説明

電子部品装置の製法およびそれに用いる電子部品封止用樹脂組成物シート

【課題】溶融した樹脂組成物の漏れ出しを防ぐ治具を必要とすることなく、簡便にオーバーモールドおよびアンダーフィルが可能な電子部品装置の製法およびそれに用いる電子部品封止用樹脂組成物シートを提供する。
【解決手段】実装基板上の電子部品搭載エリアに合わせ、上記エリアよりもやや小さいか、若干大きい、成形温度における粘度が20〜250Pa・sのシートBを積載し、さらにその上に、上記エリアよりも大きく、上記成形温度における粘度が2000〜50000Pa・sのシートAを積載した後、減圧状態のチャンバー内で上記成形温度に加熱し、上記シートAがシートBおよび電子部品を被覆した状態となるまで垂れ下がらせ、その後、上記チャンバー内の圧力を開放し、上記シートAの被覆により実装基板との間に形成された密閉空間内で、シートBの溶融物による電子部品のアンダーフィルを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便にオーバーモールドおよびアンダーフィルが可能な電子部品装置の製法およびそれに用いる電子部品封止用樹脂組成物シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、実装基板上に設置した半導体素子、コンデンサおよび抵抗素子等の電子部品の封止は、粉末状エポキシ樹脂組成物によるトランスファー封止や、液状エポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂等によるポッティング、ディスペンス、印刷等によって行われている。また、近年、より安価で簡便な封止方法として、樹脂組成物シートを用いたシート封止も提案されている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−327623公報
【特許文献2】特開2003−17979公報
【特許文献3】特開2006−19714公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら樹脂組成物シートを用いた封止では、電子部品上にシート材を設置して加熱プレスすることにより、オーバーモールドおよびアンダーフィルを行う。しかし、封止条件によっては、溶融した樹脂組成物が漏れ出して、実装基板やプレス機等の汚染が生じたり、アンダーフィルの充填不良が起こることがある。このような場合の対処法として、例えば、漏れ出しを防ぐための治具を装着するといったことが行われる。しかしながら、この対処法では、電子部品のサイズや形状により治具を変更する必要があり、生産性に問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、溶融した樹脂組成物の漏れ出しを防ぐ治具を必要とすることなく、簡便にオーバーモールドおよびアンダーフィルが可能な電子部品装置の製法およびそれに用いる電子部品封止用樹脂組成物シートの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するために、本発明は、実装基板上に複数の電子部品を並べて設置した後、上記実装基板における電子部品搭載エリア上に、下記(B)に示す熱硬化性樹脂組成物シート〔シートB〕、およびその上に下記(A)に示す熱硬化性樹脂組成物シート〔シートA〕を積載し、かつ上記電子部品搭載エリアの中心および平面XY方向と、両シートA,Bの中心および平面XY方向とが略合致するよう設置する工程と、この設置状態を保持した上記実装基板を、減圧状態のチャンバー内で70〜150℃から選ばれる成形温度に加熱し、上記シートAの全周の端部を軟化により実装基板に接するまで垂れ下がらせ、シートAの全周で囲われた空間を密閉する工程と、この垂れ下がり状態においてシートBおよび電子部品を被覆した上記シートAをプレスする工程と、上記チャンバー内の圧力を開放し、上記シートAと実装基板との間に形成された密閉空間内で、シートBの溶融物による電子部品のアンダーフィルを行う工程と、上記アンダーフィルを行った後、両シートA,Bの樹脂組成物を熱硬化させ、実装基板上の複数の電子部品が樹脂封止されてなる電子部品装置集合体を得る工程と、この電子部品装置集合体をダイシングし、個々の電子部品装置を得る工程とを備えた電子部品装置の製法を第1の要旨とする。
(A)上記成形温度における粘度が2000〜50000Pa・sであり、かつ、その寸法が下記の条件(1)を満たす熱硬化性樹脂組成物シート。
<条件(1)>
Ax>P+8
Ay>Q+8
〔Ax:シートAのX軸方向長さ(mm),Ay:シートAのY軸方向長さ(mm),P:電子部品搭載エリアのX方向の長さ(mm),Q:電子部品搭載エリアのY方向の長さ(mm)〕
(B)上記成形温度における粘度が20〜250Pa・sであり、かつ、その寸法が下記の条件(2)を満たす熱硬化性樹脂組成物シート。
<条件(2)>
Ax≧Bx>P×0.8
Ay≧By>Q×0.8
〔Bx:シートBのX軸方向長さ(mm),By:シートBのY軸方向長さ(mm),P:電子部品搭載エリアのX方向の長さ(mm),Q:電子部品搭載エリアのY方向の長さ(mm),Ax:シートAのX軸方向長さ(mm),Ay:シートAのY軸方向長さ(mm)〕
【0007】
また、本発明は、上記第1の要旨の製法に用いられる樹脂組成物シートであって、上記シートAとシートBとからなるシートセットである電子部品封止用樹脂組成物シートを第2の要旨とし、上記シートAとシートBとが積層一体化されてなる電子部品封止用樹脂組成物シートを第3の要旨とする。
