説明

金属薄膜の形成方法および金属薄膜ならびに薄膜トランジスタの製造方法

【課題】簡易な工程で容易に傾斜面を形成することが可能な金属薄膜の形成方法および金属薄膜ならびに薄膜トランジスタの製造方法を提供する。
【解決手段】基板11上の第1領域D1および第2領域D2に、無電解めっき処理の触媒材料を含む第1下地層13Aを形成したのち、この第1下地層13A上の第1領域D1に対応する領域に第2下地層13Bを形成する。第1領域D1において第2領域D2よりも、無電解めっき処理の触媒材料の濃度分布が高くなる。よって、これら第1下地層13Aおよび第2下地層13Bを形成した基板11に対して、無電解めっき処理を施すことにより、第1領域D1において第2領域D2よりも成膜レートが高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解めっき法を用いた金属薄膜の形成方法およびこれにより形成された金属薄膜ならびに薄膜トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、TFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)などの半導体回路作製のプロセスでは、配線などの金属層を、真空蒸着法、スパッタリング法などにより成膜したのち、微細加工技術の一つであるフォトリソグラフィ法によりパターニング形成している。フォトリソグラフィ法は、例えば、感光性材料などを用いたフォトレジスト材料を金属層上に塗布後、露光、現像、洗浄、エッチングの工程を経て、フォトレジストを剥離することにより、所望のパターンを得る方法である。
【0003】
このような金属薄膜では、例えばその断面形状の端部に段差があると、この上にさらに他の層を成膜して多層構造とする場合には、その段差によってステップカバレージが悪化する。このため、金属薄膜上に積層した膜の段切れなどが発生する虞がある。従って、金属薄膜の形成工程においては、その断面形状の端部に傾斜面を形成することが重要となる。
【0004】
そこで、特許文献1,2には、パターニングされた金属レジストのベーキング温度の調整によりレジスト形状を制御し、その後のドライエッチング工程で金属層の断面形状に傾斜面を形成する手法が提案されている。あるいは、特許文献3,4には金属層を2層に形成してウェットエッチングにより金属層の断面形状に傾斜面を形成する手法が記載されている。
【0005】
一方、金属層の成膜方法としては、上記真空蒸着法や、スパッタリング法の他にも、特許文献5や非特許文献1,2に記載されている金属微粒子や金属ペーストを用いたインクジェット法やスクリーン印刷法、あるいは、無電解めっき法(例えば、特許文献6,7)を用いることができる。例えば、特許文献6の手法は、液晶表示装置などのアクティブマトリクス基板の金属配線を形成する際に、傾斜面を形成した下地層を被覆するように無電解めっき処理を施すことで、金属配線の両端部にテーパを形成するものである。また、特許文献7には、インクジェット法と無電解めっき法を組み合わせて用いた省資源・省エネルギー化につながる機能性薄膜の形成方法が記載されている。
【特許文献1】特許第3324730号公報
【特許文献2】特許第3574270号公報
【特許文献3】特許第2614403号
【特許文献4】特開平1−151236号公報
【特許文献5】特許第3774638号公報
【特許文献6】特許第3567142号公報
【特許文献7】特開2001―288578号公報
【非特許文献1】「フレキシブル基板への印刷技術−Roll to Rollによる電子デバイス製造技術−」;株式会社東レリサーチセンター, pp.125-126(2006):[元文献]畑田賢造;「金属ナノペーストによるマイクロパターンニング技術」, 日本画像学会誌, 第42巻, 3号, pp.238-244(2003)
【非特許文献2】水垣ら;「インクジェット法を用いた配線技術開発の現状」, エレクトロニクス実装学会誌, Vol.9, No.7, pp.546-549(2006)
【非特許文献3】Hidberら; Langmuir, vol.12, p.1375(1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように、金属層を真空蒸着法やスパッタリング法を用いて成膜したのち、フォトリソグラフィ法などにより傾斜面をパターニング形成する場合には、工程数が増えてしまうという問題がある。
【0007】
