき膜の埋込み工程から(e)洗浄・乾燥工程を経て製造される。つまり、先ず、(a)銅めっき膜の埋込み工程を行って、絶縁膜2に形成したコンタクトホール3とトレンチ4とからなる微細な配線用凹部5内に銅めっき膜を埋込み、(b)洗浄・乾燥工程を行って、基板Wを洗浄し乾燥させる。そして、(c)アニール工程を行って、銅めっき膜をアニールし、(d)CMP工程を行って、絶縁膜2上の余分な金属膜を除去し基板Wの表面を平坦化する。しかる後、(e)洗浄・乾燥工程を行って、基板を洗浄し乾燥させる。
【0044】
この(b)洗浄・乾燥工程には、通常の銅配線めっき工程後の洗浄・乾燥工程で使用される洗浄装置及び乾燥装置が使用される。洗浄装置と乾燥装置が同一の装置であっても良い。また、(c)アニール工程には、通常の銅配線めっき膜のアニールに使用されるアニール装置が使用される。(d)CMP工程には、通常の銅配線用のCMPに使用されるCMP装置が使用される。また、(e)洗浄・乾燥工程には、CMP工程の後洗浄及び乾燥に使用される洗浄・乾燥装置が使用される。なお、(e)洗浄・乾燥工程においては、裏面洗浄やベベルエッチングなどを含んでも良い。裏面洗浄には、通常使用される裏面洗浄装置が使用される。また、ベベルエッチングには、通常使用されるベベルエッチング装置が使用される。
【0045】
そして、1枚の基板を、ロード・アンロード部20から搬送ロボット30で取出して前処理装置26に搬送する。前処理装置26では、基板表面11を硫酸などの酸水溶液で洗浄し、更に水洗する、基板の前処理を行う。酸水溶液による基板表面11の洗浄は、例えば5wt%硫酸水溶液に基板を所定時間浸漬させることによって行う。酸水溶液によって基板表面11を洗浄することによって、CMP処理後の銅配線の表面に形成された酸化膜などを除去して、後のめっき処理を良好に行うことができる。酸水溶液による洗浄の後に、前処理装置26で、基板表面11を純水で洗浄(水洗)する。なお、この後に、無電解銅めっきの際の還元剤(グリオキシル酸、ホルムアルデヒド、ジメチルアミンボランなど)を含む水溶液に基板表面11を接液させるようにしても良い。これにより、後のめっき処理を更に良好に行うことができる。
【0046】
次に、前処理装置26から基板を搬送ロボット30で取出して、基板表面11が乾かないうちに第1無電解めっき装置22に搬送する。第1無電解めっき装置22では、図4の(f)第1無電解めっき工程を、基板の表面に所定時間行って、図3(b)に示すように、銅配線9の表面に、触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜12を選択的に形成する。
【0047】
ここで、触媒含有銅合金からなる触媒含有膜12に含まれる触媒は、下記のように、配線保護膜10が次亜リン酸を還元剤とした無電解めっきで形成されるため、次亜リン酸に対して触媒活性がある物質である。したがって、触媒含有膜12に含有される触媒には、金(Au)、白金(Pt)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、モリブデン(Mo)及び酸化チタン(TiO2)などが挙げられる。
【0048】
これらの触媒のうち、配線抵抗の上昇が小さいものが好ましい。そのような触媒の条件として、(1)銅と固溶体や金属間化合物を作りにくいこと、(2)抵抗率が小さいこと、(3)銅の中を拡散しにくいことが挙げられる。
【0049】
銅と固溶体や金属間化合物を作りにくい触媒としては、銀(Ag)、コバルト(Co)、鉄(Fe)及びイリジウム(Ir)が挙げられる。また、銅の中を拡散しにくい触媒としては、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、コバルト(Co)、オスミウム(Os)及び酸化チタン(TiO2)が挙げられる。このため、触媒含有膜12に含有される触媒は、パラジウム、白金、コバルト、ニッケル、銀、鉄、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、酸化チタンのうちの少なくとも一つであることが好ましい。
【0050】
ここで、銅と固溶体や金属間化合物を作りにくい銀、コバルト、鉄、及びイリジウムと、銅の抵抗率を比較してみると、銀<銅<イリジウム<コバルト<鉄という関係がある。抵抗率が小さい触媒の方が、触媒含有による配線抵抗の上昇が小さい。また、銅の中を拡散しにくいイリジウム、ルテニウム、白金、ロジウム、ニッケル、パラジウム、およびコバルトの拡散係数を比較してみると、コバルト>パラジウム>ニッケル>ロジウム>白金>ルテニウム>イリジウムという関係である。拡散係数が小さい触媒の方が、触媒の拡散による配線抵抗の上昇が小さい。なお、オスミウムは融点が高く、重く、大きな元素であるので、結晶中や結晶粒界を移動しづらく、したがって、拡散係数が小さいと考えられる。また、酸化チタンは、分子が他の触媒よりも大きいので、銅の中を拡散しにくいことは明白である。
【0051】
この第1無電解めっき工程で使用されるめっき液(触媒含有銅合金めっき液)としては、グリオキシル酸を還元剤としたグリオキシル酸浴や、ジメチルアミンボラン(DMAB)を還元剤としたDMAB浴、ホルムアルデヒドを還元剤としたホルムアルデヒド浴が挙げられる。銀を触媒としたグリオキシル酸浴の組成の一例を表1に、他の一般的なグリオキシル酸浴の組成の一例を表2に、DMAB浴の組成の一例を表3に、ホルムアルデヒド浴の組成の一例を表4にそれぞれ示す。ここで、表中のEDTAは、エチレンジアミン四酢酸のことである。EDTAの代わりに、EDTAのナトリウム塩やアンモニウム塩などを用いても良い。なお、これらの組成は一例であり、めっきレートや触媒の種類、触媒の析出割合により各成分の濃度を適宜調整してもよいことは勿論である。このことは、以下同様である。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
グリオキシル酸浴及びDMAB浴においては、触媒を析出させるために金属硫酸塩を溶解させている。ここで、金属硫酸塩としては、硫酸銀、亜硫酸金ナトリウム、亜硫酸金アンモニウム、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸ニッケルアンモニウム、硫酸鉄、硫酸パラジウム、硫酸ロジウム、亜硫酸ルテニウム、及び硫酸イリジウムなどが挙げられる。また、白金、オスミウムは、硫酸塩の代わりに塩化白金酸、六塩化オスミウム二アンモニウムなどを用いる。モリブデンは、金属硫酸塩の代わりにモリブデン酸ナトリウム、パラモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、三酸化モリブデン等の含モリブデン化合物を用いる。また、酸化チタンは金属硫酸塩の代わりに酸化チタン超微粒子を用い、必要に応じて分散材を添加してもよい。
【0057】
ホルムアルデヒド浴においては、触媒を析出させるために金属硝酸塩を溶解させている。ここで、金属硝酸塩としては、硝酸銀、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸鉄、硝酸パラジウム、硝酸ロジウム、硝酸ルテニウム、及び硝酸イリジウムなどが挙げられる。また、白金、オスミウムは、硫酸塩の代わりに塩化白金酸、六塩化オスミウム二アンモニウムなどを用いる。モリブデンは、金属硝酸塩の代わりにモリブデン酸ナトリウム、パラモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、三酸化モリブデン等の含モリブデン化合物を用いる。また、酸化チタンは金属硫酸塩の代わりに酸化チタン超微粒子を用い、必要に応じて分散材を添加してもよい。
【0058】
ここで、触媒含有膜12に触媒機能を持たせるためには、ある程度の触媒の濃度が必要である。したがって、触媒含有膜12の触媒含有量は、触媒含有膜12と配線保護膜10との接触面での触媒の核密度として、1011atom/cm2以上に設定することが好ましい。このように設定することで、触媒含有膜12に触媒機能を持たせることができる。
【0059】
また、触媒含有膜12中の触媒の濃度が大きすぎると、配線抵抗を大きくしてしまう。したがって、触媒含有膜12の触媒含有量は、触媒含有膜12と配線保護膜10との接触面での触媒の核密度として、1011atom/cm2〜1014atom/cm2に設定することがより好ましい。
【0060】
前述のように、置換めっきによる触媒付与は、配線特性の劣化などの不具合を引き起こしてしまう。この例によれば、(f)第1無電解めっき工程によって、置換めっきによる触媒付与ではなく、触媒を含有する触媒含有膜12を形成することで、配線特性の劣化を抑制しつつ、配線保護膜の形成に必要な触媒を付与することができる。なお、(d)CMP工程によって絶縁膜2上のシード層7及びバリアメタル6が除去されているので、この例では、無電解めっきによって、触媒含有膜12を形成するようにしている。
【0061】
次に、第1無電解めっき装置22で、図4の(g)洗浄工程を行って、基板の表面を純水等で洗浄する。この洗浄工程では、基板を乾燥させないことが好ましく、これによって、触媒含有膜12の表面を有機物による汚染や酸化から守ることができる。
【0062】
次に、第1無電解めっき装置22から基板を搬送ロボット30で取出して、基板表面11が乾かないうちに第2無電解めっき装置24に搬送する。この第2無電解めっき装置24では、図4の(h)第2無電解めっき(無電解蓋めっき)工程を、基板の表面に所定時間行って、図3(c)に示すように、例えばCoWP、CoP、NiWP、NiP、CoMoP、CoWPB、CoPB、NiWPB、またはNiPB合金からなる配線保護膜10を触媒含有膜12の表面に選択的に形成し、これによって、銅配線9の表面を配線保護膜10で覆って銅配線9を保護する。このように、基板表面を乾燥させることなく、直ちに(h)第2無電解めっき(無電解蓋めっき)工程を行うことで、触媒含有膜12表面の有機物等による汚染や酸化を極力防ぐことができる。この第2無電解めっきは、次亜リン酸を還元剤とした無電解めっきであり、この無電解めっきで使用されるめっき液として、例えば下記の表5に示す組成の次亜リン酸ナトリウム浴が挙げられる。
【0063】
【表5】
【0064】
次に、第2無電解めっき装置24から基板を搬送ロボット30で取出して、洗浄・乾燥装置28の一つに搬送する。洗浄・乾燥装置28では、図4の(i)の洗浄・乾燥工程を行って、基板を純水で洗浄し高速で回転させてスピン乾燥させる。そして、スピン乾燥後の基板を洗浄・乾燥装置28から搬送ロボット30により取出し、処理の終了した基板としてロード・アンロード部20に戻す。
これらの一連の処理は、制御部32によって制御される。
【0065】
なお、第1無電解めっき装置22による無電解めっき後の基板を、無電解めっき装置22ではなく、2基の洗浄・乾燥装置28の内のいずれか一つで洗浄するようにしても良い。また第2無電解めっき装置24による無電解めっき後の基板を、2基の洗浄・乾燥装置28の内のいずれか一つで洗浄した後に、他方の洗浄・乾燥装置28で乾燥させるようにしても良い。このように、複数の洗浄・乾燥装置28を柔軟に使用することで、複数の基板を連続して処理する場合に、洗浄工程及び/または洗浄・乾燥工程の所要時間が、少なくとも一方の無電解めっき工程の所要時間よりも長い場合に、スループットを落とさないようにすることができる。どの洗浄・乾燥装置28で洗浄工程及び洗浄・乾燥工程を行うかは、洗浄・乾燥装置28の空き具合によって制御部32が決定する。
【0066】
この例によれば、本発明の配線構造の態様の一つである、図3(c)に示す配線構造を形成することができる。また、第1無電解めっき装置22による触媒含有膜12の成膜工程と、第2無電解めっき装置24による配線保護膜10の成膜工程を、半導体素子が形成された基板に繰り返して施すことにより、配線保護膜が形成され、かつ低抵抗な銅配線を有する半導体装置を製造することができる。
【0067】
なお、図5(a)に示すような、半導体素子を形成した半導体基材1上の導電層1aの上に絶縁膜2を堆積し、この絶縁膜2の内部にリソグラフィ・エッチング技術によりコンタクトホール3とトレンチ4とからなる微細な配線用凹部5を形成し、その上にTaN等からなる拡散抑制用のバリアメタル6及びシード層7を順次形成し、表面に銅めっきを施すことによって、基板Wの配線用凹部5内に銅めっき膜8を充填するとともに、バリアメタル6上に銅めっき膜8を堆積した基板Wを用意する。そして、化学機械的研磨(CMP)により、絶縁膜2上の銅めっき膜8、シード層7及びバリアメタル6を除去して、配線用凹部5の内部に充填した銅めっき膜8の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にして銅めっき膜8からなる埋込み銅配線9を形成すると、図5(b)に示すように、銅配線9の表面にディッシング14が形成されることがある。
【0068】
このような場合にあっても、前述と同様にして、銅配線9の表面に、図6(a)に示すように、触媒含有膜12を選択的に形成し、この触媒含有膜12の表面に、図6(b)に示すように、配線保護膜10を選択的に形成し、これによって、この配線保護膜10で銅配線9の露出表面を覆って銅配線9を保護することができる。
したがって、この例では、本発明の配線構造の態様の一つである、図6(b)に示す配線構造を形成することができる。また、これらの工程を半導体素子が形成された基板に繰り返して施すことにより、配線保護膜が形成され、かつ低抵抗な銅配線を有する半導体装置を製造することができる。
【0069】
図7は、図1(a)に示すような、バリアメタル6及びシード層7で覆われた配線用凹部5を有する基板Wを用意し、この基板Wの表面に銅めっきを施すことによって、基板Wの配線用凹部内に銅または銅合金めっき膜(銅めっき膜)を充填するとともに、シード層上に銅めっき膜を堆積し、更に、この銅めっき膜の表面に、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を形成するようにした、本発明の他の実施の形態の配線形成装置の平面配置図を示す。なお、以下の例では、銅めっき膜及び触媒合金膜を電気めっきで形成するようにしているが、どちらか一方または双方を無電解めっきで形成するようにしてもよい。
