説明

ディスク状物体のウェット処理用装置と方法

ディスク状物体のウェット処理用装置が開示されており、該装置は該ディスク状物体を保持、回転するスピンチャックと、該ディスク状物体の第1面の第1周辺領域の方へ向けられた処理液を分配する内側エッジノズルと、を具備しており、該第1面は該スピンチャックに面しており、該第1周辺領域は1cmより大きく、該ディスク状物体の半径(ra)より小さい内側半径(ri)を有する該第1面の領域として規定され、該内側エッジノズルは、該スピンチャック上に置かれた時の該ディスク状物体と該スピンチャックとの間に静止した仕方で位置付けられ、該内側エッジノズルは、該ディスク状物体の第1面に対し処理液を供給するために、静止した仕方で配置され、該スピンチャックを中央で貫通する中央パイプを通して供給を行っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク状物体を保持、回転させるスピンチャックを有する、1つのディスク状物体のウェット処理用装置に関する。用語、ウェット処理は基本的に、材料をクリーン化、エッチング、処理するために、該ディスク状物体をウェット化することを意味する。
【0002】
もし下記で、用語、ウエーハが使われる場合、その様なディスク状物体を意味する。
【0003】
この様なディスク状物体は半導体ウエーハ、又はコンパクトディスクのみならず、フラットパネルディスプレー又はレティクルの様な多角形物体であってもよい。
【背景技術】
【0004】
特許文献1はディスク状物体の周辺領域をエッチングする装置を開示している。液体は、該ディスク状物体のチャックと面しない面に供給され、該ディスク状物体とリングの間のギャップ内に保持される。
【0005】
特定の応用には、該周辺領域を適当に処理するために、例えば該周辺領域から特定層を除去するために、機械的力が有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,435,200号明細書
【特許文献2】米国特許第6,536,454号明細書
【特許文献3】米国特許第4,903,717号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明は、目的の達成を1つのディスク状物体のウェット処理用装置を提供することに依って目的を達成するものであり、該処理用装置は、該ディスク状物体を保持、回転するためのスピンチャックと、該ディスク状物体の第1面の第1周辺領域に向かって向けられた処理液を分配する内側エッジノズルと、を具備しており、該第1面はスピンチャックに面しており、該第1周辺領域は1cmより大きく、該ディスク状物体の半径(ra)より小さい内側半径(ri)を有する該第1面の領域として規定され、該内側エッジノズルは、スピンチャック上に置かれた時の該ディスク状物体と該スピンチャックとの間に静止した仕方で位置付けられ、該内側エッジノズルは、該ディスク状物体の第1面に対する処理液の供給用に、静止した仕方で配置されて該スピンチャックの中央を通して貫通する中央パイプを通して供給される。
【0008】
適用可能なスピンチャックの1例は特許文献2に開示される。もし該スピンチャックが上方へ面しており、かくして該ディスク状物体が該スピンチャックの頂部上に置かれるなら、該内側エッジノズルにより処理される該ディスク状物体の面は該ディスク状物体の底面となる。該中央パイプは同時に該内側エッジノズルを支える。該スピンチャックを軸方向に通過する該中央パイプは半径方向パイプを通して該内側エッジノズルと接続されてもよい。もし該半径方向パイプが同時に該内側エッジノズルの支持体として役立つなら、該ノズルも該半径方向パイプ自身も、該ディスク状物体(該スピンチャック上に置かれた時)か又は該ディスク状物体に面する該スピンチャックの面か何れかに触れないよう、該半径方向パイプは充分堅くなければならない。
【0009】
本発明の利点は該ディスク状物体の該周辺領域が該ディスク状物体の1つの側に接することなく両側上で処理され得て、液体流れが邪魔されないことである。
【0010】
