説明

電力変換装置

【課題】電動機の高速回転駆動及び直流電源の急速充電の少なくとも一方を低コストで実現できる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置は、電力入力部に入力された電力を直流電力に変換する直流電力変換部を有する第1の直流電源と、該第1の直流電源と並列に接続された第2の直流電源と、直流電力を平滑化する平滑回路と、該平滑回路に接続されて直流電力を多相交流電力に変換して多相交流電動機に供給する電力変換部と、前記第1の直流電源の電力入力部及び前記電力変換部の多相交流出力点間に設けた第1の開閉装置を有する第1の短絡部と、前記第1の直流電源の電力供給部及び電力入力部間と前記電力変換部の多相交流出力点及び前記多相交流電動機間との少なくとも一方に設けた第2の開閉装置を有する第2の短絡部と、前記第1の開閉装置及び第2の開閉装置を、両者の同時閉路状態を防止して開閉制御する開閉制御部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともバッテリから供給される電力によって電動機を駆動するハイブリッド電気自動車、電気自動車などの電動機駆動装置として適用可能な電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばハイブリッド電気自動車に代表される電力変換装置としては、例えばバッテリで構成される第1の直流電源と、直流電圧を受けて車両駆動用のモータを駆動制御するための電力変換を行うインバータで構成される駆動回路と、前記第1の直流電源と前記駆動回路との間に接続され、両者の間で直流電圧変換を行うための例えば昇圧コンバータで構成される電力変換器と、この電力変換器に対して、開閉手段を介して並列に接続された蓄電用のキャパシタC0で構成される第2の直流電源と、前記電力変換器が前記駆動回路と前記第2の直流電源との接続点に出力する出力電圧の目標値を設定するとともに、設定した目標値と前記出力電圧とが一致するように前記電力変換器の動作を制御する制御手段とを備えた車両電源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、制御手段は、モータの要求出力に応じた電圧を前記目標値に設定する第1の目標値設定手段と、前記モータの要求出力に応じた電圧よりも高く、前記第2の直流電源を充電可能な電圧を前記目標値に設定する第2の目標値設定手段と、車両の運転者の要求に応じて、前記第1および第2の目標値設定手段の一方を選択する選択手段とを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−89262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来例にあっては、通常、電動機トルクT、駆動回路を構成するインバータの出力電圧V、および電動機電流Imと、電動機回転数Nmとの関係は、図10に示すように表されている。すなわち、電動機回転数Nmが0から所定回転数N0に達するまでの間では、V/F制御によりトルク及び電動機電流が略一定となり、電動機回転数Nmの増加に応じてインバータの出力電圧Vも増加する。しかし、電動機回転数Nmが所定回転数N0以上となると、インバータが出力できる電圧が最大電圧Vmaxに制限されるため、さらなる高速化には電動機の弱め磁束制御を実施する必要がある。この弱め磁束制御を実施すると、無効電力分の増加に伴い、図10に示すように電動機に流れる電動機電流Imの値も増加する。
【0005】
すなわち、弱め磁束制御を行うことなく、インバータを使用して電動機の更なる高速運転を実施しようとする場合には、インバータの変換器容量をその分増加させる必要がある。換言すれば、変換器容量と電動機の最高回転数とはトレードオフの関係があり、弱め磁束制御を行うことなく電動機をより高速運転可能なシステムにしようとすると、変換器容量を高めるためのコストが嵩むという未解決の課題がある。
【0006】
また、昇圧コンバータを使用してバッテリ電圧を昇圧して第2の直流電源を構成する蓄電用キャパシタを充電する場合に、蓄電用のキャパシタへの充電容量は下式で表すことができる。
蓄電用キャパシタ充電容量=充電電流×充電時間
