説明

金属回収方法、金属回収装置、排気系及びこれを用いた成膜装置

【課題】省スペースで簡単な構造でありながら、被処理体の表面に薄膜を形成する処理容器から排出される排気ガス中から金属成分を回収し、且つ排気ガスを除害することが可能な金属回収装置を提供することにある。
【解決手段】有機金属化合物の原料よりなる原料ガスを用いて被処理体の表面に薄膜の形成するようにした処理容器から排出される排気ガス中から金属成分を回収して排気ガスを除害する金属回収装置66において、排気ガスを高温に曝して排気ガス中に含まれる未反応の原料ガスを熱分解させて原料ガス中に含まれている金属成分を付着させる捕集部材84を有する捕集ユニット80と、捕集ユニットを通過した排気ガス中に含まれる有害なガス成分を酸化して除害する触媒100を有する除害ユニット82と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置より排出される排気ガス中の未反応の原料ガス中の金属成分を回収する金属回収方法、金属回収装置、排気系及びこれを用いた成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ICなどの集積回路や論理素子を形成するためには、半導体ウエハ、LCD基板等の表面に、所望の薄い成膜を施す行程やこれを所望のパターンにエッチングする行程が繰り返して行なわれる。
【0003】
ところで、成膜工程を例にとれば、この工程においては、所定の処理ガス(原料ガス)を処理容器内にて反応させることによってシリコンの薄膜、シリコンの酸化物や窒化物の薄膜、或いは金属の薄膜、金属の酸化物や窒化物の薄膜等を被処理体の表面に形成するが、この成膜反応と同時に余分な反応副生成物が発生し、これが排気ガスと共に排出されてしまう。また、未反応の処理ガスも排出される。
【0004】
この反応副生成物や未反応の処理ガスは、そのまま大気中に放出されると環境汚染等の原因になることから、これを防止するために一般的には処理容器から延びる排気系にトラップ機構を介設し、これにより排気ガス中に含まれている反応副生成物や未反応の処理ガス等を捕獲して除去するようになっている。
【0005】
このトラップ機構の構成は、捕獲除去すべき反応副生成物等の特性に応じて種々提案されているが、例えば常温で凝縮(液化)、凝固(固化)する反応副生成物を除去する場合には、このトラップ機構はその一例として排気ガスの導入口と排出口を有する筐体内に多数のフィンを設けて構成されている。そして、このフィンは、排気ガスの流れる方向に対して、順次配列してこれらのフィン間を排気ガスが通過する時に排気ガス中の反応副生成物等をフィン表面に付着させて捕獲し、廃棄するようになっている。
【0006】
また、このフィンを冷却媒体等により冷却して捕獲効率を上げることも行なわれている(例えば特許文献1)。また、トラップ機構として水等を散布するスクラバー装置を用い、排気ガスをこの散布された水と接触させて反応副生成物や未反応ガス成分を、散布水に解かし込んで回収する回収方法も行われている。
【0007】
また他のトラップ機構としては、廃棄を前提とした着脱可能になされたカートリッジ形の吸着塔を設け、これに反応副生成物や未反応の原料ガス成分を吸着させて排気ガスから除去するようにしたものもあり、この場合、除去能力が低下したときには、新たな吸着塔と交換して、除去能力が低下した吸着塔は廃棄するようにしていた。このように、廃棄する理由は、原料ガス中にフッ素(F)や塩素(Cl)等のハロゲン元素が含まれている場合には回収した反応副生成物から有用な金属を再生するのが比較的困難だからである。
【0008】
そして、トラップ機構から排出された排気ガス中には、有害ガス成分が含まれている場合が多く、この有害ガス成分はトラップ機構の下流側(後段)に設けた除害装置にて除害され、その後、この排気ガスは大気中に放出されていた。
【0009】
また、最近にあっては、配線抵抗やコンタクト抵抗の低減化等の目的のために銀、金、ルテニウム等の貴金属を含む有機金属化合物の原料(ソースガス)を用いて薄膜を成膜装置で形成することも行われており、このような貴金属は、非常に高価であることから、前述したような廃棄を前提とした捕集方法では、貴金属等の高価な金属類が無駄に消費されてしまい、ランニングコストを上昇させてしまう問題がある。
【0010】
そこで、上記した貴金属や高価な金属類の有効利用を図るために、処理容器から排出される排気ガスを冷却してガスを凝縮等して未反応の原料を含む反応副生成物を回収し、更に、この反応副生成物を精製することにより未反応原料を得るように回収方法も提案されている(例えば特許文献2)。
【0011】
【特許文献1】特開2001−214272号公報
【特許文献2】特開2001−342566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、前述したような有機金属化合物の原料の中には、金属原子の他にC、H、O等は含むがFやClなどのハロゲン元素は含まない原料もあり、このような原料に対して、前述したような回収物の廃棄を前提とした捕集方法を適用することは、高価な金属を無駄に廃棄してしまうことになるので、ランニングコストの高騰を招く、といった問題があった。
【0013】
また、特許文献2に開示した回収方法では、未反応の原料と共に反応副生成物も一緒に回収されるため、その後に、未反応の原料を取り出す精製作業を必ず行わなければならず、作業は煩雑化する、といった問題があった。
【0014】
更には、従来のスクラバー装置やフィン等を用いたトラップ機構は、これより排出される排気ガスを除害する除害装置を必ず別体で設けなければならず、そのため、設置スペースも大きくなってしまう、といった問題があった。
【0015】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、省スペースで簡単な構造でありながら、被処理体の表面に薄膜を形成する処理容器から排出される排気ガス中から金属成分を回収し、且つ排気ガスを除害することが可能な金属回収方法、金属回収装置、排気系及びこれを用いた成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に係る発明は、有機金属化合物の原料よりなる原料ガスを用いて被処理体の表面に薄膜の形成するようにした処理容器から排出される排気ガス中から金属成分を回収して排気ガスを除害する金属回収方法において、前記排気ガスを高温に曝して該排気ガス中に含まれる未反応の前記原料ガスを熱分解させて前記原料ガス中に含まれている金属成分を捕集部材に付着させる捕集工程と、前記捕集工程を経た前記排気ガスを触媒に接触させることにより前記排気ガス中に含まれる有害なガス成分を酸化して除害する除害工程と、を有することを特徴とする金属回収方法である。
【0017】
