電圧制御可変容量及び電圧制御発振器
【課題】集積回路上に構成可能で、容量可変比率が大きくかつQ値が高く、VCOを構成した時に直線性の高い制御電圧と発振周波数の関係を実現する電圧可変型容量を提供すること。
【解決手段】下部電極を共通接続した複数のMOS型容量素子(CM1〜CMn)と、該複数のMOS型容量素子の上部電極に一端を接続し、他端を共通接続する同数の非電圧可変型容量(C1〜Cn)と、これらのMOS型容量素子と非電圧可変型容量の接続点に夫々異なる固定バイアス電圧を与える手段(VB1〜VBn及び抵抗)により構成され、前記複数のMOS型容量の共通接続された下部電極に制御電圧を加える。
【解決手段】下部電極を共通接続した複数のMOS型容量素子(CM1〜CMn)と、該複数のMOS型容量素子の上部電極に一端を接続し、他端を共通接続する同数の非電圧可変型容量(C1〜Cn)と、これらのMOS型容量素子と非電圧可変型容量の接続点に夫々異なる固定バイアス電圧を与える手段(VB1〜VBn及び抵抗)により構成され、前記複数のMOS型容量の共通接続された下部電極に制御電圧を加える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御電圧により容量が変化する電圧制御可変容量及びこれを用いた電圧制御発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路上で使用可能な電圧制御可変容量としては、バラクターダイオード及びMOS型容量素子の2種類が知られている。半導体集積回路上に実現可能なバラクターダイオードは、図12に示すように容量値の可変比率(最少容量値と最大容量値の比率)が少なく、電圧制御型発振回路等に用いる場合、大きな周波数可変幅が得られないという問題がある。
【0003】
VCXO(Voltage Controlled Crystal Oscillator)等の電圧制御発振器は、外部より印加される制御電圧により、発振回路に組み込まれた容量値を可変する事によりその発振周波数を制御する機能を持っている。この可変容量素子としてはバラクターダイオードが一般的に用いられるが、集積回路上で実現可能なバラクターダイオードは、最小容量値と最大容量値の比率が2倍程度と少ない。これは集積回路を形成するためのプロセスでは濃度勾配が急峻なPN接合を実現できないことに起因する。
【0004】
一方、集積回路上に実現可能で容量可変幅の広い電圧可変型容量としてMOS型の容量が知られている。MOS型の電圧可変型容量はバラクターダイオード(PN接合ダイオード)の可変幅の2倍近い可変幅を実現できる。しかし、MOS型の電圧可変型容量はMOS型トランジスタの閾値(Vt)付近の電圧(約0.5V)で容量値が急峻に変化するため、制御電圧に含まれる雑音成分で容量値が変調を受けやすく、この結果、電圧制御型発振器の位相雑音を劣化させる上、制御電圧と発振周波数の関係の直線性が悪いと云う欠点がある。
【0005】
そこで特許文献1には、MOS型トランジスタのソース、ドレインを短絡したMOS型容量素子のゲート側にコンデンサを接続し、こうして形成されたMOS型容量素子とコンデンサとの直列回路を並列に接続し、前記ソース、ドレインの短絡部分に制御電圧を印加すると共にMOS型容量素子とコンデンサとの間にバイアス電圧を印加する可変容量が提案されている。この可変容量は、バイアス電圧の大きさが各直列回路の間で互いに異なり、このため制御電圧を順次大きくしていくと、各MOS型容量素子のゲート、ソース(ドレイン)間の電圧が順次しきい値を越えてMOS型容量素子の容量値が減少していく。従って容量の可変比率が大きいが、反転層で形成される寄生抵抗が容量に直列に挿入されるため、可変容量のQ値が低いという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−64691:図10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、容量値の可変比率(最少容量値と最大容量値の比率)が大きく、例えば電圧制御発振器を構成した時に直線性の高い制御電圧と発振周波数の関係を実現することができ、且つQ値の高い電圧可変型容量を提供するものである。本発明の他の目的は、直線性の高い制御電圧と発振周波数の関係が得られ、また発振周波数の調整幅が大きい電圧制御発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電圧制御可変容量は、
(1)シリコン層内に形成されたN型のウエル層と、このウエル層の上にゲート酸化膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極に対して面方向に離間した位置にて前記ウエル層内に形成され、ウエル層よりもN型の不純物濃度が多いN+層からなるコンタクト層と、を備えたMOS型容量素子を複数用いること、
(2)前記複数のMOS型容量素子のコンタクト層の各々が電気的に共通に接続されたこと、
(3)各MOS型容量素子のゲート電極に互いに異なるバイアス電圧を供給するためのバイアス電圧供給部を設けたこと、
(4)一端が夫々前記MOS型容量素子のゲート電極に接続され、他端が共通に接続された複数の非電圧可変型容量素子を設けたこと、
(5)前記MOS型容量素子のウエル層にソース、ドレインを形成してMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されていること、を備え、
前記コンタクト層に制御電圧を供給することにより、前記複数のMOS型容量素子の共通接続点と前記複数の非電圧可変型容量素子の共通接続点との間の容量値が制御されることを特徴とする。
【0009】
各非電圧可変型容量素子の容量部分は、例えばゲート電極に重ねて設けられる。
【0010】
他の発明の電圧制御可変容量は、
(1)シリコン層内に形成されたP型のウエル層と、このウエル層の上にゲート酸化膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極に対して面方向に離間した位置にて前記ウエル層内に形成され、ウエル層よりもP型の不純物濃度が多いP+層からなるコンタクト層と、を備えたMOS型容量素子を複数用いること、
(2)前記複数のMOS型容量素子のゲート電極の各々が電気的に共通に接続されたこと、
(3)各MOS型容量素子のコンタクト層に互いに異なるバイアス電圧を供給するためのバイアス電圧供給部を設けたこと、
(4)一端が夫々前記MOS型容量素子のコンタクト層に接続され、他端が共通に接続された複数の非電圧可変型容量素子を設けたこと、
(5)前記MOS型容量素子のウエル層にソース、ドレインを形成してMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されていること、を備え、
前記ゲート電極に制御電圧を供給することにより、前記複数のMOS型容量素子の共通接続点と前記複数の非電圧可変型容量素子の共通接続点との間の容量値が制御されることを特徴とする。
【0011】
更に他の発明に係る電圧制御可変容量は、
(1)シリコン層内に形成されたN型のウエル層と、このウエル層の上にゲート酸化膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極に対して面方向に離間した位置にて前記ウエル層内に形成され、ウエル層よりもN型の不純物濃度が多いN+層からなるコンタクト層と、を備えたMOS型容量素子を複数用いること、
(2)前記複数のMOS型容量素子のコンタクト層の各々が電気的に共通に接続されたこと、
(3)各MOS型容量素子のゲート電極に互いに異なるバイアス電圧を供給するためのバイアス電圧供給部を設けたこと、
(4)前記MOS型容量素子のウエル層にソース、ドレインを形成してMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されていること、を備え、
前記コンタクト層に制御電圧を供給することにより、前記複数のMOS型容量素子の共通接続点とMOS型容量素子のゲート電極側との間の容量値が制御されることを特徴とする。
【0012】
更にまた他の発明の電圧制御可変容量は、
(1)シリコン層内に形成されたP型のウエル層と、このウエル層の上にゲート酸化膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極に対して面方向に離間した位置にて前記ウエル層内に形成され、ウエル層よりもP型の不純物濃度が多いP+層からなるコンタクト層と、を備えたMOS型容量素子を複数用いること、
(2)前記複数のMOS型容量素子のゲート電極の各々が電気的に共通に接続されたこと、
(3)各MOS型容量素子のコンタクト層に互いに異なるバイアス電圧を供給するためのバイアス電圧供給部を設けたこと、
(4)前記MOS型容量素子のウエル層にソース、ドレインを形成してMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されていること、を備え、
前記ゲート電極に制御電圧を供給することにより、前記複数のMOS型容量素子の共通接続点とMOS型容量素子のコンタクト層側との間の容量値が制御されることを特徴とする。
【0013】
他の発明は、電圧制御可変容量を用いた電圧制御発振器において、本発明の電圧制御可変容量を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、複数のMOS型容量素子の一端側の電極を共通に接続して共通接続点に制御電圧を印加するようにしている。そして各MOS型容量素子の他端側の電極にバイアス抵抗を介してバイアス電圧を印加し、一端が夫々前記MOS型容量素子のゲート電極に前記バイアス抵抗を介さずに接続され、他端が共通に接続された複数の非電圧可変型容量素子を設けている。
【0015】
また他の発明は、複数のMOS型容量素子の一端側の電極を共通に接続して共通接続点に制御電圧を印加するようにし、各MOS型容量素子の他端側の電極にバイアス電圧を印加している。
【0016】
そしていずれの発明においても、互いに隣接するバイアス電圧の大きさをしきい値電圧よりも小さく設定していることから、制御電圧を大きくしていくと順次MOS型容量素子の容量値が減少する。従って集積回路上に構成可能で、容量可変比率が大きく、VCOを構成した時に直線性の高い制御電圧と発振周波数の関係を実現できる。またQ値の高い電圧制御可変容量が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の電圧制御可変容量の第1の実施の形態を示す回路図である。