すなわち、充電電流(昇圧コンバータの変換器容量)と充電時間とは反比例的な関係があり、充電時間を短縮させようとする場合は、充電電流を増加させる必要があり、この場合、昇圧コンバータの変換器容量が大きくなり、変換器容量を高めるためのコストが嵩むという未解決の課題を有する。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、電動機を高速回転駆動する場合及び直流電源を急速充電する場合の少なくとも一方を低コストで実現することができる電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一の形態に係る電力変換装置は、電力供給部と、該電力供給部から電力が入力される電力入力部と、該電力入力部に入力された電力を直流電力に変換する直流電力変換部とを有する第1の直流電源と、該第1の直流電源と並列に接続された蓄電部を有する第2の直流電源と、前記第1の直流電源及び前記第2の直流電源の直流電力を平滑化する平滑回路部と、該平滑回路部に接続されて直流電力を多相交流電力に変換して多相交流電動機に供給する電力変換部と、前記第1の直流電源の電力入力部及び前記電力変換部の多相交流出力点間に設けた第1の開閉装置を介挿した第1の短絡部と、前記第1の直流電源の電力供給部及び電力入力部間と前記電力変換部の多相交流出力点及び前記多相交流電動機間との少なくとも一方に設けた第2の開閉装置を介挿した第2の短絡部と、前記第1の開閉装置及び第2の開閉装置を、両者の同時閉路状態を防止して開閉制御する開閉制御部とを備えたことを特徴としている。
【0009】
また、本発明の他の形態に係る電力変換装置は、前記第1の直流電源は、前記電力供給部が多相交流発電機で構成され、前記直流電力変換部が多相AC−DC変換回路で構成されていることを特徴としている。
また、本発明の他の形態に係る電力変換装置は、前記多相交流発電機は内燃機関によって駆動されることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の他の形態に係る電力変換装置は、前記第1の直流電源は、前記電力供給部がバッテリで構成され、前記直流電力変換部が昇圧回路で構成されていることを特徴としている。
また、本発明の他の形態に係る電力変換装置は、前記第1の直流電源の直流電力変換部は、スイッチング素子とこれに逆並列に接続されたダイオードとを有するスイッチングアームを備えていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の他の形態に係る電力変換装置は、前記電力変換部は、スイッチング素子とこれに逆並列に接続されたダイオードとを有するスイッチングアームを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1の直流電源の直流電力変換部と電力変換部との双方を利用して、電動機の駆動及び第2の直流電源の充電の少なくとも一方を行うので、低コストで、電動機の高速運転及び第2の直流電源の高速充電の少なくとも一方を行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す電力変換装置のブロック図である。
【図2】図1の制御装置の具体的構成を示すブロック図である。
【図3】図1の開閉装置に適用可能な双方向半導体スイッチを示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す電力変換装置のブロック図である。
【図5】図4の制御装置の具体的構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施形態を示す電力変換装置のブロック図である。
【図7】図6の制御装置の具体的構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第4の実施形態を示す電力変換装置のブロック図である。
【図9】本発明をハイブリッド電気自動車に適用した場合の実施形態を示すブロック図である。
【図10】従来例の電動機駆動特性を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施形態の電力変換装置を示すブロック図であり、図中、1は電動機駆動装置に適用する電力変換装置である。この電力変換装置1は、発電によって直流電力を出力する第1の直流電源2を有する。この第1の直流電源2は、エンジン等の内燃機関で構成される回転駆動源の出力軸に連結された電力供給部としての3相交流発電機3と、この3相交流発電機3から出力される3相交流電力を直流電力に変換する直流電圧変換部としてのAC−DC変換回路4とを備えている。
【0015】
