説明

エポキシ樹脂組成物

【課題】エポキシ樹脂組成物の硬化物表面を粗化処理した粗化面の粗度が小さいにもかかわらず、該粗化面がめっき導体に対して高い密着力を示し、かつ絶縁層の低線膨張率化・低誘電正接化を達成し得るエポキシ樹脂組成物の提供。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル化合物、及び(C)トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂を含有することを特徴とする特定のエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プリント配線板の絶縁層形成に用いられる特定のエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高性能化が進み、多層プリント配線板においては、ビルドアップ層が複層化され、配線の微細化及び高密度化が求められ、さらに伝送損失低減のために誘電正接の低い絶縁材料が求められている。
【0003】
これに対して様々な取組みがなされていた。例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂、特定のフェノール系硬化剤、フェノキシ樹脂、ゴム粒子を含むエポキシ樹脂組成物が開示され、また特許文献2には、エポキシ樹脂、特定のフェノール系硬化剤、ポリビニルアセタール樹脂を含むエポキシ樹脂組成物が開示されていた。これらの組成物により形成される絶縁層において、低粗度かつめっきにより形成される導体層の高ピール強度の両立は達成できたが、低線膨張率や低誘電正接という概念は一切開示や指向されるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−254709号公報
【特許文献2】特開2007−254710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、エポキシ樹脂組成物の硬化物表面を粗化処理した粗化面の粗度が小さいにもかかわらず、該粗化面がめっき導体に対して高い密着力を示し、かつ絶縁層の低線膨張率化・低誘電正接化を達成し得るエポキシ樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、エポキシ樹脂、活性エステル化合物、及びトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂を含有した特定のエポキシ樹脂組成物において、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の内容を含むものである。
[1](A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル化合物、(C)トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
[2](A)成分のエポキシ基と、[(B)成分及び(C)成分の反応基]の比率が1:0.3〜1:1.5であり、成分(B)の不揮発成分と成分(C)の不揮発成分の重量比が1:0.05〜1:1.5であることを特徴とする、上記[1]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[3]さらに(D)無機充填材を含有することを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[4]さらに(E)硬化促進剤を含有することを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[5]さらに(F)成分として、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂から選択される1種又は2種以上の高分子樹脂を含有することを特徴とする、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[6]さらに(G)ゴム粒子を含有することを特徴とする、上記[1]〜[5]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[7]ピール強度が0.3kgf/cm〜1.0kgf/cmであり、算術平均粗さが50nm〜220nmであり、誘電正接が0.001〜0.010であり、平均線膨張率が4ppm〜24ppmであることを特徴とする、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[8]上記[1]〜[7]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物が支持フィルム上に層形成されていることを特徴とする接着フィルム。
[9]上記[1]〜[8]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物が繊維からなるシート状繊維基材中に含浸されていることを特徴とするプリプレグ。
[10]上記[8]又は[9]に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物により絶縁層が形成されていることを特徴とする多層プリント配線板。
[11]内層回路基板上に絶縁層を形成する工程及び該絶縁層上に導体層を形成する工程を含む多層プリント配線板の製造方法であって、該絶縁層が、上記[1]〜[7]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を熱硬化して形成され、該導体層が、該絶縁層表面を粗化処理した粗化面にめっきにより形成されることを特徴とする、多層プリント配線板の製造方法。
[12]内層回路基板上に絶縁層を形成する工程及び該絶縁層上に導体層を形成する工程を含む多層プリント配線板の製造方法であって、該絶縁層が、上記[8]記載の接着フィルムを内層回路基板上にラミネートし、支持フィルムを剥離するか又は剥離しないで、エポキシ樹脂組成物を熱硬化し、硬化後に支持フィルムが存在する場合に支持フィルムを剥離して形成され、該導体層が、該絶縁層表面を粗化処理した粗化面にめっきにより形成されることを特徴とする、多層プリント配線板の製造方法。
[13]内層回路基板上に絶縁層を形成する工程及び該絶縁層上に導体層を形成する工程を含む多層プリント配線板の製造方法であって、該絶縁層が、上記[9]記載のプリプレグを内層回路基板上にラミネートし、エポキシ樹脂組成物を熱硬化して形成され、該導体層が、該絶縁層表面を粗化処理した粗化面にめっきにより形成されることを特徴とする、多層プリント配線板の製造方法。
[14]粗化処理が、アルカリ性過マンガン酸溶液を使用して行われる、上記[11]〜[13]のいずれかに記載の製造方法。
[15] 上記[10]に記載の多層プリント配線板を用いることを特徴とする、半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
エポキシ樹脂、活性エステル化合物、及びトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂を含有した特定のエポキシ樹脂組成物により、該樹脂組成物の硬化物表面を粗化処理した粗化面の粗度が小さいにもかかわらず、該粗化面がめっき導体に対して高い密着性を示し、かつ絶縁層の低線膨張率化・低誘電正接化を達成し得るエポキシ樹脂組成物を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル化合物、(C)トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。
【0010】
[(A)エポキシ樹脂]
本発明における成分(A)のエポキシ樹脂は特に限定はされず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0011】
(A)エポキシ樹脂は1種又は2種以上を併用してもよいが、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が含有される。エポキシ樹脂のうちの少なくとも50重量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。また、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状の芳香族系エポキシ樹脂であるエポキシ樹脂、および1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状の芳香族系エポキシ樹脂を含有する態様がより好ましい。なお、本発明でいう芳香族系エポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環構造を有するエポキシ樹脂を意味する。またエポキシ当量(g/eq)は、平均分子量を1分子あたりのエポキシ基数で割った値のことである。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂を使用することで、エポキシ樹脂組成物を接着フィルムの形態で使用する場合に、十分な可撓性を示し、取扱い性に優れた接着フィルムを形成できると同時に、エポキシ樹脂組成物の硬化物の破断強度が向上し、多層プリント配線板の耐久性も向上する。