【0008】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、上記のように、電子部品封止用の熱硬化性樹脂組成物シートとして、70〜150℃から選ばれる成形温度(加熱温度)において、その粘度、および寸法が、互いに異なる二枚のシートA,B(もしくは、シートA,Bが積層一体化されたもの)を用いることを想起した。すなわち、実装基板上の電子部品搭載エリアに合わせ、上記エリアよりもやや小さいか、若干大きいシートBを積載し、さらにその上に、上記エリアよりも大きいシートAを積載し、減圧状態のチャンバー内で上記成形温度に加熱すると、シートAの全周の端部が軟化により実装基板に接するまで垂れ下がって、シートAがシートBおよび電子部品を被覆した状態となる(図3(iv)参照)。このとき、上記シートAは、その被覆により、実装基板との間に密閉空間を形成し、その密閉空間内で、シートBは低粘度のゲル状となっている。この状態で、上記シートAの上からプレス板でプレスし、さらにチャンバー内の圧力を開放すると、上記密閉空間内で、シートBが溶融物となって、実装基板と電子部品のギャップに入り込み、電子部品のアンダーフィルがなされるようになる。また、シートAは、上記被覆により、シートBの溶融物の漏れ出しを防ぐ治具の役割を果たしつつ、オーバーモールドとしての役割も果たす。これにより、樹脂組成物の漏れ出しを防ぐ治具を必要とすることなく、簡便にオーバーモールドおよびアンダーフィルが達成できることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明の電子部品装置の製法は、実装基板上の電子部品搭載エリアに合わせ、上記エリアよりもやや小さいか、若干大きい、成形温度(70〜150℃から選ばれる温度)における粘度が20〜250Pa・sのシートBを積載し、さらにその上に、上記エリアよりも大きく、上記成形温度における粘度が2000〜50000Pa・sのシートAを積載した後、減圧状態のチャンバー内で上記成形温度に加熱し、上記シートAがシートBおよび電子部品を被覆した状態となるまで垂れ下がらせ、その後、上記チャンバー内の圧力を開放し、上記シートAの被覆により実装基板との間に形成された密閉空間内で、シートBの溶融物による電子部品のアンダーフィルを行っている。そのため、樹脂組成物の漏れ出しを防ぐ治具を使用しなくとも、簡便にオーバーモールドおよびアンダーフィルを達成することができる。これにより、溶融した樹脂組成物の漏れ出しによる実装基板やプレス機等の汚染や、アンダーフィルの充填性不良を解消することができる。
【0010】
そして、電子部品封止用樹脂組成物シートが、上記シートAとシートBとが積層一体化されてなるものであると、取り扱い等の観点から、上記製法において、より好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明において長さ等が規定された箇所を具体的に示すための説明図であり、(i)はシートAの斜視図、(ii)はシートBの斜視図、(iii)は電子部品の側面図、(iv)はn個の電子部品を並べて設置した実装基板の平面図である。
【図2】本発明の電子部品装置の製法における樹脂封止工程を示す説明図であり、(i)は実装基板に電子部品を搭載した状態、(ii)は電子部品上にシートA,Bを積載した状態、(iii)は減圧状態のチャンバー内で成形温度に加熱を行っている状態を示す図である。
【図3】本発明の電子部品装置の製法における樹脂封止工程を示す説明図であり、(iv)は図2(iii)の減圧および加熱によりシートAの端部が実装基板に接するまで垂れ下がった状態、(v)はシートAの上からプレス板でプレスした状態、(vi)はチャンバー内の圧力を開放し、電子部品のアンダーフィルがなされ、更に熱硬化がなされた状態、(vii)はプレス板が外され、電子部品装置集合体が製造された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0013】
本発明の電子部品装置の製法は、先に述べたように、実装基板上に複数の電子部品を並べて設置した後、上記実装基板における電子部品搭載エリア上に、シートB、およびその上にシートAを積載し、かつ上記電子部品搭載エリアの中心および平面XY方向と、両シートA,Bの中心および平面XY方向とが略合致するよう設置する工程と、この設置状態を保持した上記実装基板を、減圧状態のチャンバー内で70〜150℃から選ばれる成形温度に加熱し、上記シートAの全周の端部を軟化により実装基板に接するまで垂れ下がらせ、シートAの全周で囲われた空間を密閉する工程と、この垂れ下がり状態においてシートBおよび電子部品を被覆した上記シートAをプレスする工程と、上記チャンバー内の圧力を開放し、上記シートAと実装基板との間に形成された密閉空間内で、シートBの溶融物による電子部品のアンダーフィルを行う工程と、上記アンダーフィルを行った後、両シートA,Bの樹脂組成物を熱硬化させ、実装基板上の複数の電子部品が樹脂封止されてなる電子部品装置集合体を得る工程と、この電子部品装置集合体をダイシングし、個々の電子部品装置を得る工程とを備えている。なお、上記電子部品搭載エリアの平面XY方向とは、電子部品搭載エリア平面上で任意に決められるX方向と、上記平面上でこれに直行するY方向とを示すものである。両シートA,Bの平面XY方向も、同様の趣旨である。また、「上記電子部品搭載エリアの中心および平面XY方向と、両シートA,Bの中心および平面XY方向とが略合致するよう設置」と規定されていることから、本発明はこの設置に関し、中心および平面XY方向の若干のずれも含める趣旨である。
【0014】
そして、上記シートAとしては、先述のようにして選ばれた成形温度(70〜150℃)における粘度が、2000〜50000Pa・sであり、かつ、その寸法が下記の条件(1)を満たす熱硬化性樹脂組成物シートが用いられる。上記寸法条件は、生産性よく封止できるという観点から、好ましくは、下記の条件(1′)である。すなわち、このような特定の粘度およびサイズを有するシートAを、先に述べた本発明の電子部品装置の製法に示すように用いると、シートAが上記のように垂れ下がってシートBの溶融物の漏れ出しを防ぐ機能を果たし、それにより、漏れ出しを防ぐ治具を必要とすることなく、電子部品の封止が可能となる。なお、上記シートAの、上記成形温度における粘度が、2000Pa・s未満であると、シートA自体が溶融して樹脂漏れを起こすおそれがあり、50000Pa・sを超えると、シートBの溶融物の漏れ出しを防ぐ治具としての機能の果たせず、アンダーフィル充填不良の傾向がみられる。そのため、上記のように粘度を規定している。また、上記温度条件における粘度は、一般的なレオメーターを用いて測定すればよいが、例えば、回転型粘度計(HAKKE社製、レオストレスRS1)を用い、ギャップ100μm、回転コーン直径20mm、回転速度10s-1という条件で測定することにより導き出すことができる。
【0015】
<条件(1)>
Ax>P+8
Ay>Q+8
〔Ax:シートAのX軸方向長さ(mm),Ay:シートAのY軸方向長さ(mm),P:電子部品搭載エリアのX方向の長さ(mm),Q:電子部品搭載エリアのY方向の長さ(mm)〕
【0016】
<条件(1′)>
t1+t2+40+P>Ax>t1+t2+8+P
t1+t2+40+Q>Ay>t1+t2+8+Q
