説明

CVD装置

本発明の実施形態は概して、基板上への化学気相蒸着(CVD)のための方法及び装置、特には有機金属化学気相蒸着における使用のための処理チャンバ及び部品に関する。本装置は、処理容積を画成するチャンバ本体を備える。第1平面のシャワーヘッドが、処理容積の上部を画成する。第2平面のキャリアプレートが処理容積を横断して延び、シャワーヘッドとサセプタプレートとの間に上方処理容積を形成する。第3平面の透明材が処理容積の底部を画成し、キャリアプレートとの間で下方処理容積を形成する。複数のランプが、透明材の下に位置する1つ以上のゾーンを形成する。本装置は、より大型の基板全体で温度を均一に維持しながらも均等な前駆体流れと前駆体の混合をもたらし、これに対応してスループットが上昇する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
(発明の分野)
本発明の実施形態は、一般に、基板上での化学気相蒸着(CVD)のための方法及び装置、特には化学気相蒸着において使用するための処理チャンバに関する。
【0002】
(関連技術の説明)
III−V族膜は、多種多様な半導体デバイス(短波長発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)等)及び高出力、高周波、高温トランジスタ、集積回路を含む電子デバイスの開発及び製造において重要性を増しつつある。例えば、短波長(例えば、青/緑〜紫外線)LEDは、III族窒化物半導体材料である窒化ガリウム(GaN)を使用して製造される。GaNを使用して製造された短波長LEDでは、II−VI族元素を含む非窒化物半導体材料を使用して製造された短波長LEDよりはるかに高い効率及び長い動作寿命が得られることが観察されている。
【0003】
GaN等のIII族窒化物の堆積に使用されている1つの方法が、有機金属化学気相蒸着(MOCVD)である。この化学気相蒸着法は一般に、温度管理された環境を有するリアクタ内で行なうことによって、III族に属するガリウム(Ga)等の少なくとも1種の元素を含有する第1前駆体ガスの安定性を確保している。アンモニア(NH)等の第2前駆体ガスが、III族窒化物の生成に必要な窒素を提供する。これら2種類の前駆体ガスはリアクタ内の処理ゾーンに注入され、そこで混合され、処理ゾーン内の加熱された基板に向かって移動する。キャリアガスを使用して、前駆体ガスの基板方向への移動を促す場合もある。前駆体は加熱された基板の表面で反応してIII族窒化物層(GaN等)を基板表面上に形成する。膜の質は一部、堆積の均一性に依存しており、堆積の均一性は、基板全体に亘っての前駆体の均等な流れ及び混合に左右される。
【0004】
LED、LD、トランジスタ及び集積回路への需要が増大するにつれ、高品質のIII族窒化物膜を堆積する効率の重要性が増す。従って、より大型の基板及びより広い堆積面積に亘って均等な前駆体の混合と一貫した膜質をもたらすことが可能な、改良された堆積装置及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は概して、基板上への化学気相蒸着(CVD)のための方法及び装置、特には化学気相蒸着における使用のための処理チャンバ及び部品に関する。
【0006】
一実施形態において、基板上への有機金属化学気相蒸着のための装置を提供する。処理装置は、処理容積を画成するチャンバ本体を備える。第1平面のシャワーヘッドが、処理容積の上部を画成する。第2平面の基板キャリアプレートが処理容積を横断して延び、シャワーヘッドとサセプタプレートとの間に上方処理容積を形成する。第3平面の透明材が処理容積の底部を画成し、基板キャリアプレートとの間で下方処理容積を形成する。複数のランプが、透明材の下に位置する1つ以上のゾーンを形成する。複数のランプは、輻射熱を基板キャリアプレートに向かって指向させ、1つ以上の輻射熱ゾーンを形成する。
【0007】
他の実施形態において、有機金属化学気相蒸着のための基板処理装置が提供される。処理装置は、処理容積を画成するチャンバ本体を備える。第1平面のシャワーヘッドは、処理容積の上部を画成する。処理容積内の第1平面の下を、第2平面の基板キャリアプレートが処理容積を横断して延びる。傾斜部を備えた遮光体が基板キャリアプレートの周囲を取り囲み、遮光体は、基板キャリアプレートに向かって輻射熱を指向させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の上記の構成が詳細に理解されるように、上記で簡単に要約した本発明のより具体的な説明を実施形態を参照して行う。実施形態の一部は添付図面に図示されている。しかしながら、添付図面は本発明の典型的な実施形態しか図示しておらず、本発明はその他の同等に効果的な実施形態も含み得ることから、本発明の範囲を制限すると解釈されないことに留意すべきである。
