説明

高電圧炭化ケイ素半導体デバイスのための環境的に堅固なパッシベーション構造

炭化ケイ素における高電界半導体デバイスのための改良された終端構造を開示する。該終端構造は、高電界動作のための炭化ケイ素ベースのデバイスと、該デバイスにおける活性領域と、該活性領域のためのエッジ終端パッシベーションとを含み、該エッジ終端パッシベーションは、表面状態を満足させ、界面密度を低下させるための該デバイスの炭化ケイ素部分の少なくとも一部分上の酸化物層と、水素の取り込みを回避するため、および寄生容量を減少させ、捕捉を最小化するための該酸化物層上の窒化ケイ素の非化学量論的層と、該非化学量論的層および該酸化物層を封入するための該非化学量論的層上の窒化ケイ素の化学量論的層と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、高電圧で動作し、したがって高電場が存在する場合の、あるいは高電界を生成または受ける炭化ケイ素(SiC)ベースの半導体デバイスに関する。通常、かかるデバイスは、ショットキー(整流)ダイオード、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(metal−oxide semiconductor field−effect transistor:MOSFET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated gate bipolar transistor:IGBT)、PTNダイオード、バイポーラ接合トランジスタ(bipolar junction transistor:BJT)を含むが、それらに限定される必要はない。例えば(限定としてではなく)、SiCベースのパワーデバイスは、(切り替え)電力供給、モーター制御、電力調節、ハイブリッド車技術、安全装置および電力貯蔵に有利である。
【0002】
炭化ケイ素は、電子パワーデバイスに多くの物理的、化学的および電子的利点を提供する。物理的には、該材料は非常に強固で極めて高い融点を有するため、堅固な物理的特性を与える。化学的には、炭化ケイ素は化学攻撃に対して高い耐性があるため、化学安定性および熱安定性を提供する。しかし、おそらく最も重要なことは、炭化ケイ素は、高破壊電界、比較的大きなバンドギャップ(6Hポリタイプに対し室温で約2.9eV)、高飽和電子ドリフト速度などの優れた電子特性を有するため、高出力動作、高温動作、耐放射性、およびスペクトルの青、紫および紫外領域における高エネルギー光子の吸収および放射に関して著しい利点を与えることである。
【0003】
パワー応用において、炭化ケイ素の大きなバンドギャップは、高い衝撃イオン化エネルギーをもたらす。言い換えると、これはイオン化担体のなだれ増倍を生じることなくSiCが比較的高い電界を受けられるようにする。比較として、炭化ケイ素の電界容量はシリコンよりも10倍大きい。
【0004】
これらのデバイスの活性領域はかかる高電界を受けるまたは生成するため、デバイスは、通常、デバイスのエッジにおける電界の効果(「電界集中」)を減少させるために何らかの終端構造を含まなければならない。一般的な例において、終端構造は、活性領域に隣接する炭化ケイ素における埋め込み領域を含む。また、デバイスの表面は、終端されなければならないため、通常、何らかのパッシベーション構造がこの表面に加えられる。多くの場合において、表面パッシベーション構造は、非化学量論的酸化物および非化学量論的窒化物(つまり、SiOおよびSi以外)を含む、酸化ケイ素、窒化ケイ素などの重合体(大概、ポリイミド)もしくは誘電性のパッシベーションまたはそれらのいくつかの組み合わせを含むことができる。
【0005】
より高い電圧、したがってより高い電界に対応できるSiCベースのデバイスが開発し続けられているため、通常約1500℃より低い温度での衝撃に化学的に耐性のある炭化ケイ素は、パワー電子デバイスのこれらの種類に関連する高い電界が存在する場合に、前述にかかわらず非常に低い温度で酸化することが予期せず発見されている。具体的には、この酸化は、切り替えパワーデバイス内などの著しい過渡電流がデバイスを通過するデバイス内で存在する。最も良く理解されているように、これはより高い電界および比較的高い周波数で適用された電子の存在が酸化の発生を促す他の従来の酸化還元反応であるように考えられる。
【0006】
