説明

鞍乗型車両の制御装置、変速装置および鞍乗型車両

【課題】容易なシフトダウンおよびシフトダウン量の調整を可能にする。
【解決手段】変速装置20は、電子制御式変速機構21と、変速機構21を制御する制御部5と、を有する。制御部5は、変速比制御部55と、ATモードが選択可能であり、かつATモードにおいて、シフトダウン許可信号101が出力された際に、シフトダウン許可モードに移行する変速モード選択部52と、自動二輪車1の車両状態に基づいてシフトダウン操作量を算出するシフトダウン操作量算出部51と、を有する。変速比制御部55は、シフトダウン許可モードにおいて、スロットル70が操作されたときに、変速装置20の変速比をシフトダウン操作量に基づいてシフトダウンさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両の制御装置、変速装置および鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変速比が連続的に変更可能な電子制御式の変速装置(以下、「ECVT(Electronically-controlled Continuously Variable Transmission)」とする。)が知られている。ECVTでは、車速、エンジン回転速度およびスロットル開度等の車両の運転状態と、変速比との関係を表す変速比マップに基づいて変速比が自動的に変更される。したがって、ECVTを搭載した車両(以下、「ECVT搭載車」とする。)では、ライダーの変速操作やクラッチ操作を要さない。このため、現在、ECVTは種々の車両に搭載されている。
【0003】
しかしながら、ECVT搭載車では、ライダーは、変速比マップ内において自動的に決められた変速比以外の変速比に任意に変更することができない。言い換えれば、変速比マップの設定以外には、変速比を任意に変更することはできない。このため、ECVT搭載車では、ライダーの意思でエンジンブレーキを有効に活用することが比較的困難である。具体的には、ライダーの意思で変速比マップの設定よりも強いエンジンブレーキを効かせることが比較的困難である。
【0004】
また、例えば、ECVT搭載車では、他の車両を追い抜くような場合に、意図的に通常よりも大きくシフトダウンして車両の加速度を増大させる所謂キックダウン操作も比較的困難である。
【0005】
このような事情に鑑み、変速比が連続的に自動変更される所謂ATモードと、ライダーの操作によって変速比が変更される所謂MTモードとの両方が選択可能なECVT搭載車が提案されている。具体的には、例えば特許文献1には、減速レバーの位置に応じて無段変速機の変速比をマニュアル設定できるようにしたECVT搭載車が提案されている。また、例えば特許文献2には、変速比を強制的に変えたり、手動でシフトダウンさせたりするスイッチが設けられたECVT搭載車が提案されている。
【特許文献1】特許第2950957号公報
【特許文献2】特開昭62−175228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ATモードとMTモードとの切り替えが可能な従来のECVT搭載車では、ATモードにおいて、意図的にシフトダウンして車両を加速または減速させようとする場合に、煩雑で手間のかかる操作が必要となる。具体的に、ATモードにおいて、意図的にシフトダウンして車両を加速または減速させるためには、
1.ATモードをMTモードに切り替える操作
2.MTモードにおいてシフトダウンする操作
3.MTモードをATモードに切り替える操作
の少なくとも3回の操作が必要となる。
【0007】
また、MTモードにおいてシフトダウン操作を行う際に、変速装置の変速比が最適な変速比になるまで、場合によっては、ライダー自身が操作スイッチの操作を複数回行って変速比を調節しなければならない。つまり、変速装置の変速比をシフトダウンさせる量については、ライダー自身が操作して調整しなければならず、シフトダウン操作が煩雑であるという問題がある。
【0008】
また、例えば、MTモードの一種として、ECVTの変速比が予め設定された複数の変速比間で疑似有段的に、自動的に変更される自動MTモードについても、同様に、シフトダウン操作が煩雑であるという問題がある。
【0009】
さらに、ライダーが操作することで、ECVTの変速比が、予め設定された複数の変速比間で変更される手動MTモードであっても、例えば、大きくシフトダウンさせるようなときには、複数回のシフトダウン操作が必要になる。よって、手動MTモードの場合も、同様に、好適なシフトダウン量のシフトダウン操作が煩雑である場合があるという問題がある。
【0010】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、容易なシフトダウンおよびシフトダウン量の調整を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る第1の制御装置は、鞍乗型車両の駆動源と駆動輪との間に配置され、連続的に変速比を変更することができる電子制御式変速装置の制御装置である。鞍乗型車両は、シフトダウン許可スイッチと、スロットルと、スロットル操作子と、スロットル操作子センサと、を有する。シフトダウン許可スイッチは、制御装置に対してシフトダウン許可信号を出力する。スロットルは、スロットル操作子によって操作される。スロットル操作子センサは、スロットル操作子の操作量およびスロットル操作子の操作速度のうち少なくともひとつを検出する。
【0012】
本発明に係る第1の制御装置は、変速比制御部と、変速モード選択部と、シフトダウン操作量算出部と、を備えている。変速比制御部は、変速装置の変速比を制御する。変速モード選択部は、鞍乗型車両の走行状態に応じて、変速比制御部が変速装置の変速比を連続的に変更するATモードが選択可能である。かつ、変速モード選択部は、ATモードにおいて、シフトダウン許可信号が出力された際に、シフトダウン許可モードに移行する。シフトダウン操作量算出部は、スロットル操作子の操作量およびスロットル操作子の操作速度の一方を少なくとも含む鞍乗型車両の車両状態に基づいてシフトダウン操作量を算出する。変速比制御部は、シフトダウン許可モードにおいて、スロットルが操作されたときに、変速装置の変速比をシフトダウン操作量に基づいてシフトダウンさせる。
【0013】
本発明に係る第2の制御装置は、鞍乗型車両の駆動源と駆動輪との間に配置された電子制御式変速装置の制御装置である。鞍乗型車両は、シフトダウン許可スイッチと、スロットルと、スロットル操作子と、スロットル操作子センサと、を有する。シフトダウン許可スイッチは、制御装置に対してシフトダウン許可信号を出力する。スロットルは、スロットル操作子によって操作される。スロットル操作子センサは、スロットル操作子の操作量およびスロットル操作子の操作速度のうち少なくともひとつを検出する。
【0014】
本発明に係る第2の制御装置は、変速比制御部と、変速モード選択部と、シフトダウン操作量算出部と、を備えている。変速比制御部は、変速装置の変速比を制御する。変速モード選択部は、前記変速比制御部が、予め定められた複数の変速比間で前記変速装置の変速比を変更するMTモードが選択可能である。かつ、変速モード選択部は、MTモードにおいて、シフトダウン許可信号が出力された際に、シフトダウン許可モードに移行する。シフトダウン操作量算出部は、スロットル操作子の操作量およびスロットル操作子の操作速度の一方を少なくとも含む鞍乗型車両の車両状態に基づいてシフトダウン操作量を算出する。変速比制御部は、シフトダウン許可モードにおいて、スロットルが操作されたときに、変速装置の変速比をシフトダウン操作量に基づいてシフトダウンさせる。
【0015】
本発明に係る変速装置は、電子制御式変速機構と、制御部と、を備えている。変速機構は、鞍乗型車両の駆動源と駆動輪との間に配置され、連続的に変速比を変更することができるものである。制御部は、変速機構を制御する。鞍乗型車両は、シフトダウン許可スイッチと、スロットルと、スロットル操作子と、スロットル操作子センサと、を有する。シフトダウン許可スイッチは、制御装置に対してシフトダウン許可信号を出力する。スロットルは、スロットル操作子によって操作される。スロットル操作子センサは、スロットル操作子の操作量およびスロットル操作子の操作速度のうち少なくともひとつを検出する。制御部は、変速比制御部と、変速モード選択部と、シフトダウン操作量算出部と、を備えている。変速比制御部は、変速装置の変速比を制御する。変速モード選択部は、鞍乗型車両の走行状態に応じて、変速比制御部が変速装置の変速比を連続的に変更するATモードが選択可能である。かつ、変速モード選択部は、ATモードにおいて、シフトダウン許可信号が出力された際に、シフトダウン許可モードに移行する。シフトダウン操作量算出部は、スロットル操作子の操作量およびスロットル操作子の操作速度の一方を少なくとも含む鞍乗型車両の車両状態に基づいてシフトダウン操作量を算出する。変速比制御部は、シフトダウン許可モードにおいて、スロットルが操作されたときに、変速装置の変速比をシフトダウン操作量に基づいてシフトダウンさせる。
【0016】
本発明に係る第1の鞍乗型車両は、駆動源と、駆動輪と、変速装置と、を備えている。駆動輪は、駆動源により駆動される。変速装置は、電子制御式変速機構と、制御部と、を備えている。変速機構は、鞍乗型車両の駆動源と駆動輪との間に配置され、連続的に変速比を変更することができるものである。制御部は、変速機構を制御する。
【0017】
本発明に係る第1の鞍乗型車両は、シフトダウン許可スイッチと、スロットルと、スロットル操作子と、スロットル操作子センサと、を有する。シフトダウン許可スイッチは、制御装置に対してシフトダウン許可信号を出力する。スロットルは、スロットル操作子によって操作される。スロットル操作子センサは、スロットル操作子の操作量およびスロットル操作子の操作速度のうち少なくともひとつを検出する。制御部は、変速比制御部と、変速モード選択部と、シフトダウン操作量算出部と、を備えている。変速比制御部は、変速装置の変速比を制御する。変速モード選択部は、鞍乗型車両の走行状態に応じて、変速比制御部が変速装置の変速比を連続的に変更するATモードが選択可能である。かつ、変速モード選択部は、ATモードにおいて、シフトダウン許可信号が出力された際に、シフトダウン許可モードに移行する。シフトダウン操作量算出部は、スロットル操作子の操作量およびスロットル操作子の操作速度の一方を少なくとも含む鞍乗型車両の車両状態に基づいてシフトダウン操作量を算出する。変速比制御部は、シフトダウン許可モードにおいて、スロットルが操作されたときに、変速装置の変速比をシフトダウン操作量に基づいてシフトダウンさせる。
【0018】
本発明に係る第2の鞍乗型車両は、駆動源と、駆動輪と、変速装置と、を備えている。駆動輪は、駆動源により駆動される。変速装置は、電子制御式変速機構と、制御部と、を備えている。変速機構は、鞍乗型車両の駆動源と駆動輪との間に配置されている。制御部は、変速機構を制御する。
【0019】
本発明に係る第2の鞍乗型車両は、シフトダウン許可スイッチと、スロットルと、スロットル操作子と、スロットル操作子センサと、を有する。シフトダウン許可スイッチは、制御装置に対してシフトダウン許可信号を出力する。スロットルは、スロットル操作子によって操作される。スロットル操作子センサは、スロットル操作子の操作量およびスロットル操作子の操作速度のうち少なくともひとつを検出する。制御部は、変速比制御部と、変速モード選択部と、シフトダウン操作量算出部と、を備えている。変速比制御部は、変速装置の変速比を制御する。変速モード選択部は、前記変速比制御部が、予め定められた複数の変速比間で前記変速装置の変速比を変更するMTモードが選択可能である。かつ、変速モード選択部は、MTモードにおいて、シフトダウン許可信号が出力された際に、シフトダウン許可モードに移行する。シフトダウン操作量算出部は、スロットル操作子の操作量およびスロットル操作子の操作速度の一方を少なくとも含む鞍乗型車両の車両状態に基づいてシフトダウン操作量を算出する。変速比制御部は、シフトダウン許可モードにおいて、スロットルが操作されたときに、変速装置の変速比をシフトダウン操作量に基づいてシフトダウンさせる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、シフトダウンおよびシフトダウン量の調節を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
《実施形態1》
《自動二輪車1の構成》
本実施形態では、所謂スクータータイプの自動二輪車1を例に挙げて本発明の実施形態の一例について説明する。図1に示すように、自動二輪車1は、ハンドル4と、パワーユニット2と、駆動輪としての後輪3とを備えている。パワーユニット2と後輪3とは、動力伝達機構6により接続されている。
【0022】
(ハンドル4)
図2は、ハンドル4の概略構成図である。ハンドル4は、図示しないステアリングヘッドパイプに接続されたハンドルバー4dを備えている。ハンドル4は、ハンドルバー4dの左端部に位置する左グリップ部4aと、ハンドルバー4dの右端部に位置する右グリップ部4bとを備えている。右グリップ部4bは、スロットル操作子71を構成している。右グリップ部4bは、ハンドルバー4dに対して回転可能である。ライダーが、このスロットル操作子71としての右グリップ部4bを回転させることで、図4に示すスロットル70が操作され、スロットル開度が調整される。
【0023】
図4に示すように、スロットル操作子71としての右グリップ部4bには、スロットル操作子センサ34が設けられている。このスロットル操作子センサ34により、スロットル操作子71の操作量が検出される。
【0024】
ここで、「スロットル操作子71の操作量」とは、ライダーがスロットル操作子71を回転させた量である。このため、スロットル操作子71とスロットル70とが、例えばワイヤ等で連結されており、スロットル操作子71によってスロットル70が直接操作される場合は、「スロットル操作子71の操作量」は、スロットル開度と一対一に対応する。一方、スロットル70がスロットル操作子71によって直接操作されない場合、例えば、スロットル70がアクチュエータにより操作される場合は、「スロットル操作子71の操作量」は、スロットル開度には一対一に対応しない場合がある。
【0025】