(t1+0.5)−〔(n×Vc)/(P×Q)〕>Az>t1−〔(n×Vc)/(P×Q)〕
〔Ax:シートAのX軸方向長さ(mm),Ay:シートAのY軸方向長さ(mm),Az:シートAの厚み(mm),t1:電子部品の厚み(mm),t2:電子部品の接続用電極部高さ(mm),P:電子部品搭載エリアのX方向の長さ(mm),Q:電子部品搭載エリアのY方向の長さ(mm),Vc:電子部品1個あたりの体積(mm3),n:封止する電子部品の個数〕
【0017】
また、上記シートBとしては、先述のようにして選ばれた成形温度(70〜150℃)における粘度が、20〜250Pa・sであり、かつ、その寸法が下記の条件(2)を満たす熱硬化性樹脂組成物シートが用いられる。上記寸法条件は、生産性よく封止できるという観点から、好ましくは、下記の条件(2′)である。すなわち、このような特定の粘度およびサイズを有するシートBを、先に述べた本発明の電子部品装置の製法に示すように用いると、実装基板と電子部品の狭ギャップにもシートBの溶融物が入り込み、アンダーフィルが容易となる。なお、上記シートBの、上記成形温度における粘度が、20Pa・s未満であると、シートBがタック性を有するようになるため取扱いが困難になる傾向がみられ、250Pa・sを超えると、アンダーフィル充填が因難となる傾向がみられる。そのため、上記のように粘度を規定している。また、上記温度条件における粘度は、シートAのときと同様にして測定することにより導き出すことができる。
【0018】
<条件(2)>
Ax≧Bx>P×0.8
Ay≧By>Q×0.8
〔Bx:シートBのX軸方向長さ(mm),By:シートBのY軸方向長さ(mm),P:電子部品搭載エリアのX方向の長さ(mm),Q:電子部品搭載エリアのY方向の長さ(mm),Ax:シートAのX軸方向長さ(mm),Ay:シートAのY軸方向長さ(mm)〕
【0019】
<条件(2′)>
Ax≧Bx>P×0.8
Ay≧By>Q×0.8
{〔P×Q×(t1+t2)−n(Vc+Vb)〕/(P×Q)}+0.1>Bz>(t2×P×Q−Vb×n)/(P×Q)
〔Bx:シートBのX軸方向長さ(mm),By:シートBのY軸方向長さ(mm),Bz:シートBの厚み(mm),t1:電子部品の厚み(mm),t2:電子部品の接続用電極部高さ(mm),P:電子部品搭載エリアのX方向の長さ(mm),Q:電子部品搭載エリアのY方向の長さ(mm),Vb:電子部品1個に搭載されているバンプ(接続用電極部)の総体積(mm3),Vc:チップ1個あたりの体積(mm3),n:封止する電子部品の個数),Ax:シートAのX軸方向長さ(mm),Ay:シートAのY軸方向長さ(mm)〕
【0020】
ここで、図1は、上記条件(1)〜(2′)において長さ等が規定された箇所を具体的に示すための説明図であり、(i)はシートAの斜視図、(ii)はシートBの斜視図、(iii)は電子部品の側面図、(iv)はn個の電子部品を並べて設置した実装基板の平面図である。なお、図における各符号は、上記条件(1)〜(2′)の記載に対応している。また、図において、3は実装基板、5は電子部品、6は電子部品の接続用電極部(バンプ)、7はシートA、8はシートBを示す。
【0021】
ところで、上記シートAは、先に述べたように、70〜150℃から選ばれる成形温度
における粘度が特定の範囲であり、かつそのサイズが特定の条件を満たす熱硬化性樹脂組成物シートであれば、その材料は、特に限定はないが、好ましくは、下記(a)〜(d)成分を含有するエポキシ樹脂組成物が用いられる。
(a)25℃における粘度が1.0〜10.0Pa・sであるエポキシ樹脂。
(b)硬化剤。
(c)下記の(c1)〜(c3)成分からなり、(c2)および(c3)成分の合計含有量が、(c1)成分100重量部に対して2〜60重量部の範囲内である無機質充填剤。
(c1)平均粒径が5〜20μmの無機質充填剤。
(c2)平均粒径が1〜3μmの無機質充填剤。
(c3)平均粒径が0.3〜0.8μmの無機質充填剤。
(d)可撓性付与剤。
【0022】
上記(a)成分のエポキシ樹脂としては、25℃における粘度が1.0〜10.0Pa・sである、ビスフェノールA型エポキシ樹脂,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,グリシジルアミン型エポキシ樹脂,グリシジルエステル型エポキシ樹脂等があげられる。なかでも、樹脂組成物の硬化性の観点から、上記粘度を有する、ビスフェノールA型エポキシ樹脂,ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。なお、市販品では、EXA−850CRP(DIC社製)、EPON−827、YL−983U(以上、三菱化学社製)等が、上記(a)成分のエポキシ樹脂として入手可能である。また、上記(a)成分のエポキシ樹脂の粘度は、一般的なレオメーターを用いて測定すればよいが、例えば、回転型粘度計(HAKKE社製、レオストレスRS1)を用い、ギャップ100μm、回転コーン直径20mm、回転速度10s-1という条件で測定することにより導き出すことができる。
【0023】
上記シートAを構成するエポキシ樹脂組成物中の(a)成分の含有量は、シートAの粘度調整およびその樹脂組成物硬化体の信頼性の観点から、上記樹脂組成物の8〜17重量%が好ましく、より好ましくは9〜12重量%である。
【0024】
なお、(a)成分以外のエポキシ樹脂を併用する場合は、(a)成分が全エポキシ樹脂の80重量%以上となるようにすることが好ましい。
【0025】
上記(b)成分の硬化剤には、(a)成分のエポキシ樹脂と硬化反応を生起する成分が用いられる。このような硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、酸無水物、アミン化合物があげられる。なかでも、(a)成分との反応性の観点から、フェノール樹脂が好ましく、シートAの粘度調整の観点から、軟化点が60〜130℃のフェノール樹脂がより好ましく、樹脂組成物硬化体の信頼性の観点から、フェノールノボラック樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂がさらに好ましい。
【0026】
上記(b)成分がフェノール樹脂の場合、その含有量は、樹脂組成物硬化体の信頼性の観点から、(a)成分中のエポキシ基1当量に対して、(b)成分中の水酸基の合計が0.8〜1.2当量となるように配合することが好ましく、0.9〜1.1当量がより好ましい。
【0027】