この予期されず、望ましくない炭化ケイ素の酸化は、比較的中程度の動作温度、つまり炭化ケイ素が化学反応に加わる前に要求される通常のより高い温度ではなく、125℃の低い温度で発生し得る。
【0007】
結果とし生じる望ましくない酸化物が成長するにつれ、デバイスから離れてパッシベーション層を拡張および持ち上げる傾向があり、最終的に性能特性を低下または排除する。
【0008】
また、従来の酸化物パッシベーション技術は、高電界でドリフトを示す傾向もある。このドリフトの少なくとも一部は、負極の方向へドリフトする傾向のある水素(水素イオンとして現れる)の存在に起因し、デバイスの遮断能力およびデバイスの全体的な能力を低下させる電荷蓄積をもたらす。プラズマ化学気相成長法(plasma enhanced chemical vapor deposition:PECVD)で使用される酸化物前駆体の多くが水素を含むため、水素の存在は、通常、パッシベーション構造を形成するためのPECVDの使用に起因する。
【0009】
これに関連して発見された問題は、センチメートルにつき250キロボルト(kV/cm)もの低い電界強度で見られており、500kV/cm以上では確実に明白である。SiCベースのパワーデバイスの多くは、センチメートルにつき約1.5メガボルト(MV/cm)もの高い電界を受ける。
【0010】
したがって、炭化ケイ素の電界強度特性を十分に活用するデバイスは、ドリフトなどの望ましくない電子挙動なく、および炭化ケイ素のいくらかの化学量論的または非化学量論的酸化ケイ素への酸化などの腐食酸化還元反応なく、かかる電界強度に耐えることができるパッシベーション構造を必要とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の開示)
本発明は、炭化ケイ素における高電界半導体デバイスのための改良された終端構造である。構造は、高電界動作のための炭化ケイ素ベースのデバイスと、該デバイスにおける活性領域と、該活性領域のためのエッジ終端パッシベーションとを含み、該エッジ終端パッシベーションは、表面状態を満足させ、界面密度を低下させるための該デバイスの炭化ケイ素部分の少なくとも一部分上の酸化物層と、水素の取り込みを回避するため、および寄生容量を減少させ、捕捉を最小化するための該酸化物層上の窒化ケイ素の非化学量論的層と、該非化学量論的層および該酸化物層を封入するための該非化学量論的層上の窒化ケイ素の化学量論的層と、を含む。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、高電界動作のための炭化ケイ素ベースのデバイスと、該デバイスにおける活性領域と、該活性領域のためのエッジ終端パッシベーションと、を含み、該エッジ終端パッシベーションは、炭化ケイ素部分と酸化膜との界面密度を低下させるための該活性領域に隣接する該炭化ケイ素部分上の該酸化膜と、寄生容量を減少させ、デバイス捕捉を最小化するための該酸化膜上の第1のスパッタ非化学量論的窒化ケイ素層と、該構造を封入せずに、さらに該基板からその後のパッシベーション層を位置付けるための該第1の層状の第2のスパッタ非化学量論的窒化ケイ素層と、該構造を封入し、該パッシベーション層の水素遮断性を向上させるための該第2のスパッタ層上のスパッタ化学量論的窒化ケイ素層と、該封入層上の段差被覆および亀裂防止のための化学量論的窒化ケイ素の化学気相蒸着した環境障壁層と、を含む、炭化ケイ素における高電界半導体デバイスのための改良された終端構造である。
【0013】
本発明の前述およびその他の目的および利点ならびにそれらが達成される方法は、添付の図面とともに説明される以下の詳述に基づいて明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
図1は、概して10で示されたショットキーダイオードの断面概略図であり、本発明が対応する最近発見された問題を例証する。ショットキーダイオードは比較的単純(より少ない要素)な電子デバイスであるため、例証目的としては便利であるが、本発明は、種々のデバイスにうまく組み込むことができ、本明細書において記述されるものに制限されないことを理解されたい。
【0015】
ダイオード10は、炭化ケイ素エピタキシャル層12を保有する炭化ケイ素基板11上に形成される。整流金属接触部13は、基本的なショットキー構造を完成させる。図1において、基板11およびエピ層12は、n型として示される。
