説明

金属−絶縁体相転移材料を用いた機能要素の形成方法及びこれによって形成された機能要素、並びに機能デバイスの製造方法及びこれによって製造された機能デバイス

【課題】金属−絶縁体相転移材料として二酸化バナジウム(VO2)を用いた機能要素の形成方法及びこれによって形成された機能要素、並びに機能デバイスの製造方法及びこれによって製造された機能デバイスを提供すること。
【解決手段】基板40の面に、金属−絶縁体相転移材料10としてVO2薄膜が形成されており、平行な2つの電極15a、15bがVO2薄膜の面に形成されている。両電極を結ぶ複数の機能要素としての金属配線20a〜20eは、レーザ光源30からのレーザ35がVO2薄膜に走査方向37で走査され、レーザ35によって照射されたVO2薄膜の部分が絶縁相から金属相に相転移して金属化されるにことよって形成される。金属配線が形成された領域の少なくとも一部にレーザを照射し、高温(例えば、100℃)とした後、低温(例えば、室温)に冷却して絶縁体化させて、金属配線が形成された領域の少なくとも一部を消去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属−絶縁体相転移材料として二酸化バナジウム(VO2)を用いた機能要素の形成方法及びこれによって形成された機能要素、並びに機能デバイの製造方法及びこれによって製造された機能デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、能動素子や受動素子から構成される半導体装置における配線には、例えば、アルミニウムや銅等の金属が用いられ、金属のスパッタリング、蒸着等による金属膜形成工程、レジスト層形成工程、マスク露光工程、現像工程、金属エッチング工程、レジスト剥離工程等によって、配線パターンが形成されている。配線パターンが1層で形成できない場合には、複数の層に分けて配線パターンを形成し多層配線とし、異なる層に形成された配線パターンは、層間に形成されたビアプラグによって電気的に接続されている。
【0003】
エッチング工程によらず配線パターン形成し、配線パターンを形成した後でも配線パターンの変更や修正を可能とするとしている従来技術文献として、例えば、「配線基板及びその製造方法」と題する後記の特許文献1があり、特許文献1には、次の記載がある。
【0004】
特許文献1の発明の配線基板は、素子間(例えば電子、電気回路等)の配線を有する配線基板において、該配線部が、安定状態である絶縁状態と準安定状態である導体状態の何れの状態でも存在可能な光誘起相転移物質の、導体状態で構成されていることを特徴としている。
【0005】
また、この配線基板の製造方法は、光誘起相転移物質の光による導体化工程で、配線パターンを、マスクを用いて形成するか直接レーザ走査照射で形成することを特徴とするとしている。
【0006】
配線部に用いられる材料は、光を照射又は熱を加えることにより相転移が生じる主として遷移金属又はその酸化物で構成されるものであり、該遷移金属酸化物としては、一般式Axyz(式中、x、y、zはそれぞれ、1≦x≦14、1≦y≦24、1≦z≦41であり、A、Bは同じ元素であっても異なる元素であってもよい)で表されるものが一般的である。このような遷移金属酸化物は、光を照射することにより原子系のエネルギー状態が変化し、結晶格子の変位が起こり、これに基づいて相転移現象が発現するものと考えられるとしている。以上が、特許文献1に記載の内容である。
【0007】
金属−絶縁体相転移を示す物質として二酸化バナジウム(VO2)が知られている。このVO2は、室温において単斜晶型結晶であるが、68℃付近にて金属−絶縁体相転移を示し、ルチル型結晶へと相転移する酸化物であり、電気抵抗値が3桁以上変化することが広く知られている。VO2は、電気抵抗率の温度変化率が大きいことからボロメータ型赤外線温度センサに用いられている(例えば、後記する特許文献2を参照。)。
【0008】
二酸化バナジウムには、金属−絶縁体相転移を示さない異結晶構造のVO2(B)と呼ばれる結晶相が存在するため、単斜晶型−ルチル型の相転移構造を有する二酸化バナジウムは、VO2(M)又はVO2(R)と一般的に表記されている。
【0009】
VO2(M)又はVO2(R)と一般的に表記されている二酸化バナジウム薄膜は、電場によって金属−絶縁体相転移することが報告されており、電界効果トランジスタ、スイッチング素子、メモリ素子としての可能性が知られている(例えば、後記する特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、非特許文献1、非特許文献2を参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の配線パターンの形成工程は煩雑であり、配線が形成された後では、配線パターンの一部を変更したり修正したりしたいという設計変更が発生した場合、これに対応して配線の一部をやり直し変更することができない。多層配線では深部層の配線のやり直しは全く不可能である。このような、配線の変更を可能とするには、非破壊的に電気配線を自由自在に作製、消去できる機能が必須である。
【0011】
回路の電気配線変更の自由度を高め、集積化を実現するためには、電気配線そのものを、レイアウト変更可能、且つ、書き換え可能なものにすることが最良であり、これを実現するためには、金属細線を任意の箇所のみに作製、除去する方法が必要となる。表面に露出していない深部に形成された集積回路内では、化学的又は物理的な手法によって、電気配線のみを局所的に取り除くことは不可能である。
【0012】
これまで、回路の電気配線は、予め設計されたレイアウト上に形成され、配線そのものの書き換えは不可能であった。特に集積回路は、微小な配線の集合体であり、配線変更はほぼ不可能であった。
【0013】
専用システム回路の殆どを占める論理回路では回路の汎用性がなく、それぞれのデバイスに対して個別専用のレイアウトで構成されている。従って、多品種になるにつれて、その製造コストは莫大なものとなってしまう。
【0014】
このシステム回路を汎用化し、製造工程完了後に配線を書き込むことができれば、同じレイアウト上にて個別の専用システム回路を形成でき、大幅なコスト低減に繋がる。また、システム動作テストを実際の回路上で行い、回路の改良をその場で施すことが可能となるので、テスト回路の作製の手間を省略することができる。
【0015】
配線の書き換え可能な集積回路は、コスト低減や開発時間短縮の効果だけでなく、擬似シナプス素子として脳型情報処理用の実時間書き換え可能回路(ダイナミックリコンフィギュラブル回路)としての応用が期待できる。
【0016】
従来、書き換え可能な電気回路は存在しているものの、これは配線の変更ではなく、FETをスイッチとする制御により電気信号の経路を変更するものである。つまり、回路変更の自由度を増やすことは困難であり、自由度を増やすに従って、FETスイッチ数は膨大なものとなってしまい、回路の大規模化は困難となっている。
【0017】
また、一般に、FETスイッチは電源を切ることによって、書き換えた回路情報が消去してしまうため電源を切ることができず、電池により回路情報を保持する以外、情報を保持する方法がない。この状況を打破するために、電源を切っても情報が消えない強誘電体材料をゲート絶縁膜に用いた強誘電体ゲートFETも試作されているが、薄膜の作製のための温度が高いこと、鉛やビスマス等の低融点金属元素を含んでいること等の影響で、実用化に至っていない。
【0018】
不揮発メモリに情報を蓄えて、再起動後に情報を読み込むものも存在するが、FETスイッチ数は更に増大するため、大規模化、汎用化は困難である。
【0019】
