説明

ポータブルナビゲーション機器

【課題】バッテリ駆動により持ち運び可能なポータブルナビゲーション機器による経路誘導を利用する際に、目的地までの経路誘導が中断するような事態を未然に防止する。
【解決手段】経路誘導の際、CPUはバッテリ残量を確認(S401)してバッテリ駆動時間tを算出(S404、S414)する。これを目的地までの推定所要時間Tと比較判定(S405)し、満たないと判定した場合は、各種の省電力処理(S430)を自動的に実行する。省電力処理としては、たとえば、分岐点における経路誘導等で必要な場合を除いて画面の出力をオフにすること、楽曲再生等を目的としたオーディオ使用を不可とすること等の処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路探索結果に基づいて経路誘導を行い、バッテリ駆動により持ち運びが可能なポータブルナビゲーション機器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在地から目的地までの推定所要時間に応じて、ナビゲーションサーバから通信手段を介して読み出す地図情報の表示と非表示を切換制御することにより、省電力化を可能とするポータブルナビゲーション機器が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−101366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特開2004−101366号公報に開示されている携帯通信端末及びこれを用いたナビゲーションシステムでは、現在地から目的地までの推定所要時間と、ユーザが予め設定する所定時間との比較に応じて上記地図情報の表示/非表示を切換えている。その所定時間を設定するためには、ユーザはバッテリ駆動時間を的確に見積もる必要がある。ユーザが設定する所定時間と実際のバッテリ駆動可能時間が異なる場合、経路誘導が完了する前にバッテリが枯渇して経路誘導が強制終了するといった事象が発生する。したがって、ユーザがポータブルナビゲーション機器を使用した経験が浅い等の事情によりバッテリ駆動時間の見積もりの精度が低い場合、上述のような利便性に影響のある事象が発生しやすいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(1) 請求項1の発明によるバッテリによって駆動されるポータブルナビゲーション機器は、現在地から目的地までの経路上の分岐路において経路誘導画面によりユーザを誘導する経路誘導手段と、現在地から目的地までの所要時間を演算する所要時間演算手段と、バッテリの残容量を検出する検出手段と、検出手段によって検出されたバッテリの残容量に基づいて、所要時間、バッテリにより経路誘導手段が駆動可能か否かを判定する判定手段と、判定手段によって、所要時間、バッテリにより経路誘導手段が駆動可能でないと判定されたとき、バッテリの電力消費を抑制する省電力処理を起動する省電力化処理手段とを備えることを特徴とする。
(2) 請求項2の発明は、請求項1に記載のポータブルナビゲーション機器において、省電力化処理手段によって省電力処理が起動されると、経路誘導画面を非表示とし、分岐点までの距離が所定の値まで接近したとき経路誘導画面の表示を再開し、当該分岐点を通過したとき経路誘導画面を再び非表示とすることを特徴とする。
(3) 請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のポータブルナビゲーション機器において、経路誘導手段による経路誘導処理以外の各種処理を行う処理手段と、省電力化処理手段によって省電力処理が起動されると、処理手段による経路誘導処理以外の処理を中断し、もしくは禁止する中断/禁止手段とをさらに備えることを特徴とする。
(4) 請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポータブルナビゲーション機器において、検出手段によって検出されたバッテリの残容量が所定値以下になったとき、経路誘導画面に表示されている経路誘導画面データを記憶媒体に記憶する記憶制御手段と、記憶媒体に記憶した経路誘導画面データをユーザの指示にしたがって呼び出して経路誘導画面の表示を再開する再開手段とを備えることを特徴とする。
(5) 請求項5の発明は、請求項4に記載のポータブルナビゲーション機器において、記憶媒体に記憶した経路誘導画面データを他の機器へ転送する転送手段を備えることを特徴とする。