上記(a)および(b)成分とともに用いられる、(c)成分の無機質充填剤としては、先に述べたように、平均粒径が異なる無機質充填剤〔平均粒径が5〜20μmの無機質充填剤(c1),平均粒径が1〜3μmの無機質充填剤(c2),平均粒径が0.3〜0.8μmの無機質充填剤(c3)〕からなり、(c2)および(c3)成分の合計含有量が、(c1)成分100重量部に対して、2〜60重量部の範囲内であるものが用いられる。なお、無機質充填剤の平均粒径は、例えば、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することにより導き出すことができる。
【0028】
そして、上記(c)成分の無機質充填剤には、その材質が、例えば、石英ガラス、タルク、シリカ(溶融シリカや結晶性シリカ等)、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素等の粉末からなるものが用いられる。なかでも、無機質充填剤の分散性およびシートAの成形性の観点から、シリカが好ましく、樹脂組成物の溶融流動性の観点から、球状溶融シリカがより好ましい。
【0029】
上記シートAを構成するエポキシ樹脂組成物中における(c)成分の含有量は、樹脂組成物硬化体の耐湿性の観点から、上記樹脂組成物の70〜85重量%が好ましく、78〜83重量%がより好ましい。
【0030】
上記(a)〜(c)成分とともに用いられる、(d)成分の可撓性付与剤としては、シートAに柔軟性および可撓性を付与するものが用いられる。このような作用を奏するものとして、例えば、ポリアクリル酸エステル等の各種アクリル系共重合体、スチレンアクリレート系共重合体、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム等のゴム質重合体を用いることができる。なかでも、(a)成分へ分散させやすく、また(a)成分との反応性も高いという観点から、アクリル系共重合体を用いることが好ましい。そして、これらの可撓性付与剤は、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0031】
なお、上記アクリル系共重合体は、例えば、所定の混合比にしたアクリルモノマー混合物を、常法によってラジカル重合することにより合成することができる。ここで、ラジカル重合の方法としては、有機溶剤を溶媒に行う溶液重合法や、水中に原料モノマーを分散させながら重合を行う懸濁重合法が行われる。その際に用いる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アソビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、その他のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイドおよびメチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が用いられる。なお、懸濁重合の場合は、例えばポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールのような分散剤を加えることが望ましい。
【0032】
上記シートAを構成するエポキシ樹脂組成物中における(d)成分の含有量は、シートAの柔軟性および可撓性ならびに溶融粘度の観点から、上記樹脂組成物の1〜10重量%であることが好ましい。なお、上記樹脂組成物には、(a)〜(d)成分のほか、必要に応じて、硬化促進剤、難燃剤、カーボンブラックをはじめとする顔料等、他の添加剤を適宜配合することができる。
【0033】
一方、上記シートAとともに用いられるシートBは、先に述べたように、70〜150℃から選ばれる成形温度における粘度が特定の範囲であり、かつそのサイズが特定の条件を満たす熱硬化性樹脂組成物シートであれば、その材料は、特に限定はないが、好ましくは、下記(e)〜(h)成分を含有するエポキシ樹脂組成物が用いられる。
(e)軟化点が60〜130℃のエポキシ樹脂および液状エポキシ樹脂の混合物。
(f)硬化剤。
(g)平均粒径が0.3〜3μmの無機質充填剤。
(h)可撓性付与剤。
【0034】
上記(e)成分における、軟化点が60〜130℃のエポキシ樹脂としては、例えば、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂であって、上記軟化点を有するものがあげられる。なお、市販品では、EPPN−501HY、EOCN−1020、BREN−105(以上、日本化薬社製)、KI−3000、KI−5000、ESN−175S(以上、新日鐵化学社製)、HP−7200、EXA−4700(以上、DIC社製)、YX−4000H、YX−4000K(以上、三菱化学社製)等が、軟化点が60〜130℃のエポキシ樹脂として入手可能である。
【0035】
また、上記(e)成分における液状エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂であって、25℃において液状のものがあげられる。なお、市販品では、YL−980、JER−827、JER−828、YX−8000(以上、三菱化学社製)、YD−8125、ZX−1059(以上、新日鐵化学社製)、EPICLON(登録商標)−830、EPICLON(登録商標)−850(以上、DIC社製)等が、上記液状エポキシ樹脂として入手可能である。
【0036】
そして、上記(e)成分における、軟化点が60〜130℃のエポキシ樹脂の含有量は、シートBのタック性の観点から、液状エポキシ樹脂100重量部に対して20〜100重量部が好ましく、より好ましくは、30〜60重量部の範囲である。
【0037】
そして、上記シートBを構成するエポキシ樹脂組成物中における(e)成分の含有量は、シートBの成形性の観点から、上記樹脂組成物の20〜35重量%が好ましく、より好ましくは25〜30重量%である。
【0038】
上記(f)成分の硬化剤には、(e)成分のエポキシ樹脂と硬化反応を生起する成分が用いられる。このような硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、酸無水物、アミン化合物があげられる。なかでも、(e)成分との反応性の観点から、フェノール樹脂が好ましく、シートBの成形性の観点から、フェノールノボラック樹脂、フェノールビフェニレン樹脂、フェノールアラルキル樹脂、フェノールナフトール樹脂等のフェノール樹脂がより好ましく、樹脂組成物硬化体の信頼性の観点から、フェノールノボラック樹脂またはフェノールアラルキル樹脂がさらに好ましい。