特許文献1には、光誘起相転移物質の光による導体化工程で、配線パターンを、マスクを用いて形成するか直接レーザ走査照射で形成することの記載がある。この文献に記載されている技術では、導体配線パターンを変更したい場合、即ち、配線の書き換えを行う場合、600℃以上に加熱することで導体状態にある配線パターンを一旦絶縁状態に戻し配線を消去する必要がある。この600℃という温度では、ほぼ全ての素子がダメージを受け、機能不全に陥ってしまう。このため特許文献1に記載の従来技術では、光誘起相転移物質を用いて配線パターンを形成することができたとしても、素子が実装又は形成された後のデバイスにおける配線の書き換えは現実的には不可能である。
【0020】
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、金属−絶縁体相転移材料として二酸化バナジウム(VO2)を用いた機能要素の形成方法及びこれによって形成された機能要素、並びに機能デバイスの製造方法及びこれによって製造された機能デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
即ち、本発明は、金属−絶縁体相転移材料として二酸化バナジウムを母物質とする遷移金属酸化物を絶縁体相とする絶縁体層(例えば、後述の実施の形態における二酸化バナジウム10、60)を形成する第1工程と、前記絶縁体層の一部を金属相に相転移させる第2工程とを有し、前記絶縁体相と前記金属相の電気抵抗率又は/及び光透過率が異なっている、機能要素(例えば、後述の実施の形態における配線20a〜20e、23、25a、25b、80a〜80c)の形成方法に係るものである。
【0022】
また、本発明は、上記の機能要素の形成方法によって形成された機能要素に係るものである。
【0023】
また、本発明は、上記の機能要素の形成方法が適用される機能デバイスの製造方法に係るものである。
【0024】
また、本発明は、上記の機能デバイスの製造方法によって製造された機能デバイスに係るものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、金属−絶縁体相転移材料として二酸化バナジウム(VO2)を母物質とする遷移金属酸化物を絶縁体相とする絶縁体層を形成する第1工程と、前記絶縁体層の一部を金属相に相転移させる第2工程とを有し、前記絶縁体相と前記金属相の電気抵抗率又は/及び光透過率が異なっているので、前記金属−絶縁体相転移材料の相転移によって電気抵抗率又は/及び光透過率が異なる値をもった状態を有する機能要素を形成することができる。
【0026】
また、本発明によれば、上記の機能要素の形成方法によって形成された機能要素であるので、前記金属−絶縁体相転移材料の相転移によって電気抵抗率又は/及び光透過率が異なる値をもった状態を有する機能要素を提供することができる。
【0027】
また、本発明によれば、上記の機能要素の形成方法が適用されるので、前記金属−絶縁体相転移材料の相転移によって電気抵抗率又は/及び光透過率が異なる値をもった状態を有する機能デバイスの製造方法を提供することができる。
【0028】
また、本発明によれば、上記の機能デバイスの製造方法によって製造された機能デバイスので、前記金属−絶縁体相転移材料の相転移によって電気抵抗率又は/及び光透過率が異なる値をもった状態を有する機能デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】、本発明の実施の形態における、レーザ走査による金属−絶縁体相転移材料の金属化による配線の形成を説明する図である。
【図2】同上、レーザ走査による金属−絶縁体相転移材料の金属化によって形成された配線の消去を説明する図である。
【図3】同上、レーザ走査による金属−絶縁体相転移材料の金属化を利用した配線の形成と配線の書き換え変更を説明する平面図である。
【図4】同上、電子部品の実装と金属−絶縁体相転移材料の金属化による配線の形成を説明する図である。
【図5】同上、レーザ走査による金属−絶縁体相転移材料の金属化による多層配線の形成、及び、消去を説明する断面図である。
【図6】本発明の実施例における、二酸化バナジウム薄膜の金属−絶縁体相転移特性を示す図である。
【図7】同上、レーザ走査による金属−絶縁体相転移材料の金属化による配線の形成を示す図である。
【図8】同上、レーザ走査による金属−絶縁体相転移材料の金属化による配線の形成を示す図である。
【図9】同上、配線の形成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の機能要素の形成方法では、前記金属相の少なくとも一部を前記絶縁体相に相転移させる第3工程を有し、前記金属相によって構成される機能要素の少なくとも一部を前記絶縁体相に相転移させ、前記機能要素を消去することができ前記機能要素が書き換え可能である構成とするのがよい。このような構成によれば、前記第2工程によって前記機能要素を形成し前記第3工程によって前記機能要素を消去することができる。
【0031】
また、前記第3工程において、前記遷移金属酸化物の金属−絶縁体相転移温度よりも高く100℃以下の温度に、前記金属相の少なくとも一部を加熱した後、前記金属−絶縁体相転移温度よりも低い温度まで冷却して、前記金属相の少なくとも一部を前記絶縁体相に相転移させる構成とするのがよい。このような構成によれば、金属−絶縁体相転移温度より高く100℃以下の温度の加熱によって形成され、100℃を超える温度で熱劣化を生じるような素子と共に、機能要素が使用される場合でも、機能要素の書き換えを行う際に、このような素子に劣化を及ぼすことがない機能要素の形成方法を提供することができる。
【0032】
また、前記遷移金属酸化物は、V(バナジウム)を除く3d遷移金属元素を少なくとも1種類以上含む構成とするのがよい。このような構成によれば、前記金属−絶縁体相転移温度が異なる前記金属−絶縁体相転移材料を使用することができるので、3d遷移金属元素の選択によって、機能要素の書き換えに要する加熱温度を選択することができる機能要素の形成方法を提供することができる。
【0033】
また、前記3d遷移金属元素がTi、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuである構成とするのがよい。このような構成によれば、前記金属−絶縁体相転移温度が20℃から100℃の範囲にある前記金属−絶縁体相転移材料を使用することができるので、3d遷移金属元素の選択によって、機能要素の書き換えに要する加熱温度を選択することができる機能要素の形成方法を提供することができる。
【0034】
また前記第2工程において、前記絶縁体層について導体間を結ぶ領域にレーザが照射され前記金属相が形成される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記導体間を結ぶ機能要素を前記金属相によって形成する機能要素の形成方法を提供することができる。
【0035】
また、前記第1工程において、前記絶縁体層が複数積層され形成される構成とするのがよい。このような構成によれば、機能要素を多層に形成することができる機能要素の形成方法を提供することができる。
【0036】
また、前記第2工程において、複数の前記絶縁体層のそれぞれについて導体間を結ぶ領域にレーザが照射され前記金属相が3次元に形成される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記導体間を結ぶ機能要素を前記金属相によって形成し、3次元に形成することができる機能要素の形成方法を提供することができる。
【0037】
また、前記機能要素が電気配線として形成される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記金属相を前記電気配線とし、常温以上、100℃以下で形成及び消去可能な配線、即ち、書き換え可能な配線を形成することができる。
