説明

駆動力分配装置

【課題】 電動モータにより歯車手段の回転を制御して駆動力を分配する際に、2つの出力軸に大きな回転差が発生しても歯車手段の歯車や各回転要素の回転速度が許容回転速度を超えることがない駆動力分配装置を提供する。
【解決手段】 遊星歯車機構51の歯車の回転速度や電動モータ13の回転速度が第1の許容回転速度を超えた場合、ブレーキ指示をONにして左右の後輪6に制動力を働かせ、遊星歯車機構51の歯車の回転速度や電動モータ13の回転速度が第2の許容回転速度を超えた場合、エンジン2の出力が低減され、左右駆動力分配装置11の歯車等の部品(軸受け)の回転速度の上昇を抑制し、左右の後輪6に大きな回転差が発生しても歯車や各回転要素の回転速度が許容回転速度を超えないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される駆動力を2つの出力軸、例えば、左右の車輪軸に分配する駆動力分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、駆動源から入力された駆動力を2つの出力軸に分配する輪駆動力分配装置が搭載されている。例えば、左右の車輪軸に互いの差動を許容して駆動力を分配する駆動力分配装置や、四輪駆動車の前後輪に駆動力を分配する駆動力分配装置が知られている。駆動力配分装置には、2つの出力軸の回転差を許容するための差動機構が備えられている。
【0003】
駆動力配分装置における差動機構として、機械式の機構や流体式の機構が知られているが、近年、機械式の差動手段と遊星歯車機構とを組み合わせ、電動モータにより遊星歯車機構の回転を制御することで2つの出力軸の駆動力の配分を制御する駆動力分配装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
電動モータにより遊星歯車機構の入力を制御する駆動力分配装置では、広範囲の差動を許容するため、大きなギヤ比を達成する必要がある。最小限の大きさの電動モータ(小さなモータトルク)でギヤ比を大きくすると、大きな回転差が発生する路面等では遊星歯車機構の歯車の回転速度が大きくなってしまう。歯車の回転速度が大きくなり過ぎると、歯車を支持する軸受けの回転速度や、歯車に連結されている電動モータの回転速度が許容回転速度を超える虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−144963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、電動モータにより歯車手段の回転を制御して駆動力を分配する際に、2つの出力軸に大きな回転差が発生しても歯車手段の歯車や各回転要素の回転速度が許容回転速度を超えることがない駆動力分配装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の駆動力配分装置は、入力される駆動力を2つの出力軸に互いの差動を許容した状態で伝達する差動手段と、2つの前記出力軸の間に介在し前記出力軸の回転差により回転作動する歯車手段と、前記歯車手段を駆動して前記出力軸の回転差を増加・減少させるように前記歯車手段を回転駆動する電動モータと、前記電動モータの回転速度の状態を検出するモータ速度状態検出手段と、2つの前記出力軸の回転を個別に制動する制動手段と、前記モータ速度状態検出手段により前記電動モータの回転速度の状態が所定回転速度状態を超えたことが検出された際に、前記制動手段を作動させる制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る本発明では、2つの出力軸に回転差が発生した際には、電動モータの駆動により歯車手段を回転させて出力軸の回転差を減少させる。モータ速度状態検出手段により電動モータの回転速度の状態が所定の回転速度状態を超えたことが検出されると、即ち、遊星歯車機構の歯車の回転速度や電動モータの回転速度が所定の回転速度を超えたことが検出(演算)されると、制御手段により制動手段を作動させて出力軸の回転差を小さくし、歯車手段の歯車の回転速度の上昇をなくし、歯車の回転速度が許容回転速度を超えないようにする。
【0009】
このため、電動モータにより歯車機構の回転を制御して駆動力を分配する際に、2つの出力軸に大きな回転差が発生しても歯車機構の歯車や各回転要素の回転速度が許容回転速度を超えることがない駆動力分配装置とすることが可能になる。
【0010】
モータ速度状態検出手段は、例えば、電動モータの回転速度を検出するモータ速度検出手段が適用され、電動モータの回転速度に基づいて歯車手段の歯車の回転速度が演算され、歯車手段の歯車の回転速度が許容回転速度を超えた場合に、電動モータの回転速度の状態が所定の回転速度状態を超えたことが検出される。また、モータ速度状態検出手段は、例えば、2つの出力軸の回転速度を検出する出力軸の回転速度手段が適用されることもある。
【0011】
そして、請求項2に係る本発明の駆動力配分装置は、請求項1に記載の駆動力配分装置において、前記歯車手段は、軸受けを介して複数の歯車が支持されて前記電動モータの回転を増幅させる遊星歯車機構であり、前記制御手段は、前記軸受けの回転速度を演算し、前記軸受けの回転速度が許容回転速度を超えた際に前記制動手段を作動させることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る本発明では、遊星歯車機構により電動モータの回転を増幅させ、軸受けの回転速度が許容回転速度を超えた際に、電動モータの回転速度の状態が所定回転速度状態(許容回転速度)を超えたとして制動手段を作動させるので、遊星歯車機構の歯車に過回転が生じることがなく、遊星歯車機構の部品の破損等を防止することができる。
【0013】
また、請求項3に係る本発明の駆動力配分装置は、請求項1もしくは請求項2に記載の駆動力配分装置において、前記制御手段は、前記制動手段を作動させると共に前記差動手段に入力される駆動力を低下させることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る本発明では、制動手段を作動させると共に差動手段に入力される駆動力を低下させるので、歯車手段の歯車の回転速度の上昇を確実になくすことができる。
【0015】
また、請求項4に係る本発明の駆動力配分装置は、請求項2もしくは請求項3に記載の駆動力配分装置において、前記遊星歯車機構は、ケース側に回転自在に支持され前記電動モータの駆動軸に連結されるキャリアと、前記キャリアに回転自在に支持される遊星ピニオン歯車と、前記遊星ピニオン歯車に噛み合い2つの前記出力軸のいずれか一方側に連結されて前記キャリア側に支持される太陽歯車と、前記遊星ピニオン歯車に噛み合い前記キャリア側及び前記ケース側に支持され2つの前記出力軸のいずれか他方側に連結される第2太陽歯車とを備え、前記電動モータの駆動により前記キャリアが回動することで前記遊星ピニオン歯車が公転すると同時に前記太陽歯車に噛み合う前記遊星ピニオン歯車が自転し、更に、前記遊星ピニオン歯車の回転により前記第2太陽歯車が回転する機構であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る本発明では、差動手段と組み合わせる歯車手段として、大型化することなくギヤ比を大きくした遊星歯車機構を適用することができる。
