説明

露光装置及びデバイス製造方法

【課題】様々な条件のウエハプロセスに対して検出誤差を低減させて検出精度の向上を可能とする位置検出装置を有する露光装置を提供する。
【解決手段】レチクルのパターンを基板に投影する投影光学系と、前記レチクルの位置及び前記基板の位置の少なくとも一方を検出する位置検出装置とを有し、前記位置検出装置は、位置を変更可能な光学部材を含む光学系と、前記光学系を介して前記レチクルの位置及び前記基板の位置を検出するためのマークからの光を受光して検出信号を出力する光電変換素子と、前記光学部材の複数の位置に対する前記検出信号の波形の対称性を示す第1の評価値の情報、及び、前記光学部材の複数の位置のそれぞれについて前記マークの前記光学系の光軸の方向の位置を変えた際に検出される前記マークの位置のずれを示す第2の評価値の情報に基づいて、前記光学部材の位置を制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記第1の評価値の情報を予め有していることを特徴とする露光装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの光束を用いてレチクルのパターンを基板に投影し、かかる基板を露光する露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィー(焼き付け)技術を用いて半導体デバイスを製造する際に、レチクル(マスク)に描画された回路パターンを投影光学系によってウエハ等に投影して回路パターンを転写する投影露光装置が従来から使用されている。
【0003】
投影露光装置においては、半導体デバイスの微細化に伴い、より高い解像力でレチクルのパターンをウエハに露光することが要求されている。投影露光装置で転写できる最小の寸法(解像度)は、露光光に用いる光の波長に比例し、投影光学系の開口数(NA)に反比例する。このため、露光光の短波長化及び投影光学系の高NA化が進められている。
【0004】
現在では、露光光源は、超高圧水銀ランプ(i線(波長約365nm))からKrFエキシマレーザー(波長約248nm)やArFエキシマレーザー(波長約193nm)となり、Fレーザー(波長約157nm)の実用化も進んでいる。更には、波長10nm乃至15nm程度の極端紫外線光(Extreme Ultra Violet:EUV光)の採用も見込まれている。
【0005】
また、投影光学系とウエハとの間の少なくとも一部を液体(例えば、1よりも大きな屈折率を有する液体)で浸すことによって投影光学系の高NA化を図る液浸露光も提案されている。液浸露光は、ウエハ側からみた投影光学系のNAを増加させることで解像度を向上させている。
【0006】
このような解像度の向上に伴って、投影露光装置においては、ウエハに幾つかのパターンを重ね合わせる際の精度である重ね合わせ精度(オーバーレイ精度)の向上も求められている。一般に、オーバーレイ精度には解像度の1/5程度が必要とされており、半導体デバイスの微細化が進むにつれてオーバーレイ精度の向上がますます重要となる。所望のオーバーレイ精度を得るためには、レチクルとウエハとを高精度に位置合わせ(アライメント)する必要があり、投影露光装置には複数のアライメント検出系(即ち、位置検出装置)が構成されている。
【0007】
ウエハアライメント検出系は、オフアクシス(Off−axis)検出系とTTL−AA(Through the Lens Auto Aligment)検出系の2つに大別される。オフアクシス検出系は、投影光学系を介さずにウエハ上のアライメントマークを検出する。TTL−AA検出系は、投影光学系を介して、非露光光のアライメント波長を用いてウエハ上のアライメントマークを検出する。
【0008】
近年では、半導体デバイスの生産が少品種大量生産型から多品種少量生産型に移行しているため、様々な条件のウエハプロセス(材質、厚さ、膜厚、線幅等)に対して検出誤差を小さく抑えることができるアライメント検出系が求められている。例えば、アライメント検出系がTIS(Tool Induced Shift)を含んでいると、対称な段差構造を有するアライメントマークを検出しても検出誤差が発生してしまう。検出誤差は、TISの原因であるアライメント検出系の光学系に残存する収差(特に、偏芯によるコマ収差)や、かかる光学系の光軸の傾き(光軸ずれ)によって発生する。従って、様々な条件のウエハプロセスに対して検出誤差を小さく抑えることができるアライメント検出系を提供するためには、アライメント検出系の光学系のコマ収差及び光軸ずれを小さくすることが必要である。
【0009】
そこで、まず、調整用マークを検出した際の波形の非対称性に着目し、かかる波形が対称となるようにアライメント検出系の光学部材を動かす(光学重心を調整する)ことによってアライメント検出系におけるコマ収差を低減させている(特許文献1参照)。そして、露光装置に構成されたアライメントマーク(クロムパターン)を各デフォーカス状態で検出し、かかるアライメントマークの像の検出位置(デフォーカス特性)が所定の範囲内(規格)に収まるように調整している。
【特許文献1】特開平9−167738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術においては、アライメント検出系の光学系のコマ収差と光軸ずれをトータルでキャンセルする(打ち消す)ようにアライメント検出系を調整していた。換言すれば、従来技術は、アライメント検出系の光学系のコマ収差と光軸ずれの各々を0に近づけるものではなかった。
【0011】
調整用マークを検出した際の波形の非対称性には、コマ収差の影響だけではなく、光軸ずれの影響も含まれている。従って、波形対称性が所定の範囲(規格)に収まるようにアライメント検出系を調整したとしても、コマ収差の影響が光軸ずれによる波形非対称成分を打ち消しているだけであり、実際には、アライメント検出系にコマ収差や光軸ずれが残存している場合がある。コマ収差や光軸ずれが残存した状態で、ウエハアライメント検出系の光軸ずれを表す指標であるデフォーカス特性が規格を満たすようにアライメント検出系を調整すると、波形の対称性が崩れ、検出誤差が発生してしまうことがある。
【0012】
また、アライメント検出系は、ウエハプロセス毎に最もコントラストの高い波長帯域を選択してアライメントマークを検出する。なお、アライメント検出系に備えられている波長帯域では必要なコントラストが得られないようなウエハプロセスの場合には、かかるウエハプロセスに対して必要なコントラストが得られる波長帯域を新たに追加することがある。アライメント検出系に新たな波長帯域を追加した場合には、新たな波長帯域でのデフォーカス特性が規格を満たすようにアライメント検出系を調整する必要がある。しかしながら、この場合にも、新たな波長帯域でのデフォーカス特性が規格を満たすようにアライメント検出系を調整すると、波形の対称性が崩れ、検出誤差が発生してしまうことがある。
【0013】