【0039】
上記(f)成分がフェノール樹脂の場合、その含有量は、樹脂組成物硬化体の信頼性の観点から、(e)成分中のエポキシ基1当量に対して、(f)成分中の水酸基の合計が0.8〜1.2当量となるように配合することが好ましく、0.9〜1.1当量がより好ましい。
【0040】
上記(e)および(f)成分とともに用いられる、(g)成分の無機質充填剤には、その平均粒径が0.3〜3μmのものが用いられる。なお、上記(g)成分の平均粒径は、前記(c)成分の無機質充填剤と同様にして導き出すことができる。上記無機質充填剤には、その材質が、例えば、石英ガラス、タルク、シリカ(溶融シリカや結晶性シリカ等)、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素等の粉末からなるものが用いられる。なかでも、無機質充填剤の分散性およびシートBの成形性の観点から、シリカが好ましく、樹脂組成物の溶融流動性の観点から、球状溶融シリカがより好ましい。また、無機質充填剤の分散性の観点から、あらかじめシランカップリング剤で表面処理したものを用いることがさらに好ましい。シリカカップリング剤は、通常用いられるものであれば、特に限定されるものではない。
【0041】
上記シートBを構成するエポキシ樹脂組成物中における(g)成分の含有量は、樹脂組成物硬化体の信頼性の観点から、上記樹脂組成物の30〜80重量%が好ましく、シートBのタック性および樹脂組成物の流動性の観点から、上記樹脂組成物の50〜65重量%がより好ましい。
【0042】
上記(e)〜(g)成分とともに用いられる、(h)成分の可撓性付与剤としては、シートBに柔軟性および可撓性を付与するものが用いられる。このような作用を奏するものとしては、前記(d)成分の可撓性付与剤と同様のものが用いられる。すなわち、ポリアクリル酸エステル等の各種アクリル系共重合体、スチレンアクリレート系共重合体、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、イソブレンゴム、アクリロニトリルゴム等のゴム質重合体を用いることができる。なかでも、(e)成分へ分散させやすく、また(e)成分との反応性も高いという観点から、アクリル系共重合体を用いることが好ましい。そして、これらの可撓性付与剤は、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0043】
上記シートBを構成するエポキシ樹脂組成物中における(h)成分の含有量は、シートBの柔軟性および可撓性ならびに溶融粘度の観点から、上記樹脂組成物の4〜9重量%であることが好ましい。なお、上記樹脂組成物には、(e)〜(h)成分のほか、必要に応じて、硬化促進剤、難燃剤、カーボンブラックをはじめとする顔料等、他の添加剤を適宜配合することができる。
【0044】
上記シートAおよびシートBは、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0045】
すなわち、まず、シートAおよびシートBの材料である樹脂組成物を、それぞれ、その各配合成分が均一に分散混合されるまで混合し、調製する。そして、上記調製された樹脂組成物を、シート状に形成する。この形成方法としては、例えば、上記調製された樹脂組成物を押出成形してシート状に形成する方法や、上記調製された樹脂組成物を有機溶剤等に溶解または分散してワニスを調製し、このワニスを、ポリエステル等の基材上に塗工し乾燥させることにより樹脂組成物シートを得る方法等があげられる。なかでも、均一な厚みのシートを簡便に得ることができるという観点から、ワニスの塗工による形成方法が好ましい。なお、上記のように形成された樹脂組成物シートの表面には、必要に応じ、樹脂組成物シートの表面を保護するためにポリエステルフィルム等の剥離シートを貼り合わせ、封止時に剥離するようにしてもよい。
【0046】
上記ワニスを調製する際に用いる有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等を用いることができる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。また、通常、ワニスの固形分濃度が30〜60重量%の範囲となるように有機溶剤を用いることが好ましい。
【0047】
有機溶剤乾燥後のシートの厚みは、厚みの均一性と残存溶剤量の観点から、5〜100μmに設定することが好ましく、より好ましくは20〜70μmである。このようにして得られた樹脂組成物シートは、必要により所望の厚みとなるように積層して使用してもよい。すなわち、上記シートAおよびシートBには、単層構造の上記樹脂組成物シートを使用してもよいし、上記樹脂組成物シートを2層以上の多層構造に積層してなる積層体を使用してもよい。ただし、上記シートAは、そのサイズが、前記条件(1)(好ましくは、前記条件(1′))を満たす必要があり、上記シートBは、そのサイズが、前記条件(2)(好ましくは、前記条件(2′))を満たす必要があるため、そのサイズに調整する(図1の(i)および(ii)参照)。
【0048】
そして、上記のように得られたシートAおよびシートBを用いた、本発明の電子部品装置の製法における樹脂封止工程は、例えば、図2および図3に示すようにして行われる。
【0049】
すなわち、まず、図2(i)に示すように、実装基板3上に、電子部品5を、実装基板の接続用電極部(図示せず)と電子部品の接続用電極部6とが接続するように設置する。なお、図において、1はプレス上板、2はチャンバー、4はプレス下板を示す。
【0050】
つぎに、図2(ii)に示すように、シートA(7),シートB(8)からなる電子部品封止用樹脂組成物シートを、電子部品5上に積載する。ここで、シートA,Bは、先に述べた本発明の電子部品装置の製法に示す条件に従い、図示のように、電子部品を覆うように設置する必要がある。このとき、電子部品を覆うようにシートBを設置した後に、シートBを覆うようにシートAを設置してもよいし、あらかじめシートBとシートAとを張り合わせた状態で設置してもよい。特に、本発明の製法に用いられる上記電子部品封止用樹脂組成物シートが、あらかじめ上記シートAとシートBとを張り合わせた状態で積層一体化されてなるものであると、取り扱い等の観点から、上記製法において、より好ましく用いることができる。
【0051】