そこで、工程数を削減するために、金属層を無電解めっき処理によってパターニング形成する手法が考えられる。ところが、無電解めっき処理では、通常、金属薄膜は触媒を核に析出されるため、所望の傾斜面を形成することは難しいという問題がある。また、上記特許文献6の手法によれば、無電解めっき処理を用いて傾斜面を形成することができるものの、無電解めっきの下地層に、エッチングなどの方法を用いて傾斜面を形成する必要があるため、上記問題の解決策としては十分ではなかった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡易な工程で容易に傾斜面を形成することが可能な金属薄膜の形成方法およびこれにより形成された金属薄膜ならびに薄膜トランジスタの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の金属薄膜の形成方法は、基板上の第1領域と、この第1領域の近傍の第2領域とに、無電解めっき処理の触媒材料を含む下地層を形成する工程と、下地層を形成した基板に対して、下地層を触媒として無電解めっき処理を施すことによりめっき層を形成する工程とを含み、下地層を触媒材料の濃度分布が第1領域において第2領域よりも高くなるように形成するものである。
【0010】
本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、基板上に、第1の電極、第2の電極および第3の電極のうちの少なくとも一の電極を、無電解めっき処理を用いて形成する電極形成工程を含み、この電極形成工程が、本発明の金属薄膜の形成方法の各工程を含んでいる。
【0011】
本発明の金属薄膜は、基板上の一の領域に設けられ、無電解めっき処理の触媒材料を含む第1の下地層と、第1の下地層上の中央領域に設けられ、無電解めっき材料の触媒材料を含む第2の下地層と、第1および第2の下地層を覆うように形成されると共に、端部領域に傾斜面を有するめっき層とを備えたものである。
【0012】
本発明の金属薄膜の形成方法および薄膜トランジスタの製造方法では、基板上の第1領域と、この近傍の第2領域とに、下地層を、触媒材料の濃度分布が第1領域において第2領域よりも高くなるように形成したのち、無電解めっき処理を施すことにより、基板上の第1領域において第2領域よりも成膜レートが高くなる。よって、成膜されるめっき層の端部領域に傾斜面が形成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の金属薄膜の形成方法および薄膜トランジスタの製造方法によれば、基板上の第1領域と、この近傍の第2領域とに、無電解めっき処理の触媒材料を含む下地層を、触媒材料の濃度分布が第1領域において第2領域よりも高くなるように形成したのち、無電解めっき処理を施すようにしたので、基板上の第1領域において第2領域よりも成膜レートが高くなり、めっき層の端部領域に傾斜面を形成することができる。これにより、成膜後にフォトレジストを用いたエッチングなどの工程を経ることなく、簡易な工程で容易に傾斜面を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る金属薄膜10の断面構成を表すものである。
【0016】
金属薄膜10は、後述の無電解めっき法を用いて形成され、例えば、基板11上に、密着層12を介して設けられている。金属薄膜10は、第1下地層13A、第2下地層13B、めっき層14により構成され、端部領域にはテーパ(傾斜面)14−1が形成されている。なお、この金属薄膜10は、例えば回路基板上における電極や配線などであり、金属薄膜10の幅Wによって、これら電極や配線などの太さが決定される。
【0017】
基板11は、例えば、シリコン、合成石英、ガラス、金属、樹脂または樹脂フィルムなどの材料から構成されている。
【0018】
密着層12は、第1下地層13Aおよび第2下地層13Bの基板11に対する密着性を高めるものである。この密着層12の構成材料としては、シラン系カップリング剤、例えば、アミノ系シラン化合物、メルカプト系シラン化合物、フェニル系シラン化合物、アルキル系シラン化合物などの化合物のうち少なくとも1つ以上を含んだものが挙げられ、第1下地層13Aおよび第2下地層13Bおよび基板11を構成する材料に応じて適切なものを選択すればよい。なお、シランカップリング剤としては、例えば、信越化学工業(株)製のKBM−603(N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン)(商品名)を用いることができる。
【0019】
第1下地層13Aは、基板11上の第1領域D1(金属薄膜10の中央領域)に、例えば厚みが数nm〜数十nmで設けられている。第2下地層13Bは、第1下地層13A上の第1領域D1に対応する領域に、例えば厚みが数nm〜数十nmで形成されている。これら第1下地層13Aおよび第2下地層13Bは、それぞれ後述の無電解めっき処理の触媒材料、例えばパラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)などのうち少なくとも1種を含んで構成されている。