【0012】
また、(A)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂を併用する場合、その配合割合(液状:固形)は重量比で1:0.1〜1:2の範囲が好ましく、1:0.5〜1:1.5の範囲がより好ましい。かかる範囲を超えて液状エポキシ樹脂の割合が多すぎると、エポキシ樹脂組成物の粘着性が高くなり、接着フィルムの形態で使用する場合に、真空ラミネート時の脱気性が低下しボイドが発生しやすくなる傾向にある。また真空ラミネート時に保護フィルムや支持フィルムの剥離性の低下や、硬化後の耐熱性が低下する傾向にある。また、エポキシ樹脂組成物の硬化物において十分な破断強度が得られにくい傾向にある。一方、かかる範囲を超えて固形エポキシ樹脂の割合が多すぎると、接着フィルムの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られず、取り扱い性が低下する傾向があり、ラミネートの際の十分な流動性が得られにくいなどの傾向がある。
【0013】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂組成物の不揮発成分を100重量%とした場合、(A)エポキシ樹脂の含有量は10〜50重量%であるのが好ましく、12〜40重量%がより好ましく、15〜35重量%が更に好ましい。エポキシ樹脂の含有量がこの範囲から外れると、エポキシ樹脂組成物の硬化性が低下する傾向にある。
【0014】
[(B)活性エステル化合物]
本発明における(B)活性エステル化合物は、エポキシ樹脂の硬化剤として機能し活性エステルを有するものであれば特に制限はないが、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する化合物が好ましい。耐熱性等の観点から、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物とを反応させたものから得られる活性エステル化合物がより好ましく、カルボン酸化合物と、フェノール化合物、ナフトール化合物、チオール化合物とから選択される1種又は2種以上とを反応させたものから得られる活性エステル化合物が更に好ましい。そして、カルボン酸化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたものから得られる1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物が更に一層好ましい。そして、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたものから得られる芳香族化合物であり、かつ該芳香族化合物の1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物が殊更好ましい。また、直鎖状または多分岐状であってもよい。また、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物が脂肪族鎖を含む化合物であればエポキシ樹脂との相溶性を高くすることができ、芳香族環を有する化合物であれば耐熱性を高くすることができる。カルボン酸化合物としては、具体的には、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。なかでも耐熱性の観点からコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましい。チオカルボン酸化合物としては、具体的には、チオ酢酸、チオ安息香酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、具体的には、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。なかでも耐熱性、溶解性の観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが好ましく、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックがより好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが更に好ましく、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが更に一層好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが殊更好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノールが特に好ましい。チオール化合物としては、具体的には、ベンゼンジチオール、トリアジンジチオール等が挙げられる。活性エステル化合物は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0015】
ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、より具体的には下式(1)のものが挙げられる。
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、Rはフェニル基、ナフチル基が好ましく、ナフチル基がより好ましい。nは平均で0.5〜2が好ましい。)
【0018】
(B)活性エステル化合物としては、特開2004−277460号公報に開示されている活性エステル化合物を用いてもよく、また市販のものを用いることもできる。市販されている活性エステル化合物としては、具体的には、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むもの、フェノールノボラックのアセチル化物、フェノールノボラックのベンゾイル化物が好ましく、なかでもジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものがより好ましい。ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものとして、EXB9451、EXB9460、EXB9460S(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物としてDC808(ジャパンエポキシレジン(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物としてYLH1026(ジャパンエポキシレジン(株)製)、などが挙げられる。
【0019】
(B)活性エステル化合物の製造方法は特に制限はなく、公知の方法により製造することができるが、具体的には、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得ることができる。
【0020】
[(C)トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂]
本発明における(C)トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤として機能し、トリアジン骨格とクレゾールノボラック構造を一つの分子中に併せ持つものであり、一般にクレゾールとメラミン、ベンゾグアナミンなどのトリアジン環を有する化合物とホルムアルデヒドとの縮合により製造される。具体的にはLA3018、LA3018−50P、EXB9808、EXB9829(DIC(株)製)などが挙げられる。成分(B)活性エステル化合物の不揮発成分と成分(C)トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂の不揮発成分の重量比は、1:0.05〜1:1.5が好ましく、1:0.05〜1:1がより好ましく、1:0.07〜1:0.8が更に好ましく、1:0.1〜1:0.6が更に一層好ましい。かかる範囲より成分(B)活性エステル化合物が少なすぎると硬化物の誘電正接が高くなる傾向にあり、かかる範囲より成分(C)トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂が少なすぎると硬化物の線膨張係数が高くなる傾向にある。