【0017】
また、請求項5に係る本発明の駆動力配分装置は、請求項2もしくは請求項3に記載の駆動力配分装置において、前記遊星歯車機構は、ケース側にキャリア支持ベアリングを介して回転自在に支持され前記電動モータの駆動軸に連結されるキャリアと、前記キャリアに対してニードルベアリングを介して回転自在に支持される遊星ピニオン歯車と、前記遊星ピニオン歯車に噛み合い2つの前記出力軸のいずれか一方側に連結されスラストベアリングを介して前記キャリア側に支持される太陽歯車と、前記遊星ピニオン歯車に噛み合いスラストベアリングを介して前記キャリア側及び前記ケース側に支持される第2太陽歯車と、前記第2太陽歯車に噛み合い前記ケースに回転自在に支持される第2遊星ピニオン歯車と、前記第2遊星ピニオン歯車に噛み合い2つの前記出力軸のいずれか他方側に連結されスラストベアリングを介して前記ケース側に支持される第3太陽歯車とを備え、前記電動モータの駆動により前記キャリアが回動することで前記遊星ピニオン歯車が公転すると同時に前記太陽歯車に噛み合う前記遊星ピニオン歯車が自転し、更に、前記遊星ピニオン歯車の回転により前記第2太陽歯車が回転し、前記第2太陽歯車の回転により前記第2遊星ピニオン歯車が自転することで前記第3太陽歯車が回転する機構であり、前記制御手段は、前記ニードルベアリングの回転速度、もしくは前記キャリア支持ベアリングの回転速度、もしくは前記スラストベアリングの回転速度のうち、少なくとも前記スラストベアリングの回転速度を演算することで、前記電動モータの所定回転速度の状態を求めることを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る本発明では、差動手段と組み合わせる歯車手段として、大型化することなくギヤ比を大きくした遊星歯車機構を適用することができ、少なくとも、回転速度の負担が最も高いスラストベアリングの回転速度を演算することで、電動モータの所定回転速度の状態を求め、遊星歯車機構の歯車の回転速度の上昇を確実に抑えることができる。このため、遊星歯車機構の歯車や電動モータに過回転が生じることがなく、遊星歯車機構や電動モータの部品の破損等を防止することができる。
【0019】
また、請求項6に係る本発明の駆動力配分装置は、請求項5に記載の駆動力配分装置において、前記制御手段では、前記スラストベアリングの回転速度が、前記電動モータの回転速度及び前記太陽歯車に連結される側の出力軸の回転速度、または、前記電動モータの回転速度に基づいて演算されることを特徴とする。
【0020】
また、請求項7に係る本発明の駆動力配分装置は、請求項5もしくは請求項6のいずれか一項に記載の駆動力配分装置において、前記制御手段では、前記ニードルベアリングの回転速度が、前記第2太陽歯車の歯数を前記遊星ピニオン歯車の歯数で除した値と、前記第2太陽歯車の回転速度に前記電動モータの回転速度を加えた値、または、前記電動モータの回転速度とに基づいて演算されることを特徴とする。
【0021】
また、請求項8に係る本発明の駆動力配分装置は、請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の駆動力配分装置において、前記制御手段では、前記キャリア支持ベアリングの回転速度が、前記電動モータの回転速度に基づいて演算されることを特徴とする。
【0022】
また、請求項9に係る本発明の駆動力配分装置は、請求項7もしくは請求項8に記載の駆動力配分装置において、前記制御手段で演算される前記電動モータの回転速度は、前記太陽歯車に連結される側の出力軸の回転速度と前記第2太陽歯車側に連結される側の出力軸の回転速度との差に対し、前記電動モータによるトルク増幅率を加味して演算されることを特徴とする。
【0023】
また、請求項10に係る本発明の駆動力配分装置は、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の駆動力配分装置において、2つの前記出力軸は左右の車輪軸であることを特徴とする。
【0024】
請求項10に係る本発明では、左右輪の回転差が大きくなる場合でも、歯車手段の歯車の回転速度の上昇をなくし、歯車の回転速度が許容回転速度を超えないようにすることが可能になる。
【0025】
また、請求項11に係る本発明の駆動力配分装置は、請求項10に記載の駆動力配分装置において、車両の走行状態に応じて、前記電動モータの駆動により左右の前記車輪軸を所望の駆動力差に制御するヨーレイト制御手段が備えられていることを特徴とする。
【0026】
請求項11に係る本発明では、左右の駆動力を制御するヨーレイト制御手段のシステムを制動手段として用いることができ、既存のシステムを利用して歯車の回転速度の制御を実施することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の駆動力分配装置は、電動モータにより歯車手段の回転を制御して駆動力を分配する際に、2つの出力軸に大きな回転差が発生しても歯車手段の歯車や各回転要素の回転速度が許容回転速度を超えることがない駆動力分配装置とすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態例に係る駆動力分配装置を備えた車両の全体構成図である。
【図2】駆動力配分装置の断面図である。
【図3】制御手段のブロック構成図である。
【図4】遊星歯車機構の断面図である。
【図5】制御量を表すマップである。
【図6】制御量を表すマップである。
【図7】制御手段の制御フローチャートである。
【図8】制御量を表すマップである。
【図9】制御量を表すマップである。
【図10】制御手段の制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の駆動力分配装置が搭載される車両は、コーナリングや旋回時の挙動安定性を向上させるために、後輪の左右の駆動力を所望の駆動力差に制御するアクティブヨーコントロール(AYC)を備えたものである。尚、前後輪の駆動力を分配する機構に本発明を適用することも可能である。
【0030】
以下図面に基づいて本発明の一実施形態例を説明する。
【0031】
図1には本発明の一実施形態例に係る駆動力分配装置が搭載された車両の全体構成、図2には駆動力配分装置の断面、図3には制御手段のブロック構成(統合コントローラーの要部制御ブロック構成)、図4には軸受けの許容回転速度(電動モータの許容回転速度)を演算するための荷重負荷状況を説明する遊星歯車機構の断面を示してある。また、図5、図6にはスラストベアリングの回転速度と制御量との関係を表すマップ、図7にはスラストベアリングの回転速度に基づいた制御フローチャート、図8、図9にはモータ回転速度と制御量との関係を表すマップ、図10には電動モータの回転速度に基づいた制御フローチャートを示してある。
【0032】
図1に基づいて本発明の一実施形態例に係る駆動力分配装置が搭載された車両を説明する。
【0033】