【0070】
図7に示すように、この配線形成装置は、複数の基板を収納する2基のロード・アンロード部40、基板の表面に埋込み用の銅めっき膜を形成する2基の第1電気めっき装置42、銅めっき膜の表面に次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を形成する第2電気めっき装置44、基板の洗浄を行う洗浄・乾燥装置46を有している。更に、配線形成装置には、上記ロード・アンロード部40及び上記各電気めっき装置42,44との間で基板の受渡しを行う走行自在な搬送ロボット48が配置され、更に、これらを制御する制御部50が備えられている。
【0071】
次に、図7に示す配線形成装置による一連の処理について、図1、図8及び図10の(a)第1電気めっき工程から(d)洗浄・乾燥工程を参照して説明する。先ず、図1(a)に示すような、バリアメタル6及びシード層7で覆われた配線用凹部5を有する基板Wを用意し、ロード・アンロード部40に収納しておく。そして、1枚の基板をロード・アンロード部40から搬送ロボット48で取出して第1電気めっき装置42に搬送する。ここで、図10(a)の第1電気めっき工程を、基板Wの表面(基板表面11)に所定時間行って、図8(a)に示すように、配線用凹部5の内部に銅または銅合金めっき膜(銅めっき膜)8を埋込みながら、絶縁膜2の表面に銅めっき膜8を堆積させる。このとき、配線用凹部5が銅めっき膜8で完全に埋込まれる前に、第1電気めっき工程を終了する。この電気めっきに使用されるめっき液(銅または銅合金めっき液)の組成は、例えば表6に示す通りである。
【0072】
【表6】
【0073】
次に、第1電気めっき装置42から基板を搬送ロボット48で取出して、洗浄・乾燥装置46に搬送する。洗浄・乾燥装置46では、図10の(b)洗浄工程を行って、基板表面11を純水により洗浄する。その際、基板表面11を乾燥させないことが好ましい。これによって、銅めっき膜8の表面を有機物による汚染や酸化から守ることができる。
【0074】
そして、洗浄・乾燥装置46から基板を搬送ロボット48で取出して、基板表面11が乾かないうちに第2電気めっき装置44に搬送する。第2電気めっき装置44では、図10の(c)第2電気めっき工程を、基板Wの表面(基板表面11)に所定時間行って、図8(b)に示すように、銅めっき膜8の表面に次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜16を形成する。この第2電気めっき装置44に使用される、触媒として銀を使用しためっき液(触媒含有銅合金めっき液)の組成は、例えば表7に示す通りである。
【0075】
【表7】
【0076】
次に、第2電気めっき装置44から基板を搬送ロボット48で取出して、洗浄・乾燥装置46に搬送する。洗浄・乾燥装置46では、図10の(d)洗浄・乾燥工程を行って、基板表面11を純水で洗浄し、高速回転させてスピン乾燥させる。そして、スピン乾燥後の基板を洗浄・乾燥装置46から搬送ロボット48で取出し、処理の終了した基板としてロード・アンロード部40に戻す。
これらの一連の処理は、制御部50によって制御される。
【0077】
なお、上述の説明では、2基の第1電気めっき装置42と1基の第2電気めっき装置44を備えた例を示している。このように、2基の第1電気めっき装置42を使用する理由は、複数の基板を連続して処理する場合に、第1電気めっき装置42によるめっき工程の所要時間が、第2電気めっき装置44によるめっき工程の所要時間よりも長い場合に、スループットを落とさないようにするためである。第2電気めっき装置44によるめっき工程の所要時間が、第1電気めっき装置42によるめっき工程の所要時間よりも長い場合には、1基の第1電気めっき装置42と2基の第2電気めっき装置44を備えるようにしてもよい。
【0078】
この例にあっては、上記のようにして、基板の表面に銅めっき膜8及び触媒含有膜16を積層した後、図10の(e)アニール工程を行って、銅めっき膜8及び触媒含有膜16をアニールする。そして、図10の(f)CMP工程を行って、図9(a)に示すように、化学機械的研磨(CMP)により、絶縁膜2上の銅めっき膜8、触媒含有膜16、シード層7及びバリアメタル6を除去して、配線用凹部5の内部に充填した銅めっき膜8の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1(c)に示すような銅または銅合金めっき膜8及びシード層7からなる銅または銅合金配線(銅配線)9を形成する。この時、第1電気めっき工程の際に配線用凹部5を銅めっき膜8で完全に埋込んでいないので、銅配線9の基板表面11側の界面の一部が触媒含有膜16で覆われることになる。
【0079】
そして、図10の(g)洗浄・乾燥工程を行って、基板の表面を純水等で洗浄し、高速回転させてスピン乾燥させる。その後、前述と同様にして、図10の(h)無電解(蓋)めっき工程を行って、図9(b)に示すように、銅配線9の一部を覆う触媒含有膜16の表面、および銅配線9の露出表面を覆うように、例えばCoWP、CoP、NiWP、NiP、CoMoP、CoWPB、CoPB、NiWPB、またはNiPB合金からなる配線保護膜10を選択的に形成する。そして、図10の(i)洗浄・乾燥工程を行って、基板の表面を純水等で洗浄し、高速回転させてスピン乾燥させる。
【0080】
これにより、本発明の配線構造の態様の一つである、図9(b)に示す配線構造を形成することができる。また、これらの工程を半導体素子が形成された基板に繰り返して施すことにより、配線保護膜が形成され、かつ低抵抗な配線を有する半導体装置を製造することができる。
【0081】
この例では、銅配線9の上面と配線保護膜10の下面とが一部で互いに接する構造となる。このような場合、配線保護膜10との接触面における触媒含有膜16の配線幅に対する割合が小さすぎると、配線保護膜10の良好な形成に支障が生じる。逆に大きすぎても、この構造の特徴である配線抵抗の上昇の抑制を阻害してしまう。したがって、配線保護膜10との接触面における触媒含有膜16の配線幅に対する割合は、一般には5%〜90%程度で、10%〜80%程度であることが好ましく、10%〜60%程度であることが更に好ましい。これは、本発明の他の実施の形態においても同様である。
【0082】
なお、銅または銅合金からなる銅配線9に触媒機能ではない他の機能を持たせるために、第1電気めっき装置42で使用されるめっき液(銅または銅合金めっき液)に触媒と同一の物質を含有させてもよい。例えば、銅配線9に銀を散在させてエレクトロマイグレーション耐性の向上機能を持たせるために、銅または銅合金めっき液に銀を含有させてもよい。前述のように、銀は次亜リン酸を還元剤とした無電解めっきの触媒作用を有している。したがって、銀は、銅配線9と触媒含有膜16の両方に含有される場合がある。この場合、銅配線9では、銀含有量をエレクトロマイグレーション耐性機能が有効となり、かつ抵抗の上昇が極力抑えられる含有量にする。また、触媒含有膜16の銀含有量を触媒機能が有効となる含有量とする。こうすることで、低抵抗で配線保護膜を持ち、エレクトロマイグレーション耐性にも優れた銅配線9を形成することができる。よって、本発明は、このように同一の物質を触媒機能とそれ以外の機能の両方に利用する場合にも有効である。これは、本発明の他の実施の形態においても同様である。
【0083】
この例では、第1電気めっき装置42と第2電気めっき装置44で、異なる組成のめっき液を使用している。すなわち、第1電気めっき装置42では、低抵抗機能を有する銅配線9を形成するための第1のめっき液(銅または銅合金めっき液)を用い、第2電気めっき装置44では、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する第2のめっき液(触媒含有銅合金めっき液)を用いる。したがって、第1の電気めっき装置42では銅配線9を形成する銅めっき膜8を形成し、第2の電気めっき装置44では、めっきの際に銅と触媒が共に析出し、触媒機能を有する触媒含有膜16を形成することができる。前述のように、銅配線9と触媒含有膜16の両方に触媒と同一の物質(例えば銀など)が含有される場合、第1電気めっき装置42に使用されるめっき液と第2電気めっき装置44に使用されるめっき液における触媒含有量は、それぞれの目的に合せて、互いに異なることが望ましい。
【0084】
第1電気めっき装置42には、従来から知られている銅または銅合金めっき液が使用される。第2電気めっき装置44には、少なくとも次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒と銅を含有する触媒含有銅合金めっき液が使用される。第2電気めっき装置44に使用される触媒含有銅合金めっき液としては、金属硫酸塩を主に用いた硫酸浴と、金属シアン化塩を主に用いたシアン化浴が挙げられる。硫酸浴の組成の一例を表8に、シアン化浴の組成の一例を表9にそれぞれ示す。
【0085】
【表8】
【0086】
【表9】
【0087】
硫酸浴においては、触媒の析出のために金属硫酸塩を溶解させる。ここで、金属硫酸塩としては、硫酸銀、亜硫酸金ナトリウム、亜硫酸金アンモニウム、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸ニッケルアンモニウム、硫酸鉄、硫酸パラジウム、硫酸ロジウム、亜硫酸ルテニウム、及び硫酸イリジウムなどが挙げられる。白金、オスミウムは、金属硫酸塩の代わりに塩化白金酸、六塩化オスミウム二アンモニウムなどが用いられる。モリブデンは、金属硫酸塩の代わりにモリブデン酸ナトリウム、パラモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、三酸化モリブデン等の含モリブデン化合物を用いる。また、酸化チタンは、金属硫酸塩の代わりに酸化チタン超微粒子を用い、必要に応じて分散材を添加してもよい。
【0088】
シアン化浴においては、触媒の析出のために金属シアン化塩を溶解させる。ここで、金属シアン化塩としては、シアン化銀、シアン化金、シアン化金カリウム、シアン化金ナトリウム、シアン化白金カリウム、シアン化白金ナトリウム、シアン化コバルトカリウム、シアン化ニッケルカリウム、フェロシアン化鉄、シアン化パラジウム、シアン化パラジウムカリウム、シアン化ルテニウムカリウム、シアン化ロジウムカリウム、及びシアン化イリジウム三カリウムなどが挙げられる。モリブデンは、金属シアン化塩の代わりにモリブデン酸ナトリウム、パラモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、三酸化モリブデン等の含モリブデン化合物を用いる。また、酸化チタンは、金属硫酸塩の代わりに酸化チタン超微粒子を用い、必要に応じて分散材を添加してもよい。
【0089】
なお、銅配線9を構成する銅めっき膜8と触媒含有膜16とを、異なるめっき液を使用して、同一の電気めっき装置で形成することもできる。即ち、先ず、電気めっき装置に銅配線9を構成する銅めっき膜8を形成する第1のめっき液を導入して銅または銅合金めっきを行い、電気めっき装置から第1のめっき液を排出した後、電気めっき装置に触媒含有膜16を形成する第2のめっき液を導入して触媒含有銅合金めっきを行う。しかし、同一の電気めっき装置で組成の異なるめっき液を使用しためっきを行うと、各めっき工程間にめっき装置の洗浄工程を入れたとしても、微量ではあるがめっき装置に残留物が残ってしまう。このめっき装置の残留物は、銅配線9と触媒含有膜16を互いに汚染し、機能分離の効果が薄れてしまう。したがって、銅配線9を構成する銅めっき膜8と触媒含有膜16とを異なる電気めっき装置で個別に行うことが好ましい。これにより、上述のような残留物による汚染を低減して、本発明の最大の特徴である、銅配線9と触媒含有膜16の機能分離の効果を最大限に発揮することができる。さらに、めっき工程間に洗浄工程を入れることにより、基板の残留物による汚染も低減することができる。
【0090】
図11は、本発明の更に他の実施の形態の配線形成装置を示す。図11に示す例の、前記図7に示す例と異なる点は、図7に示す第1電気めっき装置42と第2電気めっき装置44の代わりに、同一の組成のめっき液を使用して、銅または銅合金配線(銅配線)9を構成する銅または銅合金めっき膜(銅めっき膜)8と触媒含有膜16を形成する、電気めっき装置60を2基用い、更に2基の洗浄・乾燥装置46を使用した点である。その他の構成は、図7に示す例と同様である。
【0091】
この例では、基板をロード・アンロード部20から搬送ロボット30で取出して電気めっき装置60に搬送し、この電気めっき装置60で、銅配線9を構成する銅めっき膜8の形成(第1のめっき工程)と触媒含有膜16の形成(第2のめっき工程)とを連続して行う。この第1のめっき工程と第2のめっき工程の切替えは、例えば、制御部50によって、浴電圧を自動的に切替ることによって行われる。この電気めっき装置60で使用されるめっき液の組成は、例えば、表10に示す通りである。
【0092】
【表10】
【0093】
更に、この例にあっては、共に2基の電気めっき装置60と洗浄・乾燥装置46を備えることで、電気めっき装置60によるめっき処理と、洗浄・乾燥装置46による洗浄・乾燥処理を互いに並行に行って、スループットを高めることができる。
【0094】
この電気めっき装置60にあっては、同一の組成のめっき液を使用し、先ず、第1のめっき工程において、銅または銅合金が優先的に析出する条件でめっきを行い、しかる後、第2のめっき工程において、銅または銅合金と触媒が共に析出する条件でめっきを行う。同一の組成のめっき液でこのようなめっきを実現するために、銅の平衡電位よりも低い(卑な)平衡電位を持つ触媒と銅をめっき液に含有させる必要がある。銅の平衡電位よりも低い(卑な)平衡電位を持つ触媒金属としては、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)及び鉄(Fe)が挙げられる。