【0021】
本発明において、エポキシ樹脂組成物中の(B)活性エステル化合物及び(C)トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂の量は、エポキシ樹脂組成物中の(A)成分のエポキシ基と、[(B)成分及び(C)成分との反応基(活性エステル基、活性水酸基)]の比率が1:0.3〜1:1.5となるのが好ましく、1:0.4〜1:1.3となるのがより好ましく、1:0.4〜1:1.1となるのが更に好ましく、1:0.4〜1:0.8となるのが更に一層好ましい。なおエポキシ樹脂組成物中の(A)成分のエポキシ基とは、各エポキシ樹脂の固形分重量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、(B)成分及び(C)成分の反応基とは、各硬化剤の固形分重量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。硬化剤の含有量がかかる好ましい範囲を外れると、エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱性が不十分となる傾向がある。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂組成物は(A)成分、(B)成分、(C)成分を含み、該樹脂組成物の硬化物表面を粗化処理した粗化面の粗度が小さいにもかかわらず、該粗化面がめっき導体に対して高い密着性を示し、かつ絶縁層の誘電正接・平均線膨張率を低くする事ができる。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物のピール強度は、後述する[メッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定及び評価]に記載の測定方法により把握することができる。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物のピール強度の上限値は、0.5kgf/cmが好ましく、0.6kgf/cmがより好ましく、0.7kgf/cmが更に好ましく、1.0kgf/cmが更に一層好ましい。本発明の樹脂組成物の硬化物のピール強度の下限値は、0.3kgf/cmが好ましく、0.35kgf/cmがより好ましく、0.4kgf/cmが更に好ましい。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の粗度は、後述する[粗化処理後の算術平均粗さ(Ra)の測定及び評価]に記載の測定方法により把握することができる。
【0026】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の粗度の上限値は、220nmが好ましく、200nmがより好ましく、170nmが更に好ましく、140nmが更に一層好ましい。本発明の樹脂組成物の硬化物の粗度の下限値は、100nmが好ましく、70nmがより好ましく、50nmが更に好ましい。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の誘電正接は、後述する[誘電正接の測定及び評価]に記載の測定方法により把握することができる。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の誘電正接の上限値は、0.010が好ましく、0.008がより好ましく、0.006が更に好ましい。本発明の樹脂組成物の硬化物の誘電正接の下限値は、0.003が好ましく、0.002がより好ましく、0.001が更に好ましい。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の平均線膨張率は、後述する[平均線膨張率の測定及び評価]に記載の評価方法により把握することができる。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の平均線膨張率の上限値は、24ppmが好ましく、22ppmがより好ましく、20ppmが更に好ましく、17ppmが更に一層好ましい。本発明の樹脂組成物の平均線膨張率の硬化物の下限値は、14ppmが好ましく、10ppmがより好ましく、8ppmが更に好ましく、6ppmが更に一層好ましく、4ppmが殊更好ましい。
【0031】
本発明において、(B)活性エステル化合物及び(C)トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂以外のエポキシ硬化剤を、(B)活性エステル化合物及び(C)トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂と併用しても良い。(B)活性エステル化合物及び(C)トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂以外のエポキシ硬化剤としては、TD2090、TD2131、KA1160、KA1165、LA7052、LA7054、LA7751、LA1356(DIC(株)製)、MEH−7600、MEH−7851、MEH−8000H(明和化成(株)製)、NHN、CBN、GPH−65、GPH−103(日本化薬(株)製)、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN375、SN395(東都化成(株)製)などのフェノール系硬化剤、F−a、P−d(四国化成(株)製)、HFB2006M(昭和高分子(株)製)などのベンゾオキサジン化合物、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物などの酸無水物などが挙げられる。特にフェノール性水酸基を有する化合物であるフェノール系硬化剤が好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0032】
(B)活性エステル化合物及び(C)トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂とその他の硬化剤を併用する場合は、エポキシ樹脂組成物中のすべてのエポキシ硬化剤(活性エステル化合物及びトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂を含む)を100重量%とすると、活性エステル化合物及びトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂の合計重量%が10〜100重量%であるのが好ましく、20〜100重量%であるのがより好ましい。
【0033】
[(D)無機充填材]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、線膨張率を低下させる等の目的でさらに(D)無機充填材を含有してもよい。(D)無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられ、これらの中でも無定形シリカ、溶融シリカ、中空シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等のシリカが特に好適である。シリカとしては球状のものが好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0034】
(D)無機充填材の平均粒径は1μm以下であるのが好ましく、0.8μm以下がより好ましく、0.7μm以下が更に好ましい。平均粒径が1μmを超える場合、メッキにより形成される導体層のピール強度が低下する傾向にある。なお、(D)無機充填材の平均粒径が小さくなりすぎると、エポキシ樹脂組成物を樹脂ワニスとした場合に、ワニスの粘度が上昇し、取り扱い性が低下する傾向にあるため、平均粒径は0.05μm以上であるのが好ましい。なお、(D)無機充填材は耐湿性を向上させるため、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等の表面処理剤で表面処理してあるものが好ましい。
【0035】
上記無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製 LA−500等を使用することができる。
【0036】
(D)無機充填材を配合する場合の含有量は、エポキシ樹脂組成物中の不揮発成分を100重量%とした場合、樹脂組成物に要求される特性によっても異なるが、10〜85重量%であるのが好ましく、20〜80重量%がより好ましく、40〜80重量%が更に好ましく、60〜80重量%が更に一層好ましい。(D)無機充填材の含有量が小さすぎると、硬化物の線膨張率が高くなる傾向にあり、含有量が大きすぎると接着フィルムを調製する際にフィルム化が困難となる傾向や、あるいは硬化物が脆くなるといった傾向にある。
