説明

ハンドリング装置、作業装置及びプログラム

【課題】搬送される複数の物品に関する情報を効率的に処理できるハンドリング装置を提供する。
【解決手段】ハンドリング装置1は、ワーク100を搬送するコンベア2と、ベルト12を分割した複数のトラッキング範囲R5の画像を取得してワーク100の位置を検出する視覚センサ3と、ベルト12の移動量を検出するエンコーダ4と、エンコーダ4の検出する移動量に基づいて、複数のトラッキング範囲R5の移動量を監視し、ワーク検出エリアR12を通過中のトラッキング範囲R5を特定するトラッキングマネージャ21bと、トラッキングマネージャ21bにより特定されたトラッキング範囲R5内において物品を選択するワークマネージャ21cと、ワークマネージャ21cにより選択されたワーク100を保持するようにロボット5の動作を制御する制御部21dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
搬送されている複数の物品を選択的に保持するハンドリング装置、作業装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンベアによって搬送されるワークを視覚センサによって検出し、検出したワークをロボットにより選択的に保持するハンドリング装置が知られている。特許文献1では、コンベア上のワークを撮像し、撮像画像から撮像時のワークの位置を検出するとともに、その後のコンベアの移動量から現時点のワークの位置を特定するトラッキング装置が開示されている。このトラッキング装置では、画像処理装置により、撮像時のワークの位置データと、コンベアの移動を計測するパルスコーダの撮像時の計測値とが対応付けて記憶される。記憶された撮像時のワークの位置データは画像処理装置からロボット制御部へ引き渡される。ロボット制御部は、ワークの位置データをキーとして、当該ワークの位置データに関連付けられたパルスコーダの計測値を検索、取得する。そして、ワークの位置データ及びパルスコーダの計測値に基づいて、ワークの位置データを下流側から並び替え、複数のワークのうち下流側のワークから複数のロボットに割り振ってハンドリングさせる。
【特許文献1】特開2005−111607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、全てのワークの位置データを一律に管理するとともに、位置データに関連付けられたデータを検索することにより、いずれのワークが下流側であるかの特定やワークの現時点の位置の特定等の処理を実現している。従って、ワークのデータを効率的に処理することができない。
【0004】
例えば、複数のワークが一の画像として撮像された場合には当該複数のワークに対してパルスコーダの計測値は同一となるが、ワーク毎に当該同一の計測値を検索して特定することになるから、同様の処理を重複して実行することになる。ロボットよりも比較的上流側のワークを含む全てのワークについてパルスコーダの計測値の検索や位置データの並び替えをしなければならず、不必要に計算の負担が増大する。コンベア上の所定範囲内を対象として、ワークの付加情報(例えばワークの種類)をユーザに提示することが困難である。
【0005】
本発明の目的は、搬送される複数の物品に関する情報を効率的に処理できるハンドリング装置、作業装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハンドリング装置は、複数の物品が載置される載置部を搬送路に沿って移動させ、前記複数の物品を搬送する搬送手段と、前記搬送路に設定された撮像領域の撮像を所定の時間間隔で繰り返し、前記載置部を搬送方向において分割した複数のトラッキング範囲の画像を取得し、取得した各画像に基づいて各トラッキング範囲内の物品の前記各トラッキング範囲に対する相対位置を検出する視覚センサと、前記載置部の移動量を検出する移動量検出手段と、前記移動量検出手段の検出する移動量に基づいて、前記複数のトラッキング範囲の前記撮像領域からの移動量を監視し、所定の検出エリア内を通過中のトラッキング範囲を特定するトラッキング範囲監視手段と、前記トラッキング範囲監視手段により特定されたトラッキング範囲内において所定の選択条件を満たす物品を選択する物品選択手段と、前記載置部に載置されている前記複数の物品を選択的に保持するハンドリング手段と、前記物品選択手段により選択された物品を保持するように前記ハンドリング手段の動作を制御する制御手段とを備える。
【0007】
好適には、前記複数のトラッキング範囲それぞれに対応する複数のトラッキングデータを生成するデータ管理手段と、前記データ管理手段により生成された前記複数のトラッキングデータを記憶する記憶手段と、を更に備え、前記トラッキングデータには、対応するトラッキング範囲の前記撮像領域からの移動量を特定可能な移動量情報が含まれ、当該対応するトラッキング範囲に物品がある場合には、当該対応するトラッキング範囲内の物品の数と同数の物品データが更に含まれ、前記物品データには、対応する物品の前記トラッキング範囲に対する相対位置を特定可能な物品位置情報が含まれ、前記データ管理手段は、前記移動量検出手段の検出する移動量に基づいて、前記記憶手段に記憶された前記移動量情報を更新し、トラッキング範囲監視手段は、前記トラッキングデータの前記移動量情報を参照して前記トラッキング範囲の前記撮像領域からの移動量を監視し、前記検出エリアを通過中のトラッキング範囲のトラッキングデータを特定し、前記物品選択手段は、前記トラッキング範囲監視手段により特定されたトラッキングデータに含まれる物品データを参照して、前記選択条件を満たす物品データを選択し、前記制御手段は、前記トラッキング範囲監視手段により特定されたトラッキングデータに含まれる前記移動量情報及び前記物品選択手段により選択された物品データに含まれる前記物品位置情報に基づいて前記物品の前記ハンドリング手段に対する相対位置を特定し、前記ハンドリング手段を前記物品に追従させる。
【0008】
好適には、前記視覚センサは、前記画像に基づいて前記物品の外観に関連する付加情報を特定し、前記データ管理手段は、前記物品の付加情報が当該物品に対応する物品データに含まれるように前記トラッキングデータを生成し、前記物品選択手段は、前記トラッキング範囲監視手段により特定されたトラッキングデータに含まれる前記物品データの付加情報を参照して前記選択条件を満たす物品データを選択する。
【0009】
好適には、前記視覚センサは、前記画像に基づいて前記物品の外観に関連する付加情報を特定し、前記データ管理手段は、前記物品の付加情報が当該物品に対応する物品データに含まれるように前記トラッキングデータを生成し、前記制御手段は、前記物品選択手段により選択された物品データの付加情報を参照して、付加情報の内容に応じて異なる動作を前記ハンドリング手段に実行させる。