(6) 請求項6の発明は、請求項5に記載のポータブルナビゲーション機器において、転送手段は、経路誘導画面データを他の機器へ転送することをユーザに促す案内画面を表示する表示制御手段と、ユーザがデータ転送を指令する指令手段とをさらに含み、案内画面の表示後に指令手段からデータ転送の指令が出力されると経路誘導画面データを他の機器へ転送することを特徴とするポータブルナビゲーション機器。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ポータブルナビゲーション機器のバッテリ残量が低下して目的地までの経路誘導が中断するような事態を未然に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
−−−第1の実施の形態−−−
図1〜5を参照して、本発明によるポータブルナビゲーション機器をポータブルナビゲーションデバイス(PND)に適用した一実施の形態を説明する。PNDとは、歩行者が目的地まで移動する際に携行するナビゲーション装置である。図1は、本実施の形態に関する概略図である。
【0007】
PND100は、歩行者が携行するナビゲーション装置であり、歩行者はPND100による経路誘導に従って目的地まで移動する。したがって、歩行者はPND100のユーザである。PND100は、現在地を検出するのに必要なGPS(Global Positioning System)人工衛星からのGPS信号を検出するアンテナを備えている。
【0008】
図2は、PND100のハードウェア構成を表すブロック図である。PND100のCPU110においては、GPSセンサ121、ジャイロセンサ122およびユーザ入力装置130との間の信号が入出力される。GPSセンサ121、ジャイロセンサ122は、PND100の現在地を検出するためのセンサ類であり、ユーザ入力装置130はタッチパネルやパネル周辺の押ボタン式スイッチ等のユーザインタフェースを提供する。
【0009】
CPU110はPND100全体を制御するプロセッサであり、CPU110およびその周辺回路は互いにバスで接続されている。周辺回路は、データメモリ・ワークメモリ111、プログラムメモリ112、ディスプレイモジュール140、楽曲を記録したメディア再生等を行うオーディオ部150、記憶装置160、外部転送インタフェース170、バッテリ制御部180等から成る。データメモリ・ワークメモリ111はCPU110の作業エリアとして制御に用いられ、プログラムメモリ112にはCPU110の制御プログラムが格納されている。なお、オーディオ部150は、楽曲を記録したメディア再生等を行うプレーヤー機器である。ラジオ放送等を受信する放送受信機とデコーダ、各種メディアサーバからのダウンロードデータを受信するための通信インタフェースモジュールとデコーダ、さらにはそれら複数の機器の組合せによってオーディオ部150を構成しても良い。それらの機器の一部の機能をプログラム(ソフトウェア)で実行するように構成しても良い。
【0010】
ディスプレイモジュール140は、グラフィックコントローラ141、画像メモリ142、表示パネル143等から成る。グラフィックコントローラ141は、CPU110から出力される文字や図形等の画像データを画像メモリ142に格納し、表示パネル143に画面表示するための制御を行う。
【0011】
記憶装置160は、ナビゲーション処理に使用する道路地図データやPOI(Point Of Interest:観光地や各種施設)情報などの情報を格納する記憶装置であり、たとえばフラッシュメモリが用いられている。なお、記憶装置180は、フラッシュメモリ以外にも、道路地図データが格納されたハードディスク、CD−ROM、DVD、その他の記録媒体であっても良い。
【0012】
道路地図データは、地図に関する情報であり、地図表示用データ、経路探索用データ、誘導データ(交差点名称・道路名称・方面名称・方向ガイド施設情報など)などから成る。地図表示用データは道路や道路地図の背景を表示するためのデータである。経路探索用データは、道路形状とは直接関係しない分岐情報などから成るデータであり、主に推奨経路を演算(経路探索)する際に用いられる。誘導データは、交差点名称などから成るデータであり、演算された推奨経路に基づきユーザを経路誘導する際に用いられる。
【0013】
外部転送インタフェース170は、PND100が他の電子機器へデータ転送を行う際に用いられる。データ転送の際の通信方式としては、Bluetooth(登録商標)や赤外線通信等が用いられる。このような無線通信を利用する場合、外部転送インタフェース170はデータ送受信のためのアンテナやRF(Radio Frequency)回路(不図示)等から成る。
【0014】