【0020】
また、本実施の形態では、第1下地層13Aおよび第2下地層13Bは、同一の触媒材料を同一の濃度で含んでいる。このように、第1領域D1では、第1下地層13Aおよび第2下地層13Bの2層構造となっており、第2領域D2では、第1下地層13Aの単層構造となっている。これにより、基板11上の第1領域D1において、第2領域D2よりも、無電解めっき処理の触媒材料の濃度分布が高くなるようになっている。
【0021】
めっき層14は、第1領域D1および第2領域D2の全面にわたって、第1下地層13Aおよび第2下地層13Bを覆うように形成されている。めっき層14は、例えば厚みが数十nm〜数百nmであり、後述の無電解めっき処理により析出されることにより形成される。
【0022】
このようなめっき層14を構成する材料としては、無電解めっき処理によって析出が可能な材料、例えばニッケル(Ni)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、コバルト(Co)、白金(Pt)、インジウム(In)、錫(Sn)、ロジウム(Rh)などの金属単体を用いることができる。加えて、これらの金属と共析可能な金属、例えばリン(P)、ホウ素(B)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カドミウム(Cd)、タングステン(W)、レニウム(Re)、チタン(Ti)、硫黄(S)、バナジウム(V)などをさらに用いるようにしてもよい。
【0023】
但し、めっき層14の構成材料は、第1下地層13Aおよび第2下地層13Bに含まれる触媒材料との関係によって適宜選択されるものである。
【0024】
また、このような金属薄膜10の構成は、次に示した(1)〜(5)のいずれかの方法により、容易に特定することができる。
(1)金属薄膜10の断面を、例えば透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)により観察し、無電解めっき処理の触媒材料(第1下地層13Aおよび第2下地層13B)を検出する。
(2)金属薄膜10に共析可能な金属が含まれているかどうかを、例えばSIMS(Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer)、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)などにより検出する。例えば、第1めっき層14Aおよび第2めっき層14Bがニッケルを含んで構成されている場合には、これに加えてホウ素やリンなどが含まれているかどうかを検出する。
(3)金属薄膜10中に、無電解めっき処理で使用される有機化合物などの添加剤が含まれているかを、例えばSIMSにより検出する。
(4)金属薄膜の断面形状を、例えば走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観察する。
(5)表面の粗さを、例えば原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)、触針計などにより観察する。但し、無電解めっき処理の後に何らかの表面処理を行っている場合には、評価は困難である。
【0025】
次に、上記のような金属薄膜10の形成方法について、図2〜図5を参照して説明する。図2〜図5は、金属薄膜10の形成方法を工程順に示した断面図である。
【0026】
(1.基板11の洗浄)
まず、図2(A)に示したように、上述の材料よりなる基板11をアルカリ溶液で洗浄後、純水で洗浄して乾燥させる。さらに、基板11の表面に、UVオゾン処理を施すことにより、表面における有機物の除去を行う。
【0027】
(2.密着層12の形成)
続いて、図2(B)に示したように、基板11上に密着層12を形成する。例えば、基板11の表面に、上述の材料よりなるシランカップリング剤を用いた気相法やスピンコート法によって表面処理を施すことにより密着層12を形成する。なお、スピンコート法を用いた場合は、シランカップリング剤を溶媒で希釈して使用し、処理後に大気中で、5分間以上、120℃に加熱するとよい。
【0028】
(3.第1下地層13Aの形成)
次に、密着層12を形成した基板11に対して、第1下地層13Aのパターンを、例えば、μコンタクト法(非特許文献3参照)により印刷する。このμコンタクト印刷法は、例えばスタンプなどの凹凸パターンが形成された転写板を用いてパターン印刷を行うものである。なお、本実施の形態では、第1下地層13Aと第2下地層13Bのそれぞれのパターンに対応したスタンプを2種類作製する。