AC−DC変換回路4は、正極側ラインLp及び負極側ラインLn間に並列に接続された3つのスイッチングアームSA11〜SA13を有する。各スイッチングアームSA11〜SA13のそれぞれは、正極側ラインLp及び負極側ラインLn間に直列に接続された例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)で構成されるスイッチング素子Qia及びQib(iは11〜13)と、各スイッチング素子Qia及びQibに逆並列に接続されたダイオードDia及びDibとを有する。そして、各スイッチング素子Q11a及びQ11b、Q12a及びQ12b、Q13a及びQ13bの電力入力部となる接続点Pr、Ps、Ptに第2の開閉装置SW2を介挿した第2の短絡路L2iを介して13相交流発電機3の3相交流電力が供給されている。ここで、第2の開閉装置SW2は、各短絡路L21〜L23に介挿されたスイッチ部sw21〜sw23で構成され、各スイッチ部sw21〜sw2のそれぞれは、リレー等の機械式スイッチや双方向半導体スイッチを適用することができる。双方向半導体スイッチとしては、図3(a)に示すように、逆耐圧を有するIGBTa及びIGBTbを逆並列に接続した構成を適用するか、図3(b)に示すように、逆耐圧を有さないIGBTc及びIGBTdを直列に接続し、各IGBTc及びIGBTdに逆並列にダイオードDc及びDdを接続した構成を適用することが好ましい。
【0016】
また、電力変換装置1は、第1の直流電源2の正極側ラインLp及び負極側ラインLn間に第1の直流電源2と並列に接続された例えば数ボルトのバッテリユニットを多数直列に接続して構成される数百ボルトの第2の直流電源としてのバッテリで構成される第2の直流電源5を有する。
さらに、正極側ラインLp及び負極側ラインLn間には、第1の直流電源2及び第2の直流電源5と並列に平滑回路8が接続されている。この平滑回路8は、正極側ラインLp及び負極側ラインLn間に直列に接続された平滑用コンデンサCaを有する。
【0017】
さらにまた、正極側ラインLp及び負極側ラインLn間には平滑回路8の直流電力を交流電力に変換する電力変換部としてのインバータ回路を構成するDC−AC変換回路10が接続されている。このDC−AC変換回路10は、正極側ラインLp及び負極側ラインLn間に並列に接続された3つのスイッチングアームSA21〜SA23を有する。これらスイッチングアームSA21〜23のそれぞれは、正極側ラインLp及び負極側ラインLn間に直列に接続された例えばIGBTで構成されるスイッチング素子Qja及びQjb(jは21〜23)と、各スイッチング素子Qja及びQjbに逆並列に接続されたダイオードDja及びDjbとを有する。そして、各スイッチング素子Qja及びQjbの接続点が交流出力点Pu,Pv及びPwとされて負荷としての3相交流電動機12に接続されている。また、各交流出力点Pu、Pv及びPwと前述した第1の直流電源2のDC−DC変換回路4の入力点Pr、Ps及びPtとが個別に第1の開閉装置SW1を介挿した短絡部L11、L12及びL13を介して接続されている。ここで、第1の開閉装置SW1は前述した第2の開閉装置SW2と同様の構成を有する。
【0018】
そして、第1の直流電源2のAC−DC変換回路4及びDC−AC変換回路10の各スイッチング素子が、図1に示すように、制御装置14によってPWM制御される。また、第1の開閉装置SW1及び第2の開閉装置SW2も制御装置14によって、第1の開閉装置SW1及び第2の開閉装置SW2の一方が開放されているときに他方が閉成されるようにオンオフ制御される。
【0019】
ここで、制御装置14の具体的構成は、図2に示すように、AC−DC変換回路4を駆動制御するAC−DC制御部15と、DC−AC変換回路10を駆動制御するDC−AC制御部16と、第1の開閉装置SW1及び第2の開閉装置SW2をオンオフ制御する開閉器制御部17とを備えている。
AC−DC制御部15は、3相交流発電機3の速度検出値Ng及び速度指令(又は周波数指令)Nm*が入力されて、これら速度検出値Ng及び速度指令(又は周波数指令)Nm*に基づいてAC−DC変換回路4の各スイッチング素子のゲートに供給するPWM信号を生成して出力する。
【0020】
DC−AC制御部16は、3相交流電動機12の速度指令(又は周波数指令)Nm*が入力されて、この速度指令(又は周波数指令)Nm*に基づいてDC−AC変換回路10の各スイッチング素子のゲートに供給するPWM信号を生成して出力する。
開閉器制御部17は、3相交流電動機12の速度指令(又は周波数指令)Nm*が入力されるとともに、所定回転数N0に対応する回転数設定値Nxが入力されて、速度指令(又は周波数指令)Nm*に応じた電動機回転数が回転数設定値Nx未満であるときに、第1の開閉装置SW1の各スイッチ部sw11〜sw13を開放状態とするオフ状態のスイッチ信号S1と、第2の開閉装置SW2の各スイッチ部sw21〜sw22を閉成状態とするオン状態のスイッチ信号S2とを出力し、速度指令(又は周波数指令)Nm*に応じた電動機回転数が回転数設定値Nx以上であるときに、第1の開閉装置SW1の各スイッチ部sw11〜sw13を閉成状態とするオン状態のスイッチ信号S1を出力し、第2の開閉装置SW2の各スイッチ部sw21〜sw22を開放状態とするオフ状態のスイッチ信号S2を出力する。
【0021】