各グリップ部4a、4b近傍には、ブレーキレバー4cが配置されている。ライダーがこのブレーキレバー4cを操作することで自動二輪車1のブレーキ(図示せず)が駆動されると共に、後述するように、ECU5に対してブレーキ信号104が出力される。
【0026】
左グリップ部4aの右側部分には、スイッチボックス40が配置されている。スイッチボックス40には、シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42、シフトダウン許可スイッチ43およびモード選択スイッチ44等の各種操作スイッチが配置されている。
【0027】
シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42、シフトダウン許可スイッチ43およびモード選択スイッチ44等の各種操作スイッチは、図3に示すように、ライダーの左手60の親指60aで操作可能な位置に配置されている。具体的に、各種操作スイッチは、スイッチボックス40の後方に向かってやや下方に傾く上面に配置されている。すなわち、各種操作スイッチは、スイッチボックス40のライダー側を向いた面に配置されている。
【0028】
ただし、本発明は、この構成に限定されない。例えば、シフトアップスイッチ41等のいくつかの操作スイッチを人差し指で操作可能なようにスイッチボックス40のライダーから視て背面側に配置するようにしてもよい。例えば、シフトダウンスイッチ42をライダー側の面に配置する一方、シフトアップスイッチ41を、ライダーから視て背面側の面に配置するようにしてもよい。言い換えれば、シフトダウンスイッチ42を親指60aで操作できるようにする一方、シフトアップスイッチ41は、人差し指で操作できるようにしてもよい。また、すべての操作スイッチを人差し指で操作可能なようにスイッチボックス40のライダーから視て背面側に配置するようにしてもよい。
【0029】
なお、シフトダウン許可スイッチ43およびモード選択スイッチ44の配置場所は、左グリップ部4aに限られない。例えば、シフトダウン許可スイッチ43およびモード選択スイッチ44の少なくとも一方を右グリップ部4bの左側部分に配置してもよい。具体的には、右グリップ部4bの左側部分にさらなるスイッチボックスを設け、そのさらなるスイッチボックスにシフトダウン許可スイッチ43およびモード選択スイッチ44の少なくとも一方を配置してもよい。その場合、さらなるスイッチボックスに配置したスイッチは、ライダーの右手の親指で操作できる位置か、若しくは、ライダーの右手の人差し指で操作できる位置に配置することが好ましい。
【0030】
また、例えば、シフトダウン許可スイッチ43およびモード選択スイッチ44の一方を、左グリップ部4aに設けられたスイッチボックス40に配置する一方、シフトダウン許可スイッチ43およびモード選択スイッチ44の他方を、右グリップ部4bに設けられたさらなるスイッチボックスに配置するようにしてもよい。
【0031】
本実施形態では、シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42、シフトダウン許可スイッチ43およびモード選択スイッチ44等の各種操作スイッチは、プッシュ式の所謂ボタン式スイッチにより構成されている。ただし、各種操作スイッチは、プッシュ式のレバーであってもよい。また、各種操作スイッチは、つまみを複数のポジション間で移動させる回転式のスイッチであってもよい。
【0032】
図3に示すように、各種操作スイッチのうち、シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42およびシフトダウン許可スイッチ43が最もライダーの左手60寄りに配置されている。言い換えれば、シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42およびシフトダウン許可スイッチ43が最も車幅方向外側に配置されている。シフトダウン許可スイッチ43は、シフトアップスイッチ41とシフトダウンスイッチ42との間に配置されている。モード選択スイッチ44は、シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42およびシフトダウン許可スイッチ43よりも左手60から離れた位置に配置されている。これは、モード選択スイッチ44は、シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42およびシフトダウン許可スイッチ43よりも使用頻度が比較的低いためである。このように、使用頻度が比較的高いシフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42およびシフトダウン許可スイッチ43を、操作の比較的しやすい左手60寄りに配置することが好ましいが、特にこの構成に限定されるわけではない。
【0033】
(パワーユニット2)
図4に示すように、駆動源としてのエンジン10と、電子制御式の変速装置20と、遠心クラッチ30と、減速機構31とを備えている。変速装置20は、変速機構21と、アクチュエータとしてのモータ22とを備えている。モータ22は、変速機構21の変速比を変更させるものである。
【0034】
変速機構21は、プライマリシーブ23と、セカンダリシーブ24とを備えている。プライマリシーブ23は、エンジン10の出力軸12に設けられており、出力軸12の回転に伴って回転する。プライマリシーブ23とセカンダリシーブ24とには、断面略V字状のベルト25が巻き掛けられている。プライマリシーブ23には、モータ22が取り付けられている。ベルト25が巻き掛けられるプライマリシーブ23のベルト溝の幅は、このモータ22によって変更される。これにより、変速機構21の変速比が連続的に変更できるようになっている。具体的には、変速機構21の変速比が無段に変更できるようになっている。
【0035】
セカンダリシーブ24は、遠心クラッチ30を介して減速機構31に接続されている。そして、減速機構31は、ベルトやチェーン、ドライブシャフト等の動力伝達機構6を介して後輪3に接続されている。
【0036】
遠心クラッチ30は、セカンダリシーブ24の回転速度に応じて断続される。具体的には、セカンダリシーブ24の回転速度が所定の回転速度未満である場合は、遠心クラッチ30は切断された状態にある。このため、セカンダリシーブ24の回転は、後輪3に伝達されない。一方、セカンダリシーブ24の回転速度が所定の回転速度以上である場合は、遠心クラッチ30が接続状態となる。このため、セカンダリシーブ24の回転は、遠心クラッチ30、減速機構31および動力伝達機構6を介して後輪3に伝達される。これにより、後輪3が回転するようになっている。
【0037】
《自動二輪車1の制御ブロック》
次に、図4を参照しながら自動二輪車1の制御ブロックについて説明する。図4に示すように、自動二輪車1の制御は、主として、制御装置としてのECU(electronic control unit)5によって行われる。ECU5は、各種設定等を記憶するメモリ57と、演算部としてのCPU(central processing unit)50と、駆動回路56とを備えている。CPU50には、シフトダウン操作量算出部51、変速モード選択部52、解除信号出力部53、シフトダウン解除部54および変速比制御部55が設けられている。
【0038】
ECU5には、各種センサおよびスイッチ等が接続されている。具体的に、ECU5には、シフトダウン許可スイッチ43、モード選択スイッチ44、シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42、スロットル開度センサ33、ブレーキレバー4c、エンジン回転速度センサ11、シーブ位置検出センサ26、セカンダリシーブ回転速度センサ27、スロットル操作子センサ34および車速センサ32が接続されている。
【0039】
シフトダウン許可スイッチ43は、ライダーによって操作された際に、シフトダウン許可信号101をECU5に対して出力する。モード選択スイッチ44は、ライダーによって操作された際に、モード選択信号102をECU5に対して出力する。スロットル開度センサ33は、自動二輪車1のスロットル開度を検出する。スロットル開度センサ33は、スロットル70に接続されている。スロットル開度センサ33は、検出したスロットル開度を、スロットル開度信号103としてECU5に対して出力する。ブレーキレバー4cは、ライダーによって操作されているときに、ブレーキ信号104をECU5に対して出力する。つまり、ブレーキレバー4cは、ライダーによってブレーキレバー4cが操作されたときからライダーがブレーキレバー4cの操作をやめるまでの間にわたってブレーキ信号104を出力し続ける。シフトアップスイッチ41は、ライダーによって操作された際に、シフトアップ信号105をECU5に対して出力する。シフトダウンスイッチ42は、ライダーによって操作された際に、シフトダウン信号106をECU5に対して出力する。
【0040】
エンジン回転速度センサ11は、エンジン10の回転速度を検出する。エンジン回転速度センサ11は、検出したエンジン10の回転速度をエンジン回転速度信号109としてECU5に対して出力する。
【0041】
シーブ位置検出センサ26は、変速機構21の変速比を検出するためのセンサである。具体的には、シーブ位置検出センサ26は、プライマリシーブ23のベルト溝の幅を検出する。例えば、本実施形態のように、プライマリシーブ23が、固定シーブ体と、固定シーブ体に対して相対的に変位可能な可動シーブ体とにより構成されている場合は、シーブ位置検出センサ26は、固定シーブ体に対する可動シーブ体の位置を検出する。そして、シーブ位置検出センサ26は、可動シーブ体の位置をシーブ位置信号110としてECU5に対して出力する。
【0042】
セカンダリシーブ回転速度センサ27は、セカンダリシーブ24の回転速度を検出する。セカンダリシーブ回転速度センサ27は、検出したセカンダリシーブ24の回転速度をECU5に対してセカンダリシーブ回転速度信号111として出力する。
【0043】
車速センサ32は、自動二輪車1の車速を検出する。車速センサ32は、検出した車速をECU5に対して出力する。なお、車速センサ32は、後輪3の回転速度を検出するものであってもよいが、例えば、車速センサ32は、減速機構31の出力軸の回転速度を検出することで車速を得るものであってもよい。また、車速センサ32は、前輪の回転速度を検出することで車速を得るものであってもよい。
【0044】
(ECU5の制御概要)
ECU5は、エンジン10の制御を行っている。具体的に、ECU5は、スロットル開度信号103や車速信号112等に基づいて、目標となるエンジン回転速度を算出する。ECU5は、エンジン回転速度信号109をモニタしながら、エンジン10の点火装置(図示せず)の点火時期およびエンジン10への燃料供給量などを調節することにより、エンジン10の回転速度等を算出された目標エンジン回転速度に制御している。
【0045】
また、ECU5は、変速装置20の制御も行っている。具体的に、ECU5は、エンジン回転速度信号109、車速信号112等から目標となる変速比を算出する。また、ECU5は、シーブ位置信号110等により変速装置20の現在の変速比を検出する。そして、ECU5は、算出された目標変速比と、検出された現在の変速比とに基づいて、PWM(pulse-width modulation)信号108を駆動回路56に出力する。駆動回路56は、入力されたPWM信号108に応じたパルス電圧をモータ22に対して印加する。これにより、変速装置20の変速比が目標変速比に制御される。
【0046】
なお、本実施形態では、変速機構21の変速比を変更するアクチュエータとして、PWM制御されるモータ22を用いる例について説明する。ただし、本発明において、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータの種類は特に限定されない。例えば、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータは、PAM(pulse amplitude modulation)制御されるモータであってもよい。また、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータは、ステップモータであってもよい。また、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータは、油圧アクチュエータ等であってもよい。
【0047】
以下、変速装置20の変速比の制御についてさらに詳細に説明する。まず、図5等を参照しながら、変速モードの選択について説明する。
【0048】
(変速モードの選択)
自動二輪車1では、ATモードと、手動MTモードと、自動MTモードとが選択可能である。図4および図5に示すように、ATモードと、手動MTモードと、自動MTモードとは、ライダーがモード選択スイッチ44を操作することにより選択可能となっている。
【0049】
図4に示すように、ライダーがモード選択スイッチ44を操作すると、モード選択スイッチ44からモード選択信号102がECU5に対して出力される。具体的に、モード選択信号102は、ECU5内の変速モード選択部52に対して出力される。モード選択信号102が変速モード選択部52に入力されると、図5に示すように、変速モードが現在の変速モードから切り替わる。例えば、現在の変速モードがATモードである場合、ライダーがモード選択スイッチ44を一度操作すると、自動MTモードに切り替わる。ライダーがモード選択スイッチ44をもう一度操作すると、今度は、自動MTモードから手動MTモードに切り替わる。ライダーがモード選択スイッチ44をさらにもう一度操作すると、手動MTモードから元のATモードに切り替わる。つまり、モード選択スイッチ44が操作されてモード選択信号102が出力されるたびに、変速モードが順に切り替わる。このように変速モードが変更されると、変速比制御部55は、変更された変速モードに応じて変速装置20の変速比を制御する。
【0050】
なお、本実施形態では、モード選択スイッチ44を操作するたびに変速モードが順に変化する例について説明するが、例えば、ATモードを選択するためのモード選択スイッチ、自動MTモードを選択するためのモード選択スイッチ、手動MTモードを選択するためのモード選択スイッチをそれぞれ別個に設けてもよい。
【0051】
「ATモード」