【0010】
好適には、所定の情報を表示する表示装置を更に備え、前記視覚センサは、前記画像に基づいて前記物品の外観に関連する付加情報を特定し、前記データ管理手段は、前記物品の付加情報が当該物品に対応する物品データに含まれるように前記トラッキングデータを生成し、前記表示装置は、前記物品選択手段により選択された物品データの付加情報を表示する。
【0011】
好適には、前記付加情報は、前記物品の種類を特定可能な情報である。
【0012】
本発明の作業装置は、複数の物品が載置される載置部を搬送路に沿って移動させ、前記複数の物品を搬送する搬送手段と、前記搬送路に設定された撮像領域の撮像を所定の時間間隔で繰り返し、前記載置部を搬送方向において分割した複数のトラッキング範囲の画像を取得し、取得した各画像に基づいて各トラッキング範囲内の物品の前記各トラッキング範囲に対する相対位置を検出する視覚センサと、前記載置部の移動量を検出する移動量検出手段と、前記移動量検出手段の検出する移動量に基づいて、前記複数のトラッキング範囲の前記撮像領域からの移動量を監視し、所定の検出エリア内を通過中のトラッキング範囲を特定するトラッキング範囲監視手段と、前記トラッキング範囲監視手段により特定されたトラッキング範囲内において所定の選択条件を満たす物品を選択する物品選択手段と、前記載置部に載置されている前記複数の物品に対して選択的に作業を行う作業手段と、前記物品選択手段により選択された物品を保持するように前記作業手段の動作を制御する制御手段とを備える。
【0013】
本発明のプログラムは、複数の物品が載置される載置部が移動する搬送路に設定された撮像領域の撮像を所定の時間間隔で繰り返し、前記載置部を搬送方向において分割した複数のトラッキング範囲の画像を取得し、取得した各画像に基づいて各トラッキング範囲内の物品の前記各トラッキング範囲に対する相対位置を検出する視覚センサ、前記載置部の移動量を検出する移動量検出手段及び前記載置部に載置されている前記複数の物品を選択的に保持するハンドリング手段と接続されるコンピュータを、前記移動量検出手段の検出する移動量に基づいて、前記複数のトラッキング範囲の前記撮像領域からの移動量を監視し、所定の検出エリア内を通過中のトラッキング範囲を特定するトラッキング範囲監視手段、前記トラッキング範囲監視手段により特定されたトラッキング範囲内において所定の選択条件を満たす物品を選択する物品選択手段及び前記物品選択手段により選択された物品を保持するように前記ハンドリング手段の動作を制御する制御手段として機能させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、搬送される複数の物品に関する情報を効率的に処理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の実施形態のハンドリング装置1の構成を示す概略図である。ハンドリング装置1は、複数のワーク100を搬送するコンベア2と、コンベア2により搬送されているワーク100の位置を検出する視覚センサ3と、コンベア2の移動量を検出するエンコーダ4と、コンベア2からワーク100を取り出す複数のロボット5と、視覚センサ3及びエンコーダ4の検出結果に基づいて、複数のロボット5の動作をそれぞれ制御する複数のロボットコントローラ6とを備えている。なお、コンベア2は搬送手段の一例であり、エンコーダ4は移動量検出手段の一例であり、ロボット5はハンドリング手段の一例であり、ロボットコントローラ6はデータ管理手段、トラッキング範囲監視手段、物品選択手段及び制御手段の一例である。
【0016】
コンベア2は、例えばベルトコンベアにより構成されており、搬送方向A1に配列された複数のローラ11と、ローラ11に経過されるベルト12とを備えている。なお、ベルト12は載置部の一例である。複数のローラ11のうち両端に位置するローラ11A、11B等が不図示のモータにより回転駆動されることにより、ベルト12は搬送方向A1へ移動し、ベルト12上に載置されたワーク100が搬送される。
【0017】
視覚センサ3は、図2に示すように、カメラ15と、カメラ15の撮像した画像を処理してワークの位置を検出する画像処理装置16とを備えている。カメラ15は例えばCCDカメラにより構成され、CCDにより受光した光に応じた電気信号を画像処理装置に出力する。画像処理装置16は例えば不図示のCPU、RAM、ROM等を含むコンピュータにより構成され、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、画像処理のための各種手段が構築される。なお、カメラ15及び画像処理装置16は、一の筐体に設けられて一体的に構成されていてもよいし、別々の筐体に設けられて互いに比較的離れた位置に配置されていてもよい。
【0018】
図1に示すように、視覚センサ3のカメラ15は、ベルト12の幅及びローラ11Aからローラ11Bまでの長さにより規定される搬送路R1のうち、上流側の一部の範囲を撮像領域R2として撮像する。なお、撮像領域R2の幅(搬送方向A1に直交する方向)は例えばベルト12の幅と同等である。撮像領域R2の長さ(搬送方向A1)は視覚センサ3の精度等の種々の条件を考慮して適宜に設定してよい。視覚センサ3は、撮像領域R2の撮像を所定の時間間隔で繰り返す。これにより、ベルト12を搬送方向A1において分割した複数のトラッキング範囲R5の画像が取得される。時間間隔は、例えば、ベルト12の移動量が撮像領域R2の搬送方向の長さと略等しくなる長さであり、これにより、トラッキング範囲R5が重複、隙間なく設定され、効率的にベルト12が撮像される。
【0019】
ただし、複数のトラッキング範囲R5は互いに一部が重複していてもよいし、隙間が設けられていてもよい。複数のトラッキング範囲R5間の相対位置は一定でもよいし、変化してもよい。複数のトラッキング範囲R5間の相対位置を一定にする場合、ベルト12を一定の速度で移動させ、撮像の時間間隔を一定としてもよいし、ベルト12上のワーク100の密度やロボット5の処理速度に基づいてベルト12の速度を変化させ、ベルト12の速度に応じて撮像の時間間隔を変化させてもよい。
【0020】
視覚センサ3の画像処理装置16は、カメラ15の撮像した画像を処理することにより、トラッキング範囲R5(撮像領域R2)内のワーク100のトラッキング範囲R5内の所定位置(例えば撮像原点O)に対する相対位置を検出する。例えば、画像をエッジ処理することによりワーク100の輪郭を抽出し、抽出した輪郭に基づいて、撮像範囲の所定位置を基準とした、搬送方向A1の座標値x、搬送方向A1に直交する方向の座標値y、x−y平面に直交する軸周りの回転方向の座標値cを特定する。
【0021】
