説明

プリント配線板

【課題】 リード部品を介さないで、ICチップと直接電気的接続し得る多層プリント配線板を提案する。
【解決手段】 多層プリント配線板は、コア基板30にICチップ(CPU)20A及びICチップ(キャッシュメモリ)20Bを予め内蔵させて、該ICチップ20A、20Bのダイパッド24には、トラジション層38を配設させている。このため、リード部品や封止樹脂を用いず、ICチップと多層プリント配線板との電気的接続を取ることができる。また、アルミダイパッド24上にトラジション層38を設けることで、ダイパッド24上の樹脂残りを防ぐことができ、ダイパッド24とバイアホール60との接続性や信頼性を向上させる。また、複数のICチップを内蔵させることで、高集積化を達成できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特にICチップなどの半導体素子を内蔵する多層プリント配線板に関するのもである。
【0002】
【従来の技術】現在、フリップチップ実装はビルドアッププリント配線板を用いられている。ビルドアップ多層プリント配線板は、例えば、特開平9−130050号などに開示される方法にて製造されている。すなわち、基板上の導体回路の表面に無電解めっきやエッチングにより、粗化層を形成させて、樹脂層を施して、層間導通のためのバイアホール開口部を形成させて、層間樹脂絶縁層を形成する。さらに、その層間絶縁層に酸や酸化剤などにより粗化処理を施した粗化面にパラジウムなどの触媒を付け、無電解めっき膜を形成し、そのめっき膜上にレジストにてパターンを形成し、電解めっきで厚付けしたのち、現像液でレジストを剥離除去し、エッチングして導体回路を作り出させる。これを繰り返すことにより、ビルドアップ多層プリント配線板が得られる。表層には、半田バンプが形成されて、半導体素子とフリップチップ実装によって接続が取られている。
【0003】さらに高密度化、高機能化を有するプリント配線板が要望されている。それに対応すべくプリント配線板の構造を提案する必要があった。
【0004】また、従来の実装方法では、ICチップとプリント配線板の間に接続用のリード部品(ワイヤー、リード、バンプ)を介して電気的接続を行なっている。それらのリード部品は、切断、腐食しやすいので、ICチップとの接続が途絶えたり、誤作動の原因になることもあった。それに、それぞれに実装方法は、ICチップを保護するためにエポキシ樹脂などのより封止を行なっているが、その際気泡などが含有すると、リード部品の破壊やICパッドの腐食、信頼性の低下を招いてしまう。それらを回避する意味でもリード部品を介さないでICチップと直接電気的接続し得るプリント配線板の構造を提案する必要があった。
【0005】上記課題に対応する構造として、基板に半導体素子を埋め込んで、該素子上に配線層を形成して、半導体素子と外部との接続を取ることを提案する。
【0006】半導体素子を基板に収容、収納、内蔵もしくは埋め込む従来技術としては、特開平9−321408号(USP5875100)、特開平10−256429号、特開平11−126978号などがある。それぞれは、基板に半導体素子を埋め込んで、その上層に、ビルドアップ層を形成させることにより電気的接続を取る。
【0007】特開平9−321408号(USP5875100)には、ダイパッド上に、スタッドバンプを形成した半導体素子をプリント配線板に埋め込んで、スタッドバンプ上に配線を形成して電気的接続を取っていた。しかしならが、該スタッドバンプはタマネギ状であり高さのバラツキが大きいために、層間絶縁層を形成させると、平滑性が低下し、バイアホールを形成させても未接続になりやすい。また、スタッドバンプをボンディングにより一つ一つ植設しており、一括して配設することができず、生産性という点でも難点があった。
【0008】特開平10−256429号には、セラミック基板に半導体素子を収容し、フリップチップ形態によって電気的接続されている構造が示されている。しかしながら、セラミックは外形加工性が悪く、半導体素子の納まりがよくない。また、該バンプでは、高さのバラツキも大きくなった。そのために、層間絶縁層の平滑性が損なわれ、接続が低下してしまう。
【0009】特開平11−126978号には、空隙の収容部に半導体素子などの電子部品埋め込んで、導体回路と接続して、バイアホールを介して積蔵している多層プリント配線板が示されている。しかしながら、収容部が空隙であるために、位置ずれを引き起こしやすく、半導体素子のパッドとの未接続が起き易い。また、ダイパッドと導体回路とを直接接続させているので、ダイパッドに酸化被膜ができやすく、絶縁抵抗が上昇してしまう問題がある。
【0010】本願発明は、半導体素子の収納を安定化して、リード部品を介さないで、ICチップと直接電気的接続し得るプリント配線板を提案することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】発明者らが鋭意研究した結果、以下の発明により、半導体素子を収納、収納、内蔵もしくは埋め込まれたプリント配線板を得ることができることを創出した。
【0012】請求項1の発明では、基板上に、層間絶縁層と導体回路が繰り返し積層されて、バイアホールを介して電気的接続を取るプリント配線板において、前記基板には、キャビティが形成されていて、該キャビティには、半導体素子が2個以上収容、収納あるいは埋め込まれている。それにより、複数の半導体素子を備えることを特徴とする。半導体素子を複数個を有するので、実装密度が高くなり、さらなる高密度化が達成される。
【0013】また、半導体素子が埋め込まされている構造のため、従来のフリップチップ実装したプリント配線板よりも外部基板、外部端子までの配線長を短くすることができる。それに、半導体同士の接続も不要な配線を配設することなくなる。よって、高速化された信号の遅延や誤作動も低減されるし、ループインダクタンスもより低減される。さらに、半導体素子を含めたトータルの厚みを従来のフリップチップよりも薄くすることができる。そのため、筐体を薄くする必要を有する製品、例えばノートパソコン、携帯電話、モーバイル製品、通信装置等の種々の電子機器に用いられるものとして最適である。
【0014】キャビティが形成されるプリント配線板としては、樹脂を主成分としてものがよい。ガラスエポキシ、心材などの補強材が含浸されたもの、銅張り積層板、種々のプリプレグなどを積層した基材などを用いることができる。具体例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、BT樹脂、ポリエステル樹脂などがある。
【0015】セラミック基板やそれらを主となる基板(ALN、ムライト、窒化珪素、アルミナなどの高温焼結を必要とする材料)などを用いることも検討されたが、外形加工性が悪く、また、層間絶縁層との熱膨脹率の差が大きいために、用いることは不可能であった。
【0016】請求項2の発明では、基板上に、層間絶縁層と導体回路が繰り返し積層されて、バイアホールを介して電気的接続を取るプリント配線板において、前記基板には、キャビティが形成されていて、該キャビティには、トランジション層を有する半導体素子が2個以上収容、収納あるいは埋め込まれているプリント配線板である。
【0017】ダイパッドと層間絶縁層のバイアホールとの間にトランジション層が設けられている。トランジション層を形成しないでダイパッド上に直接、バイアホールを形成させると、層間絶縁層を感光性樹脂などを用いた場合、露光、現像を経て、バイアホールを形成させると、ダイパッド上の表層に樹脂残りやすかった。それに現像液の付着によりダイパッドの変色を引き起こした。また、レーザによってバイアホールを形成させた場合は、ビア径がダイパッド径より大きいときには、ダイパッド及びパシベーション膜(IC保護膜)がレーザによって破壊された。半導体素子のダイパッド上にトランジション層を設けることにより、それらを防止することができた。
【0018】また、ダイパッドがトランジション層で覆われている。そのために、種々の工程を経る、酸や酸化剤のあるいはエッチング液に浸積させたり、アニール工程や熱硬化を経てもダイパッドの変色、溶解が発生しない。また、ダイパッドの酸化膜を形成することがない。そのため、パッドとバイアホールとの接続性や信頼性を向上させる。
【0019】トランジション層の形成は、半導体素子に予め形成した後、プリント配線板に収容、収納、内蔵もしくは埋め込んでもよく。プリント配線板に埋め込んだ後、形成させてもよい。
【0020】請求項3の発明では、半導体素子は、少なくとも1個は、演算機能(CPU)を有する半導体素子であり、少なくとも1個は、記憶機能(メモリー)を有する半導体素子である。
【0021】1つの半導体素子で演算機能(CPU)と記憶機能(メモリー)を有するものを実装させてもよいが、そのために半導体素子が大きくなるために、埋め込む際に傾きやすいのと、小さいもので別々に作成した方が廉価になるし、それぞれ半導体素子は近傍の位置にあることから、伝達遅延や誤作動を引き起こすこともない。また、プリント配線板の設計変更があった場合でも半導体素子自体の設計変更も要らなく、形成の自由度を高められるという効果も有する。
【0022】請求項4の発明では、前記キャビティには、抵抗、コンデンサあるいはインダクタンスの中から選ばれる1種以上が収容、収納、もしくは埋め込まれている。