「ATモード」とは、自動二輪車1の走行状態に応じて、変速比制御部55によって、変速装置20の変速比が連続的かつ自動的に変更されるモードである。言い換えれば、「ATモード」とは、自動二輪車1の走行状態に応じて、変速装置20の変速比が無段に、自動的に変更されるモードである。「ATモード」は、例えば、予め定められた変速比マップに基づいて、変速装置20の変速比が、変速比制御部55によって、連続的かつ自動的に変更されるモードであってもよい。
【0052】
ECU5内のメモリ57には、自動二輪車1の車速、エンジン回転速度およびスロットル開度等の自動二輪車1の走行状態と、変速比との関係を規定した変速比マップが記憶されている。図4に示す変速比制御部55は、この変速比マップと、車速信号112およびエンジン回転速度信号109等とに基づいて目標変速比を算出する。変速比制御部55は、算出した目標変速比と、シーブ位置信号110と、セカンダリシーブ回転速度信号111とに基づいたPWM信号108を駆動回路56に出力する。駆動回路56は、PWM信号108に応じたパルス電圧をモータ22に印加する。これによりモータ22が駆動され、プライマリシーブ23のベルト溝の幅が調整される。その結果、変速装置20の変速比が目標の変速比にまで変更される。
【0053】
「MTモード」
一方、「MTモード」とは、予め定められた複数の変速比間で変速装置20の変速比が自動的に、または手動で変更されるモードである。MTモードのうち、ライダーがシフトアップスイッチ41やシフトダウンスイッチ42等の操作スイッチを操作することで、変速装置20の変速比が変更されるモードが「手動MTモード」である。すなわち、「手動MTモード」では、シフトチェンジがライダーにより行われる。なお、「MTモード」は、複数のギア間で物理的に変速比が変更される通常のマニュアルトランスミッションと区別する意味で、疑似MTモードと称呼されることもある。
【0054】
「手動MTモード」
具体的に、本実施形態では、図6に示すように、LOW側から1速、2速、3速、4速、5速という5つのほぼ固定された変速比が設定されている。なお、1速〜5速の各変速比は、完全に固定されていてもよいが、例えば、エンジン回転速度によって変化するものであってもよい。具体的に、1速〜5速の各変速比は、例えば、エンジン回転速度が大きくなるにつれて、トップ寄りになるように設定されていてもよい。手動MTモードでは、ライダーのシフトアップスイッチ41またはシフトダウンスイッチ42等の操作スイッチを操作しない限り、原則的に変速比は変化しない。言い換えれば、手動MTモードでは、ライダーのシフトアップスイッチ41またはシフトダウンスイッチ42等の操作スイッチを操作しない限り、変速装置20の変速比が各変速比間で自動的に変更されることは原則的にはない。ただし、例えば、自動二輪車1の減速時等におけるエンスト抑制などのために、例外的に強制的にシフトダウンされる場合はある。
【0055】
例えば、図6に例示するケースについて説明すると、1速で自動二輪車1の走行を開始した場合、シフトアップスイッチ41が操作されるまでは、変速装置20の変速比は1速のままである。ポイントAにおいて、ライダーがシフトアップスイッチ41を操作すると、図4に示すように、シフトアップスイッチ41からシフトアップ信号105がECU5に対して出力される。シフトアップ信号105がECU5に入力されると、ECU5内の変速比制御部55は、変速装置20の変速比を1速から2速に変更するためのPWM信号108を駆動回路56に対して出力する。駆動回路56は、そのPWM信号108に応じたパルス電圧をモータ22に対して印加する。これにより、図6に示すように、変速装置20の変速比が2速に切り替わる。同様に、ポイントBにおいて、さらにシフトアップスイッチ41が操作されると変速装置20の変速比が3速に切り替わる。
【0056】
一方、例えば、図6のポイントCにおいて、シフトダウンスイッチ42が操作されると、図4に示すように、シフトダウンスイッチ42からシフトダウン信号106がECU5に対して出力される。シフトダウン信号106がECU5に入力されると、ECU5内の変速比制御部55は、変速装置20の変速比を5速から4速に変更するためのPWM信号108を駆動回路56に対して出力する。駆動回路56は、そのPWM信号108に応じたパルス電圧をモータ22に対して印加する。これにより、図6に示すように、変速装置20の変速比が5速から4速に切り替わる。
【0057】
「自動MTモード」
MTモードのうち、ライダーの操作によらずに予め定められた複数の変速比間で変速装置20の変速比が、変速比制御部55によって自動的に変更されるモードが「自動MTモード」である。
【0058】
図7に例示するように、変速モード選択部52によって自動MTモードが選択されると、変速装置20の変速比は、ライダーの操作によらず、自動二輪車1の走行状態の変化に伴って自動的に変更されていく。ただし、自動MTモードの場合は、ATモードとは異なり、変速比は連続的には変更されない。言い換えれば、自動MTモードの場合は、ATモードのように変速比が無段に変更されない。すなわち、自動MTモードでは、予め設定された変速比の間で変速装置20の変速比が自動的に変更される。
【0059】
なお、自動MTモードにおいて、シフトチェンジのタイミングは、例えばスロットル開度等によって異なるように設定されている。具体的に、シフトアップ時において、ライダーが比較的急速に加速させるべく、スロットル70を大きく開けた場合(すなわち、スロットル開度:大の場合)は、比較的高いエンジン回転速度でシフトチェンジが行われる。一方、ライダーが比較的ゆっくりと加速すべく、スロットル70を小さく開けた場合(すなわち、スロットル開度:小の場合)は、比較的低いエンジン回転速度でシフトチェンジが行われる。シフトダウンの際もシフトアップの際と同様で、シフトチェンジのタイミングは、スロットル開度等によって異なるように設定されている。
【0060】
(シフトダウン許可モード)
「シフトダウン許可モードの概要」
図5に示すように、本実施形態では、ATモード、自動MTモードおよび手動MTモードのそれぞれからシフトダウン許可モードに移行可能となっている。ここで、「シフトダウン許可モード」とは、スロットル操作子71が操作されることにより、スロットル操作子71の操作状況に応じたシフトダウンが可能な変速モードである。すなわち、「シフトダウン許可モード」とは、ライダーが変速機構21の変速比をシフトダウンさせることで、キックダウンやエンジンブレーキの活用を行おうとする際には、ライダーの意思が反映されたシフトダウン量のシフトダウンが可能な変速モードである。
【0061】
「シフトダウン許可ATモード」
具体的に、本実施形態では、ATモードからはシフトダウン許可ATモードに移行可能となっている。ここで、「シフトダウン許可ATモード」とは、シフトダウン許可モードのうち、スロットル操作子71の操作状況に応じたシフトダウンがなされた後において、変速機構21の変速比が連続的かつ自動的に変更されていく変速モードである。
【0062】
図8に示すように、ステップS1において、ライダーによってシフトダウン許可スイッチ43が操作されると、図4に示すように、シフトダウン許可スイッチ43からECU5に対してシフトダウン許可信号101が出力される。具体的に、シフトダウン許可信号101は、変速モード選択部52に対して出力される。変速モード選択部52にシフトダウン許可信号101が入力されると、変速モード選択部52は、ATモードからシフトダウン許可ATモードに移行する。言い換えれば、シフトダウン許可信号101が入力されることで、変速モード選択部52は、ATモードにかえてシフトダウン許可ATモードを選択する。なお、シフトダウン許可ATモードに移行された後においても、スロットル操作子71の操作が行われるまでは、通常のATモードにおける変速機構21の変速比の制御に使用される通常の変速比マップに基づいて変速機構21の変速比が制御される。
【0063】
次に、図8に示すように、ステップS2において、スロットル操作子71が操作されたか否かが判断される。具体的に、図4に示すスロットル操作子センサ34からスロットル操作信号113がECU5に対して出力される。ECU5は、このスロットル操作信号113に基づいて、ライダーによりスロットル操作子71が操作されたか否かを判断する。ステップS2において、スロットル操作子71が操作されたと判断された場合は、ステップS3−1に進む。
【0064】
ステップS3−1では、シフトダウン操作量算出部51によって、シフトダウン操作量が算出される。ここで、「シフトダウン操作量」とは、スロットル操作子71の操作量およびスロットル操作子71の操作速度の少なくとも一方を含む自動二輪車1の車両状態に基づいて算出される変速機構21の変速比を変更させようとする量である。概略的には、「シフトダウン操作量」とは、自動二輪車1の車両状態から推測されるライダーの欲するシフトダウン量である。ここで、「シフトダウン量」とは、変速機構21の変速比のLOW側への変更量である。
【0065】
具体的に、本実施形態では、シフトダウン操作量は、メモリ57に記憶されているシフトダウン操作量マップを用いて算出される。ここで、シフトダウン操作量マップとは、自動二輪車1の車両状態とシフトダウン操作量との相関関係を表すマップである。なお、ここでは、シフトダウン操作量マップが、スロットル操作子71の操作量、スロットル操作子71の操作速度、自動二輪車1の車速およびエンジン10の回転速度と、シフトダウン操作量との相関関係を表すマップである場合を例に挙げて説明する。
【0066】
ただし、シフトダウン操作量マップは、自動二輪車1の車両状態の少なくともひとつとシフトダウン操作量との相関関係を表すマップである限りにおいて、特に限定されない。例えば、シフトダウン操作量マップは、スロットル操作子71の操作量およびスロットル操作子71の操作速度のみと、シフトダウン操作量との相関関係を表すマップであってもよい。また、例えば、シフトダウン操作量マップは、スロットル操作子71の操作量とスロットル操作子71の操作速度とを変数とする関数と、シフトダウン操作量との相関関係を表すマップであってもよい。
【0067】
なお、シフトダウン操作量マップの形状は特に限定されない。シフトダウン操作量マップの形状は、自動二輪車1のタイプ、使用環境等に応じて適宜決定することができる。例えば、自動二輪車1が、モーターサイクルのように、頻繁に加速および減速が行われるような機種であるような場合は、シフトダウン操作量マップの形状を比較的大きなシフトダウン操作量が算出されるような形状にしてもよい。一方、自動二輪車1が、比較的排気量が小さいスクーターのように、それほど大きな加速および減速が要求されないようなものである場合は、シフトダウン操作量マップの形状を比較的小さなシフトダウン操作量が算出されるような形状にしてもよい。
【0068】
本実施形態では、ステップS3−1において、シフトダウン操作量算出部51は、メモリ57に記憶されたシフトダウン操作量マップを読み出す。シフトダウン操作量算出部51は、このシフトダウン操作量マップに、スロットル操作信号113から得られるスロットル操作子71の操作量、およびそれを時間で微分することで算出されるスロットル操作子71の操作速度と、車速信号112から得られる車速と、エンジン回転速度信号109から得られるエンジン回転速度とを当てはめることにより、シフトダウン操作量を算出する。
【0069】
なお、シフトダウン操作量は、車速に対して常に一定であってもよいし、車速に対して一定でなくともよい。つまり、算出されるシフトダウン操作量は、車速に対する関数であってもよい。具体的に、自動二輪車1の走行状態が同一である場合に、車速が高くなるにつれてシフトダウン操作量が大きくなるようにしてもよい。また、自動二輪車1の走行状態が同一である場合に、車速が高くなるにつれてシフトダウン操作量が小さくなるようにしてもよい。
【0070】
次に、ステップS3−1に続いて、ステップS3−2が行われる。ステップS3−2では、ステップS3−1において算出されたシフトダウン操作量に基づいて、変速機構21の変速比のシフトダウンが行われる。具体的に、シフトダウン操作量算出部51は、算出したシフトダウン操作量を変速比制御部55に対して出力する。変速比制御部55は、入力されたシフトダウン操作量だけ変速機構21の変速比をシフトダウンさせる。その後、図8に示すように、シフトダウン補正ATモードに移行される。なお、シフトダウン補正ATモードにおいて、エンジン回転速度がオーバーレブにならないように、エンジン回転速度の上限を設けることが好ましい。
【0071】
なお、ステップS2において、スロットル操作子71が操作されたと判断された場合に、ステップS3−2において、常に変速機構21の変速比がシフトダウンされるとは限らない。例えば、ステップS2において、スロットル操作子71が操作されたと判断された場合であっても、スロットル70が非常にゆっくり操作され、かつスロットル70の操作量が少ないような場合などには、ステップS3−1において、シフトダウン操作量算出部51は、シフトダウン操作量をゼロと算出する。つまり、例えば、スロットル70の操作量が所定の操作量以下であり、かつスロットル70の操作速度が所定の速度以下であるような場合には、ステップS3−1において、シフトダウン操作量算出部51は、シフトダウン操作量をゼロと算出する。このような場合は、ライダーがシフトダウンすることでキックダウン操作やエンジンブレーキの活用を行おうという意思を有していない可能性が高いからである。
【0072】
また、例えば、シフトダウンさせた場合に、自動二輪車1がスリップしてしまうと予想されるような場合など、シフトダウンすることが好ましくないと判断される場合にも、ステップS3−1においてシフトダウン操作量算出部51により算出されるシフトダウン操作量はゼロとなる。つまり、本実施形態では、シフトダウン操作量を算出する際に使用される自動二輪車1の車両状態には、スロットル操作子71の操作量および操作速度、車速、エンジン回転速度と共に、車速センサ32によって検出される車速を時間で微分することで算出される自動二輪車1の加速度、スリップ状況等も含まれる。
【0073】
