説明

開閉バルブ及び該開閉バルブを備えた処理装置

【課題】 シール部材の長寿命化を達成することができる開閉バルブを提供すること。
【解決手段】内部を真空に保持可能なチャンバー11と、排気装置53、54との間に設けられる開閉バルブ100であって、チャンバー11側と排気装置53、54側とを連通する開口111を備えた弁本体110と、弁本体110内にあって開口111に接離して開口を開閉する弁体120と、弁体120に設けられ弁体120が開口111を閉じた際に開口111をシールするシール部材120bと、弁体を進退させる直進移動手段140と、開口111から離隔した位置に設けられ、開口111から離反した弁体120が退避する弁退避部113bと、弁体120を、開口111に対応する位置と弁退避部113bに対応する位置との間で回動させる回動手段150とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体に対して真空処理を行う処理装置のチャンバーと、排気装置内との間に設けられる開閉バルブと、この開閉バルブを備えた処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、成膜処理や、エッチング処理等の真空処理が多用されている。このような真空処理を行う処理装置においては、内部が真空排気可能なチャンバー内に、被処理体である半導体ウエハを搬入し、チャンバー内を真空ポンプを備えた排気装置により真空排気しながら、半導体ウエハに所定の処理を施す。
【0003】
この処理の間、チャンバー内は、真空ポンプにより真空排気されつつ、チャンバーと真空ポンプとの間に設けられた圧力制御バルブの開度を調整することによりチャンバー内が所定の圧力に制御される。
【0004】
一方、メンテナンスの際等、真空ポンプの上流側または下流側において排気路を完全に遮蔽する必要がある場合が存在するため、圧力制御バルブの他に排気路を完全に遮断することができる開閉バルブが設けられている。
【0005】
このような開閉バルブとしては、特許文献1(特開平9−89139号)が知られている。ここに記載されているように、一般的な開閉弁は、開口に弁体が接離して弁の開閉を行うものである。そして、弁の閉止を確実なものにするために、弁体には弾性に富む環状のシール部材がとりつけられており、弁体が開口に圧接したとき、シール部材が弾性変形して隙間を塞ぎ、密閉することができる。
【特許文献1】特開平9−89139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来の開閉バルブにおいて、弁体が直進して開口に接離することにより開閉動作を行うので、開弁状態のとき、弁体は開口と対向した位置にある。
【0007】
ところで、上記真空処理として、例えば、CFガスやOガス等のクリーニングやプラズマ処理を行うが、その間は当該開閉バルブは開弁しており、弁体は開口から離れて、開口と対向した位置にある。そして、プラズマガスが開口を通過して排気装置に吸引される際に、弁体のシール部材は、プラズマ中のラジカルに曝されて劣化し、封止能力が低下したり、パーティクルが発生するなどの問題が発生する。そのため、シール部材が劣化した時点で、装置を停止してシール部材を交換する必要が生じる。
【0008】
現在では、プラズマやラジカルの高エネルギー化に伴い、耐プラズマ性・耐ラジカル性を上げるため、シール部材として高価な完全フッ素化ゴムを使用しているが、それでも劣化は起こり、シール部材を数ヶ月で交換しなければならず、シール部材コストが高いものとなり、また、シール部材交換のために装置を停止させるので、スループットが低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、シール部材の長寿命化を達成することができる開閉バルブと、この開閉バルブを備えた処理装置を提供することを目的としている。
【0010】
上記の目的を達成するために本発明の第1の観点では、内部を真空に保持可能なチャンバーと、該チャンバー内を真空排気する排気装置との間に設けられる開閉バルブであって、内部に前記チャンバー側と前記排気装置側とを連通する開口が形成された弁本体と、該弁本体内にあって前記開口に接離して開口を開閉する弁体と、前記弁体に設けられ前記弁体が前記開口を閉じた際に開口をシールするシール部材と、前記弁体を進退させる直進移動手段と、前記開口から離隔した位置に設けられ、前記開口から離反した前記弁体が退避する弁退避部と、前記弁体を、前記開口に対応する位置と前記退避部または前記退避部に対応する位置との間で回動させる回動手段と、を有し、前記弁体が前記開口から離反している際に、前記直進移動手段と回動手段とにより前記弁体を前記弁退避部に移動することを特徴とする開閉バルブを提供する。
【0011】
