説明

コバルト膜の形成方法

【課題】コバルト前駆体の使用効率の高い、化学気相成長方法によるコバルト膜の形成方法を提供すること。
【解決手段】上記コバルト膜の形成方法は、基体上にコバルト膜を形成する方法であって、少なくとも(A)一酸化炭素を含む気体の存在下でコバルトカルボニル錯体を昇華する工程と(B)基体上にコバルトカルボニル錯体の昇華物を供給してコバルトに変換する工程とを含むことを特徴とする方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コバルト膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の電子デバイスにおいて、更なる高性能化を目的として配線や電極の構造の微細化、複雑化が進んでおり、これらの形状に精度の向上が要求されるようになってきた。
電子デバイスに電極、配線を形成するには、基体上の配線又は電極となるべき部位にトレンチを形成し、当該トレンチ内に配線又は電極となるべき金属材料を埋め込み、余剰の部分を化学機械研磨等により除去する方法が一般的である。
従来からトレンチ埋め込みにおける電極材料、配線材料として、高い導電性を持つ利点を有する銅が広く用いられてきた。トレンチへ銅を埋め込む方法としては、アスペクト比の大きいトレンチに対しても高い充填率をもって銅の埋め込みを行うことができる利点を有するメッキ法によることが有利である(特許文献1及び2)。
ここで、トレンチを有する基板が導電性を持たない絶縁体である場合(例えば酸化ケイ素等を材料とする基板である場合)には、メッキを行うに先立って基板表面にメッキの下地膜となるべき導電性膜(シード層)を形成しておくことが必要となる。また、酸化ケイ素に代表される絶縁体と銅が接触すると、銅原子が銅層から絶縁体へ移動する現象(一般に、「マイグレーション(migration)」と呼ばれている。)が知られている。電子デバイスにおける銅と絶縁体の界面でこのような銅原子のマイグレーションが起こると、デバイスの電気特性を害することとなるため、電子デバイスにおける絶縁体と銅との界面にはバリア層を設ける必要がある。
【0003】
近年、トレンチへのメッキ法による銅埋め込みのためのシード層となり、同時に絶縁体と銅との界面におけるバリア層としても機能する材料としてコバルトを使用し、特殊な化学気相成長方法を用いることにより上記目的を達成しようとする技術が提案された(特許文献3)。この技術は、コバルト膜を形成すべき第一の基体とコバルト前駆体を乗せた第二の基体とを近接して対向配置し、前記第二の基体から昇華したコバルト前駆体を第一の基体上に供給し、該第一の基体上でコバルト前駆体をコバルトに変換することにより、コバルト膜を形成するものである。そして、特許文献3にはコバルト前駆体として、オクタカルボニルジコバルト等が記載されている。この技術により、アスペクト比の高いトレンチを有する基体の場合であっても、トレンチの内部まで均一な厚さであり、且つ高い密着性を有するコバルト膜を容易に形成することが可能となり、上記目的は一応達成された。
しかし、オクタカルボニルジコバルト等の一般的なコバルト前駆体は、安定性に問題があり、昇華工程中に昇華性の低い安定錯体に徐々に変化してしまうことが知られている。かかる安定錯体は昇華せずに残存物となるため、化学気相成長法に供する前駆体の量としては、形成するべきコバルト膜の重量から逆算した理論値を大きく超える量を準備することが必要となる。そして、前記残存物は、化学気相成長法におけるコバルト前駆体として再利用することができないから、化学気相成長法によるコバルト膜の形成には、必要以上のコストがかかることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−80494号公報
【特許文献2】特開2003−318258号公報
【特許文献3】特開2006−328526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コバルト前駆体の使用効率の高い、化学気相成長方法によるコバルト膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、本発明の上記目的及び利点は、
基体上にコバルト膜を形成する方法であって、少なくとも
(A)一酸化炭素を含む気体の存在下でコバルトカルボニル錯体を昇華する工程と
(B)基体上にコバルトカルボニル錯体の昇華物を供給してコバルトに変換する工程と
を含む、コバルト膜の形成方法によって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コバルト前駆体の使用効率の高い、コバルト膜の形成方法が提供される。
本発明のコバルト膜の形成方法によって形成されるコバルト膜は、均一な膜厚を有する均質且つ高品位のものであり、例えばトレンチへのメッキ法による銅埋め込みのためのシード層、絶縁体と銅との界面におけるバリア層等に好適に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<コバルトカルボニル錯体>
本発明のコバルト膜の形成方法に使用されるコバルトカルボニル前駆体は、カルボニルを配位子として有するコバルト錯体であり、その具体例として例えば下記式(1)乃至(5)のうちのいずれかで表されるコバルト錯体等を挙げることができる。
Co(CO)・・・(1)
(ここで、Lは下記式(1)−1
Cp ・・・(1)−1
(ここで、Cpはη−シクロペンタジエニル基であり、Rはメチル基又はエチル基であり、nは0〜5の整数である。)
