説明

エピタキシャルウェーハの製造方法及びエピタキシャル成長装置

【課題】 本発明は、膜厚分布の偏りを解消し、均一な膜厚のエピタキシャル膜を形成させることができるエピタキシャルウェーハの製造方法及びエピタキシャル成長装置を提供する。
【解決手段】 基板載置台と該基板載置台に載置された基板とを回転させ、前記基板の主面上に原料ガスを流通させることにより、前記基板主面上にエピタキシャル膜を形成させるエピタキシャルウェーハの製造方法において、前記基板載置台の回転方向の位置に応じて、膜厚制御パラメータを変化させて前記エピタキシャル膜を形成させることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャルウェーハの製造方法及びエピタキシャル成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野においては、半導体基板の上に単結晶薄膜や多結晶薄膜を精度良く気相成長させる薄膜成長工程は極めて重要なプロセスである。
従来用いられているエピタキシャル成長装置の一例を図5に示す。基板Wの主面にほぼ平行に原料ガスを流通させるエピタキシャル成長装置11の場合、通常基板載置台12は水平に設けられ、基板Wはその基板載置台12の中央部に置かれる。また、該基板載置台12の周囲には原料ガスが基板Wに触れるまでにエピタキシャル反応に適した温度に達するよう、基板載置台12の主面と面を一にするような予熱部材16が置かれることが多い。
【0003】
原料ガスは、エピタキシャル成長装置11の主制御システムM’から指令された流量で基板W、基板載置台12、予熱部材16が形成する面の一端から原料ガス導入手段13により導入され、他端に向かって流れる。このとき原料ガスの上流部には原料ガス導入手段13より供給された原料ガスのほぼそのままの濃度の原料ガスが届くので、原料ガス濃度が高くエピタキシャル成長速度が速い。一方、下流部には上流部でエピタキシャル成長に必要な成分が一部消費された後のガスが届くので、濃度が低く成長速度が遅い。
【0004】
基板Wの主面にほぼ平行に原料ガスを流通させるエピタキシャル成長装置では、この現象は避けられないので、一般的に、図5のように、主制御システムM’から指令される回転速度でモータ15により基板載置台12を回転させてエピタキシャル膜の成長速度を平均化させる方式が採用されている。
【0005】
また、基板載置台12の回転により軸対称となった膜厚分布に対して、中心部と周辺部の膜厚の差を解消させるために、基板Wの中心付近を流れるガス流量と周辺部を流れるガス流量に分布を持たせる方法も知られている(特許文献1)。
【0006】
このように膜厚分布の均一化に著しい効果のある基板載置台12の回転だが、あらゆる膜厚制御パラメータ(膜厚を変動させる因子)の効果も軸対称にしてしまうという問題があった。例えば実際のエピタキシャル成長でしばしば生じる図2(b)のような、基板の一方の膜厚が薄く他方が厚いといった傾きのある分布の場合、どの様な膜厚制御パラメータをもってしても解消することができなかった。
【0007】
図2(b)のような傾きのある分布が生じる原因は、基板載置台12の幾何学的中心と回転の中心のズレである場合がある。基板載置台12の幾何学的中心と回転の中心が一致していないと、基板載置台12は偏心して回転し、基板載置台12を取り囲む部材との隙間に大小の差を生じる。
【0008】
基板載置台12とそれを取り囲む部材との隙間は、エピタキシャル成長反応で生じた濃度境界層のガスの一部を基板載置台12の裏面側に逃がす働きがあり、エピタキシャル層の成長速度に影響があるが、隙間の大小は基板載置台12と共に回転するため、基板載置台12の回転によって平均化されず、図2(b)の様な膜厚分布を生じることとなる。
【0009】
従来、この様な膜厚分布を解消するためには、基板載置台12を回転させる部品を寸法精度の良い部品に交換するより他に方法がなく、部品交換の時間はもとより、部品交換にともなって生じた反応室の汚染を清浄化するのに多くの時間がかかっていた。