続いて、図2(iii)に示すように、プレス上板1の移動により成形装置のチャンバー2内を密閉した後、チャンバー2内を減圧状態にし(図示の矢印方向に脱気し)、70〜150℃から選ばれる成形温度に加熱する。これにより、上記シートA(7)の粘度が2000〜50000Pa・sとなって、図3(iv)に示すように、シートA(7)の端部が実装基板3に接するまで垂れ下がる。この垂れ下がりにより、シートA(7)がシートB(8)および電子部品5を被覆した状態となる。このとき、図示のように、上記シートA(7)は、その被覆により、実装基板3との間に密閉空間を形成し、その密閉空間内で、シートB(8)は低粘度(20〜250Pa・s)のゲル状となっている。なお、上記チャンバー2内の減圧を、0.01〜5kPaの範囲で行うことが、この工程を良好に進行させる観点から好ましい。
【0052】
この状態で、図3(v)に示すように、上記シートAの上からプレス上板1でプレスする。上記プレスは、シートA(7)と電子部品5とを接着させる観点から、50〜1000kPaの圧力で行うことが好ましい。その際、温度は70〜150℃から選ばれる成形温度のままに設定し、プレス時間は1〜5分が好ましい。
【0053】
ついで、図3(vi)に示すように、チャンバー2内の圧力を開放する(バルブの開放により図示の矢印方向に空気が流入する)と、上記シートA(7)と実装基板3との間の密閉空間内で、シートB(8)が溶融物となって、実装基板3と電子部品5のギャップに入り込み、接続用電極部(バンプ)6同士の間に中空を形成することなく、電子部品5のアンダーフィルがなされるようになる。このとき、シートA(7)は、上記被覆により、シートB(8)の溶融物の漏れ出しを防ぐ治具の役割を果たしつつ、オーバーモールドとしての役割も果たす。これにより、樹脂組成物の漏れ出しを防ぐ治具を必要とすることなく、簡便にオーバーモールドおよびアンダーフィルが達成できる。なお、上記アンダーフィルの際、図3(vi)に示すように、プレスした状態のままチャンバー2内の圧力を開放することが、電子部品5の反りを抑制する観点から好ましい。
【0054】
そして、上記アンダーフィルを行った後、両シートA,Bが熱硬化する温度(150℃を超える温度。好ましくは、155〜185℃の熱硬化温度)に加熱し、封止用樹脂組成物(両シートA,Bの溶融物)を熱硬化させ、その硬化体からなる封止樹脂層9を形成する。これにより、実装基板3上の複数の電子部品5が樹脂封止されてなる電子部品装置集合体を得ることができる。なお、上記熱硬化は、図3(vii)に示すように、プレス上板1の圧力から開放した状態で行ってもよいが、図3(vi)のように、プレスした状態のまま熱硬化させると、電子部品装置集合体の反りが抑制されるため、好ましい。また、速やかに、かつ完全に熱硬化を進行させるため、加熱時問は1〜3時間であることが好ましい。
【0055】
このようにして、樹脂封止工程を経て得られた上記電子部品装置集合体は、最後に、その樹脂封止面にダイシングテープを適宜貼り、ダイシングすることにより、個々の電子部品装置を得ることができる(図示せず)。
【実施例】
【0056】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0057】
まず、下記に示す各成分材料を準備した。
【0058】
〔エポキシ樹脂I〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製、EXA−850CRP。25℃における粘度:4.4Pa・s、エポキシ当量:171)
【0059】
〔エポキシ樹脂II〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、YL−980。液状、エポキシ当量:186)
【0060】
〔エポキシ樹脂III〕
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(日本化薬社製、EPPN−501HY。軟化点;60℃、エポキシ当量:169)
【0061】
〔硬化剤I〕
フェノールノボラック樹脂(明和化成社製、ND−564。水酸基当量:107、軟化点:65℃)
【0062】
〔硬化剤II〕
フェノールノボラック樹脂(群栄化学工業社製、GS−180。水酸基当量:105、軟化点:83℃)
【0063】
〔硬化剤III〕
フェノールアラルキル樹脂(明和化成社製、MEHC−7800S。水酸基当量:174、軟化点:76℃)
【0064】
〔無機質充填剤I〕
平均粒径5.8μm、最大粒径24μmの球状溶融シリカ(電気化学工業社製、FB−7SDC)
【0065】
〔無機質充填剤II〕
平均粒径1.5μm、最大粒径5.1μmの球状溶融シリカ(アドマテックス社製、SO−32R)
【0066】
〔無機質充填剤III〕
平均粒径0.5μm、最大粒径1.5μmの球状溶融シリカ(アドマテックス社製、SO−25R)
【0067】
〔無機質充填剤IV〕
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランで表面処理した無機質充填剤III。
【0068】
〔硬化促進剤I〕
テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート
【0069】
〔硬化促進剤II〕
2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製、2PHZ−PW)
【0070】
〔可撓性付与剤〕
アクリル系共重合体(ブチルアクリレート:アクリロニトリル:グリシジルメタクリレート=85:8:7重量%からなる共重合体。重量平均分子量80万)
【0071】
なお、上記アクリル系共重合体は、次のように合成した。すなわち、ブチルアクリレート、アクリロニトリル、グリシジルメタクリレートを、85:8:7の仕込み重量比率で配合し、これに、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを配合し、メチルエチルケトン中で窒素気流下、70℃で5時間と80℃で1時間のラジカル重合を行うことにより、上記アクリル系共重合体を得た。
【0072】
〔樹脂シート1〜15の作製〕