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による堆積チャンバの断面図である。
【図2】図1の堆積チャンバの部分断面図である。
【図3】本発明の一実施形態によるキャリアプレートの斜視図である。
【図4A】本発明の一実施形態によるサセプタプレートの上面の斜視図である。
【図4B】本発明の一実施形態によるサセプタプレートの下面の斜視図である。
【図5A】本発明の一実施形態によるサセプタ支持シャフトの斜視図である。
【図5B】本発明の他の実施形態によるサセプタ支持シャフトの斜視図である。
【図5C】本発明の他の実施形態によるサセプタ支持シャフトの斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態によるキャリア昇降シャフトの斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態による排気処理キットの概略図である。
【図8A】本発明の一実施形態による上方ライナの斜視図である。
【図8B】本発明の一実施形態による下方ライナの斜視図である。
【詳細な説明】
【0010】
本発明の実施形態は概して、MOCVDによるIII族窒化物膜の堆積に利用し得る方法及び装置を提供する。MOCVDと関連させて論じるが、本発明の実施形態はMOCVDに限定されない。図1は、本発明の一実施形態による、本発明の実践に使用し得る堆積装置の断面図である。図2は、図1の堆積チャンバの部分断面図である。本発明の実践に合わせて構成し得る例示的なシステム及びチャンバが、2006年4月14日に出願された米国特許出願第11/404516号及び2006年5月5日に出願された第11/429022号に記載されており、これらの文献は共に引用により全て本願に組み込まれる。
【0011】
図1及び図2を参照するが、装置100は、チャンバ102と、ガス送出システム125と、遠隔プラズマ源126と、真空システム112とを備える。チャンバ102は、処理容積108を取り囲むチャンバ本体103を含む。チャンバ本体103は、ステンレススチール、アルミニウム等の材料を含み得る。シャワーヘッドアセンブリ104又はガス分散プレートは、処理容積108の片側に配置され、キャリアプレート114は、処理容積108の反対側に配置される。本発明の実践に合わせて構成し得る例示的なシャワーヘッドは、2007年10月16日に出願された米国特許出願第11/873132号「Multi−gas straight channel showerhead」、2007年10月16日に出願された第11/873141号「Multi−gas straight channel showerhead」及び2007年10月16日に出願された第11/873170号「Multi−gas concentric injection showerhead」に記載されており、これらの文献は全て引用により本願に組み込まれる。基板140の輻射加熱用に光透過性に構成された透明材119は、下方容積110の片側に配置され、キャリアプレート114は、下方容積110の反対側に配置される。透明材119は、ドーム形状であってもよい。キャリアプレート114は処理位置にある状態で図示されているが、例えば基板140をロード又はアンロードする下方位置に移動させる場合もある。
【0012】
図3は、本発明の一実施形態によるキャリアプレートの斜視図である。一実施形態において、キャリアプレート114は1つ以上の凹部116を含み、処理中、この凹部に1枚以上の基板140が配置される。一実施形態において、キャリアプレート114は、6枚以上の基板140を担持するように構成される。他の実施形態において、キャリアプレート114は、8枚の基板140を担持するように構成される。他の実施形態において、キャリアプレート114は、18枚の基板を担持するように構成される。更に他の実施形態において、キャリアプレート114は、22枚の基板を担持するように構成される。キャリアプレート114上で担持する基板140の枚数はこれより多くても少なくてもよいと理解すべきである。典型的な基板140には、サファイア、炭化ケイ素(SiC)、シリコン、窒化ガリウム(GaN)が含まれる。その他のタイプの基板140(ガラス基板140等)も処理し得ると理解すべきである。基板140のサイズは直径50mm〜100mm又はそれより大きくなり得る。キャリアプレート114のサイズは、200mm〜750mmとなり得る。キャリアプレート114は、SiC、SiC被覆グラファイトを含む多種多様な材料から形成し得る。その他のサイズの基板140も、チャンバ102内で本願に記載の手順に従って処理し得ると理解すべきである。