【0095】
図12は、銅(Cu)とコバルト(Co)の電位(Potential)−pHダイヤグラムを重ねて示した図である。図13は、銅(Cu)とニッケル(Ni)の電位(Potential)−pHダイヤグラムを、図14は、銅(Cu)と鉄(Fe)の電位(Potential)−pHダイヤグラムを重ねて示した図である。めっき液中での金属錯体の状態や合金の生成エネルギーによって平衡電位などは変化するが、ここでは定性的な説明をするために、水溶液中の単成分での図を重合せたものを使用している。
【0096】
図12において、斜線部分は銅と触媒金属であるCoが共に析出する範囲で、塗り潰した部分は銅のみが析出する範囲である。図13及び図14も同様に、斜線部分は銅と触媒金属であるNiまたはFeが共に析出する範囲で、塗り潰した部分は銅のみが析出する範囲である。
【0097】
したがって、第1のめっき工程では、銅が選択的に析出する範囲、即ち、例えば図12乃至図14の塗り潰した部分に相当する範囲になるように、浴電圧または浴電流または浴電流密度を調節してめっきを行えばよい。また、第2のめっき工程では、銅と触媒が共に析出する範囲、即ち図12乃至図14の斜線部分に相当する範囲になるように、浴電圧または浴電流または浴電流密度を調節してめっきを行えばよい。このように、第1のめっき工程と第2のめっき工程は、共に電気めっきにより実現することができる。
【0098】
ここで、“同一の組成のめっき液”は、組成が完全に同一なめっき液である場合に限ることなく、同等な作用・効果が得られることを当業者であれば常識として理解できる程度の相違、例えば、めっきによる組成変化程度の相違や、消耗成分の補給による組成変化程度の相違は含まれるのであり、換言すれば実質同一を意味する。
【0099】
また、第1のめっき工程と第2のめっき工程の浴電圧、浴電流または浴電流密度は、銅めっき膜8及び触媒含有膜16の形成工程に先立って決定される。ここでは、浴電圧、浴電流または浴電流密度の決定方法について、浴電圧を例に説明する。
【0100】
まず、めっき液を用いて、サンプル基板に種々の浴電圧でめっきを実施する。その際に使用するサンプル基板は、導電性のある板であれば良いが、めっき膜の抵抗率測定を容易にするために、例えば予め極薄く(100nm程度に)銅が成膜されたシリコン基板であることが好ましい。この極薄く銅が成膜されたシリコン基板上に、第1のめっき工程と第2のめっき工程で使用するめっき液を用いて、種々の浴電圧でめっき膜を成膜する。次に、サンプル基板にめっきされためっき膜の抵抗率を測定する。これにより、めっきの際の浴電圧とめっき膜の抵抗率の関係が分かる。次に、めっきされたサンプル基板を配線保護膜の形成に使用する無電解めっき液を用いてめっきする。無電解めっきができるか否かで、めっきの際の浴電圧とめっき膜の触媒活性の関係が分かる。
【0101】
第1のめっき工程では、めっきの際の浴電圧とめっき膜の抵抗率の関係から、抵抗率が配線の仕様より小さくなる浴電圧を選択すればよい。また、第2のめっき工程では、めっきの際の浴電圧とめっき膜の触媒活性の関係から、触媒活性がある浴電圧を選択すれば良い。なおかつめっきの際の浴電圧とめっき膜の抵抗率の関係から抵抗率が小さい浴電圧を選択すれば、配線抵抗の上昇を抑制することができる。したがって、図12乃至図14に示すような電位−pHダイヤグラムを実際のめっき液で作成する必要は無い。
【0102】
以上により、第1のめっき工程及び第2のめっき工程における浴電圧を決定することができる。なお、浴電圧の代わりに浴電流または浴電流密度を用いて同様の工程を実施することにより、第1のめっき工程及び第2のめっき工程における浴電流または浴電流密度を決定することができる。
【0103】
次に、電気めっき装置60に使用されるめっき液は、コバルト、ニッケル、モリブデン、鉄のうちの少なくとも一つと銅を含有する必要がある。このようなめっき液としては、金属硫酸塩を主に用いた硫酸浴と、金属シアン化塩を主に用いたシアン化浴などが挙げられる。硫酸浴の組成の一例を表11に、シアン化浴の組成の一例を表12に示す。
【0104】
【表11】
【0105】
【表12】
【0106】
硫酸浴においては、触媒の析出のために金属硫酸塩を溶解させる。ここで、金属硫酸塩としては、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸ニッケルアンモニウム、及び硫酸鉄などが挙げられる。モリブデンは、金属硫酸塩の代わりにモリブデン酸ナトリウム、パラモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、三酸化モリブデン等の含モリブデン化合物を用いる。シアン化浴においては、触媒の析出のために金属シアン化塩を溶解させる。金属シアン化塩としては、シアン化コバルトカリウム、シアン化ニッケルカリウム、及びフェロシアン化鉄などが挙げられる。モリブデンは、金属シアン化塩の代わりにモリブデン酸ナトリウム、パラモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、三酸化モリブデン等の含モリブデン化合物を用いる。
【0107】
このように、同一の組成のめっき液で銅めっき膜8の形成(第1のめっき工程)と触媒含有膜16の形成(第2のめっき工程)を行うことにより、工程間のめっき液の相違を起因とする汚染の問題が無い。また、共通の電気めっき装置60を用いることにより、第1のめっき工程と第2のめっき工程を連続して実施することができ、これによって、スループット(単位時間内のウェーハ処理量)を向上させることができる。
【0108】
電気めっき装置60で銅めっき膜8の形成(第1のめっき工程)と触媒含有膜16の形成(第2のめっき工程)を連続して行うためには、第1のめっき工程の終了後、直ちに、浴電圧、浴電流または浴電流密度を切替えて、第2のめっき工程に切替えればよい。その際の切替えのタイミングは、めっき膜厚やめっき時間を参考に行う。例えば、予め実験により決めておいた第1のめっき工程のめっき時間が経過すれば、浴電圧、浴電流または浴電流密度を切替るようにする。この浴電圧、浴電流または浴電流密度の切替えは、制御部50によって行う。
【0109】
この例では、上述のようにして、図8(b)に示すように、基板の表面に銅めっき膜8及び触媒含有膜16を積層することができる。この後、図10(e)から(i)の工程を実施することにより、本発明の配線構造の態様の一つである、図9(b)に示す配線構造を形成することができる。また、これらの工程を半導体素子が形成された基板に繰り返して施すことにより、配線保護膜が形成され、かつ低抵抗な銅配線を有する半導体装置を製造することができる。
【0110】
通常の銅配線形成工程においては、パラジウムなどの置換めっきによる触媒付与工程が実施される。この置換めっきによる触媒付与によって、前述のように配線特性の劣化などの不具合が引き起こされる。
本発明によれば、前述のように、置換めっきによる触媒付与を行っていないので、配線特性の劣化を抑制しつつ、低抵抗の配線保護膜付き銅配線を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】銅配線を有する半導体装置を得るのに使用される配線形成方法の基本工程を工程順に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態の配線形成装置を示す平面配置図である。
【図3】図2に示す配線形成装置による一連の処理を工程順に示す図である。
【図4】図2に示す配線形成装置を使用して配線を形成する例を工程順に示すブロック図である。
【図5】配線形成例におけるCMP工程後まで工程順に示す図である。
【図6】本発明の配線形成例におけるCMP後を工程順に示す図である。
【図7】本発明の他の実施の形態の配線形成装置を示す平面配置図である。
【図8】図7に示す配線形成装置による一連の処理を工程順に示す図である。
【図9】本発明の配線形成例における図8に示す工程後の処理を工程順に示す図である。
【図10】図7に示す配線形成装置を使用して配線を形成する例を工程順に示すブロック図である。
【図11】本発明の更に他の実施の形態の配線形成装置を示す平面配置図である。
【図12】銅(Cu)とコバルト(Co)の電位(Potential)−pHダイヤグラムを重ねて示した図である。
【図13】銅(Cu)とニッケル(Ni)の電位(Potential)−pHダイヤグラムを重ね合せた図である。
【図14】銅(Cu)と鉄(Fe)の電位(Potential)−pHダイヤグラムを重ねて示した図である。
【符号の説明】
【0112】
2 絶縁膜
3 コンタクトホール
4 トレンチ
5 配線用凹部
6 バリアメタル
7 シード層
8 銅めっき膜
9 銅配線
10 配線保護膜
11 基板表面
12,16 触媒含有膜
14 ディッシング
20,40 ロード・アンロード部
22,24 無電解めっき装置
26 前処理装置
28,46 洗浄・乾燥装置
32,50 制御部
42,44,60 電気めっき装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線構造、配線形成方法及び配線形成装置、並びに半導体装置に関し、特に半導体ウェーハ等の基板の表面に設けた微細な配線用凹部に銅または銅合金を埋込んで形成した配線(銅配線)の露出表面を配線保護膜で選択的に覆った配線構造、該配線構造を有する配線を形成するのに使用される配線形成方法及び配線形成装置、並びに該配線を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の配線形成プロセスとして、トレンチ及びコンタクトホールに金属(導電体)を埋込むようにしたプロセス(いわゆる、ダマシンプロセス)が使用されている。これは、層間絶縁膜に予め形成したトレンチやコンタクトホールに、アルミニウム、近年では銅、銅合金または銀等の金属を埋め込んだ後、余分な金属を化学機械的研磨(CMP)によって除去し平坦化するプロセス技術である。
【0003】
この種の配線、例えば配線材料として銅または銅合金を使用した配線(銅配線)にあっては、平坦化後、銅または銅合金からなる配線の表面が外部に露出している。したがって、例えばその後の酸化性雰囲気で絶縁膜(酸化膜など)を積層して多層配線構造の半導体装置を作る場合等に、配線(銅または銅合金)の酸化を防止するため、Co合金やNi合金等からなる配線保護膜(蓋材)で配線の露出表面を選択的に覆って、配線の酸化を防止することが検討されている。
【0004】
また、配線の側壁と底面は、バリアメタルと呼ばれる薄い層の存在により、絶縁膜(層間絶縁膜)との密着性が良いが、配線の上面にはバリアメタルが存在しないため、配線上面とこの上に積層される上層の絶縁膜との密着性が他の界面と比べて小さい。このように、配線上面と上層の絶縁膜との密着性があまりよくないと、エレクトロマイグレーションと呼ばれる欠陥が生じる。配線上面と絶縁膜との密着性を向上させるためにも、配線の露出表面(表面)を覆うCo合金やNi合金等からなる配線保護膜(蓋材)は有効である。このCo合金やNi合金等からなる配線保護膜は、例えば無電解めっきによって得られる。
【0005】
また、バリアメタルは、配線(銅または銅合金)の熱拡散を抑制する機能も併せ持っている。したがって、配線の側壁と底面では配線の熱拡散が抑制されるが、配線上面にはバリアメタルが存在しないため、配線が上層の絶縁膜に熱拡散してしまう。このような熱拡散を抑制するためにも、配線の露出表面(表面)を覆うCo合金やNi合金等からなる配線保護膜(蓋材)は有効である。このCo合金やNi合金等からなる配線保護膜は、例えば無電解めっきによって得られる。なお、本発明では、無電解めっきにより配線保護膜を形成することを、無電解蓋めっきと呼ぶ。
【0006】
図1は、半導体基板の表面に銅めっきを施して、銅または銅合金からなる埋込み配線(銅配線)を有する半導体装置を得るのに使用される配線形成方法の基本工程を工程順に示す。即ち、図1(a)に示すように、半導体素子を形成した半導体基材1上の導電層1aの上にSiO2やlow−K材等からなる絶縁膜2を堆積し、この絶縁膜2の内部にリソグラフィ・エッチング技術によりコンタクトホール3とトレンチ4とからなる微細な配線用凹部5を形成し、その上にTaN等からなる拡散抑制用のバリアメタル6を形成する。そして、半導体基板Wに形成したバリアメタル6の表面に、例えばスパッタリングやCVDで給電層となる銅等からなるシード層7を形成する。
【0007】
次に、図1(b)に示すように、半導体基板Wの表面(基板表面11)に銅めっきを施すことによって、半導体基板Wの配線用凹部5内に銅または銅合金めっき膜(銅めっき膜)8を充填するとともに、バリアメタル6上に銅めっき膜8を堆積する。その後、化学機械的研磨(CMP)により、絶縁膜2上の銅めっき膜8、シード層7及びバリアメタル6を除去して、配線用凹部5の内部に充填した銅めっき膜8の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1(c)に示すように、絶縁膜2に内部に、銅めっき膜8とシード層7からなる銅または銅合金配線(銅配線)9を形成する。
【0008】
そして、必要に応じて、図1(d)に示すように、この銅配線9の表面(露出表面)に、例えば無電解蓋めっきによって得られる、CoWP、CoP、NiWP、NiP、CoMo、CoMoP、CoWPB、CoPB、NiWPB、NiPB、CoWB、CoB、NiWB、NiB合金からなる配線保護膜(蓋材)10を選択的に形成して銅配線9を保護するようにしている。
【0009】