【0023】半導体素子以外にも抵抗、コンデンサあるいはインダクタンスが配設されているので、電気特性、特に初期動作における作動が遅延や誤作動なく行なうことを可能としている。また、半導体素子から、抵抗、コンデンサあるいはインダクタンスとの距離を短くすることもできるので、ループインダクタンスも確実に低減させることができる。
【0024】抵抗、コンデンサあるいはインダクタンスの端子の表面には、めっき(特に銅めっき)を施すことが好適である。めっき(特に銅めっき)により形成するバイアホールとの密着性が高められるからである。
【0025】請求項5の発明では、半導体素子のトランジション層は、少なくとも2層以上であることが望ましい。少なくともダイパッド上に形成される金属とバイアホール上に形成される金属とは、別々の金属で形成されるのがよい。より望ましいのは、ダイパッドと接続する金属は、スパッタ、蒸着、電着によって形成された薄くて硬い金属で形成されるのがよい。該金属とダイパッドと強固に接合される。又、バイアホールと接続される金属は、電解めっきによって形成される。電解めっき膜は、柔らかく展性に富んでいる。そのため、該トランジション近傍に応力が加わったとしても緩和することができる。上記の組み合わせで形成されているので、ダイパッド付近は強固であるが、バイアホール付近は、柔らかいので、ヒートサイクル条件下においても信頼性が向上させることができる。
【0026】請求項6の発明では、半導体素子のトランジション層の最下層には、スズ、クロム、チタン、ニッケル、亜鉛、コバルト、金、銅のいずれかから、選ばれる少なくとも1種類以上で積層されている。
【0027】ダイパッド上に形成される金属は、スズ、クロム、チタン、ニッケル、亜鉛、コバルト、金、銅のいずれかがよい。形成方法には、スパッタ、蒸着、電着、めっきのいすれかで行われる、特に、クロム、チタン、ニッケルで形成されることが望ましい。それらの金属は、ダイパッドとの間で、化学反応や電極反応を引き起こさないでことと、その上層に形成される金属(特にめっきで形成される金属)との相性がよい。また、電気伝達性も低下させないからである。界面から湿分の侵入がなく、金属密着性に優れるからである。
【0028】請求項7の発明では、半導体素子のトランジション層の最上層は、ニッケル、銅、金、銀の中から選ばれるのがよい。該トランジション層を成し、バイアホールと接続させる金属は、ニッケル、銅、金、銀の中から選ばれるものがよい。形成方法には、無電解めっき、電解めっきによって行われる。特に、銀、銅のいずれかで形成されることが望ましい。銀は、電気特性がよいからであり、銅は、電気特性もよく、廉価で形成することができるからである。それに、バイアホールの配線は、銅を主として形成されているので、同一金属のために金属内での剥離やクラックを引き起こさないからでもある。
【0029】請求項8の発明では、半導体素子のトランジション層は、第1薄膜層、第2薄膜層、厚付け層で形成されている。半導体素子のダイパッド上に第1薄膜層、第2薄膜層、厚付け層の順で形成されるのがよい。第1薄膜層は、スパッタ、蒸着、電着によって形成されるのがよい。厚みは、0.001〜2.0μmの範囲で形成される。特に、0.01〜1.0μmで形成されることが望ましい。その理由として、ダイパッドを完全に覆うことができ、該トランジション層の電気特性の劣化を引き起こさないからである。第2薄膜層は、スパッタ、蒸着、電着、めっきによって形成されるのがよい。厚みは、0.01〜5.0μmの範囲で形成される。特に、0.1〜3.0μmで形成されることが望ましい。その理由は、第1薄膜層と同様である。厚付け層は、無電解めっき、電解めっきで形成されることがよい。厚みは、1〜20μmの範囲で形成される。特に望ましいのは、5〜15μmで形成されることが望ましい。バイアホール形成の際の影響を受け難いのとヒートサイクル時の応力緩和がされやすいからである。
【0030】請求項9の発明では、半導体素子のトランジション層の第1薄膜層には、スズ、クロム、チタン、ニッケル、亜鉛、コバルト、金、銅のいずれかから選ばれるものがよい。
【0031】請求項10の発明では、半導体素子のトランジション層の第2薄膜層は、ニッケル、銅、金、銀の中から選ばれることがよい。
【0032】請求項11の発明では、キャビティには、接着剤層が充填されている。該キャビティの半導体素子および抵抗、コンデンサもしくインダクタンスを接合させることができ、ヒートサイクル時やバイアホール形成時の熱履歴を経ても接着剤が半導体素子などの挙動を抑え、平滑性が保たれる。そのために、バイアホールとの接続部分における剥離や断線、もしくは層間絶縁層のクラックを引き起こさない。それに信頼性をも向上さえることができる。
【0033】請求項12の発明では、接着剤の厚みは、キャビティ内の半導体素子、電子部品の厚みによって変動させる。それによって、キャビティの上面に凹凸がなくなり、層間絶縁層を形成させてもうねりがないので、バイアホールの形成が所望の大きさ、形状になるために確実に半導体素子、その他の端子と接続される。故に、接続性、信頼性をも向上させることができる。
【0034】本発明で定義されるトランジション層について説明する。トランジション層は、従来のICチップ実装技術を用いることなく、半導体素子であるICチップとプリント配線板と直接接続を取るために設けられた中間の仲介層を意味する。特徴としては、2層以上の金属層で形成され、半導体素子であるICチップのダイパッドよりも大きくさせることにある。それによって、電気的接続や位置合わせ性を向上させるものであり、かつ、ダイパッドにダメージを与えることなくレーザやフォトエッチングによるバイアホール加工を可能にするものである。そのため、プリント配線板へのICチップの埋め込み、収容、収納や接続を確実にすることができる。また、トランジション層上には、直接、プリント配線板の導体層である金属を形成することを可能にする。その導体層の一例としては、層間樹脂絶縁層のバイアホールや基板上のスルーホールなどがある。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。先ず、本発明の第1実施形態に係る多層プリント配線板の構成について、多層プリント配線板10の断面を示す図7を参照して説明する。
【0036】図7に示すように多層プリント配線板10は、ICチップ(CPU)20A及びICチップ(キャッシュメモリ)20Bを収容するコア基板30と、層間樹脂絶縁層50、層間樹脂絶縁層150とからなる。層間樹脂絶縁層50には、バイアホール60および導体回路58が形成され、層間樹脂絶縁層150には、バイアホール160および導体回路158が形成されている。
【0037】ICチップ20A、20Bには、パッシベーション膜24が被覆され、該パッシベーション膜24の開口内に入出力端子を構成するダイパッド22が配設されている。アルミニウム製のダイパッド22の上には、トランジション層38が形成されている。該トランジション層38は、第1薄膜層33、第2薄膜層36、厚付け膜37の3層構造からなる。
【0038】層間樹脂絶縁層150の上には、ソルダーレジスト層70が配設されている。ソルダーレジスト層70の開口部71下の導体回路158には、図示しないドータボード、マザーボード等の外部基板と接続するためのBGA76が設けられている。
【0039】本実施形態の多層プリント配線板10では、コア基板30にICチップ20A、20Bを予め内蔵させて、該ICチップ20A、20Bのダイパッド22にはトランジション層を38を配設させている。このため、リード部品や封止樹脂を用いず、ICチップと多層プリント配線板(パッケージ基板)との電気的接続を取ることができる。また、ICチップ部分にトランジション層38が形成されていることから、ICチップ部分には平坦化されるので、上層の層間絶縁層50も平坦化されて、膜厚みも均一になる。更に、トランジション層によって、上層のバイアホール60を形成する際も形状の安定性を保つことができる。
【0040】更に、ダイパッド22上に銅製のトランジション層38を設けることで、ダイパッド22上の樹脂残りを防ぐことができ、また、後工程の際に酸や酸化剤あるいはエッチング液に浸漬させたり、種々のアニール工程を経てもダイパッド22の変色、溶解が発生しない。これにより、ICチップのダイパッドとバイアホールとの接続性や信頼性を向上させる。更に、40μm前後の径のダイパッド22上に60μm径以上のトランジション層38を介在させることで、60μm径のバイアホールを確実に接続させることができる。
【0041】本実施形態では、CPU用ICチップ20Aとキャッシュメモリ用ICチップ20Bとを2個別々にプリント配線板に埋め込んである。ICチップは、別々に作成した方が廉価になり、それぞれICチップは近傍の位置にあることから、伝達遅延や誤作動を引き起こすこともない。また、プリント配線板の設計変更があった場合でもICチップ自体の設計変更も要らなく、形成の自由度を高められる。
【0042】本実施形態のプリント配線板の凹部32には、接着剤層34が充填されている。該凹部32のICチップ20A、20Bを接合させることができ、ヒートサイクル時やバイアホール形成時の熱履歴を経ても接着剤34がICチップ20A、20Bの挙動を抑え、平滑性が保たれる。そのために、バイアホールとの接続部分における剥離や断線、もしくは層間絶縁層50、150のクラックを引き起こさない。それに信頼性をも向上さえることができる。