好ましくは、該スピンチャックは該ディスク状物体をそのエッジで把持するため該スピンチャックから突き出る少なくとも2つの把持要素を有するのがよい。この様な把持要素は該スピンチャックに固定されてもよく、それは該把持要素が該スピンチャックの回転軸線に対し半径方向に移動可能でないことを意味する。しかしながら、該把持要素は該スピンチャックの回転軸線に対し半径方向に移動可能であってもよく、それは該ディスク状物体がより確実に保持される利点をもたらす。もし該把持要素がピン型であるなら、好ましくは3本のピンが使われるのがよい。
【0011】
該装置は該ディスク状物体の、該スピンチャックに面しない第2面に向けられた外側ノズルを更に有する。この場合、該ディスク状物体は両側上、例えば1つの側はその周辺領域上のみ、もう1つの側は該ディスク状物体全部上、を同時に処理されてもよい。該ノズルは固定されるか、又は移動可能に設置されてもよい。
【0012】
もし前記外側ノズルが移動可能に設置され、それが該ディスク状物体を横切り移動可能なら、該チャックに面しない該ディスク状物体の面の各領域に該外側ノズルから分配される液体が直接到達出来る。
【0013】
該外側ノズルは処理液を分配する外側エッジノズルであってもよい。該ノズルはその時該ディスク状物体の該第2面の第2周辺領域に向かうよう向けられ、該第2周辺領域は、1cmより大きく、該ディスク状物体の半径より小さい内側半径を有する第2面の領域として規定される。従って、該ディスク状物体の両周辺領域は、それぞれの面の内側領域の同時処理で同時に、又は同時処理でなく交互に処理されてもよい。
【0014】
有利なことに、該内側エッジノズルの軸線と該第1面は5°から85°の範囲の角度αを挟む。この様な鋭角αを提供することは跳ね返しを避ける利点をもたらす。しかしながら、スピン速度、容積流れ、流速、液体パラメーター(例えば、粘性、表面エネルギー)、所要機械的衝撃の様なプロセスパラメーターに関してその角度αを最適化することが必要であることは理解されるであろう。
【0015】
1実施例では、該内側エッジノズルの軸線と該ディスク状物体のエッジは5°から90°、好ましくは10°から80°の範囲内の角度βを挟むのがよい。これは所要のプロセス結果を更に最適化するのに役立つ。角度βは、両者(軸線とエッジ)が該ディスク状物体の面の方へ垂直に投影された時、該内側エッジノズルの軸線と該ディスク状物体のエッジにより挟まれた角度として規定する。
【0016】
該周辺領域に印加される機械的力を高めるために、該装置は該第1周辺領域に向けられる液体流れを激しく攪拌する攪拌手段を有し、該攪拌手段は液体流れ誘導されたレーザービーム、メガソニック変換器、ガスジェット及び2流体ジェットのグループから選択された要素の少なくとも1つを有する。
【0017】
該装置の代わりの実施例は、2つ(又はもっと多くの)の内側エッジノズル及び/又は該ディスク状物体の該第1面にガスを供給するガスパージ用デバイス及び/又は該ディスク状物体の該第1面の該周辺領域内にある内側領域の方へ液体を供給する内側液体ノズルを有する(例えば、2つ以上の内側液体ノズル)。
【0018】
2つの内側エッジノズルは該内側周辺領域を充分ウエット化するのを助ける。しかしながら、例えば、もし該周辺領域から2つの異なる種類の材料を除去するために2つの異な
る液体が必要なら、これらの2つのノズルを通して、異なる液体が交互に及び/又は同時に供給されてもよい。
【0019】
該第1面へガスを供給するガスパージ用デバイスは該内側エッジノズルからの跳ね返しによる該第1面の該内側領域の汚損を防止することを助ける。該内側液体ノズルは該第1面の該内側領域を不活性液体{例えば、脱イオン水(DI water)、2プロパノール}を用いた跳ね返しからの保護及び/又は該第1面(該周辺領域を含んだ)のクリーン化と濯ぎのため使われてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のウェット処理装置の詳細を斜視図で示す。
【図2】本発明のウエット処理装置の詳細を図1に示すII−II方向の側面図で示す。
【図3】詳細部IIIの詳細図を示す。
【図4】本発明のウェット処理装置の詳細を図1に示すII−II方向の断面側面図で示す。
【図5】本発明の装置の代わりの実施例を平面図で示す。
【実施例1】
【0021】
本発明を実施する最良モード