【0016】
用語「エッジ」は、ある程度任意の様式で使用されるが、ショットキーダイオードに対して、デバイスのエッジは、整流接触部13の周囲長または境界により機能的に決定される。したがって、図1に示されるダイオードにおいて、通常埋め込みにより形成される反対導電型領14(つまり、ショットキー接合点を形成する半導体の導電型と反対)は、エピタキシャル層12で表面の接触部13に隣接する。図1は、p型としての部分14を示す。従来のパッシベーション層を15で示し、発明の背景で記述される問題、すなわち酸化物の望ましくない成長を網掛け領域16で示す。図1において概略的に示すように、酸化物部分16の継続的成長は、物理的、化学的および電子的にデバイスの構造および性能を低下させる傾向がある。
【0017】
図2は、本発明による終端構造を組み込む概して17で示されたショットキーダイオードの概略断面図である。ダイオード17は、炭化ケイ素基板20および炭化ケイ素エピタキシャル層21をともなう炭化ケイ素ベースのデバイスである。概して、しかし限定されず、炭化ケイ素におけるn型ショットキーダイオードにおいて、基板20は、プラスおよびマイナス記号によって示されるように、エピタキシャル層21よりも僅かに多くドープされる。適切なショットキー金属から形成される金属接触部22は、エピタキシャル層21との整流接触部を形成する。本明細書の概略図は、多くの状況における単一金属層を示すが、金属の組み合わせがこれらの接触部に使用できることを理解されたい。例えば、接触部22は、炭化ケイ素との整流接触部においてニッケル、クロム、チタンまたは白金などのショットキー金属であり得るが、環境保護または回路へのより便利な接続などの他の目的のために、さらなる金属被覆も保有し得る。
【0018】
また、ダイオード17は、炭化ケイ素エピ層21においてp型終端領域23も含み、かかる終端領域は、通常、当業者によって十分に理解される方法でイオン注入により形成される。
【0019】
ダイオード17は、デバイスの活性領域のためのエッジ終端パッシベーション部分24を含む。エッジ終端24は、ショットキー接触部22に隣接して位置付けられ、表面状態を満足させ、界面密度を低下させるための、ダイオード17の少なくとも一部使用可能な炭化ケイ素部分上の酸化物層25を含む。非化学量論的窒化ケイ素層26は、水素の取り込みを回避するため、および寄生容量を減少させ、捕捉を最小化するための酸化物層上にある。窒化ケイ素27(Si)の化学量論的層は、環境攻撃に対して非化学量論的層26および酸化物層を封入するための非化学量論的層26上にある。
【0020】
エピタキシャル層を有するウエハを含む炭化ケイ素ウエハは市販されており、特に、本発明の譲受人であるCree,Inc.,Durham NCから入手可能である。したがって、必要以上の実験を経ることなく、当業者は基板およびエピタキシャル層を入手および使用することができる。例示的な実施形態において、基板20およびエピタキシャル層21は単結晶であり、3C、4H、6Hおよび15Rポリタイプの炭化ケイ素から成る群から選択されるポリタイプを有する。
【0021】
例示的な実施形態において、また多くの適切な理由により、終端パッシベーション構造24内の酸化物層25は、通常、熱成長酸化物である。また、かかる層は、用語、酸化が形容詞および動詞として使用される「熱酸化」層または「酸化」層としても称される。かかる用途は当技術分野において一般的であり、当業者は文脈において理解する。例示的な実施形態において、熱酸化層25は、通常、約100から500オングストロームの厚さを有する化学両論(SiO)の二酸化ケイ素である。
【0022】
発明の背景において記載されるように、窒化ケイ素パッシベーション層に関連する問題のうちの1つは、それらの水素の取り込みである。特定の半導体大きなバンドギャップデバイス(‘378親出願において説明されるIII族窒化物など)に関して、水素の存在は、半導体のドーピング特性に影響し得る。また、炭化ケイ素ベースのデバイスにおいて、パッシベーション構造中の水素の存在はドリフトを不利に発生し得る。したがって、非化学量論的窒化ケイ素26は、実質的に水素を含まず、水素の取り込みを回避するために蒸着されたスパッタである。比較として、化学気相蒸着窒化ケイ素は、通常、 CVD前駆体ガスにおける水素の存在のために水素を含む。例示的な実施形態において、非化学量論的層26は、約1000から2000オングストロームの厚さである。