【0043】引き続き、図7を参照して上述した多層プリント配線板の製造方法について、図1〜図6を参照して説明する。
【0044】(1)先ず、ガラスクロス等の心材にエポキシ等の樹脂を含浸させたプリプレグを積層した絶縁樹脂基板(コア基板)30を出発材料とする(図1(A)参照)。次に、コア基板30の片面に、ザグリ加工でICチップ収容用の凹部32を形成する(図1(B)参照)。ここでは、ザグリ加工により凹部を設けているが、開口を設けた絶縁樹脂基板と開口を設けない樹脂絶縁基板とを張り合わせることで、収容部を備えるコア基板を形成できる。
【0045】(2)その後、凹部32に、印刷機を用いて接着材料34を塗布する。このとき、塗布以外にも、ポッティングなどをしてもよい。次に、ICチップ20A、20Bを接着材料34上に載置する(図1(C)参照)。
【0046】(3)そして、ICチップ20A、20Bの上面を押す、もしくは叩いて凹部32内に完全に収容させる(図2(A)参照)。これにより、コア基板30を平滑にすることができる。
【0047】(4)その後、ICチップ20A、20Bを収容させたコア基板30に蒸着、スパッタリングなどを行い、全面に導電性の第1薄膜層33を形成させる(図2(B))。その金属としては、ニッケル、亜鉛、クロム、コバルト、チタン、金、銅、スズ、鉄などがよい。特に、ニッケル、クロム、チタンを用いることが、膜形成上と電気特性上でふさわしい。厚みとしては、0.001〜2.0μmの間で形成させるのがよい。クロムの場合には0.1μmの厚みが望ましい。
【0048】第1薄膜層33により、ダイパッド22の被覆を行い、トランジション層とICチップにダイパッド22との界面の密着性を高めることができる。また、これら金属でダイパッド22を被覆することで、界面への湿分の侵入を防ぎ、ダイパッドの溶解、腐食を防止し、信頼性を高めることができる。また、この第1薄膜層33によって、リードのない実装方法によりICチップとの接続を取ることができる。ここで、クロム、チタンを用いることが、界面への湿分の侵入を防ぐために望ましい。
【0049】(5)第1薄膜層33上に、スパッタ、蒸着、又は、無電解めっきにより、第2薄膜層36を形成させる(図2(C))。その金属としてはニッケル、銅、金、銀などがある。電気特性、経済性、また、後程で形成されるビルドアップである導体層は主に銅であることから、銅を用いるとよい。
【0050】第2薄膜層を設ける理由は、第1薄膜層では、後述する厚付け層を形成するための電解めっき用のリードを取ることができないためである。第2薄膜層36は、厚付けのリードとして用いられる。その厚みは0.01〜5μmの範囲で行うのがよい。0.01μm未満では、リードとしての役割を果たし得ず、5μmを越えると、エッチングの際、下層の第1薄膜層がより多く削れて隙間ができてしまい、湿分が侵入し易くなり、信頼性が低下するからである。
【0051】(6)その後、レジストを塗布し、露光、現像してICチップのダイパッドの上部に開口を設けるようにメッキレジスト35を設け、以下の条件で電解めっきを施し、電解めっき膜(厚付け膜)37を設ける(図3(A))。
【0052】
〔電解めっき水溶液〕
硫酸 2.24 mol/l 硫酸銅 0.26 mol/l 添加剤(アトテックジャパン製、カパラシドHL)
19.5 ml/l 〔電解めっき条件〕
電流密度 1A/dm時間 65分 温度 22±2℃
【0053】メッキレジスト35を除去した後、メッキレジスト35下の無電解第2薄膜層36、第1薄膜層33をエッチングで除去することで、ICチップのダイパッド22上にトランジション層38を形成する(図3(B))。ここでは、メッキレジストによりトランジション層を形成したが、無電解第2薄膜層36の上に電解めっき膜を均一に形成した後、エッチングレジストを形成して、露光、現像してトランジション層以外の部分の金属を露出させてエッチングを行い、ICチップのダイパッド上にトランジション層を形成させることも可能である。電解めっき膜の厚みは1〜20μmの範囲がよい。それより厚くなると、エッチングの際にアンダーカットが起こってしまい、形成されるトランジション層とバイアホールと界面に隙間が発生することがあるからである。
【0054】(7)次に、基板にエッチング液をスプレイで吹きつけ、トランジション層38の表面をエッチングすることにより粗化面38αを形成する(図3(C)参照)。無電解めっきや酸化還元処理を用いて粗化面を形成することもできる。トランジション層38は、第1薄膜層33、第2薄膜層36、厚付け膜37の3層構造からなる。
【0055】(8)上記工程を経た基板に、厚さ50μmの熱硬化型樹脂シートを温度50〜150℃まで昇温しながら圧力5kg/cm2で真空圧着ラミネートし、層間樹脂絶縁層50を設ける(図4(A)参照)。真空圧着時の真空度は、10mmHgである。
【0056】(9)次に、波長10.4μmのCO2ガスレーザにて、ビーム径5mm、トップハットモード、パルス幅5.0μ秒、マスクの穴径0.5mm、1ショットの条件で、層間樹脂絶縁層50に直径80μmのバイアホール用開口48を設ける(図4(B)参照)。クロム酸を用いて、開口48内の樹脂残りを除去する。ダイパッド22上に銅製のトランジション層38を設けることで、ダイパッド22上の樹脂残りを防ぐことができ、これにより、ダイパッド22と後述するバイアホール60との接続性や信頼性を向上させる。更に、40μm径前後のダイパッド22上に60μm以上の径のトランジション層38を介在させることで、60μm径のバイアホール用開口48を確実に接続させることができる。なお、ここでは、過マンガン酸を用いて樹脂残さを除去したが、酸素プラズマを用いてデスミア処理を行うことも可能である。なお、ここでは、レーザで開口48を形成しているが、露光・現像処理により開口を形成することも可能である。
【0057】(10)次に、酸又は酸化剤で層間樹脂絶縁層50の表面を粗化し、粗化面50αを形成する(図4(C)参照)。粗面は、平均粗度1〜5μmの範囲で形成されるのがよい。
【0058】(11)次に、粗化面50αが形成された層間樹脂絶縁層50上に無電解めっき膜52を設ける(図5(A)参照)。無電解めっきとしては、銅、ニッケルを用いることができる。その厚みとしては、0.3μm〜1.2μmの範囲がよい。0.3μm未満では、層間樹脂絶縁層上に金属膜を形成することができないことがある。1.2μmを越えると、エッチングによって金属膜が残存してしまい、導体間の短絡を引き起こしやすくなるからである。以下のめっき液及びめっき条件でめっき膜を形成させた。
〔無電解めっき水溶液〕
NiSO4 0.003 mol/l酒石酸 0.200 mol/l硫酸銅 0.030 mol/lHCHO 0.050 mol/lNaOH 0.100 mol/lα、α′−ビピルジル 100 mg/lポリエチレングリコール(PEG) 0.10 g/l〔無電解めっき条件〕34℃の液温度で40分間浸漬させた。
【0059】上記以外でも上述したプラズマ処理と同じ装置を用い、Ni−Cu合金をターゲットにしたスパッタリングを、気圧0.6Pa、温度80℃、電力200W、時間5分間の条件で行い、Ni−Cu合金52を層間樹脂絶縁層50の表面に形成する。このとき、形成されたNi−Cu合金層52の厚さは0.2μmである。
【0060】(12)上記処理を終えた基板30に、市販の感光性ドライフィルムを貼り付け、クロムガラスマスクを載置して、40mJ/cm2で露光した後、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、厚さ25μmのめっきレジスト54を設ける。次に、以下の条件で電解めっきを施して、厚さ18μmの電解めっき膜56を形成する(図5(B)参照)。なお、電解めっき水溶液中の添加剤は、アトテックジャパン社製のカパラシドHLである。
【0061】
〔電解めっき水溶液〕
硫酸 2.24 mol/l 硫酸銅 0.26 mol/l 添加剤(アトテックジャパン製、カパラシドHL)
19.5 ml/l 〔電解めっき条件〕
電流密度 1A/dm時間 65分 温度 22±2℃
【0062】(13)めっきレジスト54を5%NaOHで剥離除去した後、そのめっきレジスト下のめっき膜層52を硝酸および硫酸と過酸化水素の混合液を用いるエッチングにて溶解除去し、めっき膜層52と電解めっき膜56からなる厚さ16μmの導体回路58及びバイアホール60を形成し、第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液によって、粗化面58α、60αを形成する(図5(C)参照)。無電解めっきや酸化還元処理を用いて粗化面を形成することもできる。
【0063】(14)次いで、上記(9)〜(13)の工程を、繰り返すことにより、さらに上層の層間樹脂絶縁層150及び導体回路158(バイアホール160を含む)を形成する(図6(A)参照)。