上記各成分材料を、下記の表1および表2に示す割合で分散混合し、これに各成分材料の合計量と同量のメチルエチルケトンを加えて、塗工用ワニスを調整した。そして、上記ワニスを、厚み38μmのポリエステルフィルム(三菱樹脂社製、MRF−38)の剥離処理面上に、コンマコーターにより塗工し、乾燥することにより、厚みが50μmの樹脂組成物シートを得た。ついで、別途用意したポリエステルフィルムの剥離処理面を、上記樹脂組成物シートに貼り合わせて巻き取った。その後、ポリエステルフィルムを適宜剥離しながら、ロールラミネーターにより上記樹脂組成物シートを積層することにより、所望の厚みの樹脂組成物シート(樹脂シート1〜15)を得た。なお、上記のようにして得られた樹脂組成物シートの粘度を、回転型粘度計(HAKKE社製、レオストレスRS1)を用い、測定温度130℃、ギャップ100μm、回転コーン直径20mm、回転速度10s-1という条件で測定した。この測定結果も、下記の表1および表2に併せて示した。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
〔実施例1〜14、比較例1〜9〕
電子部品であるSiチップ(縦10mm×横10mm×厚み(t1)0.2mm。電子部品1個あたりの体積(Vc)は20mm3)に、接続用電極部であるバンプ(直径0.5mm、高さ(t2)0.1mm)を52個設けた(電子部品1個に搭載されているバンプの総体積(Vb)は、1.0205mm3)。実装基板であるエポキシ基板上(縦70mm×横70mm)に、このバンプ付きSiチップを、1mm間隔の碁盤目状に4個配列設置した(封止する電子部品の個数(n)は4個であり、電子部品搭載エリアのX方向の長さ(P)は21mm、電子部品搭載エリアのY方向の長さ(Q)は21mmである)(図1(iii),(iv)参照)。
【0076】
続いて、シートAおよびシートBに該当する樹脂シートを準備した。なお、上記樹脂シートは、後記の表3〜5に記載のサイズおよび組成のシートであり、表3〜5の「組成」の欄に記載のシート番号は、表1,2に記載のシート番号を指す。また、シートAに該当する樹脂シートの寸法が、本発明に規定の<条件(1)>を満たすものは、表3〜5の「条件(1)」の欄に○、<条件(1)>を満たさないものは×と表記した。また、シートBに該当する樹脂シートの寸法が、本発明に規定の<条件(2)>を満たすものは、表3〜5の「条件(2)」の欄に○、<条件(2)>を満たさないものは×と表記した。
【0077】
そして、上記シートAおよびシートBに該当する樹脂シートの中心および平面XY方向と、電子部品搭載エリアの中心および平面XY方向とを合わせ、電子部品搭載エリアを覆うように電子部品上に配置した。上記配置の際、シートAおよびシートBが積層一体化したものを配置し、かつ、そのシートB側が電子部品に接するよう配置した。その後、成形装置内のチャンバーを、2kPaまで減圧し、さらに、プレス下板および上板に設置されたヒーターにより130℃に加熱した。ついで、チャンバーを減圧状態に保ったまま、プレス上板により、温度130℃、圧力98kPaで3分問プレスし、その後チャンバーの圧力を開放することにより、実装基板と電子部品のギャップに溶融樹脂を充填した(図2、図3(iv)〜(vi)参照)。
【0078】
その後、プレスの圧力を開放し、樹脂組成物を熱硬化(175℃、1時間)させて電子部品を封止(オーバーモールドおよびアンダーフィル)し、常温まで自然冷却させることにより電子部品装置集合体を得た(図3(vii)参照)。
【0079】
最後に、樹脂封止面にダイシングテープを貼り、電子部品装置集合体をダイシングすることにより、電子部品装置を得た。
【0080】
このようにして行われた電子部品装置の製造過程において、樹脂漏れ、およびアンダーフィル充填性が、本発明の基準を充分に満足し得るものであったか否かを、下記のようにして評価した。その結果を、後記の表3〜表5に併せて示した。
【0081】
〔樹脂漏れ〕
得られた電子部品装置集合体について、封止樹脂がエポキシ基板の端まで流れていたものを×、エポキシ基板の端まで流れていなかったものを○とした。なお、封止樹脂がエポキシ基板の端まで流れた場合は、成形装置を汚染する可能性がある。
【0082】
〔アンダーフィル充填性〕
得られた電子部品装置について、実装基板側から光を透過させた状態でマイクロスコープを用いてアンダーフィル部分を観察し、ボイドが確認されたものを×、ボイドが確認されなかったものを○とした。
【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
【表5】

【0086】
上記表の結果より、特定の粘度および特定のサイズ条件を満たすシートAおよびシートBを用いた実施例1〜14は、樹脂漏れがなくアンダーフィル充填性も良好な封止が可能であることがわかる。
【0087】
これに対し、シートAの粘度が、本発明に規定の下限未満である比較例1は、シートA自体が樹脂漏れを起こした。シートAの粘度が、本発明に規定の上限を超える比較例2〜4は、シートAが加熱しても軟化しないために、樹脂漏れを防ぐための治具の役割を果たさず、シートBによるアンダーフィル充填性が不良となった。シートBの粘度が、本発明に規定の下限未満である比較例5は、シートBがタック性を有するために、電子部品上に設置する際にエアーを巻き込みやすく、このエアーが封止時にアンダーフィル部分に移動して不良となった。シートBの粘度が、本発明に規定の上限を超える比較例6および7は、アンダーフィル部分に樹脂が流れ込めず、アンダーフィル充填性不良であった。また、シートAおよびシートBが、本発明に規定の特定の粘度を満たしながらも、そのサイズ条件を満たさない比較例8および比較例9は、アンダーフィル充填性等が不良となった。
【符号の説明】
【0088】
Ax シートAのX軸方向長さ(mm)
Ay シートAのY軸方向長さ(mm)
Az シートAの厚み(mm)
t1 電子部品の厚み(mm)
t2 電子部品の接続用電極部高さ(mm)
P 電子部品搭載エリアのX方向の長さ(mm)
Q 電子部品搭載エリアのY方向の長さ(mm)
n 封止する電子部品の個数
Vc 電子部品1個あたりの体積(mm3
Bx シートBのX軸方向長さ(mm)
By シートBのY軸方向長さ(mm)
Bz シートBの厚み(mm)
Vb 電子部品1個に搭載されているバンプの総体積(mm3
1 プレス上板
2 チャンバー
3 実装基板
4 プレス下板
5 電子部品
6 電子部品の接続用電極部(バンプ)
7 シートA
8 シートB