【図2】第1の実施の形態に用いられるMOS型容量素子の構造を示す平面図及び断面図である。
【図3】本発明の電圧可変型容量の制御電圧と容量値の関係を示す特性図である。
【図4】図1の容量値(CM1〜CM10及びC1〜C10)の重み付けを変え、共振回路を接続した場合の並列共振周波数(即ちVCOを構成した場合の発振周波数)の変化量を示す図である。
【図5】第1の実施の形態の変形例に用いられるMOS型容量素子の構造を示す断面図である。
【図6】第1の実施の形態に係る電圧制御可変容量を用いた電圧制御発振器の回路の構成例を示す回路図である。
【図7】第1の実施の形態に係る電圧制御可変容量を用いた電圧制御発振器の回路の構成例を示す回路図である。
【図8】本発明の電圧制御可変容量の第2の実施の形態に用いられるMOS型容量素子の構造を示す断面図である。
【図9】本発明の電圧制御可変容量の第2の実施の形態を示す回路図である。
【図10】第2の実施の形態に係る電圧制御可変容量を用いた電圧制御発振器の回路の構成例を示す回路図である。
【図11】第2の実施の形態に係る電圧制御可変容量を用いた電圧制御発振器の回路の構成例を示す回路図である。
【図12】バラクターダイオード及びMOS型容量素子について、制御電圧と容量値の関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る電圧制御可変容量の回路構成を示している。CM1〜CMnは、MOS型容量素子であり、これらMOS型容量素子CM1〜CMnの一端側の電極MAは共通のノードAに接続されている。MOS型容量素子CM1〜CMnの他端側の電極MBは、非電圧可変型容量素子であるコンデンサC1〜Cnの一端側に夫々接続されている。なおMOS型容量素子CM1、CM2に、代表して電極MA、電極MBの符号を示してある。コンデンサC1〜Cnの他端側は共通のノードBに接続されている。従ってノードAとノードBとの間には、MOS型容量素子CM1とコンデンサC1との直列回路、MOS型容量素子CM2とコンデンサC2との直列回路、‥‥‥MOS型容量素子CMnとコンデンサCnとの直列回路が互いに並列に接続された構成となっている。
【0019】
そして各MOS型容量素子CMkとコンデンサCkとの間には、バイアス電圧(直流電圧)VBkがバイアス電圧供給部1から供給されている。バイアス電圧供給部1の一端側は接地されている。なおkは1からnまでの整数であり、記載を簡略化するために用いている。即ち、MOS型容量素子CM1とコンデンサC1との間には、バイアス電圧VB1が供給され、MOS型容量素子CM2とコンデンサC2との間には、バイアス電圧VB2が供給され、‥‥‥MOS型容量素子CMnとコンデンサCnとの間には、バイアス電圧VBnが供給されているということである。Rは例えば100kΩ以上の抵抗値を持つ抵抗であり、Rの両端の直流電圧値は同じである。バイアス電圧VBkの大きさについては後述する。
【0020】
ここでバイアス電圧供給部1から、各MOS型容量素子CMkとコンデンサCkとの接続点までの間の抵抗(バイアス抵抗R)の抵抗値は、容量のQ値を高くするためにできるだけ大きな値とすることが望ましいが、集積回路上に構成する場合には、面積(=コスト)と特性とのトレードオフで考える必要がある。一般的には、バイアス抵抗Rの抵抗値を発振周波数f0におけるMOS型容量素子CMk及びコンデンサCkの各インピーダンスよりも十分に大きな値に設定する必要がある。前記インピーダンスは、各々1/(2π・f0・CMk)及び1/(2π・f0・Ck)で与えられ、バイアス抵抗Rの抵抗値は、これらインピーダンスのうちの大きい方の値よりも2桁以上大きな値とすることが望ましい。
【0021】
図1の実施形態では、前記複数のMOS型容量素子CM1〜CMnの共通接続されたノードAに図示しない制御電圧供給部から制御電圧を加えることにより、前記MOS型容量素子CM1〜CMnの共通接続点と前記非電圧可変型容量であるコンデンサC1〜Cnの共通接続点間の容量値を制御する電圧制御型可変容量を実現している。この電圧制御型可変容量を水晶発振回路に利用する場合には、ノードBに発振素子である水晶振動子が接続されることになる。
【0022】
また図2はMOS型容量素子CM1〜CMnの構造を示している。2はシリコン(Si)基板であり、このシリコン基板2の上には、シリコン酸化(SiO2)膜40が積層されている。シリコン基板2及びシリコン酸化(SiO2)膜40については、図面をわかりやすくするためにハッチングを記載していない。シリコン基板2の表層部に平面形状が長方形である、N型のウエル層であるNウエル(N−Well)層21が形成されている。このNウエル層21の上にゲート酸化膜3を介して例えばポリシリコン膜からなるゲート電極31が設けられている。ゲート酸化膜3は、Nウエル層21とゲート電極31との間におけるシリコン酸化膜40の薄い部分に相当する。ゲート電極31はNウエル層21よりも少し小さい、平面形状が長方形に形成されている。このゲート電極3の上には、ゲート電極3よりも少し小さい、平面形状が長方形の例えばアルミニウムからなる電極MBが絶縁層(シリコン酸化膜40の一部)を介して、当該ゲート電極3に対向して配置されている。更にこの電極MBの一端部から引き出し電極33が引き出されている。この引き出し電極33には、バイアス電圧が印加され、このバイアス電圧が電極MB及び導電路32を介してゲート電極3に印加されることになる。導電路32は図2(a)からも分かるように、電極MBにおける引き出し電極33側における端部に短辺に沿って互いに間隔をおいて島状に複数例えば3個設けられ、また電極MBにおける引き出し電極33とは反対側における端部に短辺に沿って互いに間隔をおいて島状に複数例えば4個設けられている。
【0023】
またゲート電極3と電極MBとは、当該電極MBの両短辺に沿って複数の導電路32により接続されている。更に電極MBの上に例えばアルミニウムからなる電極5が設けられている。この電極5は、電極MBに対して、シリコン酸化膜40の一部である薄い絶縁層50を介して対向している長方形状の対向電極51と、この対向電極51の全周縁部から斜め上方に延びだしている周縁部52と、周縁部52における、前記引き出し電極33が引き出されている端部側から引き出されている引き出し電極53と、を備えている。
【0024】
一方Nウエル層21における、ゲート電極3から離れた部位には、Nウエル層21よりもN型の不純物濃度が多いN+層からなるコンタクト層であるサブコンタクト部4が設けられている。このサブコンタクト部4は、平面的に見ると、ゲート電極31の短辺側に間隔をおいて並んだ、平面形状が長方形に形成されている。そしてこのサブコンタクト部4の上に、サブコンタクト部4の長さ方向(ゲート電極31の短辺方向)に沿って島状に一列に配列された導電路41が立ち上げられ、これら導電路41の上に面状の例えばアルミニウムからなる電極MAが設けられている。この電極MAはこの例では前記電極MBと同じ高さ位置であり、かつ電極MAとは離間して並べて配置されている。
【0025】
図1と図2との間で符号を照合することで理解は容易であると思われるが、念のため対応関係を述べる。図2においてサブコンタクト部4に接続された電極MAが図1のMOS型容量素子(CM1〜CMn)の下側の電極に相当し、ノードAに接続される。また図2においてゲート電極31に対向する電極MBが図1のMOS型容量素子(CM1〜CMn)の上側の電極に相当し、バイアス電圧供給部1に接続される。
【0026】
更に図1では、電極MBと対向電極5との間に介在しているシリコン酸化膜40の一部である絶縁層50は、非電圧可変型容量素子であるコンデンサC1〜Cnの各容量成分に相当する。即ち図1では、各MOS型容量素子CMkとコンデンサCkとは導電路で接続されているように描いているが、図1のコンデンサCkの下側の電極は、図2の電極MBが兼用しており、図1のコンデンサCkの上側の電極が図2の電極53に相当する。従って電極53はノードBに接続されることになる。
【0027】
次に図1の回路について動作を説明する。既述のようにMOS型容量素子はトランジスタのしきい値電圧付近のバイアスにおいてその容量値 が急激に変化をするという欠点がある。この欠点を解決するために、バイアス電圧VB1〜VBnを夫々MOS型容量素子CM1〜CMnに供給している。そしてVB1〜VBnの電圧の関係をVB1<VB2<VB3<・・・・・<VBn-1 <VBnとし、かつ隣り合うバイアス電圧の差(VB(k+1)−VBk)がMOSトランジスタの閾値電圧(Vt)よりも小さく設定している。ここで図12の実線(1)は、図2に示したMOS型容量素子においてサブコンタクト部4を接地した状態でゲート電極31の電圧を変化させたときの容量変化を示している。この図12から分かるように、サブコンタクト部4側の電圧に対するゲート電極31の電圧の差(ゲート電極31の電圧−サブコンタクト部4側の電圧)がしきい値電圧よりも小さくなると、MOS型容量素子の容量が急激に小さくなる。
【0028】
このためノードAに加える制御電圧をバイアス電圧VB1よりも低い電圧から徐々に上げて行くと、先ずMOS型容量素子MC1の容量値が減少し、ノードA、B間の容量が減少する。図12の場合には、サブコンタクト部4を接地した状態でゲート電極31の電圧を変化させているが、図1の場合には、ゲート電極31に固定バイアスを印加した状態でサブコンタクト部4の電圧を上げている。このことは、図12に対応して説明すれば、グラフ(1)について右から左に移動すること(ゲート電極31の電圧からサブコンタクト部4側の電圧を差し引いた差電圧が小さくなっていくこと)である。従ってこの差電圧が徐々に小さくなっていって、バイアス電圧VB1付近でMOS型容量素子MC1の容量値が減少することになる。
【0029】
そして、隣り合うバイアス電圧の差がMOSトランジスタの閾値電圧(Vt)よりも小さく設定しているため、更にノードAの電圧を上げると、MC1の容量値の変化が急峻な領域から緩やかな領域に以降する前に、MOS型容量素子MC2について前記差電圧がバイアス電圧VB2付近に差し掛かるため、MOS型容量素子MC2の容量値が減少を始める。このように制御電圧(ノードAの電圧)を徐々に大きくしていくことにより、MOS型容量素子MC1〜MCnの容量値が順次急峻に小さくなっていくことから、つまりいわばバトンリレーのように容量値が可変することから、ノードA、Bの間で容量を可変することができる。
【0030】