第1の観点において、前記弁退避部は前記開口から離隔した壁部に設けられ、前記弁体が前記弁退避部に対応する位置に移動したとき、前記直進移動手段が、前記シール部材が弁退避部に圧接されるように、前記弁体を直進させるような構成にすることができる。
【0012】
また、第1の観点において、前記直進移動手段が、カム機構を有する構成とすることができる。あるいは、前記カム機構が、板状部材の表面に形成された溝を有する板カムである構成としてもよい。
【0013】
同じく第1の観点において、前記回動手段が、前記弁体と共にカム機構を回動することにしてもよい。
【0014】
また、第1の観点において、前記弁体が、前記シール部材の外側に保護シールを有し、前記保護シールが前記弁退避部に密着したとき、前記シール部材が前記保護シール内に気密に封止される構成としてもよい。
【0015】
さらに、前記開口の周辺に、前記保護シールが収容される凹溝を形成し、前記シール部材が開口を封止したとき前記保護シールが前記凹溝に収容される構成とすることもできる。
【0016】
本発明の第2の観点では、被処理体が収容され、内部を真空に保持可能なチャンバーと、前記チャンバー内で被処理体にプラズマによる処理を施す処理機構と、前記チャンバー内を真空排気する排気装置と、前記チャンバーと前記排気装置との間に設けられる開閉バルブとを有する処理装置であって、前記開閉バルブが、内部に前記チャンバー側と前記排気装置側とを連通する開口が形成された弁本体と、該弁本体内にあって前記開口に接離して開口を開閉する弁体と、前記弁体に設けられ前記弁体が前記開口を閉じた際に開口をシールするシール部材と、前記弁体を進退させる直進移動手段と、前記開口から離隔した位置に設けられ、前記開口から離反した前記弁体が退避する弁退避部と、前記弁体を、前記開口に対応する位置と前記退避部または前記退避部に対応する位置との間で回動させる回動手段と、を有し、前記弁体が前記開口から離反している際に、前記直進移動手段と回動手段とにより前記弁体を前記弁退避部に移動することを特徴とする処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の開閉バルブによれば、半導体基板を処理中には、弁体は開口から離隔した位置にある弁退避部に移動しており、シール部材に接触する排気流の量を減少させることができ、プラズマ中のラジカル等によるシール部材の劣化を少なくすることができ、シール部材の寿命が延びて処理装置のランニングコストを低下させることができ、処理のスループットも向上するという優れた効果を奏する。特に、弁体が開状態の時に、シール部材が弁退避部に圧接されるようにすることにより、シール部材へのラジカル等の進入をほぼ完全に遮断することができ、より大きな効果を奏することができる。
【0018】
前記シール部材の外側に保護シールを有し、前記保護シールが弁退避部に密着したとき、前記シール部材が前記保護シール内に気密に封止される構成とすれば、弁体が弁退避部に退避しているとき、シール部材がプラズマ中のラジカル等に浸食されることを防止することができる。
【0019】
前記開口の周辺に、前記保護シールが収容される凹溝を形成し、前記シール部材が開口を封止したとき前記保護シールが前記凹溝に収容される構成とすれば、シール部材が開口を封止しているとき、保護シールは凹溝に入っていて変形しないので、弁退避部に移動したときの封止を確実なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態では、被処理基板としての半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)の表面にCVDによりTiN膜を成膜する装置を例にとって説明する。
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の圧力制御バルブとこの圧力制御バルブを備えた処理装置について詳細に説明する。図1は、本発明の圧力制御バルブを使用したRLSAマイクロ波プラズマ処理装置の概略断面図である。図1に示すように、このRLSAマイクロ波プラズマ処理装置10は、半導体基板を収容する真空に保持可能な略円筒状のチャンバー11と、その底部に設けられた、半導体基板Sを載置するサセプタ12と、チャンバー11の側壁に設けられた処理ガスを導入するためのリング状をなすガス導入部13と、チャンバー11の上部の開口部に臨むように設けられ、多数のマイクロ波透過孔14aが形成された平面アンテナ14と、マイクロを発生させるマイクロ波発生部15と、マイクロ波発生部15を平面アンテナ14に導くマイクロ波伝送機構16と、ガス導入部13に処理ガスを供給する処理ガス供給系17とを有している。
【0022】
平面アンテナ14の下方には誘電体からなるマイクロ波透過板21が設けられ、平面アンテナ14の上にはシールド部材22が設けられている。マイクロ波伝送機構16は、マイクロ波発生部15からマイクロ波を導く水平方向に伸びる導波管31と、平面アンテナ14から上方に伸びる内導体33および外導体34からなる同軸導波管32と、導波管31と同軸導波管32との間に設けられたモード変換機構35とを有している。