次に、ステップS3−2に続いて、ステップS3−3が行われる。ステップS3−3では、ECU5によって、自動二輪車1に対して所定の操作が行われたか、および自動二輪車1に所定の条件が成立したかが判断される。ステップS3−3において、自動二輪車1に対して所定の操作が行われておらず、かつ自動二輪車1に所定の条件が成立していないと判断された場合は、シフトダウン補正ATモードが続行される。一方、ステップS3−3において、自動二輪車1に対して所定の操作が行われたか、または自動二輪車1に所定の条件が成立したと判断された場合は、ステップS4に進む。そして、ステップS4において、解除信号出力部53からシフトダウン解除部54に対して解除信号107が出力される。これにより、シフトダウン補正ATモードが解除され、ステップS3−2が行われる以前の、通常のATモードにおける変速機構21の変速比の制御に使用される通常の変速比マップに基づいた変速機構21の変速比の制御に戻される。つまり、図5に示すように、ステップS4において、シフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰する。
【0074】
なお、ここではまだATモードに戻っておらず、シフトダウン許可ATモードのままである。つまり、シフトダウン許可ATモードにおいて、スロットル操作子71が操作されると、それによりシフトダウン補正ATモードに移行する。その後、自動二輪車1に対して所定の操作が行われたか、または自動二輪車1に所定の条件が成立すると、シフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに戻る。
【0075】
ステップS2において、スロットル操作子71が操作されなかったと判断された場合も同様にステップS4に進む。つまり、ステップS2において、スロットル操作子71が操作されなかったと判断された場合は、シフトダウン補正ATモードに移行せず、通常のATモードにおける変速機構21の変速比の制御に使用される通常の変速比マップに基づいた変速機構21の変速比の制御が継続して行われる。
【0076】
次に、ステップS4に続いて、ステップS5が行われる。ステップS5では、モード選択スイッチ44が操作され、モード選択スイッチ44からECU5に対してモード選択信号102が出力されたか否かが判断される。ステップS5において、ECU5に対してモード選択信号102が出力されたと判断された場合は、図5および図8に示すように、シフトダウン許可ATモードからATモードに復帰する。一方、ステップS5において、ECU5に対してモード選択信号102が出力されなかったと判断された場合は、再びステップS2に戻る。
【0077】
なお、本実施形態では、モード選択信号102がECU5に対して出力されることでシフトダウン許可ATモードからATモードに復帰するように設定した場合について説明するが、本発明は、この設定に限定されない。例えば、シフトダウン許可ATモードにおいてシフトダウン許可信号101がECU5に対して出力されたときに、シフトダウン許可ATモードからATモードに復帰するように設定してもよい。また、シフトアップ信号105やシフトダウン信号106がECU5に対して出力されたときに、シフトダウン許可ATモードからATモードに復帰するように設定してもよい。
【0078】
−シフトダウン補正ATモード−
次に、図9を参照しながら、シフトダウン補正ATモードについて、さらに詳細に説明する。本実施形態のシフトダウン補正ATモードでは、通常のATモードにおいて変速機構21の変速比の算出に用いられる変速比マップから算出される変速比より、ステップS3−1において算出されたシフトダウン操作量だけシフトダウンさせた変速比に常に制御される。言い換えれば、本実施形態のシフトダウン補正ATモードでは、通常のATモードにおいて変速機構21の変速比の算出に用いられる変速比マップをシフトダウン操作量だけLOW側に移動させた新たな変速比マップを用いて変速比が算出される。そして、変速機構21の変速比が算出された変速比になるように制御される。これにより、時には、ATモードではありえなかった、ATモードにおいて使用される変速マップXよりも外側の領域へシフトダウンされることもありえる。
【0079】
図9を参照しながら具体的に説明すると、図9中の変速比マップXが、ATモードにおいて変速比の算出に使用される通常の変速比マップである。一方、図9中の変速比マップY、Zは、シフトダウン補正ATモードにおいて変速比の算出に使用される変速比マップの例示である。図9では、説明の便宜上、シフトダウン補正ATモードにおいて変速比の算出に使用される複数の変速比マップのうち、変速比マップYおよびZのみを描画している。
【0080】
図9に示す場合であれば、シフトダウン許可ATモードにおいて、スロットル操作子71が操作されたときに算出されたシフトダウン操作量が比較的小さな場合は、シフトダウン補正ATモードでは、ATモードにおいて使用される変速比マップXから、算出された比較的小さなシフトダウン操作量だけLOW側に変位させた変速比マップYが使用される。一方、算出されたシフトダウン操作量が比較的大きな場合は、シフトダウン補正ATモードでは、ATモードにおいて使用される変速比マップXから算出された比較的大きなシフトダウン操作量だけLOW側に変位させた変速比マップZが使用される。
【0081】
このように、算出されるシフトダウン操作量によって、シフトダウン補正ATモードにおいて変速比の算出に使用される変速比マップが異なる。具体的には、算出されるシフトダウン操作量が大きくなるにつれて、シフトダウン補正ATモードで使用される変速比マップは、よりLOW側に変位したものとなる。言い換えれば、算出されるシフトダウン操作量が大きくなるにつれて、シフトダウン補正ATモードで使用される変速比マップは、より高エンジン回転速度寄りのものとなる。
【0082】
なお、シフトダウン補正ATモードにおいて使用される変速比マップは、常に、ATモードにおいて使用される変速比マップXから算出されたシフトダウン操作量だけLOW側に変位したものであるとは限らない。すなわち、シフトダウン補正ATモードにおいて使用される変速比マップは、変速比マップXから算出されたシフトダウン操作量だけLOW側に変位したものでない場合もある。例えば、算出されたシフトダウン操作量が非常に大きなものである場合などである。具体的には、変速比マップXを算出されたシフトダウン量だけLOW側に変位させると、エンジン回転速度がエンジン10の許容回転速度(すなわち、レブリミット)付近にまで上昇するか、またはレブリミットを超えて上昇してしまうと判断されるような場合には、実際の変速比マップの変位量は、算出されたシフトダウン操作量よりも小さくなる。この場合は、実際の変速比マップの変位量は、許容される最大のシフトダウン操作量に抑えられる。
【0083】
つまり、シフトダウン操作量には、許容される最大シフトダウン操作量が予め設定されており、算出されたシフトダウン操作量が最大シフトダウン操作量を超えるような場合には、最大シフトダウン操作量だけ変速機構21の変速比がシフトダウンされることとなる。言い換えれば、このような場合には、シフトダウン補正ATモードにおいて使用される変速比マップは、ATモードにおいて使用される変速比マップXから最大シフトダウン操作量だけLOW側に変位されたものとなる。
【0084】
−ステップS3−3の詳細説明−
次に、ステップS3−3における「所定の操作」および「所定の条件」について、さらに詳細に説明する。
【0085】
ステップS3−3における「所定の条件」「所定の操作」は、ライダーの加速意志、またはエンジンブレーキを活用する意志がなくなった、またはうすくなったと判断されるようなものであれば、特に限定されない。
【0086】
例えば、スロットル開度、エンジン回転速度、車速の少なくともいずれかひとつが所定の条件を満たしたときに、シフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰するようにしてもよい。具体的には、スロットル開度が一定の開度以下、または一定の開度未満となったとき、スロットル開度が、シフトダウン許可モードが選択されたときの開度にまで戻ったときに、シフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰するようにしてもよい。例えば、スロットル操作子71が現在の操作位置から、操作量で20%を超えて閉じられたときに、シフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰するようにしてもよい。
【0087】
スロットル開度が所定の期間にわたって一定であったときに、シフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰するようにしてもよい。
【0088】
また、エンジン回転速度が一定の回転速度以上となったときに、または一定の回転速度よりも大きくなったときに、シフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰するようにしてもよい。具体的には、レブリミットに達したときに、シフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰するようにしてもよい。
【0089】
車速が所定の速度以上または所定の速度よりも大きくなったときに、シフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰するようにしてもよい。車速を時間で微分することで得られる自動二輪車1の車両加速度が一定の加速度以下または一定の加速度よりも小さくなったときに、シフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰するようにしてもよい。
【0090】
また、例えば、シフトダウン補正ATモードが選択されてから所定の時間経過したときに、シフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰するようにしてもよい。具体的には、シフトダウン補正ATモードが選択されてから、例えば、3秒〜120秒の期間を経過したときに、シフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰するようにしてもよい。
【0091】
また、例えば、シフトダウン補正ATモードにおいて、ライダーによるブレーキレバー4cの操作状況に応じて、シフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰するようにしてもよい。具体的には、ライダーによってブレーキレバー4cが操作されたときにシフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰するようにしてもよい。ライダーによるブレーキレバー4cの操作が開始されてから所定の時間が経過したときにシフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰するようにしてもよい。また、ライダーによるブレーキレバー4cの操作が解除されたときに、シフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰するようにしてもよい。例えば、エンジンブレーキの併用を考えた場合は、ライダーによるブレーキレバー4cの操作が解除されたときに、シフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰するようにすることが特に好ましい。
【0092】
また、例えば、シフトダウン補正ATモードにおいて、ライダーによってシフトアップスイッチ41が操作され、シフトアップ信号105がECU5に対して出力されたときに、シフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰するようにしてもよい。
【0093】
また、例えば、シフトダウン補正ATモードにおいて、ライダーによってシフトダウン許可スイッチ43が操作され、シフトダウン許可信号101がECU5に対して出力されたときに、シフトダウン補正ATモードからシフトダウン許可ATモードに復帰するようにしてもよい。
【0094】
「シフトダウン許可自動MTモード」
本実施形態では、図5に示すように、自動MTモードからはシフトダウン許可自動MTモードに移行可能となっている。ここで、「シフトダウン許可自動MTモード」とは、シフトダウン許可モードのうち、スロットル操作子71の操作状況に応じたシフトダウンがなされた後において、シフトダウンが解除されるまでは、シフトダウン後の変速比が保持され、かつ、シフトダウンが解除された後は、通常の自動MTモードの制御がなされる変速モードである。
【0095】
図10に示すように、ステップS11において、ライダーによってシフトダウン許可スイッチ43が操作されると、図4に示すように、シフトダウン許可スイッチ43からECU5に対してシフトダウン許可信号101が出力される。具体的に、シフトダウン許可信号101は、変速モード選択部52に対して出力される。変速モード選択部52にシフトダウン許可信号101が入力されると、変速モード選択部52は、自動MTモードからシフトダウン許可自動MTモードに移行させる。言い換えれば、シフトダウン許可信号101が入力されることで、変速モード選択部52は、自動MTモードにかえてシフトダウン許可自動MTモードを選択する。なお、シフトダウン許可自動MTモードに移行された後においても、スロットル操作子71の操作が行われるまでは、通常の自動MTモードと同様の変速比制御が行われる。
【0096】
次に、図10に示すように、ステップS12において、スロットル操作子71が操作されたか否かが判断される。具体的に、図4に示すスロットル操作子センサ34からスロットル操作信号113がECU5に対して出力される。ECU5は、このスロットル操作信号113に基づいて、ライダーによりスロットル操作子71が操作されたか否かを判断する。ステップS12において、スロットル操作子71が操作されたと判断された場合は、ステップS13−1に進む。
【0097】
ステップS13−1では、シフトダウン操作量算出部51によって、シフトダウン操作量が算出される。具体的に、本実施形態では、シフトダウン操作量は、メモリ57に記憶されているシフトダウン操作量マップを用いて算出される。まず、シフトダウン操作量算出部51は、メモリ57に記憶されたシフトダウン操作量マップを読み出す。シフトダウン操作量算出部51は、このシフトダウン操作量マップに、スロットル操作信号113から得られるスロットル操作子71の操作量、およびそれを時間で微分することで算出されるスロットル操作子71の操作速度と、車速信号112から得られる車速と、エンジン回転速度信号109から得られるエンジン回転速度とを当てはめることにより、シフトダウン操作量を算出する。このステップS13−1において行われるシフトダウン操作量の算出は、上述したステップS3−1において行われるシフトダウン操作量の算出と実質的に同じである。