また、AC−DC制御部15の出力側には、選択スイッチ部18が設けられている。この選択スイッチ部18は、常閉接点tc及び常開接点toとこれら常閉接点tc及び常開接点toの一方に選択的に接触する可動接点tmとを有し、可動接点tmが開閉器制御部17のスイッチ信号S1がオフ状態であるときに、常閉接点tc側に接触し、スイッチ信号S1がオン状態であるときに、常開接点to側に接触するように構成されている。
【0022】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
今、3相交流電動機12が回転駆動されている状態で、3相交流電動機12を設定回転数Nx未満で運転する場合には、図示しない電動機速度制御装置から電動機回転数が設定回転数Nx未満となる速度指令(又は周波数指令)Nm*が制御装置14に入力される。
このため、開閉器制御部17では、第1の開閉装置SW1に対するスイッチ信号S1をオフ状態とし、第2の開閉装置SW2に対するスイッチ信号をオン状態とする。したがって、第1の開閉装置SW1の各スイッチ部sw11〜sw13は開放状態となり、第2の開閉装置SW2の各スイッチ部sw21〜sw23は閉成状態となる。これと同時に、選択スイッチ部18の可動接点tmが常閉接点tc側に接触して、AC−DC制御部15から出力されるPWM信号がAC−DC変換回路4に供給される。
【0023】
このとき、AC−DC制御部15では、3相交流発電機3の速度検出値Ng及び速度指令(又は周波数指令)Nm*が入力されることにより、速度検出値Ng及び速度指令(又は周波数指令)Nm*に応じてPWM信号が生成され、生成されたPWM信号がAC−DC変換回路4に出力される。このため、AC−DC変換回路4で、第2の開閉装置SW2を介して入力される3相交流発電機3の3相交流出力を直流電力に変換する。このAC−DC変換回路4から出力される直流電力は、平滑回路8の平滑用コンデンサCaで平滑化されてDC−AC変換回路10に供給されるとともに、第2の直流電源5の充電量が所定値よりも低いときには第2の直流電源5を充電する。
【0024】
そして、DC−AC制御部16では、速度指令(又は周波数指令)Nm*に基づいてDC−AC変換回路10の各スイッチング素子のゲートに対するPWM信号を生成し、生成したPWM信号をDC−AC変換回路10の各スイッチング素子のゲートに供給する。このため、DC−AC変換回路10で直流電力が3相交流電力に変換されて交流出力点Pu〜Pwから3相交流電動機12の巻線Lu〜Lwに出力されて、3相交流電動機12が回転駆動される。
【0025】
この3相交流電動機12の回転駆動状態で、制御装置14に、設定回転数Nx以上で3相交流電動機12を運転する速度指令(又は周波数指令)Nm*が入力されると、これに応じて開閉器制御部17で、スイッチ信号S1がオン状態に反転され、且つスイッチ信号S2がオフ状態に反転される。このため、第1の開閉装置SW1が閉成状態となって、AC−DC変換回路4の入力点Pr〜Ptが短絡路L11〜L13を介してDC−AC変換回路10の交流出力点Pu〜Pwに接続される。逆に、第2の開閉装置SW2は開放状態となって、3相交流発電機3で発電された3相交流電力のAC−DC変換回路4への入力が遮断される。
【0026】
また、制御装置14では、開閉器制御部17のスイッチ信号S1がオン状態となることにより、選択スイッチ部18の可動接点tmが常開接点to側に切換えられて、DC−AC制御部16で生成されたPWM信号がDC−AC変換回路10の他にAC−DC変換回路4にも供給される。
したがって、第2の直流電源5の直流電力が通常のようにDC−AC変換回路10で3相交流電力に変換されて、交流出力点Pu〜Pwに出力されるとともに、AC−DC変換回路4でも3相交流電力に変換されて、入力点Pr〜Ptに出力され、これら入力点Pr〜Ptに出力される3相交流電力が第1の開閉装置SW1及び短絡路L11〜L13を介してDC−AC変換回路10の交流出力点Pu〜Pwに供給される。
【0027】
このため、交流出力点Pu〜Pwから設定回転数Nx未満で3相交流電動機12を運転する場合の2倍の3相交流電流を得ることができ、これが3相交流電動機12の巻線Lu〜Lwに供給されることにより、3相交流電動機12を高速回転駆動することができる。
このように、上記第1の実施形態によると、3相交流電動機12を設定回転数Nx未満で通常回転駆動する場合には、DC−AC変換回路10のみで直流電力を交流電力に変換し、3相交流電動機12を設定回転数Nx以上で高速回転駆動する場合には、AC−DC変換回路4をDC−AC変換回路として使用して2つのAC−DC変換回路で直流電力を交流電力に変換することにより、3相交流電動機12に供給する最大電流値を増大させて、弱め磁界制御を行うことなく、3相交流電動機12を高速回転駆動することができる。
【0028】