【0037】
[(E)硬化促進剤]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化時間および硬化温度を調整する等の目的でさらに(E)硬化促進剤を含有してもよい。(E)硬化促進剤としては、例えば、TPP、TPP−K、TPP−S、TPTP−S(北興化学工業(株)商品名)などの有機ホスフィン化合物、キュアゾール2MZ、2E4MZ、C11Z、C11Z−CN、C11Z−CNS、C11Z−A、2MZ−OK、2MA−OK、2PHZ(四国化成工業(株)商品名)などのイミダゾール化合物、ノバキュア(旭化成工業(株)商品名)、フジキュア(富士化成工業(株)商品名)などのアミンアダクト化合物、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどのアミン化合物が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、(E)硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂とエポキシ硬化剤の総量の不揮発分を100重量%とした場合、0.01〜5重量%が好ましい。
【0039】
[(F)高分子樹脂]
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、さらに、可とう性付与のためポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂から選択される1種又は2種以上の高分子樹脂を含有してもよい。このなかでもポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、さらに好ましくはフェノキシ樹脂が好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0040】
フェノキシ樹脂の具体例としては、ジャパンエポキシレジン(株)製1256、4250などのビスフェノールA骨格を有するもの、ジャパンエポキシレジン製YX8100などのビスフェノールS骨格を有するもの、ジャパンエポキシレジン製YX6954などのビスフェノールアセトフェノン骨格を有するもの、東都化成(株)製FX280、FX293などのビスフェノールフルオレノン骨格を有するもの、ジャパンエポキシレジン(株)製YL7553などのビスクレゾールフルオレノン骨格を有するもの、ジャパンエポキシレジン(株)製YL6794などのテルペン骨格を有するもの、ジャパンエポキシレジン(株)製YL7213、YL7290などのトリメチルシクロヘキサン骨格を有するもの等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0041】
フェノキシ樹脂の重量平均分子量は5000〜70000の範囲であるのが好ましく、さらに好ましくは10000〜60000、さらに好ましくは20000〜50000である。分子量が小さすぎると十分な導体層のピール強度が得られない傾向にあり、分子量が大きすぎると、粗度が大きくなりやすい傾向があり、線膨張率が大きくなりやすいなどの傾向にある。
【0042】
なお重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂組成物の不揮発成分を100重量%とした場合、(F)高分子樹脂の含有量は1〜20重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。1重量%未満であると十分な可撓性が得られずに取り扱い性が低下する傾向にあり、メッキにより形成された導体層のピール強度が十分に得られない傾向にあり、20重量%を超えると、ラミネートの際の十分な流動性が得られない傾向があり、粗度が大きくなりすぎる傾向にある。
【0044】
[(G)ゴム粒子]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに、硬化物の機械強度を高める、ドリル加工性の向上、誘電正接の低下、応力緩和効果等の目的で固体状の(G)ゴム粒子を含有してもよい。本発明における(G)ゴム粒子は、エポキシ樹脂組成物を調製する際の有機溶媒にも溶解せず、エポキシ樹脂等の樹脂組成物中の成分とも相溶せず、エポキシ樹脂組成物のワニス中では分散状態で存在するものである。ゴム粒子は1種又は2種以上を併用してもよい。このようなゴム粒子は、一般には、ゴム成分の分子量を有機溶剤や樹脂に溶解しないレベルまで大きくし、粒子状とすることで調製される。ゴム粒子としては、例えば、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、粒子がコア層とシェル層を有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマー、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマー、中間層がゴム状ポリマー、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス状ポリマーは例えば、メタクリル酸メチルの重合物、アクリル酸メチルの重合物、スチレンの重合物などで構成され、ゴム状ポリマー層は例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)、シリコーンゴム、ポリブタジエンなどで構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N、IM401−4−14(ガンツ化成(株)商品名)、メタブレンW−5500(三菱レイヨン(株)商品名)が挙げられる。アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER−91(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK−500(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒径0.1μm)、W450A(平均粒径0.5μm)(三菱レイヨン(株)製)を挙げることができる。
【0045】
(G)ゴム粒子の平均粒径は0.005〜1μmの範囲が好ましく、0.2〜0.6μmの範囲がより好ましい。本発明におけるゴム粒子の平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定することが出来る。例えば、適当な有機溶剤にゴム粒子を超音波などにより均一に分散させ、FPRA−1000(大塚電子(株)社製)を用いて、ゴム粒子の粒度分布を重量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。
【0046】
(G)ゴム粒子を配合する場合、エポキシ樹脂組成物中の不揮発成分を100重量%とした場合、ゴム粒子の含有量は、0.5〜10重量%であるのが好ましく、1〜4重量%がより好ましい。
【0047】
[その他の熱硬化性樹脂]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲でシアネート樹脂やマレイミド化合物、ビスアリルナジイミド化合物、ビニルベンジル樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂などの熱硬化性樹脂を配合することもできる。熱硬化性樹脂は1種又は2種以上を併用してもよい。シアネート樹脂としてはBADCY、LECY、BA230S70、PT15、PT30、PT60(ロンザ社製)、マレイミド樹脂としてはBMI1000、BMI2000、BMI3000、BMI4000、BMI5100(大和化成工業(株)製)、BMI、BMI−70、BMI−80(ケイ・アイ化成(株)製)、ANILIX−MI(三井化学ファイン(株)製)、ビスアリルナジイミド化合物としてはBANI−M、BANI−X(丸善石油化学工業(株)製)ビニルベンジル樹脂としてはV5000(昭和高分子(株)製)、ビニルベンジルエーテル樹脂としてはV1000X、V1100X(昭和高分子(株)製)が挙げられる。
【0048】