【0098】
次に、ステップS13−1に続いて、ステップS13−2が行われる。ステップS13−2では、ステップS13−1において算出されたシフトダウン操作量に基づいて、変速機構21の変速比のシフトダウンが行われる。具体的に、シフトダウン操作量算出部51は、算出したシフトダウン操作量を変速比制御部55に対して出力する。変速比制御部55は、予め定められた1速〜5速の変速比のうち、現在の変速比から入力されたシフトダウン操作量だけシフトダウンした変速比と最も近い変速比にまで、変速機構21の変速比をシフトダウンさせる。その後、図10に示すように、シフトダウン補正自動MTモードに移行される。具体的に、シフトダウン補正自動MTモードでは、シフトダウン後の変速比が保持される。言い換えれば、シフトダウンされた状態が保持される。
【0099】
なお、本実施形態では、変速比制御部55が、予め定められた1速〜5速の変速比のうち、現在の変速比から入力されたシフトダウン操作量だけシフトダウンした変速比と最も近い変速比にまで、変速機構21の変速比をシフトダウンさせる例について説明した。しかし、本発明は、これに限定されない。例えば、変速比制御部55が、予め定められた1速〜5速の変速比のうち、現在の変速比から入力されたシフトダウン操作量だけシフトダウンした変速比と最も近いLOW側の変速比にまで、変速機構21の変速比をシフトダウンさせるようにしてもよい。また、変速比制御部55が、予め定められた1速〜5速の変速比のうち、現在の変速比から入力されたシフトダウン操作量だけシフトダウンした変速比と最も近いTOP側の変速比にまで、変速機構21の変速比をシフトダウンさせるようにしてもよい。
【0100】
次に、ステップS13−2に続いて、ステップS13−3が行われる。ステップS13−3では、ECU5によって、自動二輪車1に対して所定の操作が行われたか、および自動二輪車1に所定の条件が成立したかが判断される。ステップS13−3において、自動二輪車1に対して所定の操作が行われておらず、かつ自動二輪車1に所定の条件が成立していないと判断された場合は、シフトダウン補正自動MTモードが続行される。一方、ステップS13−3において、自動二輪車1に対して所定の操作が行われたか、または自動二輪車1に所定の条件が成立したと判断された場合は、ステップS14に進む。そして、ステップS14において、解除信号出力部53からシフトダウン解除部54に対して解除信号107が出力される。これにより、図5および図10に示すように、シフトダウン補正自動MTモードが解除され、シフトダウン許可自動MTモードに復帰する。それと共に、変速機構21の変速比が、ステップS12−3においてシフトダウンされる前の変速比にまで変更される。なお、ステップS13−3における「所定の操作」および「所定の条件」は、シフトダウン許可ATモードにおいて説明したステップS3−3の「所定の操作」および「所定の条件」と同様である。
【0101】
ステップS12において、スロットル操作子71が操作されなかったと判断された場合も同様にステップS14に進む。つまり、ステップS12において、スロットル操作子71が操作されなかったと判断された場合は、シフトダウン補正自動MTモードに移行せず、シフトダウン許可自動MTモードのままとなる。
【0102】
次に、ステップS14に続いて、ステップS15が行われる。ステップS15では、モード選択スイッチ44が操作され、モード選択スイッチ44からECU5に対してモード選択信号102が出力されたか否かが判断される。ステップS15において、ECU5に対してモード選択信号102が出力されたと判断された場合は、図5および図10に示すように、シフトダウン許可自動MTモードから自動MTモードに復帰する。一方、ステップS15において、ECU5に対してモード選択信号102が出力されなかったと判断された場合は、再びステップS12に戻る。
【0103】
なお、本実施形態では、モード選択信号102がECU5に対して出力されることでシフトダウン許可自動MTモードから自動MTモードに復帰するように設定した場合について説明する。しかし、本発明は、この設定に限定されない。例えば、シフトダウン許可自動MTモードにおいて、シフトダウン許可信号101がECU5に対して出力されたときに、シフトダウン許可自動MTモードから自動MTモードに復帰するように設定してもよい。また、シフトダウン許可自動MTモードにおいて、シフトアップ信号105やシフトダウン信号106がECU5に対して出力されたときに、シフトダウン許可自動MTモードから自動MTモードに復帰するように設定してもよい。言い換えれば、ステップS15において、シフトダウン許可信号101が出力されたか否か、若しくは、シフトアップ信号105やシフトダウン信号106が出力されたか否かを判断するようにしてもよい。
【0104】
なお、本実施形態では、ステップS13−2においてシフトダウンされた後、シフトダウンされた変速比が保持される例について説明したが、例えば、図11に示すようにシフトダウンされた後において、通常の自動MTモードの変速比制御プログラムよりもLOW側の変速比制御プログラムに基づいて、変速比が自動的に変更されていくようにしてもよい。
【0105】
「シフトダウン許可手動MTモード」
本実施形態では、図5に示すように、手動MTモードからはシフトダウン許可手動MTモードに移行可能となっている。ここで、「シフトダウン許可手動MTモード」とは、スロットル操作子71が操作されることによりシフトダウンされた後は、ライダーのシフトチェンジ操作がない限りは、変速機構21の変速比が、予め定められた複数の変速比のいずれかに固定される変速モードである。
【0106】
図12に示すように、ステップS21において、ライダーによってシフトダウン許可スイッチ43が操作されると、図4に示すように、シフトダウン許可スイッチ43からECU5に対してシフトダウン許可信号101が出力される。具体的に、シフトダウン許可信号101は、変速モード選択部52に対して出力される。変速モード選択部52にシフトダウン許可信号101が入力されると、変速モード選択部52は、手動MTモードからシフトダウン許可手動MTモードに移行させる。言い換えれば、シフトダウン許可信号101が入力されることで、変速モード選択部52は、手動MTモードにかえてシフトダウン許可手動MTモードを選択する。
【0107】
次に、図12に示すように、ステップS22において、スロットル操作子71が操作されたか否かが判断される。具体的に、図4に示すスロットル操作子センサ34からスロットル操作信号113がECU5に対して出力される。ECU5は、このスロットル操作信号113に基づいて、ライダーによりスロットル操作子71が操作されたか否かを判断する。ステップS22において、スロットル操作子71が操作されたと判断された場合は、ステップS23−1に進む。
【0108】
ステップS23−1では、シフトダウン操作量算出部51によって、シフトダウン操作量が算出される。本実施形態では、ステップS23−1において、シフトダウン操作量算出部51は、メモリ57に記憶されたシフトダウン操作量マップを読み出す。シフトダウン操作量算出部51は、このシフトダウン操作量マップに、スロットル操作信号113から得られるスロットル操作子71の操作量、およびそれを時間で微分することで算出されるスロットル操作子71の操作速度と、車速信号112から得られる車速と、エンジン回転速度信号109から得られるエンジン回転速度とを当てはめることにより、シフトダウン操作量を算出する。なお、ステップS23−3における「所定の操作」および「所定の条件」は、シフトダウン許可ATモードにおいて説明したステップS3−3の「所定の操作」および「所定の条件」と同様である。
【0109】
次に、ステップS23−1に続いて、ステップS23−2が行われる。ステップS23−2では、ステップS23−1において算出されたシフトダウン操作量に基づいて、変速機構21の変速比のシフトダウンが行われる。具体的に、シフトダウン操作量算出部51は、算出したシフトダウン操作量を変速比制御部55に対して出力する。変速比制御部55は、予め定められた1速〜5速の変速比のうち、現在の変速比から入力されたシフトダウン操作量だけシフトダウンした変速比と最も近い変速比にまで、変速機構21の変速比をシフトダウンさせる。その後、図12に示すように、シフトダウン後の変速比が保持される。言い換えれば、シフトダウンされた状態が保持される。
【0110】
例えば、図13に示すように、シフトダウン許可自動MTモードにおいて、変速機構21の変速比が5速であるポイントBにおいてスロットル操作子71が比較的小さく操作されると、シフトダウン操作量算出部51によって、比較的小さなシフトダウン操作量が算出される。そして、変速機構21の変速比が、予め定められた1速〜5速の変速比のうち、ポイントBにおける変速機構21の変速比から算出されたシフトダウン操作量だけシフトダウンした変速比と最も近い変速比にまでシフトダウンされる。図13に示す例では、実線で示すように、3速にまでシフトダウンされる。シフトダウン後は、3速にてシフト保持される。
【0111】
一方、ポイントBにおいてスロットル操作子71が比較的大きく操作されると、シフトダウン操作量算出部51によって、比較的大きなシフトダウン操作量が算出される。そして、変速機構21の変速比が、予め定められた1速〜5速の変速比のうち、ポイントBにおける変速機構21の変速比から算出されたシフトダウン操作量だけシフトダウンした変速比と最も近い変速比にまでシフトダウンされる。図13に示す例では、破線で示すように、2速にまでシフトダウンされる。シフトダウン後は、2速にてシフト保持される。
【0112】
なお、シフトダウン許可手動MTモードにおいても、上述のシフトダウン許可自動MTモードと同様に、変速機構21の変速比を算出されたシフトダウン操作量だけシフトダウンさせた場合に、予め設定されている最もLOW側の1速よりもさらにLOW側の変速比となるような場合は、1速にまでシフトダウンされることとなる。
【0113】
なお、本実施形態では、変速比制御部55が、予め定められた1速〜5速の変速比のうち、現在の変速比から入力されたシフトダウン操作量だけシフトダウンした変速比と最も近い変速比にまで、変速機構21の変速比をシフトダウンさせる例について説明した。しかし、本発明は、これに限定されない。例えば、変速比制御部55が、予め定められた1速〜5速の変速比のうち、現在の変速比から入力されたシフトダウン操作量だけシフトダウンした変速比と最も近いLOW側の変速比にまで、変速機構21の変速比をシフトダウンさせるようにしてもよい。また、変速比制御部55が、予め定められた1速〜5速の変速比のうち、現在の変速比から入力されたシフトダウン操作量だけシフトダウンした変速比と最も近いTOP側の変速比にまで、変速機構21の変速比をシフトダウンさせるようにしてもよい。
【0114】
次に、ステップS23−2に続いて、ステップS23−3が行われる。ステップS23−3では、ECU5によって、自動二輪車1に対して所定の操作が行われたか、および自動二輪車1に所定の条件が成立したかが判断される。ステップS23−3において、自動二輪車1に対して所定の操作が行われておらず、かつ自動二輪車1に所定の条件が成立していないと判断された場合は、シフトダウン補正自動MTモードが続行される。一方、ステップS23−3において、自動二輪車1に対して所定の操作が行われたか、または自動二輪車1に所定の条件が成立したと判断された場合は、ステップS24に進む。そして、ステップS24において、解除信号出力部53からシフトダウン解除部54に対して解除信号107が出力される。これにより、シフトダウンが解除される。つまり、変速機構21の変速比がシフトダウン前の変速比にまで変更される。なお、ステップS23−3における「所定の操作」および「所定の条件」は、シフトダウン許可ATモードにおいて説明したステップS3−3の「所定の操作」および「所定の条件」と同様である。
【0115】
ステップS22において、スロットル操作子71が操作されなかったと判断された場合も同様にステップS24に進む。つまり、ステップS22において、スロットル操作子71が操作されなかったと判断された場合は、シフトダウン許可手動MTモードに移行前の変速比がそのまま維持される。
【0116】
次に、ステップS24に続いて、ステップS25が行われる。ステップS25では、モード選択スイッチ44が操作され、モード選択スイッチ44からECU5に対してモード選択信号102が出力されたか否かが判断される。ステップS25において、ECU5に対してモード選択信号102が出力されたと判断された場合は、図5および図12に示すように、シフトダウン許可手動MTモードから手動MTモードに復帰する。一方、ステップS25において、ECU5に対してモード選択信号102が出力されなかったと判断された場合は、再びステップS22に戻る。
【0117】
なお、本実施形態では、モード選択信号102がECU5に対して出力されることでシフトダウン許可手動MTモードから手動MTモードに復帰するように設定した場合について説明するが、本発明は、この設定に限定されない。例えば、シフトダウン許可手動MTモードにおいて、シフトダウン許可信号101がECU5に対して出力されたときに、シフトダウン許可手動MTモードから手動MTモードに復帰するように設定してもよい。また、シフトダウン許可手動MTモードにおいて、シフトアップ信号105やシフトダウン信号106がECU5に対して出力されたときに、シフトダウン許可手動MTモードから手動MTモードに復帰するように設定してもよい。言い換えれば、ステップS25において、シフトダウン許可信号101が出力されたか否か、若しくは、シフトアップ信号105やシフトダウン信号106が出力されたか否かを判断するようにしてもよい。
【0118】
《作用および効果》
本実施形態では、ATモードにおいて、シフトダウン許可スイッチ43を予め操作しておくことで、スロットル操作子71の操作という、通常行われる操作であって、きわめて簡単な操作によって、容易にシフトダウンさせることができる。これにより、ATモードにおけるキックダウン操作やエンジンブレーキの活用がより容易に実施可能になる。
【0119】