で表される基若しくはインデニル基であるか、又は1,3−シクロオクタジエン、1,4−シクロオクタジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−ブタジエン、ノルボルナジエン、アリル、一酸化窒素及びトリフェニルホスフィンよりなる群から選択される配位子であり、Yはハロゲン原子、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基又はシアノ基であり、cは1又は2であり、dは1、2又は4であり、eは0又は2であり、ただし、c+d+eは2、3、4又は5であり、cが2のときは二つのLは同一であっても互いに異なっていてもよい。)
Co(CO)・・・(2)
(ここで、Lの定義は上記式(1)におけるLと同じであるか又は1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン及びシクロオクテンよりなる群から選択される配位子であり、Rはハロゲン原子、PhC:::CPh(ここで、:::は三重結合を意味する。)、CCH、CH、CH、CH又はCPhであり、fは0、1、2又は4であり、gは1、2、4、6又は8であり、hは0、1又は2であり、ただし、f+g+hは4、6、7又は8である。)
Co(CO)CZ ・・・(3)
(ここで、Zは水素原子、ハロゲン原子、メチル基、メトキシ基又はトリフルオロメチル基である。)
Co(CO)12 ・・・(4)
Co(CO)12 ・・・(5)
【0009】
上記式(1)で表されるコバルトカルボニル錯体としては、例えば
シクロペンタジエニルジカルボニルコバルト、シクロペンタジエニルカルボニルコバルトジフルオライド、シクロペンタジエニルカルボニルコバルトジクロライト、シクロペンタジエニルカルボニルコバルトジブロマイド、シクロペンタジエニルカルボニルコバルトジヨーダイド、ビス(シクロペンタジエニル)カルボニルコバルト、ビス(シクロペンタジエニル)ジカルボニルコバルト、メチルシクロペンタジエニルジカルボニルコバルト、メチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジフルオライド、メチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジクロライト、メチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジブロマイド、メチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジヨーダイド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)カルボニルコバルト、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジカルボニルコバルト、テトラメチルシクロペンタジエニルジカルボニルコバルト、テトラメチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジフルオライド、テトラメチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジクロライト、テトラメチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジブロマイド、テトラメチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジヨーダイド、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)カルボニルコバルト、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジカルボニルコバルト、
【0010】
1,5−シクロオクタジエンジカルボニルコバルト、1,5−シクロオクタジエンカルボニルコバルトジフルオライド、1,5−シクロオクタジエンカルボニルコバルトジクロライド、1,5−シクロオクタジエンカルボニルコバルトジブロマイド、1,5−シクロオクタジエンカルボニルコバルトジヨーダイト、ビス(1,5−シクロオクタジエン)カルボニルコバルト、1,3−シクロオクタジエンジカルボニルコバルト、1,3−シクロオクタジエンカルボニルコバルトジフルオライド、1,3−シクロオクタジエンカルボニルコバルトジクロライド、1,3−シクロオクタジエンカルボニルコバルトジブロマイド、1,3−シクロオクタジエンカルボニルコバルトジヨーダイト、ビス(1,3−シクロオクタジエン)カルボニルコバルト、インデニルジカルボニルコバルト、インデニルカルボニルコバルトジフルオライド、インデニルカルボニルコバルトジクロライド、インデニルカルボニルコバルトジブロマイド、インデニルカルボニルコバルトジヨーダイド、ビス(インデニル)カルボニルコバルト、η−アリルトリカルボニルコバルト、η−アリルカルボニルコバルトジフルオライド、η−アリルカルボニルコバルトジクロライド、η−アリルカルボニルコバルトジブロマイド、η−アリルカルボニルコバルトジヨーダイド、ビス(η−アリル)カルボニルコバルト、テトラカルボニルコバルトハイドライド、シクロペンタジエニルカルボニルコバルトジハイドライド、メチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジハイドライド、テトラメチルシクロペンタジエニルカルボニルコバルトジハイドライド、メチルテトラカルボニルコバルト、エチルテトラカルボニルコバルト、トリカルボニルニトロシルコバルト、アセチルテトラコバルトカルボニル、テトラカルボニル(ヒドロキシアセチル)コバルト、テトラカルボニル(メトキシメチル)コバルト、テトラカルボニル(メトキシアセチル)コバルト、テトラカルボニル(2−メチル−1−オキソプロピル)コバルト、テトラカルボニル(1−オキソブチル)コバルト、テトラカルボニル(トリメチルシリル)コバルト、テトラカルボニル(トリメチルシリル)コバルト、テトラカルボニル(トリフルオロメチル)コバルト、テトラカルボニル(ペンタフルオロエチル)コバルト等を挙げることができる。