また、基板載置台12の幾何学的中心と回転の中心が一致しているにも関わらず、膜厚分布に傾きが生じることもあり、その原因が不明で従来の方法ではこの様な膜厚分布の解消方法がなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−68215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、膜厚分布の傾きを解消したエピタキシャル膜を形成させることができるエピタキシャルウェーハの製造方法及びエピタキシャル成長装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明では、基板載置台と該基板載置台に載置された基板とを回転させ、前記基板の主面上に原料ガスを流通させることにより、前記基板主面上にエピタキシャル膜を形成させるエピタキシャルウェーハの製造方法において、前記基板載置台の回転方向の位置に応じて、膜厚制御パラメータを変化させて前記エピタキシャル膜を形成させることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【0013】
このように、基板載置台の回転方向の位置(θ)に応じて、膜厚制御パラメータ(膜厚を変動させる因子)を変化させて、エピタキシャル膜を形成させることによって、例えば、従来のエピタキシャル成長装置を用いた場合に膜厚が薄くなってしまう部分(膜厚を厚くしたい部分)の膜厚を厚くすることができる。即ち、成長速度を基板の部分毎(回転位置毎)に調整することができ、従って、膜厚分布の偏り(傾き)が解消されたエピタキシャル膜を形成することができる。なお、回転方向の位置(θ)はどこを基準位置にしてもよいが、基板のノッチの位置を基準位置にするのが好適である。
【0014】
またこのとき、前記膜厚制御パラメータとして前記基板載置台の回転速度を、前記基板載置台の回転方向の位置に応じて変化させて前記エピタキシャル膜を形成させることが好ましい。
【0015】
このように、膜厚制御パラメータとして、基板載置台の回転速度を選ぶことが好ましい。基板載置台の回転方向の位置に応じて基板載置台の回転速度を変化させる、例えば、エピタキシャル膜の膜厚が薄くなり易い部分(膜厚を厚くしたい部分)が、原料ガスの上流付近にある場合には基板載置台の回転速度を遅く、反対に原料ガスの下流付近にある場合には基板載置台の回転速度を速くすることで、膜厚を厚くしたい部分の平均成長速度を速くすることができ、膜厚を厚くすることができる。従って、結果として膜厚分布の偏り(傾き)が解消されたエピタキシャル膜を形成することができる。
【0016】
またこのとき、前記膜厚制御パラメータとして前記原料ガスの流量を、前記基板載置台の回転方向の位置に応じて増減させて前記エピタキシャル膜を形成させることが好ましい。
【0017】
このように、膜厚制御パラメータとして、原料ガスの流量を選ぶことも好ましい。基板載置台の回転方向の位置に応じて原料ガスの流量を増減させる、例えば、エピタキシャル膜の厚さが薄くなり易い部分(膜厚を厚くしたい部分)が上流付近にある場合にはガス流量の流量を少なくし、反対に下流付近にある場合には原料ガスの流量を増やすことで、膜厚を厚くしたい部分の膜厚を厚くすることができる。従って、結果として膜厚分布の偏り(傾き)が解消されたエピタキシャル膜を形成することができる。
【0018】
また、本発明では、基板を載置するための基板載置台と、前記基板の主面上に原料ガスを流通させる原料ガス導入手段とを有するエピタキシャル成長装置であって、該エピタキシャル成長装置は、更に、前記基板載置台の回転方向の位置情報を得て該基板載置台の回転方向の位置に応じて膜厚制御パラメータを変化させる手段を有するものであることを特徴とするエピタキシャル成長装置を提供する。
【0019】
このように、基板載置台の回転方向の位置情報を得て該基板載置台の回転方向の位置に応じて膜厚制御パラメータを変化させる手段を有するエピタキシャル成長装置であれば、基板載置台の回転方向の位置に応じて、膜厚を変動させることができる膜厚制御パラメータを変化させることができ、例えば、従来のエピタキシャル成長装置を用いた場合に膜厚が薄くなってしまう部分(膜厚を厚くしたい部分)の膜厚を厚くすることができる。即ち、基板の部分毎(回転位置毎)に成長速度を調整することができ、従って、膜厚分布の偏り(傾き)が解消されたエピタキシャル膜を形成することができる装置となる。
【0020】
またこのとき、前記膜厚制御パラメータを変化させる手段は、前記基板載置台の回転方向の位置に応じて前記基板載置台の回転速度を変化させるものであることが好ましい。
【0021】