【0023】
チャンバー11の底部にはチャンバー11内を排気するためのバルブや排気装置等からなる排気機構24が設けられている。排気機構24は、チャンバー11の底部の排気口11aに接続された排気管23を有し、この排気管23の前段には排気装置としてのドラッグポンプ53が設けられ、後段には同じく排気装置としてのドライポンプ54が設けられていて、ドライポンプ54で粗引きを行い、ドラッグポンプ53でさらに高真空まで真空引きを行う。
【0024】
排気管23のドラッグポンプ53の上流側には、圧力制御バルブ60が設けられている。チャンバー11には、その中の圧力を検出する圧力センサ55が設けられており、圧力制御バルブ60は圧力センサ55の値に応じて開度を調節するようになっている。排気管23には、ドラッグポンプ53とドライポンプ54との間に本発明に係る開閉バルブ100が設けられている。また、圧力制御バルブ60の上流側にも開閉バルブ100と同様の開閉バルブ101が設けられている。
【0025】
チャンバー11の側壁には半導体基板Sを搬入出可能な搬入出口25が設けられており、この搬入出口25はゲートバルブGにより開閉可能となっている。また、サセプタ12内にはヒータ18が埋設されている。
【0026】
処理ガス供給系17は、たとえば、CFガスやOガスのような処理ガスを供給するもので、これらがそれぞれのガスの供給源から共通のガス供給ライン19に接続されている。ガス供給ライン19は上記ガス導入部13に接続されている。なお、ガス供給ライン19には開閉バルブおよびマスフローコントローラ等の流量制御器(図示せず)が介装されている。
【0027】
このRLSAマイクロ波プラズマ処理装置10は、各構成部を制御するマイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるプロセスコントローラ50を有しており、各構成部がこのプロセスコントローラ50に接続されて制御される構成となっている。例えば、圧力制御バルブ60は、圧力センサ55の値に応じたプロセスコントローラ50の指令により制御されるようになっており、開閉バルブ100もプロセスコントローラ50からの指令で開閉されるようになっている。また、プロセスコントローラ50には、オペレータがRLSAマイクロ波プラズマ処理装置10を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマ処理装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース51が接続されている。
【0028】
また、プロセスコントローラ50には、RLSAマイクロ波プラズマ処理装置10で実行される各種処理をプロセスコントローラ50の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じてRLSAマイクロ波プラズマ処理装置10の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納された記憶部52が接続されている。レシピは記憶部52の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0029】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース51からの指示等にて任意のレシピを記憶部52から呼び出してプロセスコントローラ50に実行させることで所望の処理が行われる。また、圧力センサ55でチャンバー11内の圧力を検出して、プロセスコントローラ50を介して、圧力制御バルブ60の開度の調節を行う。
【0030】
次に、上記構成のRLSAマイクロ波プラズマ処理装置10において行われるRLSAマイクロ波プラズマ処理装置の方法の概略について説明する。
【0031】
まず、半導体基板Sをチャンバー11内に搬入し、サセプタ12上に載置する。そして、排気機構24によりチャンバー11内を真空排気しながら、処理ガス供給系17からガス供給ライン19を経由し、ガス導入部13を介して、たとえば、上述したCFガス、Oガスのような処理ガスがチャンバー11内に供給され、エッチング処理などの処理がされる。
【0032】
このRLSAマイクロ波方式のプラズマ処理は、低電子温度で高密度のラジカルを主体とするプラズマが形成されるため、低ダメージのプラズマ処理を実現することができる。
【0033】
複数の処理工程がある場合は、1つの処理工程が完了したら、真空排気を継続しながら、処理ガス供給系17に設けられたArなどのパージガスをチャンバー11内に供給し、前工程で残留しているガスをパージする。その後、次ぎの処理を行うためのガスに切り替えて供給し、マイクロ波プラズマを形成して次工程の処理をおこなう。
