説明

ハイブリッド車両の駆動制御方法およびハイブリッド車両

本発明は、少なくとも2つの駆動機器(11,12)を備えたハイブリッド車両の駆動制御のための方法であって、車両の駆動が作動制御部(10)の設定に従って第1の駆動機器(11)、特に内燃機関及び/又は第2の駆動機器(12)、特に電気モーターを用いて行われ、前記第2の駆動機器(12)の駆動成分は走行区間に関連する作動制御部(10)に伝達されたデータに依存して、エネルギー蓄積器(14)の充電状態(L)を考慮して制御される形式の方法に関する。本発明によれば、地理的な走行目的地の事前設定及び/又は作動ストラテジの目的パラメータの事前設定のもとで最適な作動ストラテジが求められ、複数の代替走行ルートが利用可能な場合において、前記最適な作動ストラテジを考慮して走行ルートの選択が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念によるハイブリッド車両の駆動制御方法、および請求項8の上位概念によるハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両とは車両の作動のために様々なエネルギー源を使用する車両を意味する。このようなハイブリッド車両としては内燃機関と少なくとも1つの電気モーターを備えたものが公知である。電気モーターの電気的なエネルギーはエネルギー蓄積器、例えば1つまたは複数のバッテリー及び/又はスーパーコンデンサ(Supercaps)から供給されている。その他にもこの車両は制動エネルギーを電気的なエネルギーの形で再生し得る手段(回生手段)を有している。作動ストラテジではこれらの2つの駆動ユニットがそれぞれの最適な状態で作動し、制動エネルギーが発生した場合にはそれをできるだけ少ない損失で還元して蓄積することができるように配慮する必要がある。ハイブリッド化の目的は、一次燃料の消費を従来の内燃機関のみから駆動されている車両よりも低減させることである。
【0003】
DE10128758A1明細書からは、車両の駆動が作動制御部の設定にしたがって内燃機関および/または電気モーターにより行われ、電気モーターの駆動成分は走行区間に関連する作動制御部に伝達されたデータに依存して電気エネルギーのエネルギー蓄積器の充電状態を考慮して駆動開制御され、前記データは電気モーター駆動成分の開ループ制御の基礎とされる高度情報を含んでおり、この場合作動制御部において設定される若しくは設定可能なエネルギー蓄積器の最低充電状態、すなわち車両の必要最低限の基本機能がまだ保証される状態を下回らないように制御されるハイブリッド車両の駆動制御方法が開示されている。この作動制御はナビゲーションシステム又はその他の予測システムのデータから高度情報の供給を受けている。
【0004】
発明の利点
本発明の方法によれば、地理的な走行目的地の事前設定及び/又は作動ストラテジの目的パラメータの事前設定のもとで、最適な作動ストラテジが求められ、複数の代替走行ルートが利用可能な場合において、前記最適な作動ストラテジを考慮して走行ルートの選択が行われる。有利には作動ストラテジは走行ルートからの評価データの利用によって最適化され得る。目的パラメータとしては例えばハイブリッド車両のエネルギー蓄積器の所望の充電状態が設定されてもよい。特に高度プロファイルや代替ルートに関するさらなる情報が既にわかっていれば、走行ルート選択はハイブリッド車両の作動パラメータを考慮して行ってもよい。これらの情報を作動ストラテジの最適化のために用いることができれば、例えば走行ルートの第2の部分においてブレーキの使用を高める勾配領域が見込まれるような場合に、走行ルートの第1の部分において、エネルギー蓄積器にエネルギーを蓄える形式の駆動機器をより多く使用することができる。そして走行ルートの第1の部分においてエネルギー蓄積器が早く空になっても当該システムは次のような状態に入れ替わる。すなわち走行ルートの第2の部分において容易にかつ場合によってはより高い効率で回生されるエネルギーを蓄えることが可能になる状態である。有利には第1の駆動機器として内燃機関が設けられ、第2の駆動機器として電気モーターが設けられる。しかしながらその他の方式の駆動機器を用いることも可能である。ハイブリッド車両とは次のような車両を指す。すなわち2つの駆動源を備え、特に異なった駆動機器から駆動エネルギーが生成され、このエネルギーが再生される、つまり例えば制動作用のもとで回生され得る機能を備えた車両である。回生されたエネルギーは直ちに利用されるか及び/又は後からの使用のために蓄積される。この回生エネルギーは走行するための駆動力に及び/又はその他の負荷のために用いることができる。駆動機器の1つが電気モーターである場合には有利には、電気的な蓄積器がエネルギー蓄積器として用いられる。しかしながら別の蓄積器も使用可能である。これらの駆動機器として有利には内燃機関と電気モーターが使用され得る。しかしながら別の駆動機器も考えられる。
【0005】
本発明の有利な実施例によれば、適切な走行ルートの選択のために、ナビゲーションシステムにおける高度差及び/又は道路クラス及び/又は距離及び/又は予想走行時間に関連するデータが用いられる。走行目的地が入力されると、走行ルート最適化のために様々なデータソースがナビゲーションシステムによって利用される。データメモリ上のマップは、道路経過の他にも次のような多数のさらなる情報を含んでいる。例えば上り坂/下り坂に関する情報、入手可能な道路データ(市道、国道、高速道など)を用いたジェネレータにおける回転数分布を求めるための予想走行速度に関する情報、予想される停止頻度に関する情報(例えば市街地では日中時間帯であってもラッシュアワーなど交通量の考慮のもとでは結果が異なってくる)。さらなるデータソースは例えば交通渋滞や流れの悪い交通量に関する情報を発信する交通無線や送信ビーコン、あるいは先行車両からの情報を受ける車両通信手段などである。