[難燃剤]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で難燃剤を含有しても良い。難燃剤は1種又は2種以上を併用してもよい。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。有機リン系難燃剤としては、三光(株)製のHCA、HCA−HQ、HCA−NQ等のホスフィン化合物、昭和高分子(株)製のHFB−2006M等のリン含有ベンゾオキサジン化合物、味の素ファインテクノ(株)製のレオフォス30、50、65、90、110、TPP、RPD、BAPP、CPD、TCP、TXP、TBP、TOP、KP140、TIBP、北興化学工業(株)製のPPQ、クラリアント(株)製のOP930、大八化学(株)製のPX200等のリン酸エステル化合物、東都化成(株)製のFX289、FX310等のリン含有エポキシ樹脂、東都化成(株)製のERF001等のリン含有フェノキシ樹脂等が挙げられる。有機系窒素含有リン化合物としては、四国化成工業(株)製のSP670、SP703等のリン酸エステルミド化合物、大塚化学(株)社製のSPB100、SPE100等のホスファゼン化合物等が挙げられる。金属水酸化物としては、宇部マテリアルズ(株)製のUD65、UD650、UD653等の水酸化マグネシウム、巴工業(株)社製のB−30、B−325、B−315、B−308、B−303、UFH−20等の水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0049】
[樹脂添加剤]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の効果が発揮される範囲で、上述した以外の他の各種樹脂添加剤を任意で含有しても良い。樹脂添加剤としては、例えばシリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤等を挙げることができる。
【0050】
本発明の樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、接着フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、ソルダーレジスト、アンダ−フィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。なかでも、支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとするか、または繊維からなるシート状繊維基材中に該樹脂組成物を含浸させて多層プリント配線板の層間絶縁層用のプリプレグとすることができる。本発明の樹脂組成物は回路基板に塗布して絶縁層を形成することもできるが、工業的には、一般に、接着フィルムまたはプリプレグの形態として絶縁層形成に用いられる。
【0051】
[接着フィルム]
本発明の接着フィルムは、当業者に公知の方法、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、支持フィルムを支持体として、この樹脂ワニスを塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて、支持フィルム上に樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0052】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層への有機溶剤の含有割合が10重量%以下、好ましくは5重量%以下となるように乾燥させる。乾燥条件は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。ワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、例えば30〜60重量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分乾燥させることができる。
【0054】
接着フィルムにおいて形成される樹脂組成物層の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜80μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。樹脂組成物層は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0055】
本発明における支持フィルム及び保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0056】
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、25〜50μmがより好ましく用いられる。また保護フィルムの厚さも特に制限されないが、1〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましく用いられる。なお、後述するように、接着フィルムの製造工程で支持体として用いる支持フィルムを、樹脂組成物層表面を保護する保護フィルムとして使用することもできる。
【0057】
本発明における支持フィルムは、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができ、また硬化後の絶縁層の表面平滑性を向上させることができる。硬化後に剥離する場合、支持フィルムには予め離型処理が施されるのが好ましい。なお、支持フィルム上に形成される樹脂組成物層は、層の面積が支持フィルムの面積より小さくなるように形成するのが好ましい。また接着フィルムは、ロール状に巻き取って、保存、貯蔵することができる。
【0058】
[接着フィルムを用いた多層プリント配線板]
次に、本発明の接着フィルムを用いて本発明の多層プリント配線板を製造する方法について説明する。樹脂組成物層が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、樹脂組成物層を内層回路基板に直接接するように、内層回路基板の片面又は両面にラミネートする。本発明の接着フィルムにおいては真空ラミネート法により減圧下で内層回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び内層回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
【0059】
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm2(9.8×10〜107.9×10N/m2)とし、空気圧が20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。
【0060】
真空ラミネートは市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製 バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製 真空加圧式ラミネーター、(株)日立インダストリイズ製 ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0061】
本発明における内層回路基板とは、主として、ガラスエポキシ、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また導体層と絶縁層が交互に層形成され、片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっている、多層プリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層および導体層が形成されるべき中間製造物も本発明における内層回路基板に含まれる。内層回路基板において、導体回路層表面は黒化処理等により予め粗化処理が施されていた方が絶縁層の内層回路基板への密着性の観点から好ましい。
【0062】
このように接着フィルムを内層回路基板にラミネートした後、支持フィルムを剥離する場合は剥離し、熱硬化することにより、内層回路基板にエポキシ樹脂組成物の硬化物による絶縁層を形成することができる。加熱硬化の条件は150℃〜220℃で20分〜180分の範囲で選択され、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分である。
【0063】
絶縁層を形成した後、硬化前に支持フィルムを剥離しなかった場合には、すわち、硬化後に支持フィルムが存在する場合には支持フィルムをここで剥離する。次に内層回路基板上に形成された絶縁層に穴開けを行いビアホール、スルーホールを形成する。穴あけは例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけがもっとも一般的な方法である。
【0064】