バッテリ制御部180はバッテリ185の容量を監視する。したがって、CPU110は、バッテリ制御部180からの通知またはバッテリ制御部180への問合せを通じてバッテリ185の残量を知ることができる。バッテリ185の残量に基づいてバッテリ駆動時間をユーザが正確に見積もることは困難である。そこで、CPUがバッテリ185の残量に基づいてバッテリ駆動時間を算出するための変換テーブルをプログラムメモリ112等に予め設定しておく。なお、PND100のユーザがオーディオ部150を使用している場合と使用していない場合とでは、バッテリ185の残量に基づくバッテリ駆動時間の算出結果が異なるため、オーディオ使用モードの変換テーブルと通常モードの変換テーブルが必要である。
【0015】
次に、図3のフローチャートを参照して、PND100の経路誘導処理を説明する。PNDは一般に、自動車からの電力供給を受けながらの車載ナビゲーションデバイスとして利用することも想定されている。そこで、ステップS310では、車両誘導・歩行者誘導の選択メニュー画面を表示する。ユーザ入力によって車両誘導が選択された場合は、ステップS311にて車両誘導の目的で利用するモード(車両モード)になる。引き続いて、ステップS312にて、歩行者専用道路や自転車専用道路などを除いた道路のデータを用いた経路誘導を行う。
【0016】
ステップS310において、ユーザ入力によって歩行者誘導が選択された場合はステップ321にて歩行者誘導の目的で利用するモード(歩行者モード)になる。引き続いて、ステップ322にて歩行者が歩行することができる道路のデータを用いた経路誘導を可能とする。車両用ナビゲーション装置の道路データを用いることもできるが、その道路データの中に定義している一方通行規制や車両通行時間規制を解除することが好ましい。
【0017】
ステップ312またはステップ322の処理が終了すると、ステップS313において、移動速度が前述のモードに応じて自動設定される。たとえば、車両モードは40km/h、歩行者モードでは4km/hである。移動速度をユーザが設定するように構成しても良い。ステップS314では、前述したセンサ類により現在地が検出される。ステップS315では、ユーザ入力により、目的地が設定される。ステップS316では、目的地までの経路探索処理および目的地に到達するまでの推定所要時間Tが算出される。なお、目的地に至る経路上に経由地を指定することもできる。
【0018】
ステップS317では、車載バッテリから給電されているか否かの判定処理が行われる。前述のとおり、車載バッテリからの電力供給を受けながらPND100が使用される場合は、ステップS317を肯定判定してステップS318にて経路誘導を実行する。ステップS319にて目的地へ到着すると経路誘導は終了し、本処理フローは終了する。
【0019】
一方、内部バッテリから電力供給を受けながらPND100が使用される場合は、前述したステップS317を否定判定してステップS400に進む。ステップS400において、バッテリ駆動のサブルーチン処理を実行し、そのサブルーチン処理が完了すると本処理フローも終了する。
【0020】
次に、図4のフローチャートを参照して、図3のステップS400に該当するバッテリ駆動のサブルーチン処理を説明する。本サブルーチン処理ではまず、ステップS401にてバッテリ制御部180へ問合せ、バッテリ残量を確認する。次に、ステップS402にて、その時点でのバッテリ駆動利用の動作モードが通常モード、オーディオ使用モードのいずれのモードであるかを確認し、その確認結果に応じて各々次の処理ステップに移行する。たとえば、その確認結果が通常モードである場合は、ステップS403にて通常モードに応じた処理ステップへの移行設定を行い、ステップS404にて通常モードにおけるバッテリ駆動時間tの算出処理を実行する。
【0021】
ステップS402においてオーディオ使用モードと判定された場合は、ステップS413にて動作モードをオーディオ使用モードに設定し、ステップS414にてオーディオ使用モードにおけるバッテリ駆動時間tの算出処理を実行する。
【0022】
ステップS404またはステップS414の処理が完了すると、ステップS405にて、バッテリ駆動時間tが目的地に到達するまでの推定所要時間T以上か否かを判定する。ステップS405にてtがT以上であると判定された場合、ステップS406へ処理が移行し、バッテリ残量確認を定期的に実行するためのバッテリ確認周期タイマを起動する。そして、ステップS407にて経路誘導を実行する。
【0023】
ステップS405にてtがTより小さいと判定された場合、ステップS430にて省電力モードのサブルーチン処理を実行する。
【0024】
ステップS407にて実行した経路誘導中にステップS408のイベント発生が検出された場合、その検出結果に応じて各々次の処理ステップに移行する。たとえば、検出結果が目的地到着というイベントであった場合は、ステップS409にてイベントが目的地到着であることを設定し、ステップS410にて経路誘導を終了し、本サブルーチン処理フローを終了する。
【0025】