そこで、本発明は、様々な条件のウエハプロセスに対して検出誤差を低減させて検出精度の向上を可能とする位置検出装置を有する露光装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての露光装置は、レチクルのパターンを基板に投影する投影光学系と、前記レチクルの位置及び前記基板の位置の少なくとも一方を検出する位置検出装置とを有し、前記位置検出装置は、位置を変更可能な光学部材を含む光学系と、前記光学系を介して前記レチクルの位置及び前記基板の位置を検出するためのマークからの光を受光して検出信号を出力する光電変換素子と、前記光学部材の複数の位置に対する前記検出信号の波形の対称性を示す第1の評価値の情報、及び、前記光学部材の複数の位置のそれぞれについて前記マークの前記光学系の光軸の方向の位置を変えた際に検出される前記マークの位置のずれを示す第2の評価値の情報に基づいて、前記光学部材の位置を制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記第1の評価値の情報を予め有していることを特徴とする。
【0015】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えば、様々な条件のウエハプロセスに対して検出誤差を低減させて検出精度の向上を可能とする位置検出装置を有する露光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本発明の一側面としての露光装置1の構成を示す概略ブロック図である。露光装置1は、本実施形態では、レチクル20とウエハ40とを走査方向に互いに同期移動させながらレチクル20のパターンをウエハ40に露光する走査型の露光装置(スキャナー)である。但し、露光装置1は、レチクル20を固定してレチクル20のパターンをウエハ40に露光する投影露光装置(ステッパー)であってもよい。
【0019】
露光装置1は、図1に示すように、照明装置10と、レチクル20を支持するレチクルステージ25と、投影光学系30と、ウエハ40を支持するウエハステージ45とを備える。更に、露光装置1は、ステージ基準プレート50と、フォーカス検出系60と、レチクルアライメント検出系70及び75と、ウエハアライメント検出系80と、制御部90とを備える。以下では、投影光学系30の光軸の方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内でレチクル20とウエハ40との走査方向をY軸方向、Z軸方向及びY軸方向に垂直な方向(非走査方向)をX軸方向とする。また、X軸、Y軸及びZ軸周りの方向をθX方向、θY方向及びθZ方向とする。
【0020】
照明装置10は、転写用の回路パターンが形成されたレチクル20を照明し、光源12と、照明光学系14とを有する。
【0021】
光源12は、例えば、波長約248nmのKrFエキシマレーザーや波長約193nmのArFエキシマレーザーなどのエキシマレーザーを使用する。但し、光源12はエキシマレーザーに限定されず、例えば、波長約157nmのFレーザーなどを使用してもよい。
【0022】
照明光学系14は、光源12からの光束を用いてレチクル20を照明する光学系である。照明光学系14は、本実施形態では、レチクル20上の所定の照明領域を均一な照度分布の光(露光光)で照明する。
【0023】
レチクル20は、回路パターンを有し、レチクルステージ25に支持及び駆動される。レチクル20から発せされた回折光は、投影光学系30を介して、ウエハ40に投影される。
【0024】
レチクルステージ25は、レチクル20を支持し、本実施形態では、投影光学系30の光軸に垂直な平面内、即ち、XY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能に構成される。また、レチクルステージ25は、少なくとも1軸駆動で構成されるが、6軸駆動で構成されることが好ましい。レチクルステージ25は、リニアモータ等のレチクルステージ駆動機構によって駆動される。
【0025】
レチクルステージ25上には、ミラー27が配置されている。また、ミラー27に対向する位置には、ミラー27のX軸方向及びY軸方向の位置を計測するレーザ干渉計29が配置されている。レチクルステージ25に支持されたレチクル20の2次元方向の位置及び回転角は、レーザ干渉計29によってリアルタイムに計測される。レーザ干渉計29の計測結果は、制御部90に出力される。
【0026】
投影光学系30は、複数の光学素子を含み、レチクル20のパターンを所定の投影倍率βでウエハ40に投影する光学系である。投影光学系30は、本実施形態では、縮小投影光学系であり、例えば、1/4倍又は1/5倍の投影倍率を有する。
【0027】
ウエハ40は、レチクル20のパターンが投影(転写)される基板である。但し、ウエハ40は、ガラスプレートやその他の基板に置換することもできる。ウエハ40には、レジスト(感光剤)が塗布されている。
【0028】
ウエハステージ45は、ウエハ40を支持及び駆動する。ウエハステージ45は、本実施形態では、ウエハチャックを介してウエハ40を保持するZステージと、Zステージを支持するXYステージと、XYステージを支持するベースとを有する。ウエハステージ45は、リニアモータ等のウエハステージ駆動機構によって駆動される。
【0029】
ウエハステージ45上には、ミラー47が配置されている。また、ミラー47に対向する位置には、ミラー47のX軸方向及びY軸方向の位置を計測するレーザ干渉計49aとミラー47のZ軸方向の位置を計測するレーザ干渉計49bとが配置されている。ウエハステージ45のX軸方向の位置、Y軸方向の位置及びθZ方向の位置は、レーザ干渉計49aによってリアルタイムに計測される。また、ウエハステージ45のZ軸方向の位置、θX方向の位置及びθY方向の位置は、レーザ干渉計49bによってリアルタイムに計測される。レーザ干渉計49a及びレーザ干渉計49bの計測結果は、制御部90に出力される。
【0030】
また、ウエハステージ45上のコーナーには、ステージ基準プレート50が配置されている。図2は、ウエハステージ45上のステージ基準プレート50の構成を示す図であって、ステージ基準プレート50は、ウエハ40の表面とほぼ同じ高さとなるように配置される。ステージ基準プレート50は、図2に示すように、レチクルアライメント検出系70(又はレチクルアライメント検出系75)が検出するレチクルアライメント検出系用基準マーク52を有する。更に、ステージ基準プレート50は、ウエハアライメント検出系80が検出するウエハアライメント検出系用基準マーク54を有する。
【0031】
ステージ基準プレート50は、ウエハステージ45上の1つのコーナーに配置されていてもよいし、ウエハステージ45上の複数のコーナーに配置されていてもよい。また、ステージ基準プレート50は、複数のレチクルアライメント検出系用基準マーク52や複数のウエハアライメント検出系用基準マーク54を有していてもよい。なお、レチクルアライメント検出系用基準マーク52とウエハアライメント検出系用基準マーク54との位置関係(X軸方向及びY軸方向)は、予め所定の位置関係に設定される。レチクルアライメント検出系用基準マーク52とウエハアライメント検出系用基準マーク54とは、共通のマークであってもよい。