このように、膜厚制御パラメータとしての基板載置台の回転速度を基板載置台の回転方向の位置に応じて変化させる手段を有するエピタキシャル成長装置であれば、膜厚を厚くしたい部分の成長速度を速くすることができ、膜厚を厚くすることができる。
【0022】
またこのとき、前記膜厚制御パラメータを変化させる手段は、前記基板載置台の回転方向の位置に応じて前記原料ガスの流量を増減させるものであることが好ましい。
【0023】
このように、膜厚制御パラメータとして原料ガスの流量を基板載置台の回転方向の位置に応じて増減させる手段を有するエピタキシャル成長装置であれば、膜厚を厚くしたい部分の膜厚を厚くすることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、エピタキシャル膜を成長させる際に膜厚が薄くなり易い部分(膜厚を厚くしたい部分)を厚く成長させることができ、結果的に膜厚分布の傾きが解消されたエピタキシャル膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のエピタキシャル成長装置の概略図である。
【図2】本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法を用いて製造したエピタキシャルウェーハの膜厚分布図(a)及び従来のエピタキシャルウェーハの製造方法(回転速度一定)を用いて製造したエピタキシャルウェーハの膜厚分布図(b)である。
【図3】本発明のエピタキシャル成長装置の別の一例を示す概略図である。
【図4】本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法を用いて製造したエピタキシャルウェーハの膜厚分布図(a)及び従来のエピタキシャルウェーハの製造方法(原料ガス流量一定)を用いて製造したエピタキシャルウェーハの膜厚分布図(b)である。
【図5】従来のエピタキシャル成長装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
前述のように、従来、エピタキシャル膜の膜厚分布の傾きを生じている場合にも、膜厚分布の傾きを解消し、均一な膜厚のエピタキシャル膜を形成させることができるエピタキシャルウェーハの製造方法及びエピタキシャル成長装置が求められていた。
【0027】
そこで、本発明者が種々検討した結果、基板載置台と該基板載置台に載置された基板とを回転させ、前記基板の主面上に原料ガスを流通させることにより、前記基板主面上にエピタキシャル膜を形成させるエピタキシャルウェーハの製造方法において、前記基板載置台の回転方向の位置に応じて、膜厚制御パラメータを変化させて前記エピタキシャル膜を形成させることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法であれば、膜厚分布の傾き等が解消された、均一な膜厚を有するエピタキシャル膜を形成させることができることを見出した。
【0028】
なお、本発明において膜厚制御パラメータとは、エピタキシャル成長反応の際に膜厚に影響を与える因子であって、後述するような基板載置台の回転速度や原料ガスの流量、あるいは温度、基板載置台の高さ、基板載置台裏面側のパージガスの流量等が挙げられる。
【0029】
膜厚制御パラメータとして最も好適なパラメータは基板載置台の回転速度である。具体的には、基板載置台を一定速度で回転させた場合にはエピタキシャル膜の厚さが薄くなってしまう部分が、成長速度の速い上流付近にある場合には回転速度を遅くして滞在時間を長くし、反対に成長速度の遅い下流付近にある場合には回転速度を速くして滞在時間を短くする。これにより膜厚を厚くしたい部分の平均成長速度は速くなり、膜厚を厚くすることができる。
【0030】
本発明のエピタキシャル成長装置について図1を参照して以下に詳述する。
図1に示すように、本発明のエピタキシャル成長装置1は、基板Wを載置するための基板載置台2と、基板Wの主面上にトリクロロシラン等の原料ガスを流通させる原料ガス導入手段3とを有する。
そして、更に、基板載置台2の回転方向の位置情報を得て該基板載置台2の回転方向の位置に応じて膜厚制御パラメータを変化させる手段4を有する。
基板載置台の回転方向の位置情報を得て該基板載置台の回転方向の位置に応じて膜厚制御パラメータを変化させる手段4は、新規のエピタキシャル成長装置の開発の際には図1(a)のように装置全体の制御システム(主制御装置)Mに組み込めばよい。