【0034】
図2は、本発明の開閉バルブの図で、(a)は(b)のB−B線断面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【0035】
開閉バルブ100は、ほぼ立方体形状をした弁本体110を有する。弁本体110の一方には流体の入口となる開口111があり、これと対向する位置に流体の出口となる開口112があって、これら入口側の開口111と出口側の開口112との間にはほぼ円筒形状の空間113が形成されている。
【0036】
空間113内には、入口側の開口111に接離可能に弁体120が設けられている。空間113の内壁の開口111の周縁に弁体が接離して開口を開閉する。開口111の外側には、凹溝111aが形成されている。弁体120は、円板形状で、入口側の開口111を気密に封止できるように、周縁には環状のシール部材120bが嵌め込まれ、その外側に同じく環状の保護シール120aが嵌め込まれている。シール部材120bは、完全フッ素化ゴム製のものが望ましい。保護シール120aは、シール部材120bと同じ素材でもよいが、別の素材を使用してもよい。弁体120の後方には、弁棒122が設けられ、この弁棒122は、空間113内に収容された小枠体130を摺動自在な状態で貫通している。弁体120と小枠体130との間には、弁体120を入口側の開口111に向けて付勢するバネ手段124がある。バネ手段124としては、この実施例ではコイルスプリングを使用している。
【0037】
弁棒122の中間には、ピン123が立設されており、ピン123は、弁棒122の両側に突出し、ピン123の先端は、カム機構としての板カム131のカム溝132に入っている。ピン123は、カム溝132との間に若干の隙間を有するが、バネ手段124によりカム溝132の一方に常時圧接された状態である。板カム131は、小枠体130内にあって弁棒122を両側から挟むように設けられ、両側の板カム131は両端で接続され、弁体120の外側に設けられた駆動手段135とロッド136で接続されている。ロッド136は、小枠体130と弁本体110を貫通している。リニアモータやエアーシリンダなどからなる駆動手段135は、ロッド136を図2(b)の矢印に示す方向に進退させ、ロッド136と一体となった板カム131を進退させる。
【0038】
図3は、図2の弁体120と板カム131の部分を模式的に拡大した平面図である。上下の板カム131のカム溝132は、相互に鏡象の関係にあり、ロッド136の進退方向と平行な両端の直行部132a、132cと、これら直行部132aと直行部132cをつなぐ斜行部132bとを有する。
【0039】
板カム131は、ロッド136の進退により、図3のy軸方向に移動する。一方、弁棒122は、両端を小枠体130に支持されており、小枠体130は、図2(b)に示すように、両端が弁本体110の空間113の内壁に当接しているので、y軸方向には移動できない構造となっており、弁棒122とこれに固定されているピン123は共にy軸方向には移動できない。そのため、板カム131がy軸方向に移動すると、ピン123はカム溝132内を移動することになる。
【0040】
板カム131がy軸方向に移動し、ピン123がカム溝132の直行部132a内を移動するときは、弁体120は入口側の開口111から離反して開弁状態となる。このとき、弁体120と入口側の開口111とは一定の距離を保っており、弁体120は入口側の開口111に近づきもせず、遠ざかりもしない。
【0041】
図3に示すピン123の位置から、板カム131がy軸方向を図の上方向に移動しピン123がカム溝132の直行部132aを出て斜行部132bに入り斜行部132b内を移動するときは、ピン123は、x軸方向を図3の左方に移動し、弁体120を入口側の開口111に近づける。ピン123が斜行部132bと直行部132cの境界に達すると、弁体120は入口側の開口111の周縁に圧接された状態となり、シール部材120bが撓んで入口側の開口111を気密に閉じた閉弁状態となる。
【0042】
さらに板カム131が図の上方に移動すると、ピン123は直行部132c内に入り、この中を移動する。このとき、弁体120は、入口側の開口111に圧接した状態を保持する。ピン123が直行部132cに入ることで、板カム131が停止しても、ピン123が斜行部132bに戻ることを防止でき、弁を閉じた状態を保持することができる。以上に説明したように、駆動手段135、ロッド136、板カム131、ピン123、弁棒122で、弁体120の直進移動手段140を構成している。
【0043】