【0013】
処理中、キャリアプレート114を、軸を中心に回転させる場合もある。一実施形態において、キャリアプレート114は約2rpm〜約100rpmで回転させられる。他の実施形態において、キャリアプレート114は約30rpmで回転させられる。キャリアプレート114の回転は、基板140の均一な加熱及び各基板140の処理ガスへの均等な曝露を促す。一実施形態において、キャリアプレート114は、サセプタプレート115を備えたキャリア支持デバイスによって支持される。本発明の実践に合わせて構成し得る例示的な基板支持構造体は、2006年10月24日に出願の米国特許出願第11/552474号「Substrate support structure with rapid temperature change」に記載されており、この文献は引用により全て本願に組み込まれる。
【0014】
図4Aは、本発明の一実施形態によるサセプタプレートの上面の斜視図である。図4Bは、本発明の一実施形態によるサセプタプレートの下面の斜視図である。サセプタプレート115はディスク形態であり、炭化ケイ素で被覆したグラファイト材料から形成される。サセプタプレート115の上面156には、円形凹部127が形成される。円形凹部127は、キャリアプレート114を収容し且つ支持するための支持領域として機能する。サセプタプレート115は、昇降ピンを収めるための3つの貫通孔158を有する。サセプタプレート115は、チャンバの下方容積110に配置された石英製のサセプタ支持シャフト118によって、下側から3点で水平に支持される。サセプタプレートの下面159は、サセプタ支持シャフト118の昇降アームを収めるための3つの穴167を有する。サセプタプレート115を3つの穴167を有するものとして説明するが、サセプタ支持シャフト118の昇降アームの数に応じて、穴の数は幾つであってもよい。
【0015】
昇降機構150について、図5A〜5C及び図6と関連させて説明する。図5Aは、サセプタ支持シャフトの斜視図であり、図6は、キャリアプレート昇降機構の斜視図である。サセプタ支持シャフト118は中央シャフト132を備え、この中央シャフト132からは3本の昇降アーム134が放射線状に延びる。サセプタ支持シャフト118は3本の昇降アーム134を備えた状態で図示されているが、4本以上の昇降アームを使用してもよく、例えば、サセプタ支持シャフト118は、図5Bに示されるように、6本の昇降アーム192を備える。図5Cに示される一実施形態において、昇降アームはディスク195に置き換えられており、ディスク195は、サセプタプレート115を支持するための、ディスク195の表面から延びる支持ポスト196を備える。
【0016】
キャリアプレート昇降機構150は、サセプタ支持シャフト118の中央シャフト132を取り囲むように配置された、垂直方向に可動式の昇降管152と、昇降管152を上下に移動させるための駆動ユニット(図示せず)と、昇降管152から放射線状に延びる3本の昇降アーム154と、サセプタプレート115を貫通するように形成された各貫通孔158を経てサセプタプレート115の底面から懸垂された昇降ピン157とを備える。駆動ユニットを制御することによってこのような構成の昇降管152及び昇降アーム154を上昇させると、昇降ピン157が昇降アーム154の遠位端によって押し上げられ、これによってキャリアプレート114が上昇する。
【0017】
図1に示されるように、輻射加熱は、下方ドーム119の下に配置された複数の内方ランプ121A、複数の中央ランプ121B及び複数の外方ランプ121Cによって行い得る。リフレクタ166を、内方、中央及び外方ランプ121A、121B、121Cによって供給される輻射エネルギーへのチャンバ102の曝露の制御に役立て得る。ランプゾーンを更に追加することによって、基板140のより精密な温度制御も行い得る。一実施形態において、リフレクタ166は、金で被覆される。他の実施形態において、リフレクタ166は、アルミニウム、ロジウム、ニッケル、これらの組み合わせ又はその他の反射性の高い材料によって被覆される。一実施形態においては、1ゾーンあたり24個のランプ(2キロワット/ランプ)から構成される合計72個のランプがある。一実施形態において、ランプは空冷され、ランプの土台は水冷される。
【0018】