しかも、3相交流電動機12の高速回転駆動が、第1の開閉装置SW1を有する短絡路L11〜L13及び第2の開閉装置SW2を有する短絡路L21〜L23を設けるとともに、制御装置14に開閉器制御部17及び選択スイッチ部18を設けるだけの極めて簡易な構成で行うことができ、DC−AC変換回路10の各スイッチング素子の変換器容量を増加させる場合に比較して安価な製造コストで実現することができる。
【0029】
なお、上記第1の実施形態においては、電力変換装置1で出力可能な最大電流値を増加させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電力変換装置1で出力可能な最大電流値を従来装置並みとする場合には、DC−AC変換回路10の変換器容量を低減させることができる。
次に、本発明の第2の実施形態を図4及び図5について説明する。
【0030】
この第2の実施形態では、第2の直流電源5の高速充電を行うようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態における図1の構成において、第2の開閉装置SW2及び第2の短絡路L21〜L23が3相交流電動機3及びAC−DC変換回路4の入力点Pr〜Ptに代えて、DC−AC変換回路10の交流出力点Pu〜Pwと3相交流電動機12の巻線Lu〜Lwとの間に介挿されていることを除いては前述した第1の実施形態と同様の構成を有し、図1との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。また、制御装置14では、図5に示すように、選択スイッチ部18がAC−DC制御部15の出力側に配置する場合に代えてDC−AC制御部16の出力側に配置し、常閉接点tcがDC−AC制御部16に、常開接点toがAC−DC制御部15に接続され、さらに可動接点tmがDC−AC変換回路10の各スイッチング素子のゲートに接続されている。さらに、開閉器制御部17に充電電流指令値Bcが入力され、この充電電流指令値Bcが所定設定値Bcs未満であるときには、スイッチ信号S1をオフ状態とし、スイッチ信号S2をオン状態とするが、充電電流指令値Bcが所定設定値Bcs以上となったときには、スイッチ信号S1をオン状態、スイッチ信号S2をオフ状態とする。
【0031】
この第2の実施形態によると、3相交流電動機12を回転駆動する通常状態であるときには、開閉器制御部17でスイッチ信号S1がオフ状態で、且つスイッチ信号S2がオン状態となるので、第1の開閉装置SW1が開放状態となり、第2の開閉装置SW2が閉成状態となる。このため、第1の直流電源2及び第2の直流電源5の直流電力の少なくとも一方の直流電力をDC−AC変換回路10で3相交流電力に変換して3相交流電動機12を回転駆動する。
【0032】
また、第1の直流電源2から出力される直流電圧が第2の直流電源5の充電電圧よりも高い状態で、第2の直流電源5の充電電圧が低下して、開閉器制御部17に充電電流指令値Bcが入力され、この充電電流指令値Bcが所定設定値Bcs未満であるときにも、開閉器制御部17のスイッチ信号S1がオフ状態で、且つスイッチ信号S2がオン状態を維持し、3相交流発電機3で発電された3相交流電力をAC−DC変換回路4で直流電力に変換して、第2の直流電源5を充電する。
【0033】
さらに、3相交流電動機12が発電機となる回生状態となった場合には、DC−AC変換回路10がDC−AC制御部16によってAC−DC変換回路として制御されて、3相交流電動機12で発電された3相交流電力がDC−AC変換回路10で直流電力に変換されて第2の直流電源5を充電する。
しかしながら、第2の直流電源5の充電電圧が大幅に低下した場合には、開閉器制御部17に供給される充電電流指令値Bcが所定設定値Bcs以上となるので、開閉器制御部17で、スイッチ信号S1がオン状態に反転され、且つスイッチ信号S2がオフ状態に反転される。
【0034】
このため、第1の開閉装置SW1が閉成状態となり、第2の開閉装置SW2が開放状態となり、AC−DC変換回路4の入力点Pr〜PtとDC−AC変換回路10の交流出力点Pu〜Pwとの間が第1の開閉装置SW1及び短絡路L11〜L13を介して接続され、逆にDC−AC変換回路10の出力点Pu〜Pwと3相交流電動機12との間の短絡路L21〜L23が遮断される。
【0035】
これと同時に、選択スイッチ部18の可動接点tmが常開接点to側に切換えられて、DC−AC変換回路10の各スイッチング素子のゲートにAC−DC制御部15から出力されるPWM信号が供給される。
したがって、3相交流発電機3で発電された3相交流電力がAC−DC変換回路4で直流電力に変換されるとともに、DC−AC変換回路10でも直流電力に変換されることになり、第2の直流電源5を充電する充電電流値が増大して、第2の直流電源5を短時間で高速充電することができる。
【0036】
