説明

ターンオン防止付き複合半導体デバイス

【課題】ターンオン防止付き複合半導体デバイスを提供する。
【解決手段】本明細書は、ターンオン防止制御を有する複合III-窒化物半導体デバイスの種々の実現を開示する。1つの好適な実現では、ノーマリオフ複合半導体デバイスが、ノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタ、及びこのノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタとカスコード接続された低電圧(LV)デバイスを具えて、ノーマリオフ複合半導体デバイスを形成する。このLVデバイスは、ノイズを伴う環境内で、ノイズ電流が、ノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタのチャネルを通って流れることを防止することによって、ノーマリオフ複合半導体デバイスに、ターンオン防止制御を与えるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本願は、係属中の米国特許仮出願第61/454743号、2011年3月21日出願、発明の名称”III-Nitride Optimized Rugged Cascode Power Device”に基づいて優先権を主張する。この係属中の仮出願の開示は、その全文を参考文献として本明細書に含める。
【背景技術】
【0002】
I.定義
本明細書で用いる「III族窒化物」または「III-窒化物」とは、窒素及び少なくとも1つのIII族元素を含む化合物半導体を称し、これらのIII族元素は、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びホウ素(B)を含み、そして、その任意の合金、例えばアルミニウム窒化ガリウム(AlxGa(1-x)N)、インジウム窒化ガリウム(InyGa(1-y)N)、アルミニウムインジウム窒化ガリウム(AlxInyGa(1-x-y)N)、ガリウムヒ素リン窒素(GaAsaPbN(1-a-b))、アルミニウムインジウムガリウムヒ素リン窒素(AlxInyGa(1-x-y)AsaPbN(1-a-b))を含むが、これらに限定されない。III-窒化物は一般に、あらゆる極性も称し、これらの極性は、極性Ga、極性N、半極性または非極性の結晶方位を含むが、これらに限定されない。III-窒化物材料は、ウルツ鉱型、閃亜鉛鉱型、あるいは混合型のポリタイプ(結晶多形)のいずれかを含むこともでき、そして、単結晶(モノクリスタル)、多結晶、または非結晶の結晶構造を含むことができる。
【0003】
また、本明細書で用いる「LVデバイス」、「低電圧半導体デバイス」、「低電圧トランジスタ」等は、50ボルトまでの標準的電圧範囲を有する低電圧デバイスを称する。標準的電圧範囲は、約0〜50Vの低電圧(LV)、約50〜200Vの中電圧(MV)、約200〜1200Vの高電圧(HV)、及び約1200V以上の超高電圧(UHV)を含む。このデバイスは、電界効果トランジスタ(FET)またはダイオード、あるいはFETとダイオードの組合せを形成するのに適したあらゆる半導体材料で構成することができる。適切な半導体材料は、IV族半導体材料、例えばシリコン、ひずみシリコン、SiGe、及びIII-As、III-P、III-窒化物、またはこれらの合金のいずれをも含むIII-V族材料である。
【0004】
II 背景技術
III-窒化物材料は半導体化合物であり、比較的広幅の直接バンドギャップを有し、強い圧電分極を有することができ、高い破壊電界、高い飽和速度、及び二次元電子ガスの生成を可能にすることができる。その結果、III-窒化物材料は、多くの電力用途、例えばデプレッションモード(例えばノーマリオン)電力用電界効果トランジスタ(FET)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、及びダイオードに使用されている。
【0005】