【0038】
また、前記機能要素が抵抗素子として形成される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記金属相を前記抵抗素子とし、常温以上、100℃以下で形成及び消去可能な抵抗素子、即ち、書き換え可能な抵抗素子を形成することができる。
【0039】
また、前記機能要素がリレースイッチとして形成され、前記機能要素を構成する前記金属相を相転移させて前記絶縁体相としてオフ状態のスイッチ素子とし働かせ、このスイッチ素子のオフ状態を構成する前記絶縁体相を相転移させて前記金属相としてオン状態のスイッチ素子として働かせ、前記遷移金属酸化物の金属−絶縁体相転移によって電気的な断続を行う構成とするのがよい。このような構成によれば、常温以上、100℃以下で形成及び消去可能なリレースイッチ、即ち、書き換え可能なリレースイッチを形成することができる。
【0040】
また、前記金属相と前記絶縁体相の光透過率が異なり、前記機能要素が、光によって情報が記憶又は/及び読み出される光記憶媒体の光記憶要素として形成される構成とするのがよい。このような構成によれば、常温以上、100℃以下で形成及び消去可能な光記憶要素、即ち、書き換え可能な光記憶要素を形成することができる。
【0041】
また、前記金属相と前記絶縁体相の光透過率が異なり、前記機能要素が、前記光透過率の違いによって情報を表示する表示装置の表示要素として形成される構成とするのがよい。このような構成によれば、常温以上、100℃以下で形成及び消去可能な表示要素、即ち、書き換え可能な表示要素を形成することができる。
【0042】
本発明の機能デバイスの製造方法では、前記機能デバイスが、有機半導体素子を含む有機半導体回路、論理素子を含む半導体論理回路、薄膜FET、表示装置、光記憶媒体として構成される構成とするのがよい。このような構成によれば、前記有機半導体回路、前記半導体論理回路、前記薄膜FET、前記表示装置、前記光記憶媒体が、100℃を超える温度で熱劣化を生じるような場合でも、機能要素の形成、消去、即ち、機能要素の書き換えを行う際に、これら前記有機半導体回路、前記半導体論理回路、前記薄膜FET、前記表示装置、前記光記憶媒体に劣化を及ぼすことがない機能デバイスの製造方法を提供することができる。
【0043】
金属−絶縁体相転移現象は、同じ材料が金属物性を有する状態から絶縁体物性を有する状態へと変化する現象である。金属−絶縁体相転移現象を示す材料によって形成された領域の任意の箇所に相転移を生じさせれば、上記領域を部分的に金属、部分的に絶縁体となるように、導電状態を制御することが可能となる。低温相が絶縁体相、高温相が金属相であり、金属−絶縁体相転移現象を示す材料を使用することによって、任意の箇所を機能要素として形成することができる。機能要素とは、低温相、高温相における電気抵抗率又は/及び光透過率の相違を利用して形成される要素であり、機能要素は、例えば、金属配線(導体配線)として形成することができる。
【0044】
本発明では、金属−絶縁体相転移現象を示し、金属状態及び絶縁体状態の双安定を有する金属−絶縁体相転移材料(モット絶縁体材料)として二酸化バナジウム(VO2)を使用する。このVO2によって形成された領域の任意の箇所をレーザで照射して、絶縁体相から金属相へ相転移させVO2の金属化によって形成された箇所を書き換え可能な機能要素、例えば、金属配線(導体配線)を形成することができる。
【0045】
複数の導電性電極端子が形成された絶縁性基板の面に機能要素として、例えば、電気配線を形成する場合、先ず、基板の面に、導電性電極端子のそれぞれの少なくとも一部と接触するように、金属−絶縁体相転移材料としてVO2薄膜を形成する。次に、所望の導電性電極端子の間を結ぶようにレーザを走査して、レーザが照射された領域のVO2薄膜の部分を、絶縁相から金属相に相転移させて金属化させることによって電気配線を形成し、所望の導電性電極端子の間を電気的に接続することができる。
【0046】
以上のようにして形成された電気配線が形成されている領域の全体又は一部分に赤外レーザを照射し、一旦、VO2の相転移温度よりも高温、例えば、100℃の状態として加熱して、次いで、VO2が絶縁相に転移する相転移温度よりも低温、例えば、室温状態まで冷却する。これによって、金属配線を構成していた金属相を絶縁相に相転移させて絶縁体化させて、電気配線の全体又は一部分を消去することができる。
【0047】
このように、VO2薄膜の金属−絶縁体相転移を利用して、機能要素の形成や除去(消去)を可能とし、書き換え可能な機能要素を実現することができる。
【0048】
上述の書き換え可能な機能要素、例えば、金属配線は、多層に形成し多層配線とすることもでき、任意層の任意箇所の金属配線を消去することができる。
【0049】
以上のようにして、上述の機能要素、例えば、金属配線は、必要に応じて形成、消去することができるので、書き換え可能な金属配線を実現することができる。
【0050】
本発明による機能要素、例えば、金属配線は、金属−絶縁体相転移によって絶縁体化させることができ、相転移を生じさせることによって金属相を絶縁体相とし、金属配線が消去可能であると言う意味で可変配線である。この可変配線は、化学的又は物理的なエッチング技法によらず、形成、消去することが可能であり、書き換え可能である。
【0051】
従って、電子デバイス等の機能デバイス或いは電子素子等の機能素子に使用される集積回路内に金属−絶縁体相転移材料(VO2)を導入(形成)し、金属−絶縁体相転移材料によって形成された領域の任意の箇所に光照射することによって、機能要素、例えば、書き換え可能な金属配線を形成することができる。
【0052】
また、複数層の回路が形成された三次元回路に対しては、照射光のための集光レンズによって焦点距離(レンズと下記の光スポットの間の距離)、焦点深度(焦点が合う範囲)を変化させることによって、照射光が収束された光スポットの径とその深さ位置を変化させ、電子デバイス等の機能デバイス或いは電子素子等の機能素子の深部における機能要素、例えば、金属配線を変更することができる。更に、集積回路チップに光導入部を設ければ、チップを形成した後に光導入部を通して光をチップ内部に導入して機能要素を書き換えることが可能となる。
【0053】
本発明の機能要素としての電気配線では、電子デバイス等の機能デバイス或いは電子素子等の機能素子内の所定空間に形成され、金属−絶縁体相転移を生じる材料によって形成された領域の任意箇所に、特定波長のレーザを走査する。これにより、金属−絶縁体相転移を生じさせ、電子デバイス等の機能デバイス或いは電子素子等の機能素子における2次元及び3次元空間での任意箇所に金属部を形成することによって、これを電気配線(金属相細線)とすることができる。
【0054】
なお、電子デバイス等の機能デバイス或いは電子素子等の機能素子において、Cu、Al、Au、Ag等の金属材料で形成された配線(不変配線)と、VO2の相転移による金属化によって形成された金属配線(書き換え可能な可変配線である。)を混在させることも可能である。
【0055】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0056】
<実施の形態>
[金属−絶縁体相転移]
代表的な、金属−絶縁体相転移材料として、3d遷移金属元素を含むペロブスカイト型酸化物及びルチル型酸化物、BEDT−TTF等の有機強相関電子材料、GeSbTe等のカルコゲナイト系化合物が知られている。
【0057】
3d遷移金属元素を含むペロブスカイト型酸化物の代表的な例は、CaTiO3、SrTiO3、BaTiO3、LaTiO3、(La,Sr)TiO3、SrCeO3、LaFeO3、(La,Ca)MnO3、(La,Sr)MnO3、(La,Ba)MnO3、(Pr,Ca)MnO3、(La,Sr)CoO3、(La,Sr)VO3、SmNiO3である。