このように、有機金属化合物の原料よりなる原料ガスを用いて被処理体の表面に薄膜を形成する処理容器から排出される排気ガス中から金属成分を回収するに際して、排気ガスを高温に曝して排気ガス中に含まれる未反応の原料ガスを熱分解させて原料ガス中に含まれている金属成分を捕集部材に付着させる捕集工程と、捕集工程を経た排気ガスを触媒に接触させることにより排気ガス中に含まれる有害なガス成分を酸化して除害する除害工程とを有するようにしたので、省スペースで簡単な構造でありながら、被処理体の表面に薄膜を形成する処理容器から排出される排気ガス中から金属成分を回収し、且つ排気ガスを除害することができる。
【0018】
また、回収された金属成分は、廃棄されることなく再利用されるので、その分、ランニングコストを削減することができる。また、再利用に関しては、複雑な精製作業を行う必要がなく、簡易に原料として取り出すことができる。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記除害工程は、酸化ガスの存在下で行われることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記捕集工程は、酸化ガスの存在下で行われることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、前記除害工程の前記触媒の温度は600〜800℃の範囲内であることを特徴とする。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発明において、前記捕集工程の前記捕集部材の温度は600〜1000℃の範囲内であることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発明において、前記触媒は、MnO 、CaO、MgO、HfO 、Ta よりなる群より選択される1以上の材料よりなることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発明において、前記酸化ガスは、O 、O 、H O、空気よりなる群より選択される1以上のガスよりなることを特徴とする。
【0021】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発明において、前記有機金属化合物は、ハロゲン元素を含まないRu (CO)12、TEMAT(テトラキスエチルメチルアミノチタニウム)、TAIMATA、Cu(EDMDD) 、Ru (CO)12、W(CO) 、TaCl 、TMA(トリメチルアルミニウム)、TBTDET(ターシャリーブチルイミド−トリ−ジエチルアミドタンタル)、PET(ペンタエトキシタンタル)、TMS(テトラメチルシラン)、TEH(テトラキスエトキシハフニウム)、Cp Mn[=Mn(C ]、(MeCp) Mn[=Mn(CH ]、(EtCp) Mn[=Mn(C ]、(i−PrCp) Mn[=Mn(C ]、MeCpMn(CO) [=(CH )Mn(CO) ]、(t−BuCp) Mn[=Mn(C ]、CH Mn(CO) 、Mn(DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11 )]、Mn(acac) [=Mn(C ]、Mn(DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(acac) [=Mn(C ]よりなる群から選択される1以上の材料よりなることを特徴とする。
【0022】
請求項9の発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発明において、前記有機金属化合物はRu (CO)12であり、前記除害工程にて排出されるガスはCO ガスであることを特徴とする。
請求項10の発明は、有機金属化合物の原料よりなる原料ガスを用いて被処理体の表面に薄膜の形成するようにした処理容器から排出される排気ガス中から金属成分を回収して排気ガスを除害する金属回収装置において、前記排気ガスを高温に曝して該排気ガス中に含まれる未反応の前記原料ガスを熱分解させて前記原料ガス中に含まれている金属成分を付着させる捕集部材を有する捕集ユニットと、前記捕集ユニットを通過した前記排気ガス中に含まれる有害なガス成分を酸化して除害する触媒を有する除害ユニットと、を備えたことを特徴とする金属回収装置である。
【0023】
このように、有機金属化合物の原料よりなる原料ガスを用いて被処理体の表面に薄膜を形成する処理容器から排出される排気ガス中から金属成分を回収する金属回収装置において、排気ガスを高温に曝して排気ガス中に含まれる未反応の原料ガスを熱分解させて原料ガス中に含まれている金属成分を付着させる捕集部材を有する捕集ユニットと、捕集ユニットを通過した排気ガス中に含まれる有害なガス成分を酸化して除害する触媒を有する除害ユニットとを一体化させるようにしたので、設置スペースを大幅に削減することができる。
【0024】
請求項11の発明は、請求項10の発明において、前記捕集ユニットと前記除害ユニットとは筐体内に、前記排気ガスの流れ方向に沿って順に配列されていることを特徴とする。
請求項12の発明は、請求項10又は11の発明において、前記捕集ユニットは、前記捕集部材を加熱する捕集部材加熱手段を有していることを特徴とする。
請求項13の発明は、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の発明において、前記除害ユニットは、前記触媒を加熱する触媒加熱手段を有していることを特徴とする。
【0025】
請求項14の発明は、請求項10乃至13のいずれか一項に記載の発明において、前記捕集部材は、ケーシング内に複数の捕集片を収容して形成されていることを特徴とする。
請求項15の発明は、請求項10乃至13のいずれか一項に記載の発明において、前記捕集部材は、複数の金網を、前記排気ガスの流れ方向に沿って配列して形成されていることを特徴とする。
請求項16の発明は、請求項10乃至13のいずれか一項に記載の発明において、前記捕集部材は、通気孔を有する複数のパンチング板を、前記排気ガスの流れ方向に沿って配列して形成されていることを特徴とする。
【0026】
請求項17の発明は、請求項10乃至13のいずれか一項に記載の発明において、前記捕集ユニットに向けて酸化ガスを供給する酸化ガス供給手段を有することを特徴とする。
請求項18の発明は、請求項10乃至17のいずれか一項に記載の発明において、前記除害ユニットに向けて酸化ガスを供給する酸化ガス供給手段を有することを特徴とする。
請求項19の発明は、請求項10乃至18のいずれか一項に記載の発明において、前記触媒の温度は、600〜800℃の範囲内であることを特徴とする。
【0027】
請求項20の発明は、請求項10乃至19のいずれか一項に記載の発明において、前記捕集部材の温度は、600〜1000℃の範囲内であることを特徴とする。
請求項21の発明は、請求項10乃至20のいずれか一項に記載の発明において、前記触媒は、MnO 、CaO、MgO、HfO 、Ta よりなる群より選択される1以上の材料よりなることを特徴とする。