一般的な無電解蓋めっきによって、このようなCoWP合金からなる配線保護膜(蓋材)10を銅配線9の表面に選択的に形成する工程(無電解蓋めっき工程)を説明する。先ず、CMP処理を施した半導体ウェーハ等の基板Wを、例えば液温が25℃で、希釈したH2SO4等の酸溶液中に、例えば1分程度浸漬させて、絶縁膜2の表面に残った銅等のCMP残さ、銅配線9の表面の防食剤や酸化膜等を除去する。そして、基板Wの表面を超純水等の洗浄液で洗浄(リンス)した後、例えば、液温が25℃で、0.05g/LのPdCl2と0.2ml/LのHCl等の混合溶液中に基板Wを、例えば1分間浸漬させ、これにより、銅配線9の表面に触媒としてのPdを付着させて銅配線9の表面(露出表面)を活性化させる。
【0010】
次に、基板Wの表面を超純水で水洗い(リンス)した後、例えば液温が80℃のCoWPめっき液中に基板Wを、例えば120秒程度浸漬させて、活性化させた銅配線9の表面に選択的な無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施し、しかる後、基板Wの表面を超純水等の洗浄液で洗浄(リンス)する。これによって、銅配線9の表面に、CoWP合金からなる配線保護膜10を選択的に形成して銅配線9を保護する。
【0011】
上述のように、無電解めっき(無電解蓋めっき)によってCoWP合金からなる配線保護膜(蓋材)を形成する際には、金属配線の表面(露出表面)に、例えばPd等の触媒を付与している。この触媒付与は、例えば、下記の化学式で示す置換めっきによって行われる。このため、原理的に下地の銅配線が浸食(エッチング)され、これによって、銅配線の内部にボイドが発生して配線特性が劣化したり、また無電解めっきで形成されるめっき膜、即ち配線保護膜の異方成長によって、半導体デバイスの動作に不具合が生じ、歩留りの低下に繋がったりしてしまう。
Cu+PdSO4→CuSO4+Pd
しかも、Pdは、銅に対する拡散元素であるので、銅配線の低抵抗を阻害してしまうばかりでなく、一般に高価であるので、経済性にも問題がある。
【0012】
このような問題を解決するため、Au、Ni、CoまたはPtを銅配線表面に置換めっきして触媒とする方法(特許文献1参照)、Agを銅配線表面に付与して触媒とする方法(特許文献2参照)、金属酸化物超微粒子(TiO2)を銅配線表面に付与して光触媒とする方法(特許文献3参照)、及び銅配線全体に触媒金属を散在させる方法(特許文献4,5参照)等が提案されている。
【0013】
【特許文献1】特開2001−230220号公報
【特許文献2】特開2003−264159号公報
【特許文献3】特開2004−190109号公報
【特許文献4】特開2002−93747号公報
【特許文献5】特開2004−31586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、Pdを使用することなく、銅表面を活性化しているものの、依然置換めっきによる触媒付与を行っており、また特許文献2に記載の発明にあっても、置換めっきによる触媒付与を行っているので、銅配線の侵食による配線特性の劣化を引き起こす可能性がある。
【0015】
特許文献3に記載の発明は、置換めっきを行わないので、銅配線の侵食による配線特性の劣化がない。しかし、置換めっきと異なり、銅配線表面を選択的に活性化するための工夫が必要である。すなわち、特許文献3に開示されているように、(1)絶縁膜表面を疎水処理する、(2)絶縁膜をレジスト膜で覆う、(3)マスクを介して銅配線表面にのみ選択的に光を当る、などの工夫を要する。これらには、工程の増加や装置の複雑化を伴うため、コストアップの要因となる。
【0016】
特許文献4及び5に記載の発明は、触媒金属を微量添加しためっき液で銅配線めっきを行い、銅配線全体に触媒金属を散在させているので、置換めっきによって生じる銅配線の侵食による配線特性の劣化がない。しかし、触媒金属が銅配線全体に散在することにより、配線抵抗が上昇してしまうと考えられる。
【0017】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、銅または銅合金からなる低抵抗の銅配線(銅または銅合金配線)の表面に、置換めっきによる触媒付与を行うことなく、無電解めっきによる配線保護膜を選択的に形成した配線構造、該配線構造を有する配線を形成する配線形成方法及び配線形成装置、並びに該配線を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に記載の発明は、基板に形成した銅または銅合金配線の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜で選択的に覆われており、前記触媒含有膜の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜で選択的に覆われたことを特徴とする配線構造である。
【0019】
本発明の配線構造は、無電解蓋めっきの際の触媒を置換めっきにより付与した部位を含まないので、置換めっきを行うことによって生じる銅または銅合金配線(銅配線)の侵食による配線特性の劣化がない。しかも、銅配線は触媒金属を含まないか、若しくは必要以上に含まないので、触媒付与による配線抵抗の上昇を抑制することができる。更には、触媒含有膜の基板表面側の界面の全てが配線保護膜で選択的に覆われて保護されている。
【0020】
請求項2に記載の発明は、基板に形成した銅または銅合金配線の基板表面側の界面の少なくとも一部の領域が、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜で覆われており、前記銅または銅合金配線の基板表面側の界面と前記触媒含有膜の基板表面側の界面とが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜で選択的に覆われたことを特徴とする配線構造である。
【0021】
本発明の配線構造は、無電解蓋めっきの際の触媒を置換めっきにより付与した部位を含まないので、置換めっきを行うことによって生じる銅または銅合金配線(銅配線)の侵食による配線特性の劣化がない。しかも、銅配線は触媒金属を含まないか、若しくは必要以上に含まないので、触媒付与による配線抵抗の上昇を抑制することができる。更には、銅または銅合金配線の基板表面側の界面と触媒含有膜の基板表面側の界面とが配線保護膜で選択的に覆われて保護されている。特に、触媒含有膜が銅配線断面に占める割合を小さくすることで、配線抵抗の上昇を更に抑制することができる。
【0022】
請求項3に記載の発明は、前記触媒は、金、パラジウム、白金、コバルト、ニッケル、銀、鉄、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、モリブデン、及び酸化チタンのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または2記載の配線構造である。
このように、触媒として、次亜リン酸に対して触媒活性がある物質を使用することで、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで、触媒含有層の表面に配線保護膜を選択的に形成することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、表面に銅または銅合金配線を形成した基板を用意し、前記銅または銅合金配線の表面の少なくとも一部の領域に、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を無電解めっきで形成し、前記触媒含有膜の表面に、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで配線保護膜を選択的に形成することを特徴とする配線形成方法である。
【0024】
通常、無電解めっきで配線保護膜を形成する際には、無電解めっきに先立って、Pd等の触媒を置換めっきによって付与する触媒付与工程が行われ、この置換めっきによる触媒付与によって、前述のように、配線特性の劣化などの不具合が引き起こされる。本発明の配線形成方法では、置換めっきによる触媒付与を行っていないので、配線特性の劣化を抑制しつつ、低抵抗の銅または銅合金配線の露出表面(表面)の少なくとも一部の領域に触媒含有膜を無電解めっきで形成することができる。したがって、その触媒含有膜の露出表面(表面)に配線保護膜を無電解蓋めっきで選択的に形成することができる。なお、上記配線保護膜は、触媒含有膜の表面のみに形成されるとは限らない。触媒含有膜を形成した後に銅または銅合金配線に露出表面(表面)が残っていれば、当該露出表面にも配線保護膜が形成される。
【0025】
請求項5に記載の発明は、表面に配線用凹部を形成した基板を用意し、前記基板の表面に第1のめっきを行って、前記配線用凹部の内部の一部に銅または銅合金を埋込みながら銅または銅合金めっき膜を形成し、前記銅または銅合金めっき膜の表面に第2のめっきを行って、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を形成し、基板の表面を平坦に研磨して、前記配線用凹部内に埋込まれた銅または銅合金めっき膜であって、少なくとも基板表面側の界面の一部を前記触媒含有膜で覆われた銅または銅合金配線を形成し、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきを行って、前記触媒含有膜の表面および前記銅または銅合金配線の表面に配線保護膜を選択的に形成することを特徴とする配線形成方法である。
【0026】
本方法によっても置換めっきによる触媒付与を行っていないので、配線抵抗の上昇を抑制しつつ配線保護膜が形成された銅または銅合金配線を形成することができる。またこれにより、例えば、基板の表面に銅または銅合金めっき膜(銅めっき膜)を形成し、基板の表面を洗浄した後、基板の表面を乾燥させることなく、銅めっき膜の表面に触媒含有膜を形成することで、銅めっき膜の表面が有機物等により汚染されたり、酸化したりすることを極力防止することができる。
【0027】
請求項6に記載の発明は、前記触媒は、金、パラジウム、白金、コバルト、ニッケル、銀、鉄、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、モリブデン、及び酸化チタンのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項4または5記載の配線形成方法である。
【0028】
請求項7に記載の発明は、前記第1のめっき及び前記第2のめっきは、共に同一の組成のめっき液を用いた電気めっきであり、前記第1のめっきでは前記銅または銅合金が優先的に析出するように、前記第2のめっきでは前記銅または銅合金及び触媒が共に析出するように、浴電圧、浴電流または浴電流密度を制御することを特徴とする請求項5記載の配線形成方法である。
【0029】
銅の平衡電位よりも低い(卑な)平衡電位を持つ触媒と銅をめっき液中に含有させることにより、同一の組成のめっき液を使用し、第1のめっきでは銅または銅合金が優先的に析出するように、第2のめっきでは銅または銅合金及び触媒が共に析出するようにすることができる。
ここで、“同一の組成のめっき液”は、組成が実質的に同一であるめっき液を意味し、組成が完全に同一である場合に限ることなく、同等な作用・効果が得られることを当業者であれば常識として理解できる程度の相違、例えば、めっきによって組成が変化する程度の相違や、消耗成分の補給によって組成が変化する程度の相違は含まれる。
【0030】
請求項8に記載の発明は、前記触媒は、コバルト、ニッケル、モリブデン、及び鉄のうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項7記載の配線形成方法である。
銅の平衡電位よりも低い(卑な)平衡電位を持つ触媒金属としては、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)及び鉄(Fe)が挙げられる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、基板に形成した銅または銅合金配線の表面の少なくとも一部の領域に、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を形成する第1無電解めっき装置と、
前記触媒含有膜の表面に、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで配線保護膜を選択的に形成する第2無電解めっき装置を有することを特徴とする配線形成装置である。
【0032】
触媒含有膜を形成する無電解めっきと配線保護膜を形成する無電解蓋めっきは、それぞれ異なる組成のめっき液を使用して行う。したがって、同一の無電解めっき装置で両方の無電解めっきを行うと、それぞれの無電解めっきの間にめっき装置のめっき槽を洗浄したとしても、微量ではあるがめっき槽に残留物が残ってしまう。このめっき槽の残留物は、触媒含有膜と配線保護膜を互いに汚染する。このため、触媒含有膜を形成する無電解めっきと配線保護膜を形成する無電解蓋めっきをそれぞれ異なる無電解めっき装置を使用して個別に行うことが好ましい。
【0033】
請求項10に記載の発明は、表面に形成した配線用凹部の内部の一部に銅または銅合金を埋込みながら銅または銅合金めっき膜を形成する第1めっき装置と、前記銅または銅合金めっき膜の表面に、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を形成する第2めっき装置を有することを特徴とする配線形成装置である。
【0034】
銅または銅合金めっき膜(銅めっき膜)を形成する第1のめっきと触媒含有膜を形成する第2のめっきを、同一のめっき装置で、異なる組成のめっき液を使用して行うと、第1のめっきと第2のめっきとの間でめっき装置のめっき槽を洗浄したとしても、微量ではあるがめっき槽に残留物が残ってしまう。このめっき槽の残留物は、銅または銅合金めっき膜(銅めっき膜)と触媒含有膜を互いに汚染する。このため、このような場合には、銅めっき膜を形成する第1のめっきと触媒含有膜を形成する第2のめっきをそれぞれ異なるめっき装置を使用して個別に行うことが好ましい。