【0058】
3d遷移金属元素を含むルチル型酸化物の代表的な例は、TiO2、VO2、MnO2、CrO2である。
【0059】
有機強相関電子材料の代表的な例は、BEDT−TTF(C1088、bis(ethyleneditio)tetrafluvalene)をドナー、Xをアクセプタとする電荷移動錯体である。Xは、I3又はMM’(SCN)4(M=Nb、Tl、Cs、M’=Co、Zn))、Cu[N(CN)2]Cl等である。
【0060】
カルコゲナイト系化合物の代表的な例であるGeSbTeは、結晶状態で導電率が高く、アモルファス状態で導電率が数桁低くなる相変化材料である。
【0061】
これらの金属−絶縁体相転移材料は、光の照射によって相転移することが知られており、金属−絶縁体相転移を利用すれば、金属配線を形成、消去することができる可能性を有意している。
【0062】
なお、本願明細書において、「金属配線」は、金属−絶縁体相転移材料(VO2)の相転移による金属化によって形成された導体配線(金属相細線)を意味している。以下の説明では、機能要素として電気配線を例にとって説明する。
【0063】
[二酸化バナジウム(VO2)薄膜の形成]
本発明で使用する金属−絶縁体相転移材料は二酸化バナジウム(VO2)である。常温以上、100℃以下で金属−絶縁体転移する材料はVO2以外、現時点では知られていない。このVO2は、通常、約68℃に相転移温度を有し、相転移温度より高い高温相は金属相であり正方晶系(Tetragonal)の結晶構造をとり、相転移温度より低い低温相は絶縁体相であり単斜晶系(Monoclinic)の結晶構造をとる。高温相では可視光透過率が低下し着色し、低温相では透明に近い。
【0064】
VO2にはV(バナジウム)以外の元素が添加されていてもよく、添加元素Mとして、例えば、Fe、Co、Ni、Mo、Nb、WがドープされたVO2:Mでは相転移温度が低下する。3d遷移金属元素(Vとは異なる。)が添加されたVO2は、添加元素の種類とその濃度によって、相転移温度が20℃〜100℃の範囲で可変とすることができる。
【0065】
VO2は、TiO2、Al23、Si等の基板に、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、パルスレーザデポジション法等によって形成することができる。
【0066】
スパッタリング法として公知の技法、例えば、直流スパッタリング法、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、反応スパッタリング法を利用することができる。また、真空蒸着法として公知の技法、例えば、電子ビーム(EB)蒸着法を利用することができる。
【0067】
パルスレーザデポジション(PLD(Pulsed Laser Deposition))法は、真空容器内でターゲットにパルスレーザを照射し、ターゲットのプラズマ化によって放出されるフラグメント(原子、分子、イオン、クラスター等)を基板上に堆積させる方法である。プラズマ化したターゲット物質はプルームと呼ばれる。パルスレーザデポジション法によって形成される薄膜の特性は、基板の種類と基板の温度、ターゲット物質、基板とターゲット間の距離、雰囲気ガスの種類とガス圧、レーザの波長、照射エネルギー(密度)、及び、レーザのパルス発振周波数、パルス幅、照射時間によって決定される。
【0068】
なお、本発明の機能要素の形成方法が適用される機能デバイスが、例えば、有機半導体素子を含む有機半導体回路、論理素子を含む半導体論理回路、薄膜FET、表示装置、光記憶媒体として構成される場合には、これら機能デバイスの熱劣化を抑制するために、VO2薄膜は、低温、好ましくは100℃以下での形成されるのが望ましく、VO2薄膜が形成される基板の加熱温度は100℃以下とするのがよい。このような温度条件であれば、機能デバイスが構成要素として有機物を含む場合その熱劣化を防止することができる。
【0069】
[電気配線の形成]
絶縁相にあるVO2は、波長500nm以下の光の照射によって金属相に転移させることができる。なお、金属−絶縁体相転移材料はその組成によって吸収スペクトルが異なり、相転移を生じさせるための照射光波長の上限も異なる。従って、バナジウム(V)以外の元素Mが添加されたVO2:Mでは、絶縁相にあるVO2:Mを金属相に転移させるための照射光波長の上限は、添加元素Mの種類と添加濃度に対応した最も好ましい値とする。
【0070】
図1は、本発明の実施の形態における、レーザ走査による金属−絶縁体相転移材料(VO2)の金属化による機能要素の例である金属配線の形成を説明する図であり、図1(A)は平面図、図1(B)はX−X部の断面図である。
【0071】
図1に示すように、基板40の面に、金属−絶縁体相転移材料10としてVO2薄膜が形成されており、このVO2薄膜の面に所望の距離を隔て平行な2つの導電性の電極15a、15bが形成されている。図1では、この2つの電極15a、15bを結ぶ複数の金属配線20a、20b、20c、20d、20eの形成を示している。
【0072】
これら金属配線20a〜20eは、レーザ光源(波長488nmのレーザを発振する。)30からのレーザ35をVO2薄膜に走査方向37で走査して、レーザ35が照射されたVO2薄膜の部分が、絶縁相から金属相に相転移して金属化されるにことよって形成される。金属配線20eは、レーザ35が走査されている途中の状態を示している。なお、レーザ光源を固定位置としてレーザ35を走査しないで、基板40を移動させてもよい。
【0073】
金属−絶縁体相転移材料(VO2)の金属化によって形成される配線20a〜20eの線幅は、VO2薄膜に照射するレーザの幅、又は、レーザ35が連続して走査される面積によって決定される。また、レーザ35のための集光レンズによって焦点距離、焦点深度を変化させることによって、レーザが収束されたレーザスポットの径とその深さ位置を変化させ、焦点深度をVO2薄膜の厚さ以上として、VO2薄膜の深さ方向の全体を金属化させることができる。
【0074】
[電気配線の消去]
以上のようにして形成された金属配線20a〜20eは、次のようにして消去することができる。例えば、金属配線20a〜20eが形成された領域に波長800nm以上の赤外(IR)レーザを照射し、この領域を一旦、VO2が金属相に転移する高温、例えば、100℃の加熱状態とする。次いで、VO2が絶縁相に転移する低温、例えば、室温まで冷却した状態として絶縁体化させて、金属配線20a〜20eを消去することができる。なお、赤外レーザ照射による加熱に換えてヒータ加熱としてもよい。
【0075】
以上のようにして、電気配線を形成するためのVO2薄膜の温度を100℃程度まで上昇させ、その後、放冷することによって、金属相とされていたVO2薄膜は絶縁相に相転移されるので、電気配線を消去することができる。
【0076】
電気配線が形成されている素子の全面を、ヒータ、或いは、イメージランプ光源又はレーザ光源による赤外光の照射によって加熱した場合は、素子に形成されている電気配線の全体が消去され、VO2薄膜は配線が形成されていないもとの絶縁相の初期状態に戻る。
【0077】
また、波長800nm以上の赤外光を集光することによって電気配線を部分的、局所的に消去することもできる。波長800nm以上の赤外光を放射する赤外光源として、イメージランプ光源のみでなく、レーザ光源を使用することもできる。更に、VO2薄膜による絶縁層の複数層が素子に形成されており、これら絶縁層の各々に後述(図5参照。)するように電気配線を形成したり消去したりすることができる。
【0078】
このように、VO2薄膜による絶縁層の相転移によって形成された金属配線の消去は、ヒータ、又は、波長800nm以上の赤外光による加熱の後、冷却することによってなされる。