視覚センサ3は、ロボットコントローラ6とHUB(集積装置)8を介して接続されている。すなわち、視覚センサ3とロボットコントローラ6とはスター型LANにより接続されており、視覚センサ3からの信号はパラレル通信により複数のロボットコントローラ6に出力される。これにより、従来の視覚センサを用いて安価な構成としつつ、データの高速通信が可能となる。なお、LANの規格は例えばEthernet(登録商標)である。
【0022】
視覚センサ3からロボットコントローラ6へは、上述のワーク100の座標値(x、y、c)の情報を含む信号が出力される。また、カメラ15による撮像タイミングをロボットコントローラ6に知らせるための信号が出力される。当該信号は、例えば、カメラ15による撮像と同時にロボットコントローラ6に出力されるトリガ信号である。なお、トリガ信号は、ロボットコントローラ6がトリガ信号を他の信号と区別して認識できるように設定されていれば、適宜なパターンの信号としてよい。また、撮像時刻の情報を含む信号を適宜な時期にロボットコントローラ6に出力して撮像タイミングを知らせることも可能である。座標値の信号やトリガ信号は、複数のロボットコントローラ6それぞれに出力され、複数のロボットコントローラ6により情報が共有される。
【0023】
エンコーダ4は、例えばローラ11を駆動する不図示のモータあるいは当該モータにより回転駆動されるローラ11に取り付けられ、これらモータ等の回転に応じたパルス列を出力する。エンコーダ4はロボットコントローラ6と接続されており、ロボットコントローラ6はエンコーダ4からのパルスを計数することにより、ベルト12の移動量を特定することができる。
【0024】
ロボット5は、ワーク100を保持する保持部5aと、保持部5aを搬送路R1に対して移動させるためのアーム部5bとを備えている。保持部5aは、ワーク100を把持や吸着等の適宜な保持方法により、ベルト12上の複数のワーク100のうち一つのワーク100を選択的に保持可能である。ただし、2つ以上のワーク100を選択的に保持可能であってもよい。アーム部5bは、搬送路R1上の同期可能エリアR11(図4参照)内で保持部5aを移動可能に腕の長さや関節の自由度が設定されている。ロボット5は、搬送路R1に隣接して複数設けられている。なお、ロボット5は、搬送方向A1方向に沿って複数配置されていてもよいし、搬送路R1を挟んで複数配置されていてもよい。
【0025】
ロボットコントローラ6は、複数のロボット6に対応して複数設けられており、それぞれ自己に接続されたロボット5の動作を制御する。なお、図1では、2台のロボット5の動作をそれぞれ制御する2つのロボットコントローラ6を例示している。ただし、一のロボットコントローラ6により複数のロボット5の動作を制御するようにしてもよい。
【0026】
図2は、ハンドリング装置1の一部について信号系の構成を示すブロック図である。ロボットコントローラ6は、各種の処理を行う演算部21、所定のデータを記憶する記憶部22、ユーザの入力操作を受け付ける入力部23、所定の情報を表示する表示部24を備えている。
【0027】
ロボットコントローラ6は、例えば、不図示のCPU、ROM、RAM、外部記憶装置等を含むコンピュータを含んで構成されており、CPUがROM等に記憶されたプログラムを実行することにより、データ管理部21a、トラッキングマネージャ21b、ワークマネージャ21c及び制御部21d等の各種手段を含む演算部21が構築される。なお、トラッキングマネージャ21bは、トラッキング範囲監視手段の一例であり、ワークマネージャ21cは物品選択手段の一例である。
【0028】
データ管理部21aは、記憶部21に記録されるトラッキングデータD1の生成、更新、消去等を行う。トラッキングデータD1の内容については後述する。トラッキングマネージャ21bは、トラッキングデータD1を参照してトラッキング範囲R5の位置を監視する。ワークマネージャ21cは、トラッキングデータD1を参照してワーク100の検索(選択)を行う。制御部21dは、トラッキングマネージャ21cの選択したワーク100の情報等に基づいてロボット5の動作を制御する。具体的には、保持部5aを駆動する保持用モータ18、アーム部5bを駆動するアーム用モータ19の動作を制御する。
【0029】
記憶部22は、例えばRAMにより構成され、演算部21によりデータの読み出し、書き込みが行われる。入力部23はキースイッチ等を含んで構成され、ユーザの入力操作に応じた信号を演算部21に出力する。表示部24は例えば液晶ディスプレイやCRTディスプレイにより構成され、演算部21からの信号に基づく画像を表示する。
【0030】
図3は、トラッキングデータD1の内容を示す概念図である。トラッキングデータD1は、複数のトラッキング範囲R5に対応して複数生成される。トラッキングデータD1には、トラッキングデータD1の参照を容易にするためのインデックスであるトラック番号D11と、トラッキング範囲R5内のワーク100の数を特定する情報であるワーク個数D12と、トラッキング範囲R5の移動量を特定するための情報であるトラッキング範囲移動量D13と、トラッキング範囲R5内のワーク100に関する種々の情報を含むワークデータD14とを含んでいる。
【0031】
トラッキング番号D11には、例えば、視覚センサ3により撮像が行われ、トリガ信号が出力されるたびに演算部21により1ずつインクリメントされる整数が用いられる。すなわち、搬送方向A1の先頭側のトラッキング範囲R5から順に連続番号が付される。図3では、トラッキング番号D11が配列データの添字である場合を例示している。
【0032】
ワーク個数D12は、視覚センサ3により、一の画像に含まれるワーク100の個数が検出されてロボットコントローラ6に出力され、ロボットコントローラ6のデータ管理部21aにより記憶部22に記録されることにより生成される。
【0033】
トラッキング範囲移動量D13は、視覚センサ3により撮像が行われ、トリガ信号が出力されたときに初期値(例えば0)が記憶部22に記憶され、その後、エンコーダ4の検出するベルト12の移動量が加算されて更新されるデータである。換言すれば、トラッキング範囲移動量D13は、トラッキング範囲R5の撮像領域R2を基準とする搬送方向A1方向の位置データである。
【0034】
ワークデータD14は、対応するトラッキング範囲R5内のワーク100の数と同じ数だけ各トラッキングデータD1に含まれ、ワーク100それぞれに対応して生成されている。ただし、図3では、ワークデータD14のための記憶領域を要素数10の配列データにより確保し、そのうちワーク100の数と同数の要素に情報を代入することにより、ワーク100の数と同数のワークデータD14を生成する場合を例示している。なお、ワークデータD14の数に応じた量だけ記憶領域を確保するようにしてもよい。
【0035】