また、本実施形態では、シフトダウン量は、スロットル操作子71の操作量等の自動二輪車1の運転状態に応じて算出される。このため、自動二輪車1の運転状態に応じたシフトダウンが、スロットル操作子71の操作のみによって行われることとなる。言い換えれば、ライダーは、シフトダウン量を自らの意思で容易に調節することができる。
【0120】
例えば、ATモードおよびMTモードの両方が選択可能な従来の自動二輪車においても、シフトダウン操作は可能である。しかしながら、従来の自動二輪車の場合、変速装置の変速比をシフトダウンするためには、
1.モード選択スイッチを操作して、ATモードからMTモードに変更する。
2.シフトダウンスイッチを操作してシフトダウンを行う。
という少なくとも2つの操作が必要となる。大きくシフトダウンさせようとすると、上記2つの操作に加え、さらにシフトダウンスイッチを操作しなければならない。このため、変速装置の変速比の操作が煩雑であるばかりか、迅速にシフトダウン操作を行うことが困難である。
【0121】
また、手動MTモードにおいても、大幅に、具体的には2速以上シフトダウンさせようとすると、複数回のシフトチェンジ操作が要求される。
【0122】
それに対して、本実施形態では、上述のように、シフトダウン許可スイッチ43を操作して、予めシフトダウン許可モードにしておくことで、スロットル操作子71の操作という、通常の運転時に行われるきわめて簡単な操作のみによって、ライダーの意思に合致したシフトダウン量のシフトダウンが迅速に実施される。したがって、ライダーは、容易かつ迅速にキックダウン操作やエンジンブレーキの活用を行うことができる。また、ライダーは、より運転に集中することができるようになる。
【0123】
また、本実施形態では、ATモードからのみならず、自動MTモードおよび手動MTモードの際からもシフトダウン許可モードに移行可能となっている。このため、自動MTモードや手動MTモードにおいても同様に、予めシフトダウン許可モードを選択しておくことで、スロットル操作子71の操作という、通常の運転時に行われるきわめて簡単な操作のみによって、ライダーの意思に合致したシフトダウン量のシフトダウンが迅速に実施される。
【0124】
また、本実施形態では、所定の場合には、シフトダウン操作量がゼロと算出される。具体的に、例えば、スロットル操作子71の操作量が所定の操作量以下であり、操作速度も所定の操作速度以下であるような場合には、シフトダウン操作量がゼロと算出される。これによれば、ライダーがシフトダウンを意図しない場合に、シフトダウンが自動的になされてしまうことを抑制することができる。つまり、ライダーの意思がより確実に反映された運転が可能となる。
【0125】
また、シフトダウンした場合にスリップが予想されるような場合等においても、シフトダウン操作量がゼロと算出される。これにより、ライダーの意思が反映され、かつ安定性の高い走行が可能となる。
【0126】
ところで、スロットル操作子71の操作量や操作速度が同じであっても、車速やエンジン回転速度が異なれば、好適なシフトダウン量も異なる。ここで、本実施形態では、シフトダウン操作量は、スロットル操作子71の操作量や操作速度のみならず、車速やエンジン回転速度等も考慮した上で算出される。このため、より好適なシフトダウン操作量の算出が可能となる。
【0127】
また、シフトダウン操作量の算出に、シフトダウン操作量マップを用いることによって、シフトダウン操作量の算出が容易となる。このため、シフトダウン操作量算出部51の構成を簡単にすることができる。
【0128】
本実施形態では、シフトダウン補正ATモードでは、通常のATモードにおいて変速機構21の変速比の算出に用いられる変速比マップから算出された変速比よりシフトダウン操作量だけシフトダウンさせた変速比に常に制御される。言い換えれば、シフトダウン補正ATモードでは、通常のATモードにおいて変速機構21の変速比の算出に用いられる変速比マップをシフトダウン操作量だけLOW側に移動させた新たな変速比マップを用いて変速比が算出される。これによれば、シフトダウンによる加速効果および減速効果を変速速度領域の全域において利用することが可能となる。したがって、自動二輪車1のよりなめらかな加速が可能となる。
【0129】
また、本実施形態では、自動二輪車1に対して所定の操作が行われた際、および自動二輪車1に所定の条件が成立した際に、シフトダウンが解除される。このように、本実施形態では、シフトダウンの解除が、非常に簡単な操作により可能となっている。
【0130】
特に、スロットル開度、エンジン回転速度、車速の少なくともいずれかひとつが所定の条件を満たしたときにシフトダウンが解除されるように設定した場合や、シフトダウン許可モードが選択されてから所定の時間経過したときにシフトダウンが解除されるように設定した場合は、ライダーが特別な操作をすることなく、シフトダウンを解除することが可能となる。このため、シフトダウンの解除が特に容易となる。したがって、ライダーは、運転に集中しやすくなる。
【0131】
また、この場合は、シフトダウンの解除に特別な操作が必要ではないため、確実にシフトダウンが解除される。つまり、ライダーの不注意等によるシフトダウンの解除忘れが抑制される。
【0132】
さらにこの場合は、シフトダウンを解除させる復帰スイッチを特段設ける必要がない。したがって、操作スイッチの構成を簡素化できる。その結果、自動二輪車1を低コスト化することができる。
【0133】
また、シフトダウン許可モードにおいて、ライダーによるブレーキレバー4cの操作状況や、ライダーによるシフトアップスイッチ41またはシフトダウン許可スイッチ43の操作によってシフトダウンが解除されるように設定した場合は、シフトダウンしたいというライダーの意志がなくなるまでは、シフトダウンが継続され、ライダーがシフトダウンを解除したいと欲したときには、確実にシフトダウンが解除される。つまり、ライダーの意志をより的確に反映することが可能となる。
【0134】
また、ライダーによるブレーキレバー4cの操作が解除されたときにシフトダウンが解除されるようにすることで、エンジンブレーキのより効果的な活用が可能となる。
【0135】
また、シフトダウンを解除するための解除スイッチをシフトダウン許可スイッチ43またはシフトアップスイッチ41と共通化することで、操作スイッチの構成をシンプルにすることができる。その結果、操作スイッチのレイアウトの自由度が向上する。また、操作スイッチの操作の煩雑化が抑制される。それと共に、自動二輪車1のコストを低下させることができる。
【0136】
本実施形態では、シフトダウン許可スイッチ43等の各種スイッチは、プッシュ式のスイッチである。このため、ライダーが操作スイッチを容易に操作することができる。本実施形態では、ボタン式のスイッチにより操作スイッチを構成するようにしたが、操作スイッチをレバー式のスイッチにしてもよい。
【0137】
また、本実施形態では、シフトダウン許可スイッチ43等の各種スイッチは、ライダーの親指60aにより操作可能となっている。ライダーの親指60aは、自動二輪車1の操舵中において、他の指よりも比較的自由に動かすことができる。このため、シフトダウン許可スイッチ43等の各種スイッチの操作性が向上されている。ブレーキレバー4cを握っているときには、他の指よりも特に自由に動かし易く、ブレーキ操作と各種スイッチ操作との同時操作が比較的容易である。
【0138】
また、本実施形態では、シフトダウン許可スイッチ43等の各種スイッチは、スロットルを操作する右グリップ部4bとは反対側の左グリップ部4aに配置されている。このため、スロットル操作と同時に操作スイッチを操作することが比較的容易である。
【0139】
<変形例1>
以下、上記実施形態の変形例について説明する。なお、以下の変形例の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素を上記実施形態と共通の参照符号で説明し、説明を省略する。
【0140】
上記実施形態では、ATモードからはシフトダウン許可ATモードに、自動MTモードからはシフトダウン許可自動MTモードに、手動MTモードからはシフトダウン許可手動MTモードに、それぞれ移行する例について説明した。しかし、本発明は、これに限定されない。
【0141】
例えば、図14に示すように、ATモードにおいて、シフトダウン許可スイッチ43が操作された際に、シフトダウン許可手動MTモードに移行するようにしてもよい(ステップS1を参照)。この場合は、図15に示すように、ポイントAにおいてスロットル操作子71が操作されてシフトダウンが行われた後は、算出されたシフトダウン操作量に応じて、予め定められた複数の変速比のいずれかで保持されることとなる。
【0142】
本変形例1では、ステップS3−3において、自動二輪車1に対して所定の操作が行われたか、または自動二輪車1に所定の条件が成立したと判断された場合は、ステップS4’に進む。そして、ステップS4’において、シフトダウンが解除される。
【0143】
また、ATモードから、シフトダウン許可自動MTモードに移行するようにしてもよい。自動MTモードから、シフトダウン許可ATモードまたはシフトダウン許可手動MTモードに移行するようにしてもよい。手動MTモードから、シフトダウン許可自動MTモードまたはシフトダウン許可ATモードに移行するようにしてもよい。
【0144】
さらには、ATモードから移行するシフトダウン許可モードを、シフトダウン許可ATモード、シフトダウン許可自動MTモードおよびシフトダウン許可手動MTモードの中から、ライダーが選択できるようになっていてもよい。自動MTモードから移行するシフトダウン許可モードを、シフトダウン許可ATモード、シフトダウン許可自動MTモードおよびシフトダウン許可手動MTモードの中から、ライダーが選択できるようになっていてもよい。手動MTモードから移行するシフトダウン許可モードを、シフトダウン許可ATモード、シフトダウン許可自動MTモードおよびシフトダウン許可手動MTモードの中から、ライダーが選択できるようになっていてもよい。
【0145】
<変形例2>
上記実施形態では、シフトダウン許可スイッチ43を別途設け、シフトダウン許可スイッチ43の操作によってシフトダウン許可モードに移行する例について説明した。ただし、本発明はこの構成に限定されない。本変形例2では、シフトダウン許可スイッチ43を別途設けず、シフトダウンスイッチ42の操作によりシフトダウン許可モードに移行する例について説明する。
【0146】
図16は、本変形例2におけるハンドル4部分の概略構成図である。本変形例2では、スイッチボックス40に、シフトダウン許可スイッチ43は設けられていない。スイッチボックス40の左側には、シフトアップスイッチ41とシフトダウンスイッチ42とのみが配置されている。このように、スイッチボックス40の左側に配置するスイッチの数量が比較的少ないため、シフトアップスイッチ41とシフトダウンスイッチ42とは、それぞれ上記実施形態よりも大きく形成されている。
【0147】
図17に示すように、本変形例2では、ATモードからシフトダウン許可ATモードに移行することは可能である。しかし、自動MTモードや手動MTモードからはシフトダウン許可モードに移行することはできない。
【0148】
図18に示すように、本変形例2では、ATモードにおいてシフトダウンスイッチ42を操作することにより出力されるシフトダウン信号106がシフトダウン許可信号101となる。すなわち、図19に示すように、ATモードにおいて、ステップS31で、ライダーによってシフトダウンスイッチ42が操作されると、シフトダウン許可信号101としてのシフトダウン信号106がECU5に対して出力される。ECU5にシフトダウン信号106が入力されると、変速モード選択部52により、シフトダウン許可ATモードが選択される。その他のステップS2〜S5に関しては、実施形態において説明したステップS2〜S5と同様である。
【0149】
《作用および効果》
本変形例2では、シフトダウンスイッチ42の操作によりシフトダウン許可モードへ移行する。このため、シフトダウン許可スイッチ43を別途に設ける必要がなく、その分シフトアップスイッチ41とシフトダウンスイッチ42とをそれぞれ大きくすることができる。これにより、ライダーの操作性が向上する。また、操作スイッチの数量が減るため、ライダーの操作が簡単となる。
【0150】
<変形例3>
上記実施形態では、シフトダウン許可スイッチ43から出力されるシフトダウン許可信号101が出力された際に、シフトダウン許可モードに移行する例について説明した。しかし、本発明は、これに限定されない。例えば、本変形例3のように、モード選択スイッチ44から出力されるモード選択信号102によりシフトダウン許可モードに移行するようにしてもよい。
【0151】
具体的に、図20に示すようにモード選択信号102が出力されることで、ATモード、シフトダウン許可モードおよび手動MTモードが切り替えられるように設定されていてもよい。具体的に、本変形例3では、ATモードにおいて、モード選択信号102が出力されると、シフトダウン許可ATモードに切り替えられる。シフトダウン許可モードにおいて、モード選択信号102が出力されると、手動MTモードに切り替えられる。手動MTモードにおいて、モード選択信号102が出力されると、ATモードに切り替えられる。そして、シフトダウン許可モードでは、上記実施形態と同様に、スロットル操作信号113に基づいて、シフトダウンが行われると共に、シフトダウン補正ATモードへの移行が行われる。シフトダウン補正ATモードにおいて、解除信号107が出力されることで、変速モードがシフトダウン補正ATモードに復帰する。また、モード選択信号102にかえて、シフトダウン許可スイッチ43からシフトダウン許可信号101が出力されることで、ATモード、シフトダウン許可モードおよび手動MTモードが切り替えられるように設定されていてもよい。
【0152】
<変形例4>
上記実施形態では、ATモードと共に、手動MTモードおよび自動MTモードが選択可能である例について説明した。しかし、本発明は、これに限定されない。例えば、図21に示すように、ATモード、シフトダウン許可モードおよびシフトダウン補正ATモードのみが選択可能であってもよい。この場合、シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42等は、特段設ける必要はない。よって、シフトダウン許可スイッチ43などをより大きくすることができる。なお、本変形例4では、シフトダウン許可ATモードにおいて、モード選択信号102が出力されたときにATモードに復帰するが、例えば、シフトダウン許可ATモードにおいて、シフトダウン許可信号101が出力されたときにATモードに復帰するようにしてもよい。
