説明

ハイブリッド車両及びオイルポンプ制御方法

【課題】高い吐出能力の電動オイルポンプを用いず、車速があるうちにアイドル停止可能なハイブリッド車両を提供すること。
【解決手段】ハイブリッド車両は、内燃機関と、内燃機関のクランク軸に連結され、当該クランク軸に駆動力を伝達する電動機と、内燃機関及び電動機の少なくともいずれか一方から締結手段を介して駆動力が入力される入力軸の回転速度と出力軸の回転速度との比を連続的に変化させる無段変速機と、内燃機関又は電動機からの出力に基づき駆動されることにより作動油圧を発生し、当該作動油圧を無段変速機に供給する機械式オイルポンプと、アイドル停止条件が成立したときに内燃機関を停止する制御部とを備える。制御部は、当該ハイブリッド車両が走行中にアイドル停止条件が成立したために内燃機関を停止すると、締結手段を遮断した後に電動機を駆動して機械式オイルポンプを駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各駆動軸がそれぞれ直結した内燃機関及び電動機の少なくとも一方からの動力によって走行し、車速があるうちにアイドル停止可能なハイブリッド車両及びオイルポンプ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3には、変速機等を油圧駆動するための機械式オイルポンプに加えて、電動オイルポンプを備え、内燃機関の停止指令を受けて電動オイルポンプを起動させ、内燃機関の再始動指令を受けて電動オイルポンプを停止させる油圧制御装置が開示されている。このような油圧制御装置において、機械式オイルポンプは、内燃機関の運転に伴って駆動し、変速機に必要な油量又は油圧を供給する。一方、電動オイルポンプは、内燃機関が停止状態のとき蓄電器からの電力供給によって駆動し、例えば車両の走行開始時に変速機を駆動制御するために必要な油量又は油圧を当該変速機に供給する。
【0003】
したがって、当該油圧制御装置を備えた車両がアイドル停止機能を有する場合、内燃機関の運転中は、機械式オイルポンプによって変速機に作動油が供給され、アイドル停止中は、電動オイルポンプによって変速機に作動油が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−232115号公報
【特許文献2】特開2003−262264号公報
【特許文献3】特開2001−99282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記説明した油圧制御装置は、車速があるうちにアイドル停止する車両に搭載されることも考えられる。このような車両は、車速が0となる前の時点で内燃機関を停止するため、車速が0となった後に内燃機関を停止する車両に比べて消費燃料を削減できる。しかし、当該車両において、車速があるうちにアイドル停止して車両が完全に停止するまでの間に運転者が強いブレーキをかけた場合、変速機に十分な油圧が供給されないと、変速機内部には機械的に好ましくない力がかかる。
【0006】
例えば、図7に示すように、トルクコンバータを含むベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)が車両に搭載されている場合、当該車両に急ブレーキがかけられると、CVTのプーリ及びベルトにはドライブシャフトを通じて巨大なイナーシャトルクが加わる。この巨大なイナーシャトルクにプーリ及びベルトが耐えるためには、各プーリに高い側圧をかける必要がある。側圧が十分でないとベルトスリップが発生する可能性があるためである。したがって、急ブレーキ時に発生するイナーシャトルクに耐え得る十分な側圧を実現するだけの油圧が当該無段変速機に供給される必要がある。
【0007】
上述したように、機械式オイルポンプは内燃機関の運転に伴って駆動する。したがって、内燃機関の運転中であれば、機械式オイルポンプによって十分に高い油圧が変速機に供給される。一方、電動オイルポンプはアイドル停止中に駆動される。しかし、電動オイルポンプによって変速機に供給可能な油圧は、その吐出能力によって異なる。このため、機械式オイルポンプと同程度に高い油圧を変速機に供給するためには、高い吐出能力を有する電動オイルポンプが必要である。但し、吐出能力の高い電動オイルポンプは、吐出能力の低い電動オイルポンプと比べて、サイズが大きく重量もあるため好ましくない。
【0008】
したがって、車速があるうちにアイドル停止する車両には高い吐出能力を有する電動オイルポンプを搭載する必要があるが、車速が0となった後にアイドル停止する車両には低い吐出能力を有する電動オイルポンプを搭載すれば良い。しかし、後者の車両は、車速が0となるまでアイドル停止を行わないため、前者の車両に比べて消費燃料を削減できない。