パワーデバイスのノーマリオフ特性が望ましいパワーマネージメント(電力管理)用途では、デプレッションモードIII-窒化物パワートランジスタを低電圧(LV)半導体デバイスとカスコード接続して、エンハンスメントモード複合パワーデバイスを形成することができる。しかし、こうした複合デバイスの実用性及び信頼性は、複合デバイス内に含まれるLV半導体デバイスの特性に応じて制限され得る。例えば、ノイズを伴うシステム環境内で実現する場合、LVデバイスは、システムノイズによって不用意にトリガされてオン状態になり、複合半導体デバイスも不所望にターンオンすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第12/455117号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第12/653240号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第12/928103号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第13/020243号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ターンオン防止制御付きの複合半導体デバイスに指向したものであり、実質的に、図面の少なくとも1つに示し、及び/またはこの図面に関連して説明し、特許請求の範囲により完全に記載している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】複合半導体デバイスの好適な実現を示す図である。
【図2】複合半導体デバイスの他の好適な実現を示す図である。
【図3】ターンオン防止制御を有する複合半導体デバイスのより詳細な表現を示す図であり、図1によって示す実現に概ね相当する。
【図4】複合半導体デバイス内の使用に適し、ターンオン防止制御を行うように構成された低電圧(LV)トランジスタの1つの実現の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
以下の説明は、本発明の実施に関連する詳細な情報を含む。本発明は、本明細書に具体的に説明するのとは異なる方法で実施することができることは、当業者の認める所である。本願中の図面及びその詳細な説明は、好適な実施例に指向したものに過ぎない。特に断りのない限り、図面中では、同様の、あるいは対応する要素は、同様の、あるいは対応する参照番号で示すことがある。さらに、本願中の図面及び例示は一般に原寸に比例しておらず、そして、実際の相対寸法に相当することを意図していない。
【0010】
III-窒化物材料は、例えば、窒化ガリウム(GaN)及びその合金、例えばアルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)、インジウム窒化ガリウム(InGaN)、及びアルミニウムインジウム窒化ガリウム(AlInGaN)を含む。これらの材料は半導体化合物であり、比較的広幅の直接バンドギャップを有し、強い圧電分極を有することができ、高い破壊電界、高い飽和速度、及び二次元電子ガス(2−DEG:two-dimensional electron gas)の生成を可能にすることができる。その結果、上述したように、GaNのようなIII-窒化物材料は、多くのマイクロエレクトロニクス用途、例えばデプレッションモード(例えばノーマリオン)電力用電界効果トランジスタ(パワーFET)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、及びダイオードに使用されている。
【0011】
さらに上述したように、パワーデバイスのノーマリオフ特性が要求されるパワーマネージメント(電力管理)用途では、デプレッションモードIII-窒化物デバイスを低電圧(LV)半導体デバイスとカスコード接続して、エンハンスメントモード複合パワーデバイスを形成することができる。しかし、こうした複合デバイスの実用性及び信頼性は、ノーマリオンIII-窒化物パワーデバイスとカスコード接続したLV半導体デバイスの特性に応じて制限され得る。例えば、複合半導体デバイスは、ノイズを伴う環境内で生成されるシステムノイズによるLVデバイスの不用意なトリガにより、不用意にターンオンされ得る。こうした複合デバイスを、あり得るノイズを伴う環境内での動作に適したものとするために、この複合デバイスは、ターンオン防止制御を有するように構成すべきである。
【0012】
本願は、ターンオン防止制御を有する複合半導体デバイスに指向したものである。1つの実現によれば、複合半導体デバイスが、III-窒化物パワートランジスタ(例えばIII-窒化物電界効果トランジスタまたはIII-窒化物高電子移動度トランジスタ)、及びこのIII-窒化物パワートランジスタとカスコード接続したLVデバイスを含むことができる。上記の、LVデバイスと、例えばノーマリオンデバイスとすることのできるIII-窒化物パワートランジスタとのカスコード結合は、ノーマリオフ複合デバイスを形成するように実現することができる。本明細書に開示するように、上記LVデバイスは、耐ノイズ性の閾値電圧(即ち、より高い閾値電圧)を有することができ、この閾値電圧は、ノイズを伴うシステム内で、ノイズ電流が、上記ノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタのチャネルを通って流れることを防止することによって、上記ノーマリオフ複合半導体デバイスにターンオン防止制御を行わせるように設定されている。本発明の種々の実現によれば、上記ノイズ耐性のある閾値電圧(Vth)は約1.8ボルトまたはそれより大きく、例として約3.0ボルトまたは約4.0ボルトであるが、これらに限定されない。