【0064】(15)次に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)に60重量%の濃度になるように溶解させた、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量4000)46.67重量部、メチルエチルケトンに溶解させた80重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル社製、商品名:エピコート1001)15重量部、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、商品名:2E4MZ−CN)1.6重量部、感光性モノマーである多官能アクリルモノマー(共栄化学社製、商品名:R604)3重量部、同じく多価アクリルモノマー(共栄化学社製、商品名:DPE6A)1.5重量部、分散系消泡剤(サンノプコ社製、商品名:S−65)0.71重量部を容器にとり、攪拌、混合して混合組成物を調整し、この混合組成物に対して光重量開始剤としてベンゾフェノン(関東化学社製)2.0重量部、光増感剤としてのミヒラーケトン(関東化学社製)0.2重量部を加えて、粘度を25℃で2.0Pa・sに調整したソルダーレジスト組成物(有機樹脂絶縁材料)を得る。なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器社製、DVL−B型)で60rpmの場合はローターNo.4、6rpmの場合はローターNo.3によった。
【0065】(16)次に、基板30に、上記ソルダーレジスト組成物を20μmの厚さで塗布し、70℃で20分間、70℃で30分間の条件で乾燥処理を行った後、ソルダーレジストレジスト開口部のパターンが描画された厚さ5mmのフォトマスクをソルダーレジスト層70に密着させて1000mJ/cm2の紫外線で露光し、DMTG溶液で現像処理し、開口径460μmの開口71を形成する(図6(B)参照)。
【0066】(17)次に、ソルダーレジスト層(有機樹脂絶縁層)70を形成した基板を、塩化ニッケル(2.3×10-1mol/l)、次亞リン酸ナトリウム(2.8×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.6×10-1mol/l)を含むpH=4.5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部71に厚さ5μmのニッケルめっき層72を形成する。さらに、その基板を、シアン化金カリウム(7.6×10-3mol/l)、塩化アンモニウム(1.9×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.2×10-1mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(1.7×10-1mol/l)を含む無電解めっき液に80℃の条件で7.5分間浸漬して、ニッケルめっき層72上に厚さ0.03μmの金めっき層74を形成することで、導体回路158に半田パッド75を形成する(図6(C)参照)。
【0067】(18)この後、ソルダーレジスト層70の開口部71に、半田ペーストを印刷して、200℃でリフローすることにより、BGA76を形成する。これにより、ICチップ20A、20Bを内蔵し、BGA76を有する多層プリント配線板10を得ることができる(図7参照)。BGAの代わりにPGA(導電性接続ピン)を用いてもよい。
【0068】上述した実施形態では、層間樹脂絶縁層50、150に熱硬化型エポキシ系樹脂シートを用いた。このエポキシ系樹脂には、難溶性樹脂、可溶性粒子、硬化剤、その他の成分が含有されている。それぞれについて以下に説明する。
【0069】本発明の製造方法において使用するエポキシ系樹脂は、酸または酸化剤に可溶性の粒子(以下、可溶性粒子という)が酸または酸化剤に難溶性の樹脂(以下、難溶性樹脂という)中に分散したものである。なお、本発明で使用する「難溶性」「可溶性」という語は、同一の酸または酸化剤からなる溶液に同一時間浸漬した場合に、相対的に溶解速度の早いものを便宜上「可溶性」と呼び、相対的に溶解速度の遅いものを便宜上「難溶性」と呼ぶ。
【0070】上記可溶性粒子としては、例えば、酸または酸化剤に可溶性の樹脂粒子(以下、可溶性樹脂粒子)、酸または酸化剤に可溶性の無機粒子(以下、可溶性無機粒子)、酸または酸化剤に可溶性の金属粒子(以下、可溶性金属粒子)等が挙げられる。これらの可溶性粒子は、単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。
【0071】上記可溶性粒子の形状は特に限定されず、球状、破砕状等が挙げられる。また、上記可溶性粒子の形状は、一様な形状であることが望ましい。均一な粗さの凹凸を有する粗化面を形成することができるからである。
【0072】上記可溶性粒子の平均粒径としては、0.1〜10μmが望ましい。この粒径の範囲であれば、2種類以上の異なる粒径のものを含有してもよい。すなわち、平均粒径が0.1〜0.5μmの可溶性粒子と平均粒径が1〜3μmの可溶性粒子とを含有する等である。これにより、より複雑な粗化面を形成することができ、導体回路との密着性にも優れる。なお、本発明において、可溶性粒子の粒径とは、可溶性粒子の一番長い部分の長さである。
【0073】上記可溶性樹脂粒子としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等からなるものが挙げられ、酸あるいは酸化剤からなる溶液に浸漬した場合に、上記難溶性樹脂よりも溶解速度が速いものであれば特に限定されない。上記可溶性樹脂粒子の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等からなるものが挙げられ、これらの樹脂の一種からなるものであってもよいし、2種以上の樹脂の混合物からなるものであってもよい。
【0074】また、上記可溶性樹脂粒子としては、ゴムからなる樹脂粒子を用いることもできる。上記ゴムとしては、例えば、ポリブタジエンゴム、エポキシ変性、ウレタン変性、(メタ)アクリロニトリル変性等の各種変性ポリブタジエンゴム、カルボキシル基を含有した(メタ)アクリロニトリル・ブタジエンゴム等が挙げられる。これらのゴムを使用することにより、可溶性樹脂粒子が酸あるいは酸化剤に溶解しやすくなる。つまり、酸を用いて可溶性樹脂粒子を溶解する際には、強酸以外の酸でも溶解することができ、酸化剤を用いて可溶性樹脂粒子を溶解する際には、比較的酸化力の弱い過マンガン酸塩でも溶解することができる。また、クロム酸を用いた場合でも、低濃度で溶解することができる。そのため、酸や酸化剤が樹脂表面に残留することがなく、後述するように、粗化面形成後、塩化パラジウム等の触媒を付与する際に、触媒が付与されなたかったり、触媒が酸化されたりすることがない。
【0075】上記可溶性無機粒子としては、例えば、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、カリウム化合物、マグネシウム化合物およびケイ素化合物からなる群より選択される少なくとも一種からなる粒子等が挙げられる。
【0076】上記アルミニウム化合物としては、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム等が挙げられ、上記カルシウム化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、上記カリウム化合物としては、炭酸カリウム等が挙げられ、上記マグネシウム化合物としては、マグネシア、ドロマイト、塩基性炭酸マグネシウム等が挙げられ、上記ケイ素化合物としては、シリカ、ゼオライト等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。
【0077】上記可溶性金属粒子としては、例えば、銅、ニッケル、鉄、亜鉛、鉛、金、銀、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムおよびケイ素からなる群より選択される少なくとも一種からなる粒子等が挙げられる。また、これらの可溶性金属粒子は、絶縁性を確保するために、表層が樹脂等により被覆されていてもよい。
【0078】上記可溶性粒子を、2種以上混合して用いる場合、混合する2種の可溶性粒子の組み合わせとしては、樹脂粒子と無機粒子との組み合わせが望ましい。両者とも導電性が低くいため樹脂シートの絶縁性を確保することができるとともに、難溶性樹脂との間で熱膨張の調整が図りやすく、樹脂シートからなる層間樹脂絶縁層にクラックが発生せず、層間樹脂絶縁層と導体回路との間で剥離が発生しないからである。
【0079】上記難溶性樹脂としては、層間樹脂絶縁層に酸または酸化剤を用いて粗化面を形成する際に、粗化面の形状を保持できるものであれば特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、これらの複合体等が挙げられる。また、これらの樹脂に感光性を付与した感光性樹脂であってもよい。感光性樹脂を用いることにより、層間樹脂絶縁層に露光、現像処理を用いてバイアホール用開口を形成することできる。これらのなかでは、熱硬化性樹脂を含有しているものが望ましい。それにより、めっき液あるいは種々の加熱処理によっても粗化面の形状を保持することができるからである。
【0080】上記難溶性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。さらには、1分子中に、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂がより望ましい。前述の粗化面を形成することができるばかりでなく、耐熱性等にも優れてるため、ヒートサイクル条件下においても、金属層に応力の集中が発生せず、金属層の剥離などが起きにくいからである。