【0009】
本発明の目的は、高い吐出能力の電動オイルポンプを用いず、車速があるうちにアイドル停止可能なハイブリッド車両及びオイルポンプ制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の発明のハイブリッド車両は、内燃機関(例えば、実施の形態での内燃機関103)と、前記内燃機関のクランク軸に連結され、当該クランク軸に駆動力を伝達する電動機(例えば、実施の形態での電動機101)と、前記内燃機関及び前記電動機の少なくともいずれか一方から締結手段(例えば、実施の形態でのFWD/RVSクラッチ)を介して駆動力が入力される入力軸の回転速度と出力軸の回転速度との比を連続的に変化させる無段変速機(例えば、実施の形態での無段変速機113)と、前記内燃機関又は前記電動機からの出力に基づき駆動されることにより作動油圧を発生し、当該作動油圧を前記無段変速機に供給する機械式オイルポンプ(例えば、実施の形態での機械式オイルポンプ115)と、アイドル停止条件が成立したときに前記内燃機関を停止する制御部(例えば、実施の形態でのマネジメントECU109,209)と、を備えたハイブリッド車両であって、前記制御部は、当該ハイブリッド車両が走行中に前記アイドル停止条件が成立したために前記内燃機関を停止すると、前記締結手段を遮断した後に前記電動機を駆動して前記機械式オイルポンプを駆動させることを特徴としている。
【0011】
さらに、請求項2に記載の発明のハイブリッド車両では、当該ハイブリッド車両の車速を検出する車速検出部(例えば、実施の形態での回転数センサ111a,111b及びマネジメントECU109,209)を備え、前記制御部は、アイドル停止時の車速が、第1しきい値(例えば、実施の形態での第1しきい値Vth1)以下、かつ、前記第1しきい値よりも小さな値である第2しきい値(例えば、実施の形態での第2しきい値Vth2)以上のとき、前記電動機を駆動して前記機械式オイルポンプを駆動させることを特徴としている。
【0012】
さらに、請求項3に記載の発明のハイブリッド車両では、前記制御部は、アイドル停止時の車速が前記第2しきい値未満に低下したとき、前記電動機の駆動を停止することを特徴としている。
【0013】
さらに、請求項4に記載の発明のハイブリッド車両では、前記制御部による制御に応じて、蓄電器からの電力供給によって駆動して、前記無段変速機に作動油圧を供給する電動オイルポンプ(例えば、実施の形態での電動オイルポンプ201)を備え、前記制御部は、アイドル停止時の車速が前記第2しきい値未満に低下したとき、前記電動オイルポンプを駆動し、前記電動オイルポンプの回転数が所定数を超えた時点で前記電動機の駆動を停止することを特徴としている。
【0014】
さらに、請求項5に記載の発明のオイルポンプ制御方法では、内燃機関(例えば、実施の形態での内燃機関103)と、前記内燃機関のクランク軸に連結され、当該クランク軸に駆動力を伝達する電動機(例えば、実施の形態での電動機101)と、前記内燃機関及び前記電動機の少なくともいずれか一方から締結手段(例えば、実施の形態でのFWD/RVSクラッチ)を介して駆動力が入力される入力軸の回転速度と出力軸の回転速度との比を連続的に変化させる無段変速機(例えば、実施の形態での無段変速機113)と、前記内燃機関又は前記電動機からの出力に基づき駆動されることにより作動油圧を発生し、当該作動油圧を前記無段変速機に供給する機械式オイルポンプ(例えば、実施の形態での機械式オイルポンプ115)と、前記内燃機関、前記電動機及び前記無段変速機の各動作を制御する制御部(例えば、実施の形態でのマネジメントECU109,209)と、を備えるハイブリッド車両が走行中にアイドル停止した際のオイルポンプ制御方法であって、前記制御部は、当該ハイブリッド車両がアイドル停止状態か否かを判断し、アイドル停止時の当該ハイブリッド車両の車速が、第1しきい値以下、かつ、前記第1しきい値よりも小さな値である第2しきい値以上のとき、前記電動機を駆動して前記機械式オイルポンプを駆動させることを特徴としている。
【0015】