図に示すように、車両1にはエンジン2が搭載され、エンジン2からの出力はトランスミッション3及びセンターディファレンシャル(センターデフ)4に伝達され、エンジン2の駆動力がセンターデフ4で前輪5及び後輪6に分配される。前輪5側に分配された出力は、車軸7Lを介して左前輪5Lに伝達されると共に車軸7Rを介して右前輪5Rに伝達される。後輪6側に分配された出力は、プロペラシャフト8を介して後輪側の左右駆動力分配装置(駆動力分配装置)11に伝達される。
【0034】
左右駆動力分配装置11に伝達された出力は、出力軸としての車軸12Lを介して左後輪6Lに伝達されると共に出力軸としての車軸12Rを介して右後輪6Rに伝達される。左右駆動力分配装置11には、車軸12Lと車軸12Rの回転差を許容する差動手段が備えられると共に、遊星歯車機構51を介して車軸12Lと車軸12Rの回転差を減少させる電動モータ13が備えられている。
【0035】
左右の前輪5にはブレーキ装置15L、15Rが設けられ、左右の後輪6にはブレーキ装置16L、16Rが設けられている。左右の前輪5には車輪速センサ21L、21Rが設けられ、左右の後輪6には車輪速センサ22L、22Rが設けられている。ブレーキ装置15L、15R及びブレーキ装置16L、16Rには、ブレーキ制御用ECU18の指令によりそれぞれ独立して油圧が供給され、左右の前輪5及び左右の後輪6のそれぞれに対してブレーキ状況が制御される。
【0036】
左右の前輪5には車輪速センサ21L、21Rが設けられ、左右の後輪6には車輪速センサ22L、22Rが設けられている。車輪速センサ21L、21R、22L、22Rの検出情報はブレーキ制御用ECU18に入力され、車輪速センサ21L、21R、22L、22Rの検出情報に基づいてブレーキ装置15L、15R及びブレーキ装置16L、16Rによるブレーキ状況が制御される。
【0037】
尚、図中の符号で19はサービスブレーキ装置である。
【0038】
上述した車両1では、例えば、ハンドル角センサ24で検出される走行時のステアリング角やブレーキ圧、統合センサ25で検出される車両1の前後・横加速度とヨーレイトの情報がエンジンECU26、統合コントローラー27に入力される。エンジンECU26、統合コントローラー27及びブレーキ制御用ECU18の指令により、前輪5と後輪6の差動制限度合いが調整されると共に、電動モータ13の駆動により左後輪6Lと右後輪6Rの間のトルク差が調整され(ヨーレイト制御手段)、更に、左右の前輪5及び後輪6のブレーキ力が独立して制御される。
【0039】
尚、図中の符号で29はインジケータ、30は表示ECUである。
【0040】
一方、左右駆動力分配装置11の電動モータ13は、インバータ32を介して統合コントローラー27の指令により駆動され、遊星歯車機構を介して車軸12Lと車軸12Rの回転差を減少させるようにしている。電動モータ13にはモータ速度センサ31が備えられ、遊星歯車機構を介して車軸12Lと車軸12Rの回転差を減少させるように電動モータ13が駆動されている際のモータ速度(電動モータ13の回転速度の状態)が、モータ速度センサ31から統合コントローラー27に入力される。
【0041】
そして、モータ速度センサ31からの情報(電動モータ13の回転速度の状態)により、電動モータ13の回転速度の状態が所定回転速度状態を超えたことが検出される。尚、モータ速度センサ31からの情報及び車輪速センサ22L、22Rの検出情報により、電動モータ13の回転速度の状態が所定回転速度状態を超えたことを検出することが可能である。また、車輪速センサ22L、22Rの検出情報だけで電動モータ13の回転速度の状態が所定回転速度状態を超えたことを検出することも可能である。
【0042】
車輪速センサ22L、22Rの検出情報(電動モータ13の回転速度の状態)及びモータ速度センサ31からの情報により、電動モータ13の回転速度の状態が所定回転速度状態を超えたことが検出される。尚、車輪速センサ22L、22Rの検出情報だけで電動モータ13の回転速度の状態が所定回転速度状態を超えたことを検出することも可能である。
【0043】
詳細は後述するが、電動モータ13の回転速度の状態(モータ回転速度)が所定回転速度状態を超えたことが車輪速センサ22L、22R及びモータ速度センサ31により検出されると、即ち、車軸12Lと車軸12Rの回転差が大きくなった状態が検出されると、制動手段としてのブレーキ装置16L、16Rを作動させ、遊星歯車機構51の歯車の回転が過剰にならないようにして部品保護制御が実施される。
【0044】
例えば、後述する遊星歯車機構51の歯車(軸受け)や電動モータ13(回転要素)の回転速度に基づいて歯車(軸受け)や回転要素の回転速度が演算され、歯車(軸受け)や回転要素の回転速度が許容回転速度を超えないように、電動モータ13の所定回転速度状態が決定される。そして、電動モータ13の回転速度の状態が所定回転速度状態を超えた際に、部品保護制御が実施される。
【0045】
図2に基づいて左右駆動力分配装置11の構成を詳細に説明する。
【0046】
プロペラシャフト8の端部が連結される入力軸41がケース42に回転自在に支持され、入力軸41の先端部(図中下端部)には入力傘歯車43が固定されている。ケース42には差動手段となるデフケース44が入力軸41に直交する軸回りで回転自在に支持され、デフケース44には入力傘歯車43に噛み合う歯車45が固定されている。プロペラシャフト8により入力軸41が回転すると、入力傘歯車43及び歯車45を介してデフケース44が回転する。
【0047】
デフケース44には回転中心軸に直交する中心軸46が固定され、中心軸46にはピニオン47a、47bが回転自在に支持されている。中心軸46を挟んでピニオン47a、47bには、左サイド歯車48及び右サイド歯車49が噛み合って備えられている。左サイド歯車48は車軸12Lの端部に固定され、右サイド歯車49は車軸12Rが連結される貫通軸50の端部に固定されている。
【0048】
つまり、プロペラシャフト8からの回転が入力軸41、入力傘歯車43、歯車45を介してデフケース44に伝わり、ピニオン47a、47b及び左サイド歯車48、右サイド歯車49から車軸12L、12R(貫通軸50)に伝えられる。車軸12L、12Rの回転差は、左サイド歯車48及び右サイド歯車49に噛み合うピニオン47a、47bの回転により許容される。
【0049】
左右駆動力分配装置11には、車軸12L、12R(貫通軸50)の回転差により回転動作する歯車手段としての遊星歯車機構51が備えられ、遊星歯車機構51を駆動して車軸12L、12R(貫通軸50)の回転差を減少させる電動モータ13が備えられている。
【0050】
電動モータ13及び遊星歯車機構51を説明する。
【0051】
ケース42に対して歯車ケース61が一体に設けられ、歯車ケース61に遊星歯車機構51が収容されている。また、歯車ケース61に対してモータケース62が一体に設けられ、モータケース62に電動モータ13が収容されている。そして、右サイド歯車49が固定される貫通軸50が歯車ケース61及びモータケース62を貫通して配されている。
【0052】