【0035】
請求項11に記載の発明は、前記第1めっき装置及び前記第2めっき装置は、同一の組成のめっき液を用いる一つの電気めっき装置として構成されており、この電気めっき装置は、銅または銅合金が優先的に析出する第1のめっきと、銅または銅合金及び触媒が共に析出する第2のめっきを行うよう、浴電圧、浴電流または浴電流密度を制御する制御部を有することを特徴とする請求項10記載の配線形成装置である。
【0036】
同一の組成のめっき液で一つの電気めっき装置を用いて、制御部により浴電圧、浴電流または浴電流密度を制御することで、銅または銅合金めっき膜を形成する第1のめっきと触媒含有膜を形成する第2のめっきを連続して行うことができる。したがって、銅または銅合金めっき膜及び触媒含有膜の汚染の問題がなく、しかも、スループット(単位時間内の基板の処理量)を向上させることができる。また、第1めっき装置及び第2めっき装置が一つの電気めっき装置で構成されるため、装置を小型化することができる。
【0037】
請求項12に記載の発明は、銅または銅合金配線の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜で選択的に覆われており、前記触媒含有膜の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜で選択的に覆われた配線を有することを特徴とする半導体装置である。
【0038】
請求項13に記載の発明は、銅または銅合金配線の基板表面側の界面の少なくとも一部の領域が、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜で覆われており、前記銅または銅合金配線の基板表面側の界面と前記触媒含有膜の基板表面側の界面とが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜で選択的に覆われた配線を有することを特徴とする半導体装置である。
【0039】
請求項14に記載の発明は、前記触媒は、金、パラジウム、白金、コバルト、ニッケル、銀、鉄、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、モリブデン、及び酸化チタンのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項12または13記載の半導体装置である。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、銅または銅合金からなる低抵抗の銅配線の表面に、置換めっきによる触媒付与を行うことなく、無電解蓋めっきによる配線保護膜を選択的に形成した配線構造、該配線構造を有する配線を形成する配線形成方法及び配線形成装置、並びに該配線を有する半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の各例において、図1に示す部材と同一または相当する部材には、同一符号を付して重複した説明を省略する。
図2は、図1(c)及び図3(a)に示すような、絶縁膜2の内部に、表面を平坦化した銅または銅合金配線(銅配線)9を形成した半導体ウェーハ等の基板Wを用意し、この銅配線9の露出表面に触媒含有膜12を無電解めっきで形成し、更に配線保護膜10を無電解めっき(無電解蓋めっき)によって選択的に形成して銅配線9を保護するようにした、本発明の実施の形態の配線形成装置の平面配置図を示す。
【0042】
図2に示すように、この配線形成装置は、複数の基板を収納する2基のロード・アンロード部20、銅または銅合金配線(銅配線)の露出表面に次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を選択的に形成する第1無電解めっき装置22、触媒含有膜の表面に次亜リン酸を還元剤とした無電解めっき(無電解蓋めっき)で配線保護膜を選択的に形成する2基の第2無電解めっき装置(無電解蓋めっき装置)24、第1無電解めっき装置22による無電解めっきに先立って基板の前洗浄処理を行う前処理装置26、及び基板の洗浄及び乾燥を行う2基の洗浄・乾燥装置28を有している。更に、配線形成装置には、上記ロード・アンロード部20及び上記各装置22,24,26,28との間で基板の受渡し行う走行自在な搬送ロボット30が配置され、更に、これらを制御する制御部32が備えられている。なお、第1無電解めっき装置22は、触媒含有膜を形成した後に洗浄を行う洗浄機構を有する無電解めっき装置である。また、第2無電解めっき装置24も、無電解めっきの終了直後に洗浄を行うために、洗浄機構を有するようにしても良い。
【0043】
次に、図2に示す配線形成装置による一連の処理について、図3及び図4を更に参照して説明する。先ず、図3(a)に示すような、絶縁膜2の内部に、銅または銅合金からなり、表面を平坦化した銅配線9を形成した基板Wを用意して、ロード・アンロード部20に収納しておく。このような銅配線9を有する基板Wは、例えば図4に示す(a)銅めっき膜の埋込み工程から(e)洗浄・乾燥工程を経て製造される。つまり、先ず、(a)銅めっき膜の埋込み工程を行って、絶縁膜2に形成したコンタクトホール3とトレンチ4とからなる微細な配線用凹部5内に銅めっき膜を埋込み、(b)洗浄・乾燥工程を行って、基板Wを洗浄し乾燥させる。そして、(c)アニール工程を行って、銅めっき膜をアニールし、(d)CMP工程を行って、絶縁膜2上の余分な金属膜を除去し基板Wの表面を平坦化する。しかる後、(e)洗浄・乾燥工程を行って、基板を洗浄し乾燥させる。
【0044】
この(b)洗浄・乾燥工程には、通常の銅配線めっき工程後の洗浄・乾燥工程で使用される洗浄装置及び乾燥装置が使用される。洗浄装置と乾燥装置が同一の装置であっても良い。また、(c)アニール工程には、通常の銅配線めっき膜のアニールに使用されるアニール装置が使用される。(d)CMP工程には、通常の銅配線用のCMPに使用されるCMP装置が使用される。また、(e)洗浄・乾燥工程には、CMP工程の後洗浄及び乾燥に使用される洗浄・乾燥装置が使用される。なお、(e)洗浄・乾燥工程においては、裏面洗浄やベベルエッチングなどを含んでも良い。裏面洗浄には、通常使用される裏面洗浄装置が使用される。また、ベベルエッチングには、通常使用されるベベルエッチング装置が使用される。
【0045】
そして、1枚の基板を、ロード・アンロード部20から搬送ロボット30で取出して前処理装置26に搬送する。前処理装置26では、基板表面11を硫酸などの酸水溶液で洗浄し、更に水洗する、基板の前処理を行う。酸水溶液による基板表面11の洗浄は、例えば5wt%硫酸水溶液に基板を所定時間浸漬させることによって行う。酸水溶液によって基板表面11を洗浄することによって、CMP処理後の銅配線の表面に形成された酸化膜などを除去して、後のめっき処理を良好に行うことができる。酸水溶液による洗浄の後に、前処理装置26で、基板表面11を純水で洗浄(水洗)する。なお、この後に、無電解銅めっきの際の還元剤(グリオキシル酸、ホルムアルデヒド、ジメチルアミンボランなど)を含む水溶液に基板表面11を接液させるようにしても良い。これにより、後のめっき処理を更に良好に行うことができる。
【0046】
次に、前処理装置26から基板を搬送ロボット30で取出して、基板表面11が乾かないうちに第1無電解めっき装置22に搬送する。第1無電解めっき装置22では、図4の(f)第1無電解めっき工程を、基板の表面に所定時間行って、図3(b)に示すように、銅配線9の表面に、触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜12を選択的に形成する。
【0047】
ここで、触媒含有銅合金からなる触媒含有膜12に含まれる触媒は、下記のように、配線保護膜10が次亜リン酸を還元剤とした無電解めっきで形成されるため、次亜リン酸に対して触媒活性がある物質である。したがって、触媒含有膜12に含有される触媒には、金(Au)、白金(Pt)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、モリブデン(Mo)及び酸化チタン(TiO2)などが挙げられる。
【0048】
これらの触媒のうち、配線抵抗の上昇が小さいものが好ましい。そのような触媒の条件として、(1)銅と固溶体や金属間化合物を作りにくいこと、(2)抵抗率が小さいこと、(3)銅の中を拡散しにくいことが挙げられる。
【0049】
銅と固溶体や金属間化合物を作りにくい触媒としては、銀(Ag)、コバルト(Co)、鉄(Fe)及びイリジウム(Ir)が挙げられる。また、銅の中を拡散しにくい触媒としては、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、コバルト(Co)、オスミウム(Os)及び酸化チタン(TiO2)が挙げられる。このため、触媒含有膜12に含有される触媒は、パラジウム、白金、コバルト、ニッケル、銀、鉄、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、酸化チタンのうちの少なくとも一つであることが好ましい。
【0050】
ここで、銅と固溶体や金属間化合物を作りにくい銀、コバルト、鉄、及びイリジウムと、銅の抵抗率を比較してみると、銀<銅<イリジウム<コバルト<鉄という関係がある。抵抗率が小さい触媒の方が、触媒含有による配線抵抗の上昇が小さい。また、銅の中を拡散しにくいイリジウム、ルテニウム、白金、ロジウム、ニッケル、パラジウム、およびコバルトの拡散係数を比較してみると、コバルト>パラジウム>ニッケル>ロジウム>白金>ルテニウム>イリジウムという関係である。拡散係数が小さい触媒の方が、触媒の拡散による配線抵抗の上昇が小さい。なお、オスミウムは融点が高く、重く、大きな元素であるので、結晶中や結晶粒界を移動しづらく、したがって、拡散係数が小さいと考えられる。また、酸化チタンは、分子が他の触媒よりも大きいので、銅の中を拡散しにくいことは明白である。
【0051】
この第1無電解めっき工程で使用されるめっき液(触媒含有銅合金めっき液)としては、グリオキシル酸を還元剤としたグリオキシル酸浴や、ジメチルアミンボラン(DMAB)を還元剤としたDMAB浴、ホルムアルデヒドを還元剤としたホルムアルデヒド浴が挙げられる。銀を触媒としたグリオキシル酸浴の組成の一例を表1に、他の一般的なグリオキシル酸浴の組成の一例を表2に、DMAB浴の組成の一例を表3に、ホルムアルデヒド浴の組成の一例を表4にそれぞれ示す。ここで、表中のEDTAは、エチレンジアミン四酢酸のことである。EDTAの代わりに、EDTAのナトリウム塩やアンモニウム塩などを用いても良い。なお、これらの組成は一例であり、めっきレートや触媒の種類、触媒の析出割合により各成分の濃度を適宜調整してもよいことは勿論である。このことは、以下同様である。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
グリオキシル酸浴及びDMAB浴においては、触媒を析出させるために金属硫酸塩を溶解させている。ここで、金属硫酸塩としては、硫酸銀、亜硫酸金ナトリウム、亜硫酸金アンモニウム、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸ニッケルアンモニウム、硫酸鉄、硫酸パラジウム、硫酸ロジウム、亜硫酸ルテニウム、及び硫酸イリジウムなどが挙げられる。また、白金、オスミウムは、硫酸塩の代わりに塩化白金酸、六塩化オスミウム二アンモニウムなどを用いる。モリブデンは、金属硫酸塩の代わりにモリブデン酸ナトリウム、パラモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、三酸化モリブデン等の含モリブデン化合物を用いる。また、酸化チタンは金属硫酸塩の代わりに酸化チタン超微粒子を用い、必要に応じて分散材を添加してもよい。
【0057】
ホルムアルデヒド浴においては、触媒を析出させるために金属硝酸塩を溶解させている。ここで、金属硝酸塩としては、硝酸銀、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸鉄、硝酸パラジウム、硝酸ロジウム、硝酸ルテニウム、及び硝酸イリジウムなどが挙げられる。また、白金、オスミウムは、硫酸塩の代わりに塩化白金酸、六塩化オスミウム二アンモニウムなどを用いる。モリブデンは、金属硝酸塩の代わりにモリブデン酸ナトリウム、パラモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、三酸化モリブデン等の含モリブデン化合物を用いる。また、酸化チタンは金属硫酸塩の代わりに酸化チタン超微粒子を用い、必要に応じて分散材を添加してもよい。
【0058】
ここで、触媒含有膜12に触媒機能を持たせるためには、ある程度の触媒の濃度が必要である。したがって、触媒含有膜12の触媒含有量は、触媒含有膜12と配線保護膜10との接触面での触媒の核密度として、1011atom/cm2以上に設定することが好ましい。このように設定することで、触媒含有膜12に触媒機能を持たせることができる。
【0059】
また、触媒含有膜12中の触媒の濃度が大きすぎると、配線抵抗を大きくしてしまう。したがって、触媒含有膜12の触媒含有量は、触媒含有膜12と配線保護膜10との接触面での触媒の核密度として、1011atom/cm2〜1014atom/cm2に設定することがより好ましい。
【0060】
前述のように、置換めっきによる触媒付与は、配線特性の劣化などの不具合を引き起こしてしまう。この例によれば、(f)第1無電解めっき工程によって、置換めっきによる触媒付与ではなく、触媒を含有する触媒含有膜12を形成することで、配線特性の劣化を抑制しつつ、配線保護膜の形成に必要な触媒を付与することができる。なお、(d)CMP工程によって絶縁膜2上のシード層7及びバリアメタル6が除去されているので、この例では、無電解めっきによって、触媒含有膜12を形成するようにしている。