そして、第2の直流電源5の高速充電が完了すると、開閉器制御部17に入力される充電電流指令値Bcが所定設定値Bcs未満となることにより、スイッチ信号S1がオフ状態に反転し、且つスイッチ信号S2がオン状態に反転して、3相交流電動機12の回転駆動状態に復帰する。
このように、第2の実施形態によれば、第2の直流電源5の充電電圧が大幅に減少して、高速充電が必要となった場合に、DC−AC変換回路10の交流出力点Pu〜Pwと3相交流電動機12の巻線Lu〜Lwとの間の短絡路L21〜L23を遮断すると同時に、DC−AC変換回路10をAC−DC変換回路に切換えることにより、2つのAC−DC変換回路で3相交流発電機3で発電した3相交流電力を直流電力に変換することにより、第2の直流電源5に対する充電電流値を増大させて、高速充電することができる。
【0037】
次に、本発明の第3の実施形態を図6及び図7について説明する。
この第3の実施形態では、3相交流電動機12の高速回転駆動及び第2の直流電源5の高速充電の双方を可能としたものである。
すなわち、第3の実施形態では、図6に示すように、前述した第1の実施形態及び第2の実施形態の構成を加え合わせた構成を有し、前述した第1の実施形態における図1の構成において、DC−AC変換回路10の交流出力点Pu〜Pwと3相交流電動機12の巻線Lu〜Lwとの間が第2の開閉装置SW2′を介挿した短絡路L21′〜L23′で接続されていることを除いては、図1と同様の構成を有し、図1との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0038】
また、制御装置14が、図7に示すように、前述した図2の構成において、DC−AC制御部16にも選択スイッチ部18′が設けられ、この選択スイッチ部18′の常閉接点tcがDC−AC制御部16に、常開接点toがAC−DC制御部15に、可動接点tmがDC−AC変換回路10の各スイッチング素子のゲートに接続されている。さらに、開閉器制御部17に回転数設定値Nx及び充電電流指令値Bcが入力され、速度指令(又は周波数指令)Nm*に基づく電動機回転数が回転数設定値Nx未満で且つ充電電流指令値Bcが所定設定値Bcs未満である通常運転モードであるときに、スイッチ信号S1をオフ状態、スイッチ信号S2及びS2′をオン状態に制御する。また、速度指令(又は周波数指令)Nm*に基づく電動機回転数が回転数設定値Nx以上で且つ充電電流指令値Bcが所定設定値Bcs未満である電動機高速運転モードであるときに、スイッチ信号S1をオン状態、スイッチ信号S2をオフ状態、スイッチ信号S2′をオン状態に制御する。さらに、速度指令(又は周波数指令)Nm*に基づく電動機回転数が回転数設定値Nx未満で且つ充電電流指令値Bcが所定設定値Bcs以上である高速充電モードであるときに、スイッチ信号S1をオン状態、スイッチ信号S2をオン状態、スイッチ信号S2′をオフ状態に制御する。
【0039】
さらに、選択スイッチ部18は、スイッチ信号S2がオン状態であるときに、可動接点tmが常閉接点tcに接触し、スイッチ信号S2がオフ状態であるときに、可動接点tmが常開接点toに接触する。同様に、選択スイッチ部18′は、スイッチ信号S2′がオン状態であるときに、可動接点tmが常閉接点tcに接触し、スイッチ信号S2′がオフ状態であるときに、可動接点tmが常開接点toに接触する。
【0040】
この第3の実施形態によると、速度指令(又は周波数指令)Nm*に基づく電動機回転数が回転数設定値Nx未満となり、且つ充電電流指令値Bcも所定設定値Bcs未満となる3相交流電動機12を通常回転駆動する通常運転モードでは、開閉器制御部17で、スイッチ信号S1がオフ状態に、スイッチ信号S2及びS2′がオン状態に制御される。
このため、第1の開閉装置SW1が開放状態となり、第2の開閉装置SW2及びSW2′が閉成状態となるので、前述した第1の実施形態と同様に3相交流発電機3で発電した3相交流電力をAC−DC変換回路4で直流電力に変換し、この直流電力及び第2の直流電源5の直流電力の少なくとも一方をDC−AC変換回路10で3相交流電力に変換し、変換した3相交流電力を3相交流電動機12に供給することにより、3相交流電動機12を通常回転駆動する。
【0041】
この状態から、開閉器制御部17に入力される速度指令(又は周波数指令)Nm*に基づく電動機回転数が回転数設定値Nx以上となる3相交流電動機12の高速回転駆動する電動機高速運転モードとなると、開閉器制御部17でスイッチ信号S1をオン状態、スイッチ信号S2をオフ状態、スイッチ信号S2′をオン状態に制御する。
このため、第1の開閉装置SW1が閉成状態となり、第2の開閉装置SW2が開放状態となり、第2の開閉装置SW2′が閉成状態となり、且つAC−DC変換回路4がDC−AC変換回路として動作される。したがって、第2の直流電源5の直流電力がDC−AC変換回路10及びAC−DC変換回路4でそれぞれ交流電力に変換され、両者がDC−AC変換回路10の交流出力点Pu〜Pwで足し合わされて3相交流電動機12に供給される。したがって、3相交流電動機12が高速回転駆動される。