ここで問題となることは、MOS型容量素子MC1〜MCnと非電圧可変型容量素子であるコンデンサC1〜Cnとの接続点の寄生容量である。この寄生容量はMOS型容量素子と半導体基板の間の固定容量として作用するため、MOS型容量素子の可変比率の減少をもたらす。しかし図2に示すように、MOS型容量素子の上部に非電圧可変型容量素子を配置することにより、詳しくは、コンデンサC1〜Cnの下側の電極とMOS型容量素子のゲート側の電極とを兼用させることにより、前記寄生容量の影響を排除できる。互に兼用している電極は同電位に接続されるため、MOS型容量素子の容量の可変比率の減少を発生させない
図3はこの実施形態の電圧可変型容量の制御電圧と容量値の関係を示している。この図3に示す特性はnを10、VB1を0.5V、VB2を0・65V、VB3を0.8V、VB4を0.95V、VB5を1.1V、VB6を1.25V、VB7を1.4V、VB8を1.55V、VB9を1.7V、VB10を1.95Vに設定し、ノードAに加える制御電圧を-2Vから4Vまで変化させた時のノードA、B間の容量値を示している。この例では、MOS型容量素子CM1〜CM10は同じ容量値を用い、コンデンサC1〜C10も同様に同じ容量値を用いているので、同図に示す様に制御電圧が約0.2Vから1.3Vの間で制御電圧と容量値の関係が線形になっている。
【0031】
ここで特許文献1に記載されている、MOS型トランジスタのソース、ドレインを短絡したMOS型容量素子と、上述実施形態で用いたMOS型容量素子と、について比較する。特許文献1に記載されているMOS型トランジスタは、ゲート端子、ソースドレイン端子、サブ端子の3端子を備えており、サブ端子を接地し、ゲート端子に一定のバイアス電圧を与えると共に、ソースドレイン端子の電圧を変化させることにより、ゲート端子とソースドレイン端子との間の容量を変化させるようにしている。この場合、例えばゲート端子に1Vのバイアス電圧が与えられているとすると、ゲート酸化膜の下に反転層(N)層が形成される。そしてソースドレイン端子の電圧が0Vであるとすると、ソースドレイン層(N層)と前記反転層とは導通状態になるので、ゲート端子とソースドレイン端子との間の容量値はゲート酸化膜で決まる容量値となり、最大容量値となる。ソースドレイン端子はN型半導体であり、サブ端子の層はP型半導体であることから、ソースドレイン端子に負の電圧を印加することはできない。何故なら、ソースドレイン端子の電圧を負側に振ると、ダイオードが順方向になるからである。
【0032】
次にソースドレイン端子の電圧を上げていくと、ソースドレイン層(N型半導体)とサブ端子の層(P型半導体)とで構成されるダイオードが逆バイアスになるので、ソースドレイン層に空乏層が発生し、前記反転層とソースドレイン層とは導通状態ではなくなる。このときの容量値はゲート酸化膜と空乏層とで形成される容量が直列に接続されることになるので、容量値は低下する。更にソースドレイン端子の電圧を上げると空乏層が厚くなり、更に容量値が下がる。
【0033】
従って、ソース、ドレインと前記反転層が導通状態にある時はゲート酸化膜で決まる容量と反転層の寄生抵抗が直列に接続された素子となり、ソース、ドレインに空乏層が発生している状態ではゲート酸化膜で決まる容量、前記反転層の寄生抵抗、前記空乏層で形成される容量の3素子が直列に接続された素子となる。いずれの場合も前記反転層の寄生抵抗が直列に接続された状態になるため、Q値の低下が発生する。
【0034】
これに対して上述実施の形態に係るMOS型容量素子は、サブコンタクト部4に対し、ゲート電極31を負にバイアスした時にキャリア蓄積効果による薄い反転層が形成されることはあるが、この反転層の寄生抵抗はサブコンタクト部4に対して縦方向の抵抗が作用するため、その値はサブコンタクト部4の基板抵抗に対して十分小さいためQ値を低下させない。サブコンタクト部4の基板抵抗はQ値に影響を与えるが、特許文献1のMOS型容量素子よりもその抵抗値は十分に小さいためQ値の高い容量素子を実現できる。
【0035】
更に上述実施の形態によれば次のような効果がある。MOS型容量素子MCkと非電圧可変型容量素子であるコンデンサCkとの直列回路を複数並列に接続し、MOS型容量素子MCkのゲート側にバイアス電圧を印加すると共にサブコンタクト部4側に制御電圧を供給している。そしてMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されている。従ってMOS型容量素子MC1〜MCnの容量値が順次急峻に小さくなっていくことから、更に既述のようにMOS型容量素子MCkの構造の点も含めると、図3に示したように容量値について大きな可変幅を得ることができる。
【0036】
そして制御電圧と容量値とが良好な直線性の関係となっているので、この電圧制御可変容量をVCOに適用しやすいという効果がある。また一般のMOSトランジスタはセルフアラインによりゲート電極をマスクとして用いることから、ソース領域とゲート電極との距離が近く、このため寄生容量が大きくなる。これに対して前記MOS型容量素子はサブコンタクト部4を用いているので、サブコンタクト部4とゲート電極31との距離を大きく取ることができ、このため寄生容量を低減できる利点もある。
本発明では、電極M1はゲート電極3そのものであってもよく、この場合にはゲート電極3に絶縁層を介して対向するように電極M3を設ける構成となる。そしてゲート電極3には引き出し電極を介してバイアス電圧が印加されることになる。
【0037】
上述の例では、MOS型容量素子MC1〜MCnは同じ容量値を用い、コンデンサC1〜C10も同様に同じ容量値を用いているので、図3に示す様に制御電圧が約0.2Vから1.3Vの間で制御電圧と容量値の関係が線形になっている。しかしながらVCOでは制御電圧と容量値の関係を線形にすることが求められる訳ではなく、制御電圧と発振周波数との関係を線形にすることが求められる。水晶振動子を等価回路で表わしたときの直列容量C1、並列容量C0、直列インダクタンスL1と、水晶振動子に接続される電圧可変型容量部の容量CVと、発振回路の発振周波数fとの関係は、f=1/2π(L1・K)1/2で表わされる。電圧可変型容量部は、図1におけるノードA及びB間の容量に相当する。またKは次の式で表わされる。
【0038】
K={C1(C0+CV)}/(C1+C0+CV)
ここでCVとfとは非線形の関係にあり、CVと電圧可変型容量部に加わる制御電圧Vb(図1のノードAに加わる電圧)とについても非線形の関係にある。そこでVbとfとの関係ができるだけ線形(直線性の関係)となるように、例えば以下のような手法を採用することが好ましい。
1)複数個のMOS型容量素子と複数の非電圧可変型容量との一方若しくは両方の容量の重み付けを調整し、制御電圧対容量値の関係を所望の特性に合わせる手法
2)MOS型容量素子と非電圧可変型容量の接続点に与える固定バイアス電圧を調整し、制御電圧対容量値の関係を所望の特性に合わせる手法
3)上記1)と2)を併用する手法
図4は上記1)の手段により電圧可変型容量を構成し、この電圧可変型容量と190MHzの水晶振動子を接続して共振回路を構成した時の制御電圧と並列共振周波数(即ち、VCXOを構成した場合の発振周波数)の周波数変化量の関係を示している。なおMOS型容量素子の容量の重み付けを行うとは、例えばMOS型容量素子のCM1〜CMnの全部の間であるいは一部の間で互いの容量を変える(ゲート酸化膜の面積や厚さなどを変更する)例を挙げることができる。また非電圧可変型容量素子の重み付けを行うとは、容量C1〜Cnの全部の間であるいは一部の間で互いの容量を変える例を挙げることができる。
【0039】
一般的にVCXOでは10%以下の直線性が要求されるのに対し、図4の直線性は十分5%以内に収まっており、良好な線形性が得られている。なお、ここでは、MOS型容量素子は図2に示すようなNウエル層21、ゲート酸化膜31、ポリシリコンゲート電極3によって構成されるMOS構造、MIM(Metal Insulator Metal)構造の非電圧可変型容量を例にして説明をしたが、N型拡散層の種類、ゲート電極の材質はこれに限定される必要はなく、例えばゲート電極がメタルであっても構わない。また、非電圧可変型容量であるコンデンサCkはMIM構造である必要もない。
【0040】
更に、Nウエル層21の代わりに、P型のウエル層であるPウエル層を用いても同様の機能を実現できる。この場合には、サブコンタクト部21は、Pウエル層よりもP型の不純物濃度が多いP+層からなる。そして図1に示すMOS型容量素子CM1〜CM10の上下を入れ替えた構成となる。つまり図2において、サブコンタクト部4に接続された電極MAの上方にコンデンサ容量をなす絶縁層を介してコンデンサC1〜C10の一端側の電極5を対向させ、電極MBの上方側にはコンデンサC1〜C10の一端側の電極5を対向させない構成とする。図5は、第1の実施の形態の変形例に相当する、Pウエル層を用いたMOS型容量素子を示す断面図であり、Pウエル層及びP+層には、夫々符号「21´」及び「4´」を割り当てている。電極MAにはバイアス電圧供給部1からバイアス電圧が与えられ、電極MBはノードAに接続されて制御電圧が印加されることになる。
【0041】
以上において、本発明は、MOS型容量素子のゲート電極31の上に非電圧可変容量を形成する場合に、電極MBを設けずにゲート電極31との間に絶縁層を介して電極51(図2参照)を設けてもよく、この場合には、電極MBを介さずにゲート電極31にバイアス電圧Vkが印加される。
【0042】
図6は本発明の電圧制御可変容量を適用した電圧制御発振器の一例であり、5は水晶振動子、6は差動アンプ、7は制御電圧出力部であり、水晶振動子5の一端側から発振出力が取り出される。水晶振動子5の両端には既述の電圧制御可変容量が2組接続されている。即ち2組の電圧制御可変容量は同じ構成になっている。
【0043】
図7は本発明の電圧制御可変容量を適用した電圧制御発振器の他の例であり、電圧制御発振器に用いられる発振回路としてはコルピッツ回路が用いられている。図7中、100は図1に示されている電圧制御可変容量であり、鎖線の枠内に図1に記載したバイアス抵抗Rが位置している。101は増幅器をなすトランジスタ、102、103は抵抗、104、105はコンデンサ、106は抵抗、VCCは電源電圧、Vbbはトランジスタ101のベースに供給されるバイアス電圧を示している。図7の回路では、ノードBが接地されているが、ノードBを接地しない構成とした場合には、前記バイアス抵抗Rは不要となる。
なお本発明が適用される電圧制御発振器としてはいわゆるLC共振回路を用いたものであってもよい。
【0044】