【0032】
フォーカス検出系60は、ウエハ40のフォーカス(Z軸方向の位置)を検出する機能を有し、本実施形態では、ウエハ40の表面に検出光を投射する投射系と、ウエハ40の表面で反射した検出光を受光する受光系とを含む。フォーカス検出系60の検出結果は、制御部90に出力される。
【0033】
レチクルアライメント検出系70は、レチクルステージ25の近傍に配置されている。レチクルアライメント検出系70は、レチクルステージ25に支持されているレチクル20上の図示しないレチクル基準マークを検出する。また、レチクルアライメント検出系70は、投影光学系30を介して、ウエハステージ45上に配置されたステージ基準プレート50のレチクルアライメント検出系用基準マーク52を検出する。
【0034】
レチクルアライメント検出系70は、実際にウエハ40を露光する光源12と同一な光源を用いてレチクル基準マーク及びレチクルアライメント検出系用基準マーク52を照射し、かかるマークからの反射光を光電変換素子(例えば、CCDカメラ)で検出する。レチクル20上のレチクル基準マークとステージ基準プレート50上のレチクルアライメント検出系用基準マーク52との位置及びフォーカスを合わせることで、レチクルステージ25とウエハステージ45との相対的な位置関係を合わせることができる。レチクルアライメント検出系70の検出結果は、制御部90に出力される。
【0035】
レチクルアライメント検出系75は、透過型の検出系であって、レチクルアライメント検出系用基準マーク52が透過型のマークである場合に使用される。レチクルアライメント検出系75は、光源12と同一な光源を用いてレチクル基準マーク及びレチクルアライメント検出系用基準マーク52を照射し、かかるマークを透過した透過光を光量センサで検出する。レチクルアライメント検出系75は、ウエハステージ45のX軸方向(又はY軸方向)及びZ軸方向に駆動させながら透過光の光量を検出する。これにより、レチクル20上のレチクル基準マークとステージ基準プレート50上のレチクルアライメント検出系用基準マーク52との位置及びフォーカスを合わせることができる。その結果、レチクルステージ25とウエハステージ45との相対的な位置関係を合わせることができる。レチクルアライメント検出系75の検出結果は、制御部90に出力される。
【0036】
このように、レチクルアライメント検出系70、或いは、レチクルアライメント検出系75のどちらを用いても、レチクルステージ25とウエハステージ45との相対的な位置関係を合わせることができる。
【0037】
ウエハアライメント検出系80は、ウエハ40上のウエハアライメントマーク42やステージ基準プレート50上のウエハアライメント検出系用基準マーク54に検出光を投射する投射系と、かかるマークからの反射光を受光する受光系とを有する。ウエハアライメント検出系80の検出結果は、制御部90に出力される。
【0038】
制御部90は、図示しないCPUやメモリを有し、露光装置1の動作を制御する。制御部90は、レチクルステージ25、レーザ干渉計29、ウエハステージ45、レーザ干渉計49a及び49bと電気的に接続されている。また、制御部90は、フォーカス検出系60、レチクルアライメント検出系70(又はレチクルアライメント検出系75)及びウエハアライメント検出系80と電気的に接続されている。
【0039】
制御部90は、レーザ干渉計29の計測結果に基づいて、レチクルステージ25(即ち、レチクルステージ駆動機構)を制御し、レチクルステージ25に支持されたレチクル20の位置決めを行う。また、制御部90は、レーザ干渉計29a及び29bの計測結果に基づいて、ウエハステージ45(即ち、ウエハステージ駆動機構)を制御し、ウエハステージ45に支持されたウエハ40の位置決めを行う。また、制御部90は、フォーカス検出系60の検出結果に基づいて、ウエハステージ45に支持されたウエハ40のZ軸方向の位置(フォーカス位置)及び傾斜角を調整する。また、制御部90は、レチクルアライメント検出系70又は75の検出結果に基づいて、レチクルステージ25とウエハステージ45との位置合わせ(アライメント)を行う。また、制御部90は、ウエハアライメント検出系80の検出結果に基づいて、ウエハステージ45のX軸方向及びY軸方向に駆動し、ウエハ40のX軸方向及びY軸方向の位置を調整する。更に、制御部90は、後述するウエハアライメント検出系80などの位置検出装置の調整処理を制御する。
【0040】
図3を参照して、ウエハアライメント検出系80について詳細に説明する。図3は、ウエハアライメント検出系80の具体的な構成を示す概略断面図である。ウエハアライメント検出系80は、本実施形態では、ファイバ等を含む照明光源801と、リレー光学系802と、開口絞り803と、照明系804と、偏光ビームスプリッター805と、λ/4位相板806と、対物レンズ807とを含む。また、ウエハアライメント検出系80は、リレーレンズ808と、第1の結像光学系809と、コマ収差を調整するための光学部材810と、第2の結像光学系811と、光電変換素子812と、波長選択機構813と、駆動部814乃至817とを含む。なお、波長選択機構813は、例えば、透過波長帯の異なる複数のフィルタで構成され、照明光源801から射出された光のうち所定の波長を有する光のみを透過する(即ち、透過する光の波長を選択する)機能を有する。駆動部814は、制御部90に制御され、ウエハアライメント検出系80の光学系(本実施形態では、リレー光学系802や照明系804など)の光軸に垂直な方向に照明光源801(詳細には、照明光源801の光束の射出口)を駆動する。駆動部815は、制御部90に制御され、ウエハアライメント検出系80の光学系(本実施形態では、リレー光学系802や照明系804など)の光軸に垂直な方向に開口絞り803(詳細には、開口絞り803の開口)を駆動する。また、駆動部815は、開口絞り803の開口径を変更したり、開口絞り803を他の開口絞り(即ち、照明σ値の異なる開口絞り)に切り替えたりする機能も有する。これにより、ウエハアライメント検出系80が被検物体としてのアライメントマークを照明する際の照明σ値を変更することができる。駆動部816は、制御部90に制御され、ウエハアライメント検出系80の光学系(本実施形態では、リレーレンズ808、第1の結像光学系809や第2の結像光学系811など)の光軸に垂直な方向に光学部材810を駆動する。このように、駆動部814乃至816の各々は、照明光源801、開口絞り803及び光学部材810の位置を変更可能にする。また、駆動部817は、制御部90に制御され、波長選択機構813が有する複数のフィルタを切り替える機能を有する。これにより、ウエハプロセスに対して最もコントラストの高い波長帯域を選択することができる。駆動部814乃至817には、当業界で周知のいかなる構成をも適用することができる。また、本実施形態のウエハアライメント検出系80は、照明光源801乃至照明系804及び波長選択機構813を含む光学系の光軸と、偏光ビームスプリッター805乃至光電変換素子812を含む光学系の光軸とを含むが、これらをまとめて光軸と称する。