【0153】
また、例えば、ATモード、シフトダウン許可モードおよびシフトダウン補正ATモードと共に、自動MTモードおよび手動MTモードの一方のみ選択可能であってもよい。また、ATモード、自動MTモード、手動MTモード以外の変速モードがさらに選択可能であってもよい。
【0154】
<変形例5>
上記実施形態では、図2に示すように、シフトダウン許可スイッチ43が左グリップ部4aに配置されたスイッチボックス40に配置されている例について説明した。しかし、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図22に示すように、シフトダウン許可スイッチ43を右グリップ部4bに配置してもよい。本変形例5のように、モード選択スイッチ44およびシフトダウン許可スイッチ43のうち、一方を右グリップ部4bに配置し、他方を左グリップ部4aに配置することで、モード選択スイッチ44およびシフトダウン許可スイッチ43の操作性を向上することができる。
【0155】
また、本変形例5のように、シフトダウン許可スイッチ43を右グリップ部4bに配置する場合、シフトダウン許可スイッチ43を、ライダーの右手親指で操作可能な位置に配置してもよい。また、シフトダウン許可スイッチ43を、ライダーの右手人差し指で操作可能な位置に配置してもよい。
【0156】
また、モード選択スイッチ44を右グリップ部4bに配置し、シフトダウン許可スイッチ43を左グリップ部4aに配置してもよい。
【0157】
<その他の変形例>
上記実施形態では、スロットル操作子センサ34とスロットル開度センサ33とが別個に設けられている例について説明した。しかし、スロットル70とスロットル操作子71とがワイヤ等により直接つながっているような場合には、スロットル操作子センサ34とスロットル開度センサ33とを共通のセンサにより構成してもよい。例えば、スロットル開度センサ33によりスロットル操作子センサ34を兼ねさせてもよい。
【0158】
上記実施形態では、電子制御式変速装置として、ベルト式のECVTを用いる場合について説明した。ただし、電子制御式変速装置は、ベルト式以外のECVTであってもよい。例えば、電子制御式変速装置は、トロイダル式のECVTであってもよい。
【0159】
上記実施形態では、スクータータイプの自動二輪車1を例に挙げて本発明の実施形態の一例について説明した。ただし、本発明の鞍乗型車両は、上記自動二輪車1に限定されるものではない。本発明に係る鞍乗型車両は、所謂狭義のモーターサイクル、モペット、オフロード車であってもよい。また、本発明に係る鞍乗型車両は、ATV(All Terrain Vehicle)等であってもよい。
【0160】
上記実施形態では、シフトアップスイッチ41、シフトダウンスイッチ42、シフトダウン許可スイッチ43およびモード選択スイッチ44等の各種操作スイッチが、プッシュ式の所謂ボタン式スイッチにより構成されている例について説明した。ただし、各種操作スイッチは、プッシュ式のレバーであってもよい。また、各種操作スイッチは、つまみを複数のポジション間で移動させる回転式のスイッチであってもよい。
【0161】
上記実施形態では、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータとして、PWM制御されるモータ22を用いる例について説明した。ただし、本発明において、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータの種類は特に限定されない。例えば、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータは、PAM(pulse amplitude modulation)制御されるモータであってもよい。また、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータは、ステップモータであってもよい。また、変速装置20の変速比を変更するアクチュエータは、油圧アクチュエータ等であってもよい。
【0162】
上記実施形態では、シフトダウン操作量をシフトダウン操作量マップに基づいて算出する例について説明した。ただし、本発明において、シフトダウン操作量の算出方法は特に限定されるものではない。例えば、自動二輪車1の車両状態から、特定の関数等を用いることで算出するようにしてもよい。
【0163】
上記実施形態では、シフトダウン許可ATモードでは、算出されるシフトダウン操作量が最大シフトダウン操作量を超えない限り、原則として、ATモードにおいて使用される変速比マップから算出されたシフトダウン量だけLOW側に変位させた変速比マップが使用される例について説明した。言い換えれば、上記実施形態では、シフトダウン許可ATモードでは、原則として、算出されたシフトダウン操作量だけシフトダウンされる例について説明した。しかし、シフトダウン許可ATモードにおいて、常に算出されたシフトダウン操作量だけシフトダウンさせなくともよい。
【0164】
例えば、シフトダウン許可ATモードにおいて使用される変速比マップの数量を限定してもよい。具体的には、シフトダウン許可ATモードにおいて使用される変速比マップを図9に示す変速比マップYおよびZのみとして、算出されるシフトダウン操作量が所定のシフトダウン操作量以上である場合は、変速比マップZにより変速比が算出される一方、算出されるシフトダウン操作量が所定のシフトダウン操作量未満である場合は変速比マップYにより変速比が算出されるようにしてもよい。
【0165】
上記実施形態では、モード選択スイッチ44を操作するたびに変速モードが順に変化する例について説明したが、例えば、ATモードを選択するためのモード選択スイッチ、自動MTモードを選択するためのモード選択スイッチ、手動MTモードを選択するためのモード選択スイッチをそれぞれ別個に設けてもよい。
【0166】
シフトダウン許可モードを解除するための解除スイッチを別個に設けてもよい。その場合、解除スイッチを、シフトダウン許可スイッチ43と同じ左グリップ部4aに配置してもよい。また、解除スイッチを、シフトダウン許可スイッチ43とは反対側の右グリップ部4bに配置してもよい。
【0167】
《実施形態2》
実施形態1における変速装置20の代わりに、例えば、図23に示すように、Vベルトが金属製のベルトで構成された変速装置260を採用することができる。なお、図23において、図4に記載された実施形態の変速装置と、同じ作用を奏する部材又は部位には、同じ符号を付している。ただし、図23では、ECU5の内部構成は、実施形態1と一致しているため、図示を省略している。
【0168】
この実施形態では、Vベルトが金属製のベルトで構成された変速装置260(以下、適宜「金属ベルトCVT」という。)は、図23に示すように、Vベルトを金属製のベルト264で構成した以外にも、種々の変更を行っている。
【0169】
この金属ベルトCVT260は、クラッチ35と、プライマリ回転センサ261と、油圧シリンダ267A、267Bと、油圧制御弁267Cとを備えている。
【0170】
クラッチ35は、エンジン10の出力軸12と金属ベルトCVT260の入力軸13との間に配設されている。クラッチ35は、エンジン10の出力軸12と金属ベルトCVT260の入力軸13との間で、動力の伝達を断続する。本実施形態におけるクラッチ35は、電子制御式の多板クラッチである。そのため、クラッチ35の断続は、電子制御にて、自動的に行われる。クラッチ35の接続時においては、プライマリシーブ23には、クラッチ35を介して、エンジン10の駆動力が伝達される。プライマリシーブ23に伝達される駆動力は、ベルト264を介してセカンダリシーブ24に伝達される。
【0171】
プライマリ回転速度センサ261は、プライマリシーブ23の回転速度を検出する。プライマリ回転速度センサ261は、検出したプライマリシーブ23の回転速度をECU5に対してシーブ回転速度信号114として出力する。
【0172】
プライマリシーブ23およびセカンダリシーブ24は、それぞれ可動シーブ体23a、24aと固定シーブ体23b、24bとを備えている。可動シーブ体23bは、金属ベルト260の入力軸13の軸方向に対して移動可能なように構成されている。また、可動シーブ体24bは、金属ベルトCVT260の出力軸14の軸方向に対して移動可能なように構成されている。
【0173】
プライマリ回転センサ261は、プライマリシーブ23の回転速度を検出している。この実施形態では、ECU5は、金属ベルトCVT260の変速比を、プライマリ回転センサ261で検出されたプライマリシーブ23の回転速度と、車速センサ32によって検出される鞍乗型車両の車速との比で算出している。具体的にいうと、金属ベルトCVT260の変速比は、ECU5にて、シーブ回転速度信号114と車速信号112との比で算出される。なお、金属ベルトCVT260の変速比は、プライマリ回転センサ261で検出されたプライマリシーブ23の回転速度と、セカンダリシーブ回転速度センサ27によって検出されるセカンダリシーブ24の回転速度との比で算出してもよい。つまり、金属ベルトCVT260の変速比は、ECU5にて、シーブ回転速度信号114とセカンダリシーブ回転速度信号111との比で算出されるものであってもよい。
【0174】
油圧シリンダ267Aは、プライマリシーブ23の溝幅を調整する。この実施形態では、油圧シリンダ267Aは、プライマリシーブ23を構成する可動シーブ体23bに押圧力を付与して、プライマリシーブ23の溝幅を調整する。また、油圧シリンダ267Bは、セカンダリシーブ24の溝幅を調整する。この実施形態では、油圧シリンダ267Bは、セカンダリシーブ24を構成する可動シーブ体24bに押圧力を付与して、セカンダリシーブ24の溝幅を調整する。油圧制御弁267Cは、油圧シリンダ267Aと267Bとに付与する油圧を調整する弁である。油圧制御弁267Cは、油圧シリンダ267Aと267Bとのうち、一方の油圧シリンダ267A(267B)の油圧を高くするときには、他方の油圧シリンダ267B(267A)の油圧が低くなるように、油圧を制御する。油圧制御弁267Cは、ECU5によって制御される。
【0175】
この金属ベルトCVT260では、ECU5で油圧制御弁267Cを操作することによって、金属ベルトCVT260の変速比が変更される。ECU5の制御については、実施形態1と同様である。なお、この実施形態にかかる金属ベルトCVT260では、ECU5は、エンジンの回転数を制御目標値とすることに代えて、プライマリシーブ23の回転数を制御目標値にしても良い。
【0176】
<本明細書における用語等の定義>
「変速モード選択部」はATモードのみを選択することができるものでもよい。また、「変速モード選択部」は、ATモード以外のMTモード等も選択可能なものであってもよい。
【0177】
本明細書において、「MTモード」は、自動MTモードと手動MTモードとを少なくとも含む。
【0178】
「シフトダウン許可モード」とは、スロットルが操作され、かつ所定の条件が満たされたときに、自動二輪車1の車両状態に基づいて算出されるシフトダウン操作量に基づいて変速機構21の変速比が自動的にシフトダウンされる変速モードである。
【0179】
「シフトダウン許可ATモード」とは、スロットル操作子71が操作されることによりシフトダウンされた後は、変速機構21の変速比が連続的かつ自動的に変更されていく変速モードである。
【0180】
「シフトダウン許可自動MTモード」とは、スロットル操作子71が操作されることによりシフトダウンされた後は、変速機構21の変速比が、予め定められた複数の変速比間で、疑似有段的に、自動的に変更されていく変速モードである。
【0181】
「シフトダウン許可手動MTモード」とは、スロットル操作子71が操作されることによりシフトダウンされた後は、ライダーのシフトチェンジ操作がない限りは、変速機構21の変速比が、予め定められた複数の変速比のいずれかに固定される変速モードである。
【0182】
「駆動源」とは、動力を発生させるものである。「駆動源」は、例えば、内燃機関や電動モータ等であってもよい。
【0183】
「電子制御式変速装置」は、電力を使用して変速比が変速される変速装置一般をいう。「電子制御式変速装置」には、電動モータにより変速比が変更される変速装置、電子制御式の油圧アクチュエータにより変速比が変更される変速装置が含まれる。すなわち、電子制御式である限りにおいて、変速比を変更するアクチュエータの種類は特に限定されない。
【0184】
「プッシュ式のスイッチ」には、例えば、レバータイプのプッシュ式スイッチ、ボタンタイプのスイッチが含まれる。
【0185】
「自動二輪車」は、狭義の自動二輪車(モーターサイクル)のみならず、例えば、スクーター、所謂モペットを含むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明はECVT搭載車に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】本発明を実施した自動二輪車の側面図である。
【図2】ハンドル部分の概略構成図である。
【図3】ハンドルの左グリップ部を拡大した概略構成図である。
【図4】制御装置のブロック図である。
【図5】変速モードを表す概念図である。
【図6】手動MTモードにおけるシフトチェンジを説明するために例示したV−N線図である。
【図7】自動MTモードにおけるシフトチェンジを説明するために例示したV−N線図である。
【図8】シフトダウン許可ATモードのフローチャートである。
【図9】シフトダウン補正ATモードにおけるV−N線図である。
【図10】シフトダウン許可自動MTモードのフローチャートである。
【図11】変形例におけるシフトダウン補正自動MTモードにおけるV−N線図である。
【図12】シフトダウン許可手動MTモードのフローチャートである。
【図13】シフトダウン許可補正MTモードにおけるV−N線図である。
【図14】変形例1におけるシフトダウン許可手動MTモードのフローチャートである。
【図15】変形例1におけるシフトダウン補正手動MTモードにおけるV−N線図である。
【図16】変形例2におけるハンドル部分の概略構成図である。
【図17】変形例2における変速モードを表す概念図である。