【0023】
親出願においてさらに記載されるように、非化学量論的(つまり、Si以外)窒化ケイ素の原子比率は、化学量論的窒化ケイ素の屈折率(6328Åの標準波長で測定された2.02)とは異なる屈折率で表される。したがって、非化学量論的窒化ケイ素層は、窒素に富んだ組成物を表す(化学量論的と比較した場合)、約1.85から1.95の屈折率を有す。
【0024】
図3は、本発明によるパッシベーションを組み込む概して30で示された金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の断面概略図である。MOSFET30は、第1の導電型および反対導電型の炭化ケイ素のエピタキシャル層32を有する炭化ケイ素基板31を含む。図3は、平面のメサ型配向におけるMOSFETを示すが、これは例証目的のための例示的なものであり、本発明が組み込まれ得るMOSFETの方法または種類を制限するものではないことを理解されたい。
【0025】
ソース領域33およびドレイン領域34は、第1の導電型炭化ケイ素、つまり基板と同一の導電型で形成される。ゲート接触部35およびゲート酸化物36は、トランジスタ30とソース接触部38のゲート領域を画定し、ドレイン接触部37は、適切なオーム金属で形成される。
【0026】
本発明によるパッシベーション構造は、MOSFET30内または隣接する多くの位置に組み込むことができ、図3において、パッシベーションは、40で、つまり隣接する1つ以上のソース38、ゲート35、またはドレイン37接触部で示される。より詳細には、図3の左側部分の41で酸化物層を、42で非化学量論的窒化物層を、および43で化学量論的酸化物層を示す。他の部分は、図3の左側部分に示されるもとの同一の3部構成の構造を有することを理解されたい。
【0027】
32のエピタキシャル層がp型の場合、MOSFETは、n型ソースならびにドレイン部分33および34を有するpチャネルMOSFETと称される。当技術分野において十分に理解されるように、nチャネルMOSFETは、n型エピタキシャル層32を組み込み、ソースならびにドレイン部分33および34はp型となる。
【0028】
図4は、本発明によるパッシベーションを組み込む裏面コレクタを有する、概して45で示されるバイポーラ接合トランジスタ(BJT)の概略半セル説明図である。BJT45は、炭化ケイ素基板(ウエハを含む可能性がある)46上および基板46に隣接する炭化ケイ素ドリフト領域47上で形成される。基板46およびドリフト領域47は同一の導電型を有し、ドリフト領域47よりも僅かに多くドープされる基板46を有するn型として図4で示される。基部領域50は、基部領域50の残部よりも僅かに多くドープされる基部コレクタ金属52に隣接する部分51を有する反対導電型(図4においてp型)で形成される。コントローラ接触部(裏面上)55とともに、エミッタ部分53および対応する接触部54は、半セル構造を完成させる。
【0029】
パッシベーションは、1つ以上のエミッタ54、基部52またはコレクタ52接触部に隣接する。図4に示すデバイス配向において、パッシベーション56は、エミッタ接触部54に隣接して示される。先の実施形態のように、パッシベーション終端構造は、酸化物層57、非化学量論的窒化ケイ素層60、および化学量論的窒化ケイ素層61で形成される。図4は、n−p−nバイポーラ接合トランジスタを示すが、また、本発明は、構造の関連部分で逆転した導電型を有するp−n−pバイポーラ接合トランジスタとともに使用することもできる。
【0030】
図5は、本発明による終端パッシベーションを組み込む、概して63で示される絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)の断面概略半セル表現である。トランジスタ63は、エミッタ接触部65およびゲート接触部66の反対側の、デバイスの裏面上のコントローラ接触部64とともに配向されている。図5に示すように、IGBT63は、MOSFETゲート駆動を有するp−n−pバイポーラトランジスタと同等の回路を形成する。67でゲート酸化物を、70および71(ドリフト領域)で各n型部分を、ならびに72および74(p型基板)でp型領域を示す。
【0031】