次いで、絶縁層表面に粗化処理を行う。本発明における粗化処理は、酸化剤を使用した湿式粗化方法で行うのが好ましい。酸化剤としては、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等が挙げられる。好ましくはビルトアップ工法による多層プリント配線板の製造における絶縁層の粗化に汎用されている酸化剤である、アルカリ性過マンガン酸溶液(例えば過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムの水酸化ナトリウム水溶液)を使用して粗化を行うのが好ましい。
【0065】
絶縁層表面を粗化処理した粗化面の粗さは、微細配線を形成する上で、Ra値で220nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、170nm以下が更に好ましく、140nm以下が更一層好ましい。なお、Ra値とは、表面粗さを表す数値の一種であり、算術平均粗さと呼ばれるものであって、具体的には測定領域内で変化する高さの絶対値を平均ラインである表面から測定して算術平均したものである。例えば、ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値により求めることができる。
【0066】
次に、粗化処理により凸凹のアンカーが形成された絶縁層表面に、無電解メッキと電解メッキを組み合わせた方法で導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。なお導体層形成後、150〜200℃で20〜90分アニール(anneal)処理することにより、導体層のピール強度をさらに向上、安定化させることができる。導体層のピール強度は、0.5kgf/cm以上であるのが好ましく、0.6kgf/cm以上であるのがより好ましい。
【0067】
また、導体層をパターン加工し回路形成する方法としては、例えば当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディディブ法などを用いることができる。
【0068】
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、本発明の樹脂組成物を繊維からなるシート状繊維基材にホットメルト法又はソルベント法により含浸させ、加熱により半硬化させることにより製造することができる。すなわち、本発明の樹脂組成物が繊維からなるシート状繊維基材中に含浸した状態となるプリプレグとすることができる。
【0069】
繊維からなるシート状繊維基材としては、例えばガラスクロスやアラミド繊維等、プリプレグ用繊維として常用されているものを用いることができる。
【0070】
ホットメルト法は、樹脂を有機溶剤に溶解することなく、樹脂を樹脂と剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それをシート状繊維基材にラミネートする、あるいはダイコーターにより直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。またソルベント法は、接着フィルムと同様、樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスにシート状繊維基材を浸漬し、樹脂ワニスをシート状繊維基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。
【0071】
[プリプレグを用いた多層プリント配線板]
次に本発明のプリプレグを用いて本発明の多層プリント配線板を製造する方法について説明する。内層回路基板に本発明のプリプレグを1枚あるいは必要により数枚重ね、離型フィルムを介して金属プレートを挟み加圧・加熱条件下でプレス積層する。圧力は好ましくは5〜40kgf/cm2(49×10〜392×10N/m2)、温度は好ましくは120〜200℃で20〜100分で成型するのが好ましい。また接着フィルムと同様に真空ラミネート法により内層回路基板にラミネートした後、加熱硬化することによっても製造可能である。その後、前述の方法と同様、酸化剤により硬化したプリプレグ表面を粗化した後、導体層をメッキにより形成することで、多層プリント配線板を製造することができる。
【0072】
[半導体装置]
さらに本発明の多層プリント配線板の導通箇所に、半導体チップを実装することにより半導体装置を製造することができる。「導通箇所」とは、「多層プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0073】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、などが挙げられる。
【0074】
「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップを多層プリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことであり、更に、以下のBBUL方法1)、BBUL方法2)の実装方法に大別される。
BBUL方法1)アンダーフィル剤を用いて多層プリント配線板の凹部に半導体チップを実装する実装方法
BBUL方法2)接着フィルム又はプリプレグを用いて多層プリント配線板の凹部に半導体チップを実装する実装方法
【0075】
BBUL方法1)は、具体的には以下の工程を含む。
工程1)多層プリント配線板の両面から導体層を除去したものを設け、レーザー、機械ドリルによって貫通孔を形成する。
工程2)多層プリント配線板の片面に粘着テープを貼り付けて、貫通孔の中に半導体チップの底面を粘着テープ上に固定するように配置する。このときの半導体チップは貫通孔の高さより低くすることが好ましい。
工程3)貫通孔と半導体チップの隙間にアンダーフィル剤を注入、充填することによって、半導体チップを貫通孔に固定する。
工程4)その後粘着テープを剥がして、半導体チップの底面を露出させる。
工程5)半導体チップの底面側に本発明の接着フィルム又はプリプレグをラミネートし、半導体チップを被覆する。
工程6)接着フィルム又はプリプレグを硬化後、レーザーによって穴あけし、半導体チップの底面にあるボンディングパットを露出させ、上記で示した粗化処理、無電解メッキ、電解メッキを行うことで、配線と接続する。必要に応じて更に接着フィルム又はプリプレグを積層してもよい。
【0076】
BBUL方法2)は、具体的には以下の工程を含む。
工程1)多層プリント配線板の両面の導体層上に、フォトレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィー工法でフォトレジスト膜の片面のみに開口部を形成する。
工程2)開口部に露出した導体層をエッチング液により除去し、絶縁層を露出させ、その後両面のレジスト膜を除去する。
工程3)レーザーやドリルを用いて、露出した絶縁層を全て除去して穴あけを行い、凹部を形成する。レーザーのエネルギーは、銅のレーザー吸収率を低くし、絶縁層のレーザー吸収率を高くするようにエネルギーが調整できるレーザーが好ましく、炭酸ガスレーザーがより好ましい。このようなレーザーを用いることで、レーザーは導体層の開口部の対面の導体層を貫通することがなく、絶縁層のみを除去することが可能となる。
工程4)半導体チップの底面を開口部側に向けて凹部に配置し、本発明の接着フィルム又はプリプレグを開口部の側から、ラミネートし、半導体チップを被覆して、半導体チップと凹部の隙間を埋め込む。このときの半導体チップは凹部の高さより低くすることが好ましい。
工程5)接着フィルム又はプリプレグを硬化後、レーザーによって穴あけし、半導体チップの底面のボンディングパットを露出させる。
工程6)上記で示した粗化処理、無電解メッキ、電解メッキを行うことで、配線を接続し、必要に応じて更に接着フィルム又はプリプレグを積層する。
【0077】
半導体チップの実装方法の中でも、半導体装置の小型化、伝送損失の軽減という観点や、半田を使用しないため半導体チップにその熱履歴が掛からず、さらに半田と樹脂とのひずみを将来的に生じ得ないという観点から、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法が好ましく、BBUL方法1)、BBUL方法2)がより好ましく、BBUL方法2)が更に好ましい。
【実施例】
【0078】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明をいかなる意味においても制限するものではない。なお、以下の記載において、「部」は「重量部」を意味する。
【0079】
<測定方法・評価方法>
まずは各種測定方法・評価方法について説明する。
【0080】
[ピール強度および算術平均粗さ(Ra)測定用サンプルの調製]
【0081】
(1)積層板の下地処理
