説明

ハイブリッド車両の定速走行制御装置

【課題】 定速走行制御中、ドライバーや乗員に対し、選択した走行モードに応じたエンジン排気音質により選択モードを体感することができるハイブリッド車両の定速走行制御装置を提供すること。
【解決手段】 駆動源にエンジン301と駆動用モータ303を備えると共に、ドライバーのスイッチ操作に基づき定速走行制御を行う定速走行制御手段を備えたハイブリッド車両の定速走行制御装置において、エンジン排気音質の異なる走行モードをドライバーが選択する走行モード選択手段を設け、前記定速走行制御手段は、定速走行制御中、ドライバーが選択する走行モードが静かなエンジン排気音を得たいモードであるほど、総要求トルクに対するエンジントルク配分比率を小さくしモータトルク配分の比率を大きくする手段とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源にエンジンとモータを備えると共に、ドライバーのスイッチ操作に基づき定速走行制御を行う定速走行制御手段を備えたハイブリッド車両の定速走行制御装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来の定速走行制御装置(ASCD:Auto Speed Control Device)は、自車の車速が下限車速以上での走行中であって、かつ、ドライバーによりASCDスイッチの操作を行うと、原則的にスイッチ操作時の車速を維持するが、この定速走行制御中に前方車両等の障害物が検知された場合、自車と障害物との間隔や相対車速等を基に、車間一定制御を適用することで、安全性を確保するようにしている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平6−119599号公報
【特許文献2】特許第3229215号公報
【特許文献3】特開平7−200999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の定速走行制御装置をエンジンとモータを搭載したハイブリッド車両に適用した場合、定速走行制御中に総トルク要求が変化し、これに対応してエンジン音が変化した場合、ドライバーに違和感を与えることがある、という問題があった。
【0004】
具体的には、エンジン排気音質が静かなサイレント走行モードと、高いエンジン排気音を許容するスポーティ走行モードとのいずれかを選択できるハイブリッド車両において、定速走行制御中であって、サイレント走行モードが選択されているとき、総トルク要求の高まりに応じてエンジン音が急に高くなった場合、「サイレント」の体感を要求しているドライバーや乗員に違和感を与えることになる。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、定速走行制御中、ドライバーや乗員に対し、選択した走行モードに応じたエンジン排気音質により選択モードを体感することができるハイブリッド車両の定速走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、駆動源にエンジンとモータを備えると共に、ドライバーのスイッチ操作に基づき定速走行制御を行う定速走行制御手段を備えたハイブリッド車両の定速走行制御装置において、
エンジン排気音質の異なる走行モードをドライバーが選択する走行モード選択手段を設け、
前記定速走行制御手段は、定速走行制御中、ドライバーが選択する走行モードが静かなエンジン排気音を得たいモードであるほど、総要求トルクに対するエンジントルク配分比率を小さくしモータトルク配分の比率を大きくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明のハイブリッド車両の定速走行制御装置にあっては、定速走行制御手段において、定速走行制御中、ドライバーが選択する走行モードが静かなエンジン排気音を得たいモードであるほど、総要求トルクに対するエンジントルク配分比率が小さくされモータトルク配分の比率が大きくされる。すなわち、例えば、静かなエンジン排気音質を得たい走行モードの選択時には、エンジン音を緩変化させ、逆に、高いエンジン排気音を許容する走行モードの選択時には、エンジン音を急変化させることで、車両としての総トルク要求は同じであっても、ドライバーや乗員はエンジン排気音質により選択モードを体感する。この結果、定速走行制御中、ドライバーや乗員に対し、選択した走行モードに応じたエンジン排気音質により選択モードを体感することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のハイブリッド車両の定速走行制御装置を実施するための最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
まず、構成を説明する。
図1は左右前輪をエンジンとモータとで駆動するハイブリッド車両に適用された実施例1の定速走行制御装置を示す全体システム図である。
実施例1の定速走行制御装置は、図1に示すように、CPU101と、GPS201と、車速センサ202と、ブレーキセンサ203と、シフトセンサ204と、ASCDスイッチ205と、ギャップセンサ206と、モードスイッチ207(走行モード選択手段)と、エンジン301と、インバータ302と、駆動用モータ303と、電池304と、トランスミッション305と、を備えている。