【図18】変形例2における制御装置のブロック図である。
【図19】変形例2におけるシフトダウン許可ATモードのフローチャートである。
【図20】変形例3の変速モードを表す概念図である。
【図21】変形例4の変速モードを表す概念図である。
【図22】変形例5におけるハンドル部分の概略構成図である。
【図23】実施形態2における制御装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0188】
1 自動二輪車
3 後輪(駆動輪)
4 ハンドル
4a 左グリップ部
4b 右グリップ部
4c ブレーキレバー
5 ECU(制御部)
10 エンジン(駆動源)
11 エンジン回転速度センサ
20 変速装置
21 変速機構
32 車速センサ
33 スロットル開度センサ
34 スロットル操作子センサ
35 クラッチ
41 シフトアップスイッチ
42 シフトダウンスイッチ
43 シフトダウン許可スイッチ
44 モード選択スイッチ
50 CPU(演算部)
51 シフトダウン操作量算出部
52 変速モード選択部
53 解除信号出力部
54 シフトダウン解除部
55 変速比制御部
57 メモリ
60a 親指
70 スロットル
71 スロットル操作子
101 シフトダウン許可信号
102 モード選択信号
103 スロットル開度信号
107 解除信号
109 エンジン回転速度信号
110 シーブ位置信号
112 車速信号
113 スロットル操作信号
114 シーブ回転速度信号
260 金属ベルトCVT
261 プライマリ回転センサ
267C 油圧制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両の駆動源と駆動輪との間に配置され、連続的に変速比を変更することができる電子制御式変速装置の制御装置であって、
前記鞍乗型車両は、
前記制御装置に対してシフトダウン許可信号を出力するシフトダウン許可スイッチと、
スロットルと、
前記スロットルを操作するスロットル操作子と、
前記スロットル操作子の操作量および前記スロットル操作子の操作速度のうち少なくともひとつを検出するスロットル操作子センサと、
を有し、
前記変速装置の変速比を制御する変速比制御部と、
前記鞍乗型車両の走行状態に応じて、前記変速比制御部が前記変速装置の変速比を連続的に変更するATモードが選択可能であり、かつ前記ATモードにおいて、前記シフトダウン許可信号が出力された際に、シフトダウン許可モードに移行する変速モード選択部と、
前記スロットル操作子の操作量および前記スロットル操作子の操作速度の一方を少なくとも含む前記鞍乗型車両の車両状態に基づいてシフトダウン操作量を算出するシフトダウン操作量算出部と、
を備え、
前記変速比制御部は、前記シフトダウン許可モードにおいて、前記スロットルが操作されたときに、前記変速装置の変速比を前記シフトダウン操作量に基づいてシフトダウンさせる制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された制御装置において、
前記シフトダウン操作量算出部は、所定の場合には、前記シフトダウン操作量をゼロと算出する制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載された制御装置において、
前記シフトダウン操作量算出部は、前記スロットル操作子の操作量が所定の操作量以下であり、かつ前記スロットル操作子の操作速度が所定の操作速度以下であるときは、前記シフトダウン操作量をゼロと算出する制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載された制御装置において、
前記変速モード選択部は、前記ATモードと前記シフトダウン許可モードとのみを選択可能である制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載された変速装置において、
前記車両状態には、前記鞍乗型車両の車速および前記駆動源の回転速度の少なくとも一方が含まれる制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載された制御装置において、
前記車両状態と前記シフトダウン操作量との相関関係を表すシフトダウン操作量マップが記憶されたメモリをさらに備え、
前記シフトダウン操作量算出部は、前記シフトダウン操作量マップに基づいて前記シフトダウン操作量を算出する制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載された制御装置において、
変速比マップが記憶されたメモリをさらに備え、
前記変速比制御部は、前記ATモードにおいては、前記変速装置の変速比を前記変速比マップから算出される変速比に制御する一方、前記シフトダウン許可モードにおいては、前記変速装置の変速比を、前記変速比マップから算出される変速比より前記シフトダウン操作量だけシフトダウンさせた変速比に常に制御する制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載された制御装置において、
前記変速モード選択部は、前記ATモードの他に、前記変速比制御部が、予め定められた複数の変速比間で前記変速装置の変速比を変更するMTモードを選択可能であり、
前記シフトダウン許可モードにおいて、前記スロットルが操作されたときに、前記変速モード選択部は、前記MTモードを選択し、かつ前記変速比制御部は、前記変速装置の変速比を前記予め定められた複数の変速比のうち、現在の変速比から前記シフトダウン操作量だけシフトダウンした変速比と最も近い変速比に制御する制御装置。
【請求項9】
請求項1に記載された制御装置において、
前記鞍乗型車両に対して所定の操作が行われたとき、および前記鞍乗型車両に所定の条件が成立したときに解除信号を出力する解除信号出力部と、
前記シフトダウン許可モードにおいて、前記解除信号が出力された際に、前記シフトダウンを解除させるシフトダウン解除部と、
をさらに備えた制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載された制御装置において、
前記解除信号出力部は、前記鞍乗型車両のスロットル開度、前記駆動源の回転速度および前記鞍乗型車両の車速のうちの少なくともひとつが所定の条件を満たしたときに前記解除信号を出力する制御装置。
【請求項11】
請求項9に記載された制御装置において、
前記解除信号出力部は、前記変速モード選択部によって前記シフトダウン許可モードが選択された後に所定の期間が経過したときに前記解除信号を出力する制御装置。
【請求項12】
請求項9に記載された制御装置において、
前記鞍乗型車両は、ブレーキをさらに有し、
前記解除信号出力部は、前記ブレーキの操作状況に応じて前記解除信号を出力する制御装置。
【請求項13】
請求項9に記載された制御装置において、
前記変速モード選択部は、前記ATモードの他に、前記変速比制御部が、予め定められた複数の変速比間で前記変速装置の変速比を変更するMTモードを選択可能であり、
前記鞍乗型車両は、前記MTモードにおいて、前記変速装置をシフトアップさせるシフトアップスイッチをさらに有し、
前記解除信号出力部は、前記シフトダウン許可モードにおいて、前記シフトアップスイッチが操作されたときに前記解除信号を出力する制御装置。
【請求項14】
請求項9に記載された制御装置において、
前記解除信号出力部は、前記シフトダウン許可モードにおいて、前記シフトダウン許可信号が出力されたときに前記解除信号を出力する制御装置。
【請求項15】
請求項1に記載された制御装置において、
前記変速モード選択部は、前記ATモードの他に、前記変速比制御部が、予め定められた複数の変速比間で前記変速装置の変速比を変更するMTモードを選択可能であり、
前記鞍乗型車両は、前記MTモードにおいて、前記変速装置をシフトダウンさせるシフトダウンスイッチをさらに有し、
前記シフトダウンスイッチと前記シフトダウン許可スイッチとは共通である制御装置。
【請求項16】
鞍乗型車両の駆動源と駆動輪との間に配置された電子制御式変速装置の制御装置であって、
前記鞍乗型車両は、
前記制御装置に対してシフトダウン許可信号を出力するシフトダウン許可スイッチと、
スロットルと、
前記スロットルを操作するスロットル操作子と、
前記スロットル操作子の操作量および前記スロットル操作子の操作速度のうち少なくともひとつを検出するスロットル操作子センサと、
を有し、
前記変速装置の変速比を制御する変速比制御部と、
前記変速比制御部が、予め定められた複数の変速比間で前記変速装置の変速比を変更するMTモードが選択可能であり、かつ前記MTモードにおいて、前記シフトダウン許可信号が出力された際に、シフトダウン許可モードに移行する変速モード選択部と、
前記スロットル操作子の操作量および前記スロットル操作子の操作速度の一方を少なくとも含む前記鞍乗型車両の車両状態に基づいてシフトダウン操作量を算出するシフトダウン操作量算出部と、
を備え、
前記変速比制御部は、前記シフトダウン許可モードにおいて、前記スロットルが操作されたときに、前記変速装置の変速比を前記シフトダウン操作量に基づいてシフトダウンさせる制御装置。
【請求項17】
鞍乗型車両の駆動源と駆動輪との間に配置され、連続的に変速比を変更することができる電子制御式変速機構と、
前記変速機構を制御する制御部と、
を備えた変速装置であって、
前記鞍乗型車両は、
前記制御装置に対してシフトダウン許可信号を出力するシフトダウン許可スイッチと、
スロットルと、
前記スロットルを操作するスロットル操作子と、
前記スロットル操作子の操作量および前記スロットル操作子の操作速度のうち少なくともひとつを検出するスロットル操作子センサと、
を有し、
前記制御部は、
前記変速装置の変速比を制御する変速比制御部と、
前記鞍乗型車両の走行状態に応じて、前記変速比制御部が前記変速装置の変速比を連続的に変更するATモードが選択可能であり、かつ前記ATモードにおいて、前記シフトダウン許可信号が出力された際に、シフトダウン許可モードに移行する変速モード選択部と、
前記スロットル操作子の操作量および前記スロットル操作子の操作速度の一方を少なくとも含む前記鞍乗型車両の車両状態に基づいてシフトダウン操作量を算出するシフトダウン操作量算出部と、
を備え、
前記変速比制御部は、前記シフトダウン許可モードにおいて、前記スロットルが操作されたときに、前記変速装置の変速比を前記シフトダウン操作量に基づいてシフトダウンさせる変速装置。
【請求項18】
駆動源と、
前記駆動源により駆動される駆動輪と、
前記駆動源と前記駆動輪との間に配置され、連続的に変速比を変更することができる電子制御式変速機構と、前記変速機構を制御する制御部と、を有する変速装置と、
を備えた鞍乗型車両であって、
前記制御装置に対してシフトダウン許可信号を出力するシフトダウン許可スイッチと、
スロットルと、
前記スロットルを操作するスロットル操作子と、
前記スロットル操作子の操作量および前記スロットル操作子の操作速度のうち少なくともひとつを検出するスロットル操作子センサと、
を備え、
前記制御部は、
前記変速装置の変速比を制御する変速比制御部と、
前記鞍乗型車両の走行状態に応じて、前記変速比制御部が前記変速装置の変速比を連続的に変更するATモードが選択可能であり、かつ前記ATモードにおいて、前記シフトダウン許可信号が出力された際に、シフトダウン許可モードに移行する変速モード選択部と、
前記スロットル操作子の操作量および前記スロットル操作子の操作速度の一方を少なくとも含む前記鞍乗型車両の車両状態に基づいてシフトダウン操作量を算出するシフトダウン操作量算出部と、
を有し、
前記変速比制御部は、前記シフトダウン許可モードにおいて、前記スロットルが操作されたときに、前記変速装置の変速比を前記シフトダウン操作量に基づいてシフトダウンさせる鞍乗型車両。
【請求項19】
駆動源と、
前記駆動源により駆動される駆動輪と、
鞍乗型車両の駆動源と駆動輪との間に配置された電子制御式変速機構と、前記変速機構を制御する制御部と、を有する変速装置と、
を備えた鞍乗型車両であって、
前記制御装置に対してシフトダウン許可信号を出力するシフトダウン許可スイッチと、
スロットルと、
前記スロットルを操作するスロットル操作子と、
前記スロットル操作子の操作量および前記スロットル操作子の操作速度のうち少なくともひとつを検出するスロットル操作子センサと、
を備え、
前記制御部は、
前記変速装置の変速比を制御する変速比制御部と、
前記変速比制御部が、予め定められた複数の変速比間で前記変速装置の変速比を変更するMTモードが選択可能であり、かつ前記MTモードにおいて、前記シフトダウン許可信号が出力された際に、シフトダウン許可モードに移行する変速モード選択部と、
前記スロットル操作子の操作量および前記スロットル操作子の操作速度の一方を少なくとも含む前記鞍乗型車両の車両状態に基づいてシフトダウン操作量を算出するシフトダウン操作量算出部と、
を有し、
前記変速比制御部は、前記シフトダウン許可モードにおいて、前記スロットルが操作されたときに、前記変速装置の変速比を前記シフトダウン操作量に基づいてシフトダウンさせる鞍乗型車両。
【請求項20】
請求項18または19に記載された鞍乗型車両において、
前記シフトダウン許可スイッチは、ライダーの親指で操作可能な位置に配置されている鞍乗型車両。
【請求項21】
請求項18または19に記載された鞍乗型車両において、
ライダーが握る右側グリップ部および左側グリップ部を備えたハンドルをさらに備え、
前記シフトダウン許可スイッチは、前記左側グリップ部の右側部分に配置されている鞍乗型車両。
【請求項22】
請求項18に記載された鞍乗型車両において、
変速モード選択部は、前記変速比制御部が、予め定められた複数の変速比間で前記変速装置の変速比を変更するMTモードと、前記ATモードと、前記シフトダウン許可モードとを含む複数の変速モードを選択することができ、前記シフトダウン許可信号が出力されるたびに、選択する前記変速モードを順に変更する鞍乗型車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−291988(P2008−291988A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303410(P2007−303410)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】