既述の第1の実施の形態に係る電圧制御可変容量の回路は、MOS型容量素子の下部電極(Nウエル21)とシリコン基板(符号2に相当する部分)との間の寄生容量が大きいことを前提として考えられた構成である。一般的な半導体プロセスでは、MOS型容量素子の下部電極とシリコン基板は、PN分離で電気的に分離されるため、大きな接合容量がMOS型容量素子の下部電極に付く。このため第1の実施の形態では、MOS型容量素子の下部電極に制御電圧を供給するようにし、これにより下部電極の電位が高周波により変わらないように(交流的に固定するように)し、前記寄生容量の影響が無いようにあるいは抑えられるように構成している。
【0045】
一方この構成では、MOS型容量素子の上部電極(ゲート電極)にバイアス電圧VBkを与える必要があるため、この直流バイアスが発振回路側に印加されないようにするために、直流バイアスのカット用として非電圧可変容量であるコンデンサCkをMOS型容量素子CMkに直列に接続する必要がある。従ってコンデンサCkの容量値がMOS型容量素子CMkの容量値よりも大きいほど、可変容量として大きな容量可変比率が得られる。コンデンサCkは、MOS型容量の上部から外れた領域に形成することにより、容量値をより一層大きくできるが、そうするとデバイスが大型化し、またコンデンサCkにおけるMOS型容量側の電極とシリコン基板との間の寄生容量が大きくなるので、得策ではなくなる。このためゲート電極の上にコンデンサCkを設けようとすると、前記容量可変比率の大きさにはある程度の制限が避けられない。
【0046】
一方、SOI(Silicon On Insulator)基板などの酸化膜によりMOS型容量素子の下部電極がシリコン基板に対して電気的に分離できるプロセスでは、MOS型容量素子の下部電極とシリコン基板との間に付く寄生容量は、PN分離と比較すると十分に小さいため、図1の構成を採用しなくても、図1と同様の機能を実現できる。
【0047】
次に本発明の第2の実施の形態に係る電圧制御可変容量について図8〜図11を参照しながら説明する。第2の実施の形態は、MOS型容量素子の下部電極とシリコン基板との間に付く寄生容量がPN分離と比較すると十分に小さい場合に好ましい例である。
図8に示したデバイス構造は、第2の実施形態に用いられるMOS型容量素子を示している。この構造が図2の構造と異なる点は、MOS型容量素子とシリコン基板2との間に絶縁膜30である例えばシリコン酸化膜が形成されている点、及びコンデンサCkが含まれていない点である。図9は、第2の実施形態に係る電圧制御可変容量の回路を示している。図9では、MOS型容量素子MC1〜MCnは、ゲート電極31に接続される電極MBが下側に記載され、Nウエル21に接続される電極MAが上側に記載されている。そして各電極MAを介してMOS型容量MCkの各コンタクト層4を共通に接続し、共通接続点であるノードBに抵抗Rを介して図示しない制御電圧出力部から制御電圧を供給するように構成している。なおノードBは発振回路に接続される側のノードである。
【0048】
この例では、MOS型容量素子MCkの下部電極とシリコン基板2との間に付く寄生容量が小さいことから、このように下部電極側(Nウエル21側)を交流的にフリーな状態(高周波により電位が変わる状態)とすることができる。このためMOS型容量素子MCkのゲート電極31側は交流的に固定することができるので、バイアス電圧供給部1からバイアス抵抗を設けずにゲート電極31にバイアス電圧を供給することができる。この結果非電圧可変容量であるコンデンサCkが不要になる。図9に示す電圧制御可変容量は、各バイアス電圧VBkの供給点であるゲート電極31が交流的にはグランドとなるため、ゲート電極VBkとノードBとの間の容量が制御電圧VCにより制御されることになる。
【0049】
図10は、本発明の電圧制御可変容量を適用した電圧制御発振器の一例である。この例では第2の実施の形態の電圧制御可変容量を2個用いているが、1個用いるようにしてもよい。図10のように構成すれば、バイアス電圧VB1〜VBnの各ノードが交流的な仮想接地点になるため、バイアス電圧供給部1の回路のインピーダンスが高くても(抵抗が入っていても)、理想のバイアス(インピーダンスゼロ)を与えた場合と等価になる利点がある。
【0050】
図11は、第2の実施の形態の電圧制御可変容量を適用した電圧制御発振器の他の例であり、電圧制御発振器に用いられる発振回路としてはコルピッツ回路が用いられている。
【0051】
SOIプロセスを用いた場合であっても、MOS型容量素子MCkの下部電極とシリコン基板2との間に付く寄生容量はゼロではないことから、使用するプロセスにより第1の実施の形態の構成と第2の実施の形態の構成とのどちらが有利かを判断して、両構成を使い分けることが好ましい。またバイアス抵抗R(あるいは102)については、本発明の電圧制御可変容量を適用する回路に対してどのように設けるかによって、必要になったり、あるいは不要になったりする。
【符号の説明】
【0052】
A、B 電圧制御型可変容量の端子部
CM1〜CMn MOS型容量素子
C1からCn 非電圧可変型容量素子であるコンデンサ
VB1〜VBn バイアス電圧
1 バイアス電圧供給部
2 シリコン基板
21 Nウエル
21´ Pウエル
3 ゲート酸化膜
31 ゲート電極
4、4´ サブコンタクト部
5、MA、MB 電極
6 差動アンプ
7 制御電圧出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御電圧により容量が変化する電圧制御可変容量及びこれを用いた電圧制御発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路上で使用可能な電圧制御可変容量としては、バラクターダイオード及びMOS型容量素子の2種類が知られている。半導体集積回路上に実現可能なバラクターダイオードは、図12に示すように容量値の可変比率(最少容量値と最大容量値の比率)が少なく、電圧制御型発振回路等に用いる場合、大きな周波数可変幅が得られないという問題がある。
【0003】
VCXO(Voltage Controlled Crystal Oscillator)等の電圧制御発振器は、外部より印加される制御電圧により、発振回路に組み込まれた容量値を可変する事によりその発振周波数を制御する機能を持っている。この可変容量素子としてはバラクターダイオードが一般的に用いられるが、集積回路上で実現可能なバラクターダイオードは、最小容量値と最大容量値の比率が2倍程度と少ない。これは集積回路を形成するためのプロセスでは濃度勾配が急峻なPN接合を実現できないことに起因する。
【0004】
一方、集積回路上に実現可能で容量可変幅の広い電圧可変型容量としてMOS型の容量が知られている。MOS型の電圧可変型容量はバラクターダイオード(PN接合ダイオード)の可変幅の2倍近い可変幅を実現できる。しかし、MOS型の電圧可変型容量はMOS型トランジスタの閾値(Vt)付近の電圧(約0.5V)で容量値が急峻に変化するため、制御電圧に含まれる雑音成分で容量値が変調を受けやすく、この結果、電圧制御型発振器の位相雑音を劣化させる上、制御電圧と発振周波数の関係の直線性が悪いと云う欠点がある。
【0005】
そこで特許文献1には、MOS型トランジスタのソース、ドレインを短絡したMOS型容量素子のゲート側にコンデンサを接続し、こうして形成されたMOS型容量素子とコンデンサとの直列回路を並列に接続し、前記ソース、ドレインの短絡部分に制御電圧を印加すると共にMOS型容量素子とコンデンサとの間にバイアス電圧を印加する可変容量が提案されている。この可変容量は、バイアス電圧の大きさが各直列回路の間で互いに異なり、このため制御電圧を順次大きくしていくと、各MOS型容量素子のゲート、ソース(ドレイン)間の電圧が順次しきい値を越えてMOS型容量素子の容量値が減少していく。従って容量の可変比率が大きいが、反転層で形成される寄生抵抗が容量に直列に挿入されるため、可変容量のQ値が低いという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−64691:図10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、容量値の可変比率(最少容量値と最大容量値の比率)が大きく、例えば電圧制御発振器を構成した時に直線性の高い制御電圧と発振周波数の関係を実現することができ、且つQ値の高い電圧可変型容量を提供するものである。本発明の他の目的は、直線性の高い制御電圧と発振周波数の関係が得られ、また発振周波数の調整幅が大きい電圧制御発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電圧制御可変容量は、
(1)シリコン層内に形成されたN型のウエル層と、このウエル層の上にゲート酸化膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極に対して面方向に離間した位置にて前記ウエル層内に形成され、ウエル層よりもN型の不純物濃度が多いN+層からなるコンタクト層と、を備えたMOS型容量素子を複数用いること、
(2)前記複数のMOS型容量素子のコンタクト層の各々が電気的に共通に接続されたこと、
(3)各MOS型容量素子のゲート電極に互いに異なるバイアス電圧を供給するためのバイアス電圧供給部を設けたこと、
(4)一端が夫々前記MOS型容量素子のゲート電極に接続され、他端が共通に接続された複数の非電圧可変型容量素子を設けたこと、
(5)前記MOS型容量素子のウエル層にソース、ドレインを形成してMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されていること、を備え、
前記コンタクト層に制御電圧を供給することにより、前記複数のMOS型容量素子の共通接続点と前記複数の非電圧可変型容量素子の共通接続点との間の容量値が制御されることを特徴とする。
【0009】
各非電圧可変型容量素子の容量部分は、例えばゲート電極に重ねて設けられる。
【0010】
他の発明の電圧制御可変容量は、
(1)シリコン層内に形成されたP型のウエル層と、このウエル層の上にゲート酸化膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極に対して面方向に離間した位置にて前記ウエル層内に形成され、ウエル層よりもP型の不純物濃度が多いP+層からなるコンタクト層と、を備えたMOS型容量素子を複数用いること、
(2)前記複数のMOS型容量素子のゲート電極の各々が電気的に共通に接続されたこと、