【0013】
図1を参照すれば、図1は、複合III-窒化物半導体デバイスの1つの好適な実現を示す。図1に示すように、複合半導体デバイス100は、III-窒化物パワートランジスタ(例えば、III-窒化物電界効果トランジスタまたはIII-窒化物高電子移動度トランジスタ)110、及びIII-窒化物パワートランジスタとカスコード接続されたLVデバイス120を含む。図1にさらに示すように、LVデバイス120はLVトランジスタ140及びLVダイオード130を含む。図1には、複合半導体デバイス100の複合ソース端子102、複合ドレイン端子104、及び複合ゲート端子106も示す。
【0014】
III-窒化物パワートランジスタ110は、窒化ガリウム(GaN)で形成することができ、そして、例えば絶縁ゲートFET(IGFET:insulated-gate FET)またはヘテロ構造FET(heterostructure FET)として実現することができる。1つの実現では、III-窒化物パワートランジスタ110は、金属−絶縁体−半導体FET(MISFET:metal-insulator-semiconductor FET)、例えば金属酸化膜半導体FET(MOSFET)の形をとることができる。その代わりに、HFETとして実現する場合、III-窒化物パワートランジスタ110は、2−DEGを形成するように構成されたHEMTとすることができる。1つの実現によれば、例えば、III-窒化物パワートランジスタ110は、約600Vのドレイン電圧を維持するように構成され、約40Vのゲート定格を有する高電圧(HV)デバイスとすることができる。なお、一部の実現では、複合半導体デバイス100は、III-窒化物FETまたはHEMTの代わりに絶縁ゲートバイポーラトランジスタを、パワーデバイスとして利用することができる。
【0015】
LVデバイス120は、LVトランジスタ140及びLVダイオード130を含むように示している。一部の実現では、LVダイオード130は、単にLVトランジスタ140のボディダイオードとすることができるのに対し、他の実現では、LVダイオード130は、図1に示すようにLVトランジスタ140に結合されたディスクリート(個別)ダイオードとして、LVデバイス120を形成することができる。LVデバイス120は、LVIV族デバイス、例えば約25Vの降伏電圧を有するシリコンデバイスとして実現することができる。1つの実現によれば、LVデバイス120は、例えばLVボディダイオード130を含むシリコンMISFETまたはMOSFETとすることができる。
【0016】
上記の、III-窒化物パワートランジスタ110とLVデバイス120とのカスコード結合が複合半導体デバイス100を形成し、図1に示す実現によれば、複合半導体デバイス100は三端子複合デバイスとなり、この三端子複合デバイスは実際に、LVデバイス120によって提供される複合ソース端子102及び複合ゲート端子106、及びIII-窒化物パワートランジスタ110によって提供される複合ドレイン端子104を有するFETとして機能する。さらに、そして以下でより詳細に説明するように、複合半導体デバイス100は、アクティブ発振制御を有するように構成されたHV複合デバイスとして実現される。
【0017】
以下、図2を参照し、図2は、複合半導体デバイスの他の実現を示す。図2に示すように、複合半導体デバイス200は、III-窒化物パワートランジスタ210(例えば、III-窒化物電界効果トランジスタまたはIII-窒化物高電子移動度トランジスタ)、及びIII-窒化物パワートランジスタ210とカスコード接続されたLVデバイス220を具えている。III-窒化物パワートランジスタ210は、ソース212、ドレイン214、及びゲート216を含むように示している。III-窒化物パワートランジスタ210は、図1のIII-窒化物パワートランジスタ110に相当し、そして、前のIII-窒化物パワートランジスタ110に起因する上記のあらゆる特徴を共有することができる。図2には、複合半導体デバイス200の複合アノード端子203及び複合カソード端子205も示す。
【0018】