【0011】
上記式(2)で表されるコバルトカルボニル錯体としては、例えば
オクタカルボニルジコバルト、ビス(シクロペンタジエニル)ジカルボニルジコバルト、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジカルボニルジコバルト、ノルボルネン)ヘキサカルボニルジコバルト、シクロオクチンヘキサカルボニルジコバルト、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジカルボニルジコバルト、テトラ(η−アリル)ジコバルトジヨーダイド、ビス(1,3−シクロヘキサジエニル)テトラカルボニルジコバルト、ビス(ノルボルネン)テトラカルボニルジコバルト、ビス(シクロペンタジエニル)ジカルボニルジコバルト、下記式(i)〜(iv)のそれぞれで表される錯体等を挙げることができる。
【0012】
【化1】

【0013】
(上記式(iii)中、Rは、各々独立に、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、CHOH基又はCHOCOCH基である。)
上記式(3)で表されるコバルトカルボニル錯体としては、例えば下記式(v)で表される錯体等を挙げることができる。
【0014】
【化2】

【0015】
本発明のコバルト膜の形成方法に使用されるコバルトカルボニル錯体としては、上記のうち、上記式(1)又は(2)で表される錯体が好ましく、上記式(2)で表される錯体がより好ましく、特にオクタカルボニルジコバルトが好ましい。
【0016】
<(A)工程>
[(A)工程における気体]
(A)工程において、上記の如きコバルトカルボニル錯体は、一酸化炭素を含む気体の存在下で昇華に供される。
上記気体中の一酸化炭素分圧としては、1×10〜1×10N/mであることが好ましく、5×10〜5×10N/mであることがより好ましい。
上記気体は、上記の如き分圧の一酸化炭素のみからなっていてもよく、あるいは一酸化炭素と他の気体との混合物であってもよい。ここで使用することのできる他の気体としては、不活性ガスを好ましく使用することができ、その具体例として、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができる。上記気体として一酸化炭素と他の気体との混合物を使用する場合、該混合物に含まれる一酸化炭素の濃度は、10体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であることがより好ましく、さらに50体積%以上であることが好ましい。
上記気体は、実質的に酸素を含まないものであることが好ましい。具体的には、気体中の酸素濃度が、500ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましく、特に10ppm以下であることが好ましい。コバルトカルボニル錯体の昇華を上記の如き気体の存在下で行うことにより、コバルトカルボニル錯体の安定性が高まり、(A)工程中に昇華性の低い安定錯体への変化が起こりにくいこととなる。
【0017】
[(A)工程におけるコバルトカルボニル錯体の昇華]
このコバルトカルボニル錯体の昇華は、例えばコバルトカルボニル錯体を適当な容器に入れた状態で加熱する方法;
適当な支持体の表面上にコバルトカルボニル錯体の膜を形成し、これを加熱する方法、等により行うことができる。
前者の方法による場合、上記容器を構成する材料としては、コバルトカルボニル錯体を昇華するための加熱に耐える材料であればよく、例えばステンレススチール(SUS)、ガラス、石英、アルミニウム等を使用することができる。容器の形状としては、例えばシャーレ形、船形、皿形、円盤形、筒形等を挙げることができる。
後者の方法による場合、支持体上にコバルトカルボニル錯体の膜を形成するには、例えばコバルトカルボニル錯体を適当な溶媒に溶解した状態で上記支持体上に塗布し、次いで溶媒を除去する方法を好ましく採用することができる。
ここで、上記支持体を構成する材料としては、コバルトカルボニル錯体の溶液に対する濡れ性に優れ、且つコバルトカルボニル錯体を昇華するための加熱に耐える材料であればよく、例えばシリコン、ガラス、炭素等を使用することができる。支持体の形状としては、例えば円盤形状等を採用することができる。
【0018】
コバルトカルボニル錯体を溶解するための溶媒としては、例えば脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール、エーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。
上記脂肪族炭化水素としては、例えばn−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等;