【0081】上記エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
【0082】本発明で用いる樹脂シートにおいて、上記可溶性粒子は、上記難溶性樹脂中にほぼ均一に分散されていることが望ましい。均一な粗さの凹凸を有する粗化面を形成することができ、樹脂シートにバイアホールやスルーホールを形成しても、その上に形成する導体回路の金属層の密着性を確保することができるからである。また、粗化面を形成する表層部だけに可溶性粒子を含有する樹脂シートを用いてもよい。それによって、樹脂シートの表層部以外は酸または酸化剤にさらされることがないため、層間樹脂絶縁層を介した導体回路間の絶縁性が確実に保たれる。
【0083】上記樹脂シートにおいて、難溶性樹脂中に分散している可溶性粒子の配合量は、樹脂シートに対して、3〜40重量%が望ましい。可溶性粒子の配合量が3重量%未満では、所望の凹凸を有する粗化面を形成することができない場合があり、40重量%を超えると、酸または酸化剤を用いて可溶性粒子を溶解した際に、樹脂シートの深部まで溶解してしまい、樹脂シートからなる層間樹脂絶縁層を介した導体回路間の絶縁性を維持できず、短絡の原因となる場合がある。
【0084】上記樹脂シートは、上記可溶性粒子、上記難溶性樹脂以外に、硬化剤、その他の成分等を含有していることが望ましい。上記硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、これらの硬化剤のエポキシアダクトやこれらの硬化剤をマイクロカプセル化したもの、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン系化合物等が挙げられる。
【0085】上記硬化剤の含有量は、樹脂シートに対して0.05〜10重量%であることが望ましい。0.05重量%未満では、樹脂シートの硬化が不十分であるため、酸や酸化剤が樹脂シートに侵入する度合いが大きくなり、樹脂シートの絶縁性が損なわれることがある。一方、10重量%を超えると、過剰な硬化剤成分が樹脂の組成を変性させることがあり、信頼性の低下を招いたりしてしまうことがある。
【0086】上記その他の成分としては、例えば、粗化面の形成に影響しない無機化合物あるいは樹脂等のフィラーが挙げられる。上記無機化合物としては、例えば、シリカ、アルミナ、ドロマイト等が挙げられ、上記樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、メラニン樹脂、オレフィン系樹脂等が挙げられる。これらのフィラーを含有させることによって、熱膨脹係数の整合や耐熱性、耐薬品性の向上などを図り多層プリント配線板の性能を向上させることができる。
【0087】また、上記樹脂シートは、溶剤を含有していてもよい。上記溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートやトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。ただし、これらの層間樹脂絶縁層は、350℃以上の温度を加えると溶解、炭化をしてしまう。
【0088】[第2実施形態]引き続き、本発明の第2実施形態に係るプリント配線板について、図8及び図9を参照して説明する。図9に示すように、第2実施形態では、コア基板30の凹部32内に、ICチップ(CPU)20A、ICチップ(キャッシュメモリ)20Bと共に、チップコンデンサ19A、チップ抵抗19B、チップインダクタンス19Cが収容されている。ここで、チップコンデンサ19A、チップ抵抗19B、チップインダクタンス19Cの端子19aには、銅めっき膜19bが被覆されている。これにより、銅めっきからなるバイアホール60との接続性が改善されている。
【0089】第2実施形態のプリント配線板の製造方法について、図8を参照して説明する。
(1)先ず、ガラスクロス等の心材にエポキシ等の樹脂を含浸させたプリプレグを積層した絶縁樹脂基板(コア基板)30の片面に、ザグリ加工でICチップ収容用の凹部32を形成する(図8(A)参照)。
【0090】(2)その後、凹部32に、印刷機を用いて接着材料34を塗布する。このとき、塗布以外にも、ポッティングなどをしてもよい。次に、ICチップ20A、20B、チップコンデンサ19A、チップ抵抗19B、チップインダクタンス19Cを接着材料34上に載置する(図8(B)参照)。
【0091】(3)そして、ICチップ20A、20B、チップコンデンサ19A、チップ抵抗19B、チップインダクタンス19Cの上面を押す、もしくは叩いて凹部32内に完全に収容させる(図8(C)参照)。これにより、コア基板30を平滑にすることができる。以降の工程は、図2〜図6を参照して上述した第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0092】[第3実施形態]引き続き、第3実施形態に係るプリント配線板について、図10を参照して説明する。図10(B)に示すように、第3実施形態では、コア基板30の凹部32内に、ICチップ(CPU)20A、ICチップ(キャッシュメモリ)20Bと共に、チップコンデンサ19A、チップ抵抗19B、チップインダクタンス19Cが収容されている。この第3実施形態では、ICチップ(CPU)20A、ICチップ(キャッシュメモリ)20B、チップコンデンサ19A、チップ抵抗19B、チップインダクタンス19Cの下部に、高さを揃えるための接続層31が配設されている。
【0093】第3実施形態のプリント配線板の製造方法について、図10(A)を参照して説明する。
(1)ICチップ(CPU)20A、ICチップ(キャッシュメモリ)20B、チップコンデンサ19A、チップ抵抗19B、チップインダクタンス19Cの下部に、高さを揃えるための接続層31を配設し、コア基板30の凹部32に収容する。以降の工程は、図2〜図6を参照して上述した第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0094】[第4実施形態]引き続き、第4実施形態に係るプリント配線板について、図11〜図21を参照して説明する。図21は、第4実施形態のプリント配線板を示している。第4実施形態のプリント配線板は、図7を参照して上述した第1実施形態のプリント配線板と同様である。但し、上述した第1実施形態では、コア基板30にICチップを収容してからトランジション層38を形成した。これに対して、第4実施形態では、ICチップにトランジション層38を形成してからコア基板に収容する。このため、先ず、ICチップへのトランジション層38の構成方法について説明する。
【0095】A.半導体素子の製造方法先ず、本発明の第4実施形態に係る半導体素子(ICチップ)の構成について、半導体素子20の断面を示す図13(A)、及び、平面図を示す図14(B)を参照して説明する。
【0096】図13(B)に示すように半導体素子20の上面には、ダイパッド22及び配線(図示せず)が配設されており、該ダイパッド22及び配線の上に、パッシベーション膜24が被覆され、該ダイパッド22には、パッシベーション膜24の開口が形成されている。ダイパッド22の上には、主として銅からなるトランジション層38が形成されている。トランジション層38は、薄膜層33と電解めっき膜37とからなる。
【0097】[第1の製造方法]引き続き、図13(B)を参照して上述した半導体素子の製造方法について、図11〜図14を参照して説明する。
【0098】(1)先ず、図11(A)に示すシリコンウエハー20Aに、定法により配線21及びダイパッド22を形成する(図11(B)及び図11(B)の平面図を示す図14(A)参照、なお、図11(B)は、図14(A)のB−B断面を表している)。
(2)次に、ダイパッド22及び配線21の上に、パッシベーション膜24を形成し、ダイパッド22上に開口24aを設ける(図11(C))。
【0099】(3)シリコンウエハー20Aに蒸着、スパッタリングなどの物理的な蒸着を行い、全面に導電性の金属膜(薄膜層)33を形成させる(図12(A))。その厚みは、0.001〜2.0μmの範囲で形成させるのがよい。その範囲よりも下の場合は、全面に薄膜層を形成することができない。その範囲よりも上の場合は、形成される膜に厚みのバラツキが生じてしまう。最適な範囲は0.01〜1.0μmである。形成する金属としては、スズ、クロム、チタン、ニッケル、亜鉛、コバルト、金、銅の中から、選ばれるものを用いることがよい。それらの金属は、ダイパッドの保護膜となり、かつ、電気特性を劣化させることがない。第1の製造方法では、薄膜層33は、クロムにより形成される。
【0100】(4)その後、液状レジスト、感光性レジスト、ドライフィルムのいずれかのレジスト層を薄膜層33上に形成させる。トランジション層38を形成する部分が描画されたマスク(図示せず)を該レジスト層上に、載置して、露光、現像を経て、メッキレジスト35に非形成部35aを形成させる。電解メッキを施してレジスト層の非形成部35aに厚付け層(電解めっき膜)37を設ける(図12(B))。形成されるメッキの種類としては銅、ニッケル、金、銀、亜鉛、鉄などがある。電気特性、経済性、また、後程で形成されるビルドアップである導体層は主に銅であることから、銅を用いるとよく、第1の製造方法では、銅を用いる。その厚みは1〜20μmの範囲で行うのがよい。