図2に示す実現によれば、LVデバイス220は、アノード223及びカソード225を含むLVダイオードであり、例えばシリコンダイオードのようなLVIV族ダイオードとして実現することができる。LVデバイス220は、III-窒化物パワートランジスタ210とカスコード接続されて、複合半導体デバイス200を形成する。即ち、LVデバイス220のカソード225は、III-窒化物パワートランジスタ210のソース212に結合され、LVデバイス220のアノード223は、複合半導体デバイス200の複合アノード端子203を提供し、III-窒化物パワートランジスタ210のドレイン214は、複合半導体デバイス200の複合カソード端子205を提供し、III-窒化物パワートランジスタ210のゲート216は、LVデバイス220のアノード223に結合されている。
【0019】
III-窒化物パワートランジスタ210とLVデバイス220とのカスコード結合が複合半導体デバイス200を形成し、図2に示す実現によれば、複合半導体デバイス200は、ダイオードとして機能する複合二端子デバイスとなり、このダイオードは、LVデバイス220によって提供される複合アノード端子203、及びIII-窒化物パワートランジスタ210によって提供されるカソード端子205を有する。さらに、そして以下でより詳細に説明するように、複合半導体デバイス200は、ターンオン防止制御を有するように構成された複合デバイスとして実現することができる。
【0020】
続いて図3を参照し、図3は、ターンオン防止制御を有する複合半導体デバイスのより詳細な表現を示し、図1に示す実現に概ね相当する。複合半導体デバイス300は、III-窒化物パワートランジスタ310(例えば、III-窒化物電界効果トランジスタまたはIII-窒化物高電子移動度トランジスタ)及びIII-窒化物パワートランジスタ310とカスコード接続されたLVデバイス320を含む。図3にさらに示すように、LVデバイス320はLVトランジスタ340及びLVダイオード330を含み、LVダイオード330は例えばLVトランジスタ340のボディダイオードとすることができる。図3には、複合半導体デバイス300の複合ソース端子302、複合ドレイン端子304、及び複合ゲート端子、並びにIII-窒化物パワートランジスタ310のソース312、ドレイン314、及びゲート316、及びLVトランジスタ340のソース342、ドレイン344、及びゲート350も示す。
【0021】
複合ソース端子302、複合ドレイン端子304、複合ゲート端子306を有し、III-窒化物パワートランジスタ310を、LVトランジスタ340及びLVダイオード330を含むLVデバイス320と組み合わせて形成される複合半導体デバイス300は、図1の、複合ソース端子102、複合ドレイン端子104、複合ゲート端子106を有し、III-窒化物パワートランジスタ110を、LVトランジスタ140及びLVダイオード130を含むLVデバイス120と組み合わせて形成される複合半導体デバイス100に相当し、これらの対応する特徴要素に起因する上記のあらゆる特徴を共有することができる。
【0022】
図3に示すように、LVトランジスタ340は、III-窒化物パワートランジスタ310とカスコード接続されて、複合半導体デバイス300を形成する。即ち、LVトランジスタ340のドレイン344はIII-窒化物パワートランジスタ310のソース312に結合され、LVトランジスタ340のソース342は複合半導体デバイス300の複合ソース端子を提供し、LVトランジスタ340のゲート350は複合半導体デバイス300の複合ゲート端子306を提供する。さらに、III-窒化物310のドレイン314は複合半導体デバイス300の複合ドレイン端子304を提供し、III-窒化物パワートランジスタ310のゲート316はLVトランジスタ340のソース342に結合されている。
【0023】
以下、ノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタ310とカスコード接続したLVトランジスタ340で形成されたノーマリオフデバイスとして実現される複合半導体デバイス300の動作を、特定のパラメータを参照して説明するが、これらのパラメータは例示に過ぎない。例えば、III-窒化物パワートランジスタ310がオン状態である間は、複合半導体デバイス300の複合ドレイン端子304の電圧が増加すると共に、逆バイアスされたLVダイオード330の両端に数ボルト(例えば約10V)が現れる。この電圧は反転されて、III-窒化物パワートランジスタ310のゲート316に(例えば約-10Vのゲート電圧として)印加される。これに応答して、III-窒化物パワートランジスタ310はターンオフし(例えば、約-7Vのピンチ電圧を有し)、複合ドレイン端子304におけるドレイン電圧の追加的増加は、III-窒化物パワートランジスタ310のドレイン314とソース312との間で支えられる。結果的に、LVトランジスタ340及びLVダイオード330は一般に、上記最初の数V(例えば約10V)を超える電圧に耐える必要はない。