請求項22の発明は、請求項10乃至21のいずれか一項に記載の発明において、前記酸化ガスは、O 、O 、H O、空気よりなる群より選択される1以上のガスよりなることを特徴とする。
【0028】
請求項23の発明は、請求項10乃至22のいずれか一項に記載の発明において、前記有機金属化合物は、ハロゲン元素を含まないRu (CO)12、TEMAT(テトラキスエチルメチルアミノチタニウム)、TAIMATA、Cu(EDMDD) 、Ru (CO)12、W(CO) 、TaCl 、TMA(トリメチルアルミニウム)、TBTDET(ターシャリーブチルイミド−トリ−ジエチルアミドタンタル)、PET(ペンタエトキシタンタル)、TMS(テトラメチルシラン)、TEH(テトラキスエトキシハフニウム)、Cp Mn[=Mn(C ]、(MeCp) Mn[=Mn(CH ]、(EtCp) Mn[=Mn(C ]、(i−PrCp) Mn[=Mn(C ]、MeCpMn(CO) [=(CH )Mn(CO) ]、(t−BuCp) Mn[=Mn(C ]、CH Mn(CO) 、Mn(DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11 )]、Mn(acac) [=Mn(C ]、Mn(DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(acac) [=Mn(C ]よりなる群から選択される1以上の材料よりなることを特徴とする。
【0029】
請求項24の発明は、請求項10乃至22のいずれか一項に記載の発明において、前記有機金属化合物はRu (CO)12であり、前記除害工程にて排出されるガスはCO ガスであることを特徴とする。
請求項25の発明は、有機金属化合物の原料よりなる原料ガスを用いて被処理体の表面に薄膜の形成するようにした処理容器から排出される排気ガス中から金属成分を回収して排気ガスを除害するようにした処理容器に接続した排気系において、前記処理容器の排気口に接続された排気通路と、前記排気通路に介設された真空ポンプ部と、前記排気通路に介設された請求項10乃至24のいずれか一項に記載の金属回収装置と、を備えたことを特徴とする排気系である。
【0030】
請求項26の発明は、被処理体に対して成膜処理を施すための成膜装置において、真空排気が可能になされた処理容器と、前記処理容器内で前記被処理体を保持する保持手段と、前記被処理体を加熱する加熱手段と、前記処理容器内へガスを導入するガス導入手段と、前記ガス導入手段に接続された原料ガスの供給系と、前記処理容器に接続された請求項25に記載の排気系と、を備えたことを特徴とする成膜装置である。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る金属回収方法、金属回収装置、排気系及びこれを用いた成膜装置によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
有機金属化合物の原料よりなる原料ガスを用いて被処理体の表面に薄膜を形成する処理容器から排出される排気ガス中から金属成分を回収するに際して、排気ガスを高温に曝して排気ガス中に含まれる未反応の原料ガスを熱分解させて原料ガス中に含まれている金属成分を捕集部材に付着させる捕集工程と、捕集工程を経た排気ガスを触媒に接触させることにより排気ガス中に含まれる有害なガス成分を酸化して除害する除害工程とを有するようにしたので、省スペースで簡単な構造でありながら、被処理体の表面に薄膜を形成する処理容器から排出される排気ガス中から金属成分を回収し、且つ排気ガスを除害することができる。
【0032】
また、回収された金属成分は、廃棄されることなく再利用されるので、その分、ランニングコストを削減することができる。また、再利用に関しては、複雑な精製作業を行う必要がなく、簡易に原料として取り出すことができる。
【0033】
特に、請求項9乃至22の発明によれば、有機金属化合物の原料よりなる原料ガスを用いて被処理体の表面に薄膜を形成する処理容器から排出される排気ガス中から金属成分を回収する金属回収装置において、排気ガスを高温に曝して排気ガス中に含まれる未反応の原料ガスを熱分解させて原料ガス中に含まれている金属成分を付着させる捕集部材を有する捕集ユニットと、捕集ユニットを通過した排気ガス中に含まれる有害なガス成分を酸化して除害する触媒を有する除害ユニットとを一体化させるようにしたので、設置スペースを大幅に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、本発明に係る金属回収方法、金属回収装置、排気系及びこれを用いた成膜装置の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る金属回収装置を有する成膜装置を示す概略構成図、図2は金属回収装置内の一例を示す拡大断面構成図である。ここでは有機金属化合物の原料としてカルボニル系の有機金属化合物であるRu (CO)12を用い、キャリアガスとしてCO(一酸化炭素)を用いてRu金属膜よりなる薄膜を成膜する場合を例にとって説明する。
【0035】
図1に示すように、本発明に係る成膜装置2は、被処理体としての半導体ウエハWに対して成膜処理を実際に施す成膜装置本体4と、この成膜装置本体4に対して成膜用の原料ガスを供給する原料ガスの供給系6と、上記成膜装置本体4からの排気ガスを排出する排気系8とにより主に構成されている。
【0036】
まず、上記成膜装置本体4について説明する。この成膜装置本体4は、例えばアルミニウム合金等よりなる筒体状の処理容器10を有している。この処理容器10内には、被処理体である半導体ウエハWを保持する保持手段12が設けられる。具体的には、この保持手段12は、容器底部より支柱14により起立された円板状の載置台16よりなり、この載置台16上にウエハWが載置される。そして、この載置台16は、例えばAlN(窒化アルミニウム)等のセラミック材よりなり、この中には、例えばタングステンワイヤ等よりなる加熱手段18が設けられており、上記ウエハWを加熱するようになっている。ここで上記加熱手段18としては、タングステンワイヤ等に限定されず、例えば加熱ランプを用いてもよい。
【0037】
この処理容器10の底部には、排気口20が設けられ、この排気口20には上記排気系8が接続されて、処理容器10内の雰囲気を真空排気できるようになっている。この排気系8については後述する。この処理容器10の側壁には、ウエハWを搬出入する開口22が形成されており、この開口22には、これを気密に開閉するためのゲートバルブ24が設けられている。
【0038】
そして、この処理容器10の天井部には、例えばシャワーヘッド26よりなるガス導入手段28が設けられており、下面に設けたガス噴出孔30より処理容器10内へ必要なガスを供給するようになっている。そして、このシャワーヘッド26のガス入口26Aに、上記原料ガスの供給系6や他に必要なガスがある場合には、そのガスの供給系が接続されている。用いるガス種によっては、このシャワーヘッド26内では原料ガスと他のガスが混合される場合もあるし、シャワーヘッド26内へ別々に導入されて別々に流れて処理容器10内で混合される場合もある。ここでは、ガス導入手段28としてシャワーヘッド26を用いているが、これに代えて単なるノズル等を用いてもよい。