複数の内方ランプ、中央ランプ及び外方ランプ121A、121B、121Cのゾーンを同心円状又はその他の形状(図示せず)に配置し、各ランプゾーンに別々に給電することで、堆積率及び成長率を温度制御を通じて微調整し得る。一実施形態においては、1つ以上の温度センサ(高温計122A、122B、122C等)をシャワーヘッドアセンブリ104内に配置して基板140及びキャリアプレート114の温度を測定し、温度データをコントローラ(図示せず)に送り、コントローラは、各ランプゾーンへの電力を調節して既定の温度プロファイルをキャリアプレート114全体に亘って維持することが可能である。一実施形態においては、不活性ガスを高温計122A、122B、122C周辺に処理容積108内へと流すことによって、高温計122A、122B、122C上への堆積及び凝縮の発生を防止する。高温計122A、122B、122Cは、表面への堆積に起因する輻射率の変化を自動的に相殺することが可能である。3つの高温計122A、122B、122Cを図示しているが、高温計を幾つ使用してもよいことを理解すべきであり、例えば、ランプゾーンを更に追加する場合は、各追加ランプゾーンを監視するために高温計を更に追加することが望ましい。他の実施形態においては、異なるランプゾーンへの電力を調節することによって、前駆体流れ又は前駆体濃度の不均一性を相殺する。例えば、外方ランプゾーンに近いキャリアプレート114の領域における前駆体濃度が低い場合、外方ランプゾーンへの電力を調節することによって、この領域における前駆体の不足を補う。抵抗加熱と比較してのランプによる加熱の利点には、キャリアプレート114表面全体での温度差が小さくなり、生産量が向上する点が含まれる。迅速に加熱し、迅速に冷却できるランプの能力によってスループットは向上し、またはっきりとした膜界面の形成にも役立つ。
【0019】
その他の計測装置(反射率モニタ123、熱電対(図示せず)等)又はその他の温度装置をチャンバ102に連結する場合もある。計測装置を使用して、様々な膜特性(厚さ、粗さ、組成、温度等)又はその他の特性を測定し得る。これらの測定結果を、自動リアルタイムフィードバック制御ループにおいて使用することによって、処理条件(堆積率、それに対応する厚さ等)を制御し得る。一実施形態においては、反射率モニタ123を、中央導管(図示せず)を介してシャワーヘッドアセンブリ104に連結する。チャンバ計測のその他の側面については、2008年1月31日に出願の米国特許出願(代理人整理番号011007)「Closed loop MOCVD deposition control」に記載されており、この文献は参照により全て本願に組み込まれる。
【0020】
内方、中央及び外方ランプ121A、121B、121Cは、基板140を約400℃〜約1200℃に加熱し得る。本発明は、内方、中央及び外方ランプ列121A、121B、121Cの使用に限定されないと理解すべきである。チャンバ102及びその中の基板140に適当な温度を十分にゆきわたらせるために、いずれの適切な加熱源も利用し得る。例えば、他の実施形態において、加熱源は、キャリアプレート114と熱的に接触する抵抗加熱要素(図示せず)を含む。
【0021】
図2及び図7を参照するが、図7は、本発明の一実施形態による排気処理キットの斜視図である。一実施形態において、この処理キットは、遮光体117と、排気リング120と、排気シリンダ160とを備える。図2に示されるように、遮光体117は、キャリアプレート114の周囲に配置し得る。遮光体117は、内方ランプ121A、中央ランプ121B及び外方ランプ121Cからの、サセプタ直径を超えて漏れるエネルギーを吸収し、またこのエネルギーをチャンバ102の内部に向かって再指向させるのに役立つ。遮光体117は、計測ツールの邪魔となる直接的なランプ輻射エネルギーも阻止する。一実施形態において、遮光体117は概して、内縁及び外縁を有する環状リングを備える。一実施形態において、環状リングの外縁は、上方向に傾斜する。遮光体117は概して、炭化ケイ素を含む。或いは、遮光体117は、電磁エネルギーを吸収する材料(セラミックス等)も含み得る。遮光体117は、排気シリンダ160、排気リング120又はチャンバ本体103の別の部品に連結し得る。遮光体117は一般に、サセプタプレート115又はキャリアプレート114と接触しない。
【0022】
一実施形態において、排気リング120を、キャリアプレート114の周囲に配置することによって、下方容積110内で生じる堆積を防止し、またチャンバ102から排気ポート109への排気ガスの指向に役立てる。一実施形態において、排気リング120は、炭化ケイ素を含む。或いは、排気リング120は、電磁エネルギーを吸収する材料(セラミックス等)も含み得る。
【0023】