エッジ終端パッシベーション70は、エミッタ65、ゲート66またはコレクタ64接触部のうちの少なくとも1つに(および、配向次第ではそれぞれに)隣接する。図5は、エミッタ接触部65に隣接する終端パッシベーション70を示す。図5に示すトランジスタはn型ドリフト領域71を含むが、トランジスタはp型ドリフト領域で構成されることができ、当業者により理解され得る。
【0032】
図6は、本発明による概して74で示されるサイリスタの断面概略図(半セル)である。図6の配向において、各4つの領域(2つのp型および2つのn型)は、n型基板(またはウエハ75)、p型ドリフト領域76、n型エピ層77、およびp型層80として示される。アノード接触部81は、pエピタキシャル層80に対して作製され、カソード接触部82は、n型基板75に対して作製される。金属ゲート接触部83は、図6に示すように、n型エピタキシャル層77の残部よりも、一領域84に僅かに多くドープすることができるゲート部分を画定する。
【0033】
本発明によるサイリスタにおいて、エッジ終端パッシベーション85は、アノード81、カソード82、またはゲート83接触部のうちの少なくとも1つ、および可能であればそれぞれで隣接し、酸化物層86、非化学量論的窒化ケイ素層87、および化学量論的封入窒化ケイ素層90を含む。
【0034】
図7は、本発明によるパッシベーション構造のより詳細な実施形態93を示す。このより詳細な構造は、前述の任意の1つ以上のデバイス内に組み込むことができる。
【0035】
図7において、第1のスパッタ非化学量論的層94は、寄生容量を減少させ、デバイス捕捉を最小化するための熱酸化層95上にある。第2のスパッタ非化学量論的窒化ケイ素層96は、構造93を完全に封入せずに、さらに基板97からその後のパッシベーション層を位置付けるための第1の層94上にある。スパッタ化学量論的窒化ケイ素層100は、最初に構造93を封入およびパッシベーション層の水素遮断性を向上させるための第2のスパッタ非化学量論的層96上にある。化学気相蒸着環境障壁層101は、段差被覆および亀裂防止を提供するようにデバイスを被覆する。
【0036】
これまでよりもやや詳細に、熱酸化層95は、例示的な実施形態において約100から500オングストローム(Å)の厚さを有する化学量論的二酸化ケイ素(SiO)である。これは、(窒化物のみのパッシベーションとは対照的に)酸化物の電子的利点を提供するのに十分な厚さであるが、付加的な製造問題をもたらす厚さには満たない。
【0037】
本明細書の他の部分で記載されるように、スパッタリングの目的は、実質的に水素を含まない窒化ケイ素層を提供できるようにすることである。故に、層94、96および100は、実質的に有利に水素を含まない。
【0038】
最初の2つのスパッタ層94および96は、優先的に窒素に富んでいる。前述のように、(非化学量論的組成物における)ケイ素または窒素の割合は、形成された窒化ケイ素膜の組成物の指標としての屈折率により判断できる。
【0039】
したがって、例示的な実施形態において、非化学量論的スパッタ窒化ケイ素層94および96のそれぞれは、約1.85から1.95の屈折率を有する。
【0040】
炭化ケイ素基板は単結晶であることが多く、3C、4H、6Hおよび15Rポリタイプの炭化ケイ素から成る群から選択されるポリタイプを有する。
【0041】
スパッタリングの一目的は、本明細書の他の部分に記載されるような水素の存在を回避すること、したがって、水素の存在に付随する電子的問題を回避することである。したがって、図7に関連して記述されたスパッタ層は、水素を含まない層としても理解することができる。言い換えれば、スパッタリングは、水素を含まないパッシベーション層を生成するための一技術である。しかし、本発明はまた、その製造方法にかかわらず、水素を含まないパッシベーション層としても理解することができる。
【0042】
図面および本明細書において、本発明の好適な実施形態が記述され、特定の用語が用いられているが、これらは一般的および説明的な意向のみにおいて使用されるものであり、制限目的のためではなく、本発明の範囲は請求項において定義される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、ショットキーダイオードの断面概略図である。
【図2】図2は、本発明による終端構造を組み込むショットキーダイオードの概略断面図である。