【0041】
図3を参照するに、照明光源801から射出された光束は、リレー光学系802及び波長選択機構813を介して、ウエハアライメント検出系80の瞳面(物体面に対する光学的なフーリエ変換面)に相当する位置に配置された開口絞り803に到達する。なお、開口絞り803でのビーム径LD803は、図4に示すように、照明光源801でのビーム径LD801よりも十分に小さくなる。ここで、図4は、照明光源801でのビーム径LD801と開口絞り803でのビーム径LD803との関係を示す図である。
【0042】
開口絞り803に到達した光束は、照明系804に介して、偏光ビームスプリッター805に導光される。偏光ビームスプリッター805に導光された光束のうち紙面に垂直なS偏光は、偏光ビームスプリッター805で反射され、λ/4位相板806を透過して円偏光に変換される。λ/4位相板806を透過した光束は、対物レンズ807を介して、ウエハ40上に形成されたウエハアライメントマーク42をケーラー照明する。
【0043】
ウエハアライメントマーク42からの反射光、回折光及び散乱光は、対物レンズ807を介して、λ/4位相板806を透過して紙面に平行なP偏光に変換され、偏光ビームスプリッター805を透過する。偏光ビームスプリッター805を透過した光束は、リレーレンズ808、第1の結像光学系809、光学部材810及び第2の結像光学系811を介して、光電変換素子812上にウエハアライメントマーク42の像を形成する。
【0044】
ウエハアライメント検出系80は、光電変換素子812によって光電変換されたウエハアライメントマーク42の検出信号の波形に基づいて、ウエハ40の位置を検出する。
【0045】
ウエハアライメント検出系80がウエハ40上のウエハアライメントマーク42を検出する場合、ウエハアライメントマーク42上にはレジスト(透明層)が塗布(形成)されているため、単色光では干渉パターンが発生してしまう。従って、光電変換素子812から出力された検出信号(アライメント信号)に干渉パターンの信号が加算され、ウエハアライメントマーク42を高精度に検出することができなくなる。そこで、本実施形態では、広帯域の波長を有する光源を照明光源801として使用し、光電変換素子812からの検出信号に干渉パターンの信号が加算されることを防止している。
【0046】
また、ウエハ40上のウエハアライメントマーク42を高精度に検出するためには、ウエハアライメントマーク42の像が明確に検出されなければならない。換言すれば、ウエハアライメント検出系80の焦点(ピント)がウエハアライメントマーク42に合っていなければならない。そこで、本実施形態では、ウエハアライメント検出系80は、図示しないAF検出系を有し、かかるAF検出系の検出結果に基づいて、ウエハアライメントマーク42をベストフォーカス面に駆動して、ウエハアライメントマーク42を検出する。
【0047】
ウエハアライメント検出系80は、本実施形態では、オフアクシス検出系であるが、TTL−AA検出系であってもよい。ウエハアライメント検出系80がTTL−AA検出系である場合には、投影光学系30を介して、ウエハアライメントマーク42を検出するが、基本的な構成はオフアクシス検出系と同様である。
【0048】
ここで、ウエハアライメント検出系80の光学系のコマ収差の調整について説明する。ウエハアライメント検出系80の光学系のコマ収差を調整する場合には、図5に示すように、シリコン(Si)面に段差DLを有する調整専用ウエハを使用する必要がある。なお、かかる調整用ウエハは、露光装置1(ウエハアライメント検出系80)の外部から搬送され、露光装置1には備えられていない。ここで、図5は、ウエハアライメント検出系80の光学系のコマ収差を調整する際に使用される調整用ウエハの一例を示す概略断面図である。
【0049】
例えば、照明光源801からの光束の波長をλ、図5に示す調整専用ウエハの段差DLをλ/8とし、かかる調整専用ウエハをウエハアライメント検出系80が照明σ値0.9で検出(照明)して、図6に示すような非対称な検出波形が得られたとする。図6に示す検出波形の非対称性は、ウエハアライメント検出系80の光学系のコマ収差や光軸ずれを原因として発生するが、ここでは、ウエハアライメント検出系80の光学系のコマ収差のみを原因として発生したと仮定する。
【0050】
図6に示すような非対称な検出波形を図7に示すような対称な検出波形にするためには、駆動部816を介して、光学部材810を光軸に垂直な方向に駆動してウエハアライメント検出系80の光学系全系のコマ収差を調整すればよい。具体的には、図6に示す非対称な検出波形が図7に示す対称な検出波形になるまで、光学部材810を光軸に対して垂直な方向に駆動する。ここで、図7は、図5に示す調整専用ウエハをウエハアライメント検出系80が検出した場合の検出波形の一例を示す図である。
【0051】
このように、ウエハアライメント検出系80の光学系の光軸に垂直な方向に光学部材810を駆動することで、ウエハアライメント検出系80の光学系のコマ収差を調整することができる。
【0052】
次に、ウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれの調整について説明する。図8に示すように、ウエハアライメント検出系80の光学系に光軸ずれが存在しない場合には、照明光源801からの光束の主光線は、ウエハ40(ウエハアライメントマーク42)に対して垂直に入射する。この場合、ウエハアライメント検出系80の光学系のコマ収差が完全に調整されていれば、図7に示すような対称な検出波形が得られる。図8は、ウエハアライメント検出系80の光学系に光軸ずれが存在しない場合の例を示す図である。
【0053】
一方、図9に示すように、ウエハアライメント検出系80の開口絞り803が光軸に対してずれている場合には、照明光源801からの光束の主光線は、ウエハ40に対して垂直に入射せずに傾斜して(角度θを有して)入射する。なお、開口絞り803でのビーム径LD803’の中心位置は、図4に示すように、照明光源801でのビーム径LD801の中心位置に対してずれた位置に位置することになる。このような状態のことを光学系に光軸ずれが存在すると言う。この場合、ウエハアライメント検出系80の光学系のコマ収差が完全に調整されていても、ウエハアライメント検出系80から得られる検出波形は、図6に示すような非対称な検出波形となる。ここで、図9は、ウエハアライメント検出系80に光軸ずれが存在する場合の例を示す図である。
【0054】
本実施形態では、図9に示したように、開口絞り803の位置ずれを例としてウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれを説明している。但し、ウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれは、照明光源801の位置ずれ等によっても発生する。ウエハアライメント検出系80の光学系に光軸ずれが存在すると、検出波形が非対称となるため、ウエハアライメント検出系80の光学系にコマ収差が存在する場合と同様に、検出誤差が発生してしまう。