【0010】
前記CPU101は、ASCD制御時、原則的に、車速センサ202からの車速検出値が下限車速以上であり、且つ、ASCDスイッチ205の入力値がONである場合、ASCDスイッチON時の車速を維持するように、シフトセンサ204の検出値を参照し、エンジン301及び駆動用モータ303のそれぞれへ出力トルク指令を送信し、トランスミッション305を介して駆動輪へとトルク出力させている。
その際、CPU101は、エンジン301、インバータ302、駆動用モータ303、電池304、トランスミッション305の状態をモニタし、温度上昇などの異常発生時や、電池SOC低下時には、当該ASCD制御ユニットの使用を制限するなども行っている。
なお、下記の3つの条件の何れかが成立した場合、
・車速センサ202からの検出値が一定値以下となった場合
・ブレーキセンサ203がON(ブレーキON)となった場合
・ASCDスイッチ205がOFF(ASCD機能OFF)となった場合
ASCD機能はキャンセルされる。
【0011】
前記GPS201は、自車周辺の地形情報を収集し、その情報をCPU101へ送信する。前記車速センサ202は、自車速度を検出し、その情報をCPU101へ送信する。
前記ブレーキセンサ203は、ドライバーが制動指令としてブレーキペダルを踏んだことを検出し、その情報をCPU101へ送信する。
前記シフトセンサ204は、ドライバーが設定したシフトポジション情報を検出し、その情報をCPU101へ送信する。
前記ASCDスイッチ205は、ドライバーがASCD機能を適用/キャンセル指令する際に使用するスイッチであり、スイッチ信号をCPU101へ送信する。
前記ギャップセンサ206は、前方車両などの被移動体を含む障害物と自車との相対距離を検出し、その情報をCPU101へ送信する。
前記モードスイッチ207は、ドライバーがエンジン排気音質を任意に選択できるスイッチであり、ここでは、「サイレント走行モード」若しくは「スポーティ走行モード」のいずれかを選択できるものとする。
【0012】
前記エンジン301は、CPU101からのトルク指令に応じてトランスミッション305を介して駆動輪(左右前輪)へとトルクを出力する。
【0013】
前記インバータ302は、CPU101からのトルク指令に応じて駆動用モータ303へとトルク出力させるよう、電池304から電気エネルギー(直流)を電気エネルギー(交流)へと変換し、供給する。駆動用モータ303が回生制動する際は、回生により発生する電気エネルギー(交流)を電池304へと戻す(充電する)よう、電気エネルギー(交流)を電気エネルギー(直流)へと変換する。
【0014】
前記駆動用モータ303は、インバータ302から供給された電気エネルギー(交流)に応じてトランスミッション305を介して駆動輪へとトルクを出力する。また、回生制動時は駆動輪の回生制動エネルギーをトランスミッション305を介して受け、これを電気エネルギー(交流)へと変換し、インバータ302を介して電池304へと電気エネルギー(直流)を戻す。
【0015】
前記電池304は、インバータ302がCPU101より受信した駆動用モータ303へのトルク指令に応じ、インバータ302へと電気エネルギー(直流)を供給する。また、回生制動時はインバータ302より電気エネルギー(直流)を受ける。
【0016】
前記トランスミッション305は、エンジン301及び駆動用モータ303の発生トルクを受け、これを駆動輪へと供給する。
【0017】
次に、作用を説明する。
[定速走行制御処理]
図2は実施例1のCPU101にて実行される定速走行制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する(定速走行制御手段)。
【0018】
ステップS1では、ドライバーによりASCDスイッチ205がON操作されたか否かを判断し、Yesの場合はステップS3へ移行し、Noの場合はステップS2へ移行する。
【0019】
ステップS2では、ステップS1でのASCDスイッチ205のOFF判断に続き、アクセル操作やブレーキ操作等に応じて走行する通常制御へ移行する。
【0020】
ステップS3では、ステップS1でのASCDスイッチ205のON判断に続き、モードスイッチ207は「サイレント走行モード」を選択しているか否かを判断し、Yesの場合はステップS4へ移行し、Noの場合はステップS5へ移行する。
【0021】
ステップS4では、ステップS3での「サイレント走行モード」の選択判断に続き、総トルク要求のうち、エンジン301へのトルク配分を緩変化とし、残りの必要トルクを駆動用モータ303へ配分し、ステップS6へ移行する。これにより、排気音変化が少なく、ドライバーにスムースな加減速感を与えることができる。
【0022】
ステップS5では、ステップS3での「スポーティ走行モード」の選択判断に続き、総トルク要求のうち、エンジン301へのトルク配分を優先して急峻に変化させ、排気音によりスポーティ感を演出し、残りの必要トルクを駆動用モータ303により補填し、リターンへ移行する。
【0023】
ステップS6では、ステップS4でのエンジントルク緩変化に続き、GPS201を活用し、自車の走行ルート上で総トルク要求値が頻繁に変化するポイント、具体的には、登坂/降坂が継続するポイントが存在するか否かを判断し、Yesの場合はステップS7へ移行し、Noの場合はステップS8へ移行する。