【0079】
図2は、本発明の実施の形態における、レーザ走査による金属−絶縁体相転移材料(VO2)の金属化によって形成された機能要素の例である金属配線の消去を説明する図である。
【0080】
図2に示すように、金属配線20a〜20eが形成された領域全体に赤外レーザを照射し加熱によって約100℃の高温状態として、金属−絶縁体相転移材料(VO2)10の全体を金属相に相転移させた後に、室温まで冷却して低温状態として金属−絶縁体相転移材料(VO2)10の全体を絶縁体化させて、金属配線を消去することができる。
【0081】
また、金属配線20a〜20eのうち特定の配線部分、例えば、図1に示す金属配線20cが形成された領域のみに赤外レーザを照射し一旦、約100℃の高温状態として、次いで、室温まで冷却して低温状態として、特定の配線部分を絶縁体化させて、特定の配線部分の金属配線を消去することができる。
【0082】
[金属配線の形成と配線の書き換え]
図3は、本発明の実施の形態における、レーザ走査による金属−絶縁体相転移材料(VO2)の金属化を利用した機能要素の例である金属配線の形成と配線の書き換え変更を説明する平面図である。
【0083】
図3において、金属−絶縁体相転移材料(VO2)60が図示されない基板面に形成されている。
【0084】
図3(A)は配線の追加を含む配線の書き換えを説明する図であり、(a)は配線の書き換え前の配線状態、(b)は新たな配線が追加された配線の書き換え後の配線状態をそれぞれ示す図である。
【0085】
図3(A)の(a)に示す例は、金属−絶縁体相転移材料(VO2)60が形成された基板に搭載された複数の半導体チップ62a〜62dを有する電子回路を示しており、太い線で示される既に形成されていた配線(金属配線)23を有している。この配線23は、先述したように、レーザ走査によって金属−絶縁体相転移材料(VO2)60を金属化させて形成されている。既に形成されていた配線23は、半導体チップ62aと半導体チップ62bの間を結合している。
【0086】
図3(A)の(a)に示す電子回路に対して、更に、配線を付加することができる。図3(A)の(b)に示す例は、半導体チップ62aと半導体チップ62cの間、及び、半導体チップ62aと半導体チップ62dの間を結合する、新たに追加された配線25a、25bが形成された電子回路を示している。新たに追加された配線25a、25bは、先述したように、レーザ走査によって金属−絶縁体相転移材料(VO2)60を金属化させて形成される。
【0087】
なお、図3(A)の(a)に示す電子回路の形成に先立って、金属−絶縁体相転移材料(VO2)60が形成されている基板に、半導体チップ62a〜62dが実装されるが、これに関しては後述する(図4を参照)。
【0088】
[全ての電気配線の消去]
図3(B)は全ての配線を消去する書き換えを説明する図であり、(a)は配線の書き換え前の配線状態(図3(A)の(b)に示す配線状態と同じである。)、(b)は全ての配線が消去された配線の書き換え後の配線状態をそれぞれ示す図である。
【0089】
図3(B)に示すように、ヒータ22或いは赤外ランプ24を用いて、配線か形成された領域全体を、金属−絶縁体相転移温度以上の温度、例えば、100℃の高温状態として、次いで、室温まで冷却して低温状態として、金属配線の全体を絶縁体化させて、配線部分の金属配線の全体を消去することができる。
【0090】
[電気配線の一部の消去]
図3(C)は一部の配線を消去する書き換えを説明する図であり、(a)は配線の書き換え前の配線状態(図3(A)の(b)に示す配線状態と同じである。)、(b)は一部の配線が消去された配線の書き換え後の配線状態をそれぞれ示す図である。
【0091】
図3(C)に示すように、赤外ランプ24からの赤外光をレンズ27によって集光して走査して、配線(金属配線)23が形成された領域を、金属−絶縁体相転移温度以上の温度、例えば、100℃の高温状態として、次いで、室温まで冷却して低温状態として、配線23が形成された領域を絶縁体化させて、配線23を消去することができる。なお、赤外ランプ24に換えて赤外レーザ光源を使用することもできる。
【0092】
以上の説明では、単層からなる金属配線の形成、及び、消去について、説明したが、後述するように多層配線からなる金属配線の形成、及び、消去を行うこともできる(図5を参照。)。
【0093】
[基板への電子部品の実装]
図4は、本発明の実施の形態における、電子部品の実装と金属−絶縁体相転移材料(VO2)の金属化による配線の形成を説明する図であり、図4(A)は平面図、図4(B)はY−Y部の断面図であり、基板40に電子部品として半導体チップ62e、62fが実装された例を示す図である。
【0094】
半導体チップ62e、62fの実装に先立って、電気配線のための金属−絶縁体相転移材料(VO2)60による絶縁層、及び、電極15が、次のようにして基板40に形成される。
【0095】
基板40の面に、先ず、電極15を形成し、次に、電気配線のための金属−絶縁体相転移材料(VO2)60によって絶縁層を形成する、或いは、先ず、電気配線のための金属−絶縁体相転移材料(VO2)60によって絶縁層を形成し、次に、電極15を形成する。なお、金属−絶縁体相転移材料(VO2)60による絶縁層と電極15はその両者の端面で接触するか、又は、この端面が半導体チップ62e、62fが実装される領域外にあり、この端面の近傍で金属−絶縁体相転移材料(VO2)60による絶縁層と電極15が重複するようにされる。
【0096】
金属−絶縁体相転移材料(VO2)60による絶縁層と電極15が形成された後に、半導体チップ62e、62fの接続端子は電極リード64によって電極15に接続され、半導体チップ62e、62fが基板40に実装される。
【0097】
半導体チップ62e、62fが基板40に実装された後に、金属−絶縁体相転移材料(VO2)60による絶縁層にレーザを所望の電極15の間を結ぶように照射し、相転移を生じさせて金属相とし電子回路を構成する電気配線が形成される。
【0098】
このようにして形成された電気配線は、上述したようにして電子回路を構成する電気配線のうちの全て、或いは、特定の一部を消去することができる(図2、図3を参照。)。
【0099】
[多層配線の形成と消去]
図5は、本発明の実施の形態における、レーザ走査による金属−絶縁体相転移材料(VO2)の金属化による機能要素の例である多層配線の形成、及び、消去を説明する断面図である。
【0100】
図5に示す多層配線は、基板90の面に形成された第1層の配線層を構成する電気配線80a、更に、絶縁層95を介して、第2層の配線層を構成する電気配線80b、第3層の配線層を構成する電気配線80cが形成されている。電気配線80a、80b、80cをそれぞれ形成するために、予め、第1層、第2層、第3層の配線層をそれぞれ構成するための第1層、第2層、第3層の絶縁体層が、金属−絶縁体相転移材料(絶縁体:VO2)10により形成されている。また、これら絶縁体層のそれぞれの一部には、電極75a、75bが形成されている。
【0101】
第1層、第2層、第3層の絶縁体層の各々に対して金属−絶縁体相転移を生じさせ金属相として電気配線を形成するためには、レーザがレンズによって焦点距離が調整され集光されて各絶縁体層に焦点が合わされ、焦点深さが調整されたレーザスポットが形成される。このレーザスポットを各絶縁体層内で二次元走査することによって、各絶縁体層の所望の領域をレーザ照射して金属−絶縁体相転移を生じさせ金属相として電気配線を形成することができる。このようにして、3次元電気配線を形成することができる。
【0102】