【0029】
(3−1.スタンプ110の作製)
まず、図3(A)に示したようなスタンプ型200に、スタンプ110の材料を流し込み硬化させることにより、スタンプ110を作製する。スタンプ型200は、凹凸パターン201Aが形成された基板201と、この凹凸パターン201Aに対向するように配置された基板203と、これら基板201と基板203との間に設けられたスペーサ202によって構成されている。基板201としては、例えばガラス基板が用いられる。凹凸パターン201Aは、この基板201の表面に、例えばフォトリソグラフィ法により形成することができる。基板203としては、ガラスやテフロン(登録商標)などを用いることができる。また、スタンプ110の材料としては、2液混合による重合反応により硬化される材料、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)、具体的には、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSYLGARD184(商品名)を用いることができる。
【0030】
詳細には、上記のようなスタンプ型200に、スタンプ110の材料を2液混合後、攪拌、脱泡処理を行い流し込む。このとき、スタンプ型200のスペーサ202により、スタンプ110を所望の厚さに調整する。続いて、60℃で12時間、恒温槽にて加熱重合させたのち、スタンプ型200の基板201および基板203を分離させることにより、図3(B)に示したような、印刷パターン110Aを有するスタンプ110を作製することができる。なお、スタンプ型200の凹凸パターン201Aが、スタンプ110の印刷パターン110Aを形成する。
【0031】
(3−2.スタンプ110への触媒層13A−1の形成)
次いで、図4(A)に示したように、作製したスタンプ110の印刷パターン110Aが形成されている側に、第1下地層13Aとなる触媒層13A−1を形成する。
【0032】
まず、スタンプ110の印刷パターン110Aの側を、無電解めっき処理の触媒材料を含む触媒付与剤に数秒から数分の間浸すことにより、スタンプ110に触媒材料を付与する。触媒付与剤としては、例えば奥野製薬(株)製のパラジウム触媒付与剤(OPC50インデューサ:商品名)を用いることができる。これは、2製品の混合溶液であり推奨の使用方法があるが、液の寿命などを考えなければ、被めっき層のダメージなどを考慮しpHを調整するようにしてもよい。なお、触媒付与剤としては、上記のものに限らず、触媒材料を含む溶液、例えば塩化パラジウム溶液などを用いてもよい。
【0033】
こののち、スタンプ110に付与された触媒材料を窒素ブローし、表面を乾燥させることにより、スタンプ110に触媒層13A−1を形成する。
【0034】
(3−3.触媒層13A−1の転写)
次いで、密着層12を形成した基板11に対し、触媒層13A−1を転写する。この際、まず、図4(A)に示したように、基板11の密着層12が形成されている面に対して、公知の凸版印刷法などと同様の手法で、スタンプ110に形成された触媒層13A−1を接触させる。このとき、スタンプ110の凸面(凸部の上底面)130のみを密着層12に接触させ、その他の部分(凹部)は接触しないように注意する。凹部が接触してしまうと、所望のパターンが得られないためである。続いて、密着層12とスタンプ110の凸面130の触媒層13A−1を接触させた状態で、数秒から数分放置する。
【0035】
続いて、図4(B)に示したように、スタンプ110を基板11から取り去ると、スタンプ110の凸面130に形成されていた触媒層13A−1のみが、基板11上の密着層12側へ転写される。
【0036】
こののち、触媒層13A−1をパターン転写した基板11を、大気中で100℃〜150℃の温度で加熱することで、転写された触媒層13A−1の基板11に対する密着性を強固にする。これにより、基板11の密着層12上に、第1下地層13Aを形成することができる(図5(A))。なお、図2〜図4およびこれらの説明では、複数の第1下地層13Aをパターン形成した構成となっているが、図4に示した領域Sが、図1および図5に示した構成に対応している。
【0037】
(4.第2下地層13Bの形成)
次に、図5(B)に示したように、形成した第1下地層13A上の第1領域D1に対応する領域に、第2下地層13Bを形成する。この際、上述した第1下地層13Aの場合と同様にしてμコンタクト印刷法により、第2下地層13Bを印刷するようにする。但し、第1下地層13Aとは印刷パターンが異なるため、第2下地層13Bのパターン用のスタンプを新たに作製する。
【0038】
(4.無電解めっき処理)