ワークデータD14は、視覚センサ3により生成されたデータがロボットコントローラ6に引き渡され、当該データがロボットコントローラ6のデータ管理部21aにより記憶部22に記録されることにより生成される。なお、視覚センサ3の生成したデータと、ワークデータD14とは全く同一のデータでもよいし、データ形式等が異なっていてもよい。
【0036】
ワークデータD14には、ワークデータD14の参照を容易にするためのインデックスであるワーク番号D141と、ワーク100のトラッキング範囲R5に対する相対位置を特定可能な座標データD142と、ワーク100に関するその他適宜な情報を含む付加データD143とが含まれている。
【0037】
ワーク番号D141には、例えば、視覚センサ3において、撮像した一画像に基づいてワーク100を検出するたびにインクリメントされる整数が用いられる。すなわち、複数のワーク100に対して連続番号が割り振られる。図3では、下流側からワーク100が検出され、下流側のワーク100ほど小さい番号が付された場合、あるいは、下流側から連続番号が付されるように、視覚センサ3又はロボットコントローラ6において番号を振り直した場合を例示している。また、図3では、ワーク番号D141が配列データの添字である場合を例示している。
【0038】
座標データD142には、例えば、視覚センサ3により検出される上述の座標値x、座標値y、座標値cが含まれている。
【0039】
付加データD143には、例えば、視覚センサ3において、撮像した画像に基づいて特定されるワーク100の外観に関連する情報が含まれる。例えば、視覚センサ3は、ワーク100の種類を特定して付加データとして生成する。具体的には、例えばエッジ処理により抽出したワーク100の輪郭と、予め登録された輪郭とを比較することにより、ワーク100の種類を特定する。なお、図3では、各ワーク100について、3つの付加情報が含まれている場合を例示している。
【0040】
図4は、ハンドリング装置1の動作を説明する概念図である。なお、以下では、複数のロボット5及びロボットコントローラ6のうち、一のロボット5及びロボットコントローラ6の動作について説明する。
【0041】
上述のように、ベルト12は搬送方向A1へ移動し、視覚センサ3は撮像領域R2を繰り返し撮像することにより各トラッキング範囲R5のワーク100を検出する。ロボットコントローラ6のデータ管理部21aは、各トラッキング範囲R5に対応するトラッキングデータD1を順次生成する。各トラッキングデータD1(トラッキング範囲R5)のトラック番号D11には、視覚センサ3により撮像された順に、すなわち、下流側から順に連続番号が割り振られ、図4ではトラック番号が14〜31のトラッキング範囲R5が搬送路R1上において移動している状態を例示している。また、各トラッキングデータD1に含まれるワークデータD14のワーク番号には下流側から順に連続番号が割り振られ、図4では、1個又は2個のワーク100が一のトラッキング範囲R5上に配置され、1又は2のワーク番号が割り振られた状態を例示している。
【0042】
ロボット5は、搬送路R1を移動中のワーク100のうち、コンベア同期可能エリアR11を移動中のワーク100を取得可能である。コンベア同期可能エリアR11は、ロボット5の配置位置及びロボット5のアーム部5bの長さ等に基づいて決定される。
【0043】
ロボットコントローラ6には、コンベア同期可能エリアR11に対して適宜な位置、長さで設定されたワーク検出エリアR12の位置情報が予め入力されている。そして、ロボットコントローラ6のトラッキングマネージャ21bは、複数のトラッキング範囲R5のうち、ワーク検出エリアR12を通過中のトラッキング範囲R5を特定し、ワークマネージャ21cは、特定されたトラッキング範囲R5を対象としてロボット5により保持すべきワーク100を選択する。
【0044】
具体的には、トラッキングマネージャ21bは、複数のトラッキング範囲R5のうち、ワーク検出エリアR12内の先頭(下流側)のトラッキング範囲R5のトラッキング番号と、ワーク検出エリアR12内の最後尾の(上流側)のトラッキング範囲R5のトラッキング番号とを特定する。以下では、これら先頭のトラッキング番号及び最後尾のトラッキング番号をそれぞれHead、Tailということがある。
【0045】
図4では、トラッキング範囲R5の少なくとも一部がワーク検出エリアR12内にあれば、ワーク検出エリアR12内を通過中とみなされる場合を例示している。ただし、トラッキング範囲R5の所定割合以上がワーク検出エリアR12内にある場合に、トラッキング範囲R5がワーク検出エリアR12内を通過しているとみなされるようにしてもよい。
【0046】
ワーク検出エリアR12の上流側の境界線B1は、例えば、コンベア同期可能エリアR11の上流側の境界線と同一位置に設定される。また、ワーク検出エリアR12の下流側の境界線B2は、例えば、ロボット5が、停止状態の保持部5aをベルト12上のワーク100の速度まで加速させるのに必要な距離、あるいは、ベルト12の一方の側方端部(図4の紙面上方)に停止させた保持部5aによりベルト12の他方の側方端部(図4の紙面下方)に載置されたワーク100を保持するあいだにベルト12が移動する距離を、コンベア同期可能エリアR11の下流側の境界線から逆算して設定される。図4では、ワーク検出エリアR12がトラッキング範囲R5の略2つ分の大きさを有している場合を例示している。ワーク検出エリアR12は、ロボット5毎に設定されてもよいし、複数のロボット5に共通に設定されてもよい。
【0047】
ロボットコントローラ6は、トラック番号がHeadからTailまでの間のトラッキング範囲R5内においてワーク100を検索する。そして検索したワーク100を対象として、ロボット5による保持制御等の種々の処理を実行する。なお、この処理対象となったワーク100、トラッキング範囲R5をそれぞれカレントワーク、カレントトラッキング範囲といい、カレントワークのワーク番号及びカレントトラッキング範囲のトラック番号をそれぞれカレントワーク番号、カレントトラック番号ということがある。
【0048】
カレントワークは、基本的には、トラック番号がHeadからTailまでの間のトラッキング範囲R5内のワーク100のうち最も下流側のワーク100であり、カレントトラッキング範囲は、当該カレントワークがあるトラッキング範囲R5である。
【0049】
ただし、ロボットコントローラ6は、ユーザが入力部23への操作により指定した割出し条件に合致するワーク100のみを対象としてカレントワークを特定することができる。割出し条件に合致するか否かは、割出し条件と付加データD143との比較により判定される。従って、例えばロボットコントローラ6は、特定の種類のワーク100のみを対象としてカレントワークを特定する。
【0050】