(3)各MOS型容量素子のコンタクト層に互いに異なるバイアス電圧を供給するためのバイアス電圧供給部を設けたこと、
(4)一端が夫々前記MOS型容量素子のコンタクト層に接続され、他端が共通に接続された複数の非電圧可変型容量素子を設けたこと、
(5)前記MOS型容量素子のウエル層にソース、ドレインを形成してMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されていること、を備え、
前記ゲート電極に制御電圧を供給することにより、前記複数のMOS型容量素子の共通接続点と前記複数の非電圧可変型容量素子の共通接続点との間の容量値が制御されることを特徴とする。
【0011】
更に他の発明に係る電圧制御可変容量は、
(1)シリコン層内に形成されたN型のウエル層と、このウエル層の上にゲート酸化膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極に対して面方向に離間した位置にて前記ウエル層内に形成され、ウエル層よりもN型の不純物濃度が多いN+層からなるコンタクト層と、を備えたMOS型容量素子を複数用いること、
(2)前記複数のMOS型容量素子のコンタクト層の各々が電気的に共通に接続されたこと、
(3)各MOS型容量素子のゲート電極に互いに異なるバイアス電圧を供給するためのバイアス電圧供給部を設けたこと、
(4)前記MOS型容量素子のウエル層にソース、ドレインを形成してMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されていること、を備え、
前記コンタクト層に制御電圧を供給することにより、前記複数のMOS型容量素子の共通接続点とMOS型容量素子のゲート電極側との間の容量値が制御されることを特徴とする。
【0012】
更にまた他の発明の電圧制御可変容量は、
(1)シリコン層内に形成されたP型のウエル層と、このウエル層の上にゲート酸化膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極に対して面方向に離間した位置にて前記ウエル層内に形成され、ウエル層よりもP型の不純物濃度が多いP+層からなるコンタクト層と、を備えたMOS型容量素子を複数用いること、
(2)前記複数のMOS型容量素子のゲート電極の各々が電気的に共通に接続されたこと、
(3)各MOS型容量素子のコンタクト層に互いに異なるバイアス電圧を供給するためのバイアス電圧供給部を設けたこと、
(4)前記MOS型容量素子のウエル層にソース、ドレインを形成してMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されていること、を備え、
前記ゲート電極に制御電圧を供給することにより、前記複数のMOS型容量素子の共通接続点とMOS型容量素子のコンタクト層側との間の容量値が制御されることを特徴とする。
【0013】
他の発明は、電圧制御可変容量を用いた電圧制御発振器において、本発明の電圧制御可変容量を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、複数のMOS型容量素子の一端側の電極を共通に接続して共通接続点に制御電圧を印加するようにしている。そして各MOS型容量素子の他端側の電極にバイアス抵抗を介してバイアス電圧を印加し、一端が夫々前記MOS型容量素子のゲート電極に前記バイアス抵抗を介さずに接続され、他端が共通に接続された複数の非電圧可変型容量素子を設けている。
【0015】
また他の発明は、複数のMOS型容量素子の一端側の電極を共通に接続して共通接続点に制御電圧を印加するようにし、各MOS型容量素子の他端側の電極にバイアス電圧を印加している。
【0016】
そしていずれの発明においても、互いに隣接するバイアス電圧の大きさをしきい値電圧よりも小さく設定していることから、制御電圧を大きくしていくと順次MOS型容量素子の容量値が減少する。従って集積回路上に構成可能で、容量可変比率が大きく、VCOを構成した時に直線性の高い制御電圧と発振周波数の関係を実現できる。またQ値の高い電圧制御可変容量が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の電圧制御可変容量の第1の実施の形態を示す回路図である。
【図2】第1の実施の形態に用いられるMOS型容量素子の構造を示す平面図及び断面図である。
【図3】本発明の電圧可変型容量の制御電圧と容量値の関係を示す特性図である。
【図4】図1の容量値(CM1〜CM10及びC1〜C10)の重み付けを変え、共振回路を接続した場合の並列共振周波数(即ちVCOを構成した場合の発振周波数)の変化量を示す図である。
【図5】第1の実施の形態の変形例に用いられるMOS型容量素子の構造を示す断面図である。
【図6】第1の実施の形態に係る電圧制御可変容量を用いた電圧制御発振器の回路の構成例を示す回路図である。
【図7】第1の実施の形態に係る電圧制御可変容量を用いた電圧制御発振器の回路の構成例を示す回路図である。
【図8】本発明の電圧制御可変容量の第2の実施の形態に用いられるMOS型容量素子の構造を示す断面図である。
【図9】本発明の電圧制御可変容量の第2の実施の形態を示す回路図である。
【図10】第2の実施の形態に係る電圧制御可変容量を用いた電圧制御発振器の回路の構成例を示す回路図である。
【図11】第2の実施の形態に係る電圧制御可変容量を用いた電圧制御発振器の回路の構成例を示す回路図である。
【図12】バラクターダイオード及びMOS型容量素子について、制御電圧と容量値の関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る電圧制御可変容量の回路構成を示している。CM1〜CMnは、MOS型容量素子であり、これらMOS型容量素子CM1〜CMnの一端側の電極MAは共通のノードAに接続されている。MOS型容量素子CM1〜CMnの他端側の電極MBは、非電圧可変型容量素子であるコンデンサC1〜Cnの一端側に夫々接続されている。なおMOS型容量素子CM1、CM2に、代表して電極MA、電極MBの符号を示してある。コンデンサC1〜Cnの他端側は共通のノードBに接続されている。従ってノードAとノードBとの間には、MOS型容量素子CM1とコンデンサC1との直列回路、MOS型容量素子CM2とコンデンサC2との直列回路、‥‥‥MOS型容量素子CMnとコンデンサCnとの直列回路が互いに並列に接続された構成となっている。
【0019】
そして各MOS型容量素子CMkとコンデンサCkとの間には、バイアス電圧(直流電圧)VBkがバイアス電圧供給部1から供給されている。バイアス電圧供給部1の一端側は接地されている。なおkは1からnまでの整数であり、記載を簡略化するために用いている。即ち、MOS型容量素子CM1とコンデンサC1との間には、バイアス電圧VB1が供給され、MOS型容量素子CM2とコンデンサC2との間には、バイアス電圧VB2が供給され、‥‥‥MOS型容量素子CMnとコンデンサCnとの間には、バイアス電圧VBnが供給されているということである。Rは例えば100kΩ以上の抵抗値を持つ抵抗であり、Rの両端の直流電圧値は同じである。バイアス電圧VBkの大きさについては後述する。
【0020】
ここでバイアス電圧供給部1から、各MOS型容量素子CMkとコンデンサCkとの接続点までの間の抵抗(バイアス抵抗R)の抵抗値は、容量のQ値を高くするためにできるだけ大きな値とすることが望ましいが、集積回路上に構成する場合には、面積(=コスト)と特性とのトレードオフで考える必要がある。一般的には、バイアス抵抗Rの抵抗値を発振周波数f0におけるMOS型容量素子CMk及びコンデンサCkの各インピーダンスよりも十分に大きな値に設定する必要がある。前記インピーダンスは、各々1/(2π・f0・CMk)及び1/(2π・f0・Ck)で与えられ、バイアス抵抗Rの抵抗値は、これらインピーダンスのうちの大きい方の値よりも2桁以上大きな値とすることが望ましい。
【0021】
図1の実施形態では、前記複数のMOS型容量素子CM1〜CMnの共通接続されたノードAに図示しない制御電圧供給部から制御電圧を加えることにより、前記MOS型容量素子CM1〜CMnの共通接続点と前記非電圧可変型容量であるコンデンサC1〜Cnの共通接続点間の容量値を制御する電圧制御型可変容量を実現している。この電圧制御型可変容量を水晶発振回路に利用する場合には、ノードBに発振素子である水晶振動子が接続されることになる。
【0022】
また図2はMOS型容量素子CM1〜CMnの構造を示している。2はシリコン(Si)基板であり、このシリコン基板2の上には、シリコン酸化(SiO2)膜40が積層されている。シリコン基板2及びシリコン酸化(SiO2)膜40については、図面をわかりやすくするためにハッチングを記載していない。シリコン基板2の表層部に平面形状が長方形である、N型のウエル層であるNウエル(N−Well)層21が形成されている。このNウエル層21の上にゲート酸化膜3を介して例えばポリシリコン膜からなるゲート電極31が設けられている。ゲート酸化膜3は、Nウエル層21とゲート電極31との間におけるシリコン酸化膜40の薄い部分に相当する。ゲート電極31はNウエル層21よりも少し小さい、平面形状が長方形に形成されている。このゲート電極3の上には、ゲート電極3よりも少し小さい、平面形状が長方形の例えばアルミニウムからなる電極MBが絶縁層(シリコン酸化膜40の一部)を介して、当該ゲート電極3に対向して配置されている。更にこの電極MBの一端部から引き出し電極33が引き出されている。この引き出し電極33には、バイアス電圧が印加され、このバイアス電圧が電極MB及び導電路32を介してゲート電極3に印加されることになる。導電路32は図2(a)からも分かるように、電極MBにおける引き出し電極33側における端部に短辺に沿って互いに間隔をおいて島状に複数例えば3個設けられ、また電極MBにおける引き出し電極33とは反対側における端部に短辺に沿って互いに間隔をおいて島状に複数例えば4個設けられている。
【0023】
またゲート電極3と電極MBとは、当該電極MBの両短辺に沿って複数の導電路32により接続されている。更に電極MBの上に例えばアルミニウムからなる電極5が設けられている。この電極5は、電極MBに対して、シリコン酸化膜40の一部である薄い絶縁層50を介して対向している長方形状の対向電極51と、この対向電極51の全周縁部から斜め上方に延びだしている周縁部52と、周縁部52における、前記引き出し電極33が引き出されている端部側から引き出されている引き出し電極53と、を備えている。
【0024】