最後に、第1下地層13Aおよび第2下地層13Bを形成した基板11に対して、無電解めっき処理を施すことにより、めっき層14を形成する。この際、めっき液としては、例えばニッケルをめっき膜として析出させる場合には、上村工業社製のNi−B成膜用めっき液BEL−801(商品名)を用いることができる。めっき浴の温度は例えば60℃とし、浸漬時間は所望の膜厚によって適宜設定する。以上により、図1に示した金属薄膜10を形成することができる。
【0039】
このように、本実施の形態の金属薄膜10の形成方法では、基板11上の第1領域D1および第2領域D2にわたって、第1下地層13Aを形成したのち、この第1下地層13A上の第1領域D1に対応する領域に第2下地層13Bを形成することにより、第1領域D1において第2領域D2よりも、無電解めっき処理の触媒材料の濃度分布が高くなる。よって、これら第1下地層13Aおよび第2下地層13Bを形成した基板11に対して、無電解めっき処理を施すことにより、第1領域D1において第2領域D2よりも成膜レートが高くなる。
【0040】
以上のように、本実施の形態の金属薄膜10の形成方法によれば、基板11上の第1領域D1および第2領域D2にわたって、第1下地層13Aを形成したのち、この第1下地層13A上の第1領域D1に対応する領域に第2下地層13Bを形成するようにしたので、第1領域D1において第2領域D2よりも、無電解めっき処理の触媒材料の濃度分布が高くなる。よって、これら第1下地層13Aおよび第2下地層13Bを形成した基板11に対して、無電解めっき処理を施すことにより、第1領域D1において第2領域D2よりも成膜レートが高くなり、金属薄膜10の端部領域にはテーパ14−1を形成することができる。
【0041】
ここで、従来のフォトリソグラフィ法を用いたテーパ形成では、金属層を真空蒸着法などによって成膜した後に、さらにフォトレジストを用いたエッチングなどの工程を経る必要があり、工程数が増加してしまう。
【0042】
また、図12(A)には、クロム膜を真空蒸着法によって蒸着させたのち、ウェットエッチングによってテーパ形成した金属薄膜(図中、点線部分)の断面の写真を示す。このように、ウェットエッチングによってテーパ形成した場合には、等方的なエッチングになるので、テーパ部分が直線状にならず、特に金属薄膜の上面の端が垂直に近い角度となる。この場合、金属薄膜上に他の層を積層すると、他の層の厚みの均一性が悪くなるため、段切れなどが発生し易くなる。なお、図12(B)には、ドライエッチングによってテーパ形成した場合の金属薄膜の断面形状の模式図を示す。このように、ドライエッチングを用いたテーパ形成では、レジストなどのマスクの後退を利用するため、テーパ形状は直線状となるが、上述したように工程数が多くなってしまう。
【0043】
そこで、工程数を削減するために、無電解めっき処理により金属薄膜を形成するとことが考えられるが、通常、めっき膜は触媒を核にして析出されるため、所望のテーパ形状を得ることは困難である。
【0044】
これに対し、本実施の形態では、無電解めっき処理の触媒材料を含む下地層の濃度分布を調整することで、無電解めっき処理を用いたフルアディティブ法によってテーパ形成が可能である。このため、成膜後のパターニング工程が必要なくなる。よって、簡易な工程で容易にテーパを形成することが可能となる。
【0045】
また、金属薄膜10全体の幅Wに対する第1領域D1の幅xの比率、第1下地層13A、第2下地層13Bの膜厚などを適宜設定することにより、配線や電極の仕様に合わせて所望のテーパ形状を容易に形成することができる。
【0046】
次に、このような金属薄膜10の形成方法を用いた薄膜トランジスタ1の製造方法について、図6〜図8を参照して説明する。図6〜図8は、薄膜トランジスタ1の製造方法について工程順に示した断面図である。
【0047】
まず、図6(A)に示したように、例えばガラスなどよりなる基板15上にバッファ層16を例えば蒸着法やスパッタリング法により形成する。こののち、図6(B)に示したように、バッファ層16上に、本実施の形態の金属薄膜10としてのゲート電極10aを、上述した形成方法により形成する。この際、第1下地層13Aおよび第2下地層13Bとしては、例えばパラジウムを含む触媒材料を用いることができ、第1めっき層14Aおよび第2めっき層14Bは、例えばニッケルを含むめっき膜とする。続いて、図6(C)に示したように、形成したゲート電極10aを覆うようにゲート絶縁膜17を例えば蒸着法やスパッタリング法により形成する。
【0048】