一実施形態において、排気リング120は、排気シリンダ160に連結される。一実施形態において、排気シリンダ160は、排気リング120に対して垂直である。排気シリンダ160は、中心から外側に向かう、キャリアプレート114の表面全体に亘っての均等で一様な流れを維持するのに役立ち、また処理容積108から外に向かって環状排気チャネル105内に向かうガスの流れを制御する。排気シリンダ160は、内方側壁162及び外方側壁163を有する環状リング161を備え、側壁には、側壁を貫通する貫通孔又はスロット165があり、リング161の外周全体に亘って等間隔で位置決めされている。一実施形態においては、排気シリンダ160と排気リング120とが単一体である。一実施形態において、排気リング120と排気シリンダ160とは別々の部品であり、当該分野で公知の取り付け技法を用いて互いに連結される。図2を参照するが、処理ガスはシャワーヘッドアセンブリ104からキャリアプレート114に向かって下方向に流れ、半径方向外側に流れて遮光体117を越え、排気シリンダ160のスロット165を通過して環状排気チャネル105内に流れ込み、最終的に排気ポート109を通ってチャンバ102の外に出る。排気シリンダ160のスロットが処理ガスの流れをせき止め、サセプタプレート115全体に亘っての均等な半径方向の流れの実現を促す。一実施形態においては、不活性ガスを遮光体117と排気リング120との間に形成された間隙を通して上方向に流すことによって、処理ガスがチャンバ102の下方容積110に進入するのを防止し、また下方ドーム119上への堆積を防止する。下方ドーム119上への堆積は温度均一性に影響を与える場合があり、場合によっては下方ドーム119が高温となって亀裂が生じる。
【0024】
ガス送出システム125は複数のガス源を含んでいてもよく、実行中の処理によっては一部の供給源がガスではなく液体供給源であり、この場合、ガス送出システムは液体注入システム又は液体を気化させるためのその他の手段(例えば、バブラ)を含み得る。次に、チャンバ102内への送出に先立ってこの蒸気をキャリアガスと混合し得る。様々なガス(前駆体ガス、キャリアガス、パージガス、洗浄/エッチングガスその他等)を、ガス送出システム125から別々の供給ライン131、135、更にはシャワーヘッドアセンブリ104へと供給し得る。供給ラインは、各ラインのガス流を監視、調節又は遮断するための遮断バルブ、質量流量コントローラ又はその他のタイプのコントローラを含み得る。一実施形態において、前駆体ガス濃度は、蒸気圧曲線、温度及びガス源の位置で測定される圧力に基づいて予測される。他の実施形態において、ガス送出システム125は、ガス源の下流に位置する、システム内の前駆体ガスの濃度を直接測定するモニタを含む。
【0025】
導管129は、遠隔プラズマ源126から洗浄/エッチングガスを受け取り得る。遠隔プラズマ源126はガス送出システム125から供給ライン124を介してガスを受け取り、バルブ130は、シャワーヘッドアセンブリ104と遠隔プラズマ源126との間に配置され得る。バルブ130を開放すると、洗浄及び/若しくはエッチングガス又はプラズマがシャワーヘッドアセンブリ104内へと、プラズマ用の導管として機能するように構成し得る供給ライン133を介して流れ込む。他の実施形態において、洗浄/エッチングガスは、別の供給ライン構成を使用して、非プラズマ洗浄及び/又はエッチングのために、ガス送出システム125からシャワーヘッドアセンブリ104へと送出される。更に他の実施形態において、プラズマはシャワーヘッドアセンブリ104を迂回して、チャンバ102の処理容積108内へと、シャワーヘッドアセンブリ104を横断する導管(図示せず)を介して直接流れ込む。
【0026】
遠隔プラズマ源126は、チャンバ102の洗浄及び/又は基板140のエッチング用に構成された高周波又はマイクロ波プラズマ源であってもよい。洗浄及び/又はエッチングガスを遠隔プラズマ源126へと供給ライン124を介して供給してプラズマ種を発生させ、このプラズマ種を導管129及び供給ライン133を介してシャワーヘッドアセンブリ104を通過させ、チャンバ102内へと分散させる。洗浄用途のガスにはフッ素、塩素又はその他の反応性元素が含まれる。
【0027】
他の実施形態において、ガス送出システム125及び遠隔プラズマ源126は、前駆体ガスが遠隔プラズマ源126に供給されてプラズマ種が発生し、このプラズマ種がシャワーヘッドアセンブリ104を通過してCVD層(III−V族膜等)が例えば基板140上に堆積されるように適切に構成される。
【0028】