一方Nウエル層21における、ゲート電極3から離れた部位には、Nウエル層21よりもN型の不純物濃度が多いN+層からなるコンタクト層であるサブコンタクト部4が設けられている。このサブコンタクト部4は、平面的に見ると、ゲート電極31の短辺側に間隔をおいて並んだ、平面形状が長方形に形成されている。そしてこのサブコンタクト部4の上に、サブコンタクト部4の長さ方向(ゲート電極31の短辺方向)に沿って島状に一列に配列された導電路41が立ち上げられ、これら導電路41の上に面状の例えばアルミニウムからなる電極MAが設けられている。この電極MAはこの例では前記電極MBと同じ高さ位置であり、かつ電極MAとは離間して並べて配置されている。
【0025】
図1と図2との間で符号を照合することで理解は容易であると思われるが、念のため対応関係を述べる。図2においてサブコンタクト部4に接続された電極MAが図1のMOS型容量素子(CM1〜CMn)の下側の電極に相当し、ノードAに接続される。また図2においてゲート電極31に対向する電極MBが図1のMOS型容量素子(CM1〜CMn)の上側の電極に相当し、バイアス電圧供給部1に接続される。
【0026】
更に図1では、電極MBと対向電極5との間に介在しているシリコン酸化膜40の一部である絶縁層50は、非電圧可変型容量素子であるコンデンサC1〜Cnの各容量成分に相当する。即ち図1では、各MOS型容量素子CMkとコンデンサCkとは導電路で接続されているように描いているが、図1のコンデンサCkの下側の電極は、図2の電極MBが兼用しており、図1のコンデンサCkの上側の電極が図2の電極53に相当する。従って電極53はノードBに接続されることになる。
【0027】
次に図1の回路について動作を説明する。既述のようにMOS型容量素子はトランジスタのしきい値電圧付近のバイアスにおいてその容量値 が急激に変化をするという欠点がある。この欠点を解決するために、バイアス電圧VB1〜VBnを夫々MOS型容量素子CM1〜CMnに供給している。そしてVB1〜VBnの電圧の関係をVB1<VB2<VB3<・・・・・<VBn-1 <VBnとし、かつ隣り合うバイアス電圧の差(VB(k+1)−VBk)がMOSトランジスタの閾値電圧(Vt)よりも小さく設定している。ここで図12の実線(1)は、図2に示したMOS型容量素子においてサブコンタクト部4を接地した状態でゲート電極31の電圧を変化させたときの容量変化を示している。この図12から分かるように、サブコンタクト部4側の電圧に対するゲート電極31の電圧の差(ゲート電極31の電圧−サブコンタクト部4側の電圧)がしきい値電圧よりも小さくなると、MOS型容量素子の容量が急激に小さくなる。
【0028】
このためノードAに加える制御電圧をバイアス電圧VB1よりも低い電圧から徐々に上げて行くと、先ずMOS型容量素子MC1の容量値が減少し、ノードA、B間の容量が減少する。図12の場合には、サブコンタクト部4を接地した状態でゲート電極31の電圧を変化させているが、図1の場合には、ゲート電極31に固定バイアスを印加した状態でサブコンタクト部4の電圧を上げている。このことは、図12に対応して説明すれば、グラフ(1)について右から左に移動すること(ゲート電極31の電圧からサブコンタクト部4側の電圧を差し引いた差電圧が小さくなっていくこと)である。従ってこの差電圧が徐々に小さくなっていって、バイアス電圧VB1付近でMOS型容量素子MC1の容量値が減少することになる。
【0029】
そして、隣り合うバイアス電圧の差がMOSトランジスタの閾値電圧(Vt)よりも小さく設定しているため、更にノードAの電圧を上げると、MC1の容量値の変化が急峻な領域から緩やかな領域に以降する前に、MOS型容量素子MC2について前記差電圧がバイアス電圧VB2付近に差し掛かるため、MOS型容量素子MC2の容量値が減少を始める。このように制御電圧(ノードAの電圧)を徐々に大きくしていくことにより、MOS型容量素子MC1〜MCnの容量値が順次急峻に小さくなっていくことから、つまりいわばバトンリレーのように容量値が可変することから、ノードA、Bの間で容量を可変することができる。
【0030】
ここで問題となることは、MOS型容量素子MC1〜MCnと非電圧可変型容量素子であるコンデンサC1〜Cnとの接続点の寄生容量である。この寄生容量はMOS型容量素子と半導体基板の間の固定容量として作用するため、MOS型容量素子の可変比率の減少をもたらす。しかし図2に示すように、MOS型容量素子の上部に非電圧可変型容量素子を配置することにより、詳しくは、コンデンサC1〜Cnの下側の電極とMOS型容量素子のゲート側の電極とを兼用させることにより、前記寄生容量の影響を排除できる。互に兼用している電極は同電位に接続されるため、MOS型容量素子の容量の可変比率の減少を発生させない
図3はこの実施形態の電圧可変型容量の制御電圧と容量値の関係を示している。この図3に示す特性はnを10、VB1を0.5V、VB2を0・65V、VB3を0.8V、VB4を0.95V、VB5を1.1V、VB6を1.25V、VB7を1.4V、VB8を1.55V、VB9を1.7V、VB10を1.95Vに設定し、ノードAに加える制御電圧を-2Vから4Vまで変化させた時のノードA、B間の容量値を示している。この例では、MOS型容量素子CM1〜CM10は同じ容量値を用い、コンデンサC1〜C10も同様に同じ容量値を用いているので、同図に示す様に制御電圧が約0.2Vから1.3Vの間で制御電圧と容量値の関係が線形になっている。
【0031】
ここで特許文献1に記載されている、MOS型トランジスタのソース、ドレインを短絡したMOS型容量素子と、上述実施形態で用いたMOS型容量素子と、について比較する。特許文献1に記載されているMOS型トランジスタは、ゲート端子、ソースドレイン端子、サブ端子の3端子を備えており、サブ端子を接地し、ゲート端子に一定のバイアス電圧を与えると共に、ソースドレイン端子の電圧を変化させることにより、ゲート端子とソースドレイン端子との間の容量を変化させるようにしている。この場合、例えばゲート端子に1Vのバイアス電圧が与えられているとすると、ゲート酸化膜の下に反転層(N)層が形成される。そしてソースドレイン端子の電圧が0Vであるとすると、ソースドレイン層(N層)と前記反転層とは導通状態になるので、ゲート端子とソースドレイン端子との間の容量値はゲート酸化膜で決まる容量値となり、最大容量値となる。ソースドレイン端子はN型半導体であり、サブ端子の層はP型半導体であることから、ソースドレイン端子に負の電圧を印加することはできない。何故なら、ソースドレイン端子の電圧を負側に振ると、ダイオードが順方向になるからである。
【0032】
次にソースドレイン端子の電圧を上げていくと、ソースドレイン層(N型半導体)とサブ端子の層(P型半導体)とで構成されるダイオードが逆バイアスになるので、ソースドレイン層に空乏層が発生し、前記反転層とソースドレイン層とは導通状態ではなくなる。このときの容量値はゲート酸化膜と空乏層とで形成される容量が直列に接続されることになるので、容量値は低下する。更にソースドレイン端子の電圧を上げると空乏層が厚くなり、更に容量値が下がる。
【0033】
従って、ソース、ドレインと前記反転層が導通状態にある時はゲート酸化膜で決まる容量と反転層の寄生抵抗が直列に接続された素子となり、ソース、ドレインに空乏層が発生している状態ではゲート酸化膜で決まる容量、前記反転層の寄生抵抗、前記空乏層で形成される容量の3素子が直列に接続された素子となる。いずれの場合も前記反転層の寄生抵抗が直列に接続された状態になるため、Q値の低下が発生する。
【0034】
これに対して上述実施の形態に係るMOS型容量素子は、サブコンタクト部4に対し、ゲート電極31を負にバイアスした時にキャリア蓄積効果による薄い反転層が形成されることはあるが、この反転層の寄生抵抗はサブコンタクト部4に対して縦方向の抵抗が作用するため、その値はサブコンタクト部4の基板抵抗に対して十分小さいためQ値を低下させない。サブコンタクト部4の基板抵抗はQ値に影響を与えるが、特許文献1のMOS型容量素子よりもその抵抗値は十分に小さいためQ値の高い容量素子を実現できる。
【0035】
更に上述実施の形態によれば次のような効果がある。MOS型容量素子MCkと非電圧可変型容量素子であるコンデンサCkとの直列回路を複数並列に接続し、MOS型容量素子MCkのゲート側にバイアス電圧を印加すると共にサブコンタクト部4側に制御電圧を供給している。そしてMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されている。従ってMOS型容量素子MC1〜MCnの容量値が順次急峻に小さくなっていくことから、更に既述のようにMOS型容量素子MCkの構造の点も含めると、図3に示したように容量値について大きな可変幅を得ることができる。
【0036】
そして制御電圧と容量値とが良好な直線性の関係となっているので、この電圧制御可変容量をVCOに適用しやすいという効果がある。また一般のMOSトランジスタはセルフアラインによりゲート電極をマスクとして用いることから、ソース領域とゲート電極との距離が近く、このため寄生容量が大きくなる。これに対して前記MOS型容量素子はサブコンタクト部4を用いているので、サブコンタクト部4とゲート電極31との距離を大きく取ることができ、このため寄生容量を低減できる利点もある。
本発明では、電極M1はゲート電極3そのものであってもよく、この場合にはゲート電極3に絶縁層を介して対向するように電極M3を設ける構成となる。そしてゲート電極3には引き出し電極を介してバイアス電圧が印加されることになる。
【0037】
上述の例では、MOS型容量素子MC1〜MCnは同じ容量値を用い、コンデンサC1〜C10も同様に同じ容量値を用いているので、図3に示す様に制御電圧が約0.2Vから1.3Vの間で制御電圧と容量値の関係が線形になっている。しかしながらVCOでは制御電圧と容量値の関係を線形にすることが求められる訳ではなく、制御電圧と発振周波数との関係を線形にすることが求められる。水晶振動子を等価回路で表わしたときの直列容量C1、並列容量C0、直列インダクタンスL1と、水晶振動子に接続される電圧可変型容量部の容量CVと、発振回路の発振周波数fとの関係は、f=1/2π(L1・K)1/2で表わされる。電圧可変型容量部は、図1におけるノードA及びB間の容量に相当する。またKは次の式で表わされる。
【0038】
K={C1(C0+CV)}/(C1+C0+CV)
ここでCVとfとは非線形の関係にあり、CVと電圧可変型容量部に加わる制御電圧Vb(図1のノードAに加わる電圧)とについても非線形の関係にある。そこでVbとfとの関係ができるだけ線形(直線性の関係)となるように、例えば以下のような手法を採用することが好ましい。