ケース42と一体のモータケース62には電動モータ13の固定子コイル52が固定され、固定子コイル52に対応する貫通軸50の外周の部位におけるモータケース62には、軸受け53を介して筒状の駆動軸54が回転自在に支持されている。駆動軸54には回転子コイル55が設けられ、固定子コイル52が励磁されることにより駆動軸54が貫通軸50に対して独立して回転する。
【0053】
歯車ケース61には仕切り板63が固定され、仕切り板63を挟んで車軸12R側(図中右側)の歯車ケース61にはキャリア支持ベアリング56を介してキャリア57が回転自在に支持されている。キャリア57の車軸12R側(図中右側)の端部はスプラインを介して電動モータ13の駆動軸54に連結されている。
【0054】
キャリア57には貫通軸50と平行に延びる遊星歯車軸58が取付けられ、遊星歯車軸58にはニードルベアリング59を介して遊星ピニオン歯車60が回転自在に支持されている。キャリア57の内部の貫通軸50(一方側の出力軸である車軸12R側)には太陽歯車65が固定され、太陽歯車65は遊星ピニオン歯車60に噛み合うと共にスラストベアリング66aを介してキャリア57に回転自在に支持されている。
【0055】
キャリア57の内部から仕切り板63を挟んでキャリア57の外側にわたる歯車ケース61の内部には、連結歯車71が太陽歯車65と同軸状に設けられている。連結歯車71は、キャリア57の内部に配されるキャリア側太陽歯車72(第2太陽歯車)と、仕切り板63を挟んでキャリア57の外側に配されキャリア側太陽歯車72と同一形状のケース側太陽歯車73(第2太陽歯車)とを備えている。
【0056】
連結歯車71のキャリア側太陽歯車72は、スラストベアリング66bを介して太陽歯車65に対して回転自在に支持されると共に、スラストベアリング66cを介してキャリア57に対して回転自在に支持されている。そして、キャリア側太陽歯車72は遊星ピニオン歯車60に噛み合っている。
【0057】
つまり、電動モータ13の駆動(正逆回転駆動)により駆動軸54が回転すると、歯車ケース61内でキャリア57が回転し、遊星ピニオン歯車60が公転すると共に、太陽歯車65及びキャリア側太陽歯車72に噛み合って遊星ピニオン歯車60が遊星歯車軸58を中心に自転する。遊星ピニオン歯車60の自転により、太陽歯車65(貫通軸50)とキャリア側太陽歯車72(連結歯車71)が独立して回転する。
【0058】
仕切り板63を挟んでキャリア57の外側における歯車ケース61の内部には、貫通軸50と平行に延びる第2遊星歯車軸75が取付けられ、第2遊星歯車軸75にはニードルベアリング76を介して第2遊星ピニオン歯車77が回転自在に支持されている。第2遊星ピニオン歯車77には連結歯車71のケース側太陽歯車73が噛み合っている。
【0059】
歯車ケース61の内部には、ケース側太陽歯車73と同一形状の出力太陽歯車81(第3太陽歯車)が設けられている。出力太陽歯車81は、スラストベアリング66eを介してケース側太陽歯車73に対して回転自在に支持されると共に、スラストベアリング66fを介して歯車ケース61に対して回転自在に支持されている。そして、出力太陽歯車81は第2遊星ピニオン歯車77に噛み合っている。出力太陽歯車81の端部は歯車ケース61を貫通してデフケース44側に延びて配され、デフケース44にスプラインを介して連結されている。
【0060】
つまり、連結歯車71(ケース側太陽歯車73)の回転、もしくは出力太陽歯車81の回転が、第2遊星ピニオン歯車77の自転により、出力太陽歯車81、もしくは連結歯車71(ケース側太陽歯車73)に伝達され、連結歯車71(ケース側太陽歯車73)と出力太陽歯車81が連動して回転する。
【0061】
左右駆動力分配装置11では、車軸12Lと車軸12R(貫通軸50)の回転差は差動手段(デフケース44等)により許容され、回転差により遊星歯車機構51が回転動作する。電動モータ13の駆動により太陽歯車65を回転させることにより、出力太陽歯車81を介してデフケース44を増幅して回転させ、遊星歯車機構51を介して車軸12L、12R(貫通軸50)の回転差を減少させる。
【0062】
上述した左右駆動力分配装置11を備えた車両1では、電動モータ13の回転速度の状態(モータ回転速度)が所定回転速度状態を超えたことが車輪速センサ22L、22R及びモータ速度センサ31により検出されると、即ち、車軸12Lと車軸12Rの回転差が大きくなった状態が検出されると、ブレーキ装置16L、16Rを作動させ、遊星歯車機構51の歯車の回転が過剰にならないようにして部品保護制御が実施される。また、エンジン2の出力を低下させて(エンジントルク低減)車軸12Lと車軸12Rの回転差を少なくする制御が実施される。
【0063】
つまり、図3に示すように、統合コントローラー27には部品保護制御手段82が備えられ、モータ回転速度に基づいてブレーキ装置16L、16Rを作動させると共に、エンジン2の出力を低下させ、遊星歯車機構51の歯車の回転が過剰にならないように、即ち、遊星歯車機構51の歯車や軸受け53等の部品が破損しないようにしている。
【0064】
図3に基づいて統合コントローラー27の要部の構成を具体的に説明する。
【0065】
統合コントローラー27には部品保護制御手段82が備えられ、部品保護制御手段82は部品保護制御を実施するか否かの判定を行う保護制御介入判定手段83を有している。保護制御介入判定手段83には、モータ速度センサ31で検出されるモータ回転速度Nmの情報が入力される。
【0066】
また、車輪速センサ22Lで検出される後輪6Lの車輪速度(車軸12Lの回転速度)Nの情報、及び、車輪速センサ22Rで検出される後輪6Rの車輪速度(車軸12Rの回転速度)Nの情報が、部品保護制御手段82に入力される。
【0067】
保護制御介入判定手段83では、モータ回転速度Nmに基づいて(または、車輪速度N、Nに基づいて、もしくはモータ回転速度Nm及び車輪速度N、Nに基づいて)、遊星歯車機構51の歯車の回転速度や電動モータ13のモータ回転速度Nm(電動モータ13の回転速度の状態)が所定回転速度の状態を超えたか否かが判断される。
【0068】
具体的には後述するが、左右駆動力分配装置11の遊星歯車機構51を構成する歯車等の部品(軸受け)の回転速度が演算され、部品(軸受け)の回転速度が許容回転速度を超える場合に、遊星歯車機構51の歯車の回転速度や電動モータ13のモータ回転速度Nmが所定回転速度を超えたと判断される。
【0069】
部品(軸受け)の回転速度は電動モータ13のモータ回転速度Nmに基づいて演算できるため、電動モータ13のモータ回転速度Nmが許容回転速度を超えた場合に、遊星歯車機構51の歯車の回転速度や電動モータ13のモータ回転速度Nmが所定回転速度を超えたと判断しても良い。
【0070】
保護制御介入判定手段83で部品(軸受け)の回転速度が許容回転速度を超えて(または、電動モータ13のモータ回転速度Nmが許容回転速度を超えて)遊星歯車機構51の歯車の回転速度や電動モータ13のモータ回転速度Nmが所定回転速度を超えたと判定された場合、ブレーキ制御量読込手段84及びエンジントルク低減量読込手段85に判定情報が送られる。
【0071】