パージガス(例えば、窒素)は、チャンバ102内へとシャワーヘッドアセンブリ104及び/又はキャリアプレート114の下であり且つチャンバ本体103の底部近くに配置された流入ポート若しくは管(図示せず)から送出し得る。パージガスはチャンバ102の下方容積110に進入し、キャリアプレート114及び排気リング120を越えて上方に流れ、環状排気チャネル105の周囲に配置された複数の排気ポート109に流れ込む。排気導管106は環状排気チャネル105を、真空ポンプ(図示せず)を含む真空システム112へと接続する。チャンバ102の圧力は、環状排気チャネル105から排気ガスを抜く速度を制御するバルブシステム107を使用して制御し得る。
【0029】
シャワーヘッドアセンブリ104は、基板140の処理中、キャリアプレート114の近くに位置する。一実施形態において、シャワーヘッドアセンブリ104からキャリアプレート114までの処理中の距離は、約4mm〜約40mmである。
【0030】
基板の処理中、本発明の一実施形態において、処理ガスはシャワーヘッドアセンブリ104から基板140の表面に向かって流れる。処理ガスは、1種以上の前駆体ガス、これらの前駆体ガスと混合し得るキャリアガス、ドーパントガスを含む。環状排気チャネル105による吸引はガスの流れに影響を与え、処理ガスは、基板140に対して実質的に接線方向に流れ、基板140の堆積表面全体に亘って半径方向に均等に層流として分散する。処理容積108は、約760Torr〜約80Torrの圧力に維持される。
【0031】
基板140の表面又はその近くでの処理ガス前駆体の反応によって、様々な金属窒化物層が基板140上に堆積され、GaN、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)が含まれる。複数の金属も、その他の化合物膜の堆積に利用し得る(AlGaN及び/又はInGaN等)。加えて、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)等のドーパントを膜に添加する場合もある。堆積処理中に少量のドーパントガスを添加することによって膜をドープし得る。ケイ素をドープする場合、例えばシラン(SiH)又はジシラン(Si)ガスを使用し、マグネシウムをドープする場合、ドーパントガスには、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(CpMg又は(CMg)が含まれる。
【0032】
一実施形態においては、フッ素又は塩素系プラズマをエッチング又は洗浄に使用する。その他の実施形態においては、ハロゲンガス(Cl、Br、I等)又はハロゲン化物(HCl、HBr、HI等)を、非プラズマエッチングに使用する。
【0033】
一実施形態において、窒素ガス(N)、水素ガス(H)、アルゴン(Ar)ガス、その他の不活性ガス又はこれらの組み合わせを含み得るキャリアガスは、シャワーヘッドアセンブリ104への送出に先立って第1及び第2前駆体ガスと混合される。
【0034】
一実施形態において、第1前駆体ガスはIII族前駆体を含み、第2前駆体ガスはV族前駆体を含む。III族前駆体は、有機金属(metal organic:MO)前駆体(トリメチルガリウム(TMG)、トリエチルガリウム(TEG)、トリメチルアルミニウム(TMAI)及び/又はトリメチルインジウム(TMI)等)であってもよいが、その他の適切なMO前駆体も使用し得る。V族前駆体は、窒素前駆体(アンモニア(NH)等)であってもよい。
【0035】
図8Aは、本発明の一実施形態による上方ライナの斜視図である。図8Bは、本発明の一実施形態による下方ライナの斜視図である。一実施形態において、処理チャンバ102は更に、上方処理ライナ170及び下方処理ライナ180を備え、これらはチャンバ本体103を処理ガスによるエッチングから保護するのに役立つ。一実施形態において、上方処理ライナ170及び下方処理ライナ180は一体型である。他の実施形態において、上方処理ライナ170及び下方処理ライナ180は、別々の部品である。下方処理ライナ180は、処理チャンバ102の下方容積110内に配置され、上方処理ライナ170は、シャワーヘッドアセンブリ104に隣接して配置される。一実施形態において、上方処理ライナ170は、下方処理ライナ180上に載置される。一実施形態において、下方ライナ170は、スリットバルブポート802及び排気ポート804開口部を有しており、これらが排気ポート109の一部を構成する。上方処理ライナ170は排気環状部806を有し、この排気環状部が環状排気チャネル105の一部を構成する。ライナは、断熱材(不透明石英、サファイア、PBN材料、セラミック、これらの誘導体及び組み合わせ等)を含み得る。
【0036】