さらに、請求項6に記載の発明のオイルポンプ制御方法では、前記制御部は、アイドル停止時の車速が前記第2しきい値未満に低下したとき、蓄電器からの電力供給によって駆動して前記無段変速機に作動油圧を供給する電動オイルポンプ(例えば、実施の形態での電動オイルポンプ201)を駆動し、前記電動オイルポンプの回転数が所定数を超えた時点で前記電動機の駆動を停止することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜4に記載の発明のハイブリッド車両及び請求項5〜6に記載の発明のオイルポンプ制御方法によれば、車速が第1しきい値以上の状態から車両が速度を落としてアイドル停止状態になっても、車速が少なくとも第2しきい値未満となるまでは、電動機の駆動によって機械式オイルポンプが駆動される。したがって、車速があるうちにアイドル停止した状態で運転者が強いブレーキをかけたとしても、車速が少なくとも第2しきい値以上であれば機械式オイルポンプが動作しているため、変速機には急ブレーキ時に発生したイナーシャトルクに耐え得る十分な油圧が供給されている。このため、吐出能力の高い電動オイルポンプを設けることなく、アイドル停止状態における急ブレーキにも対応可能な車両を提供することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明のハイブリッド車両及び請求項6に記載の発明のオイルポンプ制御方法によれば、車速が第2しきい値まで低下すると電動オイルポンプが駆動され、その回転数がしきい値を超えた時点で電動機を停止する。したがって、車速があるうちにアイドル停止した状態で運転者が強いブレーキをかけたとしても、機械式オイルポンプ及び電動オイルポンプの少なくともいずれかが動作しているため、変速機には急ブレーキ時に発生したイナーシャトルクに耐え得る十分な油圧が供給されている。
【0018】
なお、請求項4に記載の発明のハイブリッド車両及び請求項6に記載の発明のオイルポンプ制御方法が備える電動オイルポンプの吐出能力はとりわけ高くはないが、電動オイルポンプは、車速が第2しきい値以下の状態で用いられるため、発生し得るイナーシャトルクは比較的小さい。しかも、電動オイルポンプの回転数がしきい値を超えるまで電動オイルポンプが単体で用いられることはない。したがって、吐出能力の高い電動オイルポンプを設けることなく、アイドル停止状態における急ブレーキにもより安全に対応可能な車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態のHEVの内部構成を示すブロック図
【図2】第1の実施形態の車両が備えるマネジメントECU109が行う動作を示すフローチャート
【図3】車速があるうちにアイドル停止する第1の実施形態の車両における電動機101の駆動状態の推移を示す図
【図4】第2の実施形態のHEVの内部構成を示すブロック図
【図5】第2の実施形態の車両が備えるマネジメントECU209が行う動作を示すフローチャート
【図6】車速があるうちにアイドル停止する第2の実施形態の車両における電動機101及び電動オイルポンプの各駆動状態の推移を示す図
【図7】車両に急ブレーキがかけられた際、トルクコンバータを含むベルト式の無段変速機に加わるイナーシャトルクを説明する図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
HEV(Hybrid Electrical Vehicle:ハイブリッド電気自動車)は、電動機及び/又は内燃機関の駆動力によって走行する。以下説明する実施形態のHEVでは、電動機の駆動軸は、内燃機関の駆動軸に直結されている。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のHEVの内部構成を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態のHEV(以下、単に「車両」という。)は、電動機(MOT)101と、内燃機関(ENG)103と、モータECU(MOT ECU)105と、エンジンECU(ENG ECU)107と、マネジメントECU(MG ECU)109と、回転数センサ111a,111bと、トルクコンバータを含むベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)113と、機械式オイルポンプ(OP)115とを備える。
【0023】
電動機101は、例えば3相交流モータであり、車両が走行するための駆動力を発生する。電動機101には、図示しないインバータを介して蓄電器から高電圧(例えば100〜200V)の電力が供給される。内燃機関103は、車両が走行するための駆動力を発生する。電動機101及び内燃機関103からの駆動力は、CVT113及び駆動軸121を介して駆動輪123L,123Rに伝達される。
【0024】
モータECU105は、電動機101の運転を制御する。エンジンECU107は、内燃機関103の運転を制御する。マネジメントECU109は、電動機101や内燃機関103等の制御を行う。また、マネジメントECU109には、回転数センサ111a,111bからの信号や、アクセルペダルの開度(AP開度)及びブレーキペダルの踏力(ブレーキ踏力)等の情報が入力される。マネジメントECU109は、回転数センサ111a,111bから送られた信号に基づいて車速Vpを算出する。マネジメントECU109は、車速Vp、AP開度及びブレーキ踏力に基づいて、車両の走行状態がアイドル停止条件を満たすか否かを判断する。マネジメントECU109は、アイドル停止条件が満たされると、内燃機関103の運転を停止するようエンジンECU107に指示する。なお、本実施形態では、車速Vpが所定値以下であり、AP開度が0かつブレーキ踏力が所定値以上のとき、マネジメントECU109は、アイドル停止条件が満たされたとする。