【0055】
ウエハアライメント検出系80の光学系に光軸ずれが存在する場合には、駆動部814又は駆動部815を介して、照明光源801又は開口絞り803を光軸に垂直な方向に駆動してウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれを調整すればよい。具体的には、ウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれの指標であるデフォーカス特性を用いてウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれを調整する。
【0056】
図10乃至図13を参照して、デフォーカス特性について説明する。デフォーカス特性を取得するためには、クロムパターンで形成されたアライメントマークをデフォーカスさせながら検出する。かかるアライメントマークは、例えば、ステージ基準プレート50上などに形成されており、デフォーカス特性は、露光装置1において容易に取得することができる。
【0057】
ウエハアライメント検出系80の光学系にコマ収差及び光軸ずれが存在していない理想的な状態でベストフォーカス位置に配置されたアライメントマークを検出した場合に得られる検出波形を図10(b)に示す。図10(b)に示す検出波形をプラス(+)方向にデフォーカスして(即ち、図10(b)の状態からアライメントマークをプラス方向にデフォーカスして)得られる検出波形を図10(a)に示す。また、図10(b)に示す検出波形をマイナス(−)方向にデフォーカスして(即ち、図10(b)の状態からアライメントマークをマイナス方向にデフォーカスして)得られる検出波形を図10(c)に示す。ここで、図10は、ウエハアライメント検出系80の光学系にコマ収差及び光軸ずれが存在していない理想的な状態でアライメントマークを検出した場合に得られる検出波形を示す図である。
【0058】
図10(a)及び図10(c)に示す検出波形は、図10(b)に示す検出波形よりもコントラストが低下しているが、ウエハアライメント検出系80の光学系にコマ収差及び光軸ずれが存在していないため、検出波形の対称性が崩れることはない。従って、図10(a)及び図10(c)に示す検出波形から検出されるアライメントマークの中心位置(即ち、検出波形の中心位置)は、図10(b)に示す検出波形から検出されるアライメントマークの中心位置と同じである。
【0059】
図11は、図10に示す検出波形でのデフォーカスに対する検出波形の中心位置を示す図である。図11に示すように、図10に示す検出波形の中心位置は、デフォーカスに関わらずに一定値となる。デフォーカスに対する検出波形の中心位置の傾きがデフォーカス特性である。従って、図11では、デフォーカス特性は0となる。デフォーカスに対して検出波形の中心位置が変化しなければ、ウエハアライメントの際に(即ち、アライメントマークを検出する際に)アライメントマークがデフォーカスしても検出波形の中心位置の位置ずれ(検出誤差)は生じない。
【0060】
一方、検出波形が対称となるようにコマ収差を調整したものの、ウエハアライメント検出系80の光学系にコマ収差及び光軸ずれが残存している状態でベストフォーカス位置に配置されたアライメントマークを検出した場合に得られる検出波形を図12(b)に示す。図12(b)に示す検出波形をプラス(+)方向にデフォーカスして(即ち、図12(b)の状態からアライメントマークをプラス方向にデフォーカスして)得られる検出波形を図12(a)に示す。また、図12(b)に示す検出波形をマイナス(−)方向にデフォーカスして(即ち、図12(b)の状態からアライメントマークをマイナス方向にデフォーカスして)得られる検出波形を図12(c)に示す。ここで、図12は、検出波形が対称となるようにコマ収差を調整したものの、ウエハアライメント検出系80の光学系にコマ収差及び光軸ずれが残存している状態でアライメントマークを検出した場合に得られる検出波形を示す図である。
【0061】
図12(a)及び図12(c)に示す検出波形は、図12(b)に示す検出波形と比較して、コントラストが低下するだけでなく、ウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれの影響によって非対称な検出波形となる。
【0062】
図13は、図12に示す検出波形でのデフォーカスに対する検出波形の中心位置を示す図である。図13を参照するに、検出波形の中心位置は、デフォーカスに依存した値(即ち、デフォーカスに対して変動する値)をとる。上述したように、デフォーカスに対する検出波形の中心位置の傾きがデフォーカス特性である。従って、図13では、デフォーカス特性はある値を有し、0ではない。図13に示すように、デフォーカスに対して検出波形の中心位置が変化する場合には、ベストフォーカス位置では検出波形の中心位置の位置ずれは生じないが、実際のウエハアライメントの際には多少のデフォーカスが発生するため、位置ずれが生じてしまう。従って、ウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれを調整する際には、デフォーカス特性に基づいて、照明光源801又は開口絞り803をウエハアライメント検出系80の光学系の光軸に垂直な方向に駆動すればよい。
【0063】
以下、ウエハアライメント検出系80の光学系のコマ収差及び光軸ずれの調整方法について説明する。本実施形態におけるウエハアライメント検出系80の調整方法について説明する前に、従来のウエハアライメント検出系80の調整方法について説明する。
【0064】
従来のウエハアライメント検出系80の調整方法においては、まず、露光装置1の外部から図5に示すような調整専用ウエハを搬送し、かかる調整専用ウエハを用いてウエハアライメント検出系80の光学系のコマ収差を調整する。次に、ステージ基準プレート50上のクロムパターンで形成されたアライメントマークを用いてデフォーカス特性を取得し、かかるデフォーカス特性が0となるように、ウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれを調整する。
【0065】
しかしながら、従来のウエハアライメント検出系80の調整方法は、2つの問題点を含んでいる。1つ目の問題点は、デフォーカス特性が0となる光軸ずれ量と検出波形が対称となる光軸ずれ量とが異なるために、デフォーカス特性が0となるように光学系の光軸ずれを調整すると、検出波形の対称性が崩れ、検出誤差が発生してしまうというものである。2つ目の問題点は、露光装置1上でウエハアライメント検出系80に新たな波長帯域を追加した場合に、かかる波長帯域でデフォーカス特性が規格に収まるように光軸ずれを調整すると、検出波形の対称性が崩れ、検出誤差が発生してしまうというものである。
【0066】