より大型の基板及びより広い堆積面積に亘って温度を均一に維持しながらも均等な前駆体流れと前駆体の混合をもたらす改良された堆積装置及び方法を提供してきた。より大型の基板及び/又は複数の基板並びにより広い堆積面積に亘っての均等な混合及び加熱は、収率及びスループットを上昇させるために望ましい。更に、均等な加熱及び混合は重要な要素であるが、これはこれらの要素が、電子デバイスの製造コストひいては市場におけるデバイス製造業者の競争力に直接影響するからである。
【0037】
上記は本発明の実施形態を対象としているが、本発明のその他及び更なる実施形態は本発明の基本的な範囲から逸脱することなく創作することができ、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲に基づいて定められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容積を形成するチャンバ本体と、
処理容積の上部を画成する第1平面のシャワーヘッドと、
第1平面の下の第2平面の基板キャリアプレートであって、処理容積を横断して延び、シャワーヘッドとの間で上方処理容積を画成する基板キャリアプレートと、
処理容積の底部を画成する第3平面の透明材であって、キャリアプレートとの間で下方処理容積を形成する透明材と、
透明材の下に位置する1つ以上のゾーンを形成する複数のランプであって、輻射熱をキャリアプレートに向かって指向させて、1つ以上の輻射熱ゾーンを形成するように構成された複数のランプとを備える有機金属化学気相蒸着のための基板処理装置。
【請求項2】
1つ以上のゾーンが、内方ゾーン、中央ゾーン及び外方ゾーンを含む請求項1記載の装置。
【請求項3】
各ゾーンが同心円状のランプ列を形成し、外方ゾーンが、中央ゾーンより上に位置する請求項2記載の装置。
【請求項4】
1つ以上のランプゾーンが、輻射熱を基板キャリアプレートに向かって指向させるように構成された1つ以上のリフレクタを備える請求項1記載の装置。
【請求項5】
1つ以上のリフレクタが金のコーティングを有する請求項4記載の装置。
【請求項6】
1つ以上の輻射熱ゾーンのそれぞれを監視して各ランプゾーンへの電力を調節し且つ基板キャリア全体に亘って既定の温度プロファイルを維持するための1つ以上の高温計を更に備え、高温計の周囲に不活性ガスを流して1つ以上の高温計をパージすることによって、高温計上での堆積及び凝縮の発生を防止する請求項1記載の装置。
【請求項7】
基板キャリアプレートが、複数の基板を受容するための複数の凹部を有する請求項1記載の装置。
【請求項8】
基板キャリアプレートが、基板キャリアを保持するように構成された円形凹部を有するサセプタプレートによって支持される請求項1記載の装置。
【請求項9】
チャンバ本体に連結された反射率モニタを更に備える請求項1記載の装置。
【請求項10】
洗浄ガス、エッチングガス及び/又はプラズマをシャワーヘッドに供給するためのガス源を有するガス送出システムを更に備える請求項1記載の装置。
【請求項11】
ガス送出システムがガス源の下流に位置するガスモニタを備え、ガスモニタは、システム内の前駆体ガス濃度を直接測定する請求項1記載の装置。
【請求項12】
処理容積を形成するチャンバ本体と、
処理容積の上部を画成するシャワーヘッドと、
処理容積を横断して延び、処理容積の底部を画成する基板キャリアプレートと、
基板キャリアを取り囲む、輻射熱を基板キャリアに向かって指向させる遮光体とを備える有機金属化学気相蒸着のための基板処理装置。
【請求項13】
キャリアプレートの下に位置する1つ以上の同心円状のランプゾーンを形成する複数のランプを更に備え、複数のランプが、輻射熱をキャリアプレートに向かって指向させて1つ以上の輻射熱ゾーンを形成するように構成される請求項12記載の装置。
【請求項14】
遮光体の周囲を取り囲む排気リングと、
排気リングに連結された排気シリンダであって、等間隔で位置決めされた複数のスロットを有する排気シリンダと、
排気シリンダの周囲を取り囲む環状排気路を更に備える請求項13記載の装置。
【請求項15】
基板キャリアプレートが、1枚以上の基板を受容するための複数の凹部を有する請求項12記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2011−511459(P2011−511459A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545050(P2010−545050)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/030858
【国際公開番号】WO2009/099720
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】