1)複数個のMOS型容量素子と複数の非電圧可変型容量との一方若しくは両方の容量の重み付けを調整し、制御電圧対容量値の関係を所望の特性に合わせる手法
2)MOS型容量素子と非電圧可変型容量の接続点に与える固定バイアス電圧を調整し、制御電圧対容量値の関係を所望の特性に合わせる手法
3)上記1)と2)を併用する手法
図4は上記1)の手段により電圧可変型容量を構成し、この電圧可変型容量と190MHzの水晶振動子を接続して共振回路を構成した時の制御電圧と並列共振周波数(即ち、VCXOを構成した場合の発振周波数)の周波数変化量の関係を示している。なおMOS型容量素子の容量の重み付けを行うとは、例えばMOS型容量素子のCM1〜CMnの全部の間であるいは一部の間で互いの容量を変える(ゲート酸化膜の面積や厚さなどを変更する)例を挙げることができる。また非電圧可変型容量素子の重み付けを行うとは、容量C1〜Cnの全部の間であるいは一部の間で互いの容量を変える例を挙げることができる。
【0039】
一般的にVCXOでは10%以下の直線性が要求されるのに対し、図4の直線性は十分5%以内に収まっており、良好な線形性が得られている。なお、ここでは、MOS型容量素子は図2に示すようなNウエル層21、ゲート酸化膜31、ポリシリコンゲート電極3によって構成されるMOS構造、MIM(Metal Insulator Metal)構造の非電圧可変型容量を例にして説明をしたが、N型拡散層の種類、ゲート電極の材質はこれに限定される必要はなく、例えばゲート電極がメタルであっても構わない。また、非電圧可変型容量であるコンデンサCkはMIM構造である必要もない。
【0040】
更に、Nウエル層21の代わりに、P型のウエル層であるPウエル層を用いても同様の機能を実現できる。この場合には、サブコンタクト部21は、Pウエル層よりもP型の不純物濃度が多いP+層からなる。そして図1に示すMOS型容量素子CM1〜CM10の上下を入れ替えた構成となる。つまり図2において、サブコンタクト部4に接続された電極MAの上方にコンデンサ容量をなす絶縁層を介してコンデンサC1〜C10の一端側の電極5を対向させ、電極MBの上方側にはコンデンサC1〜C10の一端側の電極5を対向させない構成とする。図5は、第1の実施の形態の変形例に相当する、Pウエル層を用いたMOS型容量素子を示す断面図であり、Pウエル層及びP+層には、夫々符号「21´」及び「4´」を割り当てている。電極MAにはバイアス電圧供給部1からバイアス電圧が与えられ、電極MBはノードAに接続されて制御電圧が印加されることになる。
【0041】
以上において、本発明は、MOS型容量素子のゲート電極31の上に非電圧可変容量を形成する場合に、電極MBを設けずにゲート電極31との間に絶縁層を介して電極51(図2参照)を設けてもよく、この場合には、電極MBを介さずにゲート電極31にバイアス電圧Vkが印加される。
【0042】
図6は本発明の電圧制御可変容量を適用した電圧制御発振器の一例であり、5は水晶振動子、6は差動アンプ、7は制御電圧出力部であり、水晶振動子5の一端側から発振出力が取り出される。水晶振動子5の両端には既述の電圧制御可変容量が2組接続されている。即ち2組の電圧制御可変容量は同じ構成になっている。
【0043】
図7は本発明の電圧制御可変容量を適用した電圧制御発振器の他の例であり、電圧制御発振器に用いられる発振回路としてはコルピッツ回路が用いられている。図7中、100は図1に示されている電圧制御可変容量であり、鎖線の枠内に図1に記載したバイアス抵抗Rが位置している。101は増幅器をなすトランジスタ、102、103は抵抗、104、105はコンデンサ、106は抵抗、VCCは電源電圧、Vbbはトランジスタ101のベースに供給されるバイアス電圧を示している。図7の回路では、ノードBが接地されているが、ノードBを接地しない構成とした場合には、前記バイアス抵抗Rは不要となる。
なお本発明が適用される電圧制御発振器としてはいわゆるLC共振回路を用いたものであってもよい。
【0044】
既述の第1の実施の形態に係る電圧制御可変容量の回路は、MOS型容量素子の下部電極(Nウエル21)とシリコン基板(符号2に相当する部分)との間の寄生容量が大きいことを前提として考えられた構成である。一般的な半導体プロセスでは、MOS型容量素子の下部電極とシリコン基板は、PN分離で電気的に分離されるため、大きな接合容量がMOS型容量素子の下部電極に付く。このため第1の実施の形態では、MOS型容量素子の下部電極に制御電圧を供給するようにし、これにより下部電極の電位が高周波により変わらないように(交流的に固定するように)し、前記寄生容量の影響が無いようにあるいは抑えられるように構成している。
【0045】
一方この構成では、MOS型容量素子の上部電極(ゲート電極)にバイアス電圧VBkを与える必要があるため、この直流バイアスが発振回路側に印加されないようにするために、直流バイアスのカット用として非電圧可変容量であるコンデンサCkをMOS型容量素子CMkに直列に接続する必要がある。従ってコンデンサCkの容量値がMOS型容量素子CMkの容量値よりも大きいほど、可変容量として大きな容量可変比率が得られる。コンデンサCkは、MOS型容量の上部から外れた領域に形成することにより、容量値をより一層大きくできるが、そうするとデバイスが大型化し、またコンデンサCkにおけるMOS型容量側の電極とシリコン基板との間の寄生容量が大きくなるので、得策ではなくなる。このためゲート電極の上にコンデンサCkを設けようとすると、前記容量可変比率の大きさにはある程度の制限が避けられない。
【0046】
一方、SOI(Silicon On Insulator)基板などの酸化膜によりMOS型容量素子の下部電極がシリコン基板に対して電気的に分離できるプロセスでは、MOS型容量素子の下部電極とシリコン基板との間に付く寄生容量は、PN分離と比較すると十分に小さいため、図1の構成を採用しなくても、図1と同様の機能を実現できる。
【0047】
次に本発明の第2の実施の形態に係る電圧制御可変容量について図8〜図11を参照しながら説明する。第2の実施の形態は、MOS型容量素子の下部電極とシリコン基板との間に付く寄生容量がPN分離と比較すると十分に小さい場合に好ましい例である。
図8に示したデバイス構造は、第2の実施形態に用いられるMOS型容量素子を示している。この構造が図2の構造と異なる点は、MOS型容量素子とシリコン基板2との間に絶縁膜30である例えばシリコン酸化膜が形成されている点、及びコンデンサCkが含まれていない点である。図9は、第2の実施形態に係る電圧制御可変容量の回路を示している。図9では、MOS型容量素子MC1〜MCnは、ゲート電極31に接続される電極MBが下側に記載され、Nウエル21に接続される電極MAが上側に記載されている。そして各電極MAを介してMOS型容量MCkの各コンタクト層4を共通に接続し、共通接続点であるノードBに抵抗Rを介して図示しない制御電圧出力部から制御電圧を供給するように構成している。なおノードBは発振回路に接続される側のノードである。
【0048】
この例では、MOS型容量素子MCkの下部電極とシリコン基板2との間に付く寄生容量が小さいことから、このように下部電極側(Nウエル21側)を交流的にフリーな状態(高周波により電位が変わる状態)とすることができる。このためMOS型容量素子MCkのゲート電極31側は交流的に固定することができるので、バイアス電圧供給部1からバイアス抵抗を設けずにゲート電極31にバイアス電圧を供給することができる。この結果非電圧可変容量であるコンデンサCkが不要になる。図9に示す電圧制御可変容量は、各バイアス電圧VBkの供給点であるゲート電極31が交流的にはグランドとなるため、ゲート電極VBkとノードBとの間の容量が制御電圧VCにより制御されることになる。
【0049】
図10は、本発明の電圧制御可変容量を適用した電圧制御発振器の一例である。この例では第2の実施の形態の電圧制御可変容量を2個用いているが、1個用いるようにしてもよい。図10のように構成すれば、バイアス電圧VB1〜VBnの各ノードが交流的な仮想接地点になるため、バイアス電圧供給部1の回路のインピーダンスが高くても(抵抗が入っていても)、理想のバイアス(インピーダンスゼロ)を与えた場合と等価になる利点がある。
【0050】
図11は、第2の実施の形態の電圧制御可変容量を適用した電圧制御発振器の他の例であり、電圧制御発振器に用いられる発振回路としてはコルピッツ回路が用いられている。
【0051】
SOIプロセスを用いた場合であっても、MOS型容量素子MCkの下部電極とシリコン基板2との間に付く寄生容量はゼロではないことから、使用するプロセスにより第1の実施の形態の構成と第2の実施の形態の構成とのどちらが有利かを判断して、両構成を使い分けることが好ましい。またバイアス抵抗R(あるいは102)については、本発明の電圧制御可変容量を適用する回路に対してどのように設けるかによって、必要になったり、あるいは不要になったりする。
【符号の説明】
【0052】
A、B 電圧制御型可変容量の端子部
CM1〜CMn MOS型容量素子
C1からCn 非電圧可変型容量素子であるコンデンサ
VB1〜VBn バイアス電圧
1 バイアス電圧供給部
2 シリコン基板
21 Nウエル
21´ Pウエル
3 ゲート酸化膜
31 ゲート電極
4、4´ サブコンタクト部
5、MA、MB 電極
6 差動アンプ
7 制御電圧出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)シリコン層内に形成されたN型のウエル層と、このウエル層の上にゲート酸化膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極に対して面方向に離間した位置にて前記ウエル層内に形成され、ウエル層よりもN型の不純物濃度が多いN+層からなるコンタクト層と、を備えたMOS型容量素子を複数用いること、
(2)前記複数のMOS型容量素子のコンタクト層の各々が電気的に共通に接続されたこと、
(3)各MOS型容量素子のゲート電極に互いに異なるバイアス電圧を供給するためのバイアス電圧供給部を設けたこと、
(4)一端が夫々前記MOS型容量素子のゲート電極に接続され、他端が共通に接続された複数の非電圧可変型容量素子を設けたこと、
(5)前記MOS型容量素子のウエル層にソース、ドレインを形成してMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されていること、を備え、