【0031】
ここで、膜厚制御パラメータを変化させる手段4としては、基板載置台2の回転方向の位置に応じて基板載置台2の回転速度を変化させるものであることが好ましい。この場合、膜厚制御パラメータを変化させる手段4は、例えば、基板載置台2の回転方向の位置を調べるセンサ(不図示)から基板載置台2の回転方向の位置情報を得て、得られた基板載置台2の回転方向の位置に応じた回転速度の指令を回転速度を細かく制御できるモータ5等に送信し、基板載置台2の回転速度を変化させるものであることが好ましい。
尚、市販のサーボモータはこの条件に好適である。サーボモータは回転速度を任意に指定することができる上に回転位置センサを内蔵しているので、基板載置台に取り付けた基準位置センサと組み合わせることで容易に基板載置台の回転方向の位置を把握することができる。
【0032】
また、既存のエピタキシャル成長装置に組み込む場合には、図1(b)のようにエピタキシャル成長装置1の主制御装置Mがモータ5に回転速度(回転数)を指示する信号をPLC(Power Line Communications)等の副制御装置Sで一旦受け取り、基板載置台2の回転方向の位置に応じて増減を加えてからモータ5に送信する。この場合には、副制御装置Sが膜厚制御パラメータを変化させる手段4(基板載置台2の回転速度を変化させるもの)となる。
【0033】
また、本発明のエピタキシャル成長装置1は、基板載置台2の周囲に原料ガスが基板Wに触れるまでにエピタキシャル成長反応に適した温度に達するように予熱部材6を有しても良い。
エピタキシャル成長装置において、基板載置台の幾何学的中心と回転の中心が一致していない時、基板載置台は偏心して回転し、基板載置台を取り囲む部材との隙間に大小の偏りを生じ、このような場合、基板の中心に対して一方が厚く、他方が薄いといった傾いた膜厚分布が生じやすい。このような偏った膜厚分布が生じる場合であっても、本発明によれば、薄くなりやすい部分の膜厚を厚くすることができ、膜厚分布の傾きが解消された均一な膜厚を有するエピタキシャル膜を形成することができる。
【0034】
具体的に、回転速度の増減の幅は次のように計算して決定する。
まず、あらかじめ基準位置で停止した基板載置台に基板を載置し、ノッチに対する原料ガス流入方向、すなわち上流側の位置θ1を調べておく。この値は装置に固定なので、1度だけ測定すればよい。次に、基板載置台の回転を止めた状態でエピタキシャル成長を行い、上流側の成長速度G1と下流側の成長速度G2を調べる。この値は成長温度や原料ガス流速などの成長条件毎に調べておく。
【0035】
次に、一定の回転速度ω1でエピタキシャル成長を行い、本発明の技術で修正可能な傾きのある膜厚分布が生じたときは、膜厚の厚い部分の厚さT1、膜厚の薄い部分の厚さT2、ノッチを基準にした膜厚の薄い部分の位置θ2とを調べる。これらを正確に求めるにはエピタキシャル膜の膜厚を基板全体にわたって測定し、これらの膜厚と測定位置からなる3次元グラフを平面でフィッティングし、その平面の傾きの大きさと方向から求めるのがよい。
【0036】
上記のような条件の時、回転速度ω(θ)は基板載置台の回転方向の位置θに応じて
ω(θ)=ω1/(1+k×sin(θ−θ1+θ2)) (A)
とするとよい。ここで、kは回転速度増減の程度を表す係数であって
k=(T1−T2)/(T1+T2)×(G1+G2)/(G1−G2) (B)
で定められる。
【0037】
図2(b)は一定回転速度でエピタキシャル成長を行った場合に生じた、傾いた膜厚分布である。ノッチ位置から反時計回りに235度の位置に膜厚が薄く、その反対の部分の膜厚が厚いことが分かる。これに対し、図2(a)の本発明により回転速度を増減した場合の膜厚分布は膜厚分布の傾きが解消していることがわかる。
【0038】
また、膜厚制御パラメータとしては原料ガスの流量も好適である。原料ガス下流付近は、上流付近に比べて原料ガスの流量の変化による成長速度の変化が大きい。従って、具体的には、エピタキシャル膜の厚さが薄くなってしまう部分が上流付近にある場合には原料ガスの流量を少なくし、反対に下流付近にある場合には原料ガスの流量を増やすことで、膜厚を厚くしたい部分の膜厚を厚くすることができ、膜厚の傾きが解消されたエピタキシャルウェーハを得ることができる。
【0039】
膜厚制御パラメータとして原料ガスの流量を増減させる場合の、本発明のエピタキシャル成長装置1について図3を参照にして以下に詳述する。