上記は、弁体120の直進運動の説明であるが、開閉バルブ100は、さらに、回動手段150を有している。この回動手段150は、駆動手段135、ロッド136、小枠体130、板カム131、弁棒122、弁体120、を一括してロッド136の中心軸を中心として回動するものであり、弁体120を、開口111に対応する位置と、弁本体110の内壁の開口111から約90゜離れた位置にある弁退避部113bに対応(対向)する位置との間で回動可能となっている。また、駆動手段135と回動手段150とは、独立して作動し、プロセスコントローラ50からの指令に基づいて図示しない制御装置により制御される構成である。この場合、回動手段150により弁体120が弁退避部113bに対応する位置まで回動した後、駆動手段135により弁体120を進出させ、シール部材120bを弁体120の内壁に密着させることができるようになっている。回動手段150としては、減速機を備えたモータなどを使用することができる。
【0044】
次に、図4(a)から(e)を参照して、本発明の開閉バルブ100の開閉動作、すなわち、閉弁状態から開弁して弁体が退避部に退避するまでの動作を説明する。
【0045】
図4(a)は弁閉状態で、弁体120が入口側の開口111を密閉した状態である。この状態は、図2(b)に示す板カム131が一番上に移動し、図3に示すピン123が直行部132cの最下部に位置し、ロッド136は最も短くなった状態である。シール部材120bは開口111に圧接し、外側の保護シール120aは、開口111の外側に形成された凹溝111a内に収容されている。凹溝111a内では、保護シール120aの先端は、凹溝111aの底面に当接しない状態である。このようにすることによって、保護シール120aの変形を防止して封止力を確保している。
【0046】
図4(b)は、開弁状態を示す。この状態は、図3において、ロッド136が最も長くなって、板カム131が一番下に移動し、ピン123が直行部132aの最上部にある状態である。このとき弁体120は、入口側の開口111から離れ、入口側の開口111と出口側の開口112とが連通した状態となっている。すなわち、(a)から(b)の変化は、板カム131が最上部から最下部に移動することによって行われる。
【0047】
図4(c)は、図4(b)の状態から、回動手段150で、駆動手段135から弁体120までを一斉に約45゜回転した状態である。弁体120は開口111から離れた状態であり、しかも、弁本体110の内部の空間113は、円形なので、弁体120をロッド136の中心軸を軸として回転させても、空間113の内壁に衝突することはない。なお、内部の空間113が円形でなくても、弁体120が内壁に衝突しない形状にすることは可能である。
【0048】
図4(d)は、回動手段150でさらに小枠体130等を回転して回転角が約90゜になった状態である。弁体120は、開口111から約90゜離れた位置にある弁退避部113bと対向する位置に移動している。
【0049】
この状態で、駆動手段135を稼働してロッド136を縮小する。すると板カム131が図3の状態から上昇し、ピン123がカム溝132の直行部132cの最下端に達し、図4(e)に示すように、弁体120が弁退避部113bに達する。この状態では、保護シール120aが弁退避部113bに密着し、シール部材120bは保護シール120aで密封され、かつ、先端面がどこにも当たらない状態となる。
【0050】
チャンバー11内で所定のプラズマ処理を行う際には、開閉バルブ100は図4(e)に示す状態となっているが、この状態では弁体120が弁退避部113bに退避され保護シール120aでシール部材120bが封止された状態になるので、入口側の開口111から進入し出口側の開口112に流れるラジカル等がシール部材120bに接触することがなくなる。このため、弁棒122の寿命を伸ばすことができ、装置のランニングコストを低下させることができる。また、処理のスループットも向上する。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では本発明の開閉バルブをRLSAマイクロ波プラズマ処理装置に適用した例を示したが、これに限るものではなく、他のプラズマ処理装置にも適用可能である。また、上記実施形態では、弁退避部113bが弁本体110の内壁に位置し、弁体120が退避状態のとき、保護シール120aを弁退避部113bに密着させる構成としている。そして、このとき、シール部材120bは内壁に当接しないようにしている。このようにすることによって、シール部材120bの変形を防止し、シール部材120bの寿命を延ばせるようにしている。
【0052】
本発明の実施例では、弁退避部113bが空間113の円筒形の内壁にあるので、シール部材120bは内壁に当接しない。しかし、内壁が平面の場合など、弁退避部に移動したシール部材120bが壁面に圧接する場合もある。そのような場合には、弁退避部に凹部を形成してシール部材120bが圧接しないようにすることが望ましい。
【0053】