なお、ユーザがワーク100の割出し条件を指定していない場合には、ロボットコントローラ6は、上述のように下流側からワーク100を選択し、当該ワーク100の付加データD143の内容を表示部24に表示させる。
【0051】
また、ロボットコントローラ6は、カレントワークへのロボット5の追従制御を行う一方で、次にカレントワークとなるべきワーク100を検出し、検出したワーク100の付加データD143の内容等を表示部24に表示する。
【0052】
以上の動作は、ロボットコントローラ6が以下に例示する処理を実行することにより実現される。
【0053】
図5は、ロボットコントローラ6の演算部21が実行するデータ管理処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、例えばハンドリング装置1の起動時に開始され、一定の周期(例えば0.1秒)で繰り返し実行される。なお、ロボットコントローラ6の演算部21は、データ管理処理を実行しているときはデータ管理部21aとして機能する。
【0054】
ステップS1では、演算部21は、視覚センサ3から撮像と同時に出力されるトリガ信号の有無を判定する。トリガ信号があったと判定した場合は、視覚センサ3により検出され、出力されるワーク100の座標、種類の情報に基づいて、新たにトラッキングデータD1を生成して記憶部22に記録する(ステップS2)。トリガ信号がなかったと判定した場合はステップS2をスキップする。
【0055】
ステップS3では、前回のデータ管理処理実行時からエンコーダ4の出力したパルスの計数値に基づくトラッキング範囲R5の移動量を、各トラッキングデータD1のトラッキング範囲移動量D13の値に加算し、トラッキング範囲移動量D13を更新する。ただし、今回生成したトラッキングデータD1については更新しない。
【0056】
ステップS4では、不要となったトラッキングデータD1があれば、当該トラッキングデータD1の記憶領域を開放する。例えば、コンベア同期可能エリアR11よりも下流側に位置するトラッキング範囲R5のトラッキングデータD1を消去する。なお、記憶領域の開放を行わずに、ステップS2において、コンベア同期可能エリアR11よりも下流側に位置するトラッキング範囲R5のトラッキングデータD1の記憶領域に新たなトラッキングデータD1を上書きするようにしてもよい。
【0057】
図6は、ロボットコントローラ6の演算部21が実行するトラッキング範囲監視処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、例えばハンドリング装置1の起動時に開始され、一定の周期(例えば0.1秒)で繰り返し実行される。ロボットコントローラ6の演算部21は、トラッキング範囲監視処理を実行しているときはトラッキングマネージャ21bとして機能する。
【0058】
ステップS11では、HeadのトラッキングデータD1のトラッキング範囲移動量D13が予め設定された下流側の閾値を超えたか否か判定する。すなわち、Headのトラッキング範囲R5がワーク検出エリアR12の下流側の境界線B2(図4参照)よりも下流に移動したか否かを判定する。そして下流側の閾値を越えたと判定した場合は、Headの値を1だけインクリメントする(ステップS12)。すなわち、現在のHeadのトラッキング範囲R5よりも一つ上流側のトラッキング範囲R5を新たなHeadのトラッキング範囲R5とする。下流側の閾値を超えていないと判定した場合はステップS12をスキップする。
【0059】
ステップS13では、Tail+1のトラッキングデータD1のトラッキング範囲移動量D13が予め設定された上流側の閾値を超えたか否か判定する。すなわち、Tailのトラッキング範囲R5よりも一つだけ上流側のトラッキング範囲R5が、上流側の境界線B1(図4参照)からワーク検出エリアR12へ進入し始めたか否か判定する。そして上流側の閾値を越えたと判定した場合は、Tailの値を1だけインクリメントする(ステップS14)。すなわち、現在のTailのトラッキング範囲R5よりも一つ上流側のトラッキング範囲R5を新たなTailのトラッキング範囲R5とする。下流側の閾値を超えていないと判定した場合はステップS14をスキップする。
【0060】
図7は、ロボットコントローラ6の演算部21が実行するワーク監視処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、例えばハンドリング装置1の起動時に開始される。ロボットコントローラ6の演算部21は、ワーク監視処理を実行しているときはワークマネージャ21cとして機能する。
【0061】
ステップS21では、カレント特定処理を実行する。カレント特定処理は、カレントトラック番号及びカレントワーク番号を特定する処理、すなわち、カレントワークを特定する処理である。ただし、ワーク検出エリアR12内にワーク100がない場合、ワーク検出エリアR12内のワーク100が割出し条件を満たさない場合、ワーク検出エリアR12内の全てのワーク100が既にカレントワークとして特定された後である場合には、カレントワークは特定されない。
【0062】
ステップS22では、ステップS21においてカレントワークが特定されたか否かを判定する。カレントワークが特定されたと判定した場合は、特定されたカレントワークを保持すべく、ロボット5による保持を行うための制御ルーチン(図9参照)にカレントトラック番号及びカレントワーク番号を入力する(ステップS23)。これにより、ロボット5のカレントワークへの追従制御が開始される。カレントワークが特定されなかったと判定した場合はステップS21に戻る。
【0063】
ステップS24では、次にカレントワークとなるべきワークのトラック番号及びワーク番号を特定する。なお、この処理は、実際にはステップS21と同一のルーチン(図8参照)の実行により行われる。
【0064】
ステップS25では表示部24の画面の更新を行う。具体的には、カレントワークの付加データD143の内容、次にカレントワークとなるワークの特定ができたか否か、次のカレントワークの付加データD143の内容等が表示部24に表示されるように画面の更新を行う。これにより、ユーザはワーク検出エリアR12内のワークの種類等、とりわけ、次にカレントワークとなるべきワーク100の種類等を把握することができ、仕分け、分別作業が可能となる。
【0065】
ステップS26では、ステップS24において次のワークが特定されたか否かを判定し、特定されなかったと判定した場合はステップS24に戻る。特定されたと判定した場合は、ステップS23において開始されたカレントワークの保持、仕分け等の制御が終了し、ロボット5が次のワークへの追従を開始可能か否かを判定し、開始可能と判定するまで待機する(ステップS27)。開始可能と判定した場合は、次のワークのトラック番号及びワーク番号をカレントトラック番号及びカレントワーク番号とし(ステップS28)、ステップS23に戻り、次の追従制御を開始する。