【0039】
次に、上記原料ガスの供給系6について説明する。まず、この原料ガスの供給系6は、固体原料又は液体原料を貯留する原料タンク32を有している。ここでは、この原料タンク32内には、有機金属化合物の原料である例えば固体原料34が貯留されており、この固体原料34としては、前述したようにRu (CO)12が用いられている。この固体原料34は、一般的には蒸気圧が非常に低くて蒸発し難い特性を有している。尚、上記固体原料34に代えてバブリング等により原料ガスが形成される液体原料を用いてもよい。
【0040】
そして、この原料タンク32の天井部に設けたガス出口36に一端を接続し、上記成膜装置本体4のシャワーヘッド26のガス入口26Aに他端を接続して原料通路38が設けられており、上記原料タンク32にて発生した原料ガスを供給できるようになっている。そして、上記原料通路38の原料タンク32に近い部分には開閉弁40が介設されている。
【0041】
また、上記原料タンク32の下面側には、上記原料タンク32にキャリアガスを供給するためのキャリアガス管42が接続されている。このキャリアガス管42の途中には、マスフローコントローラのような流量制御器44とキャリアガス開閉弁46とが順次介設されており、キャリアガスを流量制御しつつ供給して上記固体原料34を加熱することにより、この固体原料34を気化させて原料ガスを形成するようになっている。
【0042】
また原料タンク32の内部には、上記キャリアガス管42が設置された側の近傍に、多孔板48が設置され、上記固体原料34を上記多孔板48の上に保持すると共に、上記キャリアガス管42から供給されるキャリアガスが、上記多孔板48に形成された孔部を介して、上記原料タンク32内に均一に供給される構造となっている。上記キャリアガスとしてここではCO(一酸化炭素)ガスが用いられている。
【0043】
そして、上記原料タンク32には、これを加熱するためのタンク加熱手段50がタンク全体を覆うようにして設けられており、固体原料34の気化を促進させるようになっている。この場合、固体原料34の加熱温度は、分解温度未満の温度である。また、上記キャリアガス管42のキャリアガス開閉弁46よりも上流側と上記原料通路38の開閉弁40の下流側とを連通してバイパス管52が設けられると共に、このバイパス管52には、バイパス開閉弁54が介設されており、必要に応じて原料タンク32をバイパスさせてキャリアガスを流すことができるようになっている。また、上記原料通路38には、テープヒータのような加熱手段(図示せず)が設けられており、これを加熱して原料ガスが再固化することを防止するようになっている。
【0044】
次に排気系8について説明する。この排気系8は上記処理容器10の排気口20に接続された排気通路60を有しており、この排気通路60に沿って処理容器10内の雰囲気を排気するようになっている。具体的には、この排気通路60には、その上流側から下流側に向けて圧力調整弁62、真空ポンプ部64、本発明に係る金属回収装置66が順次介設されている。
【0045】
上記圧力調整弁62は例えばバタフライ弁よりなり、上記処理容器10内の圧力を調整する機能を有している。上記真空ポンプ部64は、ここでは例えばターボ分子ポンプとドライポンプの組み合わせよりなり、処理容器10内の雰囲気を真空引きできるようになっている。
【0046】
また本発明の金属回収装置66は、排気通路60内を流れてくる排気ガスを高温に曝して排気ガス中に含まれる未反応の原料ガスを分解して金属成分を回収し、更に、排気ガス中の有害成分を酸化して除害するものであり、ここでは未反応の原料ガス、すなわちRu (CO)12 ガスのほとんど全てを回収するようにする。この構成については後述する。
【0047】
まず、この金属回収装置66の上流側と下流側との排気通路60には、それぞれ開閉弁68が介設されており、この金属回収装置66のメンテナンス時には、此の開閉弁68を閉じることにより、この金属回収装置66を排気通路60側から遮断するようになっている。
【0048】
図2にも示すように、この金属回収装置66は、その外殻が例えばステンレススチール等により筒体状に成形されて筐体70により覆われている。この筐体70の上部にはガス入口72が形成されると共に、下部にはガス出口74が形成されている。そして、上記ガス入口72は、ここに形成されたフランジ部72Aによって上記排気通路60の一方側にOリング等のシール部材76を介して気密に接続される。また、上記ガス出口74は、ここに形成されたフランジ部74Aによって、上記排気通路60の他方側にOリング等のシール部材78を介して気密に接続されている。
【0049】
そして、上記筒体状の筐体70内には、排気ガスを高温に曝してこの排気ガス中に含まれる未反応の原料ガスを熱分解させて原料ガス中に含まれていた金属成分を捕集する捕集ユニット80と、この捕集ユニット80を通過した排気ガス中に含まれる有害なガス成分を酸化して除害する除害ユニット82とが、排気ガスの流れ方向に沿って順に配列されている。
【0050】
具体的には、上記捕集ユニット80は、上記熱分解によって発生した金属成分を付着する捕集部材84を有している。ここでは、上記捕集部材84としては、球形状、塊状或いはブロック状になされた複数(多数)の捕集片86を用いており、この捕集片86を着脱可能になされた筒体状のケーシング88内に収容している。このケーシング88は例えばステンレススチールにより形成されている。
【0051】
このケーシング88の天井、及び底部には、排気ガスを通すための多数の通気孔90、92がそれぞれ形成されており、このケーシング88内に排気ガスを流すようになっている。そして、このケーシング88の外周には、この捕集部材84を加熱するために例えばタングステンヒータ等よりなる捕集部材加熱手段94が設けられており、上記捕集片86を所定の温度、例えば600〜1000℃の範囲に加熱し得るようになっている。
【0052】
上記捕集片86は、この捕集片86間を流れる排気ガスの通気性を十分に確保するために、例えば捕集片86が球形の場合には、その直径を10mm以上に設定するのが好ましい。この捕集片86としては、例えばステンレススチール等の金属片の他に、シリコン片や窒化アルミニウム、アルミナ等よりなるセラミック片などを用いることができる。
【0053】
また上記捕集ユニット80の下流側に配置される上記除害ユニット82は、上記捕集ユニット80を通過して流れてきた排気ガス中に含まれる有害なガス成分を酸化して除害する触媒100を有している。ここでは、上記触媒100は、球形状、塊状或いはブロック状になされており、この触媒100を着脱可能になされた筒体状のケーシング102内に収容している。このケーシング102は例えばステンレススチールにより形成されている。