【0042】
さらに、第2の直流電源5の充電電圧が大幅に低下して、開閉器制御部17に入力される速度指令(又は周波数指令)Nm*に基づく電動機回転数が回転数設定値Nx未満で且つ充電電流指令値Bcが所定設定値Bcs以上となった高速充電モードでは、開閉器制御部17でスイッチ信号S1がオン状態、スイッチ信号S2がオン状態、スイッチ信号S2′がオフ状態に制御する。
【0043】
このため、第1の開閉装置SW1及び第2の開閉装置SW2が導通状態となり、第2の開閉装置SW2′が遮断状態となり、且つDC−AC変換回路10がAC−DC変換回路として動作される。したがって、3相交流発電機3で発電された3相交流電力が、AC−DC変換回路4及びDC−AC変換回路10で直流電力に変換されて第2の直流電源5を高速充電する。
【0044】
以上の通常運転モード、電動機高速運転モード及び直流電源高速充電モードにおける開閉装置SW1、SW2及びSW2′の通電状態を纏めると下記表1に示すようになる。
【0045】
【表1】

【0046】
このように、上記第3の実施形態によれば、電力変換装置1で、通常運転モード、電動機高速運転モード及び直流電源高速充電モードの3つのモードを選択的に実行することができる。しかも、これらの3つのモードを得るための構成が、第1の開閉装置SW1を介挿した短絡部L11〜L13、第2の開閉装置SW2を介挿した短絡部L21〜L23及び第2の開閉装置SW2′を介挿した短絡部L21′〜L23′を設けるだけの簡易な構成で済むので、低コストで3つのモードを選択可能な電力変換装置1を構成することができる。
【0047】
次に、本発明の第4の実施形態を図8について説明する。
この第4の実施形態は、上述した第3の実施形態における第1の直流電源2を、バッテリ31の正極側に昇圧用リアクトル32を直列に接続し、昇圧用リアクトル32の他端を第2の開閉装置SW2のスイッチ部sw21を介挿した短絡部L21を介して前述したAC−DC変換回路4と同一構成を有するDC−DC変換回路33の入力点Pr〜Ptに接続し、バッテリ31の負極側を第2の開閉装置SW2のスイッチ部sw22を介挿した短絡部L22を介してDC−DC変換回路33の負極側に接続したことを除いては図6と同様の構成を有し、図6との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0048】
この第3の実施形態によると、第1の直流電源2の構成がバッテリ31と、昇圧用リアクトル32及びDC−DC変換回路33とで構成される昇圧回路とで構成されているので、通常運転モードでは、第1の開閉装置SW1を遮断状態とし、第2の開閉装置SW2及びSW2′を導通状態に制御することにより、バッテリ31の充電電圧を昇圧した昇圧直流電力をDC−AC変換回路10に供給することにより、3相交流電動機12を通常回転駆動することができる。
【0049】
また、電動機高速運転モードでは、第1の開閉装置SW1及び第2の開閉装置SW2′を導通状態とし、第2の開閉装置SW2を遮断状態とすることにより、第2の直流電源5の直流電力をDC−DC変換回路33及びDC−AC変換回路10でそれぞれ3相交流電力に変換することにより、3相交流電動機12を高速回転駆動することができる。
さらに、直流電源高速充電モードでは、第1の開閉装置SW1及び第2の開閉装置SW2を導通状態とし、第2の開閉装置SW2′を遮断状態とするとともに、昇圧用リアクトル32とDC−AC変換回路10とで昇圧回路を構成することにより、2つの昇圧回路で第2の直流電源5を充電することができ、第2の直流電源5を高速充電することができる。
【0050】
この第4の実施形態でも、前述した第3の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、第4の実施形態においては、第1の直流電源2を、バッテリ31を含んで構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、バッテリ31に代えて、燃料電池や太陽電池のような任意の直流電源を適用することができる。
【0051】
また、上記第1〜第4の実施形態においては、第2の直流電源5としてバッテリを適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、バッテリに代えて充電用キャパシタを適用することもできる。
また、上記第1〜第3の実施形態においては、3相交流電動機12を電力変換装置1で回転駆動する電動機駆動装置について説明したが、これに限定されるものではなく、図9に示すように、3相交流電動機12を、必要に応じて減速機構41を介して例えばデファレンシャルギヤ42に連結し、このデファレンシャルギヤ42に連結された駆動輪43を回転駆動する構成として、ハイブリッド電気自動車に適用することもできる。