【図3】図3は、本発明のパッシベーションを組み込む金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の断面概略図である。
【図4】図4は、本発明によるパッシベーションを組み込むバイポーラ接合トランジスタ(BJT)の概略半セル説明図である。
【図5】図5は、本発明による終端パッシベーションを組み込む絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)の断面概略半セルの説明である。
【図6】図6は、本発明によるサイリスタの断面概略図である。
【図7】図7は、本発明によるパッシベーション構造のより詳細な実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素における高電界半導体デバイスのための改良された終端構造であって、
高電界動作のための炭化ケイ素ベースのデバイスと、
前記デバイスにおける活性領域と、
前記活性領域のためのエッジ終端パッシベーションと、
を含み、前記エッジ終端パッシベーションは、
表面状態を満足させ、界面密度を低下させるための前記デバイスの炭化ケイ素部分の少なくとも一部分上の酸化物層と、
水素の取り込みを回避するため、および寄生容量を減少させ、捕捉を最小化するための前記酸化物層上の窒化ケイ素の非化学量論的層と、
前記非化学量論的層および前記酸化物層を封入するための前記非化学量論的層上の窒化ケイ素の化学量論的層と、
を含む、改良された終端構造。
【請求項2】
単結晶であり、3C、4H、6Hおよび15Rポリタイプの炭化ケイ素から成る群から選択されるポリタイプを有する炭化ケイ素を含む、請求項1に記載の終端構造。
【請求項3】
ショットキーダイオード、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、PINダイオード、バイポーラ接合トランジスタ、およびサイリスタから成る群から選択される、請求項1に記載の終端構造を取り込む、半導体デバイス。
【請求項4】
前記活性領域は、
炭化ケイ素エピタキシャル層上のショットキー金属と、
前記エピタキシャル層を支持する炭化ケイ素基板と、
を含む、請求項3に記載のショットキーダイオード。
【請求項5】
前記炭化ケイ素エピタキシャルおよび前記炭化ケイ素基板は、どちらもn型であり、
前記ショットキー金属は、ニッケル、クロム、チタン、および白金から成る群から選択される、請求項4に記載のショットキーダイオード。
【請求項6】
各ソース、ゲート、およびドレイン接触部を含み、
前記エッジ終端パッシベーションは、前記接触部の少なくとも1つに隣接する、請求項3に記載のMOSFET。
【請求項7】
請求項6に記載のpチャネルMOSFET。
【請求項8】
請求項6に記載のnチャネルMOSFET。
【請求項9】
各基部、エミッタ、およびコントローラ接触部を含み、
前記エッジ終端パッシベーションは、前記接触部の少なくとも1つに隣接する、請求項3に記載のバイポーラ接合トランジスタ。
【請求項10】
請求項9に記載のn−p−nバイポーラ接合トランジスタ。
【請求項11】
請求項9に記載のp−n−pバイポーラ接合トランジスタ。
【請求項12】
各基部、エミッタ、およびコントローラ接触部を含み、
前記エッジ終端パッシベーションは、前記接触部の少なくとも1つに隣接する、請求項3に記載の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項13】
n型ドリフト領域を含む、請求項12に記載の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項14】
p型ドリフト領域を含む、請求項12に記載の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項15】
各アノード、カソード、およびゲート接触部を含み、
前記エッジ終端パッシベーションは、前記接触部の少なくとも1つに隣接する、請求項3に記載のサイリスタ。
【請求項16】
各アノードおよびカソード接触部を含み、前記エッジ終端パッシベーションは前記アノードおよびカソード接触部の少なくとも1つに隣接する、請求項3に記載のp−i−nダイオード。
【請求項17】
前記酸化物層は、熱酸化層である、請求項1に記載の終端構造。
【請求項18】