【0025】
さらに、マネジメントECU109は、車両がアイドル停止状態となった後、車速Vpに応じて、電動機101の駆動による機械式オイルポンプ115の駆動を制御する。マネジメントECU109による当該制御の詳細については後述する。
【0026】
回転数センサ111a,111bは、駆動輪123L,123Rの各回転数を検出する。マネジメントECU109には、駆動輪123L,123Rの各回転数を示す信号が回転数センサ111a,111bから送られる。
【0027】
CVT113は、電動機101及び/又は内燃機関103からの駆動力を、所望の変速比での回転数及びトルクに変換して、駆動軸121に伝達する。なお、本実施形態のCVT113は、図7に示した変速機と同様の構成である。したがって、機械式オイルポンプ115によってCVT113に油圧が供給される。機械式オイルポンプ115は、内燃機関103の運転に伴って駆動し、CVT113に所定の油圧を供給する。なお、上述したように、電動機101の駆動軸は内燃機関103の駆動軸に直結されている。このため、内燃機関103が停止状態であっても、電動機101が駆動すれば、内燃機関103の駆動軸が回転して機械式オイルポンプ115も駆動される。
【0028】
図2は、第1の実施形態の車両が備えるマネジメントECU109が行う動作を示すフローチャートである。図2に示すように、マネジメントECU109は、車両がアイドル停止状態か否かを判断し(ステップS101)、アイドル停止状態であればステップS103に進み、アイドル停止状態でなければステップS109に進む。ステップS103では、マネジメントECU109は、回転数センサ111a,111bから送られた信号に基づいて算出した車速Vpが第1しきい値Vth1以下(Vp≦Vth1)か否かを判断し、Vp≦Vth1の場合はステップS105に進み、Vp>Vth1の場合はステップS109に進む。
【0029】
ステップS105では、マネジメントECU109は、車速Vpが第2しきい値Vth2以上(Vp≧Vth2)か否かを判断し、Vp≧Vth2の場合はステップS107に進み、Vp<Vth2の場合はステップS109に進む。なお、第2しきい値Vth2は、第1しきい値Vth1よりも小さな値である。
【0030】
ステップS107では、マネジメントECU109は、CVT113内のトルクコンバータとドライブプーリの間に設けられたFWD/RVSクラッチ(以下、単に「クラッチ」という)の締結を解除した後、電動機101の運転を開始するようモータECU105に指示する。上述したように、電動機101の駆動軸は内燃機関103の駆動軸に直結されているため、電動機101が駆動すると機械式オイルポンプ115も駆動される。一方、ステップS109では、マネジメントECU109は、電動機101の運転開始指示を行わずに処理を終了する。
【0031】
本実施形態によれば、図3に示すように、車速Vpが第1しきい値Vth1以上の状態から車両が速度を落としてアイドル停止状態になっても、車速Vpが第2しきい値Vth2未満となるまでは、電動機101の駆動によって機械式オイルポンプ115が駆動される。したがって、車速があるうちにアイドル停止した状態で運転者が強いブレーキをかけたとしても、車速Vpが少なくとも第2しきい値Vth2以上であれば機械式オイルポンプ115が動作しているため、CVT113には急ブレーキ時に発生したイナーシャトルクに耐え得る十分な油圧が供給されている。このため、吐出能力の高い電動オイルポンプを設けることなく、アイドル停止状態における急ブレーキにも対応可能な車両を提供することができる。
【0032】
尚、本実施形態では、FWD/RVSクラッチの締結を解除した後、電動機101の運転を開始するようモータECU105に指示する構成としたが、十分な油圧が供給され、電動機101の運転に基づく内燃機関103の回転数がアイドル時に相当する回転数である場合は、FWD/RVSクラッチの締結を解除せずとも、トルクコンバータのロックアップクラッチを解除することで、トルクコンバータにて無段変速機側へのトルク伝達を吸収させることができる。