上記の実施例において、弁退避部は必ずしも弁本体110の内壁に位置していなくてもよい。シール部材が壁部に密着しない状態であっても、シール部材に接触する排気流の量を減少させることができれば、シール部材の劣化を少なくできる効果が得られる。さらに、バルブの駆動方式等も上記実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る成膜装置を示す模式図である。
【図2】本発明の開閉バルブの図で、(a)は(b)のB−B線断面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図3】図2の弁体と板カムの部分を模式的に拡大した平面図である。
【図4】(a)〜(e)は、本発明の開閉バルブの開閉動作、すなわち、閉弁状態から開弁して弁体が退避部に退避するまでの動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0055】
11 チャンバー
53、54 排気装置
100 開閉バルブ
110 弁本体
111 開口
113b 弁退避部
120 弁体
120a 保護シール
120b シール部材
131 板カム(カム機構)
140 直進移動手段
150 回動手段
S 半導体基板




【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を真空に保持可能なチャンバーと、該チャンバー内を真空排気する排気装置との間に設けられる開閉バルブであって、
内部に前記チャンバー側と前記排気装置側とを連通する開口が形成された弁本体と、
該弁本体内にあって前記開口に接離して開口を開閉する弁体と、
前記弁体に設けられ前記弁体が前記開口を閉じた際に開口をシールするシール部材と、
前記弁体を進退させる直進移動手段と、
前記開口から離隔した位置に設けられ、前記開口から離反した前記弁体が退避する弁退避部と、
前記弁体を、前記開口に対応する位置と前記退避部または前記退避部に対応する位置との間で回動させる回動手段と、
を有し、
前記弁体が前記開口から離反している際に、前記直進移動手段と回動手段とにより前記弁体を前記弁退避部に移動することを特徴とする開閉バルブ。
【請求項2】
前記弁退避部は前記開口から離隔した壁部に設けられ、前記弁体が前記弁退避部に対応する位置に移動したとき、前記直進移動手段が、前記シール部材が弁退避部に圧接されるように、前記弁体を直進させることを特徴とする請求項1に記載の開閉バルブ。
【請求項3】
前記直進移動手段が、カム機構を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の開閉バルブ。
【請求項4】
前記カム機構が、板状部材の表面に形成された溝を有する板カムであることを特徴とする請求項3に記載の開閉バルブ。
【請求項5】
前記回動手段が、前記弁体と共にカム機構を回動することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の開閉バルブ。
【請求項6】
前記弁体が、前記シール部材の外側に保護シールを有し、前記保護シールが前記弁退避部に密着したとき、前記シール部材が前記保護シール内に気密に封止されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の開閉バルブ。
【請求項7】
前記開口の周辺に、前記保護シールが収容される凹溝を形成し、前記シール部材が開口を封止したとき前記保護シールが前記凹溝に収容されることを特徴とする請求項6に記載の開閉バルブ。
【請求項8】
被処理体が収容され、内部を真空に保持可能なチャンバーと、前記チャンバー内で被処理体にプラズマによる処理を施す処理機構と、前記チャンバー内を真空排気する排気装置と、前記チャンバーと前記排気装置との間に設けられる開閉バルブとを有する処理装置であって、
前記開閉バルブが、内部に前記チャンバー側と前記排気装置側とを連通する開口が形成された弁本体と、該弁本体内にあって前記開口に接離して開口を開閉する弁体と、前記弁体に設けられ前記弁体が前記開口を閉じた際に開口をシールするシール部材と、前記弁体を進退させる直進移動手段と、前記開口から離隔した位置に設けられ、前記開口から離反した前記弁体が退避する弁退避部と、前記弁体を、前記開口に対応する位置と前記退避部または前記退避部に対応する位置との間で回動させる回動手段と、を有し、前記弁体が前記開口から離反している際に、前記直進移動手段と回動手段とにより前記弁体を前記弁退避部に移動することを特徴とする処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−232211(P2008−232211A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70362(P2007−70362)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】