上記脂環族炭化水素としては、例えばシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等;
上記芳香族炭化水素としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等;
上記アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等;
上記エーテルとしては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、p−オキサン等;
上記ケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチルケトン等;
上記ハロゲン化炭化水素としては、例えば塩化メチレン、テトラクロロエタン、クロロメタン、クロロベンゼン等、をそれぞれ挙げることができる。
これらのうち、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロペンタン、キシレン及びトルエンよりなる群から選択される少なくとも一種の溶媒を使用することが好ましく、n−ヘキサン及びトルエンよりなる群から選択される少なくとも一種の溶媒を使用することが特に好ましい。これら溶媒は、一種のみを使用してもよく、二種以上を混合して使用してもよい。コバルトカルボニル錯体の溶液は、必要に応じて界面活性剤、シランカップリング剤、ポリマー等を更に含有していてもよい。
上記溶液中に含有されるコバルトカルボニル錯体の濃度は、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは1〜30重量%である。
【0019】
上記支持体上へのコバルトカルボニル錯体溶液の塗布は、例えばスピンコート法、ディッピング法、スプレーコート法等により行うことができる。塗布後、好ましくは加熱によって溶媒を除去することにより、支持体上にコバルトカルボニル錯体の膜を形成することができる。この溶媒の除去は、塗布膜を好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜50℃の温度に、好ましくは0.1〜60分、より好ましくは1〜20分おくことにより行うことができる。溶媒除去の際の雰囲気としては、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス若しくは水素、一酸化炭素等の還元性ガス又はこれらの混合ガスの雰囲気下が好ましい。
ここで形成されるコバルトカルボニル錯体の膜の膜厚は、基体上に形成すべきコバルト膜の面積及び膜厚に応じて適宜に設定されるべきであるが、例えば0.1〜10μmとすることが好ましく、1〜5μmとすることがより好ましい。
(A)工程におけるコバルトカルボニル錯体の昇華は、コバルトカルボニル錯体を、好ましくは25℃以上、より好ましくは40〜500℃、更に好ましくは40〜300℃の温度に加熱することにより行うことができる。加熱時間は、タクトタイム等に応じて適宜に設定されるべきであるが、例えば0.1〜10分間とすることが好ましく、0.5〜5分間とすることがより好ましい。
【0020】
<(B)工程>
(B)工程においては、基体上にコバルトカルボニル錯体の昇華物を供給してコバルトに変換することにより、基体上にコバルト膜を形成する。
後述する本発明のコバルト膜の形成方法の実施態様から理解されるように、上記「コバルトカルボニル錯体の昇華物」は、(A)工程で発生した昇華物そのものであってもよいし、(A)工程で発生した昇華物を一旦別の基体上に堆積し、該堆積物をあらためて昇華したものであってもよい。
【0021】
[(B)工程における周囲雰囲気]
(B)工程においては、一酸化炭素分圧の低い条件下で基体上にコバルトカルボニル錯体の昇華物を供給することが、基体上におけるコバルトカルボニル錯体のコバルトへの変換効率をより高いものとすることができる点で好ましい。かかる観点から、(B)工程における一酸化炭素の分圧は、好ましくは5.0×10N/m以下であり、より好ましくは3.0×10N/m以下であり、特に1.0×10N/m以下であることが好ましい。
(B)工程における周囲雰囲気は、上記の如き分圧の一酸化炭素のみからなっていてもよく、あるいは一酸化炭素と他の気体との混合物からなっていてもよい。ここで使用することのできる他の気体としては、不活性ガスを好ましく使用することができ、その具体例として、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができる。
(B)工程における周囲圧力は、好ましくは1.0×10〜1.0×10N/mであり、より好ましくは1.0×10〜5.0×10N/mであり、特に1.0×10〜1.2×10N/mであることが好ましい。
(B)工程において周囲雰囲気を形成する気体は、実質的に酸素を含まないものであることが好ましい。具体的には、気体中の酸素濃度が、500ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましく、特に10ppm以下であることが好ましい。
【0022】
[基体]