【0024】
ステップS7では、ステップS6でのトルク変化頻度大との判断に続き、エンジン301へのトルク要求変化を更に緩慢とするようにエンジントルク変化率(=ゲイン)を制限設定し、リターンへ移行する。これにより総トルク要求値が頻繁に変化するポイントを通過するまで、エンジン301が起動/停止を繰り返すことを回避させ、ドライバーや乗員に対して、変化を感じさせないよう演出することができる。
【0025】
ステップS8では、ステップS6でのトルク変化頻度小との判断に続き、エンジン301へのトルク要求変化として規定変化率を適用し(例えば、加速時は0.06G、減速時は-0.06Gを体現できるトルク要求値の変化)、リターンへ移行する。
【0026】
[エンジントルク変化率制限の設定]
実施例1の定速走行制御では、定速走行制御中であって、ドライバーが「サイレント走行モード」を選択しているとき、総トルク要求の変化頻度の大きいポイントを走行する際、前記エンジン301へのトルク配分がより緩慢な変化となるようにエンジントルク変化率に制限を設定している(ステップS7)。
【0027】
このトルク変化頻度大ポイントである場合のエンジントルク変化率(=ゲイン)の制限は、図3に示すように、極性変化まで(=ポイント通過まで)の所要時間が短い時間であるほどゲインを小さくし、かつ、現在エンジン回転数とエンジン上下限回転数との差の絶対値が小さな値であるほどゲインを小さくするという制限を行っている。なお、エンジン上下限回転数は、登坂などのトルク増大時は上限回転数を適用し、降坂などのトルク減少時は下限回転数を適用する。
【0028】
そして、図3において、自車の運転点がゲイン大の領域にある場合は、ステップS8での規定変化率を与え、自車の運転点がゲイン小の領域にある場合は、ステップS8での規定変化率よりも小さな変化率とする。なお、図3のゲイン小の矢印方向に向かって徐々にゲインを小さくしてゆくようなエンジントルク変化率制限マップとしても良い。
【0029】
[サイレント走行モード時の定速走行制御作用]
定速走行制御中にトルク変化頻度小の走行路を「サイレント走行モード」を選択している走行時は、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS3→ステップS4→ステップS6→ステップS8へと進み、ステップS4において、総トルク要求のうち、エンジン301へのトルク配分が緩変化とされ、残りの必要トルクが駆動用モータ303へ配分される。このエンジン301へのトルク配分の緩変化に対し、ステップS8において、例えば、加速時は0.06G、減速時は-0.06Gを体現できるような規定変化率が適用される。
したがって、定速走行制御中にトルク変化頻度小の走行路を「サイレント走行モード」を選択している走行時は、エンジン301の排気音の変化が少なくなり、この静かなエンジン排気音によりドライバーや乗員に「サイレント走行モード」を体感させることができる。
【0030】
定速走行制御中であって、トルク変化頻度大の走行路を「サイレント走行モード」を選択している走行時は、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS3→ステップS4→ステップS6→ステップS7へと進み、ステップS4において、総トルク要求のうち、エンジン301へのトルク配分が緩変化とされ、残りの必要トルクが駆動用モータ303へ配分される。このエンジン301へのトルク配分の緩変化に対し、ステップS7において、例えば、自車の運転点が図3に示すゲイン小の領域にある場合には、ゲインを小さくし、エンジン301へのトルク配分を、トルク変化頻度小での走行より緩慢な変化としている。
【0031】
例えば、図4の上部分に示すように、定速走行制御中であって、「サイレント走行モード」を選択しているとき、総トルク指令値が、時刻t1まで上昇し、時刻t1から時刻t2まで急下降し、時刻t2から時刻t3までは緩上昇し、時刻t3から時刻t4までは急上昇し、時刻t4から時刻t5までは急下降し、時刻t5以降は緩上昇する。この場合、エンジン301へのトルク配分は、エンジントルク変化率が制限されることにより、時刻t1までは緩上昇し、時刻t1から時刻t3まで緩下降し、時刻t3から時刻t4までは緩上昇し、時刻t4以降はさらに緩やかに上昇するというように、エンジン301へのトルク配分は緩慢に変化する。一方、モータ303へのトルク配分は、エンジン301へのトルク配分の緩慢変化を吸収するように、総トルク指令値の変化特性に対し各上昇勾配や下降勾配がそれぞれ急峻なものとなる。
【0032】
したがって、定速走行制御中にトルク変化頻度大の走行路を「サイレント走行モード」を選択している走行時は、上記と同様に、エンジン301の排気音の変化が少なくなり、この静かなエンジン排気音によりドライバーや乗員に「サイレント走行モード」を体感させることができる。
加えて、ポイント通過までの所要時間に応じてエンジントルク変化率に制限を設定することで、所要時間中も確実にエンジン301が停止しないようにしている。