図1,図2,図3及び図4は本発明のウェット処理装置のコア部の詳細の種々の図面を示す。該装置は中空シャフトモーター40(図4に略図で示す)のローターに設置されたスピンチャック10と、該スピンチャックの中央孔を通って貫通する静止ノズルヘッド20と、を有する。該中空シャフトモーター40のステーターは設置プレート42に設置される(図4に略図で示す)。
【0022】
ノズルヘッド20及び設置プレート42は同じ静止フレーム44に設置される(図4に略図で示す)。
【0023】
スピンされ離れた液体を集めるために、収集室(環状のダクト−示されてない)が該スピンチャックの周りに同心で配置される。種々の垂直に配置された環状ダクト内へ液体をスピンするために、該静止フレーム及び該収集室は相互に対し軸方向にシフトされてもよい(例えば、特許文献3で開示される様に)。
【0024】
該スピンチャック10は偏心して設置された把持用ピンを有する6本の円柱状に造形された保持要素14を備える。該把持用ピンは歯車16により該保持要素の円柱軸線の周りに回転される。該中空シャフトモーター40で該ベースボデイを僅かに回転する間に、垂直に移動可能なロッド18(該ベースボデイ内の示されてないスリットを通って貫通する)によって該歯車を保持することにより、該歯車16は該スピンチャックのベースボデイに対し回転される。それにより該円柱状保持要素14は回転され、把持用ピン13はオープン位置へ廻る。ウエーハが該把持用ピン内で該保持要素14の頂部レスト部15上に置かれた後、螺旋ばね(示されてない)により駆動され、該ベースボデイは戻るよう廻され、該歯車は閉じ位置内へ戻る。それにより該把持用ピンはウエーハのエッジに接し、該ウエーハを確実に把持する。
【0025】
回転しない(静止)ノズルヘッド20は該スピンチャックの中央孔を通るよう貫通し、0.2mmのスピンチャック−ノズルヘッド間ギャップを残す。該ギャップは処理時間中
ガス(例えば、窒素)でパージされる。5本のパイプ22,24,26,28,29が該ノズルヘッドを貫通する。パイプ22,24,26は各々異なる液体源に接続され、該スピンチャックの頂面のみならず該ノズルヘッドの上に5mmだけ突出する。パイプ22,24,26の開口部(ノズル)はウエーハの下方へ面する面の方へ向けられる。パイプ28は中央に配置され、ガス源に接続される。窒素又は超クリーン空気の様なガスがパイプ28を通り、該ウエーハの下方へ面する面W1の方へ導かれる。
【0026】
パイプ29は該ノズルヘッド20を通過し、該ノズルヘッドの上でそれは半径方向パイプ30及びノズルアームとして半径方向に外方へ、ウエーハのエッジの方へ、曲がる。該スピンチャックの回転軸線まで約50mmの距離で、パイプ30は2つのノズル32と36で終わる2本の枝に分かれる。ノズル32は2つの開口部33と34を有するが、示された実施例のノズル36は1つの開口部を有する。従って、示された実施例は3つの内側エッジノズル(33,34,及び36)を有する。半径方向パイプ30は、該内側エッジノズルを担うのに充分な程堅いので、該ノズルは該チャックにもウエーハにも接触しない。
【0027】
該ノズルは、該液体が該ウエーハの下方に面する面W1の周辺領域に供給される角度αを最適化するために容易に変更可能である。示された実施例では該角度αは約30°である。
【0028】
該ウエーハの上方へ面する面W2へ液体及び/又はガスを供給するために、もう1つのノズル組立体50(図2で略図的に示される)が該スピンチャック上に提供される。
【0029】
下記では、該ウエーハを処理する過程が説明される。ウエーハはスピンチャック10上に置かれ、頂部レスト15上で休止しそして把持用ピン13により確実に保持される。該スピンチャックは300rpmのスピン速度で回転される。エッチング液は1500ml/分の容積流れでノズル50を通して第2面の中央に供給される。次いでノズル50は該ウエーハを横切るよう半径方向に移動する。同時に、エッチング液の第2流れが内側エッジノズル33,34,36を通して供給される。各内側エッジノズルは60秒の時間の間50ml/分の容積流れで液体を供給する。オプションでその後下面W1全体は500rpmのスピン速度で30sの間ノズル22を通して供給されるクリーニング用液体でクリーン化される。代わりに、第2処理液体(クリーニング又はエッチング用)がノズル26を通して供給されてもよい。
【0030】