(B)工程においてコバルトカルボニル錯体の昇華物が供給され、これをコバルトに変換してコバルト膜が形成される基体を構成する材料としては、例えばガラス、金属、シリコン、樹脂、絶縁膜等を挙げることができる。上記ガラスとしては、例えば石英ガラス、ホウ酸ガラス、ソーダガラス、鉛ガラス等を挙げることができる。上記金属としては、例えば金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄等を挙げることができる。上記樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルスルホン等を挙げることができる。上記絶縁膜としては、例えば酸化シリコン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、「SOG」と呼ばれる絶縁膜、CVD法により形成された低誘電率の絶縁膜等を挙げることができる。上記酸化シリコンとしては、例えば熱酸化膜、PETEOS(Plasma Enhanced TEOS)膜、HDP(High Density Plasma Enhanced TEOS)膜、BPSG(ホウ素リンシリケート)膜、FSG(Fluorine Doped Silicate Glass)膜等を挙げることができる。
上記熱酸化膜は、シリコンを高温の酸化性雰囲気下におくことにより形成される。PETEOS膜は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を原料とし、促進条件としてプラズマを利用した化学気相成長法によって成膜される。HDP膜は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を原料とし、促進条件として高密度プラズマを利用した化学気相成長によって成膜される。BPSG膜は、例えば常圧CVD法又は減圧CVD法により得ることができる。FSG膜は、促進条件として高密度プラズマを利用した化学気相成長によって成膜される。
上記「SOG」とは、「Spin On Glass」の略称であり、一般に、前駆体たるケイ酸化合物を有機溶剤に溶解又は分散した液状の混合物をスピンコート法等により基体に塗布した後、加熱処理して得られる低誘電率の絶縁膜をいう。前駆体たるケイ酸化合物としては、例えばシルセスキオキサン等を挙げることができる。「SOG」と呼ばれる絶縁膜の市販品としては、例えばCoral(Nuvellus System社製)、Aurola(日本エーエスエム(株)製)、Nanoglass(Honeywell社製)、LKD(JSR(株)製)等を挙げることができる。上記のうち、基体を構成する材料としては、酸化シリコン、「SOG」と呼ばれる絶縁膜又はCVD法により形成された低誘電率の絶縁膜が好ましく、酸化シリコンがより好ましく、PETEOS膜、BPSG膜又はFSG膜が更に好ましい。
【0023】
上記基体は、その表面にバリア層が形成されたものであってもよい。ここで、バリア層を構成する材料としては、例えばタンタル、チタン、窒化タンタル、窒化チタン等を挙げることができ、このうち、タンタル又は窒化タンタルが好ましい。
コバルト膜が形成される基体は、トレンチを有している場合に本発明の有利な効果がより発揮される。トレンチは、上記の如き材質からなる基体に、公知の方法、例えばフォトリソグラフィーなどによって形成される。
トレンチは、どのような形状、大きさのものであってもよいが、トレンチの開口幅(基体表面に開口した部分の最小距離)が10〜300nmであり、かつトレンチのアスペクト比(トレンチの深さをトレンチの開口幅で除した値)が3以上である場合に、本発明の有利な効果が最大限に発揮される。上記トレンチの開口幅は更に10〜200nmであることができ、特に10〜100nmであることができ、就中10〜50nmであることができる。上記トレンチのアスペクト比は、更に3〜40であることができ、特に5〜25であることができる。
【0024】
[基体上へのコバルトカルボニル錯体の昇華物の供給およびコバルトへの変換]
(B)工程において、供給されたコバルトカルボニル錯体の昇華物をコバルトに変換するには、基体表面を加熱することにより行うことができる。供給されたコバルトカルボニル錯体の昇華物をコバルトへ変換するための基体表面の温度としては、好ましくは50〜1,000℃であり、より好ましくは80℃を超えて250℃以下であり、特に100〜300℃であることが好ましい。
(B)工程において、基体上に形成されるコバルト膜の膜厚は、1〜1,000nmであることが好ましく、10〜500nmであることがより好ましい。
【0025】
<本発明のコバルト膜の形成方法の実施態様>
本発明のコバルト膜の形成方法は、(A)工程においてコバルトカルボニル錯体を昇華する際の周囲雰囲気と、(B)工程においてコバルトカルボニル錯体の昇華物を基体上に供給してコバルトに変換する際の周囲雰囲気とが、一酸化炭素濃度において好ましくは相違するので、これを実現するためには例えば以下のような特別の工夫が必要である。また、基体上においてコバルトカルボニル錯体がコバルトに変換されるに際して一酸化炭素が発生し、(B)工程の周囲雰囲気中の一酸化炭素濃度が増大するため、この濃度を制御しつつ(B)工程を行うことが好ましい。
本発明のコバルト膜の形成方法は、より具体的には例えば
(A)工程において昇華したコバルトカルボニル錯体を、コバルト膜を形成すべき基体とは別の基体上に供給して該別の基体上にコバルトカルボニル錯体の膜を形成し、次いで
(B)工程において、上記別の基体上のコバルトカルボニル錯体の膜からコバルトカルボニル錯体を昇華して、該昇華物を基体上に供給してコバルトに変換する方法(以下、「第一の方法」ともいう。);
(A)工程において発生したコバルトカルボニル錯体の昇華物を、一酸化炭素濃度の低いキャリアガスによって運搬する、あるいは基体近傍の圧力を真空ポンプなどを用いて減圧することで基体近傍までコバルトカルボニル錯体を運搬し、