ステップS408におけるイベント発生の検出結果が、ステップS406にて起動したバッテリ確認周期タイマの満了というイベントであった場合は、ステップS469にてイベントがバッテリ確認周期タイマ満了であることを設定し、前述したステップS401のバッテリ残量確認処理へ戻る。
【0026】
バッテリの動作モードが通常モードである場合において、経路誘導中にユーザ入力によってオーディオの使用が開始されることがある。あるいは、バッテリの動作モードがオーディオ使用モードである場合において、経路誘導中にユーザ入力によってオーディオの使用が停止されたりすることがある。このようなイベントは、経路誘導中のオーディオ使用設定変更イベントと定義する。オーディオ使用設定変更はバッテリの動作モードの変更を導くため、バッテリ駆動時間tの再計算が必要となる。そのため、本サブルーチン処理フローではオーディオ使用設定変更イベント発生についても考慮している。すなわち、ステップS408におけるイベント発生の検出結果がオーディオ使用設定変更というイベントであった場合は、ステップS479にてイベントがオーディオ使用設定変更であることを設定し、ステップS401のバッテリ残量確認処理へ戻る。
【0027】
ステップS408におけるイベント発生の検出結果が、誘導経路逸脱というイベントであった場合は、ステップS489にてイベントが誘導経路逸脱であることを設定し、ステップS490で経路を再探索すると共に目的地までの所要時間Tを再計算して推定し、ステップS401のバッテリ残量確認処理へ戻る。
【0028】
ステップS404またはステップS414におけるバッテリ駆動時間tの算出はテーブルルックアップ方式により行われる。すなわち、ステップS401にて検出したバッテリ残量をバッテリ駆動時間と対応付けた変換テーブルを、たとえば、図2におけるPND100のプログラムメモリ112に予め設定しておき、検出したバッテリ残量をバッテリ駆動時間に変換する。算出されるバッテリ駆動時間tが実際のバッテリ駆動時間よりも長くなる場合も発生し得る。したがって、目的地に到達するまでの推定所要時間Tと実際の所要時間との差との兼ね合いで、目的地に到着する前にバッテリ残量が枯渇する場合が発生し得る。こうした場合、ステップS408におけるイベント発生の検出結果として、ステップS499にてイベントがバッテリ残量僅少であることを設定し、ステップS500にて退避処理のサブルーチン処理を実行する。なお、ステップS499におけるバッテリ残量僅少というイベントは、図2におけるバッテリ制御部180によるバッテリ185の容量監視に基づき、バッテリ制御部180からCPU110へ通知したバッテリ残量、またはCPU110からバッテリ制御部180へ問合せて得られるバッテリ残量を利用することが好ましい。
【0029】
図4におけるステップS430の省電力処理およびステップS500の退避処理の詳細を図5および図6を参照して説明する。図5において、ステップS431Aでは、PND100を省電力モードに移行すると共に、その旨をユーザへ通知する画面表示を出力する。
【0030】
ステップS435Aへ処理が移行すると、画面出力をオフにして省電力を図る。画面出力オフの状態における経路誘導中にステップS436Aのイベント発生が検出された場合、その検出結果に応じて各々次の処理ステップに移行する。たとえば、検出結果が目的地到着というイベントであった場合は、ステップS409Aにてイベントが目的地到着であることを設定し、本サブルーチン処理フローを終了する。
【0031】
ステップS436Aにおけるイベント発生の検出結果が、交差点等の分岐点接近(たとえば50メートル以内)であった場合は、ステップS437Aにてイベントが交差点等の分岐点接近(たとえば50メートル以内)であることを設定し、ステップS438Aにて画面出力をオンし、ガイダンスを伴う経路誘導を行う。ステップS439Aにて分岐点通過というイベントが発生すると、再びステップS435Aの画面出力オフに戻る。なお、ステップS436Aにおいて、交差点等の分岐点まで50メートルの地点に到達すると、分岐点接近というイベントが発生するようにしたが、その値は予めユーザ入力によって可変設定するように構成しても良い。
【0032】
ステップS436Aにおけるイベント発生の検出結果が、誘導経路からの逸脱であった場合は、ステップS457Aにてイベントが誘導経路逸脱であることを設定し、ステップS458Aにて目的地までの経路探索処理を再び実行する。ステップS458Aの処理が完了したら、ステップS435Aの画面出力オフに戻る。
【0033】
ステップS436Aにおけるイベント発生の検出結果が、バッテリ残量僅少であった場合は、ステップS499Aにてイベントがバッテリ残量僅少であることを設定し、ステップS500Aにて退避処理のサブルーチン処理を実行する。ステップS500Aのサブルーチン処理が完了したら、本サブルーチン処理フローを終了する。