さらに、現在エンジン回転数とエンジン上下限回転数との差の絶対値が小さな値である時には、エンジン回転数制限と制限解除を繰り返すハンチングや、エンジン停止と起動を繰り返すハンチングを生じ易い。これに対し、現在エンジン回転数とエンジン上下限回転数との差の絶対値に応じてエンジントルク変化率に制限を設定することで、これらのハンチングを確実に防止するようにしている。
【0033】
[スポーティ走行モード時の定速走行制御作用]
定速走行制御中であって、「スポーティ走行モード」を選択している走行時は、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS3→ステップS5へと進み、ステップS5において、総トルク要求のうち、エンジン301へのトルク配分を優先して急峻に変化させ、残りの必要トルクを駆動用モータ303により補填している。
【0034】
例えば、図4の下部分に示すように、定速走行制御中であって、「スポーティ走行モード」を選択しているとき、総トルク指令値が、時刻t1まで上昇し、時刻t1から時刻t2まで急下降し、時刻t2から時刻t3までは緩上昇し、時刻t3から時刻t4までは急上昇し、時刻t4から時刻t5までは急下降し、時刻t5以降は緩上昇する。この場合、エンジン301へのトルク配分は、エンジントルクを急変させることにより、時刻t1までは急上昇し、時刻t1の時点で一気に下降し、時刻t1から時刻t3まで横這いで変化無く、時刻t3から時刻t4までは急上昇し、時刻t4から時刻t5で急下降し、時刻t5以降は緩上昇するというように、エンジン301へのトルク配分は急峻に変化する。一方、モータ303へのトルク配分は、エンジン301へのトルク配分の急峻変化を吸収するように、総トルク指令値の変化特性に対し各上昇勾配や下降勾配がそれぞれ緩慢なものとなる。
【0035】
したがって、定速走行制御中であって、「スポーティ走行モード」を選択している走行時は、エンジン301の大きな排気音変化によりスポーティ感が演出され、ドライバーや乗員に「スポーティ走行モード」を体感させることができる。
【0036】
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の定速走行制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0037】
(1) 駆動源にエンジン301と駆動用モータ303を備えると共に、ドライバーのスイッチ操作に基づき定速走行制御を行う定速走行制御手段を備えたハイブリッド車両の定速走行制御装置において、エンジン排気音質の異なる走行モードをドライバーが選択する走行モード選択手段を設け、前記定速走行制御手段は、定速走行制御中、ドライバーが選択する走行モードが静かなエンジン排気音を得たいモードであるほど、総要求トルクに対するエンジントルク配分比率を小さくしモータトルク配分の比率を大きくするため、定速走行制御中、ドライバーや乗員に対し、選択した走行モードに応じたエンジン排気音質により選択モードを体感することができる。
【0038】
(2) 前記走行モード選択手段は、少なくともエンジン排気音質が静かな「サイレント走行モード」を選択できるモードスイッチ207であり、前記定速走行制御手段は、定速走行制御中であって、ドライバーが「サイレント走行モード」を選択しているとき、総トルク要求が変化した場合、前記エンジン301へのトルク配分を緩変化とし、残りのトルク要求分を前記駆動用モータ303で補填するため、エンジン音の変化が緩やかとなり、ドライバーや乗員に対し「サイレント走行モード」を体感させることができる。
【0039】
(3) 前記定速走行制御手段は、定速走行制御中であって、ドライバーが「サイレント走行モード」を選択しているとき、総トルク要求の変化頻度の大きいポイントを走行する際、前記エンジン301へのトルク配分がより緩慢な変化となるようにエンジントルク変化率に制限を設定するため、総トルク要求の変化が頻発した場合でも、エンジン音が急変したりエンジンON/OFFハンチング等の発生が防止され、ドライバーや乗員に対し「サイレント走行モード」を体感させることができる。
【0040】
(4) 前記定速走行制御手段におけるトルク変化頻度大ポイントである場合のエンジントルク変化率制限は、ポイント通過までの所要時間が短い時間であるほどエンジントルク変化率を小さくし、かつ、現在エンジン回転数とエンジン上下限回転数との差の絶対値が小さな値であるほどエンジントルク変化率を小さくするため、トルク変化頻度大ポイントに入ってからトルク変化頻度大ポイントを抜け出るまでの間、エンジン停止と起動を繰り返すハンチング等を確実に防止することができる。
【0041】
(5) 前記走行モード選択手段は、少なくとも高いエンジン排気音を許容する「スポーティ走行モード」を選択できるモードスイッチ207であり、前記定速走行制御手段は、定速走行制御中であって、ドライバーがスポーティ走行モードを選択しているとき、総トルク要求が変化した場合、前記エンジン301へのトルク配分を意図的に急変化とし、残りのトルク要求分を前記駆動用モータ303で補填するため、エンジン音の変化が急峻となり、ドライバーや乗員に対し「スポーティ走行モード」を体感させることができる。
【0042】
以上、本発明のハイブリッド車両の定速走行制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0043】