次いで、図7(A)に示したように、形成したゲート絶縁膜17上に、α−Si(アモルファスシリコン)(n+)層18と、α−Si(i)層19とを、この順に形成する。続いて、図7(B)に示したように、形成したα−Si(n+)層18と、α−Si(i)層19とを、例えばドライエッチング法によりパターニング形成する。続いて、図7(C)に示したように、パターニング形成したα−Si(n+)層18およびα−Si(i)層19を覆うように、本実施の形態の金属薄膜10としてのソース電極10bおよびドレイン電極10cを、上述した形成方法により形成する。なお、これらソース電極10bおよびドレイン電極10cについても、上記ゲート電極10aと同様の材料を用いることができる。
【0049】
次いで、図8(A)に示したように、α−Si(n+)層18およびα−Si(i)層19の表面を、例えばドライエッチング法により除去したのち、図8(B)に示したように、ソース電極10bおよびドレイン電極10cを覆うようにパッシベーション膜20を形成する。続いて、形成したパッシベーション膜20にコンタクトホール20aを形成する。以上により、薄膜トランジスタ1を完成する。
【0050】
このように、薄膜トランジスタ1の製造方法では、ゲート電極10a、ソース電極10bおよびドレイン電極10cを、本実施の形態の金属薄膜10の形成方法によって形成することにより、各電極の端部に容易にテーパを形成することができる。ここで、従来は、所望のテーパ形状を形成するために、電極となる金属層を蒸着法などにより成膜したのち、さらにエッチングなどの工程を経る必要があった。これに対し、本実施の形態では、無電解めっき処理を用いたフルアディティブ法によって電極形成が可能であるため、成膜後のパターニング工程が必要なくなる。これにより、各電極に所望のテーパ形状を形成することで、漏れ電流などの発生を抑制することができる。
【0051】
なお、本実施の形態におけるゲート電極10a、ソース電極10bおよびドレイン電極10cが、本発明の第1ないし第3の電極に相当する。
【0052】
[第2の実施の形態]
図9は、本発明の第2の実施形態に係る金属薄膜21の断面構成を表すものである。なお、以下の説明では、上記第1実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0053】
金属薄膜21は、後述の無電解めっき法を用いて形成され、例えば、基板11上に、密着層12を介して設けられている。金属薄膜21は、第1下地層23A、第2下地層23B、めっき層24により構成され、端部領域にはテーパ(傾斜面)24−1が形成されている。なお、この金属薄膜21は、例えば回路基板上における電極や配線などであり、金属薄膜21の幅Wによって、これら電極や配線などの太さが決定される。
【0054】
第1下地層23Aは、基板11上の第1領域D1(金属薄膜21の中央領域)に、例えば厚みが数nm〜数十nmで設けられている。第2下地層23Bは、基板11上の第2領域D2に、例えば厚みが数nm〜数十nmで形成されている。これら第1下地層23Aおよび第2下地層23Bの構成材料としては、上記第1の実施の形態の第1下地層13Aおよび第2下地層13Bと同様のものを用いることができる。
【0055】
また、本実施の形態では、第1下地層23Aにおいて、第2下地層23Bよりも無電解めっき処理の触媒材料の濃度が高くなっている。これにより、基板11上の第1領域D1において、第2領域D2よりも、無電解めっき処理の触媒材料の濃度分布が高くなるようになっている。
【0056】
めっき層24は、第1領域D1および第2領域D2の全面にわたって、第1下地層23Aおよび第2下地層23Bを覆うように形成されている。めっき層24は、例えば厚みが数十nm〜数百nmであり、後述の無電解めっき処理により析出される。このめっき層24を構成する材料としては、上述の第1の実施の形態のめっき層14と同様のものを用いることができる。
【0057】
また、このような構成の金属薄膜21は、次のようにして形成することができる。まず、図10に示したように、密着層12を形成した基板11に対して、例えば上述したようなμコンタクト印刷法を用いて、第1領域D1に第1下地層23A、第1領域D2に第2下地層23Bをそれぞれ形成する。こののち、第1下地層23Aおよび第2下地層23Bを形成した基板11に対して、上述したような無電解めっき処理を施してめっき層24を成膜することにより、図9に示した金属薄膜21を形成することができる。
【0058】
このように、本実施の形態では、基板11上に、第1下地層23Aにおいて、第2下地層23Bよりも無電解めっき処理の触媒材料の濃度が高くなるようにしたので、基板11上の第1領域D1において、第2領域D2よりも、無電解めっき処理の触媒材料の濃度分布が高くなり、金属薄膜21の端部領域にテーパを形成することができる。
【0059】
(実施例)
次に、本発明の実施例について説明する。
【0060】