【0034】
次に、図6のフローチャートを参照して、図5のステップS500Aに該当する退避処理のサブルーチン処理を説明する。本サブルーチン処理ではまず、ステップS501Aにて、経路誘導が中断されて退避処理が開始される旨をユーザへ通知する画面表示を出力する。次に、ステップS502Aにて、GPSセンサやジャイロセンサへの給電を停止する。
【0035】
さらに、ステップS508Aのイベント発生検出処理における検出結果に応じて各々次の処理ステップに移行する。たとえば、検出結果が目的地到着というイベントであった場合(ただし、GPSセンサやジャイロセンサへの給電が停止中のため、ユーザ入力によるイベント発生となる)は、ステップS509Aにてイベントが目的地到着であることを設定し、本サブルーチン処理フローを終了する。ステップS508Aにおけるイベント発生の検出結果が電力枯渇というイベントであった場合は、ステップS519Aにてイベントが電力枯渇であることを設定し、ステップS520Aに電力枯渇の旨をユーザへ通知する画面表示を出力し、本サブルーチン処理フローを終了する。ステップS508Aにおけるイベント発生の検出結果が案内図呼出しというイベントであった場合は、ステップS529Aにてイベントが案内図呼出しであることを設定してステップS530Aへ移行する。ステップS503Aにおいて、ステップS501Aにて経路誘導が中断された際の案内図を所定時間表示する。画面出力表示後、ユーザが画面を消し忘れることを防止するため、出力表示から所定時間が経過するとステップS507Aに示される通り、画面出力はオフとなる。
【0036】
本実施の形態のPND100では、次の作用効果を奏する。
(1)ユーザがバッテリ駆動によりPND100を利用する場合、CPU110において、バッテリ駆動時間を算出し、この駆動時間が目的地までの所要時間以上であるか否かを判定するようにした。これにより、ユーザが推定したバッテリ駆動時間と目的地までの所要時間とを比較判定する必要が無く、ユーザの推定するバッテリ駆動時間が短いことにより、目的地の手前で経路誘導が強制終了されることを防止できる。
(2)PND100のバッテリ駆動時間が目的地までの所要時間に満たないと判定された場合、CPU110はPND100を自動的に省電力モードで駆動するようにした。この結果、最低限の経路誘導を行ないながら、通常の利用形態に比べてバッテリ駆動時間を延長することができる。
(3)CPU110により、自動的に省電力モードが設定された場合、画面出力をオフし、分岐点に接近すると自動的に画面出力をオンし、さらには分岐点を通過すると再び自動的に画面出力をオフするように構成した。これにより、バッテリ駆動時間に余裕が無い場合においても、ユーザ自身が省電力を目的として画面出力オンおよびオフのためのマニュアル操作をする必要が無く、バッテリ駆動のPND100を二輪車に取り付けて利用するといった、二輪車操縦のためにPND100のマニュアル操作不可となる場合の利便性が高まる。
【0037】
−−−第2の実施の形態−−−
次に、図7のフローチャートを参照して、本発明によるPND100の第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同様の構成要素には符号の末尾を除き同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、図7と図5との比較で明らかなように、省電力モードに起因して実行する処理が第1の実施の形態と異なる。すなわち、図7において、ステップS431Bにて省電力モードに移行すると、ステップS432Bにてオーディオ使用不可設定がなされ、オーディオ使用に伴う電力消費を防ぐ。
【0038】
その後続行される経路誘導中にステップS436Bのイベント発生が検出された場合、その検出結果に応じて各々次の処理ステップに移行する。図7に示されているステップS409B、ステップS457BおよびステップS499Bの各イベントについては、図5にて対応するステップS409A、ステップS457AおよびステップS499Aと同様である。
【0039】
本実施の形態のPND100では、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0040】
−−−第3の実施の形態−−−
図8および図9のフローチャートを参照して、本発明によるPND100の第3の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1および第2の実施の形態と同様の構成要素には符号の末尾を除き同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1または第2の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、省電力設定に起因して実行する処理が第1および第2の実施の形態と異なる。すなわち、図8において、ステップS431Cにて省電力モードに移行すると、その直後にステップS500Cの退避処理のサブルーチン処理を実行する。