【0101】(5)メッキレジスト35をアルカリ溶液等で除去した後、メッキレジスト35下の金属膜33を硫酸−過酸化水素水、塩化第二鉄、塩化第二銅、第二銅錯体−有機酸塩等のエッチング液によって除去することで、ICチップのパッド22上にトランジション層38を形成する(図12(C))。
【0102】(6)次に、基板にエッチング液をスプレイで吹きつけ、トランジション層38の表面をエッチングすることにより粗化面38αを形成する(図13(A)参照)。無電解めっきや酸化還元処理を用いて粗化面を形成することもできる。
【0103】(7)最後に、トランジション層38が形成されたシリコンウエハー20Aを、ダイシングなどによって個片に分割して半導体素子20を形成する(図13(B)及び図13(B)の平面図である図14(B)参照)。その後、必要に応じて、分割された半導体素子20の動作確認や電気検査を行なってもよい。半導体素子20は、ダイパッド22よりも大きなトランジション層38が形成されているので、プローブピンが当てやすく、検査の精度が高くなっている。
【0104】[第2の製造方法]第2の製造方法に係る半導体素子20について、図17(B)を参照して説明する。図13(B)を参照して上述した第1の製造方法に係る半導体素子では、トランジション層38が、薄膜層33と電解めっき膜37とからなる2層構造であった。これに対して、第2の製造方法では、図17(B)に示すように、トランジション層38が、薄膜層33と、無電解めっき膜36と、電解めっき膜37とからなる3層構造として構成されている。
【0105】引き続き、図17(B)を参照して上述した第2の製造方法に係る半導体素子の製造方法について、図15〜図17を参照して説明する。
【0106】(1)先ず、図15(A)に示すシリコンウエハー20Aに、配線21及びダイパッド22を形成する(図15(B))。
(2)次に、ダイパッド22及び配線の上に、パッシベーション膜24を形成する(図15(C))。
【0107】(3)シリコンウエハー20Aに蒸着、スパッタリングなどの物理的な蒸着を行い、全面に導電性の金属膜(第1薄膜層)33を形成させる(図15(D))。その厚みは、0.001〜2.0μmの範囲で形成させるのがよい。その範囲よりも下の場合は、全面に薄膜層を形成することができない。その範囲よりも上の場合は、形成される膜に厚みのバラツキが生じてしまう。最適な範囲は0.01〜1.0μmである。形成する金属としては、スズ、クロム、チタン、ニッケル、亜鉛、コバルト、金、銅の中から、選ばれるものを用いることがよい。それらの金属は、ダイパッドの保護膜となり、かつ、電気特性を劣化させることがない。第2の製造方法では、第1薄膜層33は、クロムにより形成される。
【0108】(4)第1薄膜層33の上に、スパッタ、蒸着、無電解めっきによって無電解めっき層(第2薄膜層)36を積層する(図16(A))。厚みは、0.01〜5μmがよく、特に、0.1〜3.0μmが望ましい。その場合積層できる金属は、ニッケル、銅、金、銀の中から選ばれるものがよい。特に、銅、ニッケルのいずれかで形成させることがよい。銅は、廉価であることと電気伝達性がよいからである。ニッケルは、薄膜との密着性がよく、剥離やクラックを引き起こし難い。第2の製造方法では、第2薄膜層36を無電解銅めっきにより形成する。なお、望ましい第1薄膜層と第2薄膜層との組み合わせは、クロム−銅、クロム−ニッケル、チタン−銅、チタン−ニッケルである。金属との接合性や電気伝達性という点で他の組み合わせよりも優れる。
【0109】(5)その後、レジスト層を第2薄膜層36上に形成させる。マスク(図示せず)を該レジスト層上に載置して、露光、現像を経て、メッキレジスト35に非形成部35aを形成させる。電解メッキを施してレジスト層の非形成部35aに厚付け層(電解めっき膜)37を設ける(図16(B))。形成されるメッキの種類としては銅、ニッケル、金、銀、亜鉛、鉄などがある。電気特性、経済性、また、後程で形成されるビルドアップである導体層は主に銅であることから、銅を用いるとよく、第2の製造方法では、銅を用いる。厚みは1〜20μmの範囲がよい。
【0110】(6)メッキレジスト35をアルカリ溶液等で除去した後、メッキレジスト35下の無電解めっき膜36、金属膜33を硫酸−過酸化水素水、塩化第二鉄、塩化第二銅、第二銅錯体−有機酸塩等のエッチング液によって除去することで、ICチップのパッド22上にトランジション層38を形成する(図16(C))。
【0111】(7)次に、基板にエッチング液をスプレイで吹きつけ、トランジション層38の表面をエッチングすることにより粗化面38αを形成する(図17(A)参照)。
【0112】(8)最後に、トランジション層38が形成されたシリコンウエハー20Aを、ダイシングなどによって個片に分割して半導体素子20を形成する(図17(B))。
【0113】[第3の製造方法]第3の製造方法に係る半導体素子20の製造方法について図18を参照して説明する。第3の製造方法の半導体素子の構成は、図13(B)を参照して上述した第1の製造方法とほぼ同様である。但し、第1の製造方法では、セミアディテブ工程を用い、レジスト非形成部に厚付け層37を形成することでトランジション層38を形成した。これに対して、第3の製造方法では、フルアディテブ工程を用い、厚付け層37を均一に形成した後、レジストを設け、レジスト非形成部をエッチングで除去することでトランジション層38を形成する。
【0114】この第3の製造方法の製造方法について図18を参照して説明する。
(1)第1の製造方法で図12(B)を参照して上述したように、シリコンウエハー20Aに蒸着、スパッタリングなどの物理的な蒸着を行い、全面に導電性の金属膜33を形成させる(図18(A))。その厚みは、0.001〜2.0μmの範囲がよい。その範囲よりも下の場合は、全面に薄膜層を形成することができない。その範囲よりも上の場合は、形成される膜に厚みのバラツキが生じてしまう。最適な範囲は0.01〜1.0μmで形成されることがよい。形成する金属としては、スズ、クロム、チタン、ニッケル、亜鉛、コバルト、金、銅の中から、選ばれるものを用いることがよい。それらの金属は、ダイパッドの保護膜となり、かつ、電気特性を劣化させることがない。第3の製造方法では、薄膜層33は、クロムにより形成される。
【0115】(2)電解メッキを施して薄膜層33の上に厚付け層(電解めっき膜)37を均一に設ける(図18(B))。形成されるメッキの種類としては銅、ニッケル、金、銀、亜鉛、鉄などがある。電気特性、経済性、また、後程で形成されるビルドアップである導体層は主に銅であることから、銅を用いるとよく、第3の製造方法では、銅を用いる。その厚みは1〜20μmの範囲で行うのがよい。それより厚くなると、後述するエッチングの際にアンダーカットが起こってしまい、形成されるトランジション層とバイアホールと界面に隙間が発生することがあるからである。
【0116】(3)その後、レジスト層35を厚付け層37上に形成させる(図18(C))。
【0117】(4)メッキレジスト35の非形成部の金属膜33及び厚付け層37を硫酸−過酸化水素水、塩化第二鉄、塩化第二銅、第二銅錯体−有機酸塩等のエッチング液によって除去した後、メッキレジスト35を剥離することで、ICチップのパッド22上にトランジション層38を形成する(図18(D))。以降の工程は、第1の製造方法と同様であるため説明を省略する。
【0118】[第4の製造方法]第4の製造方法に係る半導体素子20の製造方法について、図19を参照して説明する。図18を参照して上述した第3の製造方法に係る半導体素子では、トランジション層38が、薄膜層33と電解めっき膜37とからなる2層構造であった。これに対して、第4の製造方法では、図19(D)に示すように、トランジション層38が、薄膜層33と、無電解めっき膜36と、電解めっき膜37とからなる3層構造として構成されている。
【0119】この第4の製造方法の製造方法について図19を参照して説明する。
(1)第1の製造方法で図16(A)を参照して上述した第2の製造方法と同様に、第1薄膜層33の上に、スパッタ、蒸着、無電解めっきによって第2薄膜層36を積層する(図19(A))。その場合積層できる金属は、ニッケル、銅、金、銀の中から選ばれるものがよい。特に、銅、ニッケルのいずれかで形成させることがよい。銅は、廉価であることと電気伝達性がよいからである。ニッケルは、薄膜との密着性がよく、剥離やクラックを引き起こし難い。第4の製造方法では、第2薄膜層36を無電解銅めっきにより形成する。なお、望ましい第1薄膜層と第2薄膜層との組み合わせは、クロム−銅、クロム−ニッケル、チタン−銅、チタン−ニッケルである。金属との接合性や電気伝達性という点で他の組み合わせよりも優れる。
【0120】(2)電解メッキを施して第2薄膜層36の上に厚付け層(電解めっき膜)37を均一に設ける(図19(B))。
【0121】(3)その後、レジスト層35を厚付け層37上に形成させる(図19(C))。