実施例として、上記第1の実施の形態の金属薄膜10の形成方法により金属薄膜10を成膜した。この際、ガラスからなる基板11上に密着層12として、信越化学工業(株)製のアミノ系シランカップリング剤KBM−603(商品名)、スタンプの材料には、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSYLGARD184(商品名)を用いた。このスタンプへの触媒付与剤として、奥野製薬(株)製のパラジウム触媒付与剤(OPC50インデューサ:商品名)を用いて、第1下地層13Aおよび第2下地層13Bを密着層12上にそれぞれ印刷した。また、第1めっき層14Aおよび第2めっき層14Bの無電解めき処理には、上村工業社製のNi−B成膜用めっき液BEL−801(商品名)を用いて、めっき浴の温度を60℃、浸漬時間を1分、成膜レートを200nm/分、所望の幅(太さ)Wを50μmとした。
【0061】
上記のようにして形成した金属薄膜10の端部の断面形状を図11(A)に示す。また、上記実施例の比較例として、下地層に触媒材料の濃度分布を付与することなく無電解めっき処理を施して形成した金属薄膜の端部の断面形状を図11(B)に示す。なお、比較例では、上記実施例と同一の触媒材料を含む下地層を形成したのち、上記実施例と同様のめっき材料、めっき浴、成膜レートにより、金属薄膜全体として幅Wとなるように無電解めっき処理を行った。
【0062】
ここで、図11(B)に示したように、下地層に濃度分布を付与せずに無電解めっき処理を行い、所望の幅Wとなるように金属薄膜を形成すると、その端部は急峻となり、大きな段差が生じる。このため、形成した金属薄膜上にさらに他の層を成膜して多層構造とする場合には、金属薄膜の端部の段差によってステップカバレージが悪化する。よって、金属薄膜上部に積層した膜の段切れなどが発生する虞がある。
【0063】
これに対し、図11(A)に示したように、下地層に濃度分布を付与して無電解めっき処理を行い、所望の幅Wとなるように金属薄膜を形成すると、その端部は緩やかになり、上記比較例のような問題は生じなくなる。よって、基板11上の第1領域D1において第2領域D2よりも触媒材料の濃度分布が高くなるように下地層を形成したのち、この下地層を触媒として無電解めっき処理を施すことにで、金属薄膜10の端部領域に所望のテーパ形状が容易に形成されることが示された。
【0064】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0065】
例えば、上記実施の形態等では、基板11上において、第2領域D2を、第1領域D1の両端部に同じ幅xで形成し、第2領域D2に同一のテーパ形状を形成する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、テーパの個数、位置、幅、形状、傾斜角などは、必要とされるパターンにより適宜設定されるものである。例えば、第1下地層13Aの方側の領域にのみ第2下地層13Bを形成して、金属薄膜10の一方の端部にテーパ14−1を形成するようにしてもよい。また、金属薄膜10の両端部でそれぞれテーパの幅や傾斜角が異なるように形成してもよい。
【0066】
また、上記実施の形態等では、触媒材料の濃度分布が異なる領域として、第1領域D1と第2領域D2の2つの領域に分割した構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、3つ以上の領域で触媒材料の濃度分布が異なるようにしてもよい。このようにした場合であっても、例えば金属薄膜の中央領域から端部領域にかけて、段階的に濃度が低くなるようにすれば、所望のテーパ形状を形成することができる。
【0067】
また、上記実施の形態等では、第1領域D1において第2領域D2よりも触媒材料の濃度分布を高くする方法の一例として、同一の濃度の触媒層をそれぞれ、第1領域D1に2回、第2領域D2に1回、転写する場合を挙げて説明したが、これに限定されず、第1領域D1において第2領域D2よりも転写回数が多くなっていれば、本発明と同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、上記実施の形態等では、第1領域D1において第2領域D2よりも触媒材料の濃度分布を高くする方法の一例として、第1領域D1と第2領域D2とで異なる濃度の触媒層をそれぞれ1回、転写する場合を挙げて説明したが、これに限定されず、第1領域D1において第2領域D2よりも濃度分布が高くなれば、転写回数は特に制限されない。また、第1領域D1と第2領域D2とに、それぞれ別々に第1下地層23Aおよび第2下地層23Bを形成するようにしたが、これに限定されず、第1領域D1と第2領域D2とで濃度が異なる下地層を一括して形成するようにしてもよい。
【0069】