【0041】
図9のフローチャートを参照して、図8のステップS500Cに該当する退避処理のサブルーチン処理を説明する。本サブルーチン処理ではまず、ステップS501CXにて、経路誘導が中断されて退避処理が開始される旨をユーザへ通知する画面表示を出力する。次に、ステップS502CXにて、GPSセンサやジャイロセンサへの給電を停止する。さらに、ステップS503CXに移行すると、経路誘導表示画面における案内図の画像データや経路誘導に関するテキストデータをデータメモリ・ワークメモリ111に保存する。このとき、案内図の画像データのみを保存することとしても良いし、分岐点の拡大図等も加えた複数種類の案内図の画像データを保存することとしても良い。データ保存終了後、ステップS507CXにて画面出力をオフする。
【0042】
さらに、ステップS508CXのイベント発生が検出された場合、その検出結果に応じて各々次の処理ステップに移行する。検出結果が目的地到着というイベントであった場合(ただし、GPSセンサやジャイロセンサへの給電が停止中のため、ユーザ入力によるイベント発生となる)や、電力枯渇というイベントであった場合は、第1の実施形態にて説明した図6のフローチャートにおける処理と同様の処理を実行する。ただし、それらの処理を実行した後は、ステップ503CXにて保存された案内図の画像データや経路誘導に関するテキストデータを、ステップS510CXにて削除してから本サブルーチン処理を終了する。また、ステップS508CXにおけるイベント発生の検出結果が案内図呼出しというイベントであった場合は、ステップS529CXにおいて、ステップ503CXにて保存された案内図の画像データや経路誘導に関するテキストデータの中からユーザが呼出したいデータを選択し、ステップS530CXにて所定時間画面に出力表示する。画面出力表示後、ユーザが画面を消し忘れることを防止するため、出力表示から所定時間が経過するとステップS507CXに示される通り、画面出力はオフとなる。
【0043】
本実施の形態のPND100では、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。加えて、自動的に省電力モードへ移行した場合、CPU110は、画面出力をオフし、ユーザが経路を確認する際に、保存された案内図の画像データや経路誘導に関するテキストデータを呼出して表示するように構成した。これにより、ユーザが現在位置を知っていれば、拡大図/広域図やテキスト表示等をユーザが必要に応じて選択することが可能であり、紛らわしい分岐点における経路選択等の点で利便性が向上する。
【0044】
−−−第4の実施の形態−−−
図10のフローチャートを参照して、本発明によるPND100の第4の実施の形態を説明する。以下の説明では、第3の実施の形態と同様の構成要素には符号の末尾を除き同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第3の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、退避処理における保存データの取り扱いが第3の実施の形態と異なる。すなわち、図10において、ステップS503CYにて案内図の画像データや経路誘導に関するテキストデータの保存がなされると、保存されたデータの外部機器への転送処理を実行する。
【0045】
ステップS504CYでは、保存データを外部機器へ転送するか否かについての判定処理を実行する。外部転送すると判定した場合、ステップS505CYにて、外部転送先機器を選択し、PND100が選択した当該外部転送先機器へ接続する。なお、接続方式は有線接続に基づくものでも良いが、PND100の利用形態を考慮すると、主に無線接続に基づくものであることが好ましい。具体的な無線接続の方式としては、たとえば、Bluetooth(登録商標)や赤外線通信等が考えられるが、他の方式であっても良い。また、外部転送先機器の候補は、ユーザがPND100へ事前に登録しておいた機器であっても良いし、ステップS505CYの処理の中で外部転送先機器についての情報をユーザが入力しても良い。さらには、当該無線接続の方式として赤外線通信を用いた場合、外部転送先機器をPND100に近づけるだけで外部転送先機器の選択処理を実行したことになる。外部転送機器としては、たとえば、携帯電話、PDA、ポータブルPC(パソコン)、携帯型ゲーム機等、外出中のユーザが通常携行している情報端末が好ましいが、他の通信機器であっても良い。外部転送先機器を選択すると、ステップS506CYにて保存データの外部転送を実行する。