9 封止樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板上に複数の電子部品を並べて設置した後、上記実装基板における電子部品搭載エリア上に、下記(B)に示す熱硬化性樹脂組成物シート〔シートB〕、およびその上に下記(A)に示す熱硬化性樹脂組成物シート〔シートA〕を積載し、かつ上記電子部品搭載エリアの中心および平面XY方向と、両シートA,Bの中心および平面XY方向とが略合致するよう設置する工程と、この設置状態を保持した上記実装基板を、減圧状態のチャンバー内で70〜150℃から選ばれる成形温度に加熱し、上記シートAの全周の端部を軟化により実装基板に接するまで垂れ下がらせ、シートAの全周で囲われた空間を密閉する工程と、この垂れ下がり状態においてシートBおよび電子部品を被覆した上記シートAをプレスする工程と、上記チャンバー内の圧力を開放し、上記シートAと実装基板との間に形成された密閉空間内で、シートBの溶融物による電子部品のアンダーフィルを行う工程と、上記アンダーフィルを行った後、両シートA,Bの樹脂組成物を熱硬化させ、実装基板上の複数の電子部品が樹脂封止されてなる電子部品装置集合体を得る工程と、この電子部品装置集合体をダイシングし、個々の電子部品装置を得る工程とを備えたことを特徴とする電子部品装置の製法。
(A)上記成形温度における粘度が2000〜50000Pa・sであり、かつ、その寸法が下記の条件(1)を満たす熱硬化性樹脂組成物シート。
<条件(1)>
Ax>P+8
Ay>Q+8
〔Ax:シートAのX軸方向長さ(mm),Ay:シートAのY軸方向長さ(mm),P:電子部品搭載エリアのX方向の長さ(mm),Q:電子部品搭載エリアのY方向の長さ(mm)〕
(B)上記成形温度における粘度が20〜250Pa・sであり、かつ、その寸法が下記の条件(2)を満たす熱硬化性樹脂組成物シート。
<条件(2)>
Ax≧Bx>P×0.8
Ay≧By>Q×0.8
〔Bx:シートBのX軸方向長さ(mm),By:シートBのY軸方向長さ(mm),P:電子部品搭載エリアのX方向の長さ(mm),Q:電子部品搭載エリアのY方向の長さ(mm),Ax:シートAのX軸方向長さ(mm),Ay:シートAのY軸方向長さ(mm)〕
【請求項2】
上記シートAの寸法が、下記の条件(1′)を満たす請求項1記載の電子部品装置の製法。
<条件(1′)>
t1+t2+40+P>Ax>t1+t2+8+P
t1+t2+40+Q>Ay>t1+t2+8+Q
(t1+0.5)−〔(n×Vc)/(P×Q)〕>Az>t1−〔(n×Vc)/(P×Q)〕
〔Ax:シートAのX軸方向長さ(mm),Ay:シートAのY軸方向長さ(mm),Az:シートAの厚み(mm),t1:電子部品の厚み(mm),t2:電子部品の接続用電極部高さ(mm),P:電子部品搭載エリアのX方向の長さ(mm),Q:電子部品搭載エリアのY方向の長さ(mm),Vc:電子部品1個あたりの体積(mm3),n:封止する電子部品の個数〕
【請求項3】
上記シートBの寸法が、下記の条件(2′)を満たす請求項1または2記載の電子部品装置の製法。
<条件(2′)>
Ax≧Bx>P×0.8
Ay≧By>Q×0.8
{〔P×Q×(t1+t2)−n(Vc+Vb)〕/(P×Q)}+0.1>Bz>(t2×P×Q−Vb×n)/(P×Q)
〔Bx:シートBのX軸方向長さ(mm),By:シートBのY軸方向長さ(mm),Bz:シートBの厚み(mm),t1:電子部品の厚み(mm),t2:電子部品の接続用電極部高さ(mm),P:電子部品搭載エリアのX方向の長さ(mm),Q:電子部品搭載エリアのY方向の長さ(mm),Vb:電子部品1個に搭載されているバンプ(接続用電極部)の総体積(mm3),Vc:チップ1個あたりの体積(mm3),n:封止する電子部品の個数),Ax:シートAのX軸方向長さ(mm),Ay:シートAのY軸方向長さ(mm)〕
【請求項4】
チャンバー内の減圧が、0.01〜5kPaの範囲である請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子部品装置の製法。
【請求項5】
プレス工程が、50〜1000kPaの圧力で行われる請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子部品装置の製法。
【請求項6】
両シートA,Bが熱硬化する温度が、150℃を超える温度である請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子部品装置の製法。
【請求項7】
上記シートAとして、下記の(a)〜(d)成分を含有するエポキシ樹脂組成物からなる樹脂組成物シートを用いる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子部品装置の製法。
(a)25℃における粘度が1.0〜10.0Pa・sであるエポキシ樹脂。
(b)硬化剤。
(c)下記の(c1)〜(c3)成分からなり、(c2)および(c3)成分の合計含有量が、(c1)成分100重量部に対して2〜60重量部の範囲内である無機質充填剤。
(c1)平均粒径が5〜20μmの無機質充填剤。
(c2)平均粒径が1〜3μmの無機質充填剤。
(c3)平均粒径が0.3〜0.8μmの無機質充填剤。
(d)可撓性付与剤。
【請求項8】
上記シートBとして、下記の(e)〜(h)成分を含有するエポキシ樹脂組成物からなる樹脂組成物シートを用いる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子部品装置の製法。
(e)軟化点が60〜130℃のエポキシ樹脂および液状エポキシ樹脂の混合物。
(f)硬化剤。
(g)平均粒径が0.3〜3μmの無機質充填剤。
(h)可撓性付与剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の製法に用いられる樹脂組成物シートであって、上記シートAとシートBとからなるシートセットであることを特徴とする電子部品封止用樹脂組成物シート。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の製法に用いられる樹脂組成物シートであって、上記シートAとシートBとが積層一体化されてなることを特徴とする電子部品封止用樹脂組成物シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−59743(P2012−59743A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198623(P2010−198623)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】