【0054】
このケーシング102の天井、及び底部には、排気ガスを通すための多数の通気孔104、106がそれぞれ形成されており、このケーシング102内に、上記捕集ユニット80内を通過してきた排気ガスを流すようになっている。そして、このケーシング102の外周には、この触媒100を加熱するために例えばタングステンヒータ等よりなる触媒加熱手段108が設けられており、上記触媒100を所定の温度、例えば600〜800℃の範囲に加熱し得るようになっている。
【0055】
上記触媒100は、この触媒100間を流れる排気ガスの通気性を十分に確保するために、例えば触媒100が球形の場合には、その直径を5mm以上に設定するのが好ましい。この触媒100としては、MnO 、CaO、MgO、HfO 、Ta 等を用いることができる。
【0056】
また上記筐体70には、この中に酸化ガスを供給するための酸化ガス供給手段110が設けられている。この酸化ガス供給手段110は、ここでは筐体70内の天井部、すなわち排気ガス流の最上流部に設けた円形リング状になされたシャワーヘッド112を有しており、このシャワーヘッド112に、途中に開閉弁114を介設したガス流路116を接続している。そして、上記シャワーヘッド112に形成した複数のガス噴射孔112Aより捕集ユニット80の上流側の略全面に向けて流量制御された酸化ガスを供給するようになっている。
【0057】
このシャワーヘッド112より供給された酸化ガスは、上記捕集ユニット80内のみならず、その下流側に位置する除害ユニット82内も流れるようになっている。ここで、除害ユニット82内のみに酸化ガスを流す場合には、上記酸化ガス供給手段110のシャワーヘッド112を、上記捕集ユニット80と除害ユニット82との間に設定するようにすればよい。この酸化ガスとしては、O を用いることができる。尚、上記酸化ガス供給手段110の構造は、上記構成に限定されない。
【0058】
そして、上記処理容器10の排気口20から金属回収装置66までの排気通路60及びその途中に介設された各部材にはテープヒータ等の通路加熱ヒータ120が設けられており、これにより排気通路60内を流れている排気ガスを、使用する原料にもよるが、ここでは例えば110℃程度に加熱して途中で未反応の排気ガス中の未反応の原料ガスが凝縮(凝固)することを防止するようになっている。
【0059】
そして、このように構成された成膜装置2の全体の動作、例えばガスの供給の開始、停止、プロセス温度、プロセス圧力、金属回収装置66における酸化ガスの供給等の制御は、例えばコンピュータよりなる装置制御部122により行われることになる。
【0060】
この制御に必要なコンピュータに読み取り可能なプログラムは記憶媒体124に記憶されており、この記憶媒体124としては、フレキシブルディスク、CD(CompactDisc)、CD−ROM、ハードディスク、フラッシュメモリ或いはDVD等を用いることができる。尚、必要な場合には、上記金属回収装置66の上流側に未反応の原料ガスの一部を補助的に捕集する補助トラップ機構を設置するようにしてもよい。
【0061】
次に、以上のように構成された成膜装置2の動作について図3乃至図5も参照して説明する。図3は本発明の金属回収方法を説明する工程図、図4は原料ガスが熱分解されて金属成分の捕集と有害ガスの除害が行われる一般的な状況を示す模式図、図5は原料ガスであるRu (CO)12が熱分解されて金属成分の捕集と有害ガスの除害が行われる状況を示す模式図である。まず、図1に示すように、この成膜装置2の成膜装置本体4においては、排気系8の真空ポンプ部64が継続的に駆動されて、処理容器10内が真空引きされて所定の圧力に維持されており、また載置台16上の半導体ウエハWは加熱手段18により所定の温度に維持されている。また処理容器10の側壁及びシャワーヘッド26もそれぞれ容器側加熱手段(図示せず)により所定の温度に維持されている。
【0062】
また、原料ガスの供給系6の全体は、タンク加熱手段50や通路加熱手段(図示せず)によって予め所定の温度に加熱されている。そして、成膜処理が開始すると、原料ガスの供給系6においては、原料タンク32内へはキャリアガス管42を介して流量制御されたキャリアガス(CO)を供給することにより、原料タンク32内に貯留されている固体原料34が加熱されて気化し、これにより原料ガスが発生する。
【0063】
この発生した原料ガスは、キャリアガスと共に原料通路38内を下流側に向けて流れて行く。この原料ガスは、成膜装置本体4のシャワーヘッド26から減圧雰囲気になされている処理容器10内へ導入され、この処理容器10内で例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)によりウエハW上にRu金属の薄膜が成膜されることになる。この時のプロセス条件は、プロセス圧力が0.1Torr(13.3Pa)程度、ウエハ温度が200〜250℃程度、処理容器10の側壁の温度が75〜80℃程度である。
【0064】
ここで固体原料34であるRu (CO)12は、蒸気圧が非常に低くて蒸発(気化)し難い原料であり、また成膜反応に寄与する量は非常に少なく、90%程度の原料ガスが未反応状態でキャリアガスであるCOと共に排気系8の排気通路60内を流下して行く。この時の反応は下記の化学式で示され、反応によってキャリアガスと同じガス種であるCO(一酸化炭素)が発生している。
【0065】
Ru (CO)12 ⇔ Ru (CO)12
Ru (CO)12↑ ⇔ Ru (CO)12−x↑+XCO↑
Ru (CO)12−x↑+Q → 3Ru+(12−X)CO↑
Ru (CO)12↑+Q → 3Ru+12CO↑
ここで”⇔”は可逆的であることを示し、”↑”はガス状態であることを示し、”↑”が付いていないものは固体状態であることを示し、”Q”は熱量が加わることを示す。
【0066】
上記排気通路60を流下する排気ガスは、圧力調整弁62、真空ポンプ部64、本発明に係る金属回収装置66を順次経由した後に大気中に放散される。この場合、金属回収装置66内で未反応の原料ガスの金属成分が回収された後は、排気ガスとしてCOガスが残留するだけなので、このCOガスは更にこの金属回収装置66内にて酸化されてCO になって大気放散されることになる。
【0067】
ここで金属回収装置66内で排気ガスに対して行われる処理の内容について詳しく説明すると、図3に示すように、排気ガスを高温に曝してこの排気ガス中に含まれる未反応の原料ガスを熱分解させて原料ガス中に含まれている金属成分を捕集部材84に付着させる捕集工程(ステップS1)と、上記捕集工程を経た排気ガスを触媒100に接触させることにより排気ガス中に含まれる有害なガス成分を酸化して除害する除害工程(ステップS2)とが行われる。
【0068】