(B)工程において、該キャリアガスによって運搬されたコバルトカルボニル錯体の昇華物を基体上に供給してコバルトに変換する方法(以下、「第二の方法」ともいう。)、等によって実施することができる。
以下、本発明の好ましい実施態様として、上記第一の方法および第二の方法の詳細について、順に説明する。
【0026】
[第一の方法]
本発明の好ましい実施態様の一つである上記第一の方法では、(A)工程において発生したコバルトカルボニル錯体の昇華物を、コバルト膜を形成すべき基体(以下、「第一の基体」ともいう。)とは別の基体(以下、「第二の基体」ともいう。)上に供給して該第二の基体上にコバルトカルボニル錯体の膜を形成する。
上記第二の基体としては、上記コバルトカルボニル錯体の昇華物を堆積してコバルトカルボニル錯体の膜を形成することができ、且つ該コバルトカルボニル錯体の膜からコバルトカルボニル錯体を昇華するための加熱に耐えるものであれば特に限定はなく、例えば上記したコバルト膜が形成される基体(第一の基体)と同様の材料からなるものを使用することができる。第二の基体の形状に特に制限はないが、第一の基体のコバルト膜が形成される部分(面)の少なくとも一部と契合する面を有する形状が好ましい。
第二の基体上に供給されたコバルトカルボニル錯体は、そのまま堆積してコバルトカルボニル錯体の膜となるべきであるから、(A)工程において発生したコバルトカルボニル錯体の昇華物が供給される際の第二の基体の温度は、コバルトカルボニル錯体が昇華できる温度であれば特に限定されないが、コバルトカルボニル錯体がコバルトに変換される温度よりも低いことが好ましい。かかる温度は、好ましくは25℃以上であり、より好ましくは40〜80℃である。
ここで形成されるコバルトカルボニル錯体の膜の膜厚は、基体上に形成すべきコバルト膜の面積及び膜厚に応じて適宜に設定されるべきであるが、例えば1〜1,000nmとすることが好ましく、10〜500nmとすることがより好ましい。
上記の如くしてコバルトカルボニル錯体の膜が形成された第二の基体は、これを直ちに次工程に供してもよいが、必ずしもその必要はない。コバルトカルボニル錯体の膜が形成された第二の基体は、適当な条件下、例えば(A)工程においてコバルトカルボニル錯体を昇華する際と同様の雰囲気下で好ましくは−20〜5℃の温度範囲、にて長期間(例えば1ヶ月〜1年程度)保存することができ、かかる条件下で保存後に次工程に供しても、本発明の有利な効果(高い使用効率)を発揮することができる。
【0027】
第一の方法では、次いで(B)工程において、上記第二の基体上のコバルトカルボニル錯体の膜からコバルトカルボニル錯体を昇華して、該昇華物を第一の基体上に供給してコバルトに変換する。このように、(A)工程と(B)工程の間に第二の基体を介することにより、両工程における周囲雰囲気を容易に異ならしめることが可能になる。
ここで、第二の基体上のコバルトカルボニル錯体の膜からの昇華物を第一の基体上に供給するには、例えば第一の基体の面と、第二の基体のコバルトカルボニル錯体の膜を形成した面とを対向配置して該第二の基体上のコバルトカルボニル錯体を昇華することにより、上記第一の基体上にコバルトカルボニル錯体の昇華物を供給してコバルトに変換する方法を好ましく採用することができる。
このとき、対向配置した第一の基体のコバルト膜を形成すべき面と第二の基体のコバルトカルボニル錯体の膜を形成した面との距離は、0.1〜100mmであることが好ましく、0.5〜10mmであることがより好ましい。
第二の基体上の膜状のコバルトカルボニル錯体の昇華は、好ましくは25℃以上、より好ましくは40〜500℃、更に好ましくは40〜300℃の温度に加熱することにより行うことができる。この昇華のための加熱時間は、例えば0.1〜10分間とすることが好ましく、0.5〜5分間とすることがより好ましい。
【0028】
そして、上記の如き一酸化炭素分圧下で好ましくは上記の如き温度に制御された第一の基体上に上記第二の基体上のコバルトカルボニル錯体の膜からの昇華物を供給してコバルトに変換することにより、第一の基体上にコバルト膜を形成することができる。
第一の方法においては、(B)工程における一酸化炭素濃度を制御すべく、基体上におけるコバルトカルボニル錯体のコバルトへの変換により発生する一酸化炭素を随時除去することが好ましい。このため、次に述べる第二の方法におけるキャリアガスと同様のガスを反応器(チャンバー)に流通して発生した一酸化炭素を置き換えつつ、又は真空ポンプにより発生した一酸化炭素をチャンバーから除去しつつ、(B)工程を行うことが好ましい。
【0029】
[第二の方法]
本発明の別の好ましい実施態様である第二の方法では、上記(A)工程において発生したコバルトカルボニル錯体の昇華物を、一酸化炭素濃度の低いキャリアガスによって運搬する、あるいは基体近傍の圧力を真空ポンプなどを用いて減圧することで基体近傍までコバルトカルボニル錯体を運搬し、
上記(B)工程において、上記キャリアガスによって運搬されたコバルトカルボニル錯体の昇華物を基体上に供給してコバルトに変換することにより、基体上にコバルト膜を形成する。
第二の方法においては、(A)工程で発生したコバルトカルボニル錯体の昇華物を、一酸化炭素濃度の低いキャリアガスを用いて、好ましくは(A)工程を実施した反応器(チャンバー)とは別のチャンバーに運搬することにより(A)工程で使用した気体の一酸化炭素濃度を希釈し、これによって(A)、(B)両工程の周囲雰囲気を異ならしめるものである。