【0122】(4)メッキレジスト35の非形成部の第1薄膜層33、第2薄膜層36及び厚付け層37を硫酸−過酸化水素水、塩化第二鉄、塩化第二銅、第二銅錯体−有機酸塩等のエッチング液によって除去した後、メッキレジスト35を剥離することで、ICチップのパッド22上にトランジション層38を形成する(図19(D))。以降の工程は、第1の製造方法と同様であるため説明を省略する。
【0123】B.半導体素子を内蔵する多層プリント配線板引き続き、上述した第1〜第4の製造方法の半導体素子(ICチップ)20をコア基板の通孔に収納させてなる図21に示す第4実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法について図20を参照して説明する。
【0124】(1)先ず、ガラスクロス等の心材にエポキシ等の樹脂を含浸させたプリプレグを積層した絶縁樹脂基板(コア基板)30を出発材料とする(図20(A)参照)。次に、コア基板30の片面に、ザグリ加工でICチップ収容用の凹部32を形成する(図20(B)参照)。ここでは、ザグリ加工により凹部を設けているが、開口を設けた絶縁樹脂基板と開口を設けない樹脂絶縁基板とを張り合わせることで、収容部を備えるコア基板を形成できる。
【0125】(2)その後、凹部32に、印刷機を用いて接着材料34を塗布する。このとき、塗布以外にも、ポッティングなどをしてもよい。次に、ICチップ20A、20Bを接着材料34上に載置する(図20(C)参照)。
【0126】(3)そして、ICチップ20A、20Bの上面を押す、もしくは叩いて凹部32内に完全に収容させる(図20(D)参照)。これにより、コア基板30を平滑にすることができる。以降の工程は、図4〜図6を参照して上述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0127】[第5実施形態]引き続き、本発明の第5実施形態に係るプリント配線板について、図23を参照して説明する。図23に示すように、第5実施形態では、コア基板30の凹部32内に、予めトランジション層38の形成されたICチップ(CPU)20A、ICチップ(キャッシュメモリ)20Bと共に、チップコンデンサ19A、チップ抵抗19B、チップインダクタンス19Cが収容されている。
【0128】第5実施形態のプリント配線板の製造方法について、図22を参照して説明する。
(1)先ず、ガラスクロス等の心材にエポキシ等の樹脂を含浸させたプリプレグを積層した絶縁樹脂基板(コア基板)30の片面に、ザグリ加工でICチップ収容用の凹部32を形成する(図22(A)参照)。
【0129】(2)その後、凹部32に、印刷機を用いて接着材料34を塗布する。このとき、塗布以外にも、ポッティングなどをしてもよい。次に、ICチップ20A、20B、チップコンデンサ19A、チップ抵抗19B、チップインダクタンス19Cを接着材料34上に載置する(図22(B)参照)。
【0130】(3)そして、ICチップ20A、20B、チップコンデンサ19A、チップ抵抗19B、チップインダクタンス19Cの上面を押す、もしくは叩いて凹部32内に完全に収容させる(図22(C)参照)。以降の工程は、図2〜図6を参照して上述した第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0131】[第6実施形態]引き続き、第6実施形態に係るプリント配線板について、図24を参照して説明する。図24(B)に示すように、第6実施形態では、コア基板30の凹部32内に、ICチップ(CPU)20A、ICチップ(キャッシュメモリ)20Bと共に、チップコンデンサ19A、チップ抵抗19B、チップインダクタンス19Cが収容されている。この第6実施形態では、ICチップ(CPU)20A、ICチップ(キャッシュメモリ)20B、チップコンデンサ19A、チップ抵抗19B、チップインダクタンス19Cの下部に、高さを揃えるための接続層31が配設されている。
【0132】第6実施形態のプリント配線板の製造方法について、図10(A)を参照して説明する。
(1)予めトランジション層38の形成されたICチップ(CPU)20A、ICチップ(キャッシュメモリ)20B、チップコンデンサ19A、チップ抵抗19B、チップインダクタンス19Cの下部に、高さを揃えるための接続層31を配設し、コア基板30の凹部32に収容する。以降の工程は、図2〜図6を参照して上述した第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0133】[第7実施形態]引き続き、第7実施形態に係るプリント配線板について、図25〜図27を参照して説明する。上述した第1〜第6実施形態では、凹部内にICチップ等を収容した。これに対して、第7実施形態では、図27に示すように通孔32を形成した樹脂基板にICチップを収容してなる。
【0134】この第7実施形態のプリント配線板の製造方法について、図25及び図26を参照して説明する。
(1)ガラスクロス等の心材にBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂、エポキシ等の樹脂を含浸させたプリプレグを積層して硬化させた厚さ0.5mmの絶縁樹脂基板30Aを出発材料とする(図25(A))。先ず、絶縁樹脂基板30AにICチップ収容用の通孔32を形成する(図25(B))。該通孔32に、上述した第1〜第4の製造方法のICチップ20A、20Bを収容する(図25(C)参照)。
【0135】(3)そして、ICチップ20A、20Bを収容する絶縁樹脂基板30Aと、同じく、ガラスクロス等の心材にまたはBT、エポキシ等の樹脂を含浸させたプリプレグを積層して硬化させた厚さ0.2mmの絶縁樹脂基板(コア基板)30Bとを、ガラスクロス等の心材にエポキシ等の樹脂を含浸させた未硬化のプリプレグ30C(厚さ0.1mm)を介在させて積層する(図26(A))。ここでは、心材に樹脂を含浸させた樹脂基板30Bを用いているが、心材を備えない樹脂基板を用いることもできる。また、プリプレグの代わりに、種々の熱硬化性樹脂、又は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを心材に含浸させたシートを用いることができる。
【0136】(4)ステンレス(SUS)プレス板100A、100Bで、上述した積層体を上下方向から加圧する。この際に、プリプレグ30Cからエポキシ樹脂30αがしみ出し、通孔32とICチップ20A、20Bとの間の空間を充填すると共に、ICチップ20A、20Bの上面を覆う。これにより、ICチップ20A、20Bと、絶縁樹脂基板30Aとの上面が完全に平坦になる。(図26(B))。このため、ビルドアップ層を形成する際に、バイアホール及び配線を適正に形成することができ、多層プリント配線板の配線の信頼性を高めることができる。
【0137】(5)この後、加熱して、未硬化のエポキシ樹脂30αを硬化させることでICチップ20A、20Bを収容するコア基板30を形成する(図26(C))。以降の工程は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0138】[第8実施形態]引き続き、第8実施形態に係るプリント配線板について、図28及び図29を参照して説明する。上述した第1〜第6実施形態では、凹部内にICチップ等を収容した。これに対して、第8実施形態では、図29に示すように放熱板30D上にICチップ20A、20Bを載置してなる。
【0139】この第8実施形態のプリント配線板の製造方法について説明する。
(1)アルミニウム、ステンレス等の金属又はセラミックからなる放熱板30D(図28(A))の上に、熱伝導性接着剤29を印刷する(図28(B))。ここで、厚みの薄い電子部品、半導体素子等を搭載する位置(ここでは、チップコンデンサの位置)には、熱伝導性接着剤29を厚く印刷する。一方、厚い電子部品、半導体素子を搭載する位置(ここでは、ICチップ20A、20Bの位置)には、熱伝導性接着剤29を薄く印刷する。なお、熱伝導性接着剤としては、平均粒子径2〜5μmの銅粒子を含有するペーストを用いることができる。
【0140】(2)次に、熱伝導性接着剤29の上に、トランジション層38を形成したICチップ20A、20B、及び、チップコンデンサ19を搭載する(図28(C))。なお、チップコンデンサ19の端子にもトランジション層を形成することも可能である。
【0141】(3)そして、放熱板30Dと、ICチップ20A、20B及びチップコンデンサ19を収容する開口32を設けた絶縁樹脂基板30Aとを、ICチップ20A、20B及びチップコンデンサ19を収容する開口30hを設けたガラスクロス等の心材にエポキシ等の樹脂を含浸させた未硬化のプリプレグ30C(厚さ0.1mm)を介在させて積層する(図29(A))。そして、ステンレス(SUS)プレス板100A、100Bで、上述した積層体を上下方向から加圧する。この際に、プリプレグ30Cからエポキシ樹脂30αがしみ出し、通孔32とICチップ20A、20Bとの間の空間を充填すると共に、ICチップ20A、20Bの上面を覆う。これにより、ICチップ20A、20Bと、絶縁樹脂基板30Aとの上面が完全に平坦になる。(図29(B))。このため、ビルドアップ層を形成する際に、バイアホール及び配線を適正に形成することができ、多層プリント配線板の配線の信頼性を高めることができる。