従来のウエハアライメント検出系80の調整方法の問題点について具体的に説明する。図14は、ウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれ(光軸ずれ量)に対する検出波形の波形対称性及びデフォーカス特性の変化を示す図である。図14では、縦軸にデフォーカス特性又は波形対称性を採用し、横軸に光軸ずれ量を採用している。ここで、波形対称性は、図6に示すように、検出波形のベース強度をIa、検出波形のエッジ部分の各々の強度をIb及びIcとした場合に、(Ib−Ic)/Ia[%]で定義される。
【0067】
検出波形はウエハアライメント検出系80の光学系のコマ収差を調整する際に対称にすることができるため、波形対称性は、図14の点WSに示すように、略0にすることができる。但し、ウエハアライメント検出系80の光学系にコマ収差及び光軸ずれが残存していると、デフォーカス特性は、図14の点DCに示すように、ある値を有し、デフォーカス特性の規格DCを超えてしまう場合がある。換言すれば、検出波形の波形対称性は規格を満たしているが、デフォーカス特性が規格を満たしていない場合がある。この場合、従来技術では、デフォーカス特性の規格を満たすために、図14の点DCに示すように、デフォーカス特性が0となるようにウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれを調整していた。但し、光軸ずれを調整することによって、デフォーカス特性は0となるが、検出波形の対称性が崩れてしまうため、波形対称性が、図14の点WSに示すように、ある値を有し、波形対称性の規格WSを超えてしまう場合がある。
【0068】
そこで、本実施形態では、図15に示すように、制御部90の図示しないメモリに予め格納(取得)されている波形対称性を用いて、ウエハアライメント検出系80を調整する。換言すれば、本実施形態は、図15に示すようなウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれ量に対する波形対称性の情報を制御部90が予め有していることを特徴とする。かかる波形対称性の情報は、上述したように、図5に示すシリコン面に段差DLを有する調整専用ウエハを用いて取得する。ここで、図15は、本実施形態におけるウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれ(光軸ずれ量)に対する検出波形の波形対称性及びデフォーカス特性の変化を示す図である。
【0069】
上述のように、波形対称性は、ウエハアライメント検出系80の光学系のコマ収差を調整する段階で0にすることができる(図14の点WS)が、このままではデフォーカス特性(図14の点DC)がデフォーカス特性の規格(図14の点DC)を満たさない。そこで、デフォーカス特性がデフォーカス特性の規格を満たすようにウエハアライメント検出系80の光軸ずれ量を調整するが、デフォーカス特性が0になる(図14の点DC)まで光軸ずれ量を調整してしまうと、波形非対称性が規格を満たさなくなる。
【0070】
一方、本実施形態では、予め取得している波形対称性の情報を用いて、図15の点OSに示すように、波形対称性が規格WSを満たすようにウエハアライメント検出系80の光軸ずれを調整する。図15の点OSに示す光軸ずれ量であれば、デフォーカス特性は、図15の点DCに示すような値を有するため、デフォーカス特性の規格DCを満たし、且つ、波形対称性は、図15のWSに示すような値を有するため、波形対称性の規格WSを満たす。
【0071】
なお、図15では、波形対称性の規格及びデフォーカスの規格を満たす光軸ずれ量(図15の点OS)となるようにウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれを調整すればよいと説明した。但し、ウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれ量は、具体的には、デフォーカス特性の規格の閾値を満たす光軸ずれ量と波形対称性の規格の閾値を満たす光軸ずれ量との中間となるように調整することが好ましい。
【0072】
図16に示すように、デフォーカス特性の規格の閾値を満たす光軸ずれ量を点OSとし、波形対称性の規格の閾値を満たす光軸ずれ量を点OSとする。この場合、ウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれは、点OSで示す光軸ずれ量と点OSで示す光軸ずれ量との中間である点OSで示す光軸ずれ量となるように調整する。ここで、図16は、本実施形態におけるウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれ(光軸ずれ量)に対する検出波形の波形対称性及びデフォーカス特性の変化を示す図である。
【0073】
このように、本実施形態では、波形対称性(第1の評価値)の規格及びデフォーカス特性(第2の評価値)の規格(許容値)を満たすようにウエハアライメント検出系80を調整することができる。従って、ウエハアライメント検出系80は、様々な条件のウエハプロセスに対して検出誤差を低減することができる。その結果、露光装置1は、様々な条件のウエハプロセスに対して精度よくアライメントすることが可能となる。
【0074】
本実施形態では、デフォーカス特性の規格の閾値を満たす光軸ずれ量と波形対称性の規格の閾値を満たす光軸ずれ量との中間となるようにウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれを調整することを説明した。但し、波形対称性及びデフォーカス特性の少なくとも一方に重み付けをして、ウエハアライメント検出系80を調整する際の光軸ずれ量を決定してもよい。例えば、デフォーカス特性と波形対称性の重み付けを7:3とすると、(0.7×点OSで示す光軸ずれ量+0.3×点OSで示す光軸ずれ量)の光軸ずれ量となるように、ウエハアライメント検出系80を調整する。このように、アライメント(マークの検出)に要求される精度に応じて、デフォーカス特性及び波形対称性の少なくとも一方に重み付けして、ウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれを調整することも可能である。
【0075】
なお、ウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれを調整しなくてもデフォーカス特性の規格及び波形対称性の規格を満たす場合もある。この場合、ウエハアライメント検出系80は所望の性能を発揮することができるため、ウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれを調整する必要はない。換言すれば、ウエハアライメント検出系80の光学系のコマ収差を調整した際に、ウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれ量が点OSから点OSの範囲内であれば、波形対称性の規格及びデフォーカス特性の規格を満たすことになる。従って、ウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれを調整する必要はない。
【0076】