ブレーキ制御量読込手段84では、部品(軸受け)の回転速度(または、電動モータ13のモータ回転速度Nm)に基づいて予め設定されたマップからブレーキ制御量が読み込まれる。また、エンジントルク低減量読込手段85では、部品(軸受け)の回転速度(または、電動モータ13のモータ回転速度Nm)に基づいて予め設定されたマップからエンジントルク低減量が読み込まれる。
【0072】
詳細は後述するが、部品(軸受け)の回転速度(または、電動モータ13のモータ回転速度Nm)が許容回転速度を超えた際には、ブレーキ制御量が制御され、必要に応じてエンジントルク低減量が制御される。これにより、遊星歯車機構51の歯車や電動モータ13に過回転が生じることがなく、遊星歯車機構51や電動モータ13の部品の破損等を防止することができる。
【0073】
図4を参照して遊星歯車機構51を構成する歯車等の部品(軸受け)の回転速度、電動モータ13のモータ回転速度Nmの演算の一例を説明し、許容回転速度の設定について説明する。
【0074】
電動モータ13のモータ回転速度Nmの許容回転速度は、遊星歯車機構51における歯車の回転状態に基づいて設定される。遊星歯車機構51の太陽歯車65、キャリア側太陽歯車72、ケース側太陽歯車73、出力太陽歯車81はスラストベアリング66により支持され、遊星ピニオン歯車60がニードルベアリング59で支持され、第2遊星ピニオン歯車77がニードルベアリング76で支持されている。また、キャリア57がキャリア支持ベアリング56で支持されている。これらは、モータ回転速度Nmの影響が大きく、車速の変動の影響は無視することができる。
【0075】
図4に実線矢印で示すように、電動モータ13の正転時には、太陽歯車65とキャリア側太陽歯車72に互いに離れる側のアキシャル方向の荷重が生じると共に、ケース側太陽歯車73と出力太陽歯車81に互いに離れる側のアキシャル方向の荷重が生じる。また、ニードルベアリング59及びニードルベアリング76に内側のアキシャル方向の荷重が生じる。
【0076】
図4に点線矢印で示すように、電動モータ13の逆転時には、太陽歯車65とキャリア側太陽歯車72に互いに接近する側のアキシャル方向の荷重が生じると共に、ケース側太陽歯車73と出力太陽歯車81に互いに接近する側のアキシャル方向の荷重が生じる。また、ニードルベアリング59及びニードルベアリング76に外側のアキシャル方向の荷重が生じる。
【0077】
上述したアキシャル方向の荷重により、電動モータ13の正転時には、スラストベアリング66a、66c、66d、66fにアキシャル方向の荷重が加わり、ニードルベアリング59及びニードルベアリング76にアキシャル方向の荷重が加わる。電動モータ13の逆転時には、スラストベアリング66b、66eにアキシャル方向の荷重が加わり、ニードルベアリング59及びニードルベアリング76にアキシャル方向の荷重が加わる。また、キャリア支持ベアリング56には、電動モータ13の正転時・逆転時共にラジアル方向の荷重が加わる。
【0078】
上記構成の左右駆動力分配装置11の場合、回転速度が上昇すると、スラストベアリング66の回転速度が許容回転速度に達し、次いで、ニードルベアリング59及びニードルベアリング76の回転速度が許容回転速度に達し、更に、電動モータ13の回転速度が許容回転速度に達する。このため、スラストベアリング66が許容回転速度に至らないように、スラストベアリング66の許容回転速度(または、電動モータ13の許容モータ回転速度:後述する第1の許容回転速度、第2の許容回転速度)を設定することで、ニードルベアリング59及びニードルベアリング76の回転速度と、電動モータ13の回転速度は、許容回転速度を超える虞がない。
【0079】
本実施例では、車輪速センサ22Lで検出される車輪速度N、Nに基づいて、もしくは、車輪速センサ22Lで検出される車輪速度N、Nと、モータ速度センサ31で検出されるモータ回転速度Nmに基づいて、スラストベアリング66の第1の許容回転速度、第2の許容回転速度、または、モータ回転速度Nmの第1の許容回転速度、第2の許容回転速度が設定される。
【0080】
上述した左右駆動力分配装置11の場合における、スラストベアリング66、ニードルベアリング59及びニードルベアリング76、キャリア支持ベアリング56の回転速度の演算の具体例を説明し、スラストベアリング66及び電動モータ13の許容回転速度を決定(演算)する状況を説明する。
【0081】
スラストベアリング66
【0082】
スラストベアリング66はアキシャル荷重と用いられるサイズにより許容回転速度が決められる。スラストベアリング66の回転速度Ntは、モータ回転速度Nmと、太陽歯車65に連結される側の出力軸である車軸12Rの回転速度(車輪速度N)が加算されて演算される。
【0083】
即ち、Nt=Nm+N
モータ回転速度Nmの影響が支配的なため、Ntを略Nmに略等しい値とすることも可能である。
【0084】
最大の左右輪速度差が発生したと仮定した際のスラストベアリング66の回転速度Ntが演算され、予め決められているスラストベアリング66の許容回転速度と比較され、許容回転速度を超えない状態におけるスラストベアリング66の第1の許容回転速度、第2の許容回転速度が決定(演算)される。また、スラストベアリング66の回転速度Ntに基づいてモータ回転速度Nmの第1の許容回転速度、第2の許容回転速度が決定(演算)される。
【0085】
ニードルベアリング59及びニードルベアリング76
【0086】
ニードルベアリング59及びニードルベアリング76は、必要剛性(曲げ応力、撓み応力)に基づいて設定される遊星歯車軸58、第2遊星歯車軸75の径により内径が決定され、許容回転速度が決められる。ニードルベアリング59及びニードルベアリング76の回転速度Npは、キャリア側太陽歯車72、ケース側太陽歯車73(第2太陽歯車)の歯数Zs2を、遊星ピニオン歯車60、第2遊星ピニオン歯車77の歯数Zp2で除した値(Zs2/Zp2)を求め、キャリア側太陽歯車72、ケース側太陽歯車73(第2太陽歯車)の回転速度(Nzs2)に電動モータ13のモータ回転速度Nmを加えた値と値(Zs2/Zp2)を乗じた値に基づいて演算される。
【0087】
即ち、Np=(Nzs2+Nm)×(Zs2/Zp2)
モータ回転速度Nmの影響が支配的なため、Npを{Nm×(Zs2/Zp2)}に略等しい値とすることも可能である。
【0088】
最大の左右輪速度差が発生したと仮定した際のニードルベアリング59及びニードルベアリング76の回転速度Npが演算され、予め決められているニードルベアリング59及びニードルベアリング76の許容回転速度と比較され、許容回転速度を超えない状態におけるニードルベアリング59及びニードルベアリング76の回転速度Npに基づいてモータ回転速度Nmの第1の許容回転速度、第2の許容回転速度が決定(演算)される。
【0089】
キャリア支持ベアリング56
【0090】
キャリア支持ベアリング56は、アキシャル方向に加わる荷重は小さく、ラジアル方向に加わる荷重は自重のみとなる。このため、キャリア57の設計値によりキャリア支持ベアリング56の大きさが決定され、許容回転速度が決められる。キャリア支持ベアリング56の回転速度は電動モータ13のモータ回転速度Nmと等しい回転速度となる。電動モータ13のモータ回転速度Nm(キャリア支持ベアリング56の回転速度)は、太陽歯車65に連結される側の出力軸である車軸12Rの回転速度(車輪速度N)と出力太陽歯車81にデフケース44を介して連結される側の出力軸である車軸12Lの回転速度(車輪速度N)との回転速度差に対し、モータトルクの増幅率Gを乗じた値に基づいて演算される。