すなわち、排気通路60内を流れてきた排気ガスは、上記金属回収装置66の天井部に設けたガス入口72から筐体70内へ導入され、捕集ユニット80内へ流れ込んで、このケーシング88内に収容されている捕集部材84を構成する多数の捕集片86の表面と接触しつつ下流側に向けて流れて行くことになる。ここで、上記捕集片86は捕集部材加熱手段94により、所定の温度、すなわち未反応の原料ガスを熱分解し得る温度である600〜1000℃の範囲内に加熱されているので、この原料ガス、すなわち、Ru (CO)12は”Ru”と”CO”とに熱分解されてしまう。そして、この内、金属成分である”Ru”は上記高温状態になされた捕集片86の表面に付着して捕集されることになる。
【0069】
この時の状況は、図4(A)及び図5(A)に模式的に示されており、図4(A)に示すように、例えば金属原子130に配位子132が結合しているような原料ガスは、高温に曝されると熱分解して金属原子130と配位子132とに分離し、ここで金属原子130が高温の捕集片86の表面に付着することになる。上記配位子としては、炭素(C)、酸素(O)、水素(H)の内、何れか1つ以上、好ましくは何れか2つ以上を含んだ配位子が対応し、フッ素や塩素等のハロゲン元素は含まれない。
【0070】
また、図5(A)に示すように、ここでは原料としてRu (CO)12を用い、キャリアガスとしてCO(一酸化炭素)を用いているので、金属成分としてRuが分離し、また配位子が脱離してCOが発生し、キャリアガスであるCOはそのまま残存する。
【0071】
このようにして、上記捕集ユニット80内で金属成分が捕集された排気ガスは、捕集ユニット80内を通過した後、有害成分である”CO”を含んだ状態で下流側の除害ユニット82内へ流れ込む。そして、この排気ガスは、この除害ユニット82内で、触媒加熱手段94により高温、例えば600〜800℃に加熱されている例えばMnO やCaO等よりなる触媒と接触しつつ流れることになる。
【0072】
ここで、上記排気ガス中には、筐体70の天井部に設けた酸化ガス供給手段110から酸化ガスとして例えばO ガスが導入されているのでO ガスが混入されており、従って、上記有害ガスであるCOは、高温状態にある触媒100の触媒作用によりO ガスとの酸化反応が促進され、CO となって除害されることになる。
【0073】
一般的には、例えば図4(B)に示すように、C、O、Hを含んだ配位子132はO ガスと酸化され、CO やH OやO となって除害される。ここでは、図5(B)に示すように、CO成分が酸化されてCO となって除害されることになる。このように除害されると、排気ガス中には、上記CO 、H O、O 等の大気中に放出しても人体上安全なガス成分のみとなり、従って、この金属回収装置66から排気された排気ガスはそのまま大気中に放出されることになる。
【0074】
そして、上記捕集片86に付着した金属成分は、この捕集ユニット80を定期的に交換することにより、金属成分は回収されて再利用されることになる。また、除害ユニット80の触媒100には付着するものがないので、この触媒100は半永久的に繰り返し使用されることになる。
【0075】
実際に、上記成膜装置2を用い、原料としてRu (CO)12を用いてRu薄膜を形成して排気ガス中のCO濃度を測定したところ、排気ガス中のCO濃度は金属回収装置66のガス入口72の部分では200ppmであったが(キャリアガスCO:100sccm、ドライポンプN :50リットル)、ガス出口74では0ppmであり、これにより、排気ガスを完全に除害できることを、確認することができた。
【0076】
このように、本発明によれば、有機金属化合物の原料、例えばRu (CO)12よりなる原料ガスを用いて被処理体、例えば半導体ウエハWの表面に薄膜を形成する処理容器10から排出される排気ガス中から金属成分を回収するに際して、排気ガスを高温に曝して排気ガス中に含まれる未反応の原料ガスを熱分解させて原料ガス中に含まれている金属成分を捕集部材に付着させる捕集工程と、捕集工程を経た排気ガスを触媒100に接触させることにより排気ガス中に含まれる有害なガス成分を酸化して除害する除害工程とを有するようにしたので、省スペースで簡単な構造でありながら、被処理体の表面に薄膜を形成する処理容器から排出される排気ガス中から金属成分を回収し、且つ排気ガスを除害することができる。
【0077】
また、回収された金属成分は、廃棄されることなく再利用されるので、その分、ランニングコストを削減することができる。また、再利用に関しては、複雑な精製作業を行う必要がなく、簡易に原料として取り出すことができる。
【0078】
また、有機金属化合物の原料よりなる原料ガスを用いて被処理体の表面に薄膜を形成する処理容器から排出される排気ガス中から金属成分を回収する金属回収装置において、排気ガスを高温に曝して排気ガス中に含まれる未反応の原料ガスを熱分解させて原料ガス中に含まれている金属成分を付着させる捕集部材84を有する捕集ユニット80と、捕集ユニットを通過した排気ガス中に含まれる有害なガス成分を酸化して除害する触媒100を有する除害ユニット82とを一体化させるようにしたので、設置スペースを大幅に削減することができる。
【0079】
<捕集ユニット80の変形実施態様>
次に、上記捕集ユニット80の変形実施態様について説明する。先の図2に示す金属回収装置66の捕集ユニット80では、捕集部材84として多数の例えば球体状の捕集片86を用いたが、これに限定されず、次に示すような構造としてもよい。図6は捕集ユニットの変形実施態様を示す概略構成図である。尚、図6中において、図2に示す構成部分と同一構成部分については同一参照符号を付して、その説明を省略する。
【0080】
図6(A)は捕集ユニット80の第1の変形実施形態を示し、ここでは捕集部材84として複数のパンチング板140を用いている。このパンチング板140には、複数の(多数)の通気孔140Aが全面に亘って形成されており、このパンチング板140を排気ガスの流れ方向に沿って所定のピッチで配列させている。
【0081】
この際、上下に隣り合うパンチング板140は、その通気孔140Aが水平面内において左右方向、或いは前後方向へ位置ズレするように配置されており、排気ガスが直線的に流れないようにし、排気ガスがパンチング板140の表面と効率的に接触するようにしている。この各パンチング板140の側部には、捕集部材加熱手段94が設けられており、このパンチング板140を加熱し得るようになっている。このパンチング板140の材料としては、例えばステンレススチール、セラミック等を用いることができる。
【0082】
この第1の変形実施態様の場合にも、図2において説明した作用効果と同様な作用効果を発揮することができ、排気ガス中の金属成分を付着して捕集することができる。
図6(B)は捕集ユニット80の第2の変形実施形態を示し、ここでは捕集部材84として複数の金網146を用いており、この複数の金網146を排気ガスの流れ方向に沿って所定のピッチで配列させている。
【0083】
この各金網146の側部には、捕集部材加熱手段94が設けられており、この金網146を加熱し得るようになっている。この金網146の材料としては、例えばステンレススチール、タングステン等を用いることができる。この第2の変形実施態様の場合にも、図2において説明した作用効果と同様な作用効果を発揮することができ、排気ガス中の金属成分を付着して捕集することができる。