前記コンタクト層に制御電圧を供給することにより、前記複数のMOS型容量素子の共通接続点と前記複数の非電圧可変型容量素子の共通接続点との間の容量値が制御されることを特徴とする電圧制御可変容量。
【請求項2】
各非電圧可変型容量素子の容量部分は、ゲート電極に重ねて設けられていることを特徴とする請求項1記載の電圧制御可変容量。
【請求項3】
(1)シリコン層内に形成されたP型のウエル層と、このウエル層の上にゲート酸化膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極に対して面方向に離間した位置にて前記ウエル層内に形成され、ウエル層よりもP型の不純物濃度が多いP+層からなるコンタクト層と、を備えたMOS型容量素子を複数用いること、
(2)前記複数のMOS型容量素子のゲート電極の各々が電気的に共通に接続されたこと、
(3)各MOS型容量素子のコンタクト層に互いに異なるバイアス電圧を供給するためのバイアス電圧供給部を設けたこと、
(4)一端が夫々前記MOS型容量素子のコンタクト層に接続され、他端が共通に接続された複数の非電圧可変型容量素子を設けたこと、
(5)前記MOS型容量素子のウエル層にソース、ドレインを形成してMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されていること、を備え、
前記ゲート電極に制御電圧を供給することにより、前記複数のMOS型容量素子の共通接続点と前記複数の非電圧可変型容量素子の共通接続点との間の容量値が制御されることを特徴とする電圧制御可変容量。
【請求項4】
(1)シリコン層内に形成されたN型のウエル層と、このウエル層の上にゲート酸化膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極に対して面方向に離間した位置にて前記ウエル層内に形成され、ウエル層よりもN型の不純物濃度が多いN+層からなるコンタクト層と、を備えたMOS型容量素子を複数用いること、
(2)前記複数のMOS型容量素子のコンタクト層の各々が電気的に共通に接続されたこと、
(3)各MOS型容量素子のゲート電極に互いに異なるバイアス電圧を供給するためのバイアス電圧供給部を設けたこと、
(4)前記MOS型容量素子のウエル層にソース、ドレインを形成してMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されていること、を備え、
前記コンタクト層に制御電圧を供給することにより、前記複数のMOS型容量素子の共通接続点とMOS型容量素子のゲート電極側との間の容量値が制御されることを特徴とする電圧制御可変容量。
【請求項5】
(1)シリコン層内に形成されたP型のウエル層と、このウエル層の上にゲート酸化膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極に対して面方向に離間した位置にて前記ウエル層内に形成され、ウエル層よりもP型の不純物濃度が多いP+層からなるコンタクト層と、を備えたMOS型容量素子を複数用いること、
(2)前記複数のMOS型容量素子のゲート電極の各々が電気的に共通に接続されたこと、
(3)各MOS型容量素子のコンタクト層に互いに異なるバイアス電圧を供給するためのバイアス電圧供給部を設けたこと、
(4)前記MOS型容量素子のウエル層にソース、ドレインを形成してMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されていること、を備え、
前記ゲート電極に制御電圧を供給することにより、前記複数のMOS型容量素子の共通接続点とMOS型容量素子のコンタクト層側との間の容量値が制御されることを特徴とする電圧制御可変容量。
【請求項6】
電圧制御可変容量を用いた電圧制御発振器において、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の電圧制御可変容量を用いたことを特徴とする電圧制御発振器。
【請求項7】
制御電圧と発振周波数とが比例関係となるように、複数のMOS型容量素子のグループ及び複数の非電圧可変型容量素子のグループの少なくとも一方のグループについて容量の重み付けがされていることを特徴とする請求項6に記載の電圧制御発振器。
【請求項8】
制御電圧と発振周波数とが比例関係となるように、バイアス電圧の重み付けがされていることを特徴とする請求項6または7に記載の電圧制御発振器。
【請求項1】
(1)シリコン層内に形成されたN型のウエル層と、このウエル層の上にゲート酸化膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極に対して面方向に離間した位置にて前記ウエル層内に形成され、ウエル層よりもN型の不純物濃度が多いN+層からなるコンタクト層と、を備えたMOS型容量素子を複数用いること、
(2)前記複数のMOS型容量素子のコンタクト層の各々が電気的に共通に接続されたこと、
(3)各MOS型容量素子のゲート電極に互いに異なるバイアス電圧を供給するためのバイアス電圧供給部を設けたこと、
(4)一端が夫々前記MOS型容量素子のゲート電極に接続され、他端が共通に接続された複数の非電圧可変型容量素子を設けたこと、
(5)前記MOS型容量素子のウエル層にソース、ドレインを形成してMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されていること、を備え、
前記コンタクト層に制御電圧を供給することにより、前記複数のMOS型容量素子の共通接続点と前記複数の非電圧可変型容量素子の共通接続点との間の容量値が制御されることを特徴とする電圧制御可変容量。
【請求項2】
各非電圧可変型容量素子の容量部分は、ゲート電極に重ねて設けられていることを特徴とする請求項1記載の電圧制御可変容量。
【請求項3】
(1)シリコン層内に形成されたP型のウエル層と、このウエル層の上にゲート酸化膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極に対して面方向に離間した位置にて前記ウエル層内に形成され、ウエル層よりもP型の不純物濃度が多いP+層からなるコンタクト層と、を備えたMOS型容量素子を複数用いること、
(2)前記複数のMOS型容量素子のゲート電極の各々が電気的に共通に接続されたこと、
(3)各MOS型容量素子のコンタクト層に互いに異なるバイアス電圧を供給するためのバイアス電圧供給部を設けたこと、
(4)一端が夫々前記MOS型容量素子のコンタクト層に接続され、他端が共通に接続された複数の非電圧可変型容量素子を設けたこと、
(5)前記MOS型容量素子のウエル層にソース、ドレインを形成してMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されていること、を備え、
前記ゲート電極に制御電圧を供給することにより、前記複数のMOS型容量素子の共通接続点と前記複数の非電圧可変型容量素子の共通接続点との間の容量値が制御されることを特徴とする電圧制御可変容量。
【請求項4】
(1)シリコン層内に形成されたN型のウエル層と、このウエル層の上にゲート酸化膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極に対して面方向に離間した位置にて前記ウエル層内に形成され、ウエル層よりもN型の不純物濃度が多いN+層からなるコンタクト層と、を備えたMOS型容量素子を複数用いること、
(2)前記複数のMOS型容量素子のコンタクト層の各々が電気的に共通に接続されたこと、
(3)各MOS型容量素子のゲート電極に互いに異なるバイアス電圧を供給するためのバイアス電圧供給部を設けたこと、
(4)前記MOS型容量素子のウエル層にソース、ドレインを形成してMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されていること、を備え、
前記コンタクト層に制御電圧を供給することにより、前記複数のMOS型容量素子の共通接続点とMOS型容量素子のゲート電極側との間の容量値が制御されることを特徴とする電圧制御可変容量。
【請求項5】
(1)シリコン層内に形成されたP型のウエル層と、このウエル層の上にゲート酸化膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極に対して面方向に離間した位置にて前記ウエル層内に形成され、ウエル層よりもP型の不純物濃度が多いP+層からなるコンタクト層と、を備えたMOS型容量素子を複数用いること、
(2)前記複数のMOS型容量素子のゲート電極の各々が電気的に共通に接続されたこと、
(3)各MOS型容量素子のコンタクト層に互いに異なるバイアス電圧を供給するためのバイアス電圧供給部を設けたこと、
(4)前記MOS型容量素子のウエル層にソース、ドレインを形成してMOS型トランジスタを構成したときのしきい値電圧をVtとすると、大きさが隣合うバイアス電圧同士の差が前記しきい値電圧Vtよりも小さく設定されていること、を備え、
前記ゲート電極に制御電圧を供給することにより、前記複数のMOS型容量素子の共通接続点とMOS型容量素子のコンタクト層側との間の容量値が制御されることを特徴とする電圧制御可変容量。
【請求項6】
電圧制御可変容量を用いた電圧制御発振器において、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の電圧制御可変容量を用いたことを特徴とする電圧制御発振器。
【請求項7】
制御電圧と発振周波数とが比例関係となるように、複数のMOS型容量素子のグループ及び複数の非電圧可変型容量素子のグループの少なくとも一方のグループについて容量の重み付けがされていることを特徴とする請求項6に記載の電圧制御発振器。
【請求項8】
制御電圧と発振周波数とが比例関係となるように、バイアス電圧の重み付けがされていることを特徴とする請求項6または7に記載の電圧制御発振器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−64915(P2012−64915A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274411(P2010−274411)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
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