【0091】
即ち、Nm=(N−N)×G
【0092】
最大の左右輪速度差が発生したと仮定した際のキャリア支持ベアリング56の回転速度(モータ回転速度Nm)が演算され、予め決められているモータ回転速度Nmの許容回転速度と比較され、許容回転速度を超えない状態におけるモータ回転速度Nmに基づいてモータ回転速度Nmの第1の許容回転速度、第2の許容回転速度が決定(演算)される。
【0093】
このように、左右の後輪6に制動力を働かせ、また、エンジン2の出力を低減させるための電動モータ13のモータ回転速度Nmの第1の許容回転速度、第2の許容回転速度は、スラストベアリング66の回転速度、ニードルベアリング59及びニードルベアリング76の回転速度、電動モータ13の回転速度(キャリア支持ベアリング56の回転速度)が演算されることにより決定される。
【0094】
上述したように、左右の後輪6に回転速度差が生じて回転速度差が大きくなると、スラストベアリング66の回転速度Ntが許容回転速度に達する。このため、少なくとも、スラストベアリング66の回転速度Ntが演算され、スラストベアリング66の回転速度Ntが許容回転速度を超えることがない状態の、スラストベアリング66の第1の許容回転速度、第2の許容回転速度、または、モータ回転速度Nmの第1の許容回転速度、第2の許容回転速度が決定(演算)される。
【0095】
図5から図7に基づいて、スラストベアリング66の第1の許容回転速度、第2の許容回転速度を用いた実施例の制御を具体的に説明する。
【0096】
図5に示すように、ブレーキ制御量は、スラストベアリング66の回転速度Ntが所定の回転速度Nt1に達すると、ブレーキ圧力の増圧量(ブレーキ増圧量)が増加し始め、所定の回転速度Nt1から回転速度Nt2に至るまでの間ブレーキ増圧量が漸増するように設定されている。また、回転速度Nt2を超えるとブレーキ増圧量が高い値に維持されるように設定されている。
【0097】
図6に示すように、エンジントルク低減量は、スラストベアリング66の回転速度Ntが所定の回転速度Nt3に達すると、エンジントルク低減量が増加し始め、所定の回転速度Nt3から回転速度Nt4に至るまでの間エンジントルク低減量が漸増するように設定されている。また、回転速度Nt4を超えるとエンジントルク低減量が高い値に維持されるように設定されている。
【0098】
尚、ブレーキ制御量及びエンジントルク低減量をマップの読み込みによらず(マップの読み込みと併用して)、演算により求めることも可能である。
【0099】
ブレーキ制御量読込手段84(図3参照)で読み込まれたブレーキ増圧量の情報はブレーキ制御用ECU18(図3参照)に送られ、ブレーキ制御用ECU18(図3参照)の指令により、ブレーキ装置16L、16Rにブレーキ増圧量が反映された油圧が供給され、左右の後輪6に制動力が働いて遊星歯車機構51を構成する歯車等の部品(軸受け)の回転速度の上昇が抑制される。
【0100】
また、エンジントルク低減量読込手段85(図3参照)で読み込まれたエンジントルク低減量の情報はエンジンECU26(図3参照)に送られ、エンジンECU26の指令により、エンジントルク低減量が反映された状態でエンジン2の出力が低減され、後輪6の駆動力が低下して遊星歯車機構51を構成する歯車等の部品(軸受け)の回転速度の上昇が抑制される。
【0101】
図7に基づいてスラストベアリング66の回転速度Ntに応じてブレーキ力を増加する制御及びエンジントルクを低減する制御の流れを説明する。
【0102】
処理がスタートすると、ステップS1でスラストベアリング66の回転速度Ntが第1の許容回転速度Nta1を超えたか否かが判断され、ステップS1でモータ回転速度Nmが第1の許容回転速度Nta1を超えたと判断された場合(ステップS1;YES)、ステップS2でブレーキ制御用ECU18の指令によりブレーキ力の増圧指示(ブレーキ指示)がONにされる。ステップS1でスラストベアリング66の回転速度Ntが第1の許容回転速度Nta1を超えていないと判断された場合(ステップS1;NO)、ステップS3でブレーキ制御用ECU18の指令によりブレーキ指示がOFFにされる。
【0103】
ステップS2でブレーキ指示がONにされた後、ステップS4でスラストベアリング66の回転速度Ntが第2の許容回転速度Nta2を超えているか否かが判断される。第2の許容回転速度Nta2の値は、例えば、スラストベアリング66の回転速度Ntが第1の許容回転速度Nta1を超えてブレーキ力が増圧された後に判断される回転速度Ntの許容回転速度であり、第1の許容回転速度Nta1の値に対して設定される、もしくは各種機器の構成により任意に設定される。
【0104】
ステップS4でスラストベアリング66の回転速度Ntが第2の許容回転速度Nta2を超えたと判断された場合(ステップS4;YES)、ステップS5でエンジンECU26の指令により、エンジン2の出力を低減させる指示(エンジントルク低減指示)がONにされ、リターンとなる。ステップS4でスラストベアリング66の回転速度Ntが第2の許容回転速度Nta2を超えていないと判断された場合(ステップS4;NO)、ステップS6でエンジントルク低減指示がOFFにされ、リターンとなる。また、ステップS3でブレーキ指示がOFFにされた後も、ステップS6でエンジントルク低減指示がOFFにされ、リターンとなる。
【0105】
即ち、ブレーキ指示がONになっても回転速度Ntの上昇が収まらない場合にエンジントルクが低減されるようになっているため、第1の許容回転速度Nta1よりも第2の許容回転速度Nta2が大きな値に設定され、スラストベアリング66の回転速度Ntが上限に近い許容値である第2の許容回転速度Nta2を超えた際に、エンジントルク低減指示をONにし、ブレーキ動作と出力低減とが同時に行なわれる。
【0106】
上述したように、スラストベアリング66の回転速度Ntが第1の許容回転速度Nta1を超えた場合、ブレーキ指示がONにされて左右の後輪6に制動力が働き、遊星歯車機構51を構成する歯車等の部品(軸受け)の回転速度の上昇が抑制される。更に、後輪6に制動力が働いている状態で、スラストベアリング66の回転速度Ntが第2の許容回転速度Nta2を超えた場合、エンジン2の出力が低減されて後輪6の駆動力が低下し、遊星歯車機構51を構成する歯車等の部品(軸受け)の回転速度の上昇が抑制される。
【0107】
上述した左右駆動力分配装置11では、電動モータ13により遊星歯車機構51を制御する際に、車軸12L、12R(2つの出力軸)に大きな回転差が発生しても、歯車等の部品(軸受け)の回転速度が許容回転速度を超えることがない。このため、大きなギヤ比を達成する遊星歯車機構51を用いて安価な小型の電動モータ13を採用しても、歯車等の部品(軸受け)の過回転が生じる虞がなく、構成機器のコストを増加させずに歯車等の部品(軸受け)の破損を防止することができる。
【0108】