レーザ光源30aからのレーザ35aを図示しない集光レンズによって収束させたレーザスポットを、金属−絶縁体相転移材料(絶縁体:VO2)10に対して二次元走査して、金属−絶縁体相転移材料を絶縁相から金属相に相転移させ金属化させることによって、所望層の所望位置に電気配線を形成することができる。図5では、レーザスポットが第2層の絶縁体層に照射されている状態を示している。
【0103】
予め、異なる配線層の間を結ぶように金属−絶縁体相転移材料(VO2)10を形成しておくことによって、異なる配線層の間を電気的に結合するビアプラグとなる金属配線を形成することができることは言うまでもない。
【0104】
所望の層に形成された電気配線の所望の領域に対して、レーザ35aを赤外レーザとしてこれを図示しない集光レンズによって収束させたレーザスポットを照射することによって、3次元電気配線を図2に関して上述したと同様にして、各層の所望の領域に既に形成されていた電気配線を消去することができる。従って、図3と同様な電気配線の新規追加や、電気配線の削除を行うことによって、再配線を行うことができる。層間を結ぶ電気配線に関する新規追加や、電気配線の削除を行うことによって再配線を行うことができる。
【0105】
3次元電気配線は、赤外線レーザがレンズによって焦点距離が調整され集光されて所望の配線層に焦点が合わされ、焦点深さが調整されたレーザスポットをこの所望の配線層内で二次元走査することによって、金属−絶縁体相転移温度以上の高温、例えば、約100℃まで加熱し、次いで、室温まで冷却することによって、この所望の配線層を消去することができる。
【0106】
なお、レーザスポットをこの所望の配線層内の全域で二次元走査することによって、この配線層内の電気配線の全てを消去することができ、レーザスポットをこの所望の配線層内の一部領域で走査することによって、この配線層内の電気配線の一部分を消去することができる。図5に示す絶縁層95は、レーザ35aを透過させるに十分な透過率を有していればよく、目的に応じて任意の材質から構成される。
【0107】
次に、レーザ走査による金属−絶縁体相転移材料(VO2)を用いた金属配線の形成、及び、消去に関する実施例について説明する。
【0108】
<実施例>
[バナジウム酸化物(VO2)薄膜の形成]
パルスレーザデポジション法によってVO2の成膜を行うことができる。圧力が10Pa以下となるように真空チャンバに雰囲気ガスを導入して、高密度プルームから低密度プルームが発散して、ターゲットのプラズマ化によって放出される原子、分子、イオン、クラスター等のフラグメントが、基板面に届くようにして、基板面にVO2薄膜を形成することができる。
【0109】
酸素分圧を(1〜3)×10-2Torr(1.3〜4.0Pa)の状態とした薄膜形成装置内に、ターゲットとして五酸化二バナジウム(V25)圧粉焼結体(ペレット)、基板としてSiO2/Siウエハをセットし、ターゲットと基板間の距離を30〜50mmとした。基板温度を350〜420℃とし、波長248nm、レーザエネルギー0.5〜2J/cm2、レーザ周波数1〜10Hz、1ショットのパルス幅20nsのレーザをターゲットに500〜30000発照射して、面積1cm×1cm、膜厚10〜500nmの結晶性バナジウム酸化物(VO2)薄膜を作製した。ターゲット材料には、五酸化二バナジウム(V25)の他、二酸化バナジウム(VO2)、四酸化二バナジウム(V24)、三酸化二バナジウム(V23)を用いることができる。
【0110】
とくに、O2:Ar=1:1のガス流量比1対1として、酸素分圧を1×10-2Torr、基板温度を400℃、レーザ周波数を5Hz、ターゲット−基板間距離を50mmとした場合に、最もよい結晶性の薄膜が得られた。このようにして得られた二酸化バナジウム(VO2)は相転移を示し(図6を参照。)、室温では絶縁性の単斜晶、相転移温度以上では導電性の正方晶の結晶構造を有している。
【0111】
[二酸化バナジウム薄膜の金属−絶縁体相転移特性]
図6は、本発明の実施例における、二酸化バナジウム(VO2)薄膜の金属−絶縁体相転移特性を示す図であり、VO2薄膜に関する四端子測定による電気抵抗率の測定結果を示す図である。図6において、横軸はVO2薄膜の温度(℃)、縦軸は電気抵抗率(Ωcm)である。
【0112】
図6に示すように、VO2薄膜を加熱して昇温していくと、約68℃までは電気抵抗率は緩やかに減少していき(以下、この変化を「緩やかな減少曲線」と言う。)、更に昇温していくと電気抵抗率は急激に減少していき、約77℃以上では電気抵抗率は緩やかに減少していく。このように約68℃から約77℃の間(以下、図6に示すこの間の変化を「昇温曲線」と言う。)にVO2薄膜は低温相である絶縁体相から金属−絶縁体相転移して、高温相である金属相へ移行する。このようにして、絶縁体相にあるVO2薄膜を相転移させて金属相へ移行させて金属化させ配線の書き込みをすることができる。
【0113】
図6に示すように、VO2薄膜を冷却して降温していくと、約63℃までは電気抵抗率は緩やかに増加していき(以下、この変化を「緩やかな増加曲線」と言う。)、更に降温していくと電気抵抗率は急激に増加していき、約56℃以下では電気抵抗率は緩やかに増加していく。このように約63℃から約56℃の間(以下では、図6に示すこの間の変化を「降温曲線」と言う。)にVO2薄膜は高温相である金属相から金属−絶縁体相転移して、低温相である絶縁体相へ移行する。このようにして、金属相にあるVO2薄膜を相転移させて絶縁体相へ移行させて絶縁体化させ配線の消去をすることができる。
【0114】
図6に示すように、昇温及び降温によるVO2薄膜の電気抵抗率の温度変化はヒステレシスループを描き、上記昇温曲線の中間点を相転移温度とすればこれは約73℃であり、上記降温曲線の中間点を相転移温度とすればこれは約60℃であり、ヒステレシス幅は約13℃である。
【0115】
上記昇温曲線上のある1点で表される状態でVO2薄膜の温度を下げた場合、VO2薄膜の電気抵抗率は上記昇温曲線に沿って変化せず、上記緩やかな減少曲線に略平行な線に沿って変化するため、VO2薄膜の電気抵抗率は大きく変化しない。同様に、上記降温曲線上のある1点で表される状態でVO2薄膜の温度を上げた場合、VO2薄膜の電気抵抗率は上記降温曲線に沿って変化せず、上記緩やかな増加曲線に略平行な線に沿って変化するため、VO2薄膜の電気抵抗率は大きく変化しない。
【0116】
以上説明したように、VO2薄膜は、上記昇温曲線に従って絶縁体相から金属相へ、上記降温曲線に従って金属相から絶縁体相へそれぞれ移行し、可逆的な金属−絶縁体相転移を示す。なお、サファイア基板上にVO2薄膜を成膜した場合、VO2薄膜の金属相の電気抵抗率は約1×10-3Ωcmであり、透明電極並みであった。これは結晶粒サイズが増大した効果によると思われた。このことから、図6に示すVO2薄膜の金属相の電気抵抗率は約2×10-2Ωcmであるが、VO2薄膜の膜厚を10μm程度に厚膜化することによって結晶粒サイズが増大すれば、VO2薄膜の金属相の電気抵抗率は約1×10-4Ωcmまで低減することができると考えられる。
【0117】
[金属配線の形成]
SiO2基板の面に上記で説明したパルスレーザデポジッション法によって、VO2薄膜(厚さ100nm)を作製し、アルミニウム蒸着膜によって、図1に関して上述したように、VO2薄膜の面に2つの電極(厚さ50nm)を作製し、波長488nm波長のレーザ光を用いて2つの電極間に金属細線を作成した。
【0118】
図7、図8は、本発明の実施例における、レーザ走査による金属−絶縁体相転移材料(VO2)の金属化による機能要素の例である金属配線の形成を示す図であり、図7(A)及び図8(A)はレーザ走査前の状態における二酸化バナジウム(VO2)薄膜の光学顕微鏡写真図、図7(B)及び図8(B)はレーザ走査後の状態におけるVO2薄膜の光学顕微鏡写真図である。図7では焦点マークを写した図、図8は焦点マークを写さない図である。
【0119】