【0046】
本実施の形態のPND100では、第1〜第3の実施の形態と同様の作用効果を奏する。加えて、ユーザが目的地に到達する前にPND100の電力が枯渇した場合においても、それ以前に保存データの外部転送処理が実行されているため、外部転送先機器によって案内図等を参照することができる。これにより、バッテリ駆動時間に余裕が無い場合においても、目的地までの経路に関する最低限の情報が確保されるという点で、信頼性が向上する。
【0047】
−−−変形例−−−
上述した各実施の形態は、それぞれ組み合わせてもよい。たとえば、PND100において、第1の実施の形態と第2の実施の形態を同時に省電力処理の形態として実施し、それでもユーザが目的地に到達する前にPND100の電力が枯渇した場合は第3の実施の形態と第4の実施の形態を同時に退避処理の形態として実施するという組合せも可能であり、その場合の省電力処理および退避処理のサブルーチン処理を図11および図12に示す。なお、図11および図12においては、第1〜4の実施の形態と同様の構成要素には符号の末尾を除き同じ符号を付している。各ステップにおける処理内容については前述したので説明を省略する。
【0048】
上述した退避処理(図6、図9、図10、図12)において、ステップS530(A、CX、CY)にて所定時間の案内図出力表示を実行する。その前段で、ユーザの指示にしたがって、一時的にステップS502(A、CX、CY)にて停止したGPSセンサおよびジャイロセンサへの給電を行っても良い。これにより、ステップS530(A、CX、CY)において、ステップS503(A、CX、CY)にて保存した案内図にPND100の現在地をも表示した案内図を作成できるようにしても良い。同様に、図11に示した省電力処理における所定時間の案内図表示(ステップS448E)の際にも、現在地をも表示した案内図を作成できるようにしても良い。
【0049】
さらに、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態およびその変形例における機器構成に何ら限定されない。
【0050】
上述の実施の形態およびその変形例において、たとえば、検出手段はバッテリ制御部180に、処理手段はオーディオ部150に、指令手段はユーザ入力装置130にそれぞれ対応する。転送手段は、外部転送インタフェース170と、CPU110と、プログラムメモリ112で実行されるプログラムとによって実現される。経路誘導手段と、記憶制御手段と、再開手段と、表示制御手段とは、ディスプレイモジュール140と、CPU110と、プログラムメモリ112で実行されるプログラムとによって実現される。所要時間演算手段と、判定手段と、省電力化処理手段と、中断/禁止手段とは、CPU110と、プログラムメモリ112で実行されるプログラムとによって実現される。
【0051】
なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係になんら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明によるポータブルナビゲーション機器をパーソナルナビゲーションデバイス(PND)に適用した実施形態の概念図である、
【図2】本発明の第1の実施の形態によるパーソナルナビゲーションデバイス(PND)のハードウェア構成を表すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態によるパーソナルナビゲーションデバイス(PND)の経路誘導処理を表すフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施の形態において、図3のフローチャートに記載のバッテリ駆動利用のサブルーチン処理を表すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態において、図4のフローチャートに記載の省電力利用のサブルーチン処理を表すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施の形態において、図5のフローチャートに記載の退避処理のサブルーチン処理を表すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施の形態において、図4のフローチャートに記載の省電力利用のサブルーチン処理を表すフローチャートである。
【図8】本発明の第3および第4の実施の形態において、図4のフローチャートに記載の省電力利用のサブルーチン処理を表すフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施の形態において、図8のフローチャートに記載の退避処理のサブルーチン処理を表すフローチャートである。