【0061】
次に、第1無電解めっき装置22で、図4の(g)洗浄工程を行って、基板の表面を純水等で洗浄する。この洗浄工程では、基板を乾燥させないことが好ましく、これによって、触媒含有膜12の表面を有機物による汚染や酸化から守ることができる。
【0062】
次に、第1無電解めっき装置22から基板を搬送ロボット30で取出して、基板表面11が乾かないうちに第2無電解めっき装置24に搬送する。この第2無電解めっき装置24では、図4の(h)第2無電解めっき(無電解蓋めっき)工程を、基板の表面に所定時間行って、図3(c)に示すように、例えばCoWP、CoP、NiWP、NiP、CoMoP、CoWPB、CoPB、NiWPB、またはNiPB合金からなる配線保護膜10を触媒含有膜12の表面に選択的に形成し、これによって、銅配線9の表面を配線保護膜10で覆って銅配線9を保護する。このように、基板表面を乾燥させることなく、直ちに(h)第2無電解めっき(無電解蓋めっき)工程を行うことで、触媒含有膜12表面の有機物等による汚染や酸化を極力防ぐことができる。この第2無電解めっきは、次亜リン酸を還元剤とした無電解めっきであり、この無電解めっきで使用されるめっき液として、例えば下記の表5に示す組成の次亜リン酸ナトリウム浴が挙げられる。
【0063】
【表5】
【0064】
次に、第2無電解めっき装置24から基板を搬送ロボット30で取出して、洗浄・乾燥装置28の一つに搬送する。洗浄・乾燥装置28では、図4の(i)の洗浄・乾燥工程を行って、基板を純水で洗浄し高速で回転させてスピン乾燥させる。そして、スピン乾燥後の基板を洗浄・乾燥装置28から搬送ロボット30により取出し、処理の終了した基板としてロード・アンロード部20に戻す。
これらの一連の処理は、制御部32によって制御される。
【0065】
なお、第1無電解めっき装置22による無電解めっき後の基板を、無電解めっき装置22ではなく、2基の洗浄・乾燥装置28の内のいずれか一つで洗浄するようにしても良い。また第2無電解めっき装置24による無電解めっき後の基板を、2基の洗浄・乾燥装置28の内のいずれか一つで洗浄した後に、他方の洗浄・乾燥装置28で乾燥させるようにしても良い。このように、複数の洗浄・乾燥装置28を柔軟に使用することで、複数の基板を連続して処理する場合に、洗浄工程及び/または洗浄・乾燥工程の所要時間が、少なくとも一方の無電解めっき工程の所要時間よりも長い場合に、スループットを落とさないようにすることができる。どの洗浄・乾燥装置28で洗浄工程及び洗浄・乾燥工程を行うかは、洗浄・乾燥装置28の空き具合によって制御部32が決定する。
【0066】
この例によれば、本発明の配線構造の態様の一つである、図3(c)に示す配線構造を形成することができる。また、第1無電解めっき装置22による触媒含有膜12の成膜工程と、第2無電解めっき装置24による配線保護膜10の成膜工程を、半導体素子が形成された基板に繰り返して施すことにより、配線保護膜が形成され、かつ低抵抗な銅配線を有する半導体装置を製造することができる。
【0067】
なお、図5(a)に示すような、半導体素子を形成した半導体基材1上の導電層1aの上に絶縁膜2を堆積し、この絶縁膜2の内部にリソグラフィ・エッチング技術によりコンタクトホール3とトレンチ4とからなる微細な配線用凹部5を形成し、その上にTaN等からなる拡散抑制用のバリアメタル6及びシード層7を順次形成し、表面に銅めっきを施すことによって、基板Wの配線用凹部5内に銅めっき膜8を充填するとともに、バリアメタル6上に銅めっき膜8を堆積した基板Wを用意する。そして、化学機械的研磨(CMP)により、絶縁膜2上の銅めっき膜8、シード層7及びバリアメタル6を除去して、配線用凹部5の内部に充填した銅めっき膜8の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にして銅めっき膜8からなる埋込み銅配線9を形成すると、図5(b)に示すように、銅配線9の表面にディッシング14が形成されることがある。
【0068】
このような場合にあっても、前述と同様にして、銅配線9の表面に、図6(a)に示すように、触媒含有膜12を選択的に形成し、この触媒含有膜12の表面に、図6(b)に示すように、配線保護膜10を選択的に形成し、これによって、この配線保護膜10で銅配線9の露出表面を覆って銅配線9を保護することができる。
したがって、この例では、本発明の配線構造の態様の一つである、図6(b)に示す配線構造を形成することができる。また、これらの工程を半導体素子が形成された基板に繰り返して施すことにより、配線保護膜が形成され、かつ低抵抗な銅配線を有する半導体装置を製造することができる。
【0069】
図7は、図1(a)に示すような、バリアメタル6及びシード層7で覆われた配線用凹部5を有する基板Wを用意し、この基板Wの表面に銅めっきを施すことによって、基板Wの配線用凹部内に銅または銅合金めっき膜(銅めっき膜)を充填するとともに、シード層上に銅めっき膜を堆積し、更に、この銅めっき膜の表面に、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を形成するようにした、本発明の他の実施の形態の配線形成装置の平面配置図を示す。なお、以下の例では、銅めっき膜及び触媒合金膜を電気めっきで形成するようにしているが、どちらか一方または双方を無電解めっきで形成するようにしてもよい。
【0070】
図7に示すように、この配線形成装置は、複数の基板を収納する2基のロード・アンロード部40、基板の表面に埋込み用の銅めっき膜を形成する2基の第1電気めっき装置42、銅めっき膜の表面に次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を形成する第2電気めっき装置44、基板の洗浄を行う洗浄・乾燥装置46を有している。更に、配線形成装置には、上記ロード・アンロード部40及び上記各電気めっき装置42,44との間で基板の受渡しを行う走行自在な搬送ロボット48が配置され、更に、これらを制御する制御部50が備えられている。
【0071】
次に、図7に示す配線形成装置による一連の処理について、図1、図8及び図10の(a)第1電気めっき工程から(d)洗浄・乾燥工程を参照して説明する。先ず、図1(a)に示すような、バリアメタル6及びシード層7で覆われた配線用凹部5を有する基板Wを用意し、ロード・アンロード部40に収納しておく。そして、1枚の基板をロード・アンロード部40から搬送ロボット48で取出して第1電気めっき装置42に搬送する。ここで、図10(a)の第1電気めっき工程を、基板Wの表面(基板表面11)に所定時間行って、図8(a)に示すように、配線用凹部5の内部に銅または銅合金めっき膜(銅めっき膜)8を埋込みながら、絶縁膜2の表面に銅めっき膜8を堆積させる。このとき、配線用凹部5が銅めっき膜8で完全に埋込まれる前に、第1電気めっき工程を終了する。この電気めっきに使用されるめっき液(銅または銅合金めっき液)の組成は、例えば表6に示す通りである。
【0072】
【表6】
【0073】
次に、第1電気めっき装置42から基板を搬送ロボット48で取出して、洗浄・乾燥装置46に搬送する。洗浄・乾燥装置46では、図10の(b)洗浄工程を行って、基板表面11を純水により洗浄する。その際、基板表面11を乾燥させないことが好ましい。これによって、銅めっき膜8の表面を有機物による汚染や酸化から守ることができる。
【0074】
そして、洗浄・乾燥装置46から基板を搬送ロボット48で取出して、基板表面11が乾かないうちに第2電気めっき装置44に搬送する。第2電気めっき装置44では、図10の(c)第2電気めっき工程を、基板Wの表面(基板表面11)に所定時間行って、図8(b)に示すように、銅めっき膜8の表面に次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜16を形成する。この第2電気めっき装置44に使用される、触媒として銀を使用しためっき液(触媒含有銅合金めっき液)の組成は、例えば表7に示す通りである。
【0075】
【表7】
【0076】
次に、第2電気めっき装置44から基板を搬送ロボット48で取出して、洗浄・乾燥装置46に搬送する。洗浄・乾燥装置46では、図10の(d)洗浄・乾燥工程を行って、基板表面11を純水で洗浄し、高速回転させてスピン乾燥させる。そして、スピン乾燥後の基板を洗浄・乾燥装置46から搬送ロボット48で取出し、処理の終了した基板としてロード・アンロード部40に戻す。
これらの一連の処理は、制御部50によって制御される。
【0077】
なお、上述の説明では、2基の第1電気めっき装置42と1基の第2電気めっき装置44を備えた例を示している。このように、2基の第1電気めっき装置42を使用する理由は、複数の基板を連続して処理する場合に、第1電気めっき装置42によるめっき工程の所要時間が、第2電気めっき装置44によるめっき工程の所要時間よりも長い場合に、スループットを落とさないようにするためである。第2電気めっき装置44によるめっき工程の所要時間が、第1電気めっき装置42によるめっき工程の所要時間よりも長い場合には、1基の第1電気めっき装置42と2基の第2電気めっき装置44を備えるようにしてもよい。
【0078】
この例にあっては、上記のようにして、基板の表面に銅めっき膜8及び触媒含有膜16を積層した後、図10の(e)アニール工程を行って、銅めっき膜8及び触媒含有膜16をアニールする。そして、図10の(f)CMP工程を行って、図9(a)に示すように、化学機械的研磨(CMP)により、絶縁膜2上の銅めっき膜8、触媒含有膜16、シード層7及びバリアメタル6を除去して、配線用凹部5の内部に充填した銅めっき膜8の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1(c)に示すような銅または銅合金めっき膜8及びシード層7からなる銅または銅合金配線(銅配線)9を形成する。この時、第1電気めっき工程の際に配線用凹部5を銅めっき膜8で完全に埋込んでいないので、銅配線9の基板表面11側の界面の一部が触媒含有膜16で覆われることになる。
【0079】
そして、図10の(g)洗浄・乾燥工程を行って、基板の表面を純水等で洗浄し、高速回転させてスピン乾燥させる。その後、前述と同様にして、図10の(h)無電解(蓋)めっき工程を行って、図9(b)に示すように、銅配線9の一部を覆う触媒含有膜16の表面、および銅配線9の露出表面を覆うように、例えばCoWP、CoP、NiWP、NiP、CoMoP、CoWPB、CoPB、NiWPB、またはNiPB合金からなる配線保護膜10を選択的に形成する。そして、図10の(i)洗浄・乾燥工程を行って、基板の表面を純水等で洗浄し、高速回転させてスピン乾燥させる。
【0080】
これにより、本発明の配線構造の態様の一つである、図9(b)に示す配線構造を形成することができる。また、これらの工程を半導体素子が形成された基板に繰り返して施すことにより、配線保護膜が形成され、かつ低抵抗な配線を有する半導体装置を製造することができる。
【0081】
この例では、銅配線9の上面と配線保護膜10の下面とが一部で互いに接する構造となる。このような場合、配線保護膜10との接触面における触媒含有膜16の配線幅に対する割合が小さすぎると、配線保護膜10の良好な形成に支障が生じる。逆に大きすぎても、この構造の特徴である配線抵抗の上昇の抑制を阻害してしまう。したがって、配線保護膜10との接触面における触媒含有膜16の配線幅に対する割合は、一般には5%〜90%程度で、10%〜80%程度であることが好ましく、10%〜60%程度であることが更に好ましい。これは、本発明の他の実施の形態においても同様である。
【0082】
なお、銅または銅合金からなる銅配線9に触媒機能ではない他の機能を持たせるために、第1電気めっき装置42で使用されるめっき液(銅または銅合金めっき液)に触媒と同一の物質を含有させてもよい。例えば、銅配線9に銀を散在させてエレクトロマイグレーション耐性の向上機能を持たせるために、銅または銅合金めっき液に銀を含有させてもよい。前述のように、銀は次亜リン酸を還元剤とした無電解めっきの触媒作用を有している。したがって、銀は、銅配線9と触媒含有膜16の両方に含有される場合がある。この場合、銅配線9では、銀含有量をエレクトロマイグレーション耐性機能が有効となり、かつ抵抗の上昇が極力抑えられる含有量にする。また、触媒含有膜16の銀含有量を触媒機能が有効となる含有量とする。こうすることで、低抵抗で配線保護膜を持ち、エレクトロマイグレーション耐性にも優れた銅配線9を形成することができる。よって、本発明は、このように同一の物質を触媒機能とそれ以外の機能の両方に利用する場合にも有効である。これは、本発明の他の実施の形態においても同様である。
【0083】
この例では、第1電気めっき装置42と第2電気めっき装置44で、異なる組成のめっき液を使用している。すなわち、第1電気めっき装置42では、低抵抗機能を有する銅配線9を形成するための第1のめっき液(銅または銅合金めっき液)を用い、第2電気めっき装置44では、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する第2のめっき液(触媒含有銅合金めっき液)を用いる。したがって、第1の電気めっき装置42では銅配線9を形成する銅めっき膜8を形成し、第2の電気めっき装置44では、めっきの際に銅と触媒が共に析出し、触媒機能を有する触媒含有膜16を形成することができる。前述のように、銅配線9と触媒含有膜16の両方に触媒と同一の物質(例えば銀など)が含有される場合、第1電気めっき装置42に使用されるめっき液と第2電気めっき装置44に使用されるめっき液における触媒含有量は、それぞれの目的に合せて、互いに異なることが望ましい。
【0084】