【0084】
尚、以上の実施形態では、触媒100としてMnO やCaOを用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されるものではなく、触媒100としては、MnO 、CaO、MgO、HfO 、Ta よりなる群から選択される1以上の材料を用いることができる。また、以上の実施形態では、酸化ガスとしてO ガスを用いたが、これに限定されず、O 、O 、H O、空気(酸素と窒素の混合ガス)よりなる群から選択される1以上のガスを用いることができる。
【0085】
また、以上の実施形態では、有機金属化合物の原料としてRu (CO)12を用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、有機金属化合物の原料としては、ハロゲン元素を含まないRu (CO)12、TEMAT(テトラキスエチルメチルアミノチタニウム)、TAIMATA、Cu(EDMDD) 、Ru (CO)12、W(CO) 、TaCl 、TMA(トリメチルアルミニウム)、TBTDET(ターシャリーブチルイミド−トリ−ジエチルアミドタンタル)、PET(ペンタエトキシタンタル)、TMS(テトラメチルシラン)、TEH(テトラキスエトキシハフニウム)、Cp Mn[=Mn(C ]、(MeCp) Mn[=Mn(CH ]、(EtCp) Mn[=Mn(C ]、(i−PrCp) Mn[=Mn(C ]、MeCpMn(CO) [=(CH )Mn(CO) ]、(t−BuCp) Mn[=Mn(C ]、CH Mn(CO) 、Mn(DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11 )]、Mn(acac) [=Mn(C ]、Mn(DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(acac) [=Mn(C ]よりなる群から選択される1以上の材料を用いることができる。
【0086】
上記各原料中には、金属成分の他に、例えばC、O、Hを含む配位子が含まれることになる。この場合、上記原料中にフッ素や塩素等のハロゲン元素が含まれると、複雑な精製工程(作業)が必要となるので好ましくない。また用いる原料の種類によっては、金属成分の捕集時に、酸化し易い金属、例えばMnやTa等のように金属の酸化物として回収する場合もあり、この場合には、図2に示したように酸化ガス供給手段110より酸化ガスを捕集ユニット80内へ必ず導入することが必要となる。更に、用いる原料の種類によっては、金属膜の成膜ために原料ガスの他に還元ガスを用いる場合もあり、この場合には還元ガスとしてH ガス等が用いられ、このH ガスも上述したように除害される。
【0087】
また、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、この半導体ウエハにはシリコン基板やGaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体基板も含まれ、更にはこれらの基板に限定されず、液晶表示装置に用いるガラス基板やセラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る金属回収装置を有する成膜装置を示す概略構成図である。
【図2】金属回収装置内の一例を示す拡大断面構成図である。
【図3】本発明の金属回収方法を説明する工程図である。
【図4】原料ガスが熱分解されて金属成分の捕集と有害ガスの除害が行われる一般的な状況を示す模式図である。
【図5】原料ガスであるRu (CO)12が熱分解されて金属成分の捕集と有害ガスの除害が行われる状況を示す模式図である。
【図6】捕集ユニットの変形実施態様を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0089】
2 成膜装置
4 成膜装置本体
6 原料ガスの供給系
8 排気系
10 処理容器
16 載置台
18 加熱手段
28 ガス導入手段
32 原料タンク
34 固体原料
38 原料通路
60 排気通路
66 金属回収装置
80 捕集ユニット
82 除害ユニット
84 捕集部材
86 捕集片
94 捕集部材加熱手段
100 触媒
110 酸化ガス供給手段
122 装置制御部
124 記憶媒体
140 パンチング板
140A 通気孔
146 金網
W 半導体ウエハ(被処理体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属化合物の原料よりなる原料ガスを用いて被処理体の表面に薄膜の形成するようにした処理容器から排出される排気ガス中から金属成分を回収して排気ガスを除害する金属回収方法において、
前記排気ガスを高温に曝して該排気ガス中に含まれる未反応の前記原料ガスを熱分解させて前記原料ガス中に含まれている金属成分を捕集部材に付着させる捕集工程と、
前記捕集工程を経た前記排気ガスを触媒に接触させることにより前記排気ガス中に含まれる有害なガス成分を酸化して除害する除害工程と、
を有することを特徴とする金属回収方法。
【請求項2】
前記除害工程は、酸化ガスの存在下で行われることを特徴とする請求項1記載の金属回収方法。
【請求項3】
前記捕集工程は、酸化ガスの存在下で行われることを特徴とする請求項1又は2記載の金属回収方法。
【請求項4】
前記除害工程の前記触媒の温度は600〜800℃の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の金属回収方法。
【請求項5】
前記捕集工程の前記捕集部材の温度は600〜1000℃の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の金属回収方法。
【請求項6】
前記触媒は、MnO 、CaO、MgO、HfO 、Ta よりなる群より選択される1以上の材料よりなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の金属回収方法。
【請求項7】
前記酸化ガスは、O 、O 、H O、空気よりなる群より選択される1以上のガスよりなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の金属回収方法。
【請求項8】