内層回路の形成されたガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.3mm、松下電工(株)製R5715ES)両面をメック(株)製CZ8100に浸漬して銅表面の粗化処理をおこなった。
【0082】
(2)接着フィルムのラミネート
実施例及び比較例で作成した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP-500((株)名機製作所製、商品名)を用いて、積層板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。
【0083】
(3)樹脂組成物の硬化
ラミネートされた接着フィルムからPETフィルムを剥離し、180℃、30分の硬化条件で樹脂組成物を硬化した。
【0084】
(4)粗化処理
積層板を、膨潤液である、アトテックジャパン(株)のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガンドPに60℃で5分間浸漬し、次に粗化液として、アトテックジャパン(株)のコンセントレート・コンパクトP(KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬、最後に中和液として、アトテックジャパン(株)のリダクションショリューシン・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬した。この粗化処理後の積層板について、絶縁層の算術平均粗さ(Ra)の測定を行った。
【0085】
(5)セミアディティブ工法によるメッキ
絶縁層表面に回路を形成するために、積層板を、PdCl2を含む無電解メッキ用溶液に浸漬し、次に無電解銅メッキ液に浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成の後に、硫酸銅電解メッキを行い、30±5μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を180℃にて60分間行った。この積層板についてメッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定を行った。
【0086】
[メッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定及び評価]
積層板の導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した。ピール強度の値が、0.7以上を◎、0.7未満0.5以上を○、0.5未満0.3以上を△、0.3未満を×と評価した。
【0087】
[粗化処理後の算術平均粗さ(Ra)の測定及び評価]
非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値により算術平均粗さ(Ra)の値(nm)を求めた。また10点の平均値を求めることにより測定した。算術平均粗さの値が、180nm未満を○、180nm以上230nm未満を△、230nm以上を×と評価した。
【0088】
[平均線膨張率の測定及び評価]
実施例1〜4および比較例1〜4で得られた接着フィルムを190℃で90分熱硬化させてシート状の硬化物を得た。その硬化物を、幅5mm、長さ15mmの試験片に切断し、(株)リガク製熱機械分析装置(Thermo Plus TMA8310)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における25℃から150℃までの平均線熱膨張率(ppm)を算出した。平均線熱膨張率の値が、18ppm未満を◎、18ppm以上25ppm未満を○、25ppm以上を×と評価した。
【0089】
[誘電正接の測定及び評価]
実施例1〜4および比較例1〜4で得られた接着フィルムを190℃で90分熱硬化させてシート状の硬化物を得た。その硬化物を、幅2mm、長さ80mmの試験片に切断し、関東応用電子開発(株)製空洞共振器摂動法誘電率測定装置CP521およびアジレントテクノロジー(株)製ネットワークアナライザーE8362Bを使用して、空洞共振法で測定周波数5.8GHzにて誘電正接(tanδ)の測定を行った。2本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。誘電正接の値が、0.007未満を◎、0.007以上0.009未満を○、0.009以上0.011未満を△、0.011以上を×と評価した。
【0090】
(実施例1)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)15部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量291、日本化薬(株)製「NC3000H」)15部とをメチルエチルケトン(以下「MEK」と略称する。)15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、活性エステル化合物(DIC(株)製「EXB9460S−65T」、活性エステル当量223、固形分65%のトルエン溶液)20部、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂(DIC(株)製「LA3018−50P」、フェノール当量151、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)6部、硬化促進剤(広栄化学工業(株)製、「4−ジメチルアミノピリジン」)0.05部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SO−C2」、(株)アドマテックス製)88部、フェノキシ樹脂(YL6954BH30、不揮発分30重量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液、重量平均分子量40000)7部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した(シリカ65重量%、(A)成分のエポキシ基と、(B)成分及び(C)成分との反応基の比率1:0.57、活性エステル化合物とトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂の比率1:0.23)。
次に、かかる樹脂ワニスをポリエチレンテレフタレート(厚さ38μm、以下「PET」と略称する。)上に、乾燥後の樹脂厚みが40μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80〜120℃(平均100℃)で6分間乾燥した(残留溶媒量約2重量%)。次いで樹脂組成物の表面に厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取った。ロール状の接着フィルムを幅507mmにスリット(slit)し、これより507×336mmサイズのシート状の接着フィルムを得た。
【0091】
(実施例2)
実施例1の球形シリカ88部の代わりに、球形シリカ140部を添加すること以外は、実施例1と全く同様にして樹脂ワニスを作製した(シリカ74重量%、(A)成分のエポキシ基と、(B)成分及び(C)成分との反応基の比率1:0.57、活性エステル化合物とトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂の比率1:0.23)。次に実施例1と同様にして接着フィルムを得た。
【0092】
(実施例3)
実施例1の活性エステル化合物20部及びトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂6部の代わりに、活性エステル化合物15部及びトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂10部を添加すること以外は、実施例1と全く同様にして樹脂ワニスを作製した(シリカ65重量%、(A)成分のエポキシ基と、(B)成分及び(C)成分との反応基の比率1:0.57、活性エステル化合物とトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂の比率1:0.51)。次に実施例1と同様にして接着フィルムを得た。
【0093】
(実施例4)
実施例1に、さらにゴム粒子(ガンツ化成(株)製「IM401−4−14」、コアがポリブタジエンでシェルがスチレンとジビニルベンゼンの共重合体であるコアシェル型ゴム粒子)2部を添加したこと以外は、実施例1と全く同様にして樹脂ワニスを作製した(シリカ65重量%、(A)成分のエポキシ基と、(B)成分及び(C)成分との反応基の比率1:0.57、活性エステル化合物とトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂の比率1:0.23)。次に実施例1と同様にして接着フィルムを得た。