【0033】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態のHEVの内部構成を示すブロック図である。図4に示すように、第2の実施形態のHEVは、第1の実施形態のHEVが備える構成要素に加えて、電動オイルポンプ(EOP)201をさらに備える。本実施形態のHEVが備えるマネジメントECU209の動作は、第1の実施形態のそれとは一部異なる。なお、図4において、図1と共通する構成要素には同じ参照符号が付されている。
【0034】
電動オイルポンプ201は、図示しない蓄電器からの電力供給によって駆動し、CVT113に所定の油圧を供給する。なお、電動オイルポンプ201は、回転数を検出する図示しないポンプ回転数センサを含む。マネジメントECU209には、電動オイルポンプ201の回転数を示す信号がポンプ回転数センサから送られる。
【0035】
本実施形態のマネジメントECU209は、車両がアイドル停止状態となった後、車速Vpに応じて、電動機101の駆動による機械式オイルポンプ115の駆動及び電動オイルポンプ201の駆動を制御する。
【0036】
図5は、第2の実施形態の車両が備えるマネジメントECU209が行う動作を示すフローチャートである。図5に示すように、マネジメントECU209は、車両がアイドル停止状態か否かを判断し(ステップS201)、アイドル停止状態であればステップS203に進み、アイドル停止状態でなければステップS205に進む。ステップS203では、マネジメントECU209は、回転数センサ111a,111bから送られた信号に基づいて算出した車速Vpが第1しきい値Vth1以下(Vp≦Vth1)か否かを判断し、Vp≦Vth1の場合はステップS209に進み、Vp>Vth1の場合はステップS205に進む。
【0037】
ステップS205では、マネジメントECU209は、電動オイルポンプ201の駆動開始指示を行わず、ステップS207に進む。ステップS207では、マネジメントECU209は、電動機101の運転開始指示を行わずに処理を終了する。ステップS209では、マネジメントECU209は、回転数センサ111a,111bから送られた信号に基づいて算出した車速Vpが第2しきい値Vth2以上(Vp≧Vth2)か否かを判断し、Vp≧Vth2の場合はステップS211に進み、Vp<Vth2の場合はステップS215に進む。なお、第2しきい値Vth2は、第1しきい値Vth1よりも小さな値である。
【0038】
ステップS211では、マネジメントECU209は、電動オイルポンプ201の駆動開始指示を行わず、ステップS213に進む。ステップS213では、マネジメントECU209は、CVT113内のクラッチの締結を解除した後、電動機101の運転を開始するようモータECU105に指示する。上述したように、電動機101の駆動軸は内燃機関103の駆動軸に直結されているため、電動機101が駆動すると機械式オイルポンプ115も駆動される。一方、ステップS215では、マネジメントECU209は、電動オイルポンプ201の駆動開始指示を行う。
【0039】
ステップS215を行った後、マネジメントECU209は、電動オイルポンプ201のポンプ回転数センサから送られた信号が示す電動オイルポンプ201の回転数Nmがしきい値N0より大きい(Nm>N0)か否かを判断し、Nm>N0の場合はステップS219に進み、Nm≦N0の場合はステップS221に進む。ステップS219では、マネジメントECU209は、電動機101の運転を停止するようモータECU105に指示する。上述したように、電動機101の駆動軸は内燃機関103の駆動軸に直結されているため、電動機101が停止すると機械式オイルポンプ115も動作を停止する。一方、ステップS221では、マネジメントECU209は、電動機101の運転を継続するようモータECU105に指示する。
【0040】
本実施形態によれば、図6に示すように、車速Vpが第1しきい値Vth1以上の状態から車両が速度を落としてアイドル停止状態になっても、まずは、電動機101の駆動によって機械式オイルポンプ115が駆動される。その後、車速Vpが第2しきい値Vth2まで低下すると電動オイルポンプ201が駆動され、その回転数Nmがしきい値N0を超えた時点で電動機101を停止する。したがって、車速があるうちにアイドル停止した状態で運転者が強いブレーキをかけたとしても、機械式オイルポンプ115及び電動オイルポンプ201の少なくともいずれかが動作しているため、CVT113には急ブレーキ時に発生したイナーシャトルクに耐え得る十分な油圧が供給されている。
【0041】
なお、本実施形態で用いられる電動オイルポンプ201の吐出能力はとりわけ高くはないが、電動オイルポンプ201は、車速Vpが第2しきい値Vth2以下の状態で用いられるため、発生し得るイナーシャトルクは比較的小さい。しかも、電動オイルポンプ201の回転数Nmがしきい値N0を超えるまで電動オイルポンプ201が単体で用いられることはない。したがって、吐出能力の高い電動オイルポンプを設けることなく、アイドル停止状態における急ブレーキにもより安全に対応可能な車両を提供することができる。