上記キャリアガス中の一酸化炭素分圧は、好ましくは5×10N/m未満であり、より好ましくは1×10N/m以下である。上記キャリアガスは、(A)工程において使用した気体中の一酸化炭素を希釈するものであるため、上記キャリアガスとしては上記の如き分圧の一酸化炭素と他の気体との混合物からなるものであることが好ましい。ここで使用される他の気体としては、不活性ガスを好ましく使用することができ、その具体例として、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができる。キャリアガスの流速は、(A)工程において使用した気体の圧力、該気体中の一酸化炭素濃度、チャンバー容積等により適当な値に設定すべきであるが、例えば1×10−3〜1×10L(SATP)/分とすることが好ましく、5×10−3〜1×10L(SATP)/分とすることがより好ましい。
【0030】
第二の方法においては、(A)工程で発生したコバルトカルボニル錯体の昇華物を、圧力差により、好ましくは(A)工程を実施した反応器(チャンバー)とは別のチャンバーに運搬することにより、(A)工程で使用した気体の一酸化炭素の分圧を下げて、これによって(A)、(B)両工程の周囲雰囲気を異ならしめるものである。基体の近傍まで運搬する方法による場合、反応室内の圧力を真空ポンプなどを用いて減圧することで反応室内にコバルトカルボニル錯体を運搬することができる。
第二の方法においては、(A)工程において発生したコバルトカルボニル錯体の昇華物を上記の如きキャリアガスによって運搬し、(B)工程において該昇華物を直接に、前述の一酸化炭素分圧下で好ましくは前述の温度に制御された基体上に供給してコバルトに変換することにより、基体上にコバルト膜を形成することができる。
この第二の方法は、キャリアガスの流通又は真空ポンプの使用により、基体上におけるコバルトカルボニル錯体のコバルトへの変換により発生する一酸化炭素を随時除去しつつ(B)工程を行うこととなるため、(B)工程における一酸化炭素濃度を低く保つことが容易である。
【0031】
<コバルト膜>
上記の如き本発明のコバルト膜の形成方法によって形成されるコバルト膜は、均一な膜厚を有する均質且つ高品位のものであり、例えばトレンチへのメッキ法による銅埋め込みのためのシード層、絶縁体と銅との界面におけるバリア層等に好適に適用することができる。
【実施例】
【0032】
<コバルト膜の形成および評価>
実施例1
コバルトカルボニル錯体として、オクタカルボニルジコバルトを用意した。コバルトカルボニル錯体の膜を形成すべき基体(第二の基体)として、直径4インチのシリコン基板を用意した。
一酸化炭素雰囲気(1気圧、酸素濃度1ppm)下で、SUS製シャーレにオクタカルボニルジコバルト0.15gを入れ、第二の基体をシャーレの底面からの距離が30mmとなるように対向させ、第二の基体が上側に、SUS製シャーレが下側になるように配置した。SUS製シャーレの底面をホットプレート面に接触させて、70℃で10分間加熱した。SUS製シャーレ上のオクタカルボニルジコバルトは昇華し、第二の基体上にオクタカルボニルジコバルトの均一な膜が堆積した。このときのSUS製シャーレ上に残っていた残渣の重さは、0.05gであった。加熱後のSUS製シャーレ上に残っていた残渣の重量の、加熱前のオクタカルボニルジコバルトの重量に対する比を残渣率とすると、残渣率は33%であった。
続いて、コバルト膜が形成されるべき基体(第一の基体)として、片方の表面に厚さ10nmの窒化タンタル膜を有する直径4インチのシリコン基板を用意した。窒素雰囲気(1気圧、一酸化炭素濃度100ppm、酸素濃度1ppm)下で第一の基体の窒化タンタルを有する面と、上記第二の基体のオクタカルボニルジコバルトの膜を有する面とを、距離2.0mmで対向させ、第二の基体が上側に、第一の基体が下側になるように配置した。
上記第一の基体の背面をホットプレート面に接触させ、第一の基体を120℃で10分間加熱した。加熱された第一の基体からの輻射熱により、第二の基体上のオクタカルボニルジコバルトが加熱されて昇華し、第一の基体上に銀白色の膜が形成された。この膜につき、SIMS分析を行ったところ、この膜はコバルト金属であることがわかった。このコバルト膜の厚さは310nmであり、比抵抗は18μΩcmであった。
【0033】
比較例1
実施例1において、第二の基体上へのオクタカルボニルジコバルト膜の形成を、窒素雰囲気(1気圧、一酸化炭素濃度100ppm、酸素濃度1ppm)下で行ったほかは上記実施例1と同様の操作を行って評価した。結果は表1に示した。
【0034】
実施例2
コバルトカルボニル錯体溶液として、オクタカルボニルジコバルト2gをヘキサン18gに溶解した錯体濃度10重量%のオクタカルボニルジコバルト溶液を用意した。コバルトカルボニル錯体の膜を形成すべき基体(第二の基体)として、直径4インチのシリコン基板を用意した。
一酸化炭素雰囲気(1気圧、酸素濃度1ppm)下で、SUS製シャーレに上記オクタカルボニルジコバルト溶液1.5gを入れ、3分間静置してヘキサンを蒸発させた。第二の基体をシャーレの底面からの距離が30mmとなるように対向させ、第二の基体が上側に、SUS製シャーレが下側になるように配置した。SUS製シャーレの背面をホットプレート面に接触させて、70℃で10分間加熱した。SUS製シャーレ上のオクタカルボニルジコバルトは昇華し、第二の基体上にオクタカルボニルジコバルトの均一な膜が堆積した。このときのSUS製シャーレ上に残っていた残渣の重さは、0.04gであった。加熱後のSUS製シャーレ上に残っていた残渣の重量の、加熱前のオクタカルボニルジコバルトの重量に対する比を残渣率とすると、残渣率は27%であった。