【0094】
(比較例1)
実施例1のトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂6部及び硬化促進剤0.05部の代わりに、クレゾールノボラック樹脂(DIC(株)製「KA1165」、フェノール当量119)3部及び硬化促進剤0.1部を添加すること以外は、実施例1と全く同様にして樹脂ワニスを作製した(シリカ65重量%、(A)成分のエポキシ基と、(B)成分及び(C)成分との反応基の比率1:0.61、活性エステル化合物とクレゾールノボラック樹脂の比率1:0.23)。次に実施例1と同様にして接着フィルムを得た。
【0095】
(比較例2)
実施例1のトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂6部の代わりに、トリアジン含有フェノールノボラック樹脂(DIC(株)製「LA7054」、フェノール当量125、固形分60%のMEK溶液)5部を添加すること以外は、実施例1と全く同様にして樹脂ワニスを作製した(シリカ65重量%、(A)成分のエポキシ基と、(B)成分及び(C)成分との反応基の比率1:0.60、活性エステル化合物とトリアジン含有フェノールノボラック樹脂の比率1:0.23)。次に実施例1と同様にして接着フィルムを得た。
【0096】
(比較例3)
実施例1の球形シリカ88部及び活性エステル化合物20部の代わりに、球形シリカ100部及び活性エステル化合物36部を添加すること以外は、実施例1と全く同様にして樹脂ワニスを作製した(シリカ64重量%、(A)成分のエポキシ基と、(B)成分及び(C)成分との反応基の比率1:0.77)。次に実施例1と同様にして接着フィルムを得た。
【0097】
(比較例4)
実施例1の球形シリカ88部、活性エステル化合物20部及びトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂6部の代わりに、球形シリカ80部及びトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂23部を添加すること以外は、実施例1と全く同様にして樹脂ワニスを作製した(シリカ65重量%、(A)成分のエポキシ基と、(B)成分及び(C)成分との反応基の比率1:0.56)。次に実施例1と同様にして接着フィルムを得た。
【0098】
結果を表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
表1から明らかなように実施例の評価サンプルは、算術平均粗さが低いにもかかわらずめっき導体層が高いピール強度を示し、さらに平均線膨張率および誘電正接も低い値となっている。一方、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂の代わりにクレゾールノボラック樹脂を用いた比較例1では算術平均粗さが比較的高くピール強度も低く、平均線膨張率及び誘電正接も大きくなってしまっている。また、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂の代わりにトリアジン含有フェノールノボラック樹脂を用いた比較例2では誘電正接が低いものの、算術平均粗さ及び平均線膨張率が高くなってしまっている。また、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂を含まずに活性エステル化合物で代用した比較例3では平均線膨張率が大きくなり、ピール強度は低くなってしまっている。また、活性エステル化合物を含まずにトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂で代用した比較例4では誘電正接及び算術平均粗さが大きくなってしまっている。
【産業上の利用可能性】
【0101】
エポキシ樹脂組成物の硬化物表面を粗化処理した粗化面の粗度が比較的小さいにもかかわらず、該粗化面がめっき導体に対して高い密着力を示し、かつ線膨張率および誘電正接が小さい絶縁層を達成し得るエポキシ樹脂組成物、接着フィルム、プリプレグ、多層プリント配線板、半導体装置を提供できるようになった。更にこれらを搭載したコンピューター、携帯電話、デジタルカメラ、テレビ、等の電気製品や、自動二輪車、自動車、電車、船舶、航空機、等の乗物も提供できるようになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル化合物、(C)トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分のエポキシ基と、[(B)成分及び(C)成分の反応基]の比率が1:0.3〜1:1.5であり、成分(B)の不揮発成分と成分(C)の不揮発成分の重量比が1:0.05〜1:1.5であることを特徴とする、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
さらに(D)無機充填材を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
さらに(E)硬化促進剤を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
さらに(F)成分として、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂から選択される1種又は2種以上の高分子樹脂を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
さらに(G)ゴム粒子を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
ピール強度が0.3kgf/cm〜1.0kgf/cmであり、算術平均粗さが50nm〜220nmであり、誘電正接が0.001〜0.010であり、平均線膨張率が4ppm〜24ppmであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物が支持フィルム上に層形成されていることを特徴とする接着フィルム。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物が繊維からなるシート状繊維基材中に含浸されていることを特徴とするプリプレグ。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物により絶縁層が形成されていることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項11】
内層回路基板上に絶縁層を形成する工程及び該絶縁層上に導体層を形成する工程を含む多層プリント配線板の製造方法であって、該絶縁層が、請求項1〜7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を熱硬化して形成され、該導体層が、該絶縁層表面を粗化処理した粗化面にめっきにより形成されることを特徴とする、多層プリント配線板の製造方法。
【請求項12】
内層回路基板上に絶縁層を形成する工程及び該絶縁層上に導体層を形成する工程を含む多層プリント配線板の製造方法であって、該絶縁層が、請求項8記載の接着フィルムを内層回路基板上にラミネートし、支持フィルムを剥離するか又は剥離しないで、エポキシ樹脂組成物を熱硬化し、硬化後に支持フィルムが存在する場合には支持フィルムを剥離して形成され、該導体層が、該絶縁層表面を粗化処理した粗化面にめっきにより形成されることを特徴とする、多層プリント配線板の製造方法。
【請求項13】
内層回路基板上に絶縁層を形成する工程及び該絶縁層上に導体層を形成する工程を含む多層プリント配線板の製造方法であって、該絶縁層が、請求項9記載のプリプレグを内層回路基板上にラミネートし、エポキシ樹脂組成物を熱硬化して形成され、該導体層が、該絶縁層表面を粗化処理した粗化面にめっきにより形成されることを特徴とする、多層プリント配線板の製造方法。
【請求項14】
粗化処理が、アルカリ性過マンガン酸溶液を使用して行われる、請求項11〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項10に記載の多層プリント配線板を用いることを特徴とする、半導体装置。

【公開番号】特開2011−132507(P2011−132507A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262263(P2010−262263)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】