【符号の説明】
【0042】
101 電動機(MOT)
103 内燃機関(ENG)
105 モータECU(MOT ECU)
107 エンジンECU(ENG ECU)
109,209 マネジメントECU(MG ECU)
111a,111b 回転数センサ
113 無段変速機(CVT)
115 機械式オイルポンプ(OP)
201 電動オイルポンプ(EOP)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関のクランク軸に連結され、当該クランク軸に駆動力を伝達する電動機と、
前記内燃機関及び前記電動機の少なくともいずれか一方から締結手段を介して駆動力が入力される入力軸の回転速度と出力軸の回転速度との比を連続的に変化させる無段変速機と、
前記内燃機関又は前記電動機からの出力に基づき駆動されることにより作動油圧を発生し、当該作動油圧を前記無段変速機に供給する機械式オイルポンプと、
アイドル停止条件が成立したときに前記内燃機関を停止する制御部と、を備えたハイブリッド車両であって、
前記制御部は、当該ハイブリッド車両が走行中に前記アイドル停止条件が成立したために前記内燃機関を停止すると、前記締結手段を遮断した後に前記電動機を駆動して前記機械式オイルポンプを駆動させることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両であって、
当該ハイブリッド車両の車速を検出する車速検出部を備え、
前記制御部は、アイドル停止時の車速が、第1しきい値以下、かつ、前記第1しきい値よりも小さな値である第2しきい値以上のとき、前記電動機を駆動して前記機械式オイルポンプを駆動させることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項2に記載のハイブリッド車両であって、
前記制御部は、アイドル停止時の車速が前記第2しきい値未満に低下したとき、前記電動機の駆動を停止することを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項2に記載のハイブリッド車両であって、
前記制御部による制御に応じて、蓄電器からの電力供給によって駆動して、前記無段変速機に作動油圧を供給する電動オイルポンプを備え、
前記制御部は、アイドル停止時の車速が前記第2しきい値未満に低下したとき、前記電動オイルポンプを駆動し、前記電動オイルポンプの回転数が所定数を超えた時点で前記電動機の駆動を停止することを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項5】
内燃機関と、
前記内燃機関のクランク軸に連結され、当該クランク軸に駆動力を伝達する電動機と、
前記内燃機関及び前記電動機の少なくともいずれか一方から締結手段を介して駆動力が入力される入力軸の回転速度と出力軸の回転速度との比を連続的に変化させる無段変速機と、
前記内燃機関又は前記電動機からの出力に基づき駆動されることにより作動油圧を発生し、当該作動油圧を前記無段変速機に供給する機械式オイルポンプと、
前記内燃機関、前記電動機及び前記無段変速機の各動作を制御する制御部と、を備えるハイブリッド車両が走行中にアイドル停止した際のオイルポンプ制御方法であって、
前記制御部は、
当該ハイブリッド車両がアイドル停止状態か否かを判断し、
アイドル停止時の当該ハイブリッド車両の車速が、第1しきい値以下、かつ、前記第1しきい値よりも小さな値である第2しきい値以上のとき、前記電動機を駆動して前記機械式オイルポンプを駆動させることを特徴とするオイルポンプ制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載のオイルポンプ制御方法であって、
前記制御部は、
アイドル停止時の車速が前記第2しきい値未満に低下したとき、蓄電器からの電力供給によって駆動して前記無段変速機に作動油圧を供給する電動オイルポンプを駆動し、
前記電動オイルポンプの回転数が所定数を超えた時点で前記電動機の駆動を停止することを特徴とするハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−208415(P2010−208415A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55091(P2009−55091)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】