【0052】
さらに、上記第4の実施形態においても、3相交流電動機12を電力変換装置1で回転駆動する電動機駆動装置について説明したが、これに限定されるものではなく、図示しないが図9と同様に3相交流電動機12を必要に応じて減速機構41を介して例えばデファレンシャルギヤに連結し、このデファレンシャルギヤに連結された駆動輪を回転駆動する構成として、ハイブリッド電気自動車又は電気自動車に適用することもできる。
【0053】
さらにまた、上記第1〜第3の実施形態においては、3相交流発電機3及び3相交流電動機12を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、4相以上の交流発電機及び交流電動機を適用することもできる。この場合には、AC−DC変換回路4及びDC−AC変換回路10のスイッチングアーム数を相数に応じて増加すればよい。
【0054】
なおさらに、上記第1〜第4の実施形態においては、スイッチング素子としてIGBTを適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、使用電力に応じてパワーMOSFET、ゲートターンオフサイリスタ(GTO)、静電誘導型トランジスタ(SIT)等のスイッチング素子を適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…電力変換装置、2…第1の直流電源、3…3相交流発電機、4…AC−DC変換回路、5…第2の直流電源、8…平滑回路、Ca…平滑用コンデンサ、10…DC−AC変換回路、12…3相交流電動機、SW1…第1の開閉装置、SW2,SW2′…第2の開閉装置、L11〜L13…第1の短絡部、L21〜L23、L21′〜L23′…第2の短絡部、SA11〜SA13、SA21〜SA23…スイッチングアーム、Q11a〜Q13b、Q21a〜Q23b…スイッチング素子、14…制御装置、15…AC−DC制御部、16…DC−AC制御部、17…開閉器制御部、18、18′…選択スイッチ部、31…バッテリ、32…昇圧用リアクトル、33…DC−DC変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給部と、該電力供給部から電力が入力される電力入力部と、該電力入力部に入力された電力を直流電力に変換する直流電力変換部とを有する第1の直流電源と、
該第1の直流電源と並列に接続された蓄電部を有する第2の直流電源と、
前記第1の直流電源及び前記第2の直流電源の直流電力を平滑化する平滑回路部と、
該平滑回路部に接続されて直流電力を多相交流電力に変換して多相交流電動機に供給する電力変換部と、
前記第1の直流電源の電力入力部及び前記電力変換部の多相交流出力点間に設けた第1の開閉装置を介挿した第1の短絡部と、
前記第1の直流電源の電力供給部及び電力入力部間と前記電力変換部の多相交流出力点及び前記多相交流電動機間との少なくとも一方に設けた第2の開閉装置を介挿した第2の短絡部と、
前記第1の開閉装置及び第2の開閉装置を、両者の同時閉路状態を防止して開閉制御する開閉制御部と
を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記第1の直流電源は、前記電力供給部が多相交流発電機で構成され、前記直流電力変換部が多相AC−DC変換回路で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記多相交流発電機は内燃機関によって駆動されることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1の直流電源は、前記電力供給部がバッテリで構成され、前記直流電力変換部が昇圧回路で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1の直流電源の直流電力変換部は、スイッチング素子とこれに逆並列に接続されたダイオードとを有するスイッチングアームを備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記電力変換部は、スイッチング素子とこれに逆並列に接続されたダイオードとを有するスイッチングアームを備えていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−36028(P2011−36028A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179378(P2009−179378)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】