【0024】
前述したように、本明細書に開示するターンオン防止制御がなければ、複合半導体デバイス300は、例えばノイズスパイクによってLVデバイス320がトリガされることにより、不用意にターンオンされやすくなり得る。例えばノイズを伴うパワーマネージメント(電力管理)システムのようなノイズを伴うシステム用に設計された実現では、LVデバイス320の閾値電圧(Vth)は、システムノイズによる偶発的なターンオンがほとんど回避されるように設定することができる。本発明の種々の実現によれば、例えばLVトランジスタ340のようなLVシリコンデバイスは、約1.8VのVthを有する。しかし、ノイズを伴うシステム環境では、LVトランジスタ340のVthを、例えば約3.0V〜4.0V以上に設定して耐ノイズ性にして、システムノイズの存在により、ノイズ電流が、III-窒化物パワートランジスタ310のソース312とドレイン314との間に形成されるチャネルを通って流れることを防止することによって、複合半導体デバイス200にターンオン制御を行わせることが有利であり得る。さらに、一部の用途では、LVトランジスタ340のVthを、例えば約7Vまで高く設定することが望ましいことがある。
【0025】
なお、この説明はLVトランジスタ340のVthに焦点を当てているが、この特定の実現は限定的なものとして解釈すべきでない。例えば、図3に示す実現は、図2にLVダイオード220によって示すように、デバイス320がLVダイオードの形をとるように適宜に適応させることができることは、当業者の認める所である。こうした代案の実現では、LVダイオード220は、耐ノイズ性のVth(即ち、より高い閾値電圧)を有して、ノイズを伴うシステム内で、ノイズ電流が、III-窒化物パワートランジスタ210のソース212とドレイン214との間に形成されるチャネルを通って流れることを防止することによって、複合半導体デバイス200にターンオン防止制御を行わせるように構成することができる。
【0026】
図3に示す実現に戻り、今度は図4も参照し、図4は、複合半導体デバイス内の使用に適し、耐ノイズ性の閾値電圧を有してターンオン防止制御を行うLVトランジスタ440の断面図を示す。図4に示すように、LVトランジスタ440は、基板460内に形成されたウェル462内に配置され、ソース442、ドレイン444、及びゲート450を含む。図4にさらに示すように、LVトランジスタ440は、厚さ454を有するゲート絶縁体452、スペーサ456a及び456b、及びボディ打込み領域(インプラント)449を含むチャネル領域446も含む。ソース442、ドレイン444、及びゲート450を含むLVトランジスタ440は、図3の、ソース342、ドレイン344、及びゲート350を含むLVトランジスタ340に相当する。
【0027】
図4に示す実現によれば、LVトランジスタ440はFETとして表現されている。こうしたものとして実現する場合、LVトランジスタ440は、n−チャネルデバイス(NFET)またはp−チャネルデバイス(PFET)として製造することができる。この実現の説明の目的で、LVデバイス440はNFETとして記載しているが、この例の特徴化は限定として解釈すべきでない。
【0028】
LVトランジスタ440をNFETとして実現した場合は、ウェル462は、基板460内に形成されたP型ウェルとすることができ、基板460は、例えばシリコン基板上に形成されたエピタキシャル領域を含むことができる(図4では、エピタキシャル領域は、そのものとして区別していない)。さらに、こうした実現では、ソース442及びドレイン444は、強度にドーピングしたN+領域とすることができるのに対し、ボディ領域446は、P型ボディ打込み領域449、例えばホウ素(ボロン)打込み領域を含むことができる。ゲート450は、適切なゲート材料、あるいは例えばドーピングしたポリシリコンで形成することができるのに対し、ゲート絶縁体452は、酸化シリコン(SiO2)のようなゲート酸化物、あるいは種々の実現では代わりに低誘電率(ローk)の誘電体で形成して、以下でさらに説明する、より高い閾値電圧のデバイスを達成することができる。スペーサ456a及び456bは、例えばSi3N4スペーサとすることができ、そして、現在技術において既知の、あらゆる適切な技術を用いて形成することができる。