新規のエピタキシャル成長装置の開発の際には、基板載置台2の回転方向の位置情報を得て該基板載置台の回転方向の位置に応じて膜厚制御パラメータを変化させる手段4、すなわち基板載置台の回転方向の位置に応じて原料ガスの流量を増減させるものは、図3(a)のように装置全体の制御システム(主制御装置)Mに組み込めばよい。
【0040】
そして、具体的には、膜厚制御パラメータを変化させる手段4(基板載置台の回転方向の位置に応じて原料ガスの流量を増減させるもの)は、基板載置台2の回転方向の位置を調べるセンサ(不図示)から基板載置台2の回転方向の位置情報を得て、得られた基板載置台2の回転方向の位置に応じた原料ガスの流量をマスフローコントローラ7に指示し、原料ガスの流量を増減させるものであることが好ましい。
基板載置台2の回転方向の位置情報を得るためには、簡易的には、フォトインタラプタなどで検出した基準位置通過時刻と現在時刻と回転速度とから現在位置を算出してもよいし、より正確な位置を検出するために、基準位置センサの他に基板載置台2を支える回転軸もしくはモータ5にロータリーエンコーダを取り付けても良い。
【0041】
また、既存のエピタキシャル成長装置に組み込む場合には、図3(b)のようにエピタキシャル成長装置の主制御装置Mが原料ガス流量をマスフローコントローラ7に指示する信号をPLC等の副制御装置Sで一旦受け取り、基板載置台の回転方向の位置に応じて増減を加えてからマスフローコントローラ7に送信する。この場合には、副制御装置Sが膜厚制御パラメータを変化させる手段4(原料ガスの流量を増減させるもの)となる。
ここで、図3(a)(b)にあるように、本発明の装置及び方法では、基板載置台の回転方向の位置に応じて原料ガスの流量を増減するとともに、基板載置台の回転速度も変化させるようにしても良い。これにより、より高精度に膜厚分布を均一化することができる。
【0042】
原料ガス流量の増減の幅は次のように計算して決定する。
まず、あらかじめ基板載置台の回転を止めた状態で通常の原料ガス流量F1でエピタキシャル成長を行い、上流側の成長速度G1と下流側の成長速度G2を調べる。次に、同じく基板載置台の回転を止めた状態で原料ガス流量F1より少し異なる原料ガス流量F2でエピタキシャル成長を行い、上流側の成長速度G3と下流側の成長速度G4を調べる。次に、基板載置台を回転し、基板載置台が基準位置にあるときに原料ガス流量が最大で基板載置台が基準位置と180度回転した状態にあるときに原料ガス流量が最小となるように原料ガス流量を増減させながらエピタキシャル成長を行い、基板のノッチに対する膜厚が最も厚くなった方向θ1を調べておく。
【0043】
次に、原料ガス流量F1でエピタキシャル成長を行い、本発明の技術で修正可能な傾きのある膜厚分布が生じたときは、膜厚の厚い部分の厚さT1、膜厚の薄い部分の厚さT2、ノッチを基準にした膜厚の薄い部分の位置θ2とを調べる。これらを正確に求めるにはエピタキシャル膜の膜厚を基板全体にわたって測定し、これらの膜厚と測定位置からなる3次元グラフを平面でフィッティングし、その平面の傾きの大きさと方向から求めるのがよい。
【0044】
上記のような条件の時、原料ガス流量F(θ)は基板載置台の回転方向の位置θに応じて
F(θ)=F1×(1+k×sin(θ−θ1+θ2)) (C)
とするとよい。ここでkは原料ガス流量増減の程度を表す係数であって
k=(T1−T2)/(T1+T2)×(G1+G2)/(G4−G3−G2+G1)/2×(F2−F1)/F1 (D)
で定められる。
【0045】
図4(b)は一定の原料ガス流量でエピタキシャル成長を行った場合に生じた、傾いた膜厚分布である。ノッチ位置から反時計回りに235度の位置に膜厚が薄く、その反対の部分の膜厚が厚いことが分かる。これに対し、図4(a)の本発明により原料ガスの流量を増減した場合の膜厚分布は膜厚分布の傾きが解消していることがわかる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例、比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
(実施例・比較例)
エピタキシャル用基板Wとして、直径200mm、厚さ規格725μm、P型、抵抗率5〜10mΩcmとなるシリコンウエーハを用意した。
【0048】