【図10】本発明の第4の実施の形態において、図8のフローチャートに記載の退避処理のサブルーチン処理を表すフローチャートである。
【図11】本発明の第1〜第4の実施の形態を組み合わせた実施の形態において、図4のフローチャートに記載の省電力利用のサブルーチン処理を表すフローチャートである。
【図12】本発明の第1〜第4の実施の形態を組み合わせた実施の形態において、図11のフローチャートに記載の退避処理のサブルーチン処理を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
100 パーソナルナビゲーションデバイス(PND)
110 CPU
111 データメモリ・ワークメモリ
112 プログラムメモリ
121 GPSセンサ
122 ジャイロセンサ
130 ユーザ入力装置
140 ディスプレイモジュール
141 グラフィックコントローラ
142 画像メモリ
143 表示パネル
150 オーディオ部
160 記憶装置
170 外部転送インタフェース
180 バッテリ制御部
185 バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリによって駆動されるポータブルナビゲーション機器において、
現在地から目的地までの経路上の分岐路において経路誘導画面によりユーザを誘導する経路誘導手段と、
前記現在地から前記目的地までの所要時間を演算する所要時間演算手段と、
前記バッテリの残容量を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された前記バッテリの残容量に基づいて、前記所要時間、前記バッテリにより前記経路誘導手段が駆動可能か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって、前記所要時間、前記バッテリにより前記経路誘導手段が駆動可能でないと判定されたとき、前記バッテリの電力消費を抑制する省電力処理を起動する省電力化処理手段とを備えることを特徴とするポータブルナビゲーション機器。
【請求項2】
請求項1に記載のポータブルナビゲーション機器において、
前記省電力化処理手段によって省電力処理が起動されると、前記経路誘導画面を非表示とし、前記分岐点までの距離が所定の値まで接近したとき前記経路誘導画面の表示を再開し、当該分岐点を通過したとき前記経路誘導画面を再び非表示とすることを特徴とするポータブルナビゲーション機器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のポータブルナビゲーション機器において、
前記経路誘導手段による経路誘導処理以外の各種処理を行う処理手段と、
前記省電力化処理手段によって省電力処理が起動されると、前記処理手段による前記経路誘導処理以外の処理を中断し、もしくは禁止する中断/禁止手段とをさらに備えることを特徴とするポータブルナビゲーション機器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポータブルナビゲーション機器において、
前記検出手段によって検出された前記バッテリの残容量が所定値以下になったとき、前記経路誘導画面に表示されている経路誘導画面データを記憶媒体に記憶する記憶制御手段と、
前記記憶媒体に記憶した前記経路誘導画面データをユーザの指示にしたがって呼び出して前記経路誘導画面の表示を再開する再開手段とを備えることを特徴とするポータブルナビゲーション機器。
【請求項5】
請求項4に記載のポータブルナビゲーション機器において、
前記記憶媒体に記憶した前記経路誘導画面データを他の機器へ転送する転送手段を備えることを特徴とするポータブルナビゲーション機器。
【請求項6】
請求項5に記載のポータブルナビゲーション機器において、
前記転送手段は、前記経路誘導画面データを他の機器へ転送することをユーザに促す案内画面を表示する表示制御手段と、前記ユーザがデータ転送を指令する指令手段とをさらに含み、前記案内画面の表示後に前記指令手段から前記データ転送の指令が出力されると前記経路誘導画面データを他の機器へ転送することを特徴とするポータブルナビゲーション機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−204590(P2009−204590A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50147(P2008−50147)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】