図7(A)及び図8(A)に示すように、金属−絶縁体相転移材料(VO2)60の面に50μmだけ隔て平行な2つのAl電極45a、45bが形成されている。
【0120】
図7(B)及び図8(B)は、Al電極45a、45bの間を結ぶようにレーザ走査によって、金属−絶縁体相転移材料(VO2)が絶縁体相から金属層に相転移され金属化されて形成された5つの配線50a、50b、50c、50d、50eを示し、各配線はそれぞれ点線で囲まれる領域に直線状に形成されている。この配線50a〜50eの幅は約2μmである。この配線幅は、レーザ光の集光度によって変化できる。
【0121】
図7(B)及び図8(B)に示す配線50a〜50eはそれぞれ、実際の光学顕微鏡における視野では黄色状に観察されている。これは、金属−絶縁体相転移材料(VO2)60が、温度変化によって絶縁相から金属相に相転移したためによって生じる色変化と同じであり、レーザ光により金属−絶縁体相転移していることを示している。
【0122】
図9は、本発明の実施例における、機能要素の例である金属配線の形成を説明する図であり、図9(A)はレーザ走査による金属−絶縁体相転移材料(VO2)の金属化による配線(a、b、c、d、e)の形成(配線のレーザ書き込み)による電極間の電流変化を示す図、図9(B)は、図7(B)及び図8(B)を模式的に示した図であり、SiO2基板上に形成された配線(a、b、c、d、e)と電極の配置を示す平面図である。
【0123】
図9(A)は、図7及び図8に示す配線を形成する際に、レーザ走査によって金属−絶縁体相転移材料(VO2)を金属化させ、配線a、b、c、d、eを形成していく時間経過を横軸にとり、Al電極45a、45bの間に流れる電流を縦軸にとった図である。図9(A)に示すように、配線a、b、c、…のそれぞれの形成が終了する毎に、Al電極45a、45bの間に流れる電流が、ステップ状(階段的)に略同じ大きさで増大しており、Al電極45a、45bの間に金属配線50a、50b、50c、50d、…が順次形成されたことを明確に示している。
【0124】
図9に示すように形成された電気配線は、この電気配線が形成されたVO2薄膜をヒータによって約100℃まで加熱した後、室温まで冷却することによって、消去された。電気配線が消去されたVO2薄膜の光学顕微鏡写真図(図示せず。)は、図7(A)及び図8(A)と同様であり、実際の光学顕微鏡における視野では黄色状に観察された。
【0125】
以上説明したように、本発明では、低温相で高電気抵抗率を有し高温相で低電気抵抗率を有する金属−絶縁体相転移材料として二酸化バナジウム(VO2)を母物質とする遷移金属酸化物を使用するので、100℃以下の温度の加熱によって配線を構成していた金属相を絶縁体相に相転移させて配線を消去して、配線の書き換えを行うことができる。従って、デバイスに実装又は形成される半導体チップ等の電子部品(素子)にダメージを与えることがなく、電子部品が実装又は形成された後のデバイスであっても、配線の書き換えを実行することができる。
【0126】
以上の説明では、機能要素として電子回路の書き換え可能な電気配線を例にとって説明したが、機能要素が、電子回路の抵抗素子、リレースイッチ、光記憶媒体の光記憶要素、表示装置の表示要素である場合にも、電子回路の電気配線と同様にして、VO2を母物質とする遷移金属酸化物を使用して、形成、消去することができる。
【0127】
以上説明した本発明では、金属−絶縁体相転移材料としてVO2を使用して、レーザ照射によって書き換え可能な機能要素を形成するので、次に示すような特徴を有している。
【0128】
(1)VO2によって電気配線を形成し、この電気配線の消去は約100℃の加熱温度で実行することができるので、これまで未実現であった低温での書き換え可能な電気配線が実現することができる。
【0129】
(2)所望の電子部品が基板に実装された後の工程において電気配線を行うこと、即ち、後工程で電気配線工程を行うことが可能となる。
【0130】
(3)VO2による電気配線の形成、消去によって、書き換え可能な半導体論理素子(リコンフィギュアブル素子)を実現することができる。リコンフィギュアブル素子は書き換え可能な論理素子であり、FPGA(フィールドプログラマブルグリッドアレイ)が代表的素子である。ユーザ自身によって自由に論理素子を書き換えることが可能であることが、この素子の特徴であり、半導体設計や半導体動作テストに欠かせない素子として実用化されている。また、ロボットのような人工知能デバイスにおいても、脳内シナプスのように書き換えできるため、導入されている。
【0131】
(4)プロセス工程によるダメージの影響が大きな有機半導体デバイス及びこれを用いる回路(例えば、有機電界効果型トランジスタ(有機半導体をチャネルとするFET)、有機エレクトロルミネッセンス)のレイアウト変更に効果的である。VO2によって形成された電気配線の消去が約100℃の加熱温度で実行することができるので、有機半導体からなるチャネル、有機エレクトロルミネッセンス材料がダメージを受けて劣化を生じることがない。
【0132】
(5)VO2による電気配線の形成において、レーザ光の照射面積を変えることによって、電気配線の太さが可変であるため、電気信号強度に応じた回路の変更が可能となる。
【0133】
(6)VO2と発光素子、例えば、レーザ発光素子を組合せ、レーザ発光素子によるレーザによって可逆的にVO2の金属−絶縁体相転移を行わせることによって、リアルタイムで書き換え可能な回路素子を形成することが可能となる。上記(2)に示すように所望の電子部品が実装された実装基板上、若しくは、上記(3)に示す半導体素子上の配線変更を素子動作中に行うことが可能となる。例えば、図3(C)に示すランプ(レーザ)をMEMS素子と組み合わせてパッケージ化し、サブミクロンスケールで光描画し、チップ内で配線書き換えを行う装置を実現することができる。
【0134】
(7)VO2に対するレーザ照射によって、可逆的にVO2の金属−絶縁体相転移を行わせることによって、断続するリレースイッチを形成することができる。このリレースイッチとMEMS(Micro electro mechanical system)デバイスによるレーザ発光素子の移動制御によって、光信号を用いた論理回路を形成することができる。上記(2)、上記(3)に示す素子を電気信号ではなく、光信号で動かす素子構成とする。VO2が金属状態では、光の反射又は非透過のため光(光信号)を導通させず、回路を切断した非配線状態になり、VO2が絶縁状態では、光(光信号)を透過、導通するため回路を繋いだ配線状態になる。このように、光信号の場合には、金属状態のVO2が回路を切断した非配線状態を与え、絶縁状態のVO2が回路を繋いだ配線状態を与える。光信号の場合、金属状態のVO2が回路を繋いだ配線状態を与え絶縁状態のVO2が回路を切断した非配線状態を与える電気信号の場合と逆となる。
【0135】
(8)VO2に照射するレーザのための集光レンズによって、焦点距離、焦点深度を変化させることによって、レーザが収束されたレーザスポットの径とその深さ位置を変化させ、レーザスポットの深さ位置(焦点深度)を3次元的に変化させることによって、三次元金属細線網が形成できる。更に、VO2をナノ粒子化し、これをレーザ光に対して透明な材料(例えば、透明樹脂、透明ガラス)中に混合、分散させるによって、立体構造を有する金属細線網を必要に応じて形成、消去することができる。
【0136】
(9)VO2によって形成された金属相配線は着色しているため、配線が可視化される。従って、配線形成の状態を監視しながら回路の変更が可能である。
【0137】
(10)VO2の相転移の結果生じる着色を利用し、平面、立体描画が可能となる。電子サインボードとしての利用も可能となる。レーザ発光素子を用いたレーザポインタから発するレーザによって描画を行い、VO2の可逆的な金属−絶縁体相転移を行わせ、相転移の結果生じる着色を利用した描画媒体を構成することもできる。このような描画媒体を公衆の場所に設置して、再利用可能なユビキダス情報媒体である表示装置として使用することができる。