予め基準位置で停止した基板載置台2にシリコンウェーハWを載置し、ノッチに対する原料ガスの流入方向の位置θ1を調べ、次に基板載置台2の回転を止めた状態で上記図1に記載のエピタキシャル成長装置1を用いて下記条件でエピタキシャル成長を行った。
原料ガス(トリクロロシラン)流量:10slm
キャリアガス(Hガス)流量:40slm
エピタキシャル成長温度:1100℃
【0049】
次に、一定の回転速度ω1でエピタキシャル成長を行ったところ、偏きのある膜厚分布が生じた(比較例)。
膜厚の厚い部分の厚さT1、膜厚の薄い部分の厚さT2、ノッチを基準にした膜厚の薄い部分の位置θ2を求め、上記一般式(A)及び(B)に当てはめ、基板載置台2の回転方向の位置θに応じた回転速度ω(θ)を求めた。それぞれの値を以下に示す。
T1:11.87μm T2:12.19μm
θ1:270° θ2:235° ω1:35rpm
次に、上記と同様の条件でシリコンウェーハWを基板載置台2に載置し、サーボモータで基板載置台の回転方向の位置θを把握しながら、基板載置台2の回転方向の位置θに応じた回転速度ω(θ)で基板載置台2を回転させてエピタキシャル成長を行ったところ、比較例において膜厚の厚かった部分の位置の厚さは12.05μmとなり、比較例において膜厚の薄かった部分(膜厚を厚くしたい部分)の位置の厚さは12.01μmとなり、すなわち、膜厚を厚くしたい部分の平均成長速度を速くすることができ、比較例で観察された様な膜厚の傾きが解消された(実施例)。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0051】
W…基板、 1,11…エピタキシャル成長装置、 2,12…基板載置台、 3,13…原料ガス導入手段、 4…膜厚制御パラメータを変化させる手段、 5,15…モータ、 6,16…予熱部材、 7…マスフローコントローラ、 M,M’…主制御装置、 S…副制御装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板載置台と該基板載置台に載置された基板とを回転させ、前記基板の主面上に原料ガスを流通させることにより、前記基板主面上にエピタキシャル膜を形成させるエピタキシャルウェーハの製造方法において、前記基板載置台の回転方向の位置に応じて、膜厚制御パラメータを変化させて前記エピタキシャル膜を形成させることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記膜厚制御パラメータとして前記基板載置台の回転速度を、前記基板載置台の回転方向の位置に応じて変化させて前記エピタキシャル膜を形成させることを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記膜厚制御パラメータとして前記原料ガスの流量を、前記基板載置台の回転方向の位置に応じて増減させて前記エピタキシャル膜を形成させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項4】
基板を載置するための基板載置台と、前記基板の主面上に原料ガスを流通させる原料ガス導入手段とを有するエピタキシャル成長装置であって、該エピタキシャル成長装置は、更に、前記基板載置台の回転方向の位置情報を得て該基板載置台の回転方向の位置に応じて膜厚制御パラメータを変化させる手段を有するものであることを特徴とするエピタキシャル成長装置。
【請求項5】
前記膜厚制御パラメータを変化させる手段は、前記基板載置台の回転方向の位置に応じて前記基板載置台の回転速度を変化させるものであることを特徴とする請求項4に記載のエピタキシャル成長装置。
【請求項6】
前記膜厚制御パラメータを変化させる手段は、前記基板載置台の回転方向の位置に応じて前記原料ガスの流量を増減させるものであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のエピタキシャル成長装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−54310(P2012−54310A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193994(P2010−193994)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】