【0142】(4)この後、加熱して、未硬化のエポキシ樹脂30αを硬化させることでICチップ20A、20B及びチップコンデンサ19を収容するコア基板30を形成する。以降の工程は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0143】上述した実施形態で製造されたプリント配線板では、電気伝達性が安定して、特に、ダイパッドとバイアホールの間の未接続による断線などを引き起こさない。また、キャビティ内の接着剤層が半導体素子、その他の電子部品の載置を安定化するために、ヒートサイクル時においても挙動が少なくなり、半導体素子、その他の電子部品がプリント配線板のキャビティからはみ出すこともなくなり、層間絶縁層の剥離やクラックあるいは、端子との接続部における断線やクラックの発生することがなくなった。
【0144】
【発明の効果】プリント配線板に、半導体素子が収容、収納、内蔵もしくは埋め込まれているので、トータルの厚みを薄くすることができるために、筐体の薄くなった電子機器に収容することが可能となった。また、複数個の半導体素子を有しているのが、接続する配線長が短くなっているので、高機能化、高密度化されたプリント配線板となる。半導体素子にトランジション層を形成させているので、層間絶縁層のバイアホールの形成が安定するので、電気接続性が向上できた。また、リード部品を介さないので、種々の不具合の発生も低減された。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)、(B)、(C)は、本発明の第1実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図2】(A)、(B)、(C)は、本発明の第1実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図3】(A)、(B)、(C)は、本発明の第1実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図4】(A)、(B)、(C)は、本発明の第1実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図5】(A)、(B)、(C)は、本発明の第1実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図6】(A)、(B)、(C)は、本発明の第1実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る多層プリント配線板の断面図である。
【図8】(A)、(B)、(C)は、本発明の第2実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る多層プリント配線板の断面図である。
【図10】(A)は、本発明の第3実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図であり、(B)は、多層プリント配線板の断面図である。
【図11】(A)、(B)、(C)は、本発明の第4実施形態の第1製造法に係る半導体素子の製造工程図である。
【図12】(A)、(B)、(C)は、本発明の第4実施形態の第1製造法に係る半導体素子の製造工程図である。
【図13】(A)、(B)は、本発明の第4実施形態の第1製造法に係る半導体素子の製造工程図である。
【図14】(A)は、本発明の第4実施形態に係るシリコンウエハーの平面図であり、(B)は、個片化された半導体素子の平面図である。
【図15】(A)、(B)、(C)は、本発明の第4実施形態の第2製造方法に係る半導体素子の製造工程図である。
【図16】(A)、(B)、(C)は、本発明の第4実施形態の第2製造方法に係る半導体素子の製造工程図である。
【図17】(A)、(B)は、本発明の第4実施形態の第2製造方法に係る半導体素子の製造工程図である。
【図18】(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の第4実施形態の第3製造方法に係る半導体素子の製造工程図である。
【図19】(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の第4実施形態の第4製造方法に係る半導体素子の製造工程図である。
【図20】(A)、(B)、(C)、(D)、(E)は、本発明の第4実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図21】第4実施形態に係る多層プリント配線板の断面図である。
【図22】(A)、(B)、(C)は、本発明の第5実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図23】第5実施形態に係る多層プリント配線板の断面図である。
【図24】(A)は第6実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図であり、(B)は、断面図である。
【図25】(A)、(B)、(C)は、本発明の第7実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図26】(A)、(B)、(C)は、本発明の第7実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図27】本発明の第7実施形態に係る多層プリント配線板の断面図である。
【図28】(A)、(B)、(C)は、本発明の第8実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【図29】(A)、(B)は、本発明の第8実施形態に係る多層プリント配線板の製造工程図である。
【符号の説明】
20A ICチップ(CPU)
20B ICチップ(キャッシュメモリ)
22 ダイパッド
24 パッシベーション膜
30 コア基板
32 通孔
36 樹脂層
38 トランジション層
50 層間樹脂絶縁層
58 導体回路
60 バイアホール
70 ソルダーレジスト層
76 半田バンプ
90 ドータボード
96 導電性接続ピン
97 導電性接着剤
120 ICチップ
150 層間樹脂絶縁層
158 導体回路
160 バイアホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上に、層間絶縁層と導体回路が繰り返し積層されて、バイアホールを介して電気的接続を取るプリント配線板において、前記基板には、キャビティが形成されていて、該キャビティには、半導体素子が2個以上収容、収納あるいは埋め込まれているプリント配線板。
【請求項2】 基板上に、層間絶縁層と導体回路が繰り返し積層されて、バイアホールを介して電気的接続を取るプリント配線板において、前記基板には、キャビティが形成されていて、該キャビティには、トランジション層を有する半導体素子が2個以上収容、収納あるいは埋め込まれているプリント配線板。
【請求項3】 前記半導体素子は、少なくとも1個は、演算機能(CPU)を有する半導体素子であり、少なくとも1個は、記憶機能(メモリー)を有する半導体素子である請求項1又は2に記載のプリント配線板。
【請求項4】 前記キャビティには、半導体素子および抵抗、コンデンサもしくインダクタンスを接合させる接着剤がある請求項1〜3のいずれか1に記載のプリント配線板。
【請求項5】 前記トランジション層は、少なくとも2層以上である請求項2〜4のいずれか1に記載のプリント配線板。
【請求項6】 前記トランジション層の最下層には、スズ、クロム、チタン、ニッケル、亜鉛、コバルト、金、銅のいずれかから、選ばれる少なくとも1種類以上で積層される請求項2〜5のいずれか1に記載のプリント配線板。
【請求項7】 前記トランジション層の最上層は、ニッケル、銅、金、銀の中から選ばれる請求項2〜6のいずれかに1に記載のプリント配線板。
【請求項8】 前記トランジション層は、第1薄膜層、第2薄膜層、厚付け層で形成されている請求項2〜7のいずれか1に記載のプリント配線板。
【請求項9】 前記トランジション層の第1薄膜層には、スズ、クロム、チタン、ニッケル、亜鉛、コバルト、金、銅のいずれかから、選ばれる少なくとも1種類以上で積層される請求項8に記載のプリント配線板。
【請求項10】 前記トランジション層の第2薄膜層は、ニッケル、銅、金、銀の中から選ばれる請求項8に記載のプリント配線板。
【請求項11】 前記キャビティには、接着剤層が充填されている請求項1〜10のいずれか1に記載のプリント配線板。
【請求項12】 前記接着剤の厚みは、キャビティ内の半導体素子、電子部品の厚みによって変動させる請求項11に記載のプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図27】
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【図26】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2002−246758(P2002−246758A)
【公開日】平成14年8月30日(2002.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−109635(P2001−109635)
【出願日】平成13年4月9日(2001.4.9)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】