第1電気めっき装置42には、従来から知られている銅または銅合金めっき液が使用される。第2電気めっき装置44には、少なくとも次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒と銅を含有する触媒含有銅合金めっき液が使用される。第2電気めっき装置44に使用される触媒含有銅合金めっき液としては、金属硫酸塩を主に用いた硫酸浴と、金属シアン化塩を主に用いたシアン化浴が挙げられる。硫酸浴の組成の一例を表8に、シアン化浴の組成の一例を表9にそれぞれ示す。
【0085】
【表8】
【0086】
【表9】
【0087】
硫酸浴においては、触媒の析出のために金属硫酸塩を溶解させる。ここで、金属硫酸塩としては、硫酸銀、亜硫酸金ナトリウム、亜硫酸金アンモニウム、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸ニッケルアンモニウム、硫酸鉄、硫酸パラジウム、硫酸ロジウム、亜硫酸ルテニウム、及び硫酸イリジウムなどが挙げられる。白金、オスミウムは、金属硫酸塩の代わりに塩化白金酸、六塩化オスミウム二アンモニウムなどが用いられる。モリブデンは、金属硫酸塩の代わりにモリブデン酸ナトリウム、パラモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、三酸化モリブデン等の含モリブデン化合物を用いる。また、酸化チタンは、金属硫酸塩の代わりに酸化チタン超微粒子を用い、必要に応じて分散材を添加してもよい。
【0088】
シアン化浴においては、触媒の析出のために金属シアン化塩を溶解させる。ここで、金属シアン化塩としては、シアン化銀、シアン化金、シアン化金カリウム、シアン化金ナトリウム、シアン化白金カリウム、シアン化白金ナトリウム、シアン化コバルトカリウム、シアン化ニッケルカリウム、フェロシアン化鉄、シアン化パラジウム、シアン化パラジウムカリウム、シアン化ルテニウムカリウム、シアン化ロジウムカリウム、及びシアン化イリジウム三カリウムなどが挙げられる。モリブデンは、金属シアン化塩の代わりにモリブデン酸ナトリウム、パラモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、三酸化モリブデン等の含モリブデン化合物を用いる。また、酸化チタンは、金属硫酸塩の代わりに酸化チタン超微粒子を用い、必要に応じて分散材を添加してもよい。
【0089】
なお、銅配線9を構成する銅めっき膜8と触媒含有膜16とを、異なるめっき液を使用して、同一の電気めっき装置で形成することもできる。即ち、先ず、電気めっき装置に銅配線9を構成する銅めっき膜8を形成する第1のめっき液を導入して銅または銅合金めっきを行い、電気めっき装置から第1のめっき液を排出した後、電気めっき装置に触媒含有膜16を形成する第2のめっき液を導入して触媒含有銅合金めっきを行う。しかし、同一の電気めっき装置で組成の異なるめっき液を使用しためっきを行うと、各めっき工程間にめっき装置の洗浄工程を入れたとしても、微量ではあるがめっき装置に残留物が残ってしまう。このめっき装置の残留物は、銅配線9と触媒含有膜16を互いに汚染し、機能分離の効果が薄れてしまう。したがって、銅配線9を構成する銅めっき膜8と触媒含有膜16とを異なる電気めっき装置で個別に行うことが好ましい。これにより、上述のような残留物による汚染を低減して、本発明の最大の特徴である、銅配線9と触媒含有膜16の機能分離の効果を最大限に発揮することができる。さらに、めっき工程間に洗浄工程を入れることにより、基板の残留物による汚染も低減することができる。
【0090】
図11は、本発明の更に他の実施の形態の配線形成装置を示す。図11に示す例の、前記図7に示す例と異なる点は、図7に示す第1電気めっき装置42と第2電気めっき装置44の代わりに、同一の組成のめっき液を使用して、銅または銅合金配線(銅配線)9を構成する銅または銅合金めっき膜(銅めっき膜)8と触媒含有膜16を形成する、電気めっき装置60を2基用い、更に2基の洗浄・乾燥装置46を使用した点である。その他の構成は、図7に示す例と同様である。
【0091】
この例では、基板をロード・アンロード部20から搬送ロボット30で取出して電気めっき装置60に搬送し、この電気めっき装置60で、銅配線9を構成する銅めっき膜8の形成(第1のめっき工程)と触媒含有膜16の形成(第2のめっき工程)とを連続して行う。この第1のめっき工程と第2のめっき工程の切替えは、例えば、制御部50によって、浴電圧を自動的に切替ることによって行われる。この電気めっき装置60で使用されるめっき液の組成は、例えば、表10に示す通りである。
【0092】
【表10】
【0093】
更に、この例にあっては、共に2基の電気めっき装置60と洗浄・乾燥装置46を備えることで、電気めっき装置60によるめっき処理と、洗浄・乾燥装置46による洗浄・乾燥処理を互いに並行に行って、スループットを高めることができる。
【0094】
この電気めっき装置60にあっては、同一の組成のめっき液を使用し、先ず、第1のめっき工程において、銅または銅合金が優先的に析出する条件でめっきを行い、しかる後、第2のめっき工程において、銅または銅合金と触媒が共に析出する条件でめっきを行う。同一の組成のめっき液でこのようなめっきを実現するために、銅の平衡電位よりも低い(卑な)平衡電位を持つ触媒と銅をめっき液に含有させる必要がある。銅の平衡電位よりも低い(卑な)平衡電位を持つ触媒金属としては、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)及び鉄(Fe)が挙げられる。
【0095】
図12は、銅(Cu)とコバルト(Co)の電位(Potential)−pHダイヤグラムを重ねて示した図である。図13は、銅(Cu)とニッケル(Ni)の電位(Potential)−pHダイヤグラムを、図14は、銅(Cu)と鉄(Fe)の電位(Potential)−pHダイヤグラムを重ねて示した図である。めっき液中での金属錯体の状態や合金の生成エネルギーによって平衡電位などは変化するが、ここでは定性的な説明をするために、水溶液中の単成分での図を重合せたものを使用している。
【0096】
図12において、斜線部分は銅と触媒金属であるCoが共に析出する範囲で、塗り潰した部分は銅のみが析出する範囲である。図13及び図14も同様に、斜線部分は銅と触媒金属であるNiまたはFeが共に析出する範囲で、塗り潰した部分は銅のみが析出する範囲である。
【0097】
したがって、第1のめっき工程では、銅が選択的に析出する範囲、即ち、例えば図12乃至図14の塗り潰した部分に相当する範囲になるように、浴電圧または浴電流または浴電流密度を調節してめっきを行えばよい。また、第2のめっき工程では、銅と触媒が共に析出する範囲、即ち図12乃至図14の斜線部分に相当する範囲になるように、浴電圧または浴電流または浴電流密度を調節してめっきを行えばよい。このように、第1のめっき工程と第2のめっき工程は、共に電気めっきにより実現することができる。
【0098】
ここで、“同一の組成のめっき液”は、組成が完全に同一なめっき液である場合に限ることなく、同等な作用・効果が得られることを当業者であれば常識として理解できる程度の相違、例えば、めっきによる組成変化程度の相違や、消耗成分の補給による組成変化程度の相違は含まれるのであり、換言すれば実質同一を意味する。
【0099】
また、第1のめっき工程と第2のめっき工程の浴電圧、浴電流または浴電流密度は、銅めっき膜8及び触媒含有膜16の形成工程に先立って決定される。ここでは、浴電圧、浴電流または浴電流密度の決定方法について、浴電圧を例に説明する。
【0100】
まず、めっき液を用いて、サンプル基板に種々の浴電圧でめっきを実施する。その際に使用するサンプル基板は、導電性のある板であれば良いが、めっき膜の抵抗率測定を容易にするために、例えば予め極薄く(100nm程度に)銅が成膜されたシリコン基板であることが好ましい。この極薄く銅が成膜されたシリコン基板上に、第1のめっき工程と第2のめっき工程で使用するめっき液を用いて、種々の浴電圧でめっき膜を成膜する。次に、サンプル基板にめっきされためっき膜の抵抗率を測定する。これにより、めっきの際の浴電圧とめっき膜の抵抗率の関係が分かる。次に、めっきされたサンプル基板を配線保護膜の形成に使用する無電解めっき液を用いてめっきする。無電解めっきができるか否かで、めっきの際の浴電圧とめっき膜の触媒活性の関係が分かる。
【0101】
第1のめっき工程では、めっきの際の浴電圧とめっき膜の抵抗率の関係から、抵抗率が配線の仕様より小さくなる浴電圧を選択すればよい。また、第2のめっき工程では、めっきの際の浴電圧とめっき膜の触媒活性の関係から、触媒活性がある浴電圧を選択すれば良い。なおかつめっきの際の浴電圧とめっき膜の抵抗率の関係から抵抗率が小さい浴電圧を選択すれば、配線抵抗の上昇を抑制することができる。したがって、図12乃至図14に示すような電位−pHダイヤグラムを実際のめっき液で作成する必要は無い。
【0102】
以上により、第1のめっき工程及び第2のめっき工程における浴電圧を決定することができる。なお、浴電圧の代わりに浴電流または浴電流密度を用いて同様の工程を実施することにより、第1のめっき工程及び第2のめっき工程における浴電流または浴電流密度を決定することができる。
【0103】
次に、電気めっき装置60に使用されるめっき液は、コバルト、ニッケル、モリブデン、鉄のうちの少なくとも一つと銅を含有する必要がある。このようなめっき液としては、金属硫酸塩を主に用いた硫酸浴と、金属シアン化塩を主に用いたシアン化浴などが挙げられる。硫酸浴の組成の一例を表11に、シアン化浴の組成の一例を表12に示す。
【0104】
【表11】
【0105】
【表12】
【0106】
硫酸浴においては、触媒の析出のために金属硫酸塩を溶解させる。ここで、金属硫酸塩としては、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸ニッケルアンモニウム、及び硫酸鉄などが挙げられる。モリブデンは、金属硫酸塩の代わりにモリブデン酸ナトリウム、パラモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、三酸化モリブデン等の含モリブデン化合物を用いる。シアン化浴においては、触媒の析出のために金属シアン化塩を溶解させる。金属シアン化塩としては、シアン化コバルトカリウム、シアン化ニッケルカリウム、及びフェロシアン化鉄などが挙げられる。モリブデンは、金属シアン化塩の代わりにモリブデン酸ナトリウム、パラモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、三酸化モリブデン等の含モリブデン化合物を用いる。
【0107】
このように、同一の組成のめっき液で銅めっき膜8の形成(第1のめっき工程)と触媒含有膜16の形成(第2のめっき工程)を行うことにより、工程間のめっき液の相違を起因とする汚染の問題が無い。また、共通の電気めっき装置60を用いることにより、第1のめっき工程と第2のめっき工程を連続して実施することができ、これによって、スループット(単位時間内のウェーハ処理量)を向上させることができる。
【0108】
電気めっき装置60で銅めっき膜8の形成(第1のめっき工程)と触媒含有膜16の形成(第2のめっき工程)を連続して行うためには、第1のめっき工程の終了後、直ちに、浴電圧、浴電流または浴電流密度を切替えて、第2のめっき工程に切替えればよい。その際の切替えのタイミングは、めっき膜厚やめっき時間を参考に行う。例えば、予め実験により決めておいた第1のめっき工程のめっき時間が経過すれば、浴電圧、浴電流または浴電流密度を切替るようにする。この浴電圧、浴電流または浴電流密度の切替えは、制御部50によって行う。
【0109】
この例では、上述のようにして、図8(b)に示すように、基板の表面に銅めっき膜8及び触媒含有膜16を積層することができる。この後、図10(e)から(i)の工程を実施することにより、本発明の配線構造の態様の一つである、図9(b)に示す配線構造を形成することができる。また、これらの工程を半導体素子が形成された基板に繰り返して施すことにより、配線保護膜が形成され、かつ低抵抗な銅配線を有する半導体装置を製造することができる。
【0110】
通常の銅配線形成工程においては、パラジウムなどの置換めっきによる触媒付与工程が実施される。この置換めっきによる触媒付与によって、前述のように配線特性の劣化などの不具合が引き起こされる。
本発明によれば、前述のように、置換めっきによる触媒付与を行っていないので、配線特性の劣化を抑制しつつ、低抵抗の配線保護膜付き銅配線を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】銅配線を有する半導体装置を得るのに使用される配線形成方法の基本工程を工程順に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態の配線形成装置を示す平面配置図である。
【図3】図2に示す配線形成装置による一連の処理を工程順に示す図である。
【図4】図2に示す配線形成装置を使用して配線を形成する例を工程順に示すブロック図である。
【図5】配線形成例におけるCMP工程後まで工程順に示す図である。
【図6】本発明の配線形成例におけるCMP後を工程順に示す図である。
【図7】本発明の他の実施の形態の配線形成装置を示す平面配置図である。
【図8】図7に示す配線形成装置による一連の処理を工程順に示す図である。
【図9】本発明の配線形成例における図8に示す工程後の処理を工程順に示す図である。
【図10】図7に示す配線形成装置を使用して配線を形成する例を工程順に示すブロック図である。
【図11】本発明の更に他の実施の形態の配線形成装置を示す平面配置図である。
【図12】銅(Cu)とコバルト(Co)の電位(Potential)−pHダイヤグラムを重ねて示した図である。
【図13】銅(Cu)とニッケル(Ni)の電位(Potential)−pHダイヤグラムを重ね合せた図である。
【図14】銅(Cu)と鉄(Fe)の電位(Potential)−pHダイヤグラムを重ねて示した図である。