実施例1では、走行モード選択手段として「サイレント走行モード」と「スポーティ走行モード」を選択する例を示したが、例えば、「通常走行モード」を加える等、3つ以上の走行モード選択する手段としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
実施例1では、前輪駆動のハイブリッド車両への適用例を示したが、駆動源にエンジンとモータを備えると共に、ドライバーのスイッチ操作に基づき定速走行制御を行う定速走行制御手段を備えたハイブリッド車両であれば、後輪駆動のハイブリッド車両や四輪駆動のハイブリッド車両等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】前輪駆動のハイブリッド車両に適用された実施例1の定速走行制御装置を示す全体システム図である。
【図2】実施例1のCPUにて実行される定速走行制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例1の定速走行制御処理にて用いられるトルク変化頻度大ポイントにおけるエンジントルク変化率制限マップの一例を示す図である。
【図4】「サイレント走行モード」を選択した時のモードスイッチ信号・総トルク指令値・エンジンへのトルク配分・モータへのトルク配分と、「スポーティ走行モード」を選択した時のモードスイッチ信号・総トルク指令値・エンジンへのトルク配分・モータへのトルク配分を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0046】
101 CPU
201 GPS
202 車速センサ
203 ブレーキセンサ
204 シフトセンサ
205 ASCDスイッチ
206 ギャップセンサ
207 モードスイッチ(走行モード選択手段)
301 エンジン
302 インバータ
303 駆動用モータ
304 電池
305 トランスミッション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源にエンジンとモータを備えると共に、ドライバーのスイッチ操作に基づき定速走行制御を行う定速走行制御手段を備えたハイブリッド車両の定速走行制御装置において、
エンジン排気音質の異なる走行モードをドライバーが選択する走行モード選択手段を設け、
前記定速走行制御手段は、定速走行制御中、ドライバーが選択する走行モードが静かなエンジン排気音を得たいモードであるほど、総要求トルクに対するエンジントルク配分比率を小さくしモータトルク配分の比率を大きくすることを特徴とするハイブリッド車両の定速走行制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたハイブリッド車両の定速走行制御装置において、
前記走行モード選択手段は、少なくともエンジン排気音質が静かなサイレント走行モードを選択できる手段であり、
前記定速走行制御手段は、定速走行制御中であって、ドライバーがサイレント走行モードを選択しているとき、総トルク要求が変化した場合、前記エンジンへのトルク配分を緩変化とし、残りのトルク要求分を前記モータで補填することを特徴とするハイブリッド車両の定速走行制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたハイブリッド車両の定速走行制御装置において、
前記定速走行制御手段は、定速走行制御中であって、ドライバーがサイレント走行モードを選択しているとき、総トルク要求の変化頻度の大きいポイントを走行する際、前記エンジンへのトルク配分がより緩慢な変化となるようにエンジントルク変化率に制限を設定することを特徴とするハイブリッド車両の定速走行制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたハイブリッド車両の定速走行制御装置において、
前記定速走行制御手段におけるトルク変化頻度大ポイントである場合のエンジントルク変化率制限は、ポイント通過までの所要時間が短い時間であるほどエンジントルク変化率を小さくし、かつ、現在エンジン回転数とエンジン上下限回転数との差の絶対値が小さな値であるほどエンジントルク変化率を小さくすることを特徴とするハイブリッド車両の定速走行制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載されたハイブリッド車両の定速走行制御装置において、
前記走行モード選択手段は、少なくとも高いエンジン排気音を許容するスポーティ走行モードを選択できる手段であり、
前記定速走行制御手段は、定速走行制御中であって、ドライバーがスポーティ走行モードを選択しているとき、総トルク要求が変化した場合、前記エンジンへのトルク配分を意図的に急変化とし、残りのトルク要求分を前記モータで補填することを特徴とするハイブリッド車両の定速走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−315630(P2006−315630A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143072(P2005−143072)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】