【0066】
図8は、図7のステップS21及びステップ24において実行されるカレント特定処理の手順を示すフローチャートである。
【0067】
ロボットコントローラ6の演算部21は、ステップS41では、前回のカレント特定処理において特定したカレントトラック番号及びカレントワーク番号を仮のカレントトラック番号及びカレントワーク番号として取得する。前回のカレントトラック番号及びカレントワーク番号を取得するのは、前回までのカレントトラック番号及びカレントワーク番号を基点として、上流側へワーク100の検索を行い、次のカレントトラック番号及びカレントワーク番号を特定するためである。
【0068】
ステップS42では、ステップS41で取得した仮のカレントトラック番号がHead以上であるか否かを判定し、Head以上と判定した場合はステップS44に進み、Head以上でないと判定した場合は、Head以上となるまで仮のカレントトラック番号を1だけインクリメントする(ステップS43)。すなわち、前回のカレントトラックがまだワーク検出エリアR12内にあるか否かを確認し、既に前回のカレントトラックがワーク検出エリアR12よりも下流側に移動している場合には、一つ上流側のトラック範囲R5を仮のカレントトラックとする。
【0069】
ステップS44では、仮のカレントトラック番号がTail以下であるか否か判定し、Tail以下と判定した場合はステップS45に進み、Tail以下でないと判定した場合は処理を終了する。すなわち、ワーク100の検索がワーク検出エリアR12よりも上流側まで進んだか否か確認し、ワーク検出エリアR12よりも上流側まで進んでいる場合には、カレントワークの特定をせずに処理を終了する。なお、この際、カレントトラック番号及びカレントワーク番号を特定できなかったことを示すフラグを立て、図7のステップS22及びS26では当該フラグを参照することにより判定処理を行う。
【0070】
ステップS45では、仮のカレントトラック番号が前回のカレントトラック番号から更新されたか否かを判定し、更新されていないと判定した場合は、仮のカレントワーク番号を1だけインクリメントする(ステップS46)。すなわち、前回のカレントワーク番号よりも1つだけ上流側のワーク番号を仮のカレントワーク番号とする。一方、仮のカレントトラック番号が更新されていると判定した場合は、仮のカレントワーク番号を初期値(例えば0)に設定する(ステップS47)。すなわち、カレントトラックの最も下流側のワーク100のワーク番号を仮のカレントワーク番号とする。
【0071】
ステップS48では、仮のカレントワーク番号が仮のカレントトラック番号のトラッキングデータD1のワーク個数D12よりも小さいか否か判定する。すなわち、ステップS46、S47で設定した仮のカレントワーク番号のワークが実際に存在するか否か確認する。
【0072】
仮のカレントトラッキング番号がワーク個数D12よりも小さくないと判定した場合、すなわち、既にカレントトラックの上流側までワークの検出が終了した場合、あるいは、カレントトラックにワークが存在しない場合は、ステップS43に戻り、さらに上流側のトラッキング範囲R5についてワークの検出を行う。
【0073】
仮のカレントトラッキング番号がワーク個数D12よりも小さいと判定した場合、ユーザにより割出し条件が設定されているか否か判定し(ステップS49)、割出し条件が設定されていると判定した場合は、仮のカレントワーク番号のワークデータD14の付加データD143を参照し、割出し条件を満たすか否か判定する。例えば、付加データD143に保持されたワーク100の種類と、割出し条件として予め設定されたワーク100の種類とが一致するか否か判定する。割出し条件が満たされないと判定した場合は、ステップS46に戻り、さらに上流側のワークを検索する。
【0074】
ステップS49において割出し条件が設定されていないと判定した場合及びステップS50において割出し条件が満たされると判定した場合は、仮のカレントトラック番号及びカレントワーク番号を、真のカレントトラック番号及びカレントワーク番号として出力して(ステップS51)、処理を終了する。
【0075】
なお、ステップS51においてカレントトラック及びカレントワーク番号として出力されたワークデータD14、あるいは、ステップS48からS49に進むことのできたワークデータD14に対してフラグを立て、後の処理において当該フラグを参照することにより、同一のワークがカレントワークとして特定されないようにしてもよい。
【0076】
図8に例示した処理において、割出し条件は選択条件の一例である。また、ステップS46、S47により、下流側のワークから検索されているから、図8に例示した処理において、より下流側に位置することも選択条件の一例である。
【0077】
図9は、ロボットコントローラ6の演算部21が実行する制御処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、図7のステップS23をトリガとして開始される。ロボットコントローラ6の演算部21は、制御処理を実行しているときは制御部21dとして機能する。
【0078】
ロボットコントローラ6の演算部21は、ステップS61では、カレントトラック番号のトラッキングデータD1のトラッキング範囲移動量D13と、当該トラッキングデータD1に含まれる、カレントワーク番号のワークデータD14の座標データD142に基づいて、カレントワークの撮像領域R2に対する相対位置、ひいては、カレントワークとロボット5との相対位置を特定する。
【0079】
ステップS62では、ステップS61で特定した相対位置に基づいて、ロボット5の保持部5aをカレントワークに追従させるのに必要なx軸方向、y軸方向の距離等を算定し、カレントワークを保持する目標位置や目標位置までの動作速度を特定する。
【0080】
ステップS63では、カレントワーク番号のワークデータD14の付加データD143を参照して、ロボット5により保持したカレントワークの搬送先を特定する。例えば、ワーク100の種類に応じて異なる搬送先に搬送され、ワーク100が種類別に仕分けされるように、付加データD143に保持されているワーク100の種類を参照するとともに、ワーク100の種類毎に対応付けられて予めROM等に記録されている搬送先を検索する。
【0081】
ステップS64では、ステップS62で設定した目標保持位置への保持部5aの移動、ステップS63で特定した搬送先へのワークの搬送を行うように、ロボット5に制御信号を出力する。そして、搬送先において保持部5aによるワークの保持を解除したこと等を条件とする終了条件が満たされたか否かを判定し(ステップS65)、満たされたと判定した場合は処理を終了する。
【0082】