【0138】
(11)VO2の相転移の結果生じる光透過率の差を利用し、光記憶媒体の光記憶要素とすることができる。
【0139】
(12)VO2の電気抵抗率の温度変化を利用して、VO2の加熱温度により電気抵抗率を制御することによって、電位回路の書き換え可能な抵抗要素を形成することができる。
【0140】
以上、本発明を実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形が可能であり、例えば、VO2薄膜は種々の方法で形成することができ、基板の温度を100℃以下の状態としてVO2薄膜を基板面に形成することもできる。また、常温以上、100℃以下で金属−絶縁体転移する材料であれば、VO2以外の材料を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明によれば、各種の機能デバイスに好適に適用可能な、金属−絶縁体相転移材料(VO2)の相転移を利用した書き換え可能な機能要素を提供することができる。
【符号の説明】
【0142】
10、60…金属−絶縁体相転移材料、15、15a、15b、75a、75b…電極、
20a〜20e、22…ヒータ、23…既に形成されていた配線、
24、26…赤外ランプ、25a、25b…新たに追加された配線、27…レンズ、
30、30a…レーザ光源、35、35a…レーザ、37…レーザの走査方向、
40、90…基板、45a、45b…Al電極、62a〜62f…半導体チップ、
50a〜50e、80a、80b、80c…配線、64…電極リード、95…絶縁層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0143】
【特許文献1】特開2002−158418号公報(段落0005〜0008、段落0015〜0018、図1)
【特許文献2】特開2007−225532号公報(段落0036〜0041、図1)
【特許文献3】特表2006−526273号公報(段落0025〜0028、図3〜図5)
【特許文献4】特開2007−224390号公報(段落0026〜0039、段落0077〜0080、図1、図11〜図13)
【特許文献5】特表2007−515055号公報(段落0007〜0022、図1、図2)
【特許文献6】特開2008−205140号公報(段落0049、段落0058〜0065、図4、図6〜図9)
【非特許文献】
【0144】
【非特許文献1】B. Guiton et al.,“Single-Crystalline Vanadium Dioxide Nanowire with Rectangular Cross Sections”, JACS, 127, 498-499(2005)(第498頁左欄第22行〜同欄第36行、第499頁右欄第12行〜同欄第15行)
【非特許文献2】H-T. Kim, et al.“Raman study of electro-field-induced first-order metal-insulator transition VO2-based devices”, Applied Physics Letters, 86, 242101 (2005)(242101-2 左欄、図1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属−絶縁体相転移材料として二酸化バナジウムを母物質とする遷移金属酸化物を絶
縁体相とする絶縁体層を形成する第1工程と、
前記絶縁体層の一部を金属相に相転移させる第2工程と
を有し、前記絶縁体相と前記金属相の電気抵抗率又は/及び光透過率が異なっている、機能要素の形成方法。
【請求項2】
前記金属相の少なくとも一部を前記絶縁体相に相転移させる第3工程を有し、前記金属相によって構成される機能要素の少なくとも一部を前記絶縁体相に相転移させ、前記機能要素を消去することができ、前記機能要素が書き換え可能である、請求項1に記載の機能要素の形成方法。
【請求項3】
前記第3工程において、前記遷移金属酸化物の金属−絶縁体相転移温度よりも高く100℃以下の温度に、前記金属相の少なくとも一部を加熱した後、前記金属−絶縁体相転移温度よりも低い温度まで冷却して、前記金属相の少なくとも一部を前記絶縁体相に相転移させる、請求項2に記載の機能要素の形成方法。
【請求項4】
前記遷移金属酸化物は、Vを除く3d遷移金属元素を少なくとも1種類以上含む、請求項3に記載の機能要素の形成方法。
【請求項5】
前記3d遷移金属元素がTi、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuである、請求項4に記載の機能要素の形成方法。
【請求項6】
前記第2工程において、前記絶縁体層について導体間を結ぶ領域にレーザが照射され前記金属相が形成される、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の機能要素の形成方法。
【請求項7】
前記第1工程において、前記絶縁体層が複数積層され形成される、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の機能要素の形成方法。
【請求項8】
前記第2工程において、複数の前記絶縁体層のそれぞれについて導体間を結ぶ領域にレーザが照射され前記金属相が3次元に形成される、請求項7に記載の機能要素の形成方法。
【請求項9】
前記機能要素が電気配線として形成される、請求項1から請求項8の何れか1項に記載の機能要素の形成方法。
【請求項10】
前記機能要素が抵抗素子として形成される、請求項1から請求項8の何れか1項に記載の機能要素の形成方法。
【請求項11】
前記機能要素がリレースイッチとして形成され、前記機能要素を構成する前記金属相を相転移させて前記絶縁体相としてオフ状態のスイッチ素子とし働かせ、このスイッチ素子のオフ状態を構成する前記絶縁体相を相転移させて前記金属相としてオン状態のスイッチ素子として働かせ、前記遷移金属酸化物の金属−絶縁体相転移によって電気的な断続を行う、請求項1から請求項8の何れか1項に記載の機能要素の形成方法。
【請求項12】
前記金属相と前記絶縁体相の光透過率が異なり、前記機能要素が、光によって情報が記憶又は/及び読み出される光記憶媒体の光記憶要素として形成される、請求項1から請求項8の何れか1項に記載の機能要素の形成方法。
【請求項13】
前記金属相と前記絶縁体相の光透過率が異なり、前記機能要素が、前記光透過率の違いによって情報を表示する表示装置の表示要素として形成される、請求項1から請求項8の何れか1項に記載の機能要素の形成方法。
【請求項14】
請求項1から請求項13の何れか1項に記載の機能要素の形成方法によって形成された機能要素。
【請求項15】
請求項1から請求項13の何れか1項に記載の機能要素の形成方法が適用される機能デバイスの製造方法。
【請求項16】
前記機能デバイスが、有機半導体素子を含む有機半導体回路、論理素子を含む半導体論理回路、薄膜FET、表示装置、光記憶媒体として構成される、請求項15に記載の機能デバイスの製造方法。
【請求項17】
請求項15又は請求項16の機能デバイスの製造方法によって製造された機能デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−219207(P2010−219207A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62759(P2009−62759)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】