【0029】
以上で説明したように、耐ノイズ性のVth(即ち、より高い閾値電圧)を有するLVトランジスタ440を形成して、LVトランジスタ440を含む複合半導体デバイスにターンオン防止制御を行わせて、ノイズ電流が、複合半導体デバイスのIII-窒化物パワートランジスタのチャネルを通って流れることを防止することが有利であり得る。こうした耐ノイズ性のVthは、例えば、ゲート絶縁体の厚さ454を、実質的に増加させるか実際に増加させるかのいずれかによって達成することができる。ゲート絶縁体の厚さ454の実際の増加は、LVトランジスタ440を、ゲート絶縁体の厚さ454の厚さが増加するように製造することによって達成することができる。その代わりに、ゲート絶縁体の厚さ454の実質的な増加は、LVトランジスタ440を、低誘電率(ローk)のゲート絶縁体を含むように製造することによって達成することができ、このことは例えば、これらに限定されないが、多孔質シリカ、フッ素化アモルファスカーボン(非晶質炭素)、芳香族炭化水素、炭素ドーピングした酸化物、パリレン、ポリアリールエーテル、シルセスキオキサン、フッ素化二酸化シリコン、及びダイヤモンド状炭素を用いて行うことができる。
【0030】
ゲート絶縁体の厚さ454を増加させる代わりに、あるいはこれに加えて、LVトランジスタ440を、ノイズ耐性を増強するのに適したボディ打込み濃度及びプロファイルを有するように製造することによって、耐ノイズ性のVthを生成するか、閾値電圧をさらに増加させることができる。例えば、説明した好適なNFETの実現では、ボディ打込み領域449を生成するために用いるホウ素(ボロン)打込みのエネルギー及びドーズ量を最適化して、Vthを増加させることができる。
【0031】
複合半導体デバイスの半導体パッケージの寄生パラメータ、例えば半導体パッケージのインダクタンスを最小化することも有利であり得る。図3の複合半導体デバイス300を再び参照すれば、例えば、1つの実現では、米国特許出願公開第12/445117号明細書(特許文献1)、発明の名称”Monolithic Vertically Integrated Composite Group III-V and Group IV Semiconductor Device and Method for Fabricating Same”、2009年5月28日出願、2011年3月29日に米国特許第7915645号として特許付与、並びに米国特許公開出願第12/653240号明細書(特許文献2)、発明の名称”Highly Conductive Source/Drain Contacts in III-Nitride Transistors”、2009年12月10日出願、米国特許出願公開第12/928103号明細書(特許文献3)、発明の名称”Monolithic Integration of Silicon and Group III-V Devices”、2010年12月3日出願、及び米国特許出願公開第13/020243号明細書(特許文献4)、発明の名称”Efficient High Voltage Switching Circuits and Monolithic Integration of Same”、2011年2月3日出願に開示されているように、III-窒化物パワートランジスタ310とLVデバイス320とをモノリシック集積することができ、これらの特許文献の各々は、その全文を参考文献として本明細書に含める。
【0032】
従って、耐ノイズ性の閾値電圧を有するLVデバイスを利用することによって、本願は、ノイズ電流が、III-窒化物パワートランジスタのチャネルを通って流れることを防止することによって、LVデバイスとIII-窒化物パワートランジスタとのカスコード結合で形成された複合半導体デバイスに、ターンオン防止制御を行わせる解決法を開示する。その結果、LVIV族デバイスを有利にノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタとカスコード接続して、ノイズを伴うシステム環境内で高い耐久性及び信頼性を見せる頑丈なノーマリオフHV複合デバイスを形成することができる。
【0033】
以上の説明より、本願に記載した概念を、これらの概念の範囲を逸脱することなしに、種々の技術を用いて実現することができることは明らかである。さらに、これらの概念は特定の実現を具体的に参照して説明しているが、これらの概念の範囲を逸脱することなしに、その形態及び細部に変更を加えることができることは、当業者の認める所である。こうしたものとして、説明した実現は、あらゆる点で例示的であり限定的ではないと考えるべきである。また、本願は、本明細書に記載した特定の実現に限定されず、本開示の範囲を逸脱することなしに、多数の再構成、変更及び代替が可能であることも明らかである。