該エッチング過程の後、濯ぎ用液体(例えば、脱イオン水)が500rpmのスピン速度で20sの間、上側ノズル(ノズル50と同様な)及び下側ノズル24を通して該ウエーハの両側W1及びW2に供給される。その後、該スピン速度が1500rpmである間に、該濯ぎ用液体を除くためにノズル28を通して10l/分の容積流れで窒素が供給される。
【0031】
全過程中窒素は0.1l/分の容積流れで供給される。
【0032】
本発明を実施するモード(複数を含む)
図5は本発明のもう1つの実施例を示すが、ノズルアーム35は1本のみの内側エッジノズル36を担う。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク状物体を保持して回転させるスピンチャックと、該ディスク状物体の第1面の第1周辺領域の方へ向けられた処理液体を分配する内側エッジノズルと、を具備しており、該第1面は該スピンチャックに面しており、該第1周辺領域は1cmより大きく該ディスク状物体の半径(ra)より小さい内側半径(ri)を有する第1面の領域であるとして規定されており、該内側エッジノズルは、該スピンチャック上に置かれた時の該ディスク状物体と該スピンチャックとの間に静止した仕方で位置付けられ、該内側エッジノズルは、該ディスク状物体の第1面に対し処理液を供給するために、静止した仕方で配置されて該スピンチャックの中央を貫通する中央パイプを通して供給を行っている1つのディスク状物体のウェット処理用装置。
【請求項2】
該スピンチャックが該スピンチャックのエッジで該ディスク状物体を把持するために該スピンチャックから突出する少なくとも2つの把持要素を備える請求項1記載の装置。
【請求項3】
該中央パイプ及び該内側エッジノズルが半径方向パイプにより接続される請求項1記載の装置。
【請求項4】
該半径方向パイプが同時に該内側エッジノズルの支持体として役立つ請求項3記載の装置。
【請求項5】
該スピンチャックに面しない該ディスク状物体の第2面に向けられた外側ノズルを更に具備する請求項1記載の装置。
【請求項6】
該外側ノズルが該ディスク状物体を横切り移動可能に設置される請求項5記載の装置。
【請求項7】
該外側ノズルは該ディスク状物体の該第2面の第2周辺領域の方へ向けられた処理液を分配する外側エッジノズルであり、該第2周辺領域が1cmより大きく該ディスク状物体の半径より小さい内側半径を有する該第2面の領域であるとして規定される請求項5記載の装置。
【請求項8】
該内側エッジノズルの軸線と該第1面が5°から85°の範囲内の角度αを挟む請求項1記載の装置。
【請求項9】
該内側エッジノズルの軸線と該ディスク状物体の該エッジが5°と85°の範囲内の角度βを挟む請求項1記載の装置。
【請求項10】
該第1周辺領域へ向けられる液体流れを激しく攪拌する攪拌手段を更に具備しており、該攪拌手段は液体流れ誘導されたレーザービーム、メガソニック変換器、ガスジェット及び2流体ジェットのグループから選択された要素の少なくとも1つを備える請求項1記載の装置。
【請求項11】
2つの内側エッジノズルを具備する請求項1記載の装置。
【請求項12】
該ディスク状物体の該第1面にガスを供給するためにガスパージ用デバイスを具備する請求項1記載の装置。
【請求項13】
該ディスク状物体の該第1面の、該周辺領域の中にある該内側領域の方へ、液体を供給する内側液体ノズルを具備している請求項1記載の装置。
【請求項14】
2つの内側液体ノズルを具備する請求項12記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−508958(P2011−508958A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516449(P2010−516449)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058568
【国際公開番号】WO2009/010394
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(507161226)ラム・リサーチ・アクチエンゲゼルシヤフト (18)
【氏名又は名称原語表記】Lam Research AG
【Fターム(参考)】