【0006】
有利には、適切な走行ルートの選択のために、代替走行ルートに関する次のような更新情報、すなわちそれぞれの走行ルートの現下の交通負荷及び/又は予測される交通負荷に関する情報、及び/又は日中時刻に関する情報、及び/又はハイブリッド車両の日中時間帯に予測されるストップ&ゴー運転フェーズに関する情報が用いられる。
【0007】
さらに有利には、走行ルートの選択基準として燃料消費バランス、エネルギー蓄積器の放電状態、全走行時間などのパラメータグループのうちの少なくとも1つが用いられてもよい。
【0008】
また有利にはこの選択は流動的に行うことが可能であり、例えば1つの目的パラメータを達成することができそうもないときには、作動ストラテジを維持しつつ選択された走行ルートを変更してもよい。
【0009】
また代替的にこの選択は次のように流動的に行ってもよい。すなわち1つの目的パラメータを達成することができそうもないときに、選択された走行ルートを維持しつつ作動ストラテジが変更される。
【0010】
また本発明によれば、地理的な走行目的地の事前設定及び/又は作動ストラテジの目的パラメータの事前設定のもとで、最適な作動ストラテジを求めるための手段が設けられ、複数の代替走行ルートが利用可能な場合において、前記最適な作動ストラテジを考慮して走行ルートの選択が行われるハイブリッド車両が提供される。このハイブリッド車両は第1の駆動機器、特に内燃機関と、第2の駆動機器、特に電気モーターを有している。エネルギー(これは例えば所定の作動フェーズにおいて得られる)は、エネルギー蓄積器に蓄積可能である。このエネルギー蓄積器は例えば電気モーターの電気エネルギーを蓄えるバッテリーであってもよい。このエネルギーは制動過程の際若しくは下り坂走行の際にジェネレータによって促進され、エネルギー蓄積器を充電する。その際に駆動エネルギーは部分的に再生、すなわち回生される。ここではまたその他のエネルギー蓄積器、例えばスーパーコンデンサやフライホイールなどが設けられていてもよい。回生されたエネルギーは直ちに利用されるか後からの使用のために蓄積される。この回生エネルギーは走行駆動のために及び/又はその他の負荷のために用いることができる。前述した内燃機関や電気モーターの他にも別の駆動方式、例えばその他の駆動機器との組合わせなども可能である。
図面
本発明のさらなる別の実施形態、側面および利点はそれらの概要に依存することなく特許請求の範囲にも記載されているが、これらは図面に示されている本発明の実施例に基づく以下の一般性に何ら制約をもたらすものではない。
これらの図面中図1にはパラレル式ハイブリッド車両の有利な実施例が概略的に示されており、図2には本発明による方法の有利な経過が示されている。
【実施例】
【0011】
図1には有利な並列式ハイブリッド車両の概略が示されており、この車両は第1の駆動機器11、例えば内燃機関と、第2の駆動機器12、例えば電気モーターを有しており、内燃機関11と電気モーター12からは典型的な方式でトルクがもたらされている。もちろん本発明はこれに限らず別のタイプのハイブリッド車両、例えば直列式ハイブリッド車両、出力分岐型ハイブリッド車両または混合式ハイブリッド車両にも適用が可能である。
【0012】
内燃機関11は、燃料を燃料タンク15から供給され、電気モーター12は電力をエネルギー蓄積器14,例えばバッテリーから供給される。内燃機関11と電気モーター12はトランスミッション13を介して駆動出力を駆動輪16へ印加する。
【0013】
作動制御部10は内燃機関11と電気モーター12を駆動制御しており、その場合電気モーターの駆動成分は、ハイブリッド車両の走行区間に該当する、作動制御部10に伝達されたデータに依存して、エネルギー蓄積器14の充電状態Lの考慮のもとで制御される。
【0014】
作動制御部10はこれらのデータをナビゲーションシステム17から受取っており、ナビゲーションシステム17は主要なデータを記憶媒体上に備えている。これらのデータとは特に道路の等級(クラス)、高度プロファイル、距離に関する情報である。さらなる付加的なデータは受信機18を介して受取られる。この受信機18はこれらのデータ、例えばラジオ交通情報、GPS(Global Pointing System)、送信バンク、及び又は先行する車両との車両通信を介した現下の交通状況に関する情報を、ナビゲーションシステム17及び/又は作動制御部10に提供している。
【0015】
図2には本発明による方法の有利な実施形態が示されている。
【0016】
第1の機能ブロック20では自車位置データの考慮のもとで走行目的地が入力される。ここではさらに利用者が付加的に実現したい目的及び/又は効果、例えば目的地においてアイドリング空調機能を新たな走行開始前に可能にさせるだけのエネルギー蓄積器のフル充電状態、所望の走行継続時間などを入力するようにしてもよい。
【0017】
第2の機能ブロック21では複数の代替走行ルートを用いた走行ルート計算が行われる。その場合には例えば最短区間、最速区間、高速道路利用の有り/無しの区間、所定の道路クラスを除く/除かない区間、市街地領域を含む/含まない区間等が考慮されてもよい。
【0018】