また、露光装置1に設けられた波形対称性及びデフォーカス特性の規格値を設定する設定部を介して、波形対称性の規格及びデフォーカス特性の規格を変更することも可能である。換言すれば、ウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれの調整範囲(光軸ずれ量の調整範囲)を変更することができる。例えば、図17に示すように、デフォーカス特性の規格DCから規格DC’に変更すると、デフォーカス特性の規格DC’の閾値を満たす光軸ずれ量は、点OSとなる。この場合、波形対称性の規格WS及びデフォーカス特性の規格DC’を満たす光軸ずれ量は、点OSから点OSの範囲となり、図16に示した範囲(点OSから点OS)よりも狭くなっている。これにより、ウエハアライメント検出系80をより高精度に調整することが可能となる。ここで、図17は、本実施形態におけるウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれ(光軸ずれ量)に対する検出波形の波形対称性及びデフォーカス特性の変化を示す図である。
【0077】
本実施形態では、デフォーカス特性の規格を変更した際の光軸ずれ量の範囲について説明したが、波形対称性の規格を変更してもよい。波形対称性の規格を変更しても光軸ずれ量の範囲を変更することが可能であり、ウエハアライメント検出系80をより高精度に調整することができる。
【0078】
また、本実施形態は、露光装置1上でウエハアライメント検出系80に新たな波長帯域や照明σ値を追加した場合におけるウエハアライメント検出系80の調整(特に、光軸ずれ)にも適用することができる。例えば、ウエハアライメント検出系80に新たな照明条件が追加された場合、新たな照明条件でウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれが調整されていないため、新たな照明条件でウエハアライメント検出系80を調整する必要がある。
【0079】
上述したように、従来技術では、新たな照明条件においてデフォーカス特性が0に近づくようにウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれを調整していたが、デフォーカス特性が0になっても波形対称性が規格を満たさない場合がある。この場合、検出誤差が発生してしまうため、様々な条件のウエハプロセスに対して精度よくアライメントすることができなくなる。
【0080】
一方、本実施形態のように、新たな照明条件でのウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれ量に対する波形対称性の情報を予め有しておけば、波形対称性及びデフォーカス特性の規格を満たすように、ウエハアライメント検出系80を調整することができる。その結果、新たな照明条件が追加された場合でも、検出誤差を低減し、精度よくアライメントすることが可能となる。つまり、本特許では、ウエハアライメント検出系80の最も広い波長帯域で、全ての照明σ値について、ウエハアライメント検出系80の光学系の光軸ずれ量に対する波形対称性の情報を予め取得しておく。
【0081】
また、光軸ずれ量に対する波形対称性とデフォーカス特性との関係(即ち、図15乃至図17に示すような波形対称性及びデフォーカス特性の情報)は、定期的に取り直してもよい。これにより、現在のウエハアライメント検出系80の状態を反映してウエハアライメント検出系80を調整する(即ち、光軸ずれ量の調整範囲を決定する)ことができる。
【0082】
なお、本実施形態は、ウエハアライメント検出系80の調整だけではなく、同様に、レチクルアライメント検出系70の調整やその他の位置検出装置の調整にも適用することができる。
【0083】
露光装置1の動作において、まず、レチクルアライメント検出系70及びウエハアライメント検出系80を調整する。レチクルアライメント検出系70及びウエハアライメント検出系80は、上述したように、波形対称性及びデフォーカス特性が規格値に収まるように調整される。
【0084】
次いで、波形対称性及びデフォーカス特性が規格値に収まるように調整されたレチクルアライメント検出系70及びウエハアライメント検出系80を用いて、レチクル20とウエハ40との位置合わせ(アライメント)を行う。この際、レチクルアライメント検出系70及びウエハアライメント検出系80は、様々な条件のウエハプロセスに対して検出誤差を低減することができるため、レチクル20とウエハ40とを高い精度で位置合わせすることができる。
【0085】
次いで、レチクル20のパターンをウエハ40に露光する。光源12から発せられた光束は、照明光学系14によってレチクル20を照明する。レチクル20のパターンを反映する光は、投影光学系30によってウエハ40上に結像する。この際、レチクル20とウエハ40とは、高精度に位置合わせされているため、高い重ね合わせ精度でレチクル20のパターンをウエハ40に露光することができる。従って、露光装置1は、高いスループットで経済性よく高品位なデバイス(半導体素子、LCD素子、撮像素子(CCDなど)、薄膜磁気ヘッドなど)を提供することができる。
【0086】
次に、図18及び図19を参照して、露光装置1を利用したデバイス製造方法の実施例を説明する。図18は、デバイス(半導体デバイスや液晶デバイス)の製造を説明するためのフローチャートである。ここでは、半導体デバイスの製造を例に説明する。ステップ1(回路設計)では、デバイスの回路設計を行う。ステップ2(レチクル製作)では、設計した回路パターンを形成したレチクルを製作する。ステップ3(ウエハ製造)では、シリコンなどの材料を用いてウエハを製造する。ステップ4(ウエハプロセス)は、前工程と呼ばれ、レチクルとウエハを用いてリソグラフィー技術によってウエハ上に実際の回路を形成する。ステップ5(組み立て)は、後工程と呼ばれ、ステップ4によって作成されたウエハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ6(検査)では、ステップ5で作成された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テストなどの検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップ7)される。
【0087】
図19は、ステップ4のウエハプロセスの詳細なフローチャートである。ステップ11(酸化)では、ウエハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)では、ウエハの表面に絶縁膜を形成する。ステップ13(電極形成)では、ウエハ上に電極を蒸着などによって形成する。ステップ14(イオン打ち込み)では、ウエハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)では、ウエハに感光剤を塗布する。ステップ16(露光)では、露光装置1によってレチクルの回路パターンをウエハに露光する。ステップ17(現像)では、露光したウエハを現像する。ステップ18(エッチング)では、現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)では、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行うことによってウエハ上に多重の回路パターンが形成される。かかるデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。このように、露光装置1を使用するデバイス製造方法、並びに結果物としてのデバイスも本発明の一側面を構成する。