また、統合コントローラー27の指令に基づいて、電動モータ13の駆動により左後輪6Lと右後輪6Rの間のトルク差を制御するアクティブヨーコントロール(AYC)の制御と、ブレーキ制御用ECU18の指令に基づいて左右の前輪5及び後輪6のブレーキ力を独立して制御するシステムを用いているので、新たなシステム構成が不要であり、制御機器を増加させずに歯車等の部品(軸受け)の破損を防止することができる。
【0109】
図8から図10に基づいて、電動モータ13のモータ回転速度Nmの第1の許容回転速度、第2の許容回転速度を用いた実施例の制御を具体的に説明する。
【0110】
図8に示すように、ブレーキ制御量は、電動モータ13のモータ回転速度Nmが所定の回転速度N1に達すると、ブレーキ圧力の増圧量(ブレーキ増圧量)が増加し始め、所定の回転速度N1から回転速度N2に至るまでの間ブレーキ増圧量が漸増するように設定されている。また、回転速度N2を超えるとブレーキ増圧量が高い値に維持されるように設定されている。
【0111】
図9に示すように、エンジントルク低減量は、電動モータ13のモータ回転速度Nmが所定の回転速度N3に達すると、エンジントルク低減量が増加し始め、所定の回転速度N3から回転速度N4に至るまでの間エンジントルク低減量が漸増するように設定されている。また、回転速度N4を超えるとエンジントルク低減量が高い値に維持されるように設定されている。
【0112】
尚、ブレーキ制御量及びエンジントルク低減量をマップの読み込みによらず(マップの読み込みと併用して)、演算により求めることも可能である。
【0113】
ブレーキ制御量読込手段84(図3参照)で読み込まれたブレーキ増圧量の情報はブレーキ制御用ECU18(図3参照)に送られ、ブレーキ制御用ECU18(図3参照)の指令により、ブレーキ装置16L、16Rにブレーキ増圧量が反映された油圧が供給され、左右の後輪6に制動力が働いて遊星歯車機構51を構成する歯車等の部品(軸受け)の回転速度の上昇が抑制される。
【0114】
また、エンジントルク低減量読込手段85(図3参照)で読み込まれたエンジントルク低減量の情報はエンジンECU26(図3参照)に送られ、エンジンECU26(図3参照)の指令により、エンジントルク低減量が反映された状態でエンジン2の出力が低減され、後輪6の駆動力が低下して遊星歯車機構51を構成する歯車等の部品(軸受け)の回転速度の上昇が抑制される。
【0115】
図10に基づいてモータ回転速度Nmに応じてブレーキ力を増加する制御及びエンジントルクを低減する制御の流れを説明する。
【0116】
処理がスタートすると、ステップS11でモータ回転速度Nmが第1の許容回転速度Na1を超えたか否かが判断され、ステップS11でモータ回転速度Nmが第1の許容回転速度Na1を超えたと判断された場合(ステップS11;YES)、ステップS12でブレーキ制御用ECU18の指令によりブレーキ力の増圧指示(ブレーキ指示)がONにされる。ステップS11でモータ回転速度Nmが第1の許容回転速度Na1を超えていないと判断された場合(ステップS11;NO)、ステップS13でブレーキ制御用ECU18の指令によりブレーキ指示がOFFにされる。
【0117】
ステップS12でブレーキ指示がONにされた後、ステップS14でモータ回転速度Nmが第2の許容回転速度Na2を超えているか否かが判断される。第2の許容回転速度Na2の値は、例えば、モータ回転速度Nmが第1の許容回転速度Na1を超えてブレーキ力が増圧された後に判断されるモータ回転速度Nmの許容回転速度であり、第1の許容回転速度Na1の値に対して設定される、もしくは各種機器の構成により任意に設定される。
【0118】
ステップS14でモータ回転速度Nmが第2の許容回転速度Na2を超えたと判断された場合(ステップS14;YES)、ステップS15でエンジンECU26の指令により、エンジン2の出力を低減させる指示(エンジントルク低減指示)がONにされ、リターンとなる。ステップS14でモータ回転速度Nmが第2の許容回転速度Na2を超えていないと判断された場合(ステップS14;NO)、ステップS16でエンジントルク低減指示がOFFにされ、リターンとなる。また、ステップS13でブレーキ指示がOFFにされた後も、ステップS16でエンジントルク低減指示がOFFにされ、リターンとなる。
【0119】
即ち、ブレーキ指示がONになってもモータ回転速度Nmの上昇が収まらない場合にエンジントルクが低減されるようになっているため、第1の許容回転速度Na1よりも第2の許容回転速度Na2が大きな値に設定され、モータ回転速度Nmが上限に近い許容値である第2の許容回転速度Na2を超えた際に、エンジントルク低減指示をONにし、ブレーキ動作と出力低減とが同時に行なわれる。
【0120】
上述したように、モータ回転速度Nmが第1の許容回転速度Na1を超えた場合、ブレーキ指示がONにされて左右の後輪6に制動力が働き、遊星歯車機構51を構成する歯車等の部品(軸受け)の回転速度の上昇が抑制される。更に、後輪6に制動力が働いている状態で、モータ回転速度Nmが第2の許容回転速度Na2を超えた場合、エンジン2の出力が低減されて後輪6の駆動力が低下し、遊星歯車機構51を構成する歯車等の部品(軸受け)の回転速度の上昇が抑制される。
【0121】
上述した左右駆動力分配装置11では、スラストベアリング66の回転速度Ntに基づいて制御を実施した場合と同様に、車軸12L、12R(2つの出力軸)に大きな回転差が発生しても、歯車等の部品(軸受け)の回転速度が許容回転速度を超えることがない。このため、大きなギヤ比を達成する遊星歯車機構51を用いて安価な小型の電動モータ13を採用しても、歯車等の部品(軸受け)の過回転が生じる虞がなく、構成機器のコストを増加させずに歯車等の部品(軸受け)の破損を防止することができる。
【0122】
また、統合コントローラー27によるアクティブヨーコントロール(AYC)の制御と、ブレーキ制御用ECU18の指令によるブレーキ制御システムを用いているので、新たなシステム構成が不要であり、制御機器を増加させずに歯車等の部品(軸受け)の破損を防止することができる。
【0123】
上述した左右駆動力分配装置11は、電動モータ13により遊星歯車機構51の回転を制御して左右の後輪6の駆動力を分配する際に、車軸12L、12Rに大きな回転差が発生しても、遊星歯車機構51の歯車(軸受け)や各回転要素(電動モータ13等)の回転速度が許容回転速度を超えることがない。
【0124】
このため、構成機器のコストを増加させずに、また、既存のステムを用いて新たなシステム構成を用いることなく、歯車等の部品(軸受け)の破損を防止することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、入力される駆動力を2つの出力軸、例えば、左右の車輪軸に分配する駆動力分配装置の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0126】
1 車両
2 エンジン
3 トランスミッション
4 センターディファレンシャル(センターデフ)
5 前輪
6 後輪
7、12 車軸
8 プロペラシャフト
11 左右駆動力分配装置
13 電動モータ
15、16 ブレーキ装置
18 ブレーキ制御用ECU
19 サービスブレーキ装置