また、本発明により形成された金属薄膜は、上述した薄膜トランジスタの他にも、金属電極を応用した電子デバイス、例えばキャパシタなどにも適用することが可能である。
【0070】
さらに、上記実施の形態等において説明した各構成要素の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、また他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る金属薄膜を表す断面図である。
【図2】図1に示した金属薄膜の形成方法を工程順に表す断面図である。
【図3】図2に続く工程を表す断面図である。
【図4】図3に続く工程を表す断面図である。
【図5】図4に続く工程を表す断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る薄膜トランジスタの製造方法工程順に表す断面図である。
【図7】図6に続く工程を表す断面図である。
【図8】図7に続く工程を表す断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る金属薄膜を表す断面図である。
【図10】図9に示した金属薄膜の形成方法を説明するための断面図である。
【図11】金属薄膜の断面形状を解析した結果あり、(A)図は実施例、(B)図は比較例を示す。
【図12】従来の真空蒸着法およびフォトレジスト法を用いて形成したテーパ形状を表す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1…薄膜トランジスタ、10,21…金属薄膜、10a…ゲート電極、10b…ソース電極、10c…ドレイン電極、11,15…基板、12…密着層、13A,23A…第1下地層、13B,23B…第2下地層、14,24…めっき層、16…バッファ層、17ゲート絶縁膜、18…α−Si(n+)層、19…α−Si(i)層、20…パッシベーション膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の第1領域と、この第1領域の近傍の第2領域とに、無電解めっき処理の触媒材料を含む下地層を形成する工程と、
前記下地層を形成した基板に対して、前記下地層を触媒として、無電解めっき処理を施すことによりめっき層を形成する工程とを含み、
前記下地層を、前記触媒材料の濃度分布が前記第1領域において前記第2領域よりも高くなるように形成する
ことを特徴とする金属薄膜の形成方法。
【請求項2】
前記下地層を形成する工程は、
前記基板上の前記第1領域と前記第2領域との全面に、第1の下地層を形成したのち、
前記第1の下地層上の前記第2領域に対向する領域に、第2の下地層を形成する
ことを特徴とする請求項1記載の金属薄膜の形成方法。
【請求項3】
前記第1の下地層と前記第2の下地層とは、前記触媒材料の濃度が同一である
ことを特徴とする請求項2記載の金属薄膜の形成方法。
【請求項4】
前記下地層を形成する工程は、
前記基板上の前記第1領域に、第1の下地層を形成したのち、
前記基板上の前記第2領域に、前記第1の下地層よりも触媒材料の濃度が低い第2の下地層を形成する
ことを特徴とする請求項2記載の金属薄膜の形成方法。
【請求項5】
基板上に、第1の電極、第2の電極および第3の電極を含む多層膜を備えた薄膜トランジスタの製造方法であって、
前記第1ないし第3の電極のうち少なくとも一の電極を、無電解めっき処理を用いて形成する電極形成工程を含み、
前記電極形成工程は、
基板上の第1領域と、この第1領域の近傍の第2領域とに、無電解めっき処理の触媒材料を含む下地層を形成する工程と、
前記下地層を形成した基板に対して、前記下地層を触媒として、無電解めっき処理を施すことによりめっき層を形成する工程とを含み、
前記下地層を、前記触媒材料の濃度分布が前記第1領域において前記第2領域よりも高くなるように形成する
ことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項6】
基板上の一の領域に設けられ、無電解めっき処理の触媒材料を含む第1の下地層と、
前記第1の下地層上の中央領域に設けられ、無電解めっき材料の触媒材料を含む第2の下地層と、
前記第1および第2の下地層を覆うように形成されると共に、端部領域に傾斜面を有するめっき層とを備えた
ことを特徴とする金属薄膜。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−102720(P2009−102720A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277868(P2007−277868)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】