前記熱酸化層は、約100から500オングストロームの厚さを有する二酸化ケイ素である、請求項17に記載の終端構造。
【請求項19】
前記非化学量論的窒化ケイ素層は、実質的に水素を含まない、請求項1に記載の終端構造。
【請求項20】
前記非化学量論的窒化ケイ素層は、約1000から2000オングストロームの厚さである、請求項1に記載の終端構造。
【請求項21】
前記非化学量論的窒化ケイ素層は、約1.85から1.95の屈折率を有する、請求項1に記載の終端構造。
【請求項22】
前記化学量論的窒化ケイ素層は、実質的に酸素を含まない、請求項1に記載の終端構造。
【請求項23】
炭化ケイ素における高電界半導体デバイスのための改良された終端構造であって、
高電界動作のための炭化ケイ素ベースのデバイスと、
前記デバイスにおける活性領域と、
前記活性領域のためのエッジ終端パッシベーションと、
を含み、前記エッジ終端パッシベーションは、
炭化ケイ素部分と酸化膜との界面密度を低下させるための前記活性領域に隣接する前記炭化ケイ素部分上の前記酸化膜と、
寄生容量を減少させ、デバイス捕捉を最小化するための前記酸化膜上の第1のスパッタ非化学量論的窒化ケイ素層と、
前記構造を封入せずに、さらに前記基板からその後のパッシベーション層を位置付けるための前記第1の層上の第2のスパッタ非化学量論的窒化ケイ素層と、
前記構造を封入し、前記パッシベーション層の水素遮断性を向上させるための前記第2のスパッタ層上のスパッタ化学量論的窒化ケイ素層と、
前記封入層上の段差被覆および亀裂防止のための化学量論的窒化ケイ素の化学気相蒸着した環境障壁層と、
を含む、改良された終端構造。
【請求項24】
前記酸化膜は熱酸化層である、請求項23に記載のパッシベーションされた半導体構造。
【請求項25】
前記熱酸化層は、約100から500オングストロームの厚さを有する二酸化ケイ素である、請求項23に記載のパッシベーションされた半導体構造。
【請求項26】
前記第1の窒化ケイ素層は、実質的に水素を含まない、請求項23に記載のパッシベーションされた半導体構造。
【請求項27】
前記第1の窒化ケイ素層は、約1000から2000オングストロームの厚さである、請求項23に記載のパッシベーションされた半導体構造。
【請求項28】
前記第1の窒化ケイ素層は、約1.85から1.95の屈折率を有する、請求項23に記載のパッシベーションされた半導体構造。
【請求項29】
前記第2の窒化ケイ素層は、実質的に水素を含まない、請求項23に記載のパッシベーションされた半導体構造。
【請求項30】
前記第2の窒化ケイ素層は、約1000から3000オングストロームの厚さである、請求項23に記載のパッシベーションされた半導体構造。
【請求項31】
前記第2の窒化ケイ素層は、約1.85から1.95の屈折率を有する、請求項23に記載のパッシベーションされた半導体構造。
【請求項32】
前記化学量論的封入層は、約1000から3000オングストロームの厚さである、請求項23に記載のパッシベーションされた半導体構造。
【請求項33】
前記封入層は実質的に水素を含まない、請求項23に記載のパッシベーションされた半導体構造。
【請求項34】
前記環境障壁層は約2000から5000オングストロームである、請求項23に記載のパッシベーションされた半導体構造。
【請求項35】
前記環境障壁層はおよび前記封入層はどちらもSiを含む、請求項23に記載のパッシベーションされた半導体構造。
【請求項36】
前記炭化ケイ素基板は、3C、4H、6Hおよび15Rポリタイプの炭化ケイ素から成る群から選択されるポリタイプを有する単結晶である、請求項23に記載のパッシベーションされた半導体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−522823(P2009−522823A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550321(P2008−550321)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/048817
【国際公開番号】WO2007/081528
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(506078378)クリー, インコーポレイティッド (26)
【Fターム(参考)】