前記有機金属化合物は、ハロゲン元素を含まないRu (CO)12、TEMAT(テトラキスエチルメチルアミノチタニウム)、TAIMATA、Cu(EDMDD) 、Ru (CO)12、W(CO) 、TaCl 、TMA(トリメチルアルミニウム)、TBTDET(ターシャリーブチルイミド−トリ−ジエチルアミドタンタル)、PET(ペンタエトキシタンタル)、TMS(テトラメチルシラン)、TEH(テトラキスエトキシハフニウム)、Cp Mn[=Mn(C ]、(MeCp) Mn[=Mn(CH ]、(EtCp) Mn[=Mn(C ]、(i−PrCp) Mn[=Mn(C ]、MeCpMn(CO) [=(CH )Mn(CO) ]、(t−BuCp) Mn[=Mn(C ]、CH Mn(CO) 、Mn(DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11 )]、Mn(acac) [=Mn(C ]、Mn(DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(acac) [=Mn(C ]よりなる群から選択される1以上の材料よりなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の金属回収方法。
【請求項9】
前記有機金属化合物はRu (CO)12であり、前記除害工程にて排出されるガスはCO ガスであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の金属回収方法。
【請求項10】
有機金属化合物の原料よりなる原料ガスを用いて被処理体の表面に薄膜の形成するようにした処理容器から排出される排気ガス中から金属成分を回収して排気ガスを除害する金属回収装置において、
前記排気ガスを高温に曝して該排気ガス中に含まれる未反応の前記原料ガスを熱分解させて前記原料ガス中に含まれている金属成分を付着させる捕集部材を有する捕集ユニットと、
前記捕集ユニットを通過した前記排気ガス中に含まれる有害なガス成分を酸化して除害する触媒を有する除害ユニットと、
を備えたことを特徴とする金属回収装置。
【請求項11】
前記捕集ユニットと前記除害ユニットとは筐体内に、前記排気ガスの流れ方向に沿って順に配列されていることを特徴とする請求項10記載の金属回収装置。
【請求項12】
前記捕集ユニットは、前記捕集部材を加熱する捕集部材加熱手段を有していることを特徴とする請求項10又は11記載の金属回収装置。
【請求項13】
前記除害ユニットは、前記触媒を加熱する触媒加熱手段を有していることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項に記載の金属回収装置。
【請求項14】
前記捕集部材は、ケーシング内に複数の捕集片を収容して形成されていることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか一項に記載の金属回収装置。
【請求項15】
前記捕集部材は、複数の金網を、前記排気ガスの流れ方向に沿って配列して形成されていることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか一項に記載の金属回収装置。
【請求項16】
前記捕集部材は、通気孔を有する複数のパンチング板を、前記排気ガスの流れ方向に沿って配列して形成されていることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか一項に記載の金属回収装置。
【請求項17】
前記捕集ユニットに向けて酸化ガスを供給する酸化ガス供給手段を有することを特徴とする請求項10乃至16のいずれか一項に記載の金属回収装置。
【請求項18】
前記除害ユニットに向けて酸化ガスを供給する酸化ガス供給手段を有することを特徴とする請求項10乃至17のいずれか一項に記載の金属回収装置。
【請求項19】
前記触媒の温度は、600〜800℃の範囲内であることを特徴とする請求項10乃至18のいずれか一項に記載の金属回収装置。
【請求項20】
前記捕集部材の温度は、600〜1000℃の範囲内であることを特徴とする請求項10乃至19のいずれか一項に記載の金属回収装置。
【請求項21】
前記触媒は、MnO 、CaO、MgO、HfO 、Taよりなる群より選択される1以上の材料よりなることを特徴とする請求項10 乃至20のいずれか一項に記載の金属回収装置。
【請求項22】
前記酸化ガスは、O 、O 、H O、空気よりなる群より選択される1以上のガスよりなることを特徴とする請求項10乃至21のいずれか一項に記載の金属回収装置。
【請求項23】
前記有機金属化合物は、ハロゲン元素を含まないRu (CO)12、TEMAT(テトラキスエチルメチルアミノチタニウム)、TAIMATA、Cu(EDMDD) 、Ru (CO)12、W(CO) 、TaCl 、TMA(トリメチルアルミニウム)、TBTDET(ターシャリーブチルイミド−トリ−ジエチルアミドタンタル)、PET(ペンタエトキシタンタル)、TMS(テトラメチルシラン)、TEH(テトラキスエトキシハフニウム)、Cp Mn[=Mn(C ]、(MeCp) Mn[=Mn(CH ]、(EtCp) Mn[=Mn(C ]、(i−PrCp) Mn[=Mn(C ]、MeCpMn(CO) [=(CH )Mn(CO) ]、(t−BuCp) Mn[=Mn(C ]、CH Mn(CO) 、Mn(DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11 )]、Mn(acac) [=Mn(C ]、Mn(DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(acac) [=Mn(C ]よりなる群から選択される1以上の材料よりなることを特徴とする請求項10乃至22のいずれか一項に記載の金属回収装置。
【請求項24】
前記有機金属化合物はRu (CO)12であり、前記除害工程にて排出されるガスはCO ガスであることを特徴とする請求項10乃至22のいずれか一項に記載の金属回収装置。
【請求項25】
有機金属化合物の原料よりなる原料ガスを用いて被処理体の表面に薄膜の形成するようにした処理容器から排出される排気ガス中から金属成分を回収して排気ガスを除害するようにした処理容器に接続した排気系において、
前記処理容器の排気口に接続された排気通路と、
前記排気通路に介設された真空ポンプ部と、
前記排気通路に介設された請求項10乃至24のいずれか一項に記載の金属回収装置と、
を備えたことを特徴とする排気系。
【請求項26】
被処理体に対して成膜処理を施すための成膜装置において、
真空排気が可能になされた処理容器と、
前記処理容器内で前記被処理体を保持する保持手段と、
前記被処理体を加熱する加熱手段と、
前記処理容器内へガスを導入するガス導入手段と、
前記ガス導入手段に接続された原料ガスの供給系と、
前記処理容器に接続された請求項25に記載の排気系と、
を備えたことを特徴とする成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−42330(P2010−42330A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206474(P2008−206474)
【出願日】平成20年8月9日(2008.8.9)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】