第3の機能ブロック22では走行ルートの選択が行われる。その場合にはエネルギー蓄積器14の初期充電状態や道路クラスに応じて予想される回転数分布、日中の時刻を考慮して予想されるスタート/ストップ現象の数、高度プロファイルなどが基礎におかれてもよい。走行ルートに対する有利な選択基準は、基体すべき燃料バランス、エネルギー蓄積器の最終充電状態、全走行時間などから形成され得る。さらに利用者から事前設定される目的及び/又は効果をできるだけ実現させることも試みられる。
【0019】
第4の機能ブロック23では利用者の選択した走行ルートに関する情報が表示され、それに応じて誘導案内が実施される。その際には場合によって燃料消費に関する付加的な情報や利用者に対して走行時間は増加するが燃料消費に有利な走行ルートを選択できる手段などが提供されてもよい。
【0020】
利用者によって設定された目的又は効果の保証が見込まれないときには、走行ルートの流動化ないし適応化を行ってもよい。その際には最適な作動ストラテジが維持され得る。また代替的に走行ルートは維持しつつ作動ストラテジを変更することも可能である。これらは利用者が選択的に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】有利な並列式ハイブリッド車両の概要を例示的に表した図
【図2】本発明による方法の有利な経過を示した図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの駆動機器(11,12)を備えたハイブリッド車両の駆動制御のための方法であって、車両の駆動が作動制御部(10)の設定に従って第1の駆動機器(11)、特に内燃機関及び/又は第2の駆動機器(12)、特に電気モーターを用いて行われ、前記第2の駆動機器(12)の駆動成分は走行区間に関連する作動制御部(10)に伝達されたデータに依存して、エネルギー蓄積器(14)の充電状態(L)を考慮して制御される形式の方法において、
地理的な走行目的地の事前設定及び/又は作動ストラテジの目的パラメータの事前設定のもとで最適な作動ストラテジが求められ、複数の代替走行ルートが利用可能な場合において、前記最適な作動ストラテジを考慮して走行ルートの選択が行われるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項2】
走行ルートの選択がハイブリッド車両の作動パラメータを考慮して行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
適切な走行ルートの選択のために、ナビゲーションシステム(17)における高度差及び/又は道路クラス及び/又は距離及び/又は予想走行時間に関連するデータが用いられる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
適切な走行ルートの選択のために、代替走行ルートに関する次のような更新情報、すなわちそれぞれの走行ルートの現下の交通負荷及び/又は予測される交通負荷に関する情報、及び/又は日中時刻に関する情報、及び/又はハイブリッド車両の日中時間帯に予測されるストップ&ゴー運転フェーズに関する情報が用いられる、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
走行ルートの選択基準として燃料消費バランス、エネルギー蓄積器(14)の放電状態、全走行時間などのグループのうちの少なくとも1つのパラメータが用いられる、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記選択は1つの目的パラメータの未達成が予測されるときに、作動ストラテジを維持しつつ選択された走行ルートを変更するようにして流動的に行われる、請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記選択は1つの目的パラメータの未達成が予測されるときに、選択された走行ルートを維持しつつ作動ストラテジを変更するようにして流動的に行われる、請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
第1の駆動機器(11)、特に内燃機関及び/又は第2の駆動機器(12)、特に電気モーターを用いて作動制御部(10)の設定に従って作動が可能な駆動部を備えたハイブリッド車両であって、前記第2の駆動機器(12)の駆動成分が走行区間に関連する作動制御部(10)に伝達されたデータに依存して、エネルギー蓄積器(14)の充電状態(L)を考慮して制御可能である形式のハイブリッド車両において、
地理的な走行目的地の事前設定及び/又は作動ストラテジの目的パラメータの事前設定のもとで最適な作動ストラテジを求めるための手段が設けられており、複数の代替走行ルートが利用可能な場合において、前記最適な作動ストラテジを考慮して走行ルートの選択が行われるように構成されていることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項9】
個々の作動フェーズにおいて回生された駆動エネルギーが負荷に直接供給されるかまたは一時的な蓄積によってエネルギー蓄積器(14)に供給される、請求項8記載のハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−504476(P2009−504476A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525500(P2008−525500)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063086
【国際公開番号】WO2007/017300
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】