続いて、実施例1におけるのと同様にして、第一の基体の窒化タンタルを有する面上にコバルト膜を形成して、評価を行った。結果は表1に示した。
【0035】
比較例2
実施例2において、第二の基体上へのオクタカルボニルジコバルト膜の形成を、窒素雰囲気(1気圧、一酸化炭素濃度100ppm、酸素濃度1ppm)下で行ったほかは上記実施例2と同様の操作を行って評価した。結果は表1に示した。
【0036】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上にコバルト膜を形成する方法であって、少なくとも
(A)一酸化炭素を含む気体の存在下でコバルトカルボニル錯体を昇華する工程と
(B)基体上にコバルトカルボニル錯体の昇華物を供給してコバルトに変換する工程と
を含むことを特徴とする、コバルト膜の形成方法。
【請求項2】
上記(A)工程における気体中の一酸化炭素分圧が1×10〜1×10N/mである、請求項1に記載のコバルト膜の形成方法。
【請求項3】
上記(B)工程が一酸化炭素分圧5×10N/m以下の条件下で行われる、請求項1または2に記載のコバルト膜の形成方法。
【請求項4】
上記(A)工程において昇華したコバルトカルボニル錯体を、コバルト膜を形成すべき基体とは別の基体上に供給して該別の基体上にコバルトカルボニル錯体の膜を形成し、
上記(B)工程におけるコバルトカルボニル錯体の昇華物が、上記別の基体上のコバルトカルボニル錯体の膜からの昇華物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコバルト膜の形成方法。
【請求項5】
上記(B)工程において、コバルト膜を形成すべき基体の面と、上記別の基体のコバルトカルボニル錯体の膜を形成した面とを対向配置して該別の基体上のコバルトカルボニル錯体を昇華することにより、上記コバルト膜を形成すべき基体上にコバルトカルボニル錯体の昇華物を供給してコバルトに変換する、請求項4に記載のコバルト膜の形成方法。
【請求項6】
上記(A)工程において発生したコバルトカルボニル錯体の昇華物を、一酸化炭素分圧が5×10N/m未満のキャリアガスによって運搬し、
上記(B)工程において、該キャリアガスによって運搬されたコバルトカルボニル錯体の昇華物を基体上に供給してコバルトに変換する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコバルト膜の形成方法。
【請求項7】
上記コバルトカルボニル錯体が、下記式(1)乃至(5)のうちのいずれかで表されるコバルトカルボニル錯体である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のコバルト膜の形成方法。
Co(CO)・・・(1)
(ここで、Lは下記式(1)−1
Cp ・・・(1)−1
(ここで、Cpはη−シクロペンタジエニル基であり、Rはメチル基又はエチル基であり、nは0〜5の整数である。)
で表される基若しくはインデニル基であるか、又は1,3−シクロオクタジエン、1,4−シクロオクタジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−ブタジエン、ノルボルナジエン、アリル、一酸化窒素及びトリフェニルホスフィンよりなる群から選択される配位子であり、Yはハロゲン原子、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基又はシアノ基であり、cは1又は2であり、dは1、2又は4であり、eは0又は2であり、ただし、c+d+eは2、3、4又は5であり、cが2のときは二つのLは同一であっても互いに異なっていてもよい。)
Co(CO)・・・(2)
(ここで、Lの定義は上記式(1)におけるLと同じであるか又は1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン及びシクロオクテンよりなる群から選択される配位子であり、Rはハロゲン原子、PhC:::CPh(ここで、:::は三重結合を意味する。)、CCH、CH、CH、CH又はCPhであり、fは0、1、2又は4であり、gは1、2、4、6又は8であり、hは0、1又は2であり、ただし、f+g+hは4、6、7又は8である。)
Co(CO)CZ ・・・(3)
(ここで、Zは水素原子、ハロゲン原子、メチル基、メトキシ基又はトリフルオロメチル基である。)
Co(CO)12 ・・・(4)
Co(CO)12 ・・・(5)
【請求項8】
形成されるコバルト膜の膜厚が、1〜1,000nmである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のコバルト膜の形成方法。
【請求項9】
形成されるコバルト膜が、メッキのためのシード層である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のコバルト膜の形成方法。

【公開番号】特開2010−159447(P2010−159447A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1412(P2009−1412)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】