21、22 車輪速センサ
24 ハンドル角センサ
25 統合センサ
26 エンジンECU
27 統合コントローラー
31 モータ速度センサ
32 インバータ
41 入力軸
42 ケース
43 入力傘歯車
44 デフケース
45 歯車
46 中心軸
47 ピニオン
48 左サイド歯車
49 右サイド歯車
50 貫通軸
51 遊星歯車機構
52 固定子コイル
53 軸受け
54 駆動軸
55 回転子コイル
56 キャリア支持ベアリング
57 キャリア
58 遊星歯車軸
59 ニードルベアリング
60 遊星ピニオン歯車
61 歯車ケース
62 モータケース
63 仕切り板
65 太陽歯車
66 スラストベアリング
71 連結歯車
72 キャリア側太陽歯車
73 ケース側太陽歯車
75 第2遊星歯車軸
81 出力太陽歯車
82 部品保護制御手段
83 保護制御介入判定手段
84 ブレーキ制御量読込手段
85 エンジントルク低減量読込手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される駆動力を2つの出力軸に互いの差動を許容した状態で伝達する差動手段と、
2つの前記出力軸の間に介在し前記出力軸の回転差により回転作動する歯車手段と、
前記歯車手段を駆動して前記出力軸の回転差を増加・減少させるように前記歯車手段を回転駆動する電動モータと、
前記電動モータの回転速度の状態を検出するモータ速度状態検出手段と、
2つの前記出力軸の回転を個別に制動する制動手段と、
前記モータ速度状態検出手段により前記電動モータの回転速度の状態が所定回転速度状態を超えたことが検出された際に、前記制動手段を作動させる制御手段とを備えた
ことを特徴とする駆動力配分装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動力配分装置において、
前記歯車手段は、軸受けを介して複数の歯車が支持されて前記電動モータの回転を増幅させる遊星歯車機構であり、
前記制御手段は、前記軸受けの回転速度を演算し、前記軸受けの回転速度が許容回転速度を超えた際に前記制動手段を作動させる
ことを特徴とする駆動力配分装置。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の駆動力配分装置において、
前記制御手段は、前記制動手段を作動させると共に前記差動手段に入力される駆動力を低下させる
ことを特徴とする駆動力配分装置。
【請求項4】
請求項2もしくは請求項3に記載の駆動力配分装置において、
前記遊星歯車機構は、
ケース側に回転自在に支持され前記電動モータの駆動軸に連結されるキャリアと、
前記キャリアに回転自在に支持される遊星ピニオン歯車と、
前記遊星ピニオン歯車に噛み合い2つの前記出力軸のいずれか一方側に連結されて前記キャリア側に支持される太陽歯車と、
前記遊星ピニオン歯車に噛み合い前記キャリア側及び前記ケース側に支持され2つの前記出力軸のいずれか他方側に連結される第2太陽歯車とを備え、
前記電動モータの駆動により前記キャリアが回動することで前記遊星ピニオン歯車が公転すると同時に前記太陽歯車に噛み合う前記遊星ピニオン歯車が自転し、更に、前記遊星ピニオン歯車の回転により前記第2太陽歯車が回転する機構である
ことを特徴とする駆動力配分装置。
【請求項5】
請求項2もしくは請求項3に記載の駆動力配分装置において、
前記遊星歯車機構は、
ケース側にキャリア支持ベアリングを介して回転自在に支持され前記電動モータの駆動軸に連結されるキャリアと、
前記キャリアに対してニードルベアリングを介して回転自在に支持される遊星ピニオン歯車と、
前記遊星ピニオン歯車に噛み合い2つの前記出力軸のいずれか一方側に連結されスラストベアリングを介して前記キャリア側に支持される太陽歯車と、
前記遊星ピニオン歯車に噛み合いスラストベアリングを介して前記キャリア側及び前記ケース側に支持される第2太陽歯車と、
前記第2太陽歯車に噛み合い前記ケースに回転自在に支持される第2遊星ピニオン歯車と、
前記第2遊星ピニオン歯車に噛み合い2つの前記出力軸のいずれか他方側に連結されスラストベアリングを介して前記ケース側に支持される第3太陽歯車とを備え、
前記電動モータの駆動により前記キャリアが回動することで前記遊星ピニオン歯車が公転すると同時に前記太陽歯車に噛み合う前記遊星ピニオン歯車が自転し、更に、前記遊星ピニオン歯車の回転により前記第2太陽歯車が回転し、前記第2太陽歯車の回転により前記第2遊星ピニオン歯車が自転することで前記第3太陽歯車が回転する機構であり、
前記制御手段は、前記ニードルベアリングの回転速度、もしくは前記キャリア支持ベアリングの回転速度、もしくは前記スラストベアリングの回転速度のうち、少なくとも前記スラストベアリングの回転速度を演算することで、前記電動モータの所定回転速度の状態を求める
ことを特徴とする駆動力配分装置。
【請求項6】
請求項5に記載の駆動力配分装置において、
前記制御手段では、
前記スラストベアリングの回転速度が、前記電動モータの回転速度及び前記太陽歯車に連結される側の出力軸の回転速度、または、前記電動モータの回転速度に基づいて演算される
ことを特徴とする駆動力配分装置。
【請求項7】
請求項5もしくは請求項6のいずれか一項に記載の駆動力配分装置において、
前記制御手段では、
前記ニードルベアリングの回転速度が、前記第2太陽歯車の歯数を前記遊星ピニオン歯車の歯数で除した値と、前記第2太陽歯車の回転速度に前記電動モータの回転速度を加えた値、または、前記電動モータの回転速度とに基づいて演算される
ことを特徴とする駆動力配分装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の駆動力配分装置において、
前記制御手段では、
前記キャリア支持ベアリングの回転速度が、前記電動モータの回転速度に基づいて演算される
ことを特徴とする駆動力配分装置。
【請求項9】
請求項7もしくは請求項8に記載の駆動力配分装置において、
前記制御手段で演算される前記電動モータの回転速度は、
前記太陽歯車に連結される側の出力軸の回転速度と前記第2太陽歯車側に連結される側の出力軸の回転速度との差に対し、前記電動モータによるトルク増幅率を加味して演算される
ことを特徴とする駆動力配分装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の駆動力配分装置において、
2つの前記出力軸は左右の車輪軸であることを特徴とする駆動力配分装置。
【請求項11】
請求項10に記載の駆動力配分装置において、
車両の走行状態に応じて、前記電動モータの駆動により左右の前記車輪軸を所望の駆動力差に制御するヨーレイト制御手段が備えられている
ことを特徴とする駆動力配分装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−126223(P2012−126223A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278662(P2010−278662)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】