【符号の説明】
【0112】
2 絶縁膜
3 コンタクトホール
4 トレンチ
5 配線用凹部
6 バリアメタル
7 シード層
8 銅めっき膜
9 銅配線
10 配線保護膜
11 基板表面
12,16 触媒含有膜
14 ディッシング
20,40 ロード・アンロード部
22,24 無電解めっき装置
26 前処理装置
28,46 洗浄・乾燥装置
32,50 制御部
42,44,60 電気めっき装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成した銅または銅合金配線の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜で選択的に覆われており、
前記触媒含有膜の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜で選択的に覆われたことを特徴とする配線構造。
【請求項2】
基板に形成した銅または銅合金配線の基板表面側の界面の少なくとも一部の領域が、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜で覆われており、
前記銅または銅合金配線の基板表面側の界面と前記触媒含有膜の基板表面側の界面とが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜で選択的に覆われたことを特徴とする配線構造。
【請求項3】
前記触媒は、金、パラジウム、白金、コバルト、ニッケル、銀、鉄、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、モリブデン、及び酸化チタンのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または2記載の配線構造。
【請求項4】
表面に銅または銅合金配線を形成した基板を用意し、
前記銅または銅合金配線の表面の少なくとも一部の領域に、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を無電解めっきで形成し、
前記触媒含有膜の表面に、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで配線保護膜を選択的に形成することを特徴とする配線形成方法。
【請求項5】
表面に配線用凹部を形成した基板を用意し、
前記基板の表面に第1のめっきを行って、前記配線用凹部の内部の一部に銅または銅合金を埋込みながら銅または銅合金めっき膜を形成し、
前記銅または銅合金めっき膜の表面に第2のめっきを行って、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を形成し、
基板の表面を平坦に研磨して、前記配線用凹部内に埋込まれた銅または銅合金めっき膜であって、少なくとも基板表面側の界面の一部を前記触媒含有膜で覆われた銅または銅合金配線を形成し、
次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきを行って、前記触媒含有膜の表面および前記銅または銅合金配線の表面に配線保護膜を選択的に形成することを特徴とする配線形成方法。
【請求項6】
前記触媒は、金、パラジウム、白金、コバルト、ニッケル、銀、鉄、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、モリブデン、及び酸化チタンのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項4または5記載の配線形成方法。
【請求項7】
前記第1のめっき及び前記第2のめっきは、共に同一の組成のめっき液を用いた電気めっきであり、
前記第1のめっきでは前記銅または銅合金が優先的に析出するように、前記第2のめっきでは前記銅または銅合金及び触媒が共に析出するように、浴電圧、浴電流または浴電流密度を制御することを特徴とする請求項5記載の配線形成方法。
【請求項8】
前記触媒は、コバルト、ニッケル、モリブデン、及び鉄のうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項7記載の配線形成方法。
【請求項9】
基板に形成した銅または銅合金配線の表面の少なくとも一部の領域に、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を形成する第1無電解めっき装置と、
前記触媒含有膜の表面に、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで配線保護膜を選択的に形成する第2無電解めっき装置を有することを特徴とする配線形成装置。
【請求項10】
表面に形成した配線用凹部の内部の一部に銅または銅合金を埋込みながら銅または銅合金めっき膜を形成する第1めっき装置と、
前記銅または銅合金めっき膜の表面に、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を形成する第2めっき装置を有することを特徴とする配線形成装置。
【請求項11】
前記第1めっき装置及び前記第2めっき装置は、同一の組成のめっき液を用いる一つの電気めっき装置として構成されており、
この電気めっき装置は、銅または銅合金が優先的に析出する第1のめっきと、銅または銅合金及び触媒が共に析出する第2のめっきを行うよう、浴電圧、浴電流または浴電流密度を制御する制御部を有することを特徴とする請求項10記載の配線形成装置。
【請求項12】
銅または銅合金配線の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜で選択的に覆われており、前記触媒含有膜の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜で選択的に覆われた配線を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
銅または銅合金配線の基板表面側の界面の少なくとも一部の領域が、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜で覆われており、前記銅または銅合金配線の基板表面側の界面と前記触媒含有膜の基板表面側の界面とが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜で選択的に覆われた配線を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
前記触媒は、金、パラジウム、白金、コバルト、ニッケル、銀、鉄、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、モリブデン、及び酸化チタンのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項12または13記載の半導体装置。
【請求項1】
基板に形成した銅または銅合金配線の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜で選択的に覆われており、
前記触媒含有膜の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜で選択的に覆われたことを特徴とする配線構造。
【請求項2】
基板に形成した銅または銅合金配線の基板表面側の界面の少なくとも一部の領域が、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜で覆われており、
前記銅または銅合金配線の基板表面側の界面と前記触媒含有膜の基板表面側の界面とが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜で選択的に覆われたことを特徴とする配線構造。
【請求項3】
前記触媒は、金、パラジウム、白金、コバルト、ニッケル、銀、鉄、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、モリブデン、及び酸化チタンのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または2記載の配線構造。
【請求項4】
表面に銅または銅合金配線を形成した基板を用意し、
前記銅または銅合金配線の表面の少なくとも一部の領域に、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を無電解めっきで形成し、
前記触媒含有膜の表面に、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで配線保護膜を選択的に形成することを特徴とする配線形成方法。
【請求項5】
表面に配線用凹部を形成した基板を用意し、
前記基板の表面に第1のめっきを行って、前記配線用凹部の内部の一部に銅または銅合金を埋込みながら銅または銅合金めっき膜を形成し、
前記銅または銅合金めっき膜の表面に第2のめっきを行って、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を形成し、
基板の表面を平坦に研磨して、前記配線用凹部内に埋込まれた銅または銅合金めっき膜であって、少なくとも基板表面側の界面の一部を前記触媒含有膜で覆われた銅または銅合金配線を形成し、
次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきを行って、前記触媒含有膜の表面および前記銅または銅合金配線の表面に配線保護膜を選択的に形成することを特徴とする配線形成方法。
【請求項6】
前記触媒は、金、パラジウム、白金、コバルト、ニッケル、銀、鉄、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、モリブデン、及び酸化チタンのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項4または5記載の配線形成方法。
【請求項7】
前記第1のめっき及び前記第2のめっきは、共に同一の組成のめっき液を用いた電気めっきであり、
前記第1のめっきでは前記銅または銅合金が優先的に析出するように、前記第2のめっきでは前記銅または銅合金及び触媒が共に析出するように、浴電圧、浴電流または浴電流密度を制御することを特徴とする請求項5記載の配線形成方法。
【請求項8】
前記触媒は、コバルト、ニッケル、モリブデン、及び鉄のうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項7記載の配線形成方法。
【請求項9】
基板に形成した銅または銅合金配線の表面の少なくとも一部の領域に、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を形成する第1無電解めっき装置と、
前記触媒含有膜の表面に、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで配線保護膜を選択的に形成する第2無電解めっき装置を有することを特徴とする配線形成装置。
【請求項10】
表面に形成した配線用凹部の内部の一部に銅または銅合金を埋込みながら銅または銅合金めっき膜を形成する第1めっき装置と、
前記銅または銅合金めっき膜の表面に、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する触媒含有銅合金からなる触媒含有膜を形成する第2めっき装置を有することを特徴とする配線形成装置。
【請求項11】
前記第1めっき装置及び前記第2めっき装置は、同一の組成のめっき液を用いる一つの電気めっき装置として構成されており、
この電気めっき装置は、銅または銅合金が優先的に析出する第1のめっきと、銅または銅合金及び触媒が共に析出する第2のめっきを行うよう、浴電圧、浴電流または浴電流密度を制御する制御部を有することを特徴とする請求項10記載の配線形成装置。
【請求項12】
銅または銅合金配線の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜で選択的に覆われており、前記触媒含有膜の基板表面側の界面の全てが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜で選択的に覆われた配線を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
銅または銅合金配線の基板表面側の界面の少なくとも一部の領域が、次亜リン酸を還元剤として用いる無電解蓋めっきの際の触媒を含有する、めっきで形成された触媒含有銅合金からなる触媒含有膜で覆われており、前記銅または銅合金配線の基板表面側の界面と前記触媒含有膜の基板表面側の界面とが、次亜リン酸を還元剤とした無電解蓋めっきで形成された配線保護膜で選択的に覆われた配線を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
前記触媒は、金、パラジウム、白金、コバルト、ニッケル、銀、鉄、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、モリブデン、及び酸化チタンのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項12または13記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−160002(P2008−160002A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349508(P2006−349508)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
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