なお、搬送先の特定や制御の終了は、ユーザによる入力部23に対する操作をトリガとする割り込み処理により実行され、あるいは設定変更されるようにしてもよい。これにより、例えば、ユーザは、図7のステップS25において更新される画面により次のワークの情報を得つつ、適宜に仕分け等を行うことができる。
【0083】
図4〜図9では一のロボット5及びロボットコントローラ6の動作について説明したが、ロボット5及びロボットコントローラ6が複数の場合も同様である。ただし、同一のワーク100に対して複数のロボット5が追従しないように、複数のロボットコントローラ6に対して優先順位を設定するとともに、ロボットコントローラ6間においてカレントトラック番号やカレントワーク番号についての情報交換を行い、カレントトラック番号及びカレントワーク番号が複数のロボットコントローラ6間において重複した場合には、優先順位の高いロボットコントローラ6が当該カレントトラック番号及びカレントワーク番号のワーク100の保持を行い、優先順位の低いロボットコントローラ6は、新たにカレントトラック番号及びカレントワーク番号の特定を開始する。
【0084】
以上のハンドリング装置1によれば、トラッキングマネージャ21bが、複数のトラッキング範囲R5について撮像領域R2からの移動量を監視し、ワーク検出エリアR12内を通過中のトラッキング範囲R5を特定し、ワークマネージャ21cが、ロボット5により保持すべきワーク100をワーク検出エリアR12内のトラッキング範囲R5内から選択する。すなわち、ハンドリング装置1はトラッキング範囲R5毎にワーク100のロボット5に対する相対位置を監視してハンドリングすべきワーク100を選択している。従って、ワーク100に関するデータを効率的に処理することができる。例えば、ワーク100それぞれの移動量を監視する必要や、ワーク100のデータをキーとしてトラック範囲R5の移動量を特定する必要がない。ロボット5から比較的離れた位置の個々のワークについて種々の計算等をする手間も省かれる。
【0085】
換言すれば、ハンドリング装置1では、トラッキング範囲R5毎にワーク100のデータを管理することにより、データの効率的な処理を可能である。例えば、トラッキング範囲それぞれに対応する複数のトラッキングデータD1が生成され、トラッキングデータD1には、トラッキング範囲移動量D13、ワークデータD14が含まれ、ワークデータD14には、座標データD142が含まれ、データ管理部21aは、エンコーダ4の検出結果に基づいてトラッキング範囲移動量D13を更新し、トラッキングマネージャ21bは、トラッキング範囲移動量D13を監視してワーク検出エリアR12を通過中のトラッキング範囲R5のトラッキングデータD1を特定し、ワークマネージャ21cは、その特定されたトラッキングデータD1からワークデータD14を選択し、制御部21dは、その特定されたトラッキングデータD1及びワークデータD14に基づいてワーク100の位置を特定することにより、データが効率的に処理される。
【0086】
視覚センサ3は、撮像した画像に基づいてワーク100の外観に関連する付加データD143を生成し、ワークマネージャ21cは、付加データD143を参照して選択条件を満たすワーク100を選択する。この際、検索対象がワーク検出エリアR12を通過中のトラッキング範囲R5に絞られているから、選択条件を満たすワークを効率的に探し出すことができる。制御部21dによる付加データD143の内容に応じたワークの仕分けも同様である。また、表示部24にカレントワーク又は次にカレントワークとなるワークの付加データD143の内容が表示され、カレントワーク等の位置はワーク検出エリアR12内に絞られているから、ユーザにとって、いずれのワークの情報が表示部24に表示されているのか把握が容易になる。
【0087】
本発明は以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施してよい。
【0088】
本発明の適用される対象はハンドリング装置に限定されない。搬送路に沿って搬送される複数の物品に対して選択的に作業を行うものであればよい。例えば、コンベアにより搬送される複数の物品に対して選択的に塗装を行う装置でもよい。
【0089】
トラッキング範囲の移動量の監視は、撮像領域からのトラッキング範囲の相対位置を特定可能な情報により行われればよく、トラッキングデータの更新及び参照によるものに限定されない。例えば、撮像が行われるたびにその時の計数値を記録し、現在の計数値から各撮像時の計数値を差し引くことによりトラッキング範囲の移動量を監視してもよい。
【0090】
検出エリアは、搬送路の一部に設定されるのであれば、位置、大きさは適宜に設定してよく、コンベア同期可能エリアの上流側の一部の範囲に限定されない。例えば、検出エリアの上流側境界線がコンベア同期可能エリアの上流側境界線よりも上流側にあってもよい。また、ハンドリング装置等の稼働中にユーザ等によって適宜に位置、大きさが変更されてもよい。
【0091】
視覚センサにより特定される付加情報は、画像に基づいて特定されるものであればよく、物品の種類に限定されない。例えば、物品の外観検査による欠陥の有無の情報であってもよい。
【0092】
トラッキングデータは、トラッキング範囲の移動量の情報と、当該トラッキング範囲のワークに関連する情報とが対応付けられて保持されていればよく、データ形式等は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施形態のハンドリング装置の全体構成を示す概略図。
【図2】図1のハンドリング装置の信号系の構成を示すブロック図。
【図3】図1のハンドリング装置のロボットコントローラに記録されるトラッキングデータの構成を示す概念図。
【図4】図1のハンドリング装置の動作を示す概念図。
【図5】図1のハンドリング装置のロボットコントローラが実行するデータ管理処理の手順を示すフローチャート。
【図6】図1のハンドリング装置のロボットコントローラが実行するトラッキング範囲監視処理の手順を示すフローチャート。
【図7】図1のハンドリング装置のロボットコントローラが実行するワーク監視処理の手順を示すフローチャート。
【図8】図1のハンドリング装置のロボットコントローラが実行するカレント特定処理の手順を示すフローチャート。
【図9】図1のハンドリング装置のロボットコントローラが実行する制御処理の手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0094】