【0088】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一側面としての露光装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】図1に示す露光装置のウエハステージ上に配置されるステージ基準プレートの構成を示す図である。
【図3】図1に示す露光装置のウエハアライメント検出系の具体的な構成を示す概略断面図である。
【図4】図3に示すウエハアライメント検出系において、照明光源でのビーム径と開口絞りでのビーム径との関係を示す図である。
【図5】図1に示す露光装置のウエハアライメント検出系の光学系のコマ収差を調整する際に使用される調整専用ウエハの一例を示す概略断面図である。
【図6】図5に示す調整専用ウエハをウエハアライメント検出系が検出した場合の検出波形(非対称波形)の一例を示す図である。
【図7】図5に示す調整専用ウエハをウエハアライメント検出系が検出した場合の検出波形(対称波形)の一例を示す図である。
【図8】図3に示すウエハアライメント検出系の光学系に光軸ずれが存在しない場合の例を示す図である。
【図9】図3に示すウエハアライメント検出系の光学系に光軸ずれが存在する場合の例を示す図である。
【図10】ウエハアライメント検出系の光学系にコマ収差及び光軸ずれが存在していない理想的な状態でアライメントマークを検出した場合に得られる検出波形を示す図である。
【図11】図10に示す検出波形でのデフォーカスに対する検出波形の中心位置を示す図である。
【図12】検出波形が対称となるようにコマ収差を調整したものの、ウエハアライメント検出系の光学系にコマ収差及び光軸ずれが残存している状態でアライメントマークを検出した場合に得られる検出波形を示す図である。
【図13】図12に示す検出波形でのデフォーカスに対する検出波形の中心位置を示す図である。
【図14】ウエハアライメント検出系の光学系の光軸ずれ(光軸ずれ量)に対する検出波形の波形対称性及びデフォーカス特性の変化を示す図である。
【図15】本実施形態におけるウエハアライメント検出系の光学系の光軸ずれ(光軸ずれ量)に対する検出波形の波形対称性及びデフォーカス特性の変化を示す図である。
【図16】本実施形態におけるウエハアライメント検出系の光学系の光軸ずれ(光軸ずれ量)に対する検出波形の波形対称性及びデフォーカス特性の変化を示す図である。
【図17】本実施形態におけるウエハアライメント検出系の光学系の光軸ずれ(光軸ずれ量)に対する検出波形の波形対称性及びデフォーカス特性の変化を示す図である。
【図18】デバイスの製造を説明するためのフローチャートである。
【図19】図18に示すステップ4のウエハプロセスの詳細なフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
1 露光装置
10 照明装置
12 光源
14 照明光学系
20 レチクル
25 レチクルステージ
27 ミラー
29 レーザ干渉計
30 投影光学系
40 ウエハ
45 ウエハステージ
47 ミラー
49a及び49b レーザ干渉計
50 ステージ基準プレート
52 レチクルアライメント検出系用基準マーク
54 ウエハアライメント検出系用基準マーク
60 フォーカス検出系
70及び75 レチクルアライメント検出系
80 ウエハアライメント検出系
801 照明光源
802 リレー光学系
803 開口絞り
804 照明系
805 偏光ビームスプリッター
806 λ/4位相板
807 対物レンズ
808 リレーレンズ
809 第1の結像光学系
810 光学部材
811 第2の結像光学系
812 光電変換素子
813 波長選択機構
814乃至817 駆動部
90 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチクルのパターンを基板に投影する投影光学系と、
前記レチクルの位置及び前記基板の位置の少なくとも一方を検出する位置検出装置とを有し、
前記位置検出装置は、
位置を変更可能な光学部材を含む光学系と、
前記光学系を介して前記レチクルの位置及び前記基板の位置を検出するためのマークからの光を受光して検出信号を出力する光電変換素子と、
前記光学部材の複数の位置に対する前記検出信号の波形の対称性を示す第1の評価値の情報、及び、前記光学部材の複数の位置のそれぞれについて前記マークの前記光学系の光軸の方向の位置を変えた際に検出される前記マークの位置のずれを示す第2の評価値の情報に基づいて、前記光学部材の位置を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記第1の評価値の情報を予め有していることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の評価値及び前記第2の評価値の各々が許容値を満たすように、前記光学部材の位置を制御することを特徴とする請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
前記第1の評価値の許容値及び前記第2の評価値の許容値を設定する設定部を更に有することを特徴とする請求項2記載の露光装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記光学部材が前記第1の評価値の許容値を満たす前記光学部材の位置と前記第2の評価値の許容値を満たす前記光学部材の位置との中間に位置するように制御することを特徴とする請求項2記載の露光装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1の評価値及び前記第2の評価値の各々に重み付けした重み付け量に基づいて、前記光学部材の位置を制御することを特徴とする請求項1記載の露光装置。
【請求項6】
前記光学部材は、前記マークを照明するための光を射出する光源又は前記光学系の瞳面に配置された開口絞りを含むことを特徴とする請求項1記載の露光装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の露光装置を用いて基板を露光するステップと、
露光された前記基板を現像するステップとを有することを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−16762(P2009−16762A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180155(P2007−180155)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】