【符号の説明】
【0034】
100 複合半導体デバイス
102 複合ソース端子
104 複合ドレイン端子
106 複合ゲート端子
110 III-窒化物パワートランジスタ
120 LVデバイス
130 LVダイオード
140 LVトランジスタ
200 複合半導体デバイス
203 複合アノード端子
205 複合カソード端子
210 III-窒化物パワートランジスタ
212 ソース
214 ドレイン
216 ゲート
220 LVデバイス
223 アノード
225 カソード
300 複合半導体デバイス
302 複合ソース端子
304 複合ドレイン端子
306 複合ゲート端子
310 III-窒化物パワートランジスタ
312 ソース
314 ドレイン
316 ゲート
320 LVデバイス
330 LVダイオード
340 LVトランジスタ
342 ソース
344 ドレイン
350 ゲート
440 LVトランジスタ
442 ソース
444 ドレイン
446 ボディ領域
449 ボディ打込み領域
450 ゲート
452 ゲート絶縁体
454 厚さ
456a、456b スペーサ
460 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノイズを伴うシステム内で使用されるノーマリオフ複合半導体デバイスであって、ターンオン防止制御を含むノーマリオフ複合半導体デバイスにおいて、
ノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタと;
前記ノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタとカスコード接続された低電圧(LV)デバイスとを具え、
前記LVデバイスは、耐ノイズ性の閾値電圧を有して、前記ノイズを伴うシステム内で、ノイズ電流が、前記ノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタのチャネルを通って流れることを防止することによって、前記ノーマリオフ複合半導体デバイスにターンオン防止制御を行わせることを特徴とするノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項2】
前記ノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタが、III-窒化物電界効果トランジスタ(III-N FET)で構成されることを特徴とする請求項1に記載のノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項3】
前記ノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタが、III-窒化物高電子移動度トランジスタ(III-N HEMT)で構成されることを特徴とする請求項1に記載のノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項4】
前記LVデバイスが、LVIV族半導体デバイスで構成されることを特徴とする請求項1に記載のノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項5】
前記LVデバイスが、LV電界効果トランジスタ(LV FET)で構成されることを特徴とする請求項1に記載のノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項6】
前記LVトランジスタが、LV金属酸化膜半導体FET(LV MOSFET)及びLV金属−絶縁体−半導体FET(LV MISFET)の一方であることを特徴とする請求項1に記載のノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項7】
前記LVデバイスがLVダイオードであることを特徴とする請求項1に記載のノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項8】
前記LVデバイスが、1.8Vより大きい閾値電圧を有することを特徴とする請求項1に記載のノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項9】
前記ノーマリオンIII-窒化物パワートランジスタと前記LVデバイスとが、モノリシック集積されていることを特徴とする請求項1に記載のノーマリオフ複合半導体デバイス。
【請求項10】