1…ハンドリング装置、3…視覚センサ、4…エンコーダ(移動量検出手段)、5…ロボット(ハンドリング手段)、12…ベルト(載置部)、21b…トラッキングマネージャ(トラッキング範囲監視手段)、21c…ワークマネージャ(物品選択手段)、21d…制御部、100…ワーク(物品)、R1…搬送路、R2…撮像領域、R5…トラッキング範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物品が載置される載置部を搬送路に沿って移動させ、前記複数の物品を搬送する搬送手段と、
前記搬送路に設定された撮像領域の撮像を所定の時間間隔で繰り返し、前記載置部を搬送方向において分割した複数のトラッキング範囲の画像を取得し、取得した各画像に基づいて各トラッキング範囲内の物品の前記各トラッキング範囲に対する相対位置を検出する視覚センサと、
前記載置部の移動量を検出する移動量検出手段と、
前記移動量検出手段の検出する移動量に基づいて、前記複数のトラッキング範囲の前記撮像領域からの移動量を監視し、所定の検出エリア内を通過中のトラッキング範囲を特定するトラッキング範囲監視手段と、
前記トラッキング範囲監視手段により特定されたトラッキング範囲内において所定の選択条件を満たす物品を選択する物品選択手段と、
前記載置部に載置されている前記複数の物品を選択的に保持するハンドリング手段と、
前記物品選択手段により選択された物品を保持するように前記ハンドリング手段の動作を制御する制御手段と、
を備えたハンドリング装置。
【請求項2】
前記複数のトラッキング範囲それぞれに対応する複数のトラッキングデータを生成するデータ管理手段と、
前記データ管理手段により生成された前記複数のトラッキングデータを記憶する記憶手段と、
を更に備え、
前記トラッキングデータには、対応するトラッキング範囲の前記撮像領域からの移動量を特定可能な移動量情報が含まれ、当該対応するトラッキング範囲に物品がある場合には、当該対応するトラッキング範囲内の物品の数と同数の物品データが更に含まれ、
前記物品データには、対応する物品の前記トラッキング範囲に対する相対位置を特定可能な物品位置情報が含まれ、
前記データ管理手段は、前記移動量検出手段の検出する移動量に基づいて、前記記憶手段に記憶された前記移動量情報を更新し、
トラッキング範囲監視手段は、前記トラッキングデータの前記移動量情報を参照して前記トラッキング範囲の前記撮像領域からの移動量を監視し、前記検出エリアを通過中のトラッキング範囲のトラッキングデータを特定し、
前記物品選択手段は、前記トラッキング範囲監視手段により特定されたトラッキングデータに含まれる物品データを参照して、前記選択条件を満たす物品データを選択し、
前記制御手段は、前記トラッキング範囲監視手段により特定されたトラッキングデータに含まれる前記移動量情報及び前記物品選択手段により選択された物品データに含まれる前記物品位置情報に基づいて前記物品の前記ハンドリング手段に対する相対位置を特定し、前記ハンドリング手段を前記物品に追従させる
請求項1に記載のハンドリング装置。
【請求項3】
前記視覚センサは、前記画像に基づいて前記物品の外観に関連する付加情報を特定し、
前記データ管理手段は、前記物品の付加情報が当該物品に対応する物品データに含まれるように前記トラッキングデータを生成し、
前記物品選択手段は、前記トラッキング範囲監視手段により特定されたトラッキングデータに含まれる前記物品データの付加情報を参照して前記選択条件を満たす物品データを選択する
請求項2に記載のハンドリング装置。
【請求項4】
前記視覚センサは、前記画像に基づいて前記物品の外観に関連する付加情報を特定し、
前記データ管理手段は、前記物品の付加情報が当該物品に対応する物品データに含まれるように前記トラッキングデータを生成し、
前記制御手段は、前記物品選択手段により選択された物品データの付加情報を参照して、付加情報の内容に応じて異なる動作を前記ハンドリング手段に実行させる
請求項2又は3に記載のハンドリング装置。
【請求項5】
所定の情報を表示する表示装置を更に備え、
前記視覚センサは、前記画像に基づいて前記物品の外観に関連する付加情報を特定し、
前記データ管理手段は、前記物品の付加情報が当該物品に対応する物品データに含まれるように前記トラッキングデータを生成し、
前記表示装置は、前記物品選択手段により選択された物品データの付加情報を表示する
請求項2〜5のいずれか1項に記載のハンドリング装置。
【請求項6】
前記付加情報は、前記物品の種類を特定可能な情報である
請求項3〜5のいずれか1項に記載のハンドリング装置。
【請求項7】
複数の物品が載置される載置部を搬送路に沿って移動させ、前記複数の物品を搬送する搬送手段と、
前記搬送路に設定された撮像領域の撮像を所定の時間間隔で繰り返し、前記載置部を搬送方向において分割した複数のトラッキング範囲の画像を取得し、取得した各画像に基づいて各トラッキング範囲内の物品の前記各トラッキング範囲に対する相対位置を検出する視覚センサと、
前記載置部の移動量を検出する移動量検出手段と、
前記移動量検出手段の検出する移動量に基づいて、前記複数のトラッキング範囲の前記撮像領域からの移動量を監視し、所定の検出エリア内を通過中のトラッキング範囲を特定するトラッキング範囲監視手段と、
前記トラッキング範囲監視手段により特定されたトラッキング範囲内において所定の選択条件を満たす物品を選択する物品選択手段と、
前記載置部に載置されている前記複数の物品に対して選択的に作業を行う作業手段と、
前記物品選択手段により選択された物品を保持するように前記作業手段の動作を制御する制御手段と、
を備えた作業装置。
【請求項8】
複数の物品が載置される載置部が移動する搬送路に設定された撮像領域の撮像を所定の時間間隔で繰り返し、前記載置部を搬送方向において分割した複数のトラッキング範囲の画像を取得し、取得した各画像に基づいて各トラッキング範囲内の物品の前記各トラッキング範囲に対する相対位置を検出する視覚センサ、前記載置部の移動量を検出する移動量検出手段及び前記載置部に載置されている前記複数の物品を選択的に保持するハンドリング手段と接続されるコンピュータを、
前記移動量検出手段の検出する移動量に基づいて、前記複数のトラッキング範囲の前記撮像領域からの移動量を監視し、所定の検出エリア内を通過中のトラッキング範囲を特定するトラッキング範囲監視手段、
前記トラッキング範囲監視手段により特定されたトラッキング範囲内において所定の選択条件を満たす物品を選択する物品選択手段、及び
前記物品選択手段により選択された物品を保持するように前記ハンドリング手段の動作を制御する制御手段
として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−15055(P2007−15055A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199060(P2005−199060)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】