ノイズを伴うシステム内で使用され、ターンオン防止制御を含む複合半導体デバイスであって、
III-窒化物パワートランジスタと;
低電圧(LV)トランジスタとを具え、
前記LVトランジスタのドレインは、前記III-窒化物パワートランジスタのソースに結合され、前記LVトランジスタのソースは、前記複合半導体デバイスの複合ソース端子を提供し、前記LVトランジスタのゲートは、前記複合半導体デバイスの複合ゲート端子を提供し、前記III-窒化物パワートランジスタのドレインは、前記複合半導体デバイスの複合ドレイン端子を提供し、前記III-窒化物パワートランジスタのゲートは、前記LVトランジスタのソースに結合され、
前記LVトランジスタは、耐ノイズ性の閾値電圧を有して、前記ノイズを伴うシステム内で、ノイズ電流が、前記III-窒化物パワートランジスタのチャネルを通って流れることを防止することによって、前記複合半導体デバイスにターンオン防止制御を行わせることを特徴とする複合半導体デバイス。
【請求項11】
前記III-窒化物パワートランジスタが、III-窒化物電界効果トランジスタ(III-N FET)で構成されることを特徴とする請求項10に記載の複合半導体デバイス。
【請求項12】
前記III-窒化物パワートランジスタが、III-窒化物高電子移動度トランジスタ(III-N HEMT)で構成されることを特徴とする請求項10に記載の複合半導体デバイス。
【請求項13】
前記LVトランジスタが、LVIV族トランジスタで構成されることを特徴とする請求項10に記載の複合半導体デバイス。
【請求項14】
前記LVトランジスタが、LVシリコントランジスタで構成されることを特徴とする請求項10に記載の複合半導体デバイス。
【請求項15】
前記LVトランジスタが、LV金属酸化膜半導体FET(LV MOSFET)及びLV金属−絶縁体−半導体FET(LV MISFET)の一方であることを特徴とする請求項10に記載の複合半導体デバイス。
【請求項16】
前記III-窒化物パワートランジスタと前記LVトランジスタとが、モノリシック集積されていることを特徴とする請求項10に記載の複合半導体デバイス。
【請求項17】
前記LVトランジスタが、1.8Vより大きい閾値電圧を有することを特徴とする請求項10に記載の複合半導体デバイス。
【請求項18】
ノイズを伴うシステム内で使用され、ターンオン防止制御を含む複合半導体デバイスであって、
III-窒化物パワートランジスタと;
LVダイオードとを具え、
前記LVダイオードのカソードは、前記III-窒化物パワートランジスタのソースに結合され、前記LVダイオードのアノードは、前記複合半導体デバイスの複合アノード端子を提供し、前記III-窒化物パワートランジスタのドレインは、前記複合半導体デバイスの複合カソード端子を提供し、前記III-窒化物パワートランジスタのゲートは、前記LVダイオードのアノードに結合され、
前記LVダイオードは、耐ノイズ性の閾値電圧を有して、前記ノイズを伴うシステム内で、ノイズ電流が、前記III-窒化物パワートランジスタのチャネルを通って流れることを防止することによって、前記複合半導体デバイスにターンオン防止制御を行わせることを特徴とする複合半導体デバイス。
【請求項19】
前記III-窒化物パワートランジスタが、III-窒化物電界効果トランジスタ(III-N FET)で構成されることを特徴とする請求項18に記載の複合半導体デバイス。
【請求項20】
前記III-窒化物パワートランジスタが、III-窒化物高電子移動度トランジスタ(III-N HEMT)で構成されることを特徴とする請求項18に記載の複合半導体デバイス。
【請求項21】
前記LVダイオードが、LVIV族ダイオードで構成されることを特徴とする請求項18に記載の複合半導体デバイス。
【請求項22】
前記III-窒化物パワートランジスタと前記LVダイオードとが、モノリシック集積されていることを特徴とする請求項18に記載の複合半導体デバイス。
【請求項23】
前記LVダイオードが、1.8Vより大きい閾値電圧を有することを特徴とする請求項18に記載の複合半導体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−199548(P2012−199548A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−59463(P2012−59463)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【出願人】(597161115)インターナショナル レクティフィアー コーポレイション (71)
【Fターム(参考)】